JP6708422B2 - 超小型加速器および超小型質量分析装置およびイオン注入装置 - Google Patents

超小型加速器および超小型質量分析装置およびイオン注入装置 Download PDF

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Description

本発明は、加速器を用いた加速装置およびその製造方法に関する。たとえば、シンクロトロン、マイクロトロン、線形加速器、質量分析装置、イオン注入装置に関する。
加速装置は、陽子同士を衝突させて物質の成立を知るために使用したり、加速粒子軌道を曲げたときに発生する放射光を用いた微細パターン形成に使用したり、半導体の表面にイオンを打ち込むイオン注入を行ない活性層や表面改質を行なったり、物質から出るイオンを質量分析して物質の組成や構造を調査したり、ガン細胞に荷電粒子を打ち込み破壊するなど人間の病気治療に利用したりするなど、様々な分野で利用されている。
しかし、加速粒子の運動には超真空(10−3〜10−6torr以下)が必要であり、高速の加速粒子にはかなり大きなサイズの空洞(たとえば、500mm以上)が必要であり、その中を通る加速粒子を加速したり、曲げたり、収束するには、大きな電場や大きな磁場を発生する電場発生装置や磁場発生装置が必要である。たとえば、荷電粒子を加速するには静電レンズを用いるが、数枚の静電レンズ(加速電極)を正確に平行にして荷電粒子の通る孔を正確にそろえなければならないので、それなりに大きなサイズの電極(たとえば、孔サイズ20mm径以上、電極サイズ300mm径以上)が必要で、しかもそれらを超真空の空洞内に入れる必要がある。従って、真空系も大きくなり、真空ポンプもかなり大きくて性能の良いものを使用する必要がある。さらに、磁場発生装置はその空洞(真空ライン)に入れるほどの大きさにすることができないため、しかもその空洞を囲む側壁も存在するため、目標とする荷電粒子までの距離が長くなる(たとえば、500mm以上)ので、大きな磁場発生装置が必要となる。そのような大きな磁場発生装置を超伝導材料の電磁石を用いて小さくしても冷却システムが大きくなるので、全体の磁場発生装置のサイズは殆ど変わらない。
近年、国際リニアコライダ(ILC)を日本で建設しようという計画が出ているが、この建設には1兆円以上の費用がかかり、その維持費も500億円/年はかかるので、その建設も決断できないでいる。
さらに、近年、食の安全性が叫ばれているが、食品や飲料水に含まれている物質を簡便に迅速に、しかも個人で知ることは困難である。福島原発事故による土壌等の環境汚染がどの程度身近に迫っているか、個人では把握する術がない。知らない間に人間は放射能や毒物に汚染され、気が付いた時には深刻な事態となっていることも多い。現状の装置では、サイズが大きく、重く、携帯できる精密分析装置はない。しかも装置価格が高いため入手が困難である。
犯罪も複雑化し原因特定・犯人特定まで長期間要しているが、犯罪現場で迅速な分析が行なわれていれば、迅速に解決されるケースも多い。たとえば、昨今脱法ドラッグによる事故や犯罪が問題になるが、販売店の摘発が追いつかない理由は現物を現場で押さえられないからである。そのために、その場で正確で精度の高い分析ができる測定装置が求められている。
考古学、環境科学等の現地調査を行ないながら科学研究を進める分野では、携帯用の精度の高い質量分析があれば、飛躍的に研究が前進する。また、装置が安価で小型であれば、大量な試料の分析を短時間に処理できるようになる。
特開2003-036996 特公平5-36902
従来の加速装置は、荷電粒子を加速したり、曲げたり、また収束したりするために大きなサイズの電場発生装置や磁場発生装置を用いている。それらを精密に位置合わせする技術もかなり高度となり、加速装置の作製は手作りであるので、大量に安く早く作ることは不可能であった。
また、超小型軽量で携帯可能であり、現場で簡便に迅速に測定できる質量分析装置を提供する。しかも価格も従来品より格段に安価であり、さらに測定精度も従来と同等以上である。具体的には、半導体・MEMS技術により、4〜8インチ基板(このサイズより大きな基板でも良い)を用いて、当該基板内に試料供給部・イオン化部・引き出し電極部・質量分析部(二重収束型)・イオン検出部を持つ高性能・高精度・超小型の質量分析装置を作製する。超小型軽量で、携帯可能であり、その場分析も可能なので、137Cs等の放射性元素等の現地計測や家庭での食品・飲料水分析も迅速に行なうことができる。従来型の1/10〜1/100のコストになるので、1台/1人の質量分析装置を持つ時代を実現し、安全安心の社会を作ることが求められている。
本発明は、Si基板等の半導体基板等に形成された貫通室の上下を、ガラス基板や石英基板等の絶縁基板で塞ぎ、その貫通室を加速イオン等の荷電粒子の通り道とし、かつその貫通室の中に引き出し電極、加速電極、加速空洞、四重極電極、四重極トラップ等の加速装置や質量分析装置等に必要なものをLSIプロセスを用いて形成する。
具体的には、本発明は次のような特徴を有する。
(1)
本発明は、第1主基板、第1主基板の上面に付着した第1上部基板、および第1主基板の下面に付着した第1下部基板を含む複数の基板から構成される質量分析装置であって、質量分析室は、<ここからは後>
第1主基板に形成された、第1主基板の上面から第1主基板の下面へ貫通する貫通室であり、基板面に垂直方向(Z方向)が上部基板および下部基板に、Z方向と直角方向でありかつ荷電粒子の進行方向(X方向)の両側は第1主基板側板に、およびZ方向およびX方向に直角方向(Y方向)の両側面は第1主基板に囲まれており、荷電粒子の入射する第1主基板側板は中央孔が空いていて、荷電粒子は前記第1主基板側板に形成された中央孔より質量分析室へ入射することを特徴とする質量分析装置であり、
第1主基板は、絶縁体基板、半導体基板、導電体基板、またはこれらの積層基板であることを特徴とし、
上部基板および下部基板は、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、アルミナ基板、AlN基板、セラミック基板、高分子基板、またはこれらの積層基板であることを特徴とし、
前記主基板が絶縁体基板である場合は、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、アルミナ基板、AlN基板、セラミック基板、高分子基板、またはこれらの積層基板であることを特徴とし、
前記主基板が半導体基板である場合は、Si基板、SiC基板、C基板、GaAS基板、InP基板、GaN基板、CdS基板、2元化合物半導体、3元化合物半導体、またはこれらの積層基板であることを特徴とし、
前記主基板が半導体基板である場合は、導電体基板である場合は、Cu、Al、Ti、Zn、Fe、これらの金属を含む合金、またはこれらの積層基板であることを特徴とする。
(2)
本発明は、質量分析室は四重極質量分析室であり、質量分析室において、
前記上部基板の下面に付着または形成した2本の四重極電極および前記下部基板の上面に付着または形成した2本の四重極電極を有し、
前記上部基板の下面に配置した2本の四重極電極に接続する上部基板に形成されたコンタクト配線(上部基板コンタクト配線)および前記上部基板コンタクト配線に接続する上部基板上面に形成された電極・配線(上部基板上面電極・配線)、並びに
前記下部基板の上面に配置した2本の四重極電極に接続する下部基板に形成されたコンタクト配線(下部基板コンタクト配線)および前記下部基板コンタクト配線に接続する下部基板下面に形成された電極・配線(下部基板下面電極・配線)を有し、
前記上部電極・配線および前記下部電極・配線から高周波電圧および/または直流電圧を印加することを特徴とする質量分析装置であり、
上部基板の下面に配置された2つの四重極電極および下部基板の上面に配置された2つの四重極電極のうち、互いに隣り合わない2つの四重極電極の間の距離はほぼ同じであり、それらの間の中点はほぼ一致することを特徴とし、
上部基板の下面に配置された2つの四重極電極および下部基板の上面に配置された2つの四重極電極のうち、互いに隣り合う2つの四重極電極の間の距離はほぼ同じであることを特徴とする。
(3)
本発明は、上部基板(第1上部基板)上または上方に第2主基板が付着し、さらに第2主基板上に第2の上部基板(第2上部基板)が付着し、前記貫通室(第1貫通室)の上部において第2主基板に第2上部基板から第1上部基板へ貫通する貫通室(第2貫通室)が形成され、第1貫通室と第2貫通室との間の第1上部基板の一部に開口部が設けられており、前記開口部は第1上部基板の下面に配置した2つの四重極電極の間に形成されており、前記第1上部基板の下面に配置した四重極電極に接続する第1上部基板上に形成された電極・配線は、第2貫通室側面に形成された配線(第2配線)に接続し、第2配線は第2上部基板下面に形成された電極・配線に接続し、さらに第2上部基板下面に形成された電極・配線は第2上部基板に形成されたコンタクト配線(第2上部基板コンタクト配線)に接続し、第2上部基板コンタクト配線は第2上部基板上に形成された電極・配線(第2上部電極・配線)に接続することを特徴とし、
下部基板(第1下部基板)の下面にまたは下方に第3主基板が付着し、さらに第3主基板の下面に第2の下部基板(第2下部基板)が付着し、前記貫通室(第1貫通室)の下部において第3主基板に第2下部基板から第1下部基板へ貫通する貫通室(第3貫通室)が形成され、第1貫通室と第3貫通室との間の第1下部基板の一部に開口部が設けられており、前記開口部は第1下部基板の上面に配置した2つの四重極電極の間に形成されており、
前記第1下部基板の上面に配置した四重極電極に接続する第1下部基板の下面に形成された電極・配線は、第3貫通室側面に形成された配線(第3配線)に接続し、第3配線は第2下部基板上面に形成された電極・配線に接続し、さらに第2下部基板上面に形成された電極・配線は第2下部基板に形成されたコンタクト配線(第2下部基板コンタクト配線)に接続し、第2下部基板コンタクト配線は第2上部基板の下面に形成された電極・配線(第2下部電極・配線)に接続することを特徴とし、
前記第2上部電極・配線および前記第2下部電極・配線から高周波電圧および/または直流電圧を印加することを特徴とする質量分析装置であり、
第2上部基板および第2下部基板は、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、アルミナ基板、AlN基板、セラミック基板、高分子基板、またはこれらの積層基板であることを特徴とし、
前記第2主基板および第3主基板が絶縁体基板である場合は、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、アルミナ基板、AlN基板、セラミック基板、高分子基板、またはこれらの積層基板であることを特徴とし、
前記第2主基板および第3主基板が半導体基板である場合は、Si基板、SiC基板、C基板、GaAS基板、InP基板、GaN基板、CdS基板、2元化合物半導体、3元化合物半導体、またはこれらの積層基板であることを特徴とし、
前記第2主基板および第3主基板が半導体基板である場合は、導電体基板である場合は、Cu、Al、Ti、Zn、Fe、これらの金属を含む合金、またはこれらの積層基板であることを特徴とする。
(4)
本発明は、質量分析室は四重極質量分析室であり、質量分析室の上部に付着した上部基板の上面に1本の四重極電極が配置され、質量分析室の下部に付着した下部基板の下面に1本の四重極電極が配置され、質量分析室の隣に設けた主基板に形成された左右の貫通室のそれぞれに1本の四重極電極が配置されていることを特徴とする質量分析装置であり、
質量分析室の隣に主基板に形成された左右の貫通室は、質量分析室との間に基板側壁が存在することを特徴とし、
四重極電極は、棒材であり、当該棒材を上部基板、下部基板、および主基板の所定箇所に付着させたものであることを特徴とし、
四重極電極は、上部基板または下部基板にCVD法、PVD法、メッキ法、電鋳法、スクリーン印刷、スキージ法、スピンコート法、ディスペンス法、またはこれらの組合せ法により積層し、所定形状に加工した導電体膜電極であることを特徴し、
質量分析室は四重極質量分析室であり、質量分析室の上部に付着した上部基板の下面であって質量分析室側の面に付着または形成した2本の四重極電極が配置され、質量分析室の下部に付着または形成した下部基板の上面であって質量分析室側の面に付着した2本の四重極電極が配置されていることを特徴とする質量分析装置であり、
2本の四重極電極を付着または形成した上部基板(第1上部基板)の上方にさらに貫通室(第2貫通室)が形成され、第2貫通室の上部に第2上部基板が付着し、前記質量分析室(第1貫通室)と第2貫通室との間にある第1上部基板の一部が除去されて、第1貫通室と第2貫通室の圧力は、ほぼ同じであることを特徴とし、
2本の四重極電極を付着または形成した下部基板(第1下部基板)の下方にさらに貫通室(第3貫通室)が形成され、第3貫通室の下部に第2下部基板が付着し、前記質量分析室(第1貫通室)と第3貫通室との間にある第1下部基板の一部が除去されて、第1貫通室と第3貫通室の圧力は、ほぼ同じであることを特徴とする。
(5)
本発明は、質量分析室は、上部基板の下面に付着または形成した1本の四重極電極(第1四重極電極)、下部基板の上面に付着または形成した1本の四重極電極(第2四重極電極)、質量分析室の一方の側面の基板の一部が質量分析室内のY方向に伸び、その伸びた側面の基板の上面または下面に付着または形成した1本の四重極電極(第3四重極電極)、および質量分析室の他方の側面の基板の一部が質量分析室内のY方向に伸び、その伸びた側面の基板の上面または下面に付着または形成した1本の四重極電極(第4四重極電極)を含むことを特徴とし、
上部基板は、第1四重極電極に接続するコンタクト配線(第1上部基板コンタクト配線)およびその上面に前記第1コンタクト配線に接続する電極・配線(第1上部基板電極・配線)を有し、
下部基板は、第2四重極電極に接続するコンタクト配線(第1下部基板コンタクト配線)およびその下面に前記第2コンタクト配線に接続する電極・配線(第1下部基板電極・配線)を有し、
第3四重極電極が付着または形成した側面基板は、第3四重極電極と接続する配線を有し、その配線は主基板の側面に形成された配線に接続し、さらにその側面に形成された配線は上部基板または下部基板に形成された配線に接続し、さらにその配線は上部基板または下部基板に形成されたコンタクト配線(第2上部基板コンタクト配線または第2下部基板コンタクト配線)に接続し、さらにその第2上部基板コンタクト配線または第2下部基板コンタクト配線は上部基板の上面または下部基板の下面に形成された電極・配線(第2上部基板電極・配線または第2下部基板電極・配線)に接続することを特徴とする。
(6)
本発明は、前記上部基板(第1上部基板)の上方にさらに貫通室(第2貫通室)が形成され、第2貫通室の上部に第2上部基板が付着し、前記質量分析室(第1貫通室)と第2貫通室との間にある第1上部基板の一部が除去されて、第1貫通室と第2貫通室の圧力は、ほぼ同じであることを特徴とし、
前記下部基板(第1下部基板)の下方にさらに貫通室(第3貫通室)が形成され、第3貫通室の下部に第2下部基板が付着し、前記質量分析室(第1貫通室)と第3貫通室との間にある第1下部基板の一部が除去されて、第1貫通室と第3貫通室の圧力は、ほぼ同じであることを特徴とし、
質量分析室は四重極質量分析室であり、質量分析室において、
前記上部基板の下面に付着または形成した四重極電極(第1四重極電極)および前記下部基板の上面に付着または形成した四重極電極(第3四重極電極)を有し、
前記上部基板の下面に配置した四重極電極(第1四重極電極)に接続する上部基板に形成されたコンタクト配線(上部基板コンタクト配線)および前記上部基板コンタクト配線に接続する上部基板上面に形成された電極・配線(上部基板上面電極・配線)、並びに
前記下部基板の上面に配置した四重極電極(第3四重極電極)に接続する下部基板に形成されたコンタクト配線(下部基板コンタクト配線)および前記下部基板コンタクト配線に接続する下部基板下面に形成された電極・配線(下部基板下面電極・配線)を有し、
前記主基板のY方向の2つの側面に形成した四重極電極(第2四重極電極および第4四重極電極)を有し、
第2四重極電極および第4四重極電極は、前記上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線、および上部基板の上面および/または下部基板の下面に形成された電極・配線(上部基板上面電極・配線および/または下部基板下面電極・配線))を有し、
前記上部基板上面電極・配線および前記下部基板下面電極・配線から高周波電圧および/または直流電圧を印加することを特徴とする。
(7)
本発明は、前記第2四重極電極および第4四重極電極は主基板に形成された貫通室内に積層された導電体膜であり、前記導電体膜の一部はメッキ膜であることを特徴とし、
質量分析室は、磁場印加型であり、質量分析室を形成する主基板の上部に付着した上部基板の上側に配置された1つまたは複数のコイルおよび/または質量分析室を形成する主基板の下部に付着した下部基板の下側に配置された1つまたは複数のコイルにより、主基板の基板面に対して垂直方向の磁場が発生することによって、荷電粒子の軌道が変化することを用いたことを特徴とし、
質量分析室は、磁場印加型であり、質量分析室を形成する主基板の上部に付着した上部基板の上側および/または前記主基板の下部に付着した下部基板の下側に配置された電磁石により、主基板の基板面に対して垂直方向の磁場が発生することによって、荷電粒子の軌道が変化することを用いたことを特徴とし、
上部基板の上側および/または下部基板の下側に配置される1つまたは複数のコイルは、第2主基板に積層により形成されたものであることを特徴とし、
荷電粒子は、荷電粒子引き出し室または荷電粒子加速室から質量分析室に出射され、荷電粒子引き出し室または荷電粒子加速室と質量分析室との間には、中央孔を有する基板側壁板(前方基板側壁板)が配置され、荷電粒子は前記前方基板側壁板の中央孔を通って質量分析室へ出射されることを特徴とし、
質量分析室を出た荷電粒子はイオン検出室でイオン検出され、前記イオン検出室は主基板に形成された貫通室であり、質量分析室とイオン検出室との間には、中央孔を有する基板側壁板(後方基板側壁板)が配置され、荷電粒子は前記後方基板側壁板の中央孔を通ってイオン検出室側へ出射されることを特徴とし、
荷電粒子は、磁場により360度方向へ曲げられることを特徴とし、イオン検出室は360度の領域において、複数配置されることを特徴とする。
(8)
本発明は、質量分析室は、電場印加型をさらに付加した二重収束型であり、前記電場印加型における荷電粒子が通過する領域は、主基板に形成され、上面(Z方向)が上部基板に下面(Z方向)が下部基板に側面(Y方向)が主基板側面に囲まれた扇型形状の貫通室(扇型領域貫通室)を含む貫通室(電場印加型貫通室)であり、電場印加型貫通室のX方向は中央孔を有する基板側壁板により囲まれており、荷電粒子は一方の基板側壁板の中央孔より侵入し、電場印加型貫通室で荷電粒子の軌道が曲げられて、他方の基板側壁板の中央孔より出射することを特徴とし、電場印加型貫通室は、中心軌道が半径R0、中心角がα、中心軌道から一定距離d0の対面する主基板両側面に電極が形成され、荷電粒子は両側面に形成された電極に印加された電圧により発生する電界によって曲げられることを特徴とし、
電場印加型貫通室における側面電極は、CVD法またはPVD法により積層された導電体膜にさらにメッキ膜を積層したものであることを特徴とし、
側面電極と接続するコンタクト配線は、電場印加型貫通室の上面に付着した上部基板に形成され、上部基板の上面に形成された電極・配線に接続し、および/または電場印加型貫通室の下面に付着した下部基板に形成され、下部基板の下面に形成された電極・配線に接続することを特徴とする。
(9)
荷電粒子が進入しサイクロトロン運動をする貫通室(ICR室)は、イオン源からの荷電粒子の進入口である中央孔を有する基板側壁板(引き出し電極用基板側壁板)、荷電粒子の進行方向にあり、引き出し電極用基板側壁板と対面し、サイクロトロン運動した荷電粒子が衝突する基板側壁(トラップ電極用基板側壁)、ICR室の上部に付着する上部基板、およびICR室の下部に付着する下部基板、荷電粒子と進行方向と略平行な2つの基板側壁(レシーバー電極用基板側壁)により囲まれており、引き出し電極用基板側壁板の表面は荷電粒子を中央孔からICR室へ引き寄せる引き出し電極となる導電体膜電極が形成されており、トラップ電極用基板側壁の表面は荷電粒子をトラップする電圧が印加される導電体膜電極が形成されており、上部基板および下部基板には荷電粒子を励起する電圧が印加される導電体膜電極が形成されていることを特徴とし、
ICR室において、荷電粒子の進行方向となる引き出し電極からトラップ電極へ向かう方向に平行な磁場が印加されていることを特徴とし、
前記磁場を発生させるコイル配線は、上部基板および下部基板に密着して形成され、さらに、主基板の外側側面に密着して形成されているか、または主基板および上部基板および下部基板の内部に形成されていることを特徴とし、
上部基板上に支柱基板が付着し、さらに支柱基板の上に第2上部基板が付着しており、下部基板上に支柱基板が付着し、さらに支柱基板の上に第2下部基板が付着しており、前記磁場を発生させるコイル配線は、上部基板および下部基板に密着して形成され、さらに、主基板の外側側面に密着して形成されており、
さらに、ICR室内の引き出し電極、トラップ電極、2つの対向するイオン励起電極、および2つの対向するレシーバー電極と接続する電極配線は、上部基板および/または下部基板に形成されるとともに、上部基板、支柱基板、および第2上部基板に囲まれた空間内に存在するか、および/または下部基板、支柱基板、および第2下部基板に囲まれた空間内に存在し、さらにそれらの電極配線は、第2上部基板上および/または第2下部基板上に形成された電極配線と接続しており、コイルに接続する電極は第2上部基板上および/または第2下部基板上に形成された電極配線と接続していることを特徴とする。
(10)
荷電粒子を発生させる荷電粒子発生室は、上部が上部基板に、下部が下部基板に付着した主基板に形成された2つの貫通室(荷電粒子発生室1、2)を含み、荷電粒子発生室1および荷電粒子発生室2は中央孔を有する基板側壁板(第1基板側壁板)で隔てられた隣室同士であり、上部基板に開口された開口部から挿入された試料板は荷電粒子発生室1に配置され、上部基板に開口された開口部からレーザービームが前記試料板に付着した試料に照射されることにより、試料が粒子状に分解され、分解された粒子(分解粒子)は基板側壁板が有する中央孔を通り荷電粒子発生室2に入り、レーザー光、電子ビーム、シンクロトロン放射光、X線から選択された1つのイオン化ビームが上部基板または下部基板の外側から荷電粒子発生室2内に存在する前記分解粒子へ照射されることにより荷電粒子が発生することを特徴とし、
荷電粒子発生室2の隣には中央孔を有する基板側壁板(第2基板側壁板)で隔てられた引き出し電極・加速室があり、
引き出し電極・加速室は、上部が上部基板に、下部が下部基板に付着した主基板に形成された貫通室であり、
荷電粒子発生室2の内面において、上部基板および下部基板、および/または第1基板側壁板の側面、および/または第2基板側壁板の側面、および/または他の2つの基板側壁の側面に導電体膜電極が形成され、
前記導電体膜電極は上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線に接続し、さらに前記コンタクト配線は上部基板および/または下部基板の外表面に形成された導電体膜電極・配線に接続することを特徴とし、
前記導電体膜電極に印加された電圧と同符号の荷電粒子は、引き出し電極・加速室に配置された引き出し電極により第2基板側壁板が有する中央孔を通って引き出し電極・加速室に引き寄せられることを特徴とし、
前記引き出し電極・加速室に入った荷電粒子は、前記引き出し電極・加速室から出て質量分析室に入ることを特徴とする質量分析装置であり、
荷電粒子発生室1において、試料板の背面は基板側壁の側面に密着して配置され、前記基板側壁には中央孔が備わり、さらの当該中央孔には上部基板または下部基板の開口部につながる主基板の厚み方向の空洞がつながり、当該上部基板または下部基板の開口部から真空引きされて試料板は基板側壁の側面に吸着されることを特徴とする。
(11)
本発明は、荷電粒子を発生させる荷電粒子発生室は、上部が上部基板に、下部が下部基板に付着した主基板に形成された2つの貫通室(荷電粒子発生室1、2)を含み、荷電粒子発生室1および荷電粒子発生室2は中央孔を有する基板側壁板(第1基板側壁板)で隔てられた隣室同士であり、
上部基板に開口された開口部から挿入された試料板は荷電粒子発生室1に配置され、
荷電粒子発生室1において、試料板の背面は基板側壁の側面に密着して配置され、前記基板側壁には中央孔が備わり、さらの当該中央孔には上部基板または下部基板の開口部につながる主基板の厚み方向の空洞がつながり、当該上部基板または下部基板の開口部から真空引きされて試料板は基板側壁の側面に吸着され、
前記基板側壁側面に導電体膜が形成され、前記基板側壁側面に形成された導電体膜は上部基板および/または下部基板の荷電粒子発生室1側の表面に形成された導電体膜と接続し、その導電体膜はさらに上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線に接続し、そのコンタクト配線はさらに上部基板および/または下部基板の外側表面に形成された導電体膜電極配線に接続し、
その導電体膜電極配線から導電体である試料板に電圧が印加されており、
上部基板に開口された開口部からレーザービームが前記試料板に付着した試料に照射されることにより、試料が粒子状に分解されて荷電粒子が発生し、
試料板の電荷と同符号の荷電粒子は試料板から飛び出し、
試料板と対面する方向に中央孔を有する基板側壁板(第3基板側壁板)が配置され、第3基板側壁板の表面には導電体膜が形成され、前記第3基板側壁板表面に形成された導電体膜は上部基板および/または下部基板の荷電粒子発生室1側の表面に形成された導電体膜と接続し、その導電体膜はさらに上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線に接続し、そのコンタクト配線はさらに上部基板および/または下部基板の外側表面に形成された導電体膜電極配線に接続し、
その導電体膜電極配線から第3基板側壁板表面導電体に形成された導電体膜に試料板に印加された電圧と逆の電圧が印加され、試料板から飛び出した荷電粒子を引き出して、
前記荷電粒子は、第3基板側壁板に形成された中央孔を通り、さらに第1基板側壁板の中央孔を通って荷電粒子発生室2に入り、
荷電粒子発生室2の内面において、上部基板および下部基板、および/または第1基板側壁板の側面、および/または第2基板側壁板の側面、および/または他の2つの基板側壁の側面、および/または第1基板側壁板の中央孔の内面に導電体膜電極が形成され、
前記導電体膜電極は上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線に接続し、さらに前記コンタクト配線は上部基板および/または下部基板の外表面に形成された導電体膜電極・配線に接続することを特徴とし、
前記導電体膜電極に印加される電圧は荷電粒子と同符号の電圧であり、当該電圧を調整することによって、荷電粒子を収束し、荷電粒子発生室2と隣室を隔てる基板側壁板(第2基板側壁板)が有する中央孔を通って隣室へ入射することを特徴とし、
前記第2基板側壁板が有する中央孔を通った荷電粒子は質量分析室に入ることを特徴とする質量分析装置である。
(12)
本発明は、主基板の上面に上部基板、主基板の下面に下部基板を付着し、主基板に形成した貫通室をイオン化室とし、前記イオン化室へ接続する中央孔を有し、前記中央孔は上部基板または下部基板の開口部(試料導入用開口部)につながる主基板に形成された縦孔(基板面と垂直方向)に接続し、
中央孔内面に導電体膜(第2導電体膜)が形成され、イオン化室内面に導電体膜(第1導電体膜)が形成され、第1導電体膜および第2導電体膜はイオン化室主基板の側面に形成された導電体膜により接続され、第1導電体膜は上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線を通して上部基板および/または下部基板に形成された外側電極に接続することを特徴とし、
試料液または試料ガスは、試料導入用開口部から導入し、縦孔および中央孔を通して、イオン化室への出口でスプレーガスとしてイオン化室へ導入することを特徴とし、
上部基板および/または下部基板に形成された外側電極から電圧を印加することにより中央孔内面に形成された導電体膜に電圧が印加され、これによりイオン化室の出口部で噴出したガス(スプレーガス)はイオン化することを特徴とする、イオン化法である。
(13)
本発明は、主基板の上面に上部基板、主基板の下面に下部基板を付着し、主基板に形成した貫通室をイオン化室とし、前記イオン化室へ接続する中央孔を有し、前記中央孔は上部基板または下部基板の開口部(試料導入用開口部)につながる主基板に形成された縦孔(基板面と垂直方向)に接続し、
中央孔内面において上部および下部に平行平板導電体膜電極、または中央孔内面において2つの側面に平行平板導電体膜電極が形成され、それぞれの平行平板導電体膜電極はイオン化室内側面に形成された導電体膜を通して、イオン化室内の上部基板および下部基板に形成した導電体膜に接続し、さらに上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線を通して上部基板および/または下部基板に形成された外側電極に接続することを特徴とし、
試料液または試料ガスは、試料導入用開口部から導入し、縦孔および中央孔を通して、イオン化室への出口でスプレーガスとしてイオン化室へ導入することを特徴とし、
上部基板および/または下部基板に形成された外側電極から高周波電圧を印加することにより中央孔内面に形成された導電体膜に高周波電圧が印加され、これによりイオン化室の出口部で噴出したガス(スプレーガス)はイオン化することを特徴とする、イオン化法である。
(14)
本発明は、イオン化室の周囲の一部を囲む凹部および開口部を主基板および、上部基板および/または下部基板に形成し、この凹部に冷却用または加熱用媒体を通すことにより、イオン化室および/または中央孔を冷却または加熱を行なうことを特徴とする質量分析装置であり、
上部基板および/または下部基板に形成した導電体膜の一部を用いてイオン化室を加熱することを特徴とし
中央孔に形成した導電体膜の一部を用いてイオン化室を加熱することを特徴とし、
引き出し電極室と対面する基板側壁板または基板側壁に導電体膜電極を設けて、当該導電体膜電極にイオンと同符号の電圧を印加することにより、イオンを引き出し電極室へ押し出すことを特徴とする。
(15)
本発明は、主基板の上面に上部基板、主基板の下面に下部基板を付着し、主基板に形成した1つの貫通室をイオン化室とし、イオン化室の隣に主基板に形成した貫通室である加熱室を設けて、イオン化室と加熱室は中央孔(第2中央孔)を有する基板側壁板で仕切られているか、またはイオン化室と加熱室とは同じ貫通室であり仕切る基板側壁板はないかであり、
前記加熱室へ接続する中央孔(第1中央孔)を有し、第1中央孔は上部基板または下部基板の開口部(試料導入用開口部)につながる主基板に形成された縦孔(基板面と垂直方向)に接続し、
中央孔内面に導電体膜(第2導電体膜)が形成され、加熱室内面に導電体膜(第1導電体膜)が形成され、第1導電体膜および第2導電体膜は加熱室主基板の側面に形成された導電体膜により接続され、第1導電体膜は上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線を通して上部基板および/または下部基板に形成された外側電極に接続することを特徴とし、
試料液または試料ガスは、試料導入用開口部から導入し、縦孔および中央孔を通して、加熱室への出口でスプレーガスとして加熱室へ導入することを特徴とし、
上部基板および/または下部基板に形成された外側電極から電圧を印加し、第1導電体膜へ電流を流して第1導電体膜を加熱することにより加熱室を加熱することを特徴とし、
イオン化室において、上部基板および/または下部基板に尖塔電極を配置して、前記尖塔電極は上部基板および/または下部基板に形成したコンタクト配線を通して上部基板および/または下部基板に形成した外側電極に接続し、外側電極に電圧を印加することによって、尖塔電極で放電させて加熱されたスプレーガスをイオン化することを特徴とするイオン化法である。
(16)
本発明は、イオン化室の周囲の一部を囲む凹部および開口部を主基板および、上部基板および/または下部基板に形成し、この凹部に冷却用または加熱用媒体を通すことにより、イオン化室および/または中央孔を冷却または加熱を行なうことを特徴とする質量分析装置であり、
上部基板および/または下部基板に形成した導電体膜の一部を用いてイオン化室を加熱することを特徴とし、
中央孔に形成した導電体膜の一部を用いてイオン化室を加熱することを特徴とし
引き出し電極室と対面する基板側壁板または基板側壁に導電体膜電極を設けて、当該導電体膜電極にイオンと同符号の電圧を印加することにより、イオンを引き出し電極室へ押し出すことを特徴とする。
(17)
本発明は、主基板の上面に上部基板、主基板の下面に下部基板を付着し、主基板に形成した貫通室をイオン化室とし、
前記イオン室へ接続する中央孔(第1中央孔)を有し、第1中央孔は上部基板または下部基板の開口部(試料導入用開口部)につながる主基板に形成された縦孔(基板面と垂直方向)に接続し、
試料液は、試料導入用開口部から導入し、縦孔および中央孔を通して、イオン化室への出口でマトリックスが形成され、マトリックスへ上部基板または下部基板に形成された開口部を通して、外側からレーザーまたは高速原子ビームを照射し、その結果マトリックス中の分子がイオン化することを特徴とするイオン化法であり、
主基板の上面に上部基板、主基板の下面に下部基板を付着し、主基板に形成した貫通室をイオン化室とし、
前記イオン室へ接続する中央孔(第1中央孔)を有し、第1中央孔は上部基板または下部基板の開口部(試料導入用開口部)につながる主基板に形成された縦孔(基板面と垂直方向)に接続し、
試料液は、試料導入用開口部から導入し、縦孔および中央孔を通して、イオン化室への出口でマトリックスが形成され、
イオン化室の隣にレーザーまたは高速原子ビーム室が配置され、レーザーまたは高速原子ビーム室からレーザーまたは高速原子ビーム室がマトリックスへ照射され、その結果マトリックス中の分子がイオン化することを特徴とする、イオン化法である。
(18)
本発明は、イオン化室に隣接して主基板に形成した貫通室は引き出し電極室であり、引き出し電極室とイオン化室は中央孔(第2中央孔)を有する基板側壁板で仕切られており、基板側壁板と対面する基板側壁の側面に導電体膜電極が形成され、導電体膜はイオンと同符号の電圧が印加され、発生したイオンは当該導電体膜電極により押し出されて基板側壁板の第2中央孔を通って引き出し電極室へ出射されることを特徴し、
イオン化室の周囲の一部を囲む凹部および開口部を主基板および、上部基板および/または下部基板に形成し、この凹部に冷却用または加熱用媒体を通すことにより、イオン化室および/または中央孔を冷却または加熱を行なうことを特徴とし、
中央孔内面および/または貫通室内面に導電体膜を形成し、当該導電体膜に電流を流して発熱させて、中央孔および/または貫通室を加熱することを特徴とする。
(19)
本発明は、主基板の上面を上部基板が、主基板の下面を下部基板が付着し、主基板にリング電極が形成され、リング電極の中央に形成された貫通室はイオントラップ室であり、イオントラップ室の上部は、上部基板に形成された上部電極(イオントラップ上部電極)が配置され、イオントラップ室の下部は、下部基板に形成された下部電極(イオントラップ下部電極)が配置され、
リング電極は、主基板のリング形状に導電体膜(リング導電体膜電極)を形成し、リング導電体膜電極は、上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線を通して上部基板および/または下部基板に形成された外側電極に接続し、
イオントラップ上部電極およびイオントラップ下部電極は、上部基板および下部基板に形成されたコンタクト配線を通して上部基板および下部基板に形成された外側電極に接続し、リング電極は、中央孔を有する主基板であり、イオントラップ室の隣に配置された一方の貫通室であるイオン化室または引き出し電極・加速電極室とイオントラップ室の間に配置され、またイオントラップ室の隣に配置された他方の貫通室であるイオン検出室とイオントラップ室の間に配置され、一方の中央孔はイオン化室からイオントラップ室に接続し、他方の中央孔はイオントラップ室からイオン検出室に接続し、
リング導電体膜電極、イオントラップ上部電極、およびイオントラップ下部電極に所定の電圧を印加することによって、イオン化室または引き出し電極・加速電極室からイオントラップ室に接続した中央孔を通ってイオントラップ室に入ったイオンはイオントラップ室に捕捉され、さらに捕捉されたイオンは、イオントラップ室からイオン検出室に接続した中央孔を通ってイオン検出室に出射され、イオン検出されることを特徴とする、イオントラップ型質量分析装置である。
(20)
本発明は、主基板の上面を上部基板が、主基板の下面を下部基板が付着し、主基板にリング電極が形成され、リング電極の中央に形成された貫通室はイオントラップ室であり、イオントラップ室の上部は、上部基板に形成された上部電極(イオントラップ上部電極)が配置され、イオントラップ室の下部は、下部基板に形成された下部電極(イオントラップ下部電極)が配置され、
リング電極は、主基板のリング形状に導電体膜(リング導電体膜電極)を形成し、リング導電体膜電極は、上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線を通して上部基板および/または下部基板に形成された外側電極に接続し、
イオントラップ上部電極およびイオントラップ下部電極は、上部基板および下部基板に形成されたコンタクト配線を通して上部基板および下部基板に形成された外側電極に接続し、リング電極は、中央孔を有する主基板であり、
イオントラップ室の上部に配置された一方の貫通室であるイオン化室または引き出し電極・加速電極室とイオントラップ室の間に配置され、またイオントラップ室の隣に配置された他方の貫通室であるイオン検出室とイオントラップ室の間に配置され、一方の中央孔はイオン化室からイオントラップ室に接続し、他方の中央孔はイオントラップ室からイオン検出室に接続し、
リング導電体膜電極、イオントラップ上部電極、およびイオントラップ下部電極に所定の電圧を印加することによって、イオン化室または引き出し電極・加速電極室からイオントラップ室に接続した中央孔を通ってイオントラップ室に入ったイオンはイオントラップ室に捕捉され、さらに捕捉されたイオンは、イオントラップ室からイオン検出室に接続した中央孔を通ってイオン検出室に出射され、イオン検出されることを特徴とする、イオントラップ型質量分析装置である。
(21)
本発明は、上面から下面に貫通する複数の貫通室を有する主基板、主基板の上面に付着した上部基板、主基板の下面に付着した下部基板、貫通室を仕切る中央孔を有する基板側壁板を含む加速装置であって、荷電粒子は貫通室および基板側壁板の中央孔を通ることを特徴とする加速装置であり、
加速装置は、荷電粒子発生機構、線形加速機構を含み、荷電粒子発生機構、線形加速機構は貫通室に形成されることを特徴とし、
貫通室内に形成される電極および配線は、CVD法、PVD法、メッキ法、電鋳法から選択された1つまたは複数の方法により積層された導電体膜であり、上部基板および/または下部基板に形成されたコンタクト配線を通して上部基板および/または下部基板に形成された外側電極と接続することを特徴とし、
線形加速機構は、中央孔を有する基板側壁板に導電体膜を形成した電極(基板側壁板電極)を複数配置して構成され、前記基板側壁板電極に静電圧または高周波電圧を印加することにより、荷電粒子を加速または減速(集束)させることを特徴とし、
加速装置は、さらに減速(集束)機構を有しており、減速(集束)機構は、中央孔を有する基板側壁板に導電体膜を形成した電極(基板側壁板電極)を複数配置して構成され、前記基板側壁板電極に荷電粒子と逆電圧を印加することにより、荷電粒子を減速(集束)させることを特徴とする。
(22)
本発明は、さらに減速(集束)機構を有しており、減速(集束)機構は、四極磁石で行なうことを特徴とする加速装置であり、
四極磁石は、荷電粒子の通路である基板内に作製した貫通室を有する基板の外側から縦方向(基板面に対して垂直方向)において上下方向に電磁石を配置し、荷電粒子の通路である基板内に作製した貫通室を有する基板の外側から横方向(垂直方向に対して直角方向)において両側に電磁石を配置することを特徴とし、
電磁石を横方向に配置する場合において、電磁石の配置場所における基板領域を切断して、その開口部に電磁石を配置することを特徴とし、
切断方法は、レーザーダイシングまたは高圧液体ジェットダイシングであることを特徴とし、
コイルを貫通室の両側の主基板内に配置することを特徴とし、
コイルは、上下基板および主基板を貫通する貫通孔内に導電体膜(貫通孔配線)を形成し、上下基板で貫通孔配線を結線する配線を形成してコイル配線を形成し、コイルの両端電極は上部基板および/または下部基板に形成されることを特徴とする。
(23)
本発明は、貫通室(荷電粒子収束用貫通室)の両側に貫通室(コイル配置用貫通室)を形成し、コイル配置用貫通室へコイルを挿入してコイルを荷電粒子収束用貫通室の両側に配置することを特徴とし、
コイルは、支持基板に付着したコイルをコイル配置用貫通室に挿入して配置することを特徴とし、
コイルをコイル配置用貫通室の上部および下部に配置することを特徴とし、
コイルは上部基板および下部基板に密着または接近して配置することを特徴とし、
コイルを形成した基板(コイル形成基板)を上部基板および下部基板に付着させてコイルを配置することを特徴とする。
本発明は、LSIやMEMSプロセスを用いて、加速装置や質量分析装置に必要な各機能を基板内に一挙に形成するので、各機能部分(たとえば、加速電極)の相互間の位置関係が極めて正確に形成される。しかも電極間距離や荷電粒子の通る通路をmmオーダーやμmオーダーで精密に形成できるので、サイズが極めて小さくなる。たとえば、電極間の距離が小さくなると電界強度が大きくなり、荷電粒子の加速や減速を効率的に制御できる。また、電極へ供給する高周波の周波数を大きくすることができるので、短距離でより大きな加速を行なうこともできる。さらに各機能部品を一括で作製できるので、製造コストが劇的に低減する。
本発明を質量分析装置へ適用した場合、本発明のような4インチ〜8インチ{直径100mm〜200mm、厚み3mm以下(Si基板2mm、ガラス基板0.3mm×2)、8インチ以上も可能}の基板を使用して、微小な試料供給部、イオン化室、引き出し電極・加速室、電場室、磁場室、イオン検出室(これらを機能部と呼ぶ)を作製したことは報告されていない。また、特許等のアイデアも発見されていない。増して、これらを一括して同じ基板で実現したことも報告はなく、新規性および進歩性・優位性を有する。
本質量分析装置は超小型{本体:サイズ6インチウエハ(50cm3)以下、重量130g以下}であり、一括製造であるから、製造コストは10万円以下{本体:サイズ6インチウエハ}を実現できる。従来品は、同性能であれば、50cm×50cm×50cm以上、20kg以上であるから、大きさ(体積)で1/2500以下、重量で1/100以下、価格で1/20以下であり、優位性は十分ある。(もちろん、これよりも大きなサイズも可能である。)各機能部を一括してしかも精度良く(1μm以下)作製できるので、他方式の部品組み立て方式に比較すると、はるかに正確に作製できるので、検出精度も従来と同程度以上は期待できる。本発明は超小型で軽いので携帯が可能であるから、その場観測ができる。しかし、従来品は携帯が殆どできないことから、その場観測は極めて困難であり、この点でも大きな優位性がある。
さらに、本質量分析装置では、磁場室に基板作製のコイルを使用する。基板同士でアライメントしてコイルを配置するので、配置精度が10μm以下で非常に良い。しかもコイルの大きさも1mm〜10mmと小さいので、全体のサイズも大きくならない。このような基板コイルを使用した磁場室は新規性および進歩性が高い。価格やサイズも小さく、精度も高いので、従来品より格段に優位性を有する。尚、コイルは電子イオン化法にも使用する。これも新規性および進歩性が高い。
図1は、本発明の超小型加速装置の実施形態の一例を示す図である。 図2は、本発明の粒子発生装置11の一例を示す図である。 図3は、荷電粒子の線形加速装置の構造を示す図である。 図4は、高周波導波管を用いた荷電粒子加速管の一例を示す図である。 図5は、本発明の荷電粒子加速装置を複数連結させた加速装置を示す図である。 図6は、本発明の荷電粒子加速装置の製造方法の一例を示す図である。 図7は、本発明の荷電粒子加速装置の製造方法の一例を示す図で、基板側壁形成後、導電体膜パターニングまでのプロセスを示す図である。 図8は、上側基板(主基板201U、上部基板202)と下側基板(主基板201B、下部基板203)の間にガラス基板251を挟んで静電結合で付着させる場合の荷電粒子加速装置の作製方法を示す図である。 図9は、引き出し電極構造の別の実施形態を示す図である。 図10は、中央孔を有する基板側壁電極を複数配置した加速空洞室を示す図である。 図11は、電磁石(コイル)の作製法を示す一実施形態である。 図12は、比透磁率μの高いコアを挿入した高性能のコイルを作製する方法を示す図である。 図13は、上下基板に配置するコイルの作製方法を示す図である。 図14は、本発明のコイル(電磁石)によって作製された四極電磁石構造を示す図である。 図15は、図1における偏向電磁石25、30、34、37等の荷電粒子通過空洞およびそこに配置された電磁石を示す図である。 図16は、図1で示した円形加速器(シンクロトロン)8−1を有する超小型加速装置10−1をさらに1回り大きい円形加速器8−2に接続した図で、2重シンクロトロン(あるいは2サイクルシンクロトロン)を示す図である。 図17は、円形加速器8を分割して基板に作製する場合の模式図を示す図である。 図18は、本発明のマイクロ波イオン源を示す図である。 図19は、本発明の質量分析の一実施形態を示す図である。 図20は、四重極型質量分析室の作製方法の一例を示す図である。 図21は、四重極電極を基板に付着させる構造と方法の一例について説明する図である。 図22は、四重極電極を基板に付着させる構造と方法に関する別の例について説明する図である。 図23は、本発明の四重極電極の作製方法を示す図である。 図24は、四重極電極棒407を基板に付着する方法を説明する図である。 図25は、薄膜形成法を用いて四重極電極を質量分析室内部へ配置する方法について説明する図である。 図26は、八重極電極型の構造を示す図である。 図27は、本発明の主基板に扇型磁場が作用する質量分析室となる貫通室を持つ扇型磁場方式の質量分析装置を示す模式図である。 図28は、質量分析室で磁場により力を受けたイオンを多方向に配置したイオン検出装置でイオン検出する質量分析装置を示す図であり、 図29は、本発明の二重収束型質量分析装置を示す図である。 図30は、単収束扇型磁場アナライザーおよび二重収束扇型磁場アナライザーの1つの設計指針を示した図である。 図31は、本発明のFTICRを示す図である。 図32は、ICR室のサイズを大きくする場合の構造を示す図である。 図33は本発明のコイルを配置したFTICRである。 図34は、図33とは異なる本発明のコイルを配置したFTICRである。 図35は、図19において説明したものとは別のイオン化法を示す図である。 図36は、別のイオン化法の実施形態を示す図である。 図37は、大気圧化学イオン化法について説明する図である。 図38は、尖塔電極を有するイオン化室の作製方法を示す図である。 図39は、高速原子衝撃法(FAB)の一種である連続フロー(CF)−FABイオン化を本発明に適用した実施形態を示す図である。 図40は、イオントラップ型質量分析装置の作製方法を示す図である。 図41は、荷電粒子がエンドキャップ電極609を通るイオントラップ質量分析装置を示す図である。 図42は、本発明を用いたダイノードを多数配置したイオン検出室を示す図である。 図43は、図42で示す平行平板型電極を作製する方法の一実施形態を示す図である。 図44は、本発明の中央孔をチャネル形二次電子増倍管に適用した実施例を示す図である。 図45は、本発明の質量分析装置の概要図(基板面に垂直な断面図)である。 図46は、二重収束型質量分析部(電場部+磁場部)(平面図)および(b)多種イオン同時検出法(平面図)を示す図である。 図47は、電子イオン化部(断面図)を示す図である。 図48は、本発明の最終製品(本体のみ)のイメージ完成図である。 図49は、縦方向に形成したイオントラップ型質量分析装置を示す図である。 図50は、基板貫通孔また基板凹部の側壁へパターンを形成する方法または装置を示す図である。 図51は、貫通孔側壁エッチング装置を示す図である。 図52は、型(モールド)を用いて本発明の加速器や質量分析装置の貫通室を作製する方法を示す図である。 図53は、前面および後面に発光体を配置した露光装置を示す図である。 図54は、モールドインゴット法を用いた中央孔を形成する方法を示す図である。 図55は、中央孔が形成される部分の中央孔高さの略半分の位置で切断した基板に中央孔を形成する方法を示す図である。 図56は、貫通室内壁を研磨して平滑でなめらかな面にするための方法((a))および貫通室内壁へパターンを転写する方法について説明する図((b)、(c))である。 図57は、本発明のシンクロトロン方式基板型イオン注入装置を基板面に平行に見た平面図である。 図58は2つの環状軌道を有するシンクロトロン型イオン注入装置を示す図で(平面図)ある。 図59は、イオン出射ライン2143と2段目環状軌道2145との接続領域の状態を拡大したもの(基板と平行な平面図)である。 図60は、2段に積層したイオン注入装置の軌道連結部の断面を示す図である。 図61はRFQ(Radio Frequency Quadrouple)型線形加速器の一例を示す図である。 図62は図61に示すRFQ型線形加速器の作製方法を示す図である。 図63は、線形加速器の別の加速方法(IH型)を示す図である。 図64は、別の線形加速室における加速方法を示す図である。
本発明は、基板または薄板(主基板または第1基板)において、その厚み方向に貫通溝(凹部とも記載)または貫通孔(以下、空洞とも記載)が形成されており、その空洞内を電子やイオン等の荷電粒子が高速で移動する加速器である。空洞の上には基板または薄板(第2基板)が、その空洞の両側の基板側壁上に付着しており、空洞の下にも基板または薄板(第3基板)(貫通溝の場合は、主基板の底面)が、その空洞の両側の基板側壁下に付着している。従って、空洞は、その上下を第2基板および第3基板で、その横側を第1基板側壁で挟まれた気密空間となっている。気密空間である空洞の一部において、その空洞の上、および/または下、および/または両側の基板側壁の一部または全部がくり抜かれ(または孔が形成され)、そのくり抜かれた部分または孔(以下、真空伝達孔とも記載)から、空洞内の気体(空気、酸素、窒素など)が排気され、空洞内は所定の低圧状態(たとえば、真空に近い低圧状態)になっている。
空洞内の一部(または空洞の外側)において、空洞の上および/または下にコイルや電磁石や永久磁石が配置され、コイル等の作る磁界により空洞内を通る電子やイオン(以下、荷電粒子)は力を受けて、加速および/または偏向する。および/または、空洞内の一部(または空洞の外側)において、空洞の一方の横側および/または他方の横側にコイルが配置され、コイルの作る磁界により空洞内を通る荷電粒子は力を受けて、加速および/または偏向する。あるいは/および、空洞内の一部(または空洞の外側)において、空洞の上および/または下に電極配置され、電極の作る電界により空洞内を通る荷電粒子は力を受けて、加速および/または偏向する。および/または、空洞内の一部(または空洞の外側)において、空洞の一方の横側および/または他方の横側に電極が配置され、電極の作る電界により空洞内を通る荷電粒子は力を受けて、加速および/または偏向する。
第1基板内に荷電粒子発生部(室)を作製し、その荷電粒子発生部で発生させた荷電粒子を第1基板内に作製した空洞(これを(荷電粒子)導入空洞と呼ぶこともある)を通して、荷電粒子を加速させることができる空洞(これを(荷電粒子)加速空洞と呼ぶこともある)へ導くこともできる。あるいは、外部の荷電粒子発生装置を第1基板内に作製した空洞(これを(荷電粒子)(外部)導入空洞と呼ぶこともある)の外部との入り口(これを(荷電粒子)(外部)導入空洞入口と呼ぶこともある)と接続し、外部導入空洞を通して、荷電粒子を主基板内の空洞や加速空洞へ導くことができる。加速空洞内を運動する荷電粒子は、第1基板と外部とつながる荷電粒子排出出口(これを(荷電粒子)排出出口と呼ぶこともある)から外部へ出ていく。荷電粒子排出出口と加速空洞は第1基板内に作製した空洞(これを(荷電粒子)排出空洞と呼ぶこともある)でつながっている。加速された荷電粒子は、荷電粒子排出出口から出て、医療用途、分析用途、商品改質用途等種々の目的に適用できる。あるいは、荷電粒子排出出口はなく、主基板内に形成された分析室等でイオン分析される。
本発明の加速器(これを基板加速器と呼ぶこともある)は、フォトリソグラフィ法を用いたり、レーザーパターニング法、金型を用いた金型形成法、打ち抜きで作製する打ち抜き法などを用いて作製できるので、空洞幅や空洞深さが、0.1mm〜0.5mm、または0.5mm〜1.00mm、あるいは、1.0mm〜10mm、あるいは、1cm〜2cm、あるいは2cm〜10cm、あるいは10cm以上のものが極めて正確に作製でき、また、直線形、多角形、円形、楕円形、双曲線形、あるいは他の曲線形の形状の加速器が所望の寸法で作製できる。たとえば、直線形であれば、1枚の基板の中に多数の直線空洞を形成し、その直線空洞を空洞の長さ方向に切りだし(たとえば、ダイシング法により)、その切りだしたものを空洞同士で連結していけば、任意の長さの線形加速器が作製できる。
たとえば、第1基板はSi基板であり、加速空洞幅を5mm、加速空洞深さを5mmとし、加速空洞の両横側における第1基板内に複数のコイル(長さ10mm)が形成され、加速空洞の上下において厚さ0.5mmのガラス基板(第2基板、第3基板)が第1基板に付着しており、その上下に複数のコイル(長さ20mm)が配置されている場合、第1基板のサイズが500mm×500mmであるとき(あるいは、このサイズのものが作製できる円形ウエハ(直径が500√2=707mm以上)であるとき)、1つの線形加速器は長さ500mm、幅15mm、高さ6mm程度になり、1枚の基板(第1基板に第2基板と第3基板が付着し、その上下および/または左右にコイルが配置)から、約33個(この1個1個を単位加速器と呼ぶ)が取れる。この単位加速器を10個連結させると、5mの線形加速器となるから、1枚の基板から16.5mの線形加速器ができる。従って、1kmの加速器なら、61枚の基板があれば良い。
円形加速器の場合も、1枚の基板だけで作製できる超小型加速器の場合、サイズの異なる円形軌道(円形空洞)を多数作製し、それらの間をつなぐ空洞(これを接続空洞と呼ぶこともある)を作製し、段階的に速度を上げて、それに応じて軌道を移動させていき、最後の軌道(通常は、最外側となる)で最終速度まで加速させて荷電粒子を外部へ放出する。本発明では、すべての空洞、コイル、電極等のパターンを同時に形成できるので、円形軌道の数に関係なくプロセスステップ数(製造工程の数)は変化なく、コストは殆ど変化がない。たとえば、最初に半径10mmの円形軌道とし、空洞の幅を5mm、次の円形軌道の大きさを25mmとし、その次の円形軌道の大きさを半径40mmとし、順次15mmずつ半径を大きくした同心円状の円形加速器にしたとき(空洞幅は、すべて5mm、空洞と空洞の間の間隔は10mm)、500mm円形ウエハでは、16個の円形軌道ができる。これらを順次接続し、各円形軌道で加速させていく。最初の小さな円形軌道で10m/secの速度で円運動をし、次の円軌道で4倍の速度にし、n番目で10×4n−1m/secにすると、最終の16番目の円軌道で10万km/secになり、光の1/3の速度にできる。1つのウエハで超高速の荷電粒子を作製できる。
円形加速器のサイズが大きくなる場合は、線形加速器と同様に、基板を連結させて作製することができる。たとえば、1枚の基板のサイズが500mm×500mmであり、円形加速器の直径が1000mm(1m)である場合、4枚の基板に1/4円分ずつ作製し、その1/4円の基板4枚を接続すれば良い。もっと大きな円形加速器を作製するときは、たとえば、10000mm(10m)の円形加速器の場合、1000mm×1000mmの基板なら、約100枚の基板を接続すれば良い。
本発明は、加速器を基板上に作製したもので、加速空洞等の荷電粒子が通る空洞、荷電粒子を加速・減速または偏向する電界を発生する電極、荷電粒子を加速・減速または偏向する磁界を発生するコイル・電磁石を搭載するものである。図1は、本発明の超小型加速装置の実施形態の一例を示す図で、超小型加速装置は1枚の基板9に搭載され、荷電粒子発生装置11、線形(型)加速装置13、各種電磁石15、17、19、21、22、23、26、28、29、31、32、35、36、偏向電磁石25、30、34、37、荷電粒子が通る空洞12、14、16、18、20、24、27、33、38、40、線形加速装置39を有する。これらは一例であるから、ここに記載したものを省いたり、さらに加えたり、あるいは別の機能を有するものを付加することもできる。
荷電粒子発生装置11で発生した荷電粒子は、空洞12を通り線形加速装置13で加速され、空洞14を通り偏向電磁石15で軌道を偏向し、さらに空洞16を通り偏向電磁石17で軌道を偏向いよび/または収束し、さらに空洞18を通り偏向電磁石19で軌道を偏向し、次の空洞20を通過し、インフレクター21を介して、円形加速器8において荷電粒子が通る空洞である蓄積リング24に入射する。空洞20の途中に線形加速装置42を設けて、インフレクター21へ入る荷電粒子の速度を調節することもできる。また、荷電粒子発生装置11からインフレクター21へ入射する途中で、他の偏向電磁石、加速電極、減速電極、線形加速装置等を設けても良い。また、その途中に他の偏向電磁石、加速電極、減速電極、線形加速装置、収束電磁石等を設けても良い。
インフレクター21から円形加速器8の蓄積リング24に入射した荷電粒子は、(水平方向用)収束電磁石22、(垂直方向用)収束電磁石22で収束し、偏向電磁石25で偏向・加速し、次の蓄積リング27へ入り、ここでも高周波加速空洞29でさらに加速し、(垂直方向用)収束電磁石26、(水平方向用)収束電磁石28で収束し、偏向電磁石30で偏向・加速し、次の蓄積リング33へ入り、ここでも(垂直方向用)収束電磁石31、(水平方向用)収束電磁石32で収束し、偏向電磁石34で偏向・加速し、次の蓄積リング38へ入り、ここでも(垂直方向用)収束電磁石35、(水平方向用)収束電磁石36で収束し、次の偏向電磁石37で偏向・加速し、次の蓄積リング24へ入る。このようにして、荷電粒子は、蓄積リング24、27、33、38中を加速しながら回り続け、所望の速度および所望の数の荷電粒子が得られたら、荷電粒子を外部へ導く空洞(これを荷電粒子排出空洞と呼ぶこともある)40へ入り、荷電粒子排出空洞40の出口41から外部へ取り出す。荷電粒子排出空洞40の途中に線形加速装置39を設けて荷電粒子をさらに加速させても良い。また、その途中に他の偏向電磁石、加速電極、減速電極、線形加速装置、収束電磁石等を設けても良い。
以上のように、蓄積リング24、27、33、38は1つなぎになった環状通路となっている。また、種々の空洞は、各所に孔が形成され、その孔は真空引きラインにつながり、その真空引きラインはさらに外部の真空ポンプに接続し、各種空洞は真空に近い状態まで圧力が低下する。さらに、種々の空洞は、各所に孔が形成され、その孔から窒素、He、Ar等の不活性ガス等のガスを導入することもでき、適宜空洞内部をクリーニングしたり、ガスパージできる。
図1に示すように、本発明は、電子またはイオンの粒子発生装置11も主基板(第1基板)9内に配置する。この粒子発生装置11の一例を図2に示す。図2に示す粒子(イオン発生装置は平行平板型電極を有するイオン発生装置である。図2(a)は基板平面に対して垂直な(基板厚み方向の)断面構造で、図2(b)は平面構造図である。主基板51内に、プラズマ発生室である空洞76、プラズマ発生室76で発生した電子、陽子や各種イオン等の荷電粒子を取り出し加速装置(図1の13)へ導く空洞77が形成され、主基板51の上面に第2基板(上部基板)53、主基板51の下面に第3基板(下部基板)52が付着されている。
プラズマ発生室76において、下部基板52上に(下部)電極54が形成され、その周囲はシリコン酸化膜(またはシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜)等の絶縁膜55が積層されて被覆されている。上部基板53上に(上部)電極58が形成され、その周囲はシリコン酸化膜(またはシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜)等の絶縁膜59が積層されて被覆(保護)されている。これらの電極54および58は対向するようにパターニング・配置され、主基板51の上下両面に第2基板53および第3基板52が付着される。下部基板52にはコンタクト孔が開けられそのコンタクト孔にコンタクト電極(導電体膜)56が形成され、さらに、下部基板52の片面に取り出し電極57が形成されている。上部基板53にもコンタクト孔が開けられそのコンタクト孔にコンタクト電極60が形成され、さらに、上部基板53の片面に取り出し電極61が形成されている。これらの電極57および61は、上下基板52、53を主基板51に付着させたときに、外側に配置され、これらの電極間に整合回路78および交流または高周波電極79が接続され、一方の電極はアース接地される。
上部基板53には、ガス導入孔71、プラズマ発生室76の気体を排気して低圧にする気体排気孔72、73、さらに加速装置側の空洞77にも気体を排気して低圧にする気体排気孔74が開けられている。これらのガス導入孔71、気体排気孔72、73、74には、上部基板53の上面側にシール部62が形成されており、このシール部62にガス導入ライン63、気体排気ライン64、65、66が接続し、外部から外部気体(空気など)等がプラズマ発生室76や空洞77へ入らないように気密シールされている。気体排気ライン64、65は真空ポンプ68、69に接続され、プラズマ発生室76は所定の圧力(たとえば、0.1atm〜0.001atm)まで下げられ、その状態で取り出し電極57、61を通して上下電極54および58に高周波電圧印加すると、気体がプラズマ電離し、電子が発生したり、イオンになったりして、荷電粒子が発生する。たとえば、アルゴンガス(Ar)を導入すれば、Ar+や電子等が発生する。メタン(CH4)ガスを導入すれば、種々のイオン(C−、CH+、CH2+、CH3+、CH4+等)が発生する。ヒ素ガス(As)を導入すれば、As+や電子等が発生する。
電極54および電極58の電極間距離d1は、主基板51の厚みとほぼ同じ(厳密には、主基板の厚み−上下の電極厚み)であるから、主基板の厚みを1mmとすれば、100Vの印加により、1KV/cmの高電界が印加できるので、低電圧でプラズマ発生が可能である。もっと高電界を印加するには、高電圧をかける以外に、主基板の厚みを薄くしたり、あるいは、主基板(全体)の厚みを薄くできない場合は、電極を設ける部分だけの距離d1を小さくするために、主基板を所定厚みだけエッチングしてその底部に電極を形成したり、あるいは上部基板または下部基板に突部を設けてその突部に電極を形成すれば良い。この突部は上部基板または下部基板に別基板を付着して作製することもでき、その突部を付けた上部基板または下部基板を主基板の上下に付着すれば良い。
加速装置側空洞77にも気体排気ライン66が接続し、真空ポンプ70に接続されるが、加速装置側空洞77の圧力は、プラズマ発生室76に比較して、かなり低く(たとえば、10−3atm〜10−12atm)なっている。従って、プラズマ発生室76で発生したプラズマの一部は加速装置側空洞77に導入される。また、加速装置側空洞77には加速空洞が接続しているので、荷電粒子が加速装置側空洞77へ引き寄せられる。尚、プラズマ発生室76は加速装置側空洞77より大きく記載しているが、プラズマが発生できる面積があれば良いので、加速装置側空洞77が大きくなる場合もある。その場合、加速装置側空洞77の方が低圧なので、プラズマ発生室76と加速装置側空洞77との間に開閉バルブを備えても良いし、プラズマ発生室76と加速装置側空洞77との間の一部を狭くしても良い。プラズマ流は80の方向へ流れ、加速装置側へ入り込む。
プラズマ発生室76と加速装置側空洞77との間に引き出し電極83が配置され、プラズマ発生室76で発生したイオンを引き出しても良い。引き出し電極83は、中央孔84を有する主基板51の基板側壁81の周囲を導電体膜82で覆った構造である。主基板51の基板側壁81は断面図(立面図)2(a)および平面図2(b)からも分かるように加速装置空洞77の内面周囲に張り出して形成され、中央に中央孔84が形成されている。また、上部基板53の下面(加速装置側空洞77の内側面の上面)に導電体膜配線85−1が形成され、この導電体膜配線85−1は導電体膜82と接続している。上部基板53に形成されたコンタクト孔およびそこに形成された導電体膜86は導電体膜配線85−1とつながり、コンタクト孔内導電膜86は上部基板53上面に形成された外側電極・配線87に接続する。この結果、引き出し電極83に外側電極・配線87からイオンや電子を引き出す電圧を印加することができる。
図2の引き出し電極83には加装置側へ導くイオンと逆電荷の電圧を印加するが、図2の場合の引き出し電極82は直接イオンに直面しているので、中央孔84に入って加速するイオンのほかに引き出し電極82の側面に衝突するイオンも多いので、イオンの引き出し効率が悪くなる可能性がある。そこで、中央孔84の孔のサイズを調整してイオンを通り易くしても良い。たとえば、孔サイズを加速装置側空洞77と同じサイズ、すなわち基板側壁81を設けず、加速装置側空洞77の周囲電極85(上部基板下面の電極配線85−1、主基板51の側面電極85−2、下部基板下面の電極配線85−3、主基板51の側面電極85−4が連続して繋がった環状(矩形帯状)電極)だけにする場合、中央孔84を基板側壁82に設けてその中央孔サイズの大きさを変化させて最適値にし、その上に導電体膜82を形成する場合などである。他に、引き出し電極83の手前、イオン発生室76側に導電体膜を設けない中央孔を有する基板側壁を設けて、引き出し電極83の前方側の垂直壁電極を遮り、イオンが中央孔の方へ向かうようにする方法もある。
その他に図9に示す方法もある。図9は、引き出し電極構造の別の実施形態を示す図である。図9(a)は垂直断面図、図9(b)は平面断面図である。図9においては、引き出し電極83の手前、イオン発生用電極54、58との間に収束用電極89が存在する。図2における引き出し電極83の基板側壁81は上下基板53、52、主基板51の側面にほぼ垂直になっているが、本実施形態では、基板側壁が傾斜していて加速装置側空洞77−2(基板側壁81を挟んで右側(加速空洞側)の空洞)の方へ徐々に狭くなり中央孔84へつながる。中央孔84のサイズが加速装置側空洞77−2へ向かうにつれて徐々に小さくなると言っても良い。またこの部分を加速装置側空洞77−2の入り口部88としたとき、入り口部88が加速装置側空洞77−2側へ徐々に小さくなると言うこともできる。逆に、中央孔84のサイズが加速装置側空洞77−1(基板側壁81を挟んで左側(イオン発生用電極側)の空洞)の方へテーパー状に傾斜して大きくなっていると言うこともできる。基板側壁51−2が加速装置側空洞77−2の方向に徐々に厚くなっているとも言える。さらに、図9(b)に示すように、プラズマ(イオン)発生室76の出口が加速装置側空洞77の入り口より大きい場合に、平面的に見た時に、出口部48が徐々に狭くなる形状に形成されている。(図2に示す場合は、図2(b)に示すように、プラズマ(イオン)発生室76の出口サイズと加速装置側空洞77の入り口サイズは急に変化している。)この加速装置側空洞77の入り口部88の傾斜した主基板側面に導電体膜電極89が形成され、この導電体膜電極89には上部基板53または下部基板に形成された導電体膜配線45へ繋がり、その導電体膜配線45は上部基板53または下部基板に形成されたコンタクト孔およびその中の導電体膜配線46を通して外側電極47へ接続する。
この導電体膜電極89はプラズマ(イオン)発生室76の出口部の(平面的に見て傾斜した)主基板側面にも伸びて形成されている。また、中央孔の一部と加速装置側空洞77−2の基板側壁81の側面には導電体膜電極82が形成されていて、外側電極87へ接続している。導電体膜89と導電体膜82は接続していないので、外側電極47と87から異なった電圧を印加できる。すなわち、導電体膜89にはイオンと同電荷の電圧を印加しておき、イオンが空洞の中央部へ収束するようにする。また、引き出し電極82にはイオンと逆電荷の電圧を印加するので、イオンは引き出し電極82へ引かれて加速して、空洞77−1の中央孔84を通って隣の加速空洞77−2へ入る。加速が弱ければ、加速空洞77−2へさらに中央孔を有する基板側壁に導電体膜を積層した加速電極(静電レンズ)を設けて、イオンを加速する。加速しすぎていれば、逆電位をかけて減速電極にすれば良い。本発明は、短い距離でも多数の加速電極および減速電極を設けて、それぞれに外側電極を簡単に作製できるので、所望の速度でイオンを加速空洞側空洞77−1および77−2の中を通すことができる。このように図9に示す構造によって、引き出し電極によりイオンが加速装置側空洞77へ引き寄せられること、出口部や入り口部に印加したイオンと同電位によりイオンが収束されること(すなわち、中央側へ集まること)、出口部や入り口部が徐々に狭くなっているために出口部や入り口部がイオンと同電位でも反発して押し戻されるイオンは少ないことなどから、イオン発生室76で発生したイオン(引き出し電極と逆電位)の多くが加速装置側空洞77−2へ入っていき、加速されているためにさらに加速装置側へ進んでいく。テーパー状になった導電体膜89をイオンの進行方向に対して幾つかに分割しておき、それぞれの電極に異なる電圧をかけるようにすることもできる。たとえば、イオンの進行方向に対して徐々に電圧を弱めていけば、イオンに印加される電界を一定にできるか、少しずつ弱めることもできる。(イオンの進行方向に対して見れば、イオンと電極との距離は小さくなるので同じ電圧印加だと電界が強くなる。)この結果、安定してイオンを進行方向(加速空洞77−2側)へ送り出すことができる。あるいは、分割した導電体膜89電極に収束電圧と加速電圧を選択して印加して、イオンを収束しつつ加速させることもできる。このように導電体膜89電極を分割して個々に調整しながら電圧印加すれば、イオンを効率的に加速空洞77−2側へ送り出すことが可能となる。
あるいは、傾斜した電極89へイオンと逆電位の電位をかけて、さらにその電位より高い逆電位の電位を引き出し電極に印加することによっても多数のイオンを加速装置側空洞77−2へ導くことができる。すなわち、イオン49が進んでいくほど電界が大きくなっていくので、イオン49が中央に集まって進んでいくようになる。
次に、図2、図9に示すプラズマ(イオン)発生装置、加速空洞側空洞、引き出し電極、加速(減速)電極のプロセスについて説明する。まず、中央孔を持たない空洞を有するプラズマ(イオン)発生装置等について説明する。主基板(第1基板)51として、導電体基板(Cu、Al、Ti、Zn等の金属やこれらの合金、導電性C(カーボンナノチューブ、グラフェン等も含む)、導電性プラスチック、導電性セラミック等も含む)、Si、SiC、C、化合物半導体等の半導体、プラスチック、ガラス、石英、アルミナ(Al),AlN、高分子樹脂、セラミック等の絶縁体等、これらの複合体を使用できる。上部基板(第2基板)や下部基板(第3基板)として、最適な基板は、内部にコンタクト孔を作製するので、プラスチック、ガラス、石英、アルミナ(Al),AlN、高分子樹脂、セラミック等の絶縁体であるが、主基板51と同じ材料も使用できる。
