JP6690547B2 - 造水システムおよび造水方法 - Google Patents

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Description

本発明は、造水システムおよび造水方法に関する。より詳細には、逆浸透膜モジュールを用いて海水から淡水を生産する造水システムおよび造水方法に関する。
海水から淡水を生産する造水システムは、高圧ポンプによって浸透圧より高い所定の圧力に昇圧された海水を逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜モジュールに供給し、RO膜を通過させることで、海水中の塩分等を除去して淡水を取り出すシステムである。残りの海水は、濃縮塩水(ブライン)としてRO膜モジュールから排出される。
このRO膜モジュールから排出される濃縮塩水も高圧であり、高い圧力エネルギーを有している。このため、近年では、高圧の濃縮塩水が有する圧力エネルギーを各種のエネルギー回収装置(ERD:Energy Recovery Device)で回収し、回収したエネルギーを海水の加圧に利用することで、高圧ポンプ等の消費電力(消費動力)を削減している。
ERDとしては種々の装置が知られており、例えば、タービン等を用いて電気としてエネルギーを回収する電気式のERD、または、濃縮塩水から機械的にエネルギーを回収する機械式のERDが知られている。ここで、電気式ERDよりもエネルギー変換ロスの小さい機械式ERDを用いた方が、消費電力の削減効果が大きい。
機械式ERDとしては、ターボチャージャー、または、高圧ポンプの駆動軸と同軸上に結合された水車を用いて、濃縮塩水の圧力エネルギーを動力として回収する動力伝達式ERDが知られている。また、別の機械式ERDとして、濃縮塩水の圧力を直接海水の圧力に変換する圧力伝達式ERD(圧力変換装置:Pressure Exchanger)も実用化されている(例えば、特許文献1:特開2004−81913号公報、特許文献2:特開平1−123605号公報参照)。
一方、濃縮塩水は、ERDによって圧力エネルギーが回収された後でも浸透圧エネルギーを有している。特許文献3(米国特許出願公開第2013/0160435号公報)には、ERDによって濃縮塩水の圧力エネルギーを回収した後、さらに濃縮塩水の浸透圧エネルギーも回収することが開示されている。すなわち、特許文献3には、ERDによって圧力エネルギーが回収された濃縮塩水を正浸透(FO:Forward Osmosis)膜モジュールを用いて希釈(増水)し、増量された濃縮塩水のエネルギー(流れ圧力)を水力タービンを用いたERDによって回収し、回収したエネルギーを高圧ポンプや他のポンプで利用することが開示されている。
特開2004−81913号公報 特開平1−123605号公報 米国特許出願公開第2013/0160435号公報
しかしながら、特許文献3に記載されるようなRO膜モジュールから排出された濃縮塩水の圧力エネルギーおよび浸透圧エネルギーを回収する造水システムにおいて、さらにエネルギー回収効率を向上させ、消費電力の削減効果を増大させることが望まれる。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、RO膜モジュールから排出された濃縮塩水の圧力エネルギーおよび浸透圧エネルギーを回収でき、従来よりもエネルギー回収効率が高く、消費電力の削減効果が大きい造水システムおよび造水方法を提供することを目的とする。
(1) 海水から淡水を生産する造水システムであって、
前記海水を所定の圧力に昇圧して逆浸透膜モジュールに供給する高圧ポンプと、
前記所定の圧力に昇圧された前記海水から逆浸透膜を介して前記淡水を分離および回収し、濃縮された前記海水である濃縮塩水を排出する、前記逆浸透膜モジュールと、
前記濃縮塩水のエネルギーを動力として回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる、動力伝達式の第1エネルギー回収装置と、
前記濃縮塩水を正浸透膜を介して供給される水によって希釈し、希釈された前記濃縮塩水である希釈塩水を排出する、正浸透膜モジュールと、
