以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るフィラー複合体は、ナノチューブではないフィラーと、上記フィラーの表面上に付着している複数の窒化ホウ素ナノチューブ(Boron Nitride NanotubeもしくはBNNTと記載することがある)とを含む。
本発明では、上記の構成が備えられているので、高い放熱性と高い絶縁破壊特性とを両立することができる。フィラーの表面上における付着物が、窒化ホウ素ナノチューブであるので、放熱性をかなり高めることができる。フィラーの表面上における付着物が、窒化ホウ素ナノチューブであるので、付着物が、カーボンナノチューブ等である場合と比べて、絶縁性が高くなる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るフィラー複合体を模式的に示す断面図である。
図1に示すフィラー複合体1は、フィラー11と、フィラー11の表面上に付着している複数の窒化ホウ素ナノチューブ12とを含む。フィラー11は、ナノチューブではない。フィラー複合体1では、窒化ホウ素ナノチューブ12が、窒化ホウ素ナノチューブ12の長さ方向の一端側において、フィラー11の表面上に付着している。
図2は、本発明の第2の実施形態に係るフィラー複合体を模式的に示す断面図である。
図2に示すフィラー複合体1Aは、フィラー11Aと、フィラー11の表面上に付着している複数の窒化ホウ素ナノチューブ12Aとを含む。フィラー11Aは、ナノチューブではない。フィラー複合体1Aでは、窒化ホウ素ナノチューブ12が、窒化ホウ素ナノチューブ12Aの径方向の外側の表面において、フィラー11Aの表面上に付着している。
本発明に係る熱硬化性材料は、(A)熱硬化性化合物と、(B)熱硬化剤と、(C)フィラー複合体とを含む。(C)フィラー複合体は、ナノチューブではないフィラー(単に、フィラーと記載することがある)と、上記フィラーの表面上に付着している複数の窒化ホウ素ナノチューブとを含む。
本発明に係る熱硬化性材料では、上記の組成が採用されているので、複合フィラーの異方放熱性が抑えられ、また硬化物中のフィラー複合体が十分に最密充填されハニカム構造を有することにより、放熱性及び絶縁性をかなり高めることができる。さらに、例えば、(A)熱硬化性化合物と、(B)熱硬化剤と、(C)フィラー複合体とを併用することで、これらを併用していない場合と比べて、放熱性が効果的に高くなる。
さらに、本発明に係る熱硬化性材料では、上記の組成が採用されているので、圧縮性、及び加工性も高めることができる。
((C)フィラー複合体)
(C)フィラー複合体において、上記窒化ホウ素ナノチューブが、上記窒化ホウ素ナノチューブの径方向の外側の表面において、上記フィラーの表面上に付着しているか、又は、上記窒化ホウ素ナノチューブの長さ方向の一端側において、上記フィラーの表面上に付着していることが好ましい。上記窒化ホウ素ナノチューブが、上記窒化ホウ素ナノチューブの径方向の外側の表面において、上記フィラーの表面上に付着していることが好ましく、上記窒化ホウ素ナノチューブの長さ方向の一端側において、上記フィラーの表面上に付着していることも好ましい。上記窒化ホウ素ナノチューブは、上記フィラーの表面の一部に付着していてもよく、表面の全体に付着していてもよい。窒化ホウ素ナノチューブは1本で付着しても複数本束になって付着していてもよい。フィラーの表面上に窒化ホウ素ナノチューブが存在しているので、フィラーの異方放熱性に依存することなく、等方的に放熱特性を示すことができる。
上記窒化ホウ素ナノチューブの長さ方向の他端は、上記フィラーの表面から外側に向かって延びていることが好ましい。この場合には、接した複数のフィラー複合体において、上記窒化ホウ素ナノチューブ部分が互いに入り込み、密な熱伝導パスを形成するので、硬化物の放熱性が高くなる。
(C)フィラー複合体において、上記窒化ホウ素ナノチューブが、上記窒化ホウ素ナノチューブ全体で、上記フィラーの表面から外側に向かって放射線状に、上記フィラーの表面上に付着していることが好ましい。この場合には、接した複数のフィラー複合体において、上記窒化ホウ素ナノチューブ部分が互いに入り込んで密な熱伝導パスを形成するので、硬化物の放熱性が高くなる。
放熱性を効果的に高める観点からは、(C)フィラー複合体の表面積100%中、上記窒化ホウ素ナノチューブにより覆われている表面積部分は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、好ましくは100%以下、より好ましくは95%以下である。
上記窒化ホウ素ナノチューブにより覆われている表面積部分の割合(被覆率)や被覆厚み(被覆部の厚み)を変える方法は特に限定されないが、例えば、アルコールや水等で分散した窒化ホウ素ナノチューブとフィラーとの表面電荷の差を利用した湿式表面処理を用いる方法、窒化ホウ素ナノチューブホウ素スラリーを用いたスプレードライ法で、表面処理濃度や表面処理回数で制御する方法、窒化ホウ素ナノチューブの直径や長さを変える方法、並びに窒化ホウ素ナノチューブを化学気相成長(CVD)法でフィラーの表面に直接合成する際、フィラーの表面に被覆する酸化鉄のような金属触媒の密度や、処理時間を制御する方法等が挙げられる。
