JP6690897B2 - 延伸フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから延伸フィルムを製造する方法に関する。
偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置における偏光素子などとして広く用いられている。偏光板としては、偏光フィルムの片面又は両面に接着剤等を用いて透明樹脂フィルム(保護フィルム等)を貼合した構成のものが一般的である。
偏光フィルムは主に、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムに対して、ヨウ素等の二色性色素を含有する染色浴に浸漬させる処理、次いでホウ酸等の架橋剤を含有する架橋浴に浸漬させる処理などを施すとともに、いずれかの段階でフィルムを一軸延伸することによって製造されている。一軸延伸には、上記浸漬処理の前に空中で延伸を行う乾式延伸と、上記染色浴及び架橋浴等の液中で延伸を行う湿式延伸とがある。
例えば特開2002−264207号公報(特許文献1)には、熱ロールを用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾式により縦一軸延伸することが記載されている。熱ロールとは、表面温度を高くすることができ、これによって延伸可能な温度状態をフィルムに付与することができるロールをいう。
特開2002−264207号公報
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを熱ロールにより乾式延伸してなる延伸フィルムの表面を観察すると、およそフィルム長手方向に延びるスジ状の凹部(以下、「スジ状欠陥」ともいう。)が見られることがある。このスジ状欠陥は、延伸フィルムやこれを原料にして作成される偏光フィルムの外観不良を招き、これらフィルムの歩留まりを低下させる。
本発明の目的は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから延伸フィルムを製造する方法であって、スジ状欠陥が抑制された延伸フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明は、以下に示す延伸フィルムの製造方法を提供する。
[1] 厚み70μm以下のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、熱ロールを用いて縦延伸を施す延伸工程を含み、
前記延伸工程に供される前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの水分率をW〔重量%〕、前記熱ロールの表面温度をT〔℃〕とするとき、下記式(I):
W・T≦990 (I)
を満たすように前記縦延伸を行う、延伸フィルムの製造方法。
[2] 下記式(II):
500≦W・T (II)
をさらに満たすように前記縦延伸を行う、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記延伸工程において前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、第1ニップロール、前記熱ロール及び第2ニップロールをこの順に含む搬送経路に沿って搬送され、前記第1ニップロール又は前記第2ニップロールと、前記熱ロールとの間の周速差により前記縦延伸を行う、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記延伸工程の前に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを加湿する工程をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みが40μm以下であり、水分率Wが7重量%以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 表面温度Tが100〜135℃である、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記延伸工程における延伸倍率が2〜6倍である、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
本発明の製造方法によれば、スジ状欠陥が抑制された延伸フィルムを提供することができる。
熱ロールを用いた縦延伸処理の一例を示す概略断面図である。 熱ロールを用いた縦延伸処理の他の一例を示す概略断面図である。
<延伸フィルムの製造方法>
本発明に係る延伸フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、PVAフィルムともいう。)に、熱ロールを用いて縦延伸を施す延伸工程を含む。この延伸工程は、長尺のPVAフィルムを連続的に搬送しながら、熱ロールを含む熱ロール延伸装置に導入することにより、延伸フィルムを連続的に長尺物として製造する工程であることができる。縦延伸とは、フィルムの機械流れ方向(MD)、すなわちフィルムの長手方向への延伸をいい、通常は縦一軸延伸であり、より典型的には自由端縦一軸延伸である。MDに直交する方向、すなわちフィルムの幅方向を本明細書ではTDともいう。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂フィルム
縦延伸処理に供されるPVAフィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルよりなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。その他の「(メタ)」を付した用語においても同様である。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、80.0〜100.0モル%の範囲であることができるが、好ましくは90.0〜100.0モル%の範囲であり、より好ましくは94.0〜100.0モル%の範囲である。ケン化度が80.0モル%未満であると、得られる延伸フィルムを偏光フィルムの原料として使用する場合、当該偏光フィルムを含む偏光板の耐水性及び耐湿熱性が低下し得る。
ケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:−OCOCH3)がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式:
ケン化度(モル%)=100×(水酸基の数)/(水酸基の数+酢酸基の数)
で定義される。ケン化度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、従って結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100〜10000であり、より好ましくは1500〜8000であり、さらに好ましくは2000〜5000である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度もJIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が100未満では、得られる延伸フィルムを偏光フィルムの原料として使用する場合、好ましい偏光性能を有する偏光フィルムを得ることが困難であり、10000超では溶媒への溶解性が悪化し、PVAフィルムの形成が困難となり得る。
PVAフィルムは、上述したポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものである。製膜方法は、特に限定されるものではなく、溶融押出法、溶剤キャスト法のような公知の方法を採用することができる。
PVAフィルムの厚みは、70μm以下であり、好ましくは65μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下、なおさらに好ましくは40μm以下、特に好ましくは35μm以下、最も好ましくは30μm以下(さらには20μm以下)である。PVAフィルムの厚みが小さいほどスジ状欠陥が生じやすい傾向にあり、また目立ちやすい傾向にあるが、本発明によればPVAフィルムの厚みが小さくても、スジ状欠陥を効果的に抑制することができる。PVAフィルムの厚みを小さくすることは、延伸フィルム、ひいては偏光フィルム及び偏光板の薄膜化にも有利である。PVAフィルムの水分率Wについては後述する。
PVAフィルムは、可塑剤等の添加剤を含有することができる。可塑剤の好ましい例は多価アルコールであり、その具体例は、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール等を含む。PVAフィルムは、1種又は2種以上の可塑剤を含有することができる。可塑剤の含有量は、PVAフィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常5〜20重量部であり、好ましくは7〜15重量部である。
(2)延伸工程
延伸工程は、PVAフィルムに熱ロールを用いて縦延伸を施す熱ロール延伸を含む。熱ロール延伸には、少なくとも1つの熱ロールを含む熱ロール延伸装置を用いることができ、この熱ロール延伸装置は、2以上の熱ロールを含んでいてもよい。PVAフィルムを熱ロール延伸装置に通すことにより延伸フィルムを得ることができる。上述のように、延伸工程は、長尺のPVAフィルムを連続的に搬送しながら熱ロール延伸装置に導入することにより、延伸フィルムを連続的に長尺物として製造する工程であることができる。
図1に熱ロール延伸処理及びそれに用いる熱ロール延伸装置の一例を示す。図1に示される熱ロール延伸装置は、フィルム搬送の上流側から順に第1ニップロール10、熱ロール5及び第2ニップロール20を含む。熱ロール延伸装置に導入されたPVAフィルム1は、第1ニップロール10、熱ロール5及び第2ニップロール20をこの順で含む搬送経路に沿って搬送される。すなわち、PVAフィルム1はまず第1ニップロール10,10間を通過し、次いで熱ロール5に巻き掛けられた状態でその表面に接触しながら走行し、その後、第2ニップロール20,20間を通過する。第1ニップロール10、第2ニップロール20及び熱ロール5はいずれも駆動ロールである。駆動ロールとは、モータ等のロール駆動源が直接又は間接的に接続されたロールなど、それに接触するフィルムに対してフィルム搬送のための駆動力を与えることができるロールをいう。第1ニップロール10と熱ロール5との間、及び/又は熱ロール5と第2ニップロール20との間にガイドロールを設けてもよい。
長尺フィルムとして連続的に得られる延伸フィルム2は、一旦巻き取ってフィルムロールとされてもよいし、巻き取ることなく引き続き、例えば偏光フィルム化工程などの次の工程に供給してもよい。
図1に示される熱ロール延伸装置において、縦延伸のために必要なPVAフィルム1への張力(引張力)は、第1ニップロール10又は第2ニップロール20と、熱ロール5との間の周速差によって付与される。例えば熱ロール5の周速を第1ニップロール10の周速よりも大きくすると、熱ロール5から第1ニップロール10へ向かう方向の張力(後方張力)が付与されながら、熱ロール5による加熱下にPVAフィルム1は縦延伸される。一方、第2ニップロール20の周速を熱ロール5の周速よりも大きくすると、第2ニップロール20から熱ロール5へ向かう方向の張力(前方張力)が付与されながら、熱ロール5による加熱下にPVAフィルム1は縦延伸される。
縦延伸は、熱ロール5によりPVAフィルム1が延伸可能な程度まで加熱され、かつ十分な張力が付与されたときに生じる。後方張力が付与されている場合、縦延伸は、PVAフィルム1が熱ロール5の表面に接触した瞬間、及び/又はその前後(例えば手前)で生じ得る。前方張力が付与されている場合、縦延伸は、熱ロール5の表面に接触している間、及び/又はその直後に生じ得る。
縦延伸の延伸倍率は、通常2〜8倍であり、好ましくは2〜6倍である。延伸フィルム2を偏光フィルムの原料として使用する場合における偏光フィルムの光学特性(特に偏光特性)の観点から、延伸倍率は、より好ましくは3.5倍以上であり、さらに好ましくは4倍以上である。
縦延伸のために必要なPVAフィルム1にかかる張力の好ましい範囲は、10〜25MPaであり、より好ましくは13〜22MPaである。張力が10MPaを下回る場合にはフィルムの搬送性が低下し、皺等を生じる可能性がある。また、張力が25MPaを上回る場合には均一な縦延伸を行うことが困難となる。フィルムの搬送速度は特に限定されず、延伸倍率、張力、水分率等が好ましい範囲となるように適宜設定することができ、例えば2〜20m/分である。
