JP6702505B2 - 電動車両の制御装置および電動車両の制御方法 - Google Patents

電動車両の制御装置および電動車両の制御方法 Download PDF

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Description

本開示は、電動車両の制御装置および電動車両の制御方法に関するものである。
従来、走行用のモータと駆動輪との間に配置された無段変速機と、モータの駆動により無段変速機に油を供給するオイルポンプと、を備える電動車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、この従来技術では、停車時に、無段変速機の変速比を、次の発進時に用いる発進用変速比まで低下させるロー戻し制御を実行するようにしている。
WO2016/21018号公報
近年、惰性走行時のコースト回生トルクを大きく設定することで、エネルギ効率を向上させるとともに、アクセル操作による車両操作性の向上を図ることが提案されている。
このようにコースト回生トルクを大きく設定した場合、ロー戻し制御を行う際の伝達トルクも大きくなるため、ロー戻し制御の実行に必要な油量およびベルト挟持に必要な油量が多くなる。
しかしながら、無段変速機に油を供給するオイルポンプを、走行用のモータにより駆動させた場合、車速低下に伴ってモータ回転数が低下してオイルポンプの吐出油量が低下するため、ロー戻し制御時に油量不足が生じるおそれがあった。
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、ロー戻し制御時の油量不足発生の抑制を、車両減速度変化を抑えつつ達成可能な電動車両の制御装置および電動車両の制御方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本開示の電動車両の制御装置は、無段変速機を発進用変速比に向けて変速するロー戻し制御が実行されているとき、コースト回生トルクを含むモータ回生トルクを、車両減速度の変化が許容値以下となる第1の変化速度で減少させるモータ回生トルクカット部を備える。
よって、本開示の電動車両の制御装置および電動車両の制御方法では、ロー戻し制御時の無段変速機における油量不足抑制を、車両減速度変化を抑えつつ達成可能である。
実施例1の電動車両の制御装置および電動車両の制御方法を適用したFFハイブリッド車両を示す全体構成図である。 実施例1にて設定されたモード遷移マップの一例を示す図である。 実施例1にて用いる変速スケジュールマップの一例を示す図である。 実施例1におけるロー戻し制御の処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1において弱コースト回生モードと強コースト回生モードとのコースト回生トルク・協調回生トルク・メカブレーキ(液圧制動トルク)の分担比を示す特性図である。 実施例1における弱コースト回生モードにおける車速に対する目標駆動力特性と強コースト回生モードにおける車速に対する目標駆動力特性とを示すマップである。 実施例1におけるモータ回生トルクカット処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1との比較例の動作例を示すタイムチャートであって、モータ回生トルクカット処理を実行せずに、EVモード、かつ強コースト回生モードでの走行時に、制動操作を行って車両を停止させる場合の動作を示している。 実施例1によりEVモードかつ強コースト回生モードでの走行時に、制動操作を行って停車する場合の動作を示すタイムチャートである。 実施例1によりEVモードかつ弱コースト回生モードでの走行時に、制動操作を行って停車する場合の動作を示すタイムチャートである。
以下、本開示の電動車両の制御装置および電動車両の制御方法を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
(実施例1)
まず、構成を説明する。
実施例1の電動車両の制御装置および電動車両の制御方法は、1モータ・2クラッチと呼ばれるパラレルハイブリッド駆動系を備えるFFハイブリッド車両に適用したものである。以下、実施例1の制御方法が適用されたFFハイブリッド車両の構成を、「駆動系の詳細構成」、[運転モードの詳細構成]、[制御系の詳細構成]、[ロー戻し制御]、[モータ回生トルク制御]に分けて説明する。
[駆動系の詳細構成]
FFハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、無段変速機CVTと、ファイナルギヤFGと、左駆動輪LTと、右駆動輪RTと、を備えている。さらに、このFFハイブリッド車両には、ブレーキ液圧アクチュエータBAが設けられている。
エンジンEngは、スロットルアクチュエータによる吸入空気量とインジェクタによる燃料噴射量と、点火プラグによる点火時期の制御により、エンジントルクが指令値と一致するようにトルク制御される。また、エンジンEngは、燃焼運転状態ではなく、第1クラッチCL1を締結するだけでクランキング運転状態とすると、ピストンとシリンダー内壁との摩擦摺動抵抗などによりフリクショントルクを発生する。
第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータジェネレータMGとの間の駆動伝達経路に介装されている。この第1クラッチCL1としては、例えば、ノーマルオープンの乾式多板クラッチなどが用いられ、エンジンEng〜モータジェネレータMG間の締結/スリップ締結/解放を行なう。この第1クラッチCL1が完全締結状態ならモータトルク+エンジントルクが第2クラッチCL2へと伝達され、解放状態ならモータトルクのみが、第2クラッチCL2へと伝達される。なお、第1クラッチCL1の締結/スリップ締結/解放は、クラッチ油圧(押付力)に応じて伝達トルク(クラッチトルク容量)が発生する油圧制御にて行われる。