上記窒化ホウ素ナノチューブにより覆われている表面積部分の割合(被覆率)は、例えば、エネルギー分散型X線分析付き走査型電子顕微鏡SEM−EDSで、評価することができる。フィラー複合体全体が観察できる倍率で、フィラー複合体の表面の元素分析を行い、窒化ホウ素ナノチューブが付着している部分を同定し、フィラーとナノチューブとの全体の面積比から付着の割合を計算できる。付着の割合は電子顕微鏡の画像中の任意の50個の算術平均により求めることが好ましい。
放熱性を効果的に高める観点からは、フィラーの表面上において、フィラーの径方向における窒化ホウ素ナノチューブの平均厚み(被覆部の平均厚み)は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、100nmであってもよく、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、100μmであってもよく、30μm以下であってもよい。上記被覆部の厚みは、電子顕微鏡の画像中の粒子の断面観察等で評価することができる。複合フィラーの断面観察を行い、被覆部の厚みを計測することができる。
フィラー複合体が複数の場合に、例えば、50個のフィラー複合体における被覆部の厚みを算術平均することができる。
(C)フィラー複合体の粒子径は、好ましくは1μm以上、好ましくは300μm以下である。粒子径が上記下限以上であると、(C)フィラー複合体を高密度で容易に充填できる。平均粒子径が上記上限以下であると、硬化物の耐電圧性がより一層高くなる。
(C)フィラー複合体の粒子径は、任意の50の方向の直径の算術平均を意味する。フィラー複合体の粒子径は電子顕微鏡観察などにより測定することができる。フィラー複合体が複数の場合に、例えば、50個のフィラー複合体における粒子径を算術平均することができる。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤を除く成分100体積%中、(C)フィラー複合体の含有量は好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。(C)フィラー複合体の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の放熱性が効果的に高くなる。
窒化ホウ素ナノチューブ:
上記窒化ホウ素ナノチューブは、ナノチューブである。上記窒化ホウ素ナノチューブの材質は、窒化ホウ素である。上記窒化ホウ素ナノチューブの形状は、チューブ状である。理想的な形状としては、6角網目の面がチューブ軸に平行に管を形成し、単管又は多重管になっている形状である。
上記窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は好ましくは2nm以上、より好ましくは6nm以上、更に好ましくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。
平均直径とは、単管の場合には平均外径を示し、多重管の場合には最も外側に位置する管の平均外径を意味する。
上記窒化ホウ素ナノチューブの平均長さは、好ましくは1μm以上、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。
窒化ホウ素ナノチューブの直径や長さは、合成手法、合成時の温度や時間等を変更することで適宜変えることができる。例えばアーク放電法では小直径、化学気相成長法では大直径のナノチューブが得られる。
上記窒化ホウ素ナノチューブのアスペクト比は好ましくは2以上である。上記窒化ホウ素ナノチューブのアスペクト比の上限は特に限定されない。上記窒化ホウ素ナノチューブのアスペクト比は100000以下であってもよい。
放熱性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素ナノチューブの平均長さの、上記フィラーの平均粒子径に対する比は、好ましくは0.003以上、より好ましくは0.03以上、好ましくは200以下、より好ましくは100以下である。
上記平均直径、上記平均長さ及び上記アスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることができる。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)による測定を行い、得られた画像から直接、上記窒化ホウ素ナノチューブの直径、長さを測定することが可能である。また熱硬化性材料中の上記窒化ホウ素ナノチューブの形態は、例えば軸と平行に切断した繊維断面のTEM(透過型電子顕微鏡)測定により把握することができる。上記平均直径、上記平均長さ及び上記アスペクト比は、電子顕微鏡の画像中の任意の50個の算術平均により求めることが好ましい。
上記窒化ホウ素ナノチューブは、アーク放電法、レーザー加熱法及び化学気相成長法等を用いて合成できる。また、ホウ化ニッケルを触媒として使用し、ボラジンを原料として合成する方法も知られている。また、カーボンナノチューブを鋳型として利用して、酸化ホウ素と窒素を反応させて合成する方法も知られている。上記窒化ホウ素ナノチューブは、これらの合成方法により得られるものに限定されない。上記窒化ホウ素ナノチューブは、強酸処理又は化学修飾された窒化ホウ素ナノチューブであってもよい。
上記窒化ホウ素ナノチューブの表面の電荷を制御することにより、上記フィラーの表面上に、上記窒化ホウ素ナノチューブを効率よく集積させることができ、上記フィラーに上記窒化ホウ素ナノチューブを付着させることができる。このような効果を得るために、上記窒化ホウ素ナノチューブは、カップリング剤による表面処理物であるか、表面にアミノ基を有することが好ましい。また、樹脂成分と窒化ホウ素ナノチューブとの界面における熱抵抗を低減させるために、窒化ホウ素ナノチューブは、表面に共役系ポリマーを有することも好ましい。
