以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
また、車幅方向内側および車幅方向外側が、タイヤを車両に装着したときの車幅方向に対する向きとして定義される。また、タイヤ赤道面を境界とする左右の領域が、車幅方向外側領域および車幅方向内側領域としてそれぞれ定義される。また、空気入りタイヤが、車両に対するタイヤ装着方向を示す装着方向表示部(図示省略)を備える。装着方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸によって構成される。例えば、ECER30(欧州経済委員会規則第30条)が、車両装着状態にて車幅方向外側となるサイドウォール部に車両装着方向の表示部を設けることを義務付けている。
空気入りタイヤ10は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上90[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有する。
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。ベルトカバー143は、スチールあるいは有機繊維材から成るベルトカバーコードをコートゴムで被覆して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143は、例えば、1本あるいは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材であり、このストリップ材を交差ベルト141、142の外周面に対してタイヤ周方向に複数回かつ螺旋状に巻き付けて構成され得る。
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されて、ビード部のリム嵌合面を構成する。
[トレッドパターン]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、オールシーズン用タイヤのトレッドパターンを示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端であり、寸法記号TWは、タイヤ接地幅である。
図2に示すように、空気入りタイヤ10は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21〜23および周方向細溝24と、これらの周方向溝21〜24に区画された複数の陸部31〜35とをトレッド面に備える。
主溝とは、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、一般に3.0[mm]以上の溝幅および6.0[mm]以上の溝深さを有する。また、後述するラグ溝とは、タイヤ幅方向に延在する横溝であり、タイヤ接地時に開口して溝として機能する。また、後述するサイプとは、トレッド踏面に形成された切り込みであり、タイヤ接地時に閉塞する点でラグ溝と区別される。
なお、周方向細溝24については、後述する。
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における左右の溝壁の距離の最大値として測定される。陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、溝長さ方向を法線方向とする断面視にて、トレッド踏面と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。また、溝がタイヤ周方向にジグザグ状あるいは波状に延在する構成では、溝壁の振幅の中心線を測定点として、溝幅が測定される。
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
例えば、図2の構成では、空気入りタイヤ10が、タイヤ赤道面CLを中心とする左右非対称なトレッドパターンを有している。また、タイヤ赤道面CLを境界とする車幅方向内側領域が2本の周方向主溝21、22を有し、車幅方向外側領域が1本の周方向主溝23と1本の周方向細溝24とを備えている。また、これらの周方向溝21、22;23、24が、タイヤ赤道面CLを中心として、左右対称に配置されている。また、これらの周方向溝21〜24により、5列の陸部31〜35が区画されている。また、1つの陸部33が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。
また、車幅方向内側領域の内側ショルダー主溝21を内側ショルダー主溝として定義し、内側ショルダー主溝21に隣り合う周方向主溝22を内側センター主溝として定義する。また、車幅方向外側領域にある周方向主溝23を外側センター主溝として定義する。
また、内側ショルダー主溝21および周方向細溝24に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部31、35をショルダー陸部として定義する。ショルダー陸部31、35は、タイヤ幅方向の最も外側の陸部であり、タイヤ接地端T上に位置する。また、内側ショルダー主溝21あるいは周方向細溝24に区画されたタイヤ赤道面CL側の陸部32、34をセカンド陸部として定義する。したがって、セカンド陸部32、34は、内側ショルダー主溝21あるいは周方向細溝24を挟んでショルダー陸部31、35に隣り合う。また、セカンド陸部32、34よりもタイヤ赤道面CL側にある陸部33をセンター陸部として定義する。
