JP6691612B2 - 高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤー及びその製造プロセス - Google Patents

高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤー及びその製造プロセス Download PDF

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Description

本発明は、電線・ケーブル用アルミワイヤーに関し、具体的には、空中送電線に用いられる高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤー及びその製造プロセスに関し、電気材料の技術分野に属する。
現在、我国の都市と農村での送電線に用いられる耐熱ワイヤーは、長期間運転温度が一般的に180℃以下であり、電気伝導率が61%IACS以下であり、送電線損失が大きい。我国の国民経済の発展及びエネルギー相互接続の要求に応じて、高圧化、大容量化、遠距離化は、送電線の発展方向となっている。逼迫している回廊資源を節約し、送電線の建設コストを低減させ、輸送途中の送電線損失を低下させるために、送電ワイヤーには、電気伝導率が高いだけでなく、良好な耐熱性能と垂れ込み防止特性を有するという高い要求が求められている。
通常、電気伝導率と耐熱性及び強度とは、トレードオフの関係にあり、マイクロ合金化は、アルミニウム導体の耐熱性と強度を向上させる有効な方法であるが、導電性能に悪影響を与える。純度99.99%の高純度アルミニウムは、20℃での電気伝導率が64.94%IACSであり、密度が2.7g/cm3であり、強度がわずか80〜100MPaであり、再結晶温度が150℃程度である。6021合金は、0.6〜0.9wt.%のMg、0.5〜0.9wt.%のSi、0.5wt.%のFe、0.1wt.%のCu、0.1wt.%のZn等の合金元素を添加したものであり、よく用いられている高強度の電気用アルミニウムであり、引張強度が295〜325MPaに達することができるが、20℃での電気伝導率がわずか52.5〜55%IACSである。したがって、電気伝導率が高く、耐熱性能が良好であり、比強度が高い低コストワイヤーの開発は、差し迫った技術的難題となる。
中国特許CN 102230113A号には、ジルコニウム、エルビウムを用いて複合マイクロ合金化して得られたアルミニウム導体材料であって、電気伝導率が59.5〜60.5%IACSであり、長時間耐熱温度が180℃であり、引張強度が160MPaよりも低い、耐熱性アルミニウム合金導体材料及びその製造プロセスが開示されている。中国特許CN 102965550A号には、ジルコニウム、ツリウム、鉄を用いて複合マイクロ合金化し、等温析出アニールプロセスにより、微粒子状のAl(Tm,Fe)相と、分散分布しているAl3(Tm,Zr)コアシェル構造相が得られ、アルミニウム導体材料の耐熱性と強度を大幅に向上させ、製造されたアルミニウム導体材料は、長時間耐熱温度が210℃に達し、引張強度が185MPa以上であるが、電気伝導率の最大値がわずか60.8%IACSである、高強度・高電気伝導性耐熱アルミニウム導体材料及びその製造プロセスが開示されている。中国特許CN 102758107A号には、6種の合金元素が加えられ、レアアースが3種と多く、含有量が0.15%〜0.60%と高いジルコニウム元素が加えられ、アニール時間が30〜50時間と長く、製造されたアルミニウム導体材料は、280℃で1時間加熱することに耐えられるが、引張強度が160MPa以下であり、電気伝導率が61.8%IACS以下であり、長時間耐熱温度がわずか180℃である、高強度・高電気伝導性耐熱アルミニウム合金ワイヤー及びその製造プロセスが開示されている。
本発明は、従来技術の欠点を克服するために、成分の配合比が合理的であり、生産フローが短く、プロセスが簡単であり、生産コストが低い高電気伝導性・耐熱性軽質アルミワイヤー及びその製造プロセスを提供することを目的とする。本発明は、電気伝導率に対する損失の小さい合金元素の微量添加及び合理的なプロセスにより、浄化、変性、微細化及び分散強化作用を果たし、99.99%の高純度アルミニウムに比べて、電気伝導率の低下が少ない前提で、ワイヤーの耐熱性と比強度を大幅に向上させた。また、本発明は、ホウ素による鉄含有相に対する変性作用と、押出による粗大鉄含有相に対する破砕作用により、鉄制御コストを低下させるとともに、鉄によるアルミニウム合金の総合的性能に対する有益な作用を果たしている。