上記共役系ポリマーは、二重結合と単結合とが交互に連なっている分子である。上記窒化ホウ素ナノチューブは、窒化ホウ素ナノチューブ本体と、上記窒化ホウ素ナノチューブ本体の表面上に配置された共役高分子とを有することが好ましい。上記共役系ポリマーと窒化ホウ素ナノチューブ本体との相互作用は強い。また、後述する(A)熱硬化性化合物がフェノキシ樹脂を含む場合に、上記共役系ポリマーとフェノキシ樹脂との相互作用を強くすることができる。
上記共役系ポリマーとしては、例えば、ポリフェニレンビニレンポリマー、ポリチオフェンポリマー、ポリフェニレンポリマー、ポリピロールポリマー、ポリアニリンポリマー、及びポリアセチレンポリマー等が挙げられる。ポリフェニレンビニレンポリマー、又はポリチオフェンポリマーが好ましい。
窒化ホウ素ナノチューブ本体を上記共役系ポリマーで被覆する方法として、特に限定はされないが、1)窒化ホウ素ナノチューブ本体を、溶融している共役系ポリマーに添加して、無溶媒で混合する方法、並びに、2)窒化ホウ素ナノチューブ本体と共役系ポリマーとを、共役系ポリマーを溶解する溶媒中で分散混合する方法等が挙げられる。上記2)の方法においては、窒化ホウ素ナノチューブ本体を分散させる方法としては、超音波による分散方法、及び各種の攪拌方法等が挙げられる。上記攪拌方法としては、ホモジナイザーによる攪拌方法、アトライターによる攪拌方法、及びボールミルによる攪拌方法等が挙げられる。
上記フィラーの表面上に上記窒化ホウ素ナノチューブを被覆、付着させる方法としては、特に限定されないが、フィラーと窒化ホウ素ナノチューブの静電気引力を利用する方法、それぞれの表面に官能基を導入して化学結合や配位させる方法、スプレードライ法、及びフィラー表面上に触媒を担持させ直接合成させる化学気相成長法等が挙げられる。上記触媒としては、酸化ニッケル、酸化マグネシウム及び酸化鉄等が挙げられる。
ナノチューブではないフィラー:
上記フィラーは、有機フィラーであってもよく、無機フィラーであってもよい。放熱性を効果的に高める観点からは、上記フィラーは、無機フィラーであることが好ましい。放熱性を効果的に高める観点から、上記フィラーは、10W/m・K以上の熱伝導率を有することが好ましい。上記フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フィラーは、絶縁性フィラーであることが好ましい。絶縁性とは、フィラーの体積抵抗率が106Ω・cm以上であることを意味する。
硬化物の熱伝導性をより一層高める観点からは、上記フィラーの熱伝導率は好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは15W/m・K以上、更に好ましくは20W/m・K以上である。上記フィラーの熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率が300W/m・K程度である無機フィラーは広く知られており、また熱伝導率が200W/m・K程度である無機フィラーは容易に入手できる。
上記フィラーの材質は、有機化合物、アルミナ、合成マグネサイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムであることが好ましく、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムであることがより好ましい。これらの好ましいフィラーの使用により、硬化物の放熱性がより一層高くなる。
また、フィラーの形状は特に限定されないが、硬化物中で最密充填されハニカム構造を形成する観点やフィラー分散持における樹脂流動性の観点から、球状が好ましく、有機フィラーやシリカは、球形度が高いので好ましい。フィラーの球形度を表す指標としては円形度があり、円形度は好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.8以上である。
上記有機フィラーの材質は特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ジビニルベンゼン重合体;ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のジビニルベンゼン系重合体;(メタ)アクリル酸エステル重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、架橋重合体であっても非架橋重合体であってもよく、部分的に架橋された重合体であってもよい。上記有機フィラーの材質は、ジビニルベンゼン重合体、(メタ)アクリル酸エステル重合体であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルを意味する。
放熱性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、上記フィラーの粒子径は、好ましくは1μm以上、好ましくは300μm以下である。粒子径が上記下限以上であると、上記フィラー複合体を高密度で容易に充填できる。粒子径が上記上限以下であると、硬化物の耐電圧性がより一層高くなる。
フィラーの粒子径は、任意の50の方向の直径の算術平均を意味する。フィラーの粒子径は電子顕微鏡観察などにより測定することができる。フィラーが複数の場合に、例えば、50個のフィラーにおける粒子径を算術平均することができる。
