JP6704903B2 - ユーザーの尿及び糞便を回収する用具 - Google Patents

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Description

本発明は、ユーザー、特に老若男女問わず寝たきり状態のユーザーの尿及び糞便を回収する用具に関する。
通常、(特に病院、老人ホームにおいて)トイレを使用できない寝たきり患者の尿及び糞便を回収するには、使い捨てオムツ、又は、洗浄可能な差し込み便器が使用される。
しかし、これらの既知の方法は、衛生面から満足できるものではない。
オムツを使用する場合、オムツを廃棄し別の清潔なオムツに取り替えるためには患者の身体からオムツを取り除かなければならない。この際、偶発的に患者の排泄物が、オムツを交換する作業者(例:看護師)に接触したり、その他の設備や床に接触する危険性が伴う。
差し込み便器が使用される場合、差し込み便器は使い捨てではないため、再度利用するには洗浄が必要となる。つまり、差し込み便器が汚れるたびに、汚れた差し込み便器を取り除き、別の清潔な差し込み便器と取り替えるために作業者(例:看護師)の介入が必要となり、汚れた差し込み便器を洗浄・消毒が可能な施設へ運ぶ必要がある。結果として、差し込み便器が非常に多くの回数取り扱われることになる。更に、差し込み便器の洗浄・消毒が不完全の場合もあり、洗浄・消毒が不完全な差し込み便器が、別の患者、別の作業者、他の設備、又は、床と接することもある。
現在、排泄物や、排泄物によって汚染された表面や設備に繰り返し触れることによって、排泄物に含まれる微生物や特定のバクテリアに汚染される危険性が有ることがわかっている。院内感染や、特に抗生物質に何倍もの耐性を持つバクテリアの感染が患者やケアスタッフの健康リスクとなる病院や老人ホーム等の施設においてこれは特に問題となる。
従って、ユーザーの排泄物と道具を取り扱う作業者との偶発的な接触を抑制、又は、回避可能にする、ユーザーの尿及び糞便を回収する用具に対する需要がある。
これに関して文献US2003/0116575には、従来の差し込み便器にはめ込んで使用するのに適した使い捨て容器が提案されている。当該使い捨て容器は、患者の尿及び糞便を貯留する底部貯留区画と、患者からの尿及び糞便を前記貯留区画へ導く上部受容区画とを有している。前記受容区画と前記貯留区画とは、少なくとも一つの可撓弁を有する飛散防止要素によって分けられている。前記少なくとも一つの可撓弁は、患者からの尿及び糞便が通過する際に開口し、糞便が通過後再び閉塞する溝を画定する。
しかし、文献US2003/0116575に提案される使い捨て容器では、糞便が尿から一時的にでも分離されることがないため、特に患者が汚れる虞がある。また、文献US2003/0116575には、ユーザーが長期間寝たきり状態になった際に起こる床ずれを抑制又は防止するための解決方法が提案されていない。
上記問題を解決すべく、本発明はユーザーの尿及び糞便を回収する用具であって、ユーザーの臀部を支える支持面と、前記支持面により画定される開口へと連通し、底部を有するチャンバと、前記底部と前記支持面との距離の維持に適したスペーサ手段とを備え、前記チャンバーは、鉛直方向に関して前記支持面と前記底部との間の中間部に位置し、第一形状及び第二形状を取り得る内壁要素を有している。前記第一形状において、前記内壁要素は前記チャンバを上側コンパートメントと下側コンパートメントとに区分けし、これらコンパートメントの間に、2つの前記コンパートメントを連通させて尿を通す一方で糞便を上側コンパートメントに保持する障壁が形成されている。前記内壁要素の第二形状において、前記障壁は実質除かれており、糞便がチャンバの底へ移動するようになっている。
上記用具において、前記内壁要素は、鉛直方向に関して前記支持面と前記底部との間の中間部に位置しており、前記内壁要素が前記第一形状である場合、前記上側コンパートメントは、当該用具を設置したユーザーの糞便を受容するために必要となる内部容積を有する。従って、前記ユーザーは、ベッド等他の設備を汚すことなく用具に排尿及び排便を行うことができる。
また、前記内壁要素が前記第一形状である場合、尿が直接下側コンパートメントへ流れ、糞便は前記内壁要素が第一形状にある限り、前記障壁によって上側コンパートメントに保持される。従って、糞便が尿によって希釈されることがなく、ユーザーが汚れる危険性が制限される。特に前記用具は一般的に、一定の時間ベッド又は椅子の上のユーザーに接触した状態になる。従って、本発明の前記用具は、特に座った状態の、又は、寝たきり状態の患者に使用可能である。
