JP6689857B2 - エントロピックエネルギの伝達方法及び回路 - Google Patents

エントロピックエネルギの伝達方法及び回路 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本願は、2015年6月6日に出願された米国特許出願第14/729,851号に基づく優先権を主張するものである。米国特許出願第14/729,851号は、2014年12月17日に出願された米国特許第14/574,175号の一部継続出願である。米国特許出願第14/574,175号は、2014年1月16日に出願され、2015年1月27日に特許第8,940,850号として特許付与された米国特許出願第14/156,457号の一部継続出願である。米国特許出願第14/156,457号は、2013年4月5日に出願された米国仮特許出願第61/808,733号の優先権を主張している。米国仮特許出願第61/808,733号は、2013年3月29日に出願され、2015年4月21日に特許第9,011,627号として特許付与された米国特許出願第13/853,712号の一部継続出願である。更に、米国特許出願第13/853,712号は、2012年8月30日に出願され、2014年1月21日に特許第8,633,289号として特許付与された米国特許出願第13/599,996号の一部継続出願である。これら先行出願の開示は、参照として本明細書に取り込まれるものである。
本開示はエントロピックエネルギの蓄積および放出を行うエネルギ貯蔵装置の放電方法と、そのエネルギ貯蔵装置を備える回路の実施形態に関するものである。
静電容量は、大量の電気エネルギを貯蔵するためのエネルギ貯蔵方法としては広く使われていない。エネルギ貯蔵方法として、静電キャパシタは非常に優れた速度でエネルギの蓄積及び放出を行うことができる。このエネルギ貯蔵を実現する物理的なメカニズムは広く記載され、説明されている。一般的に、誘電体素材における従来の静電エネルギ貯蔵の充放電メカニズムは、ピコ秒から数百マイクロ秒の時間領域にある。
最近の傾向として向上した電気エネルギ貯蔵のため電気化学キャパシタが用いられている。これらのキャパシタは二重層容量および擬似容量の2つの主要なメカニズムによりその特性を引き出している。二重層型キャパシタは後述する電気二重層を用いて非常に小さな電荷分離(d)を達成し、以下の数式1〜3(数1〜3)で明らかなように、所定の電圧の電界(E)を増強させ、容量(C)を増加させ、結果として従来の平面キャパシタに対して所定の電圧の貯蔵エネルギ(U)を増加させる。

式中、E=電界、V=電位差または電圧、d=帯電プレートの距離である。

式中、k=比誘電率、C=容量、ε0=真空の誘電率、A=断面積である。

式中、U=貯蔵エネルギ、C=容量、V=電圧である。
実際には、厚さ(d)をより薄くすると(通常は巻回または積層された)プレートの単位面積当たりの表面積を大きくすることができる。数式2(数2)から明らかなように、この面積増加は容量も顕著に増加させる。上述の性質を有する装置は一般的には電気二重層キャパシタ(EDLC)と称される。
二重層キャパシタと電池とのハイブリッドである擬似キャパシタでは、素材の大きさおよび表面の両方が重要な役割を果たす。これにより、それらは従来の平面キャパシタよりかなり大きなエネルギを蓄積できるが、高価な原材料および複雑な加工によるコストの高さを含む、最先端の電池と同様に多くの信頼性および科学的な課題に直面している。擬似容量は、関連する電極の表面またはその非常に近くで起こる化学反応(酸化および還元)によりエネルギを貯蔵する点において、電池技術と類似する。表面における反応は化学電池技術における際立った特徴である。いわゆる「スーパーキャパシタ」には、これらの効果の一方または両方(例えば、二重層および疑似容量)を適用することができる。
既存のEDLCが処理できるのは絶縁破壊しない程度の低電圧のみである。多くの実用的な用途(例えば電気自動車)に必要とされる、より高い電圧に対応するために、電池を高電圧用途のために直列接続するように、低電圧のEDLCも直列接続される。
より大きな蓄電容量を有し、直列接続が可能であり、より大きな電圧を制御可能なエネルギ貯蔵装置に対するニーズが存在する。エネルギ貯蔵装置から放電する方法に対しても同様にニーズが存在する。
本開示はエントロピックエネルギ貯蔵装置(EESD)の放電方法の実施形態に関するものである。1つまたは複数のEESDを備える回路の実施形態についてもここに開示する。
エネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法には、(i)第1電圧レベルまで充電された第1エネルギ貯蔵装置を備える回路であって、第1エネルギ貯蔵装置は誘電体フィルムを介挿させた第1及び第2電極を備え、誘電体フィルムはエントロピック素材で構成され、第1電極が第2電極に対して正または負に帯電している、回路を準備するステップと、(ii)放電期間に回路の第1操作モードにおいて、極性反転した電位を第1エネルギ貯蔵装置の第1電極に印加するステップが含まれ、それにより第1エネルギ貯蔵装置から第1エネルギ貯蔵装置の第2電極に接続された負荷に電力を供給する。ある実施形態において、極性反転した電位は第1電圧レベルよりも低く、かつ、高インピーダンス状態にあるエネルギ貯蔵装置により生成された電圧よりも低い。また、他の実施形態において、第1電極は第2電極に対して正に帯電され、第1電極に対して極性反転した電位を印加するステップには、第1電極に負の電圧を印加するステップが含まれる。前述の実施形態の一部または全部においては、回路は直列接続された複数の第1エネルギ貯蔵装置を備える。
第1電圧に充電された第1エネルギ貯蔵装置を準備するステップには、第1エネルギ貯蔵装置を接地するステップと、第1エネルギ貯蔵装置を第1電圧まで充電するための所定期間に亘り、第1エネルギ貯蔵装置に充電電圧を印加するステップとが含まれる。ある実施形態において、第1エネルギ貯蔵装置を充電するステップには、充電電圧の印加中に第1エネルギ貯蔵装置の充電電流を監視するステップと、選択された最小値と充電電流を比較するステップと、充電電流が選択された最小値以下の場合に、回路を第2操作モードに切り替え、回路を高インピーダンス状態にし、第1エネルギ貯蔵装置が充電電圧を受領せず、第1エネルギ貯蔵装置から負荷にエネルギが実質的に供給されないようにするステップと、が含まれる。
独立的な実施形態において、回路が、第1電圧レベルに充電され、第1エネルギ貯蔵装置と直列接続された第2エネルギ貯蔵装置と、第2エネルギ貯蔵装置を接地可能な第1スイッチと、第2エネルギ貯蔵装置を負荷に接続可能な第2スイッチとをさらに備え、回路の第1操作モードにて第1エネルギ貯蔵装置の第1電極に極性反転した電位を印加するステップには、第1スイッチにより第2エネルギ貯蔵装置を接地させるステップと、第2スイッチにより第2エネルギ貯蔵装置を負荷に接続するステップとが含まれる。第2エネルギ貯蔵装置は第1及び第2電極の間に誘電体フィルムを備え、誘電体フィルムはエントロピック素材で構成される。
上記の実施形態の一部または全部においては、エネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法は、さらに、少なくとも閾値回復期間中に回路を第2操作モードに切り替え、回路を高インピーダンス状態にし、第1エネルギ貯蔵装置から負荷に実質的に電力が供給されず、エントロピック素材をエントロピ平衡の所望レベルまで戻す、電圧回復期間を提供するステップと、外部電力源から第1エネルギ貯蔵装置に再充電せず、第1操作モードと第2操作モード間で繰り返し回路を切り替えるステップとを含む。ある実施形態において、放電期間と回復期間が正確に処理サイクルを構成し、放電期間が処理サイクルの0.1〜99.9%となる。また、前述した実施形態のいずれにおいても、エネルギ供給方法には、第2操作モード中にエネルギ貯蔵装置が負荷から外されると、さらに、エネルギ貯蔵装置を負荷に再接続し、第2操作モードから第1操作モードに回路を切り替えるステップが含まれる。
ある実施形態において、第1操作モードと第2操作モード間で回路を切り替えるステップはコントローラにより実施される。実施形態の1つにおいて、本エネルギ供給方法は、(i)電圧が所望の放電電圧レベルに達するまでの第1操作モード中に、コントローラを用いて第1エネルギ貯蔵装置の電圧を監視するステップと、(ii)所望の放電電圧レベルに達すると、コントローラを用いて第1操作モードから第2操作モードに回路を切り替えるステップと、(iii)電圧が所望の回復電圧レベルに達するまでの第2操作モード中に、コントローラを用いて第1エネルギ貯蔵装置の電圧を監視するステップと、(iv)所望の回復電圧レベルに達すると、コントローラを用いて第2操作モードから第1操作モードに回路を切り替えるステップと、を含む。他の独立的な実施形態において、本エネルギ供給方法は、(a)コントローラを用いて、放電期間までの時間値を受領するステップと、(b)コントローラを用いて、回復期間までの時間値を受領するステップと、(c)コントローラを用いて、回路が第1操作モードにある間に放電期間を監視するステップと、(d)コントローラを用いて、放電期間に時間値が達すると回路を第1操作モードから第2操作モードに切り替えるステップと、(e)コントローラを用いて、回路が第2操作モードにある間に回復期間を監視するステップと、(f)コントローラを用いて、回復期間に時間値が達すると第1エネルギ貯蔵装置の電流と電圧のレベルを受領するステップと、(g)コントローラを用いて、電流と電圧のレベルとそれらの目標値を比較し、目標値との比較結果を提供するステップと、(i)コントローラを用いて、目標値との比較結果の少なくとも一部に基づき、放電期間と回復期間までの時間値を更新するステップと、を含む。その他の実施形態において、本エネルギ供給方法は、(j)コントローラを用いて、第2操作モードから第1操作モードに回路を切り替えるステップと、(k)(c)から(i)までのステップを繰り返すステップと、をさらに含む。
上記の実施形態の一部または全部において、回路が第1エネルギ貯蔵装置の配列を備え、mとnをそれぞれ1より大きな整数として、配列が直列に接続されたn個のエネルギ貯蔵装置をm列の並列で備えることもできる。これらの実施形態において、本エネルギ供給方法は、負荷をマルチポジションスイッチにより配列の第1列に接続するステップと、第1放電期間中に極性反転した電位を配列の第1列の第1エネルギ貯蔵装置の第1電極に印加し、これにより電力を配列の第1列から負荷に供給するステップと、第1放電期間終了後に、マルチポジションスイッチにより負荷を配列の後続列に接続するステップと、後続の放電期間中に極性反転した電位を配列の後続列の第1エネルギ貯蔵装置の第1電極に印加し、これにより電力を配列の後続列から負荷に供給するステップと、を含む。
例示的な回路は、(a)本明細書に記載した第1エネルギ貯蔵装置と、(b)誘電体フィルムを介挿させた第1及び第2電極を備え、第1電極は第2電極に対して正または負に帯電した、第2エネルギ貯蔵装置と、(c)第1エネルギ貯蔵装置の第1電極と結合され、(i)第1エネルギ貯蔵装置の第1電極と充電電圧源を結合し、(ii)第1エネルギ貯蔵装置の第1電極と負荷を結合し、または、(iii)第1エネルギ貯蔵装置を高インピーダンス状態にし、第1エネルギ貯蔵装置から負荷に実質的にエネルギが供給されないようにする、第1マルチポジションスイッチと、(d)第2エネルギ貯蔵装置の第2電極と結合され、第2エネルギ貯蔵装置の第2電極を負荷と接続または接地する、第2マルチポジションスイッチと、(e)第2エネルギ貯蔵装置の第1電極と結合され、(i)第2エネルギ貯蔵装置の第1電極と充電電圧を結合し、(ii)第2エネルギ貯蔵装置の第1電極を接地し、または、(iii)第2エネルギ貯蔵装置の第2電極を接地する第2マルチポジションスイッチと協同して、第2エネルギ貯蔵装置を高インピーダンス状態にする、第3マルチポジションスイッチと、を備える。ある実施形態において、第2エネルギ貯蔵装置の誘電体フィルムは誘電体素材で構成される。回路は、第1、第2および第3マルチポジションスイッチを制御可能なコントローラをさらに備えることもできる。
独立的な実施形態において、例示的な回路は、(a)m1とn1を整数として、直列に接続されたn1個のエネルギ貯蔵装置をm1列の並列に備える、本明細書に記載のエネルギ貯蔵装置の第1配列と、(b)m2とn2を整数として、直列に接続されたn2個のエネルギ貯蔵装置をm2列の並列に備え、第2配列の各エネルギ貯蔵装置は誘電体フィルムを介挿させた第1及び第2電極を備え、第1電極は第2電極に対して正または負に帯電した、エネルギ貯蔵装置の第2配列と、(c)第1配列と接続され、かつ、接地された、第1入力マルチプレクサと、(d)第2配列と接続された第2入力マルチプレクサと、(e)第1配列と結合され、(i)第1配列と充電電圧源を結合し、(ii)第1配列と負荷を結合し、または、(iii)第1配列を高インピーダンス状態にし、第1配列から負荷に実質的にエネルギが供給されないようにする、第1マルチポジションスイッチと、(f)第2入力マルチプレクサと結合され、(i)第2入力マルチプレクサと充電電圧源を結合し、または(ii)第2入力マルチプレクサを接地する、第2マルチポジションスイッチと、(g)第2配列の第1端と結合され、(i)第2配列の第1端と負荷を結合し、(ii)第2配列の第1端を接地し、または、(iii)第2入力マルチプレクサを接地する第2マルチポジションスイッチと協同して、第2配列を高インピーダンス状態にする、第3マルチポジションスイッチと、(h)第1および第2入力マルチプレクサを制御可能であり、第1、第2および第3マルチポジションスイッチを制御可能なコントローラと、を備える。
本発明の前述およびその他の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照することにより、以下の詳細な説明から明らかになる。
例示的なエネルギ貯蔵装置の模式図である。 例示的なエネルギ貯蔵装置の断面模式図である。 他の例示的なエネルギ貯蔵装置の断面模式図である。 本明細書に開示のエントロピックエネルギ貯蔵装置を実装した例示的な回路図である。充電状態(状態A)、放電状態(状態B)、高インピーダンス状態(状態C)の回路を示す。 本明細書に開示のエントロピックエネルギ貯蔵装置から負荷へエネルギを供給する一般的な方法のフローチャートである。 本明細書に開示のエントロピックエネルギ貯蔵装置に充電する方法のフローチャートである。 少なくとも1つが本明細書に開示のエントロピックエネルギ貯蔵装置である、2つのエネルギ貯蔵装置を備える例示的な回路図である。充電状態(状態A)、放電状態(状態B)、高インピーダンス/放電チェック状態(状態C)の回路を示す。 少なくとも1つが本明細書に開示のエントロピックエネルギ貯蔵装置である、2つのエネルギ貯蔵装置を用いた負荷へのエネルギを供給する一般的な方法のフローチャートである。 3つの理想的なキャパシタを直列接続した例示的な回路図である。 3つのエントロピックエネルギ貯蔵装置を直列結合した例示的な回路図である。 図4に記載の回路における例示的なエントロピックエネルギ貯蔵装置の充電割合に対する放電率のグラフである。 図4に記載の回路における例示的なエントロピックエネルギ貯蔵装置の(50%充電状態における)放電率に基づく負放電電圧の効果を表したグラフである。 図12と同一データに関する負放電電圧に対する放電率(A/m2)のグラフである。 本明細書に記載のエントロピックエネルギ貯蔵装置の正放電による負荷にエネルギを供給する一般的な方法のフローチャートである。 本明細書に開示のエントロピックエネルギ貯蔵装置の配列を備える例示的な回路図である。充電状態(状態A)、放電状態(状態B)、高インピーダンス状態(状態C)の回路を示す。 図4、7、または15のいずれか1つの回路の操作中のマルチポジションスイッチの制御に関するフローチャートである。 図4、7、または15のいずれか1つの回路の正放電モードで操作中のマルチポジションスイッチの制御に関するフローチャートである。 例示的なエントロピックエネルギ貯蔵装置の充電及び放電における時間に対する電圧のグラフである。 市販静電キャパシタの0Vから10Vまでの充電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 0Vの印加電圧における図19の市販静電キャパシタの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 1Vの印加電圧における図19の市販静電キャパシタの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 2.5Vの印加電圧における図19の市販静電キャパシタの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 5Vの印加電圧における図19の市販静電キャパシタの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 7.5Vの印加電圧における図19の市販静電キャパシタの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 10Vの印加電圧における図19の市販静電キャパシタの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 本明細書で開示のエントロピックエネルギ貯蔵装置の0Vから10Vまでの充電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 0Vの印加電圧における(10Vに充電された)EESDの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 2.5Vの印加電圧における(10Vに充電された)EESDの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 5Vの印加電圧における(10Vに充電された)EESDの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 10Vの印加電圧における(10Vに充電された)EESDの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 0Vの印加電圧と2秒の高インピーダンスにおける(10Vに充電された)EESDの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 2.5Vの印加電圧と2秒の高インピーダンスにおける(10Vに充電された)EESDの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 5Vの印加電圧と2秒の高インピーダンスにおける(10Vに充電された)EESDの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 10Vの印加電圧と2秒の高インピーダンスにおける(10Vに充電された)EESDの放電時間に対する電圧を示す充電曲線である。 図4に記載の例示的なエントロピックエネルギ貯蔵装置の正放電中の経過時間に対する電圧の変化を示す充電曲線である。
詳細な説明
本開示はエントロピックエネルギ貯蔵装置(EESD)の放電方法の実施形態に係るものである。上記と併せて、1つまたは複数のEESDを備える回路の実施形態も開示する。エネルギ貯蔵の分野における開示された方法およびEESDの適用は、電圧の揺れを滑らかにし、あるいは、回避するための電子部品から、電力網における大規模なエネルギ貯蔵まで多岐にわたる。エネルギ貯蔵量もピコジュールレベルの小さなものからテラジュールレベルまで多岐にわたる。本明細書に記載の方法と素材はこれらのどの規模においても適用可能である。EESDを適用した一般的な(固定または携帯式の)装置として、携帯電話、ノート型パソコン、車、そして、電力網におけるバックアップや起動用蓄電池等があり、電子回路で使われる一般の静電バイパス(デカップリング)キャパシタの代用品としても使える。本明細書に記載されたEESD、および、開示されたEESDの放電方法がもたらす高エネルギ密度、所望の安全性、および低コストにより、以前には考えられなかった用途での電気エネルギ貯蔵の拡張した使用が期待される。
I.定義
以下の用語や省略語の説明は、本開示のより良い記載のため、及び、本開示の分野における一般的な技術を示すために提供される。本明細書において「備える」とは「含んでいる」ことを意味し、単数で記載された単語も、明示的な記載がない限り、複数の場合も含むものとする。
他に説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または等価な方法および素材であれば本開示の実用または試験に適用可能であるが、以下には最適な方法及び素材を記載する。本明細書における素材、方法、例示は説明のためのみに用いられるものであって、制限をするためのものではない。本開示の他の特徴は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
特に明記されない限り、本明細書または特許請求の範囲で使用される要素、電圧、温度、時間などの量を表すすべての数字は、「約」により修飾されると理解されたい。従って、黙示または明示によらず、特に示されない限り、設定される数値パラメータは、当業者に自明の標準的な試験条件/方法において求められた及び/または限定された所望の特性に基づく近似値である。先行技術との実施形態を直接的かつ明示的に区別する際には、本実施形態の数値は「約」という語が記載されなくても近似値を意味する。
本開示のさまざまな実施形態の理解を容易にするために、以下に専門用語の説明を示す。
キャパシタ:誘電体と呼ばれる非導電性の素材により隔てられた2つの導電性のプレートを備えるエネルギ貯蔵装置である。静電容量の値またはキャパシタの蓄電容量は、プレートの面積、プレート間の距離、誘電体の特性に依存する。これらの関係を数式4(数4)に示す。