なお、図2の構成では、空気入りタイヤ10が、3本の周方向主溝21〜23と、車幅方向の最外側に配置された単一の周方向細溝24とを備えている。しかし、これに限らず、空気入りタイヤ10が、4本以上の周方向主溝と、車幅方向の最外側に配置された単一の周方向細溝24とを備えても良い(図示省略)。この場合には、複数のセンター陸部33が、内側および外側のセカンド陸部32、24の間に形成される。
[車幅方向内側領域]
図3は、図2に記載した空気入りタイヤの車幅方向内側領域を示す拡大図である。
図2の構成では、タイヤ赤道面CLを境界とする車幅方向内側領域が、内側ショルダー主溝21および内側センター主溝22と、これらの周方向主溝21、22に区画された内側ショルダー陸部31、内側セカンド陸部32およびセンター陸部33とを備える。
また、2本の周方向主溝21、22が、一定の溝幅をもつストレート形状を有する。また、タイヤ赤道面CLから内側ショルダー主溝21の溝中心線までの距離Dg1が、タイヤ接地幅TWに対して25[%]以上40[%]以下の範囲にある。また、タイヤ赤道面CLから内側センター主溝22の溝中心線までの距離Dg2が、タイヤ接地幅TWに対して5[%]以上20[%]以下の範囲にある。
周方向主溝の溝中心線は、周方向主溝の溝幅の左右の測定点の中点を通りタイヤ周方向に平行な直線として定義される。
タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
また、周方向主溝21、22の溝幅が5.0[mm]以上25.0[mm]以下の範囲にあり、溝深さが5.0[mm]以上12.0[mm]以下の範囲にある(図中の寸法記号省略)。
[内側ショルダー陸部]
図3に示すように、内側ショルダー陸部31は、ラグ溝311と、細溝312とを備える。ラグ溝311および細溝312は、一方の端部にて内側ショルダー陸部31を貫通することなく内側ショルダー陸部31内で終端し、タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端Tに交差する。このため、内側ショルダー陸部31の内側ショルダー主溝21側のエッジ部が、溝およびサイプの開口部をもたないプレーン構造を有し、タイヤ周方向に連続して延在している。これにより、タイヤの騒音性能が高められている。かかるプレーン構造のエッジ部は、溝あるいはサイプの開口部を有するエッジ部と比較して、タイヤのドライ操縦安定性能および騒音性能に寄与する。
また、ラグ溝311および細溝312と内側ショルダー陸部31のエッジ部との距離D11が、内側ショルダー陸部31の接地幅Wr1に対して0.10≦D11/Wr1≦0.40の関係を有することが好ましく、0.15≦D11/Wr1≦0.30の関係を有することがより好ましい。
陸部の接地幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
また、内側ショルダー陸部31の接地幅Wr1が、タイヤ接地幅TW(図2参照)に対して0.05≦Wr1/TW≦0.30の関係を有することが好ましい。
また、図3の構成では、ラグ溝311および細溝312が、タイヤ周方向に湾曲した緩やかな円弧形状を有している。しかし、これに限らず、ラグ溝311および細溝312が直線形状を有し、また、タイヤ幅方向に略平行に延在しても良い(図示省略)。また、複数のラグ溝311および細溝312が、所定ピッチでタイヤ周方向に交互に配列される。しかし、これに限らず、複数の細溝312が隣り合うラグ溝311、311の間に配置されても良い(図示省略)。
[内側セカンド陸部]
図4および図5は、図3に記載した内側セカンド陸部を示す拡大平面図(図4)および断面図(図5)である。
図3に示すように、内側セカンド陸部32は、面取部321と、異なる溝幅をもつラグ溝322および細溝323(第一および第二の横溝)とを備える。
面取部321は、内側セカンド陸部32のタイヤ接地端T側(すなわち内側ショルダー主溝21側)のエッジ部に形成されて、内側セカンド陸部32の踏面と内側ショルダー主溝21の溝壁面とを平面あるいは曲面で接続する。また、面取部321は、内側セカンド陸部32の踏面にてタイヤ周方向に向かって面取幅を拡幅する形状を有する。また、複数の面取部321がタイヤ周方向に所定間隔で配列される。これらの面取部321が内側ショルダー主溝21の溝容積を拡大することにより、タイヤのウェット性能が高められる。
また、面取部321の最大幅Wcが、内側セカンド陸部32の接地幅Wr2に対して0.05≦Wc/Wr2≦0.30の関係を有することが好ましく、0.15≦Wc/Wr2≦0.25の関係を有することがより好ましい。
面取部の幅は、陸部のエッジ部から陸部の踏面における面取部の稜線までのタイヤ幅方向の距離として測定される。また、陸部のエッジ部は、周方向主溝の溝壁の延長線と陸部の踏面との交点として定義される。面取部の稜線は、面取部の壁面と陸部の踏面との境界線として定義される。
また、内側セカンド陸部32の接地幅Wr2が、ショルダー陸部34の接地幅Wr1に対して0.50≦Wr2/Wr1≦1.50の関係を有することが好ましく、0.80≦Wr2/Wr1≦1.20の関係を有することがより好ましい。これにより、周方向主溝21、22に区画された左右の陸部31、32の接地幅Wr1、Wr2が適正化される。
また、図4において、面取部321の最大幅位置3211から最小幅位置3212までのタイヤ周方向の最大長さLcが、面取部321のピッチ長Pc(図3参照)に対して0.60≦Lc/Pc≦1.00の関係を有することが好ましく、0.80≦Lc/Pc≦1.00の関係を有することがより好ましい。これにより、面取幅Wcの拡幅領域が適正に確保される。なお、タイヤ周方向に隣り合う面取部321、321は、上記した比Lc/Pcの条件を満たすことを前提として、相互に接続しても良いし、相互に離間しても良い。