延伸工程に供されるPVAフィルム1の水分率をW〔重量%〕、熱ロール5の表面温度をT〔℃〕とするとき、縦延伸は下記式(I):
W・T≦990 (I)
を満たすように行われる。これにより、PVAフィルム1の厚みが小さく、例えば70μm以下(例えば65μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、又は20μm以下)であっても、PVAフィルム1の厚みによらず(70μm以下である限り)スジ状欠陥を効果的に抑制することができる。
本発明者の検討によれば、上記式(I)を満たすことによりスジ状欠陥を抑制できるのは、熱ロール5の表面とこれに接触しているPVAフィルム1との間に隙間が生じ、その隙間にPVAフィルム1から揮発する水蒸気が介入してPVAフィルム1の表面を凹ませる現象がスジ状欠陥の要因であると考えられるところ、水分率Wと表面温度Tとの積W・Tを適切な範囲にすることでこの現象を抑制できるためであると考えられる。
縦延伸は下記式(II):
500≦W・T (II)
をさらに満たすように行われることが好ましい。これにより、上記延伸倍率での縦延伸の実施が容易となる。W・Tの好ましい下限値は、PVAフィルム1の厚みに依存する。例えばPVAフィルム1の厚みが40μm程度以下である場合、W・Tの下限値は、好ましくは700であり、より好ましくは750であり、さらに好ましくは885(例えば900)である。PVAフィルム1の厚みが40μm程度を超える場合、W・Tの下限値は、より好ましくは600であり、さらに好ましくは650(例えば700)である。
PVAフィルム1の水分率Wは、通常1〜15重量%であり、好ましくは3〜10重量%である。これにより、上記延伸倍率での縦延伸の実施がより容易となり、配向性の高い延伸フィルム2を得ることができる。PVAフィルム1の水分率Wを上記範囲内で高めに設定することは、得られる延伸フィルム2の配向性や強度(MDにおける引張弾性率など)の向上に有利となり得る。
PVAフィルム1の好適な水分率Wは、PVAフィルム1の厚みに依存し得る。例えばPVAフィルム1の厚みが40μm程度以下である場合、水分率Wは、より好ましくは5〜10重量%であり、PVAフィルム1の厚みが40μm程度を超える場合、水分率Wは、より好ましくは3〜8重量%である。PVAフィルム1の厚みが40μm程度以下である場合、得られる延伸フィルム2の配向性向上や強度向上の観点から、水分率Wを7重量%以上(例えば8重量%以上)にすることが好適なことがある。
一方、水分率Wが過度に高いと、上記式(I)を満たすことができずスジ状欠陥を抑制することができないことがある。また水分率Wが過度に高いと、フィルムの強度が低下することによる破断やフィルムの膨張による弛み等の面で不利になることがある。水分率Wが過度に低いことは、PVAフィルム1の延伸適性の面で不利である。
PVAフィルム1の水分率Wは、乾燥重量法に従う水分率である。水分率Wの具体的な測定方法は、実施例の項の記載に従う。
PVAフィルム1は、上記式(I)、好ましくはさらに上記式(II)を満たす延伸工程を実施できるよう、上述の範囲内に水分率調整されていることが好ましい。水分率調整は、延伸工程の前に、PVAフィルム1を水分率調整する工程を設けることによって行うことができる。水分率調整する工程は、加湿する(水分率を上昇させる)工程であってもよいし、乾燥する(水分率を低下させる)工程であってもよい。
加湿する工程には加湿装置を用いることができる。加湿装置は、例えば、内部の相対湿度(好ましくは、さらに内部温度)を調整可能な加熱チャンバ(加湿炉)や、PVAフィルム1を温度調整された水に浸漬するための装置などである。内部温度は、熱風の供給等により高めることができる。PVAフィルム1の温度調整のために、熱風の代わりに、又はこれと組み合わせて、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等を用いたり、熱ロールを用いたりすることもできる。乾燥する工程には加熱装置を用いることができる。加熱装置は、例えば、内部温度を調整可能な加熱チャンバ(熱風の供給により内部温度を高めることができる熱風オーブン等)、1又は2以上の熱ロール、ヒーター(赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等)などである。
PVAフィルム1の水分率Wは、加湿装置の内部環境(相対湿度、温度等)、加湿装置内でのフィルム滞留時間、加熱装置の内部環境(温度等)、加熱装置内でのフィルム滞留時間などの調整によって制御できる。
熱ロール5の表面温度Tは、例えば80〜150℃であり、好ましくは100〜135℃(例えば100〜125℃)である。表面温度Tがあまりに高いと、上記式(I)を満たすことができずスジ状欠陥を抑制することができないことがある。また表面温度Tが過度に高いと、加熱されたPVAフィルムの強度が低下し、延伸時に破断する可能性がある。表面温度Tがあまりに低いとPVAフィルム1の延伸自体が困難となり得る。熱ロール5としては、その表面温度Tを高めることができるものである限り特に制限されず、熱源(例えば、温水等の熱媒や赤外線ヒーター)を内部に備え、表面が金属やステンレス等の合金で構成されたロールを用いることができる。
図2に示されるように、熱ロール延伸装置は、2以上の熱ロールを含んでいてもよい。図2は、3つの熱ロール6,7,8を含む例を示している。2以上の熱ロールを含む場合、縦延伸は、2つの熱ロールの間、及び/又は熱ロールの表面に接触している間に生じ得る。2以上の熱ロールを含む場合、少なくとも最初の熱ロールについて上記式(I)を満たす必要があり、すべての熱ロールについて上記式(I)を満たすことが好ましい。
また延伸工程における熱ロール延伸は、圧縮延伸(圧延)であってもよい。この場合、熱ロールの表面温度Tとは、圧延ロールの表面温度を指す。
延伸工程により得られる延伸フィルム2は、偏光フィルムの原料として使用する場合にはとりわけ、高い配向性を有することが好ましい。配向性の高い延伸フィルム2を用いて偏光フィルムを作製することによってその偏光性能を高めることができる。延伸フィルム2の配向性は、結晶化指数によって評価することができる。延伸フィルム2の結晶化指数は、例えば0.60以上であり、好ましくは0.61以上、より好ましくは0.62以上、さらに好ましくは0.625以上、特に好ましくは0.63以上である。結晶化指数の具体的な測定方法は、実施例の項の記載に従う。