((A)熱硬化性化合物)
(A)熱硬化性化合物としては、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。(A)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(A)熱硬化性化合物として、(A1)10000未満の分子量を有する熱硬化性化合物(単に、(A1)熱硬化性化合物と記載することがある)を用いてもよく、(A2)10000以上の分子量を有する熱硬化性化合物(単に、(A2)熱硬化性化合物と記載することがある)を用いてもよく、(A1)熱硬化性化合物と、(A2)熱硬化性化合物との双方を用いてもよい。(A)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、及び上記フィラー複合体を除く成分100重量%中、(A)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。(A)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、硬化物の接着性及び耐熱性がより一層高くなる。(A)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、熱硬化性材料の作製時の塗工性が高くなる。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、及び上記フィラー複合体を除く成分は、熱硬化性材料が溶剤を含まない場合には、上記フィラー複合体を除く成分であり、熱硬化性材料が溶剤を含む場合には、溶剤、及び上記フィラー複合体を除く成分である。
(A1)10000未満の分子量を有する熱硬化性化合物:
(A1)熱硬化性化合物としては、環状エーテル基を有する熱硬化性化合物が挙げられる。上記環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。上記環状エーテル基を有する熱硬化性化合物は、エポキシ基又はオキセタニル基を有する熱硬化性化合物であることが好ましい。(A1)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(A1)熱硬化性化合物は、(A1a)エポキシ基を有する熱硬化性化合物(単に、(A1a)熱硬化性化合物と記載することがある)を含んでいてもよく、(A1b)オキセタニル基を有する熱硬化性化合物(単に、(A1b)熱硬化性化合物と記載することがある)を含んでいてもよい。
硬化物の耐熱性及び耐湿性をより一層高める観点からは、(A1)熱硬化性化合物は芳香族骨格を有することが好ましい。
上記芳香族骨格としては特に限定されず、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性をより一層高める観点からは、ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。
(A1a)熱硬化性化合物としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、アダマンタン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー、キサンテン骨格を有するエポキシモノマー、アントラセン骨格を有するエポキシモノマー、及びピレン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。これらの水素添加物又は変性物を用いてもよい。(A1a)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマーとしては、ジシクロペンタジエンジオキシド、及びジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマー等が挙げられる。
上記ナフタレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、及び1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
上記アダマンタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、及び2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
上記フルオレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
上記ビフェニル骨格を有するエポキシモノマーとしては、4,4’−ジグリシジルビフェニル、及び4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
上記バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、及び1,2’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等が挙げられる。
上記キサンテン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−2,7−ビス−オキシラニルメトキシ−9−フェニル−9H−キサンテン等が挙げられる。
