JP6698984B2 - 盛土構造物及び盛土構造物の施工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、盛土構造物及び盛土構造物の施工方法に関する。
例えば、道路、護岸などを構築する場合、計画路面まで嵩上げする目的で地盤上に盛土構造物を構築することがある。
盛土構造物の側面が垂直に近い角度であると盛土が安定せず、側面から崩落することがあり、このため、通常は、盛土の側面に法面を設けて、盛土構造物の断面形状が台形になるように構築している。
盛土構造物の法面は、降雨、地震などにより崩落する可能性があるため、盛土構造物の法面における崩落抑制を目的とした技術が提案されている。
例えば、斜面と前記斜面下端部の直立面とを有する盛土を補強する盛土補強構造であって、前記盛土の前記直立面に接して構築された壁体と、前記盛土の前記斜面上に斜面の全面を覆って連続して構築された斜め壁と、を有し、前記壁体は、前記直立面でのみ盛土と接触し、上部には盛土側に傾斜する傾斜部を有しており、前記斜め壁は、端部が前記傾斜部に当接して連結され、前記壁体と前記斜め壁とで前記盛土を囲繞することを特徴とする盛土補強構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、法面に鉄筋グリッドを備え、鉄筋間にジオテキスタイルを用いた補強層を有する補強土構造物の壁面構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第4684953号公報 特開昭50−48709号公報
特許文献1に記載される盛土補強構造では、前記直立面に接して構築された壁体は、鉄筋コンクリート製が好ましいとされており、法面の補強にはある程度の効果を奏すると考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の盛土補強構造では、地震による地盤の変動に対して法面の崩落は抑制されるものの、地盤に引張と圧縮の外力が掛かるため、盛土構造物の天端の変形までは抑制できず、盛土構造物の天端に道路などを構築した場合、変形により破損するおそれがある。
また、特許文献2に記載の補強土構造物の壁面構造では、降雨などによる法面の崩落抑制には有効ではあるが、ジオテキスタイル自体は柔軟な素材であるため、地震による盛土構造物の変形を抑制するには至っていない。
上記事実に鑑み、なされた本発明の課題は、地震においても法面の崩落、盛土の変形が抑制される、耐震性に優れた盛土構造物を提供することにある。
本発明の別の課題は、耐震性に優れた盛土構造物の簡易な施工方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討の結果、盛土構造物における法面と天端の双方に補強層を設け、両者を結合させることで、上記課題を解決しうることを見出した。
課題の解決手段は、以下の実施形態を含む。
<1> 支持地盤の上に設けられた盛土と、前記盛土の天端面に形成された天端補強層及び盛土の法面に形成された法面補強層が結合している補強層と、を有する盛土構造物である。
本実施形態によれば、天端補強層と法面補強層とが結合しているため、支持地盤の強度と相俟って、上下のみならず左右からの外力が掛かる場合、例えば、地震等により地盤及び盛土に対し引張又は圧縮のいずれの外力が掛かかる場合でも、盛土の変形、なかでも天端の変形が抑制され、耐震性に優れた盛土構造物となる。
天端の変形が抑制されることにより、例えば、天端上に線路や建物などの建造物を有する場合にも、建造物への影響を最小限にすることができるという利点を有する。
<2> 前記補強層は、流動性を有し、固化する固化剤で形成された固化層である、<1>に記載の盛土構造物である。
本実施形態では、法面補強層及び天端補強層を、流動性を有し、固化する固化剤を用いて形成することで、盛土の任意の箇所に簡易に補強層としての固化層が形成され、かつ、法面補強層と天端補強層とが連続した補強層が形成される。よって、特別な工程を経ることなく、法面補強層と天端補強層とが結合した状態の補強層となる。
<3> 支持地盤上に盛土を構築すること、前記盛土の天端面と法面とに、流動性を有し、固化する固化剤を付与すること、前記固化剤を固化させて、補強層としての固化層を形成すること、を含む、盛土構造物の施工方法である。
本実施形態によれば、予め形成した盛土において、補強層を形成したい箇所に流動性を有し、固化する固化剤を付与し、固化させることで、任意の箇所に簡易に補強層としての固化層を形成することができる。流動性を有し、固化する固化剤を、盛土の天端と法面とに連続的に付与して、硬化させることで、形成された補強層としての固化層は、天端補強層と法面補強層とが結合した固化層となる。
本発明によれば、地震においても法面の崩落、盛土の変形が抑制される、耐震性に優れた盛土構造物を提供することができる。
また、本発明の別の実施形態によれば、耐震性に優れた盛土構造物の簡易な施工方法を提供することができる。
本発明の一実施形態の盛土構造物の概略断面図である。 本発明の別の実施形態の盛土構造物の概略断面図である。 盛土に固化層形成用組成物を付与する態様の一例を示す模式図である。 実施例1及び比較例1の、地震による外力を受けた際のひずみと応力との双曲線モデルを表すグラフである。 実施例1の盛土構造物の、地震による外力を受けた後の状態を示すコンター図である。 比較例1の盛土構造物の、地震による外力を受けた後の状態を示すコンター図である。 比較例2の盛土構造物の、地震による外力を受けた後の状態を示すコンター図である。 実施例1、比較例1、及び比較例2の盛土構造物の、地震による外力を受けた後の、天端中央部の沈下量を表すグラフである。