延伸フィルム2の強度、とりわけMDにおける強度が高いと、これを用いて得られる偏光フィルム及び当該偏光フィルムを含む偏光板の強度及び耐久性を高めることができる。延伸フィルム2のMDにおける強度は、MDにおける引張弾性率によって評価することができる。延伸フィルム2のMDにおける引張弾性率は、例えば1000MPa以上であり、好ましくは1500MPa以上、より好ましくは2000MPa以上、さらに好ましくは2500MPa以上である。MDにおける引張弾性率の具体的な測定方法は、実施例の項の記載に従う。
(3)その他の工程
本発明に係る延伸フィルムの製造方法は、延伸工程の後に実施されるスリット工程を含むことができる。スリット工程は、延伸工程により得られた延伸フィルム2の幅方向(TD)端部、好ましくは両端部をスリット除去する工程である。比較的厚みが大きくなりやすく、配向性も不十分になりやすい端部を除去することにより、幅方向における膜厚分布及び配向性がより均一な延伸フィルムを得ることができる。
<偏光フィルム及び偏光板の製造>
本発明に係る製造方法によって得られる延伸フィルムは、偏光フィルムの原料として好適に用いることができる。偏光フィルムは、延伸フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたフィルムを架橋処理する工程;及び、架橋処理後に水洗する工程、を経て製造することができる。二色性色素としては、ヨウ素又は二色性有機染料を用いることができる。
延伸フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、延伸フィルムを二色性色素が含有された水溶液(染色溶液)に浸漬する方法が採用される。延伸フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理(膨潤処理)を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、延伸フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この染色水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり通常0.01〜1重量部である。また、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり通常0.5〜20重量部である。染色水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む染色水溶液に、延伸フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。染色水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり通常1×10-4〜10重量部であり、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この染色水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。
二色性色素による染色後の架橋処理は、染色されたフィルムを架橋剤含有水溶液に浸漬することにより行うことができる。架橋剤の好適な例はホウ酸であるが、ホウ砂のようなホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等の他の架橋剤を用いることもできる。架橋剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤含有水溶液における架橋剤の量は、水100重量部あたり通常2〜15重量部であり、好ましくは4〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、この架橋剤含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。架橋剤含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり通常0.1〜15重量部であり、好ましくは5〜12重量部である。架橋剤含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。
架橋処理後のフィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、架橋処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は通常、1〜40℃程度である。
膨潤処理、染色処理、架橋処理及び洗浄処理のいずれか1以上の処理において、必要に応じてフィルムに湿式延伸を施してもよい。
水洗後に乾燥処理を施して、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機による乾燥、熱ロールに接触させることによる乾燥、遠赤外線ヒーターによる乾燥などであることができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、50〜90℃が好ましい。偏光フィルムの厚みは、通常2〜40μm程度である。偏光板の薄膜化の観点から、偏光フィルムの厚みは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
偏光フィルムの片面又は両面に接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼合することにより偏光板を得ることができる。熱可塑性樹脂フィルムは、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムである。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等であることができる。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。より具体的な例は、ポリプロピレン系樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)、ポリエチレン系樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)を含む。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
