JP6709493B2 - 進行性骨化性線維異形成症治療剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ラパマイシン及びその類縁体を有効成分として含有する進行性骨化性線維異形成症の予防剤及び治療剤に関する。より詳細には、本発明は進行性骨化性線維異形成症の主症状であるフレアアップ及び/又は異所性骨化を抑制する、予防剤及び予防方法、並びに治療剤及び治療方法に関する。
進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva:FOP)は、炎症又は痛みを伴う腫脹(「フレアアップ」とも言う。)と異常な軟骨又は骨の形成及び成長(「異所性の骨化」又は「異所性骨化」とも言う。)を主症状とする遺伝性の疾患である。典型的な進行性骨化性線維異形成症の患者(FOP患者)では、小児期又は学童期からフレアアップが出現し、フレアアップの消失に伴って異所性の骨化が生じる。また、この頃から全身の骨格筋、筋膜、腱及び靭帯等の線維性組織が進行性かつ異所性に骨化し、関節の拘縮、変形又は可動性障害が生じる。
FOPにおける異所性骨化の特徴は、筋等の軟部組織の破壊及び再生によって異所性骨化が急激に誘発される点にある(非特許文献1)。FOP患者に見られる異所性骨化では、まず軟骨が形成され、その後骨に置き換わる、いわゆる内軟骨性骨化(軟骨内骨化)とよばれる過程を経ることが報告されている(非特許文献2)。
国際公開第2015/152183号
Pediatrics,2005,116,e654−661. J.Bone Joint Surg.Am.,1993,75(2),220−230. Nat. Genet. 2006,38,525−527. J.Biol.Chem. 2009,284(11),7149−7156. J.Bone Miner.Res.2010,25(6),1208−1215. Oncogene 1993,8(10),2879−2887. J.Biol.Chem.1998,273(40),25628−25636. ACS Chem.Biol.,2013,8(6),1291−1302. Bioorg.Med.Chem.Lett.,2013,23(11),3248−3252. Gene Ther.,2012,19(7),786−790. Nat.Med.,2011,17(4),454−460.
FOPは常染色体優性遺伝形式をとる遺伝子疾患である。FOPは、I型骨形成タンパク質受容体(BMP受容体)のひとつであるアクチビンA受容体タイプI(ACVR1、ALK2とも呼ばれる。)の突然変異が原因であることが報告されている(非特許文献3)。ACVR1は、BMPの受容体として細胞内にシグナルを伝達するセリン/スレオニンキナーゼである。FOP患者でみられる変異型ACVR1は、BMP非依存的にシグナルが伝達されること(非特許文献4及び5)、及び正常なACVR1(野生型ACVR1)と比較してBMPに対する反応性が亢進していること(非特許文献5)が報告されている。
TGF−βスーパーファミリーは20種類を超える多様なメンバーから構成され、BMPファミリーとTGF−βファミリーとに大別される。例えばBMP−7はBMPファミリーに属するサイトカインの一種である。BMP(骨形成因子又は骨形成タンパク質:Bone Morphogenetic Protein)は、膜貫通型セリン/スレオニンキナーゼであるI型及びII型の2種類の受容体と複合体を形成することで、細胞内にシグナルを伝達する。一方アクチビンは、TGF−βファミリーに分類されるリガンドであり、インヒビンβ鎖からなる二量体である。BMP同様にアクチビンもI型及びII型の受容体と複合体を形成することで細胞内にシグナルを伝達する。しかし、アクチビンとBMPとでは、シグナルを伝達する受容体分子が異なることが知られている。
I型BMP受容体の一種であるACVR1の遺伝子は、ヒトII型アクチビン受容体及び線虫Daf−1と配列相同性のある遺伝子を探索した結果、見出された遺伝子である。そのため、ACVR1はアクチビン受容体様キナーゼ2とも呼ばれている(非特許文献6)。しかしながら、その後の解析によって、ACVR1の生理的なリガンドは、BMP−7等のBMPファミリーのリガンドであり、アクチビンはACVR1を介してシグナルを伝達する活性がないことが示されている(非特許文献7)。
現在、FOPの治療には、ステロイド、非ステロイド性消炎鎮痛剤、ビスフォスフォネート剤等が使用されている。しかしながら、異所性骨化の進行を抑制する、明らかな有効性が確認された治療薬は存在しない。
FOPの治療法として、ACVR1のキナーゼ活性を阻害する化合物が研究されている(非特許文献8及び9)。これら化合物には、FOPの病態の一面を模倣した動物モデルを用いた実験で、異所性骨化を抑制する作用が確認されているものがある。
別の知見として、RNA干渉技術を用いてFOP患者で見られる変異型ACVR1を選択的に発現抑制すると、FOP患者由来の脱落乳歯歯髄幹細胞の骨分化が抑制されることが報告されている(非特許文献10)。
