JP6696377B2 - 電波発信源位置推定システム - Google Patents

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Description

本発明は、電波発信源位置推定システムに関し、特に、複数の到来波角度測定装置を備えた電波発信源位置推定システムに関する。
特許文献1、特許文献2、非特許文献1など、電波の到来角度である到来波角度を測定できる到来波角度測定装置が種々知られている。設置位置が既知の2台以上の到来波角度測定装置で到来波角度が測定できれば、幾何学的な計算で電波発信源の位置を推定できる。
特開2015−034808号公報 特開2016−8913号公報
Chang, H.-L., Tian, J.-B., Lai, T.-T., Chu, H.-H., and Huang, P., Spinning beacons for precise indoor localization, to appear in ACM Sensys ‘08.
しかし、マルチパスが存在し、到来波角度測定装置に、直接波だけでなく間接波も検出されることもある。よって、到来波角度測定装置は、電波発信源が1つであっても、複数の到来波角度を測定することがある。
間接波の到来方向は電波発信源が存在する方向ではないので、間接波の到来波角度の方向に電波発信源があると推定してしまうと、誤った電波発信源の位置を推定してしまうことになる。
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、間接波の到来波角度の方向に電波発信源があると推定してしまうことを抑制できる電波発信源位置推定システムを提供することにある。
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、発明の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
上記目的を達成するための請求項1に係る発明は、電波を受信し、受信した電波の到来角度である到来波角度を測定する到来波角度測定装置(1)を複数備え、複数の到来波角度測定装置が測定した複数の到来波角度に基づいて、電波発信源(300)の位置を推定する電波発信源位置推定システムであって、
到来波角度測定装置から、その到来波角度測定装置が測定した複数の到来波角度でそれぞれ延ばした直線である到来波角度線(L)を到来波角度測定装置毎に作成した場合に、複数の到来波角度線が交差する点を、電波発信源の位置の候補である位置候補点に決定する候補点決定部(240)と、
到来波角度測定装置の周囲の電波反射物配置を記憶している記憶部(220)と、
候補点決定部が決定した位置候補点が電波発信源の位置であるとした場合に、到来波角度測定装置が受信すると想定される電波の到来波角度である想定到来波角度を、記憶部に記憶されている到来波角度測定装置の周囲の電波反射物配置と、位置候補点の位置とに基づいて決定する想定到来波角度決定部(250)と、
想定到来波角度と到来波角度測定装置が測定した到来波角度とが最も一致する位置候補点の位置を、電波発信源の位置とする位置推定部(260)とを備える。
本発明では、到来波角度測定装置を複数備え、それら複数の到来波角度測定装置が測定した複数の到来波角度に基づいて電波発信源の位置を推定する。課題で説明したように、到来波角度測定装置は、電波発信源が1つであっても、複数の到来波角度を推定することがある。
そこで、本発明では、電波発信源の位置の候補である位置候補点を決定する。位置候補点は、到来波角度測定装置から、その到来波角度測定装置が測定した複数の到来波角度でそれぞれ延ばした直線である到来波角度線が交差する点である。
また、本発明では、到来波角度測定装置の周囲の電波反射物配置を予め記憶している。位置候補点が決定でき、かつ、到来波角度測定装置の周囲の電波反射物配置が分かれば、位置候補点にある電波発信源から到来波角度測定装置が受信すると想定される電波の到来波角度である想定到来波角度を幾何学的に決定することができる。想定到来波角度決定部は、この想定到来波角度を、候補点決定部が決定した位置候補点に対して決定する。
