JP6702745B2 - 耐砒素性に優れた鉄酸化細菌を用いたスコロダイトの製造方法 - Google Patents

耐砒素性に優れた鉄酸化細菌を用いたスコロダイトの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、スコロダイトの製造に関する。より具体的には、耐砒素性に優れた鉄酸化細菌を用いたスコロダイトの製造方法に関する。
銅鉱石などの非鉄製錬原料中には種々の不純物が混入しており、そのような不純物には砒素(As)が含まれる。砒素は有毒元素であり周囲環境への影響を考えて、化学的に安定性の高い形態に変換した上で処分することが望まれる。この点、鉄砒素化合物であるスコロダイト(FeAsO4・2H2O)の結晶は化学的に安定であることが知られており、長期保存にも適している。
特許文献1及び2では、スコロダイトを生成するために、好熱性鉄酸化細菌を用いる方法を開示している。より具体的には、二価の鉄イオンと、三価の砒素イオンとを、所定の比率で投入し、好熱性鉄酸化細菌の1種であるAcidianus brierleyiが前記砒素イオンを固定化している。
特開2013−180034号公報 特開2014−046221号公報
上記のように、鉄酸化細菌は、スコロダイトの製造に非常に有用である。しかし、一方で、スコロダイトを構成する砒素は、一般的に毒性を有する化合物である。そして、その毒性が、鉄酸化細菌の活動に悪影響を与えている。従って、スコロダイトの製造においては、鉄酸化細菌の能力が制限されている。
以上の点に鑑みて、本願発明は、砒素に対して耐性を有する鉄酸化細菌を用いて、スコロダイトを製造するための方法を提供することを目的とする。
上記目的に鑑みて、本発明者が鋭意検討した結果、硫黄源を有する環境下で予め鉄酸化
細菌を培養すると、砒素の毒性に対する耐性が高まることを見出した。このような知見に
基づき、本発明は、一側面において、以下の発明を包含する。
(発明1)
スコロダイトの製造方法であって、
硫黄源が存在する環境下で鉄酸化細菌を培養する工程と、
前記鉄酸化細菌を培養する工程後に、当該鉄酸化細菌と、鉄と、砒素とを含む溶液中で、スコロダイトを生成する工程と、
を含む、該方法であり、
スコロダイトを生成する前記工程を、溶液中の砒素濃度が150mg/L未満になるま
で継続させ
前記鉄酸化細菌が好熱性鉄酸化細菌であり、
前記硫黄源中の硫黄の酸化状態が+5以下であり、
前記鉄酸化細菌を培養する工程において、前記環境中の前記硫黄源の量が、硫黄原子の重量に換算して、0.1〜50g/Lである、該方法。
(発明2)
前記鉄酸化細菌を培養する工程において、前記環境中の砒素の量が、砒素の原子量換算で、0.1g/L以下である、発明1に記載の方法
発明
発明1又は2に記載の方法であって、前記砒素が三価の砒素である、該方法。
(発明
発明1〜いずれか1つに記載の方法であって、スコロダイトを生成する前記工程が、
前記溶液にヒ素固定基材を添加することを含む、該方法。
(発明
発明に記載の方法であって、前記ヒ素固定基材が種結晶である、該方法。
本発明では、硫黄源の存在下で鉄酸化細菌を培養する。これにより、砒素の毒性に対して耐性を有する鉄酸化細菌を得ることができる。また、こうした鉄酸化細菌を、砒素が存在する環境下でのスコロダイトの生成に用いる場合、該環境下で鉄酸化細菌は良好に生育する。従って、鉄酸化細菌の作用によるスコロダイトの生成が良好に進行する。更には、こうした鉄酸化細菌は砒素に対する耐性が優れているため、スコロダイトの生成の際に投入する砒素の量を増やすことができる。従って、このような意味でも、スコロダイトの生成が良好に進行する。
ここで、上記のような砒素による悪影響を低減させる別の方法として、スコロダイトの生成を行う前に、鉄酸化細菌を、順化培養する方法が考えられる。より具体的には、順化培養中、培養液内の砒素濃度を段階的に上昇させる方法が考えられる。例えば、砒素濃度について初回50mg/Lとし、以降50mg/Lずつ濃度を上げて、最終濃度1g/Lになるまで順化培養する。そして、培養中は菌数を確認し、対数増殖期を過ぎた段階で、更に砒素濃度を引き上げる。こうした方法により、砒素に対して耐性を有する鉄酸化細菌が優先的に増殖することになる。そして、このような鉄酸化細菌を用いれば、スコロダイトの製造中の砒素による悪影響を低減させることができる。しかし、このような方法では、砒素濃度を段階的に上昇させる分、時間と労力がかかることとなる。例えば、目的とする砒素濃度にするまでに順化させるのに時間がかかる(例えば数十日〜数百日かかる場合がある)。また、2回目以降の砒素濃度を高める培養を行う際に、どの程度の砒素濃度にするかについて具体的な設定方法は公知ではないため試行錯誤が必要である。
