(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら実施形態に係る飲料サーバについて説明する。以下の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、実施形態に係る飲料サーバ10を備えた飲料提供装置1の全体構成を示している。飲料提供装置1は、例えば、飲食店に設けられる装置であって顧客の注文等に応じてカラン9から飲料を注出する。ここで、飲料としては、ビール及び発泡酒等のアルコール飲料、並びにアルコールを含まない飲料も含まれる。本実施形態では、飲料サーバ10がビールを提供する例について説明する。飲料提供装置1は、例えば、炭酸ガスボンベ2と、減圧弁3と、炭酸ガスホース4と、ビール樽5と、ヘッド6と、ビールホース7と、カラン9と、飲料サーバ10とを備えている。
炭酸ガスボンベ2は、炭酸ガスが高圧で充填された略円柱状の容器である。炭酸ガスボンベ2は、ビール樽5の内部のビール液を飲料サーバ10に押し出す機能、及びビール樽5内部のビール液に含まれる炭酸ガスの量を適正に保つ機能を有する。炭酸ガスボンベ2は、その内部の炭酸ガスの量を表示する残量表示計2aを備えている。減圧弁3は、ビール樽5の内部のビール液にかかる炭酸ガスの圧力を調整する。減圧弁3は、炭酸ガスボンベ2内の炭酸ガスの残圧を表示する残圧表示計3aと、圧力を調整するための回転式の操作部3bとを備えている。
ビール樽5は、ビール液が詰められた容器である。ビール樽5の表面には、例えば、カード状の液温検出部5aを貼り付けることが可能となっており、この液温検出部5aによってビール樽5内のビールの温度を検出することができる。また、ビール樽5は、内部にビール液が流通するチューブ5bと口金5cとを備えている。
ヘッド6は、上下に移動させることにより炭酸ガスとビール液の流路を開閉可能な操作ハンドル6aと、炭酸ガスホース4と接続されるガス継手6bと、ビールホース7と接続されるビール継手6cとを備えている。ガス継手6b及びビール継手6cは、ヘッド6の中央部で上下に延在する本体部6dに対して脱着自在となっている。
飲料サーバ10は、ビールホース7を介してヘッド6に接続されており、ビール樽5からヘッド6及びビールホース7を介して送り出されたビール液を冷却する。例えば、飲料サーバ10は、電気冷却式の瞬間冷却式サーバである。飲料サーバ10は、直方体状となっており、飲料サーバ10の側面の上端にビールホース7が入り込んでいる。飲料サーバ10によって冷却されたビール液は、カラン9が引かれたときにカラン9から注出される。
図1及び図2に示されるように、飲料サーバ10は、冷却水(冷却液)Wを収容する直方体状の筐体11と、ビールホース7に接続されて冷却水Wに浸漬されると共に螺旋状に形成されたビールコイル(飲料管)12と、冷却水Wを冷却させる冷凍サイクル装置15とを備えている。
ビールコイル12は、ビールホース7との接続部分から水槽11a内を下方に伸び、その下端から軸線L回りに螺旋状に伸び、螺旋状に伸びる上端部分で冷却水Wから上方に引き出された箇所でカラン9に接続されている。軸線Lは、例えば、平面視における筐体11の中央部分で鉛直方向に延在する基準線である。
図3は、筐体11の横断面を示す断面図である。図3に示されるように、筐体11は、その内側から順に、水槽11aと、真空断熱層11bと、発泡ウレタン層11cと、フィルム層11dとを備えている。水槽11aは防水機能を有しており、この水槽11aの内部に冷却水Wが収容される。真空断熱層11bは、4枚の板状の真空断熱材11eが貼り合わされることによって構成されている。4枚の真空断熱材11eは水槽11aの外面に貼り付けられている。このように、真空断熱層11bは、水槽11aの外面に密着している。
発泡ウレタン層11cは、平面視における真空断熱層11bの外側で真空断熱層11bを囲むように設けられている。フィルム層11dは、発泡ウレタン層11cの外側面に貼り付けられている。筐体11は、フィルム層11dが内面に貼り付けられた直方体状の型の内側面と、当該型の内部に配置した真空断熱層11bの外側面との間に発泡ウレタンの原液を流し込み、流し込んだ原液が発泡及び硬化して発泡ウレタン層11cが形成されることによって製造される。なお、フィルム層11dが透明であれば、外部から発泡ウレタン層11cを視認できるようになる。また、フィルム層11dの外側には、飲料サーバ10の外装材であるSUS材が設けられている。