想定到来波角度と、到来波角度測定装置が測定した到来波角度とが最も一致するのは、位置候補点の位置が電波発信源の位置に相当する場合である。そこで、想定到来波角度と到来波角度測定装置が測定した到来波角度とが最も一致する位置候補点を、電波発信源の位置とする。このようにして電波発信源の位置を推定するので、間接波の到来波角度の方向に電波発信源があると推定してしまうことを抑制できる。
また、位置推定部は、到来波角度測定装置が測定した到来波角度の測定誤差が予め決定された誤差分布に従い、且つ、位置候補点が電波発信源の位置であるとした場合に、想定到来波角度決定部が決定した想定到来波角度の値が、到来波角度測定装置により測定される確率が最も高い位置候補点を、電波発信源の位置とする。
到来波角度測定装置が測定する到来波角度には、当然、測定誤差がある。この測定誤差の分布は、電波発信源を既知の位置に配置して到来波角度の測定を重ねることで決定しておくことができる。そこで、位置推定部は、到来波角度測定装置が測定する到来波角度の測定誤差が予め決定された誤差分布に従うとして、位置候補点が電波発信源の位置であるとした場合に、想定到来波角度の値が到来波角度測定装置により測定される確率を位置候補点別に計算する。そして、この確率が最も高い位置候補点を電波発信源の位置とするので、到来波角度測定装置が測定する到来波角度に測定誤差があっても、間接波の到来波角度の方向に電波発信源があると推定してしまうことを、より抑制できる。
上記確率は、たとえば、請求項のように確率密度関数を用いて算出する。その請求項3に係る発明では、記憶部に、到来波角度測定装置毎の誤差分布が反映され、位置候補点が電波発信源の位置であるとした場合に、想定到来波角度決定部が決定した想定到来波角度の値が、到来波角度測定装置により測定される到来波角度となる確率を算出する確率密度関数が記憶されており、
位置推定部は、記憶部に記憶されている確率密度関数に、到来波角度測定装置が測定した到来波角度と、想定到来波角度決定部が決定した想定到来波角度とを代入することで確率を算出する。
請求項に係る発明では、記憶部には、電波発信源が存在する可能性がある領域である存在可能領域が記憶されており、
想定到来波角度決定部は、記憶部に記憶されている存在可能領域の外である位置候補点は除外して想定到来波角度を決定する。
本発明によれば、存在可能領域の外である位置候補点は除外して想定到来波角度を決定するので、想定到来波角度決定部および位置推定部における計算量を少なくすることができる。
本発明が適用された電波発信源位置推定システムの構成図である。 無線タグリーダ1の構成を示す図である。 図2の到来波角度決定部230、候補点決定部240、想定到来波角度決定部250、位置推定部260が実行する処理を示すフローチャートである。 到来波角度θ、到来波角度線L、位置候補点Cを例示する図である。 位置候補点Cについての想定到来波角度φ6nを例示する図である。 位置候補点Cが無線タグ300の位置ではない場合に、到来波角度線Lと想定進行方向線VLとが一致しないことを示す図である。 位置候補点Cが無線タグ300の位置である場合、到来波角度線Lと想定進行方向線VLは一致することを示す図である。 3台の無線タグリーダ1を備えた電波発信源位置推定システムを示す図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態の電波発信源位置推定システムは、2台の無線タグリーダ1A、1Bと無線タグ300を備えている。無線タグリーダ1A、1Bは、後述する信号処理部200の機能を除き、互いに同じ構成である。また、無線タグリーダ1A、1Bは互いに接続されている。接続手段は有線でも無線でもよい。これら2台の無線タグリーダ1A、1Bを区別しないときは、無線タグリーダ1と表記する。無線タグリーダ1は、請求項の到来波角度測定装置としての機能を備える。