<盛土構造物>
本実施形態の盛土構造物は、支持地盤の上に設けられた盛土と、盛土の天端面に形成された天端補強層及び盛土の法面に形成された法面補強層が結合している補強層と、を有する。
図1は、本発明の一態様である盛土構造物の例を示す概略断面図である。盛土構造物10は、支持地盤14に構築された盛土16の天端に天端補強層12Aを備え、かつ、法面に法面補強層12Bを備える。本実施形態では、前記天端補強層12Aと前記法面補強層12Bとは連続しており、盛土構造物10における補強層12は、前記天端補強層12Aと前記法面補強層12Bとが結合した補強層12である。
一般に盛土は、盛土の天端に線路などを構築した場合の上からの応力には耐性があるが、法面への外力、或いは、地震などの支持地盤の変形を伴う引張、圧縮などの外力により変形する可能性が指摘されている。
本実施形態では、盛土16の天端に天端補強層12Aを設け、かつ、前記天端補強層12Aが前記法面補強層12Bと結合することにより、地震のような強い外力を受けた場合でも、法面の崩落、盛土16の変形、なかでも天端の変形が効果的に抑制される。
図2は、本発明の別の態様である盛土構造物の例を示す概略断面図である。盛土構造物11は、段階的盛土とされている。即ち、一方の法面に小段13が形成されている。
本実施形態における補強層12は、最上部の天端における天端補強層12A、法面における法面補強層12B、及び小段13における小段補強層12Cを含み、天端補強層12Aと小段補強層12Cとの間の法面に、法面補強層12Bを備える。本実施形態では、天端補強層12Aと小段13を有しない側の法面補強層12B、天端補強層12Aと小段13を有する側の法面補強層12B、前記法面補強層12Bと小段補強層12C、及び小段補強層12Cと小段補強層12Cの下方に設けられた法面補強層12Bとが、互いに結合していることで、地震においても法面の崩落、盛土の変形が抑制され、耐震性に優れた盛土構造物11となる。
図2に記載の盛土構造物11では、盛土17の一方の側面のみが段階的盛土であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、盛土構造物における盛土は、盛土の両側面が段階的盛土であってもよい。また、段階的盛土であって、小段13が複数段設けられた盛土であってもよい。既述のように、段階的盛土においても、天端、法面、及び小段に設けられた補強層が互いに結合していることで、地震のような強い外力を受けた場合でも、法面の崩落、盛土17の変形が効果的に抑制される。
(支持地盤)
本実施形態の盛土構造物10における支持地盤14は、少なくとも、盛土16の底面の直下に位置する。支持地盤14は、盛土16の少なくとも盛土16の直下に位置していれば特に制限はない。盛土構造物10の耐震性をより向上させるという観点からは、支持地盤14の幅は、断面が盛土16底面の幅と同じであるか、盛土16底面の幅よりも広い範囲にあることが好ましい。
支持地盤の強度には特に制限はないが、軟弱地盤の場合、地盤改良を行なって必要な強度を得ることが好ましい。
盛土構造物10の耐震性をより向上するという観点からは、支持地盤14の強度は高い方が好ましく、例えば、Vs(S波速度又はせん断波速度である)が、150m/sを超えることが好ましく、250m/s以上であることがより好ましく、300m/s以上であることがさらに好ましい。ここで、S波速度とは、既述のように、せん断波速度とも称される。一般に、せん断波速度は地盤の強度を表す一つの指標であり、この値が大きいほど硬質な地盤であることを示す。本明細書では、以下、S波の伝わる早さをS波速度と称する。
支持地盤14の強度の他の指標として、JIS A1219(2013年)に規定する標準貫入試験方法により得られるN値が挙げられる。支持地盤14の強度として、N値が7を超える強度を有することが好ましく、N値が20以上であることがより好ましく、N値が50以上であることがさらに好ましい。
支持地盤14の構築方法には特に制限はなく、公知の地盤改良方法を目的に応じて適用することができる。地盤改良方法としては、例えば、地盤を圧縮する方法、地盤に杭を打つ方法、地盤にセメントミルクなどの地盤改良用組成物を浸透させ、固化させる深層混合処理工法(DCM工法)、ジオテキスタイル補強工法、土木用タイロッドを用いた補強工法等が挙げられる。
(盛土)
盛土16は、支持地盤14の任意の位置に、使用目的に応じた高さ、法面の傾斜等を決定して設けられる。
支持地盤14上に盛土16を設けた後、必要に応じて盛土16を締固めしてもよい。
盛土16は、支持地盤14より突出して設けられる。盛土16の高さ、幅、法面の傾斜には特に制限はない。盛土16上には、線路、建物などを設けてもよく、設けなくてもよい。
一般的には、法面の傾斜、即ち、図1の概略断面図に示すθが大きいほど、盛土構造物10の安定性が低くなる傾向にあり、このため、法面の傾斜が急峻になるほど、後述する補強層12の強度を高くすることが好ましい。また、目的に応じて支持地盤14の強度をより高くする対応をとることもできる。
(補強層)