主基板51上に感光性膜を塗布法や貼り付け法等により付着し、露光法により感光性膜をパターニングする。主基板51と感光性膜の間に絶縁膜やエッチングストッパー用の材料や感光性膜との密着性向上膜を付着させた後に感光性膜を付着しても良い。パターニングされた感光性膜をマスクにして主基板51をエッチング除去し、主基板51の上面から下面に貫通する貫通室を形成する。貫通室は寸法通り作製するためにサイドエッチングの小さい側面がほぼ垂直な形状が望ましいが、サイドエッチングをコントロールできれば垂直形状でなくても良い。主基板がSi基板の場合、表面を酸化、窒化したり、SiO2膜やSiN膜等の絶縁膜を積層した後に感光性膜シートを付着したり、レジストを塗布した後、適度な熱処理(プリベークなど)をし、露光法で所定の部分を窓開けする。この窓から、絶縁膜等を垂直エッチング(異方性エッチング)し、さらにこれらをマスクにして窓開け部分を垂直エッチング(異方性エッチング、DRIE、ボッシュ法等各種ある)して、貫通室を作製する。貫通室内に導電体膜パターンを形成する場合、ここで行なっても良い。主基板が半導体基板、導電体基板の場合、主基板の表面および貫通室の側面に絶縁膜を形成してから導電体膜を形成する。主基板51に感光性膜シート付着法や、レジスト塗布法、感光性膜の電着法等により主基板51の表面および側面に感光性膜を形成する。次に、露光法(斜め露光法、焦点深度の深い露光装置を使用)により、主基板51の表面や側面の感光性膜パターニングを行なう。次に、この感光性膜のパターンをマスクにしてウエットエッチング法または等方性ドライエッチング法により導電体膜をエッチングし、所望の導電体膜パターンを形成する。この後必要なら導電性膜パターン上に絶縁膜の保護膜を形成する。後の上下基板の導電体膜と接続する部分については、同様のフォトリソ法+エッチング法を用いて、その接続部分の導電体膜の窓開けを行なう。次に、上下基板の導電体膜との接続を良くするために窓開けした部分に導電体膜で凸状にしても(少し盛り上げておくと)良い。この方法として、再度の導電体膜の積層を行ない同様のフォトリソ法+エッチング法を用いて、接続部分だけに導電体膜を残す方法や、あるいは選択CVD法やメッキ法等でその接続部に金属等を積層しておいても良い。
上部基板および下部基板には予め電極となる導電体膜パターンを形成する。上下基板がガラス基板、石英基板、プラスチック基板等の絶縁基板である場合は、直接導電体膜を積層できるが、密着性向上用に絶縁膜を積層後、導電体膜を積層しても良い。導電体膜は、Cu、Al、Ti、W、Mo、Au、Cr、Ni、導電性C、導電性PolySi,導電性プラスチック等、これらの合金、複合膜、積層膜等である。CVD法、PVD法、メッキ法、塗布法、スクリーン印刷法、これらの組合せ等を用いることができる。導電体膜を積層後、感光性膜を用いて露光法等で感光性膜パターンを作り、それをマスクにして導電体膜電極や必要な配線を形成する。導電体膜のエッチングはドライエットングやウエットエッチングを用いることができる。その導電体膜パターンを形成後絶縁膜等でカバーして保護膜を形成しても良い。絶縁膜等でカバーした場合は、上下基板に形成する導電体膜パターンとの接続部については、同様のフォトリソ法+エッチング法を用いて、その接続部分の導電体膜の窓開けを行なう。次に、上下基板の導電体膜との接続を良くするために窓開けした部分に導電体膜で凸状にしても(少し盛り上げておくと)良い。この方法として、再度の導電体膜の積層を行ない同様のフォトリソ法+エッチング法を用いて、接続部分だけに導電体膜を残す方法や、あるいは選択CVD法やメッキ法等でその接続部に金属等を積層しておいても良い。その後、コンタクト孔、その中の導電体膜の形成、コンタクト孔上およびその他の部分への導電体膜、電極の形成を行なっても良い。また、上下基板にガス導入孔や真空引き用の開口部を設けても良い。この開口部は、ドライエッチングやウエットエッチングで行なうことができる。
次に、貫通室や導電体膜配線パターンを形成した主基板に上下基板をパターン合わせをしながら付着させる。主基板の導電体膜と上下基板の導電体膜との接続において、互いの接続領域が重なるようにお互いの導電体膜パターンを形成しておくと、接続しやすい。導電体膜同士の接続部には導電性接着剤(接着剤には低融点半田合金も含む)を付着して接着する。接着後所定の熱処理をして接続を確実にする。接着剤を用いない場合でも導電体膜の融点前後での熱処理や融着法により接続を確実にできる。圧力をかければ融点以下の熱処理でも導電体膜同士を接続できる。その他の部分も接着剤を用いた接着法や、常温接合法、拡散接合法、高温接合法を用いて接着できる。主基板51がSi等の半導体基板や導電体基板であり、上下基板がガラス基板や石英基板や、アルミナ基板等である場合は陽極接合法を用いて接着できる。上下基板に設けたコンタクト穴を通して主基板の導電体膜へ接続することもできる。接着剤を用いた場合でも用いない場合でも、接合した後に、上下基板に設けた開口部を利用して、選択CVD法やメッキ法や電鋳法を用いて、接続部に導電体膜を積層できる。さらに、保護膜等でカバーされていない導電体膜部分にも導電体膜を積層できるので、確実な接続を行なうことができる。たとえば、開口部に石英チューブ、ガラスチューブ、耐熱性プラスチックチューブ、SUS等の金属チューブを接続して(耐熱性プラスチックパッキングを接触部に介在しても良い)そこから反応性ガス(たとえば、WF6ガス)を主基板の貫通室へ導入し、別の開口部からポンプで引きながら、反応性ガスを主基板の貫通室を流し、所定の温度で熱処理することによって、導電体膜同士の接続部など導電体膜が露出した部分に導電体膜(たとえば、W膜)を選択的に積層できる。また、それらのチューブを通してメッキ液(銅や各種半田メッキ液)を流して、外側電極から通電すれば導電体膜(銅や各種半田メッキ膜)が露出した部分にメッキ膜を積層できる。その後所定の熱処理を行なえば接続部の接続がより確実になる。
上記では、主基板51の貫通室の形成では支持基板を用いていないが、支持基板を用いて貫通室を形成できる。主基板51の貫通室の形成後にストレス等で基板変形が発生するときには支持基板を用いると良い。主基板に支持基板を付着させて支持基板との付着面と賀ン体側の主基板面を感光性膜等でパターニングして、主基板をエッチングすることによって主基板に貫通室を作製する。支持基板に到達するまでエッチングすれば良い。支持基板を後で取り外す場合は、支持基板と主基板の付着は、軟化性接着剤や低融点金属(合金)(接着材Aとする)を使うと良い。主基板と支持基板を付着した後に上述した方法で主基板に貫通室を形成する。このとき、支持基板もエッチングされるが、選択比の高いエッチング法を用いれば支持基板のエッチングも少なくて済む。その後、絶縁膜や導電体膜や保護膜、それらのパターニングは同じであるが、支持基板は取り外すので、その接続部における膜はエッチング除去しておくことが望ましい。次に、上部基板または下部基板を開口している主基板にパターン同士を合わせながら付着させる。接着剤等(接着材Bとする)を用いる場合、支持基板を取り外すときの温度で付着が外れたり、ずれたりしないような接着剤等を選択する必要がある。たとえば、接着材Bの硬化温度Tは接着材(金属)Aの軟化温度(融点)Tより低い熱硬化性接着剤とすれば良い。上部基板または下部基板を主基板に接着した後で、T以上の温度で熱処理することによって支持基板を主基板から分離させることができる。あるいは、接着剤Aを光剥離接着剤として、接着剤Bを熱硬化性接着剤として、接着剤Bで上部基板または下部基板を接着した後に光照射によって支持基板をはがせば良い。その後他方の基板(上部基板または下部基板)を付着させる。
支持基板の代わりに最初から上部基板または下部基板を付着させる場合も可能である。上部基板と主基板を付着させ、その反対側から主基板のパターニングおよび貫通室を形成する。このとき、上部基板が余りエッチングされないように、選択比の高いエッチング条件を設定することが望ましい。上部基板または下部基板に導電体膜等のパターンが必要な場合は、それらのパターンを形成した後に主基板と付着させる。特にパターン形成面が主基板側に面するときには、予め上部基板または下部基板に導電体膜等のパターンを形成しておく。この上部基板または下部基板のパターン面を主基板のパターン面に合わせて付着させる。主基板のパターン面とは、予め貫通室が形成されている場合はその貫通室パターン、さらに主基板に導電体膜等のパターン面が形成されている場合はその導電体膜等のパターンに合わせても良い。貫通室を付着した後で形成する場合は、付着の際は余り正確なパターン合わせは必要ではない。貫通室を形成した後、絶縁膜、導電体膜、保護膜を積層し、これらのパターニングを行なう。このとき、上部基板にも電極・配線形成が必要なので、および/あるいは貫通室側壁へ電極・配線形成が必要なので、感光性シート法、電着レジスト法や焦点深度の高い露光法、回転露光法、斜め露光法等を用いて感光性膜パターンを作製し、ウエットエッチングやドライエッチングで導電体膜等のパターン形成を行なう。その後、電極・配線パターンを形成した上部基板または下部基板を主基板に付着させる。
上記で上部基板に電極・配線パターンを予め作製したものを用意しておき、また主基板に予めその上部基板のパターン部分を逃がした凹部を形成しておく。この主基板の凹部と上部基板のパターンを合わせて上部基板と主基板を付着させる。その後、主基板に貫通室を形成する。このとき、上部基板に既に形成した電極・配線パターンがあるので、この電極・配線パターンがエッチングされない(されにくい)ような条件で貫通室を形成する。たとえば、主基板がSiの場合、SiはCF系ガスで高速にエッチングできるが、上部基板にAlや銅の電極・配線を形成しておけば、CF系ガスでこれらは殆どエッチングされない条件を選定できる。この後、絶縁膜を形成し導電体膜を形成した後、主基板の側面だけ導電体膜のパターニングを行なうことができる。上部基板にも導電体膜は形成されるが、上部基板上は感光性膜がカバーしていないので、上部基板の導電体膜はエッチングできて、しかも既にパターニングされた上部基板の電極・配線は絶縁膜で被われているのでエッチングされない。上部基板の電極・配線と主基板の導電体膜の接続は、絶縁膜形成後にその接続部分の絶縁膜を除去するパターニングを行なっておけば良い。その後で導電体膜を積層するので、接続は十分可能である。あるいは、上部基板の電極・配線部分上の絶縁膜を全部(殆ど)除去しておいても良い。導電体膜のパターニングのときに、上部基板の電極・配線部分にも重ねてパターン形成しておけば良い。
次に、中央孔を形成する場合の方法について述べる。主基板は分割し(主基板の厚みの半分の主基板を用いる、それを半主基板とする)、中央孔を形成するパターニングをする。このとき、主基板に絶縁膜等を形成したり、感光性膜密着性用の膜を形成したり、エッチングストッパー用のマスク(レジストが削れたときに主基板をエッチングしないためのもの)としての膜を形成しても良い。そのパターンで中央孔を形成する。曲線を持って形成したいときには、ウエットエッチングやドライエッチングのサイドエッチングを利用する。垂直パターンのときには異方性エッチングを行なう。次に、貫通室形成および基板側壁(中央孔を含む)形成用のパターニングを行なう。垂直パターンを形成する部分と図9(a)に示すような傾斜した主基板側面を形成する部分がある場合には、パターニングは別々に行なう。さらに、傾斜角度を複数持つ場合にはそのつどパターニングを行ない、垂直エッチング、傾斜エッチング1、傾斜エッチング2、・・・と分けてエッチングする。主基板を一部残す場合にも同様である。基本的には、主基板に貫通室を形成する。この結果、半主基板中に中央孔(これも半分)、中央孔を有する基板側壁(これも半分)、貫通室(これも半分)が形成される。中央孔のサイズもエッチング条件により自由に大きさを変えることができる。また傾斜角度もエッチング条件により自由に選択できる。また、図9(b)の平面方向に傾斜した出口部のパターンもマスクで自由に変えることができる。従って、任意の所望の形状を作製できる。この後、絶縁膜を形成し、導電体膜を形成し、導電体膜のパターニングを行なうことができる。高さが半分になっているので、膜形成やパターニングがより簡単になる。中央孔内にも当然絶縁膜や導電体膜を形成でき、それらをエッチング除去もできる。本発明では、LSIプロセスを用いているので、基板側壁や貫通室の大きさなどは非常に正確に形成できる。導電体膜のパターニングでは貫通室のパターニングが深い所でむずかしい部分もあるが、1μm〜10μm以内の精度で加工はできるので、本発明の加速装置の精度には殆ど問題ない。
半主基板を2つ同じものを作製し、それらを中央孔が一致するように付着させれば良い。付着法はこれまでに述べた方法でできる、さらに静電陽極結合をする場合は、間に薄いガラス基板、石英基板等を介すれば良い。そのガラス基板等にも同じサイズで貫通室や基板側壁や中央孔、必要な部分に導電体膜を形成して、それを半主基板と順次または同時に付着させれば良い。支持基板を半主基板に用いるときも同様に可能である。この場合、たとえば、上部基板に半主基板を付着させてから支持基板を外し、その後でさらに半主基板を付着させて、支持基板を外し、最後に下部基板を付着させる方法を取ることができる。あるいは、上部基板に半基板を付着させてから支持基板を外し、下部基板にも半基板を付着させてから支持基板を外し、それらを半基板同士を付着させるという方法でも可能である。最後に、上部基板および下部基板にコンタクト孔・その中の導電体膜、さらに外側電極を形成できる。あるいは予めこれらのコンタクト孔・外側電極を形成しておくことも可能である。さらに、貫通室の深さを深くしたい場合には、上記のプロセスを何回も重ねていけば良い。同じものを同時に何枚も作りそれらをさらに重ねて付着させていけば工程が長くなることもなく貫通室の深さが深いものも自由に簡単に作製できる。たとえば、0.5mm〜1mmの主基板を用いて順次積層していけば、4回の重ね合わせで8mm〜16mmの貫通室を持つ加速装置を作製できる。
<他のプラズマ発生法>
図3は、荷電粒子の線形加速装置の構造を示す図である。図1では13や39に使用でき、その他、単独でも線形加速器としても使用できる。図3(a)は基板(主基板91の上面に第2基板(上部基板)92が、下面に第3基板(下部基板)が付着)の厚み方向断面構造図(加速空洞99の進行方向、すなわち荷電粒子Gの進行方向)、図3(b)は基板面に平行な平面図で、図3(c)は厚み方向断面構造図(加速空洞99の進行方向、すなわち荷電粒子Gの進行方向に対して垂直方向)である。
加速装置内の荷電粒子Gが通る加速空洞99は、主基板(第1基板)91(厚みh1)に形成した貫通孔(室)99(幅a1)の上部を第2基板(上部基板)92で、下部を第3基板(下部基板)93で付着して内部の貫通孔(加速空洞)99は気密空間となっている。この加速空洞99内に長手方向(荷電粒子の進行方向)に環状電極(貫通孔99の側壁、上部基板92下面、下部基板93の上面に形成された連続した(電気的に一繋ぎとなった)電極)94が離間して多数形成される。(94−1、2、・・・)たとえば、環状電極94−1は、深さh1、幅a1の貫通孔99において、貫通孔99の側壁に導電体電極94S1および94S2が形成され、さらに、上部基板92の下面に導電体電極94U、並びに下部基板93の上面に導電体電極94Bが形成され、これらの導電体電極94S1、94S2、94Uおよび94Bは電気的に接続し、長さ(加速空洞99の長手方向)k1であり、より正確な形状は矩形形状である。導電体電極の厚みをt1(すべて一定と仮定する)と、導電体電極94S1と94S2の距離b1は、a1−2t1で、導電体電極94Uと94Bの距離d4は、h1−2t1である。たとえば、ai=1mm、h1=1mm、導電体膜の厚みを10μmとすれば、bi=0.98mm、di=0.98mmとなる。
この環状電極94−1の隣には、距離j1で離間して長さk2の環状電極94−2が形成され、その隣には、距離j2で離間して長さk3の環状電極94−3が形成され、加速空洞99内には多数の環状電極94が形成される。荷電粒子Gの進行方向において、i番目の環状電極94−iの長さをkiとし、その次のi+1番目の環状電極94−(i+1)との距離をjiとする。環状電極94(94−i:i=1、2、・・・)の上部基板92にコンタクト孔が形成され、そのコンタクト孔にコンタクト電極95(95−i:i=1、2、・・・)が形成され、さらにそのコンタクト電極95に接続する上部電極96(96−i:i=1、2、・・・)が形成され、上部電極96は上部基板92の下面に形成されている導電体電極94Uと電気的に接続する。また、環状電極94(94−i:i=1、2、・・・)の下部基板93にコンタクト孔が形成され、そのコンタクト孔にコンタクト電極97(97−i:i=1、2、・・・)が形成され、さらにそのコンタクト電極97に接続する下部電極98(96−i:i=1、2、・・・)が形成され、下部電極98は下部基板93の上面に形成されている導電体電極94Bと電気的に接続する。
このように空洞99の主基板91の内面に形成された各環状電極94(94−i)には上下基板上に形成された外側電極96(96−i)および98(98−i)から電圧を印加できるが、どちらか一方だけでも良い。従って、どちらか一方だけでも良いが、同時に印加すれば効果的に即座に環状電極94(94−i)内が同電位になる。各環状電極94(94−i)にイオンGと逆電位の電圧を印加すれば、各電環状電極94(94−i)の電位Viによってイオンは加速して進んでいく。たとえば、イオンの質量をm、各環状電極94(94−i)で増える速度をΔuiとすれば、1/2m(Δui)2=zeVが成り立つ。従って、多数個並べるとイオンを非常に高速にできる。たとえば、m=10−25kg、z=1、V=10Vとすれば、Δui=5.6km/sec(1電極あたり)、そこで1万個並べれば、5.6万km/secとなる。すなわち、ki=10μm,ji=5μmとすれば、15cmの長さの加速空洞を作製すれば良い。このように、非常に短い距離で超高速のイオンを実現できる。ただし、イオンは環状電極にも引かれて発散もするので、収束も行なう必要がある。イオンを収束するには、イオンと同電位の電圧を印加する電極を配置するか、四重極磁場をかける。これらを組み合わせながら所望の速度を有するイオンを得ることができる。また、図3に示す加速室では、上部基板92および/または下部基板93に開口部100が1つまたは複数空いていて、この開口部100を通して空洞99を真空びきしたり、あるいは不活性ガス等を導入して内部をクリーニングしたりパージできるようになっている。
加速空洞室は、中央孔を有する基板側壁電極を複数配置して作製することもできる。図10は、中央孔を有する基板側壁電極を複数配置した加速空洞室を示す図である。図10(a)は基板面に垂直な断面図で、図10(b)は基板面に平行な平面図であり、図10(c)はA1−A2における断面図で、図10(a)および図10(b)の左右方向から見た図である。図10に示すように、主基板101にその上面から下面に貫通する貫通室104が形成され、その上部は上部基板102、その下部は下部基板103が付着し、貫通室104の横側面は主基板101の側面となっている。貫通室であるプラズマ発生室やイオン化室104−1で発生したイオン等の荷電粒子G(破線矢印で示す)は、基板側壁101−0の中央部に設けた中央孔105−0を通って貫通室である加速空洞室104−2へ入る。加速空洞室104−2には中央孔105(105−1、・・・、4、・・・)を有する複数の基板側壁101−1(101−1、・・・、4、・・・)が配置されている。基板側壁101(101−1、・・・、4、・・・)の周囲には導電体膜電極106(106−1、・・・、4、・・・)が形成されている。この導電体膜電極106(106−1、・・・、4、・・・)は各基板側壁101(101−1、・・・、4、・・・)の中央孔105(105−1、・・・、4、・・・)の内面にも積層されている。この導電体膜電極106(106−1、・・・、4、・・・)は、上部基板102の下面に形成された導電体膜配線107(107−1、・・・、4、・・・)と接続し、および/または下部基板103の上面に形成された導電体膜配線108(108−1、・・・、4、・・・)と接続する。この導電体膜配線107(107−1、・・・、4、・・・)は上部基板102内に形成されたコンタクト孔およびコンタクト配線109を通して上部基板102上に形成された外側電極・配線110(110−1、・・・、4、・・・)に接続する。また、この導電体膜配線108(108−1、・・・、4、・・・)は下部基板103内に形成されたコンタクト孔およびコンタクト配線111を通して下部基板103下に形成された外側電極・配線112(112−1、・・・、4、・・・)に接続する。
基板側壁電極・配線106には外側電極・配線112から電圧を印加できるようになっている。通常は、この電圧は荷電粒子の電荷と逆の電圧が印加されているので、加速空洞室へ入射した荷電粒子Gは、最初の基板側壁電極配線106−1によって引かれ加速して基板側壁中央孔105−1を通りぬけていき、次の基板側壁電極配線106−2によって引かれ加速して基板側壁中央孔106−1を通りぬけていき、これを繰り返して加速されて、最後の基板側壁電極配線106−nによって引かれ加速して基板側壁中央孔106−nを通りぬけて、(n個の基板側壁電極配線等があるとする)貫通室である隣室104−3へ出射する。隣室104−3は、たとえば、図1における空洞室14や偏向電磁石室15等である。加速空洞室104−2と隣室104−3の間にも中央孔105−5を有する基板側壁101−5があり、荷電粒子はこの中央孔105−5を通って隣室104−3へ入る。この中央孔を有する基板側壁電極は、荷電粒子Gが通る領域が狭いので、荷電粒子Gは余り広がらずに中央付近を通っていく。しかし、やはり荷電粒子の一部は電極側へも引かれていくので、所々に荷電粒子と同電位(プラスまたはマイナス)の電圧を印加して荷電粒子を収束することが望ましい。ここでは荷電粒子と同電位なので少し減速するが、次の加速電極でまた加速させていく。この収束・発散、加速・減速を繰り返しながら、多数の中央孔を有する基板側壁電極を配置して全体として大きく加速させていく。本発明は、LSIプロセスを用いているので、従来では実現できない非常に小さな中央孔および距離の短い基板側壁を用いることができるので、短い距離でも多数の基板側壁電極を配置でき、短い距離で大きな速度まで加速させることができる。さらに、印加電圧も小さくて済むので、大きな電源は必要がなくなる。尚、大きな電源にして大きな電圧も印加でき、その場合は大きな加速を得ることもできる。
また、荷電粒子Gの進行方向に各基板側壁電極へ徐々に電圧を印加することもでき、大きな加速を短時間で短距離で得ることもできる。あるいは、高周波電圧を各基板側壁電極へ印加して、それぞれが同期するようにすれば、収束と発散、および加速と減速を繰り返しながら、全体として大きな加速を得ることもできる。加速空洞室104−2には上部基板または下部基板に開口部113を設けて、真空引きやクリーニングやパージを行なうこともできる。また、各基板側壁の間にそれぞれ開口部113を設けて、それぞれ真空引き等を行なうこともできる。
隣室との間にある基板側壁105−0や105−5は必要なければ配置しなくても良い。たとえば、隣室104−1からの荷電粒子Gが最初の基板側壁電極106−1の前方側側面へ衝突しても問題がない場合や、隣室104−1との圧力が同じで良い場合、荷電粒子Gが十分加速し収束して最初の基板側壁電極106−1の中央孔105−1を通りぬけることができる場合などである。また、基板側壁101−0の中央孔105−0のサイズは、最初の基板側壁電極106−1の中央孔105−1のサイズより小さくして、荷電粒子Gが最初の基板側壁電極106−1に引かれ易くすることもできる。基板側壁電極106(106−1、・・・)の中央孔105(105−1、・・・)のサイズは、同じサイズである方が加速性を均一にできるので望ましい。隣室104−3との仕切りである基板側壁101−5の中央孔105−5のサイズは最後の基板側壁電極106(図では101−4)の中央孔105(図では105−4)のサイズより大きくし、荷電粒子が基板側壁101−5に衝突しないようにすることが望ましい。
図4は、高周波導波管を用いた荷電粒子加速管の一例を示す図で、円板装荷型進行波型加速管の一種である。図4(a)は基板面に垂直な断面図(の模式図)で荷電粒子ビームGの進行方向に平行な図で、図4(b)は基板面に平行な断面図(の模式図)で、図4(c)は基板面に垂直な断面図(の模式図)で図4(a)および図4(b)の左右方向から見た図で、中央孔の断面図である。図4に示す荷電粒子加速管200は、主基板201に形成され、荷電粒子の通路となる貫通孔空洞204、主基板201の上面および下面に付着し、貫通孔空洞204を気密空間とする上部基板202および下部基板203で構成される。荷電粒子加速管200は、荷電粒子の進行方向(貫通項空洞の長手方向)Gにおいて、その両側は中心部が孔(中央孔)の空いた基板隔壁201S−Aおよび201S−Bで仕切られ、さらにその間に中心部が孔(中央孔)の空いた基板隔壁201S−i(i=1、2、3、・・・)で仕切られた複数の空間が形成され、それらの空間の両側には、マイクロ波等の高周波の導入口208が上部基板202にあいている(下部基板203にあいていても良い)空間(これを高周波導入室と記載することもある)204C−Aおよびマイクロ波等の高周波の導出口209が上部基板202にあいている(下部基板203にあいていても良い)空間(これを高周波導出室と記載することもある)204C−Bがあり、それらの間に荷電粒子を加速する複数の空間(加速キャビティと記載することもある)204C−i(i=1、2、3、・・・)がある。また、これらの空間には、上部基板202または下部基板203に真空排気口210が適宜あいていて、この真空排気口210は真空ポンプ213に接続し、荷電粒子の通る空間を真空に近い状態にしている。図4では真空排気口213は高周波導入室または高周波導出室に開いているが、これらに限定されず他の空間や空洞に設けても良い。
本発明で使用する主基板としてシリコン基板等の半導体基板を用いる場合、主基板は電気抵抗が高いので荷電粒子加速管200内の多数の貫通孔空洞204内には導電体膜206を形成する。すなわち、主基板201に形成された空洞204において、主基板201の空洞側面に導電体膜206S1および206S2が、上部基板202の下面に導電体膜206Uが、下部基板203の上面に導電体膜206Bが形成される。図4(c)は中央孔205における断面図であるから、導電体膜206S1、S2、U、Bは見えないが、ここは透視しているとして描いている。中央孔205は基板側壁201S−i(i=1、2、・・・)の中央に配置され、その中央孔205の内面にも導電体膜206が環状に形成されている。中央孔205の断面は長方形状に記載されているが、中央孔205は主基板201を分割した状態でエッチング法(ウエットまたはドライ)で形成するので、台形を上下に合わせた形状や楕円状、あるいは円状など種々の形状に形成することができる。
加速キャビティ204C−i(i=1、2、3、・・・)の内壁に高周波の電流が流れるので、導電体膜206は導電性が良い方が良く、たとえば銅や金、銀、アルミニウム、タングステン、コバルト等がベターである。温度が上がる可能性がある場合は、融点の高い金属膜が良い。本発明の荷電粒子加速管は小さくすることも可能なので、超伝導体膜を使いこの装置全体を低温に冷やして使用することもできる。超伝導体膜として、ニオブ(Nb)、ニオブ−チタン(Nb−Ti)、ニオブ−スズ(Nb−Sb)、二硼化マグネシウム、酸化物高温超電導体(イットリウム系、ビスマス系等)がある。これらをスパッター膜、塗布膜として形成できる。主基板201の厚みをh2、横幅(平面幅)をa2とし、導電体膜206の厚みをt2とすれば、貫通孔空洞204の深さd5はh2−2t2、貫通孔空洞204の横幅b2はa2−2t1となる。主基板201と導電体膜206の間に絶縁膜(たとえば、シリコン酸化膜)や密着性向上膜(たとえば、Ti、TiN膜)を形成する場合、導電体膜206の上に絶得膜(保護膜)を形成する場合は、それらの膜の厚みも考慮する必要がある。
荷電粒子Gは荷電発生装置等から発射され、空洞204−1の内部を通過して、荷電粒子加速管200の入り口である基板隔壁201S−Aの中央孔205を通り荷電粒子加速管200へ進入する。荷電粒子Gは、高周波導入空間204C−Aへ入った後、基板隔壁(側壁)201S−1の中央孔205を通って加速空間204−1に入り、次々と基板隔壁201S−i(i=1、2、3、・・・)の中央孔205を通って加速空間204C−i(i=1、2、3、・・・)に入り、最後に高周波導出空間204C−Bへ入った後、荷電粒子加速管200の出口である基板隔壁201S−Bの中央孔205を通り、荷電粒子加速管200の外側の空洞204−2へ出ていく。高周波211は、高周波導入口208から高周波導入空間204C−Aへ入り、各基板隔壁の中央孔205を通り、各加速空間204C−i(i=1、2、3、・・・)で荷電粒子を加速する高周波電界を形成し、高周波導出空間204C−Bへ出て、高周波導出口209から高周波212として出ていく。従って、荷電粒子は各加速空間204C−i(i=1、2、3、・・・)で発生する加速電界により次々に加速されて、基板隔壁201S−Bの中央孔205を通って荷電粒子加速管200を出ていく。
加速管200には、加速された荷電粒子の発散を収束する収束用電磁石207を設けることもできる。収束用電磁石207は、荷電粒子Gが基板隔壁201S−Bの中央孔205を出た後の空洞204の部分に設置される。たとえば、図4に示すように4極電磁石207(207−1、2、3、4)を空洞204の周囲に配置する。図4(d)は、4極電磁石が配置された部分において空洞204の長手方向に垂直な断面構造を示す図である。空洞204の両横側面には基板側壁201S−S1および201S−S2を挟んで、コイル207−2およびコイル207−4が形成されている。コイル207は空洞204の中心部に近いほど磁束密度(または磁界)が強くなり、荷電粒子の制御が容易となる(荷電粒子Gは空洞204の中央部を通る)ので、基板側壁201S−S1および201S−S2は薄い方が良い。LSIプロセスを使用できるので、たとえば、10μm〜1000μmと非常に薄い基板側壁も形成可能である。
空洞204の上部には上部基板202が存在するが、この上部基板202の上方に、または上部基板202の内部に埋め込んで、または上部基板202の上部または内部に、コイル207−1を配置する。コイル207は空洞204の中心部に近いほど磁束密度(または磁界)が強くなり、荷電粒子の制御が容易となる。従って、上部基板202の上方に配置する場合は、コイル207−1をできるだけ上部基板202の上面に近づける。最適にはコイル207−1を上部基板202の上面と接するようにすれば良い。コイル207−1を上部基板202の内部に埋め込むか、上部基板202の内部に形成する場合は、空洞204とコイル207−1の底面と空洞の間に存在する上部基板202は、上部基板202−Uであるが、この部分の厚みは上部基板202の厚みより薄い。この上部基板202−Uの厚みは薄いほど良いが、たとえば、10μm〜1000μmと非常に薄くすることもできる。
空洞204の下部には下部基板203が存在するが、この下部基板203の下方に、または下部基板203の内部に埋め込んで、または下部基板203の内部に、コイル207−3を配置する。コイル207は空洞204の中心部に近いほど磁束密度(または磁界)が強くなり、荷電粒子の制御が容易となる。従って、下部基板203の下方に配置する場合は、コイル207−3をできるだけ下部基板203の下面に近づける。最適にはコイル207−3を下部基板203の下面と接するようにすれば良い。コイル207−3を下部基板203の内部に埋め込むか、下部基板203の内部に形成する場合は、空洞204とコイル207−3の上面と空洞の間に存在する下部基板203は、下部基板203−Bであるが、この部分の厚みは下部基板203の厚みより薄い。この下部基板203−Bの厚みは薄いほど良いが、たとえば、10μm〜1000μmと非常に薄くすることもできる。
図4(d)に示すように、主基板201の横方向中心線をC1としたとき、空洞204の中心O1は横方向中心線C1上にあり、コイル207−2およびコイル207−4の軸が横方向中心線C1と揃うようにコイル207−2およびコイル207−4を主基板201内に配置する。また、コイル207−1およびコイル207−3の軸が、空洞204の中心O1を通り横方向中心線C1と直交する縦方向中心線C2と揃うようにコイル207−1およびコイル207−3を配置する。このように4極電磁石(コイル)を配置することによって、空洞204内の磁界分布を対称形に近い状態にできるので、荷電粒子を空洞204の中心O1の近傍に収束することができる。特に基板側壁201S−S1および201S−S2の厚みをほぼ等しくし、コイル207−2およびコイル207−4の特性を同じくし、また空洞204の中心O1に対して対称な位置に配置すること、さらに202−Uおよび202−Bの厚みをほぼ等しくし、コイル207−1およびコイル207−3の特性を同じくし、また空洞204の中心O1に対して対称な位置に配置すること、さらにコイル207−1、コイル207−2、コイル207−3およびコイル207−4の特性を同じくすることによって、空洞204内の磁界分布を対称形に近い状態にできる。ただし、本発明の四重極電磁石は構成するコイルの特性や配置、基板側壁や基板の厚みが多少異なっても、個別のコイルに印加する電圧を自由に設定でき、空洞204の内部磁界を自由に変化させることができるので、荷電粒子のビームを空洞中心O1の近傍に収束することは容易である。尚、空洞204の中心O1は、荷電粒子の進行方向Gであり、従って、中央孔205の中心は空洞204の中心O1と一致するようにすることが望ましい。
基板側壁201S−iの幅、すなわち中央孔205の長さをm1、加速キャビティ204C−iの長さ(荷電粒子加速装置200の長手方向のサイズ)をp1とすると、高周波導入室204C−Aおよび高周波導出室204C−Bの距離は、(n+1)×m1+n×p1となる。(荷電粒子加速装置200がn個の加速キャビティを有するとき)それぞれの加速キャビティの長さp1や中央孔205の長さをm1の長さを変化させて、加速電界分布を変化させても良い。また、空洞204のサイズ(a2、h2)や中央孔205のサイズ(たとえば、中央孔205が矩形の場合は、縦や横の長さ、中央孔205が円形の場合は、直径)を変化させて、加速電界分布を変化させても良い。本発明の荷電粒子加速装置は、LSIプロセスを用いて作製できるので、これらの大きさを容易に安価に変化させることができる。また、四極電磁石の大きさや数も空洞204のサイズに合わせて自由に変化させることができる。
次に電磁石(コイル)の作製法を説明する。図11は、電磁石(コイル)の作製法を示す一実施形態である。サポート基板114−1にコイル作製基板115−1を付着させる。サポート基板114−1はコイル作製基板115−1と後に分離するので、軟化性接着剤(軟化温度T1)による付着が良い。サポート基板114−1はガラス基板、石製基板、アルミナ基板、プラスチック、エポキシ基板、高分子基板等の絶縁体基板や、Si等の半導体基板、Cu、Al等の導電体基板である。コイル作製基板115−1は、非磁性体基板で、ガラス基板、石製基板、アルミナ基板、セラミック基板、プラスチック、エポキシ基板、高分子基板等の絶縁体基板や、Si等の半導体基板である。図11(a)に示すように、コイル作製基板115−1にコイル導線パターン用の感光性膜パターンを形成し、コイル作製基板115−1をエッチングする。このエッチングは感光性膜パターンに忠実な垂直エッチングが望ましい。あるいは、金型で打ち抜いたコイル導線パターンを形成したコイル作製基板115−1をサポート基板114−1に付着しても良い。あるいは、コイル導線用パターンを形成したプラスチックまたは高分子樹脂フィルムをサポート基板114−1に付着しても良い。コイル作製基板115−1がSi等の半導体基板であるときは、コイル配線間がショートしないように凹部側面に導電体膜を積層しておく。
次に、凹部のコイル導線用パターンを導電体膜で充填する。導電体膜は、たとえば、Cu、Ni、Cr、Au、Al、W、Mo、Ti、Zr、各種半田、これらの合金や複合金属、あるいは各種シリサイド膜、超伝導体である。この充填方法として、CVD法、PVD法で積層し、研磨(たとえば、CMP)して凹部だけに導電体膜を充填する方法、選択CVD法により凹部に導電体膜を充填する方法、あるいはメッキ法により凹部に導電体膜を充填する方法、あるいは導電性ペースト塗布法がある。これらに研磨を行ない平坦化することもできる。これらの方法によって、幅がa、深さがc1のコイル配線パターンの1層目(116−1)が完成する。1層目の平面パターンは、たとえば図11(g)に示すような長さd(幅a)、距離bの配線パターンである。
次に2層目のパターンを同様にして作製する。2層目もサポート基板114−2にコイル作製基板115−2を付着し、感光性膜等で2層目のコイル配線パターン116−2を形成する。2層目のパターンの断面パターンは図11(a)と同様であるが、平面パターンは図11(h)に示すように(横)幅a、距離bで、(縦)幅eの矩形パターンで、重ねたときに1層目のパターンに合うようになっている。コイル線幅は、(横)幅a×(縦)幅eとなるので、eはほぼaに等しく取るのが良い。次に図11(b)に示すように1層目のコイル配線パターンに2層目のコイル配線パターンをパターン合わせしながら付着する。すなわち、サポート基板114−1に付着した1層目のコイル導線パターンを形成したコイル作製基板115−1に、サポート基板114−2に付着した2層目のコイル導線パターンを形成したコイル作製基板115−2を付着させる。この付着法として、常温接合法、拡散接合法、高温接合法、コイル作製基板115−1または2がガラス基板や石英基板等の絶縁体基板で、コイル作製基板115−2または1がSi等の半導体基板であるときは、静電陽極接合法も使用できる。また、接着剤を用いて付着することもでき、導電体膜同士の接合部は導電性接着剤を用い、他の部分は絶縁性接着剤を用いる。他の接合法でも導電体膜同士の接合部は導電性接着剤を用いることができる。配線間距離bが10μm以上であれば(現時点でも)、メタルマスクを用いて導電性接着剤を接合部パターンに塗布できるし、感光性膜導電性接着剤や感光性膜パターン+エッチング法を用いれば、配線間距離bが1μmでも導電性接着剤を接合部パターンに塗布できる。さらに、半田を接合部に塗布またはメッキして、付着させることもできる。2層目の凹部もc1の深さとすれば、C2は2c1となる。コイル作製基板115同士の接合に用いる接着剤は、後の熱処理で分離しないように熱硬化性接着剤が望ましい。半田金属や熱可塑性接着剤を用いる場合は、その後の熱処理でコイル作製基板115同士が移動してパターンずれを起こしたり分離しないようにする。
次にサポート基板114−2を取り外す。サポート基板114−2とコイル作製基板115−2とを付着させた接着剤は熱可塑性接着剤で軟化温度をT2としたとき、T1>T2になるような接着剤を選定する。この結果T1とT2の間の温度で、サポート基板114−2だけを分離できる。図11(c)はサポート基板114−2を分離した状態を示す図である。3層目以降のパターンも2層目と同じであり、これを次々に付着させることによって、コイルの高さ方向の配線を作製できる。ただし、1枚ずつ重ねていくのは時間がかかるので、図11(d)に示すように、2枚重ねたもの同士を次に重ねて4枚にし(図11(d)の状態)、その次には4枚同士重ねたものを重ねていくことにより8枚になる。c1=0.1mmとすれば、5回の付着で0.8mmの厚さになる。
最後のコイル配線パターンは、コイルとしてスパイラルに接続する必要があるので、図11(i)に示すような配線パターンとなる。1層目が図11(g)に示す配線パターンで、最上層が図11(i)示す配線パターンである。(この逆でも良い。)これらの間の配線パターンが図11(h)に示すパターンである。所定の高さc4になったときに、最上層側のサポート基板を分離した後、感光性膜117を付着(塗布)し、感光性膜パターン117を形成する。これをマスクにしてコイル作製基板115をエッチング除去する。サポート基板114−1はまだ分離しないので、コイル作製基板115とサポート基板114−1との選択比の高いエッチングが望ましい。サポート基板114−1とコイル作製基板115との材料を異なったものにすれば、容易にエッチング選択比を大きくできる。たとえば、サポート基板114−1がSiまたはガラスであり、コイル作製基板115がガラスまたはSiである場合である。あるいは、ダイシング法で切断して不要な部分を分離することもできる。たとえば、サポート基板114−1とコイル作製基板115−1を付着するときに、不要な部分として分離する所に光照射で分離できる接着剤を用い、それ以外の所には通常の熱可塑性接着剤を用いることによって、ダイシングして、コイル作製基板115とサポート基板114−1の一部(深さ方向に少し)だけカットして、その後光照射して不要な部分を分離することができる。接着剤を分けて付着するには、たとえば、マスクを用いて塗布すれば良い。この結果、図11(f)で示す形状のコイル118がサポート基板114−1に付着したものが作製される。
次に、下部基板203に付着し、コイル挿入用空洞120(120−1、2)および荷電粒子ビームGが通る空洞204−2(図4を参照)が形成された主基板201に、サポート基板114−1に形成された電磁石(コイル)118−1、118−2を挿入する。下部基板203には、コイル118の端子が接続するための導電体電極・配線119が形成されているので、そのパターンに合わせるように挿入する。コイル118の中心軸が主基板201の中央に来るようにコイル118の大きさを調整する。接続部には予め導電性接着剤や半田金属を付着させておくことが望ましい。熱などをかけながらこれらを軟化させて付着させれば上下方向の高さ調節もできる。コイル118の配線パターンに絶縁膜を積層したり絶縁シートを付着させて、接続部だけ窓開けしておけば、導電性接着剤等を広く塗布できるので、接続も確実だし、高さ調節や水平度調整も容易になる。
また、コイル側の端子をすべて反対側に設けておけば(図11(j)〜(m)に示すコイル118−1のように)、下部基板203に導電体膜電極・配線パターン109を設ける必要がないので、絶縁性接着剤を下部基板203に、および/またはコイル118の下方側に塗布しておけるので、コイル18の付着を確実にでき、また高さ調節や水平度調整も簡単に行なうことができる。たとえば、サポート基板114のリフトプレスの水平度調整や押圧調整を簡単に行なうことができる。尚、コイル挿入用空洞120(120−1、2)の大きさはそれほど制約がないので、コイル118よりかなり大きめに開けられるので、コイルの挿入は特に問題はない。また、導電体膜電極・配線も大きく形成しておけばコイル側との接続も特に問題ない。コイル118の端面(コイル118−1なら右側、コイル118−1なら左側)と空洞204−2の中心との距離は、荷電粒子へ及ぼす磁場に影響を与えるが、現在の挿入による合わせ誤差は1μm〜10μmの間であるから、余り影響はない。
さらに、2つのコイル118−1および118−2の距離は全くずれないので、空洞204−2の中心へ及ぼす両方を合わせた磁場は殆ど変化はない。空洞204−2全体へ磁場を均一にするために、コイルの大きさ(端面の)を空洞204−2の大きさ(深さ方向における)よりも大きくすることが望ましいが、予め下部基板203において、コイル挿入用空洞120(120−1、2)における下部基板203を薄くしてコイル挿入用空洞120(120−1、2)の深さを空洞204−2より深くしておけば良い。その場合は当然、コイル118の大きさもそれに対応して大きくしておく。
コイル118をコイル挿入用空洞120(120−1、2)における下部基板203に固定した後、サポート基板114−1を分離する。この方法は、たとえば、コイル118と下部基板203との接着に用いる接着剤等の硬化温度T3がT1より低い温度である熱硬化性接着剤等を用いて、コイル118を下部基板203に固定した後に、温度をT1以上に上げてサポート基板114−1を分離する。(図11(k))次に、図11(l)に示すように、コイル端子と接続する導電体膜電極配線121が形成された上部基板121をコイル118の端子に合わせて主基板201に付着する。コイル118の上部に配線パターンが形成されている場合は、絶縁膜を積層したり絶縁性フィルムを付着して接続部を窓開けした状態で導電性接着剤や半田金属を塗布または形成した後に付着させれば良い。
次に上部基板202に導電体膜電極配線121と接続するコンタクト孔導電体膜配線122を形成し、それに接続する外側電極配線123(123−1、2、3)を形成する。下部基板203にも導電体膜電極配線119と接続するコンタクト孔導電体膜配線124を形成し、それに接続する外側電極配線125を形成する。これによって、空洞204−2の両側面に、主基板側壁201S−S2および201S−S1を挟んだコイル挿入用空洞120(120−1、2)内にコイル118(118−1,2)が配置される。しかも非常に正確に配置されている(現状での合わせ誤差は10μm以下である)ので、空洞内の磁場も均一になる。コイル118−1に対しては外側電極123−1と123−2から電流を流すことができ、コイル118−2に対しては外側電極123−3と125から電流を流すことができる。(図11(m))
図11のプロセスにおいて、1層目のパターンからサポート基板に付着する方法を採用したが、1層目のコイルパターンを下部基板上に作製しておき、サポート基板へは2層目から付着して形成することもできる。この方法を取れば、最初の1層目のプロセスを省くことができる。同様に最後の最上層目のパターンを上部基板(の下面)に形成することもできる。これでさらに最上層目のプロセスも省略できる。さらに、この場合、2層目からn―1層目(n層目を最上層目とする)までのコイル配線パターンは同じなので、単純に積み上げていっても良いし、積層したもの同士を所望の大きさになるように重ねて作製することもできる。最後にそれらを下部基板の1層目のパターンに、n−1層目を上部基板の最上層目のパターンに合わせて付着すれば良い。
図11(j)のプロセスでは、荷電粒子ビームGが通る空洞204−2とコイル挿入用空洞120(120−1、2)との間の仕切りとして基板側壁201S−S1および基板側壁201S−S2が存在するが、この仕切りとして基板側壁201S−S1および基板側壁201S−S2は、磁場を弱めたり磁場を乱したりする方向に働くので取り除くこともできる。ただし、空洞204−2は荷電粒子が通るので、空洞204−2と同程度の圧力になるようにしなければならない。そのために、コイル挿入用空洞120(120−1、2)にも上下基板202や203に真空引き用の開口部を設けることもできる。基板側壁201S−S1および基板側壁201S−S2を設けなければ、空洞204−2とコイル挿入用空洞120(120−1、2)は同じ空洞になるので、コイル118−1および2を挿入するときに、コイル118−1および2が基板側壁201S−S1および基板側壁201S−S2に衝突する心配がないので、挿入が簡単になる。
さらに、基板側壁201S−S1および基板側壁201S−S2とコイル118−1および2との間の距離について、挿入時の余裕度(余裕距離)を考慮しなくても良い。従って、コイル118−1およびコイル118−2の間の距離を短くすることができるので、空洞内の磁場を作るための電流を小さくできる。あるいは磁場をさらに強めることができる。あるいは、基板側壁201S−S1および基板側壁201S−S2に中央孔を開けておけば、その部分の磁場は基板側壁201S−S1および基板側壁201S−S2の(材料による)影響を受けなくて済み、空洞204−2の圧力もコイル挿入用空洞120(120−1、2)の影響を余り受けなくて済む。
さらに、支持基板114−1を用いたが、この代わりに上部基板202または下部基板203を用いれば、図11(j)に示すプロセスで支持基板を取り外さずにそのまま使用できる。また、図12(d)と同様に、支持基板114−1に凸部分を設けてコイル118を作製すれば、コイル挿入時に(図11(j)に示すプロセス)支持基板114−1と主基板201を接触させないで、支持基板114−1を取り外すことができるので、主基板201にダメッジ等を与えずに済む。図11(m)に示すように、コイルの配線端に接続する電極は、上部基板202にも、あるいは下部基板203にも自由に形成できる。図11(j)では下部基板203に電極配線パターンを形成したので、その電極配線パターンへコイル118の端子を合わせる必要があったが、下部基板203に電極配線パターンを形成しなくても良いようにもできるので、コイル挿入時に合わせる必要がないので、プロセスを速く行なうこともできる。さらに導電性接着剤を使用する必要もなく、通常の1種類の接着剤(たとえば、絶縁性接着剤)を用いて下部基板203に付着することもできる。また、そのとき支持基板114−1の代わりに上部基板202または下部基板203を用いれば、下部基板203にコイル118を接触させる必要もなく、コイル118が付着した上部基板204は主基板201と付着させるだけでも良いので、精密な合わせも必要がなくなる。
図11のプロセスで、コイルサイズをa=e=30μm、b=20μm、d=1mm(=5×10μm)、高さ=1mm、長さ=5mmとすると、100巻きのコイルができ、コイル導線をCuで作製すると、10A/cmの電流を流せるとすれば(エレクトロマイグレーション耐性からこの程度は可能)、I=9Aの電流をコイルに流すことができる。従って、コイルの端面の中心にできる磁場Hc=8×10A/mとなる。
さらにこのコイルに比透磁率μの高いコアを挿入することによって発生する磁場を高めることができる。そこで、本発明の加速器に使用するコイルへ比透磁率μの高いコアを入れる方法を説明する。既にこの方法の類似方法は、特開2012−134329に記載されているので、それらも本発明に適用可能である。図12は、比透磁率μの高いコアを挿入した高性能のコイルを作製する方法を示す図である。図12に示す実施形態では、4種類のコイル作製用パターンを用いる。図12(g)〜(j)がそのパターンを図示した平面図である。図12(g)は図11(g)と同じであるが、コア挿入孔に対応する領域を破線Aで示している。また、コイルの外形に対応する部分を点線Bで示している。図11や図12ではコイルの外側も各レイヤーで同じ基板(層)が存在していて、図11(e)のプロセスで、感光性膜パターン117をマスクにして一気に外側の基板層115をエッチング除去していたが、支持基板114に付着した後で、点線Bで示す部分に感光性膜パターン等を形成して、それをマスクにして点線Bで示す領域の外側の基板115をエッチング除去して、コイル形成領域だけを付着させて重ねることもできる。あるいは、支持基板には付着しないで、このコイルの部分だけ付着して重ねていき、最後に支持基板114の所定部分にコイルを付着させて、図11(f)に示す状態を作製することもできる。
図12(a)は、図11(c)と同じ図である。すなわち、コイル作製基板130−1は図12(g)に示すコイル配線パターン116を有するコイル作製基板115である。コイル挿入領域は、破線Aで示す矩形(長方形)状であり、縦側(コイルの幅側)において、図12(g)に示すコイル配線パターン116の内側に入り、横側(コイルの軸方向)はコイル配線から左右とも食み出ている。点線Bはコイルの外形となる部分である。コイル作製基板130−2は図12(h)に示すコイル配線パターン116を有するコイル作製基板115である。このコイル配線パターン116はコイルの高さ方向に積み重なってコイル配線パターンとなる。図12(g)および(h)のパターンでは、コイル挿入領域Aはコイル作製基板115と同じであり、平面的には平坦になっている。この上に付着するパターンは図12(i)に示すパターンを有するコイル作製基板115である。すなわち、コイル作製基板130−3は図12(i)に示すパターンを有するコイル作製基板115である。図12(i)では、コイル挿入領域Aがくり抜かれて空洞となっている。この空洞は、図12(h)に示すコイル作製基板115を支持基板に付着させて窓開けして、コイル作製基板115をエッチングしたり、金型で打ち抜いたりして作製できる。さらには、既にコイル領域Bの大きさにした図12(h)に示すコイル作製基板115をエッチングしたり、打ち抜いたりして作製することもできる。このコイル作製基板130−3の上にも。図12(i)に示すコイル挿入領域Aがくり抜かれて空洞となったコイル作製基板115を付着させて、これを所定枚数付着させていく。(図12(b))ここで、コイル作製基板130−4、5、6は図12(i)に示すパターンを有するコイル作製基板115である。図12(i)に示すパターンを有するコイル作製基板115を多数枚付着させたもの(これはすべてコイル挿入領域Aがくり抜かれて空洞となっている)をまとめて、図12(a)で示す、図12(h)に示すコイル挿入領域Aがくり抜かれていないコイル作製基板115であるコイル作製基板130−2上に付着させることもできる。この場合は、図12(b)に破線Aで示す部分が、内側が空洞となっている。この空洞は、基板面に垂直な側面を有すると重ね合わせしたときにやはり垂直形状となるが、この領域Aは、軸方向はコイル領域Bより大きいので、なくなる部分であるから、必ずしも垂直形状でなくても良い。
あるいは、図12(a)で示すものに、さらにコイル挿入領域Aがくり抜かれていない図12(h)で示すコイル作製基板115を重ねて付着させても良い。すなわち、コイル作製基板130−2〜130−6はすべてコイル挿入領域Aがくり抜かれていない平坦なものとなっている。その場合は、図12(c)で示すように、感光性膜131をパターニングし、コイル挿入領域Aの部分を窓開けして、その部分にあるコイル作製基板115をエッチングして、コイル挿入領域Aである凹部(開口部)134を形成する。図12(c)では、エッチングしたコイル挿入領域Aである凹部(開口部)134がコイル作製基板130−3の部分まで達しているが、コイル作製基板130−2の部分もエッチングしても良い。コイル作製基板130−1の領域に達すると、コイル配線116が露出するので好ましくない(コイル配線116もエッチングしたり、ダメッジを及ぼさないようにする)ので、コイル配線116が露出しない程度でエッチングをストップする。この後、感光性膜パターン131は除去する。
次に、この凹部134内に接着剤(塗布液)を入れるか、図12(d)で示すコア部材133に接着剤を付着させて、コア部材133を凹部134内へ挿入する。コア部材133は予め支持基板132に接着剤等で付着させておく。たとえば、コア部材となるコア部材シートまたはフィルムまたは薄板を支持部材133へ付着させた後、フォトリソ法+エッチングで所定パターンを形成したり、或いは、金型で打ち抜いたりして作製しても良い。あるいは、コア部材シート等をダイシングして不要な部分をピックアップして取り除いて良い。その場合、取り除く部分とそのまま付着しておく部分で接着剤を分けておけば、異なった剥離法を用いて不要な部分だけ容易に取り除くこともできる。(たとえば、軟化温度の異なる接着剤を用いる。)接着剤として非磁性の絶縁性接着剤を用いることができるが、フェライト粒子等の強磁性体粒子を含むペースト状または液状の接着剤を用いても良い。これらの強磁性体粒子もコアの一種となるので、コアの効果を高めることができる。
支持基板132に付着したコア部材133をコイル挿入領域Aである凹部(開口部)134に挿入する。このとき、支持基板132に凸部135を設けておけば、コア部材133の上部が最上部のコイル作製基板130−6の上面より外側に出ないように、すなわちコア部材133の全部が凹部(開口部)134内に入れることができる。(コア部材133の高さh1と接着剤の厚みh2の和は、凹部134の深さh3より小さくなるようにし(すなわち、h1+h2<h3、凸部135の高さをh4としたとき、h1+h2+h4>h3となるように設計すれば、支持基板132がコイル作製基板130−6の上面に当たることはなく、スムーズにコア部材133を凹部(開口部)134内に入れることができる。)凹部内に入れる接着剤はたとえば熱硬化性接着剤(硬化温度T1)とし、コア部材133と支持部材132との接着剤は熱可塑性接着剤(軟化温度T2)としたとき、T1<T2であるような接着剤を用いることによって、まずT1とT2の間でコア部材133を凹部134内に固定し、その後でT2以上の温度にしてコア部材133を支持部材132から分離すれば良い。
コア部材133を凹部134内に挿入した後で、接着剤等の異物が最上部のコイル作製基板130−6の表面に付着しないようにすれば、図12(f)で示す工程、すなわち次のコイル作製基板130−7をコイル作製基板130−6に付着できる。接着剤等の異物が最上部のコイル作製基板130−6の表面に付着している場合や、コア部材133を凹部内に完全に埋め込む場合は、コア部材133を凹部134内入れて固定した後に同じ接着剤をコア部材133の上から凹部134内に入れて凹部134の隙間空間を接着剤で充填する。あるいは、絶縁膜を積層したり、塗布しても良い。このとき、当選最上部のコイル作製基板130−6の表面にも接着剤や絶縁膜が付着または積層するので、CMP、BG(グラインダー)やエッチバックにより付着または積層した接着剤や絶縁膜を取り除き、平坦化して、コイル配線パターン116を露出させる。この平坦化は、たとえば、レジスト液等の有機膜を塗布して平坦化した後にCMP、BG(グラインダー)等で研磨したり、エッチバック法によりエチングしたりして、平坦化しながらコイル作製基板130−6表面を出す。(図12(e))
この後、図12(h)に示すコイル挿入領域Aがくり抜かれていないコイル作製基板である115であるコイル作製基板130−7をコイル作製基板130−6(少しエッチングまたは研磨されている)に付着させる。その後で、最上部のコイル作製基板である図12(j)に示すコイル配線パターンを有するコイル作製基板130−5であるコイル作製基板130−8をコイル作製基板130−7に付着させる。このようにして、コア部材133を内蔵したコイルを作製できる。支持基板114−1上の必要な場所に必要な数のコア部材133を内蔵したコイルを作製しておく。この後、図11(j)以降に示す工程でコア部材133を内蔵したコイルをコイル挿入用空洞120へ挿入する。多数の加速装置や電磁石を必要とする部分に一括して同時にコア部材133を内蔵したコイルを配置することができる。尚、図12(g)で示すコイルの配線パターンを有するコイル作製基板115であるコイル作製基板130−1の上に絶縁膜を塗布したり積層したりするなどして、絶縁膜を介在すれば、図12(h)で示すコイル挿入領域Aがくり抜かれていないコイル作製基板である115であるコイル作製基板130−2を付着せずに、図12(i)で示すコイル挿入領域Aがくり抜かれているコイル作製基板である115であるコイル作製基板130−3を付着することもできる。(コイル配線パターンとコア部材133が電気的に導通することはないので)また、同様にコア部材133の上面に絶縁膜が介在していれば、図12(h)で示すコイル挿入領域Aがくり抜かれていないコイル作製基板である115であるコイル作製基板130−7をコイル作製基板130−6に付着せずに、図12(j)で示すコイル配線パターンを有するコイル作製基板である115であるコイル作製基板130−8を付着することもできる。この介在する絶縁膜は絶縁性接着剤や絶縁性シートや絶縁膜の積層(CVD、PVD、塗布法等)で実現できる。この結果、図12(h)で示すレイヤーは必要がなくなる。尚、コア部材としては、鉄(μ=約5000)、純鉄(μ=約10000)、ケイ素鉄(μ=約7000)、パーマロイ(μ=約100000)、スーパーマロイ(μ=約1000000)、アモルファス鉄(μ=約3000)、フェライト(μ=約2000)、センダスト(μ=約30000)、バーメンジュール(μ=約5000)等の軟磁性材料が挙げられる。
次に、上下基板に配置するコイルの作製方法について説明する。図13は上下基板に配置するコイルの作製方法を示す図である。支持基板141−1に1層目のコイル配線基板142−1を付着させる。このコイル配線基板142−1は、コイル配線のない基板、たとえば図13(i)の導電体膜配線パターン144がないものである。このコイル配線基板142−1がSi等の半導体基板や導電体基板である場合は、基板表面に絶縁膜を形成して配線とコイル配線基板142−1との間が接続しないようにる。コイル配線基板142−1がガラス、石英、サファイヤ、アルミナ、プラスチック、高分子樹脂等の絶縁体であるときは、通常絶縁膜を形成する必要はないが、導電体膜との密着性向上のための絶縁膜が必要な場合もある。1層目のコイル配線基板142−1はこの上に付着する配線基板の配線パターンを保護するものであるが、2層目のコイル配線の下面に絶縁膜を形成して保護することもできるので、この1層目のコイル配線基板142−1を設けなくても良い。ただし、コイルを頑丈にするためにはこの1層目のコイル配線基板142−1を設けた方が良い。
次に、2層目のコイル配線基板142−2を付着する。1層目のパターンはないのでパターン合わせは不要である。2層目のコイル配線基板142−2は図13(i)に示す配線パターンを有する配線基板である。この付着法は、既に記載したように別の支持基板141−2(図示せず)に2層目のコイル配線基板142−2を付着させて、支持基板141−1に付着したコイル配線基板142−1と支持基板141−2に付着したコイル配線基板142−2を対面させて付着した後、支持基板141−2をコイル配線基板142−2から分離すれば良い。あるいは、コイル配線基板142が単体で支持できるものであれば、直接コイル配線基板142−1と支持基板141−2をアライメントしながら付着させることもできる。あるいは、配線パターンのないコイル配線基板143を支持基板141−2に付着させて、その配線パターンのないコイル配線基板143をパターニングしては配線パターンを開口部とした感光性膜パターンをフォトリソ法で形成し、コイル配線基板143をエッチングし、貫通溝パターンを形成する。この貫通溝パターンは垂直形状が望ましい。あるいは、配線パターンを有する金型等で配線パターンのないコイル配線基板143を打ち抜いて貫通溝パターンを形成することができる。あるいは、支持基板141に感光性樹脂を塗布して貫通溝パターンを開口して開口部以外を硬化させて貫通溝パターンを形成する。あるいは、絶縁膜ペーストを塗布して金型等で貫通溝パターンを開口してペーストを硬化させて貫通溝パターンを形成する。あるいは、スクリーン印刷法でペーストを塗布し貫通溝パターンを開けた後ペーストを硬化させて貫通溝パターンを形成する。
このように貫通溝を形成したコイル配線基板143に必要なら絶縁膜を形成し、次に導電体膜を形成し、貫通溝パターンを導電体膜で充填する。CVD法やPVD法やメッキ法で導電体膜を厚く形成して貫通溝を埋めた後、表面をエッチング(エッチバック法)したり、研磨(BG法やCMP法)したりして、表面の導電体膜を除去して貫通溝だけに導電体膜を充填させる。あるいは、CVD法やPVD法で貫通溝の内壁およびコイル配線基板143の表面に導電体膜(シード層)を薄く積層した後、感光性膜を塗または感光性シートを付着してフォトリソ法を用いて貫通溝パターンを除いた部分を感光性膜で覆い、その後メッキ法で貫通溝パターンをメッキ膜で充填し、その後で、エッチバック法や研磨法でコイル配線基板143の表面に積層した導電体膜を除去し、貫通溝パターンだけに導電体膜が充填したパターン(たとえば、図13(i)〜(k)に示すもの)を形成したコイル配線基板143を作製する。あるいは、導電体ペーストを塗布して貫通溝パターンを充填して、貫通溝パターンを除いた部分のペーストは取り除き、熱処理等で貫通溝内の導電体ペーストを固める。あるいは、溶融メタルを貫通溝パターンに流し込んで冷却して固めて貫通溝内をメタル(導電体)で充填する。2層目のコイル配線基板142−2のコイル配線パターン144−2は図13(i)に示すようなスパイラル状パターンの1枚目である。矩形パターンで形成しているが、円形パターンでも良いし、楕円状パターンでも良い。次に、支持基板141−2にコイル配線基板142−2が付着している場合は、コイル配線基板142−2から支持基板141−2を分離する。(図13(a))尚、図13(i)の右側へ出ている配線パターン144は、コイル端子を上部に作製するためのパターンであるが、これは図面上で分かり易いように記載しただけであり、このパターンは図の左側の方に配線を伸ばして来ても良い。
次に、2層目のコイル配線基板142−2の上に3層目のコイル配線基板142−3を付着する。3層目のコイル配線基板142−3の配線パターンは図13(j)に示すような上下の環状配線パターンをコンタクトするもの(144−1)である。右側の配線パターン144−2はコイルの端子電極を上部に設けるためのコンタクト配線である。支持基板141−3にコイル配線基板142−3を付着させて、それをさらに2層目のコイル配線基板142−2の上に3層目のコイル配線基板142−3を付着する。(図13(b))支持基板141−3を分離した図が図13(c)である。このような上下のコンタクト配線では横方向には電流は流れず、縦方向へ電流が流れるので、コイル配線基板143の厚みは薄くても良い。そこで、直接2層目のコイル配線基板142−2の上に絶縁膜をCVD法やPVD法、あるいは塗布法(SOG、ペースト)で形成し必要なら適度な熱処理等を行なった後、フォトリソ法を用いてコンタクト孔を開けて、CVD法やPVD法、メッキ法、あるいは塗布法(ペースト)導電体膜を積層し、コンタクト孔を導電体膜で充填し(コイルに流す電流によっては必ずしも充填する必要はない)、フォトリソ法等およびエッチング法等を用いてコンタクト孔回りの導電体膜パターンおよび上層の配線とのコンタクト導電体膜パターンを形成する。この作製法によれば、コイル配線間の厚み、すなわちコンタクト孔の深さも1μm〜10μm程度にできる。
(この図も図13(c)である。)
コンタクト孔サイズ(矩形状の場合、縦aμm、横bμm)はコイルに流す電流によって選択する。(もちろん、上下のコイル配線の幅d、厚みhも)コイルに流す電流はコイルが発生する磁界を決定する。たとえば、メッキ法でコンタクト孔(図13(j)の144−1や144−2)やコイル配線144をメッキ法で形成した場合、エレクトロマイグレーションやストレスマイグレーションを考慮して、106A/cm2程度の電流密度は流せるので、a=b=30μm、またはd=30μm、h=30μmで、10A程度の電流を流すことができる。コイルサイズをx=1mm、y=1mmの矩形として、コイルは100回巻きとして、このときに発生するコイル端面の中心磁界は、でかなり大きい。コンタクトの深さを2μmとすれば、1巻き当たりのピッチは32μmとなり、100回巻きで3200μm=3.2mmのコイル長さとなる。コンタクトの深さを20μmとすれば、1巻き当たりのピッチは50μmとなり、100回巻きで5000μm=5.0mmのコイル長さとなる。尚、環状巻きのコイル配線パターンを有するコイル配線基板を付着方式ではなく積層方式で作製することができる。その方法は、上述したコンタクト配線パターンを形成する方法と同じである。
次に、コンタクト孔パターンを有するコイル配線基板、あるいはコンタクト孔パターンを有する絶縁層142−3の上に、図13(k)に示すようなリング状のコイル配線パターン144を有するコイル配線基板143であるコイル配線基板142−4を付着させる。コイル配線基板142−4も支持基板141−4(図示せず)に付着させた後にコイル配線基板142−3の上に付着させ、その後、支持基板141−4を分離する。単独でコイル配線基板142−4を処理できるときは、コイル配線基板142−4をコイル配線基板142−3の上に直接付着させることもできる。次に、図13(j)で示すようなコンタクトパターンを有するコイル配線基板143であるコイル配線基板142−5を支持基板141−5に付着させた後に、コイル配線基板142−4に付着させる。上述したように、コイル配線基板142−5を使用せずに、コンタクト144−5−1を形成することもできる。また、下側コイル端子を上部の電極まで接続するコンタクト144−3−2、144−4−2、および144−5−2を順次積み上げ接続していく。(図13(d))
これらを繰り返して、図13(k)に示すような環状のコイル配線パターンと図13(i)に示すようなコンタクトパターンを交互に付着させるか、積層するかして所定の巻き数を持つコイルを形成する。図13(e)では、環状のコイル配線パターンを有するコイル配線基板は、142−2、4、6、8の4層、コンタクト配線パターンを有するコイル配線基板は、142−3、5、7、9の4層である。簡単のためにコイル配線の巻き数は少なくしたが、どんどん積み重ねていくこともできる。あるいは何層か積み重ねたもの同士を重ねることもできる。コイルの中にコアを挿入する場合は、この後コイルを挿入すべき部分、すなわち、環状に形成したコイル配線144の内側部分、図13(e)で破線147で示す部分の内側部分(コイル配線パターン図13(i)〜(k)に破線147で示す部分の内側)を繰り抜くための感光性膜パターン145を形成する。かなりの厚みをエッチングするので、エッチングストッパー用の膜または薄板を介在しても良い。この感光性膜パターン145をマスクにして、開口部146からエッチングして、コイル配線の内側のコイル配線基板を除去する。最下層の配線パターンのあるコイル配線基板142−2における内側のコイル配線基板を全部除去し、さらにその下にある配線パターンのないコイル配線基板142−1の途中まで(あるいは全部でも良い)エッチング除去する。その結果コイル挿入孔148(側面が147となる)が形成される。このエッチングではかなりの量のコイル基板をエッチングするので、感光性膜パターン145(および、エッチングストッパーを介在する場合は、エッチングストッパーも)とコイル基板のエッチング選択比をかなり大きく取る必要がある。あるいは感光性膜を145かなり厚くする必要がある。そこで、前もって、各コイル配線基板を作製する段階で、コイル挿入孔となる部分148をくり抜いておくと良い。たとえば、図13(i)〜(k)に示すように破線147で示す領域の内側部分148も除去しておく。この除去方法は、配線パターン144の形成時における配線溝(貫通孔)を形成するときに同時に形成できるので、プロセスの増加にはならずコストアップにはならない。配線パターン144を形成するときに、繰り抜いた部分148に形成した導電体膜も同時に除去しておくか、マスキングして導電体膜を形成しないようにすれば良い。これもプロセスの増加にはならない。この結果、所定枚数のコイル配線基板を積層すれば、同時にコイル挿入孔148が形成され、感光性膜パターン145やエッチングストッパーを付着するなどのプロセスは不要となる。
次に、図13(f)に示すように、支持基板149に付着したコア151をコイル挿入孔148に挿入する。支持基板149が最上部のコイル配線基板142−9に衝突しないように、凸部150を設けてコア151をその凸部150に付着させてコア151をコイル挿入孔148に挿入しても良い。これにより、コア151を完全にコイル挿入孔148へ入れることができる。ディスペンサーや塗布等でコイル挿入孔148内へ接着剤を入れてからコア151をコイル挿入孔148内へ挿入しても良いし、あるいはコア151の下面や側面へ接着剤を付着させてからコアを挿入しても良い。接着剤はペースト状、液状、またはゲル状である場合は、緩衝剤にもなるので、コイル配線基板142に及ぼすダメッジを小さくすることもできる。あるいは、コア151に粘着シートを付着しても良く、その粘着シートもクッション性を持たせることにより、緩衝材の役目を果たす。前述したように、粉末状の軟磁性材料を含むペースト、または液状またはゲル状材料を接着剤に用いることによりコアとしての効果をさらに高めることもできる。コア151を用いない場合でも、粉末状の軟磁性材料を含むペースト、または液状またはゲル状材料をコイル挿入孔へ充填することによって、ある程度コイルの磁束密度を高めることもできる。また、粉末状の軟磁性材料を含むペースト、または液状またはゲル状材料をコイル挿入孔148が満たされる程度注入するか、あるいはコア151を入れたときにコイル挿入孔148を充填する程度に上記材料を注入することによって、コア151はこれらの材料に被われるのでこの後で、コイル挿入孔148を充填するための接着剤等の材料を使用する必要がなくなる。