式中、e=真空の誘電率(8.8542×10−12F/m)、e=比誘電率(以下で定義)、A=1つのプレートの表面積(プレートの面積は同一)、d=プレート間の距離である。
誘電体素材:印加電界により分極化することができる電気絶縁体。
絶縁破壊電圧:誘電体素材が「破壊」され電流を通すようになる電圧。絶縁破壊電圧は物質の絶縁耐力の指標である。
EESD:エントロピックエネルギ貯蔵装置。本明細書で用いられるとおり、EESDは、絶縁体素材が以下で定義するエントロピック素材である、キャパシタのような装置である。
電気的絶縁素材または絶縁体:絶縁体は内部に自由に飛びまわれない電荷電力を有する素材であり、これにより電流を少し通すまたはまったく通さない素材である。完全な絶縁体は存在せず、本明細書で用いられる電気的絶縁素材は非常に絶縁性の高い素材を指し、つまり、キャパシタとしての通常の使用中に素材を横切って印加される電界を超える閾値破壊電界を有し、このため通常の利用では電気的破壊が発生しない素材を指す。
電極:本明細書において、電極とは(金属、カーボン、または導電性ポリマ等の)導電体、または、導電体とその表面上に非導電性素材を有する「複合」電極のことを指す。
エントロピック素材:材料のエントロピ変化によりエネルギが蓄積される素材。いくつかの例において、エントロピ変化は電気的手段によって駆動され、そのような素材はelectroentropic(登録商標)(エレクトロ・エントロピック)素材と呼ばれる。その他の例においては、エントロピ変化は磁場により進められ、これらの素材はmagnetoentropic(登録商標)(マグネト・エントロピック)素材と呼ばれる。エントロピの変化は、ポリマの分子内移動及び/または素材内の荷電または極性分子種の分子間移動等の、原子、分子、二次構造、及び/または賛辞構造の変化を含む。開示されたエントロピック素材の実施形態は、複数のポリマ分子を備え、特にポリマ分子は1種または複数種の極性官能基及び/またはイオン化可能な官能基を備える。
ESR:等価直列抵抗
高インピーダンス状態:エネルギ貯蔵装置が負荷にも充電電圧源にも接続されていない状態。
絶縁または非導電層/被覆:本明細書において、「絶縁層」、「絶縁被覆」、「非導電層」、「非導電被覆」とは、オームの法則における導電率の観点から電気的に絶縁と言える、つまり、オームの法則における導電率が1×10−1S/m(シーメンス/メートル)以下の、素材の層または被覆を指す。
負荷:電力を消費する回路の構成物または回路の一部。
パリレン:カーバ サイエンティフィック(Carver Scientific)社のPuralene(登録商標)(プラレン)として知られる、重合されたp−キシリレン、または、重合された置換p−キシリレン。重合されたp−キシリレンは以下の化学式を満たす。
誘電率:本明細書において、「誘電率」とは素材の分極化する能力のことを指し、これにより、空間容積の「誘電率」を真空のそれよりも高い値に変更する。数式5(数5)に示すように、素材の比誘電率はその静電誘電率を真空の誘電率で割ったものである。