この点に関して、本発明の一側面では、一定濃度の硫黄源の存在下で鉄酸化細菌を培養する。即ち、砒素濃度を段階的に上げるといった上述の方法と比べると、より簡便な方法で、砒素に対する耐性を有する鉄酸化細菌を得ることができる。
スコロダイトの製造環境下における溶液中のヒ素濃度の変化を示すグラフである。 スコロダイトの製造環境下における溶液中のヒ素濃度の変化を示すグラフである。 スコロダイトの製造環境下における溶液中のヒ素濃度の変化を示すグラフである。 スコロダイトの製造環境下における溶液中のヒ素濃度の変化を示すグラフである。 スコロダイトの製造環境下における溶液中のヒ素濃度の変化を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための具体的な実施形態について説明する。
1.鉄酸化細菌
1−1.鉄酸化細菌の属種
一実施形態において、本発明は、鉄酸化細菌を用いる。鉄酸化細菌の属種は、特に限定されないが、以下の物が挙げられる:
Acidithiobacillus ferrooxidans等のAcidithiobacillus(アシディチオバチルス)属;
Ferroplasma acidiphilum等のFerroplasma(フェロプラズマ)属。
1−2.好熱性鉄酸化細菌
好適な一実施形態において、好熱性鉄酸化細菌を用いる。好熱性鉄酸化細菌は、高温環境下でも増殖することができる。従って、後述するスコロダイトの生成反応を高温化で実施することができる。好熱性鉄酸化細菌の属種は、特に限定されないが、以下の物が挙げられる:
Acidianus brierleyi、Acidianus infernus等のAcidianus(アシディアヌス)属;
Sulfobacillus thermosulfidooxidans、Sulfobacillus acidophilus等のSulfobacillus(スルフォバチルス)属;
Acidimicrobium ferrooxidans等のAcidimicrobium(アシジミクロビウム)属;
Sulfolobus acidocaldarius、Sulfolobus solfataricus、Sulfolobus mirabilis等のSulfolobus(スルフォロブス)属;
Acidiplasma cupricumulans等のAcidiplasma(アシディプラズマ)属;
Metallosphaera sedula等のMetallosphaera(メタロスファエラ)属。
2.前培養について
2−1.前培養の環境
鉄酸化細菌は、酸化しうる鉄源や硫黄源およびカリウム、リン、窒素成分等、生育に必須な成分が含まれる環境下であれば、増殖することができる。一実施形態において、前培養における環境は、培地であってもよい。前記培地は、固体培地であっても、液体培地であってもよいが、好ましくは、液体培地である。また、鉄酸化細菌の増殖を促すことができるものであれば、任意の培地を用いることができる。典型例として、当業者に公知の9K培地が挙げられるほか、公知文献(例えば、Microbiology (1996)、142、775−783頁)に記載の培地や、分譲機関にて情報が公開されている先述の鉄酸化細菌を培養するための培地等が挙げられる。
一実施形態において、前培養環境に、硫黄源を添加することができる。これにより、砒素(例えば、三価の砒素、又は五価の砒素)の毒性に対して、耐性を有する鉄酸化細菌を得ることができる。また、一実施形態において、前培養に用いる環境(例えば、培地又は最小限の栄養を含む溶液)は砒素を含まなくてもよく、又は、前培養に用いる環境に砒素を積極的に添加しなくてもよい(例えば、砒素の原子量換算で、0.1g/L以下、0.01g/L以下、0.001g/L以下、又は0g/L)。
2−2.硫黄源