モータジェネレータMGは、交流同期モータ構造であり、発進時や走行時にモータトルク制御やモータ回転数制御を行うと共に、制動時や減速時に回生ブレーキ制御による車両運動エネルギのバッテリ9への回収(充電)を行なうものである。
第2クラッチCL2は、無段変速機CVTの前後進切替機構に設けられたノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキであり、クラッチ油圧(押付力)に応じて伝達トルク(クラッチトルク容量)が発生する。この第2クラッチCL2は、無段変速機CVT及びファイナルギヤFGを介し、エンジンEng及びモータジェネレータMG(第1クラッチCL1が締結されている場合)から出力されたトルクを左右駆動輪LT,RTへと伝達する。なお、第2クラッチCL2は、図1に示すように、モータジェネレータMGと無段変速機CVTの間の駆動伝達経路に設定する以外に、無段変速機CVTと左右駆動輪LT,RTの間の駆動伝達経路に設定してもよい。
無段変速機CVTは、プライマリプーリPrPと、セカンダリプーリSePと、プーリベルトBEと、を有するベルト式無段変速機である。
なお、プライマリプーリPrPは、変速機入力軸inputに接続されている。セカンダリプーリSePは、変速機出力軸outputに接続されている。プーリベルトBEは、プライマリプーリPrPとセカンダリプーリSePとに架け渡されている。
プライマリプーリPrPは、変速機入力軸inputに固定された固定シーブと、変速機入力軸inputに摺動自在に支持された可動シーブと、を有している。セカンダリプーリSePは、変速機出力軸outputに固定された固定シーブと、変速機出力軸outputに摺動自在に支持された可動シーブと、を有している。
プーリベルトBEは、プライマリプーリPrPとセカンダリプーリSePとの間に巻き掛けられた金属ベルトであり、それぞれの固定シーブと可動シーブとの間に挟持される。ここで、プーリベルトBEとしては、ピン型ベルトやVDT型ベルトが使用される。
無段変速機CVTでは、両プーリPrP,SePのプーリ幅を変更し、プーリベルトBEの挟持面の径を変更して変速比(プーリ比)を自在に制御する。ここで、プライマリプーリPrPのプーリ幅が広くなると共に、セカンダリプーリSePのプーリ幅が狭くなると変速比がLow側に変化する。また、プライマリプーリPrPのプーリ幅が狭くなると共に、セカンダリプーリSePのプーリ幅が広くなると変速比がHigh側に変化する。
上述の無段変速機CVTのプーリ幅の変更動作は、オイルポンプOPから吐出される油圧により駆動される。このオイルポンプOPは、図示のように、モータジェネレータMGにより回転されて駆動するものであり、その油の無段変速機CVTへの供給量は、モータジェネレータMGの回転数に応じた量となる。
ブレーキ液圧アクチュエータBAは、ブレーキペダルBPの踏み込み操作によりマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダMCと、各輪で制動力を発生させるホイールシリンダWCとを結ぶ油圧経路に設けられている。なお、ブレーキ液圧アクチュエータBAは、ホイールシリンダ圧を減圧させるバルブや、図示を省略したポンプなどの液圧源の油圧をホイールシリンダWCに供給するバルブを備え、ホイールシリンダ圧を任意に増減圧可能に構成されている。
[運転モードの詳細構成]
実施例1のFFハイブリッド車両は、上述の駆動系により、運転モードとして、電気走行モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド走行モード(以下、「HEVモード」という。)などを有する。
「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放状態とし、第2クラッチCL2を締結状態とし、エンジンEngを駆動系から切り離して、モータジェネレータMGのみを駆動力伝達可能となるように左右駆動輪LT,RTに接続する。これにより、「EVモード」では、モータジェネレータMGを力行側に制御するときは、モータジェネレータMGを走行駆動源(モータ)として用いる。また、モータジェネレータMGを回生側に制御するときは、モータジェネレータMGを発電駆動源(ジェネレータ)として用いる。
なお、「モータジェネレータMGを力行側に制御する」とは、インバータ8からモータジェネレータMGに電力を供給し、モータジェネレータMGで左右駆動輪LT,RTを駆動する力行状態となるように、モータジェネレータMGを制御することである。また、「モータジェネレータMGを回生側に制御する」とは、モータジェネレータMGと左右駆動輪LT,RTの持っている回転エネルギがインバータ8に流れ込む回生状態となるように、モータジェネレータMGを制御することである。
「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、第2クラッチCL2を締結状態とし、モータジェネレータMG及びエンジンEngの双方を駆動力伝達可能となるように左右駆動輪LT,RTに接続する。これにより、「HEVモード」では、モータジェネレータMGを力行側に制御するときは、エンジンEngとモータジェネレータMGを走行駆動源として用いる。また、モータジェネレータMGを回生側に制御するときは、モータジェネレータMGを発電駆動源(ジェネレータ)として用いる。また、この時には、エンジンEngはモータジェネレータMGに連れ回り回転し、駆動系にエンジンフリクションを与えることができる。
「EVモード」と「HEVモード」のモード遷移は、目標駆動力と、図2に示すモード遷移マップを用いて行われる。