式中、e=比誘電率、e=測定された誘電率、e=真空の誘電率(8.8542×10−12F/m)である。真空の比誘電率は1であり、(20℃の)水の比誘電率は80.1、有機的な被覆の比誘電率は一般的に3−8である。一般的に、「高誘電率」とは少なくとも3.3の比誘電率を持つ素材を指す。本明細書において、「高誘電率」とは、電界への浸漬等の誘電率向上技術を用いて、少なくとも10%増強された誘電率を有する素材を指す。
極性:「極性」とは、電子が原子間で等しく共有されない、つまり、正及び負の電荷の領域が少なくとも部分的に永続的に分離された、化合物または官能基をもつ化合物を指す。
ポリマ/ポリマ分子:化学変化、つまり、重合により構造ユニット(モノマ等)が繰り返される分子
立体的に拘束された誘電体フィルム:本明細書において、「立体的に拘束された誘電体フィルム」とは、少なくとも一部のポリマ分子またはポリマ分子の部分が立体的に拘束された、つまり、少なくとも一部のポリマ分子またはポリマ分子の部分が誘電体素材内の物理的な動きの自由度がある程度制限された、1種または複数種の極性官能基、イオン化可能な官能基、またはそれらの組み合わせを備える複数のポリマ分子を備え、電気的に絶縁された、及び/または、高誘電率の誘電体フィルムを指す。立体拘束はポリマ分子の部分が誘電体フィルムと接する電極の表面に結合された際に起こる。
II.エントロピックエネルギ貯蔵装置(EESD)
エネルギ貯蔵装置に蓄えられたエネルギは装置に印加された電圧の2乗に相関する。したがって、装置の主用途がエネルギ貯蔵であれば、装置に可能な限り高電圧をかけることが重要となる。1つまたは複数の実施形態において、高破壊電圧に達しない範囲において、装置は微小のリーク電流も発生する。言い換えると、エネルギ貯蔵装置が所定の電圧をかけられた場合、一方の電極から他方の電極への電荷伝導率は比較的小さい値となる。装置が所定期間以上エネルギ貯蔵のために充電される場合、貯蔵装置の用途(貯蔵期間)と貯蔵されたエネルギの「価値」(再充電の容易度と充電費用)によって異なるが、リーク割合は許容可能な程度に小さなものとなる。リークの許容量はその用途により大きく変化する。全ての実施形態において、リークは一般的に避けられ、最小化されるものである。
1つまたは複数の実施形態において、様々なエネルギ貯蔵の用途により評価され、所定のリークレベルに対する比誘電率の最大値及び最大電圧により、最高のエネルギ貯蔵装置が導きだされる。合理的な割合で放電と充電を行う能力もエネルギ貯蔵装置にとって重要な要素であることを理解されたい。多くの電気的な用途において、エネルギ貯蔵装置が理想的なキャパシタとして振る舞えることも重要なパラメータとなり、特にMHzまたはそれ以上の周波数領域での利用においては重要となる。エネルギ貯蔵装置は蓄えた電力の全てを電極から放電できる能力も備えるべきである。すべてのキャパシタ装置は「不可逆的な誘電吸収」に苦しんでいるが、エネルギの分野では、その用途により決められたレベルまでキャパシタを放電できるかは、この効果をどの程度許容できるかにより制限される。誘電正接という用語は一般的にこれらの損失を表すために用いられるが、エネルギ貯蔵の分野においては「ラウンドトリップ効率」という用語も用いられる。本明細書においてもこれらの用語をエネルギ貯蔵装置における一般的な目的で用いる。
エントロピックエネルギ貯蔵装置の実施形態は、実質的にお互いに並行な2つの導電性の表面(電極)とそれらの間にエントロピック誘電体フィルムを備える。装置は絶縁層または絶縁被覆を1つまたは両方の電極にさらに備える。開示するEESDの実施形態は、ミリ秒から秒の単位の、従来の静電キャパシタに比べて非常にゆっくりとした放電を行う。これにより、開示するEESDは安定し、ロバスト性があり、リーク電力が少なく、多くが5−500Vの崩壊電圧を持つ。
A.電極
いくつかの実施形態において、電極は平面または実質的に平面である。電極は金属、カーボン素材、または、導電性のポリマとなる。それぞれの電極は個々に滑らかな表面または粗い表面を持つ。カーボン分子等で作られる粗い電極は、研磨された金属等の滑らかな電極よりも表面積が大きくなる。表面の粗さは、所定のエネルギ貯蔵装置または電気キャパシタ装置により求められる電気的な外部パラメータまたはその一部によって選択される。滑らかな電極を備えるエネルギ貯蔵装置に比べ、粗い電極を備える同等のエネルギ貯蔵装置は、数マイクロ秒からミリ秒程度の短期間での、より早い充電及び放電のアンペア数(例えば100倍速い)を持ち、さらに、滑らかな電極をもつエネルギ貯蔵装置の放電率と同程度の遅い放電率を持つ。
B.絶縁層
それぞれの電極は1つまたは複数の表面を絶縁(非導電)層または絶縁被覆で覆われる。絶縁被覆をされた電極は「複合電極」と呼ばれる。エネルギ貯蔵装置において、複合電極は絶縁層が誘電体素材に接するように向けられる。絶縁層は電極の絶縁特性を増加させ、かつ、添加される誘電体素材との結合部位を提供する。絶縁層は1×10−1S/m未満のオームの法則における導電率を持ち、1×10−2S/m未満、1×10−5S/m未満、1×10−10S/m未満等になる。ある実施形態において、オームの法則における導電率は1×10−25S/mから1×10−1S/m、1×10−10S/mから1×10−1S/m、または1×10−5S/mから1×10−1S/mの範囲とされる。被覆の厚さは数ナノメートルから10ミクロン以上のものまである。その他の実施形態において、絶縁層は平均で5nmから10μmの厚さを持ち、0.1−10μm、0.3−10μm、0.3−5μm、0.3−2μm等となる。一つの実施形態として、被覆の平均的な厚さが、1つの第1電極の外表面から第2電極のもう1つの外表面までを測ったキャパシタ全体の厚さの10%未満となることもある。これに限定するものではないが、気相堆積、液体噴射、または被覆に関する当業者に周知のその他の技術等を含む最適な方法により絶縁被覆が行われる。例示的な絶縁被覆の1つとして、米国特許出願公開第2014/0139974号明細書で開示されたPuralene(登録商標)(プラレン)ポリマ被覆等の重合されたp−キシリレンが挙げられる。
絶縁層は誘電率を増やすために、及び/または、誘電体素材のポリマ分子との接合面のために適切な共重合体により変性される。一部の実施形態において、共重合体には1つまたは複数の不飽和結合が含まれる。重合したp−キシリレンを含む絶縁層は、これに限定するものではないが、オレフィン類、ビニル誘導体類、アルキニル誘導体類、アクリル化合物類、アリル化合物類、カルボニル類、環状エーテル類、環状アセタール類、環状アミド、オキサゾリン、およびそれらの組み合わせ等の共重合体を取りこむことで変性される。ある実施形態において、共重合体は、アクリレート(例えば、2−カルボキシエチルアクリレート)、メタクリレート(例えば、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)、α−ピネン、R−(−)カルボン、リナロール、シクロヘキセン、ジペンテン、α−テルピネン、R−(+)−リモネン、及びこれらの組み合わせ等になる。共重合体はその他のモノマを含むこともあり、またはブロック共重合体の形態であってもよい。
C.エントロピック素材で構成された誘電体フィルム
従来技術では、電極に隣接する様々な名前の層に蓄えられたエネルギは復旧不能であると考えられていた。言い換えると、溶液を通って移動することができるイオンを有する溶液と接触している平坦な電極に電位が印加されると、その表面へのイオンの移動が起こる。一度電極に十分に近づくと、イオンは、それらを所定の位置に結び付ける強い静電力により表面に固定されると考えられる。溶媒分子との衝突のエネルギは、これらのイオンを移動させるのに十分ではない。電位が表面から除去されると、これらのイオンは拡散する方向に自由に移動する。電位が電極表面から除去されると、電極に最も近い電気二重層の崩壊により、固定されたイオンのエネルギの放出が可能となり、それにより、エネルギが熱として完全に放出されないが、一方で、電極は崩壊する電界により生成されるエネルギを吸収し、その導体内に電位および電流を生成することができることは興味深い。この効果は、電気二重層キャパシタ(EDLC)におけるエネルギ蓄積の基礎となる。
EDLCの拡散した外層に蓄えられたエネルギは大抵完全に回復されない。電極表面の近くに形成された電気二重層はヘルムホルツ層と呼ばれ、遠いものは、グイチャップマン層と呼ばれる。これらの層の違いの1つは、電気的表面から熱拡散できないイオン層を「ヘルムホルツ」層と呼ぶことである。これらの層は、表面への電位の印加により、作業温度で本質的に固定される。別の違いは、本明細書においてDH層と呼ぶ、拡散ヘルムホルツ層(グイチャップマン、往々にして拡散ヘルムホルツ層とも呼ばれる)が、電界により誘起されるイオン配列をランダムな熱運動により拡散可能な層であることである。これは明確な境界ではないため、1秒間以上でポテンシャルエネルギの50%損失に関連する任意の時間単位を用いて、2つの主要な巨視的層の境界条件を定義できる。
(所定の周囲温度で形成する)ヘルムホルツ層とDH層の何れも、バルクと比較してエントロピが減少する。これらのエントロピが改変された素材は、異なる(誘電率等の)物理的特性を示す。改変された特性の適用は、例えば、米国特許第8,633,289号明細書に示されており、その中ではキシリレン([2,2’]パラシクロファン)の安定な中間体二量体およびその化合物および一般構造に関連する誘導体の改良合成、シクロファンおよび種々の置換基を有するその関連化合物の形成方法、および反応性中間体に由来する被覆および他のポリマ生成物を製造するためのキシリレン(または置換キシリレン)モノマの適用方法が記載されている。同様に、米国特許第9,011,627号明細書には、特に、低導電性誘電体被覆を製造するための有機ポリマを使用したキャパシタ用の高誘電率誘電体素材を製造する方法が記載されている。
エントロピが減少した誘電体素材における誘電率の増大の根拠は、電荷が離散的な行および列に「編成」されるという概念により理解される。各電荷層は、周囲のイオン電荷に基づいて取りうる最も低いエネルギ構成になるようにエネルギ的に最適化されるため、電極からの外部電界を印加することにより、誘電体層のその現在の位置におけるイオンまたは双極子の最低エネルギ状態の破壊をもたらす。このため、電界が印加されると、双極子またはイオンは休止位置(すなわち、電界が印加される前の位置)から移動し、その結果、素材内の電荷分布が再構成される。これにより、誘電体素材全体にわたる他の全ての双極子の再構成が行われる。熱に変換されていないエネルギは、誘電体素材により吸収される。エネルギが放出されると、熱運動の増加(例えば、温度に比例するランダムな分子運動)等の他のメカニズムにより蓄積されたエネルギが放出されない限り、このプロセスを逆の方向に進められる。このように作用する誘電体素材は、外部電界の印加により誘電体素材内のエントロピの変化を誘発するため、「エントロピック」素材と呼ばれる。
エントロピに関して「正常な」素材の場合、電界中の双極子およびイオンの再構成は、素材中の他の全てのイオンおよび双極子の再構成を引き起こすほど確実ではない。言い換えると、双極子またはイオンの再構成が、素材中の他の双極子およびイオンとの小さなまたは限定的な相互作用を起こす可能性がある。この場合、素材はエントロピが減少した形態よりも少ないエネルギ貯蔵能力を示す。
分子の移動が起こりうる素材の粘性である場合、所定の双極子またはイオンによる電界の形成により蓄えられたエネルギは、エネルギが回転、振動、並進、および外部に熱を発生さえる他の動きに変換される緩和メカニズムにより消散される。低粘性の素材では、拡散ヘルムホルツ層(DH層)に蓄積されたエネルギは、イオンと双極子のランダム運動により失われる。
中程度から高粘性の素材では、ヘルムホルツ層(H層)およびDH層の形成のための時間枠が実質的に増加する。しかし、(現時点において、巨視的現象としての格子の振動を除く)分子の熱運動は、実質的に無視できるほどに低減される。これらの素材において、エネルギが熱として消散するのに必要な時間と比べて、HおよびDH層の電界のエネルギを比較的迅速に保存することが可能である。熱放散は、本質的に、放射性崩壊または拡散と同様に、時間に対して指数関数的な一次減衰をする。充電サイクル中にエネルギが例えば1秒間にわたり吸収されると、高粘性素材は熱として90%のエネルギ散逸するために数秒または数分を要することがある。
熱崩壊プロセスは、電気二重層エネルギ蓄積プロセスよりも実質的に遅い。したがって、エネルギが素早く求められた場合、H層およびDH層の両方の形成により蓄積されたエネルギを利用することが可能である。この状況において、形成された双極子およびイオン層におけるエネルギの大部分の放出が電界を通して行われ、続いて電位および電流と結合される。HおよびDH層の放電は分子および原子の移動を必要とするため、放電プロセスは充電に比べて比較的遅いが、熱を生成する緩和メカニズムに関しては依然として速い。
エネルギ貯蔵装置のある実施形態において、単一の誘電体素材層で構成される誘電体フィルムを有し、他の実施形態において、多層誘電体素材で構成される誘電体フィルムを有する。多層誘電体素材は、堆積中の表面改質を伴いまたは伴わずに複数回堆積される単一の素材で形成されることもある。あるいは、各層が異なる化学組成を有してもよい。ある実施形態において、装置が異なる電気誘電率を有する2つ以上の誘電体層から構成される誘電体フィルムにより構築される。誘電体フィルムは平均的に数ミクロンから数ミリメートルの範囲の厚さを有する。ある実施形態において、誘電体フィルムは平均的に10μm〜5mmの厚さを有し、10μm〜1mm、10μm〜500μm、または50μm〜250μmといった厚さになる。その他の実施形態において、誘電体フィルムは平均的に80〜120μmの厚さを有し、例えば平均的に100μmの厚さになる。
誘電体フィルムは、導電性または非導電性ポリマ、無機金属酸化物、混合金属酸化物、混合ポリマ、および、有機素材、またはそれらの組み合わせから構成される。ある実施例では、ポリマは生体高分子である。
ある実施形態において、誘電体素材は液体特性を有し、蜂蜜またはそれ以上の粘性を有する。他の実施形態において、誘電体素材は10,000cP〜250,000cPの粘性を有する。その他の独立的な実施形態において、誘電体素材は固体となる。また、その他の実施形態において、誘電体素材は可変の粘性を有する。低粘性の素材は、熱、力、電界、磁場またはその他の印加された誘電体素材の粘性を変える手段によりエネルギの供給または除去することで粘性を増加させられる。
誘電体素材は、実質的に導電性を有していなくてもよい。言い換えると、誘電体素材はいずれかの電極またはその近くで酸化/還元が行われず、オームの法則における導電性を示さない。したがって、開示されたエネルギ貯蔵装置の実施形態は従来の電気化学電池ではなく、静電キャパシタに密接に関連している。しかしながら、誘電体素材は、従来の電気化学電池または静電キャパシタのいずれよりも長時間にわたり、より大きな比エネルギを貯蔵することができる。
ある実施形態では、エネルギ貯蔵装置は非伝導性の高誘電率誘電体素材を備える。非導電性、高誘電率誘電体の2つの非限定的な実施例は、シェラックマトリックス中のゼインおよび無水マレイン酸で誘導化されたタンパク質である。他の実施形態では誘電体素材は導電性であり、これらの実施形態ではオームの法則における電気伝導を軽減または防止するために、電極が一般的に上述の絶縁層で覆われる。例えば、誘電体素材が平方センチメートルあたり2.5MΩ未満の抵抗を有する場合には、絶縁層を使用することもできる。他の実施形態において、エネルギ貯蔵装置は、少なくとも10〜2,000,000の誘電率および1S/m〜1×10−25S/mのオームの法則における導電率を有する誘電体素材を備える。
ある実施形態において、誘電体素材は、エネルギ貯蔵装置の2つの電極と接触するフィルムである。典型的なものにおいては、接触はフィルムと電極の接触面全体との直接的な物理的接触とされる。誘電体素材は、「裸の」金属または炭素ベースの電極表面、または複合電極の絶縁層と接触してもよい。
開示されたエネルギ貯蔵装置のある実施形態は、極性官能基および/またはイオン化可能な官能基を有するポリマ分子で構成される誘電体素材を備え、分子内双極子および双極子モーメントを生じる。ポリマ分子は、1つ以上の二重結合をさらに備えうる。タンパク質は安価で入手が容易な、毒性が低い極性ポリマである。低毒性は他のポリマと比べて大きな利点であり、これによりエネルギ貯蔵装置をリサイクルまたは焼却することが可能になる。タンパク質分子は、極性官能基および/またはイオン化可能な官能基を備えるアミノ酸で構成される。双性イオン構造による電荷の実質的な分極および/または分離が存在する分子においては、高い誘電分極を有する能力は、その分子自体のみで「達成」する。多くのタンパク質マトリックスにおいて、イオン骨格は、タンパク質骨格それ自体がカプセル化されている。極性ポリマの非限定的な例として、ゼイン、ヘンプタンパク質、小麦グルテン、ポリ(アクリル酸−CO−マレイン酸)、ポリ(アクリル酸)、ホエータンパク質単離物、大豆タンパク質単離物、エンドウ豆タンパク質抽出物、セラック、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
他の適切なポリマとして、これに限定するものではないが、(フッ化等の)置換パリレンポリマおよび非置換パリレンポリマ、アクリル酸ポリマ、メタクリルポリマ、ポリエチレングリコール、ウレタンポリマ、エポキシポリマ、シリコンポリマ、有機テルペノイドポリマ、天然有機ポリマ(シェラックのような樹脂など)、ポリイソシアナート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。アクリレート共重合体(エチレンブチル−、エチル−、およびメチル−アクリレート等との共重合体)、およびパリレン共重合体(アクリレート(2−カルボキシエチルアクリレートなど)、メタクリレート(3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートなど)とのp−キシリレンの共重合体)、α−ピネン、R−(−)炭素、リナロール、シクロヘキセン、ジペンテン、α−テルピネン、R−(+)−リモネン、およびこれらの組み合わせ)等の共重合体も本開示の範囲内である。
ある実施形態において、ポリマ分子は、裸電極表面(すなわち、裸の金属または炭素表面)または複合電極表面へのポリマ分子のその後の結合を促進する官能基等の、さらなる官能基を結合するように誘導体化される。例示的な誘導体化剤として、これに限定するものではないが、無水物、カルボジイミド、イミドエステル、および、N−ヒドロキシスクシンイミドとマレイミド、アリールアジドまたはジアジリン基の組み合わせを含む試薬が挙げられる。ある実施例では、無水マレイン酸、無水イタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、またはシス−5−ノルボルネン末端−2,3−ジカルボン酸無水物等の無水物により、ポリマが誘導体化される。誘導体化ポリマ分子は、架橋または表面との他の反応により、電極表面に結合することができる。例えば、ポリマ分子を無水マレイン酸で誘導体化する場合、誘導体化されたポリマ分子は、二重結合により架橋される。架橋は、化学剤(例えば、ラジカル開始剤)、紫外線活性化、または熱活性化等の適切な手段により実現される。
本発明者は、立体的に拘束された場合、ポリマ分子が電極間を自由に移動できなくとも、上記の特性をもつポリマ分子がエネルギ貯蔵のために使用できるという、驚くべき事実を発見した。電極およびポリマ分子で構成された誘電体素材で構成されたエネルギ貯蔵装置を充電および/または放電する前に、共有結合(単一または複数)、ファンデルワールス力または水素結合を含む任意の手段によりポリマ分子を裸の電極表面または複合電極の非導電性または絶縁性の被覆に結合させることにより、ポリマ分子を立体的に拘束できる。ある実施形態において、ポリマ分子は正電極に結合される。エネルギ貯蔵装置がその後も電子回路で使用される場合など、エネルギ貯蔵装置が繰り返し利用され、充電および放電をしても、ポリマ分子は電極に結合したままである。
いかなる特定の操作理論にも束縛されるものではないが、大きな分子内では、分子の一部のみの運動が起こっても、所定の場所に拘束されている他の分子により、全体的な低エネルギレベルへの運動や、その後の、電極に結合され熱運動として放出されないポテンシャルエネルギの放出が避けられると思量される。この運動の拘束により誘電性分子の自由度が低下し、結果として、電界から吸収されたエネルギを熱として消散させる分子の能力が低下する。このため、結合したポリマ分子は電界に結合し、その自由度が減少により熱としてエネルギを放出できなくなる。巨大分子の特定の部分の動きは、生物学的高分子を分析する技術を有する当業者に周知の電気泳動運動と関連し、類似している。
いかなる特定の操作理論にも束縛されるものではないが、ポリマの一部が電極(または電極上に被覆)に結合した場合、ポリマの残りの部分は誘電体フィルムにおいて伸び、ねじれ、または曲がり、極性官能基および/またはイオン化可能な官能基が電界に応答して再配向すると思量される。これらの立体配座および位置の変化(すなわち、エントロピの変化)は、エネルギ貯蔵装置内にエネルギを蓄積する。エネルギ貯蔵装置が放電すると、蓄積されたエネルギが電気エネルギとして放出され、結合したポリマ分子の立体配座がより不均一な状態に戻る。少なくとも一部の自由度が減少したポリマ分子を有するエントロピック誘電体素材は、「立体的に拘束された誘電体フィルム」と呼ばれる。
したがって、開示されたエネルギ貯蔵装置のある実施形態は、ポリマ分子で構成された立体的に拘束された誘電体素材を備える。その他の実施形態では、立体的に拘束された誘電体素材中のポリマ分子の少なくとも1%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、または少なくとも90%が電極に結合される。特定の実施形態において、少なくとも一部のポリマ分子は正電極に結合される。電極が複合電極である場合、ポリマ分子は複合電極の絶縁層に結合される。結合の割合は、少なくとも一部のポリマ分子を電極に結合させた後に電極からすすぎ落とされたポリマ分子の量を測定することで推測可能である。
ある実施形態において、ポリマ分子は、誘電体素材と接触している正電極表面の少なくとも1%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、または少なくとも90%に結合される。結合されたポリマに覆われた表面の割合は、光学顕微鏡検査により視覚的に推定される。エネルギ貯蔵装置が作られた後、装置は検査のために分解される。正電極は流水等により洗浄され、結合していない物質が除去され、光学顕微鏡検査で検査される。結合されたポリマに覆われた表面の領域は、結合されたポリマがない領域と容易に区別される。
ポリマ分子と電極との結合は、1メートルの高さから落下する水と同等の力を有する流水で電極および結合したポリマ分子を洗浄し、あるいは、結合したポリマを20N未満の力を持つ流水下で人手により擦る等の一般的な破壊に十分に耐えられる。このような強度の結合は電界がエネルギ貯蔵装置を横切って印加された場合にのみ観察される。ある実施形態において、正電極が負になるように極性反転された装置に外部電圧を印加することにより、少なくとも一部の結合が破壊される。
D.例示的なエネルギ貯蔵装置
ある実施形態において、エネルギ貯蔵装置100は、正電極110、エントロピック誘電体層120、および負電極130(図1、2)を備える。正電極110および負電極130には、それぞれ、導電性金属、半導体、導電性ポリマ、またはその他の導電性素材が用いられる。場合により、この素材は炭素系またはグラフェン型の電極等の高表面積の導体であることが有利である。誘電体層120は、(i)電気的に絶縁性であり及び/又は高誘電率を示し、(ii)複数のポリマ分子を含むフィルム素材から構成される。場合により、絶縁層140、150は、正電極110と誘電層120との間、および/または誘電層120と負電極130との間に配置される。他の実施形態において、絶縁層140、150の厚さは、第1電極110の外表面112から第2電極130の外表面132まで測定したエネルギ貯蔵装置100の全体の厚さの10%未満とされる。絶縁層は、装置の使用中に発生するジュール加熱および/またはオームの法則における導電性の損失を防ぐために用いられる。
一例として、絶縁層140、150は、金属酸化物であるPuralene(登録商標)(プラレン)(重合されたp−キシリレン、カーバ サイエンティフィック)プラズマまたはフィルム被覆を備える。絶縁被覆140、150が厚いほど、所与量のエネルギを一定の厚さで蓄えるために外部印加電圧を高くする必要がある。さらに、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のより厚い絶縁被覆140、150は、エネルギ蓄積能力を桁違いに減少させる。Puralene(登録商標)(プラレン)被覆は、そのピンホールの低減の特性と、すなわち実質的に非多孔性と、非常に薄い層で被覆できる特性のために好ましい。これにより、100ミクロン単位のキャパシタの全体の厚さにおいて、妥当な電圧を実現可能とする。例えば、厚さが1000ミクロンで、絶縁被覆140、150がその1%の厚さ(それぞれ5ミクロン)であった場合に、10V/ミクロンの電界を達成するためには10,000Vを外部から印加する必要がある。これは、経済的かつ安全に使用するには高すぎる電圧である。したがって、非導電性被覆140、150が薄ければ薄いほど、装置の貯蔵能力を維持しながら電圧を低くできる。