また、図5において、面取部321の最大深さHcが、周方向主溝21の最大深さHg1に対して0.20≦Hc/Hg1≦0.70の関係を有することが好ましく、0.30≦Hc/Hg1≦0.50の関係を有することがより好ましい。
例えば、図4および図5の構成では、面取部321が最小幅位置3212を頂点とした三角錐形状を有している。また、図4に示すように、また、面取部321が、内側セカンド陸部32の踏面にて長尺部(符号3213および3214から成る部分)と短尺部(図中の符号省略)とを接続して成る三角形状を有し、その長尺部にて、面取部321の面取幅がタイヤ周方向の一方向に向かって徐々に増加している。また、図5に示すように、面取部321がC面取りであり、内側セカンド陸部32の踏面と内側ショルダー主溝21の溝壁面とを平面で接続している。しかし、これに限らず、面取部321がR面取りであり、内側セカンド陸部32の踏面と内側ショルダー主溝21の溝壁面とを曲面で接続しても良い。また、隣り合う面取部321、321が隙間を空けずに連なって配列されている。これにより、面取部321の稜線が、内側セカンド陸部32のエッジ部に沿ってタイヤ周方向に延在するジグザグ形状を有している。
ラグ溝322は、面取部321に対応して配置された第一の横溝であり、図3に示すように、一方の端部にて内側セカンド陸部32内で終端し、他方の端部にて面取部321の長手方向の中央部に開口して内側ショルダー主溝21に連通する。
かかる構成では、ラグ溝322が内側ショルダー主溝21に連通ことにより、内側セカンド陸部32の排水性が向上して、タイヤのウェット操縦安定性能が向上する。また、ラグ溝322が内側セカンド陸部32を貫通しないので、内側セカンド陸部32の剛性が確保されて、タイヤのドライ操縦安定性能が確保される。また、ラグ溝322が面取部321の長手方向の中央部に開口するので、内側セカンド陸部32の排水性が向上して、タイヤのウェット操縦安定性能が向上する。
また、図4において、ラグ溝322のタイヤ幅方向の延在長さD22が、内側セカンド陸部32の接地幅Wr2に対して0.20≦D22/Wr2≦0.80の関係を有することが好ましく、0.40≦D22/Wr2≦0.60の関係を有することがより好ましい。したがって、ラグ溝322が、内側セカンド陸部32の略中央部で終端することが好ましい。
ラグ溝の延在長さは、陸部の周方向主溝側のエッジ部からラグ溝の終端部までのタイヤ幅方向の距離として測定される。
また、ラグ溝322の最大溝幅W22が、面取部321の最大幅位置3211から最小幅位置3212までのタイヤ周方向の最大長さLcに対して0.03≦W22/Lc≦0.10の関係を有することが好ましく、0.04≦W22/Lc≦0.07の関係を有することがより好ましい。また、ラグ溝322の最大溝幅W22が、2.5[mm]≦W22≦6.5[mm]の範囲にあることが好ましい。
ラグ溝の最大溝幅は、陸部の踏面におけるラグ溝の最大幅として測定される。ラグ溝が後述するような面取りサイプである場合には、最大溝幅が面取部を含めた最大幅として測定される。
また、タイヤ周方向に対するラグ溝322の傾斜角θ22が、30[deg]≦θ22≦85[deg]の範囲にあることが好ましく、50[deg]≦θ22≦70[deg]の範囲にあることが好ましい。
ラグ溝の傾斜角は、ラグ溝の両端部を接続した仮想線とタイヤ周方向とのなす角として測定される。
また、面取部321の最大幅位置3211から面取部321に対するラグ溝322の開口位置までのタイヤ周方向の距離L22が、面取部321の最大幅位置3211から最小幅位置3212までのタイヤ周方向の最大長さLcに対して0.35≦L22/Lc≦0.65の関係を有することが好ましく、0.40≦L22/Lc≦0.60の関係を有することがより好ましい。したがって、ラグ溝322が、面取部321の長手方向の中央部に開口する。
また、図5において、ラグ溝322の最大溝深さH22が、周方向主溝21の最大深さHg1に対して0.40≦H22/Hg1≦0.85の関係を有することが好ましく、0.50≦H22/Hg1≦0.75の関係を有することがより好ましい。また、図5に示すように、ラグ溝322の最大溝深さH22が、面取部321の最大深さHcよりも大きく設定される。
例えば、図4および図5の構成では、ラグ溝322が、短尺な直線形状ないしは緩やかな円弧形状を有し、面取部321の長尺部3213の中央部に開口している。また、ラグ溝322の配置数が面取部321の配置数と同一であり、単一のラグ溝322が1つの面取部321に開口している。これにより、面取部321の長尺部3213が、ラグ溝322によりタイヤ周方向に分断されている。また、面取部321の長尺部3213の稜線に対するラグ溝322の傾斜角φ1が、35[deg]≦φ1≦80[deg]の範囲にある。
細溝323は、面取部321に対応して配置された第二の横溝であり、一方の端部にて内側セカンド陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部に開口し、他方の端部にて面取部321の最大幅位置3211の近傍で終端する(図4参照)。しかし、これに限らず、細溝323が面取部321の最大幅位置3211に接続しても良い(図示省略)。また、細溝323の終端部が、面取部321の最大幅位置3211から2.5[mm]の距離の範囲内にあれば、細溝323が面取部321の最大幅位置3211の近傍で終端し、あるいは面取部321の最大幅位置3211に接続しているといえる。
