JP6697412B2 - 酸化物皮膜形成用材料及びその製造方法 - Google Patents

酸化物皮膜形成用材料及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、太陽電池パネルの透明導電材、ZnO系透明導電材スパッタ膜形成用のシード層(スパッタ膜の下地層)、色素増感型太陽電池電極材、ガスセンサーチップ(検知部)、触媒などを構成する薄膜や厚膜を形成するための材料及びその製造方法に関する。
多結晶シリコンなどの太陽電池パネルは、太陽光から電気エネルギーを取り出す導電体(電極)として機能する透明導電膜を有している。従来、この種の透明導電膜の多くは、ITO(インジウム−スズ酸化物)、ATO(アンチモン−スズ酸化物)、GZO(ガリウム−亜鉛酸化物)、及びAZO(アルミニウム−亜鉛酸化物)などを材料とし、スパッタ法などにより製膜されるのが通常である(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1など)。
特開平7−84274号公報 特開2000−40429号公報
牧野久雄、外5名、「無機ナノシート上に成膜したGa添加ZnO薄膜の構造および電気特性」、第58回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集、社団法人応用物理学会、2011年、P.21−010
しかし、ITO系透明導電膜は、原料となるインジウムが高価であり、製造コストが高くなる。また、ITO系材料の代替材としてATO系材料やAZO系材料などが期待されているが、ATO系材料は着色が生じたり、電気抵抗が大きくなるなどの問題がある。また、GZO系材料やAZO系材料は、スパッタ法による製膜では皮膜の均一性を確保することが難しく、高品質な極薄膜が得られにくい難点があり、膜厚を厚くしないと十分な電気伝導性が得られない。このため従来では、透明導電材としてはITO系材料を用いるのが一般的である。
一方、酸化亜鉛粉末などをペーストやインクとして用いる印刷法などの湿式製膜法が知られており、特に印刷法による製膜技術は、ZnO系透明導電材スパッタ膜形成用のシード層(スパッタ膜の下地層)、色素増感型太陽電池電極材、ガスセンサーチップ、触媒などを構成する薄膜や厚膜を形成するのに好適な技術であるといえる。しかし、従来の印刷法などの湿式製膜法は、スパッタ法のような真空系の装置が不要であるため、安価に製膜できる利点はあるものの、酸化亜鉛の導電性を改善するために、還元性の雰囲気中で焼成したり、焼成に高温を必要とするなどの問題があった。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、透明導電膜やガスセンサーチップなどとして利用できる高品質な酸化物皮膜、特に導電性が良好な酸化物皮膜を安価に製膜することができる酸化物皮膜形成用材料及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、特定の方法により沈殿物として得られる特定の水酸化物(亜鉛アルミニウム酢酸水和物)が、湿式製膜法による製膜用材料として好適であり、この製膜用材料を含む溶液やペーストを基板面に付着させて焼成することにより、導電性の良好な配向性多結晶構造(結晶面の向きが揃った多結晶構造)を有する高品質の酸化物皮膜を安価に製膜できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]Zn2+イオン源として酢酸亜鉛を溶解させた酸性水溶液であって、Zn2+イオンを主成分とし、さらにAl3+イオンを含む酸性水溶液に、中和当量未満のアルカリ水溶液を滴下して亜鉛アルミニウム酢酸水和物の沈殿物を生成させ、該沈殿物を回収することを特徴とする酸化物皮膜形成用材料の製造方法。
[2]上記[1]の製造方法において、酸性水溶液中のZn2+イオン量をm(モル)、Al3+イオン量をn(モル)、該酸性水溶液に滴下するアルカリ水溶液中のOHイオン量をx(モル)とした時、酸性水溶液中の[Zn2+イオン量m(モル)+Al3+イオン量n(モル)]に対するAl3+イオン量n(モル)の割合を0.001〜10%とし、且つ下記(1)式を満足するように酸性水溶液にアルカリ水溶液を滴下することを特徴とする酸化物皮膜形成用材料の製造方法。
0.2X≦x<0.8X …(1)
但し X=2m+3n
[3]上記[2]の製造方法において、酸性水溶液中の[Zn2+イオン量m(モル)+Al3+イオン量n(モル)]に対するAl3+イオン量n(モル)の割合を0.01%以上2%未満とし、且つ下記(2)式を満足するように酸性水溶液にアルカリ水溶液を滴下することを特徴とする酸化物皮膜形成用材料の製造方法。
0.4X≦x≦0.6X …(2)
但し X=2m+3n
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの製造方法において、回収した沈殿物を乾燥し、粉体とすることを特徴とする酸化物皮膜形成用材料の製造方法。
[5]短冊状の層状水酸化物である亜鉛アルミニウム酢酸水和物からなることを特徴とする酸化物皮膜形成用材料。
[6]上記[5]の酸化物皮膜形成用材料において、亜鉛アルミニウム酢酸水和物は、測定されるX線回折ピークがc値=39.1568±0.5206Åで特定される水和物であること特徴とする酸化物皮膜形成用材料。
[7]上記[5]又は[6]の酸化物皮膜形成用材料において、亜鉛アルミニウム酢酸水和物は、沈殿法において沈殿物として得られる水和物であることを特徴とする酸化物皮膜形成用材料。
[8]上記[5]〜[7]のいずれかの酸化物皮膜形成用材料において、ゲル状物質又は該ゲル状物質を乾燥させた粉体であることを特徴とする記載の酸化物皮膜形成用材料。