つまり、モータジェネレータMGを力行側に制御するときは、図2に示す目標駆動力ゼロ軸よりも上側に設定された力行制御領域上に目標駆動力に応じた動作点Pが設定される。そして、この動作点Pが、EV領域内にあるときに「EVモード」が選択され、HEV領域内にあるときに「HEVモード」が選択される。
また、モータジェネレータMGを回生側に制御するときは、図2に示す目標駆動力ゼロ軸よりも下側に設定された回生制御領域上に目標駆動力に応じた動作点Pが設定される。そして、この動作点Pが、EV領域内にあるときに「EVモード」が選択され、HEV領域内にあるときに「HEVモード」が選択される。
ここで、「EV領域」とは、目標駆動力の絶対値が小さい領域に設定された電気走行領域であり、「HEV領域」とは、目標駆動力の絶対値がEV領域よりも大きい領域に設定されたハイブリッド走行領域である。EV領域とHEV領域とは、図2において太線で示すEV→HEV切替線によって区画されている。
[制御系の詳細構成]
FFハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、統合コントローラ14と、変速機コントローラ15と、クラッチコントローラ16と、エンジンコントローラ17と、モータコントローラ18と、バッテリコントローラ19と、ブレーキコントローラ20と、を備えている。そして、センサ類として、モータ回転数センサ6と、変速機入力回転数センサ7と、アクセル開度センサ10と、エンジン回転数センサ11と、油温センサ12と、変速機出力回転数センサ13と、を備えている。さらに、ブレーキセンサ21と、レバー位置検出センサ22と、車速センサ23と、自動走行設定スイッチセンサ24と、回生モード切替スイッチ29とを備えている。
統合コントローラ14は、バッテリ状態、アクセル開度、車速(変速機出力回転数に同期した値)、作動油温、目標車速などから目標駆動力を演算する。そして、目標駆動力の演算結果に基づき、各アクチュエータ(モータジェネレータMG、エンジンEng、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、無段変速機CVT、ブレーキ液圧アクチュエータBA)に対する指令値を演算し、CAN通信線25を介して各コントローラ15,16,17,18,19,20へと送信する。
変速機コントローラ15は、統合コントローラ14からの変速指令を達成するように、無段変速機CVTのプライマリプーリPrPとセカンダリプーリSePに供給されるプーリ油圧を制御することにより変速制御を行なう。
変速機コントローラ15での変速制御は、図3に示す変速スケジュールマップと、車速VSPと目標駆動力DFによる運転点とを用い、変速スケジュール上での運転点(VSP,DF)により目標プライマリ回転数Npri*を決めることで行われる。変速スケジュールは、図3に示すように、運転点(VSP,DF)に応じて最ロー変速比と最ハイ変速比による変速比幅内で変速比を変更する。なお、最ロー変速比は、最も低速段相当の変速比であり、変速比としては最も大きな値である。最ハイ変速比は、最も高速段相当の変速比であり、変速比としては最も小さな値である。
クラッチコントローラ16は、エンジン回転数センサ11やモータ回転数センサ6や変速機入力回転数センサ7、などからのセンサ情報を入力し、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2にクラッチ油圧指令値を出力する。これにより、第1クラッチCL1の押付力が設定されると共に、第2クラッチCL2の押付力が設定される。
エンジンコントローラ17は、エンジン回転数センサ11からのセンサ情報を入力すると共に、統合コントローラ14からのエンジントルク指令値を達成するように、エンジンEngのトルク制御を行なう。
モータコントローラ18は、統合コントローラ14からのモータトルク指令値やモータ回転数指令値を達成するように、インバータ8に対し制御指令を出力し、モータジェネレータMGのモータトルク制御やモータ回転数制御を行なう。なお、インバータ8は、直流/交流の相互変換を行うもので、バッテリ9からの放電電流を、モータジェネレータMGの駆動電流に変化する。また、モータジェネレータMGからの発電電流を、バッテリ9への充電電流に変換する。
さらに、実施例1では、モータコントローラ18は、エンジンEngの非駆動状態での停車中も、オイルポンプOPが必要な油量を吐出可能なように、モータジェネレータMGの回転数を制御する。なお、このとき、クラッチコントローラ16は、モータジェネレータMGが回転していても、停車状態を維持可能なように第2クラッチCL2をスリップさせる制御を行う。
バッテリコントローラ19は、バッテリ9の充電容量SOCを管理し、SOC情報を統合コントローラ14やエンジンコントローラ17へと送信する。
ブレーキコントローラ20は、ブレーキセンサ21からのセンサ情報を入力すると共に、統合コントローラ14からの制動力指令を達成するように、ブレーキ液圧アクチュエータBAに対して制動力指令を出力し、ブレーキ液圧制御を行う。
また、このブレーキコントローラ20のブレーキ液圧制御として、後述するモータジェネレータMGのモータ回生トルクとの協調回生制動制御を実行する。この協調回生制動制御は、周知のように、運転者がブレーキペダルBPによる制動操作を行った際の要求制動力を、ブレーキ液圧アクチュエータBAにより発生する液圧制動トルクと、モータジェネレータMGによる協調回生制動トルクとで併せて得るように制御する。また、この協調回生制動制御の終了時には、協調回生制動トルクを減少させる一方で、液圧制動トルクを上昇させるすり替え制御を実行する。