コア151を入れてコイル挿入孔148に接着剤等でコア151を被ったときには、最上部のコイル配線基板142−9の上面で露出している配線層も接着剤等で被われてしまう可能性があるので、研磨法(BG法、CMP法等)やエッチング法で最上部のコイル配線基板142−9の上面に付着している接着剤等を除去する。また、最上部のコイル配線基板142−9の上面を平坦化しておくことが望ましい。
次に、図13(g)に示すように、コイルの外形を決めるための感光性膜のパターニング152を行なう。この感光性膜のパターン152をマスクにしてコイル配線基板142をエッチングし、最下層のコイル配線基板142−1まで不要な部分を除去する。このコイル配線基板142も厚いので、コイルの外形を決めた状態で積み重ねることもできる。各コイル配線基板142(142−1、2、・・・)の外形は、最初から決まった外形の基板(たとえば、図13(i)〜(k)で示す外形だけを有する基板143)に配線用の貫通孔および貫通孔内の導電体膜充填のパターンを形成したものを用いても良い。あるいは、広い面積を有するコイル配線基板142(142−1、2、・・・)に外形部分および配線用の貫通孔および貫通孔内の導電体膜充填のパターンを形成したものを多数(あるいは、1個でも作製はできる)作製したものを積み重ねていくこともできる。こうして、図13(h)に示すように、支持基板141−1に付着したコイル140が形成される。
次に第4基板153をコイル140の上面(図13(g)では、コイル配線基板142−9)に付着させる。(図13(l))第4基板153は、ガラス基板、石英基板、サファイヤ基板、アルミナ基板、AlN基板、セラミック基板、エポキシやポリミド等の各種高分子基板、プラスチック基板などの絶縁基板である。導電体基板やSi基板等の半導体基板の場合は、表面やコンタクト孔部分を絶縁膜で被う必要がある。第4基板を付着した後、最上部のコイル配線基板142−9の導電体膜配線パターン144―9−1および144−9−2に対して、第4基板153にコンタクト孔およびその中の導電体膜配線154を形成し、さらに少なくともそのコンタクト154に接続する電極・配線パターン155−1および155−2を作製する。導電体膜配線パターン144−9−2は、最下部のコイル配線基板142−2のコイル配線端子と接続する配線であり、これに接続するものが電極・配線パターン155−2である。他方のコイル配線端子は最上部のコイル配線基板142−9のコイル配線端子144―9−1であり、これに接続するものが電極・配線パターン155−1である。従って、導電体膜配線パターン144―9−1および144−9−2の間でコイル140に電流を流し磁界を発生させることができる。第4基板153が絶縁性基板(または表面に絶縁膜を被った導電体膜基板または半導体基板)の場合は、コンタクト配線パターンだけであるコイル配線基板142−9は省くことができて、環状のコイル配線パターンを有するコイル配線基板142−8を直接付着するっことができる。その場合の接着剤は絶縁性接着剤を使用する。予めコンタクト154や導電体膜・配線電極155を形成した第4基板153をコイル140に付着させることもできるが、導電体膜配線パターン144―9−1および144−9−2とコンタクト154の接続には導電性接着剤を用い、それ以外の部分は絶縁性接着剤を使用する。または直接接合(常温、高温、融着等)で導電体膜配線パターン144―9−1および144−9−2とコンタクト154の接合、および他の部分の接合を行なうこともできる。
この後、支持基板141−1を分離する。この結果、第4基板153に付着したコイル140を作製できる。コイル140はコア151をコイル配線内部に有する。コアを用いない場合は、コイル挿入孔148を形成する必要はないのでプロセスは簡単になる。尚、支持基板141−1に第4基板を使用することによって、同様のコイル140を作製することができ、最後の支持基板141−1を分離する必要がないこと、最初の配線パターンのないコイル配線基板142−1を使用しなくても良いことなどのメリットがある。ただし、この第4基板153は製品として使用していくので、耐久性などの信頼性を考慮して材料やプロセスを構築する必要がある。また、このときは、支持基板でもある第4基板153側にコンタクト孔や電極・配線を形成する。
この第4基板153に付着したコイル140を、図11で示した荷電粒子が通る空洞204−2の上下に付着した第2基板(上部基板)202および第3基板(下部基板)203に付着させる。この状態を示した図が、図14である。すなわち、図14は、本発明のコイル(電磁石)によって作製された四極電磁石である。荷電粒子通過空洞204−2の左右(Y方向)に設けた空洞(コイル挿入用空洞)120−1および120−2にはコイル118−1および118−2がそれぞれ配置され、その上部には第2基板(上部基板)202が、その下部には第3基板(下部基板)203が付着している。このような加速装置における荷電粒子通過空洞204−2の上にある第2基板(上部基板)202の上に、第4基板153(153−1)に付着したコイル140(140−1)の下面を付着させる。第2基板(上部基板)202の付着面に接着剤を塗布したり、接着シートを塗布して、コイル140(140−1)を付着する。あるいは、コイル140(140−1)の下面に接着剤を塗布したり、接着シートを塗布して、コイル140(140−1)を付着する。コイル140(140−1)を配置する第2基板(上部基板)202の部分に凹部を作製し、その部分の第2基板(上部基板)202を薄くして、その凹部にコイル140(140−1)を挿入しても良い。荷電粒子通過空洞204−2上の第2基板(上部基板)202の厚さが薄くなっているので、コイル140(140−1)の端面がより荷電粒子通過空洞204−2に近づくので、荷電粒子通過空洞204−2の磁界の強さを高めることができる。第2基板(上部基板)202は磁界を弱めたり、あるいは磁界を乱すので、荷電粒子通過空洞204−2上の第2基板(上部基板)の一部(点線で示す開口部分159−1)を取り除いても良い。その場合、荷電粒子通過空洞204−2の圧力が上昇することを防ぐために、コイル140−1が、その開口部分159−1を完全に塞ぐように接着剤等でシールする。コイル140−1の下側端面のシール部分に導電体膜(導電体薄板)やSi膜(Si基板)等の半導体基板を接着しておけば、第2基板(上部基板)がガラス基板等であれば、陽極静電結合で強固に付着できる。あるいは、コイル配線基板142−1にこれらの膜、層または基板を用いれば、同様に陽極静電結合で強固に付着できる。
あるいは、図14に示すように、支柱156−1を第2基板(上部基板)に付着して、その支柱156−1に第4基板153−1を付着して、空洞157−1を形成し、その中にコイル140−1が配置されるようにし、また第4基板153−1に開口部158−1を設けて真空引きできるようにすれば、荷電粒子通過空洞204−2の圧力の上昇を防止できる。この場合、第4基板153−1が支柱156−1に付着したときに、第2基板(上部基板)202とコイル140−1の端面との距離がほぼゼロになるようにすれば、同時に付着することも可能であるし、第2基板(上部基板)202とコイル140−1の端面を付着させなくとも、荷電粒子通過空洞204−2とコイル140−1の端面との距離も固定される。支柱156−1は、コイル配線基板142を用いて形成すれば、プロセスの増加はない。あるいは、コイル140−1の長さと同じか少し長い長さの厚さを持つ基板(これは、絶縁基板、導電体基板、Si基板等の半導体基板を使用できる)に空洞157−1を作製して、第2基板(上部基板)202に付着するか、第4基板153−1に付着しておき、コイル140−1を配置するときに、第2基板(上部基板)202または第4基板153−1に付着することができる。第2基板(上部基板)202や第4基板153−1がガラス基板等であり、支柱156−1が導電体基板またはSi基板等の半導体基板であれば、静電陽極結合で強固に接着することもできる。紙面に垂直方向(荷電粒子の進行方向)は記載していないが、荷電粒子通過空洞204−2より広く支柱156−1によって取り囲むことができるので、荷電粒子通過空洞204−2の上部を完全に空洞157−1の中に含むことができる。従って、荷電粒子通過空洞204−2の外側も圧力制御された空洞157−1に囲まれているので、荷電粒子通過空洞204−2の圧力もより低圧にコントロールできる。尚、コイル118(118−1、2)の電極は空洞157−1の内部に入っているが、配線として引きまわしができるので、空洞の外側へ伸ばすこともできる。
荷電粒子通過空洞204−2の下側も全く同じようにコイル140−2を配置できる。支柱156−2、コイル端面に面した第3基板(下部基板)203の開口部159−2の形成や凹部野形成、空洞157−2の形成、真空引き用の開口部158−2の形成も同様である。また、紙面に垂直方向に、すなわち荷電粒子通過空洞204−2に沿って、複数のコイル118(118−1、2)およびコイル140(140−1、2)を配置でき、複数の四極磁石空間を同時に、しかも簡単に作製できる。この四極電磁石により、荷電粒子通過空洞204−2を通る荷電粒子の収束および発散を制御することができる。
図4では、基板コイルを配置させたが、通常の電磁石を配置しても良い。たとえば、各種電磁石を配置して荷電粒子を収束する部分(たとえば、図1において、15、17、19、21、22、23、26、28、29、31、32、35、36等の部分)に四極磁石を配置することができる。上下方向は簡単に電磁石の一方の磁極を配置でき、磁極を上下基板に接触させるか、接近させれば良い。上下基板に近づけるほど、荷電粒子軌道(貫通室の中央近傍)に近づくので、より小さな磁場でも荷電粒子を収束させることができる。横側は、このままでは電磁石を配置できないので、荷電粒子を収束する部分において、荷電粒子を収束する部分の外側領域(両側)を荷電粒子軌道に略平行に切断して基板に開口部領域(両側)を設けて、その開口部領域に荷電粒子軌道に垂直に磁場が印加されるように、電磁石を配置する。領域としてはスペースが限定されているので、小型で強力磁場を発生するものが望ましい。超伝導磁石の方が容器スペースも考えて磁場強度が所望の大きさを得られるなら超伝導磁石を配置することもできる。本発明の加速器はサイズが小さいので、電磁石を配置する部分全体を超伝導を保持できる温度にする容器内に納めても余り大きな容器サイズとならない。基板に開口部を作製する方法として、レーザーダイシングや高圧水ダイシング等を使用できる。基板内の所望部分を正確に開口することができる。横側に配置する電磁石も基板に接触させるか、接近させて、基板に近づけるほど、荷電粒子軌道(貫通室の中央近傍)に近づくので、より小さな磁場でも荷電粒子を収束させることができる。
シンクロトロンの場合、偏向磁石25、30、34、37の間の空洞でも加速するとより高速の荷電粒子を発生させることができる。たとえば、後に説明する質量分析装置で用いた加速用電極を用いることができる。すなわち、中央孔を有する基板側壁板に導電体膜電極を積層した加速電極(収束や減速にも使用できる)を貫通室内に平行に多数作製する。荷電粒子の進行方向に対して多数配置された加速電極にだんだんと大きな電圧を加えていけば、加速電極の中央孔を通る荷電粒子は加速していく。たとえば、100枚の基板側壁板をピッチ1mmで並べると、長さは100mmであるが、その間に電圧を分割して、全体で100Vを印加すると、1/2mv2=qV(m:荷電粒子の質量、v:速度、q:電荷、V:印加電圧)であるから、m=10−25kg、q=eとして、v=14km/secとなる。4か所で加速すると56km/secとなる。1000周させると56000km/secとなり、光速の1/5になる。
あるいは、多数配置した加速電極に高周波電圧を印加することによっても荷電粒子は加速され、周波数を大きくしていけば速度を増大させることができる。シンクロトロンの円形軌道を多数並べることもできる(図16参照)ので、それぞれの軌道において徐々に高周波電圧の周波数を上げていけば無理なく荷電粒子の速度を増大させることができる。線形加速器の場合は、貫通室の横側の基板を切断すれば良いので、横側(左右方向)から電磁石を配置することは簡単である。
図5は、本発明の荷電粒子加速装置を複数連結させた加速装置を示す図である。図4に示す加速装置200を多数(200−1、2、3、・・・)接続し、それぞれの加速装置へ高周波を入力する高周波導入管(導波管)223を通して、高周波発生装置225から高周波を入力し、加速装置200で加速電界を作り、荷電粒子発生装置221から加速装置200(200−1)へ入射した荷電粒子の速度を加速させて、最終段加速装置200(200−3)から荷電粒子227を高速で出射する。また、加速装置200内を通過した高周波は高周波導出管224から出ていく。それぞれの高周波発生装置200および荷電粒子発生装置221は制御装置226で周波数や電力、タイミング(パルス等)がコントロールされる。本発明の加速装置はサイズを自由に変化させて作製できるので、用途に応じて選択できる。たとえば、空洞深さ(h1、すなわち主基板の厚み)を1mmとすると、加速装置の幅を3mm程度にできるので、300mm×300mmのウエハ(この場合は矩形)で、300mmの長さの加速装置を100本作製できる。従って、1枚のウエハで30mの長さの加速装置を作製できる。このような幅の小さな加速装置であれば、全体を真空(超低圧)箱で覆うこともできるので、加速装置内も真空引きすれば、さらに超超低圧の空洞を実現できる。また、全体を液体Heや液体窒素等に浸漬することもできるので、高周波印加による発熱を抑えることもできるし、収束用電磁石に超伝導体を使用できるので、電磁石の磁界を高めることもできる。
図6は、本発明の荷電粒子加速装置の製造方法の一例を示す図である。本発明の荷電粒子加速装置は、主基板201内に形成した貫通孔を荷電粒子の加速空洞に用いる。主基板201を下部基板203に付着させる。主基板201は、導電体基板、絶縁体基板、半導体基板等種々の材料を使用できる。導電体基板として、銅、アルミニウム等の金属基板や、高濃度にキャリアをドープした半導体基板(たとえば、低抵抗半導体基板)や導電性プラスチックや導電性セラミックや導電性炭素基板等を使用できる。ただし、強磁性体や常磁性体は高周波の導入で発生する磁場に影響を及ぼすので使用しないことが望ましい。従って、オーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性体であるステンレス鋼は使用可能である。絶縁体基板として、ガラス基板、石英基板、サファイヤ基板、アルミナ基板、AlN基板、プラスチック基板、セラミック基板等を使用できる。半導体基板として、シリコン基板、SiC基板、炭素基板、化合物半導体基板等を使用できる。本明細書では特に記載がない場合は、主基板は半導体基板であるシリコン基板として説明する。
下部基板203も導電体基板、絶縁体基板、半導体基板等種々の材料を使用でき、具体的な材料は主基板201と同様である。本明細書では特に記載がない場合は、下部基板は絶縁体基板であるガラス基板として説明する。主基板201と下部基板203の付着方法は、接着剤を使用して接着する方法、付着面を溶かして接合する融着法、常温接合法、高温接合法、拡散接合法等がある。シリコン基板等の半導体基板または導電体基板とガラス基板の場合、静電接合(陽極接合)法を用いることもできる。主基板201の下面にCVD(化学気相成長)法やPVD(物理的成長)法により絶縁膜や金属膜等を形成してから下部基板203と付着することもできる。次に、図6(a)に示すように、主基板201の上面にフォトレジスト等の感光性膜233を塗布法またはシート付着法で形成してフォトリソ法により窓開けし感光性膜パターン233を形成する。この感光性膜パターン233は、主基板201に貫通孔(貫通室と考えても良い)を形成するためのものである。主基板201と感光性膜の間に絶縁膜や金属膜を形成しても良い。これらの絶縁膜や金属膜は主基板201の保護膜としての役目を果たしたり、主基板201のエッチング中に感光性膜233もエッチングされるが、その際感光性膜233もすべてエッチングされたときのエッチングストッパーとしての役割もある。
次に、パターニングされた感光性膜233をマスクにして窓開けされた部分の主基板201をエッチングする。主基板201がシリコンの場合、エッチングガスとしてCF系、SF系、CCl系、SiCl系、Cl系、Br系等を使用でき、貫通孔(空洞)はできるだけ主基板表面に垂直なパターンが望ましく、感光性膜パターン233に忠実な形状(図6(a)の点線234で示す)でエッチングすることが望ましい。このような垂直エッチング法として、RIE(反応性イオンエッチング)法、ボッシュ(Bosch)、クライオ法がある。
下部基板203がガラス基板の場合、上記のエッチングガスやエッチング法においてエッチング選択比を大きく取れるので、主基板201であるシリコンを厚み方向にオーバーエッチングして主基板201の全面を均一性良くエッチングしても、下部基板203のエッチング量は小さい。たとえば、主基板201の厚みを500μmとして、エッチング選択比を50としたとき、25%のオーバーエッチングでも(この程度のオーバーエッチングにより主基板201全体で貫通孔を完全に形成できる)下部基板203のエッチング量は多くても5μmである。従って、下部基板の厚みは10μmあれば十分であるが、一定程度の強度を保持するために100μm程度以上とすることが望ましい。後に補強のために別基板を下部基板203に付着させても良い。厚い下部基板203(たとえば、300μm以上)を付着させて、後に研磨法(CMP法やBG法)やエッチバック法により100μm以下の厚さに薄くする方法もある。
主基板201をエッチングし貫通孔を形成し、感光性膜233を除去した後の断面図が図6(b)である。この断面は、空洞の長手方向(を左右)に見た図であり、図5(a)に対応し、基板側壁201S−(A)、201S−(1)、201S−(i){i=1、2、・・・}、201S−(B)等が、空洞(貫通孔、貫通溝、貫通室と呼んでも良い)204C−(A)、204C−(i)、204C−(B)等が形成される。ここで括弧( )をつけているのは、後述するように、空洞または基板側壁の半分が形成されているということを意味する。従って、ここでは、主基板201の基板厚みはh2/2となる。図6(a)では主基板201(201H)と半分を示すHを付している。基板側壁201Sは主基板201の表面または裏面に対してほぼ垂直な主基板側壁として形成される。ただし、ほぼ垂直に形成できない場合でも、90度±10度以内に抑えることにより加速器として所定の特性を得ることができる。これ以上になる場合でも、高周波入力電圧や荷電粒子発生装置の条件、収束用電磁石の入力電圧等を調整することによって、荷電粒子の速度や方向を制御することができる。
図6(c)および(d)は、基板側壁201Sの部分を空洞204の長手方向(荷電粒子の進行方向、図6(a)および図6(b)では左右方向)に対して直角な方向から見た図である。すなわち、中央孔205の形成方法を示す図である。図6(b)に示す基板側壁201Sを形成した後に、感光性膜235を形成し(感光性シート付着法や感光性膜塗布法にフォトリソ法を用いて形成)、中央孔205を形成するための窓236を窓開けする。主基板201の表面に絶縁膜を形成してから感光性膜235を形成しても良い。パターニングされた感光性膜235をマスクにして、窓開け部分236から主基板201をエッチングし、中央孔205を形成する。中央孔の形状が矩形であるとき、縦の長さをe1、横の長さをe2とすれば、感光性膜235をリムーブした後の状態を示す図である図6(d)に示すように、この段階における中央孔の深さ(縦の長さ)は1/2×e1である。図6(c)および(d)では空洞は見えないが、この基板側壁201(たとえば、201S−(i)){i=1、2、3、・・・}の手前または後方に存在し、その境界を点線237で示す。簡単に分かるように、図6(c)および(d)の中央孔205の形成プロセスは、図6(b)に示す基板側壁201Sおよび空洞204を形成する前、すなわち図6(a)の前に形成することもできる。その方が、空洞等の凹凸がないので、感光性膜パターンを形成しやすいというメリットがある。
次に、図6(e)に示すように、主基板201上および貫通孔204内に絶縁膜238を形成する。この絶縁膜238は、主基板201が半導体や導電体の場合において、この後形成される導電体膜206と導通して問題になる場合に形成する。あるいは、導電体膜との密着性向上膜として形成する。尚、主基板201が絶縁体であるときは導通しないので必要ないが、密着性向上用として絶縁膜を形成することができる。絶縁膜238は、CVD法、PVD法等で形成する。たとえば、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸窒化膜(SiNxOy)である。主基板201がシリコンの場合は、酸化または窒化によって形成することもできる。この後、導電体膜206を形成する。この導電体膜206は、高周波による加速電界形成するためのものであるから、導電率が高い方が良い。また、磁場発生に影響がない非磁性体(反磁性体含む)が良い。たとえば、銅、金、銀、Ti、Zr、Ta、タングステン、アルミニウム、炭素(たとえば、導電性ナノチューブ)、各種シリサイド、これらの合金、導電性PolySi、これらの複合膜が良い。これらの導電体膜はCVD法、PVD法やメッキ法により形成することができる。これらの導電体膜206と絶縁膜238、主基板201、下部(上部)基板202、203と密着性向上用の密着性向上膜を形成してから導電体膜206を形成しても良い。密着性向上膜として、たとえば、チタニウム(Ti)、窒化チタン(TiN)がある。
荷電粒子加速装置部分以外の空洞における導電体膜は除去またはパターニングする必要があるので、感光性膜を形成しパターニングし、不要な部分の導電体膜206はエッチングする。荷電粒子加速装置内の空洞(加速キャビティ)204C−(i)および高周波導入室204C−(A)や高周波導出室204C−(B)の内部は導電体膜206を形成する。導電体膜206をパターニングした後、保護膜用の絶縁膜を形成することもできるが、保護膜が不要なら形成しなくても良い。
図7にそのプロセスの詳細を示す。図7は、基板側壁形成後、導電体膜パターニングまでのプロセスを示す図で、簡単のために図6に示す構造の一部だけ図示している。図7(a)に示すように、基板側壁201S(201S−(A)、201S−(1)等)および空洞204(204C−(A)、204C−(1)等)を形成後、絶縁膜238を形成し、次に導電体膜206を形成し、さらに感光性膜241を形成する、感光性膜241は、塗布法や感光性シートを付着させてそのシートを軟化させて形成する。次に、図7(b)に示すように、露光法(現像やベーク含む)により、所望のパターン241を形成し、導電体膜206を除去すべき部分の感光性膜を除去し窓開けする。この窓開けされた部分において露出している導電体膜206をドライエッチングまたはウエットエッチング法によりエッチング除去する。導電体膜206の上に保護膜等が存在する場合は、その保護膜等をエッチング除去した後に導電体膜206をエッチングする。導電体膜206をエッチングした後、その下に絶縁膜238が存在し、それも除去する場合は絶縁膜238もドライエッチングまたはウエットエッチング法によりエッチング除去する。その後、感光性膜241をリムーブすれば、図7(c)に示すように、所望の部分に導電体膜206が形成される。尚、加速装置内の導電体膜206を接続する場合は、基板側壁201Sの凸部分にある導電体膜206を残すことができる。中央孔に導電体膜を形成する場合もその中央孔部分に感光性膜を形成(残す)すれば良い。
導電体膜206を残したい部分においてメッキ法で導電体膜を厚く積層する方法について説明する。導電体膜206はメッキのシーズ(種)になれば良いので、薄く積層するだけで良い。たとえば、導電体膜206が銅の場合、100nm程度あれば良い。図7(a)の後で、導電体膜206を積層したい部分を窓開けする。すなわち、図7(d)に示すように感光性膜242をパターニングし、導電体膜206を積層したい部分である加速キャビティ部分等を窓開けする。従って、図7(b)とは逆のパターニングとなる。この状態でメッキ液(たとえば、銅メッキであればたとえば硫酸銅液)に浸漬し電界印加により露出した導電体膜206部分に厚く銅等のメッキ膜243を所定厚みメッキする。尚、無電解メッキ法を用いれば、最初に積層する導電体膜206が不要となる場合もある。この後感光性膜242を除去した後、薄い導電体膜206をエッチングするが、メッキ膜243(+206)に比べ導電体膜206の厚みは薄いので、導電体膜206のエッチング液またはエッチングガスで全面エッチングする。こうすれば新たなマスク(感光性膜など)は不要で、所望の領域だけに導電体膜206および243を形成できる。
上部基板202上にも図6(a)〜(e)に示すプロセスで同じ構造を形成する。本発明の荷電粒子加速装置は、空洞204の中心に対して上下および横は(ほぼ)対称形となっている。従って、図6(f)に示すように、下部基板203に形成した図6(e)に示す構造と上部基板202に形成した図6(e)に示す構造を主基板201の上面同士を付着させる。上部基板202や下部基板203はたとえばガラス基板であるから、導電体膜206のない空洞部分204を通して可視光が通るので、直接上側基板(上部基板202と主基板201)と下側基板(下部基板203と主基板201)とをアライメントできるので、極めて正確に合わせ込みができる。本発明の加速装置はLSIプロセスで作製できるので、パターン精度は1μm以下であるから、合わせ精度を3μmとすれば、5μm以下の精度で上側基板と下側基板を付着できる。この精度は加速装置の制御には十分である。
主基板同士の付着は、常温接合法、拡散接合法、高温接合法、あるいは接着剤を用いて強固に行なうことができる。付着部分239に絶縁膜が存在し、付着が不十分となる場合は、この部分の絶縁膜を除去し主基板(たとえば、シリコン)同士を常温接合法、表面活性化法、高温接合法または拡散接合法等で付着できる。あるいは、この部分に金属膜または接着剤を付着して、常温接合、または加熱や圧力をかけて上側基板と下側基板を強固に付着することもできる。さらに、この部分に薄いガラス基板を挟み上下の主基板(たとえば、シリコン)と静電結合(陽極接合)で強固に付着させることもできる。また、導電性接着剤を使用すれば、上側基板に形成される導電体膜206と下側基板に形成される導電体膜206を電気的に接続することが可能である。導電性接着材を使用しなくても、常温接合または適度な温度や圧力をかけて導電体膜206を電気的に接続することも可能である。ここでS1は接合面であり、加速空洞の中心はほぼS1と重なる。また、中央孔の中心もほぼS1と重なる。
図6(g)は、図6(f)における基板側壁201Sの断面を空洞の長手方向と垂直な方向から見た図である。上側基板(上部基板202および主基板201)と下側基板(下部基板203および主基板201)を接合面S2で付着した図で、空洞キャビティの境界を破線237で示す。上部基板202と下部基板203をほぼ同様の基板とした場合は、接合面S2に対して上下がほぼ対称関係となる。その中心には中央孔205が形成される。中央孔205が矩形の場合、図6(d)から分かるように縦がe1で、横がe2である。中央孔205において、基板側壁201Sの表面にシリコン酸化膜等の絶縁膜239を積層して、さらに導電体膜206を形成しても良い。図6(g)では、上側基板と下側基板203との間にある、導電体膜206は除去しているが、この除去は、導電体膜206を残したい部分を感光性膜でマスクし、除去したい部分について感光性膜の窓開けを行ない、導電体膜206のエッチング液またはエッチングガスでエッチング除去する。接合面(付着面)S2において、絶縁膜239を除去しても良い。この場合は主基板201と主基板201の接合になる。また、主基板201(上側なので、201(U))と主基板201(下側なので、201(B))との間に薄いガラス基板を挟んで、静電(陽極)結合により強固に付着させることもできる。
以上のようにして、平板状基板(主基板、下部基板、上部基板を含む)を用いて荷電粒子加速装置を作製することができる。従来は、加速管内に配置するディスクを1枚1枚作製し、また加速キャビティも1個ずつ作製してそれらを組立てていくため、装置も大きくなり、組立て時間も組立てコストも膨大になり、さらに精度を高めることも困難であったが、本発明の場合は、LSIプロセスを用いるか、応用しているため、大量に、しかも安価に、精度良く(合わせ誤差は、大きくても1〜5μm以下)作製できる。
図8は、上側基板(主基板201U、上部基板202)と下側基板(主基板201B、下部基板203)の間にガラス基板251を挟んで静電結合で付着させる場合の荷電粒子加速装置の作製方法を示す図である。図6および図7と重複する所は省略している所もある。シリコン基板201(下側になる基板ということで201Bと称している)と下部基板203であるガラス基板または石英ガラス基板を陽極接合で接合する。次に、シリコン基板201のもう一方の面にもガラス基板また石英ガラス基板251を陽極接合で接合する。このとき、シリコン基板201にプラス(+)電圧を印加する必要があるので、シリコン基板201の側面からプラス(+)電圧を印加するか、あるいは、下部基板203の周辺をフォトリソ法でエッチング除去してシリコン基板201を露出して、その露出した部分からプラス(+)電圧を印加する。(尚、シリコン基板201は金属板等の導電体基板でも陽極接合が可能である。また、シリコン基板201上にアルミニウム等の金属膜を薄く積層してからガラス基板と接合すれば、金属膜がない場合の陽極接合より低温接合が可能である。)ガラス基板251等の厚みは薄い方が良いので、100μm以下、望ましくは50μm以下、もっと望ましくは20μm以下が良い。10μm以下でも良い。このように薄くする方法として、最初厚いガラス基板等を付着して、研磨法(CMP、BG等)やエッチング法(ウエット、ドライ等)で薄くすることができる。
次に、基板側壁201Sを形成するための感光性膜233のパターンをフォトリソ法で形成する。次にこの感光性膜233のパターンを用いて、窓開けされた領域のガラス基板251をエッチング除去する。感光性膜233のパターンにできるだけ忠実にエッチングするために、異方性ドライエッチング(垂直エッチング)が望ましいが、サイドエッチング量を考慮してウエットエッチングや等方性ドライエッチングでも良い。ガラス基板251をエッチング除去した後、シリコン基板201をエッチング除去する。感光性膜233のパターンにできるだけ忠実にエッチングするために、異方性ドライエッチング(垂直エッチング)が望ましいが、サイドエッチング量を考慮してウエットエッチングや等方性ドライエッチングでも良い。図8(a)では、垂直エッチングライン234を破線で示している。
中央孔205の形成もガラス基板251の上から感光性膜のパターニングを行ない、ガラス基板251および主基板201の一部エッチングを行なう。中央孔サイズがガラス基板251が厚み以下である場合は、ガラス基板251だけのエッチングで良い。逆にガラス基板251の厚みを中央孔サイズと合わせることもでき、その場合、ガラス基板251と主基板201とのエッチング選択比を大きくすることにより、中央孔のサイズがガラス基板の厚みと等しくなり、極めて正確に中央孔のサイズを制御できる。中央孔のパターニングは、基板側壁201S−(A)、201S−(i){i=1、2、・・・}、201S−(B)および貫通孔204C−(A)、204C−(i)、204C−(B)を形成する前に形成することもできる。次に、絶縁膜238を形成し、さらに導電体膜206を形成する。(図8(b))次に、フォトリソ法、エッチング法により、導電体膜の必要なパターニングを行なう。(図8(c))加速空洞となる貫通孔204C−(A)、204C−(i){i=1、2、・・・}、204C−(B)の内側面には導電体膜206が形成される。また、それらを接続する中央孔205内面にも必要な部分に導電体膜206を残す。
もう一方の側(図8では、上側の上部基板202側)も同様に作製し、それらを付着させる。(図8(d))ガラス基板251の側面にも導電体膜206が付着しているので、それらが付着して圧力や熱処理等を行ない接続させることができる。さらに、必要な場合には導電性接着剤や半田金属をこの接続部分に付着させて合わせて付着することにより十分な接続を確保できる。導電性接着剤や半田金属はディスペンサー等でなぞりながら塗布できる。あるいは、接続部分と同じ注入口を持つディスペンサー等を作製し、その注入口から一挙に接続部へ導電性接着剤や半田金属(溶融したもの、またはペースト)を付着できる。あるいは、導電体膜の必要な部分を感光性膜でパターニングして露出させ、その露出部分にメッキ法で半田金属を析出させる。これらを付着させて熱処理すれば良い。さらに、この後真空引き用、またはパージ・クリーニング用の開口部を上部基板202または下部基板203に開口するが。この開口部を利用して、メッキ液を注入して接続部等にメッキすることもできる。あるいは、開口部から選択CVD用のガス(たとえば、WF6)を導入し、接続部等の導電体膜206が露出した部分に選択的に金属膜(たとえば、W)を積層することもできる。あるいは、接続が不十分な場合でも、上下に電極を形成できるので、両方から同じ高周波電圧を印加すれば良い。図8(c)と同じものを互いに付着させたときの接着面は一点鎖線で示す244であり、この接着面244に対し上下にほぼ対称な形状となる。この接着は、ガラス面とガラス面の接着になるので、静電陽極接合を行なえないので、片側はガラス基板251を使わないようにすれば、上下を接着するときに静電陽極接合を使用できるので、強固な接合を実現できる。
次に、図8(e)に示すように、下部基板203および絶縁膜238にコンタクト孔を形成し、そこに導電体膜を形成し導電体膜206へ接続するコンタクト245を形成する。さらにこのコンタクト245に接続する導電体膜・電極・配線246を形成する。同様に、上部基板202および絶縁膜238にコンタクト孔を形成し、そこに導電体膜を形成し導電体膜206へ接続するコンタクト248を形成する。さらにこのコンタクト248に接続する導電体膜・電極・配線249を形成する。図8(e)に示すように、これらのコンタクト245、248および電極・配線245、249は、各空洞室204C−A、B、204C−iそれぞれの空洞室内面に形成された導電体膜206へ接続できるようにそれぞれ作製でき、プロセスの増加は全く生じない。これによって、それぞれの空洞室内面に形成された導電体膜206へ外側から個別に電圧を印加できる。さらに、上下の導電体膜206は接合面244で互いに合わさり接合するが、たとえ接合が不十分でも、それぞれ上下の電極246および249から(高周波)電圧印加ができるので、同じ電位とすることができる。また、下部基板203に真空引き用の開口部247、上部基板202に真空引き用の開口部250を形成する。この開口部247および250も各空洞で同時に作製でき、各空洞の圧力を個々に制御することもでき、また非常に小さな空間を個別に真空引きできるので、超超低圧の空洞を実現することができる。上述した様にこの開口部を用いて、メッキ液を空洞内に入れて内部の導電体膜の接続部にメッキもできるし、選択CVD用のガスを空洞内に入れて内部の導電体膜の接続部に選択導電体膜を積層することもできる。以上のように極めて簡単に非常に小さな加速空洞を作製できる。
次に偏向電磁石を説明する。図4、図11〜図14に示した四極磁石のうち上下に配置したコイルを用いて偏向電磁石を作製できる。図15は、図1における偏向電磁石25、30、34、37等の荷電粒子通過空洞およびそこに配置された電磁石を示す図である。図15(a)は偏向電磁石部分の荷電粒子通過空洞257およびコイルの配置状態を示す図である。荷電粒子通過空洞257は、中心軌道が半径Rの曲率を持ち、その曲率に沿った空洞である。この空洞の上下に電磁石である微小コイル258が多数配列している。微小コイル258は荷電粒子通過空洞257の全体を覆って密に配置される。荷電粒子Gは、荷電粒子通過空洞257の入り口から入って、荷電粒子通過空洞257内の垂直磁界によりローレンツ力を受けて軌道半径Rで円運動を行ない荷電粒子通過空洞257の出口から出ていく。
荷電粒子通過空洞257を曲率中心に垂直な断面A1−A2に沿った断面図を図15(b)に示す。主基板261に形成された貫通室264の上下を上部基板262および下部基板263で閉じている。この貫通室264が荷電粒子通過空洞257であり、中心軌道が半径Rの円軌道を有する空洞となっている。上部基板262の上面にコイル260(260−1、2、3)が複数配置されている。コイル260(260−1、2、3)は第4基板266に付着し、第4基板266は支柱265(265−1、2)に付着し、支柱265は上部基板262に付着している。コイルはコイルサイズ(コイル軸に対して垂直面方向サイズ)が小さいほど、巻き数が多いほど、流れる電流が大きいほど、コイル端面の磁界が大きいので、小さなコイルを多数並べて配置すると、荷電粒子通過空洞257に及ぼす磁界が大きい。本発明のコイルは、図13でも示したようにコイルサイズを小さくすることは容易であるが、配線サイズを小さくすると流せる電流も小さくなる。従って、一概にコイルサイズを決めることはできないが、荷電粒子通過空洞257に比べてコイル260のサイズが小さい場合は、荷電粒子通過空洞257全体をコイル260で完全に被うように複数配列する。たとえば、コイルサイズが0.5mm×0,5mmで、荷電粒子通過空洞257の幅が1mmであるときは、図15(b)に示すように、少なくとも3個のコイルを荷電粒子通過空洞257の幅方向に並べる。その際荷電粒子Gの中心軌道は荷電粒子通過空洞257の幅方向におけるほぼ中心であるから、この中心上に1つのコイルの軸がほぼ一致するように配置するのが望ましい。コイル端面の中心が最も磁界が大きいからである。(ただし、余り差はない。)そのコイルを間にして幅方向に密に配列していく。コイル間の距離(たとえば、コイル260−1と260−2との距離)は、コイルを作製するとき(コイル配線基板を重ねて付着するとき)に決まり、コイル同士を分離する必要がないので、かなり小さくすることができる。たとえば、配線間距離をコイルの配線幅程度とすることも可能である。コイルサイズが荷電粒子通過空洞257より大きい場合は、幅方向には1個のコイルで良い。そのときもコイルの軸は荷電粒子通過空洞257の中心上に来るようにコイルを配置することが望ましい。
また、荷電粒子通過空洞257における荷電粒子の進行方向に関しても、この軌道に合わせたコイル配線基板のコイルパターンを用いて、コイルを隙間なく配列していけば良い。たとえば、図15(a)に示すようにコイル258を配列していく。そして、コイル配列群をまとめて分離して(あるいは分離しなくても良い)第4基板に付着して、支柱265(265−1,2)を元にして(または一緒に)上部基板262に付着する。これは図14で説明したことと同様である。コイル260の軸は上部基板262や主基板表面に対して垂直となるようにする。また、コイル260の端面はできるだけ荷電粒子通過空洞257に近い方が良いので、上部基板262に接触させて付着するか、できるだけ接近させる。コイル260が配置される部分における上部基板262の部分273−1を薄くして(実際にはコイル260(260−1、2,3)の方が荷電粒子通過空洞257の幅よりも広いので、荷電粒子通過空洞257の幅よりも広いコイル260が全て入り込むことのできる凹部を設ける)、その凹部へコイル260(260−1、2、3)を挿入することも望ましい。さらに、荷電粒子通過空洞257におけるコイル260を配置する部分の上部基板262の部分273−1を開口して、コイル260の磁界が上部基板262により弱められたり、乱されたりしないようにすることも望ましい。この場合、荷電粒子通過空洞257の気密空間が破れるので、コイル260の下端面の外周部(この場合は、複数のコイルの外周部)と上部基板262との付着を確実に行なうことが望ましい。たとえば、コイル外周部に接着剤(半田金属)を付着したり、常温接合や高温接合、拡散接合、あるいは静電陽極接合を確実に行なう。さらに、コイルが配置される空間269を気密空間として、第4基板266に真空引き用の開口部270を設け、この真空引き用開口部270から気密空間269を超低圧にする。当然荷電粒子通過空洞257にも真空引き用の開口部を上部基板262や下部基板263に設けて、その開口部を通して真空引きできるようにする。この結果、荷電粒子通過空洞257を超超低圧空間とすることができる。
下部基板263も同様にコイル259(259−1、2、3)を配置する。コイル259(259−1、2、3)の端面を荷電粒子通過空洞257へ近づけるために凹部273−2を設けたり、開口部273−2を設けたりすることができる。コイル259は第4基板268に付着し、支柱267(267−1、2)は下部基板263に付着し、第4基板268は支柱267に付着する。コイル259を配置する空間271を気密空間とし、第4基板268に真空引き用開口部272を設けることもできる。下部基板263側のコイル259は、上部基板262側のコイル260と同じものを同じ数だけ、荷電粒子通過空洞257に対して対称に配置することが望ましい。同じ特性のものであれば、荷電粒子通過空洞257内の磁界を制御しやすい。しかし異なるサイズのコイルでも、流す電流の大きさを調整すれば、同様に荷電粒子通過空洞257内の磁界を制御することができる。本発明は、コイルを配置する空洞がどのような形状をしてもそれに合わせてコイルの形状を設定できる。たとえば、コイル配線を任意の曲線形状にできる。また、コイルサイズの自由に設定できるし、コイルの配置項数や配置形状も自由に変更できる。図1に示すシンクロトロンの偏向磁石部25、30、34、37等は半径Rの曲率を持つ扇型形状の空洞であるが、それに対応したコイルを自由に配置することができる。もちろん、直線形状の空洞における四極電磁石、収束用電磁石の配置形状や配置個数も自由に設定できる。
既に述べたように、本発明の加速器は、種々の機能を持つ機器を一括して作製できるので、基板を大きくして、さらに機器を接続することができる。図1で示したシンクロトロンである超小型加速装置をさらに1回り大きいシンクロトロンを接続し、それらを同時に一挙に作製することができる。図16は、図1で示した円形加速器(シンクロトロン)8−1を有する超小型加速装置10−1をさらに1回り大きい円形加速器8−2に接続した図で、2重シンクロトロン(あるいは2サイクルシンクロトロン)を示す図である。1つ目の小さな超小型加速装置10−1の回りを2つ目のシンクロトロン8−2が取り巻いている。これらをまとめて超小型装置10−2とする。1つ目の小さな超小型加速装置10−1(図1で示したものと同じと考えて良い)の出口41−1(図1の41であるが、2つ目の大きなシンクロトロンの出口41(これは41−2)と区別する意味で「−1」をつけた。)は2つ目のシンクロトロン8−2のインフレクター21−2へ接続する。すなわち、1つ目の小さなシンクロトロン8−1の出口41−1を出た荷電粒子は、インフレクター21−2を介して、円形加速器8において荷電粒子が通る空洞である蓄積リング24−2に入射する。円形加速器8を出た空洞の途中に線形加速装置39−1を設けて、インフレクター21−2へ入る荷電粒子の速度を調節することもできる。また、その途中に他の偏向電磁石、加速電極、減速電極、線形加速装置、収束電磁石等を設けても良い。
インフレクター21−2から円形加速器8−2の蓄積リング24−2に入射した荷電粒子は、(水平方向用)収束電磁石や(垂直方向用)収束電磁石を設けて、収束しても良く、偏向電磁石25−2で偏向・加速し、次の蓄積リング27−2へ入り、ここでも高周波加速空洞29−2でさらに加速し、(垂直方向用)収束電磁石26−2、(水平方向用)収束電磁石28−2で収束し、偏向電磁石30−2で偏向・加速し、次の蓄積リング33−2へ入り、ここでも(垂直方向用)収束電磁石31−2、(水平方向用)収束電磁石32−2で収束し、偏向電磁石34−2で偏向・加速し、次の蓄積リング38−2へ入り、ここでも(垂直方向用)収束電磁石35−2、(水平方向用)収束電磁石36−2で収束し、次の偏向電磁石37−2で偏向・加速し、次の蓄積リング24−2へ入る。このようにして、荷電粒子は、蓄積リング24−2、27−2、33−2、38−2中を加速しながら回り続け、所望の速度および所望の数の荷電粒子が得られたら、荷電粒子を外部へ導く空洞(これを荷電粒子排出空洞と呼ぶこともある)40−2へ入り、荷電粒子排出空洞40−2の出口41−2から外部へ荷電粒子を取り出す。荷電粒子排出空洞40−2の途中に線形加速装置39−2を設けて荷電粒子をさらに加速させても良い。また、その途中に他の偏向電磁石、加速電極、減速電極、線形加速装置、収束電磁石等を設けても良い。
このようにいくつも円形加速器を接続することができる。これを用いて、荷電粒子の速度を上げることができる。またそれぞれの蓄積リングに荷電粒子を貯めておくことができるので、必要な量の荷電粒子を短時間で準備できる。たとえば、荷電粒子の通る蓄積リングの空洞直径を1mmとし、一番内側の超小型加速装置の大きさを半径50mmとし、リングピッチを3mmとし、基板の半径を270mmとすれば、70個の円形加速器を配置できる。
図17は、円形加速器8を分割して基板に作製する場合の模式図を示す図である。すなわち、基板を大きくできず、かつ円形加速器等が基板サイズに対して大きい場合に、加速器を作製する方法を示す。図1に示すような円形加速器8がかなり大きく、たとえば2m×2mの基板が必要であるが、1m×1mの基板しか用意できない場合には、1m×1mの4枚の基板44−1〜44−4(破線で示す)を用意し、それぞれに円形加速器8の1/4のパターン43−1〜43−4を作製する。接続部のパターンである45−1、2、3、4の所で基板44−1〜44−4を、たとえばダイシング装置で切断する。ここで接続すべき部分は、蓄積リング24、27、33、38であるから、この部分における蓄積リングの中心軸が合うように接続する。この接続を確実に行なうために、切断部を研磨したり、エッチングしたりして、接続面を平滑にする。接続部の付着は、各種接合法で行なうことができる。接続部の間に別材料を介在することもできる。たとえば、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板等で、これらと接続部材の融着等や静電陽極結合を行なうことができる。蓄積リング24、27、33、38の内部が超低圧にできれば、接続部は必ずしも確実に付着する必要はない。たとえば、この部分を被う部材または箱を用意して、基板44−1〜44−4とその部材等を付着すれば良い。蓄積リング24、27、33、38の軸合わせを調整できるようなある程度柔軟性またはフレキシブルな部材等が望ましい。その部材等に真空引きラインを設けて、その内側を真空引きできるようにすれば尚良い。これを繰り返せば、極めて大きな円形加速器も作製できる。また、この方法は、前述したように、イオン化源や長い線形加速器の作製にも適用できる。すなわち、線形加速器を基板内に多数作製し、それらをダイシング等により切断して、それらの空洞同士を接続すれば良い。
図18は、本発明のマイクロ波イオン源を示す図である。本発明のマイクロ波イオン源は、主基板161の上面に上部基板162、下面に下部基板163が付着し、主基板に形成された貫通室164−1、164−2、164−3を含み、貫通室164−1は、上部基板162または下部基板163に開口された開口部166−1を通して、マイクロ波または高周波(以下、高周波)発振器からの高周波160が導入される導波管である。(以下、導波管室164−1とも言う。)貫通室164−2は、導波管室164−1の隣室で、中央孔165−1を有する基板側壁161−2によって隔てられた放電室であり(以下、放電室164−2とも言う)、導波管室164−1から基板側壁161−2の中央孔165−1を通して高周波が入射される。放電室164−2の周囲はコイル配線が取り巻いたコイル169が配置され、このコイル169により放電室164−2内にコイル軸方向に磁場B1が発生する。放電室164−2内の電子が高周波電界により加速され、気体を衝突電離することにより放電が起こり、プラズマが発生する。高周波発振器(図示せず)は、開口部166−1に接続しているが、接続部にシール部168−1を設けて高周波発振器と導波管室164−1との接続部から高周波が漏れたり、真空が漏れたりしないようにすることが望ましい。このシール部168−1はガラス、プラスチック等の絶縁体材料基板を接着剤等で付着することができる。尚、この導波管室164−1を主基板161の外側に設けて省略することもできる。その場合は、高周波160を直接放電室164−2へ導入することもできる。導波管室164−1の上部基板162および/または下部基板163に気体(ガス)導入用の開口部166−2が開口され、この開口部166−2からイオンの元になる各種気体(ガス)を導入し、高周波とともに放電室164−2へ送る。また、導波管室164−1の上部基板162および/または下部基板163には真空引き用の開口部167−1が備わり、導波管室164−1を所定の圧力に設定できる。さらに各貫通室の上部基板162および/または下部基板163に開口部を設けて、圧力測定や、温度測定を行なうこともできる。また、各貫通室の温度は、外部から赤外線を照射して温度を制御することができる。あるいは、外側から、ヒーターや熱水や熱風で温めることができ、ペルティエ素子等の使用、冷水や冷風、冷気体、液体He、液体窒素等の冷液体で冷却することもできる。体積が小さいので簡単にコントロールできる。
放電室164−2の隣室の貫通室164−3はイオン引き出し電極室であり、放電室164−2のとは中央孔165−2を有する基板側壁161−3で隔てられている。放電室164−2には、引き出し電極であり中央孔165−3を有する基板側壁161−4、減速電極・収束電極である中央孔165−4を有する基板側壁161−5、加速電極である中央孔165−5を有する基板側壁161−6がある。放電室164−2内で発生したイオン(荷電粒子)は、引き出し電極161−4の電界に引き寄せられ、仕切り用の基板側壁161−3の中央孔165−2を通り、さらに引き出し電極161−4の中央孔165−3を通って加速し、隣の減速電極・収束電極161−5の中央孔165−4を通って収束して、さらに隣の加速電極161−6の中央孔165−5を通って加速する。これらを繰り返して加速・減速・収束したり、偏向磁石室へ出射したり、四重極磁石室で収束したり、質量分析室等、イオン注入、その他の用途を持つ種々の貫通室へ出射する。イオン引き出し電極室では、加速電極や減速・収束電極を組み合わせながら、所望の速度、電流密度を持つイオンビームを得る。
各貫通室同士の仕切り用で中央孔を持つ基板側壁は、通常、導電体膜は積層していないので、ここで加速や減速はされない。引き出し電極であり中央孔165−3を有する基板側壁161−4は、その側面に導電体膜170−1(前方側側面)および170−2(後方側側面)が積層している。主基板161が絶縁体であれば直接導電体膜170を形成でき、主基板161が絶縁体でない場合は主基板161と導電体膜170の間に絶縁膜を介在すれば良い。この導電体膜170は、上部基板162の下面に形成された導電体膜176、および/または下部基板163の上面に形成された導電体膜175に接続し、さらに上部基板162および下部基板163に形成されたコンタクト173に接続し、さらに上部基板162の上面に形成された導電体膜電極配線172および/または下部基板163の下面に形成された導電体膜電極配線174に接続する。従って、導電体膜電極配線172および/または174から、導電体膜170へ電圧を印加できる。イオンが負電荷の場合は、引き出し電極161−4へ正電圧を印加し、イオンを引き寄せて加速する。イオンが正電荷の場合は、引き出し電極161−4へ負電圧を印加し、イオンを引き寄せて加速する。イオンが発散することを防ぐために、あるいは加速しすぎないために、減速・収束用電極161−5を設ける。その構造は引き出し電極161−4と同様である。イオンが負電荷の場合は、減速・収束用電極161−5へ負電圧を印加し、イオンを収束させるとともに減速する。イオンが正電荷の場合は、減速・収束用電極161−5へ正電圧を印加し、イオンを収束させるとともに減速する。加速電極161−6は、その構造も電圧印加法も引き出し電極161−4と同じである。本発明では、これらの基板側壁電極を複数自由に配置できるので、各基板側壁電極への印加電圧の正・負、印加電圧の大きさを自由に選定してイオンビームGを制御できる。
放電室164−2の上部基板162および/または下部基板163に気体導入用の開口部166−3を設けて、ここから気体を放電室164−2へ導入してイオン化しても良い。また、放電室164−2の上部基板162および/または下部基板163に真空引き用の開口部167−2を設けることもできる。コイル169の配線がスパイラルに放電室164−2の外側を取り巻いており、これが放電室164−2に磁場を発生させている(第1磁場発生)が、それを補助するために、コイル169の内側で、放電室164−2の外側に第2磁場発生手段である複数の磁石178が配置されている。この磁石178は、永久磁石でも良く、放電室164−2の長手方向(イオンの進行方向でもある)に同一の極性になっており、図18(b)に示すように、(図18(b)は、図18(a)のA1−A2に沿った断面図である)、放電室164−2の周囲に一定間隔をおいて複数配置される。(図18では16極磁石)放電室164−2を向いている面の各磁石178の極性は同一であり、隣り合った磁石の極性は逆になるように配置される。これによって、各磁石間に発生する磁場は放電室164−2の内面の周囲で内面に局在した多極磁場(破線で示す)B2となる。この多極磁場B2は、放電室164−2の内面から内側へ近づくにつれて小さくなる。この結果、放電室164−2の中心付近ではかなり磁場B2が弱くなり、放電室164−2の中心付近に一様なプラズマが生じる。同時に放電室164−2の内面側では磁場B2によりプラズマの進入が抑制され、プラズマ損失が低減する。さらに、これらの磁石178により、高周波によりプラズマの特性がより安定化して、主磁場B1によるイオン電流の変動を小さくすることができる。主磁場B1を精密にコントロールすることによっても、放電室164−2内のプラズマの安定化およびイオンビームGの量を安定に生成できるが、磁石178を配置することによって、さらに精密なコントロールが可能となる。
磁石178が永久磁石の場合、たとえばフェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、Fe−Cr−Co磁石、Fe−Pt磁石、Fe−Al−Ni−Co磁石、Co−Pt磁石を使用できる。磁石178は、永久磁石の他に、本発明の微小コイルを複数並べたものでも良い。すなわち、16極磁石の場合、各極の同じ側に同一の極性になるように複数の微小コイルを配置する。あるいは、各極は一つのコイルとしても良い。その場合は、イオンの進行方向に細長く巻いたコイルとなる。微小コイルを用いた場合、各コイルの磁場は印加電流により制御できるので、より精密な磁場B2を発生でき、また制御できる。磁石178を配置する場合、上部基板162や下部基板163において、放電室164−2の磁石178の配置領域に凹部181や182を形成して、その部分における基板厚みを薄くしても良く、それだけ放電室164−2の磁場発生を強めることができる。また、磁石178を配置する場合、放電室164−2の外側において第4基板168や第5基板177を上部基板162や下部基板163に付着させて、図18に示すように、磁石178の上方をあけておくこともできる。特に微小コイルを配置するときは、この部分をあけておけば、微小コイル端子に電流を流し易い。たとえば、微小コイル端子にワイヤボンドすることができる。尚、第4基板168(168−2、3)はシール用基板168−1と兼用することもできる。すなわち、同じ基板で上部基板162に付着できる。
磁石178の上方に空間を設けて、図18に示すように、第6基板179を第4基板168に、第7基板180を第5基板177に付着する。このとき、第6基板179および第7基板180にコイル配線169を形成しておき、また、第6基板179および第7基板180に、これらのコイル配線169に接続するコンタクト183−1を形成しておき、第4基板168に形成したコンタクト183−2と接続する。さらに第4基板168に形成したコンタクト183−2は、上部基板162に形成したコンタクト183−3と接続する。さらに上部基板162に形成したコンタクト183−3は、主基板161に形成したコンタクト183−4と接続する。さらに、主基板161に形成したコンタクト183−4は下部基板163に形成したコンタクト183−5と接続する。さらに、下部基板163に形成したコンタクト183−5は第5基板177に形成したコンタクト183−6と接続する。そして、第7基板180に作製したコイル配線169に接続した第7基板に形成したコンタクト183−7を第5基板177に形成したコンタクト183−6と接続する。この結果、コイル配線169はスパイラル状につながり、放電室164−2を取り囲み、コイル169が作製される。尚、磁石178を配置しないときには、第4基板〜第7基板は不要であり、コイル配線パターンを上部基板162および下部基板163へ形成すれば良い。
コイル配線169のコンタクト183(183−1〜7)は、各基板にコンタクト孔を形成し、その基板が絶縁体でない場合は、そのコンタクト孔内面に絶縁膜を形成しておく。次に、必要なら密着用またはシード要導電体膜をコンタクト孔内面に積層した後、メッキ法、スキーズ法、溶融金属流し込み法、ディスペンス法、電鋳法、CVD法、選択CVD法等を用いてコンタクト孔内を導電体膜で充填またはセミ充填する。これらを順次付着させていけば良い。図18(b)に示すように、上部基板162と下部基板163の間、すなわち、放電室164−2の側面側に配置された磁石群184(184−1、2)は、放電室164−2と基板側壁161−4および161−5を挟んで形成された貫通室である、磁石群挿入用貫通室164−4および164−5に挿入される。この挿入方法は、既に述べたコイル挿入方法と同じである。また、磁石群184(184−1、2)の作製法は、磁石178を非磁性体183を介在させながら順次積層していけば良い。この作製法もコイル作製法と同じである。
あるいは、主基板161を幾つかに分割し、その分割した主基板に磁石群184(184−1、2)や非磁性体183を搭載して順次付着させることによっても放電室164−2の側面側に磁石群184(184−1、2)を配置することができる。その場合、磁石群184(184−1、2)における磁石178の厚みとその間に介在する非磁性体183
の厚みを分割した主基板161の厚みに合わせておくことが望ましい。
さらに、図18において、第6基板179の下面に上側の磁石178を付着して、放電室164−2の上方に磁石178を配置することができる。このときは、当然第4基板168の厚み、凹部181の深さ、磁石178の厚みをそろえておき、できるだけ放電室164−2に近づけることが望ましい。同様に第7基板180の上面に下側の磁石178を付着して、放電室164−2の下方に磁石178を配置することができる。このときは、当然第5基板177の厚み、凹部182の深さ、磁石178の厚みをそろえておき、できるだけ放電室164−2に近づけることが望ましい。
上部基板162、第4基板168、第6基板179で形成される空間185を気密空間にし、下部基板163、第5基板177、第7基板180で形成される空間186を気密空間にすることもできる。この場合、放電室164−2における上部基板162の一部および下部基板163の一部、特に磁石178を配置される領域を除去すれば、磁石の磁場が直接放電室164−2へ印加されるので、効率的な磁場B2を発生できる。この場合、磁石178を上部基板162および下部基板163に付着した場合には、磁石178を支持できる最低減の上部基板162および下部基板163を残しておけば良い。第6基板179および第7基板180に磁石178が付着している場合は、磁石の直下または直上にある基板162および163を除去できる。同様に、放電室164−2の側面側の基板側壁161−4および161−5も除去できる。あるいは、一部だけ残しておいても良い。この場合、空間185や186を真空引きしたり、ガスを導入したりする開口部を第6基板179や第7基板180に設けることもできる。同様に、磁石群挿入用貫通室164−4および164−5を真空引きしたり、ガスを導入したりする開口部を上部基板162や下部基板163に設けることもできる。
本発明の基板を用いた高周波イオン源のサイズを見積もる。本発明の貫通室は高さ、幅とも0.1mm〜100mm、これ以上のものも付着法で可能である。モールドを用いた基板インゴット法でも可能である。3Dプリンターでも作製可能である。長さは基板サイズで決まるが10mm〜1000mm、これ以上のものも接続法で可能である。一例として、主基板の厚み1mm、上部・下部基板・第4基板〜第7基板の厚み0.2mm、基板サイズ600mm×600mmとすれば、放電室の高さは、1枚の主基板で1mm、10枚重ねで10mm、50枚重ねなら50mm、100枚重ねなら100mmとなり、幅は1〜100mmと高さに合わせることができ、長さは500mm程度までは作製できる。また、放電室164−2の長さを200mmとし、コイル169の幅・厚みを1.5mm×1.5mm、ピッチを2mmとすれば、100巻きのコイル(電磁石)を作製できる。コイル169は、図18では基板内に導電体膜を埋め込んで作製しているが、基板を切断して放電室164−2を含む加速器等を個別に切りだした後で、放電室164−2の回りにコイル配線169を手動または自動で巻き付けてコイル169を作製することもできる。以上のように、基板を用いた本発明のイオン発生源は種々のサイズで作製できる。
質量分析は、固体表面の組成分析、反応溶液の組成分析等物質の解析等に広範に使用されている。従来の質量分析は、構造が複雑であり、個々の部品の組み立ても正確さを要求されるため作製が容易でなく、大きさも少なくとも1m程度の体積があるので、コストが高く、持ち運びも困難であった。そこで、主基板(第1基板)とその上下に上部基板(第2基板)と下部基板(第3基板)を付着させて、マイクロチャネルを作る本発明を適用すれば、超小型・超安価の質量分析装置を実現できる。
図19は、本発明の質量分析の一実施形態を示す図である。主基板301の上面から下面に貫通する貫通溝(貫通室)305、306、307、308、309が形成され、主基板301の上面に上部基板302が、主基板301の下面に下部基板303が付着している。この付着は、接着剤を用いて接着しても良いし、主基板301がSi、炭素系、SiC系、化合物系等の半導体基板や金属板等の導電体基板であり、上部基板302や下部基板303がガラス基板等である場合は、静電陽極接合することもでき、この明細書で記載する他の接着法や他の文献等で記載される接着法でも良い。貫通溝305は試料室であり、主基板側壁301−1と、試料室305とその隣のイオン化室306を隔てる基板側壁(隔壁とも言う)301−2に挟まれた空間である。(側面は、主基板301の側壁である。)試料室305に試料311が配置される。試料311は、たとえば、上部基板302の一部に開口された試料開口部312から挿入され、基板側壁301−1に付着させるようにすれば分析しやすい。試料311の表面の一部に加速されたイオンビームが当たり試料の一部がスパッタされるが、このイオンビームが当たる部分だけに分析すべき試料(分析試料)があれば良いので、試料311として試料ホルダーを用いても良い。試料311の裏面側に設けた真空ライン313から真空引きして、試料311を基板側壁301−1に付着させて固定することもできる。試料室205を低圧にする場合は、真空ライン313でさらに低圧にして試料311を引けば良い。同程度の低圧の場合は試料311を支持するのが難しければ、上下基板の一部に溝を切ってそこに試料311を入れて試料311を支えれば良い。
試料室305の上部基板302にはイオンビーム導入口314が開口され、このイオンビーム導入口314を通して、質量分析装置300の外側に配置されたイオン銃315から発射されるイオンビーム316を試料311に当てて、試料311の構成物質をスパッタする。尚、イオン銃315も主基板301内に配置することができるが、この場合は、試料室305の側面側(図19の紙面に垂直方向)に形成されたイオン銃315から、主基板301の貫通溝を通してイオンビームを試料311に当てる。イオンビーム316は、たとえば窒素(N)イオン、アルゴン(Ar)イオン、キセノン(Xe)イオン等である。スパッタされた試料物質は、中性粒子317、イオン(2次イオン)318であり、これらの粒子は隔壁301−2の中央孔310−2へ進みイオン化室306へ入る。試料室305内は大気圧近辺の圧力でも良いが、真空引きライン319を下部基板303等に開けて真空ポンプを接続して試料室305内を減圧にしても良い。
試料室305内において、主基板301の内側面にシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜等の絶縁膜を積層しても良く、これらの絶縁膜はCVD法やPVD法、または酸化法や窒化法で形成できる。中央孔310−2は、これまでにも説明したように主基板301を上下に分離した状態で試料室等の貫通溝(の半分)および隔壁301−2等の隔壁を形成した後に、隔壁301−2等の中央部分を一部除去し(これらは逆でも良い。すなわち、中央孔をあけてから基板側壁を形成する。)その後分離された上下の主基板301を付着させて形成する。絶縁膜は主基板301を付着させる前に形成するか、主基板301を付着させた後に形成する。
試料室305に隣接して形成されるイオン化室306は、試料室305から入射する中性粒子をイオン化し、そのイオン化されたイオンおよび試料室305から入射するイオンを中央付近に集束する空間である。イオン化室306の隣には、イオン化室306に存在するイオンを引き出してさらに加速する荷電粒子加速室307があり、イオン化室306と荷電粒子加速室307の間は、中央孔310−3を有する隔壁301−3で隔てられる。すなわち、イオン化室306は、隔壁301−2および隔壁301−3に挟まれた空間である。(側面は、主基板301の側壁である。)
イオン化室306では、イオン化ビーム320を上部基板302または下部基板303を通してイオン化室306に存在する中性粒子317に照射しイオン化する。イオン化ビーム320は、これまでの文献等で紹介された種々のビームを用いることができ、たとえばレーザー光、電子ビーム、シンクロトロン放射光、X線等であり、また、レーザー光に加えてレーザー光を固体ターゲットに当ててその際発生するX線をさらに用いて中性粒子をイオン化しても良い。(特許3079585)イオン化ビーム320をイオン化室へ通しやすくするために、イオン化ビーム320の通り道となる上部基板302または下部基板303の部分を除去しても良い(開口部を設ける)。
また、イオン化室306の内面は導電体膜321を積層し、上部基板302または下部基板303にコンタクト孔323を形成し、そのコンタクト孔323に導電体膜を積層し、さらに上部基板302または下部基板303上に導電体膜電極・配線324を形成し、導電体膜321に電極・配線324から電圧を印加できるようにする。導電体膜321はイオン化ビーム320を通る部分を除いてイオン化室の内面を被うようにすると、イオン化室の内面が同じ電位状態にできる。イオンが正イオンの場合は導電体膜321に正電圧を印加し、正イオンを中央に集束させる。イオンが負イオンの場合は導電体膜321に負電圧を印加し、負イオンを中央に集束させる。上下左右の導電体膜を分割しそれぞれの導電体膜にコンタクト孔および電極・配線を形成すれば、それぞれの導電体膜領域の電圧を個別にコントロールできるので、イオン化室306における荷電粒子ビーム325の位置を調節できる。主基板301がSi等の半導体基板やCuやAl等の導電体基板である場合は、絶縁膜を形成した後に導電体膜321を積層する。また、導電体膜321の保護膜として導電体膜321の上に絶縁膜を積層しても良い。イオン化室306、隔壁301、中央孔310、絶縁膜、導電体膜321、保護膜等の形成、パターニングは、本明細書で述べるように、主基板301を分割してそれぞれ形成し、分割した主基板を付着させる方法で実現できる。尚、試料室305で発生したイオン318もイオン化室306へ入れば、当然イオン化室306の内面に印加された電圧によって収束し、イオン化ビーム325の一部となる。
イオン化室306で収束した荷電粒子ビーム325は、中央孔310−3を通って荷電粒子加速室307へ入る。加速室307の入り口側に最も近い所に中央孔327−1を有する隔壁301−11が配置され、隔壁301−11の周囲には導電体膜326が積層されパターニングされる。この導電体膜326にはコンタクト孔323に積層された導電体膜および導電体膜電極・配線324へ接続し、荷電粒子ビーム325のイオンの電荷と逆電荷を持つ電圧が印加され、荷電粒子ビーム325はイオン化室306から引き出されかつ加速される。従って、この隔壁301−11は引き出し電極と呼んでも良い。上下左右の導電体膜を分割しそれぞれの導電体膜にコンタクト孔および電極・配線を形成すれば、それぞれの導電体膜領域の電圧を個別にコントロールできるので、中央孔327−1における荷電粒子ビーム325の位置を調節できる。
荷電粒子ビーム325の進行方向において隔壁301−11に隣設して隔壁301−12(中央孔327−2も有する)が配置され、隔壁301−12の周囲には導電体膜326が積層されパターニングされる。この導電体膜326にはコンタクト孔323に積層された導電体膜および導電体膜電極・配線324へ接続し、荷電粒子ビーム325のイオンの電荷と同電荷かまたは逆電荷を持つ電圧が印加される。荷電粒子ビーム325のイオンの電荷と同電荷の電圧が印加される場合は、荷電粒子ビーム325は集束し、荷電粒子ビーム325のイオンの電荷と逆電荷の電圧が印加される場合は、荷電粒子ビーム325は加速される。荷電粒子ビーム325の進行方向において、隔壁301−12以降にも隔壁301−12と同様の導電体膜が積層された隔壁(中央孔も有する)を必要数形成し、これらの導電体膜に荷電粒子ビーム325のイオンの電荷と同電荷かまたは逆電荷を持つ電圧を印加し、必要な数だけ荷電粒子ビーム325を加速し、また必要な数だけ荷電粒子ビーム325を集束させて、中央孔310−4を有する隔壁301−4で隔てた隣接の質量分析室308へ荷電粒子ビーム325を導く。隔壁301−12以降の個々の隔壁の導電体膜を上下左右に分割しそれぞれに個別にコンタクト孔およびその中に導電体膜および電極・配線を形成することによって、分割された導電体膜に別個に異なる電圧を印加できるので、荷電粒子ビーム325の進行方向や集束位置を制御できる。この結果、質量分析室に入射する荷電粒子ビームのビーム半径や位置や進行方向を自由に制御することが可能となる。
中央孔310−2、3、4、5や加速室307内の隔壁327−1、2、・・・等が有する中央孔301−11、12、・・・等の孔の大きさは自由に変化させることができる。たとえば、310−2はスパッタされた中性粒子317やイオン318を殆どイオン化室に導くために大きめにする。また、加速室307内の中央孔327−11は、イオンを引き出し易くするためにイオン化室306との境界にある中央孔310−3より小さくする。また、加速室307内の中央孔327−2、・・・等は加速するために中央孔310−3や327−11より小さくする。このように中央孔の大きさを変化させる方法は、主基板を上下2つに分割して、隔壁を形成した後各隔壁に形成する中央孔の大きさに合わせたパターニングを行ない(たとえば、フォトレジストパターン)、各中央孔の大きさに合わせて隔壁をエッチング除去すれば良い。あるいは、主基板を上下2つに分割して、各隔壁を形成すべき位置でそこに形成される中央孔の大きさに合わせたパターニングを行ない(たとえば、フォトレジストパターン)、各中央孔の大きさに合わせて主基板をエッチング除去した後に、各隔壁を形成する。その後、絶縁膜や導電体膜や保護膜、それらのパターニングを行なう。加速室307は、図1〜図17等を用いて説明した加速器に用いる加速室を使用することもできる。