本実施形態の盛土構造物10では、盛土16の天端と法面とに補強層12を有する。天端補強層12Aと法面補強層12Bとは結合している。
補強層12は、盛土16を補強しうる限り、材料、構築方法に制限はない。補強層12としては、例えば、金属板、プレキャストコンクリート板、石膏ボードなどの部材が挙げられ、これら部材の少なくとも1つを使用して、盛土16の天端と法面とを被覆すればよい。
天端に設けた天端補強層12Aとしての部材と、法面に設けた法面補強層12Bとしての部材とを結合させる結合手段としては、公知の手段、例えば、ビス、接着剤、モルタルなどにより結合させる結合手段が挙げられる。天端補強層12Aと、法面補強層12Bとを、いずれかの結合手段により結合して補強層12とすることができる。
なかでも、補強層12は、流動性を有し、固化する固化剤で形成された固化層であることが好ましい。
補強層12を、流動性を有し、固化する固化剤で形成された固化層とすることで、流動性を有する固化剤を用いて、任意の箇所に簡易に補強層12である固化層を設けることができる。
流動性を有し、固化する固化剤を含む組成物を、以下、固化層形成用組成物と称することがある。固化剤を含む固化層形成用組成物を盛土16に付与することで、固化層形成用組成物が盛土の表面から内部に浸透する。その後、固化層形成用組成物が盛土16内で固化することで、補強層12としての固化層が形成される。固化層形成用組成物を、盛土16の法面と天端に連続的に付与することで、天端補強層12Aと法面補強層12Bとが一工程で形成され、かつ、天端補強層12Aと法面補強層12Bとが結合した状態で一体的に形成される。なお、固化層形成用組成物を用いて天端補強層12Aと、法面補強層12Bとを別々に形成した後、両者を結合手段により結合させてもよい。
(固化層形成用組成物)
固化層形成用組成物は、固化剤を含み、流動性を有する。本実施形態に用いられる固化層形成用組成物の流動性は、室温(25℃)における粘度が1×10−3Pa・s〜1.5×10−3Pa・sの範囲であることが好ましい。
なお、固化層形成用組成物の粘度は、ファンギラブ社製 ラボ用デジタル式回転粘度計 単一円筒型回転粘度計(スピンドルタイプ)を用いて、JIS K7117−1(1991年)に記載の方法に準拠して測定することができる。
流動性を有し、固化する固化剤としては、ウレアーゼ生成微生物、尿素、セメント、及び水ガラスからなる群より選択される1種以上が挙げられる。固化層形成用組成物は、ウレアーゼ生成微生物、尿素、セメント、及び水ガラスからなる群より選択される1種以上の成分を含み、所望により、流動性を改良するための水などの溶媒又は分散媒、さらに、界面活性剤などの添加剤を含むことができる。なお、本明細書における「セメント」は、所謂粉体セメント、粉体セメントと水を混合したセメントミルク、及び粉体セメント及び水と、土(粘土や砂)等との混合物であるソイルセメント等を包含する。
以下に、本実施形態に用いることができる固化剤を含有する固化層形成用組成物の例について説明する。
(1.尿素含有セメント組成物)
本実施形態に使用しうる固化層形成用組成物としては、水/セメント含有比率が、質量比で、45%以上60%以下の量でセメントを含有し、更に尿素を含有する尿素含有セメント組成物が挙げられる。
固化層形成用組成物に用いうるセメントには特に制限はなく、一般的に地盤改良用のセメントミルクに含有することができるセメントであればいずれも使用することができる。
セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、高炉B種セメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントなどが挙げられ、これら公知のセメントはいずれも好適に使用しうる。なかでも、入手容易性、及び、高炉スラグの有効利用が可能という観点から、高炉B種セメントなどが好ましい。
尿素としては、一般に入手可能な農業用肥料、試薬などを用いることができる。
尿素含有セメント組成物に用いられる尿素の含有量は、組成物全量に対して1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがより好ましい。セメント組成物が尿素を含有することで、セメント組成物の流動性が向上する。
尿素と水との総含有量/セメントの含有比率は55%以上70%以下であることが好ましく、尿素と水との総含有量/セメントの含有比率は60%以上65%以下であることがより好ましい。
尿素を添加すると、セメントミルクにおけるセメントの硬化性を損なうことなく、流動性のみを上げることができる。
尿素含有セメント組成物を調整する場合、まず、好ましい濃度範囲の尿素水溶液を調製した後に、セメントと混合し、最終的に、固化層形成用組成物としての尿素含有セメント組成物における尿素の含有量を、好ましい範囲である1質量%以上10質量%以下とする量にて、尿素水溶液及び水を含有させ、十分に撹拌混合すればよい。
尿素含有セメント組成物には、水、尿素、セメントに加え、効果を損なわない限りにおいて、目的に応じてその他の成分を含有することができる。
その他の成分としては、流動化剤、結合材、遅延剤などが挙げられる。
尿素含有セメント組成物を盛土16に付与することで、尿素含有セメント組成物が盛土16の表面から盛土に浸入し、セメントが固化することで補強層12としての固化層が形成される。