また、図1及び図2に示されるビールコイル12について、その形状は、螺旋状に限られず適宜変更可能である。但し、ビールコイル12が螺旋状になっている場合には、冷却水W内におけるビール液の流路を長く確保することができるので、ビールコイル12内部のビール液を飲料サーバ10の内部でより好適に瞬間冷却させることができる。
冷凍サイクル装置15は、冷却水W内におけるビールコイル12の外側でビールコイル12を囲むように螺旋状に伸びる冷媒管16を備えている。更に、冷凍サイクル装置15は、コンプレッサ17、凝縮器18、ファン19、脱水器20及びキャピラリチューブ21を備える。冷凍サイクル装置15は、冷媒管16、コンプレッサ17、凝縮器18、脱水器20及びキャピラリチューブ21を順次接続する冷凍サイクルを構成している。
コンプレッサ17は、冷媒管16から流入された冷媒を圧縮して高温冷媒ガスを生成し、この高温冷媒ガスから凝縮器18が熱を放出させることにより、凝縮器18が高温冷媒液を生成する。ファン19は、凝縮器18に空気を送り込み、凝縮器18における熱交換を効率よく行わせる機能を有する。凝縮器18によって生成された高温冷媒液は、脱水器20を介してキャピラリチューブ21に送られる。キャピラリチューブ21は、脱水器20を介して送られた高温冷媒液に対して減圧と流量制御とを行って例えば−8℃の冷媒を生成し、この冷媒を冷媒管16に供給する。
更に、飲料サーバ10は、撹拌部材22とモータ23とを備えている。撹拌部材22は、例えばプロペラであり、筐体11内の冷却水Wを撹拌し冷却水Wに流れを形成することによって、冷却水Wとビールコイル12との熱交換、及び冷却水Wと冷媒管16の周囲に形成された氷Kとの熱交換を促進させる。
図4(a)に示されるように、撹拌部材22は、上下方向に延びる棒状の回転軸22aと、回転軸22aの下端に取り付けられた4枚の羽根22bとを備えている。回転軸22aの位置は、例えば、前述した軸線Lの位置と一致している。4枚の羽根22bは、回転軸22aから放射状に延びている。4枚の羽根22bは、回転軸22aの回転方向(周方向)に等間隔となる位置に配置されている。また、平面視における各羽根22bの形状は、回転軸22aから円弧状に湾曲した形状となっている。
図4(b)は、図4(a)を矢印Aの方向から見たときの一枚の羽根22b及び回転軸22aを示す図である。図4(b)に示されるように、羽根22bは、回転軸22aに直交する面Sに対して所定の角度を成すように傾斜している。すなわち、各羽根22bは、回転軸22aに沿うように傾斜しており、回転軸22aに直交する面Sに対する羽根22bの傾斜角度θは、例えば15°以上且つ45°以下である。また、傾斜角度θは、20°以上且つ40°以下であることが好ましく、25°以上且つ35°以下であることが一層好ましい。しかしながら、傾斜角度θの値は上記に限定されず適宜変更可能である。
図2に示されるように、撹拌部材22の回転軸22aの上端にはモータ23が連結されている。モータ23は、ビールコイル12の上方に配置されており、モータ23に取り付けられた回転軸22aはビールコイル12の内側に入り込んでいる。よって、ビールコイル12の内側に位置する冷却水Wは、撹拌部材22の回転によって下方に移動し、筐体11の底面11fにおいて筐体11内を外側に移動する流れを形成する。
モータ23は、DCモータである。モータ23は、モータ23に電気的に接続された制御部30によって制御される。具体的には、モータ23の回転速度は、制御部30からの電気信号によって制御され、モータ23に入力される電気信号の電圧により可変となっている。
また、撹拌部材22の羽根22bの鉛直下方には、冷却水Wの温度を検出する温度センサ24が設けられている。この温度センサ24は、例えば、筐体11の底面11fに固定されている。平面視において、温度センサ24は、ビールコイル12の中心、すなわち軸線Lを含む位置に配置されている。温度センサ24によって検出された冷却水Wの温度の値は、電気信号として制御部30に出力される。
図5(a)は、飲料サーバ10(カラン9)からビールを連続的に注出したときにおける冷却水Wの温度の時系列変化を示すグラフである。図5(a)に示されるように、冷却水Wの温度は、ビールを注出する毎に上昇する。これは、ビールの注出に伴い、常温に近い温度となっていたビール液がビールホース7からビールコイル12に流入するためである。また、ビールの注出を止めると、冷媒管16の周囲に形成された氷Kの冷却効果によって冷却水Wの温度は低下する。