FOPの病態の一面を模倣した動物モデルを用いた実験で、レチノイン酸受容体γアゴニストが、異所性骨化を抑制することが示されている。レチノイン酸受容体γアゴニストは、ACVR1等のBMP受容体によって活性化される転写因子であるSmadタンパク質の総量及びリン酸化を減少させることでその作用を発揮することが報告されている(非特許文献11)。
上記のように、これまでに報告されている治療法は、いずれもACVR1の発現若しくは酵素活性を抑制するか、又はACVR1の基質であるSmadのシグナルを減弱させることに基づいた方法である。一方、FOPの原因となる変異型ACVR1は、正常なACVR1と比較してBMPシグナルの伝達能が亢進していること、及びBMP非依存的にシグナルを伝達することが報告されているものの(非特許文献4及び5)、FOPの病態との関係は明確ではない。
以上のように、FOPの発症のメカニズムは未だ不明であり、FOPの発症の抑制又は治療に用いられる医薬品は見出されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、進行性骨化性線維異形成症の予防剤及び/又は治療剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、FOP患者由来の細胞を用いた研究によって、本来ACVR1ではなくアクチビンA受容体タイプIB(ACVR1B)を介してシグナルを伝達するアクチビンが、FOP患者で認められる変異型ACVR1を介しても細胞内にシグナルを伝達し、この異常なシグナル伝達がFOP患者で認められる異所性の軟骨誘導及び骨誘導の一因であることを見出した(特許文献1)。すなわち、軟骨前駆細胞をアクチビンで処理することで、正常な軟骨分化とは異なる、FOPの病態で特異的に起こる現象を再現できるようになった。そこでFOP患者由来の細胞をアクチビン等で処理する際に、化合物を同時に添加し、化合物を添加しない場合と軟骨分化の程度を比較することで、FOPにおける軟骨分化誘導を抑制する、すなわちFOPにおける異所性骨化を抑制する化合物を探索した。その結果、ラパマイシン及びその類縁体が、FOP患者から樹立したiPS細胞に由来する間葉系幹細胞様の細胞の軟骨細胞への分化誘導を抑制する、すなわち異所性骨化を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
ラパマイシンは、シロリムスとも呼ばれ、放線菌の一種が産生するマクロライド系化合物の一種である。ラパマイシン又はその構造類縁体であるエベロリムス、テムシロリムス等は、mTOR(mammalian target of rapamycin又はmechanistic target of rapamycin)の活性を阻害することが知られている。mTORは細胞の分裂、成長、生存等の調節に中心的な役割を担うセリン・スレオニンキナーゼである。ラパマイシン及びその構造類縁体は、免疫抑制作用、平滑筋増殖抑制作用又は抗がん作用を有することが知られている。しかしながら、これまでにFOPとの関連については知られておらず、本発明者らが初めて見出したものである。
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、TAFA93、ウミロリムス、オルコロリムス、ゾタロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する進行性骨化性線維異形成症の予防剤又は治療剤。
[2]上記有効成分として、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、上記[1]に記載の予防剤又は治療剤。
[3]上記有効成分が、ラパマイシン又は薬学的に許容されるその塩である、上記[1]に記載の予防剤又は治療剤。
[4]上記有効成分が、エベロリムス又は薬学的に許容されるその塩である、上記[1]に記載の予防剤又は治療剤。
[5]アクチビンA受容体タイプI(ACVR1)にアミノ酸変異を有する患者用である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の予防剤又は治療剤。
[6]上記アミノ酸変異が、上記ACVR1のGSドメイン又はキナーゼドメインにおけるアミノ酸変異を含む、上記[5]に記載の予防剤又は治療剤。
[7]上記GSドメイン又はキナーゼドメインにおけるアミノ酸変異が、配列番号2に記載のアミノ酸配列における第196番目のアミノ酸残基がプロリンであるアミノ酸変異、第197番目のアミノ酸残基がロイシンであり第198番目のアミノ酸が欠失したアミノ酸変異、第202番目のアミノ酸残基がイソロイシンであるアミノ酸変異、第206番目のアミノ酸残基がヒスチジンであるアミノ酸変異、第207番目のアミノ酸残基がグルタミン酸であるアミノ酸変異、第258番目のアミノ酸残基がグリシン又はセリンであるアミノ酸変異、第325番目のアミノ酸残基がアラニンであるアミノ酸変異、第328番目のアミノ酸残基がグルタミン酸、アルギニン又はトリプトファンであるアミノ酸変異、第356番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸であるアミノ酸変異、及び第375番目のアミノ酸残基がプロリンであるアミノ酸変異からなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸変異を含む、上記[6]に記載の予防剤又は治療剤。