尿素含有セメント組成物には、さらに、尿素を分解するウレアーゼ(尿素分解酵素)を生産可能なウレアーゼ生成微生物を含有することができる。
ウレアーゼ生成微生物とは、特に限定はなく、例えば、バチルス スポトゥリ、バチルス スポロサルシナ、バチルス パストゥリ、スポロラクトバチルス、クロストリジウム、デスルホトマキュルムを含む属の一覧から選択される細菌等が挙げられる。本実施形態におけるウレアーゼ生成微生物は、これらの例に限定されず、多くのウレアーゼを生成し得る微生物を使用することができる。
尿素含有セメント組成物が、ウレアーゼ生成微生物を含有することで、固化層形成用組成物としての尿素含有セメント組成物を盛土16に付与する際に、ウレアーゼ生成微生物由来のウレアーゼ(尿素分解酵素)により尿素が分解され、炭酸イオンが生成される。生成された炭酸イオンは、セメントに含まれるカルシウムイオンと反応し、下記式に記載のような反応により、炭酸カルシウムが盛土16中に析出する。
CO(NH+2HO → 2NH +CO 2− (尿素の加水分解)
CaCl → Ca2++2Cl (塩化カルシウムの解離)
Ca2++CO 2− → CaCO (炭酸カルシウムの析出)
炭酸カルシウムはセメントと親和性を有する硬質の成分であり、このため、セメントの水和反応の強度に、さらに、炭酸カルシウムの強度を加えることができる。よって、尿素含有セメント組成物がさらにウレアーゼ生成微生物を含有することで、尿素含有セメント組成物が固化して形成される補強層12としての固化層の強度がより向上し、盛土構造物10における耐震性能がより向上する。
尿素含有セメント組成物にウレアーゼ生成微生物を含有させる場合の含有量は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがより好ましい。
尿素含有セメント組成物におけるウレアーゼ生成微生物の含有量が上記範囲であることで、形成される補強層12の強度向上効果が十分に得られる。
固化層形成用組成物に用いるウレアーゼ生成微生物は、市販の微生物を用いてもよく、盛土構造物10を形成する地盤から予め採取したウレアーゼ生成微生物を培養し、得られた培養液を用いてもよい。
なかでも、盛土構造物10を構築する土壌から採取したウレアーゼ生成微生物を用いることが好ましい。即ち、盛土構造物10を構築する土壌中からウレアーゼ産出能を有する微生物を抽出し、集積培養により活性を高めたウレアーゼ生成微生物を固化層形成用組成物に用いることで、盛土構造物10が形成された地盤における生態系等への影響を最小限とすることができる。
ウレアーゼ生成微生物の培養方法としては、例えば、原位置の土壌サンプルより採取したウレアーゼ生成微生物群に対して、栄養塩類及び尿素を添加し培養を行う方法が挙げられる。培養方法として、集積培養法を行なうことで、より効率よくウレアーゼ生成微生物の培養を行なうことができる。集積培養法とは、菌体培養液を遠心分離によりろ液と菌体に分離し、新たな培養液を添加することで集積効率の向上および必要培養期間の短縮を図る培養方法である。集積された菌体を、所定濃度の尿素と栄養塩類とを加えた培養液に添加し、約30℃の温度条件下で静置培養することで、例えば、7日〜14日間で実際の施工に使用可能な濃度および液量のウレアーゼ生成微生物を得ることができる。
尿素含有セメント組成物中にウレアーゼ生成微生物を含有させる場合、盛土16に付与する直前に含有させることが、注入時における流動性の低下抑制の観点から好ましい。
(2.尿素カルシウムイオン含有組成物)
本実施形態に使用しうる固化層形成用組成物の別の態様として、ウレアーゼ生成微生物と、尿素と、カルシウムイオンとを含有する尿素カルシウムイオン含有組成物が挙げられる。盛土16に、尿素カルシウムイオン含有組成物を付与すると、盛土16中で、尿素カルシウムイオン含有組成物に含まれるウレアーゼ生成微生物が生成するウレアーゼにより尿素が分解して発生した炭酸イオンと、カルシウムイオンと、が反応して炭酸カルシウムが析出し、補強層12としての固化層が形成される。
尿素カルシウムイオン含有組成物に用いられる尿素及びウレアーゼ生成微生物は、尿素含有セメント組成物において説明したものと同じものを使用することができ、好ましい例も同様である。
尿素カルシウムイオン含有組成物におけるウレアーゼ生成微生物の含有量は、菌体がウレアーゼを効率よく生成するのに好ましい含有量である濃度、即ち、菌体培養液の濃度として、0.1質量%〜5.0質量%が、好ましく、0.2質量%〜2.0質量%がより好ましい。
尿素カルシウムイオン含有組成物に含まれる尿素の含有量は、組成物全量に対して20mg/L〜2000mg/Lが好ましく、より好ましくは、90mg/L〜900mg/Lの範囲である。盛土16中における尿素の含有量が既述の範囲であることで、ウレアーゼ生成微生物の機能と相俟って、盛土中で必要量の炭酸イオンを生成し、強固な補強層としての固化層を形成することができる。
尿素は水溶液として組成物に含有させることができる。
尿素は単独で組成物に含有させてもよく、尿素と、ウレアーゼ生成微生物の生育に必要な栄養塩、炭酸水素ナトリウム、カルシウムイオン源となる塩化カルシウム等を含む混合溶液として組成物に含有させてもよい。
(カルシウムイオン)
尿素カルシウムイオン含有組成物はカルシウムイオンを含有する。