[9]上記[5]〜[8]のいずれかの酸化物皮膜形成用材料を含む溶液又はペーストを基板面に付着させた後、焼成することにより、基板面に配向性多結晶構造の亜鉛アルミニウム系酸化物皮膜を形成することを特徴とする酸化物皮膜の形成方法。
[10]上記[1]〜[4]のいずれかの製造方法により得られた酸化物皮膜形成用材料を含む溶液又はペーストを基板面に付着させた後、焼成することにより、基板面に配向性多結晶構造の亜鉛アルミニウム系酸化物皮膜を形成することを特徴とする酸化物皮膜の形成方法。
[11]上記[9]又は[10]の形成方法において、酸化物皮膜形成用材料が、ゲル状物質又は該ゲル状物質を乾燥させた粉体であり、該材料を添加した溶液又はペーストを用いることを特徴とする酸化物皮膜の形成方法。
本発明の酸化物皮膜形成用材料は、これを含む溶液やペーストを基板面に付着させて焼成することにより、導電性が良好な配向性多結晶構造を有する高品質・高性能の酸化物皮膜を得ることができ、且つ製膜法は湿式法であるため、目的とする酸化物皮膜を安価に得ることがきる。
また、本発明の製造方法によれば、上記のような酸化物皮膜形成用材料を安定して効率的且つ低コストに製造することができる。
沈殿法により、Zn2+イオン濃度が0.098モル/L、Al3+イオン濃度が0.002モル/Lの酸性水溶液1L([Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合が2%である0.1モル/Lの酸性水溶液1L)に、OHイオン濃度が0.1モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物である亜鉛アルミニウム酢酸水和物のXRDチャートと、XRDライブラリーデータにある亜鉛アルミニウム酢酸水和物(ZnAl(OH)(C・2.6HO))のXRDチャートと、XRDライブラリーデータにある塩基性酢酸亜鉛(Zn(OH)1.58(CHCOO)0.42・0.31HO)のXRDチャート 図1のXRDチャートの主ピーク付近の拡大図 図1にXRDチャートを示した亜鉛アルミニウム酢酸水和物のSEM写真 図1及び図3に示した亜鉛アルミニウム酢酸水和物を含む水溶液をガラス基板上にバーコート法でコーティングした後、焼成して得られた酸化物皮膜のSEM写真 図1及び図3に示した亜鉛アルミニウム酢酸水和物を含む水溶液をガラス基板上にバーコート法でコーティングした後、焼成して得られた酸化物皮膜のXRDチャート 沈殿法により、[Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合が10%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、OHイオン濃度が0.04〜0.23モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物のSEM写真 沈殿法により、Zn2+イオンのみを含む0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、OHイオン濃度が0.02〜0.22モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物のSEM写真 沈殿法により、[Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合が20%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、OHイオン濃度が0.1〜0.24モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物のSEM写真 沈殿法により、[Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合が0〜25%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、それぞれOHイオン濃度が異なるNaOH水溶液1Lを滴下して沈殿物を得る場合において、滴下したNaOH水溶液のOHイオン濃度とZn歩留まりとの関係を示すグラフ 沈殿法により、[Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合が2〜25%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、それぞれOHイオン濃度が異なるNaOH水溶液1Lを滴下して沈殿物を得る場合において、滴下したNaOH水溶液のOHイオン濃度とAl歩留まりとの関係を示すグラフ 沈殿法により、[Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合が2%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、OHイオン濃度が0.04〜0.16モル/LのNaOH水溶液1Lをそれぞれ滴下して得られた沈殿物(亜鉛アルミニウム酢酸水和物)について、XRDチャートのピーク解析により格子定数のc値を求め、そのc値とNaOH水溶液のOHイオン濃度との関係を示すグラフ 沈殿法により、[Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合が0〜33%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、それぞれOHイオン濃度が0.1モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物について、XRDチャートのピーク解析により格子定数のc値を求め、そのc値と酸性水溶液の[Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量n(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合(Al3+イオン添加量)との関係を示すグラフ 