[8]上記ACVR1のGSドメインにおけるアミノ酸変異が、配列番号2に記載のアミノ酸配列における第206番目のアミノ酸残基がヒスチジンであるアミノ酸変異を含む、上記[6]に記載の予防剤又は治療剤。
[9]フレアアップ又は異所性骨化の発症を回避又は抑制する薬剤である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の予防剤又は治療剤。
[10]フレアアップ又は異所性骨化の症状の治癒、症状の改善、症状の軽減、又は症状の進行を抑制する薬剤である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の予防剤又は治療剤。
さらに本発明は、以下に関する。
[11]ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、TAFA93、ウミロリムス、オルコロリムス、ゾタロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の有効量を、哺乳動物に投与することを含む、進行性骨化性線維異形成症の予防又は治療方法。
[12]進行性骨化性線維異形成症の予防又は治療が、フレアアップ又は異所性骨化の発症の回避又は抑制である、上記[11]に記載の方法。
[13]進行性骨化性線維異形成症の予防又は治療が、フレアアップ又は異所性骨化の症状の治癒、症状の改善、症状の軽減、又は症状の進行の抑制である、上記[11]に記載の方法。
[14]上記哺乳動物がヒトである、上記[11]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]進行性骨化性線維異形成症の予防又は治療を行うために使用される、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、TAFA93、ウミロリムス、オルコロリムス、ゾタロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物。
[16]進行性骨化性線維異形成症の予防又は治療が、フレアアップ又は異所性骨化の発症の回避又は抑制である、上記[15]の化合物。
[17]進行性骨化性線維異形成症の予防又は治療が、フレアアップ又は異所性骨化の症状の治癒、症状の改善、症状の軽減、又は症状の進行の抑制である、上記[15]の化合物。
[18]進行性骨化性線維異形成症の予防剤又は治療剤の製造における、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、TAFA93、ウミロリムス、オルコロリムス、ゾタロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の使用。
[19]進行性骨化性線維異形成症の予防剤又は治療剤が、フレアアップ又は異所性骨化の発症を回避又は抑制する薬剤である、上記[18]の使用。
[20]進行性骨化性線維異形成症の予防剤又は治療剤が、フレアアップ又は異所性骨化の症状の治癒、症状の改善、症状の軽減、又は症状の進行を抑制する薬剤である、上記[18]の使用。
本発明によれば、進行性骨化性線維異形成症の予防剤及び/又は治療剤を提供することが可能になる。
FOP患者由来の細胞から分化した軟骨細胞における、硫酸化グリコサミノグリカンの量を示すグラフである。 FOP患者由来の細胞を用いたヒト異所性骨化モデルマウスにおける、ラパマイシンの薬効を示すグラフである。(a)は、腹腔内投与の場合のグラフである。(b)は、経口投与の場合のグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態における進行性骨化性線維異形成症の予防剤又は治療剤(以下、「FOP予防剤/治療剤」という場合がある。)は、ラパマイシン(シロリムスともいう。)、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス(デフォロリムスともいう。)、TAFA93、ゾタロリムス、ウミロリムス、オルコロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する。ここで、「有効成分として含有する」とは、ラパマイシン及びその類縁体のフリー体の形態のみならず、これらの薬学的に許容される塩の形態、又は更に薬学的に許容される水和物若しくは溶媒和物の形態として、FOP予防剤/治療剤に含有する場合も含む。