前記希釈塩水のエネルギーを機械的に回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる、機械式の第2エネルギー回収装置と、
を備えることを特徴とする、造水システム。
(2) 前記第1エネルギー回収装置と前記正浸透膜モジュールとを接続する流路の途中に、前記濃縮塩水を一時的に排出するための排出流路をさらに備える、上記(1)に記載の造水システム。
(3) 前記第1エネルギー回収装置および前記第2エネルギー回収装置によって、前記高圧ポンプに供給された後、前記逆浸透膜モジュールに供給される前の前記海水が昇圧される、上記(1)または(2)に記載の造水システム。
(4) 前記第1エネルギー回収装置は、ターボチャージャー、または、前記高圧ポンプの駆動軸と同軸上に結合された水車を含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の造水システム。
(5) 前記第2エネルギー回収装置は、前記希釈塩水のエネルギーを動力として回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる動力伝達式エネルギー回収装置、または、前記希釈塩水のエネルギーを圧力として回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる圧力伝達式エネルギー回収装置である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の造水システム。
(6) 前記第2エネルギー回収装置は前記動力伝達式エネルギー回収装置である、上記(5)に記載の造水システム。
(7) 前記動力伝達式エネルギー回収装置は、ターボチャージャー、または、前記高圧ポンプの駆動軸と同軸上に結合された水車を含む、上記(5)または(6)に記載の造水システム。
(8) 前記正浸透膜モジュールから排出され前記第2エネルギー回収装置に供給される前の前記希釈塩水の一部のエネルギーを圧力として回収し、前記第1エネルギー回収装置によってエネルギーを回収された後、前記正浸透膜モジュールに供給される前の前記濃縮塩水に伝達することで、該濃縮塩水を昇圧させる圧力伝達式のエネルギー回収装置を、さらに備える、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の造水システム。
(9) 海水から淡水を生産する造水方法であって、
高圧ポンプを用いて、前記海水を所定の圧力に昇圧して逆浸透膜モジュールに供給する昇圧工程と、
前記逆浸透膜モジュールを用いて、前記所定の圧力に昇圧された前記海水から逆浸透膜を介して前記淡水を分離し、濃縮された前記海水である濃縮塩水を排出する、逆浸透工程と、
動力伝達式の第1エネルギー回収装置を用いて、前記濃縮塩水のエネルギーを動力として回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる、第1エネルギー回収工程と、
正浸透膜モジュールを用いて、前記濃縮塩水を正浸透膜を介して供給される水によって希釈し、希釈された前記濃縮塩水である希釈塩水を排出する、正浸透工程と、
機械式の第2エネルギー回収装置を用いて、前記希釈塩水のエネルギーを機械的に回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる、第2エネルギー回収工程と、を備え、
造水開始時の所定期間において、前記第1エネルギー回収装置と前記正浸透膜モジュールとを接続する流路の途中に設けられた排出流路によって、前記濃縮塩水を一時的に排出することを特徴とする、造水方法。
本発明によれば、RO膜モジュールから排出された濃縮塩水の圧力エネルギーおよび浸透圧エネルギーを回収でき、従来よりもエネルギー回収効率が高く、消費電力の削減効果が大きい造水システムおよび造水方法を提供することができる。
本発明の実施形態1の造水システムの構成を示す模式図である。 本発明の実施形態1の造水システムの変形例の構成を示す模式図である。 本発明の実施形態2の造水システムの構成を示す模式図である。 本発明の実施形態3の造水システムの構成を示す模式図である。 本発明の実施形態4の造水システムの構成を示す模式図である。 本発明の実施形態5の造水システムの構成を示す模式図である。