その後、汚れた用具を別の清潔な用具と取り替える場合、前記用具の取替作業を行う作業者が前記内壁要素を第一形状から第二形状へ遷移させる。前記内壁要素の第二形状では、前記内壁要素によって形成される障壁が実質除かれている。つまり、内壁要素は前記チャンバ内にあるものの、形状が変化し、実質的に糞便移動の障壁を構成しなくなる。従って、糞便が下側コンパートメントへ移動し、閉じ込められる。このようにして、糞便はユーザーと前記用具の取替作業を行う作業者から更に遠ざけられる。従って、排泄物と接触する危険性が除去、又は、大幅に制限される。
前記内壁要素は、可撓性皮膜を少なくとも部分的に備えていてもよい。
可撓性皮膜の一部以上を前記チャンバの壁に固定することにより、前記内壁要素の少なくとも一部を容易に構成することができる。
前記障壁は、可撓性皮膜の少なくとも一部に設けられた少なくとも一つの内向き折り返し部(reentrant fold)によって形成されていてもよい。
このようにすることで、少なくとも一つの内向き折り返し部を開くだけで、前記障壁を除くことができるため、前記障壁の第一形状から第二形状への遷移が特に行いやすくなる。また、上記のような内向き折り返し部によって、可撓性皮膜が第一形状においてその配置状態を確実に維持し、不適切なタイミングで障壁がなくなることがない。また、内向き折り返し部によって、第一形状において二つのコンパートメントが効果的に仕切られ、糞便が効果的に支持される。
前記第一形状において、2つの前記コンパートメントは、可撓性皮膜の二つの対向する内向き折り返し部により画定される略溝状の開口によって連通していてもよく、前記障壁が前記内向き折り返し部によって形成される。
これら内向き折り返し部により上記の効果が得られる。また、前記第一形状から第二形状へと遷移する際に、前記障壁は除かれて前記溝状の開口が広げられる。また、前記可撓性皮膜の二つの部分がチャンバの壁に固定されればよいので、内壁要素を平易に構成することができる。
前記溝状の開口は前記用具の略縦方向、又は、略横方向に延在している。
第一形状において、前記溝状の開口の幅は0.5センチメートル(cm)〜3cmの範囲であってもよい。
これはユーザーの尿を通しつ、糞便を保持するのに充分な幅である。
また、前記溝状の開口の長さは10cm〜60cmの範囲であってもよい。
これは、前記第一形状から第二形状へ遷移する際に、ユーザーの糞便をほぼ全て移動させるのに充分な長さである。
前記底部及び可撓性皮膜の少なくとも一部は、一枚の可撓性皮膜から形成されていてもよい。
これにより、前記用具を容易に構成することが可能になる。
また、可撓性皮膜の少なくとも一部は、その上端が前記支持面に接合されており、下端が底部に接合されていてもよい。
これにより、前記内壁要素が前記第一形状から第二形状へ遷移する際に、前記用具の支持面を有する部分を把持し上方に引っ張るだけで、自動的に前記少なくとも一つの内向き折り返し部を展開することが可能になる。従って、前記用具の扱いが容易になり、用具を正しく取り扱うことにより、ユーザーの糞便が前記用具を取り扱う作業者と偶発的に接触する危険性を大幅に削減することが可能となる。
前記チャンバの一部が、前記支持面の下に延在していてもよい。
これにより、前記コンパートメントの容積を増やすことができる。
前記底部に吸収要素を配置してもよい。
これにより、前記用具が偶発的に転倒した場合、底に穴が開いた場合、又は、壁要素が破損した場合に、尿がこぼれる危険性を制限することが可能となる。さらに、以前に大量の尿が回収されていたとしても、糞便が前記上側コンパートメントから前記下側コンパートメントへ移動する際の尿の飛散を回避又は防止することが可能となる。
前記スペーサ手段は、膨張チューブであってもよい。
これにより、使用が容易な手段を利用して前記底部を前記支持面から離すことが可能になる。
前記支持面は、膨張チューブの上面であってもよい。
こうすることにより、ユーザーの臀部を前記膨張可能な部分で支持することができる。これにより、前記用具は寝たきりのユーザーの尿及び糞便の回収のみではなく、長期間寝たきり状態のユーザーの床ずれの発生を制限又は防止にも使用可能となる。
前記膨張チューブは、逆止弁を有する膨張弁を有していてもよい。
これにより、圧力をかけて外気を送り込むことにより、望ましくない収縮を引き起こすこと無く、前記膨張チューブを膨張させることが可能となる。
前記支持面により画定される開口の最大長さは、20cm以上であってもよい。
