JP6686946B2 - 中心偏析評価方法およびhic性評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼の連続鋳造鋳片や厚鋼板の内部品質を評価する中心偏析評価方法およびHIC性評価方法に関するものである。
鋼の連続鋳造鋳片(以降、単に「鋳片」ともいう)やそれらを素材とする厚鋼板(厚板。本発明において単に鋼材と表記することもある。)の分野においては、連続鋳造時に形成される鋳片中心部の偏析が、製品の品質、とくに機械的特性に大きく影響することが知られている。そこで、この中心偏析を軽減するために、数多くの技術開発が行われてきている。また、厚鋼板では強度により用途が異なるため、各用途ごとに機械特性の評価基準を満足する鋼材を、適切に振り分けて出荷できる技術の確立が求められている。
中心偏析を評価する方法については、幾つかの方法が知られている。例えば、鋳片や厚鋼板を厚さ方向に順次スライスしていき、そのスライスして採取した切粉の成分を分析し、厚さ方向の濃度分布を得る方法(スライス法)がある。これとは別に、鋳片の縦断面からマクロプリントを採取して中心偏析領域を特定し、この中心偏析領域上の多数の分析点から、ドリルで切粉サンプルを採取し、この切粉を分析する方法(ドリル法)がある。
また、特許文献1には、C断面の中心偏析部を電子線マイクロアナライザー(EPMA)や走査電子顕微鏡(SEM)に搭載されたエネルギー分散型特性X線分光(EDX)装置を用いて、指標元素となるNb、Mn、C等の濃度マッピングを取得し、特定の濃度以上に偏析している領域の面積率から中心偏析を評価する手法が開示されている。
特開2009−236842号公報
一般に、連続鋳造鋳片の中心偏析は、鋳造方向に垂直な断面(C断面)全体についてみると、厚さ方向および幅方向で決して均一とはいえない。そのため、鋳片や厚鋼板の偏析を正確に調べるためには全幅方向にできるだけ広範囲に評価することが必要とされる。
この点を考慮すると、特許文献1に記載の方法は、スライス法やドリル法と比べて中心偏析の局所的な分布と偏析濃度の評価については優れているものの、より広い領域を対象とすればそれだけ測定時間は長くなる。また、試料調製をするにあたっても、被検面を鏡面研磨仕上げにする必要があるため、極めて煩雑である。
また、スライス法は、試料調整および分析に時間がかかるため、鋳片や厚鋼板等の中心偏析評価をC断面全体にわたって行うことは困難である。そのため、従来は、限られた一部の領域の評価にしか用いることができない。
また、ドリル法は、スライス法に比較して、迅速性には優れるが、切粉の採取領域がスライス法に比較し、さらに狭くなるため、分析結果が局所的であり全体的な評価ができないという問題がある。
以上のように、連続鋳造鋳片や厚鋼板の中心偏析を評価するには広い領域を測定する必要があり、この広い領域を迅速かつ定量的に評価する方法は存在しない。
そこで本発明は、上記実情に鑑み、連続鋳造鋳片や厚鋼板の中心偏析を、広い領域にわたり迅速かつ定量的に評価することができる中心偏析評価方法およびHIC性評価方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、広い領域における中心偏析を迅速に定量評価する方法について、鋭意検討を重ねた。その結果、鋳片や厚鋼板の中心偏析部の構成元素の腐食挙動に着目し、構成元素の腐食量を指標とすることで、中心偏析部における偏析の程度を定量評価できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]連続鋳造鋳片または厚鋼板を、溶存酸素濃度を6〜10mg/L含む水溶液に浸漬させ、該水溶液中に溶出した前記連続鋳造鋳片または前記厚鋼板の構成元素の濃度を定量し、定量した濃度に基づいて中心偏析を評価することを特徴とする中心偏析評価方法。
[2]前記水溶液中に溶出した前記連続鋳造鋳片または厚鋼板の構成元素は、Fe、Mn、Cr、Ca、S、P、NbおよびTiのうちいずれか一つ以上であることを特徴とする[1]に記載の中心偏析評価方法。
[3]前記水溶液は、鉄の錯生成剤または支持電解質のうち少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の中心偏析評価方法。
[4]前記錯生成剤の濃度は0.001〜1mol/Lであることを特徴とする[3]に記載の中心偏析評価方法。