安価で、ピンホール、平坦度等の低減等の非常に望ましい性質を示すPuralene(登録商標)(プラレン)、および、誘電体120として後述の高分子量イオン性ポリマ塩を使用することにより、典型的なEDLCの少なくとも2倍のエネルギ密度を達成可能となる。粘性を低下させるために、溶媒、分岐ポリマ、低分子量オリゴマ、および樹枝状ポリマ等の粘性調整剤を誘電体素材120に添加することができる。エタノールおよび未反応の出発物質は、それらの用途で用いられる。
誘電体層120は、導電性または非導電性ポリマから構成され、さらに、無機金属酸化物、混合金属酸化物、混合ポリマ、有機素材、およびそれらの組み合わせを備えることがある。ポリマはバイオポリマであってもよい。ある実施形態において、ポリマの少なくとも一部が電極に結合され、立体的に拘束された誘電体層を形成する。その他の独立的な実施形態において、熱、力、電界、磁場、または、その他の適用誘電体組成の粘性を変化させる手段でエネルギの適用または除去を制御することにより、低粘性誘電体素材の粘性は、増加させることができる。誘電体層120は、結合した双極子およびイオン層からのエネルギのより迅速な放出のために、その粘性を減少させることができる。
図1および図2のエネルギ貯蔵装置において、反対の符号の等価電荷が各電極110、130に流れる。低粘性の誘電体120(すなわち、抵抗性または絶縁性被覆の表面に適用される高誘電率素材、または、双極子を備えた低粘性の素材)が使用されると、電荷の流れが長期間にわたり発生する。非常に粘性の高い材料は、より低い電荷の流れにおいては、より長い充電時間を必要とする。電圧源から電荷が加えられると、電圧源を取り除いた後に、電極に保持された電圧の放電が遅くなる。リーク電流は、HおよびDH層の形成により蓄えられるエネルギを抵抗放出する。
図2を参照すると、ある実施形態において、誘電体層120は、(i)電気的に絶縁性であり、かつ/または高誘電率を示し、(ii)極性官能基及び/またはイオン化可能な官能基から構成される複数のポリマ分子122を備える、エントロピックフィルム素材を備える含む立体的に拘束された誘電体層である。ポリマ分子122は1つまたは複数の二重結合も備えうる。立体的に拘束された誘電体層において、ポリマ分子122の少なくとも一部は付着点124を介して正電極110(または存在する場合には絶縁層140)に結合される。正電極110が負電極130に対して正電荷を保持していると仮定して、各付着点124は共有結合、(単一、二重または三重)、水素結合、ファンデルワールス力、または、正電極110からのポリマ分子122の解離を防止するのに十分な強さを持つその他の結合力となる。ポリマ分子122の一部は、付着点126を介して、負電極130(または存在する場合には絶縁層150)に結合される。負電極130が正電極110に対して負電荷を保持していると仮定して、各付着点126は共有結合(単一、二重または三重)、水素結合、ファンデルワールス力、またはポリマ分子122の負電極130からの解離を防止するのに十分な強さを持つその他の結合力となる。正および負電極110、130は、(例えば、導電ワイヤリード、トレースまたは他の経路等の)導電リード115、135を介して電圧源に取り付けられる。
他の独立的な実施形態において、エネルギ貯蔵装置200は、正電極210、立体的に拘束された誘電体層220、及び負電極230を備える(図3)。立体的に拘束された誘電体層220は、(i)電気的に絶縁性であり、かつ/または高誘電率を示し、(ii)極性官能基および/またはイオン化可能な官能基から構成される複数のポリマ分子222、223、224を備える、エントロピックフィルム素材を備える。ポリマ分子は1つまたは複数の二重結合も備えうる。絶縁層または非導電層240、250は正電極210と誘電体層220との間、および誘電体層220と負電極230との間に配置される。ポリマ分子222の一部は、負電荷または部分的な負電荷を持つ極性官能基および/またはイオン化可能な官能基を有し、付着点225を介して絶縁層240に結合される。ポリマ分子223の一部は、正電荷または部分的な正電荷を持つ極性官能基および/またはイオン化可能な官能基を有し、付着点226を介して絶縁層250に結合される。ポリマ分子224の一部は、少なくとも1つの少なくとも1つの少なくとも1つの正電荷または部分的な正電荷を持つ極性官能基および/またはイオン化可能な官能基と、負電荷または部分的な負電荷を持つ少なくとも1つの極性官能基および/またはイオン化可能な官能基とを持つ。十分な長さのポリマ分子224は、絶縁層240と250との間の距離に及び、両方の絶縁層に結合することができる。正及び負の電極210、310は、導電性リード215、235を介して電圧源に取り付けられる。
可変粘性誘電体素材を使用する場合、粘性を動的に変化させる方法を持つことが有利となりうる。流体の粘性の変化を効率的に制御可能にする複数の既知の方法があり、その多くは素材科学の分野の当業者によりシステム実装に容易に統合することができる。
誘電体の粘性を制御する方法の非限定的な例の1つとして、温度の制御によるものがある。上記の装置を一定温度に維持する代わりに、充電中または充電後に装置を電極110または130の内側から冷却すると、誘電体の粘性を電極層110から電極層130まで順次に徐々に増加させ、またはその逆をすることができる。低温で粘性が上昇すると仮定すると(反対の効果が得られる場合もあるが)、熱エネルギとしてのHおよびDH層から放電は完全に凝固することで、減速され、本質的に停止できる。これにより、電気エネルギを放出準備が整うまでの長期間保存することができる。
加熱に対して最小限の損失で電気エネルギを放出することは、それが充電された方法と同様である。周囲の熱または,内部の誘電体の粘性が低下することで電極を介して電気エネルギを放出するために発生した熱により、必要に応じて冷却された装置を加熱できる。このゆっくりとした加熱には、HおよびDH層に含まれるエネルギの急速な放出を防止するという追加の利点がある。電極と誘電体の加熱を調整することにより、電気負荷のエネルギ需要に対応することができる。誘電体の内部または外部の加熱により温度が急速に上昇することで、制御不能な大きな割合で粘性が減少する暴走状態にならないようにシステム設計において注意する必要がある。
その他のよく知られた粘性制御方法として、非ニュートン流体効果の利用によるものがある。多数の材料は、粘性と適用応力、せん断速度、時間またはその他の要因との非線形またはオフセットの関係において様々な程度を示す。例えば、電極130に力や圧力が印加されてもよい。機械的応力をかけられた際に明白な粘性の増加または減少のいずれかを示す一般的な素材が知られている。これらの素材は、粘性変化の兆候により、せん断粘稠化(ダイラタント)または流動化(擬塑性)として分類される。この分類の多くの素材は、応力が除去されると元の形状に戻る傾向を持つ粘弾性効果を示す。加えて、他の素材は応力による粘性に時間依存性を示し(兆候よりチキソトロープ流体およびレオペクチン流体)、さらにその他のものは粘性と応力にオフセット関係を示す。後者はビンガム・プラスチックとして知られている。
ビンガム・プラスチックは低応力下で剛体として振る舞うが、高応力下では粘性流体として流れる粘弾性素材である。より具体的には、ビンガム・プラスチックは加えられた応力が所与の限界を下回る時は固体として振る舞うことが知られており、したがって測定可能な降伏応力または他の要因を有する。この特徴を操作することにより、ビンガム・プラスチックとして振る舞う誘電体は、低応力条件下では固体状態で保持され、HおよびDH層の形成を長期間維持することができる。上記層内に蓄えられたエネルギの放出が必要になると、様々な量の応力が誘電体に加えられ、それによりその粘性を制御可能に低下させる。
誘電体の構成は、所望の非ニュートン流体特性の組み合わせを示すように選択できる。エネルギ貯蔵装置は、誘電体の粘性を適切に制御するために、機械的または他の手段により応力を適用可能に設計することができる。非限定的な例として、キャパシタスタックを2つのプレートの間に配置する。底板は定位置に固定され、上板は機械式、電磁式、油圧式または空気圧式アクチュエータに取り付ける。素材に応力を加えることが望ましい場合、アクチュエータは直線または回転方向の力を加え、流体の適用に最適なせん断応力および通常応力の最適量、速度、および組み合わせを適用する。代替方法として、油圧または空気圧ブラダを用いて2つの固定されたプレートの間のキャパシタスタックに応力を加えることや、形状記憶合金、電気活性セラミック、誘電性エラストマまたは他の能動素子により装置を囲むことが挙げられる。
これらの効果の組み合わせを用いて、誘電体の粘性を変化させることもできる。低ニュートンのせん断粘稠化誘電流体と低剛性電極およびコンプライアント電極とを組み合わせることにより、キャパシタは電気活性ポリマまたは特に誘電エラストマ・アクチュエータとして知られるものを形成する。このキャパシタに電荷が印加されると、電極間の静電気力により、両方のプレートに対して垂直方向の力が生じる。この力は効果的に誘電体を押しつぶし、誘電体に垂直応力を加える。この誘電体が非ニュートンのせん断粘稠化流体でもある場合、その粘性は加えられたせん断応力の増加に伴い増加する。
誘電体の粘性は、誘電体の粘弾性を向上させるようにその物理的特性を変更することにより、動的に制御可能である。粘性流体または電気レオロジ流体において、誘電流体の構成および構造は、外部電界に対する反応性を高める。印加された電界は、非常に大きく、急速で、可逆的な粘性変化を引き起こせる。電気粘性流体は上記のビンガム・プラスチックとして振る舞うことができ、それにより、降伏応力が印加された電界に比例する。電極の設計により、電気レオロジ効果の増加が示されてきた。同様に、誘電体は、電気的ではなく磁場に応答する磁気レオロジ効果を示すように設計することができる。磁気レオロジ効果は、装置のエネルギ貯蔵メカニズムとの干渉を減らすことによりさらに適用可能とできる。
誘電エラストマ・アクチュエータおよび粘弾性の実施形態の両方を用いる場合、暴走状態を避けるために注意を払わなければならない。流体の粘性は印加された磁場の大きさにより決まるため、短絡などの特定の条件において特に危険になる。短絡状態が存在可能になると、電極上の電荷は急速に除去され、そのため誘電性流体の粘性が急速に低下する。この粘性の低下は、H層およびDH層の移動度を大きく増加させ、潜在的に危険な(すなわち短絡した)負荷への蓄積エネルギの急速な放電を引き起こす。
III.エントロピックエネルギ貯蔵装置の作成方法
エネルギ貯蔵装置の製造方法のある実施形態は、(a)(i)電気的に絶縁性であり、かつ/または高い誘電率を示し、(ii)複数のポリマ分子から構成されるフィルム素材から構成されたエントロピック誘電体フィルムを導電性の第1電極に適用するステップと、(b)そのエントロピック誘電体フィルムを導電性の第2電極に接触させるステップと、(c)第1電極、エントロピック誘電体フィルム、および第2電極を横切る電界を印加し、エントロピックエネルギ貯蔵装置を作成するするステップとを含む。ポリマ分子は、1種または複数種の極性官能基、イオン化可能な官能基、またはそれらの組み合わせから構成される。電界はエントロピックエネルギ貯蔵装置を作成する間に印加されるか、または初期充電電圧により供給される。第1電極、エントロピック誘電体フィルム、および第2電極を横切る電界を印加することにより、立体的に拘束されたエントロピック誘電体フィルムを生成し、フィルム内において、ポリマ分子の少なくとも一部は第1電極に結合され、それにより、複数のポリマ分子の少なくとも一部が第1電極、第2電極、または第1及び第2電極双方の表面に結合される。その他の実施形態において、立体的に拘束されたエントロピック誘電体フィルムは、(i)第1電極、エントロピック誘電体フィルム、および第2電極を横切る電界を印加し、それにより第1電極が正電極となり、その電界をポリマ分子の少なくとも一部を第1電極に結合させるための所定期間印加するステップと、(ii)化学薬品でエントロピック誘電体フィルムを処理するステップと、または(iii)それらの組み合わせにより、作成される。
独立的な実施形態において、エントロピック素材が完全に硬化または乾燥する前に、および/または、エントロピック素材が乾燥および/または硬化している間に、1つまたは複数の誘電率増強場が、アセンブリ(すなわち、第1基板、第2基板、およびその間に配置されたエントロピック素材)に印加されてもよい。増強場は、(100V/cmより強い電界等の)直流電源圧等の電圧源を接続することで第1基板と第2基板を横切るように生成される電界や、例えば、磁気源のN極とS極間の磁場(例えば、1ガウスより強い磁場)が第1基板の外面および第2基板の外面にほぼ垂直となるように設けられた磁気源のN極とS極の間にアセンブリを配置することで生成される磁場とされる。低電界において、誘電率の増加は電界ポテンシャルの増加に比例する。純粋な有機化合物においても誘電率の向上に磁場が役立つことが知られている。
その他の独立的な実施形態において、層状の誘電体が、それぞれが主に絶縁性のフィルム素材および/または高誘電率素材から構成される第1誘電体フィルムを他の第2誘電体フィルムの上に積層して作成される。フィルム層は、対向する第1および第2の電極に直接接触するように挟まれる。層の形成中または形成後のいずれかにおいて、1層または複数層の誘電率は、電界および/または磁場中への浸漬、および/またはフィルム素材への還元剤の導入等のうちの1つまたは複数の方法により強化される。
A.エントロピック誘電体フィルム形成
エントロピック素材を含む誘電体フィルムは、気相堆積、液体噴霧、スクリーニング、スピンコーティング、またはその他のフィルム形成の当業者に周知の方法を含む、いずれかの適切な手段により準備され、導電性の第1電極として用いられる。ある実施形態において、導電性の第1電極は、裸の電極または絶縁層を備える複合電極であり、エントロピック誘電体フィルムは、裸の電極表面上または複合電極の絶縁層上に直接形成される。次に、エントロピック誘電体フィルムは、導電性の第2電極と接触させる前または後に、(例えば、25〜60℃の)低温で乾燥させられる。その他の独立的な実施形態において、エントロピック誘電体フィルムは、除去可能なキャリアフィルム(例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム)上に形成され、乾燥され、続いて電極表面に転写される。
ある実施例として、キャパシタ等のエネルギ貯蔵装置での使用に適した、基板上に高誘電率誘電体素材の広げやすい薄い被覆を形成する方法には、有機ポリマを溶媒に入れ、混合させることで湿潤剤溶液を生成するステップが必要である。有機ポリマを入れた溶媒と混合した後、湿潤剤溶液に溶解していない全ての粒子状物質は除去されてもよい。次いで、湿潤剤溶液を高誘電率誘電体素材と混合し、エントロピック素材の液体またはスラリを生成する。液体またはスラリは、エネルギ貯蔵装置への使用に適した第1基板上に、薄く均一な被覆で広げられる。湿潤剤溶液に乾燥剤を添加し、乾燥させてエントロピック素材のフィルムを形成する。非限定な例として、有機ポリマとして、パリレン、シェラック、ゼインまたはシリコーンオイルが用いられる。あるいは、ポリウレタン、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリルアミド、ポリビニルスルホン酸、シアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート(PET)、パリレン、シリコーンまたはポリビニルシランから構成されるポリマは、ポリママトリックス中に懸濁された誘電体素材とともに使用されると、誘電特性が向上することが実証されている。これは使用可能なポリマの網羅的なリストではなく、新たな実質的性質を変更することなく、様々な異なるポリマおよび/または非導電性素材によるポリママトリックスの置換が可能である。エントロピック素材を第1基板と第2基板の間に配置する際に、エネルギ貯蔵装置の使用に適した第2基板もまた、エントロピック素材上の第1基板とは反対側に配置される。必要に応じて、還元剤および/または鉄カチオンまたは他の遷移金属カチオンを湿潤剤溶液に添加してもよい。還元剤は水素化ホウ素ナトリウムで構成される。
その他の独立的な実施形態において、本方法は、架橋剤と混合したポリマで構成される第1溶液を生成するステップを必要になる。第1溶液を高誘電率誘電体素材と組み合わせ、混合して、液体またはスラリを生成する。液体またはスラリは、第1基板上に薄く均一な被覆で広げられる。非限定な例として、ポリマとしてパリレン、セラック、ゼインまたはシリコーンオイルが用いられ、架橋剤としてジビニルシラン、シアノアクリレートまたはエポキシが用いられる。必要に応じて、(水素化ホウ素ナトリウム等の)還元剤および/または遷移金属カチオンをポリマに添加してもよい。第1溶液に溶解しなかった粒子状物質は、ろ過、遠心分離機での分離またはその他の適切な技術により除去してもよい。
その他の独立的な実施形態において、基板上にエントロピック誘電体素材の広がりやすい薄い被覆を形成する方法は、シリコーンオイルと微細に粉砕された高誘電率誘電体とから構成された第1溶液を生成して混合するステップを必要とする。ホウ砂塩を第1溶液に加えて第2溶液を生成する。第2溶液はスラリになるまで混合され、キャパシタのようなエネルギ貯蔵装置への使用に適するように、第1基板に塗布される。スラリが塗られた基板は、シリコーンオイルの粘性の増加を促進し、エントロピック素材のフィルムを形成するために加熱される。粘性が増加した後、キャパシタ等のエネルギ貯蔵装置での使用に適した第2基板は、エントロピック素材上の第1基板と反対側に配置され、エントロピック素材を第1基板と第2基板の間に配置する。第1基板と第2基板との間に配置されたエントロピック素材は、細かく粉砕された高誘電率誘電体を安定させるために熱処理される。必要に応じて、誘電率増強場を、第1基板、エントロピック素材および第2基板を横切るように印加してもよい。誘電増強場は、第1基板と第2基板を横切る電圧源と接続することにより生成された電界と、磁気源のN極とS極の間に第1基板とエントロピック素材と第2基板を配置することにより生成された磁場の一方または両方とされる。
ある実施形態において、エントロピックフィルム素材は、溶媒および複数のポリマ分子から構成される液体またはスラリから調製される。好適な溶媒として、アルカノール、アルキレングリコール、水、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。例示的な溶媒として、エタノール、エチレングリコール、水、およびそれらの組み合わせが挙げられる。その他の実施形態において、ポリマ分子は、1種または複数種の極性官能基、イオン化可能な官能基、またはそれらの組み合わせを有する。ポリマ分子は1つまたは複数の二重結合も備える。好適なポリマ分子は上記のとおりである。特定の実施形態において、濾過または遠心分離等により、未溶解のポリマ分子を混合物から除去する。
液体またはスラリは、架橋剤をさらに含むこともある。好適な架橋剤として、無水物、カルボジイミド、イミドエステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素ナトリウム、およびN−ヒドロキシスクシンイミドとマレイミド、アリールアジドまたはジアジリン基の組み合わせで構成される試薬が挙げられるが、これらに限定するものではない。一般的な架橋剤として、トリアリルトリアザトリオンおよびポリマ化学の当業者に周知の他のトリアリルまたはトリビニル試薬が挙げられる。例示的な無水物として、無水マレイン酸、無水イタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、シス−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
ある実施形態において、液体またはスラリは、ポリマ分子間の架橋を触媒するためにラジカル開始剤等の開始剤をさらに含む。例示的な開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジクミルペルオキシド、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、カンファーキノン、フェナントレンキノン、およびそれらの組み合わせから構成される、熱および光活性化化学開始剤が挙げられるが、これらに限定するものではない。一例として、無水イタコン酸およびジクミルペルオキシドを用いてゼイン分子を架橋させた。
架橋が完成する前に、ポリマ分子と有機塩を形成し、かつ/またはフィルム素材を中和することができる塩等の1種または複数種の塩類を液体またはスラリに添加してもよい。ある実施形態において、反応が二酸化炭素を放出し、誘電体フィルムにおいて望ましくない対イオン汚染起こさないことから、炭酸塩(例えば、炭酸グアニジン、炭酸セシウム、炭酸ストロンチウム、またはそれらの組み合わせ)を使用する。その他の実施形態において、チタン酸バリウムが液体またはスラリに加えられる。また、別の独立的な実施形態において、非導電性ポリマのような電圧補助剤が加えられる。
エントロピック素材の液体またはスラリは、様々な手段により導電性の第1電極に塗布される。ある実施形態において、スラリは、電極の固定または連続移動ストリップ上にコーティングされる。その他の実施形態において、液体またはスラリは、これらに限定するものではないが、容器から噴出される圧力または混合容器から注がれる圧力等の様々な手段により、静的に配置された電極板上に注がれる。また、別の実施形態において、液体またはスラリは、スピンコーティングにより電極に適用される。液体またはスラリを混合容器から電極に移動させるための他の方法も考えられる。液体またはスラリは、電極表面を覆うように広げられ、押圧され、または伸ばされ、それにより電極表面上にエントロピック素材の均一な薄い被覆がされる。このステップを実行する複数の手段として、羽根、ローラまたはその他の手段の使用が想定されるが、これらに限定するものではない。エントロピック素材の気相堆積は、フィルム形成における当業者に周知の、エントロピック素材の噴霧または化学気相堆積により達成される。
ある実施形態において、乾燥時に所望の厚さのエントロピック誘電体フィルムを生成するために、十分な量の液体またはスラリを電極表面に適用する。その他の実施形態において、所望の厚さにするために、2つ以上の層の液体またはスラリを電極表面に適用する。各層を別の層が塗布される前に乾燥させ、あるいは、すべての層を積層した後に乾燥させて液体またはスラリを連続的に除去する。2つ以上の層が適用される場合、層は同一または異なる化学組成を有することもできる。
電極およびエントロピック誘電体素材を加熱することで、溶媒を除去し、電極表面上にエントロピック誘電体フィルムを形成する。加熱は、エントロピック素材を導電性の第2電極と接触させる前または後に行われる。ある実施形態において、アセンブリを挟持または押圧してエントロピック素材に圧力を加え、液体またはスラリから空気や気体を押し出し、第1および第2電極を完成に電極の内側の表面同士で密着させる。その他の実施形態において、アセンブリを150℃から300℃の温度に加熱して溶媒を除去する。特定の溶媒においては、その他の温度範囲が適切となりうる。
ある実施例において、本発明の原理によるエネルギ貯蔵装置用のエントロピック素材は、例えば50mLの無水エタノール等のアルコールに溶解された15gのタンパク質の粉末(例えば、ゼイン、シグマ・アルドリッチ社(Sigma−Aldrich)#Z3625)から形成される。完全に溶解するまで不活性雰囲気下で溶液を十分に撹拌する。この溶液に、30分等の所定期間激しく撹拌しながら、60℃に加熱し、10gの固体の無水マレイン酸(例えば、シグマ・アルドリッチ社#M188)を少量ずつ加える。この期間の最後に、0.5gの過酸化ジクミル(シグマ・アルドリッチ社#329541)を5分間かけて少量ずつ加える。その後、溶液を1.5時間60℃で熱し、撹拌する。溶液を室温まで冷却する。それから、固体の炭酸グアニジン(シグマ・アルドリッチ社#G1165−9)を溶液が中性から塩基性になるまで少量ずつ加える。得られた蜂蜜色の液体が誘電体として使用可能である。あるいは、共重合したマレイン酸/アクリル酸(例えば、シグマ・アルドリッチ社#416053)のような他の素材をグアニジンで中和することで同様の結果が得られる。グアニジンの代替物も同様に使用可能である。非限定的な例として、炭酸セシウムまたは炭酸ルビジウムを代用品として使用可能である。他の有機、ポリマおよび無機カチオン種も置換可能である。超高分子量のアクリル酸/アクリルアミドも、必要に応じて塩の形態に中和された場合には誘電体として使用可能である。