これは実質的にユーザーの生殖器領域を覆うのに充分な開口のサイズであり、ベッド等その他の設備が尿や糞便で汚れるのを防ぐことが可能となる。
以下の非限定的な例示である実施形態の詳細な説明を読むことにより、本発明をよく理解しその効果が明確になるであろう。前記説明では、以下の添付図面を参照する。
本発明の第一実施形態に係る用具を上方から見た斜視図である。 図1に示す用具のII−II線の断面図である。 図3A及び3Bは、使用中の図1に示す用具のII−II線の断面図である。 図1に示す用具の平面図である。 図4Aに類似する図であり、変形例を示す図である。 本発明に係る用具の第二実施形態を上方から見た斜視図である。 図5に示す用具のVI−VI線の断面図である。 図7A及び7Bは、使用中の図5に示す用具のVI−VI線の断面図である。 図5に示す用具の平面図である。 図8Aに類似する図であり、変形例を示す図である。
全ての図面及び以下の説明において、Dv、Dl、及び、Dtはそれぞれ用具の鉛直方向、縦方向、及び、横方向を表している。
前記鉛直方向Dvは、前記用具を設置する面(例:ベッドの面)に対して直角の方向である。前記用具の縦方向Dlは、前記用具を設置した際に、ユーザーの頭部−胴体−脚部の軸と一致する方向である。
前記横方向Dtは、前記縦方向Dlに直角な水平面の方向である。
第一実施形態
図1に示すように、第一実施形態の用具1は、開口20Bを画定する膨張チューブ10を有している。
膨張チューブ10は、外側接合縁11及び内側接合縁12が得られるように適切なサイズと形状(具体的には、環状)に切り出された二枚の皮膜を接合することによって構成されている。例えば、前記被膜は、切れ目なく広げられたプラスチック材(例:ポリエチレン(PE))の薄膜であり、周知の方法で局所的に前記プラスチックを溶かすことによって接合されている。前記プラスチック材は、バイオプラスチックであってもよく、具体的には、例えばコーン(とうもろこし)の澱粉ベースの生分解性、又は、堆肥可能なものであってもよい。尚、前記皮膜は当然、局所的に前記プラスチック材を溶かして接合する以外の方法、例えば、接着剤等の手段を用いて接合してもよい。
この膨張チューブ10は、以下でより詳細に記載する、ユーザーの身体に対する支持面として機能する上面10Aと、底面10Bとを有している。前記上面10Aは、中央における開口10Eを画定している。
前記膨張チューブ10は、給気管16Aと逆止弁16Bとが設けられた膨張弁16を有している。前記膨張弁16は、前記膨張チューブ10の任意の場所に設けられていてもよい。
以下に更に詳細に説明するように、前記膨張弁16は、前記用具1をユーザーの下に設置する前に、膨張チューブ10を膨らませるために使用される。前記膨張チューブ10は、パーティー用の風船を膨らませるように、人が息を吹き込む等、どのようにして膨らませてもよい。また、外部ポンプを利用してもよい。当該ポンプは前記用具1に設けられていてもよく(図示せず)、また病院や老人ホーム等の施設において利用可能であれば、圧力下の医療用酸素又は空気を利用してもよい。前記膨張チューブ10を膨らませると、又は、膨らんでいる間、前記逆止弁16Bが前記膨張チューブ10の収縮を防止する。このような用途に適した逆止弁としては既知のものが使用できるため記載を省略する。
尚、外気又は酸素を使用して膨らませる方法に加えて、又は、その代わりに、前記膨張チューブ10に、互いに接触すると気体を発生させる特性を有する複数の化合物を適量用意し、当該化合物を互いに隔離する内壁を壊す等して、前記化合物を互いに接触させるシステムを設けてもよい。
図2の断面図に示すように、前記用具1は内壁要素23を有するチャンバ20を備えている。
前記内壁要素23は、鉛直方向に関して前記用具1の前記支持面10Aと前記底部22との間の中間部に位置している。つまり、前記用具1が表面に水平に載置されている場合、前記内壁要素23は、前記支持面10Aよりは低く前記底部22よりは高い位置にある。しかし、前記内壁要素23は可撓性を有するため、自重により垂れ下がり底部に接触する傾向にある。
図2には、前記膨張チューブ10が膨らんだ状態であり、且つ、前記用具1を水平面に載置した状態で前記内壁要素23がとりうる形状(以下、第一形状)の用具1を示している。
この第一形状において、前記内壁要素23は、前記チャンバ20を、上側コンパートメント20Cと下側コンパートメント20Aとに区分けしている。
前記上側コンパートメント20Cは、その上側で開口10Eを介して外部と連通しており、前記膨張チューブ10の内側境界によって側方が画定されている。