無線タグ300は、電波発信源であり、予め設定された一定の搬送波周波数fの無変調波を送信する。この無線タグ300はアクティブ型であり、電波は連続的に送信してもよいが、電池寿命の点で、断続的に電波を送信することが好ましい。無線タグ300は人に携帯されるものであり、衣服のポケットに容易に収容可能な大きさである。
無線タグリーダ1は、部屋Rに設置されている。2台の無線タグリーダ1A、1Bは、いずれも、部屋R内に無線タグ300がある場合に、その無線タグ300からの電波を受信できる指向性を有する。
部屋Rの形状は、平面図で矩形状であり、4つの壁W1、W2、W3、W4を備える。ただし、この部屋Rの形状は、説明を簡単にするためであり、種々の形状とすることができる。無線タグリーダ1は、この部屋Rの1つの壁W1の両端に設置されている。無線タグリーダ1の形状は、図1では扇型としているが、その他の種々の形状であってもよい。
図2に無線タグリーダ1の構成を示す。図2に示すように、無線タグリーダ1は、受信部100と、信号処理部200とを備え、受信部100は、アンテナ部110と、低周波信号生成部120とを備える。
[アンテナ部110の説明]
アンテナ部110は、アンテナ111、回転盤112、駆動部113を備える。アンテナ111は、回転盤112の外周縁に固定される。アンテナ111の形状および大きさは、無線タグ300が送信する無変調波を受信でき、回転盤112において回転中心以外の場所に固定できる大きさであれば、それ以外に制限はない。
回転盤112は、駆動部113によって回転させられる。回転盤112の形状は円盤形状に限らないが、駆動部113に対して偏心していないことが望ましい。回転盤112は、室内にも容易に設定できる大きさになっている。たとえば、直径10cmの円盤である。回転盤112が回転すると、その上に固定されているアンテナ111も同時に回転する。
駆動部113は、モーターを備えた構成であり、一定周期で回転盤112を回転させる。この一定周期は、確保したいドップラーシフトから定まるアンテナ111の回転速度と、アンテナ111の回転半径から定める。
[低周波信号生成部120の説明]
低周波信号生成部120は、バンドパスフィルタ121、局部発振器122、ミキサ123、ローパスフィルタ124、A/D変換器125、位相シフト器126、ミキサ127、ローパスフィルタ128、A/D変換器129を備えている。
バンドパスフィルタ121は、無線タグ300が送信する電波の周波数を中心として、アンテナ111が回転することにより生じるドップラーシフトから定まる周波数域を通過周波数帯域としている。このバンドパスフィルタ121には、アンテナ111が受信した受信信号が入力され、この受信信号からノイズを除去する。なお、受信信号がアンテナ111からバンドパスフィルタ121に送られる伝送路上において、回転盤112とともに回転する回転側伝送路の一端と、その一端に対向する非回転側伝送路の一端との間は、アンテナパターンを対向させて無線により伝送している。ただし、無線による伝送に代えて、スリップリングを用いてもよい。
局部発振器122は、無線タグ300が送信する搬送波周波数fと同じ周波数の局部発振信号を生成する。ミキサ123は、局部発振信号と、バンドパスフィルタ121が出力した信号を混合して、局部発振信号の周波数とバンドパスフィルタ121が出力した周波数との和の周波数および差の周波数の信号を出力する。
ローパスフィルタ124は、ミキサ123が出力した信号から、局部発振信号の周波数とバンドパスフィルタ121が出力した周波数の差の周波数の信号を抽出する。局部発振信号の周波数が、無線タグ300が送信する搬送波周波数fと同じ周波数であることから、ローパスフィルタ124が抽出する信号は、中心周波数が0Hzとなっている。このローパスフィルタ124が出力する信号を、以下、I成分信号という。A/D変換器125は、ローパスフィルタ124が抽出したアナログ信号であるI成分信号をデジタル信号に変換する。