質量分析室308は、たとえば四重極型である。質量分析室308は加速室307に隣接し、中央孔310−4を有する隔壁301−4で隔てられている。加速室307で加速され集束された荷電粒子ビーム325は質量分析室308に入ると、質量分析室308の電場や磁場により、その荷電粒子の持つ電荷qと質量mとの比m/q(質量電荷比)によって軌道が振り分けられ、特定の荷電粒子だけがイオン検出室309へ進入する。イオン検出室309は、加速室307と中央孔310−5を有する隔壁301−5で隔てられる。
質量分析室308は、たとえば四重極型である。図19は、四重極質量分析型として示している。ここで、質量分析室308にはその分離壁である隔壁301−4および301−5以外の隔壁はなく、主基板301は上部基板302から下部基板303へ貫通する貫通溝(または貫通室)となっている。(側面は主基板301である。)質量分析室には荷電粒子ビーム325の進行方向へ長い4本の四重極電極329(図19では329−1、2が示されている)が配置される。それぞれの四重極電極329には1つまたは複数の導電体膜・電極・配線324がコンタクト孔323内の導電体膜を通じて接続していて、電圧を印加できる。また、上下部基板302や303には真空引き用開口部330が開口され、質量分析室308の内部を真空引きでき、所定の圧力(たとえば、10−9〜10−2torr)にできる。また、同様に別の開口部を形成し、そこからパージやクリーニング用の気体を流せるようにすることもできる。さらに、質量分析室308内の導電体膜の接続のために、選択CVD用のガス(たとえば、WF6)やメッキ用の溶液(たとえば、Cuメッキでは硫酸銅溶液)を導入または出口用の開口部を設けることもできる。
図20は、四重極型質量分析室の作製方法の一例を示す図である。第3基板353上に四重極型電極となる導電体膜355を積層し、パターニングして四重極型電極355を形成する。導電体膜355は、たとえば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、またはこれらの合金、またはこれらとSiとの化合物であるシリサイド等であり、PVD法やCVD法で積層し、その後フォトリソ+エッチング法によりパターニングする。あるいは、このサイズの四重極型電極棒を付着法で付着する。第3基板353がガラスや石英、セラミック、プラスチック等の絶縁体であるときには、直接積層又は付着できるが、第3基板353が導電体や半導体である場合は、絶縁膜を積層してから導電体膜355を積層する。あるいは、導電体膜355は塗布法で形成することもできる。メタルマスクを用いて第3基板353上に導電体ペーストを塗布し、その後熱処理すれば所望の四重極型電極355が形成できる。導電体ペーストは上記金属等を含むものである。あるいは、導電体膜355は第3基板353上に上記金属等の箔を貼りつけて、それをパターニングして形成することもできる。また、主基板351は、四重極型電極355が配置される部分354を繰り抜いた凹部354を形成しておく。主基板351がSi基板等の半導体基板やガラス基板・石英基板等の絶縁基板、金属基板等の場合は、簡単なプロセスで形成できる。(図20(a))
次に、図20(b)に示すように、主基板351と第3基板353を付着させる。これらの付着は本明細書で記載している方法で行なうことができる。このとき、凹部354の深さは四重極型電極355の高さより大きくしておき、主基板351と四重極型電極355は接触しないようにする。次に、主基板351の上面をフォトレジスト等でパターニングし、質量分析室356となる貫通溝を形成する。このときはパターン同士の合わせであるから、精密な位置合わせを行なう。主基板351をエッチングして貫通溝356を形成する場合、導電体膜355および第3基板353とエッチング選択比の高いドライエッチングガスやウエットエッチング液でエッチングし、できるだけ導電体膜355や第3基板353をエッチングしないようにする。(図20(c))図20(a)の段階で、導電体膜355上に絶縁膜(たとえば、SiO2膜、SiN膜等)である保護膜を形成しておくこともできる。この場合のエッチング選択比は主基板351と保護膜とである。
第2基板側352にも同様なプロセスを行ない、第2基板側352に主基板351(351−1)を付着させ、貫通溝356、その内部に四重極型電極355である導電体膜355を形成する。このようにして形成した、第2基板側352に付着した主基板351(351−1)および第3基板側353に付着した主基板351(351−2)を貫通溝356同士が合わさるようにアライメントして重ね合わせて付着させる。付着法として、接着剤、拡散接合、常温接合、高温接合等がある。また、主基板351がSi等の半導体基板、金属等の導電体基板であるときは、ガラス基板や石英基板357を用いれば、静電結合(陽極接合)で強固に付着できる。この場合、間に挟む基板357も質量分析室356となる部分を除去しておき、アライメントして第2基板側352および/または第3基板側353を基板357と付着させる。(どちらか、一方だけでも良い。)この結果、密閉された質量分析室358(356が結合して358となる)が形成できる。(図20(d)、(e))尚、図20(a)に示すプロセスにおいて、凹部ではなく貫通溝を形成した主基板351を付着させることもできる。このときは、貫通溝と導電体膜パターンとの正確な位置合わせを行なう。貫通溝の深さが、一枚の溝だけで良い場合には、図20(d)において、主基板の一方がない方(たとえば、351(351−1)がない、導電体膜355が形成された第2基板352)を主基板351(351−2)へ付着させることもできる。
次に、第2基板352および第3基板353にコンタクト孔371を形成し、コンタクト孔371内に導電体膜を積層して次に電極・配線372を形成する。コンタクト孔371内への導電体膜の積層はCVD法、PVD法、メッキ法、塗布法等を使用できる。電極・配線372もCVD法、PVD法、メッキ法、塗布法等を使用できる。コンタクト孔371内の導電体膜と電極・配線372は兼用も可能である。第2基板352および第3基板353上を電極・配線372の引きまわしも可能であり、適切な場所にパッド電極(外部との電極接続部)を設けることができる。必要なら、保護膜を形成することもできる。尚、図20は、図19におけるイオンビーム325の進行方向から見た図、すなわち、図19において紙面と垂直方向の断面図である。
この結果、4つの四重極電極355(355−1、2、3、4)には、外部電極372から交流(高周波電圧)および直流電圧を印加できる。上記のように半導体プロセスを使用して、質量分析室を形成できるので、極めて正確なサイズの質量分析室を作製でき、精度の高い質量分析が可能となる。尚、本プロセスから明らかなように、主基板を重ねて付着させる(間にガラス基板等を介在しても良い)ことによって、質量分析室の深さを大きくできる。たとえば、通常のSi基板の厚みは厚くても1mm程度であるが、10枚重ねることによって10mmとなる。もちろん、もっと厚いSi基板も作製できるので、少数の基板の貼り合わせで所定の厚みを実現できる。また、真空引きライン開口部359を形成し、真空ポンプを接続すれば質量分析室358を真空引きでき圧力を下げることができる。本発明は、所望のサイズの質量分析室であり(たとえ、質量分析室の高さが1mm以下、または100μm以下と極めて小さくとも)、しかも接合箇所が少なく、またその接合も強固なので、極めて低い圧力や、所望の圧力を簡単に実現できる。プロセスも簡単で、真空ポンプも小型で済むので、低コストの質量分析装置を実現できる。
四重極型質量分析の場合、所定のm/qを有するイオンのみが四重極電極355(図19の329)を通過して、検出室(図19の309)へ到達するが、それ以外のm/qを有するイオンは四重極電極355やその外側の主基板351、第2基板352、第3基板353に衝突し、ダメージを与える可能性がある。そこで、質量分析室358を大きくすれば、イオンの運動エネルギーも小さくなり、ダメージを小さくできる。図20(f)は質量分析室を大きくする構造および方法を示している。すなわち、第2基板352および第3基板353の上下に第2主基板361(361−1、2)、第4基板362、第5基板363を付着させて、質量分析室358の上部および下部に質量分析上部室365および下部室368を設け、さらに質量分析室358の左右幅(w21)を大きくし、四重極電極355から主基板351の左右壁を離す(d21を大きくする)。また、質量分析上部室365および下部室368の平面的面積は質量分析室358の面積より大きくするとともに(すなわち、質量分析上部室365の左右幅w22、質量分析下部室368の左右幅w23としたとき、w22、w23>w21)、第2基板352および第3基板353の領域は四重極電極355が強度的に支えられる程度にして、質量分析室367と質量分析上部室365および下部室368との間の仕切り(第2基板352および第3基板353)を除去して、開口部364および367をできるだけ広くする(複数の開口部に分けても良い)。また、真空引きライン開口部366および369を第4基板362、第5基板363の両方に設ける。さらに、問題ない程度に真空引きライン開口部366および369を大きくする(複数の開口部に分けても良い)。質量分析上部室365および下部室368の高さ(h22、h23)も大きくする。
たとえば、質量分析室358の大きさは、w21=6mm、h21=2mm、d21=1.8mm、主基板351(351−1、2)の厚さ各0.8mm、ガラス基板357厚さ0.4mm、第2基板352の厚さ0.3mm、第3基板353の厚み0.3mm、第4基板362の厚さ0.5mm、第5基板363の厚み0.5mm、四重極電極355の幅0.2mm、高さ50μm、四重極電極の長さ(図19における横方向長さ、または図20の紙面に垂直方向長さ)1mm〜100mm、w22=8mm、h22=2mm、w23=8mm、h23=2mmとする。あるいは、質量分析室を大きくした場合の例は、質量分析室358の大きさが、w21=30mm、h21=10mm、d21=9mm、主基板351(351−1、2)の厚さ各5mm、ガラス基板厚さ0.5mm、第2基板352の厚さ1mm、第3基板353の厚み1mm、第4基板362の厚さ1mm、第5基板363の厚み1mm、四重極電極355の幅1mm、高さ0.4mm、四重極電極の長さ20mm〜200mm、w22=40mm、h22=10mm、w23=40mm、h23=10mmとする。
以上の結果、イオン検出室309に到達しないで四重極電極355間の隙間を通りぬけたイオンは、主基板351の壁(側面)の方に向かっても、イオンの移動速度が小さくなり、主基板351の壁(側面)へのダメージは小さい。特に主基板351の壁(側面)の周囲にも真空引き開口部364や367を多数または広い領域に設けることによって四重極電極の内側から外れたイオンはそれらの開口部364や367から質量分析上部室365や質量分析下部室368へ出ていく。さらに、質量分析室358の内面をイオンに侵されにくい膜で覆うことによってもダメージは小さくなる。たとえば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜やアルミナなどはイオン耐性が大きい。これらの膜はCVD法やPVD法で積層できる。また、上方の質量分析上部室365や下方の質量分析下部室368へ向かうイオンもイオンの移動速度が小さくなり、第4基板362や第5基板363、第2主基板361の壁(側面)へのダメージは小さい。また、真空引き開口部366や369から真空ポンプ側へ排出されるので、質量分析装置への影響は小さい。さらに、パージ用またはクリーニング用の開口部を第4基板362や第5基板363に設けて、たとえば、窒素、Ar、He、等で時々パージまたはクリーニングすることも質量分析室を清浄な状態の保持や寿命の長持ちに有効である。
あるいは、イオン検出室309の内側面に導電体膜を形成しておき、外側から電圧印加できるようにしておき、イオンと同電荷の弱い電圧をかけておけば、イオンの衝突を軽減できる。四重極電極355は第2基板352および第3基板353に形成されたコンタクト孔371内に積層した導電体膜を通して第2基板352および第3基板353上に形成された導電体膜372に接続し、次に第2主基板352または第3基板353の内側面に形成された導電体膜373に繋がり、さらに第4基板362または第5基板363の上下面に形成された導電体膜374に接続する。導電体膜374は第4基板362または第5基板363に形成されたコンタクト孔375内に積層した導電体膜を通して第4基板362または第5基板363の上面に形成された導電体膜電極・配線376に接続する。この結果、4個の四重極電極355は外部電極・配線376から直流電圧および交流(高周波)電圧を印加できる。また、1つの四重極電極に、図19に示すように複数の外側電極・配線を設けておけば、これら複数の電極からも直流電圧および交流(高周波)を印加でき、イオン325の軌道を精密にコントロールできる。
図20(e)の状態から図20(f)を作製する方法の一例を説明する。第5基板363に付着した第2主基板361(361−2)に第5基板363に貫通する貫通孔368を形成する。また、第2主基板361(361−2)側に形成する導電体膜373と第3基板(下部基板)353の下面に形成される導電体膜372との重なり領域を広くするために、凹部377も形成する。この凹部377の深さは、導電体膜372の厚みと導電体膜373の厚みを合わせた程度(下地に絶縁膜を形成する場合はその厚みを考慮する。また、低融点半田合金を含む導電性接着剤を使用する場合もその厚みを考慮する。)とし、導電体膜372と導電体膜373の接続が十分行なわれるようにする。貫通孔368および凹部377を形成した後、導電体膜373および374を積層し、凹部377および貫通孔368の側面の必要な部分、第5基板363の上面の必要な部分に導電体膜373および374を形成する。導電体膜373、374は、Cu、Al、導電性Si、Cr、Ni、W、Mo、Ti、Au、Ag、これらの合金、導電性多結晶シリコン、各種シリサイド、導電性グラフェン、導電性ナノチューブであり、導電体膜373と372の電気的接続が不十分な場合は、導電体膜372、373、374上に導電性接着剤や半田合金(たとえば、Pb−Sn系、Ag−Cu−Sn系、Sn−Zn−Bi系、Cu−Sn系、Sn−Ag−In−Bi系、Sn−Zn−Al系等)を付着させる。
第3基板353の下面に形成する導電体膜372は図20(f)に示すように配線として引き回し、凹部377と接続する側にも形成し、導電体膜373と接続できるようにする。また、第2基板(上部基板)や第3基板(下部基板)に真空引き開口部364や367も形成する。これらの開口部364や367は導電体膜372を形成する前に形成しても良いし、導電体膜372をパターニング後に第2基板(上部基板)や第3基板(下部基板)をエッチング除去して形成することができる。あるいは、主基板351と第2基板(上部基板)や第3基板を付着する前にも四重極電極355と同様に形成できる。次に、質量分析室358に質量分析下部室368が合うようにアライメントしながら、第5基板363が付着した第2主基板361を第3基板353に付着させる。その後、第5基板363にコンタクト孔375および真空引き開口部369を形成し、コンタクト孔375に導電体膜を積層し、さらにそのコンタクト孔375に接続する導電体膜電極・配線376を形成する。真空引き開口部369から質量分析下部室368へ導電体膜が入り込む場合は、真空引き開口部369は導電体膜電極・配線376を形成後に形成しても良い。
第4基板362、第2主基板361(361−1)や第2基板(上部基板)側についても同様である。また、明細書の他の部分にも記載しているように、下地が絶縁体でない場合には、導電体膜を積層する前にシリコン酸化膜等の絶縁膜を積層し、導電体膜の保護のために導電体膜の上にシリコン酸化膜等の絶縁膜を積層する。また、主基板361を上部基板362や下部基板363に付着し、開口部369や366を形成した後、導電体膜372と373の接続を確実に行なわせるために、開口部369や366を通して、選択CVD用ガスを流したり、またはメッキ溶液を導入して、接続部へ選択的に導電体膜を積層することもできる。
図21は、四重極電極を基板に付着させる構造と方法の一例について説明する図である。図21(a)は断面図であり、(b)は平面図である。第2基板382および第3基板383上に四重極電極386を付着させる。四重極電極386は断面を円形状に示しているが、通常使用される直角双曲線形状でも良いし、その他の任意の形状でも良く、また四重極電極として最適の形状を選択できる。また、図21(b)に示すように、長手方向は直線状であり、全体が棒状となっている。また、長手方向に波形にすることも可能であり、四重極電極内の電場が質量分析に最適な形状を選択することもできる。四重極電極386の材料は、Mo系合金、SUS、銅系合金等種々の材料を使用できる。四重極電極386は金型を用いて作製でき、または線材として作製することもでき、またはパターンを作りメッキ法や電鋳法で作製することもできる。
第2基板382および第3基板383上に接着剤パターンを作成し、そのパターンに四重極電極棒386を付着させることによって精度良く第2基板382および第3基板上に配置できる。第2基板382および第3基板383上にフォトリソ+エッチング法によって、溝パターン385を形成し、必要な場合は接着剤を溝パターン385に形成して、溝パターン385に四重極電極棒386を入れて付着させることによって、さらに精度良く第2基板382および第3基板上に配置できる。四重極電極棒386の長さが長い場合はフォトリソ+エッチング法によって、四重極電極棒386の長さを正確にそろえることもできる。接着剤は、通常の接着剤でも良いし、導電性接着剤、半田等の金属でも良い。四重極電極の表面形状が四重極電極内の電場が最適化するように合わせて配置することが望ましい。その後、熱処理や紫外線照射を行ない、四重極電極棒386を第2基板382および第3基板383上に固定する。
次に質量分析室384をくり抜いた主基板381を第2基板382および第3基板383に付着させる。この付着は、別々に行なっても良いし、同時にお行なっても良い。質量分析室384の所定位置に四重極電極棒386が配置されるように第2基板382および第3基板383をアライメントしながら主基板381に付着させる。主基板381が分割している場合には、質量分析室384を有する主基板381を第2基板382に付着したものと質量分析室384を有する主基板381を第3基板383に付着したものとを付着させる。このとき主基板381同士の間にガラス基板や石英基板を介在して、静電接合法を用いて付着することもできる。さらに、主基板381を多数分割してそれらを重ねながら付着すれば、質量分析室の高さを自由に調節できる。図21に示す実施形態では、種々の太さ(たとえば、50μm〜5mmφ)の四重極電極386を使用できる。四重極電極386の長さも基板のサイズに合わせて選定できるが、基板サイズが300mm直径のウエハであれば、1mm〜200mmで作成できる。コンタクト孔や引き出し電極は図20に示した方法で簡単に作製できる。さらに質量分析室を広げたり、第2基板および第3基板の隔壁の一部を除去したり、質量分析上部室および質量分析下部室を設けることも図20に示した方法で簡単に作製できる。
図22は、四重極電極を基板に付着させる構造と方法に関する別の例について説明する図である。図22に示す実施形態は、四重極電極394(394−1、2、3、4)を質量分析室396(396−1)と境界壁(基板側壁または基板隔壁)で隔てた所に配置し、質量分析室396(396−1)内には電極等を配置しない実施形態である。主基板391は質量分析室396(396−1)を有し、その左右に基板隔壁391(391−1、2)で仕切られて、貫通室396(396−2)および貫通室396(396−3)が配置される。この貫通室396(396−1、2)にはそれぞれ四重極電極394(394−2、4)が配置される。高さを調節するために主基板391の一部(台座と呼ぶ)397を残すか、第3基板393に台座397を付着させる。あるいは、台座397と同じ高さを持つ主基板391を第3基板に付着させて、質量分析室396(396−1)となる部分を除去する。尚、高さ調節が不要な大きさの四重極電極を使用すれば台座は不要である。
この後、台座397に四重極電極396(396−2、4)を付着させる。台座に溝パターン398を形成しておけば四重極電極の固定や配置精度も良くなる。一方、第2基板392側にも主基板391を付着させ、主基板391において質量分析室396(396−1)となる部分、四重極電極396(396−2、4)が配置される部分396(396−2、3)をくり抜いて第2基板392に達する貫通孔を形成する。このとき、四重極電極396(396−2、4)の外側の主基板、および貫通孔396−2と質量分析室396−1との間の隔壁391(391−1)、貫通孔396−3と質量分析室396−1との間の隔壁391(391−2)は残しておく。
次に、第3基板393に付着した主基板391と第2基板に付着した主基板391を互いの質量分析室396−1が合うようにアライメントして付着させる。台座397に配置された四重極電極394(394−2、4)は、第2基板側の主基板に形成された貫通孔396(396−2、3)に入り込む。主基板391同士の接合は、接着剤、常温接合、拡散接合、高温接合を使って付着できる。また、間にガラス基板等を介在させれば、主基板391がSi基板等の半導体基板や導電体基板の場合は、陽極静電接合によって強固に付着できる。
この後、第2基板392および第3基板393の所定位置に四重極電極394(394−1、3)を付着させるか、前もって第2基板392および第3基板393の所定位置に四重極電極394(394−1、3)を付着させておくことによって、質量分析室396(396−1)を囲む状態で、しかも質量分析室396(396−1)には隔壁および第2基板、第3基板と隔てられた位置に四重極電極394(394−1、2、3、4)を配置できる。
図22(b)は、図22(a)で示す四重極電極を有する質量分析室の斜視透視図である。質量分析室396−1の長手方向に四重極電極394(394−1、2、3、4)が棒状に配置されている。図22(b)では四重極電極394は断面形状が円形の円柱状棒として示しているが、断面形状は直角双曲線形状や楕円状、双曲線形状など他の形状でも良い。一般的には、直角双曲線形状が良いとされている。互いに向かいあった電極同士に電圧±(U+Vcosωt)の直流電圧と高周波電圧を印加する。すなわち、四重極電極394−1と3に+(U+Vcosωt)を、四重極電極394−2と4に−(U+Vcosωt)を同時に印加する。この結果、質量分析室396−1を通過する荷電粒子(イオン)ビームのうち、特定のm/eを有するイオンのみが質量分析室396−1を通過することができる。図22(a)、(b)に示す四重極電極を有する質量分析室は、四重極電極394は隔壁391(391−1、2)、第2基板392、第3基板393によって質量分析室396−1を通る荷電粒子(イオン)ビームと隔てられているので、四重極電極394の損傷は非常に少ない、代わりに隔壁391(391−1、2)、第2基板392、第3基板393に荷電粒子(イオン)が衝突する恐れがあるが、質量分析室396−1の真空引き開口部399を広く取ることによって、壁に衝突する荷電粒子(イオン)ビームを外へ排出できる。また、質量分析室396−1の内面を荷電粒子(イオン)耐性の大きい膜(たとえば、シリコン窒化膜、アルミナ)を積層して保護すると良い。
図22(c)は、図22(a)と同じ構造であるが、四重極電極が導電体膜で形成される場合を示す。中央の質量分析室425(425−1)は、左右側面側が主基板421の隔壁(基板側壁)421−1および421−2により、上下面側が第2基板(上部基板)422および第3基板(下部基板)によって囲まれている。質量分析室425(425−1)の左側には隔壁421−1で隔てられて貫通孔425−2が配置され、その貫通孔425−2内側面および下面(第3基板423側)は絶縁膜427で囲まれ、その内側に導電体膜426(426−1)が形成される。導電体膜426(426−1)の上部は絶縁膜428が形成されるが、なくても良い。この導電体膜426(426−1)が四重極電極の1つとなる。質量分析室425(425−1)の右側の425(425−3)も同様の構造であり、導電体膜426(426−2)も四重極電極の1つとなる。導電体膜426は、貫通室425(425−2、3)を形成した後、貫通室425(425−2、3)の内面に絶縁膜427を形成し、その上に導電体膜をCVD法やPVD法で形成する。この状態では貫通室425(425−2、3)は導電体膜で充填されておらず空間が存在する。この導電体膜だけで四重極電極とすることも可能であるが、さらに強固な四重極電極にするために、メッキ法で貫通室425(425−2、3)内の空間を導電体膜で充填する。あるいは、選択CVD法で貫通室425(425−2、3)内の空間を導電体膜で充填する。あるいは、CVD法やPVD法で貫通室425(425−2、3)内の空間を導電体膜で充填した後、エッチバック法で貫通室425(425−2、3)内の空間以外の部分の導電体膜を除去する。貫通室425(425−2、3)内の空間の上部を少しあけておき、残りは絶縁膜428でカバーすることもできる。この絶縁膜428もCVD法、PVD法、あるいは塗布法、あるいはスクリーン印刷法、これらの組合せで形成した後、エッチバック法で貫通室425(425−2、3)の上部表面を平坦化する。その後で、上部基板422を付着させる。
第2基板(上部基板)422の上面および第3基板(下部基板)の下面において質量分析室の上部および下部の領域に導電体膜パターン429(429−1、2)が形成される。この導電体膜パターン429(429−1、2)もCVD法、PVD法、メッキ法、スクリーン印刷法、またはこれらの組合せ等で形成できる。この導電体膜パターン429(429−1、2)が残りの四重極電極となる。左右の四重極電極425(425−1,2)にコンタクト孔430が形成され導電体膜が形成される、このコンタクト孔内導電体膜に接続して電極431が形成され、この電極431から四重極電極425(425−1,2)に電圧が印加される。また上下の四重極電極429(429−1,2)にも電圧が印加される。これらの電圧印加によって、質量分析室内に電場が形成され、質量分析室425−1内を進む荷電粒子(イオン)ビームがm/qの値によって荷電粒子(イオン)ビームの軌道が変化する。本実施形態は、四重極電極を導電体膜で形成し、通常の半導体プロセスで作製するので、非常に精度良く質量分析室を作製できる。
図22(d)は、四重極電極をすべて質量分析室へ納めてしかも質量分析室を広くした場合の実施形態である。第3基板403に付着した主基板401は質量分析室となる貫通室413が形成され、貫通室413内の左右に2個の四重極電極407(407−2、4)が離間して配置される。前記2個の四重極電極407(407−2、4)を結ぶ直線の(略)中間(M1)において前記直線と(略)直角に交わる直線上で、上方側に1個の四重極電極407−1が配置され、下方側に1個の四重極電極407−3が配置され、四重極電極407−1と407−3の略中間(M2)はM1とほぼ一致する。また、2個の四重極電極407(407−2、4)の距離と2個の四重極電極407(407−1、3)の距離はほぼ等しい。ただし、多少のずれがあっても四重極電極に印加する電圧や周波数を変化させれば特定のm/e値によるイオンを選りわけることは可能である。2個の四重極電極407(407−2、4)は第3基板403上または第3基板403上に付着した主基板401の一部(台座部401(401−1、2))に付着している。2個の四重極電極407(407−2、4)が配置される第3基板403または台座部401(401−1、2)所定位置には接着剤、半田等を付着させ固定させても良い。またはその所定位置に溝408等を設けてそこに四重極電極407(407−2、4)を配置し固定させる。台座部401(401−1、2)が存在する場合は、コンタクト孔410を開けてコンタクト孔410内に導電体膜を積層する。導電体膜はたとえば、Cu、Al、Mo、W、Ti、Ni、Cr、Au、Ag等の金属、導電性炭素(たとえば、ナノチューブ、グラフェン)、これらの積層体、これらの合金、あるいはこれらのシリサイド、または低抵抗(ポリ)シリコンである。第3基板403の上面において、コンタクト孔410が形成される部分には予め導電膜411をパターニングしておき、その上に台座401(401−1、2)を配置するようにする。
第3基板403の下部には第2主基板404(404−2)が付着しており、質量分析下部室となる貫通孔空間414が形成されている。質量分析下部室414は質量分析室413と同程度の大きさ(平面サイズで)か、または大きめに形成すると良い。上下の四重極電極407−1と3を結ぶ領域に入る第3基板403の部分はできるだけ広く除去して、開口部412を広く取る。このメリットの一つは、四重極電極による電場の乱れをできるだけ小さくするためである。開口部412を広くした結果、四重極電極407(407−2、4)が配置される部分における第3基板403に荷重がかかり変形する可能性があるので、四重極電極407(407−2、4)が配置される第3基板403の部分に支柱として第2主基板404(404−3、4)を配置することもできる。この支柱404(404−3、4)は、荷電粒子の進行方向(紙面に垂直な方向で、質量分析室の長手方向)には、必ずしも連続している必要はなく、四重極電極407(407−2、4)を支えられれば、不連続に配置しても良い。そうすれば、支柱404(404−3、4)の外側にある貫通孔空間414−2、3と中央の質量分析下部室空間414−1と圧力が同じとなる。第2主基板404の下面に第5基板406が付着している。第5基板406の所定位置に四重極電極407−3が付着している。第5基板上406の所定位置に接着剤パターン、半田合金パターン等を形成し、そのパターンに四重極電極407−3を合わせて配置し、熱処理等を行ない第5基板上406上に固定する。第5基板上406の所定位置に溝パターン409を形成して、その溝パターン409に四重極電極407−3の一部を入れて固定させればさらに精度良く固定できる。四重極電極407(407−1、2、3、4)は、たとえば、断面が円柱形状、楕円形状、双曲線形状等の曲線形状であるもの、または、三角形、四角形、多角形形状であるもの、あるいはこれらの組合せ形状である、棒状の電極である。この棒状電極をたとえば実装機(たとえば、フリップチップボンダー)で所定部分に付着させる。接着剤等が液状であるときは、セルフアライン的に所定部分に配置される。軽い超音波等の振動を与えてやると容易にセルフアライン的に所定部分に配置される。あるいは、別基板に棒状電極を搭載して、別基板と搭載すべき基板を位置合わせして、搭載すべき基板の所定位置に棒状電極を付着させて、固定した後に別基板を分離する。
四重極電極407−3の位置で第5基板406にコンタクト孔416を形成し、そこに導電体膜を積層し、さらに外部電極配線(導電体膜)417を形成する。(第5基板406側では図示しないが、第4基板405側で図示している。)四重極電極407−2に接続する第3基板403上に形成された導電体膜配線パターン411に外部電極418へ接続する導電体膜配線パターン443、419、440、441、442を形成する。まず第3基板403内にコンタクト孔443を形成し、コンタクト孔443内に導電体膜を積層し、導電体膜配線パターン411へ接続する。第3基板403に第2主基板404−2を付着する前にコンタクト孔443およびその中に導電体膜を形成するのが良い。この後、第3基板403に第2主基板404−2を付着して、貫通孔(質量分析下部室)414を形成し、導電体膜419および440を積層し、導電体膜配線パターン419および440を形成する。第3基板403の開口部412はこの後で開口する。あるいは、第3基板403に第2主基板404−2を付着する前にコンタクト孔443およびその中に導電体膜を形成し、さらに導電体膜配線419を形成し、次に第2主基板404−2を第3基板403に付着させる。このとき、第3基板403に導電体膜配線419の凹凸が形成されているので、この凹凸が問題を生じる場合には、予め第2主基板404−2の当該部分をエッチングして凹部を形成しておくと良い。この後、貫通孔(質量分析下部室)414を形成し、導電体膜配線パターン419へつながる導電体膜配線パターン440を質量分析下部室414の内面に形成する。
あるいは第3基板403に第2主基板404−2を付着する前にコンタクト孔443およびその中に導電体膜を形成した後に第3基板403に第2主基板404−2を付着し、次に第2主基板404−2内に貫通孔(質量分析下部室)414を形成し、コンタクト孔443内の導電体膜へ繋がる導電体膜配線パターン419を第3基板下面に形成する。さらに質量分析下部室414の内面にこの導電体膜配線パターン419へ繋がる導電体膜配線パターン440を形成する。
四重極電極407を付着した第5基板406において、導電体膜配線パターン440へつながる導電体膜配線441を形成する。あるいは、導電体膜配線441を第5基板406に形成した後に四重極電極407を付着しても良い。この第5基板406を貫通孔(質量分析下部室)414および導電体膜配線419および440を形成した第2主基板404−2の下面に付着させる。四重極電極407−3の位置が所定場所に来るように、さらに導電体膜配線441が導電体膜配線440へ確実に接続するようにアライメントして付着させる。上記で述べた配線同士の接続は、図51(f)で示した凹部377を形成する方法を採用すると良い。この後、導電体膜配線441へ接続するコンタクト孔441、その内部へ導電体膜の積層を形成し、さらに外部電極配線418を形成する。(同時に四重極電極407−3へ接続するコンタクト孔416、その内部へ導電体膜の積層、さらに外部電極配線418も形成できる。)四重極電極407−4への接続配線は図示していないが、四重極電極407−2と同様に形成できる。
四重極電極407−1は第4基板405に付着している。四重極電極407−1の第4基板405への付着法は四重極電極407−3の第5基板406への付着法と同様である。第5基板406の方は、四重極電極407−2や407−4へ接続する導電膜配線や外部電極配線を作製する必要はない。もちろん、第5基板406側へ作製することも可能であるが、接続距離は長くなる。四重極電極407−2や407−4が配置される質量分析室を形成する主基板401の上方に第2基板402、その上に第2主基板404−1が付着され、その上に四重極電極407−1を有する第4基板405が付着される。四重極電極407−2や407−4は第3基板403に付着し(台座を挟む場合もある)固定され、第3基板403は第2主基板の支柱404−3、4等によって支持されているので、四重極電極407−2や407−4の上方は空洞で良い。従って、質量分析室413の上方の第2基板402は全部開口することもできる。(開口部444)同様に第2主基板404−1が有する質量分析上部室445の空間も質量分析室413と同程度か大きくすることもできる。
主基板401上に第2基板402を付着させるが、第2基板402を付着させる前に第2基板402の開口部444を形成しても良いし、第2基板402を付着させた後に第2基板402の開口部444を形成しても良い。あるいは、第2主基板404−1を第2基板402上に付着させた後に質量分析上部室445を作製し、その後で第2基板402の開口部444を形成することもできる。第2主基板404−1に質量分析上部室445を形成した後に第2基板402に付着させても良い。さらに、四重極電極407を有する第4基板405に質量分析上部室445を有する第2主基板404−1を付着させて、さらにそれを第2基板402へ付着させることもできる。または、第4基板405に第2主基板404−1を付着させて質量分析上部室445を形成した後、四重極電極407を付着させて、それらを第2基板402へ付着させても良い。
主基板401の厚みh24が厚くて質量分析室を形成するためのエッチングに時間を要する場合、またはエッチングが困難な場合(たとえば、エッチングマスクが長時間エッチングではもたない場合)は、破線446で示すように複数枚に分けて互いに付着させても良い。たとえば、h24=10mmの場合、1mmの厚みの主基板(分割)を用いて、質量分析室413となる部分(貫通孔である)をエッチングし(厚さは1mmである)、10枚を重ね合わせればh24=10mmとなり、それらを第3基板403に付着して作製できる。付着法として静電接合を使用する場合は、たとえば、0.8mmの主基板(分割)に0.2mmのガラス基板等を静電接合で付着させて、質量分析室413となる部分(貫通孔である)をエッチングし(厚さは1mmである)、それらを10枚を重ね合わせればh24=10mmとなり、それらを第3基板403に付着して作製できる。(最下層の主基板だけ第3基板403に付着しておけば、第3基板403とガラス基板の付着はなくなり、すべてを静電接合で付着できる。)
最下層の厚さ1mmの主基板(分割)を第3基板403に付着して質量分析室413の一部(高さ方向で)をエッチングし(厚さは1mmである)、この後は質量分析室413となる部分をエッチングした厚さ1mmの主基板(分割)を次々に付着させていくか、複数枚の主基板を付着したものをまとめて付着させていくかして、主基板401(全体)を付着した第3基板403を作製できる。このとき、台座401の高さが1mm(最下層の主基板(分割)の厚みと同じ)である場合は、台座を形成するためのエッチングプロセスは不要となる。また、四重極電極407(407−2、4)の第3基板403または台座401−1,2への付着は、主基板(分割)を付着する工程の最初または途中または最後に行なうことができる。
第2主基板404(404−1、404−2)の場合も同様に第2主基板404を分割して(たとえば、破線447や448で示すように)、それぞれ質量分析上部室、下部室を形成して付着させて所定の厚みの第2主基板404(404−1、404−2)を作製できる。たとえば、h25=10mmの場合、厚さ2mmの第2主基板を5枚重ねていけば良い。ガラス基板を用いる場合も上記の主基板と同様である。h26=10mmの場合も厚さ1mmの第2主基板を10枚重ねていけば良い。ガラス基板を用いる場合も上記の主基板と同様である。第2主基板404−2の場合は、導電体膜配線440の作製があるが、全部重ねてから形成することもできるし、その都度作製して接続していくこともできる。この場合、第2主基板404−2の側面において、第2主基板と導電体膜との間に電気的絶縁や密着性向上のために絶縁膜を形成しても良い。特に第2主基板が絶縁体でない場合には必要である。さらに、第2主基板404−2の側面をテーパー化(斜め)して、導電体膜の段差切れを防止することもできる。第2主基板404−2の側面、すなわち、質量分析下部室の側面形状は垂直形状でなくても良いので、テーパーにして導電体膜のステップカバレッジを改善する。テーパー化は、CVD法やPVD法だけでなく、メッキ法や電鋳法にも有効である。当然、第2主基板404−1および質量分析上部室も同様であるが、こちらには導電体膜の積層がない場合は、特にその形状を考慮する必要がない。
以上のようにして、4個の四重極電極を所定位置に配置し、しかも一つの広い空間に4個の四重極電極を配置できるので、理想的な四重極電場を精度良く作製できる。また、四重極電極の外側空間が広くできる(特に四重極電極407−2、4の外側空間)ので、四重極電極間の隙間を通りぬけていったイオンの運動量を小さくできるので、質量分析室413、質量分析上部室445、質量分析下部室414を取り囲んでいる基板へのダメージも軽減できる。449は真空引きライン開口部であるが、この真空引きライン開口部449を多数設けることによって、四重極電極間の隙間を通りぬけたイオンをポンプ側へ即排出できるので、側面基板へのダメージをさらに軽減できる。また、図51(f)で示したように、第4基板405および第5基板406の外側にさらに空間を有する第3主基板を付着した第6基板や第7基板を設ければ、第4基板405および第5基板406に開口部を広く取ることができるので、イオンによる第4基板405および第5基板406へのダメージをさらに軽減できる。また、第3基板403において、四重極電極407(407−2、407−4)の外側に質量分析下部室414(414−2、414−3)へ通じる開口部を部分的に設けることもできる。全部に開口部を設けることもできるが、その場合は、支柱(404−3、404−4)の側面に導電体膜・配線を形成する。尚、四重極電極407は、棒材を基板に付着する方法以外に、直接形成することもできる。その一例を以下に説明する。
図23は、四重極電極の作製方法を示す図である。図23に示す例は、図22(d)に示す四重極電極407−2および407−4の作製方法の一例であるが、他の場合についても同様の方法で作製できる。従って、図22(d)と同様のものは共通の符号で示す。図23(a)〜(d)は、メッキ法で作製する方法である。図23(a)〜(d)における第3基板403、導電体膜411、主基板401−2、主基板401−2に作製したコンタクト410、溝408は既に説明した内容と同様である。メッキ法では溝408はなくても良い。主基板401−2や第3基板403が絶縁体でない場合は、導電体膜411およびコンタクト内導電体膜410との間には絶縁膜を介在させる。
図23(a)に示すように、コンタクト内導電体膜410が露出した状態で密着性向上用およびバリア用導電体膜およびメッキシード層450を積層する。たとえば、メッキ膜がCuの場合、メッキシード層はCu膜であり、CVD法またはPVD法等で積層する。密着性向上用およびバリア用導電体膜は、たとえば、Ti/TiN、Ta/TaN膜であり、CVD法またはPVD法等で積層する。密着性向上用およびバリア用導電体膜をたとえば、約50nm〜500nm積層した後、メッキシード層をたとえば500nm〜5000nm積層する。次に、感光性膜451を塗布法やシート付着法により基板403上に積層し、フォトリソ法により、四重極電極を形成すべき場所に開口部452を形成する。この開口部452の深さは、四重極電極の大きさ程度とする。たとえば、四重極電極の高さが0.1mmなら、約0.1mmの深さとし、四重極電極の高さが1.0mmなら、約1.0mmの深さとし、四重極電極の高さが5.0mmなら、約5.0mmの深さとする。その後、基板403をメッキ液に浸漬し、またはメッキ液をスプレーした状態で、メッキシード層に通電して、開口部452にメッキ膜453を形成する。(Cuのメッキ液はたとえば硫酸銅である。)このメッキ膜453が四重極電極となる。図23(b)所定厚みのメッキ膜453を形成したら、メッキを停止して、感光性膜451をリムーブする。メッキ膜453をマスクにして、メッキ膜453の形成されていないメッキシード層および密着性向上用およびバリア用導電体膜を除去する。通常、メッキシード層とメッキ金属は同じ材料であるが、メッキシード層の厚みはメッキ金属の厚みよりかなり薄いので、全面エッチング(ウエットエッチングまたはドライエッチング)してもメッキ金属の厚みは殆ど変化しない。すなわち、メッキ金属の厚みは、メッキシード層の厚み+オーバーエッチング量分だけ薄くなる。
図23(a)、(b)で示した感光性膜パターンを用いた方法において、感光性膜451の側面形状のうち、紙面に垂直方向は感光性用マスクパターンで自由に変えることができるが、深さ方向の形状は自由に変えることはできない。せいぜい、傾斜をつけることができるだけである。従って、メッキ膜453の形状も紙面に垂直方向は自由に変えることができるが、深さ方向および上部側の形状を自由に変えることができない。そこで、図23(c)および(d)に示すように、最終メッキ形状と類似する空間455を有する型454を作製し、図23(a)で説明したことと同様に密着性向上用およびバリア用導電体膜およびメッキシード層450を積層した後に、この型454を四重極電極の搭載位置であるコンタクト410の形成部に合わせて、基板403に押しつける。型454は、空間455以外にプラスチックや高分子樹脂、ロウ材等の絶縁体で形成され、メッキ液注入口456およびメッキ液排出口457(これらも空間である)も形成されている。また、型454と基板403との接触部側は柔軟材料で形成されているので、型454を基板403に押しつけても基板403に損傷は与えないし、基板403に形成されたパターン(411、401−2等)をしっかりとカバーして、基板403と型454との接触部にメッキ液の浸入がないようにする。型454の空間455の上方に形成されたメッキ液注入口456からメッキ液を流し、型454の空間455の下方に形成されたメッキ液排出口457からメッキ液を排出する。メッキシード層に通電すると、メッキシード層からメッキ膜が成長し、空間455と類似した形状のメッキ膜ができる。所定のサイズと形状のメッキ膜458ができたら、メッキシード層への通電およびメッキ液注入をやめて、型454を取り外すと、所定の形状の四重極電極458ができる。(図23(d))この後。このメッキ膜458をマスクにして、メッキ膜453の形成されていないメッキシード層および密着性向上用およびバリア用導電体膜を除去する。尚、図23(a)〜(d)において、メッキ工程に入る前に、フォトリソ法およびエッチング法を用いて、メッキ膜を形成しない領域におけるメッキシード層および密着性向上用およびバリア用導電体膜を除去しておいても良い。図23(a)および(b)の場合には、感光性膜パターンがなくともメッキできるが、一部でも導電体膜が残っているとその部分にメッキ膜が成長するので、感光性膜パターンを形成した方が良い。
図24は、四重極電極棒407を基板に付着する方法を説明する図である。四重極電極棒407は予め所望の形状で作製する。この方法の利点は、最適の材料を用いた四重極電極を使用できることであるから、四重極電極の電場特性が非常に良くなることである。図24(a)および(b)は、フリップチップ実装機(ボンダー)を用いて、四重極電極棒407を実装する状態を示す図である。図24(a)に示す縦方向断面図はコンタクト部の断面模式図を示すものであり、図24(b)は、図24(a)における紙面と垂直方向の断面模式図である。すなわち、図24(b)は四重極電極棒407の長手方向でイオンの進行方向であり、図24(a)はそれ垂直な断面である。第3基板403に付着した第1主基板401−2に四重極電極棒407が付着される部分に溝(または凹部)408が形成され、その領域内にコンタクト410の表面が露出している。四重極電極棒407の長手方向で見ると、コンタクト410の領域は一部として記載しているが、電場特性を損なわなければ四重極電極棒407全体が接触する部分にコンタクト410を形成することもでき、このコンタクト部から四重極電極407へ電圧が印加される。
第3基板403に付着した第1主基板401−2の四重極電極棒407が付着される部分に導電性接着剤や半田金属や導電性ペースト等460を付ける。この塗布方法として、たとえばディスペンサー、スクリーン印刷で塗布したり、感光性接着剤でパターニングしたり、種々の方法がある。図24(b)では図を見易くするために接着剤等460を記載していないが、四重極電極棒407が搭載される溝部408(図24(b)では破線で示す)領域全体に塗布される。溝408の形状は、四重極電極棒407がちょうど溝部に嵌まるように形成することが望ましく、ウエットエッチング法、ドライエッチング法、レーザー法等で形成することができる。第1主基板401がSi基板等の半導体基板や、Cu基板等の導電体基板であるときは、四重極電極棒407との接触部分は絶縁膜でカバーしておく。従って、コンタクト410内の導電体膜はこの絶縁膜形成後に積層することが望ましい。あるいは、四重極電極棒407が搭載される部分のだい1主基板401を孤立パターン(すなわち、他の導電体部分や半導体部分と接触しない)として絶縁体基板である第3基板403に付着すれば、第1主基板401に絶縁膜を形成しなくても良い。尚、接着剤等は四重極電極棒407の方にも付着することもできる。すなわち、四重極電極棒407がコンタクト部410および第1主基板401−2と付着する領域に接着剤等を付けておくこともできる。
フリップチップ実装機(ボンダー)の吸着部459に四重極電極棒407を吸着させて、第3基板403や第1主基板401の付着部分にアライメントしながら付着させる。接着剤を用いた付着では、接着剤の硬化温度以上の熱処理を行ない固化させて固定する。あるいは紫外線硬化性接着剤を用いた付着では、紫外線照射を行ない固化させて固定する。金属を用いる場合は、融点以上で付着させた後、融点以下の温度に下げて固化させて固定する。接着剤等の表面張力でセルフアラインできる場合は、四重極電極棒407と第3基板403や第1主基板401との固定が確実に行なわれなくても、フリップチップ実装機(ボンダー)の吸着部459を四重極電極棒407から離すことができる。セルフアラインができない場合には、四重極電極棒407と第3基板403や第1主基板401との固定が確実に行なわれた後で、フリップチップ実装機(ボンダー)の吸着部459を四重極電極棒407から離すようにすることが望ましい。尚、コンタクト410は四重極電極棒407を付着させてから第3基板403のコンタクトと一緒に形成することもできる。図22(d)において、四重極電極棒407−1や407−3は第2基板405や406に直接付着しているが、図24(a)および(b)で、第1主基板401が付着していない場合を考えれば良い。溝409は必要な場合に第2基板405や406に形成する。四重極電極棒407の付着部分にコンタクト孔416や外側電極・配線417を予め形成しておいた後で、四重極電極棒407の付着を行なっても良い。
図24(c)および(d)は、サポート基板461に付着させた四重極電極棒407を第4基板405または第5基板406へ付着する方法を示す図である。支持基板461に接着剤等462を付着し、四重極電極棒407を付着すべき部分を反対側(図では下側)にして支持基板461に付着させる。四重極電極棒407を付着させる方の第4基板405において、付着する部分に溝部409を形成する。この溝部409の形成法は図24(a)、(b)と同様である。溝409の形状も四重極電極棒407が確実に嵌まるような形状が望ましい。尚、予め第5基板405に予めコンタクト416や電極・配線417を形成することもできる。溝部409における四重極電極棒407の接触部に導電性接着剤等(記載していないが、460とする)を形成しておき、サポート基板461に付着させた四重極電極棒407を第4基板405の接触部へアライメントして付着する。サポート基板461と四重極電極棒407を付着している接着膜462は、たとえば軟化温度T1の熱可塑性接着剤である。また、四重極電極棒407と第5基板405との接着剤460は、効果温度T2の熱硬化性接着剤である。T1>T2となるような材料を選定する。サポート基板461に付着させた四重極電極棒407を第4基板405の所定部分に接触させた後、雰囲気温度をT1とT2の間に保持して、接着剤460を硬化させて四重極電極棒407と第5基板405とを固定する。次にT1以上に温度を上げて、接着膜462を軟化させてサポート基板461を分離する。この結果、四重極電極棒407が第5基板405の所定部分に固く付着する。この後、コンタクト416および電極・配線417を形成できる。尚、コンタクト416の領域は、広い方が電場特性に良ければ広くすることも可能である。すなわち、図24(d)において、四重極電極410の領域を長手方向に伸ばしていけば良い。また、図24(c)においても、四重極電極410の領域を幅方向に伸ばしていけば良い。尚、第5基板406においても同様の方法で可能であり、第2基板402および403についても第1主基板401を付着させた後、同様の方法で四重極電極棒407を付着することができる。以上のようにして、所望の形状で所望の材料から構成される四重極電極棒407を基板に固定できる。
図25は、薄膜形成法を用いて四重極電極を質量分析室内部へ配置する方法について説明する図である。図22(c)とその製法は類似する。下部基板472に電極パターン463を形成し、主基板471を下部基板に付着する。このとき、主基板471の付着面側に凹部464を形成して、下部基板472に形成された電極パターン463に接触しないようにする。電極パターン463(463−1)は、四重極電極の一つであり、凹部464は将来質量分析室になる。電極パターン463(463−2)および電極パターン463(463−3)は将来四重極電極の一部となり、図25(a)には示されていないが、ここにも主基板471に凹部が形成され、電極パターン463(463−2)および電極パターン463(463−3)は主基板471に接触しない。下部基板472に付着した主基板471に、左右方向の2つの四重極電極を形成するための貫通室473(473−1、2)を形成する。このとき、電極パターン463(463−2)および電極パターン463(463−3)の周りにある凹部464がこの貫通室473(473−1、2)に含まれるようにする。すなわち、貫通室473(473−1、2)は電極パターン463(463−2)および電極パターン463(463−3)の周りにある凹部464より大きい。貫通室473(473−1、2)形成のための異方性エッチングを行なったときに、凹部464が先に貫通するので、導電体膜463(463−2、3)およびこの導電体膜463(463−2、3)と凹部との間で露出している下部基板472は主基板471のエッチングにさらされる。従って、下部基板472および導電体膜463(463−2、3)と主基板471のエッチング選択比を十分大きくとっておくとともに、下部基板472および導電体膜463(463−2、3)の厚みをそのエッチング量以上に設定しておく。
次に、主基板471が絶縁体でない場合、たとえばSi半導体基板である場合、この後に形成する導電体膜475と導通しないように、絶縁膜474を積層する。この絶縁膜474は、貫通室473内にも積層する。絶縁膜の厚みは、貫通室473の側面で500nm〜5000nm積層する。500nmあれば、200Vの耐圧がある。高電圧の場合は絶縁膜の厚みを大きくすれば良い。貫通室473(473−1、2)はサイズ変化がないように垂直エッチングが良い。貫通室473の底にも絶縁膜474が積層され、導電体膜463(463−2、3)も絶縁膜474でカバーされるので、この部分の絶縁膜474をエッチングするために、基板面」に対して垂直エッチング(ドライエッチング)を行なう。このとき、主基板471の上面に積層された絶縁膜474もエッチングされるが、貫通室473の底部にある導電体膜463(463−2、3)上に積層された絶縁膜474よりは厚いので、貫通室473の底部にある導電体膜463(463−2、3)上に積層された絶縁膜474を全部エッチングしても、主基板471の上面に積層された絶縁膜474は少し残る。ただし、主基板471の上面に積層された絶縁膜474も全部エッチングされても、主基板471が露出するが、主基板471と絶縁膜474のエッチング選択比を十分大きく取れば、主基板471は余りエッチングされないし、主基板471自体は厚いのでエッチングされても余り問題はない。また、貫通室473の側面に積層された絶縁膜は深さ方向にはかなり厚いので横方向には殆どエッチングされない。
貫通室473の底部にある導電体膜463(463−2、3)が露出した状態で、導電体膜475を積層する。この導電体膜475は導電体膜463(463−2、3)と接続する。この導電体膜475は、絶縁膜474および導電体膜463(463−2、3)およびメッキシード用導電体膜との密着性向上用の導電体膜、たとえばTi、TiN、Ta、TaNであり、膜厚は100nm程度あれば良い。この密着性向上用の導電体膜の後にメッキシード用導電体膜を積層する。メッキ膜がCuである場合は、Cu膜が良く、CVD法、PVD法等で500nm〜5000nm積層する。(図25(a))次に、フォトレジスト膜等の流動性樹脂膜465を塗布して、熱処理して硬化させて主基板471の表面を平坦化させる。このとき、貫通室473の内部にも樹脂膜465を入れて充填することが重要である。貫通室473の幅は、比較的大きく取ることができ、たとえば、0.1mm〜0.5mm〜5mmと貫通室473の深さに応じて設定すれば良い。従って、貫通室473の深さが1mm〜10mmでもアスペクト比を1〜5程度にできるので、絶縁膜474や導電体膜475の被覆性(ステップカバレッジ)は問題なく0.5〜1.0の範囲内の条件を設定できる。また、樹脂膜465による貫通室473の空間の充填も問題ない。(図25(b))
次に、平坦化した樹脂膜465をエッチバック法で上方からエッチング除去し、主基板471の上面に積層した導電体膜475を露出させる。このとき、貫通室473の内部には樹脂膜465が充填されており、貫通室473の内面に積層した475は樹脂膜465で被覆されている。(図25(c))従って、露出した導電体膜475をエッチング(ウエットまたはドライ)して、主基板471の上面に積層した導電体膜475を除去する。しかし、貫通室473の内面に積層した475はそのまま残すことができる。(図25(d))あるいは、図25(b)の状態で、研磨法(CMP法、またはBG法)で平坦化した樹脂膜465、導電体膜475を平坦化した状態で除去し、図25(d)の状態にすることもできる。次に、貫通室473内に残っている樹脂膜465をリムーブした後、下部基板472に導電体膜463(463−1、2、3)へのコンタクト466(466−1、2、3)を形成する。さらにコンタクト466(466−1、2、3)へ接続する導電体膜467を下部基板472の下面に積層する。この導電体膜467はコンタクト466の導電体膜と同時に積層することもできる。この導電体膜467は将来四重極電極に電圧を印加する電極・配線となるが、ここではまだパターニングせず下部基板467の下面全体に積層した状態にし、ここに通電した状態で、貫通室473(473−1、2)へメッキ液やメッキスプレーを流して、貫通室473(473−1、2)内へメッキ膜468を成長させて充填する。(図25(e))
次に、研磨法(CMP法、またはBG法)やエッチバック法で主基板471側を研磨またはエッチングして、主基板471の表面を平坦化する。次に、感光性膜469を塗布法または感光性シートを付着法等で主基板471の表面に形成し、フォトリソ法で質量分析室となる部分470を開口する。この開口部470は、貫通室473(473−1、2)の方まで開口し、貫通室473(473−1、2)の間にある主基板471を全部開口する。(図25(f))この後、主基板471を下部基板472までエッチングし、貫通室476を形成する。貫通室473(473−1、2)の間にある主基板471は全部エッチングされるので、この貫通室476は貫通室473(473−1、2)に作製された導電体膜475およびメッキ充填膜468に直面する。(間に絶縁膜474が介在する)主基板471がSi基板である場合、貫通室473(473−1、2)の側面周囲を取り囲んでいる絶縁膜474(たとえば、SiO2膜、SiN膜)とのエッチング選択比を大きく取れるので、貫通室473(473−1、2)の側面周囲を取り囲んでいる絶縁膜474は余りエッチングされない。導電体膜463(463−1)の周囲は凹部464なので、この部分の下部基板472や導電体膜463(463−1)は他の部分よりも主基板471のエッチングにさらされるが、これらの下部基板472や導電体膜463(463−1)との選択比も高く取れるので、余りエッチングされない。また、下部基板472や導電体膜463(463−1)を厚くしておけば良い。(図25(g))
感光性膜469の開口部470から主基板471をエッチング(垂直エッチング)して貫通室476形成した後、感光性膜469を除去した後、図25(g)に示す下部基板472に付着した主基板471の上面に導電体膜電極478を仮面に付着した上部基板477を付着する。導電体膜電極478は四重極電極の1つの電極となるので、質量分析室である貫通室476に配置する。上部基板477に形成する導電体膜電極478は、たとえば、CVD法、PVD法、メッキ法、スクリーン印刷法等で形成する。あるいはデスペンサーで導電体膜を付着させても良い。たとえば、上部基板477が絶縁体である場合、密着性向上用の導電体膜Ti/TiN膜を100nm〜1000nm積層し、次にCuメッキシード膜を500nm〜10000nm積層し、フォトリソ法で電極形成部を窓開けしてCuメッキ(100μm〜5mm)を行なう。この厚いCuメッキをマスクにして薄いCuメッキシード膜および導電体膜Ti/TiN膜をエッチング除去する。メッキ膜468の部分には接着剤等を付着させて上部基板477を付着させる。主基板471がSi基板であり、上部基板477がガラス基板等である場合は、静電陽極結合で付着することができる。その後、メッキ膜468および導電体膜電極478に接続するコンタクト479を上部基板477に形成する。さらに、上部基板477上面にコンタクト479に接続する導電体膜電極配線480(480−1〜3)を形成する。また、下部基板側も導電体膜電極配線467(467−1〜3)を形成する。このようにして、質量分析室476内に上下に四重極電極463−1、およびこれと対面する四重極電極478、また、左右に2つの四重極電極468が形成される。上下の四重極電極478および463−1は貫通室476の左右中心線に対して対称形状となるようにすることが望ましい。また、左右の四重極電極468は貫通室476の上下の中心線に対して対称形状となるようにすることが望ましい。この結果、上下の四重極電極478および463−1の中心間距離の中点M1と左右の四重極電極468の中心間距離の中点M2は一致することが望ましい。これによって、安定した四重極電場が形成されやすい。尚、図25(g)の構造のものを上下にして重ねて質量分析室を作製することもできる。(感光性膜469は当然除去する。)これにより、質量分析室476の高さを高くできる。付着するときには、メッキ膜468の表面には導電性接着剤または半田金属、その他の部分は絶縁性接着剤を塗布するか、接着剤を使わずに接着させることができる。質量分析室内に四重極電極を配置しているので、質量分析室476内により安定した四重極電場を形成することができる。
本発明は、四重極電極より電極の多い多重極にも適用できる。多重極電極型イオンガイドとして、たとえば六重極電極型イオンガイド、八重極電極型イオンガイドがある。図26は、八重極電極型の構造を示す図である。図22(a)の四重極型電極にさらに4電極を付加している。図22(a)で用いているものと同様のものは同じ符号で示している。図22(a)と異なるのは、八重極電極394−1(の下側)が上部基板392ではなく第3下部基板482上に付着されている。また、八重極電極394−1の上側が第2上部基板483に付着されている。(ここで、本明細書では、付着とは、特に区別していない限り、外付けで付着する場合と、薄膜で形成する場合の両方を含むものとする。)しかし、図22(a)と同様に、上部基板392に付着することができる(他の電極393−2、398−8、さらに下側に関しても同様)のは当然であるから、詳細は述べない。第2下部基板482上に3つの八重極電極394(394−5、1、8)を付着させる。八重極電極394(394−5、1、8)を外付け(別に作製した八重極電極を付着させること)で付着するときは、第2下部基板482上に八重極電極394(394−5、1、8)の形状に合わせた溝や凹部を形成して(フォトリソ法およびエッチング法、またはレーザーによる溝・凹部形成などで形成)、接着剤等を用いて溝や凹部の部分に付着させる。八重極電極394(394−5、1、8)の上側にも第2上部基板483を付着させて、八重極電極394(394−5、1、8)を確実に固定する。このとき、第2上部基板483の下面にも八重極電極394(394−5、1、8)の形状に合わせた溝や凹部を形成して、接着剤等を用いて溝や凹部の部分に付着させる。
第2下部基板482と第2上部基板483(このとき、上部基板392は第1上部基板392、下部基板393は第1下部基板とする)の間に第2主基板481を付着させて、第2主基板481に貫通室485−1、2,3を形成し、その貫通室485−1、2,3内に、八重極電極394(394−5、1、8)をそれぞれ配置することもできる。これらの配置方法は種々の方法がある。たとえば、第2下部基板482に第2主基板481を付着させて、貫通室485−1、2,3を形成し、さらに第2下部基板482の所定部分に溝395を形成する。(第2下部基板482の所定部分に溝395を形成してから、第2主基板481を付着させて、貫通室485−1、2,3を形成することもできる。)ここで、貫通室485−1と貫通室485−2の間には第2主基板481の基板側壁板481−1が存在し、貫通室485−1と貫通室485−3の間には第2主基板481の側壁板481−2が存在する。貫通室485−2において、基板側壁板481−1の対面は基板側壁481−3である。貫通室485−3において、基板側壁板481−2の対面は基板側壁481−3である。
次に、八重極電極394(394−5、1、8)をそれぞれの貫通室485(485−1、2、3)にフリップチップ実装機で入れて、第2下部基板482に付着し、その後で、第2上部基板483を第2主基板481に付着する。このとき、八重極電極394(394−5、1、8)の上部も第2上部基板483に付着させる。第2上部基板483の所定部分に溝や凹部395を形成し、この部分に接着剤等を付けて八重極電極394(394−5、1、8)の上部をこれらの溝等に嵌合するようにすれば良い。あるいは、第2上部基板483の所定箇所に溝や凹部395を形成し、この部分に接着剤等を付けて八重極電極394(394−5、1、8)の上部をこれらの溝等に嵌合するように付着させる。八重極電極394(394−5、1、8)を付着した第2上部基板483を、第2下部基板482に付着した第2主基板481に形成した貫通室485(485−1、2、3)に八重極電極394(394−5、1、8)を挿入して、第2下部基板482に付着した第2主基板481に付着する。このとき、八重極電極394(394−5、1、8)の下部が第2下部基板482に形成された溝等395に嵌合して付着させる。このようにして、第2上部基板および第2下部基板に八重極電極394(394−5、1、8)を付着させることができる。ここで、第2上部基板は第1上部基板と同じ材料で良い。第1下部基板も第1下部基板と同じ材料で良い。また、第2主基板も第1主基板と同じ材料で良い。
3つの八重極電極394(394−5、1、8)と第2上部基板483との付着部分において、第2上部基板483にコンタクトを設けて、さらに第2上部基板483上に外部から電圧を印加できる外側電極・配線を作製することができる。主基板面、上部基板面、および下部基板面に垂直方向をZ方向、荷電粒子の進行方向をX方向(図26では紙面に垂直方向、ただし、荷電粒子の進行方向が曲線を描く場合は、接線方向)、およびX、Zの両方向に垂直方向をY方向としたとき、八重極電極394−5、1、3はY方向に配列している。貫通室485(485−1、2、3)同士の間の基板側壁板481−1や481−2は必要がない部分は除去しても良い。第2下部基板482、第2上部基板483は、3つの八重極電極394(394−5、1、8)によっても支持されているので、全部除去することもできる。この場合は、第2主基板の側壁は、3つの八重極電極394(394−5、1、8)の外側にある第2主基板481−3、4だけである。さらに、第2主基板481もなくすこともできる。さらに第2上部基板483もなくすことができる。このとき3つの八重極電極394(394−5、1、8)への電圧供給用の外側電極・配線は直接八重極電極394(394−5、1、8)へ供給するか、第2下部基板側に外側電極・配線を作製することができる。第2下部基板もなくすことができるが、その場合、3つの八重極電極394(394−5、1、8)は第1上部基板392の上面に付着することになるので、第1上部基板392の上面に外側電極・配線を作製することができる。
以上のようにして、第2下部基板482に付着した第2主基板481に形成された貫通室内に搭載された3つの八重極電極394(394−5、1、8)、その上部に付着した第2上部基板483から構成される電極モジュール基板を第1上部基板392の上面に付着させる。第1上部基板392にコンタクト配線がある場合は、第2下部基板482にコンタクト配線を作製し、第1上部基板392のコンタクト配線と接続するようにすれば良い。このモジュールを第1下部基板393に付着すれば、図26(a)に示す下側となる。すなわち、第3下部基板486に付着した第3主基板484に形成された貫通室内に搭載された3つの八重極電極394(394−6、3、7)、その上部に付着した第3上部基板485から構成される電極モジュール基板を第1下部基板393の下面に付着させる。八重極電極394−6は第3主基板484の基板側壁484−3と基板側壁板484−1とに囲まれた貫通室内に、八重極電極394−3は第3主基板484の基板側壁484−2と基板側壁板484−1とに囲まれた貫通室内に、八重極電極394−7は第3主基板484の基板側壁484−2と基板側壁板484−4とに囲まれた貫通室内に配置される。
メインの荷電粒子は真中の貫通室396−1の中央付近を通るようにする。そのために、8個の八重極電極394−1〜8による貫通室396−1内の電場は対称形になることが望ましい。そこで、8個の八重極電極394−1〜8を貫通室396−1の中央に対してできるだけ対称となるように配置するのが良い。ただし、本発明の場合、各電極には個別に周波数や電圧を変化させて印加できるので、ある程度対称形になっているだけでも良い。たとえば、対面する電極(394−1と3、394−5と7、394−2と4、394−6と8)距離の中心が、貫通室396−1の中央付近に来るようにする。また、図26(a)の場合は、3つの電極394−4、1、8や2つの電極394−2、4や3つの電極394−6、3、7はY方向にそろい、3つの電極394−5、2、6や2つの電極394−1、3や3つの電極394−8、4、7はZ方向にそろうように配置する。また、各貫通室には真空引き用やパージ・クリーニング用の開口部を第1、2上部基板や第1、2下部基板に形成する。
八重極電極394(394−1〜8)は、X方向へ棒状に形成されているが、X方向に全体的に上部基板や下部基板に支持されている必要はないので、八重極電極394(394−1〜8)の外側を囲んでいる、第2下部基板486、第3主基板484−3、第1主基板391−3、第2主基板481−3、第2上部基板、第2主基板481−4、第1主基板391−4、484−4の内側において、八重極電極394(394−1〜8)を一部支持する部分だけ残して、他の上部基板(第1上部基板392、第3上部基板485)や下部基板(第1下部基板393、第2下部基板482)、および第1主基板391の基板側壁板391−1、2、第2主基板の基板側壁板481−1、2、第3主基板の基板側壁板484−1、2も除去することができる。八重極電極394(394−1〜8)から生じる電場の障害となる主基板や上部基板、下部基板がなくなるので、質量分析室396−1の電場の安定化を高めることができる。また、この場合は、質量分析室396−1の周囲の貫通室も圧力が同じくなる。さらに、八重極電極394(394−1〜8)の外側の貫通室の空間を広げ、また、第2上部基板483上にさらに貫通室を有する主基板を付着した上部基板および下部基板を付着して、貫通室を広げていく。この結果、八重極電極394(394−1〜8)の外側にも一定の空間を存在させることができる。この場合、一番外側にある上部基板や下部基板に真空引き用の開口部を設けて、質量分析室の圧力を下げられるようにする。
図26(b)は、図26(a)に示す八重極電極394(394−1〜8)構造の変形である。この実施例では、対面する各電極間の距離がすべて(ほぼ)等しく、その中間がほぼ一致する。その中間点(M)が質量分析室のほぼ中心部になるようにすることが望ましい。従って、8つの八重極電極394(394−1〜8)はMを中心とした(半径Rの)円周上に配置される。また、隣同士の電極もそれぞれ同じ関係になることが望ましいので、隣同士の中心角はほぼ45度になることが望ましい。また、各電極の大きさおよび形状は揃っていて、中間点Mに面する方向の形状は同じか類似することが望ましい。図26(b)では、断面が円形で棒状(すなわち、円柱形状)の電極であるから、回転しても同じ形状であるが、形状が双曲線形状の場合は、中間点Mに面する方向の形状が双曲線形状であることが望ましい。従って、電極を配置するときにそのような形状になるように所定箇所に付着させる。電極394−2、4の高さが質量分析室の高さより小さい場合、質量分析室の高さの中央に電極394−2、4の中心が来るようにするために、図22(a)に示した場合と同様に、台座397を配置する。また、図26(b)の斜め側にある電極394−5〜8とZ方向にある電極394−1、3との距離をほぼ同じにするために、電極394−5〜8は第1上部基板392上および第1下部基板の下面に付着したり、および/または電極394−1、3を第2下部基板482の上面や第3上部基板485の下面に付着するとともに、これに加えて台座を用いたりすることも有効である。尚、質量分析室396−1と同レベルにある電極394−2、4は比較的自由に距離を変化できる。