自動走行設定スイッチセンサ24は、運転者によってON/OFF操作される自動走行スイッチの操作信号を検出するセンサである。自動走行スイッチがON操作されたときには、自動走行指令を統合コントローラ14へ送信する。これにより、自動走行モードが設定される。また、自動走行スイッチがOFF操作されたときには、この自動走行設定スイッチセンサ24は、自動走行解除指令を統合コントローラ14へ送信する。これにより、自動走行モードの設定が解除されてマニュアル走行モードに設定される。
なお、自動走行モードでは、運転者がアクセルペダルを操作して所定の車速以上の任意の車速になったときに自動走行設定スイッチをON操作すると、当該任意の車速が目標車速に設定される。その後、図示しないレーダーセンサーなどからの情報に基づいて前方に先行車両を検出したときには、検出された先行車両の車速が目標車速に設定される。
また、運転者が自動走行スイッチをOFF操作しなくとも、ブレーキペダルBPを踏むなどの運転者による所定の操作に応じ、自動走行設定スイッチセンサ24によって自動走行解除指令が統合コントローラ14へ送信され、自動走行モードの設定が解除されてマニュアル走行モードに切り替わる。
[ロー戻し制御]
この実施例1では、変速機コントローラ15は、車両減速時に、停車前に無段変速機CVTの変速比を、予め設定された発進用変速比に戻す、ロー戻し制御を実行する。本実施例1では、発進用変速比としては、最ロー(最大変速比)を用いる。なお、走行路が、発進時に高い駆動トルクを必要としない平坦路、降坂路などには、発進用変速比として、最ローよりも変速比が小さな(高速段側の)変速比を用いるようにしてもよい。
このロー戻し制御の処理の流れの一例を図4に示す。
ステップS11では、車両が減速状態(車両G<0)かつ車速(V)が閾値未満(V<Vlim)であるか否か判定する。そして、G<0かつV<Vlimの場合はステップS12に進み、それ以外では、ロー戻し制御の1回の処理を終了する。
ステップS12では、ロー戻し制御を実行する。この場合、無段変速機CVTの変速比を、図3の太線の矢印に示すように制御する。この場合、その時点の動作点Pから、一旦、最ハイ変速比とした後、車速の低下に伴い、最ロー変速比に向けてダウンシフト(変速比増大)し、最ロー変速比に達した後は、最ロー変速比を維持する。
なお、前述のように、ロー戻し制御では、発進用変速比として最ローに戻す例を示しているが、条件によって、最ローの変速比よりも高変速段側(小変速比)としてもよい。
ステップS12に続くステップS13では、車速VSPが0に達したか否か判定する。そして、車速VSPが0に低下するまでステップS12のロー戻し処理を繰り返し、車速VSPが0まで低下したら、ロー戻し制御を終了する。
すなわち、ロー戻し制御では、車両が停止するまでに無段変速機CVTの変速比を最ローに移行させる。
[モータ回生トルク制御]
次に、本実施例1においてモータコントローラ18が実行するモータ回生トルク制御について説明する。
ここで、本実施例1では、モータ回生トルクとして、惰性走行(以下、コースト走行と称する)時に、モータジェネレータMGにより所定のコースト回生トルクを生じさせるコースト回生制御を実行する。
さらに、このコースト回生制御の実行時において、ロー戻し制御の実行された場合に、モータ回生トルクカット処理を実行する。
以下に、コースト回生制御およびモータ回生トルクカット処理について説明する。
前述したように、コースト回生制御は、車両の減速時に、モータ回生トルクによる減速力を生じさせる制御である。
このコースト回生制御において、本実施例1では、回生モード切替スイッチ29により弱コースト回生モードと強コースト回生モードとを選択可能としている。
図5は、弱コースト回生モードを選択したときと強コースト回生モードを選択したときのコースト回生・ブレーキ協調回生・メカブレーキ(ブレーキ液圧アクチュエータBA)の分担比の比較を示す。図6は、弱コースト回生モードを選択したときの車速に対するコースト目標駆動力特性と強コースト回生モードを選択したときの車速に対するコースト目標駆動力特性の一例を示す。以下、図5および図6に基づいてアクセル解放時のコースト回生モード構成を説明する。
「弱コースト回生モード」とは、図5および図6に示すように、アクセル解放操作によるコースト回生量である弱コーストトルクTLoによる制動力発生領域をエンジンブレーキ相当による負の目標駆動力領域に設定したモードをいう。つまり、「弱コースト回生モード」での弱コーストトルクTLo特性は、図6の破線特性に示すように、減速により車速VSPが低下するとき、エンジンブレーキ相当の弱コーストトルクTLoを維持したまま推移する。そして、停車に近づくとコースト回生量を徐々に減少し、コースト終了車速以下の停車領域になると正の目標駆動力(クリープトルク)に移行するようにしている。なお、弱コーストトルクTLoは、ロー戻し制御時に、この値の伝達トルク変化が生じても、運転者に違和感を与えない減速度変化しか生じない程度の値に設定されている。
「強コースト回生モード」とは、図5および図6に示すように、アクセル解放操作によるコースト回生量である強コーストトルクTHiによる負の目標駆動力(=目標制動力)発生領域を「弱コースト回生モード」に比べて拡大したモードをいう。この強コースト回生モードでは、アクセル解放操作による減速要求時、車両減速度のコントロール性能を高めることができる。つまり、「強コースト回生モード」での強コーストトルクTHi特性は、図6の実線特性に示すように、減速により車速VSPが低下するとき、エンジンブレーキ相当のコースト回生量(強コーストトルクTHi)が増大する。そして、停車に近づくと増大した強コーストトルクTHiが急に減少し、所定のコース回生終了車速以下の停車領域になると正の目標駆動力(クリープトルク)に移行するようにしている。なお、「強コースト回生モード」のとき、アクセル開度APOが中低開度領域の目標駆動力特性も、「弱コースト回生モード」のときよりも負の目標駆動力側に移行させた割り付けとしている。