制御部30は、温度センサ24から入力された冷却水Wの温度の値に応じてモータ23を制御し、これによりモータ23(撹拌部材22)の回転速度を切り替える。すなわち、制御部30は、モータ23の回転速度を低速モード又は高速モードに切り替える。また、図1に示されるように、飲料サーバ10は、そのカラン9が設けられる外面の上端の隅部に表示部25を備えており、この表示部25にモータ23の回転速度の状態が表示される。
表示部25は、低速モードであるか又は高速モードであるかを表示する。よって、表示部25を視認することによって現在の状態が低速モードであるか又は高速モードであるかが把握可能となっている。なお、表示部25が設けられる位置は、表示部25が視認可能な位置であればよく、適宜変更可能である。
図5(b)に示されるように、制御部30は、温度センサ24が検出した温度が第1時間t1(s)の間に第1温度X1(℃)上昇したときに高速モードに切り替える。例えば、第1時間t1は6(s)、第1温度X1は0.3(℃)とすることができる。
制御部30は、前述のように、冷却水Wの温度が第1時間t1で第1温度X1上昇したときに、ビールが注出されていると判断してモータ23を高速モードで駆動させる。これにより、撹拌部材22は高速回転する。高速モード時におけるモータ23の回転数は、例えば2700(rpm)とすることができる。
この2700(rpm)というモータ23の回転数は、従来のACモータの回転数よりは小さくなっている(従来のACモータの回転数は例えば2750(rpm))。このようにモータ23の回転数を小さくすることにより、ベアリングが損耗したり、モータ23の回転が不安定になったり、冷却水Wが跳ねたりする問題を回避することが可能となっている。
一方、制御部30は、温度センサ24が検出した温度が第2時間t2(s)の間に第2温度X2(℃)下降した場合に低速モードに切り替える。低速モード時におけるモータ23の回転数は、例えば1200(rpm)とすることができる。しかしながら、この回転数は適宜変更可能であり、低速モード時におけるモータ23の回転数は、高速モード時におけるモータ23の回転数より小さければよい。
制御部30は、冷却水Wの温度が第2時間t2で第2温度X2下降した場合に、ビールの注出が行われていないと判断してモータ23を低速モードで駆動させる。これにより、撹拌部材22は低速回転する。例えば、第2時間t2は20(s)、第2温度X2は0.3(℃)とすることができる。また、前述した第1時間t1、第1温度X1、そして第2時間t2、第2温度X2、の値は適宜変更することが可能である。但し、第2時間t2の値は、第1時間t1の値よりも大きくすることが好ましい。これにより、高速モードから低速モードに切り替えるときに、冷却水Wの温度が上がらなくなったことを確実に確認してから切り替えを行うことが可能となる。また、後に詳述するが、第1時間t1、第1温度X1、第2時間t2及び第2温度X2を、それぞれ複数設定することも可能である。
また、前述の「冷却水Wの温度が第2時間t2において第2温度X2下降した場合」という条件に代えて、「冷却水Wの温度が第2時間t2において第2温度X2上昇していない場合」という条件を用いてもよい。この場合、制御部30は、温度センサ24が検出した温度が第2時間t2の間に第2温度X2上昇していない場合に低速モードに切り替える。
図2及び図6に示されるように、冷媒管16には、キャピラリチューブ21から冷媒が供給されるので、この冷媒によって冷媒管16の周囲の冷却水Wが冷却され、これに伴い冷媒管16の周囲に氷Kが生成される。氷Kが生成されるまでには、筐体11内に冷却水Wが入れられた状態で飲料サーバ10の電源がオンにされてから数時間(例えば7、8時間)程度かかる。よって、例えば、飲食店における夜間の営業終了時に飲料サーバ10の電源をオンにすれば、夜間で冷媒管16の周囲に氷Kが生成され、次の日の営業開始時までには氷Kが完成された状態とすることができる。
また、筐体11の内側には、氷Kの厚さ調整用のセンサ31が設けられている。センサ31は、筐体11の内側面11gから筐体11の内側に突出している。センサ31は、2個の棒状の電極32,33を備えており、これらの電極32,33の長さは互いに異なっている。