図22(c)における電極425−2や3の形成方法、あるいは図25で説明した方法を用いて八重極の電極を作製することもできる。すなわち、図26(a)における電極はすべて図22(c)における電極425−2や3の形成方法、あるいは図25で説明した方法を用いて八重極の電極を作製することができる。また、図26(b)に示す八重極の電極の配置も同様に作製できる。たとえば、斜め側にある電極394−5〜8も図26(a)と同じように第2下部電極482と第2上部電極483の間、あるいは第3下部電極486と第3上部電極485の間に形成し、中央にある電極394−1や394−3については、台座を配置し電極の位置を高くすれば良い。これによりすべての電極からの距離の中点をほぼ一致させることができる。
六重極電極型質量分析室も本発明の基板を用いて作製できる。たとえば、図26(a)に示す八重極電極型を利用して説明すると、質量分析室396−1のY方向には、これらと同じように配置し、図26(a)における電極394−1と394−3をなくし、その他の4つの電極に関して、これらの電極(394−2と394−4)に対して、中点Mから中心角60度の方向の上側に2個の電極(394−5、8)、中点Mから中心角60度の方向の下側に2個の電極(394−6、7)を配置する。これらの電極は同一円周状に配置することもできる。すなわち、M点からの距離の等しい所に配置する。また、図26(b)に示すような第1上部基板の上面および第1下部基板の下面ね配置することもできる。尚四重極電極についても、隣同士の電極は中点Mに対して90度で、かつ4つの電極を同一円周上になるように配置することが望ましい。尚、質量分析室と四重極電極(または多重極電極、以下まとめて四重極電極と記載)が基板側壁によって分離していると四重極電極による電場が弱くなるので、四重極電極を最低限支持する基板だけを残して他の基板は除去することもできる。その場合は、当然質量分析室の真空度が悪くならないようにするために四重極電極の周囲をさらに基板で覆えば良い。
<扇型電場>
本発明の質量分析装置は、質量分析室として扇型磁場方式を用いることができる。図27は、本発明の主基板に扇型磁場が作用する質量分析室となる貫通室を持つ扇型磁場方式の質量分析装置を示す模式図である。図27(a)はイオン検出室が1個のタイプであり、図27(b)はイオン検出室が複数個のタイプである。本発明の質量分析室683−2は、主基板682に形成された扇型状にくり抜かれた貫通室であり、その上下を上部基板688および下部基板689が付着している。(図27(c))質量分析室683−2へのイオンビーム685の入力側である貫通室(隣室)683−1は、たとえば、図19における引き出し電極・加速室307であり、加速電圧Vで加速された速度vのイオンが隣室683−1から基板側壁682−1が有する中央孔690−1を通って質量分析室683−2へ入射する。

質量分析室683−2の上部および/または下部には電磁石684が配置され、その電磁石684による磁場Bが貫通室683−2の上下方向、すなわち主基板682、上部基板688および下部基板689の基板面に対して垂直方向に印加される。この磁場Bによって、速度vで入射したイオンは(略)半径R0の円軌道を描いて、質量分析室683−2の出口となる基板側壁682−2が有する中央孔690−2を通って隣室683−3へ進む。このように、質量分析室683−2は上下部基板688および689で貫通室の上下が密閉され、横方向(イオンビームの進行方向)は中央孔を有する(主基板の)基板側壁に挟まれ、また、主基板682の側面方向(イオンビームの進行方向と直角方向)は主基板に囲まれている。ただし、質量分析室683−2の上下部基板688、689には真空引き用の開口部があいていて、質量分析室683−2内を所定圧力(たとえば、10−4〜10−8torr)にする。さらに質量分析室683−2内をクリーニングするための不活性ガス(N2、He、Ar等)等のクリーニングガスを導入するための開口部を設けることもできる。
質量分析室である貫通室683−2は、通常イオンビームの軌道685が中心となるようにしてその中心からほぼr1の幅(横方向)を有する空洞である。従って、貫通室683−2は、平面的には、図27(a)や(b)に示すように、扇型形状の円筒状空洞(半径R0の扇型を中心とする幅r1の空洞)である。しかし、実際には、質量分析室である貫通室683−2は必ずしも扇型形状の空洞である必要はなく、少なくとも前記の扇型形状の円筒状空洞を含むそれよりも大きな空洞であれば良い。そして、その空洞の中で、貫通室683−2の上下方向、すなわち主基板682、上部基板688および下部基板689の基板面に対して垂直方向に磁場が印加されるので、イオンビーム軌道はほぼ半径R0の円形軌道(扇型:角度はたとえば30度〜180度で選定できる。)となる。たとえば、入射時のイオンの速度をv(m/sec)、イオンの質量をm(kg)、イオンの荷電数をz、磁場(磁束密度)をB{N/(Am)}とすれば、質量分析室683−2ではイオンは遠心力とローレンツ力が釣り合い半径R0の円軌道を取るので、mv/R0=Bzev・・・(1)が成り立つ。質量分析室683−2へ入射する前に加速室で電圧V(ボルト)で加速されたとすれば、zeV=m v/2・・・(2) が成り立つ。(1)および(2)からm/(ze)=BR0/2V・・・(3)が導かれる。(eは電気素量で、約1.6×10−19C(クーロン))
質量分析室に入射するイオン685は種々の質量mや電荷(ze)を持つが、質量分析室で磁場の力を受けると種々の軌道Rを有する。((3)式から分かる。)たとえば、図27(b)から分かるように、同じ磁場B、加速電圧Vの場合、(m/z)が小さなものはR0より小さな軌道となり(たとえば、685−3)、(m/z)が大きなものはR0より大きな軌道となり(たとえば、685−2)となる。質量分析室683−2の隣室690−3はイオン選別室であり、その中に中央孔690−3を有する基板側壁686が配置されている。基板側壁686が有する中央孔690−3は半径R0の軌道を持って進んできたイオンビームが通るように作られている。すなわち、磁場Bによる力を受けて中心軌道を進んできたイオンビームの軌道がちょうど中央孔690−3に相当している。すなわち、(3)式が成立するようなイオン685−1が中央孔690−3を通る。従って、中央孔690−3を有する基板側壁686はイオン選別スリットと呼んでも良く、(3)式が成立しない場合、たとえば図27(b)における軌道685−2や685−3のイオンは中央孔690−3を通過できない。中央孔690−3を通過したイオン685−1は基板側壁682−3が有する中央孔690−4を通って隣室683−4へ入射する。この隣室683−4は、たとえばイオン検出室であり、質量分析室683−2およびイオン選別室683−3で選別されたイオン量が検出される。このように、イオン選別室690−3は基板側壁682−2および682−3で囲まれている。このイオン選別室683−3は通過できないイオンが残るので、上下部基板に真空引き用の開口部やクリーニング用の開口部を設けて、十分な真空引きや適宜クリーニングすることが望ましい。通常、イオン選別スリットの中央孔690−3のサイズは基板側壁682−2の中央孔690−2のサイズより小さい。イオン選別室683−3は他の部屋よりも汚れが大きいので基板側壁682−2および682−3で囲むことが望ましいが、少しサイズが大きくなるので、汚れを余り気にしなければ、省略しても良いが、イオン選別スリット686は必要である。このように図27(a)に示す扇型磁場式の質量分析法は、磁場Bや加速電圧Vを変化させながらイオンを検出する。
図27(b)に示す扇型磁場式の質量分析法は、イオン検出室を複数{683−1−1、2、3、・・・}設けて、半径R0を有するイオンだけでなく、他の軌道を有するイオンも検出できるものである。たとえば、質量検出室683−2の中心(イオンビームの通る位置の近傍)が半径R0で、その中心から主基板側面までの距離を片側r1、他方側をr2としたとき、図27(a)における質量検出室683−2では、r1=R1(一定)、r2=R2(一定)として、図27(b)における質量検出室683−2では、r1>R1、r2>R2として、イオンが磁場によって曲がっても主基板682の側面に衝突しないで、質量検出室683−2の隣室であるイオン選別室683−3へ進めるようにする。また、質量検出室683−2とイオン選別室683−3の隔壁である基板側壁(図27(a)の682−2)を小さくする(すなわち、中央孔690−2を大きくする)か、取り除く。さらに、イオン選別室683−3では、中心軌道685−1以外の軌道(たとえば、685−2や685−3)は広がっていくので、図27(b)に示すように、イオン選別室683−3の主基板682の側面をイオンビームの進行方向に広げていき、イオンビームが主基板682の側面にできるだけ衝突しないようにする。さらに、イオン選別スリットである基板側壁686も取り除き、できるだけ多数のイオンがイオン検出室683−4に入るようにする。イオン検出室683−4は多数の個別イオン検出室683−4―1、2、3、・・・が主基板682の側面方向(主基板682の基板面と平行な方向で、イオンの進行方向(中心軌道)と垂直方向に並べられる。
イオン検出室としては種々の方式を採用できるが、特に本明細書で説明したものはすべて使用できる。イオン検出室683−4の個別イオン検出室683−4―1、2、3、・・・同士の間には基板側壁687が存在し、互いに干渉しないようになっている。当然コレクター電極も個別イオン検出室毎に独立して配置される。個別イオン検出室の入口幅をw1、w2r、w2l、w3r、w3l、・・・とする。ここで、w1はイオン中心軌道685−1に沿った個別イオン検出室(図27(b)の683−4−1)の入口幅である。w2rは、その個別イオン検出室(図27(b)の683−4−1)の隣のイオン検出室で、そのイオン中心軌道685−1より外側軌道に配置された個別イオン検出室(図27(b)の683−4−2)の入口幅である。w3rはさらに外側の個別イオン検出室(図27(b)では記載せず)の入口幅である。w2lは、個別イオン検出室(図27(b)の683−4−1)の隣のイオン検出室で、そのイオン中心軌道685−1より内側軌道に配置された個別イオン検出室(図27(b)の683−4−3)の入口幅である。w3lはさらに外側の個別イオン検出室(図27(b)では記載せず)の入口幅である。個別イオン検出室同士の基板側壁の幅をsとする。尚、個別イオン検出室の高さは、主基板682の厚さである。イオン検出室683−4の全体幅Dは、w1+(w2r+W3r+・・・)+(w2l+W3l+・・・)+n×s(nは基板側壁687の数)となる。個別イオン検出室の幅がすべて等しければ、個別イオン検出室の数はn+1個であるから、イオン検出室683−4の全体幅Dは、D=(n+1)×w1+n×sとなる。イオンは個別イオン検出室のどれかへ入れば必ずカウントされるが、隔壁687に衝突したものはカウントされない。イオン検出室の最外側および最内側の主基板682の側面(およびイオン選別室の側面等)に衝突したイオンもカウントされないが、そのようなものはないとしたとき、イオンの検出捕捉率は(n+1)×w1/Dとなる。たとえば、w1=500μm、s=100μmとし、n=20とすれば、D=10500+2000(μm)=1.25cmで、捕捉率は、84%となる。
扇型磁場室である質量分析室683−2の空洞を大きくすることも、また、湾曲した空洞683−2をイオンビーム685の進行方向に対して次第に大きくしていくことも本発明ではフォトリソ法およびエッチング法を用いて簡単にできるので、所望の質量分析室683−2やイオン選別室683−2、イオン検出室683−4を作製できる。また、各イオン軌道は中心軌道を進むイオン軌道685−1に対して傾いているので、個別イオン検出室の入口面積を一定にすると捕捉面積が異なるが、本発明ではイオン軌道の傾きに合わせて個別イオン検出室の入口面積を変化させることも簡単にできる。たとえば、イオン軌道が外側になるに従い個別イオン検出室の入口面積を大きくしていくことができる。また、個別イオン検出室の向きをイオン軌道に合わせることも簡単にできるので、個別イオン検出室の入口面積を同じにしてイオンの侵入面積を各個別イオン検出室で同じにすることができる。図27(b)に示すような複数のイオン検出室を持つ質量分析装置でも加速電圧Vや磁場Bの値を連続的に変動させてさらに精密な測定もできる。
扇型磁場684は、質量分析室683−2の上部および/または下部に永久磁石または電磁石を配置し、質量分析室683−2に対して垂直方向(上部から下部への方向、またはこの逆)へ磁場(磁界)を印加する。すなわち、質量分析室683−2を被う上部基板または下部基板の外側に磁石のS極またはN極を配置し、および/または対向する下部基板または上部基板の外側に対向する側と逆極を配置する。たとえば、質量分析室683−2が図27(a)や(b)に示すように時計回りに湾曲しているときには、イオンビーム685を同じ時計回りに曲げる必要があるので、イオンがプラスの場合は、上部側にS極下部側にN極を配置し、磁場(磁界)が質量分析室683−2の下側(下部基板689側)から上側(上部基板688側)に向かうようにする。(フレミング左手の法則)磁石は磁場をかけてイオンに力を及ぼす領域、たとえば図27(a)や(b)の扇型磁場領域684だけに配置する。
電磁石はコイルでも良く、また、そのコイルを基板内に作製して、その基板を質量分析室683−2や他のイオンビーム685が通る空洞(貫通室)を有する主基板682の上部および/または下部に付着しても良い。図27(c)は、図27(a)または図27(b)において質量分析室683−2のA1−A2の断面を示す図で、質量分析室683−2を有する主基板682の上面に付着した上部基板688の上面にコイルを内蔵した基板モジュール699(699−1)を付着し、および/または主基板682の下面に付着した下部基板689の上面にコイルを内蔵した基板モジュール699(699−2)を付着した図である。
コイル内蔵の基板モジュールは、上部基板693と下部基板692の間にコイル695が搭載され、上部基板693または下部基板692の外側の表面に電極・配線697(697−1、2)が形成され、それらの電極・配線697(697−1、2)からコイル695の導線へ電流を流すことができる。上部基板693と下部基板692の間にコイル内蔵基板691が付着され、その基板691内にコイル695が搭載されている。コイル695の巻き導線は基板691の基板面に平行に巻かれ、基板面と垂直方向に導線が積層されてつながっている。従って、電極・配線697(697−1、2)からコイル695へ電流を流すと、コイル内電流Iは基板面に平行に流れ、その結果コイルの導線を垂直方向、すなわちコイル(が巻かれる円筒)の軸方向に貫く磁場(磁界)、が発生する。コイルがn回巻きでコイル(の円筒)の半径をaとすれば、コイルの中心の磁場(磁界)HはH=nI/(2a)である。

コイルが発生する磁場が外部へ伝達するために、上部基板693、下部基板692、および内蔵基板691等のコイル695を取り囲む材料は非磁性体である。コイル695を搭載する内蔵基板691および/または上部基板693にはコイル695の1端の導線と接続する導電体膜配線698−1が形成され、その導電体膜配線698−1は上部基板または下部基板に形成されたコンタクト孔696(696−1)およびその中に形成された導電体膜に接続し、さらにそのコンタクト孔696(696−1)およびその中に形成された導電体膜は上部基板または下部基板上に形成された電極・配線697−1へ接続する。また、コイル695を搭載する内蔵基板691および/または上部基板693にはコイル695の他端の導線と接続する導電体膜配線698−2が形成され、その導電体膜配線698−2は上部基板または下部基板に形成されたコンタクト孔696(696−2)およびその中に形成された導電体膜に接続し、さらにそのコンタクト孔696(696−2)およびその中に形成された導電体膜は上部基板または下部基板上に形成された電極・配線697−2へ接続する。
コイル内蔵基板の形成方法は、たとえば、下部基板692へ基板691が付着した後、コイル695を搭載すべき場所にコイル搭載用の空洞(貫通室)694を形成する。空洞694内へ絶縁膜を積層し、空洞内面を絶縁膜で覆い、導電体膜を形成し、空洞694内に導電体膜配線698(698−1、2)を形成する。基板691が絶縁体であるときは、空洞694内への絶縁膜の積層は必須ではない。次に、コイル695を空洞内へ挿入し、コイル695の導線端子を導電体膜配線698(698−1、2)と接続する。この接続は半田等の低融点合金や導電性ペーストを介在して行なうことができる。一方上部基板693の片面に導電体膜配線698(698−1、2)を形成しておく。次に、上部基板693を下部基板692に付着し空洞694を形成したコイル内蔵基板691へ付着する。このとき、空洞内へ形成した導電体膜配線698(698−1、2)と上部基板693の片面に形成した導電体膜配線698(698−1、2)を接続させる。次に、上部基板693にコンタクト孔・導電体膜696、および電極・配線697を形成する。これらは上部基板693に予め形成した後に、コイル内蔵基板691へ付着しても良い。ここで、上部基板692および下部基板693は通常絶縁体である。これらが半導体基板や導電体基板の場合は、コンタクト孔696内や空洞694内、基板表面へ導電体膜697、698等を形成する前に絶縁膜を形成するなどして電極・配線間が導通しないようにする。こうして、基板691、692、693に囲まれたコイルが完成する。

このモジュール基板699−1内に多数のコイルを搭載できるが、質量分析装置ではコイルを配置する必要がない場所もあるので、モジュール基板699−1を、質量分析装置が形成されたモジュール基板(たとえば、図19では、基板301,302、303で形成される。あるいは、図27では、基板682、688、689で形成される。)に合わせ込んだときに必要な場所にコイル695が配置されるように、モジュール基板699−1にコイル695を配置する。この場合は、モジュール基板699−1に不必要な場所もできるが、モジュール基板699−1と質量分析装置が形成されたモジュール基板を一挙に付着できるので、多数の質量分析装置が一連のプロセスで形成できるという利点がある。モジュール基板699−1に不必要な場所をできるだけ作らないようにするためには、モジュール基板699−1に必要なコイルを配置したブロックを多数作製(たとえば、図27では、扇型形状の部分684を1つのブロックとする。実際にはこの扇型形状の部分684を含む最小の矩形部分からなるブロックとして切断しやすくすると良い。)しておき、これらをブロックごとに切断して、個々のブロックを質量分析装置が形成されたモジュール基板に合わせ込んで付着させる。この場合は、コイルブロックを付着した部分は厚みが大きくなる。この方法によれば、コイルを内蔵したモジュール基板699−1全体を有効に使用できる。ここで示したコイルは導線をスパイラル状に巻いた導線だけのコイルとして記載しているが、これはコイルであることを簡単に示すために描いているだけであり、種々のコイル(インダクタ)を使用できる。たとえば、チップインダクタのようにコイルを内部に搭載したパッケージタイプのものでも良い。チップインダクタは端子電極が外側に露出しているので、図27(c)に示す空洞694へチップインダクタを挿入したときに上部基板、下部基板、および空洞内の導電体膜配線698と接続が簡単となる。あるいは、チップインダクタをそのまま質量分析室683−2の上に付着している上部基板688に付着させることもできる。
チップインダクタの場合、巻線タイプや積層タイプやフィルムタイプ、フェライトコアや非磁性体コアや高透磁率磁性体コアを持つタイプ、被磁性素体タイプ等種々のものを、その特性(インダクタンス、Q値など)に合わせて使用できる。導線が露出したタイプの巻線型コイルは大電流を流しても発熱に対して耐久性があるので、大きな磁界を発生させることができる。この場合も直接コイルを上下部基板688および/または689に付着すれば空冷等も簡単にできるので耐熱性を向上できる。図27(c)に記載したコイル挿入タイプでも上下部基板に空冷用の開口部Opをあけて空冷または液冷で空洞内部のコイルを冷却できる。コイルを上下部基板688および/または689に付着する場合は、上下部基板688および/または689に接続配線パターンを形成し、その接続配線にコイルの両端子を接続すれば良い。また、コイルは質量分析室683−2にできるだけ近づけることによって質量分析室内の磁場を大きくできるので、上下部基板688および/または689をできるだけ薄くすると良い。ただし、強度や真空度を確保する程度の厚みが必要である。たとえば、基板がガラス基板の場合は現状では50μm程度であるが、技術向上により将来はさらに薄くできるだろう。上下部基板688および/または689全体を薄くするには、主基板682にこれらの基板を付着した後にバックグラインド装置やCMP装置を用いてこれらの基板を研磨すれば良い。これらの基板を薄くした後にコンタクト孔、電極・配線、コイル搭載を行なうことができる。あるいは、コイルを搭載する領域およびその周辺のみの上下部基板688および/または689を薄くすることもできる。たとえば、薄くする領域以外を感光性膜パターン(マスク)で覆い、その領域をエッチングして薄くしたり、あるいは上下部基板688および/または689のその領域を予め薄くしておき、そのような上下部基板688および/または689を主基板682に付着させたり、あるいは小型研磨装置(たとえば、円板体の平面部をあてて研磨剤を含む研磨液を加えながら円板体を回転させる装置で、支持基板に複数取り付けて、その支持基板を主基板に近づけて回転円板体を同時に主基板に当てれば複数箇所を同時に研磨できる)を薄くすべき領域の主基板にあててその領域だけを薄くするという方法もある。
コイル内蔵のモジュール基板699−1(の下部基板692の下面)を、質量分析室683−2等を有する質量分析装置の上部基板688上に付着する。すなわち、質量分析室683−2の直上にコイル695が配置される。すなわち、扇型磁場を発生する部分にモジュール基板699−1のコイル695が配置される。図27(c)では1個のコイルしか記載していないが、幅方向(図27(c)の左右方向)および/または奥行き方向(イオンの進行方向)に複数配置しても良い。たとえば、質量分析室683−2の幅をd1、コイル695の幅をd2(複数コイルの場合、複数コイルを合わせた幅、すなわち、1個のコイル幅をbとし、幅方向にm個並べた場合、d2=mb(ただし、コイル間の隙間は無視した))としたとき、d2の中心はd1のほぼ中心に合わせて、d2>d1になるようにする。質量分析室683−2の上部だけの配置では質量分析室683−2内の垂直磁場の領域は狭いので、質量分析室683−2の下部にも699−1と同様のコイル内蔵のモジュール基板699−2を配置する。このモジュール基板699−2はモジュール基板699−1と同じものを裏返して使用することができる。すなわち、コイル内蔵のモジュール基板699−2(の下部基板692の下面)を、質量分析室683−2等を有する質量分析装置の上部基板689の下に付着する。すなわち、質量分析室683−2の直下にコイル695が配置される。これらの付着は、常温接合、高温接合、拡散接合や接着材等を用いて付着できる。接着剤等を用いる場合はコイルが発生する磁束を遮らない非磁性体を使用する。また、基板688、689、692がガラス基板、石英基板等である場合、これらの基板の間にSi基板や導電体基板を介して静電陽極結合で付着することもできる。この付着の時に、付着基板に開口部があいているときは、その開口部を塞がないようにすることは言うまでもない。(塞いでも良い開口部は除く)尚、質量分析室683−2の扇型磁場の領域684の直下または直上にはコイル695が配置されるので、質量分析室683−2の上部基板688または下部基板689の必要な開口部は扇型磁場の領域684の外側に設ければ良い。
質量分析室683−2の直上に配置されるコイルの極性と質量分析室683−2の直下に配置されるコイルの極性は逆極性とすることによって、これらのコイルの間に垂直磁場が発生する。すなわち、質量分析室683−2(の扇型磁場の領域)は、垂直磁場が生じる。質量分析室683−2の磁場を概算する。半径aの円形コイル(n巻き)を電流Iが流れているとき、中心軸上(コイル端の中心からbの距離)の磁場は、H=(nI/2)a/(a+b3/2である。a=1mm、b=1mmとすれば、H=1.8×nI×10[A/m]。a=5mm、b=5mmとすれば、H=35×nI[A/m]。扇型の半径R0=10cmとすると、(m=10−27kg、e=1.6×10−19Cとすれば、B2/V=10−6、B=4π×10−7×H、加速電圧V=10ボルトのとき、H=2.5×10[A/m]。加速電圧V=100ボルトのとき、H=10[A/m]。以上から、コイルの巻き数を50として、a=1mm、b=1mmの場合、(1)加速電圧V=10ボルトで、コイルに流れる電流は0.28A、(2)加速電圧V=100ボルトで、コイルに流れる電流は1.2A、a=5mm、b=5mmの場合、(3)加速電圧V=10ボルトで、コイルに流れる電流は1.4A、(4)加速電圧V=100ボルトで、コイルに流れる電流は5.8A。従って、微小コイルでも十分に達成可能である。尚、上記の計算は片側コイルの場合の磁場であるから、上下に2個配置したときには、コイルに流れる電流はこれらの半分で良い。尚、上記の計算には、コイルに挿入するコアは考慮されていないので、大きな透磁率を持つ挿入コアを使用すれば、コイルに流れる電流をさらに大きく低下することができるから、コイルにかなり余裕度ができる。
図27(c)に示すように、質量分析室683−2の高さをh1(主基板682の厚みに等しい)、上部基板688の厚みをh2、モジュール基板699−1の下部基板692の厚みをh3、空洞694の高さをh4(基板691の厚みに等しい)、上部基板693の厚みをh5とすると、質量分析室全体の厚みは、h1+2(h2+h3+h4+h5)となる。(下側も上側と同じと仮定する。)たとえば、h1=1mm、h2=h3=0.2mm、h4=1mm、h5=0.2mmとすれば、質量分析室全体の厚みは4.2mm。h1=10mm、h2=h3=1mm、h4=10mm、h5=1mmとすれば、質量分析室全体の厚みは36mmとなり、高さも非常に小さくなる。イオンビームの大きさは高だか10nm~100nmであるから、h1=1mm、h2=h3=0.2mm、h4=1mm、h5=0.2mmとしても十分な大きさである。本発明では厚さが十分均一な基板を使用でき、LSIプロセスで基板の付着やパターニングを行なっているので、このくらいの大きさで充分である。尚、d1やd2は広く取ることもできる。たとえば、h1=1mmに対して、d1=1〜10mm、d2=1.1〜11mmとすることができる。円形コイルの場合、直径1mm、高さ1mm〜5mmのコイルを磁場領域へ複数並べて配置する。特にイオンビームの進行方向は長くなるので多数のコイルを並べる必要がある。本発明の場合、このような小さなコイルでも電極を外側に配置でき、個々に電流を流すことができるので、精密な電流制御(すなわち、精密な磁場制御)が可能となる。これらの制御は個々のコイルごとに配線をLSIチップに接続し、LSIでコントロールすることが可能である。尚、質量分析室のサイズが大きくなっても、上記のようにイオンビームを制御できるかシミュレーションできるので、小さなコイルを多数並べることもできるし、質量分析室のサイズに対応させながらコイルサイズも大きくすることもできる。本発明の質量分析装置や加速器は非常に小型のものから、基板を積層したり、基板を横に接続したり、あるいは後に示すモールド型を用いたインゴット基板を使用したりすることによって、超小型サイズから大きなサイズ(分析室高さが1mm以上〜10mm以上〜10cm以上〜20cm以上〜それ以上のもの)のものまで作製できる。
図28は、質量分析室で磁場により力を受けたイオンを多方向に配置したイオン検出装置でイオン検出する質量分析装置を示す図であり、図27(b)で示す質量分析装置の変形とも言える。図28(a)は、質量分析室683−2の入射イオンビーム685の進行方向に対して、直角方向である左右の両側および上方(入射イオンビーム685と同じ方向)の3方向に出口を有する質量分析装置である。右側に向かう質量分析室684(の一部)、イオン選別室683−3およびイオン検出室683−4は図27(a)で示すものと同じである。左側に向かう質量分析室684(の一部)、イオン選別室683−5およびイオン検出室683−6は右側にあるものと、質量分析室683−2に対してほぼ対称となっている。従って、質量分析室683−2は片側だけの場合に比べて広くなっていて、また、磁場発生(印加)部分684も広くなっている。図28(a)では矩形状の磁場印加部分となっていて、引き出し電極・加速室683−1からイオン685が質量分析室へ入射して磁場発生(印加)部分684に入ると垂直方向の力を受けて、イオンが曲がって右側のイオン選別室683−3または左側のイオン選別室683−5へ進み、右側のイオン選別室683−3へ進んだイオン685−1はイオン検出室683−4で、左側のイオン選別室683−5へ進んだイオン685−2はイオン検出室683−6で、イオン検出される。イオン685がプラスイオンとマイナスイオンが入ってきたときには、1つの磁場684で、たとえば、プラスイオンは右側の方へ曲り、マイナスイオンは左側の方へ曲り、プラスイオンもマイナスイオンも同時に分析できる。加速電圧や磁場をスキャンすれば広い範囲のプラスイオンやマイナスイオンを同時に分析できる。また、左右2つのイオン検出市つ683−4および683−6を交互に使うことによって、測定のサイクルタイムを短くすることもできる。たとえば、一度測定したライン(たとえば、左側)は汚れるので、連続して分析するとコンタミ(汚染)する可能性があるので、間にパージ(真空引きやガスパージ)の処理を入れることが望ましいが、左右2つのラインを備えていれば、一方で測定している間に他方はパージ処理を行なうことができる。あるいは、一方が使えなくなった場合でも他方を用いて測定を行なうこともできる。あるいは、中性粒子は直進するので、中性粒子の分析も可能である。
図28(a)では、さらに入射イオン685の進行方向に別室683−7を有する。この別室683−7は、磁場を使わないで直進して来るイオン685を入射させて、別の方式で質量分析を行なうためのものである。たとえば、四重極質量分析室やイオントラップ型質量分析室を備えることができる。適切な速度になるように加速室や加速電極を設けてこれらの四重極質量分析室やイオントラップ型質量分析室へイオンビームを導いても良い。この方式の利点は、同じ試料について、異なる方式を使って測定できることである。従って、より信頼性の高い測定を行なうことができる。さらに、他の開いているスペースを用いて、さらにイオン選別室およびイオン検出室を作ることもできる。本発明の主基板に貫通室(空洞)を形成し、その上下を別基板で付着した質量分析装置は、多数のイオン検出室を同時に同じプロセスで一挙に作製できるので、コストは1つの検出室を備えたものと殆ど変らない。
図28(b)は、このことをさらに発展させ、多数のイオン検出室を有する磁場型質量検出装置を示す図である。引き出し電極・加速室683−1の隣またはイオンビーム685の進行方向に質量分析室683−2があり、質量分析室683−2は、引き出し電極・加速室683−1の出口または質量分析室683−2の入口の中心から広がりを持った空洞を有していて、その広がった空洞は引き出し電極・加速室683−1の一部または全部を取り囲んでいる。引き出し電極・加速室683−1の主基板682の側面(側壁)682−aの(質量分析室683−2への)延長線(一点鎖線で示す)と右側の質量分析室683−2の広がり空間(空洞)のなす最大角度をα1とする。また、引き出し電極・加速室683−1の主基板682の側面(側壁)682−bの(質量分析室683−2への)延長線(一点鎖線で示す)と左側の質量分析室683−2の広がり空間(空洞)のなす最大角度をα2とする。図28(b)では、α1、α2=180度である。図から分かるようにα1かα2のどちらかは0でも良い。すなわち、左右どちらかの片側空間だけでもイオンの質量分析は可能であるが、両方があれば、より正確で信頼性の良い測定ができること、測定のサイクルタイムを短くできること、測定装置の寿命を長く保持できることなどが利点として挙げられる。この実施形態では質量分析室は一繋ぎの空間であり、仕切り(隔壁など)もないが、たとえば右側でイオン検出した後、左側でイオン検出をし、両方が汚れてきたら、まとめて質量分析室およびイオン検出室をクリーニングすることができるので、サイクルタイムを短くでき、また装置寿命を長くすることもできる。
α1、α2は少しの角度があれば磁場による質量分析が可能であるが、イオン検出室の数が少ないこと、掃引可能な磁場が狭くなることなどから、α1、α2は30度以上あることが望ましい。α1、α2は、45度以上あればもっと良く、さらに、90度以上あればかなり良く、120度以上であればさらに良く、150度以上になればもっと良く、180度になれば本発明の能力を最大に利用している。引き出し電極・加速室683−1と質量分析室683−2の間に中央孔690−1を有する基板側壁(隔壁)があり、イオンビーム685はその中央孔690−1を通って質量分析室683−2へ入射する。質量分析室683−2の内部には磁場印加領域684があり、この領域では質量分析室683−2の上下方向(図28(b)の紙面方向)に磁場が印加されていて、入射したイオンビーム685はローレンツ力を受けて軌道を曲げられる。すなわち、m/(ze)=B2R02/2Vを満たすような軌道半径R0を描く。質量分析室683−2の周囲には、イオン検出室が多数配置されている。図28(b)では、周囲が矩形形状であり、右側に683-4-1-1〜683-4-1-n、上側に683-4-2-1〜683-4-2-m、左側に683-4-3-1〜683-4-3-p、下側に683-4-4-1〜683-4-4-qのイオン検出室が配置されており、イオン検出室数は全部でm+n+p+q個ある。たとえば、質量分析室の大きさが50mm×50mm、引き出し電極・加速室683−1の幅(682−a、bの幅を含む)が5mmとすれば、イオン検出室のピッチ(イオン検出室の幅+隔壁687の幅)が0.5mmとして、m=n=p=100、q=90となり、イオン検出室数は全部で390個となる。イオンビームの中に多数のイオン種があっても、1つの磁場および1つの加速電圧でも、それらのイオンはどれかのイオン検出室へ入るので、多数のイオン種の同定を1度に測定できる。さらに磁場や加速電圧をスキャンすることによっても多数のイオン検出室数を用いてその都度検出できるので、より正確で精密な分析ができる。図28(b)では質量分析室の空間(外側形状)を矩形形状としたが、他の形状、たとえば、多角形状、円形状にすることもできる。さらに曲げられたイオンの軌道に対してイオン検出室の入口が垂直になるような形状にすれば、多数のイオンの入射条件が同じとなるので、より正確で精密な分析を行なうことができる。尚、イオン検出室の入口と入射イオンの傾斜角は分かるので、計算で比較することもできる。また、磁場領域684を矩形形状にしているが、円形形状やその他の形状でも良い。このような質量分析室、磁場領域、多数のイオン検出室も同時に一挙に作製できる。しかもLSIプロセス(フォトリソ、エッチング、成膜、基板付着時の合わせ等)を用いているので、極めて正確で精度の高い質量分析装置を作製できる。従って、質量分析の精度は従来の装置に比べて格段に良くなる。さらに装置自体も非常に小さくなるので、真空系も小さくでき、質量分析装置全体のサイズも極めて小さくできる。
上下部基板693、692がガラス基板や石英基板、アルミナ(Al2O3)基板、窒化アルミ(AlN)等の絶縁基板で、その間の基板691がシリコン基板等の半導体基板であるときは、本明細書の種々の所で説明した種々の方法で、空洞(貫通室)を形成し、空洞内部や上下部基板等へ絶縁膜、導電体膜、保護膜等を形成できる。さらに、空洞を形成しないでもコイルを形成できる。たとえば、シリコン基板または絶縁体基板上に絶縁膜および導電体膜を交互に積層し、都度導電体膜配線を円形または多角形型の配線にして、ビアで接続しながら多数巻コイルを作製すれば、高密度に多数の微小(内側径の小さな)コイルを作製できる。その基板を基板モジュール699−1として用いることもできる。また、高透磁率の強磁性体コアをコイルの中心に挿入することにより大きな磁場を発生できる微小コイルを高密度に作製できる。たとえば、その詳細は本発明者が発明した特許出願に記載されていて、それらを本発明のコイルに適用できる。(特願2010−285215)
図29は、質量分析室の別の実施形態である。本実施形態の質量分析装置は、二重収束型であり、電場を発生する電場セクターと磁場を発生する磁場セクターを有する。すなわち、本実施形態は、扇型電場室710および/または扇型磁場室711を有する質量分析室が、主基板701内の貫通室として形成され、それらの上下を上部基板702、および下部基板703が付着し気密空間になっている。図29(a)は、基板面に平行な断面で示す平面図である。扇型電場室710は貫通室704(704−2)が扇型形状となっており、扇型形状となっている左右の主基板701の基板側面に導電体膜707(707−1、2)が形成され、これらの導電体膜電極707(707−1、2)の間に電圧が印加されることによって、イオンビーム709(破線で示す)の軌道が曲げられる。扇型電場室710の貫通室704−2の隣室704−1は、たとえば、図19における引き出し電極・加速室307やイオン化室325であり、その間は、中央孔712−1を有する隔壁(基板側壁)705−1で仕切られていて、イオンビーム709は中央孔712−1を通って扇型電場室710の貫通室704−2へ入射される。対面する2つの導電体膜電極707(707−1、2)を有する主基板701の側面に垂直な断面(A1−A2で示す)を図29(b)に示す。主基板701の上面および下面に上部基板702および下部基板703が付着していて、貫通室704−2があいている。貫通室704−2の側面は主基板701であり、上部基板702および下部基板703に対して略垂直となっている。貫通室704−2の両側面は絶縁膜713が形成され、その上に導電体膜707が積層されている。絶縁膜713および導電体膜707の形成法は本明細書の中で種々説明した方法で形成できる。
たとえば、分割した主基板701を上部基板702または下部基板703に付着した後、貫通室704−2を形成する。このとき貫通室704−2の側面は略垂直となるように形成する。貫通室704−2の内面に絶縁膜713を形成し、さらにその上に導電体膜707を積層する。主基板701が絶縁基板のときは、絶縁膜713は必ずしも形成しなくても良いが、導電体膜707の密着性を向上するために形成しても良い。上部基板702や下部基板703は通常絶縁基板であるから、こちらの方も同様である。導電体膜707は、たとえば、Cu、Al、Au、Ni、Cr、Ti、W、Mo、Fe、Zn、シリサイド、導電性PolySi、導電性C、これらの積層体、これらの合金、または複合膜であり、CVD法、PVD法、メッキ法、電鋳法、これらの組合せで積層する。図29(a)および(b)に示すように、主基板701の側面側の両側にある導電体膜707はエッチング除去するが、全体にわたって形成しておくこともできる。さらに分割して形成することもでき、その場合は、個々の導電体膜電極に電圧を印加できるようにして、それぞれの電圧印加で平行平板電極(湾曲した)間の電界をコントロールして、イオンビームの精密な軌道を制御することもできる。
主基板701を分割して上部基板側および下部基板側と別々に導電体膜707を積層した場合でも、電場室704−2を隔離する基板側壁705−1、2の表面および上部基板702の下面や下部基板703の上面にも導電体膜707は積層するので、フォトリソ法+エッチング法を用いて、主基板701の側面側の必要な電極707−1、2や外側電極716および717と接続するための上部基板702の下面の配線707−3、4および下部基板703の上面の配線707−6などの必要な導電体膜を除去する。その後、導電体膜配線を保護する絶縁膜を積層し、基板接着する面の保護膜等をエッチング除去して、上部基板702側の主基板701と下部基板703側の主基板701を付着させる。(たとえば、一点鎖線718で示す位置で)このとき、上下の導電体膜同士を密着良く接続するために、導電体膜同士の接合部分にさらに導電体膜を積層しておいたり、低融点の金属を付着させて熱処理を加えて接合部分で合金化したりすれば良い。あるいは、導電性材料を分散させた接着剤を用いて、上下の主基板701を付着するときに圧力および熱をかけて上下の導電体膜を接続することもできる。さらに、上下の主基板701の間にガラス基板等を介して陽極静電結合するときに、導電体膜同士が接続する部分において、ガラス基板等の側面はもちろん上下面にも導電体膜を形成しておき、(このときも低融点金属を積層しても良い)この導電体膜の部分を熱圧着するという方法もある。さらに、上下同士を付着した後に、上部基板702または下部基板703に開口部を設けて、そこから選択CVD用の気体を導入し、導電体膜部分だけにW等の金属を積層する方法や、メッキ液を導入し導電体膜部分だけにメッキ金属を積層する方法もある。開口した部分は、真空引き用の開口部に適用しても良いし、低融点ガラス等で開口部を塞ぎ貫通室704−2の真空維持に支障がないようにしておく。本発明では上下部基板に形成した電極(716、717)からそれぞれの主基板701の側面に形成した導電体膜電極707(707−1、2)に個別に電圧を印加できるので、仮に付着面で十分な接続がなされなくても上下の導電体膜電極707−1または707−2の電位を同じにできる。従って、平行平板電極707−1と707−2の電界を一定にできる。尚、この方法は、本発明の全てに適用できる。
上部基板702には上部基板702の下面に形成された導電膜配線707−3、4に接続するコンタクト孔714、このコンタクト孔714に導電膜を形成し、さらにこれと接続する外側電極716−1、2を上部基板702の上面に形成する。同様に、下部基板703には下部基板703の上面に形成された導電膜配線707−5、6に接続するコンタクト孔715、このコンタクト孔715に導電膜を形成し、さらにこれと接続する外側電極717−1、2を下部基板703の下面に形成する。この結果、外側電極716−1または717−1から平行平板電極707−1へ、外側電極716−2または717−2から平行平板電極707−2へ電圧を印加できる。
別の製造方法として、上部基板702または下部基板703に導電体膜配線707−3、4、5、6を形成しておく。一方、主基板701に予め貫通室704−2を形成し、さらに絶縁膜713および導電体膜707−1、2を形成する。導電体膜707−1、2のパターニングも行なう。主基板701を別基板に付着させてからこれらの膜を形成しても良い。この別基板は後に取り離す。また、主基板701を分割して形成しても良い。次に、貫通室704−2および導電体膜パターン707−1、2を形成した主基板701を導電体膜配線707−3〜6を形成した上部基板702または下部基板703にパターン合わせをして付着させる。別基板を使用した場合は別基板を分離する。この方法は、たとえば軟化性接着剤(一定温度以上で剥離可能)または低融点金属等で接着しておけば良い。その後、他方の基板(上部基板702または下部基板703)を付着させる。主基板701を複数に分割した場合は、主基板701同士を順番に付着させて最後または必要な時に上部基板および下部基板を付着させたり、上部基板または下部基板に主基板701を順番に付着させていく。その場合、間にガラス基板等を介しても良く、予めガラス基板等に貫通室および導電体膜パターンの形成も必要である。これらの場合、付着させた基板の貫通室内の導電体膜の接続を確実にするたびにメッキ法や選択CVD法を用いて接続部へ導電体膜の積層するプロセスを入れても良い。この場合は、感光性膜等でパターニングしなくても選択的に導電体膜を形成可能である。導電体膜707をパターニング後、導電体膜707上に保護膜(絶縁膜)を積層することもできる。電極・配線716上に保護膜(絶縁膜)を積層し、必要な場所の窓開けを行なうこともできる。
以上のようにして、平面図で扇型形状であり、垂直方向は基板面にほぼ垂直な形状に形成された主基板701の平行な2つの側面に形成された導電体膜707−1および707−2は間隔kを有する平行平板電極となっている。これらの電極707−1および707−2の間に電圧Vを印加すれば、この平行平板電極間にE=V/kの電界が印加される。イオン709がこの平行平板電極の中央部に進んで来ると、イオンはこの電界Eにより力F=qEを受けて、軌道を曲げられる。(qはイオンの持つ電荷)電界Eは一定なのでこのイオンの軌道は円運動となる。この円軌道の半径をrとすれば、r=mv/(qE)である。mはイオンの質量、vはイオンの速度である。従って、イオンの速度、イオンの質量、電極間電圧、イオンの電荷によって、軌道半径rが異なる。平行平板電極から出るとイオンに対して力はかからないので、直進する。電場室704−2の隣にはイオン振り分け室704−3があり、ここで電場室704−2の中心軌道である半径r0の円軌道を通ってきたイオンが通るように、中央孔712−3を有する基板側壁706が配置されている。
電場室704−2とイオン振り分け室704−3の間は中央孔712−2を有する基板側壁705−2で仕切られており、電場室704−2を出たイオンは中央孔712−2を通ってイオン振り分け室704−3へ入る。電場室704−2の中心軌道である半径r0の円軌道を通ってきたイオンは、基板側壁706の中央孔712−3を通るようになっている。すなわち、電場室704−2の中心軌道である半径r0の円軌道を通ってきたイオン(中心軌道イオン1)が平行平板電極を出るときの方向に基板側壁706の中央孔712−3が配置されている。他の軌道を通るイオンは、基板側壁706の中央孔712−3を通れず、基板側壁706の側壁や主基板701の側面や上部基板または下部基板に衝突する。すなわち、基板側壁706の中央孔712−3の孔のサイズをそのように調整する。イオン振り分け室704−3において、基板側壁706の左側の貫通室を704−3−1、右側の貫通室を704−3−2とすると、左側の貫通室704−3−1では中心軌道イオン1以外のイオンも存在するが、右側の貫通室を704−3−2には中心軌道イオン1のイオンだけが存在する。(もちろん、少しは漏れて別のイオンが入り込む場合もある。)電場室704−2とイオン振り分け室704−3を仕切る基板側壁705−2はなくても良いが、これを設けることにより、ある程度の別イオンもこの基板側壁705−2で遮ることができる。また、電場室704−2とイオン振り分け室704−3を別々に真空引きでき、クリーニングもできる。また、イオン709は中心軌道を通るだけではなく、ある程度の広がりを持っているので、それらのイオンも電場により力を受けて半径r0の円軌道を描くものがあるので、それらのイオン(広がり中心軌道イオン1)も中心軌道イオン1と同種のイオンであるから、その広がり中心軌道イオン1もできるだけ右側の貫通室704−3−2に入るように、基板側壁706の中央孔712−3の位置を取る。たとえば、平行平板の中心軌道半径r0の中心とイオン709の広がる直前の位置とを結ぶ線上に基板側壁706の中央孔712−3が配置されるようにする。また、平行平板電極を90度の扇型形状となるようにして、その扇型形状の電極室704−2に接続するように隣室704−1および704−3を配置する。このような配置により、基板側壁706の中央孔712−3の位置付近に広がり中心軌道イオン1の収束点(静電場の収束点(面))が来るので、殆どの中心軌道イオン1は扇型磁場室704−4へ入れることができる。また、基板側壁705−2の中央孔712−2のサイズは基板側壁706の中央孔712−3のサイズよりも大きく取り、広がり中心軌道イオン1もイオン振り分け室704−3に入れるようにする。
ただし、上記の方法では、ある狭い範囲の運動エネルギーを持つイオン(中心軌道イオン1)を通過させることができて、分解能を高めることはできるが、このスリット(中央孔)により他のイオンの大部分を除去することになるので、イオン検出感度が悪くなる。そこで、この静電場の収束点(面)から少しずらした所にスリット(中央孔)をおいて他のイオンも通すようにすることもできる。このことはスリット(中央孔)のサイズを調節して行なうこともできる。
振り分けられたイオン(中心軌道イオン1)は振り分け室704−3−2へ入りさらにその隣室の扇型磁場室704−4へ入射する。扇型磁場室704−4と振り分け室704−3−2の間には中央孔712−4を有する基板側壁705−3があり、中心軌道イオン1は中央孔712−4を通る。基板側壁705−3はなくても良いが、これを設けることによって、振り分け室704−3−2と扇型磁場室704−4を別々に真空引きでき、それぞれ所定の圧力に設定できる。尚、圧力を測定するには、上部基板または下部基板に開口部を設けて、圧力センサを接続すれば良い。また、クリーニング、パージも別々にできる。温度センサも設置すれば測定器の温度状態を把握できる。
扇型磁場室704−4の上部および/または下部には磁場装置が配置され、基板面に対して垂直方向に扇形磁場708が印加される。磁場室704−4は、横方向において2つの扇型側面に挟まれ、上下方向において上部基板702と下部基板703に挟まれた貫通室である。扇型磁場と言っても扇型形状である必要はなく、扇型磁場室704−4の必要な領域708に垂直方向磁場が一様に印加されていれば良い。この扇型磁場室704−4の構造については既に単独の扇型磁場室である図27に示すものと同様で良い。たとえば、C型電磁石やH型電磁石や窓枠型電磁石、あるいは円筒型電磁石、角柱型電磁石等で扇型磁場室704−4の上部および下部を挟んでも良い。この場合、磁場室704−4の上部または下部に面した側の電磁石表面と対向する側の電磁石表面の極性は逆になっている。本発明の扇型磁場室704−4の厚み(高さ、または縦方向深さ)は、非常に薄く、しかもその厚みのバラツキを非常に小さくできるので、電磁石の強さを小さくでき、その結果として電磁石の大きさを小さくできる。また、扇型磁場室704−4の幅(横方向幅)も非常に小さくでき、しかもそのバラツキを非常に小さくできるので、電磁石の横方向サイズも小さくできる。もちろん、これまで述べたように大きなサイズのものも作製できる。
図29(c)は、磁場室704−4の上下部基板702、703上にコイルを搭載したモジュール基板699−1および699−2を付着させた図で、図29(a)のB1−B2断面を示す図である。この状態は、図27(c)と同様である。モジュール基板699−1のコイル695の上部基板702側のコイル面の極性と、モジュール基板699−2のコイル695の下部基板703側のコイル面の極性は逆である。これはコイルの巻き方や電流の流す向きを変更することによって簡単に設定できる。コイル695の軸は主基板701、上部基板702や下部基板703の基板面に対して垂直方向になるように配置する。すなわち、コイル695の軸はモジュール基板699の上下部基板692、693やコイル内蔵基板691の基板面に対して垂直に配置し、この結果コイル面(コイル配線の巻き線面)はモジュール基板699の上下部基板692、693やコイル内蔵基板691の基板面と平行となるように配置される。そして、モジュール基板699の上下部基板692、693やコイル内蔵基板691の基板面が、磁場室704−4のある主基板701、上下部基板702、703の基板面と平行となるように配置する。この結果、上下コイルで発生した磁場は磁場室704−4の上下方向に磁場が発生し、この磁場室704−4を通るイオン709に対して直角方向に磁場が印加される。
基板側壁705−3の中央孔712−4を通ったイオン709は、磁場室704−4において磁場印加領域708で一様磁場を受けて曲げられて円軌道となり、磁場印加領域708を出ると直進運動をする。磁場室704−4の隣にはイオンドリフト室704−5があり、その後コレクタースリットである基板側壁の中央孔を通ってイオン検出室に入る。磁場室704−4とイオンドリフト室704−5との間には中央孔712−5を有する基板側壁705−4があり、ある程度のイオンを振り分ける。イオンドリフト室704−5ではイオン709は直進運動し、コレクタースリットでイオンが収束するようにコレクタースリットが配置される。このように、静電場と磁場内で速度分散の方向が反対で、かつ分散の幅が等しくなるように、電場室および磁場室、電場領域(平行平板電極が配置される領域)および磁場領域(磁場が印加される領域)、各種貫通室を配置することによって、イオン検出の感度および分解能を高めることができる。場合によってはイオンドリフト室704−5とイオン検出室を兼用することもできる。
図30は、単収束扇型磁場アナライザーおよび二重収束扇型磁場アナライザーの1つの設計指針を示した図である。これらは一般的な指針から導き出されるものではあるが、これらの設計指針は本発明の基板を用いたアナライザーにも適用できる。図30(a)は単収束扇型磁場アナライザーの設計指針を示す図である。主基板内にイオン化室722−1、イオンドリフト室A722−2、磁場アナライザー室722−3、イオンドリフト室B722−4、およびイオン検出室722−5を含んでいる。イオン化室722−1とイオンドリフト室A722−2は中央孔723−1を有する基板側壁721−1で仕切られていて、イオン化室722−1で発生したイオンは基板側壁721−1の中央孔723−1から広がって拡散して進んでいく。基板側壁721−1は引き出し電極も兼ねている場合、ここでイオンは加速して進んでいく。この後に中央孔を有する基板側壁で加速することもできる。イオンの広がりの起点である基板側壁721−1の中央孔723−1の位置をP1としたとき、この点から種々のイオンは加速されて広がる。質量電荷比m/zが同じイオンでも種々の角度を持って進んでいく。たとえば、中央を進んでいくイオン725−1、外側に膨らんで進んでいくイオン725−2(点線で示す)、内側に進んでいくイオン725−3等である。イオンドリフト室A722−2は加速されたイオンが直進して進んでいく領域である。イオンドリフト室A722−2と磁場アナライザー室722−3は中央孔723−2を有する基板側壁721−2で仕切られていて、個別に真空引きやクリーニング、パージができる。基板側壁721−1の中央孔723−1から出たイオンは広がっているので、基板側壁721−2の中央孔723−2のサイズは基板側壁721−1の中央孔723−1のサイズより大きくしてイオンを通り易くする。場合によっては、基板側壁721−2はなくても良い。
磁場アナライザー室722−3には磁場領域724があり、垂直磁場が印加されているので、この領域にイオンが入ると円軌道で進む。所定のイオン725−1の円軌道半径をR0としたとき、m/zが同で広がりを持って磁場領域724に入ったイオン725−2、3もR0の円軌道で進む。磁場領域724を出るとイオンは直進し、隣室イオンドリフト室B722−4に入る。磁場アナライザー室722−3とイオンドリフト室B722−4は中央孔723−3を有する基板側壁721−3で仕切られている。中央孔723−3は広がったイオン725−2、3も通るようなサイズにしておく。m/zが同じ広がったイオン725−1、2、3は収束点P3に集まる。この収束点P3に中央孔723−4を有する基板側壁721−4を配置しておけばm/zが同じ広がったイオン725−1、2、3のみを通すことができる。他のイオンは基板側壁721−4の壁、主基板721の側面、上部基板や下部基板に衝突する。従って、イオンドリフト室B722−4は汚れるので、真空引きを行なうとともに、クリーニングやパージも適宜行なうことが望ましい。そのためにイオンドリフト室B722−4の上部基板や下部基板に開口部を設けて、その開口部を通じて行なう。
イオンドリフト室B722−4の汚れを問題にしなければ、基板側壁721−3はなくすこともできる。イオンドリフト室B722−4の隣にはイオン検出室722−5があり、イオンドリフト室B722−4とイオン検出室722−5は中央孔723−5を有する基板側壁721−5で仕切られているが、収束点P3を通ったイオンは再び広がっていくのでそれらのイオンを遮らないように中央孔723−5のサイズを調整する必要がある。場合によっては、基板側壁721−5をなくし、収束点P3付近に配置される基板側壁721−4を出た直後にイオン検出室を配置しても良い。この基板側壁721−4はコレクタースリットと呼んでも良い。磁場領域724内の磁場アナライザー室722−3の中央付近を通る中央軌道イオン725−1の円軌道半径R0の中心点をP2としたとき、イオンの広がり起点P1とP2、収束点P3は一直線上(m上)にあるので、そのように各貫通室を配置していけば良い。また、扇型磁場領域724は、P2を中心にして中心角αを持つように配置する。このαは30度〜180度で任意に設計できるが、図30ではα=90度として記載している。このときは、イオンドリフト室Aとイオンドリフト室Bは90度の角度をなすように配置される。扇型磁場領域724ではイオンは円軌道を描き、前述した様に、mv/R0=Bzev、ここで、1/2mv=zeV(Vは加速電圧)を満足するように各室を設計すれば良い。前述した様に、各室の幅は、100μm〜1mm〜20mm、あるいはそれ以上にすることもできる。また、各室の高さは主基板の厚みで決まり、100μm〜1mm〜20mm、あるいはそれ以上にすることができる。基板側壁の厚みも10μm〜100μm〜1mm、あるいはそれ以上に適宜設定できる。中央孔のサイズも10μm〜100μm〜1mm〜10mm、あるいはそれ以上に設定できる。各室の長さはイオンの速度に応じて設定すれば良い。主基板としてSiウエハを用いる場合、現在の最大Siウエハは単結晶で450mmであるが、本発明では多結晶やアモルファスも使用できるので、1000mm四方のSiウエハ(基板)も使用できるので、このサイズに合わせて全体を構成すれば良い。さらに、本発明は縦方向に貼り合わせて作製できるので、所望の厚みのものを作製できるが、横方向についても貼り合わせ技術を用いることによって大きなサイズの質量分析装置を作ることができる。たとえば、各室を別々に作りそれらを横方向につなげていけば良い。さらに各室を分割してそれらをつなげていくことも可能であるから、所望の大きなサイズの質量分析装置を作製できる。これも本発明の他のものにも言えることだが、各室を分割して接続するシステムなら、各室を取り替えることも比較的容易にできる。たとえば、不具合のでた貫通室を交換したり、もっと性能の良い貫通室や異なる性能を持つ貫通室に交換することもできる。その場合、接続部に低融点合金や樹脂やプラスチックを用いて接着しておけば、交換も容易である。あるいは、接続部は付着せずに接続部から少し離れた外側の基板の所で別部材で押さえたり付着して接続部を別部材で囲んでおけば気密性も確保でき交換も容易である。あるいは、その外側の基板の所で別部材とシール材を挟んで気密性を確保することもできる。たとえば、電場室と磁場室を交換したりすることも可能となる。
図30(b)は、静電場アナライザーおよび磁場アナライザーを有する二重収束扇型アナライザーの設計指針を示す図である。この二重収束扇型アナライザーも主基板731内に形成されイオンビームが通る領域は主基板731内に形成された貫通室であり、それらの貫通室において、上部が上部基板で、下部が下部基板が主基板に付着しており、各貫通室は上部基板および/または下部基板に備わる開口部を通して真空引きされ、所定の圧力に設定される。各貫通室は中央孔を有する基板隔壁で仕切られ、イオンビームはその基板隔壁の中央孔を通り各貫通室に入射する。図30(b)に示す質量分析装置は、イオン源を含むイオン化室732−1、イオンドリフト室A732−2、静電場アナライザー室732−3、イオンドリフト室B732−4、磁場アナライザー室732−5、イオンドリフト室C732−6、イオン検出室732−7を含み、これらの各貫通室の間に中央孔733−1を有する基板隔壁731−1、中央孔733−2を有する基板隔壁731−2、中央孔733−3を有する基板隔壁731−3、中央孔733−4を有する基板隔壁731−4、中央孔733−5を有する基板隔壁731−5、中央孔733−6を有する基板隔壁731−6、中央孔733−7を有する基板隔壁731−7が配置され、各貫通室を仕切っている。イオンはイオン化室732−1で発生し、加速電極を兼ねた基板側壁731−1の中央孔733−1から加速されて広がる。この起点P1ではイオンは収束しているが、イオンドリフト室A732−2でイオンは広がり、基板側壁731−2の中央孔733−2を通って、静電場アナライザー室732−3へ入射する。静電場アナライザー室732−3では、中心が半径r0の扇型形状をした平行な貫通室側面に形成された平行平板電極734−1および734−2による電界によりイオンは円運動をする。その運動方程式はmv/r=zeEである。(中心を通るイオンではmv/r0=zeE)である。)起点P1にある中央孔733−1から出たイオンは広がりを持って進んでいき、静電場アナライザー室でそれぞれの運動エネルギーに応じて円軌道を取る。同じ運動エネルギーを持つイオンは同じ円軌道半径を有する。静電場アナライザー室732−3で軌道を曲げられたイオンは基板側壁731−3の中央孔733−3を通り隣室のイオンドリフト室B732−4へ入る。
中心を通るイオン736−1と同じ運動エネルギーを持つイオンは、平行平板電極の曲率中心点P2としたとき、P1とP2を結ぶ線mと中心を通るイオン軌道736−1と交わる点P3に収束する。この収束点P3に収束スリットを設けて収束したイオンだけを通すようにすれば分解能を高くすることはできるが、同じm/zを有するイオン(736−4、5)も除去することになるので、イオン検出感度は低下してしまう。たとえば、基板側壁731−4の中央孔733−4を狭めて収束点P3に配置すれば、広がったイオン736−4や736−5も除去される。そこで、イオンドリフト室B732−4の中にある基板側壁731−4の位置をP3点よりも後方側に配置し、その中央孔733−4も広げておくことによって、広がったイオン736−4や736−5や収束したイオン736−1、2,3を通すことができる。基板側壁を備えておけば独自に真空引きやパージ、クリーニングができるが、イオンを通過させる目的では、省略することもできる。広がったイオン736−1〜5は基板側壁731−5の中央孔733−5を通って磁場アナライザー室へ入射し磁場領域735で磁場によるローレンツ力を受けて円運動する。中心軌道を円運動するイオンの軌道半径をR0とすれば、mv2/R0=zevBが成り立つ。同じm/zを持ち広がりを持ったイオン736−1〜5は同じ半径R0の円軌道を描き、磁場領域735から出ると収束点P4で収束する。その収束点P4にコレクタースリットとなる中央孔733−7を有する基板側壁731−7を配置すれば、その中央孔733−7を通るイオンは同じm/zを持つイオンとなる。磁場アナライザー室732−5の隣室732−6はイオンドリフト室Cで、特定のm/zを有するイオンの収束点までイオンは等速運動する。コレクタースリットである中央孔733−7を通れなかったイオンは基板側壁731−7の壁や主基板731の側面等に衝突する。これらによって生じた気体や粉末等はイオンドリフト室Cにある真空引きラインで排出されたり、クリーニング時やパージ時に外部へ排出される。コレクタースリットである中央孔733−7を通ったイオンはイオン検出室732−7へ入りイオン検出器で測定される。
扇型形状の平行平板型電極の中心角αは通常90度にすると設計しやすい。すなわち、イオンドリフト室A732−2とイオンドリフト室B732−4を90度になるように設計すれば良い。しかし、これに特定することなく、αは30度〜120度の範囲内で設定すれば良い。また、扇型形状の磁場領域735の中心角βも30度〜180度の範囲内で設計すれば良い。本発明はマスク投影で種々のサイズや形状で簡単に作製可能であるが、主基板の大きさに依存するので、最適なレイアウトをすれば良い。イオン検出室732−7の大きさも自由に設定できるので、イオン検出器を複数並べることもできる。(アレイ検出器等)この二重収束型アナライザーは、磁場の前に電場があるタイプ(Nier−Jhonson型)であるが、これと逆に磁場を電場の前においても良い。あるいは磁場を2つ並べて配置することも簡単にできる。しかも一括して作製できるのでコストアップは殆どない。さらに四重極アナライザーやイオントラップ型や飛行時間型(TOF)やFTICR(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型)との組み合わせも自由にできる。
本発明はFTICR(Fourier transform−ion cyclotron resonance、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴)にも適用できる。図31は、本発明のFTICRを示す図である。図31(a)は基板面に対して垂直な方向のイオンの進行方向(磁場方向)の断面図である。図31(b)は基板面に対して垂直な方向のイオンの進行方向(磁場方向)と垂直方向の断面図である。主基板751内にイオン源室754−1、ICR室754−2が形成される。これらの貫通室の上部および下部は主基板751に上部基板752および下部基板753が付着している。イオン源室754−1およびICR室754−2の間に中央孔765を有する基板側壁751−1があり、イオン化室で発生したイオン750−1は引き出し電極を兼ねる基板側壁751−1の中央孔765を通ってICR(イオンサイクロトロン共鳴)室754−2へ導入される。ICR室754−2は、イオンの進行方向に対して基板側壁751−1(中央孔765を有する)およびこれと対向する主基板の側面751−2で囲まれ、側面側は主基板751の基板側壁751−4(中央孔等はあいていない閉じた側面)と主基板751の基板側壁751−5(中央孔等はあいていない閉じた側面)とで囲まれ、上下側は上部基板752および下部基板753に囲まれている。
ICR室754−2内では、対向トラップ電極A755−1、3(基板側壁751−1上に形成された導電体膜755−1、3)}およびトラップ電極B756−1(基板側壁751−2上に形成された導電体膜756−1)、対向イオン励起電極A758上部基板752上に形成された電極758)およびイオン励起電極B757(下部基板753上に形成された電極757)、レシーバー電極A756−2(基板側壁751−4上に形成された導電体膜756−2)、レシーバー電極B756−3(基板側壁751−5上に形成された導電体膜756−3)が形成されている。主基板の側面751−2、4、5、および基板側壁751−1は主基板751の基板面、上部基板752の基板面、下部基板753の基板面に対してほぼ垂直な主基板側面である。従って、対向するトラップ電極A、Bや対向するレシーバー電極A、Bや対向するイオン励起電極A,Bはそれぞれ平行平板電極となっている。各導電体膜電極には内部配線759(759−1、2)や764(764−1、2)を通して、あるいは直接にコンタクト孔760や761を通して外側電極762(762−1、2、3)や763(763−1、2、3)に接続し、外部から電圧をかけたり、あるいは内部で発生した電流や電圧を検出することができる。
イオン源室754−1から基板側壁751−1の中央孔765を通して進入したイオン750−1は、対向するトラップ電極AおよびB間に印加したDC電圧によりイオン750−1はトラップ電極A755−1、3からトラップ電極B756−1の方へ進む。磁場Bがトラップ電極AおよびBに対して垂直方向に印加されており、また対向するイオン励起電極A758およびイオン励起電極B757の間に印加される高周波電圧(振動数ω)によって、ICR室754−2内でイオン750−1はサイクロトロン運動をし、コヒーレントなイオン集団を形成する。このとき、ω=k×(zeB/m)が成り立つ。このイオンサイクロトロン(ICR)運動によって、イオン量検出用のレシーバー電極A756−2およびレシーバー電極B756−3の間に誘起電流を生じる。この誘起電流の各成分の振動数はICRの振動数ωと同じで、すなわちイオンの質量mに関係する。この誘起電流を時間に対応するシグナルとして検出し、ぞの信号を増幅しデジタル化して、フーリエ変換することによって、振動数に対するスペクトルへ変換する。本発明のFTICRは非常に小さなサイズであるから、外部磁場Bも小さくて済み、電磁石も小さなもので済む。さらに超伝導磁石を用いる場合でもサイズが小さいので超低温に冷却する体積を小さくできる。また小さなサイズのコイルの内部に配置することも簡単にできる。
次に、図31に示すタイプのFT−ICR型質量分析装置のプロセスについて説明する。主基板751を分割して中央孔765についてフォトリソ法およびエッチング法を用いて中央孔765を形成する。次に主基板751に、除去すべき部分を窓開けして貫通孔754(754−1、2)を形成する。この貫通孔754(754−1、2)はボッシュ法等やDRIE法等を用いて垂直エッチングを行なう。主基板751がSi等の半導体基板または導電体基板の場合はショートしないように、基板側壁751−1の周囲表面、主基板751の側面(751−2、3、4、5)に絶縁膜(記載せず)を形成後導電体膜755、756を積層し、所定のパターニングをして導電体膜電極・配線755−1、756−1、2、3等を形成する。感光性膜の形成は感光性シートの付着や塗布法、あるいは電着法を用い、露光は斜め露光法、斜め回転露光法、あるいは焦点深度の大きい露光法等で行なうことができる。エッチングはウエットエッチやドライエッチングで導電体膜をパターニングできる。上部基板752に予め導電体膜電極パターン758、759(759−1、2)等を形成しておき、また下部基板753に予め導電体膜電極パターン757、764(764−1、2)等を形成しておき、分割した主基板751を上部基板752および下部基板753に付着させる。このとき、主基板751には貫通孔754や導電体膜パターンが形成されているので、それらのパターンに合うように、上部基板752および下部基板753のパターンを合わせる。接着剤を用いて付着させることもできるし、拡散接合、高温接合や常温接合を用いることもできる。主基板751がSi等の半導体基板や導電体基板であり、上部基板および下部基板がガラス基板や石英基板、サファイヤ、アルミナ基板等である場合は静電陽極接合を使うこともできる。
次に、上部基板および下部基板の導電体膜パターンと主基板側の導電体膜パターンとの接続を確実に行なうために、この後導電体膜の積層を行ない、再度パターニングして特に接続部に導電体膜を形成しても良いし、あるいはメッキ法や選択CVD法等の選択導電体膜形成法を用いて導電体膜パターンのみに導電体膜を積層しても良く、この場合は再度のパターニングは不要である。導電体膜パターンの形成後保護膜として絶縁膜を形成することもできる。次に分割した主基板751同士を付着させる。特に基板側壁751−1と3、751−2、4、5同士をアライメントして貫通孔754(754−1、2)を一致させる。この付着も前述の方法を使用できる。主基板751がSi等の半導体基板や導電体基板であるときは、ガラス基板等を間に介在すれば静電陽極接合を使うこともできる。
このときは、間に挟むガラス基板等も貫通孔等の部分を予め形成しておき、パターニング合わせをしながら付着させる。これらを何回か繰り返せば、所定の深さ(高さ)を有する貫通孔を形成できる。その後、上部基板752および下部基板753にコンタクト孔760、761を形成し、コンタクト孔内へ導電体膜を積層し(メッキ法、CVD法、PVD法、選択CVD法、導電体膜ペーストの塗布法等を用いて積層できる)する。次に、上部基板752および下部基板753のコンタクト孔760、761部分や所定の場所に電極・配線762(762−1、2,3等)、763(763−1、2,3等)を形成する。この後、保護膜等を形成し窓開けしても良い。この結果、電極762−1、763−2はトラップ電極755、756−1へ接続し、電極762−2、763−1はイオン励起電極758、757へ接続し、電極762−3、763−3はレシーバー電極756−2、756−3へ接続する。尚、磁場Bはトラップ電極755、756−1に対して垂直に印加し、イオン励起電極758、757とレシーバー電極756−2、756−3は互いに交換することもできる。