有効成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、典型的には小児期から全身の結合組織が進行性かつ異所性に骨化し(異所性骨化)、四肢及び体幹の可動性の低下又は変形を生じる遺伝子疾患である。異所性骨化は、本来は骨形成が起こらない組織において認められる骨化である。FOPでは進行性に全身の結合組織の異所性骨化が起こることで運動機能が著しく障害される。本発明者らは、アクチビンが変異型ACVR1に結合することによって細胞内にシグナルが伝達され、このシグナル伝達がFOP患者で認められる異所性の軟骨誘導及び骨誘導の一因であることを見出した。なお、アクチビンは、野生型ACVR1と結合しても、ACVR1の下流にシグナルを伝達しないことが知られている。
上記知見を元に、本発明者らは、FOP患者由来の細胞をアクチビンで処理することで、軟骨分化を誘導することができること、また、FOP患者由来の細胞をアクチビンで処理する際に、化合物を共存させ、化合物を共存させない場合と軟骨分化の程度を比較することで、FOPにおける軟骨分化誘導を抑制する、すなわちFOPにおける異所性骨化を抑制する作用を評価することができることを見出した。
FOP予防剤/治療剤は、FOPの主症状であるフレアアップ及び/又は異所性骨化を抑制する薬剤である。フレアアップとは、炎症又は痛みを伴う腫脹のことを言い、異所性骨化とは、異常な軟骨又は骨の形成及び成長のことを言う。上記変異型ACVR1の詳細については後述する。
進行性骨化性線維異形成症の予防とは、フレアアップ又は異所性骨化が発症することを回避又は抑制することを意味する。例えば、以下の処置によって上記予防が達成される。
(1)フレアアップ又は異所性骨化を発症する前から日常的にFOP予防剤/治療剤を投薬する。
(2)外傷及び感染等のフレアアップを発症する要因が生じた際にFOP予防剤/治療剤を投薬し、フレアップの発症を回避又は抑制する。
(3)炎症、痛み、フレアアップ等が生じたときにFOP予防剤/治療剤を投薬し、異所性骨化の発症を回避又は抑制する。
進行性骨化性線維異形成症の治療とは、進行性骨化性線維異形成症の症状の治癒、症状の改善、症状の軽減、又は症状の進行の抑制を意味する。例えば、以下に示す事項が上記治療に含まれる。
(1)フレアアップの症状の抑制、フレアアップが発症している期間の短縮。
(2)フレアアップを発症した後の異所性骨化の症状の抑制。
(3)通常、進行性の経過をとる異所性骨化の症状又は進行の抑制。
アクチビンA受容体タイプI(ACVR1)は、I型BMP受容体の一種であり、例えば、NCBIアクセッション番号:NM_001105(配列番号1)又はそのアイソフォームであるNM_001111067(配列番号3)に記載の核酸配列によってコードされる受容体である。ACVR1のアミノ酸配列は、例えば、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列が挙げられる。
FOP患者由来の細胞における軟骨分化を抑制する物質(有効成分)としては、ラパマイシン/シロリムス(ラパミューン(登録商標)、Pfizer、又はラパリムス(登録商標)、ノーベルファーマ)(米国特許第3,929,992号、5,362,718号)及びその類縁体からなる群から選ばれることが好ましい。ラパマイシンの類縁体としては、例えば、テムシロリムス/CCI779(トーリセル(登録商標)、Pfizer)(米国特許第5,362,718号)、エベロリムス/RAD001(アフィニトール(登録商標)、及びサーティカン(登録商標)、Novartis)(米国特許第5,665,772号)、リダフォロリムス/デフォロリムス/AP−23573(Ariad pharmaceuticals)(米国特許第7,091,213号)、TAFA93(Aurinia Pharmaceuticals、Atrium Medical Corporation)、ウミロリムス(Biosensors、テルモ)、オルコロリムス(Novartis)、及びゾタロリムス/ABT578(Abbot)(国際公開第99/15530号)が挙げられる。上記特許公報等に記載されているように、上述の化合物は、ラパマイシンのように放線菌の一種の培養液から抽出及び精製してもよいし、有機合成化学分野における通常の方法に従って製造してもよいし、また、市販されているものを入手してもよい。FOP患者由来の細胞における軟骨分化を抑制する物質としては、好ましくは、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス及びリダフォロリムスが挙げられ、特に好ましくは、ラパマイシン又はエベロリムスが挙げられる。ラパマイシン及びその類縁体は、薬学的に許容される塩であってもよい。