「弱コースト回生モード」の選択時には、アクセル解放操作により減速すると、低車速域までは弱コーストトルクTLoが一定量のままである。そして、低車速域に到達した後、図6の矢印Aに示すように、車速の低下にしたがって弱コーストトルクTLoが緩やかな減少勾配により徐々に低下する。一方、「強コースト回生モード」の選択時、図6の矢印Bに示すように、アクセル解放操作により減速すると、強コーストトルクTHiが車速の低下により急な増大勾配により増大する。そして、最大のコースト回生量領域を過ぎると、図6の矢印Cに示すように、強コーストトルクTHiが車速の低下により急な減少勾配により減少する。
このように、「強コースト回生モード」は、殆どの減速シーンにおいてブレーキペダル操作を要さず、アクセル戻し/解放操作による制動力コントロールが可能である。このため、「強コースト回生モード」は、アクセルペダル(図示省略)へのアクセルワークにより駆動/制動をコントロールする「1ペダルモード」と呼ばれることがある。
なお、図5において、「コースト回生トルク」とは、アクセルOFF・ブレーキOFFで効かせるコースト回生量である。「協調回生トルク」とは、アクセルOFF・ブレーキONで効かせるブレーキ協調回生量である。なお、コースト回生トルク(TLo,THi)と協調回生トルクとの合計値が、モータジェネレータMGにより発生可能なモータ回生量上限値の範囲内となるように制御する。
「メカブレーキ」とは、アクセルOFF・ブレーキONのとき回生量(コースト回生量+ブレーキ協調回生量)だけでは要求制動力を満たせない場合に補償する液圧制動トルクである。なお、この液圧制動トルクは、マスタシリンダMCおよびブレーキ液圧アクチュエータBAから供給される液圧によりホイールシリンダWCにおいて生じる制動トルクである。
次に、モータ回生トルクカット処理について説明する。
モータ回生トルクカット処理は、ロー戻し制御が実行されるとモータコントローラ18において実行を開始する処理であり、所定条件でコースト回生トルクを含むモータ回生トルクを低減させるもので、この処理の流れを図7のフローチャートにより説明する。なお、本実施例1では、モータ回生トルクカット処理は、ロー戻し制御の開始に応答して実行を開始するが、モータ回生トルクカット処理の開始は、これに限定さるものではない。要は、ロー戻し制御の実行時にモータ回生トルクカット処理を行えばよいものであり、例えば、コースト回生時かつ減速時に開始してもよい。
上述のように、ロー戻し制御の開始によりスタートした後に進む、最初のステップS101では、車速、減速度、油温から油量収支が不足するか否かの判定を行うためのCVT入力回転数閾値を演算する。
ここで、車速は、無段変速機CVTの出力回転数とファイナルギヤ比とタイヤ径とから演算する。そして、減速度は、求めた車速の変化速度から演算する。
また、CVT入力回転数閾値は、オイルポンプOPの発生油量で無段変速機CVTの正常な変速動作および伝達トルクを正常に伝達するためのベルトクランプに必要な油量を賄えるかどうかを判定するために設定された値である。このCVT入力回転数閾値は、予め、実測、あるいは、車両モデルによる演算などにより車速、変速度、油温に応じたCVTの変速動作およびベルトクランプに必要な最低限必要な油量を求め、これを閾値として設定しておく。
次のステップS102では、変速機入力軸inputの回転数であるCVT入力回転数が、予め設定されたCVT入力回転数閾値未満になったか否か判定する。そして、CVT入力回転数<CVT入力回転数閾値の場合は、次のステップS103に進み、CVT入力回転数≧CVT入力回転数閾値の場合は、1回の処理を終了する。なお、この処理は、所定の周期で繰り返し実行する。
CVT入力回転数<CVT入力回転数閾値の場合に進むステップS103では、モータジェネレータMGにおいて発生しているモータ回生トルクを第1の変化速度Kv1(図9の傾きKv1)で低下させる指令を出力し、次のステップS104に進む。
ここで、第1の変化速度Kv1は、このモータ回生トルク変化により車両に生じる減速度変化が乗員に違和感を与えない範囲で予め設定された値である。具体的には、車両減速度が0,1〜0,2G/sの範囲内程度となるようにモータ回生トルクを低減する。
また、このモータ回生トルクの低下では、モータコントローラ18は、まず、協調回生トルク分の回生トルクを減少させる指令をブレーキコントローラ20に出力する。そして、モータコントローラ18は、協調回生トルクが0になった後に、コースト回生トルク分の回生トルクを減少させる。
ステップS104では、モータ回生トルクが、予め設定されたトルク段差許容閾値Tlim未満に低下したか否か判定する。そして、モータ回生トルク(絶対値)<トルク段差許容閾値(絶対値)の場合は、ステップS105に進み、モータ回生トルク(絶対値)≧トルク段差許容閾値(絶対値)の場合は、ステップS103の処理に戻る。
ここで、トルク段差許容閾値Tlimは、無段変速機CVTの伝達トルクが、トルク段差許容閾値Tlimから0Nmに急低下しても、それによる車両減速度変化が、運転者に違和感を与えることのない値に設定されている。この値は、実車による実験に基づいて設定したり、車両モデルにより求めた減速度が、予め設定された値以下になる値を演算により求めた値としたり、経験値に基づいて任意に設定したりすることができる。
また、本実施例1では、このトルク段差許容閾値Tlimは、エンジンブレーキ相当の値として設定した弱コーストトルクTLoと同程度の値に設定されている。