以下、本発明の造水システムおよび造水方法の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
<実施形態1>
図1に示されるように、本実施形態の造水システムは、基本的に、高圧ポンプ(HP:High pressure Pump)3と、逆浸透(RO)膜モジュール1と、動力伝達式の第1エネルギー回収装置(ターボチャージャー511)と、正浸透(FO)膜モジュール2と、機械式の第2エネルギー回収装置(ターボチャージャー521)と、排出流路61とを備えている。
本実施形態の造水システムでは、高圧ポンプによって逆浸透圧より高い所定の圧力に昇圧された海水をRO膜モジュール1に供給し、RO膜を通過させることで、海水中の塩分等を除去して淡水を取り出すシステムである。残りの海水は、濃縮塩水(ブライン)としてRO膜モジュールから排出される。本実施形態の造水システムは、このようにして海水から淡水(生産水)を生産する。以下、本実施形態の造水システムの詳細について説明する。
(高圧ポンプ)
本実施形態の造水システムでは、まず、海水をポンプ41(P−1)により高圧ポンプ3に供給する。そして、高圧ポンプ3は、海水を所定の圧力(例えば、5.4MPa)に昇圧して、RO膜モジュール1へ供給する。
高圧ポンプは、周波数変換装置(インバータ)を有するインバータ方式のポンプであることが好ましい。この場合、造水システムを始動した直後から定常状態に至るまでの初期状態において高圧ポンプを低速(低流量)で駆動し、徐々に定常状態になるまで流量を増加させることが可能となる。
なお、ポンプ41の上流側には、図示しない前処理装置を備えていてもよい。前処理装置は、ポンプ41で取水した海水を砂濾過やUF膜(Ultrafiltration:限外ろ過膜)、MF膜(Microfiltration:精密ろ過膜)、カートリッジフィルターなどによって処理する装置である。前処理装置により、海水から濁質を除去し、RO膜モジュール1に適合する水質の海水を得ることができる。必要により、pHの調整手段や塩素添加装置などを付け加えることも可能である。
(逆浸透膜モジュール)
逆浸透膜モジュール1は、高圧ポンプ3によって所定の圧力に昇圧された海水から逆浸透膜を介して淡水を分離および回収し、濃縮された海水である濃縮塩水を排出する。こうしてRO膜モジュール1のRO膜を透過した淡水(例えば、塩分含量150ppmw未満)を得ることができる。
分離された淡水は、例えば、図示しない水貯留タンクに送られる。水貯留タンクに貯留された水は、必要により次の精製工程等に送られて生産水となる。
なお、逆浸透(RO)膜および後述する正浸透(FO)膜の形状としては、特に限定されないが、例えば、平膜、スパイラル膜または中空糸膜が挙げられる。なお、図1では、正浸透膜として平膜を簡略化して描いているが、特にこのような形状に限定されるものではない。正浸透膜の材質としては、特に限定されないが、例えば、酢酸セルロース、ポリアミドまたはポリスルホンが挙げられる。
また、RO膜モジュールおよびFO膜モジュールの形態としては、特に限定されないが、中空糸膜を用いる場合は、中空糸膜をストレート配置した軸流型モジュールや、中空糸膜を芯管に巻きつけたクロスワインド型モジュールなどが挙げられる。平膜を用いる場合は、平膜を積み重ねた積層型モジュールや、平膜を封筒状として芯管に巻きつけたスパイラル型モジュールなどが挙げられる。
(第1エネルギー回収装置)
本実施形態において、第1エネルギー回収装置(第1ERD)は、動力伝達式のエネルギー回収装置であり、ターボチャージャー511を含む。
RO膜モジュール1から排出される濃縮塩水の圧力は、高圧ポンプ3によって昇圧された所定の圧力よりは低くなるものの、高い圧力エネルギーを有している。このため、濃縮塩水をターボチャージャー511(動力圧力伝達式ERD)の一方側(濃縮塩水側)へ送ることで、濃縮塩水から海水へ(ターボチャージャーの濃縮塩水側から他方の海水側へ)動力としてエネルギーを伝達することができる。
これにより、ターボチャージャー511によって海水を昇圧させることができる。したがって、第1ERDによって、濃縮塩水の圧力エネルギーを利用し、高圧ポンプの消費動力を低減させることが可能となる。