セルロース系樹脂とは、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等の原料セルロースから得られるセルロースの水酸基における水素原子の一部または全部がアセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基で置換された、セルロース有機酸エステル又はセルロース混合有機酸エステルをいう。例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、及びそれらの混合エステル等からなるものが挙げられる。中でも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有する、上記セルロース系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。好適なポリエステル系樹脂の例は、ポリエチレンテレフタレートを含む。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性、透明性を有する樹脂である。ポリカーボネート系樹脂は、光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネート等であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位を含む重合体である。該重合体は、典型的にはメタクリル酸エステルを含む重合体である。好ましくはメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合が、全構造単位に対して、50重量%以上含む重合体である。(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、他の重合性モノマー由来の構成単位を含む共重合体であってもよい。この場合、他の重合性モノマー由来の構成単位の割合は、好ましくは全構造単位に対して、50重量%以下である。
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得るメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、メタクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得る上記他の重合性モノマーとしては、アクリル酸エステル、及びその他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を挙げることができる。他の重合性モノマーは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。アクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、アクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、エチレン、プロピレン、スチレン等のビニル系化合物や、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物が挙げられる。その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂フィルムは、偏光フィルムを保護するための保護フィルムであることができる。また、熱可塑性樹脂フィルムは、位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記材料からなる熱可塑性樹脂フィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。熱可塑性樹脂フィルムは、その表面に積層される、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは通常1〜100μmであるが、強度や取扱性、偏光板の薄膜化等の観点から5〜60μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。
偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとの貼合に用いる接着剤としては、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤を用いることができ、好ましくは水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤である。
水系接着剤は、接着剤成分を水に溶解したもの又は水に分散させたものである。好ましく用いられる水系接着剤は、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を用いた接着剤組成物である。
接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、当該ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコール樹脂であることができるほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体であってもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂を接着剤成分とする水系接着剤は通常、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液である。接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤は、接着性を向上させるために、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキザール、グリオキザール誘導体、水溶性エポキシ樹脂のような硬化性成分や架橋剤を含有することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸等のジカルボン酸との反応で得られるポリアミドアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂を好適に用いることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂の市販品としては、「スミレーズレジン650」(田岡化学工業(株)製)、「スミレーズレジン675」(田岡化学工業(株)製)、「WS−525」(日本PMC(株)製)等が挙げられる。