(A1b)熱硬化性化合物の具体例としては、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、及びオキセタン変性フェノールノボラック等が挙げられる。(A1b)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化物の耐熱性をより一層良好にする観点からは、(A1)熱硬化性化合物は、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
硬化物の耐熱性をより一層良好にする観点からは、(A1)熱硬化性化合物100重量%中、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、100重量%以下である。(A1)熱硬化性化合物100重量%中、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物の含有量は10重量%以上、100重量%以下であってもよい。また、(A1)熱硬化性化合物の全体が、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物であってもよい。
(A1)熱硬化性化合物の分子量は、10000未満である。(A1)熱硬化性化合物の分子量は、好ましくは200以上、好ましくは1200以下、より好ましくは600以下、更に好ましくは550以下である。(A1)熱硬化性化合物の分子量が上記下限以上であると、硬化物の表面の粘着性が低くなり、硬化性組成物の取扱性がより一層高くなる。(A1)熱硬化性化合物の分子量が上記上限以下であると、硬化物の接着性がより一層高くなる。さらに、硬化物が固くかつ脆くなり難く、硬化物の接着性がより一層高くなる。
なお、本明細書において、(A1)熱硬化性化合物における分子量とは、(A1)熱硬化性化合物が重合体ではない場合、及び(A1)熱硬化性化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味し、(A1)熱硬化性化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、及び上記フィラー複合体を除く成分100重量%中、(A1)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。(A1)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、硬化物の接着性及び耐熱性がより一層高くなる。(A1)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、熱硬化性材料の作製時の塗工性が高くなる。
(A2)10000以上の分子量を有する熱硬化性化合物:
(A2)熱硬化性化合物は、分子量が10000以上である熱硬化性化合物である。(A2)熱硬化性化合物の分子量は10000以上であるので、(A2)熱硬化性化合物は一般にポリマーであり、上記分子量は、一般に重量平均分子量を意味する。
硬化物の耐熱性及び耐湿性をより一層高める観点からは、(A2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格を有することが好ましい。(A2)熱硬化性化合物がポリマーであり、(A2)熱硬化性化合物が芳香族骨格を有する場合には、(A2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格をポリマー全体のいずれかの部分に有していればよく、主鎖骨格内に有していてもよく、側鎖中に有していてもよい。硬化物の耐熱性をより一層高くし、かつ硬化物の耐湿性をより一層高くする観点からは、(A2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。(A2)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記芳香族骨格としては特に限定されず、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。この場合には、硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性がより一層高くなる。
(A2)熱硬化性化合物としては特に限定されず、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
硬化物の酸化劣化を抑え、硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性をより一層高め、更に硬化物の吸水率をより一層低くする観点からは、(A2)熱硬化性化合物は、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂であることが好ましく、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂であることがより好ましく、フェノキシ樹脂であることが更に好ましい。特に、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。また、フェノキシ樹脂の使用により、硬化物の弾性率がより一層低くなり、かつ硬化物の耐冷熱サイクル特性がより一層高くなる。なお、(A2)熱硬化性化合物は、エポキシ基などの環状エーテル基を有していなくてもよい。