ラパマイシン又はその類縁体の薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸等の有機酸との塩;臭化メチル、ヨウ化メチル等との四級アンモニウム塩;臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオンとの塩等が挙げられる。
ラパマイシン若しくはその類縁体又は薬学的に許容されるこれらの塩は、水和物又は溶媒和物の形態をとっていてもよい。このような溶媒としては、例えば、水、エタノール等が挙げられる。
ラパマイシン若しくはその類縁体又は薬学的に許容されるこれらの塩に幾何異性体又は光学異性体が存在する場合は、上記異性体又はそれらの塩も本発明の範囲に含まれる。また、ラパマイシン若しくはその類縁体又は薬学的に許容されるこれらの塩にプロトン互変異性が存在する場合には、上記互変異性体又はそれらの塩も本発明の範囲に含まれる。
FOP予防剤/治療剤は、経口的又は非経口的(例えば、静脈内、若しくは皮下注射、局所的、経直腸的、経皮的、脊髄内的又は経鼻的)に投与することができる。経口投与のための剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤等が挙げられる。非経口投与のための剤型としては、例えば、注射用水性剤、注射用油性剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、エアロゾル剤、坐剤、貼付剤等が挙げられる。これらの製剤は、従来公知の技術を用いて調製され、医薬分野において通常使用される無毒性かつ不活性な担体又は添加剤を含有することができる。
医薬用担体としては、医薬分野において常用され、かつ有効成分と反応しない物質が用いられ、例えば、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤等の医薬の製剤技術分野において通常用いられる補助剤が用いられる。錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤の製造に用いられる医薬用担体の具体例としては、乳糖、トウモロコシデンプン、白糖、マンニトール、硫酸カルシウム、及び結晶セルロース等の賦形剤、カルメロースナトリウム、変性デンプン、及びカルメロースカルシウム等の崩壊剤、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポリビニルピロリドン等の結合剤、並びに、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、及び硬化油等の滑沢剤が挙げられる。錠剤は、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、ヒドロキシプロピルメチルフタレート、セルロースアセテートフタレート、白糖、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、及びリン酸カルシウム等のコーティング剤を用い、周知の方法でコーティングしてもよい。
坐剤の基剤の具体例としては、カカオ脂、飽和脂肪酸グリセリンエステル、グリセロゼラチン、マクロゴールが挙げられる。坐剤製造にあたっては、必要に応じて界面活性剤、保存剤等を添加することができる。
液剤は、通常、有効成分を注射用蒸留水に溶解して調製してもよいが、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤等を添加することができる。
本実施形態において、「有効量」とは、組織、系、動物又はヒトにおいて、研究者又は医師によって要求される生物学的又は医薬的応答を誘発する薬物又は医薬の量を意味する。
FOP予防剤/治療剤中における有効成分の含有量はその剤形に応じて異なるが、通常、FOP予防剤/治療剤中0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。FOP予防剤/治療剤が液剤である場合、有効成分のモル濃度は、0.1〜100mMであることが好ましく、0.5〜50mMであることがより好ましい。
本実施形態において、予防剤又は治療剤とは、特定の量で特定の成分を含む医薬製品、及び特定の量で特定の成分の組み合わせから直接的又は間接的に生じるあらゆる医薬製品を包含することを意図している。
さらに本発明の目的を損なわない範囲で、FOP予防剤/治療剤は、他の併用可能な薬剤と組み合わせて投与してもよい。FOP予防剤/治療剤及び他の併用可能な薬剤は別々に投与してもよく、1つの医薬組成物として一緒に投与してもよい。FOP予防剤/治療剤を、他の併用可能な薬剤に対して先に、同時に、又は後に投与してもよい。FOP予防剤/治療剤と併用可能な他の薬剤として、例えば、ACVR1のキナーゼ活性阻害剤、アクチビンとACVR1との相互作用を阻害する結合阻害物質、アクチビンの発現を抑制する発現抑制物質、ステロイド、非ステロイド性消炎鎮痛剤、ビスフォスフォネート剤、レチノイン酸受容体γアゴニスト等が挙げられる。上記結合阻害物質としては、例えば、アクチビン受容体、その改変体、及びそれらの部分配列を含むポリペプチド断片;フォリスタチン、フォリスタチン様タンパク質、それらの改変体、及びそれらの部分配列を含むポリペプチド断片;アクチビンに対する抗体及びその抗体断片;インヒビン及びその改変体が挙げられる。上記発現抑制物質としては、例えば、アクチビンの遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA及びリボザイム等のアクチビンの遺伝子発現を抑制する核酸が挙げられる。