モータ回生トルクがトルク段差許容閾値未満に低下した場合に進むステップS105では、モータ回生トルクを、第1の変化速度Tv1よりも大きな第2の変化速度Tv2で低下させ、次のステップS106に進む。モータ回生トルクを、第2の変化速度Tv2で低下させるのにあたり、本実施の形態では、0.0nG(nは整数)程度のG変化が生じる値に設定している。
ステップS106では、モータ回生トルクが0まで低下したか否か判定する。そして、モータ回生トルクが0まで低下した場合には、この処理を終了し、モータ回生トルクが0よりも大きい場合は、ステップS105の処理に戻る。
[実施例1の作用]
次に、実施例1の作用を説明する。
この実施例1の作用を説明するのにあたり、まず、モータ回生トルクカット処理を実行しない場合の課題を、図8の比較例を参照しつつ説明する。
図8は、実施例1と同様の装置において、モータ回生トルクカット処理を実行することなく、EVモード、かつ、強コースト回生モードでの走行時に制動操作を行って車両を停止させる場合の各動作を示すタイムチャートである。
このタイムチャートは、強コースト回生モードで、かつ、モータジェネレータMGのみを駆動源として走行するEVモードでの走行状態から、制動操作を行って停車するまでの動作を示している。
このタイムチャートにおいて、t00の時点では、アクセル開度APOが0degとなっており、モータコントローラ18は、モータ回生トルクとして、強コースト回生モードによるコーストトルクTHiを発生し、これにより車速が低下している。
その後、t01の時点で運転者が制動操作を行い、ブレーキ踏力が発生し、これに基づくドライバ要求制動トルクに応じ、協調回生制御を実行する。そして、この協調回生制御に応じ、モータ回生トルクとして、協調回生トルクTk0分を加える。
その後、t02の時点でロー戻り制御を開始する。このロー戻り制御では、この時点から、停車までの間に、無段変速機CVTの変速比を最ハイから最ローに変速させる制御を行う。
このロー戻り制御と並行して、車速が低下したt02の時点で、協調回生制御による協調回生トルクと液性制動トルクとのすり替え制御を開始する。これにより、協調回生トルクTk01分を減少させるとともに、液圧制動トルクを上昇させる(図示省略)。
また、車速の低下により、モータ回転数は低下させるが、このt02の時点から停車するt05までの間、モータ回転数は、オイルポンプOPを駆動させるために必要な最低回転数に維持させる。
上述のように、t02の時点から停車するt05の時点までの間に、ロー戻り制御を実行するもので、この場合、無段変速機CVTでは、最ハイから最ローまでの変速のための油量と、強コーストトルクTHiの伝達のための油量とが必要となる。
このタイムチャートでは、t02の時点で、強コーストトルクTHiと、協調回生トルク(Tko)とのモータ回生トルクが発生しているため、無段変速機CVTでは、例えば、弱コーストトルクTLoのみの発生の場合と比較して、多くの油量が必要となる。
一方、減速時には、モータジェネレータMGは、走行のための回転は不要であり、モータ回転数は、オイルポンプOPの駆動に必要な低回転数に維持され、その供給油量も、加速時と比較して、低量となる。
このため、無段変速機CVTにおいて、上述の最ローへの変速およびモータ回生トルクの伝達に必要な油量が不足するおそれがある。そして、このような油量不足が生じた場合には、無段変速機CVTでは、最ローまでの変速が終了せずに停車してしまい、次の発進時にスムーズな発進を行うことができないおそれがある。
また、この油量不足による変速の不具合を解消するため、コースト回生トルクを図示のように、t03の時点とt04の時点との間で、急低下させた場合、車両減速度の変化が大きくなり、乗員に違和感を与えるおそれがある。
このように、図8に示す比較例の動作では、ロー戻し制御時の油量不足発生の抑制と、車両減速度変化の抑制とを両立させるのが難しい。
[強コースト回生モードにおける実施例1の動作例]
次に、実施例1の電動車両の制御装置および電動車両の制御方法の場合の動作例を図9のタイムチャートにより説明する。
この図9の動作例も、図8の比較例と同様に、EVモードかつ強コースト回生モードでの走行時に、制動操作を行って停車する場合の動作を示している。すなわち、t10の時点で、運転者は、アクセル開度APOを0degとし、t11の時点で、ブレーキペダルBPによる制動操作を行った後、t14の時点で、停車した場合の動作を示す。
このタイムチャートにおいて、t10の時点では、アクセル開度APOが0degであることから、モータコントローラ18は、強コーストトルクTHiのモータ回生トルクを発生させ、これにより車速が低下している。
そして、t11の時点で、ブレーキ踏み込み操作に基づくドライバ要求制動トルクに応じ、ブレーキコントローラ20が協調回生制御を実行し、モータ回生トルクに、協調回生トルクTk1分を加える。
このt11の時点から、車速が低下し、t12の時点で、変速機コントローラ15は、ロー戻り制御を開始する。このロー戻り制御では、この時点から、停車(t15)までの間に、無段変速機CVTの変速比を最ハイから最ローに変速させる制御を行う。
これと同時に、無段変速機CVTの入力回転数がCVT入力回転数閾値を下回るのに応じ、t12の時点で、モータコントローラ18は、モータ回生トルクカット処理を開始する。このモータ回生トルクカット処理では、まず、モータ回生トルクを、第1の変化速度Tv1で低下させる。これは、図7のフローチャートのステップS101→S102→S103の処理に基づく。
ここで、CVT入力回転数閾値は、前述のように、車速、減速度、油温に基づいて設定される閾値であり、無段変速機CVTにおいて油量収支が不足するか否かを判断する値である。すなわち、CVT入力回転数(=オイルポンプOPの回転数)がCVT入力回転数閾値よりも低下すると、オイルポンプOPの吐出油量が、無段変速機CVTにおける変速動作およびトルク伝達動作に支障をきたすおそれが生じる。