独立的な実施形態において、高分子エントロピック誘電体フィルムの分子がその場で形成される。誘電体素材の液体またはスラリは、架橋剤と、1種または複数種の極性官能基、イオン化可能な官能基、またはそれらの組み合わせを含む複数のポリマ分子前駆体とで構成される。ある実施例において、前駆体は、アミノ酸分子、オリゴペプチド、ポリペプチド、またはそれらの組み合わせとされる。別の実施形態において、ポリマ分子前駆体は、p−キシリレンモノマをさらに含む。液体またはスラリは、前述のように第1電極に塗布される。塗布後、架橋剤が活性化し、それによりポリマ分子前駆体が架橋されて、複数のポリマ分子を備えるエントロピック誘電体フィルムが形成される。電極が絶縁層を含む複合電極である場合などにおいて、架橋の工程にて、ポリマ分子の一部が電極表面に結合される。
その他の独立的な実施形態において、高誘電率の誘電体素材を製造する方法には、有機ポリマを溶媒に溶解してスラリまたは溶液にするステップが含まれる。例示的なポリマとしては、シェラック、シリコーンオイル、およびゼインが挙げられるが、これらに限定するものではない。未溶解の有機ポリマは、フィルタまたは遠心分離機を使用する等により、スラリまたは溶液から除去される。次いで、無機塩をスラリまたは溶液に加える。無機塩として、Gd、Sr、Sn、Fe塩、またはそれらの混合物等の遷移金属塩が用いられる。その他の実施形態において、絶縁破壊電圧補助剤がスラリまたは溶液に加えられる。絶縁破壊電圧補助剤は、Y、Ni、Sm、Sc、Tb、Yb、La、Te、Ti、Zr、Ge、Mg、Pb、Hf、Cu、Ta、Nb、Bi、またはそれらの混合物の1種または複数種で構成される。スクリーニングおよび乾燥を促進させるために、ジメチルホルムアミドおよび/またはジメチルスルホキシドがスラリまたは溶液に添加することができる。それから、溶媒を除去または蒸発させるために、スラリまたは溶液を例えば約150℃から約300℃の温度に加熱することができる。この方法により、高いプロセス温度を回避し、高い絶縁破壊電圧を有する高誘電体キャパシタを生成される。
その他の適切な誘電体素材として、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリレート、ポリピロールの塩のような導電性ポリマ塩、ペロブスカイト(つまり、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム等)といった無機金属酸化物、ポリマ塩のような帯電したイオン性液体およびその他の帯電した液体または、マトリクス内である程度移動したり動いたりする能力を持つ半固体、または、これらの混合物が挙げられる。
その他の実施形態において、本明細書で開示されるエネルギ貯蔵装置は、粘性を変化させる性質を持つエントロピック誘電体を備えることができる。可変粘性を誘電体に導入する方法には、可変温度、可変電界、可変磁場、可変圧力、可変せん断および/又は垂直応力が含まれる。可変圧力、せん断および応力はそれぞれ力の適用の一種である。加えられる力の方向および分布により、それが圧力、せん断または応力のいずれであるかが決定される。
磁気粘性エントロピック誘電体を製造する例示的な方法は、誘電体全体に電気的に絶縁された(または非導電性の)磁性粒子を分布させるステップを必要とする。一度H層およびDH層が形成されると、磁場が印加されて、粘性を増加させるとともに、誘電体を通る粒子の移動を防止し、H層およびDH層を「固定」する。磁場強度を変更することにより、誘電体自体の中での電荷移動(電流の流れ)による層の分離を制御することが可能になる。また、印加された磁場により、エネルギ貯蔵のための追加の層形成またはエントロピ変化がもたらされる可能性がある。
B.絶縁層形成
ある実施形態において、この方法には、絶縁層を第1電極に適用して複合第1電極を形成し、それからエントロピック誘電体フィルムを複合第1電極の絶縁層に適用するステップがさらに含まれる。その他の実施形態において、絶縁層は重合p−キシリレンで構成される。別の実施形態において、絶縁層はp−キシリレンと上述の他のコモノマとのコポリマで構成される。絶縁層は、気相堆積、液体噴霧、スクリーニング、スピンコーティング、またはフィルム形成の当業者に周知の他の方法を含む適切な手段により適用される。
ある実施形態において、絶縁層は気相堆積により適用される。絶縁層が重合p−キシレンで構成される場合、キシレンを単原子酸素源と反応させて単原子型のp−キシリレンを生成することができる。一例として、単原子酸素源は、亜酸化窒素またはイオン化二原子酸素で構成される。その他の実施形態において、キシレンを単原子酸素源と反応させて単原子型のp−キシリレンを生成するステップは、大気圧で、450℃から800℃に加熱された環境下で、単原子酸素源に対するキシレンの化学量論比において行われる。この反応は、電気的に加熱されたインコネル(ニッケル合金600)熱分解反応管等の熱分解反応管中で行うことができる。アルゴン又は窒素ガスのような不活性ガスのみの流れ、又は亜酸化窒素のような反応性化合物との流れが、熱分解反応管に供給される。キシレン蒸気等の出発物質が熱分解反応管に導入され、反応管内の単原子酸素と反応する。非常に反応的で過度的であるために、単原子酸素が、リアクションチャンバ215内の揮発性混合物と反応するために利用可能でなければならない。上述のように、単原子酸素源は、キャリアガスとともに供給される気体化合物、またはプラズマ発生器のような別の供給源により個別に供給される気体化合物とすることができる。酸素(O)ガスを、ガスをイオン化するRF放電のようなイオン化エネルギ源に曝すことにより、単原子酸素プラズマを発生させることができる。一方で、一酸化窒素(NO)などの化合物は、熱的、触媒的および/または他の分解による反応のために単原子酸素を供給できる。このため、単原子酸素プラズマ発生器、または単原子酸素化合物(例えば、NO)供給原料、またはその他の適切な単原子酸素の供給源が提供される。プラズマガスを上述の出発物質と共に使用することで、モノマ、ダイマ、トリマ、オリゴマまたはポリマ等の出発物質の酸化物を後で生成する中間酸化生成物を生成することができる。300℃から800℃の温度において、反応管の出力はモノマp−キシレンを単量体形態に維持するのに十分高温である。電極表面上におけるモノマの急速な冷却により、モノマの液体凝縮およびモノマのポリマへの迅速な重合をもたらされる。低温の非反応性ガスを高温反応の流れに混合する装置を使用することで、温度を低下させ、反応管から放出される反応中間体の凝縮を促進さえることができる。必要に応じて、高温ガスのジュールトムソン冷却を行うために、反応管の出口に膨張弁を使用することができる。
本方法は、これらに限定するものではないが、2−クロロ−1,4−ジメチルベンゼン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、2,5−ジメチルアニソール、テトラフルオロ−p−キシレン、および1,2,4−トリメチルベンゼンを含む、他の置換基に拡張することができる。芳香環上の置換基のメタおよびオルト配向もまた実行可能な反応出発物質である。この反応は、プラズマまたは分解された酸素含有物質またはその中間反応生成物から生成された単原子酸素と反応することができ、芳香環の存在により安定化された水素原子を有するすべての化合物を対象と含めるように一般化することができる。一般的に、このような水素原子はフェニル環のアルファ位(ベンジル位)に位置する。アルファ芳香環位置から除去されたマイケル構造が、有機合成に精通する同業者に周知のアルファ芳香環位置に対する水素アルファと同様の反応を示すことが知られている。しかしながら、そのような水素原子の反応性は、芳香環からのアルファおよび/またはマイケル位置、またはベンゼンのような芳香環に限定されない。有機化学分野の当業者に周知のように、他の芳香族の安定化もまた、多くの異なる環、縮合環、および非環系で知られている。それらの出発物質は、部分的に酸化された出発物質を形成するために除去され得る2つの水素原子の存在を有することが好ましい。これらの所望の素材は、二量化、三量体化、オリゴマ化、または重合する能力を有することができる。
絶縁層がp−キシレンを含むコポリマを備える場合、キシレンを単原子酸素源と反応させてモノマ形態のp−キシリレンを生成することができる。一例として、単原子酸素源は、亜酸化窒素またはイオン化二原子酸素で構成される。ガスをイオン化するRF放電のようなイオン化エネルギ源に酸素(O)ガスを曝すことにより、単原子酸素プラズマを生成することができる。あるいは、一酸化窒素(NO)等の化合物は、熱、触媒および/または他の分解により、反応のための単原子酸素を供給できる。好ましい実施形態において、キシレンを単原子酸素源と反応させてモノマ形態のp−キシリレンを製造するステップは、大気圧で、350℃から800℃に加熱された環境下で、単原子酸素源に対するキシレンの化学量論比において行われる。この反応は、電気的に加熱されたインコネル(ニッケル合金600)熱分解反応管等の熱分解反応管中で行うことができる。モノマ形態のp−キシリレンは、共重合化合物(コモノマ)、すなわちモノマ形態のp−キシリレンと共重合する化合物と混合される。モノマ形態のp−キシリレンおよび共重合化合物は、混合中はガス状態である。プラズマガスを上述の出発物質と共に使用することで、出発物質の酸化形態である反応生成物を後で生成する中間酸化生成物を生成することができる。モノマ形態のp−キシリレンを共重合化合物と混合した後、得られた混合物を凝縮器で捕らえることができる。凝縮器は、混合物の凝縮が生じる温度を有する。少なくとも−30℃、例えば−30℃から400℃の範囲の温度において、それらの混合物の大部分を捕捉することができる。凝縮器は、捕捉を促進するための溶媒を備える。必要に応じて、捕捉された混合物は、別のモノマ、反応性物質または不活性物質等の第3物質と混合してもよい。モノマ形態のp−キシリレンを共重合化合物と混合した後、得られた混合物を電極上に堆積できる。電極の温度は、堆積した混合物の凝固を促進するように制御することができる。モノマを電極表面上に送りながら(改質の有無によらず)モノマを急速に冷却することで、モノマの液体凝縮およびモノマのポリマへの急速な重合が起こる。
必要に応じて、堆積した混合物は、光開始光エネルギおよび/または、磁場(例えば、ネオジム磁石、S84、K&J マグネティクス社(K&J Magnetics))および/または直流電界などの電界といった誘電率増強場に曝されてもよい。モノマの縮合およびその後の重合は、磁場において急速に進められる。重合プロセス中に対象物(すなわち、電極上に堆積された絶縁性素材)および磁石を同一の相対配向に保持すると、電気誘電率のベースライン増加が生じることが示されている。重合または固相凝縮プロセス中に対象物に対する磁場の関係の配向を回転させると、得られる誘電率は減少することが示されている。
反応が上述のとおり行われた場合に、p−キシリレンモノマを重合分子として使用するが、印加された磁場が存在しないと、堆積される素材の比誘電率は約3となる。素材が約200から2000ガウスの磁束密度255で処理されると、比誘電率は約7となる。このように、磁場により、製品の誘電率が実質的に2倍以上に増加することが示されている。同様の方法で、他の塩、双極子、および有機酸の塩は、凝固または重合中にエントロピに関して配向されて、高誘電率素材を生成することができる。10%から1000%以上の誘電率の向上が達成できる。
他の実施形態において、対象物は、4000Vの高電圧電源(Emco、G40)により作られるような電界に浸漬される。モノマの縮合およびその後の重合は、電界中で急速に進められる。重合プロセス中に対象物と電界を同一の相対配向に保持すると、電気誘電率のベースライン増加が生じることが示されている。重合または固相凝縮プロセス中に対象物上の電界が減少すると、得られる誘電率はより低くなることが示されている。電界および/または磁場の存在下での誘電体反応生成物の凝縮は、凝縮された誘電体の誘電率を増大させることが示されている。このステップは、パリレンポリマ以外の化合物にも適用できる。
凝縮プロセス中の電界および/または磁場の使用により、製品の機械的強度に変化が生じる。素材は、強電磁場中での凝縮後に異方性を示してもそうでなくてもよい。ある実施形態において、素材は、強電磁場での凝縮後に異方性を示す。その他の独立的な実施形態において、素材は、強磁場中での凝縮後に異方性を示さない。このように、本方法は、この手順により製造された反応生成物の機械的特性を制御する方法として利用することができる。
Puralene(登録商標)(プラレン)被覆140、150の厚さは、5〜30nmから10ミクロンを超える範囲とすることができる。次に、被覆された電極110、130は、誘電体素材120の適用の基礎として使用される。
C.ポリマ分子の電極への結合
ある実施形態において、エントロピックエネルギ貯蔵装置の製造中、またはEESDの最初の充電中に、電界が、第1電極、誘電体フィルム、および第2電極を横切るように印加される。電界は、第1電極が正電極として機能し、第2電極が負電極として機能するように印加される。電界強度は、誘電体フィルムの平均の厚さに基づき、100V/cmより大きく、または少なくとも0.001V/μmとされる。その他の実施形態において、電界強度は、0.005〜1V/μm、0.01〜1V/μm、0.1〜1V/μmまたは0.4〜0.6V/μmとされる。
電界は、誘電体フィルム内のポリマ分子の少なくとも一部を第1の電極に結合させ、それにより立体的に拘束された誘電体フィルムを生成するのに有効な期間、印加される。有効期間は、少なくとも部分的に電界強度に基づき、例えば、30秒から60分、5分から30分、または5分から15分といったの1秒から数分までの範囲を取りうる。ある実施形態において、電界は0.005〜1V/μmであり、有効期間は1秒から30分である。その他の実施形態において、0.005〜0.5V/μmの電界強度を20分間印加することが、重合したp−キシリレンで構成される複合電極表面に50%を超えるタンパク質分子を結合させるのに有効である。他の実施形態において、0.5〜1V/μmの電界強度を5〜15分間印加することが、90%を超えるタンパク質分子を重合したp−キシリレンで構成される複合電極表面に結合させるのに有効である。
ある実施形態において、第1導電性電極、誘電体フィルムおよび第2導電性電極を組み立てた後、誘電体フィルムを化学薬品で処理して、ポリマ分子の少なくとも一部を第1電極に結合させ、これにより立体的に拘束された誘電体フィルムを生成する。その他の実施形態において、電界が第1電極、誘電体フィルムおよび第2電極を横切るように印加され、誘電体フィルムが化学薬品で処理される。
ある実施形態において、第1電極は複合電極であり、誘電体フィルムを化学薬品で処理するステップには、誘電体フィルムを絶縁層に適用する前にラジカル開始剤を絶縁層に適用し、次に、ポリマ分子の少なくとも一部を誘電体フィルムに結合し、立体的に拘束された誘電体フィルムを生成するためにラジカル開始剤を活性化するステップが含まれる。例示的なラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、1,1′アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジクミルペルオキシド、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、カンファーキノン、フェナントレンキノン、これらの組み合わせ、およびその他の重合の当業者に周知のラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤は、酸化還元、光開始、熱開始、またはその他の重合の当業者に周知の方法により活性化され、それによりポリマ分子の少なくとも一部が絶縁層に結合する。
独立的な実施形態において、第1電極は複合電極であり、誘電体フィルムを化学薬品で処理するステップには、誘電体フィルムのフィルム素材にラジカル開始剤を混入し、誘電体フィルムを絶縁層に適用した後にラジカル開始剤を活性化するステップが含まれる。
他の独立的な実施形態において、第1電極は複合電極であり、誘電体フィルムを化学薬品で処理するステップには、複合第1電極の絶縁層に架橋できる官能基を提供するために誘導体化剤でポリマ分子を誘導体化し、続いてラジカル開始剤、紫外線、熱活性化、またはそれらの組み合わせを用いて官能基を絶縁層に架橋させ、立体的に拘束された誘電体フィルムを製造するステップが含まれる。例示的な誘導体化剤として、無水物、カルボジイミド、イミドエステル、およびNヒドロキシスクシンイミドおよびマレイミドの組み合わせを含む試薬、アリールアジド、またはジアジリン基が挙げられる。ある実施形態において、誘導体化剤には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、またはシス−5−ノルボルネン−エンド−2,3―ジカルボン酸無水物といった無水物が用いられる。
別の独立した実施形態において、第1電極は複合電極であり、誘電体フィルムを化学薬品で処理するステップには、誘電体フィルムを絶縁層に適用する前に、絶縁体層の表面にプラズマを印加するステップが含まれる。プラズマは、高電圧「放電」プラズマを介して、キャリアガス(例えば、窒素またはアルゴン)に酸素を通すことにより作られる。スパークを横切る電圧降下は、250kHzで約100Vから1000Vである。一方で、高周波プラズマは、同じガス混合物を使用して、より低い電圧(例えば、13.6MHzで100V以下)で発生させることができる。プラズマは、p−キシレンを酸化するのに十分長い時間(例えば、数ミリ秒)存在する単原子酸素を生成する。誘電体フィルム内のポリマ分子はプラズマと反応し、それによってポリマ分子の少なくとも一部を絶縁層に結合し、立体的に拘束された誘電体フィルムを形成する。
誘電体フィルムを化学薬品で処理するための上記の実施形態の1つまたは複数は組み合わせて使用することができる。例えば、ポリマ分子を誘導体化剤で誘導体化することも、架橋剤をフィルム素材に混入することも、ラジカル開始剤をフィルム素材に混入することも、誘電体フィルムに適用し、活性化される前に絶縁層に適用することもできる。
IV.エントロピックエネルギ貯蔵装置を用いる方法および回路
図4は、単一のエントロピックエネルギ貯蔵装置C1(C−SCIと記載)を含む例示的な回路を示す。第1マルチポジションスイッチS1は、装置C1を充電電圧源V0に接続し(状態A)、または放電電圧源VDに接続する(状態B)ように設けられ、または、スイッチS1は切断され(NC)、高インピーダンス(HiZ)に位置に置かれる。第2マルチポジションスイッチS2は、装置C1を接地(状態A)し、または、抵抗R1と記載された負荷に接続するように設けられる(状態B、C)。電圧V1、V2は、テストポイント1、2を介して、回路の様々な位置で監視することができる。以下の説明において、充電電圧は接地電圧に対して正であると仮定しているが、それとは反対の極性およびそれに伴い変更された電圧もまた、本質的に同じ回路動作を得るために反転可能であることを理解されたい。参照される電圧の基準となる接地電位は任意の基準点であることも理解されたい。電気設計の分野に精通する当業者により一般的に行われるものとして、任意の電圧を基準点として選択することができ、本明細書にて参照する図中の接地電位の位置に代用することができる。
充電電圧V0に接続されると、エントロピックエネルギ貯蔵装置C1は、状態Aに示すとおり、スイッチS2を介して反対側の電極を接地電位に接続して、充電される。完全に充電されると、装置C1の誘電体を横切って漏れる理想的でない電流以外には、この定常状態において更なる電流は生じない。キャパシタ装置におけるリーク電流の回復方法は、米国特許出願公開第2013/0229157号明細書に開示されており、このリークによる損失を緩和するために本明細書において実装することができる。
状態Bにおいて、装置C1は、マルチポジションスイッチS1およびS2とともに、負荷R1を介して装置C1の放電を可能にするように設定される。放電電圧VDは、当初の充電電圧V0よりも小さく、HiZ(非接続)状態(状態C)における装置により生成される電圧よりも小さい任意の電圧とすることができる。
図5は、エネルギ貯蔵装置C1から負荷R1にエネルギを供給する一般的な方法を示すフローチャート500であり、第1電圧レベルまで充電されたエネルギ貯蔵装置C1を備える回路であって、エネルギ貯蔵装置C1は誘電体フィルムを介挿させた第1及び第2電極を備え、誘電体フィルムは本明細書で開示されるエントロピック素材で構成される、回路を準備するプロセスブロック510を備える。第1電極は、第2電極に対して正または負に帯電する。プロセスブロック520において、放電期間中に回路の第1操作モードにて極性反転した電位VDがエネルギ貯蔵装置C1の第1電極に印加され、これによりエネルギ貯蔵装置C1から負荷R1に電力が供給される。装置C1を放電電圧源に接続することにより、極性反転した電位が装置C1に印加される。放電電圧源により供給された極性反転した電位VDは、第1電圧レベルより低く、高インピーダンス状態でエネルギ貯蔵装置により生成された電圧よりも小さい。ある実施形態において、第1電極は第2電極に対して正に帯電し、極性反転した電位を第1電極に印加するステップには、第1電極に負の電圧を印加するステップが含まれる。
図4と図6のフローチャート600を参照すると、ステップ610にて、エネルギ貯蔵装置を接地することにより、エネルギ貯蔵装置C1は第1電圧まで充電され、ステップ620にて、エネルギ貯蔵装置C1を第1電圧まで充電するための有効な期間中に、充電電圧(V0、例えば、充電電圧源により供給される)を第1エネルギ貯蔵装置C1に印加する。ある実施形態において、充電電圧を印加する間にエネルギ貯蔵装置の充電電流が監視される。キャパシタの技術分野の当業者に理解されているように、エネルギ貯蔵装置が完全に充電されると、充電電流は低下する。したがって、ステップ630にて、充電電流は選択された最小値と比較され、充電電流が選択された最小値以下である場合、ステップ640にて、回路は高インピーダンス状態に切り替えられ、エネルギ貯蔵装置もはや充電電圧を受けず、エネルギ貯蔵装置から負荷に実質的にエネルギが供給されなくなる。エネルギ貯蔵装置を放電させたい場合には、図4および5に示すように、エネルギ貯蔵装置の第2電極を負荷に接続し、第1電極に極性反転した電位を印加する。
図7において、2つのエネルギ貯蔵装置C1、C2を備える例示的な回路を示す。エネルギ貯蔵装置C1、C2の少なくとも1つは本明細書で開示されるEESDの実施形態である。2つのエネルギ貯蔵装置C1、C2は、プッシュプル構成と呼ばれる構成をとる。この構成の利点は、負荷R1の両端にかかる全電圧が増加することで、これにより、所定の電力レベルに必要な電流量が減少し、既存のシリコンベースの装置との互換性が改善されることである。本明細書に開示されたEESD以外の装置を使用する場合には、通常考慮されない他の利点もある。状態Aにおいて、エネルギ貯蔵装置C1は、マルチポジションスイッチS1と他の端子の基準電圧または接地電圧とを用いて、正(+)端子にて充電電圧V0に接続される。エネルギ貯蔵装置C2は、マルチポジションスイッチS3を使用して正(+)端子にて充電電圧V0に接続され、マルチポジションスイッチS2を使用して他端子にて基準電圧または接地電圧に接続される。これにより、この状態において、C1とC2の両方に対して所定レベルの容量への充電が実行される。状態Bにおいて、スイッチS1、S2およびS3が再構成され、スイッチS1およびS2が負荷に接続され、スイッチS3が接地される。マルチポジションスイッチS1、S2およびS3は、コンピュータコントローラまたはコンパレータによって作動させることができる。コントローラ/コンパレータは、回路内の電圧をV1および/またはV2にて監視することもできる。状態Bの構成において、装置C1は正の充電電圧V0と同じ極性の、正の極性を負荷R1に印加する。しかしながら、S3を介してC2がグランドに接続されると、正の電極は接地され、(S2の負荷に近い)第2電極は接地電圧に対して−V0となる。したがって、第2装置C2の負荷と反対側の端子に印加される極性が逆になり、負荷への極性が充電電圧V0から逆転する。接地は、図4のエントロピックエネルギ貯蔵装置C1に負の電圧を印加するのと同じ効果を有する。典型的なキャパシタを利用すると、状態Bの構成において理論的に負荷R1の両端の電圧電位が倍増し、2×V0となる。しかし、EESDの場合、状態Bの構成において、装置C1、C2の運動エネルギ放出という電圧依存の特性により、装置の電力出力をさらに増加させる。このような装置C1、C2の非線形性能は、ほとんどのキャパシタとって典型的ではなく、特に大部分のEESDの適用のための低周波数領域において、予期されない挙動である。状態Cにおいて、スイッチS2は接地され、スイッチS1、S3は、装置C1、C2を、装置C1から負荷R1に実質的にエネルギが供給されない高インピーダンス状態にするように構成される。
ある実施形態において、装置C1およびC2は共に本明細書に開示されるEESDである。他の独立的な実施形態において、装置C1およびC2の1つがEESDであり、他の装置は従来の静電キャパシタである。図7の例示的な回路におけるエネルギ貯蔵装置(C1またはC2)の1つを静電キャパシタとして使用することは、EESDの非線形放電を補助するための良好な電圧を印加しながら、電流により低いインピーダンス経路を提示することにより、EESD(C1またはC2の他方)の放電を助けることができる。ある非限定的な実施例において、アルミニウム電解のような伝統的な静電キャパシタを(図7のC1またはC2の)いずれかの装置と取り換えることができる。