対象となる哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、サル、ヒト等が挙げられる。本実施形態に係るFOP予防剤/治療剤は、ヒトに対して好適に用いられる。
FOP予防剤/治療剤は、投与の目的、投与方法、投与対象の状況(性別、年齢、体重、病状等)によって異なるが、ヒトに対して投与される場合、単位投与形態は、例えば、0.01mgから1000mg、好ましくは0.1mgから100mgの有効成分が、投与されるように用いられる。また一実施形態として、ヒトに対して投与される場合、0.01mgから1000mg、好ましくは0.1mgから100mg、より好ましくは1mgから10mgの有効成分が、1日1回、毎日投与されるように用いられる。
FOP予防剤/治療剤は、ACVR1にアミノ酸変異(変異型ACVR1)を有する患者に好適に用いられる。「変異型ACVR1」とは、配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1〜2個が欠失又は置換されたアミノ酸配列を含み、アクチビンと結合することによって下流にシグナルを伝達する、受容体タンパク質を意味する。
上記アミノ酸変異としては、例えば、以下の表1に示すものが挙げられる。ここで、アミノ酸残基の番号(アミノ酸残基番号)は、配列番号2に記載のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基の番号を意味する。
列挙された上記アミノ酸変異は、例えば、Kaplan et al. Human Mutation,Vol.30,No.3,379−390,2009に記載されているACVR1の一次配列と機能ドメインとの相関図によれば、GSドメイン又はキナーゼドメインに位置すると把握できる。「GSドメイン」とは、アミノ酸配列中、グリシンとセリンに富んだ領域を意味する。「キナーゼドメイン」とは、アミノ酸配列中、キナーゼ活性を発現するために必要な領域を意味する。
したがって、上記アミノ酸変異は、ACVR1のGSドメイン又はキナーゼドメインにおけるアミノ酸変異を含むことが好ましい。上記GSドメイン又はキナーゼドメインにおけるアミノ酸変異は、配列番号2に記載のアミノ酸配列における第196番目のアミノ酸残基がプロリンであるアミノ酸変異、第197番目のアミノ酸残基がロイシンであり第198番目のアミノ酸が欠失したアミノ酸変異、第202番目のアミノ酸残基がイソロイシンであるアミノ酸変異、第206番目のアミノ酸残基がヒスチジンであるアミノ酸変異、第207番目のアミノ酸残基がグルタミン酸であるアミノ酸変異、第258番目のアミノ酸残基がグリシン又はセリンであるアミノ酸変異、第325番目のアミノ酸残基がアラニンであるアミノ酸変異、第328番目のアミノ酸残基がグルタミン酸、アルギニン又はトリプトファンであるアミノ酸変異、第356番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸であるアミノ酸変異、及び第375番目のアミノ酸残基がプロリンであるアミノ酸変異からなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸変異を含むことが好ましく、上記GSドメインにおけるアミノ酸変異は、配列番号2に記載のアミノ酸配列における第206番目のアミノ酸残基がヒスチジンであるアミノ酸変異を含むことがより好ましい。すなわち、FOP予防剤/治療剤は、GSドメイン又はキナーゼドメインにおけるアミノ酸変異を含むACVR1を有する患者に好適に用いられ、具体的には、表1に記載されたアミノ酸変異を含むACVR1を有する患者が挙げられる。なかでも、配列番号2に記載のアミノ酸配列における第206番目のアミノ酸残基がヒスチジンであるACVR1を有する患者により好適に用いられる。