本発明は、質量%で、
0.04〜0.10wt.%のB、
0.10〜0.15wt.%のZr、
0.10〜0.20wt.%のFe、
0.05〜0.30wt.%のLaを含み、
不可避的なチタン、バナジウム、クロム、マンガンの含有量の総和が0.01wt.%よりも小さく、残りがアルミニウムである高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーである。
合金の成分には、Bの含有量が0.045〜0.095wt.%であることが好ましく、0.055〜0.08wt.%であることがより好ましい。
本発明は、鋳造時、20〜300℃/sの速度で室温まで冷却した後、480℃〜500℃で高温急速アニールを1〜10h行う高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーである。
本発明は、前記ワイヤーがナノオーダーの球状Al3(Er,Zr)複合粒子を有する高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーである。
本発明は、前記ナノオーダーの球状Al3(Er,Zr)複合粒子が基質とコヒーレントなL12構造である高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーである。
本発明は、設計された合金成分の配合比に従ってそれぞれ工業純アルミニウム及びアルミニウムホウ素、アルミニウムジルコニウム、アルミニウム鉄、アルミニウムランタン中間合金を選択し、740〜780℃で工業純アルミニウムを溶融させた後、中間合金を加え、中間合金を完全に溶融させた後、溶融体を720℃〜740℃で保温し、撹拌、精錬、急速炉前成分分析、成分調整、静置、除滓を行った後、700〜720℃で急速冷却鋳造を行った後、ブランク(中間製品)に対してアニール、押出、引抜きを行って、アルミニウム合金単線を得る高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセスである。
本発明は、前記鋳造において、一般的な鋳造又は半連続鋳造によりビレットブランクを得、又は連続鋳造によりロッドブランクを得ることができる高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセスである。
本発明は、鋳造時、インゴットを20〜300℃/sの速度で室温まで冷却する高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセスである。
本発明は、鋳造時、水冷鋳造を採用する高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセスである。
本発明は、前記ブランクのアニールプロセスとしては、アニール温度480℃〜500℃で、2〜10h保温した後、炉中冷却する高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセスである。
本発明は、前記押出方法を生産ラインの設備の配置に応じて変換することができ、加熱したビレットブランクで通常の熱間押出を行ってもよく、室温でのロッドブランクで連続押出を行ってもよく、前記押出温度が300〜450℃である高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセスである。
本発明は、熱間押出又は室温での連続押出の押出比が80以上であり、総押出変形量が80%以上である高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセスである。
本発明は、前記引抜きでは、ロッド材料を押出することによりマルチパス冷間引抜きを行い、実際の必要に応じて、引抜きされるブランクの直径を確定することができ、特に、所望の耐用強度に応じて、用いられるブランクの直径を確定し、異なる引抜き変形量により単線の強度を調整することができる高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセスである。