センサ31は、電極32と電極33との導通又は非導通を検出することによって氷Kの厚さを検出する。具体的には、センサ31は、電極32の先端32aと電極33の先端33aとが冷却水Wに接触し導通しているときには氷Kの厚さが薄いことを検出する。一方、センサ31は、電極32の先端32aが氷Kに埋もれて先端32aと先端33aとが非導通であるときには、氷Kの厚さが厚いことを検出する。
制御部30は、センサ31によって氷Kの厚さが薄いことが検出された場合には冷凍サイクル装置15で冷媒管16に冷媒を供給し、冷媒管16を冷却させることによって氷Kを厚くさせる制御を行う。一方、制御部30は、センサ31によって氷Kの厚さが厚いことが検出された場合には冷凍サイクル装置15による冷媒管16への冷媒の供給を止めて氷Kがこれ以上厚くならないように制御する。このセンサ31では、2個の電極32,33の位置を調整することによって冷媒管16の周囲に生成される氷Kの厚さを制御することが可能である。
次に、図5及び図7を用いて、冷却水Wの温度を調整してビールコイル12内のビール液を冷却させる冷却方法の一例について説明する。図7に示されるフローチャートは、飲料サーバ10によるビールの冷却方法の一例を示しており、このフローチャートにおける各処理は飲料サーバ10の電源をオンにしてから周期的に(例えば1(s)ごとに)実行される。また、このフローチャートの処理では、例えば、飲料サーバ10の電源がオンである状態において冷却水Wの温度が常時監視される。
また、図7に示される冷却方法では、前述の第1時間t1及び第1温度X1が複数設定されており、複数設定された第1時間t1を、第1時間t1−1、第1時間t1−2とすると共に、複数設定された第1温度X1を、第1温度X1−1、第1温度X1−2としている。
まず、ステップS1において、制御部30が、低速モードを設定し、モータ23を低速モードで駆動させる。そして、制御部30は、第1時間t1−1で冷却水Wの温度が第1温度X1−1上昇したか否かを判定する(ステップS2)。例えば、第1時間t1−1は3(s)であり第1温度X1−1は0.2(℃)である。ステップS2における判定の結果、第1温度X1−1上昇したと判定された場合には、モータ23の回転を高速モードに切り替える(ステップS3)。そして、一連の処理を開始してからの時間である累積時間をリセットして(ステップS4)、ステップS2に戻る。
一方、ステップS2において、第1温度X1−1上昇していないと判定された場合には、ステップS5に移行する。ステップS5では、制御部30が、第1時間t1−2で冷却水Wの温度が第1温度X1−2上昇したか否かを判定する。例えば、第1時間t1−2は6(s)であり第1温度X1−2は0.2(℃)である。ステップS5において、第1温度X1−2上昇したと判定された場合には、ステップS3に移行してモータ23の回転を高速モードに切り替える。一方、ステップS5において、第1温度X1−2上昇していないと判定された場合には、ステップS6に移行する。
ステップS6では、制御部30により、前述の累積時間が所定時間を経過しているか否かを判定する。この所定時間は例えば30(s)である。ステップS6において、累積時間が所定時間を経過していると判定された場合には、ビールの注出が行われていないものと判断してステップS1に移行し、低速モードに切り替えられる。一方、累積時間が所定時間を経過していないと判定された場合にはステップS2に移行する。
続いて、第1実施形態に係る飲料サーバ10の作用効果について説明する。
この飲料サーバ10によれば、ビールの注出時にビールコイル12内でビール液が流通し、これに伴い冷却水Wの温度が上昇したときに、制御部30が撹拌部材22の回転速度を速めるようにモータ23を制御する。すなわち、制御部30は、ビールの注出が行われて冷却水Wの温度が第1時間t1の間に第1温度X1上昇した場合に、撹拌部材22の回転速度を速める制御を行う。
従って、ビールの注出に伴って撹拌部材22の回転速度を速めることにより、冷却水Wの水流を強くして冷却水Wとビールコイル12内のビール液との熱交換の効率を高めることができる。よって、ビールの連続注出時であってもビールを十分に冷却させ続けることができ、安定して連続的に低温のビールを提供することができる。また、温度センサ24によって検出された冷却水Wの温度に基づいて制御部30が回転速度を切り替えるので、冷却水Wの温度に応じた一層適切な温度制御が可能となっている。