一実施形態において、本発明は、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、TAFA93、ウミロリムス、オルコロリムス、ゾタロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の有効量を、哺乳動物に投与することを含む、進行性骨化性線維異形成症の予防又は治療方法と捉えることもできる。一実施形態において、本発明は、進行性骨化性線維異形成症の予防又は治療を行うために使用される、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、TAFA93、ウミロリムス、オルコロリムス、ゾタロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と捉えることもできる。一実施形態において、本発明は、進行性骨化性線維異形成症の予防剤又は治療剤の製造における、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、TAFA93、ウミロリムス、オルコロリムス、ゾタロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の使用と捉えることもできる。これらの各実施形態における好適な態様は上述したとおりである。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
実施例1:軟骨細胞への分化誘導に及ぼす影響
(方法)
山中らの方法(Cell,2007,131(5),8611−8672.)に従って、FOP患者由来のiPS細胞(以下、「患者由来iPS細胞株」という場合がある。)を樹立した。この患者の細胞は、ACVR1遺伝子にFOPの原因となる典型的な変異を有することを確認した。この変異は、ACVR1のアミノ酸配列(配列番号2に記載のアミノ酸配列)における第206番目のアルギニン残基をヒスチジン残基へ置換する変異である。また、コントロールとして使用する目的で、BAC(Bacterial Artificial Chromosome、大腸菌人工染色体)ノックインベクターによる遺伝子修復によって、上記ACVR1遺伝子の変異を正常型(野生型)に修復したiPS細胞株(以下、「変異修復iPS細胞株」(gene−corrected (rescued) iPS cell clone)という場合がある。)を樹立した。
患者由来iPS細胞株をマトリゲルコートプレート(ベクトンアンドディッキンソン社製、商品名Growth Factor Reduced(GFR) BD Matrigel(登録商標))Matrix上で、mTeSR1(ステムセルテクノロジーズ社製)を用いて2日間フィーダーフリーの条件下で培養した。その後、10μM SB−431542(セレックケミカルズ社製)及び1μM CHIR99021(和光純薬工業株式会社製)を添加した無血清培地(F12 Nutrient Mixture(ギブコ社製)/Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)(シグマアルドリッチ社製)/0.5% ウシ血清アルブミン(BSA)(シグマアルドリッチ社製)/1% Chemically Defined Lipid(CD−Lipid)(ギブコ社製、商品名Chemically Defined Lipid Concentrate)/15μg/mL アポトランスフェリン(シグマアルドリッチ社製、商品名apo−Transferrin human)/7μg/mL インシュリン(和光純薬工業株式会社製、商品名Insulin,Human,recombinant)/0.45mM 1−Thioglycerol(シグマアルドリッチ社製))を用いて、更に1週間フィーダーフリーの条件下で培養し、神経堤細胞へと分化誘導した。続いて、抗CD271−APC抗体(ベクトンアンドディッキンソン社製、商品名Alexa Fluor(登録商標) 647 Mouse anti−Human CD271)で細胞を標識し、BD FACSAriaII(ベクトンアンドディッキンソン社製)を用いてCD271陽性細胞をソーティングした。その後、alpha Modified Eagle Minimum Essential Medium(αMEM)(ナカライテスク株式会社製)/10% ウシ胎仔血清(FBS)(株式会社ニチレイバイオサイエンス製)/5ng/mL FGF−2(和光純薬工業株式会社製)で、ソーティングした細胞を数回継代することによって、間葉系幹細胞様の細胞へと分化誘導し、以下の実験に供した。
これらの間葉系幹細胞様の細胞をUmedaらの方法(Sci.Rep.,2012,2,455.)の軟骨誘導培地条件下で6日間培養し、軟骨細胞へと分化誘導した。分化誘導の際、100ng/mLのヒトアクチビン−A(アールアンドディーシステムズ社製、商品名Recombinant Human/Mouse/Rat Activin A)及び1%FBSを共存させた。また、軟骨分化に対する阻害作用を評価する化合物(濃度0.01〜100nM)は、ヒトアクチビン−A(以下、「アクチビン−A」という場合がある。)と同時に添加した。上記化合物としては、ラパマイシン(Santa Cruz Biotechnology社製)、テムシロリムス(シグマアルドリッチ社製)、エベロリムス(シグマアルドリッチ社製)、及びリダフォロリムス(SELLECK Kinase社製)を用いた。軟骨細胞への分化誘導の程度は、硫酸化グリコサミノグリカンの定量キット(バイオカラー社製、商品名Blyscan Glycosaminoglycan Assay Kit)によって測定した。結果を図1に示す。図1において、棒グラフは各処理群の平均値±標準偏差(SD)を示す(n=3、ただし、リダフォロリムスの実験はn=2)。