本発明は、押出した後マルチパス引抜きを行い、各パスの伸び率が1.2〜1.5であり、総積算伸び率が5.5〜10.5であり、一般的な潤滑油又はエマルジョンにより潤滑させることができ、エマルジョンが、アルミワイヤーの温度を180℃以下にするように冷却作用を果たすこともできる高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセスである。
本発明は、製造されたワイヤーの密度が2.714g/cm3以下であり、20℃での電気伝導率が62%IACSよりも大きく、長時間耐熱温度が210℃と高く、230℃で1時間アニールした後の強度残存率が91%よりも大きく、引張強度が170MPa以上である高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセスである。
以上をまとめると、本発明で加えられる合金化元素の数が少なく、含有量が低く、アルミニウム、ホウ素、ジルコニウム、ランタン、鉄元素の合理的な配合比、及び急速冷却鋳造、ブランクの高温での短時間アニール、変形程度の大きい押出の採用により、浄化、変性、微細化及び強化作用が共に生じ、特に、ブランクのアニール析出による分散強化は、ワイヤーの耐熱性の向上に非常によい効果がある。本発明により製造されたワイヤーは、純アルミニウムと密度が近く(<2.715g/cm3)、電気伝導率が62%IACS以上に保たれ、引張強度が170MPa以上であり、長時間耐熱温度が210℃と高く、短時間耐熱温度が230℃と高い。本発明は、生産フローが短く、プロセスが簡単で要求が低く、生産コストが低いという優位性をさらに有し、製造されたアルミニウム合金ワイヤーは、遠距離、大容量の送電線に対する高電気伝導率、高耐熱性、高比強度の要求を満たすことができる。
金属中のフリーエレクトロン(自由電子)は、印加電界の作用により指向性運動が発生して電流を形成し、結晶場の周期的な異常点(又は不規則点)は、電子の指向性運動を妨げるとともに、電子波に対して散乱作用を生じる。金属材料の導電性は、フリーエレクトロンの平均自由行程(隣接する異常点の間隔の平均値)に密接に関連し、フリーエレクトロンの平均自由行程が小さいほど、材料の電気伝導率が低くなる。金属中の不純物元素、固溶原子及び結晶欠陥は、いずれも結晶場が部分的に周期的な位置からずれることを引き起こし、フリーエレクトロンの平均自由行程を短縮して、金属の電気伝導率を低下させる。工業純アルミニウム中の不可避的不純物元素であるチタン、バナジウム、クロム、マンガン、ケイ素、鉄等は、導電性に大きい影響を与え、特に、含有量の高い不純物元素がアルミニウム基質に固溶された場合、アルミニウム導体の電気伝導率を大幅に低下させる。固溶原子が格子変形を引き起こして純金属のクーロンポテンシャル場の周期性を破壊し、導電電子に対する散乱中心となり、アルミニウム基質に固溶された少量のジルコニウム元素により合金の導電性能を顕著に低下させ、固溶原子のモル濃度が大きいほど、隣接する散乱中心間の距離が小さくなり、電子の平均自由行程が小さくなり、電気伝導率が低くなる。したがって、アルミニウム導体の耐熱性と強度を向上させることを目的とするマイクロ合金化により、特に、合金の成分及び配合比が不適切に設計される場合、導電性能に非常に悪い影響を与える。
通常、鉄元素をアルミニウム合金の有害不純物元素と定義し、除去すべきである。鉄は、鋳造過程において粒界に連続した網目状に分布している骨格相を析出させる傾向があり、鉄の含有量が高い場合、層状又は針状の鉄含有相が現れ、合金の強度及び靭性に極めて悪い影響を与え、これらの連続した網目状の鉄含有相は、熱処理により除去されにくいとともに、合金の加工性能にも悪影響を与えるからである。変性剤を加え、適切な製錬、鋳造、塑性変形プロセスを採用することにより、鉄含有相の形態と分布を変化させ、鉄含有相をアルミニウム基質に微粒子状に分布させることができ、転位と粒界移動を効果的に妨げる作用を果たして、合金に高い強度と耐熱性を持たせることができ、かつ導電性能に対する影響が大きくない。