また、図7に示されるように、制御部30は、温度センサ24によって検出された冷却水Wの温度が第1時間t1において第1温度X1上昇していない状態が継続して所定時間経過した後に撹拌部材22の回転速度を遅くするようにモータ23を制御している。従って、冷却水Wの温度が第1時間t1において第1温度X1上昇していない状態が継続して所定時間経過した後に撹拌部材22の回転速度を遅くしているので、ビールを注出しておらずビールコイル12内でビールが流通していないときに撹拌部材22の回転速度が遅くなる。従って、ビールの注出を行っていないときには、撹拌部材22の回転速度を遅くすることにより、無駄な電力消費を抑制すると共に、熱交換を抑えることにより筐体11内の氷Kが溶けるのを抑制することができる。
また、前述したように、第1時間t1及び第1温度X1は、共に複数設定されている(第1時間t1−1、第1時間t1−2、第1温度X1−1、第1温度X1−2)。従って、冷却水Wの温度が第1時間t1で第1温度X1上昇したか否かの判断が複数回行われ、冷却水Wの温度の状態が複数段階で判断されることとなる。従って、より高精度な冷却水Wの温度判断を行って、冷却水Wの温度の状態をより的確に把握することができるので、撹拌部材22の回転速度をより高精度に切り替えることができる。
また、モータ23は、DCモータである。従来、この種のモータとしては、周波数に応じた一定の回転速度を得るためにACモータが用いられることが一般的であった。ACモータを用いた場合には、インバータ等を併せて配置する必要があるため、飲料サーバの大型化が懸念される。そこで、本実施形態では、モータ23としてDCモータを用いているため、インバータ等の配置が不要となり飲料サーバ10の大型化を回避することができる。また、DCモータは、電圧によって回転速度を容易に変えることができると共に回転特性を安定させることもできるため、冷却水Wの撹拌をより簡単且つ高精度に行うことができる。
また、撹拌部材22は、筐体11内において上下方向に延びる回転軸22aと、冷却水Wに浸漬されて回転軸22aと共に回転する羽根22bと、を有し、温度センサ24は、羽根22bの下方に設けられている。撹拌部材22が回転軸22aを中心に回転すると、冷却水Wは、回転軸22aが延びる方向に流れる。また、回転軸22aは上下方向に延びているので、冷却水Wは、回転軸22aを中心とした羽根22bの回転に伴って下方に流れることとなる。一方、温度センサ24は、羽根22bの下方に設けられているので、温度センサ24には、羽根22bの回転によって流れた冷却水Wが直接当たることになる。従って、温度センサ24によって、撹拌された冷却水Wの温度を直接検出することができるので、冷却水Wの温度をより適切に検出することができる。
また、筐体11は、真空断熱材11eによって構成されている。このように、筐体11として真空断熱材11eを用いているので、筐体11の外部への冷熱の伝達を一層確実に遮断することができる。よって、冷却水Wの低温状態をより確実に維持することができる。また、筐体11として真空断熱材11eを用いた場合には、冷却水Wの冷却性能を維持しつつ筐体11を薄くすることができる。
従って、筐体11を大型化させずに筐体11の内部容量を増大させることができるので、より多くの冷却水Wを収容することができると共に、筐体11内により多くの氷Kを生成することもできる。よって、ビール液に対する冷却能力を高めることができるので、低温のビールをより長時間提供し続けることができる。
また、撹拌部材22は、筐体11内において上下方向に延びる回転軸22aと、冷却水Wに浸漬されて回転軸22aと共に回転する羽根22bと、を有し、回転軸22aには、4枚の羽根22bが連結されている。このように4枚の羽根22bを備えることにより、羽根22bの推進力を高めることができるので、撹拌部材22の回転により冷却水Wとビール液との熱交換の効率を一層高めることができる。従って、ビールの連続注出時であってもビール液の低温状態をより確実に維持することができ、より安定して連続的に低温のビールを提供し続けることができる。
また、撹拌部材22の各羽根22bは、回転軸22aに直交する面Sに対して所定の傾斜角度θを成すように傾斜している。このように羽根22bを傾斜させることによって羽根22bの推進力を高めることができるので、前述と同様の理由により、一層安定して連続的に低温のビールを提供し続けることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る飲料サーバについて説明する。以降の説明では、第1実施形態と重複する説明を省略する。第2実施形態に係る飲料サーバは、その構成自体は第1実施形態に係る飲料サーバ10と同一であり、制御内容のみが飲料サーバ10と異なっている。以下では、図8を参照しながら、冷却水Wの温度を調整してビール液を冷却させる冷却方法の第2実施形態の例について説明する。図8のフローチャートにおける各処理も飲料サーバの電源をオンにしてから周期的に実行される。