位相シフト器126は、局部発振信号の位相を90°シフトさせる。ミキサ127は、位相シフト器126により90°位相がシフトされた局部発振信号と、バンドパスフィルタ121が出力した信号とを混合する。ローパスフィルタ128は、ミキサ127が出力した信号から、局部発振信号の周波数とバンドパスフィルタ121が出力した周波数の差の周波数の信号を抽出する。ただし、ローパスフィルタ128が出力する信号は、I成分信号に対して90°位相がずれている。ローパスフィルタ128が出力する信号を、以下、Q成分信号という。このQ成分信号も中心周波数は0Hzとなっている。A/D変換器129は、ローパスフィルタ128が抽出したアナログ信号であるQ成分信号をデジタル信号に変換する。
[信号処理部200の説明]
信号処理部200は、いずれも不図示のCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータである。信号処理部200は、CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMなどの記録媒体に記憶されているプログラムを実行することで、信号取得部210、到来波角度決定部230、候補点決定部240、想定到来波角度決定部250、位置推定部260として機能する。また、信号処理部200は記憶部220を備える。なお、信号処理部200が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
信号取得部210は、A/D変換器125、129からI成分信号、Q成分信号を取得して、取得した信号を記憶部220に格納する。無線タグ300は無変調波を送信している。しかし、アンテナ111は回転盤112が回転することにより、無線タグ300に対する距離が変化する。そのため、アンテナ111が受信する電波の周波数は変動する。したがって、信号取得部210が取得するI成分信号およびQ成分信号も周波数が変動する。
記憶部220は、書き込み可能であり、無線タグリーダ1の周囲の電波反射物配置、つまり、本実施形態では、壁W1〜W4の配置が記憶されている。この壁W1〜W4の配置は、存在可能領域を示すものでもある。また、記憶部220には、無線タグリーダ1毎に、到来波角度θの測定誤差の分布および確率密度関数も記憶されている。測定誤差の分布は、無線タグ300を既知の位置に配置して到来波角度θの測定を重ねて、予め決定したものである。
到来波角度決定部230は、無線タグ300からの電波の到来角度である到来波角度θを決定する。到来波角度決定部230が決定した到来波角度θは、無線タグリーダ1が測定した到来波角度θを意味する。
到来波角度θの決定方法は、到来波角度θの分解能が、必要な分解能を満たす方法であれば、公知の種々の手法を用いることができる。たとえば、特許文献1に開示されている一般化調和解析を用いる方法、特許文献2に開示されている近似モデルを用いる方法などを用いることができる。
到来波角度θの分解能として必要な分解能は、無線タグ300の位置決定分解能として必要な分解能から定まる。この理由は、無線タグ300の位置を決定するために到来波角度θを用いるので、到来波角度θの分解能が無線タグ300の位置決定分解能に影響するからである。
到来波角度θは、1つではなく、複数存在することがある。マルチパスが存在するからである。また、無線タグリーダ1と無線タグ300との間に電波を弱める物体が存在することもあるので、必ずしも直接波の受信信号レベルが最も高いとは限らない。そのため、受信信号レベルによって直接波を見つけることは困難である。よって、到来波角度決定部230は、直接波であるか間接波であるかを区別することなく、受信信号レベルが予め設定した閾値レベル以上である電波についての到来波角度θを決定する。
無線タグリーダ1A、1Bのうち一方の到来波角度決定部230は、他方へ決定した到来波角度θを送信し、他方はその到来波角度θを受信する。候補点決定部240、想定到来波角度決定部250、位置推定部260は、無線タグリーダ1A、1Bのうち到来波角度θを受信した側が実行する。無線タグリーダ1A、1Bのうち、いずれが到来波角度θを送信する側となってもよいので、無線タグリーダ1A、1Bを使用する者が、無線タグリーダ1A、1Bのどちらを到来波角度θを送信する側とするかを適宜設定しておけばよい。