本発明は、含有量の高いホウ素(>0.04wt.%)を添加することにより、基質を浄化する精錬作用のほか、主に変性作用を果たす。本発明のホウ素による精錬作用は、主に、チタン、バナジウム、クロム、マンガン等の不純物元素との反応により、比重の大きい化合物が生成し、炉底に沈んでスラグとなり排出され、合金基質を効果的に浄化することにある。本発明のホウ素による変性作用は、主に、鉄含有相の形態及び分布状況を改善することにあり、合金の総合的性能を向上させることができるだけでなく、原料の純度に対する要求及び鉄制御コストを低下させることができ、一挙多得と言える。発明者は、ホウ素の含有量が不足であっても過剰であっても、導電性能を効果的に向上させる目標を達成できないことを見出した。ホウ素の含有量が0.035wt.%である場合、図3(a)及び図3(b)に示されるように、アルミニウム鉄相は、基本的に粒界に骨格状に連続的に分布し、又は層状の共晶組織を形成し、対応するワイヤーの電気伝導率がわずか59.5%IACSである。ホウ素の含有量が0.04wt.%である場合、図3(c)及び図3(d)に示されるように、合金には、連続していない短冊状又は点状のアルミニウム鉄相が少量現れるが、連続した網目状に存在するアルミニウム鉄相が依然として多い。ホウ素の含有量が0.1wt.%まで増加する場合、網目状及び層状のアルミニウム鉄相の形成が効果的に抑制される。図3(e)及び図3(f)に示されるように、アルミニウム鉄相は、主に連続していない筋状又は点状に存在しており、アルミワイヤーの導電性能、強度及び熱安定性がある程度改善される。ホウ素の含有量が0.12wt.%である場合、図3(g)及び図3(h)に示されるように、合金に粗大アルミニウムホウ素相が多く現れ、対応するワイヤーの電気伝導率がわずか60.2%IACSである。
特許CN 102758107A号に比べて、本発明で添加されたジルコニウム元素の含有量が比較的小さく、ジルコニウムによる合金の導電性能に対する悪影響を弱くし、また、溶融体の急速凝固により、粗大なAl3Zr初晶の形成が抑制され、ジルコニウムは、主に、準安定している過飽和固溶状態で存在するようになり、後のアニール過程において細かく分散分布し基質とコヒーレントなAl3Zr粒子が大量析出して、合金の耐熱性と強度を大きく向上させることができる。
本発明で添加されたランタン元素は、3つの作用を果たす可能性がある。第一は、脱気、不純物除去という精錬作用であって、溶融体中の水素の含有量及び不純物の含有量を低下させることにより合金の導電性能を向上させることである。第二は、結晶粒子及びデンドライト組織を微細化することによりブランクの強靭性を向上させることである。第三は、アニールする際に、細かいAl3(Zr,La)複合相を形成し、粒界及び亜粒界の成長及び転位移動を妨げる作用を果たして、合金を強化するとともにその耐熱性能を向上させることである。
本発明は、鋳造、アニール、押出、引抜きという製造プロセスを採用し、他のアルミワイヤーの連続鋳造連続圧延プロセスと区別でき、生産フローが短く、プロセスが簡単で柔軟であるという優位性を有し、製造されたワイヤーは、高い電気伝導率を確保する前提で、良好な耐熱性と比強度を有する。本発明の急速冷却鋳造は、粗大アルミニウムジルコニウム、アルミニウム鉄初晶の形成をある程度抑制する作用を有し、ブランクに高い過飽和固溶度を持たせて、後のアニール過程での細かく分散分布している第二相粒子の析出に駆動力を提供する。本発明のブランクの高温での短時間アニールは、主な作用が、細かく分散分布しているAl3Zr等のジルコニウム含有第二相粒子を析出させることであり、副次的な作用が、ブランクの成分偏析、組織偏析及び鋳造応力を適切に解消して、鋳造組織と加工性能を改善することである。また、アルミニウム合金の均一化アニール時間、及び特許に既に開示されているアニール時間に比べて、本発明のアニール時間が短く、省エネ・消費削減という優位性を有する。本発明は、押出により塑性変形を行い、生産が柔軟であり、プロセスが簡単である優位性を有し、ビレットブランクで一度に線棒として押出することができるし、連続鋳造されたロッドブランクで直径の小さい巻き素線として連続押出することもでき、圧延変形に比べて、より大きい変形程度及びより強い三軸圧縮応力状態を有し、鋳造組織を大きく改善し後の加工性能を向上させることができ、特に、粒界での粗大で脆性なアルミニウム鉄相に一定の破砕作用がある。本発明は、ロッド材料を押出してマルチパス冷間引抜きを行うことによりアルミニウム合金単線を得、実際の必要に応じてロッド材料の直径を確定することができ、特に、所望の耐用強度に応じて、用いられるロッド材料の直径を確定し、異なる引抜き変形量により単線の強度を調整することができる。