上記のプロセスでは、主基板751に中央孔765の形成、貫通孔754の形成は主基板単独で形成しているかのように記載している。特に貫通孔754の形成や導電体膜の形成は下地を考慮することがないのでエッチングが簡単である(オーバーエッチングや下地への積層を考慮する必要がない)。しかし、主基板751に下地基板を付着させてから、中央孔や貫通孔や膜積層やパターニングを行なうこともできる。この場合は、下地基板は上部基板や下部基板を付着させてから取り外す。同様に、主基板751に上部基板や下部基板を付着させてから中央孔や貫通孔や膜積層やパターニングを行なうこともできる。この場合は、上部基板や下部基板を取り外す必要はない。また、上部基板や下部基板に予め形成している導電体膜電極・配線パターン757、758、759、764を形成せずに、上部基板や下部基板を主基板に付着させて、その後貫通孔を形成し、絶縁膜、導電体膜を形成するが、この導電体膜は上部基板や下部基板にも形成できるので、これを導電体膜電極・配線パターン757、758、759、764とすることができる。あるいは、主基板単独を用いて、導電体膜電極・配線パターン757、758、759、764が配置される部分の主基板の部分に凹部を形成し、その主基板の凹部に導電体膜電極・配線パターン757、758、759、764を形成した上部基板、下部基板を合わせて主基板に付着させて、その後で貫通孔形成、絶縁膜、導電体膜形成を行なうこともできる。この場合は、主基板側の導電体膜形成時に上部基板、下部基板の導電体膜電極・配線パターン757、758、759、764との接続が行なわれる。このような予め上部基板、下部基板に導電体膜電極・配線パターン757、758、759、764を形成する方法は、導電体膜電極・配線パターン757、758、759、764を厚く強固な膜を形成できるので、高周波電圧が印加されるイオン励起電極としての信頼性を高めることができる。
図32は、ICR室のサイズを大きくする場合の構造を示す図である。これは他の質量分析装置の種々の貫通室のサイズを大きくする場合にも適用できる。第1の主基板751に貫通室754−1、754−2、中央孔765(765−1)を有する基板側壁(隔壁)751−1等を形成する。ICR室となる貫通室754−2の上面にある上部基板752、下部にある下部基板753は除去する。この除去は主基板751に上部基板752や下部基板753を付着する前にくり抜いても良いし、付着した後にくり抜くこともできる。この上部基板752や下部基板753のICR室に対応する部分のエッチングは垂直エッチングが望ましい。また、上部基板752および下部基板753をくり抜いた部分の側面には導電体膜767(767−1、2、3、4)、768(768−1,2、3,4)を積層する。これらが半導体基板や導電体膜である場合にはショートを防止するために絶縁膜を形成し、その後導電体膜を形成する。上部基板752および下部基板753の表面にも導電体膜が形成される場合には、フォトリソ法およびエッチング法を用いて表面の導電体膜は除去し繰り抜いた部分の側面にのみ導電体膜を形成することが望ましい。
上部基板752および下部基板753を主基板751に付着させてから上部基板752および下部基板753をくり抜く場合、主基板751の貫通孔754を形成した後、貫通孔754をマスク(窓)として上部基板752および下部基板753をエッチングすることができる。その後、絶縁膜、導電体膜を形成し、必要なパターニングをすることによって、上部基板752および下部基板753をくり抜いた部分の側面には導電体膜767(767−1、2、3、4)、768(768−1,2、3,4)のパターンを形成することができる。このとき、主基板751の貫通孔754−2の周囲の側面にも導電体膜は形成される。必要ならメッキ法や選択CVD法を用いて、特に接続部に導電体膜を厚く形成しても良い。この後、順次第2下部基板773を第1の上部基板752へ付着し、繰り抜いた部分からその下の第2下部基板773をエッチング除去し、さらに第2の主基板771を付着させて、繰り抜いた部分からその下の第2主基板771をエッチング除去し、貫通室779を形成し、さらにその貫通室の側面に導電体膜774(774−1、2、3,4)を形成する。次に、既に導電体膜776(776−1、2、3、4、5)のパターンを形成した第2の上部基板772を付着させて、導電体膜の接続部分は必要ならメッキ法、選択CVD法等を用いて導電体膜で接続を確実にする。その後、貫通室内部の導電体膜上に保護膜を被せても良い。また、第2の上部基板にコンタクト孔777、その中に導電体膜を形成し、さらに導電体膜電極・配線パターン778(778−1、2、3、5)を形成する。第2の主基板771の貫通室779の内面に導電体膜を積層する前に第2の上部基板772を付着させて、その後導電体膜を積層し、導電体膜パターン774(774−1,2、3、4)および導電体膜776(776−1、2、3、4、5)のパターンを形成しても良い。
分割した主基板751側も同様のプロセスで順次付着と膜形成およびパターン形成を行ない、第3の上部基板782の付着、その後の上部基板782のくり抜きエッチング、さらに第3の主基板781の付着、貫通室789野形成、その後の膜形成およびパターン形成、第3の下部基板783の付着、その後の膜形成、パターニング等のプロセスを経て形成した、下側のICR室を形成する。このような2つの上側ICRと下側ICRを付着させて、図31に示すFT−ICR質量分析装置を作製できる。
上記は、順次基板を付着させたが、各基板で別々に貫通室を作製し、それらを付着させても作製できる。第2の主基板771内に貫通室779を形成して第2の下部基板773を第2の主基板771に付着し、第2の下部基板773もくり抜いておく。また第2の上部基板772もそれらに付着する。導電体膜774(774−1、2、3、4)、導電体膜775(775−1、2、3、4)、導電体膜776(776−1、2、3、4、5)も形成する。この形成方法は第1主基板751、第1上部基板752、第1下部基板753で行なった方法と同様である。尚、第2上部基板772のコンタクト孔777やその中の導電体膜形成、電極・配線パターン778(778−1、2、3、4、5)は予め形成しておき、その第2上部基板772を第2主基板771に付着させても良い。このような貫通室754をくり抜き、その内面に導電体膜パターンを形成した第1主基板(または、その分割した上側)の上側の上部基板(第1上部基板)752を、同じく貫通室779をくり抜いた第2主基板771の第2下部基板773に付着させる。付着には接着剤や常温接合法、拡散接合法、高温接合法等を使用することができる。第1上部基板752がガラス基板や石英等の絶縁体基板であり、第2下部基板773がSi基板等の半導体基板や導電体基板であるときは静電陽極接合で付着することもできる。あるいは、第2主基板771がSi基板等の半導体基板や導電体基板であるときは、第2下部基板773を用いずに、第1上部基板752に第2主基板771を付着させて、静電陽極接合で付着することもできる。保護膜を用いているときには接続する部分の導電体膜上の保護膜は除去しておく。導電体膜の接続部、たとえば導電体膜767と導電体膜775の接続部において、接続領域のサイズを大きくしたり導電体膜を厚く接続したりして接触面積を大きくするほかに、メッキ法や選択CVD法、あるいはさらなる導電体膜の積層とパターニングを行なうこともできる。さらに融点付近の熱処理を行ない融着する方法や、低融点合金(半田等)をメッキ法や選択CVD法、あるいはその低融点合金(半田等)を積層して、導電体膜パターンの部分を再度パターニングして低融点合金を付着させて、熱処理を行ない導電体膜同士の接合を低融点合金で補助するという方法もある。
同様に、第3の主基板781内に貫通室789を形成して第3の上部基板782を第3の主基板781に付着し、第3の上部基板782もくり抜いておく。また第3の下部基板783もそれらに付着する。導電体膜784(784−1、2、3、4)、導電体膜785(785−1、2、3、4)、導電体膜786(786−1)も形成する。この形成方法は第1主基板751、第1上部基板752、第1下部基板753で行なった方法と同様である。尚、第3下部基板783のコンタクト孔787やその中の導電体膜形成、電極・配線パターン788(788−1)は予め形成しておき、その第3下部基板783を第3主基板781に付着させても良い。このような貫通室754をくり抜き、その内面に導電体膜パターンを形成した第1主基板(または、その分割した下側)の下側の下部基板(第1下部基板)753を、同じく貫通室789をくり抜いた第3主基板781の第3上部基板782に付着させる。その付着法も同様であり導電体膜同士の接続も同様である。さらに付けくわえれば、導電性接着剤と絶縁性接着剤の両方を用いて、導電体膜の接続する部分には導電性接着剤を用い、他の部分には絶縁性の接着剤を用いることもできる。これらは、パターニングして別々に付着できる。あるいは、導電体膜の接続する部分に低融点合金等を付着して、他の部分に絶縁性接着剤を用いて接着することもできる。あるいは、導電体膜の部分に導電性接着剤や低融点半田合金を付着し他の接着部分は常温接合、拡散接合、高温接合、静電陽極接合を等を用いることもできる。
次に上部側と下部側を付着させる。主基板751、771、781がSi基板等の半導体基板や導電体基板であり、可視光に透過率が低くても、第1〜第3上部基板や第1〜第3基板がガラス基板等の可視光に透過率が高い材料であれば、貫通室769(754−2、779、789をまとめて769)が空いているので、正確なマスク合わせが可能であるから、バラツキを最小限にして各貫通室754−2、779、789やその内面に付着した導電体膜同士を付着することができる。付着後に熱処理やメッキ法、選択CVD法等を行なって、導電体膜同士の接続も確実に行なうことができる。可視光を使えない場合は、赤外線、紫外線等を使って合わせることもできる。ICR室769を所定の低圧力にするために、第2上部基板772や第3下部基板783に真空引き用の開口部を設けて真空ポンプに接続できる。内部をクリーニングしたり、パージしたりするための開口部も設けることができる。イオン源室754−1が大気圧であったり、比較的高い圧力である場合は、イオン源室754−1とICR室769の間に中間室を必要な数だけ設けて、それらの各室を段階的に圧力を下げていき、ICRを所望の低圧にすることもできる。その場合、イオン源から出るイオンを加速する加速電極または引き出し電極(中央孔を有しても良い)を設けることもできるし、圧力差で引き出すこともできる。以上のようにして、イオン源室754−1、イオン導入孔765、広いICR室769を有するFT=ICR質量分析装置が完成する。
ICR室769において、導電体膜電極755(755−1、3)、756(1、3、4)、767(1、2、3,4)、775(1、2、3、4)、774(1、2、3,4)、776(2、3、4、5)、768(1、2、3,4)、785(1、2、3,4)、784(1、2、3,4)、等はそれぞれ接続して、トラップ電極778(778−2、3)、レシーバー電極778(778−4、5)となる。また、導電体膜電極776(776−1)および786(786−1)はイオン励起電極(電源)778(778−1)および788(788−1)となる。本発明の基板を用いたFT−ICRでは、二次元(平面)方向は基板面と同じサイズまで大きくできるが、高さ方向は、基板厚さで制限される。たとえば、主基板がSi基板である場合、Si基板の厚みは1mm程度が普通に使用される最大の厚さであるから、高さは最大1mmとなるが、図32に示す構造や方式を用いて付着層を重ねていけば所望の高さのICR室を持つものを作製できる。(尚、Siウエハの場合、厚みも任意のものを使用できるので、たとえば、1cm〜10cmの厚みのウエハも作製することができるので、何層も重ねることもなく、かなり高さのあるものでも作製できる。)たとえば、第1主基板751の厚みをh4、第1上部基板752の厚みをh3、第1下部基板753の厚みをh5、第2主基板771の厚みをh1、第2上部基板772の厚みをh8、第2下部基板773の厚みをh2、第3主基板781の厚みをh7、第3上部基板782の厚みをh6、第3下部基板763の厚みをh9とすると、全体厚みはh1〜h9までの和となり、ICR室769の高さはh1〜h7までの和となる。たとえば、h1=h4=h7=1mm、h2=h3=h5=h6=h8=h9=0.2mmとすれば、全体厚みは4.2mm、ICR室769の高さは3.8mmとなる。h1=h4=h7=3mm、h2=h3=h5=h6=h8=h9=0.5mmとすれば、全体厚みは12.0mm、ICR室769の高さは11.0mmとなる。尚、かなり高さのある貫通室は後に示すモールド型を用いた基板インゴット法で一挙に作製することもできる。
磁場Bは、トラップ電極A755からトラップ電極756の方向へ向いている。このような磁場Bを生じるために、本発明では2つの方法がある。1つは、ICR室754−2のトラップ電極の外側の一方にN極、他方にS極の電磁石または永久磁石を配置する。これにより、トラップ電極A755からトラップ電極756の方向、あるいは励起電極757および758とへ磁場Bが生じる。もう一つの方法は、ICR室754−2をコイルの内側に配置し、コイルの軸方向をトラップ電極A755からトラップ電極756の方向と一致させて配置する。図33は本発明のコイルを配置したFTICRである。図33(a)は、ICR室を荷電粒子の進行方向と平行に見た図であり、図33(b)は、ICR室の荷電粒子の進行方向から見た断面図である。図31に示したFTICR装置のICR室の外側の周囲をコイルで巻いている。すなあち、が上部基板752上に形成され、そのコイル配線766(766−1)に接続する上部基板752内コンタクト配線(コイル配線)766−3が形成され、このコイル配線766−3に接続する主基板内コイル配線766−4が形成され、このコイル配線766−4に接続する下部基板753内コンタクト配線(コイル配線)766−5が形成され、さらにコイル配線766−5に接続するコイル配線766(766−2)が下部基板753の下面に形成される。このようにして、コイル配線766がスパイラル状にICR室の周囲を取り巻く。
コイル配線766−1、766−2は、電極762、763と一緒に形成できる。たとえば、上部基板752や下部基板753が絶縁体である場合は、その上に直接に、上部基板752や下部基板753が絶縁体以外である場合は、その上にSiO2膜やSiN膜やSiNO膜等の絶縁膜を形成後に、導電体膜を積層しパターニングする。導電体膜は、CVD法やPVD法、メッキ法、スキージ法、スクリーン印刷法、これらの組合せ法で形成する。コンタクト配線(コイル配線)766−3、766−5は、コンタクト孔配線760、761と同時に形成できる。たとえば、上部基板752や下部基板753にコンタクト孔を形成した後、上部基板752や下部基板753が絶縁体である場合は、その上に直接に、上部基板752や下部基板753が絶縁体以外である場合は、その上にSiO2膜やSiN膜等の絶縁膜を形成後に、導電体膜を積層しパターニングする。導電体膜は、CVD法やPVD法、メッキ法、スキージ法、スクリーン印刷法、これらの組合せ法で形成する。たとえば、PVD法で、50nm~5000nm積層した後、コンタクト孔の内部だけに感光性膜を形成した後、全面エッチング(異方性ドライエッチング)し、さらにコンタクト内の感光性膜をリムーブした後に、メッキ法でコンタクト内だけにメッキ膜を形成する。これによりコンタクト内コイル配線を形成できる。あるいは、コンタクト孔形成後に、導電体膜を積層し、さらに全面メッキすることによってもコンタクト内コイル配線を形成できる。このとき、上部基板752や下部基板753上にも形成されるが、この導電体膜はコイル配線766−1、2として使用することもできる。
あるいは、コンタクト孔を形成後導電体膜を厚く形成する。たとえば、コンタクト孔が200μmであるとき、100μm以上の厚みで積層すればコンタクト孔内がほぼ充填される。上部基板752や下部基板753上にも形成されるが、この導電体膜はコイル配線766−1、2として使用することもできる。あるいは、コンタクト孔を形成後、導電体膜を積層し、さらにスキージ法によってコンタクト孔内を導電体膜(ペースト)で充填できる。このとき、上部基板752や下部基板753との間にギャップを設ければ、上部基板752や下部基板753上にも同時に配線を形成できる。尚、コイル配線766−1、2により、電極762、763がその場所に形成できない場合は、図33に示すように、コイル配線766−1、2の外側に形成すれば良い。コンタクト配線760、761もその場所に形成できない場合は、コイル配線766−1、2の外側に形成すれば良い。そのために、ICR室内の電極配線758、757、759、764等は、ある程度引きまわしをすれば良いだけである。主基板内のコイル配線766−4も同様の方法で形成できる。
図34は、図33とは異なる本発明のコイルを配置したFTICRである。図34では、上部基板752上に支柱791(791−1、2)を介在して第2上部基板792を付着させ、下部基板753上に支柱793(793−1、2)を介在して第2下部基板793を付着させ、その後、FTICR装置を基板から切断して、ICR室の周囲をコイル配線795で取り巻いたものである。電極762、763は、コイル795の配置状態に拘わらず、支柱791、793および第2上部基板792、第2下部基板794により囲まれた空間796、797の中に形成できるので、自由に配置できるとともに、空間796、797を密閉状態にもできるので、外部環境にさらされない。また、コイル配線795は、市販されている配線を使用できるので、配線サイズを任意に設定できるし、流す電流も自由に選択できる。また、コイル配線795を絶縁性膜で覆えば、コイル配線795と接触する上部基板752、下部基板753、主基板751、支柱791、793、第2上部基板792、第2下部基板794が絶縁体でない、導電体や半導体であっても、絶縁体膜で被覆しなくても良い。上部基板752への支柱791の付着は、種々の方法で可能である。たとえば、上部基板752へ支柱791となる基板を付着させてから、空間796となる貫通孔を形成する方法がある。上部基板752へ支柱791となる基板を付着するとき、電極762の部分は凸となっているので、支柱791となる基板に予めこの部分に凹部を形成してから付着すれば良い。空間796を形成してから第2上部基板792を付着する。
あるいは、第2上部基板792に支柱791となる基板を付着してから、空間796となる貫通孔を形成し、その後、アライメントしながら第2上部基板792に付着した支柱791を上部基板752に付着する。あるいは、支柱791となる基板に空間796となる貫通孔を形成し、上部基板752および第2上部基板792に支柱791を付着させる。下部基板753側も同様に、支柱793および第2下部基板794を付着させる。また、ICR室等を低圧にするために、パージしたりクリーニングしたりするために、上部基板752、下部基板753、第2上部基板792、第1上部基板794に開口部を設ける。さらに、電極762、763を引き伸ばして外側から電圧を印加できるようにする。その後、FTICR装置を単位毎に作製するために基板を切断する。基板切断は、ダイシング法、ワイヤソー法、レーザーカッティング法等で行なうことができる。スクライブラインの部分は、工程ごとに基板を削って薄くしておけば、最後のダイニング時に簡単に切断できる。その後、必要なら、装置の外側に絶縁膜等を形成し、コイル配線795をICR室に巻いていく。必要な磁場を得るために、コイル配線の直径、コイルの材質、巻き数、多重巻きなどを選択する。本発明のICR装置は非常に小さいので、コイルの材質を超伝導体で作製することもできる。装置自体を入れる液体He等の入った容器の大きさも小さくできるので、ランニングコストおよび製作コストも非常に安価にできる。超伝導体として、Nb系、Mg系等の金属超伝導体、銅系酸化物等の高温超電導物質、鉄系超伝導体を使用できる。
尚、図33に示す構造の場合にも、図34と同様に、FTICR装置を作製した後に、電極762および763を外して、ICR室を取り囲むようにコイル配線を巻くこともできる。ICR室が10mm×40mmで、全体装置の大きさが15mm×60mmであれば、6インチウエハ(150mm直径)から、12個取れる。材料+製造コストが24万円であれば、1個の価格は2万円となり、従来品は240万円以上なので、サイズもコストも1/100になる。図33および図34では、コイル配線を基板に巻き付けたが、図31に示すようなICR装置が内部に入れるようなコイルを作製し、そのコイルの中にコイル軸とICR室の方向が揃うように配置しても良い。ただし、このときはコイル配線とICR装置は密着せず、場合によってはコイル配線はICR装置から離れているので、コイルも含む全体の大きさは、図33および図34に示す場合よりも大きくなる。
図35は、図19において説明したものとは別のイオン化法を示す図である。このイオン化法はマトリックス支援レーザー脱離イオン化法の一種である。主基板451内に形成された貫通孔(室)454、455、456、457等が形成され、貫通孔(室)454は厚い主基板本体451−1と中央孔481−1を有する隔壁451−2で囲まれている。(側面側は主基板451で囲まれている。)この貫通孔(室)454は試料室であり、第2基板(上部基板)452または第3基板(下部基板)453には試料挿入用の開口部470が空いていて、そこから試料板(サンプルプレート)475を挿入し、主基板451の試料背板451−1に当てる。試料背板451−1には真空引きライン468が空いており、上部基板452または下部基板453にその開口部があいていて、真空ポンプへつながり、試料板475を吸着できるようになっている。サンプルプレート475の中央部には試料476が付着しており、この試料476へ上部基板452または下部基板453に開口された開口部471からレーザー光478が照射される。レーザー光471は外部からレーザー光478を導きレンズ477で集光し、試料476へ照射する。試料476はレーザー光478により、マトリックスの急激な温度上昇が起こり試料物質(マトリックス)が気化及びイオン化する。試料室454の隣(横側、図面に垂直方向)にも貫通室を作り、その貫通室からレーザー光を照射することもできる。
試料板475が立てかけられた試料背板の主基板451−1と対面する主基板隔壁451−2の周りには導電体膜459が形成され、この導電体膜459は、上部基板452または下部基板453内に形成されたコンタクト孔462、そこに形成された導電体膜、そこに接続する上部基板452または下部基板453上に形成された外部電極・配線464に接続している。外部電極・配線464に電圧を印加すると導電体膜459に正または負の電圧が印加される。発生するイオンはこの導電体膜の電圧により引き出され(導電体膜459は引き出し電極とも呼ぶ)、その一部は中央孔481−1を通過し、隣の低圧力室455へ入り、さらに主基板隔壁451−3が有する中央孔481−2を通って、その隣のイオン集束室456へ入り、さらに主基板隔壁451−4が有する中央孔481−3を通って、隣の貫通孔457へ導かれる。この貫通孔457は、たとえば、図19における引き出し電極および加速室307や質量分析室308である。
試料室454は大気圧状態なので、その隣室455はたとえば、1torr程度の低圧力室455で、上部基板452または下部基板453に形成された真空引き用の開口部472に接続された真空ポンプにより低圧力にされる。その隣室456にはその内面に導電体膜460が形成され、この導電体膜460は、上部基板452または下部基板453内に形成されたコンタクト孔465、そこに形成された導電体膜、そこに接続する上部基板452または下部基板453上に形成された外部電極・配線466に接続している。この導電体膜460には外部電極・配線466から電圧を印加されるが、イオンビーム479と同じ符号(正または負)の電圧が印加され、イオンビーム479が集束される。導電体膜460を幾つかの領域に分割して、それぞれの領域に電圧を印加できるようにすれば、それらの電圧を調整することによってイオンビーム479を集束しながらかつ軌道を調整することができる。従って、隣室457へ入るイオンビームの位置を調整できるので、より正確に中央孔481−3へ通すことができ、さらにはイオンビーム479を殆ど質量分析室へ導くことができ、イオンの検出感度を高めることができる。イオン集束室456も上部基板452または下部基板453内に真空引きライン用の開口部473が形成され、イオン集束室456内を低真空にできる。たとえば、このイオン集束室456の圧力は10−3〜10−4torrである。(尚、質量分析室はたとえば、10−5〜10−6torrである。)図35では導電体膜459は試料板475を向いているので、イオンがこの導電体膜459の電極に引き寄せられる場合もあるので、そのようなときには電極を分割しておき、中央孔付近の電極に印加する電圧の方を大きくしておき、試料板475を向いている電極にイオンが引き寄せられないようにしても良い。あるいは、試料板475を向いている電極にイオンと同極の電圧を印加して、イオンを跳ね返して、ほとんどのイオンは中央孔の電極側へ向かうようにしても良い。あるいは試料板475を向いている部分の導電体膜は除去しても良い。そのときは、試料室454の隣の低圧室の方に外部電極464等を設けても良い。あるいは、隔壁電極451−2の前に中央孔を有する電極のない隔壁を置き、圧力差でイオンを引き出して来ることもできる。そのとき、試料背板451−1の側面に形成された導電体膜458に印加されたイオンと同電位の電圧を印加してイオンを押出しても良い。
主基板の試料背板451−1の側面には導電体膜458を形成しても良い。この導電体膜458は、上部基板452または下部基板453内に形成されたコンタクト孔461、そこに形成された導電体膜、そこに接続する上部基板452または下部基板453上に形成された外部電極・配線463に接続している。サンプルプレート475は導電体であり、導電体膜458から電圧が印加される。レーザー光478が試料476へ照射されると種々のイオンが発生するが、サンプルプレート475へ印加された電圧と同電位のイオンは試料から飛び出していく。導電体膜459へサンプルプレート475の電圧と逆の電圧をかけると、サンプルプレート475の電圧と同じ符号のイオンが殆ど導電体膜459へ引き寄せられ、中央孔481−1を通りぬけていく。
イオン照射により熱が発生するので、試料室454は熱くなる。そこで、試料板が立てかけられる主基板壁451−1の試料背板の近傍に凹部469を形成し、この凹部469を冷却するようにする。この冷却は、たとえば冷却水、冷却気体を用いることができる。また、試料室454の周辺にも同様の凹部を形成して冷却することもでき、さらに上部基板452や下部基板453側から冷却することもできる。尚、導電体膜458は熱の良導体でもあるので、サンプルプレート475の熱を効果的に吸収できる。特にサンプルプレート475は真空引きライン468により導電体膜458へ密着しているので、電気的接続や熱の伝達もより良好になる。
図36は、別のイオン化法の実施形態を示す図である。主基板(第1基板)501の上下面に上部基板(第2基板)502、下部基板(第3基板)503が付着し、主基板501に上部基板(第2基板)502から下部基板(第3基板)503へ貫通する貫通室504(504−1、504−2、504−3)が形成されている。504−1はイオン化室であり、イオン化室504−1にはスプレーガスを導入するスプレーガス導入ライン516が接続する。イオン化室504−1の隣には引き出し電極・加速室504−2があり、それらは中央孔505−1を有する基板隔壁501−2によって隔てられている。引き出し電極・加速室504−2は、中央孔505−1を有する基板側壁501−2および隣室504−3と隔てている中央孔505−2を有する基板隔壁501−4によって隔てられた貫通室である。引き出し電極・加速室504−2には、中央孔505−3を有する引き出し電極となる基板側壁501−3が配置されている。基板側壁501−3の表面には導電体膜電極配線508が形成され、この導電体膜電極配線508は下部基板503の上面にも形成され、下部基板503のコンタクト510を通して下部基板503の下面に形成された外側電極511に接続する。スプレーガスは分析するものを含むガスである。
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スプレーガス導入ライン516は、主基板501の中央付近に形成される場合は、中央孔505と同じプロセスで作製することができる。ただし、中央孔505と異なるサイズの場合は、フォトリソおよびエッチングは別々に行なえば良い。スプレーガス導入ライン516は別のスプレーガス導入ライン517を通して上部基板502または下部基板503に開口したスプレーガス導入開口部518へ接続する。スプレーガス導入開口部518をフォトリソ法+エッチング法等により開口した後に、引き続きその開口部分をマスクにして主基板501をエッチング等してスプレーガス導入ライン517を形成することができる。前もってスプレーガス導入ライン517を主基板501に形成し、および/またはスプレーガス導入開口部518を上部基板等へ形成してから、上部基板等を主基板に付着しても良い。或いは、上部基板502または下部基板503に開口部を形成し、その開口部をスプレーガス導入ラインとしても良い。
スプレーガス導入開口部518から試料液体または試料ガスを含むスプレーガス(霧化ガスまたはネブライザーガスとも言う)を入れてイオン化室504−1へスプレーガス525を導入する。イオン化室525の内面には導電体膜506が形成され、その導電体膜506へはコンタクト孔512(上部基板502側)、および/またはコンタクト孔510(下部基板503側)そこに形成された導電体膜、そこに接続する電極・配線513(上部基板502側)、および/または電極・配線511(下部基板503側)が接続し、これらの電極・配線511や513から導電体膜506へ電圧を印加でき、イオン化室525へ導入されたスプレーガス525を印可した電圧と同符号のイオンにイオン化できる。上部基板502上または下部基板503上の導電体膜509は、主基板501と付着させる前にも形成でき、すなわち、上部基板502上または下部基板503上に導電体膜509を形成した後、貫通孔または凹部を開けた主基板501を合わせて付着させれば良い。同様に主基板側面の導電体膜509も貫通孔または凹部を開けた主基板501の側面に形成した後に、上部基板502または下部基板503と主基板501に付着させれば良い。主基板501を2つ以上に分割して、上部基板502側および下部基板503側と別々に形成して、それらを合わせ込んで付着することもできる。スプレーガス導入ライン516の内面にも導電体膜526を形成して、そこに電圧を印加できる。その場合、スプレーガス導入ライン516内でもスプレーガスはイオン化するので、より効率的にイオン化が可能である。スプレーガス導入ライン516の内面にも導電体膜526を形成する方法として、本明細書にも説明しているように、主基板501を分割して、そこに凹部516の半分を形成し、その後この凹部516の表面に導電体膜526を形成し、上下で貼り合わせれば良い。スプレーガス導入ライン517の内面にも導電体膜を形成できる。
形成法として、たとえば、スプレーガス導入ライン517を形成後、CVD法またはPVD法またはメッキ法で導電体膜を形成できる。尚、これらの導電体膜は、たとえば、Cu、W、Mo、Ni、Cr、Al、Au、Ti、高濃度ポリSi、導電性炭素(導電性ナノチューブ、グラフェンを含む)等の導電体膜、またはこれらの複合膜や積層膜である。イオン化室504−1は高電圧(たとえば、100V〜10KV)がかかり、イオンが発生するので、熱も発生する。主基板501はたとえばシリコン等で、上部基板502や下部基板503はたとえばガラスや石英等であり、導電体膜や絶縁膜も300度以上の温度までは問題なく持つが、この高温が質量分析室等へ伝達すると特性に影響を及ぼすので、できるだけ温度が上昇しないようにすることが望ましい。本質量分析器は小さいので、冷風を当てたりして全体を冷やすことも簡単であるが、熱くなる部分については特にその部分だけ冷却することが望ましい。イオン化室504−1等は比較的熱くなるので、イオン化室504−1等の周囲の主基板501に凹部519を形成し、この凹部519に冷却水や冷却水を導き、イオン化室504−1等を冷却することができる。この凹部519は上部基板502または下部基板502に開口部521を形成しそこから主基板501をエッチングして形成しても良いし、凹部519を形成してから、上部基板502または下部基板502を主基板501に付着させ、開口部521は前もって形成しても良いし、付着後に形成しても良い。
電極513または511へ高周波電圧を印加してイオン化室504−1に存在する気体をプラズマ化(イオン化)することもできる。このときは、大気圧以下の低圧(たとえば、1torr〜100torr)でもプラズマ化できるので、イオン化室504−1の上下基板502、503へ真空引き用の開口部を設けてイオン化室504−1を低圧にすることもできる。あるいは、引き出し電極用隔壁501−3の導電体膜508とイオン化室504−1内の導電体膜506、509との間に高電圧(たとえば、100V〜10KV)を印加して、イオン化室504−1内のガスや霧をイオン化することもできる。この場合は、隔壁501−2はない方が望ましい。図36の場合も図37と同様に導電体膜506や509をヒータとして使用することもできる。その場合、引き出し電極側とヒータ側の導電体膜506、509との間に高電圧をかけてイオン化室504−1内のガスや霧をイオン化することもできる。
イオン化室504−1でイオン化したイオンは中央孔505−1を有する隔壁501−2を挟んで隣室に形成された中央孔507を有する基板側壁501−3で引き出されて、中央孔507を通って、さらに中央孔505−2を有する隔壁501−4の中央孔505−2を通って隣室の貫通室504−3へイオンビーム528として進む。引き出し電極・加速室504−2にある導電体膜508には、コンタクト孔510、電極・配線511が形成され、外部から電圧を印加できる。たとえば、イオンと逆電位を印加すればイオンは引き出され加速され、中央孔507を通過するイオンビーム528となる。引き出し電極・加速室504−2にはさらに加速電極(中央孔を有する)や、集束電極を設けても良い。また、図35のイオン集束室456を引き出し電極・加速室504−2の前後に設けてイオンを集束しても良い。隣室504−3は、たとえば質量分析室(図19では308)である。イオン化室504−1と引き出し電極・加速室504−2との間の隔壁501−2は、イオンを引き出し電極501−3で引き出すときに問題がなければ設けなくても良い。たとえば、正イオンを発生するときは、導電体膜506や526に正電圧を印加するが、イオン化室504−1の導電体膜506に印加した正電圧によって、発生した正イオンは中心付近に集束される。この集束した正イオンが負電圧に印加された引き出し電極501−3によって引き出される。このとき、隔壁501−2の中央孔505−1の大きさを調整して、引き出し電極501−3により引き出されやすくする。たとえば、中央孔505−1の大きさを中央孔507より小さくし、引き出し電極501−3の中央孔505−1を通り易くすることもできる。また、イオン化室504−1は大気圧近傍の圧力であるが、隔壁501−2により、引き出し電極・加速室504−2の圧力を下げることもできる。たとえば、隔壁501−2と引き出し電極の隔壁501−3との間に真空引きライン522(522−1)を設けて真空引きすることができる。
図36で述べた方法は、エレクトロスプレー法(ESI)の一種である。エレクトロスプレー法(ESI)は大気圧イオン化法であるから、イオン化室504−1は大気圧状態であるが、このイオン化室504−1の上部基板502または下部基板503に開口部を設けて、イオン化に影響を及ぼさない程度に排気しても良い。また、別の開口部も設けて窒素パージしたり、乾燥させたりしてイオン化室504−1をクリーニングすることもできる。引き出し電極・加速室504−2の右側の部屋(隔壁501−3と隔壁501−4との間)は真空引きライン522(522−2)を設けて真空引きする。
図36において、上部電極509と下部電極506を分離し、側面にも導電体膜電極を形成しないで、いわゆる平行平板型電極とし、これらの上部電極509と下部電極506との間に高周波電圧を印加することによって、プラズマが発生し、中央孔516から噴射されたスプレーガス525はイオン化する。特に上部電極509と下部電極506をの距離は500μm〜1mm〜2mmと小さいときは、上部電極509と下部電極506間が高電界になるので、容易にプラズマ化する。これらの電極間距離が2mm以上の場合は、それに応じて高周波電圧の大きさを大きくすることによってプラズマが発生する。中央孔516の内面に形成した上側電極526および下側電極526を分離して、平行平板電極とすればこれらの電極間距離は上部基板502に形成した電極509と下部基板503に形成した電極506との間の距離より小さくなる。中央孔516の内面に形成し分離した上側電極526および下側電極526と上部基板502に形成した電極509と下部基板503に形成した電極506とを側面で接続すれば、中央孔516の内面に形成し分離した上側電極526および下側電極526との間に高周波電圧を印加することによって、もっと小さな電圧で中央孔内でプラズマ化することもできる。貫通室504−1内を低圧にすることもできるので、プラズマ化できる条件を設定しやすい。
図37は、大気圧化学イオン化法について説明する図である。図36と同じ材料等は同じ符号を付している。スプレーガス525が入る所は、加熱室504−6であり、加熱室504−6の隣には、中央孔505−1を有する隔壁501−6を介してイオン化室504−7がある。加熱室504−6の内面には導電体膜506や509が積層されている。これらの導電体膜506や509は、薄膜抵抗体であり、抵抗体を挟んで電極511−1、511−2(コンタクト孔は510−1、510−2)や電極513−1、513−2(コンタクト孔は512−1、512−2)が接続している。電極511−1と511−2との間、および/または電極513−1、513−2との間に電流を流せば、薄膜抵抗体509が発熱する。加熱室504−6はたとえば、約300度〜500度Cに加熱され、スプレーガス525は溶媒と試料分子に気化され、中央孔505−1を通ってイオン化室504へ入る。(基板側壁501−6はない場合もある)スプレーガス導入ライン516や517にも薄膜抵抗526を形成し、電流を流して発熱させれば、さらにスプレーガス525の溶媒と試料分子への気化効率が良くなる。
イオン化室504−7において、先端が尖った(細くなった)電極(尖塔電極)529および530が対面して配置される。電極529は下部基板503側に配置され、コンタクト孔510−3を通して外部電極・配線511−3へ接続する。電極530は上部基板502側に配置され、コンタクト孔512−3を通して外部電極・配線513−3へ接続する。これらの間に電圧を印加すると、放電が起こり、気化された溶媒分子はイオン化され反応イオンとなり、反応イオンと試料分子の間でプロトン授受が起こり(イオン化反応)、試料分子はプロトン付加またはプロトン脱離を起こしイオンとなる。これらのイオンが隔壁501−4の中央孔505−2を通って隣室504−8に配置される引き出し電極に引き出される。すなわち、隣室504−8は引き出し電極・加速室であり、図36における引き出し電極・加速室504−2と同様である。これによって、イオンビーム528が質量分析室等へ導入される。加熱室504−6やイオン化室504−7は温度が上がるので、これらの周囲の主基板501に凹部519を形成し、冷却水や冷却ガスを通してこれらの部屋からの熱を外側へ出さないようにすることが望ましい。図37では、スプレーガス導入ライン516の出口は隔壁501−6の中央孔505−1や尖塔電極529、530と対面しているように記載しているが、気化しない霧がイオン化室504−7へ入り込んだり、尖塔電極529、530へ付着したりして、イオン化室の電場電圧が低下することを避けるために、対面しないように加熱室504−6の側面側(たとえば、図37における紙面の手前または奥側)に設けることが望ましい。また、加熱室504−6の上下基板502または503へ霧やガスの排出口を設けても良いし、そこからポンプで少し排気しても良い。また、メンテナンスのときに、その排出口を用いてN2等で乾燥等を含むパージを行なっても良い。さらにイオン化室504−7にも同様に排出口やパージや真空引き用の開口部を設けても良い。
尖塔電極529、530の形成方法を以下に説明する。図38は、尖塔電極を有するイオン化室の作製方法を示す図である。図38(a)に示すように下部基板542に付着した厚みh25の主基板541の一部を厚さh26に薄くするために感光性膜543をパターニングする。主基板541と感光性膜543との間に感光性膜543の密着を高めたり、エッチングストッパーとなる膜(たとえば、SiO2等の絶縁膜)を積層しても良い。このパターン543をマスクにして主基板541の厚みがh26である凹部544を形成する。(図38(b))次にh25の厚みを有する主基板541の基板側壁541−1を形成するための感光性膜545(545−1)のパターニングを行なう。同時に凹部544内において尖塔541−3を形成する部分の主基板を残すための感光性膜545(545−2)のパターニングを行なう。(図38(c))この感光性膜545(545−1、2)をマスクにして、主基板541をエッチングし、下部基板542に貫通する貫通孔546を形成する。主基板541がSi基板であり、下部基板がガラス基板や石英基板である場合は、静電陽極結合で強固に付着でき、Si基板を高速に垂直に近いエッチングをして、オーバーエッチングしてもガラス基板542を余りエッチングしないドライエッチングの条件を選定できる。このエッチングで、厚みh25の基板隔壁541−1およびエッチングしていない主基板541、尖塔電極541−3を形成すべき部分の主基板541−2が形成される。(図38(d))
次に感光性膜547をパターニングし、基板側壁541−1等の主基板541をエッチングすべきではない部分に感光性膜547−1のパターニングを行なう。このとき、基板側壁541−1の側面がエッチングされないようにするために、基板側壁541−1の側面も感光性膜547−1で覆う。同時に尖塔電極541−3を形成すべき部分の主基板541−2に尖塔電極541−3を形成するための感光性膜547−2のパターニングを行なう。(図38(e))この感光性膜547−2をマスクにして、主基板541−2をエッチングする。このエッチングはサイドエッチングも行なうエッチングである。サイドエッチング量と縦方向のエッチング量がコントロールされた条件で行ない、このサイドエッチング法は、縦方向エッチング量h26を行なうとサイドエッチング量がh27になるようなエッチングである。従って、感光性膜547−2の幅(直径)を2×h27とし、h27=h26とすると、主基板541−3が縦方向にh26エッチングされて下部基板542が露出するとエッチングされたパターン541−3は先端が尖塔となる円錐形状となる。{図38(f)、(g)}
次に、導電体膜を積層し、パターニングして図38(h)に示すように、円錐形状の主基板541−3の全体を覆う導電体膜パターン548および、それに接続し下部基板上に延びる配線パターン549を形成する。配線パターン549は下部基板542内に形成するコンタクト孔550、そこに形成される導電体膜を通して、下部基板542の下面に形成される導電体膜電極・配線551に接続する。同様のパターンを上部基板540側にも形成し、図38(i)に示すように、上部基板540側の基板側壁552(552−1)と下部基板542側の基板側壁541(541−1)と重ね合わせると、円錐状の尖塔電極が対面したイオン化室を形成できる。尚、重ね合わされるのは基板側壁552(552−1)と基板側壁541(541−1)だけでなく、同じ高さに形成された主基板同士552および541も重ね合わされることは言うまでもない。本明細書で説明したように、主基板552および541同士の付着は、接着剤を用いる方法、常温接合、拡散接合、高温接合、静電結合等種々の方法を用いることができる。特に主基板がSi基板や導電体基板の場合は、ガラス基板や石英基板553を間に挟むことによって、静電陽極接合を用いて強固に付着することができる。
図38では、一対の尖塔電極を示したが、複数対の尖塔電極を設けることによって、放電領域を増やせるので、イオン化効率が高くなる。尖塔電極作製時に主基板541−2をある程度オーバーエッチングする必要があるので、完全に尖った尖塔電極を作るとh26より小さくなり、尖塔電極の高さh27はある程度ばらつく。従って、上下基板を付着させた後の尖塔電極の先端同士の距離も少しばらつき、放電電圧もばらつくが、各電極には個別に電圧を印加できるので、多数の尖塔電極を形成した場合でも、電圧値を変化させることによって、安定した放電を行なわせることができる。
図38では上部基板または下部基板を主基板に付着させてから主基板を用いて尖塔電極を形成したが、前持って尖塔電極を上部基板または下部基板に付着させて、その後に凹部を形成した主基板を付着させて図38(g)の状態を作製することもできる。この場合、尖塔電極全体を導電体電極とすることができ、高電圧に強い電極を作製できる。また、上部基板または下部基板を主基板に付着させて、尖塔電極を形成すべき領域にある主基板を全部エッチング除去して(すなわち、図38(b)において、完全な貫通室とする)、尖塔電極をマウント装置で所定の位置に付着させることもできる。尖塔電極全体が導電体であるときは、尖塔電極の真下の上下部基板内にコンタクト孔を形成することができるので、導電体膜548や549を形成しなくても良い。また、図38(b)の図に示すような凹部544を形成しなくても、直接尖塔電極を形成して、サイドエッチング時に尖塔電極の高さh27を調整しても良い。特に対面する側が尖塔電極でなく平行平板電極の場合は、尖塔電極と平行平板電極との距離を比較的大きく取れるので、有効である。さらに、h26の主基板を最初に用いて尖塔電極および基板側壁(この時の高さはh25より小さい)、後に基板側壁等付着させる部分に必要な高さの別の主基板またはガラス等の基板を付着させて図38(g)に示すような構造を実現することもできる。
図38では、上下基板に尖塔電極を形成したが、一方を平行平板電極にしても放電(コロナ放電など)を行なわせて、気化されたガスをイオン化することができる。この場合平行平板電極を図38(h)に示す導電体膜549のように上部基板または下部基板上に形成することができるが、前もって上部基板または下部基板上に導電体膜パターンを形成したり、平板電極を付着させて、その後貫通孔をあけた主基板と付着させて、その後図38(f)に示すように下部基板側と上部基板側を付着させることができる。この場合、尖塔電極を形成する方は複数の尖塔電極を形成することもできる。
図37において、イオン化室504−7で発生したイオンは隣室504−8に入るが、隣室504−8はたとえば引き出し電極室であり、引き出し電極により発生したイオン528が引張られていく。しかし、イオン化室504−7は中央孔505−2を有する基板側壁板501−4で隣室504−8と仕切られているので、イオンの引き出し力は余り強くない。そこで、基板側壁板501−4と対面する側の主基板側壁に導電体膜電極を形成し、隣室504−8へ入れたいイオンと同じ符号(正または負)の電圧をかけておき、発生するイオンを押出して隣室504−8へ所望の符号を持つイオンを出射することができる。図37では、基板側壁板501−4と対面するのは、基板側壁板501−6であるが、中央孔505−1があるために、基板側壁板501−6の側面に形成する導電体膜の面積は小さいので、イオンを押し出す力が弱い場合がある。あるいは、基板側壁板501−6を設けない場合は、対面する所は、基板側壁501−1であるが、距離が離れ過ぎているため、イオンを押し出す力が弱くなる。そこで、隣室504−8の位置を基板側壁板501−6の対面には配置しないで、たとえば、隣室504−8と基板側壁板501−6の関係を90度の位置関係とする。そうすれば、隣室504−8の対面は基板側壁(イオン化室504−7において、図37では紙面と垂直方向の位置にある)であり、この基板側壁には側面全体に導電体膜電極を形成できるので、イオンを押出す力は十分であり、発生したイオンは大部分隣室504−8へ入る。
図19では、イオンを固体試料に照射してイオンおよび中性粒子を発生させている。(この場合、イオン化が十分であれば、レーザー照射等は必ずしも必要はない。図39は高速原子衝撃法(FAB)の一種である連続フロー(CF)−FABイオン化を本発明に適用した実施形態を示す図である。上部基板562および下部基板563に主基板561が付着し、貫通室564−1、564−2、564−3等が形成されている。貫通室564−1と564−2は中央孔565−1を有する基板側壁561−3により隔てられ、貫通室564−2と564−3は中央孔565−4を有する基板側壁561−10により隔てられている。貫通室564−1はイオン化室であり、その側面側の基板側壁561−1の中央部には試料導入孔566が形成され、そこにつながる縦方向試料導入孔567が形成されている。試料導入孔566は中央孔565−1等と同じ方法で形成できる。縦方向試料導入孔567は上部基板に開口部568−1が形成され、そこに繋がっている。
被検出成分は移動相と共に試料導入用開口部568−1から縦方向試料導入孔567さらに試料導入孔566を通じてイオン化室564−1へ入る。移動相として、たとえばグリセリン等の粘性の高い液体(マトリックス)を0.1〜数%の濃度になるように加えた有機溶媒または有機溶媒/水が用いられる。試料導入孔566の出口部573において、有機溶媒や水は揮発し、被検出成分を溶かした状態でマトリックスは試料導入孔566の出口部573の基板側面に染み出す。このとき、溶媒等の気化によって被検出成分はマトリックス中に濃縮される。イオン化室の上部基板等には開口部568−2が空いていて、その上に配置されたFAB銃570で数kVに加速されたXeやAr等の中性高速原子ビーム571がマトリックス574へ照射される。この高速原子の持つ運動エネルギーによりマトリックスや揮発せずに残った溶媒分子等がイオン化され、イオンと被検出成分の間でプロトンや電子の移行が起こる。その結果、被検出成分の正及び負イオンを生成する。生成したイオンはイオン化室564−1の隣にある引き出し電極・加速室564−2へ入り、加速・集束されてイオンビーム575として隣室564−3へ導かれる。この隣室564−3はたとえば、質量分析室である。引き出し電極・加速室564−2には複数の加速電極や集束(収束)電極561−4、5等が配置され、所々に真空引き開口部568−3が開口され、引き出し電極・加速室564−2が低圧にされる。加速電極や集束(収束)電極561−4、5は、中央孔565−2、3等を有する基板側壁でその周りを導電体膜が形成され、電圧を印加できる。イオン化室564−1も上部基板等へ真空引き用の開口部を設けて低圧にすることもできる。さらにはイオン銃そのものを含めてイオン化室を真空箱へ納めることによってイオン化室を低圧にすることができる。また、原子ビーム571が照射する主基板側面が熱を発生する場合には、その背面側に冷却室を設けることもできる。原子ビーム571が照射する主基板側面には各種絶縁膜の他に導電体膜を形成することもでき、発生する熱等を速やかに外部へ伝達することができる。図39に示したイオン化法は、CF−FAB法と呼ばれていて、本発明を用いると非常に小さく構成でき、しかも簡単に作製でき、正確な測定も可能となる。
<コリジョンセル>
質量分析装置では、分析精度や分析感度を高めるために、イオンビーム軸に沿って複数の四重極等の多重極電極室を複数並べて、前段の四(多)重極室から出射したイオンを次段の四(多)重極室に取り込む効率を高めたものも実用されている。その中で、本発明を用いて作製したコリジョンセルについて説明する。コリジャンセルは、本明細書で示す四重極質量分析室において、上部基板または下部基板に設けた開口部からAr、N2、O2、NH3等の衝突ガスや反応ガスを外部から導入し、前段から進入したイオンビームとこれらの導入ガスと衝突させて、イオンを解離したり、反応させたりして、プロダクトイオンを生成する。このプロダクトイオンを四重極電極に印加される高周波電圧(直流バイアス電圧を印加する場合もある)を印加して、イオンを次段の四(多)重極室等に送る。従って、本発明では非常に簡単に四重極電極室をコリジョンセルに変更できる。すなわち、衝突ガスや反応ガスを外部から導入口と排出口(排出口は真空ポンプに接続する)を形成する。
コリジョンセルには気体が導入されるので、前段または後段の貫通室(たとえば、質量分析室)よりも圧力が高くなるので、前段または後段の貫通室へ影響をできるだけ与えないように、前段または後段の貫通室との間にさらに貫通室を設け、その貫通室に真空びきラインを接続して真空びきすることもできる。また、それらの貫通室同士の隔壁に備わる中央孔(イオンビームが通る)を小さくしたり、または大きくしたり、あるいは長さを調節してガスの出入りを調節することもできる。貫通室同士の隔壁に備わる中央孔(イオンビームが通る)を小さくする場合、イオンビームが隔壁に衝突しないようにするために、その隔壁自体に電極を設けてイオンビームを集束することもできる。または、貫通室の前にイオンビーム集束用の中央孔を有する隔壁(基板側壁)を別に配置しても良い。本発明は、複数の貫通室や隔壁や導電体膜を設けても工程は殆ど同じであるから、作製上および製造コスト上の増大は余りない。(少し面積が増えるが、小さいので問題にならない。)従って、念のための貫通室や隔壁、導電体膜隔壁(これはイオン(加速または集束)レンズと呼んでも良い)を設けておき、必要な場合に外部から電圧を印加し、不要な場合は何もしないだけで良い。
<イオントラップ型質量分析装置>
次に、本発明はイオントラップ型質量分析装置にも適用することができる。図40はイオントラップ型質量分析装置の作製方法を示す図である。サポート基板602に主基板601が付着している。サポート基板602はガラス、セラミック、プラスティック等の絶縁体基板、Si等の半導体基板、CuやAlやFe等の導電体基板等種々の基板を使用することができる。サポート基板602と主基板601との付着方法は接着剤や低融点半田(金属)で付着させて、後で示すように、主基板601と分離できるようにする。接着剤の場合は、紫外線照射で剥離できるものや熱をかけることにより脱着できるようなものを使用できる。サポート基板602に付着した主基板601の表面に感光性膜603を形成し、イオントラップ型質量分析装置を形成すべき領域を窓開けする。(図40(a))次に、窓開けした部分の主基板601を所定厚みまでエッチングし、主基板601の凹部604を形成する。この所定厚みとはイオントラップ型質量分析装置のリング電極の半径にほぼ等しい。(図40(b))(主基板の厚みh31、所定厚みh32)
次に、感光性膜603を除去し、再度感光性膜605を塗布(または付着)し、フォトリソ法により、基板側壁や主基板として残すべき部分605−3、4およびイオントラップ型質量分析装置のリング電極形成用パターン605−1、2を形成する。イオントラップ型質量分析装置のリング電極形成用パターン605−1、2は主基板601の凹部604に形成される。このときの平面パターンは図40(k)に示すように感光性膜パターン605−1および605−2は繋がっていて、円形状パターンとなっている。(尚、正方形または矩形状パターンでも、イオントラップ型質量分析装置電極の電圧条件を調整することによって、四重極電場を形成することができる。)(図40(c))次に、これらの感光性膜パターン605をマスクにして主基板601をエッチングする。このとき、一部の主基板601−1、2、3を残す。(厚みh33)主基板601のエッチングはサイドエッチングが行なわれるように、ウエットエッチングまたはドライエッチング法を用い等方性エッチングで行なう。またはアルカリウエットエッチングでシリコンの結晶軸に沿ったエッチングを行ない、横方向もエッチングする。一定厚みh33を制御性良く残してエッチングする方法は種々知られている。たとえば、前もってシリコン基板中に高濃度のP型拡散層を形成しておけば(基板貼り合わせ法でも可能)、その部分がエッチングストッパーとなる。(図40(d))感光性膜605をリムーブした状態が図40(e)である。次に、リング電極となる部分における中央部の空洞となる部分606−2の主基板601−2をエッチング除去する。このエッチングは、感光性膜を形成してこの部分だけ窓開けした後に垂直(異方性)エッチングで行なう。このとき、主基板601−4、601−7、601−1、601−3等はエッチングしない。リング電極となる部分601−5、6の部分は高さがコントロールできればある程度エッチングしても良い。(特性は、電圧を変化させて調整可能)(図40(f))
次に、主基板601上に導電体膜を積層し、導電体膜パターン607を形成する。リング電極となる部分(601−5、6)およびその部分に接続する配線部分を残して、不要な導電体膜はエッチング除去する。主基板がSi等の半導体基板である場合は絶縁膜を形成してから導電体膜を形成する。導電体膜はCu、W、Mo、Cr、Ti、Al、Au等の金属膜、これらの合金膜または積層膜であり、CVD法、PVD法、メッキ法、電鋳法等で積層する。(図40(g))次に、エンドキャップ電極609を付着した上部基板または下部基板608をアライメントしながら主基板601に付着させる。(図40(h))この付着は、接着剤を用いても良いし、上部基板または下部基板608がガラスまたは石英で、主基板がSi等の場合は静電陽極径都合を行なうこともできる。この後、サポート基板602を取り外す。このサポート基板の取り外す方法も種々ある。たとえば、サポート基板602と主基板601を熱軟化性接着剤または低融点合金(軟化温度または融点T1)で付着した場合、主基板601と上下基板を硬化性接着剤または静電陽極接合(硬化温度または静電陽極接合温度T2)で付着させる場合、T1>T2の接着剤等を選択し、まず、T2の温度で主基板601と上下基板を付着させ、その後温度を上げてT1以上にしてサポート基板602と主基板601を離す。(図40(i))
次に、主基板601にイオンビーム通路となる溝(中央孔)610を形成する。主基板601−4および601−7は高さがh31であるから、上下基板608に付着しているがリング電極となる部分の主基板601−5、6は上下基板608に付着していない。しかしリング電極配線607は主基板601−4および601−7の部分まで伸びているので、この部分にコンタクト孔611を上下基板608に開口して、導電体膜をコンタクト孔内に形成し、さらに上下基板608上に電極配線612を形成する。また、同時にエンドキャップ電極609に導通するコンタクト孔611、電極配線612を形成する。この後。上部基板側と下部基板側を付着させてイオントラップ部が完成する。この付着時に主基板同士の間にガラス基板等を介しても良い。リング電極601−5および601−6は一体となっており、また上下の導電体膜607も付着により繋がっている。また、リング電極601−5および601−6は、601−3および601−4で支持されていて不安定のように見えるが、601−3および601−4の厚みh33は調整でき、またイオントラップ特性に影響を与えない部分で適宜支持部分を作製できるし、また、上下基板608とも一部であれば接続して形成できるので、強度的には全く問題ない。さらに、図40では、リング電極部分601−5、6を薄くしたが、薄くしなくてもイオントラップ特性に問題ない場合は、薄くしなくても良く、その場合、上下基板608とリング電極部分601−5、6を直接付着できるので、さらに強度を増すことができる。さらに、この場合、コンタクト孔や電極配線も直接リング電極から取り出せるので、601−3、4を設ける必要がなくなり、独立したリング電極とすることもできる。(図40(j))
このように、本発明を用いて簡単なプロセスでイオントラップ型質量分析装置を作製できる。このイオントラップ型質量分析装置は1つのリング電極601−5、6と2つの対向するエンドキャップ電極609−1、2により構成されている。リング電極601−5、6には高周波高電圧が印加され、リング電極601−5、6と一対のエンドキャップ電極609−1、2とで囲まれる空間(イオントラップ空間613)内に形成される四重極電場によってイオン捕捉空間615を形成し、そこにイオンを捕捉する。一方、エンドキャップ電極609−1、2にはそのときの分析モードに応じて適宜の補助交流電圧が印加される。荷電粒子(イオン、電子)は、リング電極601−5およびそれに繋がった主基板601−4に形成された中央孔610の左側の通路から進入する(荷電粒子G1)。荷電粒子G1は中央孔610を有する基板601−4の左側のたとえば、イオン化室から引き出し電極で加速されて入って来る。荷電粒子G1はリング電極601−5の中央孔610からイオントラップ空間613へ出て(荷電粒子G2)、イオントラップ電場によりイオン捕捉空間615内に捕捉される。イオン捕捉空間615内に捕捉されたイオンは、適宜掃き出され(荷電粒子G3)対向するリング電極601−6が有する中央孔610に進入し、さらにそれにつながる基板601−7の中央孔610を通って出射し(荷電粒子G4)、たとえば隣室のイオン検出室へ出ていき、イオン量をカウントされる。
また、上部基板608等に開口部617を設けて、そこからイオントラップ室613に標的ガス(Ar、Xe、N2、NH3、O2等)を導入し、イオントラップ室内部に形成された電場によりその中心に集められた特定の質量数範囲にあるイオンと前記標的ガスとを衝突させることにより、イオンの分解または反応を行う。すなわち、コリジョンセルも形成できる。十分に解離分解が行われた後に電極601−5、6、609−1、2へ印加する電圧が変更され、イオントラップ615内部にイオンを排出するような電場が形成されてイオンが放出される。イオントラップから出たイオンは質量分析器やイオン検出器に導かれる。また、真空引き用の開口部616を上下基板608に作製すればイオントラップ室を所望の真空度にできる。
図40に示したイオントラップ質量分析装置ではリング電極601−5の中央孔610を通って荷電粒子Gがイオントラップ室613に入り、さらにリング電極601−6の中央孔610を通って荷電粒子Gがイオントラップ室613から出ていくが、エンドキャップ電極609を通すこともできる。図41は荷電粒子がエンドキャップ電極609を通るイオントラップ質量分析装置を示す図である。図40(i)まで同じプロセスを用いることができるので、図40(h)以降を示す。図40と異なる部分を特に詳細に説明する。図41(h)において、上部基板608に開口部614が形成され、エンドキャップ電極609に通路618があいている。エンドキャップ電極609を上部基板608に付着するとき、開口部614と通路618が合うように付着する。これによって、開口部614と通路618は上部基板608の基板面に垂直方向に通る通路となる。その他は図40(h)および図40(i)、図40(j)で説明した内容と同じである。図40(j)において、上部基板608−1側と下部基板608−2を付着するとき、上側の通路614−1および618−1と下側の通路614−2および618−2は一直線上に揃うようにし、その中心線がイオン捕捉空間615の中心を通るようにすることが望ましい。
次に、図41(k)に示すように、第2主基板619が付着した第2上部基板620を作製し、貫通室621を形成する。この貫通室621にはイオン化室および引き出し電極を配置する。発生するイオンが通路614−1および618−1を通るように各部品を配置する。それらの機能を有した第2上部基板620に付着した貫通室621を持つ第2主基板619の支柱619−1、2を(第1)上部基板608−1に付着する。貫通室621で発生したイオンが通路614−1および618−1を通ってイオントラップ室613に入るようにアライメントして付着させる。
次に第3主基板622が付着した第2下部基板623を作製し、貫通室624を形成する。この貫通室624にはイオン検出室を配置する。イオントラップ室613から通路614−2および618−2を通って貫通室624へ出射したイオンが検出室に入るように各部品を配置する。それらの機能を有した第2下部基板623に付着した貫通室624を持つ第3主基板622の支柱622−1、2を(第1)下部基板608−2に付着する。通路614−2および618−2を通って出射したイオンが検出室に入るようにアライメントして付着させる。
図40に示したイオントラップ型質量分析装置は基板面に対して平行に荷電粒子(イオン)が進むが、図41の場合は基板面に対して垂直に荷電粒子(イオン)が進む。各室のサイズ(高さ)が1枚の主基板では不足する場合は、必要な厚さの主基板を重ねて付着すれば良い。このようにして、エンドキャップ電極に開けた通路を通してイオンを移動させることができるイオントラップ型質量分析装置も作製できる。
図40や図41に示したイオントラップ型質量分析装置では、リング電極601−5、6を上部基板および下部基板608から離しているが、離間させずに付着した状態で形成することもできる。その場合イオントラップ空間はリング電極601−5、6で囲まれた状態になる。従って、リング電極の占有面積(体積)も小さくて済む。リング電極作製プロセスも簡単化できる。
図49は、図41と同じく縦方向に形成したイオントラップ型質量分析装置を示す図である。図49に示すイオントラップにおいて、リング電極は浮いた状態になく固定されている。本質量分析装置は、イオントラップ室を有する基板領域A、イオン化室および引き出し電極室を有する基板領域B、イオン検出室を有する基板領域Cから構成される。基板領域Bは中央部に引き出し電極室となる貫通室914−2、その引き出し電極室914−2にイオンを供給するイオン化室となる貫通室914−1、3が配置される。引き出し電極室914−2とイオン化室914−1との間は、中央孔915−1を有する基板側壁板911−3で仕切られている。引き出し電極室914−2とイオン化室914−3との間は、中央孔915−2を有する基板側壁板911−4で仕切られている。イオン化室は本明細書で記載した種々のイオン化法を用いたイオン化室を採用できる。このイオン化室へ試料供給室を接続することもできる。ここでは、イオン化室を2つ記載しているが、1つでも良いし、3つ以上引き出し電極室914−2に接続することもできる。あるいは、外部で発生したイオンを引き出し電極室914−2に接続しても良い。
引き出し電極室914−2では、イオンをイオントラップ室へ加速してある速度でイオントラップ室へ送る機能を有する。主基板911の上面は上部基板912に、主基板911の下面は下部基板913に付着している。下部基板913には中央が繰り抜いた円板状電極917−1,2が形成されており、円板状電極917−1と2の間に絶縁膜918が形成されている。必要に応じて円板状電極917−1と2の上も絶縁膜918が形成される。円板状電極917−1、2にはイオンと逆符号の電圧を印加すると、円板状電極917−1と2の中央部に開いた開口部919からイオンが引き出され、加速してイオントラップ室904へ入る。円板状電極917−1と2の直上の上部基板912に押し出し電極916を形成しておけば、押し出し電極916にイオンと同符号の電圧を印加すると、イオンは押し出されて開口部919へ入っていく。この押し出し電極916があればイオンの開口部919への進行の効率を増大させることができる。
基板領域Aは、図41と異なるのは、リング電極が上下基板に付着していることである。すなわち、主基板901に中央が細くなった貫通室904が形成され、テーパー形状になった基板側壁901−1、2が形成される。この形成方法は種々の方法があるが、たとえば、Si基板をサポート基板に付着させ、フォトレジスト等でマスクし上部側からSiエッチングすれば、テーパー形状の傾斜面を持つ貫通室の半分を作製できる。このテーパー角度はエッチング条件を変えれば制御できる。次にサポート基板を取り外し、同じものを重ねて付着すれば(たとえば、一点鎖線Mで)、図49に示す形状の貫通室904を有する基板領域Aが作製できる。リング電極となる導電体膜905(905−1、2)は主基板901の基板側壁901−1、2の側面に積層されている。主基板901が導電体膜や、Si等の半導体基板であるときは、主基板901の上に絶縁膜を積層した後に導電体膜を積層させる。ここで、リング電極905(905−1、2)は基板面に平行な断面は略円形となっていて、ひと繋ぎの電極である。
上部基板902にエンドキャップ電極906が形成され、イオントラップ室である貫通室904に配置される。また、下部基板903にエンドキャップ電極908が形成され、イオントラップ室である貫通室904に配置される。エンドキャップ電極906の中央には開口部907が空いていて、基板領域Aと基板領域Bに関して、基板領域Aの上部基板902と基板領域Bの下部基板913が、開口部907と開口部919の軸がそろうようにして付着される。従って、開口部919および907を通って進んできたイオンはイオントラップ室904の中央部のイオン捕捉空間910でトラップされる。
基板領域Cは、イオン検出室である貫通室924お有し、主基板921の上面に上部基板922が、主基板921の下面に下部基板923が付着している。上部基板922に主基板921の一部が921−3、4が残され、中央部に開口部928が開けられ、主基板の一部921−3、4の周辺、特に開口部928の側面側に導電体膜925−1、2が形成される。上部基板922側の開口部928は孔形状であるが、主基板の一部921−3、4の開口部は、平行な溝型であり、主基板の一部921−3、4の側面に形成された導電体膜は平行平板電極となる。貫通室924には、主基板の一部921−5、6が残されており、これらの表面は平行になっていて、平行な空間924−2を形成している。主基板の一部921−5、6の表面に(主基板が半導体や導電体であるときは、絶縁膜を介して)二次電子放出物質膜926(926−1,2)が形成され、その両端に導電体膜(上下において)が形成される。基板領域Aと基板領域Cに関して、基板領域Aの下部基板903と基板領域Cの上部基板922が、開口部909と開口部928の軸がそろうようにして付着される。
イオン捕捉空間910でトラップされたイオンは、エンドキャップ電極908の電位に引かれて開口部909を通って基板領域Cの開口部928へ入る。基板領域Cの開口部928の主基板921−3と4の側面に形成された導電体膜電極925−1,2は平行平板電極となっているので、電圧を調整することによってイオン軌道を曲げることができる。従って、曲げられたイオンは下側電極の二次電子放出物質膜926−2に衝突し、電子eを放出する。この放出された電子eは、上側の電極の電界に引かれてその二次電子放出物質膜926−1に衝突し、電子eを放出する。放出された電子eは下側の電界に引かれてその二次電子放出物質膜926−2に衝突し、電子eを放出する。衝突により放出される電子は衝突する前の電子数よりかなり多いので、衝突を繰り返すたびに電子数が増大していく。二次電子放出物質膜の端に衝突して放出された最後の電子は、貫通室924(924−3)の右端の基板側壁921−2の側面(内面)に形成された導電体膜に衝突し、電流を発生させる。この電流を測定すれば、イオン量を求めることができる。
空間924−2は、中央孔とすることもでき、このときは中央孔の内面に二次電子放出物質膜を形成する。その両端に導電体膜を形成して、その導電体膜に(高)電圧を印加し、この中央孔924−2内へイオンを衝突させれば、同様に二次電子が放出され、導電体膜電極927で電流変化を計測できる。尚、基板領域Cでは下側の主基板921−6の領域が上側の主基板921−5の領域より大きいが、中央孔を形成する場合でも、上下を重ねて付着させるので、特に問題はない。以上のようにして、複数のイオン化室を有する縦型のイオントラップ方式の質量分析装置を作製することができる。尚、図では、導電体膜と接続する配線やコンタクト配線や外側電極は記載していないが、配線は引きまわして設計できるので、外側電極を所望の場所に形成できる。また、ガス導入孔や真空引きライン用の開口部も記載していないが、これらも所望の位置に形成できる。