上記スチレン樹脂として、具体的には、スチレン系モノマーの単独重合体、及びスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等が使用可能である。スチレン−メタクリル酸グリシジルの構造を有するスチレン重合体が好ましい。
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及び3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格又はジシクロペンタジエン骨格を有することが好ましい。上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格又はビフェニル骨格を有することがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも1種の骨格を有することが更に好ましい。これらの好ましい骨格を有するフェノキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性が更に一層高くなる。
上記エポキシ樹脂は、上記フェノキシ樹脂以外のエポキシ樹脂である。上記エポキシ樹脂としては、スチレン骨格含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
(A2)熱硬化性化合物の分子量は10000以上である。(A2)熱硬化性化合物の分子量は、好ましくは30000以上、より好ましくは40000以上、好ましくは1000000以下、より好ましくは250000以下である。(A2)熱硬化性化合物の分子量が上記下限以上であると、硬化物が熱劣化し難い。(A2)熱硬化性化合物の分子量が上記上限以下であると、(A2)熱硬化性化合物と他の成分との相溶性が高くなる。この結果、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、及び上記フィラー複合体を除く成分100重量%中、(A2)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。(A2)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、熱硬化性材料の取扱性が良好になる。(A2)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、上記フィラー複合体の分散が容易になる。
((B)熱硬化剤)
(B)熱硬化剤は特に限定されない。(B)熱硬化剤として、(A)熱硬化性化合物を硬化させることができる適宜の熱硬化剤を用いることができる。また、本明細書において、(B)熱硬化剤には、硬化触媒が含まれる。(B)熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、(B)熱硬化剤は、芳香族骨格又は脂環式骨格を有することが好ましい。(B)熱硬化剤は、アミン硬化剤(アミン化合物)、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤(フェノール化合物)又は酸無水物硬化剤(酸無水物)を含むことが好ましく、アミン硬化剤を含むことがより好ましい。上記酸無水物硬化剤は、芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むか、又は、脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むことが好ましい。
上記アミン硬化剤としては、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。硬化物の接着性をより一層高める観点からは、上記アミン硬化剤は、ジシアンジアミド又はイミダゾール化合物であることがより一層好ましい。硬化性組成物の貯蔵安定性をより一層高める観点からは、(B)熱硬化剤は、融点が180℃以上である硬化剤を含むことが好ましく、融点が180℃以上であるアミン硬化剤を含むことがより好ましい。
上記イミダゾール硬化剤としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記フェノール硬化剤としては、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。硬化物の柔軟性及び硬化物の難燃性をより一層高める観点からは、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
上記フェノール硬化剤の市販品としては、MEH−8005、MEH−8010及びMEH−8015(以上いずれも明和化成社製)、YLH903(三菱化学社製)、LA−7052、LA−7054、LA−7751、LA−1356及びLA−3018−50P(以上いずれもDIC社製)、並びにPS6313及びPS6492(以上いずれも群栄化学社製)等が挙げられる。