なお、機械式ERDの一種である圧力伝達式ERDは、一般に動力伝達式ERDよりも変換ロスが小さくエネルギー回収効率に優れている。しかし、RO膜モジュールから排出された濃縮塩水の圧力を圧力伝達式ERDで海水に伝達する場合、高圧ポンプを通過する流路とは別の流路の海水を圧力伝達式ERDで昇圧する。そして、圧力伝達式ERDで昇圧された海水は、特許文献1および特許文献3(図2等)に開示されるように、さらにブースターポンプを用いて高圧ポンプから出た海水と同じ圧力まで昇圧する必要がある。
これに対して、動力伝達式ERDは、電気式ERDよりもエネルギー回収効率が高く、また、圧力伝達式ERDよりERD自体のエネルギー回収効率は低いものの、圧力伝達式ERDのようにブースターポンプは必要ないといった利点がある。
また、一般に、ターボチャージャーは、高圧ポンプの駆動軸と同軸上に結合された水車などに比べて、処理可能な流量範囲が広いため、大量処理に適しているという利点がある。
(正浸透膜モジュール)
正浸透膜モジュール2は、正浸透膜で仕切られた第1室21および第2室22を有している。ポンプ42(P−2)は、濃縮塩水(ドロー溶液)を正浸透膜モジュール2の第2室22に供給する。一方、ポンプ43(P−3)は、淡水(フィード溶液)を正浸透膜モジュール2の第1室21に供給する。これにより、第2室22内の濃縮塩水は、正浸透現象により正浸透膜を介して第1室21側から供給される水によって希釈され、希釈塩水(希釈された濃縮塩水)が第2室22の流出口から排出される。
このようにして、正浸透膜モジュール2では、濃縮塩水が水によって希釈され、増量された希釈塩水となる。
正浸透膜モジュール2の第2室22から排出される希釈塩水は、例えば、図示しないタンクに送られ、排水処理を施された後、海洋へ排出される。
なお、逆浸透処理は、人為的に強い圧力を加えることにより、逆に高濃度の処理対象液から低濃度液(水など)側に水を移動させて水を回収する処理であるが、強い圧力を加えるためのエネルギー消費量が多く、正浸透処理よりもエネルギー効率が低い。したがって、本実施形態の造水システムおよび造水方法は、正浸透処理を組み合わせて浸透圧エネルギーも回収しているため、例えば、特許文献1に開示されるように、複数のRO膜モジュールを用いてエネルギー回収効率を高めるシステムよりも、回収効率の点で有利である。
(第2エネルギー回収装置)
本実施形態において、第2エネルギー回収装置(第2ERD)は、動力伝達式エネルギー回収装置であり、ターボチャージャー521を含む。ターボチャージャー521は、FO膜モジュール2によって希釈塩水のエネルギー(流れ圧力)を動力として回収し、海水に伝達することで、海水を昇圧させることができる。
このように、第1エネルギー回収装置(第1ERD)および第2エネルギー回収装置(第2ERD)によって、RO膜モジュールから排出された濃縮塩水の圧力エネルギーだけでなく浸透圧エネルギーも回収することで、濃縮塩水の圧力エネルギーだけを回収する場合よりも、エネルギー回収効率を向上させ、消費電力の削減効果を大きくすることができる。
なお、本明細書において、機械式エネルギー回収装置(機械式ERD)とは、塩水のエネルギーを機械的に回収する装置であり、ターボチャージャー、または、高圧ポンプの駆動軸と同軸上に結合された水車を用いて、濃縮塩水の圧力エネルギーを動力として回収する動力伝達式ERDと、濃縮塩水の圧力を直接海水の圧力に変換する圧力伝達式ERD(圧力変換装置:Pressure Exchanger)とを包含する概念である。
すなわち、機械式ERDは、タービン等を用いて電気としてエネルギーを回収する電気式エネルギー回収装置(電気式ERD)とは異なる種類のERDである。電気式ERDよりも機械式ERDの方がエネルギー変換ロスが少ないため、エネルギー回収効率が高い利点がある。したがって、第2ERDとして、機械式ERDを採用することにより、従来よりもさらに高圧ポンプ等の消費動力を削減することができる。
ただし、電気式ERDは、発電した電気を高圧ポンプ等へ配線を介して供給すればよいため、設計の自由度が高いが、機械式ERDは、特に造水システムの始動時や停止時の操作も考慮すると、システム全体の設計が難しい。本発明は、このような機械式ERDを用いた場合における設計の困難性を克服して、よりエネルギー回収効率の高いシステムを実現したものである。