図7における第1エネルギ貯蔵装置C1がEESDである例示的な回路と図8のフローチャートを参照すると、エネルギ貯蔵装置から負荷にエネルギを供給する方法には、第1電圧レベルまで充電された第1エネルギ貯蔵装置C1と第1電圧レベルまで充電された第2エネルギ貯蔵装置C2を備える回路であって、第2エネルギ貯蔵装置C2は第1エネルギ貯蔵装置C1と直列に接続される、回路を準備するプロセスブロック810が含まれる。第1エネルギ貯蔵装置C1は、誘電体フィルムを介挿させた第1電極と第2電極を備え、誘電体フィルムは本明細書で開示されるエントロピック素材で構成される、第1電極は第2電極に対して正または負に帯電する。第1エネルギ貯蔵装置C1は負荷に接続されている。第2エネルギ貯蔵装置C2は、従来の静電キャパシタまたは本明細書で開示されるEESDであってもよい。回路はまた、第2エネルギ貯蔵装置を接地するように動作可能な第1スイッチと、第2エネルギ貯蔵装置を負荷に接続するように動作可能な第2スイッチとを備える。この方法には、第2エネルギ貯蔵装置C2を接地および負荷に接続するプロセスブロック820と、放電期間中に回路の第1操作モードにて、第1エネルギ貯蔵装置C1の第1電極に極性反転した電位を印加(例えば、接地)し、第1エネルギ貯蔵装置C1から負荷R1にエネルギを供給するステップ830が含まれる。極性反転した電位は、第1電圧レベルより低く、第1エネルギ貯蔵装置C1により高インピーダンス状態で生成される電圧よりも小さくなる。ある実施形態において、第1電極は第2電極に対して正に帯電し、極性反転した電位を第1電極に印加するステップには、第1電極に負の電圧を印加するステップが含まれる。
従来の静電キャパシタは、印加電圧に関係なく一定のままである、放電中の時定数(R×C)を有する。予期せぬことに、開示されたEESDの実施形態は、放電された際に、R×Cの一定値を示さない。例えば、以下の実施例2の表2に示すように、10Vに充電されたEESDは、放電電圧が0V〜10Vに変化するにつれて、3倍に増加する時定数を持つことができる。充電されたEESDに負の電圧を印加すると、(V0を基準に)0Vを印加することで得られる放電率よりも、1,000%〜2,000%速いの放電率が得られる。
図9は、直列接続された3つのエネルギ貯蔵装置C1、C2、C3を備える例示的な回路図である。エネルギ貯蔵装置C1、C2、C3がすべて理想的なキャパシタ(例えば、従来の静電キャパシタ)であり、同じ静電容量である場合、充電または放電電圧Vcが印加されると、V1、V2およびV3の電圧は各キャパシタにおいて等しくVcの3分の1の電圧降下を示す。1つのキャパシタの静電容量が他の2つのキャパシタの静電容量よりも小さい場合、小さいキャパシタにおける電圧降下は、他の2つよりも大きくなる。
キャパシタをEESDに置き換えた場合、完全に理想的なキャパシタからなる配列と同一の関係性が充電中において保持される。しかしながら、EESD装置の配列の放電中においては、容量が小さな方の装置上に電荷が蓄積され、その電圧降下が増加すると、それにより、電圧降下を減少させるようにその放電率が増加する。それにより、EESDの配列では、その放電サイクルの大部分において、理想的なキャパシタ配列に比べて、運動エネルギ放出という点において、より大きな範囲での自己平坦化が行われる。
図10は、直列接続された3つのエントロピックエネルギ貯蔵装置((C−SCI)と表記)C1、C2、C3を備える例示的な回路図である。一連のEESD装置が直列に接続されている場合、装置記号の周りを3重のかっこで括った記号が使用される。直列に接続された装置の数を表すために添え字のnが付けられる。当業者であれば、直列に配置されたEESDの数は、図10に示すように3に限定されないことを理解できる。2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のEESDを直列に接続することができる。このため、nは、1より大きい任意の整数、すなわち、2、3、4、5等であってもよい。
開示されたEESDの実施形態は、特異な放電率パターンを有する。図11は、図4の例示的な回路におけるエントロピックエネルギ貯蔵装置C1の放電率を示す。図11のグラフは20Vの充電電圧と0Vの放電電圧を用いて生成したものである。グラフが示すように、例えば、その総容量の1%等、EESDが部分的にしか充電されていない場合、公称電圧への放電率は、約0.2A/mである。EESDがその全容量に対する充電されている割合が増えると、放電率も高くなっていき、最大充電の約50%において、約7A/mの最大値に達する。充放電の絶対速度は、誘電体の粘性、温度、及びキャパシタの厚さにより大きく変化するが、相対的な放電率は、図11に示すように、基底放電率から最大放電率まで約30倍に増加する。EESDが満充電に近づくと、放電率ははるかに低い値に低下し、時には1%充電時における当初の放電率よりも低くなる。これは、部分的に充電された場合より完全に充電された場合に、はるかに急速に放電する大部分のキャパシタの挙動とは著しく対照的である。この振る舞いは想定外である。急速なエネルギ放出という観点からは望ましくないが、これらのEESDを大規模に使用する場合における安全性という観点からこの振る舞いは望ましいものである。有益なことに、開示されたEESDの実施形態は、ほぼ全ての充電レベルにおいて急速に放電する傾向はなく、衝撃や短絡などの不運な機械的または電気的事象が発生した場合に、EESDは制御不能な放電を起こしにくい。
本明細書で開示されるEESDの放電率は、0V未満の放電電圧を使用することにより劇的に改善することができる。図12は、図4の例示的な回路に示されたエントロピックエネルギ貯蔵装置C1の放電率に対する負の放電電圧の効果を示すグラフである。EESDが20Vに充電されている場合、放電電圧を(V0に対して)0Vよりも負の値に変化させることにより、放電率が実質的に向上する。放電電圧が実際に負(すなわち、充電電圧に対して逆極性)である場合、ほとんどの充電レベルでの放電率が実質的に変化する。図12のグラフは、EESDが約50%充電されている場合の、放電率に対する負の放電電圧の効果を示す。図12からわかるように、わずかな負電圧により放電率は数倍増強される。EESDの初期電圧が元の充電電圧の20%を超えて増加するにつれて、より高い放電率が得られるにも関わらず、パーセンテージ効果の減少が見られた。図13において、1平方メートル当たりの放電率に関する実測値についても同様の結果が得られた。
図12および図13に示すように、図7に示す回路の利点は明確である。各エネルギ貯蔵装置C1、C2が同じ構造のEESDであると仮定すると、図7に示す構成により、各装置C1、C2が放出できる電力が2倍よりも増加する。図7の例示的な回路において、各装置C1、C2の一方の電極に−2.5Vの放電電圧を印加すると、供給される電力において5倍から10倍の増加が得られる。接地点への放電ともに装置C1、C2が負荷R1に接続されると、電力供給の期待値は、各装置が単独で供給できる量の2倍となる。しかしながら、図7に示す回路において、装置C1、C2の少なくとも1つが本明細書に開示するEESDである場合、負荷R1に印加された負の電圧は、両方の装置に対して有効な負の放電電圧を生成し、電力供給を4倍よりも増加させる。興味深いことに、装置が両方ともにほぼ同等の容量と電力供給能力のEESDである場合、各装置に印加された負の放電電圧が他方のエントロピック装置を逆充電することは決してできないという事実により、装置間における総電力出力は等しく調整される。これは、充電サイクル中に充電電圧が1つの装置を「放電させる」ことを防止するためにも役立つ。このバランス/平衡効果は、電力供給とラウンドトリップ効率の両方を実施の際に最大化するために役立つ。
図7に示すように2つのエントロピックエネルギ貯蔵装置C1、C2が1つの回路で使用される場合、かつ、2つ装置の容量および電力供給が実質的に異なる場合、よりロバストな(より電流の大きい)装置が、負荷がかかった状態における電圧降下が少ないため、放電サイクル中、大部分の電力を負荷R1に供給する(状態B)。この場合、大きい装置が小さい装置を逆充電することができる。回路が充電状態(状態A)に再構成された場合、充電電圧V0は小さい装置を放電させてゼロ充電に戻すとともに、エネルギを供給して、完全充電の数%まで正に充電する。この小さな装置の逆充電のエネルギは失われる。さらに、大きな装置が小さな装置に供給するエネルギも充電中に供給される必要があるため、負荷R1の反対側で別のエネルギ損失が発生する。非対称エントロピックエネルギ貯蔵装置の逆充電が発生しないこと、または最小化されることを確実にすべく注意をする必要がある。さもないと、システムの「ラウンドトリップ」効率に悪い影響を及ぼすことになる。
回路の充放電中に生じる別の要因は、各EESD自体の非対称放電である。個々のEESDは平行電極(例えば、図1および2に示すの電極110、130)で構成されているため、電極の厚さおよび平行度は完全ではない可能性がある。この場合、または不均一な誘電体素材および厚さの場合、装置の総面積において部分ごとに充電および/または放電速度が異なることがある。この場合、装置の一部は、別の部分よりも急速に放電することがある。これが発生すると、装置内逆充電が行われる。これが発生すると、EESD(例えば、図4の装置C1)は放電状態(状態B)から高インピーダンス状態、すなわち負荷または充電電圧に接続されていない状態(状態C)に移され、休止期間または回復期間とされ、望ましくない逆充電が起こる前に誘電体の自然自己平衡を発生させることができる。「自己平衡」とは、エントロピック誘電体素材全体の電荷/エントロピ状態がより均質になることを意味する。言い換えると、誘電体素材内の充電が少ないまたは逆充電が発生している領域は、エントロピック誘電体素材の隣接領域から受け取ったエネルギにより再充電されうる。
したがって、ある実施形態において、図4に示す例示的な回路が、図14のフローチャート1400に示すように、パルス放電モードで動作する。プロセスブロック1420における初期放電期間(状態B)に続いて、プロセスブロック1430において、回路が高インピーダンス状態(状態C)にある間に電圧回復期間とするために少なくとも閾値回復期間中は回路が第2操作モードに切り替えられ、第1エネルギ貯蔵装置から負荷に実質的に電力が供給されず、エントロピック素材がエントロピ平衡の所望レベルまで戻される。外部電力源によりエネルギ貯蔵装置を再充電することなく、回路は第1操作モードと第2操作モードを繰り返し切り替えられる(プロセスブロック1420、1430)。第2操作モードで第2電極が負荷から切り離されると、回路が第1操作モードに切り替えられる前に、プロセスブロック1440において再接続される。各放電期間中、極性反転した電位がエネルギ貯蔵装置に印加され、装置に電圧降下が生じる。各回復期間中に、装置電圧が回復する(例えば、実施例2および図19参照)。
プロセスブロック1450において、選択されたレベルを超えて放電される場合(すなわち、エネルギ貯蔵装置の電圧が所望のレベルに回復しない場合)を判断するために、第1エネルギ貯蔵装置の電圧を監視する。第1エネルギ貯蔵装置が選択されたレベルを超えて放電していない場合、回路は第1操作モードに切り戻される。第1エネルギ貯蔵装置が選択されたレベルを超えて放電している場合、第1エネルギ貯蔵装置はプロセスブロック1460において充電される。図4を参照すると、第1エネルギ貯蔵装置C1を充電するのに十分な時間、状態Aに回路を切り替えることにより充電が行われる。装置C1が十分に充電されると、回路は状態Bに切り戻され、パルス放電方が再開される。第2電極が負荷から切り離されている実施形態において、回路を第1操作モードに戻す前に、プロセスブロック1470において第2電極が負荷に再接続される。
ある実施形態において、放電電圧はステップ1425において監視される。放電電圧が目標レベル以下である場合、プロセスブロック1430において回路は第2操作モードに切り替えられる。同様に、回復電圧はステップ1435において監視される。回復電圧が目標レベル以上である場合、回路はプロセスブロック1420において第1操作モードに切り替えられる。
一例として、EESDは第1電圧V1に充電される。第1放電期間中、回路は状態Bに構成され(例えば図4参照)、EESDは部分的に、V1>V2である第2電圧V2まで放電される。その後、EESDの電圧が、V1>V3>V2である第3電圧V3まで増加する回復期間中、回路は高インピーダンス状態に切り替えられる(図4の状態C)。第2放電期間中、負荷にエネルギをさらに供給し、EESDを、V1>V3>V4である第4電圧V4までに放電するために、回路は状態Bの構成に切り戻される。EESDの電圧が、V1>V3≧V5>V4である第5電圧V5まで増加する第2回復期間中、回路は再び状態Cに切り替えられる。サイクルは、それぞれ後続の回復電圧が前の回復電圧に比べて等しいまたはわずかに低い状態において繰り返される。EESDが完全にまたは大部分放電されると、充電電圧を印加することによりV1まで再充電される(例えば、図4の状態A参照)。
放電期間とその後の回復期間により処理サイクルが構成される。ある実施形態において、放電期間は処理サイクルの0.1〜99.9%とされ、例えば処理サイクルの1〜95%、5〜90%、5〜80%、10〜70%、または10〜50%となる。この場合、10msの処理サイクルは、0.01〜9.99ms、0.1〜9.5ms、0.5〜9ms、0.5〜8ms、1〜7ms、または1〜5msの放電期間を有することができる。
ある実施形態において、図7に示す例示的な回路を使用する場合のように、装置内および/または装置間の逆充電が発生しうる。このため、図7に示すような回路は、装置C1、C2の少なくとも1つが本明細書に開示されたEESDである場合、装置C1、C2の回復期間をとるために、高インピーダンス状態(状態C)にされうる。状態Cにおいて、スイッチS1およびS3は高インピーダンスとなる位置に置かれる。ある実施形態において、コンパレータまたはコンピュータコントローラ回路を使用して、電圧の所望の極性が常に維持されるようにテストポイントTP1、TP2における装置電圧V1、V2を監視し、あるいは、装置の平衡または「フロート」電圧を監視する。回復期間は、コンパレータ/コンピュータコントローラにより、装置C1、C2の正電極における平衡電圧V1、V2がそれぞれ測定される期間であるとともに、エントロピック誘電体素材における電荷/エントロピ不均質領域において、装置C1、C2を通じてより一貫した充電レベルへの再調整が行われる期間である。
図7に示すような回路においてパルス放電を発生させるには、以下の表1に示すスイッチS1、S2、S3の位置の手順が用いられる。このスイッチの切り替え手順は、アクティブフィードバック制御ループの電子パルス幅変調技術の当業者に周知の方法で、電流または電圧を制御するため用いることができる。本明細書に記載されたエントロピック装置の場合、パルス幅技術を用いることには、例えば、エントロピック誘電体の電荷/エントロピ不均質領域を自己平衡可能にする等の、他の利点もある。これらの利点は、想定外のものであり、アクティブフィードバック制御設計の通常の過程では予期されないものである。
接続されていない高インピーダンス状態(図7、状態C)において電力供給における「デッドタイム」を生じるので、必要に応じて、負荷R1への連続的な電力供給を可能にする様々な解決策が存在する。その1つとして、同じ負荷に複数のEESDを取り付けることがある。1つの装置の「セット」が高インピーダンス状態になると、別の装置のセットが負荷に切り替えられて連続的な電流を供給する。例えば、図7の装置C1およびC2の一方または両方は、並列に接続された2つ以上のEESDに置き換えてもよく、EESDのうちの任意の1つは、いつでも負荷R1に接続してよい。あるいは、単純な静電キャパシタを追加して、エネルギの一部を蓄積し、バランシングおよび監視を行うために必要な期間に、電力供給を維持することができる。
図15は、直列に接続されたEESDの配列を備える回路を示す。EESDの直列接続は、所定のサイズの導体に対してより多くの電力供給を可能にするために、より多くの電圧を実現する。2つ以上のEESDの並列接続により、負荷への電力の連続的な流れを可能にする。図15に、n個の直列接続されたEESDをm行の並列接続で備える複数の装置(m*n)を示す。複数の行を備えることにより、前述のパルス技術を使用する際には、より連続的な電流を配列からの出力することができる。1つの非限定的な実施例として、10%の処理サイクルがパルス発生のために使用される場合、10列の直列接続された装置を設けることが有効である。回路の処理中、配列の個々の行は、放電と高インピーダンス状態とを繰り返す。制御マイクロプロセッサまたはアナログコンパレータを利用した、マルチプレクサスイッチ配列(MUX1、MUX2)ならびにS1、S2、およびS3の動作は、制御回路およびエレクトロニクスの分野の当業者に理解されるように、電流および電圧の制御を可能にする。
図16および17は、図4、7または15に示す回路等のエントロピックエネルギ貯蔵装置を含む回路においてパルス放電を行うためにマルチポジションスイッチを制御する例示的なアルゴリズムを示すフローチャート1600、1700である。回路制御アルゴリズムの当業者であれば、図示のアルゴリズムは単なる例であり、他のアルゴリズムを用いて同じ制御ステップを達成することも可能であると理解できるものである。回路制御の当業者に理解されているように、制御はコンパレータまたはコンピュータコントローラによって行われる。
図16のフローチャート1600を参照すると、例示的なアルゴリズムは、ステップ1605における初期化およびユーザ入力から開始する。ステップ1610において、EESDを充電するかどうかの判断が行われる。答えが「はい」である場合、マルチポジションスイッチ(例えば、図4のスイッチS1、S2、もしくは、図7または図15のスイッチS1、S2、S3)は、ステップ1620において充電状態(例えば、図4、図7または図15の状態A)に設定される。ステップ1630において充電電流が計測され(例えば、図4または図7のテストポイント1、2)、最小値と比較される。充電電流が最小値以下でない場合、答えは「いいえ」となり、ステップ1610において、EESDを充電するかの判断が再度行われる。EESDが満充電になると、充電電流が最小値を下回り、ステップ1650において、マルチポジションスイッチが高インピーダンス状態に設定される(例えば、図4、図7または図15の状態C)。ステップ1660において、EESDを放電するかどうかの判断が行われる。答えが「いいえ」であれば、ステップ1670において、高インピーダンス状態となるようにマルチポジションスイッチが設定され、または維持される。答えが「はい」であれば、ステップ1680において、アルゴリズムがパルスモード放電アルゴリズムに切り替わる。パルスモード放電アルゴリズムの詳細は図7のフローチャート1700に示す。
図17のフローチャート1700を参照すると、ステップ1701でパルスモードが有効にされる。ステップ1702および1703において、それぞれ状態B(放電)および状態C(高インピーダンス)のタイマがセットされる。ステップ1702および1703は、任意の順序で同時にまたは順次実行することができる。初期時間値は、例えばオペレータにより、コントローラに入力される。ステップ1704において、状態Bタイマが開始される。ステップ1705において、マルチポジションスイッチ(例えば、S1、S2、S3)が放電するように設定される(例えば、図4、7または15の状態B)。ステップ1704および1705は、任意の順序で順次実行することができる。次に、アルゴリズムはステップ1706において状態Bタイマが終了したかどうかを問い合わせる。答えが「はい」である場合、ステップ1707において、EESDを高インピーダンス状態(例えば、図4、7または15の状態C)にするために、マルチポジションスイッチが切り換えられる。ステップ1708において、状態Cタイマが開始される。ステップ1707および1708は、任意の順序で順次実行することができる。次に、アルゴリズムはステップ1709において、状態Cタイマが終了したかどうかを問い合わせる。答えが「はい」である場合、ステップ1710においてEESDの電流および電圧が計測される(例えば、図4または図7のテストポイント1、2)。ステップ1711において、電流と電圧が目標値と比較され、タイマ値が更新される。(例えば、図15に示すように)回路がEESDの配列を備える場合、ステップ1711において、EESDの他のセットを回路に接続できるように、行セレクタがインクリメントされる。ステップ1712において、パルスモード放電の状態を維持するかどうかの判断を行う。答えが「いいえ」の場合、ステップ1713において、パルスモードが無効にされる。
状態BおよびCのタイマを使用する代わりに、回路制御の当業者により理解されるように、コントローラを用いて、EESDの電圧を監視してもよい。例えば、回路が第1操作モード(放電モード)にある間、電圧が所望の放電電圧レベルに達するまで、コントローラにより電圧を監視することができる。その後、電圧が所望の回復電圧レベルに達するまで、回路は第2操作モード(高インピーダンスモード)に切り替えられる。監視している電圧が所望の放電および回復電圧レベルに達すると、第1および第2操作モードの間で回路が切り替えられる。
V.実施例
以下の実施例にて用いられたエントロピック素材を用意した手順を示す。ゼインに基づくエネルギ貯蔵装置用のエントロピック素材は、50mlの無水エタノールを加えた15グラムのゼイン(シグマ・アルドリッチ社#Z3625)から形成される。完全に溶解されるまで、不活性雰囲気下で溶液を十分に攪拌した。この溶液に、合計30分間激しく撹拌しながら、10gの固体の無水マレイン酸(シグマ・アルドリッチ社#M188)を少量ずつ加えた。この間、溶液を60℃に加熱した。この期間の最後に、0.5gのジクミルペルオキシド(シグマ・アルドリッチ社#329541)を5分間かけて少量ずつ加えた。それから、溶液を60℃以上で加熱し、1.5時間撹拌した。その後、溶液を室温まで冷却した。次に、溶液が中性から塩基性になるまで、個体の炭酸グアニジン(シグマ・アルドリッチ社#G1165−9)を少量ずつ加えた。得られた蜂蜜色の液体を誘電体として使用した。
エントロピックエネルギ貯蔵装置は、Puralene(登録商標)(プラレン)ポリマ(重合されたp−キシリレン)を備えるパラレン絶縁層もそれぞれの電極に備える。スペーサが電極の間に(例えば約10ミクロン)空間を設けるために用いられ、電極の間にセパレータが入れられる。組み立てる際に、構築されたEESDはアルミホイル内に真空封止され、密封されたEESDからは電気的接続のためにリードが延ばされる。
実施例1
(エントロピックエネルギ貯蔵装置の放電)
図18を参照すると、本発明の原理に基づく例示的なエントロピックエネルギ貯蔵装置における時間に対するエネルギと電圧が概念的に描かれている。エネルギ貯蔵装置は120VDC電源に接続された抵抗により充電される。PicoScope(登録商標)(ピコスコープ)モデル4262とエネルギ貯蔵装置の各電極を接続し、スコープの統合計算機能を利用することにより、トレース405に示すような回路へのエネルギの流れが計算され表示される。第1電極への印加電圧はトレース415A−415Bに示され、トレース410には変位電流が示される。約120Vの第1充電電圧によりキャパシタに8.16J供給された。約3分の時点で印加された−120VDCの第2電圧により、8.08Jのエネルギが供給されたことがわかる。この特定の充電手順において、充電と放電の量は概ね等しかった。コンデンサからの変位電流を積分することにより、吸収されるエネルギと放出されるエネルギはデータ収集装置と統合ルーチンの誤差限界内において、ほぼ等しいことがわわかる。より長い充電サイクルも使用可能であるが、本質的にこの電圧でこの期間に供給されたエネルギのすべてが、この時間枠内でエネルギ貯蔵装置により吸収された。初期の切り替え中のエネルギ貯蔵装置によるわずかな抵抗により、いくらかの電力供給の降下が発生した。この電圧降下は、スコープによる計算により説明された。この実施例では、吸収されるエネルギは8.16Jであった。サンプルの容量は0.006333mLであった。エネルギ密度は1288J/mLまたは198Wh/kgであった。充電電力の積分により、放電サイクルが充電サイクルの少なくとも10倍長い場合に、本質的にa>90%の充電量の回復が得られることが明らかになった。
実施例2
(静電キャパシタとエントロピックエネルギ貯蔵装置の比較)
静電キャパシタの充電(および放電)の観点において、実際のキャパシタは抵抗を持つ直列の理想的な静電キャパシタとしてモデル化できる。
電流、電圧と時定数(RC値)の関係を以下に示す。
C=C1の静電容量
=キャパシタの第1電極に電圧を供給する抵抗への供給電圧
=(第1キャパシタ電極と抵抗の接地点における)キャパシタの電極間の電圧
i=キャパシタを流れる電流、またはdQ/dt
R=等価直列抵抗ESRを含む抵抗のオームの法則における抵抗値
=キャパシタのそれぞれの電極に蓄積された電荷
t=時間
−iR−V=0
−V=iR
CV=Qであることから、