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、例えば、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、SMAレジンEF30、SMAレジンEF40、SMAレジンEF60及びSMAレジンEF80(以上いずれもサートマー・ジャパン社製)、ODPA−M及びPEPA(以上いずれもマナック社製)、リカシッドMTA−10、リカシッドMTA−15、リカシッドTMTA、リカシッドTMEG−100、リカシッドTMEG−200、リカシッドTMEG−300、リカシッドTMEG−500、リカシッドTMEG−S、リカシッドTH、リカシッドHT−1A、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMT−500、リカシッドDSDA及びリカシッドTDA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにEPICLON B4400、EPICLON B650、及びEPICLON B570(以上いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物は、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物であることが好ましい。これらの硬化剤の使用により、硬化物の柔軟性、並びに硬化物の耐湿性及び接着性がより一層高くなる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、メチルナジック酸無水物、ジシクロペンタジエン骨格を有する酸無水物又は該酸無水物の変性物等も挙げられる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、リカシッドHNA及びリカシッドHNA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにエピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H及びエピキュアYH309(以上いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
(B)熱硬化剤は、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸であることも好ましい。メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸の使用により、硬化物の耐水性が高くなる。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、及び上記フィラー複合体を除く成分100重量%中、(B)熱硬化剤の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。(B)熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、熱硬化性材料を充分に硬化させることが容易である。(B)熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化に関与しない余剰な(B)熱硬化剤が発生し難くなる。このため、硬化物の耐熱性及び接着性がより一層高くなる。
(他の成分)
上記熱硬化性材料は、上述した成分の他に、分散剤、キレート剤、酸化防止剤等の熱硬化性組成物及び熱硬化性シートに一般に用いられる他の成分を含んでいてもよい。
(熱硬化性材料及び硬化物の他の詳細)
熱硬化性材料は、熱硬化性ペーストであってもよく、熱硬化性シートであってもよい。
本発明に係る硬化物は、上記熱硬化性材料の硬化物であり、上記熱硬化性材料を硬化させることにより得られる。
図3は、本発明の一実施形態に係る熱硬化性材料の硬化物を模式的に示す断面図である。なお、図3では、図示の便宜上、実際の大きさ及び厚みとは異なっている。
図3に示す硬化物21は、硬化物部22と、フィラー複合体1とを含む。硬化物部22は、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含む熱硬化性成分が硬化した部分であり、熱硬化性成分を硬化させることにより得られる。
上記熱硬化性材料及び上記硬化物は、放熱性及び機械的強度などが高いことが求められる様々な用途に用いることができる。上記硬化物は、例えば、電子機器において、発熱部品と放熱部品との間に配置されて用いられる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1〜8)
フィラーの表面に窒化ホウ素ナノチューブを直接合成したフィラー複合体の作製:
球状アルミナ粒子(平均粒子径30μm)をアセトンで脱脂した。次に、5%硫酸水溶液で1分間、超音波でエッチングすることでアルミナ粒子の表面を洗浄及び粗化した。次に、硫酸パラジウム0.01重量%を含有する水溶液に、上記アルミナ粒子を浸漬し、更にジメチルアミンボランを加えパラジウムを析出させ、ろ過、洗浄を行い、パラジウムを担持したアルミナ粒子を得た。
次に、コハク酸ナトリウム1重量%を含むイオン交換水500mLに、パラジウムを担持したアルミナ粒子10gを加えて、スラリーを調製した。スラリーに硫酸を添加してスラリーをpH5に調整した。
ニッケルメッキ液として、硫酸ニッケル20重量%、次亜リン酸ナトリウム30重量%、及び水酸化ナトリウム5重量%を含むニッケルメッキ液を調製した。
80℃に加熱したスラリーにニッケルメッキ液を連続的に滴下し、5分間攪拌することによりナノサイズのニッケルが担持されたアルミナ粒子を得た。
次に、ホウ素粉末(非晶質及び純度99.995%)及び酸化マグネシウム粉末(純度99%)の混合物(モル比1:1)をボールミルで6時間かけて微粉化した。得られた微粉化物を窒化ホウ素製ボートの中に離して配置させ、ボートをグラファイト製の支持台に載置した。