沈殿法により、[Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合が0〜25%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、それぞれOHイオン濃度が0.1モル/Lと0.22モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物の粉体(酸化物皮膜形成用材料)を用いて形成した酸化物皮膜について、その体積抵抗率と酸性水溶液の[Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合(Al3+イオン添加量)との関係を示すグラフ
本発明者は、太陽電池パネル用の透明導電膜などに好適な材料(皮膜形成用材料)を見出すべく検討を行った。この材料の製造に関しては、気相法などの乾式法では実現困難な分子サイズでの高い均一性と結晶形状のコントロールを実現するため、湿式法について検討を行った。配向性多結晶体からなる皮膜は、一般的に多結晶体である酸化物バルク(厚膜材料を含む)において単結晶なみの特性発現が期待できると考えられるが、湿式法による結晶形状のコントロールにより、そのような配向性多結晶体の前駆体となる亜鉛アルミ酢酸水和物の合成が期待できる。
具体的には、湿式法の1つである沈殿法によって、配向性多結晶構造を有する酸化物(特に、膜厚が数十nmの薄膜〜数十μm以上の厚膜)を得るための前駆体である亜鉛アルミニウム酢酸水和物を得ること、この前駆体を用いて基板に製膜(塗布・焼成して酸化物皮膜とする)し、所望の性能を有する酸化物皮膜を得ることを狙いとして、以下のような試験、検討を行った。
まず、沈殿法による亜鉛アルミニウム水和物の合成(沈殿物の生成)を以下の試験条件で行った。
Zn2+イオンとAl3+イオンを含む酸性水溶液(以下、便宜上「金属溶液」という場合がある)の作成には、Zn2+イオン源として無水酢酸亜鉛(Zn(CHCOO))、Al3+イオン源として塩基性酢酸アルミニウム2水和物(AlO(CHCOO)・2HO)をそれぞれ用いた。また、アルカリ水溶液(鉱化材)としては、NaOH水溶液を用いた。
金属溶液は、Zn2+イオンとAl3+イオンの合計が0.1モル/L、[Zn2+イオン量(モル)+Al3+イオン量(モル)]に対するAl3+イオン量(モル)の割合(以下、説明の便宜上「Al3+イオン添加量」という)が0〜25%となるように作成した。このときのAl3+イオン添加量(配合水準)を表1に示す。
送液は、金属溶液へのNaOH水溶液の滴下とし、送液速度は1L/1時間とした。NaOH水溶液のOHイオン濃度を、中和当量と考えられる約0.2モル/L前後(0.04〜0.22モル/L)で変化させ、金属溶液1LにNaOH水溶液1Lを滴下して沈殿物を得た。滴下したNaOH水溶液のOHイオン濃度の水準を表2に示す。
沈殿反応後の白色の沈殿物を含む溶液は、6〜24時間撹拌養生した後、吸引濾過で沈殿物を回収した。この沈殿物(ゲル状物質)は、蒸留水を加えて遠心分離により洗浄(3回)した後、30℃での真空乾燥を行うことで乾燥粉を得ることができた。なお、40℃×12hrの乾燥によっても乾燥粉を得ることができた。
以上のようにして得られた沈殿物(固形分)について、XRD(BRUKER社;D8 ADVANCE)による鉱物相の同定、SEM(HITACHI社;S-4300)による形状観察を行った。
表3に、XRDで同定された沈殿物の鉱物相を示す。表3は、金属溶液のAl3+イオン添加量の水準1〜8(表1)とNaOH水溶液のOHイオン濃度の水準a〜h(表2)を組み合わせた各試験で得られた沈殿物の鉱物相をまとめたものである。なお、表3において、符号の順序・文字の大きさは、鉱物相を同定した際の回折強度の大きさを示している。
XRDによる鉱物相の同定では、金属溶液のAl3+イオン添加量が0%の場合、すなわち金属溶液がZn2+イオンのみを含む場合には、OHイオン濃度が0.04〜0.22モル/LのNaOH水溶液の滴下で得られた沈殿物の鉱物相は、OHイオン濃度の低い方から順に、i)亜鉛酢酸水和物(表3では「ZaH」と表記)、ii)水酸化亜鉛(表3では「ZH」と表記)、及びiii)酸化亜鉛(表3では「ZnO」と表記)と同定され、i)とii)の混相、ii)とiii)の混相も、それぞれ中間領域において観察された。
一方、滴下したNaOH水溶液のOHイオン濃度が比較的低い場合(0.16モル/L以下)において、酸性水溶液中にAl3+イオンが添加された場合に得られた沈殿物の鉱物相は、酸性水溶液のAl3+イオン添加量が0.001〜10%の場合には亜鉛アルミニウム酢酸水和物(表3では「ZaH−Al」と表記)と同定され、酸性水溶液のAl3+イオン添加量が10%超の場合にはAl濃度が比較的高い(上記「ZaH−Al」よりも高い)亜鉛アルミニウム酢酸水和物(表3では「ZAH」と表記)と同定された。ここで、「ZAH」は、XRDライブラリーデータにある亜鉛アルミニウム酢酸水和物(ZnAl(OH)(C・2.6HO))に相当する亜鉛アルミニウム酢酸水和物であるのに対し、「ZaH−Al」は短冊状の外形を有する層状構造からなるものであり、従来知られていない新規な亜鉛アルミニウム酢酸水和物であると考えられる。