また、本実施形態においては、図1に示すように、第1エネルギー回収装置(第1ERD)および第2エネルギー回収装置(第2ERD)によって、高圧ポンプの下流側に(RO膜モジュール1まで)エネルギーを伝達(供給)している。すなわち、第1ERDおよび第2ERDは、高圧ポンプに供給された後、逆浸透膜モジュールに供給される前の海水を昇圧するように配置されている。
このような配置構成を採用したのは、高圧ポンプの上流側に動力(圧力)を伝達し、高圧ポンプの吸い込み側を高圧にすると、汎用の高圧ポンプを採用することが困難になり、上流側の耐圧性能の高い特別なポンプを用いる必要があり、設備コストが増大するからである。なお、実施形態2または3のように、第1エネルギー回収装置(第1ERD)および第2エネルギー回収装置(第2ERD)によって、高圧ポンプに直接、動力を伝達(供給)してもよい。
(排出流路)
本実施形態の造水システムは、ターボチャージャー511(第1ERD)と正浸透膜モジュール2とを接続する流路の途中に、濃縮塩水を一時的に排出するための排出流路61をさらに備えている。これにより、造水システムが始動された直後から定常状態に至るまでの初期状態において、三方活栓62を切り替えて、濃縮塩水を排出流路61から排出することができる。また、フラッシング時の洗浄排水を排出するために使用することもできる。
初期状態では、RO膜モジュール1内の海水の圧力が低く、十分にRO膜による水の分離が行われないため、RO膜モジュール1から排出される濃縮塩水は十分に濃縮されておらず、FO膜モジュール2で十分な浸透圧を発揮する濃度に達していない。このため、初期状態では濃縮塩水を排出流路61から排出し、濃縮塩水がRO膜モジュールで十分に濃縮されてから、三方活栓62を切り替えて濃縮塩水をFO膜モジュール2側へ供給する。なお、このとき、ポンプ42(P−2)、ポンプ43(P−3)は停止し、FO膜モジュールおよび第2ERDでのエネルギー損失を低減する。
特に本実施形態のように、FO膜モジュール2から排出される希釈塩水のエネルギーをターボチャージャーで回収する場合は、後述する実施形態2の水車522のように、海水側と希釈塩水側の連動をクラッチで切ることができない。このため、初期状態におけるFO膜モジュールおよび第2ERDでのエネルギー損失を低減する上で、排出流路61を設けることが望ましい。
ここで、図2に示す変形例のように、圧力伝達式ERD51(第1ERD)と正浸透膜モジュール2とを接続する流路の途中に、濃縮塩水を一時的に貯留するタンク63を設け、濃縮塩水を一時的に排出するための排出流路61をタンク63に接続してもよい。排出流路61は、バルブ等によって開閉可能な流路である。
なお、排出流路61の下流側は、例えば、図示しないタンク等に接続され、タンクに貯留された濃縮塩水は、他の排水と混合され、排水処理を施された後、海洋へ排出される。
本実施形態の造水システムおよび造水方法においては、上述したような設計上の工夫により、機械式ERDを用いた場合における設計の困難性を克服して、よりエネルギー回収効率の高いシステムを構築することができる。これにより、RO膜モジュールから排出された濃縮塩水の圧力エネルギーおよび浸透圧エネルギーを回収でき、従来よりもエネルギー回収効率が高く、消費電力の削減効果が大きい造水システムおよび造水方法を提供することができる。
また、本実施形態の造水システムでは、第1ERDのみを備える既存の設備(造水システム)に対して、基本的な構成を変更することなく、FO膜モジュールおよび第2ERD等を付加することで構築することができる点も、一つの大きな利点である。
(実施形態2)
図3に示されるように、本実施形態の造水システムは、第2ERDがターボチャージャーではなく、高圧ポンプ3の駆動軸(モータ軸)と同軸上に結合された水車522を含む装置である点で、実施形態1とは異なる。それ以外の点は、以下に説明する点を除き基本的に実施形態1と同様であるため、実施形態1と重複する説明は省略する。
水車522としては、緩衝水車および反動水車のいずれも用いることができるが、流量調整運転が容易である点で、緩衝水車を用いることが好ましい。例えば、緩衝水車としてペルトン水車を用いた場合、ERDに要求される出力の変化に応じて、水車に濃縮塩水等を噴射するためのノズルの開度を変更することで、濃縮塩水等の流量を調整することができる。