上記の構成では、面取部321の中央部に開口する横溝が幅広なラグ溝322であり、且つ、面取部321の最大幅位置3211で終端あるいは開口する横溝が幅狭な細溝323なので、次の利点がある。すなわち、(a)内側セカンド陸部32に配置されたすべての溝が幅広な横溝である構成(図示省略)と比較して、内側セカンド陸部32の剛性が確保されて、タイヤのドライ性能が確保される。また、(b)内側セカンド陸部32に配置されたすべての溝が幅狭な細溝あるいはサイプである構成(図示省略)と比較して、内側セカンド陸部32の排水性が向上して、タイヤのウェット操縦安定性能が向上する。また、(c)幅広なラグ溝が面取部の最大幅位置に開口すると共に幅狭な細溝あるいはサイプが面取部の中央部で終端あるいは開口する構成(図示省略)と比較して、ラグ溝322から面取部321への排水作用を確保しつつ面取部321の最大幅位置3211における内側セカンド陸部32の剛性を確保できるので、タイヤのドライ操縦安定性能とウェット操縦安定性能とが両立する。
また、図4において、細溝323の最大溝幅W23が、ラグ溝322の最大溝幅W22に対して0<W23/W22≦0.80の関係を有することが好ましく、0<W23/W22≦0.50の関係を有することがより好ましい。したがって、細溝323の溝幅が、ラグ溝322の溝幅に対して十分に狭く設定される。
また、細溝323の最大溝幅W23が、0.4[mm]≦W23≦1.5[mm]の範囲にあることが好ましく、0.5[mm]≦W23≦1.0[mm]の範囲にあることがより好ましい。さらに、細溝323が、タイヤ接地時に閉塞するサイプであることが好ましい。
また、タイヤ周方向に対する細溝323の傾斜角θ23が、30[deg]≦θ23≦85[deg]の範囲にあることが好ましく、50[deg]≦θ23≦70[deg]の範囲にあることがより好ましい。
また、細溝323の最大溝深さH23が、周方向主溝21の最大深さHg1に対して0.20≦H23/Hg1≦0.70の関係を有することが好ましく、0.40≦H23/Hg1≦0.60の関係を有することがより好ましい。また、細溝323の最大溝深さH23が、ラグ溝322の最大溝深さH22よりも小さく設定される。
例えば、図4および図5の構成では、細溝323が、短尺な直線形状ないしは緩やかな円弧形状を有している。また、細溝323の配置数が面取部321の配置数と同一であり、単一の細溝323が1つの面取部321に対向して配置されている。また、面取部321の長尺部3213の稜線に対する細溝323の傾斜角φ2が、35[deg]≦φ2≦80[deg]の範囲にある。
また、図4に示すように、面取部321の最大幅位置3211の近傍で終端している。また、細溝323の終端部と面取部321の最大幅位置3211との距離Gsが、Gs≦1.5[mm]の範囲にある。かかる構成は、タイヤ加硫成形時にて、タイヤ成形金型(図示省略)における細溝323の成形ブレードと面取部321の成形ブレードとの間に微少な隙間を形成できるので、空気溜まりによる加硫故障を低減できる点で好ましい。距離Gsの下限は、特に限定がないが、0.3[mm]以上であれば、空気の流通経路が確保されて、上記した加硫故障の低減作用が確保される。
また、図4に示すように、内側セカンド陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部には、幅狭な細溝323のみが開口し、幅広な他の横溝が開口していない。これにより、内側セカンド陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部の剛性が確保されて、タイヤのドライ性能が高められている。
[変形例]
図6は、図4に記載したセカンド陸部のラグ溝の変形例を示す説明図である。同図は、ラグ溝322の溝深さ方向の断面図を示している。
図4の構成では、ラグ溝322がU字断面形状(図示省略)を有し、摩耗初期から中期まで略一定の溝幅を有している。しかし、これに限らず、ラグ溝322が、図6に示すような面取りサイプであっても良い。すなわち、ラグ溝322が、タイヤ接地時に閉塞する幅狭なサイプ部3221と、サイプ部3221の開口部に形成されて溝幅W22を拡幅する面取部3222とから構成されても良い。
[センター陸部]
図3において、センター陸部33は、複数のラグ溝331を備える。
ラグ溝331は、一方の端部にてセンター陸部33内で終端し、他方の端部にてセンター陸部33の車幅方向内側のエッジ部に開口する。
また、ラグ溝331のタイヤ幅方向の延在長さD31が、センター陸部33の接地幅Wr3に対して0.10≦D31/Wr3≦0.60の関係を有することが好ましく、0.20≦D31/Wr3≦0.40の関係を有することがより好ましい。したがって、ラグ溝331が、センター陸部33の略中央部で終端することが好ましい。
また、センター陸部33のラグ溝331の最大溝幅W31(図中の寸法記号省略)が、内側セカンド陸部32のラグ溝322の最大溝幅W22に対してに対して0.90≦W31/W22≦1.50の関係を有することが好ましく、0.95≦W31/W22≦1.05の関係を有することがより好ましい。また、ラグ溝331の最大溝幅W31が、2.5[mm]≦W31≦6.5[mm]の範囲にあることが好ましい。
[車幅方向外側領域]