以下の説明では、無線タグリーダ1Bが到来波角度θを無線タグリーダ1Aに送信し、無線タグリーダ1Aが候補点決定部240、想定到来波角度決定部250、位置推定部260を実行するものとする。
これら候補点決定部240、想定到来波角度決定部250、位置推定部260の処理は、図3に示すフローチャートを用いて説明する。図3に示すフローチャートは、信号処理部200が実行する処理を示しており、信号処理部200は無線タグ300の位置を周期的に決定するために、周期的に図3に示す処理を実行する。
ステップ(以下、ステップを省略)S1は、到来波角度決定部230が実行する処理であり、到来波角度θを決定する。S2からS5は候補点決定部240が実行する処理である。S2では、他の無線タグリーダ1Bから到来波角度θを取得する。S3では、到来波角度線Lを決定する。到来波角度線Lは、各無線タグリーダ1の到来波角度決定部230が決定した到来波角度θで、その無線タグリーダ1から延ばした直線である。S4では、到来波角度線Lの交点を位置候補点Cとする。
図4には、到来波角度θ、到来波角度線L、位置候補点Cを例示している。図4の例では、無線タグリーダ1A、1Bは、それぞれ3つの到来波角度θを測定している。そのため、無線タグリーダ1A、1Bから、それぞれ3本の到来波角度線Lが延びており、位置候補点Cは9点、存在する。
S5では、存在可能領域の外にある位置候補点Cを除外する。図4の例では、位置候補点Cが除外できる。以下のステップのうち、S8は想定到来波角度決定部250が実行する処理であり、他のステップは位置推定部260が実行する処理である。
S6ではnを1とする。S7では、位置候補点Cが除外した点か否かを判断する。この判断がYESであればS8〜S10を実行することなくS11へ進む。一方、S7の判断がNOであればS8に進む。
S8では、位置候補点Cからの想定到来波角度φを決定する。この想定到来波角度φは、位置候補点Cの位置が無線タグ300の位置であるとした場合に、無線タグリーダ1が受信すると想定される電波の到来波角度である。想定到来波角度φは、記憶部220に記憶されている無線タグリーダ1の周囲の電波反射物配置と、位置候補点Cの位置とに基づいて決定する。
図5には、位置候補点Cを例として想定到来波角度φを示している。この図5に示すように、無線タグリーダ1の周囲の電波反射物配置と、位置候補点Cの位置が定まれば、想定到来波角度φは幾何学的に決定することができる。図5に示すように、直接波および反射波として反射回数が1回の反射波を考えると、それぞれの無線タグリーダ1について、それぞれ3つの想定到来波角度φ、合計6つの想定到来波角度φが決定できる。
なお、図5において、破線で示す線は、位置候補点Cに無線タグ300が位置し、その無線タグ300が出した電波が無線タグリーダ1に受信される場合に想定される電波の進行方向を示す線(以下、想定進行方向線VL)である。
図6は、位置候補点Cが無線タグ300の位置ではない場合の例として、位置候補点Cを例とし、到来波角度線Lと想定進行方向線VLとを対比して示している。これに対して、図7は、位置候補点Cが無線タグ300の位置である例であり、位置候補点Cについての想定進行方向線VLと到来波角度線Lとを対比して示している。
図6において、位置候補点Cは、到来波角度線L、Lの交点であるので、到来波角度線Lと想定進行方向線VL62は同一直線上にあり、また、到来波角度線Lと想定進行方向線VL66も同一直線上にある。しかし、その他の到来波角度線Lと想定進行方向線VLは、同一直線上にはならない。これに対して、図7では、全部の想定進行方向線VLは、いずれかの到来波角度線Lと同一直線上に位置する。
つまり、位置候補点Cが無線タグ300の位置ではない場合には、測定した到来波角度θと想定到来波角度φは一致しない。一方、位置候補点Cが無線タグ300の位置を表していれば、理想的には、測定した到来波角度θと想定到来波角度φが一致する。
したがって、到来波角度θと想定到来波角度φとが最も一致する位置候補点Cの位置が無線タグ300の位置であると考えることができる。