前記内壁要素23が前記支持面10Aよりも低い位置にあるので、前記上側コンパートメント20Cには鉛直方向の広がりがあり、ユーザの糞便400を受容する容積があることが理解できる(図3A参照)。前記内壁要素23の高さは、ユーザの排泄時に、前記糞便400がユーザの皮膚から隔てられる高さを選択することが好ましい。例えば、前記内壁要素と前記支持面によって画定される面との距離Dは、3cm〜10cm程度であってもよい。
前記下側コンパートメント20Aは、前記上側コンパートメント20Cの下に位置しており、前記内壁要素23によって画定される開口20Bを介して前記上側コンパートメント20Cと連通している。前記下側コンパートメント20Aの底部は前記用具1の底部22と一致する。
全般的に、前記下側コンパートメント20Aの縦方向の寸法は小さく(図2及び3Aでは、明確性のため誇張して記載している)、下側コンパートメント20Aの、前記内壁要素の下面により画定される上壁は、用具1の動作を妨げなければ、前記底部22と接触していてもよい。但し、前記下側コンパートメント20Aはユーザーの尿300を収容可能であることが望まれる。このため、図示される例では、前記コンパートメントの底部22に、尿を吸収可能であり、吸収すると若干容積が膨張する吸収要素24が配置されている。前記吸収要素24は、従来使用されている子供用又は大人用の吸収オムツタイプのものであってもよい。前記吸収要素24は底部22に(例えば接着剤によって)固定されていてもよく、単に底部22に載置されているだけでもよい。
図示は省略するが、前記下側コンパートメント20Aの容積の増加が望まれる場合、部分的に前記上面10Aの下側まで延在するように横方向Dtに拡張してもよい。
前記第一形状(図3A参照)において、前記内壁要素23はユーザーの糞便400の移動の障壁を形成している。「障壁の形成」とは、内壁要素23が糞便400の保持に貢献し、前記チャンバ20の底部への移動を防止又は制限し、結果的に糞便400が、前記下側コンパートメント20Aに収容される尿と接触すること無く、底部22から本質的に隔てられることを意味する。
また、前記内壁要素は、外部からの操作に応じて、前記第一形状とは異なる形状(当該形状を以下、第二形状と称す)となるように設けられている。
前記第二形状において、前記内壁要素23により形成される障壁は実質的に取り除かれている。つまり、前記内壁要素23はチャンバ20内に留まるが、その形状が実質的に障壁をなさない形状に変更され(例えば開口20Bが広げられ)、糞便400を通すようになる。糞便400は重力によりチャンバ20の底部に向かって移動する。従って、糞便400と尿300は共にチャンバ20の底部にあり、開口10E、支持面10A、及び、ユーザの皮膚から隔てられた場所にあり、糞便400が前記第二形状の用具を取り扱う作業者の皮膚に接触する危険性が制限される。
前記用具1には、外壁26が設けられていてもよい。当該外壁26は、ポリエチレン(PE)又は生分解可能なプラスチック材の可撓性皮膜からなり、外側接合縁11に接続され、内壁要素23を包含し、底部22を覆う。つまり、底部22が偶発的に破損しても、尿や糞便が破損箇所から漏れ出すこと無く前記外壁26によって閉じ込められる。
以下に、前記用具1の使用と操作について説明する。
例えばユーザーが寝たきり状態にあるベッド等の表面とユーザーの身体との間に前記用具1を設置するには、前記膨張チューブ10を上述のように膨らませ、ユーザの臀部が前記支持面10Aに支持されるようにユーザを載置する。これにより、ユーザが寝たきり状態である場合、前記膨張チューブ10がユーザを支え、床ずれの発症を制限又は防止する。ユーザを載置する際に内壁要素23は上記第一形状をとっていることがわかるであろう。
図1、4A、及び、4Bに示されるように、前記膨張チューブ10は、全体的に楕円形(即ち、卵の輪郭に類似する形状)であることが好ましい。長辺寸法は縦方向Dlと一致し、短辺寸法は横方向Dtと一致し、膨張チューブ10のユーザーの胴体に近い方(図4A及び4Bの上側)が広い輪郭をなしている。これにより、ユーザに対する支えが向上する。
ユーザに提供する支えをさらに向上するために、前記チューブのユーザの背部に近い領域(図4A及び4B)をより広く、及び/又は、より厚くしてもよい。また、膨張チューブ10については、必要に応じて別の形状を取ることも可能である。
何れの場合においても、ユーザの頭部ー胴体ー脚部の軸が前記縦方向Dlと一致し、ユーザの生殖器領域が前記膨張チューブの前記開口10E、及び、開口20Bの上となるようにユーザを載置する。