図8に示される冷却方法では、第1時間t1及び第1温度X1に加えて、第2時間t2及び第2温度X2も複数設定されている。以下では、複数設定された第2時間t2を、第2時間t2−1、第2時間t2−2、第2時間t2−3とすると共に、複数設定された第2温度X2を、第2温度X2−1、第2温度X2−2、第2温度X2−3としている。
まず、ステップS11において、制御部30が、低速モードを設定し、モータ23を低速モードで駆動させる。そして、制御部30は、第1時間t1−1で冷却水Wの温度が第1温度X1−1上昇したか否かを判定する(ステップS12)。そして、この判定の結果、第1温度X1−1上昇したと判定された場合には、モータ23の回転を高速モードに切り替える(ステップS13)。
一方、ステップS12において、第1温度X1−1上昇していないと判定された場合には、ステップS14に移行する。ステップS14では、制御部30が、第1時間t1−2で冷却水Wの温度が第1温度X1−2上昇したか否かを判定する。ステップS14において、第1温度X1−2上昇したと判定された場合には、ステップS13に移行してモータ23の回転を高速モードに切り替える。一方、ステップS14において、第1温度X1−2上昇していないと判定された場合には、ステップS15に移行する。
ステップS15では、制御部30が、第1時間t1−3で冷却水Wの温度が第1温度X1−3上昇したか否かを判定する。例えば、第1時間t1−3は20(s)であり第1温度X1−3は0.3(℃)である。ステップS15において、第1温度X1−3上昇したと判定された場合には、ステップS13に移行する。一方、ステップS15において、第1温度X1−3上昇していないと判定された場合には、ビールの注出が行われていないものと判断してステップS11に移行し、低速モードへの切り替えを行う。
また、ステップS13において高速モードへの切り替えが行われた後には、制御部30は、第2時間t2−1で冷却水Wの温度が第2温度X2−1下降したか否かを判定する(ステップS16)。例えば、第2時間t2−1は3(s)であり第2温度X2−1は0.2(℃)である。ステップS16の判定の結果、第2温度X2−1下降したと判定された場合には、モータ23の回転を低速モードに切り替える(ステップS11)。
一方、ステップS16において、第2温度X2−1下降していないと判定された場合には、ステップS17に移行する。ステップS17では、制御部30が、第2時間t2−2で冷却水Wの温度が第2温度X2−2下降したか否かを判定する。第2時間t2−2は、例えば、12(s)であり、第2温度X2−2は0.2(℃)である。
ステップS17において、第2温度X2−2下降したと判定された場合には、ステップS11に移行してモータ23の回転を低速モードに切り替える。一方、ステップS17において、第2温度X2−2下降していないと判定された場合にはステップS18に移行する。ステップS18では、制御部30が、第2時間t2−3で冷却水Wの温度が第2温度X2−3低下したか否かを判定する。例えば、第2時間t2−3は20(s)、第2温度X2−3は0.2(℃)である。ステップS18において、第2温度X2−3下降したと判定された場合には制御部30がモータ23の回転速度を低速モードに切り替える。一方、ステップS18において、第2温度X2−3下降していないと判定された場合には、ステップS16に移行する。
次に、第2実施形態に係る飲料サーバの作用効果について説明する。
第2実施形態の飲料サーバによれば、第1実施形態と同様、制御部30は、ビールの注出が行われて冷却水Wの温度が第1時間t1の間に第1温度X1上昇した場合に、撹拌部材22の回転速度を速める制御を行うので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、制御部30は、温度センサ24によって検出された冷却水Wの温度が第2時間t2において第2温度X2下降した場合に撹拌部材22の回転速度を遅くするようにモータ23を制御する。よって、冷却水W2の温度が第2時間t2において第2温度X2下降した場合に撹拌部材22の回転速度を遅くしている。従って、飲料を注出しておらずビールコイル12内でビールが流通していないときには、制御部30が撹拌部材22の回転速度を遅くするようにモータ23を制御する。ゆえに、ビールの注出を行っていないときには、撹拌部材22の回転速度を遅くすることにより、無駄な電力消費を抑制すると共に、熱交換を抑えることにより筐体11内の氷Kが溶けるのを抑制することもできる。