到来波角度θと想定到来波角度φとが一致する程度を判断するためには、各位置候補点Cに対し、到来波角度θと想定到来波角度φとの差分を全部の到来波角度θについて算出し、その差分の和を算出する方法が考えられる。差分の和を算出する場合、差分の和が最も小さくなった位置候補点Cの位置を、無線タグ300の位置に決定することになる。このような方法で、無線タグ300の位置を決定してもよい。
しかし、測定した到来波角度θには誤差がある。そのため、無線タグ300の位置に最も近い位置候補点Cであっても、位置候補点Cの決定に用いた到来波角度θ以外の到来波角度θについては想定到来波角度φと一致するとは限らない。
したがって、到来波角度θの誤差の程度によっては、選択すべき位置候補点Cよりも、他の位置候補点Cの方が到来波角度θと想定到来波角度φとの差分の和が小さくなってしまう恐れがある。
そこで、本実施形態では、より精度よく、実際の無線タグ300の位置に最も近い位置候補点Cを選択できるようにするために、S9以下の処理を実行して、無線タグ300の位置とする位置候補点Cを選択する。
S9では、測定誤差を考慮して、位置候補点Cに無線タグ300がある場合に、つまり、想定到来波角度φが真値θtrueである場合に、到来波角度θが測定される確率Pを算出する。
ここで、測定した到来波角度θは、真値θtrueと誤差Noiseとを用いるとθ=θtrue+Noiseと表すことができる。また、想定到来波角度φを真値θtrueと仮定している。したがって、θ=φ+Noiseと表すことができる。
誤差Noiseは誤差分布に従う。本実施形態では、誤差分布を無線タグリーダ1A、1B毎に事前に測定しており、誤差分布と想定到来波角度φとに基づいて、想定到来波角度φが真値θtrueである場合に、到来波角度θが測定される確率P(θ|φ、Noise)を計算する。
この確率Pの計算手順を以下に説明する。まず、簡単な例として、n番目の位置候補点Cに着目したときの想定到来波角度φと測定される到来波角度θが1つずつである一次元の確率Pの計算方法を説明する。その後に、n番目の位置候補点Cに対してそれぞれ複数の想定到来波角度φと測定される到来波角度θがある、多次元の確率Pの計算方法を説明する。
誤差分布が正規分布であるとする。平均をμ、分散をσとしたとき、正規分布N(μ、σ)の確率密度関数f(x)の一般式は、下記式1で表される。
Figure 0006696377
式1は、平均μ、分散σである正規分布において点xにおける確率を算出する式である。この式1を一次元の確率Pの計算に当てはめる。n番目の位置候補点Cに対して想定到来波角度φと測定される到来波角度θが1つずつとしているので、n番目の位置候補点Cに着目したときの想定到来波角度をφn1、到来波角度をθとする。式1を、一次元の確率Pの計算に当てはめる場合、μをφn1に代え、xをθに代えることになる。つまり、式2が、測定誤差の分布である正規分布N(φn1、σ)が反映された確率密度関数f(θ)となる。式2においては、σは事前に測定しておいた無線タグリーダ1の測定誤差の標準偏差である。
Figure 0006696377
この式2が一次元の確率P(θ|φn1、Noise)である。よって、式2に、測定された到来波角度θと、位置候補点C毎の想定到来波角度φn1を代入することで、位置候補点Cに対する確率Pを算出する。到来波角度θが1つである場合には上記のようにして確率Pを計算する。
次に、これを多次元に拡張した場合を説明する。多次元の正規分布の確率密度関数の一般式は式3で表される。
Figure 0006696377
この式3を多次元の確率P(θ|φ、Noise)の計算に当てはめる。たとえば、各無線タグリーダ1A、1Bに到来する到来波が3波であるとすると、測定される到来波角度θはθ=(θ θ θ … θ)で表される6次元ベクトルとなるためk=6であり、共分散行列Σは式4で表される。
Figure 0006696377