前記用具1は、全体的に楕円形の浮き輪に、尿及び糞便を受容するチャンバ20を取り付けた形状をしており、ユーザーの生殖器領域を前記浮き輪の中央の開口に被せるように寝かせる。
ユーザが排尿及び/又は排便を行った後、用具1を取り替える必要がある。
前記内壁要素23が第一形状をとっている際に、糞便400の移動に対する障壁を形成する。上述の通り、前記糞便400はユーザの皮膚から隔てられた位置に維持される。また、前記開口20Bは閉じていないため、尿300が下側コンパートメント20Aへ移動可能な連通路を形成している。
上記用具1を外部から操作することにより、前記内壁要素23は前記第一形状から第二形状へと遷移する。従って、内壁要素23によって形成されている前記障壁は実質的に消滅し、糞便400が前記下側コンパートメント20Aに移動可能となる。
前記底部22に吸収要素24を配置することにより、尿300の殆ど又は全てが、当該吸収要素24に吸収される。これにより、以前に大量の尿300を収容しており、糞便400が非常に高スピードで下側コンパートメント20Aに移動した場合にも飛散の危険性を回避又は除去することが可能となる。また、用具が偶発的に転倒した場合や、前記底部22が破損した場合、或いは、さらに一般的に前記可撓性皮膜23が破損した場合にでも、尿が漏れ出す事態を回避することができる。最後の二つの点については、特に、経済的な理由から前記可撓性皮膜23を上述のとおり外壁26で覆わないと決定した場合に望ましい。
前記内壁要素23が前記第二形状にある場合、汚れた用具1は別の場所へ移され、新しい清潔な用具1と取り替えることが可能である。
一般的に、前記用具1は一回だけの使用で使い捨てであることを想定している。つまり、前記用具1は、使用後そのまま例えば焼却等で廃棄できるように設計されている。これに関して、前記用具1をポリエチレン(PE)又はバイオプラスチックの可撓性皮膜で形成すれば、前記用具1のコストを充分に低く抑えることができ経済的に実施可能となるので望ましい。また、前記用具1が使い捨てであることにより、既知の差し込み便器で現在必要となる汚れた用具の清掃設備が不要となり、また、このような用具を施設内であちこちに移動させる必要もなくなる。これにより、このような用具と別の設備や表面が接触する回数の増加を回避することが可能となる。
具体的には、前記用具1を廃棄するには、前記膨張チューブ10を例えば、前記膨張チューブ10の破りやすい箇所(図示せず)で破く、又は、鋭利な物体で穴を開けるなどして、萎ませた後、適切な容器に収納する。前記容器については、必要に応じて医療廃棄物を収容する容器であってもよい。
以下に、前記内壁要素23の可能な形状について更に詳細に説明する。
前記内壁要素23の可撓性皮膜の少なくとも一部は、その上端が前記支持面(より正確には膨張チューブ10)への接合に適しており、その下端が前記底部22に接合に適している。前記可撓性皮膜の少なくとも一部及び底部が、一枚の皮膜を適切に折り曲げることによって形成可能であることが理解できるであろう。
例えば、可撓性皮膜の前記少なくとも一部の上端を前記内側接合縁12、又は、より一般的に言うと前記膨張チューブ10の前記底面10Bに接合してもよい。尚、前記可撓性皮膜の一部を対照的に膨張チューブ10に接合する必要はない。つまり、前記可撓性皮膜の一部の上端を前記膨張チューブ10の異なる高さの位置に接合してもよい。
本実施形態において、前記開口20Bは、前記内側接合縁12付近に近接した両端において(例えば局所的な溶接により)接合されている(図4A及び4B参照)。
可撓性皮膜の前記少なくとも一部は、前記第一形状において、少なくとも一つの内向き折り返し部を有しており、この内向き折り返し部によって糞便400の移動に対する障壁を形成することができる。本明細書での意味において、「内向き折り返し」とは、前記用具を横方向Dtの断面図で見た場合、折り返されたヒンジ(図2において、参照符号23L1及び23R1を付す)が、当該ヒンジで接合される二つの側面よりも、用具のさらに内側に位置していることを意味する。つまり、前記内向き折り返し部の形状は可撓性皮膜の少なくとも一部をチャンバ20の内側へ突出させる形状である。
前記膨張チューブ10同様、可撓性皮膜の前記少なくとも一部もポリエチレン(PE)又は生分解可能なプラスチック材で形成されていてもよい。可撓性皮膜の前記少なくとも一部は、糞便400の重量を、破損、損傷することなく支持可能な充分な厚みであり、且つ、容易に折り畳み又は展開可能な薄さであることが好ましい。例えば、前記厚みは20マイクロメートル(μm)〜500μmであり、好ましくは30μm〜100μmである。