以上をまとめると、本発明は、アルミニウム、ホウ素、ジルコニウム、ランタン、鉄元素の合理的な配合比、及び急速冷却鋳造、鋳片の高温での短時間アニール、変形量の大きい押出の採用により、浄化、変性、微細化及び強靭化作用が共に生じる。本発明は、生産フローが短く、プロセスが簡単で柔軟であり、かつ要求が低く、加えられる合金化元素の数が少なく、含有量が低く、高価なレアアースの使用量を節約し、素材中の不純物の含有量及びブランクの品質が厳しく要求されておらず、エネルギー消費量も高くない。したがって、生産コストが低い優位性をさらに有する。製造されたワイヤーは、20℃での電気伝導率が62%IACS以上であり、長時間耐熱温度が210℃と高く、短時間耐熱温度が230℃と高く、引張強度が170MPa以上であり、密度(≦2.714g/cm3)が純アルミニウムの密度2.7g/cm3に近く(≦2.714g/cm3)、遠距離、大容量の送電線の要求を満たすことができ、高電気伝導率により、送電線の容量を向上させ、輸送途中の送電線損失を低下させることができ、良好な耐熱性により、送電線の安全安定性と耐用年数を向上させることができ、高比強度により、ワイヤーの垂れ込み防止特性を向上させ送電線の鉄塔の間隔を増加させることができ、顕著な経済的利益及び省エネ・環境保護の意義を有する。
実施例1のスラグの微視的組織形態である。
図1における粒子のエネルギースペクトル分析結果である。
比較例1の合金のSEM写真である。
図3(a)における第二相のエネルギースペクトル分析結果である。
実施例1の合金のSEM写真である。
図3(c)における第二相のエネルギースペクトル分析結果である。
実施例3の合金のSEM写真である。
図3(e)における第二相のエネルギースペクトル分析結果である。
比較例2の合金のSEM写真である。
図3(g)における第二相のエネルギースペクトル分析結果である。
実施例1の合金の鋳造状態組織の金属相写真である。
実施例3の合金の鋳造状態組織の金属相写真である。
実施例3の合金のTEM写真であり、第二相のピニング転位がある。
実施例3の合金のTEM写真であり、第二相のピニング粒界がある。
本発明の実施例3で製造されたφ4アルミワイヤーの性能検出報告である。
図1において、白色の第二相がアルミニウム鉄相であり、また、基質には、周囲が暗く、中間が明るい粒子(矢印に示されるように)がさらに存在しており、図2のエネルギースペクトル分析から、当該粒子がアルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウムを含有する相であることが示され、チタン、バナジウム等の不純物元素がホウ素元素と反応して化合物を形成することができ、製錬時にスラグとして排出されたので、合金の電気伝導率を向上させたことが証明されている。
図3(a)及び図3(b)から分かるように、ホウ素の含有量が0.035wt.%である場合、合金中のアルミニウム鉄相は、主に連続した骨格状に存在しており、かつ層状の共晶組織が存在している。図3(c)及び図3(d)から分かるように、ホウ素の含有量が0.04wt.%である場合、図3(c)の矢印に示されるように、アルミニウム鉄相は、一部が連続していない短冊状又は点状となる。図3(e)及び図3(f)から分かるように、ホウ素の添加量が0.1wt.%まで増加する場合、合金中のアルミニウム鉄相は、主に、連続していない筋状又は点状に存在している。図3(g)及び図3(h)から分かるように、ホウ素の含有量が0.12wt.%である場合、合金に粗大アルミニウムホウ素相が大量に現れている。
図4(a)及び図4(b)に示される鋳造状態組織の写真から分かるように、実施例1で加えられたランタン元素の含有量が少なく、合金の結晶粒子が粗大であり、粗大デンドライト組織が多く存在しており、実施例3で加えられたランタン元素の含有量が多く、結晶粒子の形状が等軸化されており、かつ結晶粒子が明らかに微細化されている。