また、ある一つの位置候補点Cに着目したときの想定到来波角度φは、φ=(φn1 φn2 … φn6)の6次元ベクトルとなる。φが真値である確率は、式3のμベクトルを想定到来波角度φのベクトルに代え、xベクトルをθベクトルに代えることになる。つまり、式5が6次元の確率P(θ|φ、Noise)である。
Figure 0006696377
この式5に、測定された到来波角度θにより定まるθベクトルと、位置候補点C毎の想定到来波角度φにより定まるφベクトルを代入することで、位置候補点Cに対する確率Pを算出する。
なお、誤差分布が正規分布でない場合であって、誤差分布が関数表現できている場合には、正規分布の確率密度関数の式に代えて、その関数を用いればよい。さらに、誤差分布は必ずしも関数表現できている必要はない。
上記式5は、ある位置候補点Cに着目したときに、その位置候補点Cから幾何学的に定まる想定到来波角度φが真値とした場合に、その角度が到来波角度θとして測定される確率を表している。よって、事前の測定により誤差分布を求めていれば、位置候補点Cから幾何学的に定まる想定到来波角度φが真値とした場合に、その角度が到来波角度θとして測定される確率をテーブルで持ってもよい。
S9において確率Pを算出したらS10に進む。S10では、nがnendであるか否かを判断する。nendは、S4で決定した位置候補点Cの数であり、図4の例ではnendは9である。
S10の判断がNOであればS11においてnを1増やした後、S7に戻る。S7〜S11の繰り返しにより、存在可能領域外の位置候補点C以外の位置候補点Cについて、想定到来波角度φが測定した到来波角度θである確率Pを算出することになる。
S10の判断がYESであればS12へ進む。S12では、最も高い確率Pとなった位置候補点Cを無線タグ300の位置に決定する。S12を実行したら、図3の処理を終了する。図3の処理は周期的に実行しており、これにより、無線タグ300の位置を監視することになる。
[実施形態のまとめ]
以上、説明した本実施形態では、2台の無線タグリーダ1A、1Bを備え、それら2台の無線タグリーダ1A、1Bがそれぞれ測定した3つずつの到来波角度θに基づいて無線タグ300の位置を推定する。この位置の推定のために、まず、それぞれの無線タグリーダ1A、1Bから、到来波角度θで延ばした到来波角度線Lを決定し(S3)、到来波角度線Lが交差する点を位置候補点Cとする(S4)。
また、本実施形態では、壁W1〜W4の配置を記憶しており、壁W1〜W4の配置と位置候補点Cの位置を用いて、想定到来波角度φを、存在可能領域内にある全部の位置候補点Cに対して決定する(S8)。
想定到来波角度φと、無線タグリーダ1A、1Bが測定した到来波角度θとが最も一致するのは、位置候補点Cが無線タグ300の位置に相当する場合である。そこで、想定到来波角度φと無線タグリーダ1A、1Bが測定した到来波角度θとが最も一致する位置候補点Cを、無線タグ300の位置とする(S12)。このようにして無線タグ300の位置を推定するので、間接波の到来波角度の方向に無線タグ300があると推定してしまうことを抑制できる。
また、到来波角度θの測定誤差が予め決定された誤差分布に従うとして、位置候補点Cが無線タグ300の位置であるとした場合に、想定到来波角度φの値が、到来波角度θとして測定される確率Pを位置候補点C別に計算している(S9)。S12では、この確率Pが最も高い位置候補点Cを無線タグ300の位置とするので、無線タグリーダ1が測定する到来波角度θに測定誤差があっても、間接波の到来波角度の方向に電波発信源があると推定してしまうことを、より抑制できる。
さらに、本実施形態では、存在可能領域の外である位置候補点Cは除外して想定到来波角度φを決定するので、想定到来波角度φを決定する位置候補点Cの数が少なくなる。これにより、計算量を少なくすることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。なお、以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
<変形例1>