<電子増倍管>
図19において、質量分析室308で振り分けられたイオンビーム331はイオン検出室309へ入る。イオン検出室に配置されるイオン検出系は種々の方式を使用できる。ここでは、平行平板タイプまたはパイプ状のチャネル型二次電子増倍管であるとして説明する。イオン検出室309は、主基板内に形成された貫通室であり、中央孔310−5を有する基板側壁(隔壁)301−5で隔てられている。貫通室309の上部は上部基板302が、貫通室309の下部は下部基板303が付着し、側面側は主基板301で囲まれている。上部基板302の下面には電極333が形成され、下部基板303の上面には電極332が形成されている。これらの電極332、333は二次電子放出物質から構成されている。二次電子放出物質とは、イオンや電子等の荷電粒子が当たると、そのエネルギーを得て電子を放出しやすい物質である。二次電子放出物質として、たとえば、酸化マグネシウム(MgO)、Mg、Au、Pt、BeO、Cr、PolySi、Al、Al2O3、TiN、これらの複合膜、が挙げられる。
平行平板タイプの場合は、主基板301の側面にも二次電子放出物質膜を形成し(この場合、絶縁膜を介することが望ましい。)主基板301の2つの側面同士を平行平板電極とすることもできる。パイプ状のチャネル型二次電子増倍管である場合は、上部基板302の下面の電極333、下部基板303の上面の電極332、主基板301の2つの側面に形成した電極としても二次電子放出物質を連続して接続すれば良い。また、中央孔を有する基板側壁のように、中央孔を有した基板側壁を形成し、そこに平行平板型に二次電子放出物質から成る電極、または中央孔の内面に連続した二次電子放出物質から成る電極を形成して、二次電子増倍管を形成できる。
電極332、333の両端にはコンタクト孔323(その中に導電体膜が形成されている)が形成され、外部電極324(324−1、2、3、4)が上部基板302、下部基板303の外側に形成されている。イオンビーム331の導入側における電極332、333の外部電極324−1、3とイオン検出室の出口側における電極332の外部電極324−2、4との間に高圧直流電圧を印加すると、イオンビーム331は矢印で示すように、二次電子放出物質から成る電極332または333に衝突し、二次電子334−1が放出され、その二次電子334−1が対面する電極332または333に衝突し、二次電子334−2が放出され、これを繰り返してなだれ式に増倍されて最終的な二次電子334−nが、コレクター335に集められる。コレクター335は、イオン検出室309の二次電子放出物質から成る電極332、333の出力端部から出ていく二次電子334−nが衝突する部分、たとえば、イオン検出室309の長手方向の終端となる主基板301−6の側面に形成された導電体膜である。このコレクター335は、コンタクト孔323を通して外部電極324−5に接続する。イオン検出室309の二次電子放出物質から成る電極332、333の出力端部電極324−2、4とコレクター335に接続するコレクター電極324−5の間に二次電子334−nを導く直流電圧が印加されているので、二次電子334−nが殆どコレクター335へ集まりコレクター電極324−5を通してコレクター電流として検出される。
尚、平行平板型の場合、電極332、333の両端を互いにずらすことによって、傾斜電界を形成できるので、二次電子のサイクロイド運動に近い運動も起こすことができるので、コレクター電流を増大させることもできる。(特公平08−003984)
図42は、本発明を用いたダイノードを多数配置したイオン検出室を示す図である。図42(a)は基板面と平行方向の断面模式図、図42(b)は基板面と垂直方向の断面模式図を示す。イオン検出室637の隣室は質量分析室であり、これらの両室は基板側壁(隔壁)631−2−1および631−3−1(これらはつながった側壁であり、中央孔630(630−1)を有する)で隔てられていて、イオン検出室637は上下部基板641または642に開口した真空引き用開口部647を通して低圧になっている。質量分析室を出てイオン検出室に入ったイオンビーム630は、中央孔630(630−2)を有する基板側壁631−2−2および631−3−2(これらはつながった側壁である)の中央孔630(630−2)を通る。この中央孔630(630−2)の左右の側壁に平行平板電極を構成している導電膜633−1および633−2を形成する。一方の電極633−1は上部基板641に開口されたコンタクト孔(導電体膜が積層されている)645を通じて外側電極646−0へ接続し、他方の電極633−2は下部基板642に開口されたコンタクト孔(導電体膜が積層されている)643を通じて外側電極644−0へ接続する。これらの外側電極644−0および646−0へ電圧を印加することによって、平行平板電極633−1および633−2の間に電界が生じ、イオンビーム639の軌道が曲げられる。中央孔に平行平板電極を形成すれば、電極間距離が小さいので、小さな電圧印加でも電界は大きくなり、イオンビームを簡単に曲げることができる。従って、小さな電圧でなくても良ければ、基板側壁に設けた中央孔を用いなくても、通常の主基板631の側面631−2および631−3の一部に平行平板電極用の導電体膜633−1および633−2を形成すれば良い。導電体膜はたとえばCu、Al、W等である。
イオン検出室637には左右の主基板側面631−2および631−3よりイオン検出室637内側へ突出した複数の主基板631−2−3−1〜631−2−3−n(主基板側面631−2側)および631−3−3−1〜631−3−3−m(主基板側面631−3側)が形成され、その突出物631−2−3−1〜631−2−3−nおよび631−3−3−1〜631−3−3−mの表面には絶縁膜(たとえば、SiO2膜やSiNxOy膜やSiNx膜)を介して二次電子放出物質膜632(632−1、・・・、632−n)および635(635−1、・・・、632−m)が形成される。この二次電子放出物質膜はたとえば、CVD法、PVD法で積層した後、フォトリソ法+エッチング法で形成され、主基板の側面631−2および631−3からの突出部631−2−3−1〜631−2−3−nおよび631−3−3−1〜631−3−3−mの表面を少なくとも覆っている。二次電子放出物質膜は半導体または導電体であるから、隣同士および相互間に導通しないようにする。従って、主基板631と二次電子放出物質膜632との間には通常絶縁膜(SiO2等)を積層し、さらに突出部631−2−3−1〜631−2−3−nおよび631−3−3−1〜631−3−3−mに形成した二次電子放出物質膜632は互いに導通しないように、フォトリソ等およびエッチング等を用いて、不要な部分をエッチング除去する。次に導電体膜を積層し、突出部631−2−3−1〜631−2−3−nおよび631−3−3−1〜631−3−3−mに形成した二次電子放出物質膜632の一部と接触するように導電体膜配線634(634−1、・・・、n)および636(636−1、・・・、m)を形成する。平行平板電極用の導電体膜633−1および633−2の形成と同時に行なうことができる。
突出部631−2−3−1〜631−2−3−nおよび631−3−3−1〜631−3−3−mは、貫通室(イオン検出室)637を形成するときに形成できる。二次電子放出物質膜632や導電体膜633のパターン形成は、主基板631の表面(または上部基板641および下部基板642の表面)に対して略垂直な側面に感光性膜パターンを形成し、それをマスクにして二次電子放出物質膜632や導電体膜633をエッチング除去する必要があるが、感光性シートを用いて露光する方法や、電着レジスト法で感光性膜パターンを形成した後、等方性エッチング(ドライまたはウエット)で形成できる。露光法は斜め照射露光法や斜め回転露光法を用いて行なうことができ、焦点深度が深ければ垂直照射でも可能である。電子線照射露光も用いることができる。また、焦点深度の深い露光法であれば、厚いレジスト膜も露光できるので、感光性膜の形成を塗布法で行なうこともできる。これらの導電体膜パターン633、634、636は、図42(b)にも示すように上部基板641の下面および下部基板642の上面にも形成されているので、その部分に対して上部基板641および下部基板642にコンタクト孔645および643を形成し、その中に形成した導電体膜を通し、さらにその上に導電体膜電極配線646(646−0、1、・・・、n、n+1)および導電体膜電極配線644(644−0、1、・・・、m)を形成する。これによって、導電体膜パターン633、634、636へ電圧を印加できる。
イオンビーム639はイオン検出室637に入ると、上述した平行平板電極633(633−1、2)で発生する電界によって軌道を曲げて、一番近い突出物631−2−3−1の二次電子放出物質膜へ照射することができる。特に、導電体膜634−1を通してこれと接続する二次電子放出物質膜632−1へイオンビームの電荷と逆の電位をかければ、さらにエネルギーを得て照射することができる。二次電子放出物質膜632−1への電圧をかけるようにしておけば、その条件によって平行平板電極633(633−1、2)の存在はなくても良い。ただし、平行平板電極633(633−1、2)を設ければ所定の場所にコントロールして照射できる。イオンビーム639が二次電子放出物質膜632−1へ衝突すると、二次電子640が放出される。
その対側面631−3に形成された突出部635−3−3−1に形成された二次電子放出物質膜635−1に導電体膜636−1からプラスの電位(発生した二次電子640が元に戻らないように、二次電子放出物質膜632−1の電位よりプラス側にしておく必要がある。その電圧条件は測定しながら最適値を設定すれば良い。)をかけておけば、矢印641−1のように二次電子放出物質膜632−1より放出された二次電子の殆どが二次電子放出物質膜635−1に入射し、さらに二次電子を放出する。これが繰り返されて最終段の突出部631−2−3−nに形成された二次電子放出物質膜632−nから増倍された多量の二次電子640−pが出射されて、コレクター導電体膜638へ集められる。コレクター導電体膜638もコンタクト645を通して外側電極配線646−(n+1)から電圧を印加することができ、二次電子放出物質膜632−nの電位よりプラス側にしておけば、殆どの二次電子がコレクター導電体膜638に照射され、二次電子により発生した電流を検知できる。
たとえば、入射するイオン639がプラスの場合は、平行平板電極633−1に負電圧を印加し主基板631−2側へイオン639を曲げ、また二次電子放出物質膜632−1に負電圧(たとえば、−aV)を印加しておけば良い。さらに二次電子640−1が次に当たる二次電子放出物質膜635−1に−aVよりも少しプラス側の電圧(たとえば、−a+bV)をかけておけば、二次電子640−1が二次電子放出物質膜635−1に当たる。このように次段のダイノードに前段のダイオードより少し(たとえばbV)だけプラスの電圧)をかけていき、最終段の二次電子放出物質膜632−nにcVをかける。(たとえば、c=−a+n×2b)さらに、コレクター638へCc+dVの電圧を印加すれば、最終段の二次電子放出物質膜632−nから出た二次電子640−pは殆どコレクター638へ集まる。上記のa、b、c、dの値は、実測から決めていけば良いが、本発明のイオン検出室637は極めて小さく、しかもLSIプロセスを用いているので極めて正確に作製できるので、a、b、c、dの値は小さくても比較的高電界を得ることができる。たとえば、基板側面631−2および631−3に形成された二次電子放出物質膜同士の距離を1mmとすれば、a=10V〜500V、n=10、m=9として、b=0.5V〜25V、c=0V、d=1〜50Vの間で選択できる。また、基板側面631−2および631−3に形成された二次電子放出物質膜同士の距離を長くなれば、たとえば、上記の値をその倍数だけ大きくしていけば良い。
図42(b)はイオン検出室637の縦方向(基板面に対して垂直方向)断面模式図であるが、断面方向(紙面に対して垂直方向)の構造も一部重ねて示している。たとえば、平行平板電極633(633−1、2)およびコンタクト孔643、645mおよび電極・配線644−0、646−0は必ずしもすべてが同一の断面にはならないが、それらの関係が分かるようにすべての構造を記載している。ただし、同一断面にならないものについては透明模様を採用している。このような関係は直ぐに分かるので、他の部分にも適用している。コレクター638の領域はイオン検出室637と大きさを同じとして描いているが、横方向(図42(a)の縦方向)は大きく取ることもできるので、コレクター638のある領域637−Aを横方向に広くしてコレクター638の面積を大きくし、より多くの二次電子640−pを捕捉することもできる。
図42(c)は、図42(a)および(b)におけるA−A‘部分の断面模式図であり、図42(a)および(b)の左右方向から見た図である。破線647で示す線は主基板631の側面631−2とダイノード部分となる突出部631−2−3との境目を示すが、実際には同じ主基板であるから境目は分からないので、他の所でイオン検出室となる空洞で突出部分がない部分における主基板側面を延長して破線として記載している。同様に破線648で示す線は主基板631の側面631−3とダイノード部分となる突出部631−3−mとの境目を示す。突出部631−2−3および突出部631−3−mの表面にはそれぞれ二次電子放出物質膜632および635が上基板641の下面から下基板642の上面まで積層されている。また、突出部631−3−mの上の二次電子放出物質膜632の表面にはさらに導電体膜636が上基板641の下面から下基板642の上面まで積層されている。このように広い領域で導電体膜636と二次電子放出物質膜632は接触しているので、二次電子放出物質膜632、635が導電体膜の場合はもちろん、半導体膜の場合にも、導電体膜636から二次電子放出物質膜632に十分に電位が印加される。当然ではあるが、突出部がある部分はない部分に比べてイオン検出室が狭くなっている。尚、これまでもそうであるが、二次電子放出物質膜632、635と主基板631との間には絶縁膜を形成して導通しないようにすることもでき、さらに導電体膜636や二次電子放出物質膜632、635の上に保護膜としての絶縁膜を形成することもできる。本発明の優れている点は、貫通室の中でコンタクト孔やビア等の小さなパターンを形成する必要がないので、貫通室のような凹部となった部分におけるパターニングの正確さが不要であり製造がしやすい。
図42(d)は、図42(a)および(b)におけるB−B‘部分の断面模式図であり、図42(a)および(b)の左右方向から見た図である。中央孔630−2の内面の左右両側に平行平板電極用の導電体膜633(633−1、2)が形成されている。これらの導電体膜633(633−1、2)は図42(a)および(b)に記載しているように上基板641または下基板642の方にまで伸びていて、外側電極・配線646−0や644−0から電圧を印加できる。中央孔630や導電体膜633の形成方法は、これまでも説明した様に主基板631を上下に分離して、それぞれ上基板641や下基板642に付着させて形成することができ、さらにそれらを貼り合わせれば良い。その貼り合わせ(付着)部分を破線649で示す。
突出部分631−2−3−1〜nや631−3−3−1〜mの形状を図42(a)に示すように、イオンビーム639の入射方向に傾いた傾斜面を持つように主基板631の厚み方向に略垂直に形成すると、イオンビーム639を一定角度で二次電子放出物質膜632のパターンへ照射しやすい。さらに二次電子の入射角度もほぼ一定角度で対面する傾斜面に入射しやすいので、設計や条件設定が簡単である。イオンビーム639の入射側に最も近くイオンビームが照射されるダイノード部である突出部631−2−3−1の傾斜角をα1、そこから出た二次電子が照射される対向するダイノード部である突出部631−3−3−1の傾斜角をβ1、主基板631の側面631−2側のn番目のダイノード部である突出部631−2−3−nの傾斜角をαn、主基板631の側面631−3側のm番目のダイノード部である突出部631−3−3−mの傾斜角をβmとする。このとき、10度<α1、・・・、αn<45度、10度<β1、・・・、βm<45度とするのが良い。これによってイオンビームの照射角度や二次電子の放出率および照射角度を制御しやすい。尚、傾斜角を小さくすれば、イオン検出室を長くする必要があり、傾斜角を大きくすれば、イオン検出室を短くできる。(同じダイノード数の場合)
尚、突出部分631−2−3−1〜nや631−3−3−1〜mの表面形状は湾曲形状にすることもできる。たとえば、主基板を上下2つに分割して、それぞれ突出部分631−2−3−1〜nや631−3−3−1〜m形成するときに横方向エッチング(サイドエッチング)と縦方向(主基板の厚さ方向)のエッチング速度を制御するウエットエッチングまたはドライエッチングを用いて、突出部分631−2−3−1〜nや631−3−3−1〜mの表面形状を湾曲(片側)または傾斜面エッチングして、それらを中央部分で付着させれば良い。突出部分631−2−3−1〜nや631−3−3−1〜mの表面形状をこのような傾斜面または湾曲面にすれば、二次電子線等を突出部分631−2−3−1〜nや631−3−3−1〜mの表面に集中できるので、より多くの二次電子線を発生させることができる。
図43は、図42で示す平行平板型電極を作製する方法の一実施形態を示す図である。この平行平板型電極633−1、2の作製方法の難しさは、中央孔630−2の側面に電極を形成することである。図43では図42で示す平行平板型電極付近の状態だけを示す。図43では主基板は上下に半分分割される。図43(a)〜(e)は平面図(主基板の表面に平行)であり、図43(f)〜(k)は平面図に垂直な断面図である。下部基板652に付着した主基板651の表面に感光性膜パターン653を形成し、中央孔を形成する部分を開口し(図43(a)、その開口部から主基板651に中央孔となる凹部654を形成する。この中央孔654の深さは、実際の中央孔(図42においては中央孔630−2)の深さの約半分である。この中央孔654の側面には平行平板電極を作製するので、この中央孔654のエッチングではできるだけ垂直にエッチングする。図43(g)は感光性膜パターン653を除去した状態である。
次に、イオン検出室となる部分の感光性膜655の窓開けを行なう。感光性膜655−2は中央孔654を有する基板側壁を形成するパターンであり、感光性膜655−2、3はイオン検出室となる部分の基板651の側面を形成するパターンであり、開口部はイオン検出室となる部分である。(図43(b))これらの感光性膜パターンをマスクにしてイオン検出室となる部分の主基板651をエッチングする。これらのエッチングは垂直エッチングでも、あるいはテーパーエッチングでも良い。将来重ねて貼り合わせるときに上面がコントロールされたサイズでできていれば良い。図43(c)は、イオン検出室となる部分の主基板651のエッイングを行ない、感光性膜655を除去した後の状態を示していて、イオン検出室の側面となる主基板651−2、3や中央孔654−1を有する基板側壁651−1、さらにはイオン検出室の下面となる下部基板652が示されている。図43(b)で示す凹部654の長手方向(中央孔のイオンビーム進行方向)は、マスクずれやエッチングばらつき等も考慮して実際の中央孔654−1より大きく形成した方が良い。
次に主基板651上に絶縁膜を形成し、(絶縁膜は記載せず、主基板が絶縁体であるときはなくても良い)導電体膜656を積層し、平行平板用の電極形成用の感光性膜パターン657−1や配線形成用の感光性パターン657−2、3を形成する。これらの感光性膜パターンは段差部に形成されるので、感光性シート膜や電着レジスト膜、焦点深度の大きい露光法、斜め露光法、回転露光法等を用いて行なう。(図43(d))その感光性膜パターンをマスクにして導電体膜656をエッチングして、導電体膜パターン656(656−1、2、3)を形成する。図43(e)は感光性膜657を除去後の平面図であり、導電体膜パターン656−1は中央孔654−1の左右側面に形成された電極となり、導電体膜パターン656−2、3は下部基板652に形成された配線パターンである。図43(e)におけるA−A‘断面が図43(h)であり、主基板651の側壁651―1の中央部に形成された中央孔654の左右の側面に導電体膜電極656−1が形成されている。図43(e)におけるB−B‘断面が図43(i)であり、中央孔654の側面に導電体膜電極656−1が形成され、その導電体膜電極656−1は下部基板652に形成された配線パターン656−2、3と基板側壁651−1の段差部で接続している。この導電体膜656の形成は、まずCVD法やPVD法で形成したときは段差部で薄くなるが、その後メッキ法や選択CVD法等で導電体膜を厚く積層するので、段差部でも十分接続する。さらに主基板651のエッチングのときにテーパーエッチングをすれば段差部がテーパー化するので、導電体膜の接続もより十分となる。尚、図43(i)では導電体膜656と主基板との間の絶縁膜は記載していない。
同様のものを上部基板658側にも形成して、下部基板652側と上部基板658側とを付着させることによって、中央孔に形成された側面が平行平板電極となるイオン検出室が形成される。図43(k)は下部基板652側と上部基板658側とを付着させた後、コンタクト孔659(659−1、2)、660(660−1、2)、それらのコンタクト孔への導電体膜の形成、さらにそれらに接続する電極・配線661(661−1、2)、662(662−1、2)を形成する。(これらのコンタクト孔や電極・配線は付着させる前に形成することもできる。)上下の導電体膜配線656−2と4、および656−3と5との接続、さらには中央孔654の側面に形成された導電体膜656−1同士(656−1−1、2)の接続は、付着時にたとえば圧着されて接続する。あるいは、適度な熱処理を行なって接着したり、融着させることもできる。接着剤を用いて接着するときには、分散型導電体粒子を含む接着剤で圧着すれば、導電体膜の有る部分だけ接続できる。以上のような簡単なプロセスで中央孔側面に平行平板電極を形成し、イオン検出室外側から電圧印加も自由にできるので、所望の条件でイオンビームの軌道を変化させることができる。上記説明や図面から簡単に分かるように、中央孔の途中で電極を分離することもでき、それぞれの電極への電圧印加をすることができ、前段の平行平板電虚と後段の平行平板電極のそれぞれでイオンの軌道を変化させることができるので、より精密なイオンビーム制御を行なうこともできる。さらには、中央孔の上下にも平行平板電極を簡単に形成できる(上下だけに感光性膜パターンを形成し、側面の導電体膜をエッチング除去すれば良い)ので、イオンビームの上下方向の制御もできる。従って、上下方向の制御と左右方向の制御を行ないながらイオンビームを左右上下に制御することもでき、所望のダイノードやチャネル電極の所望部分へイオンビームを照射することもできる。
図44は、本発明の中央孔をチャネル形二次電子増倍管に適用した実施例を示す図である。イオン検出室677内に長さLの中央孔674−3を有する基板側壁671−3が形成されている。イオン検出室677は、上部基板672と主基板671と下部基板673が付着した状態で上部基板672と下部基板673の間の主基板の一部または全部がくり抜かれた空洞室である。イオン検出室677は、隣室のたとえば質量分析室から入射するイオンビーム678がイオン検出室677と隣室とを隔てる基板側壁(隔壁)671−1が有する中央孔674−1を有する基板側壁(隔壁)671−1、イオンビーム678を曲げてチャネル形二次電子増倍管680の中央孔674−3の所定の内面壁へ当てる平行平板型電極676−1−1およびイオンビームが通る中央孔674−2を有する基板側壁671−2、チャネル形二次電子増倍管680、チャネル形二次電子増倍管680から出射する二次電子線679−nが照射するコレクタ電極676−4、およびコレクタ電極676−4を付着(積層)させて支持する基板側壁671−4を有する。本発明では、コレクタ電極も他の導電体膜と同じプロセスで積層できる。たとえば、上部基板672または下部基板673に付着させた主基板671に貫通室677を形成し、その後、主基板が導電体基板(たとえば、Fe系やCu系、Al系、導電C系)や半導体基板(たとえば、Si系、C系、化合物系)の場合は、絶縁膜(たとえば、SiOx、SiOxNy、SiNy)を積層させた後、導電体膜(たとえば、Cu系、Al系、導電C系、Ti系、W系、シリサイド系、導電性PolySi系、Mo系、Ni系、Au系、Ag系)を積層し、所望のパターニングをすれ良い。その後、上部基板側と下部基板側を貼り合わせれば良い。コレクター電極676−4はイオンビーム678の進行方向に対して直角方向の基板側壁671の側面671−4に形成されているように描いているが、二次電子679−nを最も捕捉しやすいように形成しても良い。たとえば、基板側面671−4の中央部を窪ませても良く、この形成方法は基板側面671−4(の分割した半分)を形成時に等方性エッチングやコントロールしたサイドエッチングを行なうことによって作製できる。また、イオンビーム678の進行方向に対して基板側壁671の側面671−4を傾斜させることも簡単にできる。さらにコレクター電極のあるイオン検出室(二次電子増倍管となる領域680を出た所からのイオン検出室)を主基板側面方向(主基板の厚み方向と直角な、図44の紙面に対して直角方向)に拡張して広げて作製しても良い。
図44の平行平板電極676−1(676−1−1、2)も図43に示したものと同じく中央孔に形成した電極であるが、上部基板672および下部基板673、および主基板表面に平行な電極である点で図43に示したものとは異なる。(図43に示したものは上部基板672および下部基板673、および主基板表面に垂直方向に形成されている。)この形成方法は、既に記載した通りであるが、導電体膜676−1−1を形成した後に、中央孔674−2の底面側を感光性膜でカバーし、側面側の感光性膜を除去し、それらのパターンをマスクにして側面側の導電性膜をエッチング除去すれば良い。あるいは、基板側壁を用いないで、上部基板672の下面に上部電極を形成し、下部基板673に下部電極を形成して、平行平板電極を作製することもできる。この場合、主基板671を上部基板672または下部基板673に付着させた後に貫通室を形成し、その後絶縁膜および導電体膜を形成して、感光性膜をパターニングし上部電極を上部基板672の下面に、下部電極を下部基板673の上面に形成して平行平板電極構造を構成することもできるし、または、上部基板672および下部基板673にそれぞれ上部電極および下部電極を形成した後に、既に貫通室または凹部を形成した主基板671を付着させて(貫通室または凹部の部分に上部電極および下部電極のパターンを合わせる)、平行平板電極構造を構成することができる。(凹部の場合は、付着させた後に完全に貫通室となるように主基板の除去(エッチング)を行なう必要がある。)中央孔の上下電極の距離をdとすれば、電界E=V/dであるからdおよびVを変化させることによってイオンの軌道を変化させることができる。すなわち、同じイオン軌道の変化量を得るときに、dが小さければ印加電圧Vは小さくて済む。dが最も大きくなるときは、主基板671の側壁がない場合であり、そのときdは主基板の厚みにほぼ等しい。(実際には、絶縁膜や導電体膜の厚みも考慮する必要がある。)
次に、二次電子増倍管680について詳細に説明する。本発明を用いれば簡単なプロセスでチャネル形二次電子増倍管を作製できる。すなわち、長さLの中央孔674−3を有する基板側壁671−3を作製する。この作製方法はこれまでと同じく、主基板671を2つに分割し、深さd/2、幅eの凹部を作製する。垂直エッチング法を用いれば断面が矩形形状の凹部になり、サイドエッチング法を用いれば傾斜した凹部(略台形形状と呼んでも良い)が形成できる。(少し湾曲した形状となる場合もある。)次に、主基板671の基板側壁671−3(この長さが二次電子増倍管のチャネル長さとなる)を作製する。すなわち、基板側壁671−3等(他の基板側壁パターンも含む)以外の主基板671のエッチングを行ない、貫通室であるイオン検出室677を形成する。この後、凹部674−3および基板側壁、貫通室等へ絶縁膜および二次電子放出物質675を積層し、次に二次電子放出物質675を図44に示すように凹部674−3および基板側壁671−3の両端の側面部分(および上部基板672、下部基板673、基板671の貫通室677の側面で必要な部分)に二次電子放出物質675を残して、それ以外はエッチングする。次に導電体膜676を積層し、二次電子放出物質675の両端部部分と接触するように配線676−2(676−2−1、2)および676−3(676−3−1、2)、それ以外の配線676−1(676−1−1、2)やコレクター電極676−4等を形成する。この後導電体膜676を保護する保護膜(たとえば、SiOx、SiOxNy、SiNy)を形成しても良い。この後、上部基板側と下部基板側を貼り合わせる(付着させる)。
付着した後の図44(a)におけるA−A‘の断面図を図44(b)に示す。中央孔674−3は主基板671(671−3)に積層された絶縁膜674−3、その上に積層された二次電子放出物質675に囲まれている。この空洞部分674−3を二次電子が増倍されながら進んでいく。すなわち、イオンビーム678が空洞(チャネルと呼ぶ)の入り口付近に当たり、そこで二次電子679−1が発生する。二次電子増倍管680の入り口側の電極676−2(676−2−1、2)と二次電子増倍管680の出口側の電極676−3(676−3−1、2)との間に電圧Vが印加され(入口側の電圧を出口側より負側にする。たとえば、出口側を0Vとした時、入口側に−P0V(P0>0)とすると出口側へいくに従い二次電子増倍管は正側になっていくので、電子が次々に二次電子放出物質675に当たりながら放出電子数を増大していく。出口では、コレクター676−4の電圧を出口側電極676−3(676−3−1、2)より正側にしておけば、(たとえば、出口側を0Vとして、コレクター電圧をQ0V(Q0>0)とする)最後の二次電子679−nがコレクター676−4へ集められて、コレクター電流を検出できる。中央孔674−3の形状は、凹部のエッチングの時に種々変えることができるので、最適の形状を選択できる。また、凹部の側面または上下の二次電子放出物質を除去すれば、平行平板形の二次放出電子物質による電極も形成できる。主基板671の側壁671−3をなくして、上部基板672、下部基板673、主基板671の側面(図44の紙面に垂直方向)に二次電子放出物質を積層すれば、深さdが主基板671のほぼ厚み分、幅eが主基板の側面のほぼ幅分のチャネル型(平行平板型もパイプ型(内部で二次電子放出物質がつながっている)もできる)の二次電子増倍管も作製できる。
さらに、チャネル深さ(主基板の厚み方向)dを進行方向に徐々に大きくすることは難しいが、チャネル幅(主基板の側面方向、すなわち図44の紙面に垂直方向)eを進行方向に徐々に連続的に大きくすることは簡単にできる(マスクで簡単に作製できる)ので、傾斜電界も容易に作製できる。従って、チャネル長さLを余り長くしなくても傾斜電界を実現できる。尚、平行平板電極で電界をかけてイオンビームを上下(図44の方式)または左右(図42、図43の方式)に軌道を制御できるが、二次電子増倍管680内の最初にあたる二次電子放出物質の場所と対応させておけば、発生する二次電子は電界に引き寄せられていくので、二次電子増倍管680の構造が平行平板型の場合において、その電極構造が上下型でもまたは左右型でもそれほど問題なく二次電子を増倍することができる。あるいは、イオンビームの軌道を変化させる平行平板電極がなくても、直接二次電子増倍管680内へ入射させれば電界に引き寄せられて二次電子放出物質へ当たり二次電子を発生し、その後も電界に引き寄せられて二次電子の増倍化を実現できる。ただし、平行平板電極があれば、二次電子増倍管の所望の場所へイオンビームを照射できるので、二次電子増倍管の長さや大きさ(dやe)を小さくすることができる。
本発明の質量分析装置において、Si基板(4インチウエハ以上)の上下面にガラス基板を付着して、Siウエハに複数の貫通室を作製する。隣接する貫通室は中央孔(中央に基板面と平行な水平方向溝が中央に形成される)を有する基板側壁板で仕切られる。この中央孔を有する貫通室の形成方法は種々あるが、たとえば、中央孔の真中付近で上下別々に分けて、中央孔の半分および貫通室の半分を形成して、上側と下側を中央孔の所で付着させて作製できる。すなわち、一括基板型装置である。
図45は、ガラス基板を上下面に付着したSi基板(4インチウエハ以上)を用いた本質量分析装置の断面図(基板面に垂直方向)を示す。図46(a)は、電場部および磁場部を含む質量分析部の平面図(基板面に平行な断面図)示す。図46(b)は、磁場部およびイオン検出部の別の実施形態を示す平面図である。本質量分析装置は、図45に示すように、試料供給部、イオン化部、引き出し電極部、質量分析部、イオン検出部から構成される。
試料供給部から供給された試料ガスまたは試料液体は、イオン化部出口で霧(ガス)化し、高電界が印加されるイオン化部でイオン化する。その発生したイオンは引き出し電極・加速電極部の引き出し電極により引き寄せられ、加速または減速・収束して、電場室および磁場室を有する質量分析部へ入り、質量分析部で質量電荷比m/z(m:質量、z:電荷)に応じて選別され、イオン検出部へ出射される。イオン検出部でイオン電荷が電子増倍され電流としてイオン量が検出される。本発明は、ガスクロマトグラフィや液体クロマトグラフィーなどと結合した質量分析装置(GC−MS、LC−MS)の一括基板型装置とも言える。(尚、固体試料へも応用できる。)図45に基づいて、各部の概要を述べる。
<A。試料供給部>
図45に示す試料供給部およびイオン化部は、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)を本発明に適用したものである。試料は、目標物質(試料)を含む液体(試料液)を使用するので、液体クロマトグラフィー(LC)−ESI法の一種である。試料液の入る試料導入ライン17を上部基板2の開口部14に接続する。Si基板の中央(厚さ方向における)に形成された中央孔(試料導入管)11−1が形成されており、その中央孔(試料導入管)11−1の入り口側は厚み方向に形成された縦孔(試料導入管)13に接続し、その縦孔(試料導入管)13は上部基板2の開口部14に接続する。中央孔(試料導入管)11−1の出口側は、イオン化部のイオン化室4−1に接続する。試料液は矢印Aから入り、中央孔(試料導入管)11−1はキャピラリ(毛細管)になっているので、イオン化室に入った所で広がり、霧化(ガス化)(記号A-1で示し、スプレーガスとも言う)する。
上部基板2の開口部14、縦孔(試料導入管)13のサイズは比較的自由に選択できる。中央孔(試料導入管)11−1のサイズはSi基板11の厚みに依存するが、Si基板11も積層すれば自由に厚みを増大することもできる。従って、たとえば、Si基板11の厚みは、0.5mm〜10mmで調節でき(もちろん、これより広い範囲で調節も可能)、中央孔(試料導入管)11−1の直径は50μm〜1mmを正確に作製でき、毛細管としての機能を発揮できる。中央孔(試料導入管)11−1には加熱用導電体膜9−7、10−7も形成できるので、試料を加熱することもできる。あるいは、中央孔11−1の外側において凹部れ、この導電体膜電極9−1に上部基板2に形成されたコンタクト配線5を通して、上部基板2の上面に形15を上下に設けて、この部分に熱い液体や気体を流したり、または薄膜抵抗体を形成し電気加熱して、中央孔11−1内の温度を高めることもできる。
<B。イオン化部>
イオン化室4−1は、Si基板1内に形成された貫通室であり、上部が上部基板(たとえば、ガラス基板や石英基板)2、下部が下部基板3、左側面(図45における)が中央孔11−1を有する基板側壁1−1、右側面が中央孔11−2を有する基板側壁板1−2、奥側側面および手前側側面もSi基板側壁(図45では示すことができない)によって囲まれている。
上部基板2の下面の一部には導電体膜電極9−1が形成さ成された外側電極7−1が接続する。また、導電体膜電極9−1は中央孔内面の導電体膜電極9−7と接続する。
下部基板3の上面の一部には導電体膜電極10−1が形成され、この導電体膜電極10−1に下部基板3に形成されたコンタクト配線6を通して、下部基板3の下面に形成された外側電極8−1が接続する。また、導電体膜電極10−1は中央孔内面の導電体膜電極10−7と接続する。
導電体膜電極9−1は、上部基板2に形成してからSi基板1に付着して、形成できる。あるいは、上部基板2を付着したSi基板1に貫通室4−1を形成してから、導電体膜電極9−1を形成することもできる。このとき、中央孔11−1も形成できるので、中央孔内面に導電体膜電極9−7も形成することができる。導電体膜電極10−1および10−7も同様である。また、貫通室内において、記載していないが、導電体膜とSi基板1との間には絶縁膜(CVD法等で積層、たとえば、SiO2膜やSiN膜)が形成されている。(尚、絶縁膜は、他の部分についても記載していない。)また、導電体膜の上には保護膜として絶縁膜を形成することもできる。
上部基板2側に付着したSi基板1uと下部基板3側に付着したSi基板1bとは、貫通室、中央孔、絶縁膜、導電体膜、保護膜等を形成した後にSi側の面で付着する(付着面を一点鎖線Mで示す)。この付着法として、常温接合、接着剤を使用した接着、間にガラス基板を挟んで静電陽極接合等を使うことができる。
従って、毛細管としての中央孔11−1の内面の導電体膜電極9−7および10−7には、外側電極7−1および8−1から2000V〜4000Vの高電圧を印加できる。(対電極は、基板側壁板1−2上の導電体膜電極10−2−1である。)この結果、試料液が毛細管である中央孔11−1を通り、イオン化室4−1の出口18において帯電した液滴(スプレーガス)A-1となって、貫通室4−1に放出される。
貫通室4−1内は、導電体膜電極9−1、10−1の一部を使って加熱することもでき、また開口部16を上下基板2、3に設けてポンプに接続し、気化した溶媒を速やかに排出することもできる。また、前述したように中央孔11−1を加熱することもできるので試料液Aのガス化を助けることもできる。この結果、帯電液滴(スプレーガス)は微細粒子化・乾燥し、試料がイオン化する。
イオン化室4−1の温度が他の部分へ伝達しないようにするために、イオン化室4−1の周囲や中央孔11−1の周囲に凹部15と同様の凹部を設けて、その凹部に冷却ガス(ドライアイスガス等)や冷却水を導入することもできる。また、イオン化室等の汚れは、開口部からパージガスやクリーニングガス、あるいは洗浄液等を導入し、常にクリーンな状態を保持することもできる。本発明の貫通室の容積は非常に小さいので、クリーニング後も短時間で元の状態へ復帰しやすい。
尚、イオン化法は、以下の他のイオン化法も本発明の一括基板型で作製可能なので、TEG(テストパターン)で他のイオン化法も検討する。また、イオン化室4−1に設けた開口部から外部で発生したイオンを導入することもできる。
<(1)大気圧化学イオン化(APCI)、(2)大気圧光イオン化(APPI)、(3)電子イオン化(EI)(4)平行平板電極による高周波プラズマによるイオン化>
たとえば、(3)電子イオン化(EI)について、図47に基づいて簡単に説明する。イオン化室34−1は、上部基板32、下部基板31が上下面に付着したSi基板31内に形成された貫通室であり、開口部42から試料ガスGが導入され、開口部43から真空引きされ、低圧にされる。下部基板面にタングステン(W)膜のフィラメント41が形成され、外側電極38−1−1および38−1−2で電流が流れ、フィラメント41が加熱され熱電子(e)が発生する。熱電子eは対面する上部基板面に形成された電子トラップ電極39−1−2に向かって飛んでいく。(イオン化電圧50V〜100V)イオン化室34−1へ導入された試料ガスGは熱電子によりイオン化する。(M+e→M+2e−)生成したイオンは、基板側壁31−1の側面に形成された導電体膜電極(リペラー電極)40−1−1により押し出され、イオン化室34−1から隣の引き出し電極・加速電極室34−2へ送られる。引き出し電極・加速電極室34−2ではイオンは引き出し電極・加速電極40−2−1、2により加速し、図45等に示した隣の質量分析室へ入射する。必要なら、さらに電極を並べて加速または収束させる。
上部基板の外側に電磁石コイルB−3が配置される。(下側N極)下部基板の外側に電磁石コイルB−4が配置される。(上側N極)このようにイオン化室を磁石で挟むことにより、フィラメント41から出た熱電子eは磁場により螺旋を描きながら電子トラップ電極39−2−2へ向かい、試料ガス分子との衝突時間(機会)が増えて、イオン化効率を増大させることができる。
他の方式についても本発明で作製でき、イオン種により最適の方式を選定できる。
<C。引き出し電極部>
引き出し電極室4−2は、中央孔11−2を有するSi基板側壁板1−2によりイオン化室4−1と仕切られている。Si基板側壁板1−2に接近して中央孔11−3を有するSi基板側壁板1−3が配置され、Si基板側壁板1−2の側面および中央孔11−3に導電体膜電極10−2−2が形成され、外側電極8−2−2に接続する。Si基板側壁板1−2の側面の導電体膜電極10−2−2と対面するSi基板側壁板1−2の側面にも導電体膜電極10−2−1が形成され、コンタクト配線6を通して外側電極8−2−1に接続する。Si基板側壁板1−2の導電体膜電極10−2−1は接地され、Si基板側壁板1−3の導電体膜電極10−2−2にはイオンと逆電荷の電圧が印加されている。イオン化室で発生したイオンは、Si基板側壁板1−2の中央孔11−2を通って引き出し電極室4−2に入り、引き出し電極である導電体膜電極10−2−2に引かれて加速され、Si基板側壁板1−3の中央孔11−3を通って隣室へ出射される。この引き出し電極10−2−2に印加される電圧をVとすれば、1/2mv=zeV (i)が成り立つ。(mイオンの質量、vイオンの速度、z電荷数、e電荷素量、V印加電圧)
m=10−25kg、V1=10Vとすると、イオンの速度v=4.5×10m/secとなる。
引き出し電極室4−2には、真空引き用の開口部14が形成され、所定の圧力に保持される。また、真空引き用以外にも開口部14が設けられ、Ar等の不活性ガスを入れて引き出し電極室4−2をクリーニングできる。
さらに、引き出し電極室4−2には、必要なら、引き出し電極と同じ構造の中央孔を有する基板側壁板(導電体膜も形成)を設けて、イオンと逆電圧を印加して加速させたり、またはイオンと同電圧を印加して減速および集束させることもできる。
<D。質量分析部>
質量分析部は、電場部および磁場部を持つ二重収束型である。(単収束型の場合電場部をなくす。)
<D−1.電場部>
引き出し電極部で加速したイオンは、Si基板側壁板1−4が有する中央孔11−4を通って電場室4−3へ入射する(速度v)。電場室4−3は扇型形状の貫通室であり、扇型形状のSi基板1の2つの対向する側面(図46(a)参照、図45では奥側Si基板側面および手前側Si基板側面)に導電体膜電極10−8(10−8−1、10−8−2)が形成されている。この導電体膜電極10−8には外側電極7−3および8−3から電圧Vを印加できる。扇型電場室4−3の中心軌道半径をr、導電体膜電極10−8(10−8−1、10−8−2)間距離をdとすると、zeV/d=mv/r (ii)。(i)と(ii)より、r=2dV/Vとなる。たとえば、d=10mm、V=10V、V=5Vとすれば、r=40mmである。従って、4インチウエハに作製可能である。
電場室4−3と磁場室4−4の間にエネルギーフィルター室4−6を配置し、電場で収束された収束面付近にエネルギーフィルターとなるスリット(基板側壁板1−5−2が有する中央孔11−5−2)を配置して、一定範囲の運動エネルギーを持つイオンだけを通過させる。
<D−2.磁場部>
電場によって選別されたイオンは、Si基板側壁板1−5−3の中央孔11−5−3を通って、速度vで磁場室に入り扇型磁場Bにより軌道を曲げられ、半径Rの中心軌道を描く。{zevB=mv/R (iii)}
磁場室4−4では、基板面に対して垂直方向に磁場Bが印加されている。すなわち、上部基板2の上面にB−1の電磁石(コイル)が、また下部基板3の下面にコイル軸が基板面に垂直になるように配置される。(i)式から見積もったイオン速度を10〜10m/sec、R=4cm、Si基板の厚さ(磁場室の高さ)1mmとすると、磁界H(=B/μ0、μ0透磁率)は10H(v=10m/sec)、10H(v=10m/sec)、10H(v=10m/sec)となる。このような磁界は、コイル配線直径90μm、コイル直径1mm、巻き数100のコイルに約0.1A(v=103m/sec)、1A(v=10m/sec)、10 A(v=10m/sec)の電流を流して得られる。
このようなコイルは、基板上にコイル配線(Cu等をPVD法およびメッキ法により形成)を積層することによっても実現できる。(特許出願済)基板上に形成されたコイルはそのサイズを小さくできる(直径0.1mm〜1mm以下のコイルも簡単に作製可能)ので、磁場室が小さくても十分な磁場強度を磁場室に印加できる。また、基板上に形成されたコイルを用いると、非常に正確に(合わせ誤差5μm以下)磁場室の所定位置にコイルを配置できる。特に、コイルを基板面に隙間なく(10μm以下の間隔で)並べることが可能であり、個々のコイルの電流制御が可能であるため、複数のコイルを配置した領域における磁場室の磁場強度を均一に保持することもできる。
コイル配線の層間絶縁膜の厚みを10μmとし、二重巻き配線にすれば(基板形成コイルの場合、多重巻きはプロセス増加なく簡単に作製できる)、上記サイズのコイル高さは約5mmとなる。コイル配線を超伝導体(たとえば、Nb系や高温超電導物質材料)にすれば大電流を流すこともできるので、磁場強度の調節範囲が大きくなり、質量の大きな分子にも適用できる。コイル領域を液体Heに浸漬しても少ない体積で済むため、ランニングコストも少なくて済む。
<多種イオンの同時検出法の調査・研究>
本発明は、多数のイオン検出部を同時に(コストアップなく)一括して作製できる。これらの検出部は同じサイズで同じ性能を有するため、各イオン種の検出能力にバラツキが少なく、絶対的比較が可能である。その一例を図46(b)に示す。
図46(b)は、磁場部の周囲に多数のイオン検出部を設けた質量分析装置を示す平面図である。引き出し電極・加速電極室、または図46(a)に示すエネルギーフィルター室である貫通室22−1を進行してきたイオン24がSi基板側壁板21−1の中央孔27から貫通室22−2へ出射される。貫通室22−1に直接接続する貫通室22−2の一部は磁場室Bとなっており、貫通室22−1から出射したイオンは必ず磁場室Bを通る。磁場Bはイオンの入射軸に対して180度に印加されている。磁場室Bは矩形(正方形、長方形等)状または半円形状の磁場であり、基板面に垂直に磁場Bが印加される。貫通室22−1の外周は、矩形状または円形状になっており、その外周に沿って多数のイオン検出部22−4(22−4−1−n、22−4−2−m、22−4−3−p、22−4−4−q、m、n、p、q=1、2、・・・)が配置される。(iii)式から分かるように、一様な磁場Bのもとで、イオン軌道半径Rは質量電荷比質量電荷比m/zに依存するので、m/zが異なるイオン種は異なるイオン検出部へ入る。従って、磁場Bを掃引することなく多数のイオン種を同時に同定できる。さらに磁場Bの掃引も行なえば、さらに多くのイオン種の情報を入手でき、これらの多数の情報から従来よりも高精度な分析が可能となる。
従来の装置では、装置サイズが極めて大きくなること、装置作製がむずかしいこと、製造に時間がかかること、個々のイオン検出部の性能をそろえることも困難であること、製造コストが莫大になることなどのために、図46(b)で示す構造を作製することは不可能であったが、本発明では簡単に作製できることが大きなメリットである。
<E.イオン検出部>
質量分析室4−4で選別されたイオンは、基板側壁板1−6の中央孔11−6を通りイオン検出室4−5へ入射する。中央孔11−6の上面に形成された導電体膜電極9−3および下面に形成された導電体膜電極10−3は平行平板型電極となっており、これらに接続する外側電極7−4および8−4にかかる電圧を調整することによって、イオンの軌道を上下方向に変化させることができる。イオン検出室4−5には、電子増倍管となる中央孔11−7を有する基板側壁板1−7(長さL)が形成される。電子増倍管が平行平板型である場合は、中央孔11−7の底部および両端の側面、および上部基板/下部基板の一部に二次電子放出物質膜12(12−1、12−2)を形成し、電子増倍管がチャネル型の場合は中央孔11−7の内面全体および両端の側面、および上部基板/下部基板の一部に二次電子放出物質膜を形成する。二次電子放出物質は、たとえばMgO、Mg、BeOである。基板側壁板1−7の両端に導電体膜9−4、9−5、10−4、10−5を形成し、コンタクト配線5、6を通して外側電極7−5、7−7、8−5、8−6と接続する。基板側壁板1−7の両端に電圧(前方に対して後方を正とする)を印加すれば、二次電子放出物質膜12−1および12−2の長さL方向に傾斜電界が形成される。イオン検出室4−5へ入射したイオンが曲げられて二次電子放出物質膜12−1の前方に当たると、二次電子eが放出される。その二次電子eは対面する二次電子放出物質膜12−2に当たると、次の二次電子eが放出される。この二次電子eは対面する二次電子放出物質膜12−1に当たると、次の二次電子eが放出される。これらが繰り返されて放出される二次電子量は次々に増倍し、電子増倍管である中央孔11−7から増倍した電子が出ていき、その後方にあるSi基板側壁に形成された導電体膜電極9−6および10−6へあたり、コンタクト5を通して外側電極7−7に電流が流れる。すなわち、選別されたイオン量を検出することができる。
<最終製品概念図>
図48は、本発明の最終製品(本体のみ)のイメージ完成図である。すなわち、上下にガラス基板を付着したSiウエハ(4インチ〜8インチ、もっと大きくても良い)内に、試料供給部、イオン化部、引き出し電極・加速電極部、質量分析部{電場部(1/4扇型形状)、磁場部(1/4扇型形状)}、イオン検出部を有する質量分析装置を作製する。真空系は外付けする。試料供給部は図に示すように、複数配置でき、外側から液体試料等を装置の試料供給部へ接続する。それぞれの機能部には導電体膜配線で電極に接続し、制御用および解析用LSIでコントロールできる。磁場部で超電導磁石を使用するときは、その部分に基板枠容器を設けて、極低温まで冷却することもできる。このように、本発明の質量分析装置は、4インチ〜8インチのウエハ(基板)内に収納できる大きさとなり、超小型の質量分析器を極めて安価に作製できる。分解能は、電場部と磁場部の大きさで決まる要素が大きいが、極めて精度良く加工でき、また組立て誤差がなく、精密な装置を作製できるので、従来と同程度(二重収束型従来品では分解能が10,000以上)以上の精度は得られると思われる。
<本発明の新規性・優位性>
本発明のような4インチ〜8インチ{直径100mm〜200mm、厚み3mm以下(Si基板2mm、ガラス基板0.3mm×2)、8インチ以上も可能}の基板を使用して、微小な試料供給部、イオン化室、引き出し電極・加速室、電場室、磁場室、イオン検出室(これらを機能部と呼ぶ)を作製したことは報告されていない。また、特許等のアイデアも発見されていない。増して、これらを一括して同じ基板で実現したことも報告はなく、新規性および進歩性・優位性を有する。
本質量分析装置は超小型{本体:サイズ6インチウエハ(50cm3)以下、重量130g以下}であり、一括製造であるから、製造コストは10万円以下{本体:サイズ6インチウエハ}を実現できる。従来品は、同性能であれば、50cm×50cm×50cm以上、20kg以上であるから、大きさ(体積)で1/2500以下、重量で1/100以下、価格で1/20以下であり、優位性は十分ある。
各機能部を一括してしかも精度良く(1μm以下)作製できるので、他方式の部品組み立て方式に比較すると、はるかに正確に作製できるので、検出精度も従来と同程度以上は期待できる。
本発明は超小型で軽いので携帯が可能であるから、その場観測ができる。しかし、従来品は携帯が殆どできないことから、その場観測は極めて困難であり、この点でも大きな優位性がある。
さらに、本質量分析装置では、磁場室に基板作製のコイルを使用する。基板同士でアライメントしてコイルを配置するので、配置精度が10μm以下で非常に良い。しかもコイルの大きさも1mm〜10mmと小さいので、全体のサイズも大きくならない。このような基板コイルを使用した磁場室は新規性および進歩性が高い。価格やサイズも小さく、精度も高いので、従来品より格段に優位性を有する。尚、コイルは電子イオン化法にも使用する。これも新規性および進歩性が高い。
<開発の成果によって期待される社会への貢献の内容>
本発明で得られた結果により、質量分析層を基板型で作製できることが分かり、機器(量産機)開発の可能性が高まる。
真空系を含めた価格でも20万円以下を実現できるので、1家庭1台の質量分析装置を持てるようになる。従って、水質や、食品の検査も家庭でできるようになるので、食に対する安全意識が飛躍的に向上する。
サイズも真空系含めて、小型アタッシュケース程度(30cm×20cm×5cm)程度になるので、携帯も簡単にできる。従って、福島原発汚染で問題となっている放射性セシウム(137Cs) などの分析もその場でできるので、危険地帯には近寄らないなど人間の安全度を向上できる。
犯罪現場でも直接物質を分析できるので、迅速な原因究明や犯人特定を援助でき、この結果、犯罪の抑止力にもなる。
さらに、考古学者や環境科学者が現地で精密なその場観測ができるので、科学技術の発展が飛躍的高まる。また、安く小さいので、大量に購入でき、多数の分析を迅速に行なうこともできる。
以上のように、質量分析装置が個々人に身近となり、安全・安心な社会の実現に貢献できる。
また、本発明は、四重極型、イオントラップ型、タンデム型、飛行時間型、FT-ICR(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴)など他の方式の質量分析装置にも適用できるので、目的や用途に応じて種々選択し、幅広い応用が期待できる。
さらに、イオン注入装置へも適用でき、装置価格も現状の約1億円から100万円台に下げることができる。半導体価格のコストダウンに大貢献できる。
さらに、この質量分析装置の構造は加速器(線形加速器、シンクロトロン、マイクロトロン等)にも適用できるので、従来の超大型加速装置を超小型にできる。
たとえば、直径100mのシンクロトロンは」10m直径へ、30kmのリニアトロン(ILC)は1km以下へと小型化ができる可能性がある。
製造コストが大幅に下がり、医療用として100万円/台以下を実現できる可能性があり、すべてのガン患者のガンを安く治療できるようになる。
さらに、基板を用いて一括してシステムを形成できるので、小型で精密な製品を安くできるので、様々な製品に展開できるようになる。かつて、軽薄短小の時代の到来が期待されていたが、なかなか実現しなかった。本発明を契機に軽薄短小の時代を半導体・MEMS技術を武器にして実現させることができる。
図50は、基板貫通孔また基板凹部の側壁へパターンを形成する方法または装置を示す図である。主基板1011に貫通孔(または凹部)1009が形成されており、この貫通孔1009の側面壁に電極や配線等の導電体パターンを形成する場合について説明する。基板1011の貫通孔1009の側面に絶縁膜1012を積層する。基板1011は、使用する目的にあった基板を使用する。質量分析器や加速器などの場合は、基板はシリコン(Si)、SiC、GaN、InP、C等の各種半導体基板、ガラス、石英、サファイヤ、各種プラスチック、各種セラミック等の絶縁基板または半絶縁基板、Al、Cu、Fe等の金属や合金等の導電体基板を使用できる。絶縁膜1012は、たとえばシリコン酸化膜やシリコン酸窒化膜やシリコン窒化膜である。シリコン酸化膜の場合酸化法やCVD法やPVD法、あるいは塗布法等によって形成できる。基板1011が絶縁基板の場合には絶縁膜1012は時必ずしも必要ではないが、その上に積層する密着層1013との密着性向上のためには積層した方が良い。絶縁膜1012上に密着層1013を積層する。この密着層1013はその上に積層する導電体膜1014との密着性向上用や拡散防止(バリア)用である。導電体膜1014がメッキ層である場合はシーズ(種)層の役目もある。密着層1013は導電体膜であり、たとえばTi、TiN、TiO、Ta、TaN等である。導電体膜1014がたとえば銅(Cu)メッキである場合は、さらにCu膜を積層するのが良い。これらの密着層1013はCVD法やPVD法で積層できる。
密着層1013の上に導電体膜1014を積層する。導電体膜1014は、たとえばCu、Zn、Ni、Al、Au、Ag、W、Mo、Fe等の金属膜や各種金属膜である。導電性カーボンナノチューブでも良いし、超伝導体でも良い。これらの導電体膜1014はCVD法やPVD法や塗布法やメッキ法で積層できる。メッキ法の場合には密着層およびシーズ層である1013を利用して通電し電界メッキにより形成できる。メッキ膜の場合は各種ハンダメッキも使用できる。
貫通孔1009の側壁に電極や配線を形成するために、導電体膜1014の上に感光性膜1015を積層する。感光性膜1015はフォトレジスト膜や感光性樹脂等である。感光性膜1015は、塗布法やディップ法やスプレー法や電着法等で形成する。貫通孔1009内にも積層する必要があるので、ディップ法や電着法が条件設定しやすい。貫通孔1009のアスペクト比は余り高くない(0.5〜2程度)ので、貫通孔1009の内部にも感光性膜1015を形成できる。感光性膜1015を形成した後、必要があれば感光前のプリベーク等を行なう。
次に露光を行なうが、これまでに説明した様に斜め露光法により感光することができる。アスペクト比が1の場合、基板1011の最も深い底の方を露光する場合、感光性膜パターンをできるだけ垂直に近い形状にするには約45度の角度で斜め露光すれば良い。露光の角度に対して忠実な感光性膜パターンになる場合、感光性膜形状は約45度の逆テーパー形状となる。表と裏から基板1011の厚みの半分までを露光する場合は、感光性膜形状は約27度の逆テーパーとなる。感光性膜の厚みを2μmとしても感光性膜パターンのパターンずれ(パターン上部と下部の差)は1μm〜2μmであり、電極面積(幅)や配線パターン面積(幅)に比較すると1%程度なのでパターンずれは殆ど問題にならない。従って、斜め露光法を用いれば貫通孔1009内の感光性膜パターンを形成できる。
ここでは、別の方法による本発明の露光方法を説明する。図50には基板に形成した発光体を用いた露光法装置1020を示している。基板1021の両面に発光体1022を形成し、その発光体1022を形成した基板を透明基板1024で挟んだものを露光装置として用いる。透明体基板1024上に発光体1022からの光を通す部分1026と通さない部分1025を形成する。この部分1026のパターンは、貫通孔1009の側面のパターンに対応する。発光体基板1021と透明体基板1024の間には空間1023が存在しているが、発光体基板1021を透明体基板1024の容器にセットするときに空間1023が形成される。この露光法装置1020は、本発明の質量分析器や加速装置と類似する方法によっても形成することができる。すなわち、基板1028内に貫通孔1023を形成し、一方の側に発光体基板1021を付着させる。発光体1022のある領域は貫通孔1023の部分に配置する。基板1028の他方の側に透明体基板1024を付着させる。ここで貫通孔1023は空間となる。発光体基板1021の両側に発光体1022が形成されている場合は、両側に基板1028および透明体基板1024を付着すれば良い。
発光体1022は、たとえばLED素子である。LED素子を直接基板1021上に形成しても良いし、LEDチップを基板1021に搭載することもできる。LED素子を直接形成できる基板は、GaN、GaAs、InP等の各種化合物半導体基板や各種化合物半導体層をエピタキシャル形成した基板や貼り合わせ基板である。LEDチップを搭載する場合の基板は、COB基板やセラミック基板等である。いずれの基板も配線層が形成され、LED素子やLEDチップを点灯させることができる。発光体1022はまた、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子である。有機EL素子を直接基板上に形成しても良いし、有機EL素子を基板に搭載しても良い。発光体1022からの光を通さない部分1025は、たとえば透明体基板1024上に金属膜層(Al膜等)を形成し、露光法によりパターニングして形成できる。感光性膜に炭素等の光吸収物質を混合させて露光法でパターニングした後に熱処理して光を通さない部分1025を得ることもできる。これらのパターンが貫通孔1009の基板側面に形成するパターンのマスクとなる。
以上のようにして作製した露光装置1020を貫通孔1009へ挿入して、位置合わせしてから発光体1022を点灯して光を通す部分1026から光1027を照射する。この光1027は感光性膜1015が感光する波長を有するように発光体を選択する。この結果、図50(b)に示すように、貫通孔1009の基板側壁に感光性膜パターン1015−1および1015−2が形成される。図50に示す場合の感光性膜はポジであるが、ネガの感光性膜も使用できる。露光装置1020と貫通孔1009の基板側壁との距離は短いので、露光装置1020から照射される光線1027は貫通孔1009の基板側壁に対してほぼ垂直な光線であるから、現像後の感光性膜パターン1015−1および1015−2はほぼ垂直パターンとなるので、パターンずれは殆どなくなる。尚、基板1011の上面や下面も通常の露光法を用いて感光性膜パターン1015−3および1015−4を形成できる。
図50では、奥行き側(紙面に垂直方向の前面または後面)を示していないが、前面または後面も同様にしてLED素子を形成した基板を配置しておくことによって、前面または後面も露光できる。この場合、片方の面はLEDは不要であるから、前面に光を照射する場合は、前面の方にLED素子を配置した基板を配置する。後面に光を照射する場合は、後面の方にLED素子を配置した基板を配置する。図53は前面および後面に発光体を配置した露光装置を示す図である。図50に示した露光装置1020のLED素子1022を両面に配置した基板1021の側面(端面と考えても良く、前面側)側にLED素子1063を片面に配置した基板1061を配置する。同様に、基板1021の側面(端面と考えても良く、後面側)側にLED素子を片面に配置した基板1062を配置する。基板1061のLED素子搭載面(前面)側には空間1023を挟んで透明体基板1024の前方側側面1024(1024−S3)が配置されており、この透明体基板1024(1024−S3)にも光を通さない部分であるマスクパターンが形成され、基板1061に搭載されたLED素子1063の光によって、このマスクパターンに合わせた感光性膜パターンが、貫通室1009の前方側にも形成される。
同様に、基板1061のLED素子搭載面(後面)側には空間1023を挟んで透明体基板1024の後方側側面1024(1024−S4)が配置されており、この透明体基板1024(1024−S4)にも光を通さない部分であるマスクパターンが形成され、基板1062に搭載されたLED素子の光によって、このマスクパターンに合わせた感光性膜パターンが、貫通室1009の後方側にも形成される。尚、基板1021の側面のLED素子搭載面に面した透明体基板は1024(1024−S1)および1024(1024−S2)である。透明体基板1024の上面1024(1024−T)は基板1021の上面に付着しており、透明体基板1024の下面1024(1024−B)は基板1021の下面に付着しており、LED素子搭載基板1021を支持している。基板1061、1062も透明体基板1024の上面1024(1024−T)および下面1024(1024−B)に付着していても良い。基板1061、1062は基板1021の端面(前面、後面)に付着していても良いし、付着していなくても良い。付着していない場合は、基板1061、1062の上端面および/または下端面が透明体基板1024の上面1024(1024−T)および下面1024(1024−B)に付着させて支持させる。透明体基板1024の上面1024(1024−T)および下面1024(1024−B)は、光を透過する必要はないので、必ずしも透明体でなくても良い。図50と合わせれば、透明体基板1024の上面1024(1024−T)および下面1024(1024−B)は別基板1028(上基板)および1029(下基板)であっても良い。その場合、透明体基板1024(1024−S1〜S4)は別基板1028および1029に付着している。以上の4側面露光装置1020によって、貫通室1009の4つの基板側壁に感光性パターンを形成できる。尚、現状技術でも、貫通室の幅が2mm以上あれば、基板1061および1062を図53に示すように基板1021の端面に配置することができる。
これらの感光性膜パターン1015−1〜4をマスクにしてその下地の導電体膜1014および密着層1013をエッチング除去できる。エッチングはウエットエッチングやドライエッチングで行なうことができる。ウエットエッチングの場合は、ディッピングにより貫通孔1009へエッチング液を入れてエッチングできる。また、スプレーエッチングや照射エッチングでは、斜めスプレーまたは斜め照射によりエッチングできる。ドライエッチングの場合は、エッチングガスを貫通孔1009内へ回り込ませてエッチングできる。指向性のあるドライエッチング(たとえば、RIE)では斜め照射によりエッチングが可能である。これらのエッチングの場合サイドエッチング量は導電体膜1014の厚み〜厚み×2〜3程度である。導電体膜1014の厚みを100μmとすると、サイドエッチング量はMAX300μmであるが、全体の電極サイズが5mm程度であれば特に問題になる量ではない。
図51は、貫通孔側壁エッチング装置1030を示す図である。基板1031に貫通孔(室)1032を形成し、その両側に基板1033および1034を付着する。これらの作製法はこれまでに述べた方法と同様である。基板1034の中央部分または一部にエッチング液またはエッチングガス導入孔1035を形成する。このエッチングガス(液)導入孔1035は、基板貼り合わせ等で作製できる。あるいは、このエッチングガス導入孔1035は基板1033および/または1034に形成することもできる。貫通孔1009の深さに相当する基板1033および1034に多数のエッチングガスまたはエッチング液噴出用穴1036が形成されている。この貫通孔側壁エッチング装置1030を貫通孔1009へ挿入し、貫通孔1009の側壁に対応する領域にエッチングガスまたはエッチング液噴出用穴1036を配置する。エッチングガス(液)導入孔1035からエッチングガス(液)1037を導入し、エッチングガス(液)1038をさらにエッチングガス(液)噴出用穴1036から貫通孔1009の基板側壁へ噴出させて導電体膜1014および密着層1013をエッチングする。この結果、導電体膜104のパターを貫通孔1009の側壁へ形成できる。噴出するエッチングガス(液)1038は基板1033および1034に対して垂直に近い角度で噴出される。貫通孔側壁エッチング装置1030と貫通孔1009の基板側壁との距離は小さいので、導電体膜1014等の形状も垂直に近い形状を得ることもできる。また、導入されるエッチングガス(液)1037の圧力を変化させることによって、エッチングガス(液)1038の速度や角度も調整できるので、導電体膜1014等のエッチング速度や形状を制御できる。基板1033および1034を導電体基板にしてエッチングされる基板1011側と導電体基板1033および1034の間に電界を生じさせることによって、ドライエッチングも可能であり、導電体膜1014等のエッチング速度や形状を制御することもできる。
図51は貫通室1009の基板側壁面エッチング装置であるが、前方側および後方側を示していないが、前方側および後方側も同様の構造にすることによって、貫通室1009の4つの基板側壁面をエッチングできる。尚、4つの基板側壁面をできるだけ均一にエッチングするために、エッチング装置1030と4つの基板側壁面までの距離をできるだけ等しくした方が良いので、貫通室1009のサイズに合わせてエッチング装置1030を作製すると良い。基板等が配置される雰囲気は、低温〜常温〜高温のエッチング可能な温度であり、低圧〜常圧〜高圧のエッチング可能な圧力に保持される。
本発明の発明で用いる貫通孔1009のアスペクト比(基板1011の厚みに対する貫通孔の直径(幅)の比)は余り大きくないので、貫通孔の側面に積層する膜(CVD、PVD、メッキ等)のステップカバー率(平坦部分に対する貫通孔側面の膜の厚みの比)もそれほど小さくはならない。たとえば、基板1011の厚み(貫通孔深さ)が5mm〜20mmの場合、貫通孔幅も同程度であるから、アスペク比は1であり、ステップカバー率は30〜80%程度である。CVD、PVD、メッキ等の技術向上によってこのステップカバー率は向上するであろう。貫通孔幅が5mmの場合、本発明の基板側壁露光装置1020や基板側壁エッチング装置1030の幅は4mm以下であれば、両側の基板側壁に接触しないで挿入することができる。基板側壁露光装置1020の場合、発光体搭載基板の厚みを0.5mm、発光体の厚みを0.2mm、(主)基板1021の厚みを2mm、両側の透明基板1024の厚みを0.5mm、マスク部分1025の厚みを0.1mmとすれば、基板側壁露光装置1020の幅は、約3.2mmとなる。基板側壁エッチング装置1030の場合、(主)基板1021の厚みを2mm、両側の基板1033および1034の幅を0.5mmとすれば、基板側壁エッチング装置1030の幅は、約3mmとなる。尚、基板1011の厚みは5mm〜20mmとして、絶縁膜1012の厚みを100nm〜10000nm、密着層1013の厚みは100nm〜100000nm、導電体膜1014の厚みは1μm〜500μm、感光性膜1015の厚みは1μm〜500μmを選択することもできる。ただし、これらのサイズに関係なく最適なサイズを選択することもできる。
図52は、型(モールド)を用いて本発明の加速器や質量分析装置の貫通室を作製する方法を示す図である。図51は図47に示す質量分析装置を作製する場合を示す。図52(a)に示すように、試料供給部・イオン化部1041、引き出し電極部1042、電場部1043、磁場部1044、イオン検出部1045を有するモールド1040を作製する。このモールドはあらかじめ型を作製してその型に合わせてモールドを作製しても良いし、組立てて作製しても良い。組立て作製として、たとえば3Dプリンター装置を用いて作製できる。モールド材料は、その周りを被う基板1046の材料に応じて最適なものを選定する。たとえば、基板1046の材料がSi(PolySi、またはアモルファスSi、または単結晶Si)の場合、その形成温度より融点およびその材料との反応温度が高い材料を選択する。たとえば、カーボン(C)、WC、石英、サファイヤ、ジルコニア(ZrO2)など多数の材料がある。これらの材料は粉末にして焼結して成形することもできる。モールドの形状は、平面的な形状に関して作製するもの(この場合は質量分析装置)と同じ形状であり、その形状をした柱状体である。
このモールド1040の周囲に基板材料を結晶成長させるか、溶融材料を流し込んで基板材料のインゴットを作製するか、あるいは、基板材料の粉末体でモールド周囲を囲み焼結してインゴットを作製したりする。粉末焼結の場合粉末体の融点より低い温度で焼結できるという利点がある。こうして、図52(b)に示すように、モールド体1040が中に入ったインゴット1048が形成される。モールド体1040を取り除けば、モールド体と同じ空洞がインゴット1048内に形成される。このインゴット1048を質量分析装置と同じ厚みで切断すれば、貫通室を有する基板(ウエハ)が作製できる、たとえば、厚み5mmの基板厚ならば、長さT=1000mmのインゴットなら、200枚の基板を作製できる。このように基板内の貫通室をエッチングによらず基板作製と同時に貫通室を有する基板を多数作製できる。インゴット1048からの基板切断は、ワイヤソーによる切断やダイシングを用いた切断があり、切断後に必要な研磨や化学研磨、あるいはCMPを行なって基板表面や貫通室の基板側壁面を所定表面状態にすることもできる。モールド体1040が入ったままインゴット1048を切断することもでき、切断後にモールド体1040を除去すれば良い。基板材料がSiで、モールド材が石英やサファイヤ等である場合には、HF処理を行なってモールド材(の一部または全部)を溶かしてモールド材を除去できる。また、基板材料がSiで、モールド材が炭素の場合は、酸素で炭素材料をCO2にしてモールド材を除去できる。