(結果)
FOP患者由来の細胞をアクチビン−Aで処理すると、軟骨分化が促進された。このとき、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムスはいずれも軟骨分化を抑制することが明らかになった(ラパマイシン0.1、1、10、100nM、エベロリムス及びテムシロリムス1、10、100nM、P<0.0001、ヒトアクチビン−Aのみで処理した場合に対するDunnett型多重比較)。
実施例2:In vivoでのラパマイシンの異所性骨化抑制作用評価
(方法)
実施例1と同様の方法によって、患者由来iPS細胞株及び変異修復iPS細胞株から間葉系幹細胞様の細胞をそれぞれ分化誘導した。これらの細胞とヒトアクチビン−Aを発現するC3H10T1/2細胞とをそれぞれ混合し、免疫不全マウス(NOD/SCIDマウス)に移植した。具体的には、免疫不全マウスの右足側腓腹筋に患者由来iPS細胞株から分化した間葉系幹細胞様の細胞とC3H10T1/2細胞とを混合したものを移植し、免疫不全マウスの左足側腓腹筋に変異修復iPS細胞株から分化した間葉系幹細胞様の細胞とC3H10T1/2細胞とを混合したものを移植した。移植後、週に5回、ラパマイシンを経口(3、10又は30mg/kg)又は腹腔内(5mg/kg)投与した。移植から6週間後に、マイクロCT(商品名inspeXio SMX−100CT、株式会社島津製作所製)を用いて異所性骨の形成を観察し、TRI/3D−BON(ラトックシステムエンジニアリング社製)により異所性骨量(cm)を算出した。右足側腓腹筋内に形成された異所性骨量の算出結果を図2に示す。図2において、棒グラフは各投与群の平均値±標準偏差(SD)を示す(n=4〜5)。
(結果)
ラパマイシン非投与群では全てのマウスにおいて、患者由来iPS細胞株から分化した間葉系幹細胞様の細胞とヒトアクチビン−Aを発現するC3H10T1/2細胞を移植した部位(右足側腓腹筋)に異所性骨化が認められた。一方、ラパマイシン投与群では、右足側腓腹筋における異所性骨化が有意に抑制された(腹腔内投与のラパマイシン5mg/kg投与群、P<0.01、ラパマイシン非投与群に対するスチューデントt検定。経口投与の3、10及び30mg/kg投与群、P<0.0001、ラパマイシン非投与群に対するDunnett型多重比較)。なお、いずれの投与群においても、変異修復iPS細胞株から分化した間葉系細胞様の細胞とヒトアクチビン−Aを発現するC3H10T1/2細胞を移植した部位(左足側腓腹筋)に異所性骨化は認められなかった。
FOPは臨床において効果が確認された治療法が存在しない疾患である。本発明は、FOPに対して、その主症状であるフレアアップ並びに/又は異常な軟骨若しくは骨の形成及び成長を抑制する、効果的な予防剤及び/又は治療剤を提供するものである。

Claims (7)

  1. ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、TAFA93、ウミロリムス、オルコロリムス、ゾタロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する進行性骨化性線維異形成症の予防剤又は治療剤。
  2. 前記有効成分として、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、及び薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1に記載の予防剤又は治療剤。
  3. 前記有効成分が、ラパマイシン又は薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の予防剤又は治療剤。
  4. 前記有効成分が、エベロリムス又は薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の予防剤又は治療剤。
  5. アクチビンA受容体タイプI(ACVR1)にアミノ酸変異を有する患者用である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の予防剤又は治療剤。
  6. フレアアップ又は異所性骨化の発症を回避又は抑制する薬剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の予防剤又は治療剤。
  7. フレアアップ又は異所性骨化の症状の治癒、症状の改善、症状の軽減、又は症状の進行を抑制する薬剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の予防剤又は治療剤。
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