[5]前記支持電解質の濃度は0.001〜0.5mol/Lであることを特徴とする[3]に記載の中心偏析評価方法。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の中心偏析評価方法により定量される前記構成元素の濃度に基づいて、鋼材のHIC性を評価することを特徴とするHIC性評価方法。
[7][1]〜[5]のいずれかに記載の中心偏析評価方法により得られる結果に基づいて、鋼材の向け先を決定する工程を含むことを特徴とする鋼材の製造方法。
[8][6]に記載のHIC性評価方法により得られる結果に基づいて、不良であると評価される鋼材を除く工程を含むことを特徴とする耐HIC性に優れた鋼材の製造方法。
本発明によれば、連続鋳造鋳片や厚鋼板の中心偏析を、広い領域にわたり迅速かつ定量的に評価できるので、連続鋳造鋳片や厚鋼板の品質向上に大いに寄与する。また、本発明の中心偏析評価方法に基づいて、HIC性についても評価することができる。
図1は、厚鋼板から各試験片(中心偏析測定用試験片、EPMA用試験片およびHIC試験用試験片)を採取する際の採取位置を説明する図である。 図2は、中心偏析測定用試験片を水溶液に浸漬させる様子を示す模式図である。 図3は、Fe腐食量およびHIC試験結果との相関性を水溶液の水準別に示す図である。 図4は、Fe腐食量、EPMA法で求めたMn偏析部の面積(mm)およびHIC試験結果との相関性を水溶液の水準別に示す図である。
鉄は、pHが中性域の水に曝されると、水中の溶存酸素(以下、単にDOと称することもある。)を消費しながら、以下に示すような酸化還元反応を同時に起こすことで、腐食が進行していく。
(アノード反応)Fe→Fe2++2e・・・(1)
(カソード反応)1/2O+HO+2e→2OH・・・(2)
なお、この腐食反応は、水に曝された鉄の表面全体で、アノードサイトとカソードサイトの位置を固定することなく、連続的に交換しながら進行するため、全面が徐々に腐食していくことになる。しかしながら、実際の材料における腐食では、地鉄の状態によって電気化学的な活性点が生じ、アノードサイトとカソードサイトが固定され、特定の位置で腐食反応が促進される場合がある。たとえば、析出物や粒界近傍の金属組織の違いが原因で起こる粒界腐食や、異種金属が接触してガルバニック電池が構成されることにより起こる異種金属接触腐食等といった、種々の腐食現象があげられる。
本発明者らは、連続鋳造鋳片や厚鋼板の中心偏析部において、鋼材に含まれる構成元素の偏析、すなわち濃度差が生じていることに着目し、中心偏析部周辺で腐食反応が促進されている可能性について調査した。具体的には、中心偏析度合い(中心偏析の程度)の異なる複数の厚鋼板の板幅方向の中心位置中心において、偏析部を含むサイズ80mm×80mm×18mm厚の試験片を20ヶ所採取し、C断面を研磨した後、溶存酸素濃度8mg/Lの水溶液中に3〜10分間浸漬し、当該水溶液への鉄の溶出量をICP発光分光法によって定量した。これとは別に、試料採取位置の近傍で、ドリル法によって、中心偏析の程度を評価した。
その結果、中心偏析度合いの高い鋼材ほど、浸漬させた水溶液への鉄溶出量が多く、鉄溶出量は中心偏析度合いと正比例の関係があることがわかった。これは、中心偏析部に鉄以外の合金元素が濃化することにより、中心偏析部が周辺の鉄母材と比較して電気化学的により貴となることでカソードサイトとして機能し、周囲の鉄がアノードサイトとなって、腐食反応を促進するためであると考えられる。
これらの結果から、中心偏析度合いと腐食反応(鉄溶出量)との間に相関性があることから、腐食反応と相関関係がある溶存酸素濃度と中心偏析にも相関性があると考えた。そして、溶存酸素濃度と鉄溶出量との関係について検討した結果、溶存酸素を含有する水溶液への鋼材の構成元素の溶出量から、中心偏析の程度を評価できることが明らかになった。
本発明では、連続鋳造鋳片または厚鋼板を、溶存酸素濃度を6〜10mg/L含む水溶液に浸漬させ、該水溶液中に溶出した前記連続鋳造鋳片または前記厚鋼板の構成元素の濃度を定量し、定量した濃度に基づいて中心偏析を評価することを特徴とする。
溶存酸素濃度は、腐食反応を円滑に進行させるために、6〜10mg/Lとする。溶存酸素濃度が6mg/L未満では、腐食反応が不十分で中心偏析の評価ができない。また、溶存酸素濃度が高いほど、連続鋳造鋳片または厚鋼板との反応性は高くなる。しかしながら、常温常圧の純水において、10mg/L超の溶存酸素濃度を保持することは困難である。したがって、上限は10mg/Lとする。より好適な範囲は、8〜9mg/Lである。