基板がプラスチックである場合、モールド材はAl等の金属やガラス等で作製することもでき、インゴット作製後プラスチックは溶けないが金属は溶ける溶液で処理すれば良い。基板が金属や合金である場合、モールド材はその金属や合金より融点が高く、融点温度付近の温度までは相互に反応しにくい材料が良い。たとえば、基板が半田合金である場合、半田合金(Sn-Pb、Sn-Cu、Sn-Ag-Cu、Sn-Zn-Bi、Sn-Zn-Al等)の融点は150℃〜400℃であるから、モールド材としてポリイミド等の耐熱性のある高分子材料や、ガラス、Si等を使用できる。また、基板とモールド材の熱膨張率に関しては、モールド材の熱膨張率が基板より大きなものが良い。たとえば、溶けた基板材料でモールドの周りを埋めて基板インゴットを作製して固化した後、温度を低下するとモールドは基板よりも収縮率が大きいので、自然にモール材を基板インゴットから取り外すことができる。モールドのサイズは、使用温度(たとえば、常温、超伝導体を使用するときはその温度)における空洞(貫通孔)サイズを考慮してモールドサイズを選定する。また、半田金属等の低融点金属や低融点合金をモールド材料として、それより融点の低いプラスチックやセルロースナノファイバー(CNF)等の高分子材料で基板材料を構成すれば、基板インゴットの作製も容易である。
モールド体1040の側面に電極・配線膜を形成しておき、基板材料で囲んだ後でインゴット1048内面に電極・配線膜を転写することもできる。たとえば、モールド体1040の側面全体に電極・配線膜を貼りつけておき、インゴット1048内面全体に電極・配線膜を転写する。インゴット1048を切断して基板体とした後に、形成された貫通室内面に形成された電極・配線膜をパターニングして、電極・配線層を形成する。あるいは、図52(a)に示すように、モールド体1040の側面に部分的に電極・配線膜1051や1052を形成する。電極・配線膜1051は、インゴット1048の深さ方向に連続した電極・配線膜であり、切断して基板体とした後に貫通室の深さ方向のみをパターニングすれば良い。電極・配線膜1052は、基板の貫通室内面に形成されるパターン通りに形成されたパターンなので、切断して基板体とした後における電極・配線膜19052のパターニングは不要である。ただし、モールド体1040の側面に形成する電極・配線膜パターン1052を切断後の基板貫通室の位置に正確に形成しておく必要がある。このようなモールド体1040の側面に電極・配線膜を形成するには、CVD法、PVD法(イオンプレーティング法を含む)、塗布法、ディップ法等のほか、型を用いてモールド体1040を形成する場合は、その型に電極・配線膜を形成して、それを転写するという方法もある。また、3Dプリンターを用いて、電極・配線膜を形成することもできる。
インゴット1048の形状は、円柱形、断面が長方形や正方形や三角形や種々の多角形の角柱、楕円柱など種々の形状を取ることができる。インゴットの結晶形も単結晶、多結晶、アモルファス、粉末体を固化したもの、樹脂状態、プラスチック体、ゴム状体などやこれらの組合せ体で構成することができる。貫通室の深さが厚いもの、たとえば10cm以上のものなどは、インゴットの厚みと貫通室の厚みが同じとなる場合もあり、そのときはインゴット1つからは1つの主基板しか取れないことになる。さらには、半分の厚みの基板しか取れないインゴットの場合もあり、そのときは基板を重ねて(貼り合わせ等で)貫通室を形成する必要がある。型を入れずに平板な基板を作製し、金型で基板を打ち抜いて貫通室を作製することもできる。特に基板が金属の場合は打ち抜きしやすい。また、レーザー切断によっても貫通室や凹部を作製できる。
図52では、中央孔については示していないが、図54は中央孔を形成する方法を示す図である。貫通室を形成するモールド1071および1072の間に中央孔を形成するモールド1073が存在する。図54(a)はモールド1070の斜視図であり、透視図で示している。直方体形状のモールド1071および1072の間を結ぶ中央孔モールド1073が離間して等間隔に配置されている。図54(b)はモールド1070の断面図(高さ方向)である。一点鎖線1074は切断面を示す。モールド1071および1072および中央孔モールド1073うぃ合わせたモールド1070の周囲に基板を形成し、基板インゴットを作製した後に、モールドを除去すれば良い。基板インゴットを切断して(主)基板を作製した後にモールドを除去しても良い。中央孔モールド1073はモールド1071および1072に比べてサイズが小さいために、モールド1071および1072と基板境界面を分離した後、軽い衝撃を与えれば中央孔モールド1073とモールド1071および1072のつなぎ目で簡単に折れてモールド1071および1072を基板インゴットまたは基板インゴット切断後の基板から分離することができる。中央孔モールド1073、モールド1071および1072が同種材料の場合には、中央孔モールド1073とモールド1071および1072の付着を弱くしておけば、さらに低い衝撃力で分離させることができる。
たとえば、モールドをサファイヤ(酸化アルミニウム、融点約2070℃)で作製し、基板インゴットをシリコン(融点1410℃)で作製する。シリコンよりもサファイヤをエッチングする液またはガスでシリコン(インゴット、基板)とサファイア(モールド)の境をエッチングして隙間をあけて分離させる。モールドを石英(融点約1700℃)で作製した場合、基板インゴットをシリコン(融点1410℃)で作製する。シリコンよりも石英をエッチングする液またはガスでシリコン(インゴット、基板)と石英の境をエッチングして隙間をあけて分離させる。石英のエッチング液としてHF系溶液がある。モールドをFe(融点1540℃)で作製し、基板インゴットをガラス(融点600℃〜700℃)で作製する。ガラスよりもFeをエッチングする液またはガスでガラス(インゴット、基板)とFe(モールド)の境をエッチングして隙間をあけて分離させる。Feのエッチング液として塩酸や硫酸がある。
モールド1070を幾つかのブロックに分けた割型で作製し、インゴット形成後に割型を取り外す方法でも貫通室を作製できる。そのときでも中央孔モールド1073はインゴット中から取り外すのが困難な場合は、ウエットエッチング液や等方性ドライエッチングガスで中央孔モールド1073を溶解する。あるいは、図54(b)に示すように中央孔の略中心部を通る面(破線で示す)1075で切断して、中央孔モールド1073を露出させて取り外すことができる。この場合も中央孔モールド1073をエッチング可能な溶液またはドライエッチングガスを用いて中央孔モールドと基板との境界をエッチングして分離しやすくすることもできる。中央孔の略中心部を通る面(破線で示す)1075で切断してモールドを分離した後は、貫通室や中央孔へ必要な膜付けをした後に分離した上下の基板を切断面1075で付着して通常の中央孔を持つ基板を作製できる。モールド1070の周囲に必要な膜付けをして、その膜を基板(インゴット)に転写して、貫通室や中央孔内面へ絶縁膜や導電体膜またはそれらのパターンを形成することもできる。
中央孔モールド1073を使用しない場合、貫通室を有する基板に貫通室を接続する中央孔を作製する必要がある。まず、基板インゴットを切断面1074および中央孔が形成される部分の中央孔高さの略半分の位置である切断線(面)1076で切断する。図55は中央孔が形成される部分の中央孔高さの略半分の位置で切断した基板に中央孔を形成する方法を示す図である。図55(a)は中央孔形成前の基板の平面図である。貫通室1076(1076−1、2)および貫通室1077(1077−1、2)が形成された基板1080の平面図は、図54に破線で示す切断面1075である。貫通室1077(1077−1、2)は、貫通室1076(1076−1、2)を持つ加速器や質量分析器の隣の加速器や質量分析器の貫通室である。中央孔はまだ形成されていない。1079は基板面または基板である。図55(d)は図55(a)の断面図である。図55(b)に示すように、この基板面1079上に感光性膜1081を形成し、パターニングして中央孔形成領域1082(1082−1,2)を窓開けする。図55(e)は図55(b)の断面図である。次に、図55(f)に示すように、この感光性膜パターン1081をマスクにして基板1079をエッチングして中央孔1083を形成する。このエッチングはレーザー等を用いて形成しても良い。あるいは研磨法で作製することもできる。たとえば、中央孔のサイズに適合した円柱形の研磨冶具を回転させて中央孔の半分(横側に半円形の柱状)を研磨する。研磨時には研磨剤+水をかけながら、さらに軽いエッチング液を混ぜながら研磨する。図55(g)に円柱形の研磨冶具1084を使用した研磨方法を示す。中央孔を形成する領域に円柱形研磨冶具1084を回転させながら当てて基板1079を研磨する。円柱形研磨冶具1084は基板1079に対して上下可能な支持台に取り付けられ、支持台を徐々におろして、基板1079が所定深さ削れたら支持台の下降をストップさせて上昇させる。この結果、基板1079には中央孔の半分が形成できる。尚、円柱形の研磨冶具を用いるときは、感光性膜パターン1081は不要である。
モールド型の中を空洞にしたものでもモールドを作製できる。モールドを薄い膜や薄板で囲んで中を空洞にする。(モールドフレームと称する。)モールドフレームの空洞内は窒素、酸素、空気、He、Ar等の不活性ガスを入れて適度な内圧をかけても良い。基板インゴットを作製するときに温度を上げる場合は空洞内のガスは膨張するので、内圧が増加するから、その内圧によって変形しないようにモールドフレームの強度を調節する。あるいはモールドフレームが変形しても基板インゴットを作製時に正確なモールド型になるようにするためにモールドフレームの強度および空洞内の内圧を調節しても良い。当然モールドフレーム材料はインゴット作製時に変形したり融けたりしないような材料で形成する必要がある。これについてはこれまで述べた通りである。モールド型を取り外すときに、空洞内のガスを抜いて内圧を下げるとモールドフレームが縮小するので、簡単にモールド型(モールドフレーム)を取り外すことができる。インゴット作製後はインゴット作製時よりも温度が下がり空洞内の内圧が下がるので、そのときにモールドフレームが縮小するので、自然とモールドフレームを取り外すことができる。
モールドフレームがインゴット基板から外れない場合でも、空洞内の圧力が低下するので、モールドフレームがインゴット基板を押圧力も低下するから、モールド材をエッチングするエッチング液やエッチングガス(プラズマエッチングも含む)がモールドフレームとインゴット基板との間に入り込み易くなり、モールドフレームとインゴット基板の境界面に面しているモールドフレームがエッチングされる。この結果インゴット基板からモールドフレームを分離することができる。さらに、空洞内にエッチング液やエッチングガス(プラズマエッチングも含む)を入れることができ、モールドフレームの厚みも薄いのでモールドフレームを内と外から溶解させることができる。この結果インゴット基板からモールドフレームを除去することができる。中央孔モールドも内部が空洞のモールドを使用できる。
図56は貫通室内壁を研磨して平滑でなめらかな面にするための方法((a))および貫通室内壁へパターンを転写する方法について説明する図((b)、(c))である。図56(a)は貫通室形成用のモールド型を取り外した後の貫通室1086を有するインゴット基板の貫通室1086内壁(内面)を研磨する方法を示す図である。円柱形の研磨棒1087を貫通室1086内へ挿入し、研磨棒1087を回転しながら貫通室1086の内面をなぞる。貫通室1086の内面はモールド型を外した跡で荒れた状態の場合もあるので、研磨棒1087の回転により貫通室1086の内面の凹凸を取り平滑化し表面をなめらかにすることができる。研磨棒1086の円柱面に研磨剤を付着させたり塗布したり、および/または研磨材を含む液を吹きかけたり、その液中で研磨棒1086を回転させる。インゴット基板で行なえば多数の基板をまとめて処理できるし、基板に切断後に個々に行なえばより精密な研磨が可能となる。研磨棒1086は円柱形であるから、貫通室1085が直方体形状の場合は、角部の研磨はむずかしいが、より半径の小さな円柱形研磨棒で行なえば角部も十分な研磨が可能となる。角部とその他で使い分けても良い。また、円柱形状でなく、直方体形状の研磨棒も使用できる。直方体形状研磨棒は往復運動をさせることにより貫通室内面を研磨することができる。
図56(b)は、円柱形転写棒を使用して貫通室内面にパターンを転写する方法を示す図である。円柱形転写棒1088に転写パターン1089を付着させて、貫通室1086内に円柱形転写棒1088を挿入し、貫通室1086の内面に円柱形転写棒1088に付着した転写パターン1089を接触させて、転写パターン1089を貫通室1086の内面に付着させて転写する。転写パターン1089は円柱形転写棒1088の周囲に付着して形成されているので、円柱形転写棒1088の表面を貫通室1086の内面に押しつけながら回転させてパターン転写する。転写パターン1089はたとえば導電体電極・配線パターンである。円柱形表面に導電体膜を積層し、フォトリソ法を用いて導電体膜パターンを形成し、円柱形表面を貫通室内面に当てる。このとき、貫通室表面と導電体膜が密着性良く付着する条件(たとえば、熱処理)で処理して貫通室表面に導電体膜を付着させる。同時に円柱形表面と導電体膜との密着度が貫通室表面と導電体膜が密着度より低い条件にすれば円柱形表面上の導電体膜パターンが貫通室表面へ転写できる。円柱形を回転させることによって、次々と転写できる。あるいは、転写シートに導電体膜パターンを付着しておき、その転写シートを円柱形転写棒に巻き付けておく。このとき、導電体膜パターンを外側にしておく場合に、円柱形転写棒を貫通室表面に押し当てて回転させながら転写シートに付着させた導電体膜パターンを貫通室表面に転写する。あるいは、導電体膜パターンを内側にして転写シートを外側にしておき、円柱形転写棒を貫通室表面に押し当てて回転させながら転写シートを貫通室表面に付着させれば、転写シートに付着させた導電体膜パターンも貫通室表面に付着させることができる。インゴット基板内の貫通室に転写することもできるし、切断後の基板の貫通室に転写することもできる。同じ形状の貫通室であれば(たとえば、図55における貫通室1076と1077)、複数の転写棒を支持体に取り付けて、それぞれの貫通室に同時に転写棒を挿入して、同時に転写することができる。
図56(c)は、貫通室と同じ直方体形状の転写板に導電体膜電極・配線パターン1092および1093を形成し、それらのパターンを貫通室内面に転写する方法を示す図である。導電体膜パターン1092、1093を付着した転写板1091または導電体膜パターン1092、1093を付着した転写シートを付着した転写板1091を貫通室1086へ挿入し、貫通室1086内面に押し当てて転写する。転写シートを用いる場合、ポリイミド等の高耐熱シートにアルミやCu、Au等の電極・配線を形成し、反体面に高耐熱性の熱硬化性接着剤を付着しておき、この接着面を貫通室内面に付着させて転写シートを付着させて熱処理により貫通室内面にポリイミドシートを挟んで導電体膜パターンを貫通室内面に形成できる。転写した後は、必要ならば、保護膜をCVD法等で積層するか、さらに保護膜(耐熱用が良い)テープを転写法で付着させる。この結果、300℃〜500℃程度の耐熱性を持たせた貫通室を作製できる。また、インゴット基板内の貫通室に転写することもできるし、切断後の基板の貫通室に転写することもできる。同じ形状の貫通室であれば(たとえば、図55における貫通室1076と1077)、複数の転写棒を支持体に取り付けて、それぞれの貫通室に同時に転写板を挿入して、同時に転写することができる。
図51に示した装置は成膜装置(CVD装置)としても使用できる。エッチングガス1037、1038の代わりに成膜用ガスを導入する。たとえば、多結晶Siを貫通室側壁に成長する時にはSiH4ガスを導入口1035から入れて、噴出用穴1036から貫通室側壁へ噴出させる。基板1011を所定温度(たとえば、350℃〜500℃)で加熱しておけば貫通室側壁へ多結晶Si膜を成長できる。装置1030に成膜しないようにするために、装置1030を冷却しておけば良い。基板1011と装置1030との間に電界を印加すれば、もっと低温でも成膜でき、高速成膜も可能である。W膜を成長するには、たとえばWF6ガス、WSi膜を成長するには、WF6ガスとSiH4ガスの混合ガスを導入し、噴出穴から噴出すれば良い。その場合(ガス混合で反応する場合)、装置内で混合ガスが反応しないようにするために、貫通孔1032を別々にして、それらの貫通孔(室)への導入口および噴出穴も別にしておき、噴出口から出て、(基板1011の)貫通室側壁近傍でガス混合できるようにしても良い。SiO膜の場合は、SiH4ガスとO2ガスで成膜できる。SiN膜の場合は、SiH2Cl2ガスとNH3膜で成膜できる。その他の金属膜(Al、Cu、Ni、Cr、Ti等各種)や合金膜や各種膜を成膜できる。また、N2、H2、He等の各種キャリアガスを混合しても良い。これらの成膜装置はCVD装置となる。基板等が配置される雰囲気は、低温〜常温〜高温の成膜可能な温度であり、低圧〜常圧〜高圧の成膜可能な圧力に保持される。
図51に示した装置はメッキ膜の成長にも使用できる。エッチングガス1037、1038の代わりにメッキ液を導入し、噴出する。たとえば、Cuメッキする場合、基板1011に電界をかけて(マイナス印加)、メッキ液硫酸銅(CuSO4)溶液を導入口1035から入れて、噴出用穴1036から貫通室側壁へ噴出させる。新しいメッキ液を供給できるので、高速メッキが可能である。この場合は、メッキ装置となる。メッキ膜積層の場合、通常メッキと同様にメッキ膜を成長させたくない場所は感光性膜(レジスト膜)等でマスクしておけば、マスクがない部分だけにメッキすることができる。
図51に示した装置の代わりにターゲット基板(たとえば、Al、Cu、Ti、Cr、TiN、Ni、Au、Si、W,Mo、あるいはSiO等の絶縁体)を貫通室に挿入し、ターゲット基板に高周波電界を印加し、低圧下でスパッターガス(たとえば、Ar、N2)を導入すれば、ターゲットからターゲット材料がスパッターされて、ターゲット材料が貫通室側壁へ付着できる。ターゲット材料と貫通室側壁の距離が非常に近いので高速でスパッター膜を積層できる。この場合、装置はスパッター装置となる。また、レジスト液等の感光性膜液を入れた装置を貫通室等に挿入して、噴出またはスプレーして貫通室や凹部側面や底面に感光性膜を形成できる。加熱素子(抵抗や赤外線ランプ等)を搭載した装置を貫通室等に挿入すればその感光性膜をプリベークできる。露光した後には、現像液を入れた装置を貫通室等に挿入して、噴出またはスプレー等して貫通室や凹部側面や底面に感光性膜をパターニングできる。感光性膜のCVD(プラズマ)も挿入CVD装置で可能である。以上説明した装置は別基板に多数搭載して基板内の多数の貫通室に挿入等して、多数の貫通室内のパターニングや成膜や熱処理(感光性膜の塗布・付着や形成、感光性膜の露光、感光性膜の現像、各種膜のエッチング、各種膜のCVD、各種膜のPVD(スパッター、蒸着)、各種熱処理等)を同時に処理できる。
本発明は、基板内に基板上面から基板下面に貫通する貫通室を作製し、貫通室内に絶縁膜、導電体膜を積層し、所望形状の導電体膜電極等を作製し、貫通室内を通るイオンの軌道を制御したイオン注入装置である。図57に示す実施形態は、高周波電源を加速源とするシンクロトロン方式の加速器を基板型イオン注入方式に適用したものであり、図57は、本発明のシンクロトロン方式基板型イオン注入装置を基板面に平行に見た平面図である。イオン化室2112でイオンを発生させ、そのイオンを引き出し電極・加速室2113で所定速度まで加速させる。その加速させたイオンを質量分離室2114で所望のイオンに選別し、その選別したイオンをシンクロトン方式加速室2117と質量分離室2114を接続する連結室2115へ送る。連結室2115とシンクロトロン方式加速室117との間には、中央孔2116を有する基板隔壁が配置され、連結室2115を進むイオンはこの中央孔2116を通ってシンクロトロン方式加速室2117の直線状貫通室である高周波加速室2118―1へ入る。
シンクロトロン方式加速室2117は、貫通室が環状につながっており、この環状の貫通室である環状通路2118の中をイオンが加速しながら周回する。環状通路2118は、2つの直線状加速室2118−1、3およびこれらの2つの直線状加速室2118−1、3を接続する円弧(半円形)形状の円形加速室2118−2、4から成る。直線状加速室2118−1、3は高周波電圧が印加されてイオンは加速される。半円形形状の円形加速室2118−2の2つの対面する貫通室側壁に導電体膜電極2121および2122が形成される。円形加速室2118−2の2つの対面する貫通室側壁に形成された導電体膜電極2121および2122は平行である。(いわゆる平行平板電極で、電極間距離r1)また、半円形形状の円形加速室2118−4の2つの対面する貫通室側壁に導電体膜電極2123および2124が形成される。円形加速室2118−4の2つの対面する貫通室側壁に形成された導電体膜電極2123および2124は平行である。(いわゆる平行平板電極で、電極間距離r1)
イオンは環状通路2118を周回し、直線状加速室2118−1で高周波電圧印加により図57において左側へ加速され進行し、円形加速室2118−2で一定電界の力を受けて円形軌道(中心軌道半径R1)を取り、次にイオンは直線状加速室118−3で高周波電圧印加により図57において右側へ加速され進行し、円形加速室2118−4で一定電界の力を受けて円形軌道(中心軌道半径R1)を取り、直線状加速室2118−1へ入る。これらが繰り返されて、イオンは周回するたびに加速され所定の速度(所定のエネルギー)になると、直線状加速室2118−1を進み直進するイオン軌道方向に配置された基板隔壁が有する中央孔2125を通って、出口通路(貫通室)2126へ入りイオン出口2127から出射する。イオン出口2127の出口通路(貫通室)2126にはスキャナー部2128があり、2つの対面する基板側壁には導電体膜電極2129−1、2が形成され、この2つの導電体膜電極2129−1、2間の電界によりイオンは左右へ(基板面と平行方向へ)振られて(走査されて)出射する。また、図57では図示できないが、基板面に平行な方向にも2つの導電体膜電極が形成され、これらの電極間の電界によりイオンは上下へ(基板面と垂直方向へ)振られて(走査されて)出射する。イオンの出射側に配置されたエンドステーション等へ配置されたウエハ2130へ上下左右に振られた(走査された)イオンが注入される。尚、連絡室2115や出口通路2127でも加速室と同様の方法で加速することができる。また、スキャナー部2128には磁場を形成することもできるので、磁界でイオン軌道を上下・左右にスキャンできる。たとえば、上下にコイルや電磁石を配置して磁場を変化させることによってイオンを左右(横方向)に走査でき、主基板の側面にコイルや電磁石を配置すればイオンを上下に走査できる。
主基板2111内に形成された貫通室には、必要に応じて中央孔を有する基板側壁板が配置され、各貫通室を仕切ったり(ただし、中央孔でつながっている)、導電体膜電極が形成され電界が印加されている部分もある。中央孔を有する基板側壁板の側面等にも導電体膜電極が形成され、これらの導電体膜電極に高周波電圧や静電界等を印加し、イオンを加速したり、減速したり、収束したりすることができる。主基板2111は、導電体基板(たとえば、Al、Cu、Fe、Ni、Zn、Ti、Cr等の金属またはこれらを含む合金、導電性プラスチック、導電性炭素(導電性グラフェン、導電性カーボンナノチューブも含む)、導電性半導体(たとえば、高濃度不純物元素を含む低抵抗Si)、導電性セラミック)、半導体基板{たとえば、Si、Ge、C、化合物半導体(たとえば、GaAs、InP、GaN等の各種二元系半導体、各種多元系半導体)}、絶縁体基板(たとえば、ガラス、石英、AlN、アルミナ、各種プラスチック、各種セラミック、各種高分子基板)、およびこれらの複合基板である。導電体基板や半導体基板は、その基板上に導電体膜を形成する場合であって、基板と導電体膜と導通させない場合は、それらの間に絶縁膜を介在させる。主基板2111の上面には第1上部基板、下面には第1下部基板が付着している。従って、主基板2111内に形成された貫通室は、上部が第1上部基板に、下部が第1下部基板に、側面が主基板111の側壁に囲まれている。イオンはこれらの基板に囲まれた貫通室を進んでいく。主基板2111内に形成された貫通室は、第1上部基板や第1下部基板に設けた開口部から真空引きすることによって、所定の圧力以下に保持される。また、別(真空引き用と兼用することもできる)の開口部から貫通室のクリーニングまたはパージ用気体や液体を流すこともできる。
質量分離室2114は、これまでに述べた磁場タイプまたは電場タイプまたはそれらを組み合わせたもの、あるいは四重極型あるいはICR型あるいはイオントラップ型など種々の方式を使用すれば良い。イオン化室2113もこれまでに述べたイオン化室を使用できる。あるいは外付けでイオン化したイオンを導入しても良い。加速室2113、2115、2118−1、2118−3もこれまでに述べた線形の加速室を使用できる。円形加速室2118−2、4は両側面に電極を有するものであるが、進行方向または上下方向に電極を分割してそれぞれに個別に電圧を印加できるようにしておけば、円形加速室の電界を変化させてイオン軌道を制御できる。この円形加速室は磁場を用いてもイオン軌道を制御できる。すなわち、主基板の上下にコイルや電磁石を配置すればローレンツ力によってイオン軌道を制御できる。さらに電場と磁場の両方を用いるとさらに精密なイオン軌道を制御できる。
図16に示したものと同じように、図57に示す環状軌道を取り囲む環状軌道を横方向につなげていけば、さらに容易に高速で高濃度のイオンを発生できる。図58は2つの環状軌道を有するシンクロトロン型イオン注入装置を示す図で(平面図)ある。一段目の環状軌道2140は図57に示すシンクロトロン型イオン注入装置と同じもので、イオン化室等も有するが、イオン出射ライン243は、一段目の環状軌道2140の一部(円形軌道から出るようにするのが良い)に設けた開口部(中央孔を有する開口部が良い)2142から出て、2段目の環状軌道2145に設けた開口部(中央孔を有する開口部が良い)2144に接続する。2段目の環状軌道に入ったイオンは既に回転しているイオンと合流して回転しながら加速して、直線状加速室を進み直進するイオン軌道方向に配置された基板隔壁が有する中央孔2146を通って、出口通路(貫通室)2147へ入りイオン出口2150から出射する。イオン出口2150の出口通路(貫通室)2147にはスキャナー部2148があり、2つの対面する基板側壁には導電体膜電極2149−1、2が形成され、この2つの導電体膜電極2149−1、2間の電界によりイオンは左右へ(基板面と平行方向へ)振られて(走査されて)出射する。また、図58では図示できないが、基板面に平行な方向にも2つの導電体膜電極が形成され、これらの電極間の電界によりイオンは上下へ(基板面と垂直方向へ)振られて(走査されて)出射する。イオンの出射側に配置されたエンドステーション等へ配置されたウエハ2151へ上下左右に振られた(走査された)イオンが注入される。尚、出口通路2147でも加速室と同様の方法で加速することができる。また、スキャナー部2148には磁場を形成することもできるので、磁界でイオン軌道を上下・左右にスキャンできる。たとえば、上下にコイルや電磁石を配置して磁場を変化させることによってイオンを左右(横方向)に走査でき、主基板の側面にコイルや電磁石を配置すればイオンを上下に走査できる。さらに3段目、4段目、・・・と多数段の環状軌道も本発明では同時に形成できる。多数段の環状軌道にすればより高速で高電流のイオンを作り出すことができる。しかも本発明では配線層も形成できるので、LSIチップを基板2111上に搭載して各電極やコイルに印加する電圧や電流を制御できるので、極めて精密にイオン軌道をコントロールできる。
図59は、イオン出射ライン2143と2段目環状軌道2145との接続領域の状態を拡大したもの(基板と平行な平面図)である。イオン出射ライン243は2段目環状軌道2145の空洞2159と接続開口部2144で接続する。イオン出射ライン243の両側面(基板側壁)2152(2152−1、2)の貫通室内面に電極2153(2153−1、2)および2154(2154−1、2)が形成されている。これらの電極2153−1、2と2154−1、2はそれぞれ平行な電極となっている。イオン2160はイオン出射ライン243を直進して来るが、イオン出射ライン2143の出口2144付近に来るとこれらの電極で発生する電界によって軌道を曲げられて、2段目の環状軌道2145の空洞2159を進んで来るイオン2151の向きに可能な限り平行な方向になって合流する。イオン出射ライン243の出口2144付近に設けた電極2153および2154は幾つかに分割されて(図59では2つに分割だが、もっと多く分割することもできる)、それぞれ異なる電界を印加できるので、イオン2160の軌道を任意にスムーズに変えることができる。従って、これらの分割された電極への電圧を(電界)を調整して出来る限り、イオン2161に合流するようにできる。2段目環状軌道2145の空洞2159の基板側面(側壁)2155−1、2157のイオン出射ライン2143の出口(開口部)2144の付近にも幾つかに分割された電極2156(2156−1、2)および2158(2158−1、2)が形成されている。これらの平行平板電極2156(2156−1、2)および2158(2158−1、2)にも電圧を印加してイオン出射ライン2143の出口(開口部)2144から出るイオン2160の軌道を変えることができ、イオン2160の軌道を空洞2159を通るイオン2161と合流できるように調整できる。これらの平行平板電極2156(2156−1、2)および2158(2158−1、2)にも異なる電圧を印加して精密にイオン軌道を調整できる。また、平行平板電極2156および2158はもっと多く分割してさらに正確にイオン軌道をコントロールできる。また、電極2153、2154および2156、2158は基板厚み方向にも分割でき、イオン軌道を上下左右にも調整できる。さらに主基板の上下にコイルや電磁石を配置すれば、基板の厚み方向に磁界を発生させることができるので、これらの磁界によってもイオン軌道を調整することができる。従って、電界と磁界を用いてさらにイオン軌道の正確な調整をすることができる。
本発明の基板型イオン注入装置は上下に重ねて多段イオン注入装置とすることもできる。多段にすることによってより高速(高エネルギー)のイオンとすることができるとともに、各段にイオンを蓄積できるので、高ドーズのイオン注入を行なうことができる。図60は、2段に積層したイオン注入装置の軌道連結部の断面を示す図である。1段目の環状軌道2170は下部基板2171上に主基板を付着し、その上に上部基板2172を付着している。1段目の環状軌道2170は空洞2175を有し、その中をイオン2176が回転している。同様に2段目の環状軌道2180は下部基板2182上に主基板を付着し、その上に上部基板2181を付着している。2段目の環状軌道2180は空洞2185を有し、その中をイオン2186が回転している。1段目の環状軌道2170と2段目の環状軌道2180は積層されるが、1段目の環状軌道2170の上部基板の開口部2177と2段目の環状軌道2180の下部基板の開口部2187の所で連結され、1段目の環状軌道2170の空洞2175と2段目の環状軌道2180の空洞2185は繋がっている。1段目の環状軌道2170の開口部2177のイオン進行方向の後方において、下部基板2171の上面に電極2173が形成され、上部基板2172の下面に電極2174が形成されている。これらの電極2173および2174は平行平板電極となっており、この間に電界を発生させて、イオン軌道2176を進むイオンの軌道を上方に変えて開口部2177および2187を通るイオン軌道2179になる。2段目の環状軌道2180の開口部2187のイオン進行方向の前方において、下部基板2182の上面に電極2184が形成され、上部基板2181の下面に電極2183が形成されている。これらの電極2183および2184は平行平板電極となっており、この間に電界を発生させる。開口部2177および2187を通るイオン軌道2179を進んできたイオンは、平行平板電極の間に入り、電界の力を受けて軌道を変えられて、2段目の環状軌道2180の空洞2185を通るイオン軌道2186に入り、周回する。あるいは、この開口部において、基板に垂直方向にコイルや電磁石を配置することによって、基板に平行な方向(紙面に垂直方向)に対して磁界を印加してイオン軌道を上方に変更できる。小さなコイルを多数配置しそれぞれの磁界を個別にコントロールすることによって、さらに正確にイオン軌道を制御できる。これらの制御はLSIを使用して行なうことができる。これを繰り返せば、上下に多数の環状軌道を積層できるので、多段イオン注入装置となる。多段に積層したときに、中間の環状軌道への真空引きや電気配線の供給は、各段の隙間(軌道など何もない領域)を開口してその部分から行なえば良い。また、軌道の制御は各電極への電圧および電流の制御を行なうようなLSIチップを用いれば良い。また、真空計や温度計や電流計等の各種センサを各所に設置しておけば各段の環状軌道の状態を把握し制御することもできる。
図61はRFQ(Radio Frequency Quadrouple)型線形加速器の一例を示す図である。内部が空洞2194を持つ両端が開口された導電性の筒体2193が基板内に形成された空洞(貫通室)2191内に配置されている。筒体2193の空洞2194には四重極電極2197が配置されている。この四重極電極2197、2198は、たとえば先端部を長さ方向に波形条に形成した4枚の電極(ヴェイン電極)や4本のロッド電極、その他の形状を有する電極であり、四重極電極2197、2198が囲む空間を通るイオンビーム(加速軸)に沿って、4本の四重極電極2197、2197および2198、2198は直交するように対向して配置され、、相対向する電極はそれぞれ山と山、または谷と谷が向かい会うとともに、互いに90度隔てた隣り合う四重極電極同士2197、2197および2198、2198は山と谷とが交互に隣合うように配置された構成とされている。一方の対向する一対の電極2197、2197は筒体2193に電気的に短絡されており、他方の対向する一対の電極2198、2198は空洞(貫通室)2191を囲む基板2188および/または2189にステム2196および/または支持台座2195で支持されて、空洞共振器が構成されている。空洞2191を囲む基板の所定位置につながる高周波導入ライン2199によって、一対の電極2197、2197および対向する一対の電極2198、2198に、互いの符号が異なるように高周波電力が印加される。以上のように構成されたRFQ線形加速器は、一対の電極2197、2197を内導体とするとともに筒体2193を外導体とする第一の同軸線路の周りに、導体2193を内導体とするとともに基板2188および/または2189を外導体とする第二の同軸線路が、折り返されるように結合された構造となっている。
図62は図61に示すRFQ型線形加速器の作製方法を示す図である。左側の図が長手方向(イオン進行方向に平行)の断面模式図で、右側の図がそれと垂直方向の断面模式図である。導電体基板3001上に導電体基板3002を付着させる。(図62(a))これらの導電体基板の材料は、たとえば、Al、Cu、Ni、Ti等の金属または合金、あるいは、高濃度に不純物元素をドープした低抵抗の半導体(たとえば、Si)である。付着法は、常温接合法、高温接合法、拡散接合法等の直接接合法、または導電性接着剤や半田等の低融点合金を介在した接着法など各種接合法を使用できる。導電体基板3001および導電体基板3002は異種材料でも良いし、同種材料でも良い。次にフォトリソ法等を用いて導電体基板3002の不要な部分を除去して貫通孔(貫通室)3003(3003−1、2、3)を形成する。この除去方法は、エッチング(WETまたはドライ)、レーザーエッチング、打ち抜きがある。エッチング法では、フォトリソ法で形成した感光性膜等とエッチング材料である導電体基板3002とのエッチング選択比を考慮して感光性膜等の厚みを選択する。サイドエッチングはあっても良いが、マスクパターン通り形成するために垂直エッチングが望ましい。また下地材料である導電体基板3001が余りエッチングされないようなエッチング条件でエッチングすることが望ましい。レーザーエッチングや打ち抜きの場合はフォトリソ法等でのマスクを使用しないマスクレスで行なうこともできる。貫通室3003−1は図61で示した筒体2193の内側の空洞2194となる部分である。導電体基板3002を導電体基板3001に付着する前にパターニングすることもできるが、残すべき部分3002(3002−1、2、3)は図61で示した筒体2193の側面部分であるから、除去する部分3003−2を全部除去すると残すべき部分3002(3002−1、2、3)も取れてしまうので、一部を残しておかなければならない。しかし、打ち抜き法やモールドインゴット法を使用できるので工程が簡略になるという利点がある。(図62(b))また、導電体基板3001と導電体基板3002を1枚の導電体基板にして断面形状がコの字状になるようにエッチング等しても良い。すなわち、この場合は貫通孔(室)を形成せずに凹部形成となる。
次に、基板3004を導電体基板3001に付着させる。基板3004と導電体基板3001を電気的に導通する場合は、基板3004は導電体基板で良い。この場合において、半導体基板や絶縁体基板を使用することもできるが、基板3004をエッチングした後で、パターン3004−1(図62(d)に示す)上に導電体膜を形成し、導電体基板3001と基板3004上に付着する導電体基板3007との導通を取る。基板3004と導電体基板3001を電気的に導通しない場合は、基板3004は絶縁体基板が良い。この場合において、基板3004として半導体基板や導電体基板を使用する場合は、導電体基板3001上に絶縁体膜を積層するか、基板3004をエッチングした後で、パターン3004−1(図62(d)に示す)上に絶縁体膜を形成し、導電体基板3001と基板3004上に付着する導電体基板3007とが導通しないようにする。次に導電体基板3001の筒体部分3001−1を分離するために、筒体2193の側面部分3002(3002−1、2、3)の周囲の導電体基板3001を除去し、貫通孔(貫通室3005(3005−1、2、3、4)を形成する。これによって、導電体基板3001の周囲3001−2と筒体部分3001−1は分離される。基板3004は、筒体2193を支持するためのステム2196を作製することと、空洞2191を取り囲む基板となる。そこで、フォトリソ法等を用いて基板3004をエッチング等して不要部分を除去して貫通室3006(3006−1、2、3、4)を形成する。これらの貫通室3006(3006−1、2、3、4)は空洞2191となる。除去されない部分3004−1はステム2196となり、貫通室3006(3006−1、2、3、4)を囲む部分3004−2は空洞2191を取り囲む基板となる。付着方法はこれまでに述べた方法を選択できる。導通を取らない場合は接着剤を使う場合は絶縁性接着剤が良い。貫通室3006(3006−1、2、3、4)は筒体2103を囲む空洞2191である。貫通室3006(3006−1、2、3、4)は貫通孔(貫通室3005(3005−1、2、3、4)と接続する。
基板3004の上に導電体基板3007を付着する。付着方法はこれまでに述べた方法で行なうことができる。導電体基板3007は第二の同軸線路の外導体となる。導電体基板3007は加速器の部分だけをカバーすれば良いので、不要な部分はエッチング等で除去する。予め不要部分を除去した導電体基板3007を基板3004上に付着しても良い。(図62(e))この結果、RF型線形加速器の上半分または下半分が作製された。筒体となる導電体基板3001−1とその側面となる3002−1〜3をステム3004−1で支持し、ステム3004−1は導電体基板3007に接続する。RF型線形加速器の上下はほぼ対称形なので、図62(e)に示したものと同じものを作製し、イオン注入の加速室や加速器の加速室や質量分析装置の加速室等に四重極電極3009をセットした後で、その上下から図62(e)に示したものを合わせ込みながら、加速室の上下基板3010、3011の上面および下面に、導電体基板3001の外側を付着させる。このとき、同時に筒体3002の端面3008同士も付着できるように、全体のサイズを合わせ込む。これらの付着もこれまでに示した方法を用いることができる。四重極電極3009と筒体または外側導電体基板3007との電気的コンタクトは、これまでに述べた方法で加速室基板3010や3011を通してコンタクト孔や配線層を形成して取ることができ、あるいは直接これら同士を接触させたり、あるいは直接接続するコンタクトや配線層を設けたり、あるいはステムや支持台座を通じたり、あるいはステム支持台座を利用して配線層を設けたりして取ることができる。四重極電極3008の搭載もこれまでに示した方法で行なうことができる。(たとえば、図26について示した図や説明)加速室左側の貫通室3012からRF型線形加速器の空洞3013に出たイオン3014は、筒体空洞3015へ入り収束および加速されて加速室右側の貫通室3016へ送られる。尚、筒体を支持するステム3004は上下に2つ記載したが、一方は図61に示す支持台座2195でも良いし、支持できれば1つだけでも良い。この結果、極めて簡単に、しかも正確にRF型線形加速器を本発明の基板型で作製できる。支持台座2195はステムの形成方法と同様の方法で作製できる。また、導電体基板を用いて作製している基板に関しては、絶縁体基板や半導体基板の表面(本件の場合は、特に空洞内面)に導電体膜を積層して導電性を確保することもできる。
図63は、線形加速器の別の加速方法(IH(Interdigital H)型)(APF(Alternating Phase Focus)を含む)を示す図である。図63(a)はその構成を示す図である。筒体電極(ドリフトチューブとも言う、導電体で形成)3020を多数有する加速器であり、イオンの進入方向からi番目の筒体電極3020−iの厚みをMi、i番目の筒体電極3020−iとi+1番目の筒体電極3020−i+1番目の距離をLiとする。筒体電極3020は中央部分に中央孔3023があいていて、この中をイオンビーム3025が通る。筒体電極3020は空洞内に支持ステム3024で空洞を囲む基板につながっている。筒体電極3020は上下に2つの部分(3021.3022)に分離して作製され、その端面3026で付着している。筒体電極はイオンビームに対して略垂直に配置される。各筒体電極にはステムを通して高周波電圧が印加され、この中を通るイオンを加速できる。筒体電極間距離Li+Mi/2は高周波に同期するように予め決められて配置される。従って、シンクロトロン型イオン注入装置で周回してきたイオンはこの加速器でその都度加速されていく。図63に示す線形加速器は、図61および図62で示す方法と殆ど同じ方法で簡単に作製できる。中央孔の大きさ、筒体電極のサイズ、Mi、Li、空洞の大きさはイオンビームの加速電圧、電流、印加する高周波特性等によって適宜決めることができる。図63(b)は、図62に示す構造の作製方法の一部を示す図である。図63(b)は図62(e)に相当する。プロセスは図62に示す方法と殆ど同じなので、同じ符号を付し、異なる所を中心に説明する。ドリフトチューブ3020の半分3021(または3022)を構成する導電体基板3001、3002の作製方法は同じであり、これらを1つの基板とすることもできるし、同じ材料で構成することもできる。ドリフトチューブ3021は多数配置される。基板3007が絶縁体である場合、ステム基板3004と絶縁体基板3007の接着には接着剤や密着可能な金属や各種接合法を用いて行なう。次に絶縁体基板3007にステム3004に接続用のコンタクト孔3031を形成し、導電体膜3032をコンタクト孔に積層し、ステム3004と導通を取る。さらにコンタクト孔に接続する電極3033をパターニングする。接着剤が導電性のない接着剤の場合は、コンタクト孔形成のときに露出した接着剤を除去しておく。また、コンタクト孔3031および導電体膜3032はステム基板3004に付着する前に絶縁体基板3007に形成しても良い。この場合は、各コンタクト孔3031に合わせて各ステムが接続するように絶縁体基板3007とステム基板3004を付着させる。このときに接着剤を使用する場合は導電性接着剤とする。これと同じものを作製し、図62(f)に示すように間に、主基板等を間に挟んでドリフトチューブ3020の他の半分を付着させる。すなわち、3021の端面3026と3022の端面3026を合わせて付着させる。1つおき同士の電極(たとえば、3033−iと3033−i+2)に同じ位相の高周波を印加し、別の1つおき同士の電極(たとえば、3033−i−1と3033−i+1)にそれと異なる位相の高周波を印加して、ドリフトチューブ3020を通るイオンを加速させる。あるいは、それぞれ次第に変化する位相の高周波を順々に隣接する電極に印加してドリフトチューブ3020を通るイオンを加速させることも可能である。特に本発明のIH型加速器ではそれぞれのドリフトチューブに上下に電極が形成されているので、イオン加速に最適な高周波の最適印加が可能である。基板3007が導電体基板の場合には、この導電体基板3007と導電性を取りたくないドリフトチューブ(たとえば、3033−i−1と3033−i+1)のステム3004と導電体基板3007の接着には絶縁性接着剤を使用する。ただし、これと付着する反体側の接着は導電性を取るようにする。こうすることによって、上側に配置される導電体基板3007と接続するドリフトチューブと下側に配置される導電体基板3007と接続するドリフトチューブとを上下交互に導電するように配置することができる。さらに導電体基板とステム3004との間にリッジ用の基板を配置して加速電界が空洞全体にわたり均等に発生させることもできる。
図64は、別の線形加速室における加速方法を示す図である。図57に示す連結室2115や円形加速室2118−2から進んで来るイオンが線形加速室2118−1、3に入ると、中央孔2139(2139−1、2、・・・)を有し、中央孔2139に導電体膜2132が形成された基板側壁2136(2136−1、2、・・・)の中央孔を進み、そこに印加された高周波電界または静電界によってイオンが加速し、隣の円形加速室2118−2、4に入る。この繰り返しでイオンは加速しながら周回し、所定速度(加速電圧)になったら出射する。貫通室の間にも基板側壁2135(2135−1、2)があり、軌道を外れたイオン等はこの基板側壁に衝突して隣室へ進入できない。また、この基板側壁2135(2135−1)により、基板側壁電極2136−1の側面に引きつけられず、中央孔を進むようになる。この2135(2135−1)にも導電体膜を形成し、イオンと同じ電圧を印加しておき、イオンを収束するようにしても良い。線形加速室2118−1、3に形成された基板側壁2136に形成された導電体膜は、上下基板2108および2109に形成されたコンタクト電極・配線2133を通して基板上の電極・配線2134に接続する。各基板側壁電極2136(2136−1、2、・・・)にそれぞれ基板上の電極・配線2134が形成されており、個々に電圧を印加できる。たとえば、基板側壁電極2136−1にイオンと逆の電圧(|V|)を印加して、イオンを加速する。その隣の基板側壁電極2136−2にこれより少し大きな電圧(|V|+Δv1)を印加してさらに加速させる。その隣にさらに大きな電圧(|V|+Δv1+Δv2)を印加するという風にしてイオンをどんどん加速させる。イオンが発散してきたらイオンと同電荷の電圧を印加した基板側壁電圧を設けて収束させる。これを繰り返して所定の速度にイオンを加速させる。基板側壁電極の間に導電体膜のない基板側壁(中央孔あり)または電圧を印加しない導電体膜ありの基板側壁(中央孔あり)を設けて、イオンの発散を防止しても良い。また、上下基板に電極・配線を形成できるので、電圧の印加自由度が増大する。以上のようにして静電界を用いてイオンを加速できる。
また、高周波電界を用いてイオンを加速できる。たとえば、1つおきの電極に同じ高周波電圧を印加し、他の1つおきの電極に異なる位相の同じ高周波電圧を印加して、イオン速度と同期をとることによってイオンを加速できる。2つおきの電極やm個おきの電極に同じ高周波電圧を印加し、その間の電極同士には位相が次第に変化するように高周波電圧を印加することによってもイオンを加速することができる。本発明の基板側壁電極は個別に、しかも上下に電極・配線2134を持っているので、高周波電圧の掛け方をイオン速度に合わせて変化させることができ、効率的なイオンの加速を行なうことができる。しかもLSIチップをすぐそばに配置することもできるので、これらの制御を迅速に自動的に行なうことができる。また、高周波を印加しない導電体膜有り無しの基板側壁(中央孔有り)を配置できるので、高周波漏れによる干渉も防止することも容易である。上下基板2108、2109に開口部2137を設けて貫通室を真空引きすることもできるし、クリーニングやパージをすることもできる。図64(b)はA1−A2断面(イオン軌道Gに対して垂直)図であり、中央孔2139の側面に導電体膜2132が積層されている。中央孔2139の周辺は主基板2111であるが、貫通室の境界を2141(2141−1、2)で示している。基板側壁電極間隔も自由に選択できるので、高周波同期をとり易い構造となっている。図64(c)もA1−A2断面(イオン軌道Gに対して垂直)図であるが、異なる基板側壁を示す。基板側壁2136と主基板2111の貫通室側面2111(2111−1、2)の間に間隙2142−1、2が形成されている。また、基板側壁2136の外側側面に導電体膜2143−1、2が形成されている。これらの導電体膜2143−1、2は中央孔導電体膜2132と接続している。高周波電圧をこの導電体膜2132に印加した場合、この間隙(ギャップ)2142により高周波電界の同期がよりスムーズになる。すなわち効率が良くなる。基板側壁電極間隔も自由に選択できるので、高周波同期をとり易い構造となっている。以上述べたことは加速器や質量分析装置など本明細書で述べたことについてすべてに適用できる。
尚、明細書の各部分に記載し説明した内容を記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことも言うまでもない。
本発明は、加速装置や質量分析装置だけでなく、それらを構成する個々の要素・機構に適用できる。また、加速機構を使用するすべての装置、たとえばイオン注入装置に使用することができる。
11・・・荷電粒子発生装置、13・・・線形(型)加速装置、15、17、19、21、22、23、26、28、29、31、32、35、36・・各種電磁石、25、30、34、37・・・偏向電磁石、12、14、16、18、20、24、27、33、38、40・・・荷電粒子が通る空洞、39・・・線形加速装置、21・・・インフレクター、

Claims (54)

  1. 第1面および第2面を有する主基板、
    前記主基板の第1面に付着した第1基板、および
    前記主基板の第2面に付着した第2基板を含むイオン注入装置であって、
    前記イオン注入装置は、主基板の第1面から主基板の第2面に貫通する複数の空間(貫通空間と呼ぶ)を含み、
    前記イオン注入装置は、所望のイオンに選別する質量分離部、前記質量分離部で選別されたイオンを加速する線形加速部(第1線形加速部)、および加速されたイオンを前記イオン注入装置の外部へ出射するイオン出射部を含み、
    前記質量分離部、前記第1線形加速部および前記イオン出射部において、イオンは前記貫通空間を移動することを特徴とする、イオン注入装置。
  2. さらに2つの半円形軌道(第1円形軌道および第2円形軌道)および1つの線形加速部(第2線形加速部)を含み、前記第1線形加速部で加速したイオンは第1円形軌道に入り、前記第1円形軌道を回ったイオンは前記第2線形加速部に入り、前記第2線形加速部で加速したイオンは前記第2円形軌道に入り、前記第1円形軌道を回ったイオンは前記第1線形加速部に入り、さらに前記第1線形加速部で加速したイオンは、前記イオン出射部に入るか、あるいは、第1円形軌道→第2線形加速部→第2円形軌道→第1線形加速部の環状軌道を1回または複数回周回した後に、前記イオン出射部に入るかして、前記イオン出射部から前記イオン注入装置の外部へ出射し、
    ここで、前記第1円形軌道、前記第2線形加速部および前記第2円形軌道は1つまたは複数の貫通空間を有しており、イオンは前記第1円形軌道、前記第2線形加速部および前記第2円形軌道における貫通空間を通ることを特徴とする、請求項1に記載のイオン注入装置。
  3. 前記第1円形軌道および/または前記第2円形軌道において、貫通空間における2つの対面する側面に形成された電極による電界により、貫通空間を通るイオンが円形軌道で進行するか、または貫通空間における上基板および/または下基板に配置された電磁石または永久磁石による磁界により、貫通空間を通るイオンが円形軌道で進行することを特徴とする、請求項1または2に記載のイオン注入装置。
  4. 前記イオン出射部において、前記貫通空間の2つの側面および上下の第1基板および第2基板にそれぞれ電極が形成され、前記イオン出射部の貫通空間の2つの側面に形成された電極による電界および前記イオン出射部の貫通空間の第1基板および第2基板に形成された電極による電界により、前記イオン出射部に入ったイオンが二次元的に走査されて前記イオン出射部から出射されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載のイオン注入装置。
  5. 前記質量分離部は、貫通空間の両側面に形成された電極による電界によりイオンが質量分離されるか、および/または貫通空間の上下に配置された電磁石または永久磁石による磁界によりイオンが質量分離されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかの項に記載のイオン注入装置。
  6. 前記質量分離部の前に線形加速部(第3線形加速部という)が配置されており、前記第3線形加速部は前記主基板の第1面から前記主基板の第2面に貫通する1つまたは複数の空間(貫通空間と呼ぶ)を含み、前記第3線形加速部で加速されたイオンは前記質量分離部へ入ることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項に記載のイオン注入装置。
  7. 前記第3線形加速部の前にイオン化部が配置されており、
    前記イオン化部は前記主基板の第1面から前記主基板の第2面に貫通する1つまたは複数の空間(貫通空間と呼ぶ)を含み、前記イオン化部で発生したイオンは前記第3線形加速部へ入ることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載のイオン注入装置。
  8. 前記第1線形加速部および/または第2線形加速部および/または第3線形加速部は、主基板の第1面から主基板の第2面に貫通する複数の空間(貫通空間と呼ぶ)を含み、
    前記複数の貫通空間のうちの少なくとも3つは隣接する貫通空間(これらを順に貫通空間A、貫通空間B、貫通空間Cとする)であり、
    前記隣接する貫通空間は前記主基板の壁板によって仕切られており(ここで、貫通空間Aと貫通空間Bの間の主基板の壁板を主基板壁板M、貫通空間Bと貫通空間Cの間の主基板の壁板を主基板壁板Nと呼ぶ)、
    前記主基板壁板Mおよび前記主基板壁板Nはそれぞれ前記隣接する貫通空間同士を接続する孔(この孔を主基板壁板孔と呼ぶ)を有し、
    前記主基板は、第1面を有する基板(X基板)および第2面を有する基板(Y基板)が、X基板の第1面と反対の面とY基板の第2面の反対の面が合わさったものであり、前記主基板壁板孔の略半分はX基板に存在し、前記主基板壁板孔の略半分はY基板に存在することを特徴とし、
    さらに、
    イオンは、前記主基板壁板孔を通って、前記隣接する貫通空間のうちの1つから前記隣接する他の貫通空間へ入り、
    イオンは前記基板壁板Mおよび前記基板壁板N上に形成された電極に印加された直流電圧または高周波電圧によって加速または減速されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの項にイオン注入装置。
  9. 前記主基板壁板Mおよび前記主基板壁板Nに形成された主基板壁板孔の周囲に電極が形成されていることを特徴とする、請求項8に記載のイオン注入装置。
  10. 前記主基板壁板Mおよび前記主基板壁板Nと貫通空間の側面との間に隙間(すなわち、空間)が存在することを特徴とする、請求項8または9に記載のイオン注入装置。
  11. 前記主基板壁板Mおよび前記主基板壁板Nは第1基板および/または第2基板に接続している部分が、中央部より狭くなっていることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかの項に記載のイオン注入装置。
  12. 前記第1線形加速部および/または第2線形加速部および/または第3線形加速部は、RFQ(Radio Frequency Quadrouple)型線形加速器であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかの項に記載のイオン注入装置。
  13. 前記線形加速部において第1基板および第2基板の存在しない領域(A領域という)があり、前記A領域をまたいで、4本の四重極電極が、それらの四重極電極の両端がA領域につながる貫通室の4つの角部に付着しており、A領域における前記四重極電極の一部は空洞を有する管状体の空洞を通ることを特徴とする、請求項12に記載のイオン注入装置。
  14. 前記A領域は、前記第1基板に付着した第3基板、前記第3基板に付着した第2主基板、第2主基板に付着した第4基板、前記第2基板に第付着した第5基板、前記第5基板に付着した第3主基板、第3主基板に付着した第6基板に囲まれていることを特徴とする、請求項13に記載のイオン注入装置。
  15. 前記管状体は、上部が第3基板、側面(上部側面という)が第3基板に付着した第4主基板、下部が第5基板、側面(下部側面という)が第5基板に付着した第5主基板に囲まれた空洞を有しており、ここで、第4主基板と第5主基板は付着または接触していることを特徴とする、請求項14に記載のイオン注入装置。
  16. 前記管状体を構成する第3主基板、第4主基板、第5基板、および第5主基板は導電体であるか、前記管状体の内面に導電体膜が形成されたものであることを特徴とする、請求項15に記載のイオン注入装置。
  17. 前記管状体は、第5基板上に形成された電極または導電体である第5基板と電気的に接続することを特徴とする、請求項14〜16のいずれかの項に記載のイオン注入装置。
  18. 前記第1線形加速部→前記第1円形軌道→第2線形加速部→前記第2円形軌道の環状軌道(第1環状軌道)の外側に、さらに線形加速部→半円形軌道→線形加速部→半円形軌道の環状軌道(第2環状軌道)が存在し、第1環状軌道と第2環状軌道とを接続する接続ライン(第1接続ライン)が存在し、前記第2環状軌道および第1接続ラインは貫通空間を有し、イオンは前記第1環状軌道の貫通空間から出て第1接続ラインの貫通空間へ入り、前記第1接続ラインの貫通空間へ入ったイオンは前記第2環状軌道の貫通空間へ入り、
    前記第2環状軌道を周回したイオンは前記第2環状軌道に備えた出射部へ入り、前記第2環状軌道の出射部からイオン注入装置の外側へ出射されることを特徴とする、請求項1〜17のいずれかの項にイオン注入装置。
  19. 第1接続ラインの出口部における貫通空間の両側面に電極が形成されており、前記電極に印加された電極れた電圧によって発生する電界により、第1接続ラインを通過するイオンがその軌道を変化させて前記第2環状軌道へ入ることを特徴とする、請求項18に記載のイオン注入装置。
  20. 第1接続ラインがつながるイオンが入射する第2環状軌道のイオン入射部における貫通空間の両側面に電極が形成されており、前記電極に印加された電極れた電圧によって発生する電界により、第2環状軌道に入射するイオンの軌道を変化させてイオンが第2環状軌道を進行するようにすることを特徴とする、請求項18または19に記載のイオン注入装置。
  21. 前記第2環状軌道のイオン出射部において、前記貫通空間の2つの側面および上下の第1基板および第2基板にそれぞれ電極が形成され、前記イオン出射部の貫通空間の2つの側面に形成された電極による電界および前記イオン出射部の貫通空間の第1基板および第2基板に形成された電極による電界により、前記イオン出射部に入ったイオンが二次元的に走査されて前記イオン出射部から出射されることを特徴とする、請求項18〜20のいずれかの項に記載のイオン注入装置。
  22. 線形加速部→円形軌道→線形加速部→円形軌道の環状軌道(第i環状軌道:i=1〜n)の外側に、さらに線形加速部→半円形軌道→線形加速部→半円形軌道の環状軌道(第i+1環状軌道)が存在し、第i環状軌道と第i+1環状軌道とを接続する接続ライン(第i接続ライン)が存在し、第i環状軌道および第i+1環状軌道および第i接続ラインは貫通空間を有し、イオンは前記第i環状軌道の貫通空間から出て第i接続ラインの貫通空間へ入り、前記第i接続ラインの貫通空間へ入ったイオンは前記第i+1環状軌道の貫通空間へ入り、
    第n+1環状軌道を周回したイオンは前記第n+1環状軌道に備えた出射部へ入り、前記第n+1環状軌道の出射部からイオン注入装置の外側へ出射されることを特徴とする、請求項1〜17のいずれかの項にイオン注入装置。
  23. 第i接続ラインの出口部における貫通空間の両側面に電極が形成されており、前記電極に印加された電極れた電圧によって発生する電界により、第i接続ラインを通過するイオンがその軌道を変化させて前記第i+1環状軌道へ入ることを特徴とする、請求項22に記載のイオン注入装置。
  24. 第i接続ラインがつながるイオンが入射する第i+1環状軌道のイオン入射部における貫通空間の両側面に電極が形成されており、前記電極に印加された電極れた電圧によって発生する電界により、第i+1環状軌道に入射するイオンの軌道を変化させてイオンが第i+1環状軌道を進行するようにすることを特徴とする、請求項22または23に記載のイオン注入装置。
  25. 前記第i+1環状軌道のイオン出射部において、前記貫通空間の2つの側面および上下の第1基板および第2基板にそれぞれ電極が形成され、前記イオン出射部の貫通空間の2つの側面に形成された電極による電界および前記イオン出射部の貫通空間の第1基板および第2基板に形成された電極による電界により、前記イオン出射部に入ったイオンが二次元的に走査されて前記イオン出射部から出射されることを特徴とする、請求項22〜24のいずれかの項に記載のイオン注入装置。
  26. 前記第1線形加速部→前記第1円形軌道→第2線形加速部→前記第2円形軌道の環状軌道(第1環状軌道)の上側または下側に、さらに線形加速部→半円形軌道→線形加速部→半円形軌道の環状軌道(第2環状軌道)が存在し、第1環状軌道と第2環状軌道とを接続する接続ライン(第1接続ライン)が存在し、前記第2環状軌道および第1接続ラインは貫通空間を有し、イオンは前記第1環状軌道の貫通空間から出て第1接続ラインの貫通空間へ入り、前記第1接続ラインの貫通空間へ入ったイオンは前記第2環状軌道の貫通空間へ入り、
    前記第2環状軌道を周回したイオンは前記第2環状軌道に備えた出射部へ入り、前記第2環状軌道の出射部からイオン注入装置の外側へ出射されることを特徴とする、請求項1〜17のいずれかの項にイオン注入装置。
  27. 第1接続ラインの出口部における貫通空間の第1基板および第2基板に電極が形成されており、前記電極に印加された電極れた電圧によって発生する電界により、第1接続ラインを通過するイオンがその軌道を変化させて前記第2環状軌道へ入ることを特徴とする、請求項26に記載のイオン注入装置。
  28. 第1接続ラインがつながるイオンが入射する第2環状軌道のイオン入射部における貫通空間の上下基板に電極が形成されており、前記電極に印加された電極れた電圧によって発生する電界により、第2環状軌道に入射するイオンの軌道を変化させてイオンが第2環状軌道を進行するようにすることを特徴とする、請求項26または27に記載のイオン注入装置。
  29. 前記第2環状軌道のイオン出射部において、前記貫通空間の2つの側面および上下の第1基板および第2基板にそれぞれ電極が形成され、前記イオン出射部の貫通空間の2つの側面に形成された電極による電界および前記イオン出射部の貫通空間の第1基板および第2基板に形成された電極による電界により、前記イオン出射部に入ったイオンが二次元的に走査されて前記イオン出射部から出射されることを特徴とする、請求項26〜28のいずれかの項に記載のイオン注入装置。
  30. 請求項1〜29のいずれかの項に記載イオン注入装置の貫通空間の側面にパターンを形成する装置であって、前記貫通空間に挿入し、貫通空間の側面に対して貫通空間側面に形成した感光性膜へ光を照射する装置であることを特徴とする、貫通空間側面用露光装置。
  31. 前記貫通空間側面用露光装置は、基板の片面または両面に複数のLED素子を搭載し、LED素子から光を透過する透明体基板を有することを特徴とする、請求項30に記載の貫通空間側面用露光装置。
  32. 前記透明体基板には貫通空間側面に形成するパターンに対応した光を透過しないパターンが形成されていることを特徴とする、請求項31に記載の貫通空間側面用露光装置。
  33. 請求項1〜29のいずれかの項に記載のイオン注入装置の貫通空間の側面にパターンを形成する装置であって、前記貫通空間に挿入し、前記貫通空間側面に形成した膜をエッチング除去するエッチングガスまたはエッチング液を噴出する装置であることを特徴とする、貫通空間側面用エッチング装置。
  34. 前記貫通空間側面用エッチング装置は、前記貫通空間の側面に略平行な2つの基板および前記2つの基板の間に空間(エッチングガスまたはエッチング液体滞留空間という)を有するものであり、前記2つの基板の1つまたは両方にエッチングガスまたはエッチング液を噴出する孔が複数存在し、エッチングガスまたはエッチング液は前記複数の孔から噴出することを特徴とする、請求項33に記載の貫通空間側面用エッチング装置。
  35. 前記2つの基板のうち少なくとも1つは導電体基板であり、前記導電体基板とエッチングされる基板との間に電界を生じさせることにより、ドライエッチングによりパターン形成することを特徴とする、請求項34に記載の貫通空間側面用エッチング装置。
  36. 請求項1〜29のいずれかの項に記載のイオン注入装置の貫通空間の側面に成膜する成膜(CVD)装置であって、前記貫通空間に挿入し、前記貫通空間の側面に所定の膜を形成するための成膜ガスを噴出する装置であることを特徴とする、貫通空間側面用成膜装置。
  37. 前記貫通空間側面用成膜装置は、前記貫通空間の側面に略平行な2つの基板および前記2つの基板の間に空間(成膜ガス滞留空間という)を有するものであり、前記2つの基板の1つまたは両方に成膜ガスを噴出する孔が複数存在し、成膜ガスは前記複数の孔から噴出することを特徴とする、請求項36に記載の貫通空間側面用成膜装置。
  38. 前記2つの基板のうち少なくとも1つは導電体基板であり、前記導電体基板と成膜される基板との間に電界を生じさせることにより、プラズマCVDにより成膜することを特徴とする、請求項37に記載の貫通空間側面用成膜装置。
  39. 請求項1〜29のいずれかの項に記載のイオン注入装置の貫通空間の側面にメッキ膜を形成するメッキ装置であって、前記貫通空間に挿入し、前記貫通空間の側面に所定のメッキ膜を形成するためのメッキ液を噴出する装置であることを特徴とする、貫通空間側面用メッキ膜形成装置。
  40. 前記貫通空間側面用メッキ膜装置は、前記貫通空間の側面に略平行な2つの基板および前記2つの基板の間に空間(メッキ液滞留空間という)を有するものであり、前記2つの基板の1つまたは両方にメッキ液を噴出する孔が複数存在し、メッキ液は前記複数の孔から噴出することを特徴とする、請求項39に記載の貫通空間側面用メッキ膜形成装置。
  41. 成膜される基板に電圧を印加してメッキ膜を形成することを特徴とする、請求項40に記載の貫通空間側面用メッキ膜形成装置。
  42. 請求項1〜29のいずれかの項に記載のイオン注入装置の貫通空間の側面に感光性膜を形成する感光性膜形成装置であって、前記貫通空間に挿入し、前記貫通空間の側面に所定の感光性膜を形成するための感光性膜液を噴出する装置であることを特徴とする、貫通空間側面用感光性膜形成装置。
  43. 前記貫通空間側面用感光性膜形成装置は、前記貫通空間の側面に略平行な2つの基板および前記2つの基板の間に空間(感光性膜滞留空間という)を有するものであり、前記2つの基板の1つまたは両方に感光性膜液を噴出する孔が複数存在し、感光性膜液は前記感光性膜滞留空間から前記複数の孔を通して噴出することを特徴とする、請求項42に記載の貫通空間側面用感光性膜形成装置。
  44. 請求項1〜29のいずれかの項に記載のイオン注入装置の貫通空間の側面に膜を形成する成膜装置であって、ターゲット基板を前記貫通空間に挿入し、前記ターゲット基板に高周波電界を印加することにより、前記貫通空間の側面に所定の膜を形成する装置であることを特徴とする、貫通空間側面用成膜装置。
  45. 前記高周波電界の印加は、低圧化でかつスパッタガスを導入して行なうことを特徴とする、請求項44に記載の貫通空間側面用成膜装置。
  46. 請求項1〜29のいずれかの項に記載のイオン注入装置の貫通空間の内側側面を磨く研磨装置であって、研磨棒を前記貫通空間に挿入し、前記研磨棒を回転または往復運動させることによって、前記貫通空間を研磨する装置であることを特徴とする、貫通空間側面用研磨装置。
  47. 請求項1〜29のいずれかの項に記載のイオン注入装置の貫通空間の内側側面にパターンを転写する装置であって、転写パターンを付着した転写体を前記貫通空間に挿入して、転写体を前記貫通空間内側側面に押し付けてパターン転写する装置であることを特徴とする、貫通空間側面用転写装置。
  48. 前記転写体は、円柱形転写棒であり、前記円柱形転写棒を前記貫通空間の内側側面に押し付けながら回転させてパターン転写することを特徴とする、請求項47に記載の貫通空間側面用転写装置。
  49. 前記転写体は、転写板であり、前記転写板を前記貫通空間の内側側面に押し当ててパターン転写することを特徴とする、請求項47に記載の貫通空間側面用転写装置。
  50. 前記転写パターンは、導電体膜パターンまたは絶縁膜パターンであることを特徴とする、請求項47〜49のいずれかの項に記載の貫通空間側面用転写装置。
  51. 請求項1〜29のいずれかの項に記載のイオン注入装置の貫通室を有する主基板の作製方法であって、イオン注入装置の貫通室を有する主基板と同じ構造体またはイオン注入装置の貫通室を有する主基板と同じ構造体を複数重ねた構造体を用いてモールド(型)を作製する工程、前記モールドに前記主基板と同じ材料の溶融材料を流し込んで冷却固化するか、前記モールドに前記主基板と同じ材料の粉末材料を入れて焼結させるかして、インゴットを作製する工程を含むことを特徴とする、イオン注入装置の貫通室を有する主基板の作製方法。
  52. 前記インゴットを厚み方向に切断し所定の厚みのイオン注入装置の貫通室を有する主基板を作製する工程を含むことを特徴とする、請求項51に記載のイオン注入装置の貫通室を有する主基板の作製方法。
  53. 前記イオン注入装置の貫通室を有する主基板と同じ構造体は、3Dプリンターで作製することを特徴とする、請求項51または52に記載のイオン注入装置の貫通室を有する主基板の作製方法。
  54. 請求項1〜29のいずれかの項に記載のイオン注入装置を3Dプリンターで作製することを特徴とする、イオン注入装置の作製方法。
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