これら硬化性成分や架橋剤の添加量(硬化性成分及び架橋剤としてともに添加する場合にはその合計量)は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。上記硬化性成分や架橋剤の添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1重量部未満である場合には、接着性向上の効果が小さくなる傾向にあり、また、当該添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して100重量部を超える場合には、接着剤層が脆くなる傾向にある。
また、接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合の好適な例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する接着剤である。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、偏光板が有する接着剤層は、当該接着剤の硬化物層である。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する接着剤であることができ、好ましくは、かかるエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する紫外線硬化性接着剤である。ここでいうエポキシ系化合物とは、分子内に平均1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。エポキシ系化合物は、1種のみを使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
好適に使用できるエポキシ系化合物の具体例は、芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより得られる水素化エポキシ系化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル);脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルのような脂肪族エポキシ系化合物;脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ系化合物である脂環式エポキシ系化合物を含む。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、硬化性成分として、上記エポキシ系化合物の代わりに、又はこれとともにラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有することができる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を挙げることができる。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含む場合、光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;鉄−アレン錯体等を挙げることができる。また、活性エネルギー線硬化性接着剤が(メタ)アクリル系化合物のようなラジカル重合性硬化性成分を含有する場合は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、チオキサントン系開始剤、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等を挙げることができる。
偏光フィルムに熱可塑性樹脂フィルムを貼合するに先立って、偏光フィルム及び/又は熱可塑性樹脂フィルムの貼合面に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような表面活性化処理を行ってもよい。この表面活性化処理により、偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとの接着性を高めることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、以下の例において、フィルムの厚み、延伸工程に供したポリビニルアルコールフィルムの水分率W、得られた延伸フィルムにおけるスジ状欠陥の有無、結晶化指数及びMDにおける引張弾性率は、以下の方法に従って測定又は評価した。
(1)フィルムの厚み
(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター「MH−15M」を用いて測定した。
(2)ポリビニルアルコールフィルムの水分率W
水分率の異なる複数のPVAフィルム試料を用いて、乾燥重量法による水分率と、赤外線吸収式の水分率計(クラボウ製の「RM−300」)の測定値との相関を示す検量線(換算式)を作成した。表1に記載の水分率は、上記水分率計を用いて測定値を得、これを上記検量線(換算式)に代入して、乾燥重量法による水分率〔重量%〕に換算したものである。乾燥重量法による水分率は、105℃で2時間乾燥させたときのPVAフィルムの重量をW1、乾燥前のPVAフィルムの重量をW0とするとき、下記式:
乾燥重量法による水分率〔重量%〕={(W0−W1)÷W0}×100
に従って求めた。上記検量線は、PVAフィルムの厚みが異なるごとに作成した。
(3)熱ロールの表面温度
熱ロールの表面温度は表面温度計(安立計器株式会社製のHFT−50を使用して、熱ロールの幅方向中央部を周方向に22.5°毎に16箇所測定し、測定値の平均値を熱ロールの表面温度とした。
(4)延伸フィルムにおけるスジ状欠陥の有無
得られた延伸フィルムの表面(熱ロールに接触する側の表面)を目視観察し、スジ状欠陥の有無を評価した。
(5)延伸フィルムの結晶化指数