一実施形態において、硫黄源は、硫黄元素を含む任意の単体又は化合物であってもよい。硫黄原子は、6、5、4、3、2、1、0、−1、−2といった酸化数を有する状態に変化することができる。硫黄源となる物質中の硫黄は、上述した酸化数のいずれか1つ又はそれ以下若しくはそれ以上の酸化数を有する状態であってもよい(例えば、6以下、5以下、0以下、0以上等)。一実施形態において、硫黄の酸化数が5以下である状態が好ましく、言い換えれば更に酸化される余地がある状態であることが好ましい。以下の説明によって、本願発明の範囲を限定することは意図しないが、硫黄の酸化が細菌に対して特定の影響を及ぼし、細菌の性質(例えば、砒素の毒性に対する耐性)を改変させるものと考えられる。また、一実施形態において、硫黄源となる物質は、常温で固体である物質であってもよい。
限定されるものではないが、硫黄源としての具体的な物質の例として、以下の物が挙げられる:亜硫酸(H2SO3)あるいはその塩;チオ硫酸(H223)あるいはその塩;テトラチオン酸(H246)あるいはその塩;三酸化硫黄(SO3);二酸化硫黄(SO2);単体硫黄(S);硫化水素(H2S);有機硫黄化合物等。
硫黄源は多い方が菌の増殖に良いが、経済面で好ましくなく、また、固体硫黄源がスコロダイト製造工程に過剰に混在すると製造したスコロダイトとの分離が困難になるという問題が生じる。従って、前培養用の溶液(例えば、培地)が含む硫黄源の量は、特に限定されないが、一実施形態において、硫黄原子の重量に換算して、0.1〜50g/L、より好ましくは、0.5〜10g/Lである(例えば、H2SO4を98.08g/L投入する場合、硫黄原子の重量に換算すると、32.06g/Lとなる。特記しない限り、本明細書及び図面に記載した他の原子重量換算についても同様)。また、一実施形態において、硫黄源の濃度を、前培養の最中に変化させてもよい。例えば、前培養の最中に、硫黄源を定期的に添加させて段階的に硫黄源の濃度を上昇させてもよい。
しかし、工程を簡潔にする目的から、一実施形態において、鉄酸化細菌は、一定濃度の硫黄源の存在下で培養することができる。ここで、「一定濃度の硫黄源の存在下で培養する」とは、硫黄源の存在下で前培養を開始した後、積極的に硫黄源の添加及び/又は削除を行わず、上記の前培養を続行することをさす。この方法だと、砒素濃度を段階的に上げる上述の方法と比べると、工程が簡単となり、時間と労力の面で有利である。
2−3.前培養の培養条件
上述した培地の成分や鉄酸化細菌以外、他の培養条件は、状況に応じて当業者が適宜選択することができる。典型的な条件は以下の通りである。
温度:20〜45℃(好ましくは30〜45℃)
時間:24〜720時間(好ましくは48〜300時間、更に好ましくは、150時間〜250時間)
pH:0.5〜4.0(好ましくは1.5〜2.5)
好熱性鉄酸化細菌を用いる好適な実施形態においても、他の培養条件は、状況に応じて当業者が適宜選択することができる。典型的な条件は以下の通りである。
温度:45〜85℃(好ましくは60〜80℃)
時間:12〜720時間(好ましくは48〜300時間、更に好ましくは、150時間〜250時間)
pH:0.5〜4.0(好ましくは1.0〜2.5)
2−4.鉄酸化細菌の砒素に対する耐性
一実施形態において、本発明は、砒素に対する耐性が優れた鉄酸化細菌(例えば、好熱性鉄酸化細菌)又は該細菌を含む組成物を含む。鉄酸化細菌については、限定されないが、上述した属名(又は種名)の鉄酸化細菌が含まれる。そして、砒素に対する耐性が優れた鉄酸化細菌又は該細菌を含む組成物は、上記の前培養を行うことによって得ることができる。このようにして得られた鉄酸化細菌(又は該細菌を含む組成物)は、スコロダイトの製造に有用である。別の一実施形態においては、本発明は、鉄酸化細菌(例えば、好熱性鉄酸化細菌)と硫黄源とを含む組成物を含む。該実施形態においては、鉄酸化細菌は、前培養等の方法で、砒素に対する耐性を上昇させた状態であってもよく、逆に、砒素に対する耐性を上昇させた状態でなくてもよい。後者の場合には、組成物を保存しておき、使用する段階になってから、前培養等を行って、砒素に対する耐性を上昇させたうえで、使用すればよい。
3.スコロダイト
3−1.スコロダイトの反応
スコロダイトは、一例として、以下の化学反応によって形成される。
Fe3++H3AsO4+2H2O→FeAsO4・2H2O+3H+
鉄酸化細菌(例えば、好熱性鉄酸化細菌)は、鉄と砒素を引き寄せ、これらの物質を局在化させ、上記化学反応を起こす場を提供すると考えられる。