図5(a)から分かるように、合金基質に、分散分布している第二相のピニング転位が大量に析出しており、図5(b)から分かるように、第二相のピニングにより、粒界移動が妨げられる。
図6〜図9から分かるように、本発明により製造されたアルミワイヤーは、20℃での電気伝導率が62%IACSに達し、短時間耐熱温度が230℃に達し(230℃で1h保温した後の引張強度残存率が91%に達する)、引張強度が170MPaであり、本発明の進歩性、優越性の有力な裏付け証拠となることができる。
比較例1
純度が99.7%よりも大きい工業純アルミニウムインゴット、Al-2.5%B中間合金、Al-11.34%Zr中間合金、Al-31.48%La中間合金、Al-9.33%Fe中間合金を原料とし、まず、工業純アルミニウムを760℃で溶融させた後、質量%で、ホウ素が0.035wt.%、ジルコニウムが0.10wt.%、ランタンが0.09wt.%、鉄が0.10wt.%となるように、アルミニウムホウ素、アルミニウムジルコニウム、アルミニウムランタン、アルミニウム鉄中間合金を加えた。中間合金を完全に溶融させた後、溶融体の温度を740℃まで下げて保温し、さらに撹拌、精錬、急速炉前成分分析、成分調整、静置、除滓を行い、急速冷却鋳造により過飽和固溶されたアルミニウム合金ブランクが得られた。ブランクを480℃で10hアニールした後、炉中冷却し、さらに、押出比が89.7となり、押出変形量が98.7%となるように400℃で熱間押出し、φ9.5のアルミニウム丸棒が得られ、マルチパス引抜きによりφ4.0mmのアルミニウム合金単線が得られた。単線に対して性能テストを行い、結果は表1に示されるとおりである。
実施例1
純度が99.7%よりも大きい工業純アルミニウムインゴット、Al-2.5%B中間合金、Al-11.34%Zr中間合金、Al-31.48%La中間合金、Al-9.33%Fe中間合金を原料とし、まず、工業純アルミニウムを760℃で溶融させた後、質量%で、ホウ素が0.04wt.%、ジルコニウムが0.10wt.%、ランタンが0.09wt.%、鉄が0.10wt.%となるように、アルミニウムホウ素、アルミニウムジルコニウム、アルミニウムランタン、アルミニウム鉄中間合金を加えた。中間合金を完全に溶融させた後、溶融体の温度を740℃まで下げて保温し、撹拌、精錬、急速炉前成分分析、成分調整、静置、除滓を行い、さらに急速冷却鋳造により過飽和固溶されたアルミニウム合金ブランクが得られた。ブランクを480℃で10hアニールした後、炉中冷却し、さらに、押出比が89.7となり、押出変形量が98.7%となるように400℃で熱間押出し、φ9.5のアルミニウム丸棒が得られ、マルチパス引抜きによりφ4.0mmのアルミニウム合金単線が得られた。単線に対して性能テストを行い、結果は表2に示されるとおりであり、比較例1に比べて、電気伝導率、引張強度及び耐熱性が共に向上した。
実施例2
純度が99.7%よりも大きい工業純アルミニウムインゴット、Al-2.5%B中間合金、Al-11.34%Zr中間合金、Al-31.48%La中間合金、Al-9.33%Fe中間合金を原料とし、まず、工業純アルミニウムを760℃で溶融させた後、質量%で、ホウ素が0.07wt.%、ジルコニウムが0.15wt.%、ランタンが0.19wt.%、鉄が0.20wt.%となるように、アルミニウムホウ素、アルミニウムジルコニウム、アルミニウムランタン、アルミニウム鉄中間合金を加えた。中間合金を完全に溶融させた後、溶融体の温度を740℃まで下げて保温し、撹拌、精錬、急速炉前成分分析、成分調整、静置、除滓を行い、さらに急速冷却鋳造により過飽和固溶されたアルミニウム合金ブランクが得られた。ブランクを490℃で8hアニールした後、炉中冷却し、さらに、押出比が89.7となり、押出変形量が98.7%となるように400℃で熱間押出し、φ9.5のアルミニウム丸棒が得られ、マルチパス引抜きによりφ4.0mmのアルミニウム合金単線が得られた。単線に対して性能テストを行い、結果は表3に示されるとおりである。
実施例3