図2の構成では、タイヤ赤道面CLを境界とする車幅方向外側領域が、単一の周方向主溝23と、この周方向主溝23よりもタイヤ幅方向外側に配置された単一の周方向細溝24とを備える。また、これらの周方向溝23、24により、外側ショルダー陸部35および外側セカンド陸部34が区画される。
また、図2の構成では、外側センター主溝23および周方向細溝24が、一定の溝幅をもつストレート形状を有する。また、タイヤ赤道面CLから外側センター主溝23の溝中心線までの距離Dg3が、タイヤ接地幅TWに対して5[%]以上20[%]以下の範囲にある。また、タイヤ赤道面CLから周方向細溝24の溝中心線までの距離Dg4が、タイヤ接地幅TWに対して25[%]以上40[%]以下の範囲にある。
また、周方向細溝24の溝幅Ws(後述する図8参照)が3.0[mm]以上7.0[mm]以下の範囲にあり、溝深さが3.0[mm]以上7.0[mm]以下の範囲にある(図中の寸法記号省略)。
[車幅方向外側領域のクローズドラグ溝]
図7は、図2に記載した空気入りタイヤの車幅方向外側領域の要部を示す拡大図である。図8は、図7に記載した空気入りタイヤのクローズドラグ溝を示す説明図である。これらの図において、図7は、車幅方向外側領域の外側セカンド陸部34および外側ショルダー陸部35を示し、図8は、周方向細溝24および複数のクローズドラグ溝41を抽出した拡大図を示している。
図2に示すように、空気入りタイヤ10は、上記した周方向細溝24と、複数のクローズドラグ溝41(41A、41B)とを車幅方向外側領域に備える。
クローズドラグ溝41は、タイヤ幅方向に延在して周方向細溝24を貫通し、周方向主溝23およびタイヤ接地端Tに開口することなく、外側セカンド陸部34および外側ショルダー陸部35の内部で終端する。このため、クローズドラグ溝41が、周方向細溝24からタイヤ幅方向に枝状に分岐して左右の陸部34、35の内部で終端する。ここでは、クローズドラグ溝41のタイヤ幅方向内側の終端部を単に「内側終端部」と呼び、タイヤ幅方向外側の終端部を単に「外側終端部」と呼ぶ。また、複数のクローズドラグ溝41(41A、41B)が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。
また、図7に示すように、相互に異なる延在長さをもつ複数種類のクローズドラグ溝41(41A、41B)が、混在して配置される。
上記の構成では、クローズドラグ溝41が周方向細溝24を貫通することにより、周方向細溝24付近の排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する。同時に、クローズドラグ溝41が周方向主溝23およびタイヤ接地端Tに開口しないので、周方向細溝24に区画された左右の陸部34、35の剛性が確保される。これらにより、タイヤのウェット性能およびドライ性能が効率的に両立する。
また、相互に異なる延在長さをもつ複数種類のクローズドラグ溝41(41A、41B)がタイヤ周方向に所定間隔で配列されるので、必然的に、少なくとも一方の陸部(図7では外側セカンド陸部34)におけるクローズドラグ溝41A、41Bの終端部が、タイヤ幅方向に相互にオフセットしつつタイヤ周方向に配列される。このため、クローズドラグ溝の左右の終端部がタイヤ幅方向の位置を揃えて配列される構成(図示省略)と比較して、長尺なラグ溝部(図7では、第二のクローズドラグ溝41Bの外側セカンド陸部34側の部分)が1つの陸部(図7では、外側セカンド陸部34)の踏面に配置され、同時に、幅広な接地領域が隣り合う長尺なラグ溝部の間に形成される。これにより、タイヤのウェット性能およびドライ性能が効率的に向上する。
また、複数種類のクローズドラグ溝41のうち、最も短尺なクローズドラグ溝41Aの延在長さL1_minと、最も長尺なクローズドラグ溝41Bの延在長さL1_maxとが、1.10≦L1_max/L1_min≦3.00の関係を有することが好ましく、1.20≦L1_max/L1_min≦1.60の関係を有することがより好ましい。クローズドラグ溝41の延在長さL1の範囲は、特に限定がないが、後述する各陸部34、35におけるクローズドラグ溝41の終端部の距離Di、Do(図8参照)の範囲により制約を受ける。
ラグ溝の延在長さL1は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときの、ラグ溝の内側終端部から外側終端部までのタイヤ幅方向の距離として定義される。また、相互に異なる延在長さをもつ3種類以上のクローズドラグ溝を備える構成では、最も短尺な第一のクローズドラグ溝の延在長さL1_minと、最も長尺な第二のクローズドラグ溝の延在長さL1_maxとが、それぞれ測定される。
例えば、図7の構成では、複数のクローズドラグ溝41(41A、41B)が、タイヤ周方向に所定間隔で配列されている。また、これらのクローズドラグ溝41A、41Bが、周方向細溝24のみに交差し、他の溝あるいはサイプに接続していない。また、外側セカンド陸部34および外側ショルダー陸部35が、ラグ溝あるいはサイプによりタイヤ周方向に分断されておらず、タイヤ周方向に連続した踏面を有している。また、第一および第二のクローズドラグ溝41A、41Bが、その長手方向をタイヤ周方向に対して同一方向かつ同一傾斜角で傾斜させることにより、相互に平行に配列されている。しかし、複数のクローズドラグ溝41A、41Bの傾斜角θが後述する範囲内で相異しても良い。