そこで、無段変速機CVTにおける変速動作およびトルク伝達動作に支障が生じる前の時点で、モータ回生トルクカット処理によりモータ回生トルクを低減させて、無段変速機CVTにおける伝達トルクを低減させ、変速動作に必要な油量を低減させる。これにより、無段変速機CVTにおけるロー戻し制御による変速動作およびトルク伝達動作に支障が生じるのを抑制する。
また、このとき、モータ回生トルクを、第1の変化速度Tv1で低下させることにより、車両の減速度変化を抑え、モータ回生トルクカット処理の実行による減速度変化が乗員に違和感を与えるのを抑制する。
上記のモータ回生トルクカット処理によりモータ回生トルクを第1の変化速度Kv1で低下させたt12の時点後、モータ回生トルクが低下を続けトルク段差許容閾値未満となったt13の時点からモータ回生トルクを、第2の変化速度Kv2で低下させる。これは、図7のフローチャートのステップS104→S105の処理に基づく。
そして、t14の時点で、モータ回生トルクが0になると、モータ回生トルクカット処理を終了する(ステップS106)。ここで、t13の時点からt14の時点の間は、モータ回生トルクを急低下させるため、無段変速機CVTにおいて伝達トルク変化が生じるおそれがある。しかしながら、トルク段差許容閾値は、予め、無段変速機CVTにおける伝達トルクが、トルク段差許容閾値から0となっても、それによる減速度変化が乗員に違和感を与えない値に設定している。
このため、t13時点からt14時点のモータ回生トルクは、乗員に違和感を与えることはない。
そして、その後、t15の時点で、車両は停車する。
このように、車両が停車する前に、確実に、無段変速機CVTにおける伝達トルクを0まで低下させるため、ロー戻し制御による発進用変速比である最ローへの変速動作を、停車までに確実に実行することができる。
以上のように、本実施例1では、ロー戻し制御時の油量不足発生を抑制して確実にロー戻し制御を実行することができるとともに、乗員に車両減速度変化により違和感を与えることを抑えることができる。
[弱コースト回生モードにおける実施例1の動作例]
実施例1では、上記の強コースト回生モードに限らず、弱コースト回生モードにあっても、ロー戻し制御による変速を確実に実行可能であり、以下、図10のタイムチャートに基づいて説明する。
この図10のタイムチャートは、上述のようにEVモードかつ弱コースト回生モードでの走行時に、制動操作を行って停車する場合を示している。
図10のタイムチャートでは、t20の時点で、運転者が制動操作を行って、制動トルクとして、弱コーストトルクTLoと、協調制動制御による協調回生トルクおよび液圧制動トルクと、を発生させている。
そして、t21の時点で、変速機コントローラ15は、ロー戻し制御を開始する。
また、このt21の時点で、CVT入力回転数が、CVT入力回転数閾値を下回り(S102)、モータ回生トルクカット処理を開始する。
このモータ回生トルクカット処理において、まず、協調回生トルク分のモータ回生トルクを第1の変化速度Kv1で低減させる。
したがって、車両の減速度変化を抑え、モータ回生トルクカット処理の実行による減速度変化が乗員に違和感を与えるのを抑制することができる。
そして、モータ回生トルクが、トルク段差許容閾値未満となったt22の時点からモータ回生トルクを、モータ回生トルク=0となるまで、第2の変化速度Kv2で低下させる(S104→S105)。
ここで、弱コースト回生トルクは、トルク段差許容閾値程度の値に設定している。このため、t22の時点までに低減するモータ回生トルクは、協調回生トルク分に相当し、t22の時点から低減するモータ回生トルクが、弱コーストトルクTLo分に相当する。
この図10のタイムチャートに示す弱コースト回生モードの場合も、車両が停車する前に、確実に、無段変速機CVTにおける伝達トルクを0まで低下させるため、ロー戻し制御による最ロー(含む)への変速動作を、停車までに確実に実行することができる。
以上のように、本実施例1では、弱コースト回生モードにおける停車時も、ロー戻し制御時の油量不足発生を抑制して確実にロー戻し制御を実行することができるとともに、乗員に車両減速度変化により違和感を与えることを抑えることができる。
[実施例1の効果]
以下に、実施例1の電動車両の制御装置および電動車両の制御方法の効果を列挙する。
1)実施例1の電動車両の制御装置は、
車両の走行用のモータジェネレータMGと左右駆動輪LT,RTとの間に配置された無段変速機CVTと、モータジェネレータMGにより駆動され、回転数に応じて無段変速機CVTに油を供給するオイルポンプOPと、を備える電動車両の制御装置であって、
モータジェネレータMGの駆動を制御し、運転者により操作されるアクセルの解放方向操時に、モータジェネレータMGにコースト回生トルクを発生させるモータトルク制御部としてのモータコントローラ18と、
車速低減に伴い、無段変速機CVTを所定のロー側の発進用変速比(最ロー)に向けて変速するロー戻し制御を行う変速制御部としての変速機コントローラ15と、
モータコントローラ18に含まれ、ロー戻し制御を行っているとき、モータジェネレータMGによるコースト回生トルクを含むモータ回生トルクを、車両減速度の変化が許容値以下となる第1の変化速度Kv1で減少させるモータ回生トルクカット部(ステップS101〜S103の処理を実行する部分)と、を備える電動車両の制御装置とした。
したがって、ロー戻し制御時において、モータ回生トルクの減少を行わない場合と比較して、無段変速機CVTの油量不足を抑制して、変速を確実に行うことができる。加えて、モータ回生トルクの減少を第1の変化速度Kv1よりも急速に行う場合と比較して、無段変速機CVTにおける伝達トルクの急変による車両減速度の急変を抑制し、乗員に違和感を与えることを抑制できる。