一般的には、水中で解離してカルシウムイオンを生成するカルシウムの塩化物、酸化物、水酸化物などのカルシウム塩として組成物に含有させることが好ましい。なかでも、解離し易いこと、入手が容易であることなどの観点からカルシウムイオン源としては、塩化カルシウム等を用いることが好ましい。
カルシウムイオンは、ウレアーゼ生成微生物が生成したウレアーゼ(尿素分解酵素)により尿素が分解されて生成した炭酸イオンと反応し、尿素含有セメント組成物において既述の式に記載の如き反応により、炭酸カルシウムが土壌中に析出し、固化層を形成する。
カルシウムイオンの含有量は、組成物の全量に対して、18mg/L〜1000mg/Lの範囲であることが好ましく、60mg/L〜600mg/Lの範囲であることがより好ましく、180mg/L〜600mg/Lの範囲であることがさらに好ましい。カルシウムイオンの含有量が既述の範囲であることで、盛土16中で炭酸カルシウムの析出が効率よく行なわれ、高強度の固化層が形成される。
(鉄イオン)
固化層形成用組成物である尿素カルシウムイオン含有組成物は、さらに鉄イオンを含有することができる。
鉄イオンを尿素カルシウムイオン含有組成物に含有させる場合、例えば、鉄イオン溶液として市販されている鉄イオン試薬を用いてもよく、水中で解離して鉄イオンを生成する鉄の塩化物、酸化物、水酸化物などの鉄塩を鉄イオン源として含有させてもよい。鉄イオン源としては、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、グルコン酸鉄などが挙げられる。
鉄イオンの含有量は、尿素カルシウムイオン含有組成物に対して、5mg/L〜100mg/Lの範囲であることが好ましく、10mg/L〜50mg/Lの範囲であることがより好ましい。鉄イオンを加えることで、盛土中で水酸化鉄の析出が生じ、炭酸カルシウムの生成と相俟って形成される固化層の強度がより向上する。
尿素カルシウムイオン含有組成物に鉄イオンを含有させる場合の含有量としては、鉄イオンの含有量に対するカルシウムイオンの含有比率は、質量基準で2倍〜20倍であることが好ましく、12倍〜18倍であることがより好ましい。
鉄イオンの含有比率が上記範囲において、鉄イオンを含有させた効果が得られ、鉄イオンの添加に伴う組成物の粘度上昇が生じ難い。
(その他の成分)
本実施形態に用いられる固化層形成用組成物には、効果を損なわない範囲において、目的に応じて他の成分を含有することができる。
固化層形成用組成物がウレアーゼ生成微生物を含有する場合には、ウレアーゼ生成微生物の活性をより高める目的で、尿素に加え、ウレアーゼ生成微生物が資化可能な栄養剤を含有することができる。
予め、尿素、栄養剤、カルシウムイオン源である塩化カルシウムなどを含有する混合物を調製し、得られた混合物に、ウレアーゼ生成微生物を含む菌体培養液を含有させ、固化層形成用組成物を得ることができる。
ウレアーゼ生成微生物の栄養剤には特に制限はなく、微生物の培養に使用される有機物、無機塩等から選ばれる公知の栄養剤を使用することができる。
有機物は、具体的には、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、魚エキス、ペプトン、スクロース、トリプトン、グルコース、ジャガイモ抽出液、廃糖蜜、コンポスト廃液のしぼり汁等が挙げられる。
無機塩は、具体的には、KHPO、NaHPO等のリン酸塩、NHCl等のアンモニア塩、KNO、NHNO等の硝酸塩、微量金属元素溶液等が挙げられる。無機塩のうち、塩化アンモニウム(NHCl)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸アンモニウム(NHNO)等は微生物が増殖する際の窒素源として有用である。
固化層形成用組成物には、栄養剤を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
固化層形成用組成物には、栄養剤の他、pH調整剤、緩衝剤などの公知の成分を含むことができる。組成物が、pH調整剤、緩衝剤等を適切な量で含むことで、固化層形成用組成物のpHを、微生物に良好な領域に維持することができる。
pH調整剤としては、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。緩衝剤としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられる。
(3.セメント組成物)
流動性を有し、固化する固化剤としては、セメント組成物を挙げることができる。セメントは、流動性を向上させるため、セメントミルクの形態で用いられることが好ましい。
また、セメントを盛土16に付与し、盛土16表面を撹拌してソイルセメントとして硬化層を形成することもできる。
本実施形態に使用しうるセメント組成物としては、水/セメント含有比率が、質量比で、30%以上の量でセメントを含有することが好ましく、45%以上の量でセメントを含有することが好ましい。セメントの含有量が多くなると流動性が低下するため、セメントの含有量は60%以下であることが好ましい。なお、セメントのみを盛土表面の土と混合して、固化層の形成に用いてもよく、その場合には、セメントに対する水の添加量は0%であってもよい。
(4.水ガラス)
流動性を有し、固化する固化剤の別の態様として、水ガラスが挙げられる。水ガラスはケイ酸ナトリウム水溶液、詳細には、二酸化ケイ素と酸化ナトリウムとの混合物である。最も汎用されるJIS K1408で規定されるケイ酸ソーダ3号は、NaO・3SiOの構造を持つ。また、二酸化ケイ素と併用するアルカリとして、酸化ナトリウムに変えて、酸化カリウムを用いる場合があり、ケイ酸カリウム水溶液も、ケイ酸ナトリウム水溶液と同様の機能を有する。