すなわち、表3に示す沈殿物のうち、Al3+イオン添加量が0.001〜10%である0.1モル/Lの金属溶液1Lに、OHイオン濃度が0.04〜0.16モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物が、本発明材(酸化物皮膜形成用材料)である亜鉛アルミニウム酢酸水和物であり、この亜鉛アルミニウム酢酸水和物は短冊状の外形を有する層状構造(層状水酸化物)を有している。
図1に、沈殿法により、Zn2+イオン濃度が0.098モル/L、Al3+イオン濃度が0.002モル/Lの金属溶液1L(Al3+イオン添加量が2%である0.1モル/Lの金属溶液1L)にOHイオン濃度が0.1モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物である亜鉛アルミニウム酢酸水和物(本発明材)のXRDチャートと、XRDライブラリーデータにある亜鉛アルミニウム酢酸水和物(ZnAl(OH)(C・2.6HO))のXRDチャートと、XRDライブラリーデータにある塩基性酢酸亜鉛(Zn(OH)1.58(CHCOO)0.42・0.31HO)のXRDチャートを示す。図2は、図1のXRDチャートの主ピーク付近の拡大図である。
図1のXRDチャートによれば、本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物は、X線回折による主ピーク(001)の格子定数d=13.30062Åであり、塩基性酢酸亜鉛(主ピーク(001)の格子定数d=14.68000Å)の主ピークに対してはそれよりも高角側に、また、比較的一致性の見られるXRDライブラリーデータにある亜鉛アルミニウム酢酸水和物(主ピーク(001)の格子定数d=11.50000Å)の主ピークに対してはそれよりも低角側に、主ピークが見られる。このことから、本発明材の亜鉛アルミニウム酢酸水和物は、塩基性酢酸亜鉛水和物に属するものであるが、既知(XRDライブラリー)の類似水酸化物の構造とは異なった層状化合物であることが分かる。
本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物の結晶構造は、本来pHの高い条件(高OHイオン濃度)であればOHイオンが入るところに、pHが低い条件(低OHイオン濃度)であるために、不足分を補う形でCHCOOイオンが入るものと考えられる。その結晶構造は、LDH(Layered Double Hydroxide)とは異なり、OH以外の陰イオンが層間ではなく基本層に入った構造となった塩基性塩のものと考えられる。考えられる組成(但し、アルミニウムを除いた組成)としては、Znx(CHCOO)y(OH)zにおいてx:y:z=2:1:3であるが、本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物においては、OHイオン濃度が低いことから、2:1+α:3−αであると推定される。図1にXRDチャートを示した塩基性酢酸亜鉛(Zn(OH)1.58(CHCOO)0.42・0.31HO)は、XRDライブラリーデータからは組成比がx:y:z=2:0.86:3.16で与えられており、本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物よりもOHイオン濃度が高い条件で得られるものと推定される。
図3に、図1にXRDチャートを示した本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物(沈殿物を真空乾燥して得られた粉体)のSEM写真を示す。XRDライブラリーに示されるZn(OH)1.58(CHCOO)0.42・0.31HOやハイドロタルサイト((Mg0.667Al0.333)(OH)(CO0.167(HO)0.5;Magnesium Aluminum Hydroxide Carbonate Hydrate)などの層状水酸化物(層状複水酸化物)は、鱗片状の粒子として観察されることが多いが、本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物は特徴的な短冊状の外形を有する層状構造となっていることが分かる。
図1及び図3に示された本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物の水溶液(固形分比率30質量%の水溶液)を、バーコート法でガラス基板面に塗布し、100℃で乾燥した後、大気中900℃×4hrの焼成を行い、酸化物皮膜を得た。製膜するのに用いたガラス基板(コーニング社製#1737)はアセトンで表面を洗浄したものを用いた。また、水溶液塗布用のバーコーターとしては、ヨシミツ精機社製「YBA-1型」を用いた。
酸化物皮膜を形成したガラス基板を切断加工し、酸化物皮膜について、SEMによる表面の観察と、XRDによる鉱物相の同定(結晶性調査)を行った。酸化物皮膜のSEM写真を図4に示す。これによれば、酸化物皮膜は、原材料(前駆体)である亜鉛アルミニウム酢酸水和物の短冊形状の痕跡が残り、表面は凹凸が大きく、ポーラスな構造であることが分かる。
上記酸化物皮膜の鉱物相をXRDで同定した結果(XRDチャート)を図5に示す。これによれば、六方晶系ZnOの3本の主ピーク(100)、(002)及び(101)に相当するピークが見られるが、(002)のピーク強度が著しく大きいことが分かる。バーコート法で形成した皮膜は、膜厚が比較的厚いことや表面の凹凸が大きいことから、皮膜の厚さ方向の情報も採取され、(100)及び(101)面の情報も混在したものと考えられる。