ここで、鉄が二価である場合には、鉄酸化細菌の作用により、三価の鉄に変換される。また、砒素が三価である場合には、前記三価の鉄が砒素を五価に酸化させると考えられる。そして、三価の鉄及び五価の砒素がそろったうえで上記のような反応が起こると考えられる。また、鉄酸化細菌が存在する別の実施形態では、鉄酸化細菌がFe2+を酸化することができるため、下記のような化学反応も起こり、スコロダイトが製造されると考えられる。
4FeSO4+4H3AsO4+O2+6H2O → 4FeAsO4・2H2O+4H2SO4
3−2.スコロダイトの製造条件(鉄酸化細菌について)
一実施形態において、スコロダイトの製造は、溶液中で行われる。該溶液には、鉄酸化細菌が含まれ、そして、スコロダイトの生成が促進される。鉄酸化細菌は、硫黄源を含む環境で前培養された物を用いる。鉄酸化細菌の量は、特に限定されないが、典型的な量は、1×10^5〜1×10^8cell/mL、好ましくは、1×10^6〜1×10^7cell/mLである。
3−3.スコロダイトの製造条件(培地)
スコロダイト製造時においても、鉄酸化細菌を良好に増殖させることが重要である。なぜなら、鉄酸化細菌が増殖すれば、それだけスコロダイト製造の速度も上がると考えられるからである。従って、スコロダイトに必要な鉄イオン源、砒素イオン源のみならず、鉄酸化細菌の増殖に適した培地を含めることが好ましい。培地は、前培養と同様、特に限定されず、固体培地又は液体培地であってもよいが、典型的には液体培地である。また、用いる液体培地としては、前培養と同様、典型的には9K培地、公知文献(例えば、Microbiology (1996),142,775−783頁)に記載の培地や、分譲機関にて情報が公開されている先述の鉄酸化細菌を培養するための培地等が挙げられる。
一実施形態においては、スコロダイトの製造時の培地は、更に、酵母エキス(Yeast extract)を含むことができる。これにより、更にスコロダイトの生成を向上させることができる。酵母エキスの添加量は、特に限定されないが、典型的には、0.01〜0.1重量%である(より好ましくは、0.02〜0.1重量%)。
3−4.スコロダイトの製造条件(鉄イオンについて)
スコロダイトを構成する鉄イオン源については、二価の物でも三価の物でもよい。特に限定されないが、典型的には、硫酸第一鉄(FeSO4)、水酸化鉄(II、III)、二硫化鉄(FeS2)等の二価鉄化合物、黄鉄鉱、磁硫鉄鉱等の二価鉄を含む硫化鉄鉱物等が挙げられる。また、これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。鉄イオン源の量は、特に限定されないが、後述する砒素イオンに対するモル比、即ち、Fe/Asのモル比が、最終的に1〜2、好ましくは、1.2〜1.5であることが好ましい。
3−5.スコロダイトの製造条件(砒素イオンについて)
スコロダイトを構成する砒素イオン源については、三価の物でも五価の物でもよい。また、砒素イオン源については、典型的には、亜砒酸(H3AsO3)や砒酸(H3AsO4)、メタ亜砒酸等が挙げられる。砒素イオン源の量は、特に限定されないが、0.5〜3g/Lである(砒素原子の重量に換算した量)。また、スコロダイトの製造効率を上げる意味から、砒素イオン源の量は、好ましくは1g/L以上であり、更に好ましくは2g/L以上である。一実施形態において、本発明で用いる鉄酸化細菌は、上述した濃度の砒素イオンが存在する環境下でも増殖可能である。また、スコロダイトの製造効率を上げる意味から、砒素イオン源の量を、2g/L以上、あるいは5g/L以上とすることも可能である。また、上限値については、特に規定されないが、これ以上濃度を上げても効果が出ないなどの経済的な観点等から適宜決定することができる。例えば、10g/L以下、9g/L以下、8g/L以下、7g/L以下、6g/L以下、5g/L以下、4g/L以下、又は3g/L以下である。
また、上述した鉄イオン源と砒素イオン源との比率については、特に限定されないが、典型的には、Fe/Asのモル比が、最終的に1〜2、好ましくは、1.2〜1.5である。
3−6.スコロダイトの製造条件(その他の条件について)
上述した培地の成分や鉄酸化細菌以外、他の培養条件は、状況に応じて当業者が適宜選択することができる。典型的な条件は以下の通りである。
温度:20〜45℃(好ましくは30〜45℃)
時間:1週間以上(好ましくは2週間以上)
pH:0.5〜3.0(好ましくは1.2〜2.5)
好熱性鉄酸化細菌を用いる好適な実施形態においても、他の培養条件は、状況に応じて当業者が適宜選択することができる。典型的な条件は以下の通りである。