水ガラスは酸と反応して固化し、固化層を形成することができる。
水ガラスは、ケイ酸ナトリウムを10質量%〜35質量%含む水溶液として用いられることが好ましい。
水ガラスを用いた土壌の固化剤としては、例えば、特開平5−86370号公報に記載の、水性コロイダルシリカとケイ酸カリウムの混合液である地盤注入剤、特開2013−159775号公報に記載の水性コロイダルシリカとケイ酸カリウムと酸とを含む注入止水材などが挙げられ、これらに記載の水ガラス含有組成物は、本実施形態における固化層形成用組成物にとして好適に使用しうる。
また、水ガラスは、セメントミルクの如きセメント組成物に添加剤として含有させて用いてもよい。セメント組成物に対する水ガラスの含有量は、セメント組成物の全量に対し、ケイ酸ナトリウムとして10質量%〜35質量%の範囲であることが好ましい。また、セメント組成物を先に盛土に注入した後、水ガラスを注入することで固化層の強度をより向上させることもできる。
本実施形態の盛土構造物は、上記構成としたため、上下の圧力のみならず、地震などの外力が加わった場合でも、盛土の変形が抑制され、耐震性に優れるため、種々の用途に好適に使用しうる。
本実施形態の盛土構造物10における補強層12は、既述のように、流動性を有し、固化する固化剤により形成されることが好ましく、以下に述べる本実施形態の盛土構造物の施工方法により構築されることが、施工効率の観点から好ましい。
<盛土構造物の施工方法>
本実施形態の盛土構造物10の施工方法は、支持地盤上に盛土を形成すること、前記盛土の天端面と法面とに、流動性を有し、固化する固化剤を付与すること、前記固化剤を固化させて、補強層としての固化層を形成すること、を含む。
本実施形態の盛土構造物10の製造に際しては、まず支持地盤14を構築する。支持地盤14の強度は既述のように目的に応じて適宜定められ、定められた強度に従い、地盤を締固めたり、杭などの補強材を配置したり、セメント系固化剤を用いて地盤改良体を形成したりすることができる。
支持地盤14の好ましい強度は、既述のとおりである。
支持地盤14の幅は、支持地盤14上に設けられる盛土16の幅と同じか、或いは、より大きいことが好ましい。
支持地盤14上に盛土16を構築する方法は、公知の方法を適用することができる。盛土16は、高さが高いほど、また、法面の角度が急なほど不安定になり易いため。盛土16の形状に応じて、既述の支持地盤14の強度をより高くしてもよい。
次に、形成された盛土16に、補強層を形成する目的で、流動性を有し、固化する固化剤を付与する。固化剤の付与は、塗布、散布、注入など、公知の方法をとることができる。
本実施形態の盛土構造物10における補強層12は盛土16の少なくとも表面近傍を固化する固化層を設ければよいため、一般に地盤改良用途に用いられる薬液注入法をいずれも適用することができる。
固化剤の付与は、盛土16の天端及び法面の全面に亘って行われることが好ましい。固化剤を付与した箇所を一体固化するために適する方法として、例えば、二重管ストレーナー工法(複相方式)、二重管ダブルパッカー工法等を挙げることができる。
固化剤を含む固化層形成用組成物の粘度が低い場合、例えば、既述の好ましい粘度範囲である場合には、固化層形成用組成物をそのまま盛土16に散布し、盛土16表面から固化層形成用組成物を浸透させてもよい。散布する場合、盛土16の天端と法面とに連続的に固化層形成用組成物を散布することが、形成された補強層12において、天端補強層12Aと法面補強層12Bとが結合した状態で形成されるため好ましい。
図3は、盛土16への固化剤の付与に、散布法を適用した態様を示す模式図である。図3の模式図に示すように、支持地盤14上に構築された盛土16の天端及び法面に散布装置18を用いて固化層形成用組成物を散布して、付与することができる。散布装置18は、散布用のノズル20と、固化層形成用組成物の容器22と、固化層形成用組成物を散布するための加圧ポンプ24とを備える。なお、図3は模式図であり、散布装置18の構造を明確にする目的で、図3における散布装置18は実際よりも拡大して記載されている。図3では、固化層形成用組成物の盛土への付与に散布装置18を用いた例を示すが、固化層形成用組成物の盛土16への付与方法は図3に記載の態様に限定されない。
例えば、盛土16の天端や法面の表面における固化層形成用組成物の浸透性が低い場合には、まず、公知の削孔装置により盛土表面より所定の深さまで削孔した後に、前記散布装置18を用いて、削孔により形成された孔に前記ノズル20を挿入し、固化層形成用組成物を注入する方法、盛土16表面に、直接前記散布装置18のノズル20を挿入して固化層形成用組成物を注入する方法なども好適に実施できる。
固化層形成用組成物は、1液であってもよく、また、2液であってもよい。固化層形成用組成物を2液にする態様としては、例えば、尿素含有セメント組成物、尿素カルシウムイオン含有組成物の付与後に、固化を促進するためのウレアーゼ生成微生物の培養液を付与する態様などが挙げられる。また、尿素含有セメント組成物において、尿素とセメントミルクとを別々に付与する態様をとることができる。