短冊状の亜鉛アルミニウム酢酸水和物をガラス基板上に塗布し、焼成したものは、図4のSEM写真からも分かるように、焼成後も短冊形状を有しており、またXRDの情報からは、(002)面、すなわちc面が強調される構造となっていることが分かる。c面が並んだ状態、すなわちc軸がガラス基板に直立した状態となっているものと考えられる。以上のことから、本発明材である短冊形状の亜鉛アルミニウム酢酸水和物(前駆体)により、ガラス基板などの上で配向性多結晶構造の酸化物皮膜が得られることが分かった。
図1のXRDチャートによれば、本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物のX線回折ピークは、層状水酸化物である塩基性酢酸亜鉛(Zinc Acetate Hydrate;格子定数はa値=3.14700,c値=4.76900)に対して、高角度側に主ピークが見られるだけでなく、a値=3.1016±0.0306Å,c値=39.1568±0.5206Åとなっており、a値は近い値を持つものの、c値は大きく異なっている。本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物は、既知の塩基性酢酸亜鉛およびXRDライブラリーデータにある亜鉛アルミ酢酸水和物(Zinc Aluminum Acetate Hydrate;ZnAl(OH)(C・2.6HO)、6方晶系、a値=3.07850、c値=38.1677)の構造とは異なった層状化合物であることが分かる。
次に、本発明の酸化物皮膜形成用材料(亜鉛アルミニウム酢酸水和物)の製造方法について詳細を説明する。
この酸化物皮膜形成用材料は、Zn2+イオン源として酢酸亜鉛を溶解させた酸性水溶液であって、Zn2+イオンを主成分とし、さらにAl3+イオンを含む酸性水溶液に、中和当量未満のアルカリ水溶液を滴下し、その水溶液を中和当量よりも低いpH(通常、pH6.0〜7.8程度)に維持することで亜鉛アルミニウム酢酸水和物の沈殿物を生成させ、この沈殿物を回収することにより得ることができる。
酸性水溶液のAl3+イオン源には、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどを用いることができ、これらの1種以上を水溶液に溶解させる。また、アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などの1種以上を用いることができる。
本発明の製造方法のより具体的な条件としては、使用する酸性水溶液中のZn2+イオン量をm(モル)、Al3+イオン量をn(モル)、この酸性水溶液に滴下するアルカリ水溶液中のOHイオン量をx(モル)とした時、酸性水溶液中のAl3+イオン添加量(すなわち[Zn2+イオン量m(モル)+Al3+イオン量n(モル)]に対するAl3+イオン量n(モル)の割合)を0.001〜10%とし、且つ下記(1)式を満足するように酸性水溶液にアルカリ水溶液を滴下することが好ましい。
0.2X≦x<0.8X …(1)
但し X=2m+3n
また、酸性水溶液中のAl3+イオン添加量を0.01%以上2%未満とし、且つ下記(2)式を満足するように酸性水溶液にアルカリ水溶液を滴下することがより好ましい。
0.4X≦x≦0.6X …(2)
但し X=2m+3n
ここで、本発明法で用いる酸性水溶液は、Zn2+イオンを主成分とし、Al3+イオンを含むpH6.0〜7.5程度の水溶液であり、また、アルカリ水溶液はpH12.0〜14.0程度の水溶液である。
アルカリ水溶液中のOHイオン量x(モル)は、上記のように酸性水溶液のZn2+イオン量m(モル)とAl3+イオン量n(モル)によって規定される。一方、酸性水溶液のZn2+イオンとAl3+イオンの合計濃度(m+nモル/L)については、特に制限はないが、0.05〜0.5モル/L程度が好ましい。Zn2+イオンとAl3+イオンの合計濃度が0.05モル/L未満では生産性が低く、一方、0.5モル/Lを超えると、沈殿物が高濃度、高粘性となるため撹拌養生に支障をきたすおそれがあり、また、沈殿物の均一性(沈殿物凝集粒のサイズなど)も低下することが懸念される。但し、撹拌養生の撹拌力や反応容器の形状・サイズなどについて十分な検討・配慮をすれば、0.5モル/Lを超える合計濃度(m+nモル/L)とすることも可能である。
なお、上記(1)式(好ましくは上記(2)式)を満足するように酸性水溶液にアルカリ水溶液を滴下した場合の水溶液のpHは特に限定されないが、目安として、通常、上記(1)式を満足することにより水溶液がpH6.0〜7.8程度に維持される。
本発明の製造方法の特徴は、Zn2+イオン源として酢酸亜鉛を溶解させた酸性水溶液であって、Zn2+イオンを主成分とし、さらにAl3+イオンを含む酸性水溶液に対して、中和当量未満のアルカリ水溶液を加えること、すなわち、酸性水溶液の中和に必要なOHイオンよりも少ない量のOHイオンが供給されるようにアルカリ水溶液を加えることで、短冊状の水酸化物(亜鉛アルミニウム酢酸水和物)の沈殿物を生成させる点にある。先に述べたように、この水酸化物の結晶構造は、本来pHの高い条件(高OHイオン濃度)であればOHイオンが入るところに、pHが低い条件(低OHイオン濃度)であるために、不足分を補う形でCHCOOイオンが入ることで得られるものと考えられる。
さきに説明したように、表3は、Zn2+イオン源として酢酸亜鉛を溶解させた酸性水溶液であって、Zn2+イオンを主成分とし、さらにAl3+イオンを含む酸性水溶液にアルカリ水溶液を滴下して沈殿物を得る際に、酸性水溶液のAl3+イオン添加量と滴下するアルカリ水溶液中のOHイオン濃度を表1及び表2の水準で変化させて得られた沈殿物の鉱物相を示している。