図2、3A、及び、3Bには、二つの対向する可撓性皮膜部23A及び23Bを有する用具1の形状例が示されている。可撓性皮膜部23A及び23Bのそれぞれは、内向き折り返し部を有しており、これら内向き折り返し部にはそれぞれ23L及び23Rの参照符号が付されている。これら内向き折り返し部のヒンジ23L1及び23R1によって、略溝形状の前記開口20Bを画定する。
図4A及び4Bに示されるように、前記溝状の開口は略縦方向Dl、又は、略横方向Dtに配置されている。何れの場合も前記用具1は同様に動作する。
以下に説明するように、前記第一形状から第二形状へ遷移する際に、ユーザーの糞便を実質的に全て移動させるために、前記溝状の開口の長さは10cm〜60cmの範囲である。本実施形態では、前記溝状の開口の長さは10cm〜40cmの範囲であることが好ましい。
尿及び糞便によってベッド等の他の物が汚れるのを回避できるように、ユーザーの生殖器領域を実質的に充分に囲む前記開口10Eのサイズを確保するには、前記開口0Eの最大長さが20cm以上であることが好ましい。
図3Aに示すように、前記内壁要素23の第一形状において、前記内向き折り返し部23L及び23Rは、糞便400の移動に対する障壁を形成している。しかし、前記内向き折り返し部23L及び23Rのヒンジ23L1及び23R1によって画定される前記開口20Bは閉じていないため、尿400が下側コンパートメント20Aへ移動可能な連通路が形成されている。
例えば、尿300を通過させつつ糞便400の通過を防止する連通路を形成する目的で、前記溝状の開口20Bは0.5cm〜3cmの幅を有していてもよい。
前記内壁要素23を前記第一形状(図3A)から第二形状(図3B)へ遷移させるには、前記膨張チューブ10を、好ましくはその外周部にある二つの異なる位置(好ましくは略正反対の位置)で把持し、鉛直方向Dvの上向きに持ち上げればよい。前記可撓性皮膜部分23A及び23Bは、前記膨張チューブ10の前記底面10B、又は、下側接合縁12に固定されているため、前記内向き折り返し部23L及び23Rは、前記膨張チューブ10が上向きに引っ張られるにつれて次第に展開される。前記可撓性皮膜23Aを妨げられることなく展開するには、前記膨張チューブ10を、前記溝状の開口に対して直角方向に(即ち、前記チューブを把持する二つの点を結ぶ線が前記溝状の開口の軸に対して略直角にとなるように)把持することが好ましいことがわかるであろう。
前記内向き折り返し部23L及び23Rが「展開」することにより、前記溝20Bが次第に広がっていく。従って、前記内向き折り返し部23L及び23Rによって形成されている前記障壁は実質的になくなり、糞便400が前記下側コンパートメント20Aに移動可能となる。
上記用具には略溝状の開口の両側に内向き折り返し部が設けられているが、前記開口の各辺に内向き折り返し部が設けられた可撓性皮膜の部分を異なる形状(三角形、四角形等)の開口にしてもよく、或いは、前記開口の一又は複数の辺が、その上に配置される二つ或いはそれ以上の折り返し部を有する形状としてもよい。
以上から、前記用具1を正しく取り扱うことにより、糞便400が、偶発的に用具1を取り替える作業者に接触する危険性が非常に低くなることが理解できるであろう。具体的には、作業者は単に前記膨張チューブ10の二つの位置を把持するだけでよいので、糞便400又は糞便400に接触する前記用具の要素にさえ触れる必要がない。さらに、前記膨張チューブ10の二つの正反対の位置において、前記用具1を把持する際に、前記用具1をしっかりと掴むことができるため偶発的な転倒の危険性が制限される。最後に、糞便400は前記下側コンパートメント20Aに閉じ込められるので、当該糞便400が、偶発的に他の表面、他の設備、又は、床に接触する危険性がオムツよりも制限される。
第二実施形態
以下に記載する第二実施形態では、主に上述の第一実施形態との相違点を集中的に説明する。
従って、第二実施形態に関する図、及び、以下の説明において、上述の第一実施形態の要素と同一の第二実施形態の要素については同一の参照符号を付し、必要な場合にのみ言及する。
上述の第一実施形態とは異なる第二実施形態の要素については、100よりも大きな参照符号で示すものとする。
図5は、第二実施形態に係る用具100を上方から見た斜視図である。前記用具100は、壁要素以外に関して上述の用具1と全体的に同じである。