温度:45〜90℃(好ましくは60〜85℃)
時間:1〜28日間(好ましくは2日間以上、15日間以下、又は20日間以下)
pH:0.5〜3.0(好ましくは1.0〜2.0)
また、スコロダイトの製造を行う前に鉄酸化細菌の前培養を行っている場合には、スコロダイトの製造に必要な成分を前培養の環境に添加する形で行っても良い。あるいは、前培養した鉄酸化細菌のみを回収して、該細菌を新たなスコロダイトの製造環境に投入してもよい。前者の場合には、硫黄源が引き続き存在することとなり、製造工程の効率性や耐砒素性の観点から好ましい。
また、本発明の実施形態においては、溶液中のヒ素をかなりの濃度まで低下させることができる。従来スコロダイトを製造するためには一定以上のヒ素濃度が必要と考えられていた。従って、スコロダイトの製造工程が進行するに従って、溶液中のヒ素濃度が低下し、ある濃度のところまで低下すると、スコロダイトの生成反応が実質停止してしまうと考えられていた。しかし、上記実施形態に係る方法を用いることにより、スコロダイトの生成反応が実質停止することなく、従来よりも低い濃度まで砒素濃度を低下させることができる。
従って、ヒ素濃度が低下した溶液において、ヒ素を追加したり溶液を濃縮したりする手間が軽減される。上記実施形態に係る方法では、ヒ素濃度が150mg/L未満、100mg/L未満、又は50mg/L未満になった後でも、スコロダイトの生成工程を継続させることができる。
また、本発明の実施形態においては、溶液中のヒ素を、短期間で低下させることができる。例えば、上述したいずれかの濃度未満まで低下させるのに必要な期間は、20日間以下、より好ましくは15日間以下である。
4.順化培養について
一側面において、本発明は、上述した前培養を行う前に、順化培養を行ってもよい。具体的な条件は特に限定されないが、例えば、砒素濃度について初回50mg/Lとし、以降50mg/Lずつ濃度を上げて、最終濃度1g/Lになるまで順化培養することができる。また、他の条件についても特に限定されないが、典型的には以下のとおりである。
温度:45〜90℃(好ましくは60〜85℃)
時間:10〜100日間(好ましくは20日間以上)
pH:0.5〜3.0(好ましくは1.0〜2.0)
順化培養と前培養を組み合わせることにより、順化培養のみの場合と比べて、鉄酸化細菌の増殖が良好に進行し、その結果、スコロダイトの製造効率が上がる。
5.ヒ素固定基材の併用について
上述したスコロダイトの製造方法において、更に他のいくつかの手段を併用することができる。例えば、スコロダイト製造時に、鉄酸化細菌を添加するのみならず、更にヒ素固定基材を添加することができる。ヒ素固定基材は、ヒ素の析出を促進する材料であれば、特に限定されない。典型的には、種結晶を用いることができる。
スコロダイトの生成反応は、液中よりも、むしろ、固体と液体の界面で生じやすい。従って、上記ヒ素固定基材を溶液中に投入することにより、界面面積が大きくなり、スコロダイトの生成反応が促進されると考えられる。また、溶液を撹拌することにより、界面付近には常にフレッシュな溶液が供給され、スコロダイトの生成反応が更に良好に促進すると考えられる。
上述した種結晶以外にヒ素固定基材として用いる材料としては、特に限定されず、金属材、プラスチック材、その他の有機材料又は無機材料を使用することができる。ただし、スコロダイトの生成反応は、比較的高温且つ酸性条件下で行われるので、こうした条件に耐えうる材料であることが好ましい。
こうした理由から、好ましいヒ素固定基材はプラスチック材料である。プラスチック材料としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ乳酸、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ乳酸等が含まれるがこれらに限定されない。典型期には、プロプロピレンを用いることができる。こうした材料は、いずれも一般的に入手可能な材料である。従って、従来技術のように特殊な準備(例えば、種結晶の準備や順化培養など)を行う必要がない。よって、製造工程が単純になり、時間も短縮することができ、有利である。