図6〜図8に、表3に示した沈殿物と同じく、沈殿法により、Al3+イオン添加量が異なる金属溶液1LにOHイオン濃度が異なるNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物のSEM写真を示す。なお、各SEM写真に表示した数値は、使用したNaOH水溶液のOHイオン濃度(モル/L)である。
図6は、Al3+イオン添加量が10%である0.1モル/Lの金属溶液1LにOHイオン濃度が異なるNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物であり、このうちOHイオン濃度が0.04〜0.16モル/LのNaOH水溶液を滴下して得られた沈殿物(通常、沈殿物が生じる水溶液のpHは6.0〜7.8程度)は、短冊状の亜鉛アルミニウム酢酸水和物である。また、そのなかで、NaOH水溶液のOHイオン濃度が高いほどZn歩留まりが高くなり、OHイオン濃度が0.06〜0.16モル/LのNaOH水溶液を滴下して得られた沈殿物(通常、沈殿物が生じる水溶液のpHは6.5〜7.8程度)は、特に高いZn歩留まりが得られる(ほぼ60%以上)。これに較べて、OHイオン濃度が0.04モル/LのNaOH水溶液を滴下して得られた沈殿物(通常、沈殿物が生じる水溶液のpHは6.0程度)は、沈殿物の生成が少なくなり、Zn歩留まりが低くなる。
これに対して高アルカリ合成条件、すなわち、OHイオン濃度が0.18モル/LのNaOH水溶液を滴下して得られた沈殿物(通常、沈殿物が生じる水溶液のpHは11程度)は、六角鱗片状の水酸化亜鉛及び六角鱗片状の結晶が集積した正八面体構造を有する水酸化亜鉛が主体で、これと粒状の酸化亜鉛との混相となる。さらに、OHイオン濃度が0.20モル/L以上のNaOH水溶液を滴下して得られた沈殿物(通常、沈殿物が生じる水溶液のpHは12以上)は、粒状の酸化亜鉛が主体で、これと六角鱗片状の水酸化亜鉛及び六角鱗片状の結晶が集積した正八面体構造を有する水酸化亜鉛との混相となる。
一方、図7は、Al3+イオン添加量が0%、すなわちZn2+イオンのみを含む0.1モル/Lの金属溶液1LにOHイオン濃度が異なるNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物である。このうち、OHイオン濃度が0.04〜0.16モル/LのNaOH水溶液を滴下して得られた沈殿物は、亜鉛酢酸水和物であるが、図6の短冊状の亜鉛アルミニウム酢酸水和物と同様、短冊状の外形を有する。
また、図8は、Al3+イオン添加量が20%である0.1モル/Lの金属溶液1LにOHイオン濃度が異なるNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物である。このうちOHイオン濃度が0.1〜0.175モル/LのNaOH水溶液を滴下して得られた沈殿物は、亜鉛アルミニウム酢酸水和物ではあるが、図6の亜鉛アルミニウム酢酸水和物のような短冊状ではない。
ここで、図6において、短冊状の亜鉛アルミニウム酢酸水和物が得られるNaOH水溶液のOHイオン濃度が0.04〜0.16モル/Lの場合、酸性水溶液中のZn2+イオン量m(モル)、Al3+イオン量n(モル)と、この酸性水溶液に滴下するアルカリ水溶液中のOHイオン量x(モル)は、上記(1)式、すなわち0.2X≦x<0.8X(但し、X=2m+3n)の関係になる。したがって、本発明では、上記(1)式を満足するように酸性水溶液にアルカリ水溶液を滴下することが好ましい。
また、短冊状の亜鉛アルミニウム酢酸水和物が得られるAl3+イオン添加量については、(i)図6はAl3+イオン添加量が10%であること、(ii)図3の短冊状の亜鉛アルミニウム酢酸水和物はAl3+イオン添加量が2%であること、(iii)表3によれば、Al3+イオン添加量が0.001〜10%において亜鉛アルミニウム酢酸水和物が得られていること、(iv)Al3+イオン添加量が0%の図7の場合でも、OHイオン濃度が0.04〜0.16モル/LのNaOH水溶液を滴下して得られた沈殿物(亜鉛酢酸水和物)は、図6の短冊状の亜鉛アルミニウム酢酸水和物と同様、短冊状であること、などの点からして、酸性水溶液の好適なAl3+イオン添加量は0.001〜10%であると考えられ、このAl3+イオン添加量の範囲とすることが好ましい。
また、図6のなかで、特に異相を含まない短冊状の亜鉛アルミニウム酢酸水和物が安定的に得られるNaOH水溶液のOHイオン濃度は0.08〜0.12モル/Lであり、この場合、酸性水溶液中のZn2+イオン量m(モル)、Al3+イオン量n(モル)と、この酸性水溶液に滴下するアルカリ水溶液中のOHイオン量x(モル)は、上記(2)式、すなわち0.4X≦x≦0.6X(但し、X=2m+3n)の関係になる。したがって、本発明では、上記(2)式を満足するように酸性水溶液にアルカリ水溶液を滴下することが、より好ましい。
また、酸化物皮膜としたときにスピネルの生成がなく、電気伝導度が特に高くなるのは(後述する図13参照)、酸性水溶液のAl3+イオン添加量が0.01%以上2%未満の場合であり、このため、酸性水溶液のAl3+イオン添加量は0.01%以上2%未満とすることがより好ましい。
表4に、表3に示した沈殿物(金属溶液のAl3+イオン添加量の水準1〜8とNaOH水溶液のOHイオン濃度の水準a〜hを組み合わせた各試験で得られた沈殿物)を900℃で焼成して得られた焼成体について、XRDにより鉱物相を同定した結果を示す。表4によれば、NaOH水溶液のOHイオン濃度に関わりなく、金属溶液のAl3+イオン添加量が2%未満の場合には、焼成体はZnOの単相(表4では「ZnO」と表記)となる。これに対して、金属溶液のAl3+イオン添加量が2%以上になると、焼成体にはスピネル相であるZnAl(表4では「Sp」と表記)が含まれるようになり、Al3+イオン添加量が多くなるほどスピネル相の割合が高くなる。このスピネル相は絶縁体であるため酸化物皮膜の電気伝導性を低下させるので、酸化物皮膜の電気伝導性を確保する観点からは、金属溶液のAl3+イオン添加量は2%未満好ましい。なお、表4において、「Sp」の文字の大きさは、鉱物相を同定した際の回折強度の大きさを示している。