純度が99.7%よりも大きい工業純アルミニウムインゴット、Al-2.5%B中間合金、Al-11.34%Zr中間合金、Al-31.48%La中間合金、Al-9.33%Fe中間合金を原料とし、まず、工業純アルミニウムを760℃で溶融させた後、質量%で、ホウ素が0.095wt.%、ジルコニウムが0.15wt.%、ランタンが0.29wt.%、鉄が0.20wt.%となるように、アルミニウムホウ素、アルミニウムジルコニウム、アルミニウムランタン、アルミニウム鉄中間合金を加えた。中間合金を完全に溶融させた後、溶融体の温度を740℃まで下げて保温し、撹拌、精錬、急速炉前成分分析、成分調整、静置、除滓を行い、さらに急速冷却鋳造により過飽和固溶されたアルミニウム合金ブランクが得られた。ブランクを500℃で2hアニールした後、炉中冷却し、さらに、押出比が89.7となり、押出変形量が98.7%となるように400℃で熱間押出し、φ9.5のアルミニウム丸棒が得られ、マルチパス引抜きによりφ4.0mmのアルミニウム合金単線が得られた。単線に対して性能テストを行い、結果は表4に示されるとおりである。
比較例2
純度が99.7%よりも大きい工業純アルミニウムインゴット、Al-2.5%B中間合金、Al-11.34%Zr中間合金、Al-31.48%La中間合金、Al-9.33%Fe中間合金を原料とし、まず、工業純アルミニウムを780℃で溶融させた後、質量%で、ホウ素が0.12wt.%、ジルコニウムが0.15wt.%、ランタンが0.29wt.%、鉄が0.20wt.%となるように、アルミニウムホウ素、アルミニウムジルコニウム、アルミニウムランタン、アルミニウム鉄中間合金を加えた。中間合金を完全に溶融させた後、溶融体の温度を740℃まで下げて保温し、撹拌、精錬、急速炉前成分分析、成分調整、静置、除滓を行い、さらに急速冷却鋳造により過飽和固溶されたアルミニウム合金ビレットブランクが得られた。ブランクを500℃で2hアニールした後、炉中冷却し、さらに、押出比が89.7となり、押出変形量が98.7%となるように400℃で熱間押出し、φ9.5のアルミニウム丸棒が得られ、マルチパス引抜きによりφ4.0mmのアルミニウム合金単線が得られた。単線に対して性能テストを行い、結果は表5に示されるとおりである。
比較例1において、ホウ素の含有量が0.035wt.%であり、図3(a)、図3(b)から分かるように、合金中の第二相は、主に連続した骨格状に存在しており、対応する電気伝導率が59.5%IACSであったが、実施例1において、ホウ素の含有量が0.04wt.%であり、図3(c)、図3(d)から分かるように、合金中の第二相の一部は、連続していない短冊状又は点状となり(図における矢印に示されるように)、対応する電気伝導率が62.1%IACSであり、ホウ素の仕込量が一定の値に達してこそ、電気伝導率の向上に明らかな作用を生じることが証明されている。実施例3において、ホウ素の含有量が0.095wt.%であり、図3(g)及び図3(h)から分かるように、合金中のアルミニウム鉄相は、主に連続していない筋状又は点状に存在しており、対応する電気伝導率が62%IACSであったが、比較例2において、ホウ素の含有量が0.12wt.%に達し、図3(g)及び図3(h)から分かるように、合金に粗大アルミニウムホウ素相が多く生成し、対応する電気伝導率が60.2%IACSであり、ホウ素の仕込量が高すぎると電気伝導率を低下させることが証明されている。
以上をまとめると、本発明の3つの実施例で得られたアルミニウム合金ワイヤーは、密度がいずれも2.714g/cm3以下であり、20℃の常温での電気伝導率が62%IACS以上であり、短時間耐熱温度が230℃と高く(230℃で1時間アニールした後の強度残存率が90%よりも大きい)、長時間耐熱温度が210℃と高かった(210℃で400時間アニールした後の強度残存率が90%よりも大きい)。比較例1において、加えられたホウ素元素が少ない以外、他の成分が実施例1と同じであり、比較例2において、加えられたホウ素の含有量が高い以外、他の成分が実施例3と同じであった。しかし、2つの比較例の電気伝導率がいずれも61%IACSよりも低く、かつ、比較例1では、230℃で1時間アニールした後の強度残存率がわずか86.5%であり、210℃で400時間アニールした後の強度残存率がわずか87.1%であった。

Claims (12)

  1. 重量%で、
    0.040〜0.10wt.%のB、
    0.10〜0.15wt.%のZr、
    0.10〜0.20wt.%のFe、
    0.05〜0.30wt.%のLaを含み、