また、前述したように、制御部30は、温度センサ24によって検出された冷却水Wの温度が第2時間t2において第2温度X2上昇していない状態が継続して所定時間経過した後に撹拌部材22の回転速度を遅くするようにモータ23を制御してもよい。この場合、冷却水Wの温度が第2時間t2において第2温度X2上昇していない状態が継続して所定時間経過した後に撹拌部材22の回転速度を遅くしているので、前述と同様、ビールを注出しておらずビールコイル12内でビールが流通していないときに撹拌部材22の回転速度が遅くなる。従って、前述と同様の効果が得られる。
また、第2時間t2及び第2温度X2は、共に複数設定されている(第2時間t2−1、第2時間t2−2、第2時間t2−3、第2温度X2−1、第2温度X2−2、第2温度X2−3)。従って、冷却水Wの温度が第2時間t2で第2温度X2下降したか否かの判断が複数回行われ、冷却水Wの温度の状態が複数段階で判断されることとなる。従って、より高精度な冷却水Wの温度判断を行って、冷却水Wの温度の状態をより的確に把握することができるので、撹拌部材22の回転速度をより高精度に切り替えることができる。
なお、図7及び図8のフローチャートにおいて、前述した例では、第1時間t1−1は3(s)であり第1温度X1−1は0.2(℃)、第1時間t1−2は6(s)であり第1温度X1−2は0.2(℃)、第1時間t1−3は20(s)であり第1温度X1−3は0.3(℃)、としたが、これらの各値に限定されない。ただし、下記の式(1)を満たす値であることが好ましい。
上記の式(1)を満たせば、第1時間を固定して第1温度の各値を変化させてもよいし、第1温度を固定して第1時間の各値を変化させてもよい。
また、前述した例では、第2時間t2−1は3(s)であり第2温度X2−1は0.2(℃)、第2時間t2−2は12(s)であり第2温度X2−2は0.2(℃)、第2時間t2−3は20(s)であり第2温度X2−3は0.2(℃)、としたが、これらの各値に限定されない。ただし、下記の式(2)を満たす値であることが好ましい。
上記の式(2)を満たせば、第2時間を固定して第2温度の値を変化させてもよいし、第2温度を固定して第2時間の各値を変化させてもよい。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、前述の各実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能であり、例えば図7のフローチャートの各工程又は図8のフローチャートの各工程は、上記の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、前述の実施形態では、高速モードと低速モードとが設けられており、冷却水Wの温度が第1時間t1で第1温度X1上昇した場合に高速モードに切り替えると共に、冷却水Wの温度が第2時間t2で第2温度X2下降した場合に低速モードに切り替える例について説明した。
しかしながら、上記の高速モード及び低速モードに加えて、更に超低速モードを備えていてもよい。この場合、例えば図5(b)に示されるように、冷却水Wの温度が第2時間t2で第2温度X2下降して低速モードに切り替わった後に、更に、制御部30は、冷却水Wの温度が第3時間で第3温度下降しているかどうかを判定する。この第3時間は、例えば30分又は1時間等、第2時間t2よりも長い時間とすることができる。そして、制御部30は、冷却水Wの温度が第3時間で第3温度下降していると判定した場合、超低速モードに切り替える。超低速モード時におけるモータ23の回転数は、例えば900(rpm)とすることができる。
このように超低速モードを備える場合、営業時間が終了した等の理由でビールを長時間注出しておらずビールコイル12内でビールが長時間流通していないときに、制御部30が撹拌部材22の回転速度を更に遅くするようにモータ23を制御する。従って、ビールの注出を長時間行っていないときには、撹拌部材22の回転速度を更に遅くすることにより、無駄な電力消費を一層抑えると共に、熱交換を抑えることにより氷Kを更に溶けにくくすることができる。