盛土16に付与された固化剤を固化させて、補強層12としての固化層を形成する。流動性を有する固化剤を用いることで、簡易な方法で、盛土16の任意の箇所に補強層12としての固化層を形成することができる。
補強層12の厚みは、目的に応じて適宜選択することができる。盛土16を十分に補強しうるという観点からは、補強層の厚みは、一般的には、天端補強層12A及び法面補強層12Bのいずれも30cm以上であることが好ましく、50cm以上であることがより好ましい。
補強層の強度は、補強層形成前の盛土の強度よりも大きければ特に制限はない。本実施形態の効果がより良好となるという観点からは、補強層の圧縮強度は、補強層形成前の盛土の圧縮強度の2倍以上とすることが好ましい。補強層の強度は、スウェーデン式サウンディング(SWS)試験(JIS A1221(2002年))、ボーリング調査、平板載荷試験(地盤工学会基準 JGS1521)等の方法で測定することができる。
本実施形態の施工方法によれば、一般に用いられる装置、工法により、流動性を有し、固化する固化剤を用いるのみで、従来の方法に比較して、簡易に、耐震性に優れた盛土構造物を製造することができる。
形成された盛土構造物10は、天端補強層12Aと法面補強層12Bとが結合して設けられていることで、本実施形態の盛土構造物10であることがわかる。
以下、具体例を挙げて本発明を詳細に説明するが、以下の実施例は一つの実施形態であり、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、以下「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1、比較例1〕
支持地盤14は、幅80.0m、深さ20.0mとして構築し、支持地盤14上に底面幅16.0m、天端幅4.0m,高さ3.0mの盛土16を構築したモデルを用いた。盛土16は豊浦砂を用いて構築した。
(支持地盤の構築と評価)
支持地盤14の物性を下記表1に示す。
実施例1の盛土構造物の形成に用いる固化層形成用組成物を調整した。
まず、尿素を水に溶解させて濃度5質量%の尿素水溶液を調整し、1時間保存した後、ウレアーゼ生成微生物であるバチルス パストゥリ(ATCC11859)の培養液15ml、及び0.3Mの塩化カルシウムを混合して、尿素含有量が9g/L(0.15mol/L)となる固化層形成用組成物を得た。
得られた実施例1の固化層形成用組成物を、試験的に盛土構築用の豊浦砂を充填したカラムに3回注入し、24時間放置して炭酸カルシウムを析出させて、豊浦砂のカラム内にモデルとしての固化層を形成させた。
カラム内の圧縮した豊浦砂を盛土のモデルとし、固化層のモデルと同じ条件で、密度、粘着力、せん断抵抗角を測定した。
盛土及び補強層(固化層)の密度は、「土粒子の密度試験方法」(JIS A 1202(2009年))により、粘着力及びせん断抵抗角は、「土の一軸圧縮試験法」(JIS A 1216(2009年))、「土の非圧密非排水(UU)三軸圧縮試験方法」(JIS A 0521(2009年)又は、「土の圧密排水(CD)三軸圧縮試験法」(JIS A 0524(2009年))により、測定することができる。
なかでも、盛土が粘性土である場合には、UU三軸圧縮試験法を適用することが好ましい。なお、盛土が砂質土である場合には、CD三軸圧縮試験法を適用することが一般的であるが、UU三軸圧縮試験法を適用して測定することができる。
その結果、固化層形成用組成物を用いた固化層のモデルである試料では、密度が1.364g/cmから1.472g/cmに上昇し、粘着力が3.3kN/mから11.9kN/mに上昇した。その結果より、原位置においても、固化層形成用組成物により形成された補強層である固化層は、密度、粘着力が固化層形成用組成物の使用前の盛土に比較して上昇していることが確認された。一方、せん断抵抗角(φ)は、36.5°から36.9°となり、殆ど変動は見られなかった。
豊浦砂を圧縮して形成した盛土を比較例1とした。また、豊浦砂の盛土16の天端と法面とに対して、調製した固化層形成用組成物を表面から、50L/mを噴霧して十分に盛土16内に浸透させ、1週間放置して固化させ、同様の操作を3回行ない、補強層12としての固化層を形成させた盛土構造物10を実施例1として、動的変形試験を行った。
なお、固化層形成用組成物の盛土16への噴霧量は、必要な補強層の強度に応じて適宜選択することができる。付与方法としては、例えば、50L/m噴霧して1週間放置する操作を3回〜4回行うと、盛土16への固化剤組成物の総付与量は、150L/m〜200L/mとなる。150L/m〜200L/mの量の固化層形成用組成物を1回で盛土16に付与するよりも、数回に分けて付与、放置を繰り返すことにより、得られる補強層の強度がより高く、より均一になるため好ましい。
動的変形試験における拘束圧は50kPaとした。表層地盤の拘束圧は試験より小さいため、初期せん断剛性Gが拘束圧に依存すると仮定して、下式(2−1)で初期せん断剛性を設定する。
上記式(2−1)において、Grefは試験時の初期せん断剛性を表し、σrefは試験時の拘束圧を表し、σ’m0は、各要素の平均応力または平均有効応力を表し、nは係数(=0.5)である。
動的変形試験時の拘束圧(σref)は50kPaであり,初期せん断剛性は、比較例1では、Grefは35400kPaであり,実施例1では、Grefは146000kPaである。