緩衝水車としては、ペルトン水車以外にも、例えば、ターゴインパルス水車、クロスフロー水車を用いてもよい。これらの中でも、回収効率やメンテナンスの容易性の観点から、ペルトン水車を用いることが好ましい。
なお、高圧ポンプ3と水車522との間にクラッチを設けてもよい。これにより、造水システムを始動してから定常状態に至る初期状態において、排出流路61から濃縮塩水を排出する代わりに、クラッチを切ることで、初期状態においても水車522が高圧ポンプ3の負荷とならないようにすることができる。
(実施形態3)
図4に示されるように、本実施形態の造水システムは、第1ERDが、ターボチャージャーではなく、高圧ポンプ3の駆動軸と同軸上に結合された水車を含む装置である点で、実施形態1とは異なる。それ以外の点は、以下に説明する点を除き基本的に実施形態1と同様であるため、実施形態1と重複する説明は省略する。
本実施形態においては、第2ERDにターボチャージャー(521aおよび521b)を用いており、ターボチャージャーの希釈塩水側521aは、ターボチャージャーの海水側521bと連結されている。ここで、ターボチャージャーの海水側521bが高圧ポンプ3の下流側に配置されている。これにより、汎用の高圧ポンプを採用することが可能となり、耐圧性能の高い特別なポンプを用いるといった設備コストの増大を回避することができる。
なお、本実施形態の造水システムにおいて、RO膜モジュールによる水の回収率(取り込んだ海水の量に対する生産水の比率)を30重量%としたとき、消費動力削減率を仮想計算によって求めたところ、ターボチャージャー521a,521bがない場合(浸透圧エネルギーの回収を実施しない場合)と比較して、消費動力削減率は11%であった。なお、計算は、FOの浸透率を60重量%、水車512(第1ERD)による動力回収率を88%、ターボチャージャー521a,521bによる動力回収率を82%、ポンプ効率を82%、電動機効率を94%と仮定して実施した。
(実施形態4)
図5に示されるように、本実施形態の造水システムは、さらに、圧力伝達式ERD523(PX)を備える点で、実施形態1とは異なる。それ以外の点は、以下に説明する点を除き基本的に実施形態1と同様であるため、実施形態1と重複する説明は省略する。
本実施形態において、圧力伝達式ERD523は、FO膜モジュール2から排出された希釈塩水の流れ圧力の一部を、ポンプ42(P−2)の上流側から分岐した流路内の濃縮塩水に圧量として伝達し、ポンプ42の負荷を低減することができる。
(実施形態5)
図6に示されるように、本実施形態の造水システムは、第2ERDが動力伝達式エネルギー回収装置ではなく、希釈塩水のエネルギーを圧力として回収し、海水に伝達することで、海水を昇圧させる圧力伝達式エネルギー回収装置である点で、実施形態1とは異なる。それ以外の点は、以下に説明する点を除き基本的に実施形態1と同様であるため、実施形態1と重複する説明は省略する。
圧力伝達式ERD523は、一般に動力伝達式ERDよりも変換ロスが小さくエネルギー回収効率に優れている。したがって、本実施形態においては、システム全体のエネルギー回収効率を高めることができる可能性がある。ただし、圧力伝達式ERDで昇圧された海水は、さらにブースターポンプ46(BP)用いて高圧ポンプから出た海水と同じ圧力まで昇圧する必要がある。このため、システム全体のエネルギー回収効率は、ERDの回収効率だけでなく、ブースターポンプを設けることによる消費動力の増加も加味して求められる。
また、高圧ポンプ3を通過する流路とは別の流路の海水を圧力伝達式ERDで昇圧するため、造水システムを始動してから定常状態に至る初期状態においても、動力伝達式ERD523が高圧ポンプ3の負荷とならない。したがって、本実施形態においては、初期状態において、必ずしも排出流路61から濃縮塩水を排出する必要はない。
1 逆浸透(RO)膜モジュール、2 正浸透(FO)膜モジュール、21 第1室、22 第2室、3 高圧ポンプ、41,42,43,44,45 ポンプ、46 ブースターポンプ、511,521 ターボチャージャー、512,522 水車、523 圧力伝達式エネルギー回収装置、61 排出流路、62 三方活栓。