また、図7において、外側セカンド陸部34および外側ショルダー陸部35の接地幅Wr4、Wr5が、1.00≦Wr5/Wr4≦2.00の関係を有することが好ましく、1.10≦Wr5/Wr4≦1.50の関係を有することがより好ましい。また、外側セカンド陸部34の接地幅Wr4が、タイヤ接地幅TWに対して0≦Wr4/TW≦0.30の関係を有することが好ましい。これにより、周方向主溝23および周方向細溝24に区画された左右の陸部34、35の接地幅Wr4、Wr5が適正化される。
また、複数のクローズドラグ溝41(41A、41B)が、少なくとも一方の終端部をタイヤ幅方向に相互にオフセットして配列される。このとき、クローズドラグ溝41の終端部が、外側セカンド陸部34側でオフセットしても良いし(図7参照)、外側ショルダー陸部35側、あるいは、外側セカンド陸部34側および外側ショルダー陸部35側の双方でオフセットしても良い(図示省略)。また、相互に異なる長さをもつ複数種類のクローズドラグ溝41A、41Bが、タイヤ周方向に所定の順序で配列される。このとき、2種類のクローズドラグ溝41A、41Bがタイヤ周方向に交互に配列されても良いし(図7参照)、3種類以上のクローズドラグ溝41が配列されても良い(図示省略)。
また、図8において、周方向細溝24からクローズドラグ溝41(41A、41B)の内側終端部までの距離Di(図8における最小値Di_minおよび最大値Di_maxを含む。)と、外側セカンド陸部34の接地幅Wr4(図7参照)とが、0.10≦Di/Wr4≦0.80の関係を有することが好ましく、0.20≦Di/Wr4≦0.70の関係を有することがより好ましい。これにより、外側セカンド陸部34におけるクローズドラグ溝41のタイヤ幅方向への延在長さDiが適正化される。
また、図8において、周方向細溝24からクローズドラグ溝41(41A、41B)の外側終端部までの距離Do(図8における最小値Do_minおよび最大値Do_maxを含む。)と、外側ショルダー陸部35の接地幅Wr5(図7参照)とが、0.10≦Do/Wr5≦0.60の関係を有することが好ましく、0.20≦Do/Wr5≦0.40の関係を有することがより好ましい。これにより、外側ショルダー陸部35におけるクローズドラグ溝41のタイヤ幅方向への延在長さが適正化される。
ラグ溝の終端部までの距離Di、Doは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときの、陸部の接地幅Wr4、Wr5の測定点からラグ溝の終端部までのタイヤ幅方向の距離として測定される。また、相互に異なる数値をもつ3種類以上の距離Di、Doが存在する構成では、距離Di;Doの最大値Di_max;Do_maxおよび最小値Di_min;Do_minが上記条件をそれぞれ満たすことを要する。
また、図8において、複数のクローズドラグ溝41(41A、41B)の内側終端部の距離Diの最小値Di_minと最大値Di_maxとが、1.10≦Di_max/Di_min≦3.00の関係を有することが好ましく、1.50≦Di_max/Di_min≦2.50の関係を有することがより好ましい。また、クローズドラグ溝41の内側終端部のタイヤ幅方向のオフセット量ΔDiが、外側セカンド陸部34の接地幅Wr4(図7参照)に対して、0.10≦ΔDi/Wr4≦0.60の関係を有することが好ましく、0.20≦ΔDi/Wr4≦0.40の関係を有することがより好ましい。したがって、外側セカンド陸部34では、クローズドラグ溝41A、41Bの終端部がタイヤ幅方向にオフセットして配列される。これにより、外側セカンド陸部34におけるクローズドラグ溝41A、41Bの内側終端部の位置が適正化されて、タイヤのウェット性能およびドライ性能が両立する。特に、外側セカンド陸部34は、ウェット性能に対する寄与が大きいため、上記の構成により、タイヤのウェット性能が効率的に向上する。
一方で、複数のクローズドラグ溝41(41A、41B)の外側終端部の距離Doの最小値Do_minと最大値Do_maxとが、0.90≦Do_max/Do_min≦1.10の関係を有することが好ましく、0.95≦Do_max/Do_min≦1.05の関係を有することがより好ましい。また、クローズドラグ溝41の外側終端部のタイヤ幅方向のオフセット量ΔDoが、外側ショルダー陸部35の接地幅Wr5(図7参照)に対して、0≦ΔDo/Wr5≦0.10の関係を有することが好ましく、0≦ΔDo/Wr5≦0.05の関係を有することがより好ましい。したがって、外側ショルダー陸部35では、クローズドラグ溝41A、41Bの終端部がタイヤ幅方向に位置を揃えて配列される。これにより、外側ショルダー陸部35の剛性を適正に確保できるので、タイヤのドライ制動性能が向上する。
ラグ溝の終端部のオフセット量ΔDi;ΔDoは、周方向細溝から終端部までの距離Di;Doの最大値Di_max;Do_maxおよび最小値Di_min;Do_minの差として算出される。
また、図8に示すように、複数のクローズドラグ溝41(41A、41B)が、その長手方向をタイヤ周方向に対して同一方向に傾斜させて配置される。また、クローズドラグ溝41のタイヤ周方向に対する傾斜角θ41が、50[deg]≦θ41≦80[deg]の範囲にあることが好ましく、60[deg]≦θ41≦75[deg]の範囲にあることがより好ましい。これにより、クローズドラグ溝41の排水性が向上し、また、クローズドラグ溝41に起因するタイヤのパターンノイズが低減される。
また、最も小さく傾斜したクローズドラグ溝41の傾斜角θ41_minと最も大きく傾斜したクローズドラグ溝41の傾斜角θ41_maxとが、0[deg]≦θ41_max−θ41_min≦15[deg]の関係を有することが好ましく、0[deg]≦θ41_max−θ41_min≦10[deg]の関係を有することがより好ましい。すなわち、クローズドラグ溝41の傾斜角θ41が略一定であることが好ましい。これにより、陸部の剛性を適正に確保できるので、偏摩耗が抑制される。