次に、盛土構造物に地震波と同様の外力を付加した場合のシミュレーションを行った。本検討に用いる構成式は,石原吉田モデルを3次元液状化構成式に拡張したモデルを用いた(以後,YTモデルと称することがある)。YTモデルでは,G/G〜γ曲線と、h〜γ曲線をそのまま用いることができるが,本報告では,H−Dモデルを用いた.G/G〜γ曲線に、下記式(2−2)に示す双曲線モデルを用い,h〜γ曲線に下記式(2−3)を用いた。
拘束圧が50kPaのときの参照ひずみと上記式(2−2)によりG/G〜γ曲線を求め、動的変形試験結果と比較し、拘束圧、降伏応力及び参照ひずみの関係から、双曲線モデルを得た。結果を図4に示す。図4における双曲線モデルでは、実施例1の結果を実線で、比較例1の結果を波線で示した。支持地盤の非線形性は,G/G〜γ曲線に基準ひずみをγ50=0.1%とした双曲線モデルを適用し,hmaxは20.0%とした。
図4の双曲線モデルのグラフより、固化層形成用組成物を使用して補強層を形成した実施例1では、ひずみに対する抵抗力が、比較例1に対し、向上していることが分かる。
次に、盛土構造物の解析を行った。解析モデルは、Vs=300.0m/sの支持地盤を深さ20.0mと定義し、支持地盤上に、高さ3.0mの盛土を形成した態様をモデル化した。境界条件は、盛土の底面は粘性境界とし、側面、即ち法面は、繰り返し境界とした。
支持地盤として、締め固められた砂層を想定し、Vs=300.0m/sとした。盛土の底面粘性境界は支持地盤と同じ物性である。ただし、盛土の重量などを考慮してVp=2000m/sに設定した。
自重解析により初期応力を設定した。解析手順を2段階に分け、まず、盛土がない状態で自重解析を行い、次に盛土を載せた自重解析を行い、初期応力を設定した。
盛土は十分締め固められており、初期応力状態の静止土圧係数Kが1.0に近い状態であると仮定し、自重解析におけるポアソン比をν=0.49とした。なお、地震応答解析時はν=0.3とした。
入力地震波は、1993年釧路沖地震(マグニチュード7.8)の北海道開発局釧路港湾建設事務所構内での観測記録のうち,G.L.−77mのEW方向の観測波を入力地震波とした。振幅を1〜3倍して2Eとして入力した。
解析は10秒〜50秒までの40秒間行った。計算の時間間隔Δtは0.001秒とした。
時間積分法は、Newmarkβ法を用いて、γ=0.5、β=0.25とした。
盛土構造物の解析は、上記の如き土の構成モデルを搭載した市販の解析ソフトを用いて行うことができる。例えば、本明細書における解析は、上記の如き土の構成モデルを搭載して、市販の地盤専用FEM解析ソフトウエア PLAXIS(商品名、JIPテクノサイエンス(株))を用いて実施することができる。
実施例1の盛土構造物の解析結果であるコンター図を図5に示す。比較例1の盛土構造物の解析結果であるコンター図を図6に示す。
両者の対比より、実施例1の盛土構造物では、入力地震波に対して高い抵抗性を示し、盛土部分の変形が抑制され、耐震性に優れることが分かる。
他方、比較例1の盛土構造物では、入力地震波により、天端及び法面に変形が見られ、耐震性は実施例1の盛土構造物に対して劣ることが分かる。
〔比較例2〕
次に、比較例1の盛土構造物に対して、実施例1で用いた固化層形成用組成物を盛土の法面のみに噴霧して、実施例1と同様にして固化させ、天端補強層を形成せず、法面補強層のみを形成した比較例2の盛土構造物を構築した。
比較例2の盛土構造物に対して、実施例1と同様に、地震波を入力して地震に対する抵抗性を解析した。比較例2の盛土構造物の解析結果であるコンター図を図7に示す。
図7より明らかなように、比較例2の盛土構造物では、法面の変形は、ある程度抑制されるものの、天端に変形が見られ、実施例1の盛土構造物に対して、耐震性がより低いことが確認された。
次に、解析結果より、実施例1、比較例1および比較例2の天端中央部が沈降した際の沈下量の時間履歴を測定した。結果を図8に示す。
図8の結果より、実施例1の盛土構造物は、地震波に対する高い抵抗性を示し、地震波による圧縮及び引張りの外力を受けた場合でも、天端の沈下が抑制され、耐震性に優れることが分かる。
コンター図と天端中央部の沈下量の解析結果より、実施例1の盛土構造物では、盛土の変形が抑制され、護岸などに適用した場合、耐震性に優れる。また、盛土上に道路、建物等を構築した場合でも、盛土上に設けられた道路、建物などへの地震の影響が効果的に抑制される。
10 盛土構造物
12 補強層
12A 天端補強層
12B 法面補強層
14 支持地盤
16 盛土
18 散布装置

Claims (2)

  1. 支持地盤の上に設けられた盛土と、
    前記盛土の天端面に形成された天端補強層及び盛土の法面に形成された法面補強層が結合している補強層と、を有し、
    前記補強層は、尿素とウレアーゼ生成微生物とセメントとを含有する尿素含有セメント組成物からなる群より選択され、流動性を有し、固化する固化剤で形成された固化層である、盛土構造物。
  2. 支持地盤上に盛土を構築すること、
    前記盛土の天端面と法面とに、尿素とウレアーゼ生成微生物とセメントとを含有する尿素含有セメント組成物からなる群より選択され、流動性を有し、固化する固化剤を付与すること、
    前記固化剤を固化させて、補強層としての固化層を形成すること、
    を含む、盛土構造物の施工方法。
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