    不可避的なチタン、バナジウム、クロム、マンガンの含有量の総和が0.01wt.%よりも小さく、残りがアルミニウムである高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤー。
  2. 重量%で、
    0.045〜0.095wt.%のB、
    0.10〜0.15wt.%のZr、
    0.10〜0.20wt.%のFe、
    0.05〜0.30wt.%のLaを含み、
    不可避的なチタン、バナジウム、クロム、マンガンの含有量の総和が0.01wt.%よりも小さく、残りがアルミニウムである請求項1に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤー。
  3. ワイヤーは、密度が2.714g/cm3以下であり、20℃での電気伝導率が62%IACSよりも大きく、短時間耐熱温度が230℃と高く、長時間耐熱温度が210℃と高く、引張強度が170MPa以上であることをさらに特徴とする請求項1又は2に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤー。
  4. 設計された材料成分の配合比に従ってそれぞれ工業純アルミニウム及びアルミニウムホウ素、アルミニウムジルコニウム、アルミニウム鉄、アルミニウムランタン中間合金を選択し、740〜780℃で工業純アルミニウムを溶融させた後、中間合金を加え、精錬及び急速冷却鋳造によりブランクを得た後、ブランクに対してアニール、押出、引抜きを行って、アルミニウム合金単線を得る、請求項1から3のいずれか1項に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーを製造するための製造プロセス。
  5. 鋳造では、一般的な鋳造又は半連続鋳造方法によりビレットブランクを得、又は連続鋳造方法によりロッドブランクを得ることを特徴とする請求項に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセス。
  6. 鋳造時、ブランクを20〜300℃/sの速度で室温まで冷却することを特徴とする請求項に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセス。
  7. 鋳造時、水冷鋳造を採用することを特徴とする請求項に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセス。
  8. ビレットブランク又はロッドブランクのアニール温度が480℃〜500℃であり、2〜10h保温した後、炉中冷却することを特徴とする請求項に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセス。
  9. ビレットブランクを熱間押出し、熱間押出温度が300〜450℃であり、ロッドブランクを室温で連続押出することを特徴とする請求項に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセス。
  10. 熱間押出又は室温での連続押出の押出比が80以上であり、総押出変形量が80%以上であることを特徴とする請求項に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセス。
  11. 押出した後マルチパス引抜きを行い、各パスの伸び率が1.2〜1.5であり、総積算伸び率が5.5〜10.5であり、引抜きを行う際に、一般的な潤滑油又はエマルジョンにより潤滑させ、冷却させて、アルミワイヤーの温度を180℃以下にすることを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセス。
  12. 製造されたワイヤーは、密度が2.714g/cm3以下であり、20℃での電気伝導率が62%IACSよりも大きく、短時間耐熱温度が230℃と高く、長時間耐熱温度が210℃と高く、引張強度が170MPa以上であることを特徴とする請求項11に記載の高電気伝導性・耐熱性鉄含有軽質アルミワイヤーの製造プロセス。
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