iを置換して、





ここで、Qは時刻0の電荷、Qは時刻tの電荷として、時刻0から時刻tまで積分できる。







はCV=Qの関係と初期電圧VとキャパシタCを用いて置換できる。

簡略化すると

時間の導関数にすると


簡略化すると

−V=iRに時間依存性を持たせる電流に関する時間の関数の最終形が導き出される。
キャパシタにおける電圧(V)、RC、及び、電流(i)の動的な関係が方程式で定義され、これにより電圧と他の値の関係についても説明することができる。
以下の方程式から開始すると、

Cで両辺を割り、

CV=Qの同一性を用いて、

指数関数的時間減衰のための一般的な方程式を用いて、すべての曲線を適合させると、

ここにおいて、




従って、
この方程式より、回路のキャパシタの電圧は回路の時定数(t1またはR*C)に依存していることがわかる。このために、無極性の150μFアルミニウムキャパシタ(CDE#PSU14535A1015H、コーネル‐デュビリエ・エレクトロニクス社、リバティ、サウスカロライナ州)を1740オームの抵抗器と直列に接続したものを図4に示すように構成した。キャパシタは10V電源で充電し、様々な電圧により放電した。この充電のグラフを図19に示す。印加電圧が0V、−1V、−2.5V、−5V、−7.5V、−10Vにおける放電曲線をそれぞれ図20〜25に示す。
これらの曲線と曲線あてはめをみると、キャパシタの充電と放電の実験結果が前述の方程式で定義された回路分析を用いて予測されたものと一致していることが分かる。曲線あてはめグラフの挿入図に示されるとおり、放電の時定数はキャパシタの放電電圧に依存して変化しなかった。データを表2にまとめる。
その後、ゼインを含むエントロピック誘電体素材で構成されたEESDを用いて同一手順を行った(表3参照)。実質的に同一の組成及び構造の4つの個別のEESDを用意し、評価を行った。一部において、エネルギ散逸率を評価するために、短い開放(2秒)、または「高インピーダンス」区間を追加した。EESDの充電曲線を図26に示す。印加電圧が0V、−2.5V、−5V、−10Vの場合の放電曲線(高インピーダンス区間なし)とその曲線あてはめを示すグラフをそれぞれ図27−30に示す。2秒間の高インピーダンス区間の後に、0V、−2.5V、5V、および−10Vの電圧を印加した放電曲線とその曲線あてはめを示すグラフをそれぞれ図31〜34に示す。
上記のEESDの放電曲線は、標準の1次指数関数的減衰を用いて適合させることができなかった。しかし、以下の2次の指数関数的減衰方程式を使用することにより、