ヒ素固定基材の形状については、特に限定されないが、メッシュ構造を有することが好ましい。この理由として、溶液と接触する面積が増加するとともに、溶液の撹拌を妨げないからである。メッシュ構造の網目については、特に限定されないが、溶液と接触する面積が増加するという観点から、細かい網目の方が好ましい。具体的には、目開き率が50%以下、より好ましくは、45%、更に好ましくは、25%以下である。特に50%以下だと、スコロダイトの製造率が大きく向上する。また、極端に目開き率が低いと通液性が損なわれるので、目開き率は5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。なお、ここで述べる目開き率は、メッシュ全体の面積における開孔部の割合を表す。
以下、本発明の実施例を示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をより良く理解するために提示するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
実施例1〜3及び比較例1〜2
9K無機塩培地200mLを培養フラスコに投入し、該培地のpHを希硫酸で1.5に調整した。これに好熱性鉄酸化菌の一種であるAcidianus brierleyiを表1に示す条件で接種した。さらに、この培地に、単体硫黄を、表1に示す最終濃度になるように添加した。その後、70℃で、表1に示す期間、振盪培養した。
次に、この培地を500ml振盪フラスコに移した。このときに細菌の濃度を表2に示す条件になるように調整した。そして、砒酸ナトリウム(HNa2AsO4)(五価のヒ素)又は亜砒酸(NaAsO2)(三価のヒ素)と硫酸第一鉄(FeSO4)とを表2に記載の通り添加してAs5+又はAs3+とFe2+を所定の比率となるように調整した。更に、Yeast extractを最終濃度として0.02%となるように添加し、70℃に保持しながら最大で28日間振盪した。培地中のAsやFeの濃度変化は、ICP発光分光分析装置(ICP−AES、セイコーインスツル株式会社製、SPS7700)で測定した。また、実施例1についてはスコロダイト製造開始から15日目、実施例2〜3及び比較例1〜2については、スコロダイト製造開始から28日目のAsの溶液濃度を最終濃度とした。結果を表2及び図1〜5に示す。
上記試験いずれにおいてもスコロダイトが製造されていることが確認できた。また、比較例1〜2(図4〜5)に示すように、硫黄源を用いて前培養していない場合、溶液中のAs濃度は、せいぜい160mg/Lまでしか低下させることができなかった。しかし、実施例1〜3(図1〜3)に示すように、硫黄源を用いて前培養した場合、溶液中のAs濃度をかなりの濃度まで低下させることができた。言い換えれば、溶液中のAs濃度が低下しても、スコロダイトの製造を進行させることができることが示された。
また、実施例1(図1)と比較例1(図4)を比較すると、三価のヒ素をヒ素源として用いた場合、硫黄源を用いて前培養すると、短期間で急速にAs濃度を低下させることができることが理解できる。言い換えれば、本発明の方法により、スコロダイトの製造速度が上昇することが示された。

Claims (5)

  1. スコロダイトの製造方法であって、
    硫黄源が存在する環境下で鉄酸化細菌を培養する工程と、
    前記鉄酸化細菌を培養する工程後に、当該鉄酸化細菌と、鉄と、砒素とを含む溶液中で、スコロダイトを生成する工程と、
    を含む、該方法であり、
    スコロダイトを生成する前記工程を、溶液中の砒素濃度が150mg/L未満になるまで継続させ
    前記鉄酸化細菌が好熱性鉄酸化細菌であり、
    前記硫黄源中の硫黄の酸化状態が+5以下であり、
    前記鉄酸化細菌を培養する工程において、前記環境中の前記硫黄源の量が、硫黄原子の重量に換算して、0.1〜50g/Lである、該方法。
  2. 前記鉄酸化細菌を培養する工程において、前記環境中の砒素の量が、砒素の原子量換算で、0.1g/L以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法であって、前記砒素が三価の砒素である、該方法。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の方法であって、スコロダイトを生成する前記工程が、前記溶液に砒素固定基材を添加することを含む、該方法。
  5. 請求項に記載の方法であって、前記砒素固定基材が種結晶である、該方法。
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