高周波誘導加熱炉を用いて、ホウ素粉末及び酸化マグネシウム粉末の混合物を1300℃に加熱し、発生した酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの混合蒸気をアルゴンガスでアルミナ粒子の方へ移送した。加熱温度が1100℃に達した時点で、アンモニアガスをアルミナ粒子に流入させ、100分間混合蒸気の酸化ホウ素と反応させた後、加熱炉を30℃以下の室温まで徐々に冷却し、フィラー複合体(アルミナ粒子の表面上に放射状に成長した窒化ホウ素ナノチューブ被覆アルミナ粒子)を採取した。
窒化ホウ素ナノチューブ被覆部の厚み及び被覆率は、ニッケルメッキ反応時間によるニッケル触媒付着量の制御及び酸化ホウ素との反応時間によって調整した。
また、各実施例では、フィラーと窒化ホウ素ナノチューブとを下記の表1に示すように設定した。
熱硬化性材料の調製:
ポリマーとしてビスフェノールA型フェノキシ樹脂50重量部と、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂30重量部と、硬化剤として脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製「リカシッドMH−700」)及びジシアンジアミドとを合計で15重量部と、添加剤としてエポキシシランカップリング剤5重量部とを配合してマトリックス樹脂を作製した。マトリックス樹脂に、得られたフィラー複合体を下記表1に示す配合比(単位は体積%)で添加し、ホモディスパー型攪拌機で混練して、ペースト(熱硬化性材料)を得た。
厚み50μmの離型PETシートに、上記熱硬化性材料を厚み200μmになるように塗工し、90℃のオーブン内で30分乾燥して、PETシート上に熱硬化性シートを作製した。
銅張り積層板の作製:
熱硬化性シートを、厚み1.5mmのアルミニウム板と厚み35μmの電解銅箔との間に挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、熱硬化性シートをプレス硬化させ、銅張り積層板を作製した。
(実施例9)
窒化ホウ素ナノチューブの製造:
窒化ホウ素製のるつぼに、2:1:1のモル比でホウ素、酸化マグネシウム及び酸化鉄を入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉で1300℃に加熱した(加熱工程1)。生成物にアンモニアガスを導入して、1200℃で1.8時間加熱した(加熱工程2)。得られた白色固体を濃塩酸で洗浄し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した後、乾燥させ、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を得た。得られたBNNTでは、平均直径が10nm、平均長さが50μmであった。
フィラー複合体の作製:
有機フィラーとしてジビニルベンゼン重合体(ミクロパール、積水化学工業社製)と窒化ホウ素ナノチューブを95:5(体積%)でイソプロパノール中にて超音波混合したスラリーを120℃でスプレードライすることにより、フィラー複合体(窒化ホウ素ナノチューブ被覆フィラー)を得た。被覆部の厚み及び被覆率は、窒化ホウ素ナノチューブスラリーの濃度、及びスプレードライの回数によって調整した。
また、実施例1〜8と同様にして、熱硬化性材料及び銅張り積層板を得た。
(比較例1〜2)
フィラー複合体を作製せず、下記表1に示すフィラーを用いて、実施例1〜8と同様にして、熱硬化性材料及び銅張り積層板を得た。
(比較例3)
フィラーとカーボンナノチューブとを95:5(体積%)でイソプロパノール中にて超音波混合したスラリーを120℃でスプレードライすることにより、実施例9と同様にして、フィラー複合体(カーボンナノチューブ被覆フィラー)を得た。
また、実施例1〜8と同様にして、熱硬化性材料及び銅張り積層板を得た。
(比較例4)
カーボンナノチューブを用い、実施例1〜8と同様にしてフィラー複合体(アルミナ粒子上に放射状に成長したカーボンナノチューブ被覆アルミナ粒子)を得た。
また、実施例1〜8と同様にして、熱硬化性材料及び銅張り積層板を得た。
(評価)
(1)放熱性
得られた銅張り積層板の銅箔面を、同じサイズの60℃に制御された表面平滑な発熱体に196N/cm2の圧力で押し付けた。アルミニウム板の表面の温度を熱電対により測定した。放熱性を下記の基準で判定した。
[放熱性の判定基準]
◎:発熱体とアルミニウム板との表面の温度差が3℃以下
○:発熱体とアルミニウム板との表面の温度差が3℃を超え、6℃以下
△:発熱体とアルミニウム板との表面の温度差が6℃を超え、10℃以下
×:発熱体をアルミニウム板との表面の温度差が10℃を超える
(2)絶縁破壊電圧(耐電圧性)
熱硬化性シートを100mm×100mmの大きさに切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを120℃のオーブン内で1時間、更に200℃のオーブン内で1時間硬化させ、硬化物シートを得た。耐電圧試験器(EXTECH Electronics社製「MODEL7473」)を用いて、硬化物シート間に1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。硬化物シートが破壊した電圧を絶縁破壊電圧とした。絶縁破壊電圧を以下の基準で判定した。
[絶縁破壊電圧の判定基準]
◎:90kV/mm以上
〇:60kV/mm以上、90kV/mm未満
△:30kV/mm以上、60kV/mm未満
×:30kV/mm未満