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(アジレント・テクノロジー株式会社製の「FT−640」)を用い、全反射減衰分光(ATR:attenuated total reflection)測定により、下記式:
結晶化指数={I(1143cm-1,0°)−I(1160cm-1,0°)}/{I(1093cm-1,0°)−I(1160cm-1,0°)}
に従って結晶化指数を算出した。略号の詳細は次のとおりである。
I(1143cm-1,0°):測定光を延伸フィルムのMDに対して平行に入射して測定したときの波長1143cm-1における吸収スペクトル強度、
I(1160cm-1,0°):測定光を延伸フィルムのMDに対して平行に入射して測定したときの波長1160cm-1における吸収スペクトル強度、
I(1093cm-1,0°):測定光を延伸フィルムのMDに対して平行に入射して測定したときの波長1093cm-1における吸収スペクトル強度。
(6)延伸フィルムのMDにおける引張弾性率(MD弾性率)
延伸フィルムからMD長さ100mm×TD長さ25mmの長方形の試験片を切り出した。次いで、引張試験機〔(株)島津製作所製 AUTOGRAPH AG−1S試験機〕の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が7cmとなるように上記試験片の長辺方向両端を挟み、23℃の環境下、引張速度50mm/分で試験片をMD(試験片の長さ方向)に引張り、得られる応力−ひずみ曲線における初期の直線の傾きから、23℃でのMDにおける引張弾性率〔MPa〕を算出した。
<実施例1>
フィルム搬送の上流側から順に第1ニップロール10、熱ロール5及び第2ニップロール20を含む図1に示される熱ロール延伸装置を用いて、次の条件下で連続的に熱ロール延伸(縦一軸延伸)を行い、長尺のポリビニルアルコールフィルム(表1においてはPVAフィルムと表記)から長尺の延伸フィルムを作製した。延伸フィルムの厚みは11μmであった。熱ロール延伸においては、熱ロール5の周速を第1ニップロール10の周速よりも大きくし、この周速差によって延伸のための張力(引張力)を付与した。ポリビニルアルコールフィルムは、熱ロール延伸装置に導入する手前で加湿炉に通すことにより加湿してから熱ロール延伸に供した。水分率Wは、加湿後の水分率を指している。
a)ポリビニルアルコールフィルム:厚み 30μm、水分率W 8.1重量%、平均重合度 約2400、ケン化度 99.9モル%以上、
b)熱ロール5以降のフィルムの搬送速度:6.0m/分、
c)延伸倍率:4.1倍、
d)熱ロール5の表面温度T:116℃。
<実施例2〜16、比較例1〜5>
ポリビニルアルコールフィルムの厚み、水分率W、熱ロールの表面温度Tを表1に示されるとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作製した。ただし、実施例16では延伸倍率を4.5倍とした(実施例16以外はすべて4.1倍)。実施例2〜8及び比較例1〜5では厚み11μmの延伸フィルムが得られた。実施例9〜15では厚み6μmの延伸フィルムが得られた。実施例16では厚み20μmの延伸フィルムが得られた。
ポリビニルアルコールフィルムの厚み及び水分率W、熱ロールの表面温度T、水分率Wと表面温度Tとの積W・T、縦延伸時のフィルム張力、延伸フィルムにおけるスジ状欠陥の有無、延伸フィルムの結晶化指数、並びに延伸フィルムのMD引張弾性率を表1に示す。
Figure 0006690897
1 ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(PVAフィルム)、2 延伸フィルム、5,6,7,8 熱ロール、10 第1ニップロール、20 第2ニップロール。

Claims (6)

  1. 厚み40μm以下のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、熱ロールを用いて縦延伸を施す延伸工程を含み、
    前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化度が80〜100モル%であり、平均重合度が1500〜8000であり、
    前記延伸工程において、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは2〜20m/分の速度で搬送され、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに係る張力が10〜25MPaであり、
    前記延伸工程に供される前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの水分率をW〔重量%〕、前記熱ロールの表面温度をT〔℃〕とするとき、下記式(I)及び下記式(II):
    W・T≦990 (I)
    500≦W・T (II)
    を満たすように前記縦延伸を行う、延伸フィルムの製造方法。
  2. 前記延伸工程において前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、第1ニップロール、前記熱ロール及び第2ニップロールをこの順に含む搬送経路に沿って搬送され、前記第1ニップロール又は前記第2ニップロールと、前記熱ロールとの間の周速差により前記縦延伸を行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記延伸工程の前に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを加湿する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの水分率Wが7重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 表面温度Tが100〜135℃である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記延伸工程における延伸倍率が2〜6倍である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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