より正確には、図6においてより明確に成るように、前記用具は、前記第一実施形態の内壁要素23に相当する内壁要素123を備えており、当該内壁要素123は、第一実施形態同様、少なくとも一部が可撓性皮膜である。再び、二つの可撓性皮膜部123A及び123Bを示す。以下の説明において、これらは任意の数の可撓性皮膜部に一般化され得ると理解されるべきである。
本実施形態において、前記可撓性皮膜部123A及び123Bのそれぞれの上端は、前記膨張チューブ10の内側接合縁12又は前記底面10Bのどの位置でもなく、外側接合縁11に固定されている。再度述べるが、前記可撓性皮膜部123A及び123Bの上端を対称的に膨張チューブ10に接合する必要はない。例えば、必要に応じて両側のうち片方を外側接合縁12に接合し、もう片方を内側接合縁11又は底面10Bの任意の位置に接合してもよい。
結果として、糞便400の移動に対する障壁は第一実施形態と比べて若干低い位置に形成される。
第一実施形態同様、前記内壁要素が第一形状である場合、チャンバ20は開口120Bを介して互いに連通する上側コンパートメント20C及び下側コンパートメント20Aに区分けされている。
前記可撓性皮膜部123A及び123Bがそれぞれの上端で前記外側接合縁11に固定されているため、前記上側コンパートメント20Cの周辺部120Dは、前記支持面10Aの下に延在している。前記チャンバ20の容積を更に増加させたい場合、前記下側コンパートメント20Aが支持面10Aの下に延在するようにしてもよい。
第一実施形態の例同様、前記可撓性皮膜部123A及び123Bは、それぞれ参照符号123L及び123Rで示すような内向き折り返し部を形成するように折り曲げられている。これら内向き折り返し部のヒンジ123L1及び123R1によって、略溝形状の前記開口120Bを画定する。
図8A及び8Bに示されるように、前記溝状の開口は略縦方向Dl、又は、略横方向Dtに配置されている。何れの場合も前記用具は同様に動作する。
第一実施形態とは異なり、第二実施形態において、前記開口120Bは前記内側接合縁12付近では閉じておらず、前記膨張チューブ10の支持面10Aの下へ延在する(図8A及び8B)。
用具1の製造を容易にするため、前記底部22及び可撓性皮膜部123A及び123Bを、好適に配置され且つ前記外側接合縁12に接合された一枚の可撓性皮膜で形成してもよいことがわかるであろう。
上で述べたように、前記第一形状から第二形状へ遷移する際に、ユーザーの糞便を実質的に全て移動させるために、前記溝状の開口は10cm〜60cmの範囲の長さを有していてもよい。本実施形態では、前記溝状の開口の長さは40cm〜60cmであることが好ましい。
尿300を通過させつつ糞便400の移動を防止する連通路を形成する目的で、前記溝120Bは0.5cm〜3cmの範囲の幅を有していてもよい。
尿及び糞便によってベッド等の他の設備が汚れるのを回避できるように、ユーザーの生殖器領域を実質的に充分に囲む前記開口10Eのサイズを確保するには、前記開口10Eの最大長さが20cm以上であることが好ましい。
図7A及び7Bに示す前記用具100の動作は、第一実施形態の動作と同一である。つまり、前記用具100が尿300や糞便400で汚れると、膨張チューブ10を当該膨張チューブ10の二つの位置で把持して鉛直方向上側に持ち上げることにより、内壁要素123を第一形状(図7A)から第二形状(図7B)へ遷移させる。
第一実施形態同様に、前記内向き折り返し部123L及び123Rは、外側接合縁11が上側に引っ張られるに連れて次第に「展開」し、溝状の開口120Bが次第に広がって、内向き折り返し部123L及び123Rで形成される障壁が実質的になくなる。これにより、糞便400が下側コンパートメント20Aの底部22へと移動することが可能となる。これにより、第一実施形態の用具1と同様の衛生上の効果を得ることが可能と成る。
また、第一実施形態の用具1に加えて、前記用具100では以下のような効果を得ることが可能となる。
前記内壁要素123が第一形状にあるとき、糞便400の移動に対する障壁は第一実施形態と比べて若干低い位置に形成される。例えば、前記内壁要素と前記支持面の上部によって画定される面との距離Dは、4cm〜10cm程度である。これにより、糞便400が不意にユーザ、又は、用具100を取り替える作業者の皮膚に接触することを制限することが可能となる。
また、第一形状から第二形状へ遷移する際に、前記上側コンパートメント20Cの壁によって溝状の開口120へ向かう斜面が自然に形成される。これによって、糞便は下側コンパートメント20Aへの移動が促される。従って用具100が扱いやすくなる。特に、第一実施形態と比較して、糞便400が上側コンパートメント20C内や内側接合縁12に押し付けられる危険性が低減される。