なお、鋼材を浸漬させる溶存酸素を含んだ水溶液は、溶出してきた微量の鉄や構成元素を測定することから、汚染が少ない純水を使用することが望ましい。また、常温・常圧環境下で生成した純水を基礎にした水溶液であれば問題ないが、水溶液に予め空気を曝気するなどして、常温常圧環境での飽和溶存酸素濃度としておくことが望ましい。
また、中心偏析を評価する連続鋳造鋳片または厚鋼板は、圧延方向に垂直な断面(C断面)を用いる等、ガス溶断等で切断して評価面に中心偏析部を露出させればよい。切断面の汚れや切削傷を除去することを目的として、中心偏析部を含む評価面(例えばC断面)を、フライス盤等を用いて研磨してもよい。また、評価面以外は腐食しないよう、ビニルテープ等でシールすればよい。
水溶液中に溶出した連続鋳造鋳片または厚鋼板の構成元素の濃度を定量する方法については、特に限定されない。例えば、原子吸光法やICP発光分光分析法を用い、JIS K0102等に準拠して実施することができる。
ここで、指標とする、水溶液中に溶出した連続鋳造鋳片または厚鋼板の構成元素としては、製品品質に関わるFe、Mn、Cr、Ca、S、P、NbおよびTiのうちいずれか1つ以上であることが好ましい。より好ましくは、FeまたはMnである。
本発明では、溶存酸素を含む水溶液が、鉄の錯生成剤または支持電解質のうち少なくとも一つ以上を含むことが好ましい。
中性域の水には鉄は保持されない。このため、溶出した鉄を構成元素として定量する場合、水溶液中に鉄を保持するために、溶存酸素を含む水溶液中に鉄の錯生成剤を含むことが好ましい。鉄の錯生成剤の濃度は、0.001〜1mol/Lであることが好ましい。鉄の錯生成剤の濃度が0.001mol/L未満では、沈殿物や腐食生成物が多量に生成してしまう。鉄の錯生成剤の濃度が1mol/Lより多いと、鉄の溶解を過度に促進し、中心偏析の評価ができなくなる。より好適な範囲は、0.01〜0.1mol/Lである。また、鉄の錯生成剤としては、水溶液のpHを大きく変えることなく鉄を捕捉し、沈殿の生成を抑えることが可能な試薬であれば制約はない。例えば、しゅう酸やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエタノールアミン(TEA)等が好適である。
さらに、腐食反応には導電率も大きく影響することから、腐食反応を進行させるために、溶存酸素を含む水溶液中に支持電解質を含むことが好ましい。支持電解質の濃度は、0.001〜0.5mol/Lであることが好ましい。支持電解質の濃度が0.001mol/L未満では、構成元素の溶解量が小さく、中心偏析の評価が正しくできない。0.5mol/Lより多いと、溶存酸素濃度が低下するので腐食反応が生じなくなり、中心偏析の評価ができない。より好適な範囲は、0.05〜0.2mol/Lである。また、支持電解質としては特に制限はなく、例えば、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムが好適である。
以上より、本発明によれば、溶存酸素を含有する水溶液への鋼材の構成元素の溶出量から、中心偏析の程度を評価できる。本発明によれば、鋼材の構成元素の溶出量を定量することで中心偏析の程度を評価できるので、迅速に評価することができる。また、観察対象エリアを多点分析しなければならず時間を要するEPMA等に比べて、本発明であれば迅速に評価できる。したがって、広い領域にわたって評価することが可能である。
また、中心偏析度合いが高いほど、製品の品質に大きく影響し、製品品質が劣ることから、中心偏析度合いの高い鋼材ほど、浸漬させた水溶液への鉄溶出量が多い。すなわち、鉄溶出量は中心偏析度合いと正比例の関係があるため、鋼材の製品品質指標の一つであるHIC性についても、中心偏析度合いとの相関性がある。したがって、本発明の中心偏析評価方法により定量される構成元素の濃度に基づいて、鋼材のHIC性についても評価できる。