図9は、沈殿法により、Al3+イオン添加量が0〜25%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、それぞれOHイオン濃度が異なるNaOH水溶液1Lを滴下して沈殿物を得る場合において、滴下したNaOH水溶液のOHイオン濃度とZn歩留まり(溶液中のZn2+イオンが沈殿物となった質量割合)との関係を調べたものである。また、図10は、沈殿法により、Al3+イオン添加量が2〜25%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、それぞれOHイオン濃度が異なるNaOH水溶液1Lを滴下して沈殿物を得る場合において、滴下したNaOH水溶液のOHイオン濃度とAl歩留まり(溶液中のAl3+イオンが沈殿物となった質量割合)との関係を調べたものである。
図9に示されるように、Zn歩留まりを60%以上とするにはNaOH水溶液のOHイオン濃度が約0.08モル/L以上(すなわちx≧0.4X)であればよいことが分かる。また、NaOH水溶液のOHイオン濃度が約0.18モル/L以上(すなわちx≧0.9X)ではZn歩留まりは100%に近くなるが、さきに述べたように、沈殿物は六角鱗片状の水酸化亜鉛及び六角鱗片状の結晶が集積した正八面体構造を有する水酸化亜鉛となるか、或いは六角鱗片状の水酸化亜鉛及び六角鱗片状の結晶が集積した正八面体構造を有する水酸化亜鉛と粒状の酸化亜鉛の混相となるか、或いは粒状の酸化亜鉛となってしまい、本発明材である短冊状水酸化物(亜鉛アルミニウム酢酸水和物)が得られなくなる。
また、Al歩留まりについては、図10に示されるように、NaOH水溶液のOHイオン濃度が約0.22モル/L未満であれば歩留まり100%が得られる。
また、先に述べたように、本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物は格子定数のc値が既知の塩基性酢酸亜鉛と大きく異なっており、このc値と亜鉛アルミニウム酢酸水和物の生成条件や短冊形状との関係を調べた。
沈殿法により、Al3+イオン添加量が2%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、OHイオン濃度が0.04〜0.16モル/LのNaOH水溶液1Lをそれぞれ滴下して得られた沈殿物(亜鉛アルミニウム酢酸水和物)について、XRDチャートのピーク解析により格子定数のc値を求めた。このc値とNaOH水溶液のOHイオン濃度との関係を図11に示す。
また、沈殿法により、Al3+イオン添加量が0〜25%である0.1モル/Lの酸性水溶液1Lに、それぞれOHイオン濃度が0.1モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物(亜鉛酢酸水和物、亜鉛アルミニウム酢酸水和物)について、XRDチャートのピーク解析により格子定数のc値を求めた。このc値と酸性水溶液のAl3+イオン添加量との関係を図12に示す。なお、図12において右端の3点は、Al3+イオン添加量が20%、25%、33%の点であり、このうち33%の点のc値は、XRDデータベースからの引用値である。
図11に示すように、酸性水溶液のAl3+イオン添加量が2%の場合において、OHイオン濃度が0.04〜0.16モル/LのNaOH水溶液を滴下して得られた沈殿物(亜鉛アルミニウム酢酸水和物)は、格子定数のc値がc=39.1568±0.5206Åの範囲である。一方、図12に示すように、Al3+イオン添加量が10%以下では、Al3+イオン添加量が変化しても格子定数のc値はc=39.1568±0.1229Åの範囲となり、OHイオン濃度の変化によるバラツキよりも小さくなる。したがって、本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物におけるAlは、Znサイトを置換したのか、亜鉛酢酸水和物の構造中に侵入したものか、或いは亜鉛酢酸水和物にアモルファスとして析出・付着したものなのかは、必ずしも明らかではないが、亜鉛とアルミニウムからなる酢酸水和物の鉱物相は、Al3+イオン添加量が10%以下では、格子定数の変化はAl3+イオン添加量には依存せず変化も少なく、添加するアルカリ量(OHイオン濃度)のみに依存していることが分かる。
したがって、本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物を特徴づける短冊形状の沈殿物は、測定されるX線回折ピークがc値=39.1568±0.5206Åで特定される水和物(格子定数のc値がc=39.1568±0.5206Åの水和物)であるということができる。
本発明の製造方法では、Zn2+イオン源として酢酸亜鉛を溶解させた酸性水溶液であって、Zn2+イオンを主成分とし、さらにAl3+イオンを含む酸性水溶液に、中和当量未満のアルカリ水溶液を滴下して亜鉛アルミニウム酢酸水和物の沈殿物を生成させ、この沈殿物を回収し、酸化物皮膜形成用材料(製品)とする。一般に、この酸化物皮膜形成用材料の形態は、沈殿状態から回収されたゲル状物質又はこのゲル状物質を乾燥(例えば真空乾燥など)させたものとなる。具体的には、(i)水溶液中から回収されたゲル状物質(沈殿物)を洗浄してウエットな状態のままで酸化物皮膜形成用材料とする、(ii)ゲル状物質を洗浄したものを乾燥させた粉体(乾燥粉)を酸化物皮膜形成用材料とする、などの利用形態があるが、これに限定されるものではない。