上記用具1及び100は、病院又は老人ホーム等の施設において寝たきり状態のユーザーに使用することを仮定して記載したが、本発明がこのような状況のみに限定されないことは明らかである。特に、前記用具は座った状態での使用も可能であり、ユーザーが前記用具に横たわることを必須とはしていない。
以上具体的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、特許請求の範囲に記載される本発明の全体的な範囲を逸脱すること無くこれら実施形態に種々の変更・改造を加えることができることは明らかである。さらに、各種実施形態の個々の特徴部分は追加の実施形態において統合してもよい。従って、以上における説明及び図面は限定するものではなく、例示として考えられるべきである。

Claims (15)

  1. ユーザーの尿(300)及び糞便(400)を回収する用具(1、100)であって,
    ユーザーの臀部を支える支持面(10A)と、
    前記支持面(10A)により画定される開口(10E)へと連通し、底部(22)を有するチャンバ(20)と、
    前記底部と前記支持面との距離の維持に適したスペーサ手段(10)とを備え、
    前記チャンバーは、鉛直方向に関して前記支持面(10A)と前記底部(22)との間の中間部に位置し、第一形状及び第二形状を取り得る内壁要素(23、123)を有し、
    前記用具(1、100)において、前記第一形状において、前記内壁要素(23、123)は前記チャンバを上側コンパートメントと下側コンパートメントとに区分けし、これらコンパートメントの間に、2つの前記コンパートメントを連通させて尿(300)を通す一方で、糞便を上側コンパートメントに保持する障壁が形成され、前記内壁要素の第二形状において、前記障壁は除かれており、糞便がチャンバ(20)の底へ移動するようになっていることを特徴とする用具。
  2. 前記内壁要素(23、123)の少なくとも一部が可撓性皮膜(23A、23B、123A、123B)である請求項1に記載の用具。
  3. 前記障壁は、可撓性皮膜の少なくとも一部に設けられた少なくとも一つの内向き折り返し部によって形成されている請求項2に記載の用具。
  4. 前記第一形状において、2つの前記コンパートメントは、可撓性皮膜(23A、23B、123A、123B)の二つの対向する内向き折り返し部により画定される溝状の開口(20B、120B)によって連通し、前記障壁が前記内向き折り返し部(23L、23R、123L、123R)によって形成される請求項3に記載の用具。
  5. 前記溝状の開口(20B、120B)は前記用具(1、100)の縦方向(Dl)、又は、横方向(Dt)に延在している請求項4に記載の用具。
  6. 第一形状において、前記溝状の開口(20B、120B)の幅は0.5cm〜3cmの範囲である請求項4又は5に記載の用具。
  7. 前記溝状の開口(20B、120B)の長さは10cm〜60cmの範囲である請求項4〜6のいずれか1項に記載の用具。
  8. 前記底部(22)及び前記可撓性皮膜(23A、23B、123A、123B)の少なくとも一部は、一枚の可撓性皮膜から形成されている請求項2〜7のいずれか1項に記載の用具。
  9. 前記可撓性皮膜(23A、23B、123A、123B)の少なくとも一部は、その上端が前記支持面(10A)に接合されており、下端が底部(22)に接合されている請求項2〜7のいずれか1項に記載の用具。
  10. 前記チャンバ(20A、120)の一部が、前記支持面(10A)の下に延在している請求項1〜9のいずれか1項に記載の用具。
  11. 前記底部(22)に吸収要素(24、124)が配置されている請求項1〜10のいずれか1項に記載の用具。
  12. 前記スペーサー手段(10)は、膨張チューブである請求項1〜11のいずれか1項に記載の用具。
  13. 前記支持面(10A)は、膨張チューブ(10)の上面である請求項12に記載の用具。
  14. 前記膨張チューブ(10)は、逆止弁(16B)を有する膨張弁(16)を有している請求項12又は13に記載の用具。
  15. 前記支持面(10A)により画定される開口(10E)の最大長さは、20cm以上である請求項1〜14のいずれか1項に記載の用具。
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