2)実施例1の電動車両の制御装置は、
モータ回生トルクカット部は、モータ回生トルクがトルク段差許容閾値未満になると、第1の変化速度Kv1より大きい第2の変化速度Kv2でモータ回生トルクを減少させる電動車両の制御装置とした。
したがって、車両減速時に、停車前に確実にロー戻し制御により発進用変速比(最ロー)まで変速させることができ、次回の発進を円滑に行うことができる。
3)実施例1の電動車両の制御装置は、
モータコントローラ18は、運転者の制動操作に応じて、コースト回生トルクに加算して協調回生トルクを付与するモータ制動トルク制御部をさらに備え、
モータ回生トルクカット部は、モータ回生トルクを減少させる際に、まず、協調回生トルク分の回生トルクを減少させ、協調回生トルクが0になった後に、コースト回生トルク分の回生トルクを減少させる電動車両の制御装置とした。
したがって、ロー戻し制御の実行時に、コースト回生トルクに加え、協調回生トルクが加算されている場合でも、ロー戻し制御時の油量不足を抑制できるとともに、車両減速度の急変を抑制できる。これにより、ロー戻し制御による発進用変速比(最ロー)への変速を確実に実行しつつ、乗員に違和感を与える車両減速度変化を抑制できる。
4)実施例1の電動車両の制御方法は、
車両の走行用のモータジェネレータMGと左右駆動輪RT,LTとの間に配置された無段変速機CVTと、モータジェネレータMGにより駆動され、回転数に応じて無段変速機CVTに油を供給するオイルポンプと、を備える電動車両の制御方法において、
運転者により操作されるアクセルの解放方向操時に、モータジェネレータMGにコースト回生トルクを発生させ、
車速低減に伴い、無段変速機CVTを所定のロー側の発進用変速比(最ロー)に向けて変速するロー戻し制御を行い、
ロー戻し制御を行っているとき、モータジェネレータMGのコースト回生トルクを含むモータ回生トルクを、車両減速度の変化が許容値以下となる第1の変化速度Kv1で減少させる(ステップS103)電動車両の制御方法とした。
したがって、ロー戻し制御時において、モータ回生トルクの減少を行わない場合と比較して、無段変速機CVTにおける油量不足を抑制して、変速を確実に行うことができる。加えて、モータ回生トルクの減少を第1の変化速度Kv1よりも急速に行う場合と比較して、無段変速機CVTにおける伝達トルクの急変による車両減速度の急変を抑制し、乗員に違和感を与えることを抑制できる。
以上、本開示の電動車両の制御装置及び電動車両の制御方法を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
実施の形態では、1モータ・2クラッチと呼ばれるパラレルハイブリッド駆動系を備えるFFハイブリッド車両に適用した例を示したが、これに限らない。すなわち、本開示の電動車両の制御装置及び電動車両の制御方法は、回生可能なモータおよびロー戻し制御を実行する無段変速機を備えていればよく、ハイブリッド車両に限らず、モータのみを駆動源とする電気自動車にも適用できる。また、ハイブリッド車両にあっても、シリーズハイブリッド車両にも適用可能であり、また、FF以外のFR、4輪駆動などの他の駆動系を備えた車両にも適用できる。
さらに、パラレルハイブリッド車両であっても、実施の形態において示した1モータ・2クラッチ式のものに限定されない。

Claims (3)

  1. 車両の走行用のモータと駆動輪との間に配置された無段変速機と、前記モータにより駆動され、回転数に応じて前記無段変速機に油を供給するオイルポンプと、を備える電動車両の制御装置であって、
    前記モータの駆動を制御し、運転者により操作されるアクセルの解放方向操時に、前記モータにコースト回生トルクを発生させるモータトルク制御部と、
    車速低減に伴い、前記無段変速機を所定のロー側の発進用変速比に向けて変速するロー戻し制御を行う変速制御部と、
    前記モータトルク制御部に含まれ、前記ロー戻し制御を行っているとき、前記モータの前記コースト回生トルクを含むモータ回生トルクを、車両減速度の変化が許容値以下となる第1の変化速度で減少させ、さらに、前記モータ回生トルクが所定値未満になると、前記第1の変化速度よりも大きい第2の変化速度で前記モータ回生トルクを減少させるモータ回生トルクカット部と、を備える
    電動車両の制御装置。
  2. 請求項1に記載の電動車両の制御装置において、
    前記モータトルク制御部は、運転者の制動操作に応じて、前記コースト回生トルクに加算して協調回生トルクを付与するモータ制動トルク制御部をさらに備え、
    前記モータ回生トルクカット部は、前記モータ回生トルクを減少させる際に、まず、前記協調回生トルク分の回生トルクを減少させ、前記協調回生トルクが0になった後に、前記コースト回生トルク分の回生トルクを減少させる
    電動車両の制御装置。
  3. 車両の走行用のモータと駆動輪との間に配置された無段変速機と、前記モータにより駆動され、回転数に応じて前記無段変速機に油を供給するオイルポンプと、を備える電動車両の制御方法において、
    運転者により操作されるアクセルの解放方向操時に、前記モータにコースト回生トルクを発生させ、
    車速低減に伴い、前記無段変速機を所定のロー側の発進用変速比に向けて変速するロー戻し制御を行い、
    前記ロー戻し制御を行っているとき、前記モータの前記コースト回生トルクを含むモータ回生トルクを、車両減速度の変化が許容値以下となる第1の変化速度で減少させ、さらに、前記モータ回生トルクが所定値未満になると、前記第1の変化速度よりも大きい第2の変化速度で前記モータ回生トルクを減少させる
    電動車両の制御方法。
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