本発明の製造方法において、酸性水溶液にアルカリ水溶液を滴下した後、水溶液から沈殿物を回収するまでの操作や、沈殿物の回収方法については、特に制限はなく、一般的な方法でよい。
また、水溶液から回収された沈殿物(ゲル状物質)を乾燥させるには、送風乾燥機などのような一般的な乾燥手段を用いてもよいし、真空乾燥手段を用いてもよい。
上記のようにして製造された本発明の皮膜形成用材料により、基板面に皮膜(酸化物)を形成することができる。すなわち、その皮膜形成用材料を含む溶液又はペーストを、基板面に付着させた後、焼成することで皮膜を形成することができる。上述したように、皮膜形成用材料である水酸化物(亜鉛アルミニウム酢酸水和物)は、通常、沈殿状態から回収されたゲル状物質又はこのゲル状物質を乾燥させた粉体であり、このようなゲル状物質又は粉体を水などの溶媒に溶解又は分散させ、この溶液(或いは固形分が高濃度なペースト)を基板面にコーティング(あるいは印刷)した後、焼成する。コーティング法は、形成しようとする皮膜厚などに応じて、スクリーン印刷法、ディップコート法、バーコード法など任意の方法を採ることができる。焼成温度は、一般に250℃〜1100℃程度が適当である。これにより基板面に配向性多結晶構造の亜鉛アルミ複酸化物皮膜を形成することができる。
また、溶液をコーティングした後、40〜100℃程度の温度で乾燥させ、しかる後、焼成するようにしてもよい。また、ペーストの場合には、200〜400℃程度の温度でペースト化のために配合されている高分子材料などを分解・除去した後、焼成するようにしてもよい。
表3に示す沈殿物のうち、Al3+イオン添加量が異なる0.1モル/Lの金属溶液1LにOHイオン濃度が0.1モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物と、Al3+イオン添加量が異なる0.1モル/Lの金属溶液1LにOHイオン濃度が0.22モル/LのNaOH水溶液1Lを滴下して得られた沈殿物について、これを乾燥させて酸化物皮膜形成用材料(粉体)とし、この酸化物皮膜形成用材料を水に分散させた溶液(固形分比率30質量%)をバーコート法でガラス基板に塗布し、100℃で乾燥させた後、900℃×4hrで焼成し、酸化物皮膜を得た。
この酸化物皮膜について、薄膜抵抗測定器(三菱化学アナリテック社製;ロレスタGP MCP−T610)を用いて体積抵抗率を測定した。図13はその結果を示すもので、金属溶液のAl3+イオン添加量(対数メモリ)と酸化物皮膜の体積抵抗率(対数メモリ)との関係を示している。
図13によれば、いずれのOHイオン濃度においても、Al3+イオン添加量が0.01%以上0.2%未満の範囲で体積抵抗率が低下しているが、OHイオン濃度0.22モル/Lの場合に較べて、OHイオン濃度0.1モル/Lの方が全体としての体積抵抗率が低く、しかもAl3+イオン添加量0.01%以上0.2%未満の範囲での体積抵抗率の低下が顕著である。ここで、OHイオン濃度0.1モル/L、Al3+イオン添加量0.001〜10%(好ましくは0.01%以上2%未満)で得られる沈殿物が本発明材である亜鉛アルミニウム酢酸水和物であるが、図13によれば、本発明材である亜鉛アルミ酢酸水和物は、電気伝導性においての優位性が認められる。これは、高アルカリ合成条件(OHイオン濃度0.22モル/L)で得られた比較材による酸化物皮膜はランダムな粒子状となるのに対して、本発明材である亜鉛アルミ酢酸水和物による酸化物皮膜は、先に述べたような配向性多結晶構造が実現されることによって、導電性に優れる6方晶系ZnOのc面がガラス基板と並行に有意差をもって形成されることによるものと考えられる。
なお、いずれのOHイオン濃度においても、Al3+イオン添加量がほぼ0.02%まではAl3+イオン添加量の増加とともに体積抵抗率が低下するが、Al3+イオン添加量が0.02%を超えると体積抵抗率が増加する傾向にあるが、これは、Al3+イオン添加量が多くなると、粒界に高抵抗であるスピネルが形成されるためであると考えられる。
本発明の皮膜形成用材料(前駆体)により形成される皮膜は、太陽電池パネルの透明導電材、ZnO系透明導電材スパッタ膜形成用のシード層(スパッタ膜の下地層)、色素増感型太陽電池電極材、ガスセンサー、触媒などとして好適なものである。
ZnOは、六方晶系ウルツ鉱型結晶であり、光透過性に優れるc軸方向(c面に直交)と電気伝導性に優れるc面方向を有する結晶構造である。本発明材である前駆体水酸化物(亜鉛アルミニウム酢酸水和物)を用いることで、製膜する基板において、c軸が基板と直交し、c面が基板と平行となる配向性多結晶体を得ることができる。
また、本発明では適度なAl添加により電気伝導性と焼結粒子サイズの制御も可能であると考えられることから、二次元のポーラス構造を利用したガスセンサーチップに好適であると考えられる。

Claims (2)

  1. 短冊状の層状水酸化物である亜鉛アルミニウム酢酸水和物からなり、該亜鉛アルミニウム酢酸水和物は、測定されるX線回折ピークがc値=39.1568±0.5206Åで特定される水和物であること特徴とする酸化物皮膜形成用材料。
  2. 請求項1に記載の酸化物皮膜形成用材料を含む溶液又はペーストを基板面に付着させた後、焼成することにより、基板面に配向性多結晶構造の亜鉛アルミニウム系酸化物皮膜を形成することを特徴とする酸化物皮膜の形成方法。
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