また、クローズドラグ溝41の溝幅W41と周方向細溝24の溝幅Wsとが、0.30≦W41/Ws≦1.50の関係を有することが好ましく、0.60≦W41/Ws≦1.30の関係を有することがより好ましい。これにより、クローズドラグ溝41の排水作用が適正に確保される。
また、最も幅狭なクローズドラグ溝41の溝幅W41_minと最も幅広なクローズドラグ溝41の溝幅W41_max(図示省略)とが、1.00≦W41_max/W41_min≦2.00の関係を有することが好ましく、1.00≦W41_max/W41_min≦1.50の関係を有することがより好ましい。すなわち、クローズドラグ溝41の溝幅W41_minが均一であることが好ましい。これにより、陸部の剛性を適正に確保できるので、偏摩耗が抑制される。
例えば、図8の構成では、クローズドラグ溝41が、全体として一定の溝幅をもつストレート形状を有し、その終端部にて溝幅を窄めたテーパ形状を有している。また、クローズドラグ溝41の左右の終端部がタイヤ周方向の同一方向に溝幅を狭めることにより、クローズドラグ溝41の全体が、タイヤ周方向に上底および下底を有する台形状を有している。また、複数のクローズドラグ溝41A、41Bが、タイヤ周方向に向きを揃えて配列されている。しかし、これに限らず、クローズドラグ溝41の終端部が、矩形状あるいは円弧形状を有してもよい(図示省略)。また、クローズドラグ溝41の全体が、矩形状あるいは平行四辺形状を有しても良い(図示省略)。
また、図7の構成では、センター陸部33および外側セカンド陸部34の周方向主溝23側のエッジ部が、サイプおよび溝の開口部をもたないプレーン構造を有することにより、タイヤ周方向に連続して延在している。これにより、タイヤの騒音性能が高められている。
[車幅方向外側領域のショルダーラグ溝]
図2の構成で、車幅方向外側領域にある外側ショルダー陸部35が、複数のショルダーラグ溝42を車幅方向外側領域に備える。
ショルダーラグ溝42は、一方の終端部を外側ショルダー陸部35内に有すると共にタイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端Tに開口する。また、ショルダーラグ溝42は、周方向細溝24およびクローズドラグ溝41に対して連通せず、また、タイヤ幅方向にオーバーラップしない。また、複数のショルダーラグ溝42が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。
また、図7に示すように、ショルダーラグ溝42が、長尺なクローズドラグ溝41Bの溝中心線の延長線上にある。図7の構成では、長尺なクローズドラグ溝41Bの溝中心線がストレート形状を有し、ショルダーラグ溝42の溝中心線が緩やかな円弧形状を有している。また、タイヤ接地面内におけるショルダーラグ溝42の開口部が、クローズドラグ溝41Bの溝中心線の延長線上にある。これにより、外側セカンド陸部34から外側ショルダー陸部35への排水性が向上する。なお、上記に限らず、短尺なクローズドラグ溝41Aが、ショルダーラグ溝42の溝中心線の延長線上にあっても良い(図示省略)。
また、図7に示すように、ショルダーラグ溝42の終端部と、ショルダーラグ溝42に対向するクローズドラグ溝41Bの外側終端部とが、タイヤ幅方向に相互に離間する。また、ショルダーラグ溝42とクローズドラグ溝41Bとが、他の溝あるいはサイプにより接続されていない。また、ショルダーラグ溝42の終端部からクローズドラグ溝41Bの外側終端部までのタイヤ幅方向の距離D2と、外側ショルダー陸部35の接地幅Wr5とが、0.10≦D2/Wr5≦0.70の関係を有することが好ましく、0.30≦D2/Wr5≦0.60の関係を有することがより好ましい。これにより、タイヤのウェット性能およびドライ性能が両立する。すなわち、上記下限により、外側ショルダー陸部35の剛性および接地領域が確保されて、タイヤのドライ性能が確保される。また、上記上限により、クローズドラグ溝41およびショルダーラグ溝42のタイヤ幅方向への延在長さが確保されて、タイヤのウェット性能が確保される。
さらに、図7の構成では、外側ショルダー陸部35が、すべてのショルダーラグ溝42の終端部とすべてのクローズドラグ溝41(41A、41B)の外側終端部との間の領域に、溝あるいはサイプに分断されずにタイヤ周方向に連続するプレーンな踏面を有する。すなわち、ショルダーラグ溝42とクローズドラグ溝41とが、タイヤ幅方向に相互にオーバーラップしない。これにより、タイヤのドライ性能がさらに向上する。
また、図7において、タイヤ周方向における隣り合うクローズドラグ溝41、41(41A、41B)の配置間隔P1が、ショルダーラグ溝42の配置間隔P2に対して0.30≦P1/P2≦0.70の関係を有することが好ましく、0.40≦P1/P2≦0.60の関係を有することがより好ましい。これにより、クローズドラグ溝41およびショルダーラグ溝42の配置間隔P1、P2が適正化される。図7の構成では、短尺および長尺を一組とする一対のクローズドラグ溝41A、41Bと1本のショルダーラグ溝42とが、相互にピッチ長を揃えてタイヤ周方向に配列されている。