また本発明は、鋼材の製造方法に利用することができ、特に耐HIC性に優れた鋼材の製造方法に用いることができる。例えば、鋼種、試験条件ごとに、要求される耐HIC性を満足する鋼材の元素溶出量(本発明により定量される構成元素の濃度)の適正範囲を予め求めておき、対象とする連続鋳造鋳片または厚鋼板の元素溶出量を求めて比較する。元素溶出量が適正範囲内の場合には目標の耐HIC性を有する製品として、一方で、適正範囲から外れる場合には耐HIC材以外の製品として、それぞれ向け先(製品種あるいは納入先)を決定する工程を有する。また、耐HIC性に優れた鋼材を製造したい場合、上述したような元素溶出量の適正範囲を外れる鋼材は不良であると評価し、不良と評価される鋼材を除くことにより、規格外れの鋼材を低減することができる。したがって、本発明は、HIC性を短時間で評価することができるだけでなく、規格外れの鋼材を低減することができ、耐HIC性に優れる鋼材を製造することができる。
本発明に係る中心偏析評価方法を、C:0.066mass%、Si:0.15mass%、Mn:1.50mass%、P:0.01mass%、S:0.004mass%、Cu:0.28mass%、Ni:0.14mass%、Cr:0.24mass%、Mo:0.01mass%、Nb:0.09mass%、V:0.005mass%、Ti:0.014mass%、Al:0.05mass%の成分組成を有するAPI規格X70級のラインパイプ用厚鋼板(板厚:18mm×幅:3200mm)に適用し、中心偏析とHICとの関係を評価した。
本発明の中心偏析測定用およびHIC試験用の各試験片は、素材用の厚鋼板から、図1に示したように、それぞれの試験片が長手方向(圧延方向)で対となるように試験に必要な量だけ採取した。なお、各試験片の寸法は、中心偏析測定用は、幅方向:80mm×長さ方向:20mm×板厚:18mm、HIC試験用は、幅方向:40mm×長さ方向:100mm×板厚:18mmとした。
<本発明:中心偏析測定>
図1に示す位置から採取した中心偏析測定用試験片について、C断面を研磨し、C断面以外の面をビニルテープでマスキングして、図2に示すように、約80mlの溶存酸素含有水溶液が入った容器内に試験片を300秒浸漬した。なお、浸漬に使用した水溶液の水は、JIS S3200−7に記載の模擬水道水を用いた。また、溶存酸素濃度は予め空気曝気によって9.3mg/Lとした。鉄の錯生成剤には、EDTAまたはTEAを用いた。また、支持電解質には硫酸ナトリウムを用いた。なお、比較として、あらかじめ窒素脱気によって溶存酸素濃度を2.0mg/Lまで低減させた水溶液を用いた場合についても検討した。
浸漬終了後、ただちに試験片を取り出し、試験片浸漬後の水溶液に濃硝酸3mlと内標準としてY1000ppm標準液を0.1ml添加後、蒸留水を加えて100mlとし、ICP発光分光分析法によりFe濃度(Fe腐食量)を求めた。分析に要した時間は、浸漬処理からICP発光分光分析法を終えるまでに、1サンプルあたり約7分であった。
<HIC試験>
図1に示す位置から採取したHIC試験片を用いて、NACE TM0284−96規格に準拠し、温度25℃のNACE試験溶液(0.5%酢酸+5%食塩水、1気圧HS飽和)中に96hr浸漬するHIC試験を行った。試験後、割れが発生した面積率(CAR(%)=Σ(HIC面積)/(試験片の断面積)×100%)を測定した。
表1に、中心偏析測定の各条件、Fe腐食量(g/mh)およびHIC試験の各結果を示す。また、図3に、Fe腐食量(g/mh)とHIC試験結果との相関性を水溶液の水準別に示す。
No.1〜18は、溶存酸素濃度が低いため、Fe腐食量が小さく、錯生成剤や支持電解質の添加により、若干の改善は認められるものの、いずれも一次回帰直線の相関係数(R)は0.7以下、二乗平均誤差(RMSEC)は1以上であり、HIC試験結果との相関は低いといえる。一方、No.19〜36は、溶存酸素濃度が十分高く、反応性に優れるため、Fe腐食量が大きく、相関係数は概ね0.9付近またはそれ以上を示し、二乗平均誤差は1以下となり、HIC試験結果との相関が高いといえる。この結果から、溶存酸素濃度が十分であれば、本発明の中心偏析の評価方法により、製品の内部品質やHIC性を精度よくかつ迅速に評価することができると考えられる。さらに、水溶液中に錯生成剤や支持電解質を含む試験結果の方が、よりHIC試験結果との相関が高く、より精度よくかつ迅速に評価が可能であることが確認できた。
なお、Mn、Cr、Ca、S、P、NbおよびTiについても、それぞれ溶存酸素を含有する水溶液への溶出量を求め、HIC試験結果との相関性を調べた。その結果、上述のFe腐食量の結果と同様に、HIC試験結果との相関が高いという結果が得られた。