Claims (8)

  1. 海水から淡水を生産する造水システムであって、
    前記海水を所定の圧力に昇圧して逆浸透膜モジュールに供給する高圧ポンプと、
    前記所定の圧力に昇圧された前記海水から逆浸透膜を介して前記淡水を分離および回収し、濃縮された前記海水である濃縮塩水を排出する、前記逆浸透膜モジュールと、
    前記濃縮塩水のエネルギーを動力として回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる、動力伝達式の第1エネルギー回収装置と、
    前記濃縮塩水を正浸透膜を介して供給される水によって希釈し、希釈された前記濃縮塩水である希釈塩水を排出する、正浸透膜モジュールと、
    前記希釈塩水のエネルギーを機械的に回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる、機械式の第2エネルギー回収装置と、
    を備え
    前記第1エネルギー回収装置と前記正浸透膜モジュールとを接続する流路の途中に、前記濃縮塩水を一時的に排出するための排出流路をさらに備える、造水システム。
  2. 前記第1エネルギー回収装置および前記第2エネルギー回収装置によって、前記高圧ポンプに供給された後、前記逆浸透膜モジュールに供給される前の前記海水が昇圧される、請求項1記載の造水システム。
  3. 前記第1エネルギー回収装置は、ターボチャージャー、または、前記高圧ポンプの駆動軸と同軸上に結合された水車を含む、請求項1または2に記載の造水システム。
  4. 前記第2エネルギー回収装置は、前記希釈塩水のエネルギーを動力として回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる動力伝達式エネルギー回収装置、または、前記希釈塩水のエネルギーを圧力として回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる圧力伝達式エネルギー回収装置である、請求項1〜のいずれか1項に記載の造水システム。
  5. 前記第2エネルギー回収装置は前記動力伝達式エネルギー回収装置である、請求項に記載の造水システム。
  6. 前記動力伝達式エネルギー回収装置は、ターボチャージャー、または、前記高圧ポンプの駆動軸と同軸上に結合された水車を含む、請求項またはに記載の造水システム。
  7. 前記正浸透膜モジュールから排出され前記第2エネルギー回収装置に供給される前の前記希釈塩水の一部のエネルギーを圧力として回収し、前記第1エネルギー回収装置によってエネルギーを回収された後、前記正浸透膜モジュールに供給される前の前記濃縮塩水に伝達することで、該濃縮塩水を昇圧させる圧力伝達式のエネルギー回収装置を、さらに備える、請求項1〜のいずれか1項に記載の造水システム。
  8. 海水から淡水を生産する造水方法であって、
    高圧ポンプを用いて、前記海水を所定の圧力に昇圧して逆浸透膜モジュールに供給する昇圧工程と、
    前記逆浸透膜モジュールを用いて、前記所定の圧力に昇圧された前記海水から逆浸透膜を介して前記淡水を分離し、濃縮された前記海水である濃縮塩水を排出する、逆浸透工程と、
    動力伝達式の第1エネルギー回収装置を用いて、前記濃縮塩水のエネルギーを動力として回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる、第1エネルギー回収工程と、
    正浸透膜モジュールを用いて、前記濃縮塩水を正浸透膜を介して供給される水によって希釈し、希釈された前記濃縮塩水である希釈塩水を排出する、正浸透工程と、
    機械式の第2エネルギー回収装置を用いて、前記希釈塩水のエネルギーを機械的に回収し、前記海水に伝達することで、前記海水を昇圧させる、第2エネルギー回収工程と、を備え、
    造水開始時の所定期間において、前記第1エネルギー回収装置と前記正浸透膜モジュールとを接続する流路の途中に設けられた排出流路によって、前記濃縮塩水を一時的に排出することを特徴とする、造水方法。
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