なお、低速モード又は超低速モードであっても、撹拌部材22の回転を完全に止めているわけではない。従って、適度に撹拌部材22を回転させることによって、冷却水Wの温度分布の偏りを抑制することができる。このように温度分布の偏りを抑制することにより、注出開始時から正確な温度測定を実行することができ、注出温度を所望の温度にしやすくすることができる。以上のように、本発明は、高速モード及び低速モードといった2つのモードに限られず、3つ以上のモードを備えることも可能である。
また、前述の実施形態では、撹拌部材22の下端に羽根22bが設けられていたが、羽根22bが設けられる位置は特に限定されず適宜変更可能である。また、羽根22bの形状、配置態様、及び個数についても適宜変更可能である。
また、前述の実施形態では、筐体11の上側に位置するモータ23から下方に回転軸22aが延びており、羽根22bが回転軸22aの下端に位置すると共に、温度センサ24が羽根22bの下方に設けられる例について説明した。しかしながら、モータが筐体11の下側に位置し、このモータから上方に回転軸が延びており、羽根が回転軸の上端に位置すると共に、温度センサが羽根の上方に設けられていてもよい。このように、温度センサ24の位置を適宜変更することが可能であり、更に、DCモータであるモータ23に代えてACモータを用いることも可能である。
また、前述の実施形態では、2本の電極32,33を有するセンサ31によって氷Kの厚さを検出したが、センサ31とは異なる構成のセンサを用いることも可能である。
また、前述の実施形態では、飲料サーバ10が飲料提供装置1に設置されている例について説明したが、飲料提供装置の構成は前述の実施形態に限定されることなく適宜変更可能である。更に、冷凍サイクル装置の構成を適宜変更することも可能である。
(実施例)
次に、本実施形態に係る飲料サーバ10を用いてビールの注出を行ったときにおけるビールの温度変化等を検証した実施例と、従来の飲料サーバを用いてビールの注出を行ったときにおけるビールの温度変化等を検証した比較例について説明する。まず、実施例に係る飲料サーバでは、前述したように、冷却水Wの温度が第1時間t1で第1温度X1上昇した場合に高速モードに切り替えると共に、冷却水Wの温度が第2時間t2で第2温度X2下降した場合に低速モードに切り替える制御を行う。これに対し、比較例に係る飲料サーバは、上記のような制御を行わず、常に一定の回転速度で撹拌部材を回転させる。
また、実施例では筐体11を用いることとし、比較例では真空断熱材を有しない筐体を用いた。そして、実施例の撹拌部材は4枚の羽根22bを有するものを使用し、比較例の撹拌部材としては2枚の羽根を有するものを使用した。
以上の実施例及び比較例を比較検証した結果、まず、図3に示されるように、実施例の筐体は真空断熱材11eを含んでいるので、比較例の飲料サーバの筐体と比較して、筐体の厚さを薄くできている。よって、実施例の筐体の内部容量は、比較例よりも増大している。具体的には、比較例の筐体では、平面視における筐体の縦の長さが255mm、横の長さが255mmで内部容量が16Lであったのに対し、実施例の筐体では、平面視における筐体の縦の長さが269mm、横の長さが269mmで内部容量が18Lとすることができた。また、実施例では、比較例よりも内部容量が大きくなったので、冷却水Wの量を1.1L増加させると共に、生成可能な氷Kの量を0.9L増加させることができた。
また、図9は、実施例及び比較例における連続注出時のビールの温度変化を示したグラフであり、夏場(30℃)を想定し、飲料サーバからジョッキに300mlのビールを注出してから1分後(顧客に提供するまでの時間を想定)のジョッキに注出したビールの温度を示している。なお、図9のグラフの横軸は、連続注出時におけるビールの杯数(何杯目の容器か)を示しているが、各容器には15秒ごとにビールを注出している。
この図9に示されるように、比較例の飲料サーバでは、ビールを連続で注出すると10杯目の時点でビールの温度が7.0℃程度となった。これに対し、実施例では、10杯目の時点でもビールの温度が5.5℃を下回っている。このように、飲料サーバ10を用いた実施例では、筐体11の大きさを変えずに低温のビールを長時間提供し続けられることが分かった。