実施例1と同じAPI規格X70級のラインパイプ用厚鋼板(板厚:18mm×幅:3200mm)について、実施例1と同様に中心偏析とHICとの関係を評価するとともに、EPMA法を用いてMnの偏析量について分析し、HICとの関係を調査した。
本発明の中心偏析測定用、EPMA用およびHIC試験用の各試験片は、素材用の厚鋼板から、図1に示したように、それぞれの試験片が長手方向(圧延方向)で対となるように試験に必要な量だけ採取した。なお、各試験片の寸法は、中心偏析測定用およびHIC試験用は、実施例1と同じサイズとした。また、EPMA用は、幅方向:80mm×長さ方向:20mm×板厚:18mm(装置導入サイズは、幅方向:60mm、板厚:18mm)とした。
本発明の中心偏析測定およびHIC試験条件については、実施例1と同じ条件とした。また、EPMA法の条件は以下のとおりである。
<EPMA法>
図1に示す位置から採取したEPMA用試験片について、C断面を鏡面になるまで研磨し、板厚中心部の中心偏析部を含む幅方向:60mm×板厚方向:2mmの領域について、指標元素にMnを選択し、マッピング分析を行った。分析条件は、加速電圧:25kV、照射電流:5μA、ビーム径:20μm、積算時間:10msecの条件で、Mnの特性X線強度からMnの濃度を定量し、Mnが2.4mass%以上に偏析している領域の面積を測定した。分析に要した時間は、1サンプルあたり約90分であった。
表2に、中心偏析測定の各条件、Fe腐食量、EPMA法およびHIC試験の各結果を示す。また、図4に、Fe腐食量、EPMA法で求めたMn偏析部の面積(mm)およびHIC試験結果との相関性を水溶液の水準別に示す。なお、比較にあたり、縦軸の各評価指標(Fe腐食量もしくはMn偏析部の面積)については、各評価指標の最大値が1となるように規格化した値で示す。
本発明の中心偏析測定およびEPMA法は共に、HIC試験結果と概ね相関関係がある。本発明の中心偏析測定とEPMA法を比較すると、EPMA法はバラつきが大きいことがわかる。一次回帰直線の相関係数(R)は、本発明の中心偏析評価が0.89、EPMA法が0.64である。二乗平均誤差(RMSEC)についても本発明の中心偏析評価は0.55、EPMA法は0.98である。すなわち、本発明の中心偏析評価方法はEPMA法よりもHIC試験結果との相関が高いといえる。したがって、本発明の中心偏析評価方法により定量される構成元素の濃度に基づいて、鋼材のHIC性を評価することができる。
以上より、本発明の中心偏析評価方法は、製品の内部品質やHIC性を精度よくかつ迅速に評価するのに有効な手段であるといえる。
本発明の中心偏析評価方法は、連続鋳造鋳片や厚鋼板に限定されるものではなく、各種の鋼板や金属板の偏析評価にも適用することができる。

Claims (7)

  1. 連続鋳造鋳片または厚鋼板を、溶存酸素濃度を6〜10mg/L含む水溶液に浸漬させ、該水溶液中に溶出した前記連続鋳造鋳片または前記厚鋼板の構成元素であるFeの濃度を定量し、定量した濃度に基づいて中心偏析を評価することを特徴とする中心偏析評価方法。
  2. 前記水溶液は、鉄の錯生成剤または支持電解質のうち少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の中心偏析評価方法。
  3. 前記錯生成剤の濃度は0.001〜1mol/Lであることを特徴とする請求項2に記載の中心偏析評価方法。
  4. 前記支持電解質の濃度は0.001〜0.5mol/Lであることを特徴とする請求項2に記載の中心偏析評価方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の中心偏析評価方法により定量される前記構成元素の濃度に基づいて、鋼材のHIC性を評価することを特徴とするHIC性評価方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の中心偏析評価方法により得られる結果に基づいて、鋼材の向け先を決定する工程を含むことを特徴とする鋼材の製造方法。
  7. 請求項5に記載のHIC性評価方法により得られる結果に基づいて、不良であると評価される鋼材を除く工程を含むことを特徴とする耐HIC性に優れた鋼材の製造方法。
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