たとえば、無線タグリーダ1A、1Bの他に、これらを制御するコントローラを備え、そのコントローラが、候補点決定部240、想定到来波角度決定部250、位置推定部260を実行してもよい。
<変形例2>
無線タグリーダ1A、1Bの位置は、前述の実施形態で示した位置に限られない。無線タグ300が位置を推定すべき位置に存在している場合に、それぞれの無線タグリーダ1A、1Bが、無線タグ300からの電波を受信できる場所であればよい。たとえば、部屋Rの対角にそれぞれ配置されてもよい。
<変形例3>
無線タグリーダ1の数は3台以上でもよい。図8は、3台の無線タグリーダ1A、1B、1Cを備えている電波発信源位置推定システムを示している。図8と図4とを比較すると分かるように、無線タグリーダ1の数を増やすと、無線タグリーダ1の台数分の到来波角度線Lが交わる交点は減少する。したがって、位置候補点Cの数は減少するが、位置候補点Cが複数存在すれば、本発明は適用できる。
1:無線タグリーダ 100:受信部 200:信号処理部 210:信号取得部 220:記憶部 230:到来波角度決定部 240:候補点決定部 250:想定到来波角度決定部 260:位置推定部 300:無線タグ C:位置候補点 L:到来波角度線 R:部屋 VL:想定進行方向線 θ:到来波角度

Claims (3)

  1. 電波を受信し、受信した電波の到来角度である到来波角度を測定する到来波角度測定装置(1)を複数備え、複数の前記到来波角度測定装置が測定した複数の前記到来波角度に基づいて、電波発信源(300)の位置を推定する電波発信源位置推定システムであって、
    前記到来波角度測定装置から、その到来波角度測定装置が測定した複数の前記到来波角度でそれぞれ延ばした直線である到来波角度線(L)を前記到来波角度測定装置毎に作成した場合に、複数の前記到来波角度線が交差する点を、前記電波発信源の位置の候補である位置候補点に決定する候補点決定部(240)と、
    前記到来波角度測定装置の周囲の電波反射物配置を記憶している記憶部(220)と、
    前記候補点決定部が決定した前記位置候補点が前記電波発信源の位置であるとした場合に、前記到来波角度測定装置が受信すると想定される電波の前記到来波角度である想定到来波角度を、前記記憶部に記憶されている前記到来波角度測定装置の周囲の電波反射物配置と、前記位置候補点の位置とに基づいて決定する想定到来波角度決定部(250)と、
    前記想定到来波角度と前記到来波角度測定装置が測定した前記到来波角度とが最も一致する前記位置候補点の位置を、前記電波発信源の位置とする位置推定部(260)とを備え
    前記位置推定部は、前記到来波角度測定装置が測定した前記到来波角度の測定誤差が予め決定された誤差分布に従い、且つ、前記位置候補点が前記電波発信源の位置であるとした場合に、前記想定到来波角度決定部が決定した前記想定到来波角度の値が、前記到来波角度測定装置により測定される確率が最も高い前記位置候補点を、前記電波発信源の位置とする電波発信源位置推定システム。
  2. 請求項において、
    前記記憶部に、前記到来波角度測定装置毎の前記誤差分布が反映され、前記位置候補点が前記電波発信源の位置であるとした場合に、前記想定到来波角度決定部が決定した前記想定到来波角度の値が、前記到来波角度測定装置により測定される前記到来波角度となる確率を算出する確率密度関数が記憶されており、
    前記位置推定部は、前記記憶部に記憶されている前記確率密度関数に、前記到来波角度測定装置が測定した前記到来波角度と、前記想定到来波角度決定部が決定した前記想定到来波角度とを代入することで前記確率を算出する電波発信源位置推定システム。
  3. 請求項1または2において、
    前記記憶部には、前記電波発信源が存在する可能性がある領域である存在可能領域が記憶されており、
    前記想定到来波角度決定部は、前記記憶部に記憶されている前記存在可能領域の外である前記位置候補点は除外して前記想定到来波角度を決定する電波発信源位置推定システム。
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