概ね0.99の適合度を持った、EESDに対してよくあてはまる曲線が得られた。従来のキャパシタを用いる場合には、1次の指数関数的減衰のあてはめが非常によく機能する。
表3のデータは、少なくとも2つのエネルギ貯蔵のためのメカニズムが、これらのエントロピックエネルギ貯蔵装置の充電/放電において同時に存在することを示している。各効果の時定数はどちらも、従来のコンデンサの場合と同様に放電電圧で一定ではない(表3参照)。エントロピックエネルギ貯蔵装置における放電電圧が増加するにつれて、表3のRC1およびRC2(時定数1および2)の時定数が一貫して増加することは特筆すべきである。
これは、一般的なキャパシタでは見られない二次的なメカニズムが存在しうることを示している。これらの2つのメカニズムは、各効果の時定数を使用してさらに調査することができる。
印加電圧Vsと初期電圧V0がキャパシタ両端の時定数に影響を与えうることが、この実験により示された。負の放電電圧を用いて放電率を変更することが可能である。一方または両方の時定数を変更することによって、放電時間を増加し、あるいは、逆に電力出力を増加させる間に、放電時間を減少させるように、放電速度を変更することができる。
最大電流以下の放電または管理された放電が望ましい場合、この回路は、図7に示すコンピュータまたはコンパレータへのプログラム変更の追加により、その結果を達成することもできる。この性質の変更は、電子回路設計および制御システムの分野の当業者には周知である。例えば、最大出力(所与の周波数での最大処理サイクル)の50%の電流が、電動機の制御のために求められる場合がある。この回路は、その周波数において半分のパルス幅、または半分の周波数で同一幅のパルスを単純に出力すればよい。上記の様々な組み合わせは、設計の他の要素に応じて設計者が選択することができる。
実施例3
(回路におけるエントロピックエネルギ貯蔵装置のパルス放電)
図4に示す回路を構築した。エネルギ貯蔵装置C1は、ゼインで構成されたエントロピック誘電体層を備えるEESDとした。EESDを初期電圧10Vに充電した。状態Bの放電構成と状態Cの高インピーダンス(HiZ)構成とを交互にとることにより、放電曲線(図35)が得られた。放電曲線をみると、EESDの初期急速放電が約200マイクロ秒間発生し、その後、よりゆっくりでより平坦な削減された電力放電がより長い期間続いた。回路の構成はHiZ状態(状態C)に変更され、装置の正電極の電圧は、均質化された誘電体内の不均一性として、電圧の「回復」を示した。
図35を参照すると、上側の曲線はEESDに印加された電圧である。下側の曲線はEESDと接地された1K抵抗間の電圧を示す(この電圧はEESDから流れる電流に比例する)。時間0から文字Aで示される時間までの区間1の充電期間が示されており、その間にEESDが+10Vで部分的に充電される。
放電期間は、ラインAとラインBの間の時間として示される。グラフに示されるように、キャパシタを放電するために、電圧が9.5Vから5Vに低下した。装置から放電された電流は、放電電圧が接地電位に保持されていた場合に装置が放電する電流に対して約20倍大きかった。しかしながら、この放電電流の大幅な増加は、放電電圧に対して一定ではなかった。装置が接地電位よりも負の電圧で放電すると、装置の逆極性が発生しうる。放電電流はこの非常に高い値から急速に低下した。これは、第1パルスの放電時間中の負電圧の減少として、下側の曲線で見られた。第1放電パルスが約1ミリ秒の時間値に達すると、EESDは放電電圧から切り離され、高インピーダンス状態または休止期間とされた。ラインBとラインCとの間の区間2はHiZ、つまり休止期間である。
放電電極(上側の曲線)の電圧は、約3.4Vまで急速に上昇した。装置がこの高インピーダンス状態で「休止」すると、次の放電パルスの前に電圧の僅かな上昇が見られたように、電圧はいくらか回復した。この電圧回復の効果は、放電プロセスが進行するにつれてより顕著になった。HiZ「回復時間」により、装置は自身の誘電体をより均質な状態に平衡させることができた。これにより、次の放電パルスにおいて、放電電圧が一定のままで接続されていた場合の電流よりも実質的に大きな電流を生成することができた。
上記の例において、各放電/HiZ処理サイクルの合計時間の10%の期間のみ放電が行われた。10%の処理サイクル放電が適用された周波数は約1kHzであった。このパルス放電方式により高い電流が生成されたにもかかわらず、装置は連続放電電圧を印加された場合と同程度の速度で放電できないことがある。しかしながら、パルス放電技術は誘電体の逆極性化の防止に役立つため、この技術を使用することには大きな利点がある。
1つのパルスから次のパルスまでの所定の時間に放出される総エネルギは、短いパルスにくらべて、一定の負の電圧を印加した際により大きくなるが、誘電体の逆極性およびその不均質の可能性が問題になる。装置の放電曲線の多くの領域において、パルス放電を使用することにより放電率が上がる。
パルス放電法に関して特に興味深いのは、低充電領域と高充電領域の両方で放電率が大きく低下することである(図35参照)。これは、特にグラフの完全に充電された部分における動作においては、従来の静電キャパシタから予測できた動作ではなかった。完全に充電されたEESDからの放電が接地電位において行われると、逆極性化は起こらなかったと思われる。しかし、接地電位放電電流は、負電圧放電電流の1%程度である。したがって、全体的に増加したエネルギ放電率は、上述のパルス化された負のDC電圧技術を用いて得られる。10%の放電可用性は、放電電流の2,000%増加によって相殺され、放電中の総電力供給が全体的に100%増加する。
開示された発明の原理を適用できるさまざまな実施形態の観点から、図示された実施形態は単に本発明の好適な実施例であると認識されるべきであり、本発明の範囲を限定するために使われるべきではない。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲により定義される。したがって、特許請求の範囲の範囲および精神に該当するすべてを発明として請求する。
米国特許第8633289号明細書 米国特許第9011627号明細書 米国特許出願公開第2014/0139974号明細書 米国特許出願公開第2013/0229157号明細書

Claims (23)

  1. エネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、
    ・第1電圧レベルまで充電された第1エネルギ貯蔵装置を備える回路を準備するステップであって、前記第1エネルギ貯蔵装置は誘電体フィルムを介挿させた第1電極及び第2電極を備え、前記誘電体フィルムはエントロピック素材で構成され、前記第1電極が前記第2電極に対して正または負に帯電しており、前記エントロピック素材は、1種または複数種の極性官能基、イオン化可能な官能基、または、それらの組み合わせを有する、複数のポリマ分子で構成される、立体的に拘束された誘電体素材であって、前記複数のポリマ分子の少なくとも1%が前記第1電極、または、前記第1電極と前記誘電体フィルムの間に形成された絶縁層に固定されており、当該ステップは、
    ・前記第1エネルギ貯蔵装置を接地するステップと、
    ・前記第1エネルギ貯蔵装置を前記第1電圧レベルまで充電するために所定期間に亘り、前記第1エネルギ貯蔵装置に充電電圧を印加するステップと、
    を含む、ステップと、
    ・放電期間に前記回路の第1操作モードにおいて、極性反転した電位を前記第1エネルギ貯蔵装置の前記第1電極に印加するステップと、
    を含み、極性反転した電位を前記第1電圧レベルよりも低くし、かつ、高インピーダンス状態にある前記エネルギ貯蔵装置により生成された電圧よりも低くし、それにより前記第1エネルギ貯蔵装置から前記第1エネルギ貯蔵装置の前記第2電極に接続された前記負荷に電力を供給する、エネルギ供給方法。
  2. 請求項1に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記第1電極を前記第2電極に対して正に帯電させ、前記第1電極に対して極性反転した電位を印加するステップが前記第1電極に負の電圧を印加するステップを含む、エネルギ供給方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記回路が複数の直列接続された第1エネルギ貯蔵装置を備える、エネルギ供給方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記回路が、第1電圧レベルに充電され前記第1エネルギ貯蔵装置と直列接続された第2エネルギ貯蔵装置と、前記第2エネルギ貯蔵装置を接地可能な第1スイッチと、前記第2エネルギ貯蔵装置を負荷に接続可能な第2スイッチとをさらに備え、前記回路の前記第1操作モードにて前記第1エネルギ貯蔵装置の前記第1電極に極性反転した電位を印加するステップが、前記第1スイッチにより前記第2エネルギ貯蔵装置を接地するステップと、前記第2スイッチにより前記第2エネルギ貯蔵装置を前記負荷に接続するステップと、を含む、エネルギ供給方法。
  5. 請求項4に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記第2エネルギ貯蔵装置が、誘電体フィルムを介挿させた第1電極と第2電極を備え、前記誘電体フィルムがエントロピック素材で構成される、エネルギ供給方法。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法であって、さらに
    ・前記充電電圧の印加中に前記第1エネルギ貯蔵装置の充電電流を監視するステップと、
    ・選択された最小値と前記充電電流を比較するステップと、
    ・前記充電電流が前記選択された最小値以下の場合に、前記回路を第2操作モードに切り替え、前記回路を高インピーダンス状態にし、前記第1エネルギ貯蔵装置が前記充電電圧を受領せず、前記第1エネルギ貯蔵装置から前記負荷にエネルギが実質的に供給されないようにするステップと、を含む、方法。
  7. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、さらに、
    ・少なくとも回復期間中に前記回路を第2操作モードに切り替え、前記回路を高インピーダンス状態にし、前記第1エネルギ貯蔵装置から前記負荷に実質的に電力が供給されず、前記エントロピック素材をエントロピ平衡の所望レベルまで戻す、電圧回復期間を提供するステップと、
    ・外部電力源から前記第1エネルギ貯蔵装置に再充電せず、前記第1操作モードと第2操作モード間で繰り返し前記回路を切り替えるステップと、
    を含む、エネルギ供給方法。
  8. 請求項に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記放電期間と前記回復期間が正確に処理サイクルを構成し、前記放電期間が処理サイクルの0.1〜99.9%である、エネルギ供給方法。
  9. 請求項または請求項に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記第2操作モード中に前記エネルギ貯蔵装置が前記負荷から外されると、さらに、前記エネルギ貯蔵装置を前記負荷に再接続し、前記第2操作モードから前記第1操作モードに前記回路を切り替えるステップを含む、エネルギ供給方法。
  10. 請求項から請求項のいずれか1項に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、さらに
    ・前記電圧が所望の放電電圧レベルに達するまでの前記第1操作モード中に、コントローラを用いて前記第1エネルギ貯蔵装置の電圧を監視するステップと、
    ・前記所望の放電電圧レベルに達すると、前記コントローラを用いて前記第1操作モードから前記第2操作モードに前記回路を切り替えるステップと、
    ・前記電圧が所望の回復電圧レベルに達するまでの前記第2操作モード中に、前記コントローラを用いて前記第1エネルギ貯蔵装置の前記電圧を監視するステップと、
    ・前記所望の回復電圧レベルに達すると、前記コントローラを用いて前記第2操作モードから前記第1操作モードに前記回路を切り替えるステップと、
    を含む、エネルギ供給方法。
  11. 請求項から請求項のいずれか1項に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、さらに
    (a)コントローラを用いて、前記放電期間までの時間値を受領するステップと、
    (b)前記コントローラを用いて、前記回復期間までの時間値を受領するステップと、
    (c)前記コントローラを用いて、前記回路が前記第1操作モードにある間に前記放電期間を監視するステップと、
    (d)前記コントローラを用いて、前記放電期間に前記時間値が達すると前記回路を前記第1操作モードから前記第2操作モードに切り替えるステップと、
    (e)前記コントローラを用いて、前記回路が前記第2操作モードにある間に前記回復期間を監視するステップと、
    (f)前記コントローラを用いて、前記回復期間に前記時間値が達すると前記第1エネルギ貯蔵装置の電流と電圧のレベルを受領するステップと、
    (g)前記コントローラを用いて、前記電流と電圧のレベルと前記電流と電圧のレベルの目標値を比較し、目標値との比較結果を提供するステップと、
    (i)前記コントローラを用いて、前記目標値との比較結果の少なくとも一部に基づき、前記放電期間と前記回復期間までの前記時間値を更新するステップと、
    を含む、エネルギ供給方法。
  12. 請求項11に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、さらに
    (j)前記コントローラを用いて、前記第2操作モードから前記第1操作モードに前記回路を切り替えるステップと、
    (k)(c)から(i)までのステップを繰り返すステップと、
    を含む、エネルギ供給方法。
  13. 請求項1に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記回路が第1エネルギ貯蔵装置の配列を備え、mとnをそれぞれ1より大きな整数として、前記配列が直列に接続されたn個のエネルギ貯蔵装置をm列の並列で備える、前記方法が、さらに
    ・前記負荷をマルチポジションスイッチにより前記配列の第1列に接続するステップと、
    ・第1放電期間中に前記極性反転した電位を前記配列の前記第1列の第1エネルギ貯蔵装置の第1電極に印加し、これにより電力を前記配列の前記第1列から前記負荷に供給するステップと、
    ・前記第1放電期間終了後に、マルチポジションスイッチにより前記負荷を前記配列の後続列に接続するステップと、
    ・後続の放電期間中に前記極性反転した電位を前記配列の前記後続列の第1エネルギ貯蔵装置の第1電極に印加し、これにより電力を前記配列の前記後続列から前記負荷に供給するステップと、
    を含む、エネルギ供給方法。
  14. 請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記エントロピック素材は(i)電気的に絶縁可能であり、かつ/または、高誘電率を示し、(ii)複数のポリマ分子を含有する、エネルギ供給方法。
  15. 請求項14に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記ポリマ分子は1種または複数種の極性官能基、イオン化可能な官能基、または、それらの組み合わせを含有する、エネルギ供給方法。
  16. 請求項14または請求項15に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記ポリマ分子がタンパク質を含有する、エネルギ供給方法。
  17. 請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記エネルギ貯蔵装置が充電および/または放電されない時に、ポリマ分子にタンパク質が含まれていると、前記エネルギ貯蔵装置が、導電性の前記第1電極及び第2電極の間に配置され、立体的に拘束された誘電体フィルムの単位重量あたり、少なくとも1Wh/kgのエネルギ貯蔵容量を有する、エネルギ供給方法。
  18. 請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記第1エネルギ貯蔵装置がさらに、
    ・前記第1電極と前記誘電体フィルムの間に形成された第1絶縁層、
    ・前記第2電極と前記誘電体フィルムの間に形成された第2絶縁層、または、
    ・前記第1電極と前記誘電体フィルムの間に形成された第1絶縁層と前記第2電極と前記誘電体フィルムの間に形成された第2絶縁層、
    を備える、エネルギ供給方法。
  19. 請求項18に記載のエネルギ貯蔵装置から負荷へのエネルギ供給方法であって、前記第1絶縁層、前記第2絶縁層、または、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層が重合されたp−キシリレンを備える、エネルギ供給方法。
  20. 回路であって、
    ・エントロピック素材で構成された誘電体フィルムを介挿させた第1電極と第2電極を備え、前記第1電極は前記第2電極に対して正または負に帯電した、第1エネルギ貯蔵装置と、
    ・誘電体フィルムを介挿させた第1電極と第2電極を備え、前記第1電極は前記第2電極に対して正または負に帯電した、第2エネルギ貯蔵装置と、
    ・前記第1エネルギ貯蔵装置の前記第1電極と結合され、(i)前記第1エネルギ貯蔵装置の前記第1電極と充電電圧源を結合し、(ii)前記第1エネルギ貯蔵装置の前記第1電極と負荷を結合し、または、(iii)前記第1エネルギ貯蔵装置を高インピーダンス状態にし、前記第1エネルギ貯蔵装置から負荷に実質的にエネルギが供給されないようにする、第1マルチポジションスイッチと、
    ・前記第2エネルギ貯蔵装置の前記第2電極と結合され、前記第2エネルギ貯蔵装置の前記第2電極を負荷と接続または接地する、第2マルチポジションスイッチと、
    ・前記第2エネルギ貯蔵装置の前記第1電極と結合され、(i)前記第2エネルギ貯蔵装置の前記第1電極と充電電圧を結合し、(ii)前記第2エネルギ貯蔵装置の前記第1電極を接地し、または、(iii)前記第2エネルギ貯蔵装置の前記第2電極を接地する前記第2マルチポジションスイッチと協同して、前記第2エネルギ貯蔵装置を高インピーダンス状態にする、第3マルチポジションスイッチと、
    を備える、回路。
  21. 請求項20に記載の回路であって、前記第2エネルギ貯蔵装置の前記誘電体フィルムはエントロピック素材で構成される、回路。
  22. 請求項20または請求項21に記載の回路であって、前記第1、第2および第3マルチポジションスイッチを制御可能なコントローラをさらに備える、回路。
  23. 回路であって、
    ・エネルギ貯蔵装置の第1配列であって、m1とn1を整数として、前記第1配列は直列に接続されたn1個のエネルギ貯蔵装置をm1列の並列に備え、前記第1配列の各エネルギ貯蔵装置は誘電体フィルムを介挿させた第1電極及び第2電極を備え、前記誘電体フィルムはエントロピック素材で構成され、前記第1電極は前記第2電極に対して正または負に帯電した、第1配列と、
    ・エネルギ貯蔵装置の第2配列であって、m2とn2を整数として、前記第2配列は直列に接続されたn2個のエネルギ貯蔵装置をm2列の並列に備え、前記第2配列の各エネルギ貯蔵装置は誘電体フィルムを介挿させた第1及び第2電極を備え、前記第1電極は前記第2電極に対して正または負に帯電した、第2配列と、
    ・前記第1配列と接続され、かつ、接地された、第1入力マルチプレクサと、
    ・前記第2配列と接続された第2入力マルチプレクサと、
    ・前記第1配列と結合され、(i)前記第1配列と充電電圧源を結合し、(ii)前記第1配列と負荷を結合し、または、(iii)前記第1配列を高インピーダンス状態にし、前記第1配列から負荷に実質的にエネルギが供給されないようにする、第1マルチポジションスイッチと、
    ・前記第2入力マルチプレクサと結合され、(i)前記第2入力マルチプレクサと充電電圧源を結合し、または(ii)前記第2入力マルチプレクサを接地する、第2マルチポジションスイッチと、
    ・第2配列の第1端と結合され、(i)前記第2配列の前記第1端と負荷を結合し、(ii)前記第2配列の前記第1端を接地し、または、(iii)前記第2入力マルチプレクサを接地する前記第2マルチポジションスイッチと協同して、前記第2配列を高インピーダンス状態にする、第3マルチポジションスイッチと、
    ・前記第1および第2入力マルチプレクサを制御して、前記第1、第2および第3マルチポジションスイッチを作動させる操作が可能なコントローラと、
    を備える、回路。
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