ラグ溝の配置間隔P1、P2は、ラグ溝の溝中心線と周方向細溝の溝中心線あるいはタイヤ接地端との交点を測定点として、測定される。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ10は、車両に対する装着方向の指定を有し、また、タイヤ赤道面CLを境界とする車幅方向内側領域に配置された内側ショルダー主溝21および内側センター主溝22と、車幅方向外側領域に配置された外側センター主溝23と、この外側センター主溝23の車幅方向外側に配置された周方向細溝24と、内側ショルダー主溝21および内側センター主溝22に区画された内側ショルダー陸部31および内側セカンド陸部32と、外側センター主溝23および周方向細溝24に区画された外側セカンド陸部34および外側ショルダー陸部35とを備える(図2参照)。また、内側セカンド陸部32が、内側セカンド陸部32のタイヤ接地端T側のエッジ部に形成されると共に内側セカンド陸部32の踏面にてタイヤ周方向に向かって面取幅を拡幅する面取部321と、一方の端部にて内側セカンド陸部32内で終端すると共に他方の端部にて面取部321の長手方向の中央部に開口するラグ溝322とを備える。また、外側セカンド陸部34および外側ショルダー陸部35が、一方の端部にて外側セカンド陸部34内で終端し、タイヤ幅方向に延在して周方向細溝24を貫通して、他方の端部にて外側ショルダー陸部35の接地面内で終端するクローズドラグ溝41を備える。
かかる構成では、(1)内側セカンド陸部32が、タイヤ接地端T側のエッジ部に形成された面取部321およびラグ溝322を備えるので、内側セカンド陸部32の排水性が向上して、タイヤのウェット操縦安定性能が向上する利点がある。また、(2)内側セカンド陸部32のラグ溝322が陸部32を貫通しないので、内側セカンド陸部32の剛性が確保されて、タイヤのドライ操縦安定性能が確保される利点がある。また、(3)内側セカンド陸部32のラグ溝322が面取部321の長手方向の中央部に開口するので、内側セカンド陸部32の排水性が向上して、タイヤのウェット操縦安定性能が向上する利点がある。さらに、(4)車幅方向外側領域のクローズドラグ溝41が周方向細溝24を貫通することにより、周方向細溝24付近の排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する。同時に、クローズドラグ溝41が周方向主溝23およびタイヤ接地端Tに開口しないので、周方向細溝24に区画された左右の陸部34、35の剛性が確保される。これらにより、タイヤのウェット性能およびドライ性能が効率的に両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、面取部321の最大幅Wcが、内側セカンド陸部32の接地幅Wr2に対して0.05≦Wc/Wr2≦0.30の関係を有する(図4参照)。上記下限により、面取部321による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、陸部32の剛性が確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、面取部321の最大幅位置3211から最小幅位置3212までのタイヤ周方向の最大長さLc(図4参照)が、面取部321のピッチ長Pc(図3参照)に対して0.60≦Lc/Pc≦1.00の関係を有する。上記下限により、面取部321による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、面取部321の平面形状が適正化される利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、面取部321が、内側セカンド陸部32の踏面にて長尺部と短尺部とを接続して成る三角形状を有する(図4参照)。これにより、面取部321による排水作用が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、内側セカンド陸部32のラグ溝322のタイヤ幅方向の延在長さD22が、内側セカンド陸部32の接地幅Wr2に対して0.20≦D22/Wr2≦0.80の関係を有する(図4参照)。上記下限により、ラグ溝322による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、内側セカンド陸部32の剛性が確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、内側セカンド陸部32のラグ溝322の最大溝幅W22が、面取部321の最大幅位置3211から最小幅位置3212までのタイヤ周方向の最大長さLcに対して0.03≦W22/Lc≦0.10の関係を有する(図4参照)。上記下限により、ラグ溝322による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、内側セカンド陸部32の剛性が確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、タイヤ周方向に対する内側セカンド陸部32のラグ溝322の傾斜角θ22が、30[deg]≦θ22≦85[deg]の範囲にある(図4参照)。これにより、ラグ溝322の傾斜角θ22が適正化される利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、面取部321の最大幅位置3211から面取部321に対するラグ溝322の開口位置までのタイヤ周方向の距離L22が、面取部321の最大幅位置3211から最小幅位置3212までのタイヤ周方向の最大長さLcに対して0.35≦L22/Lc≦0.65の関係を有する(図4参照)。かかる構成では、ラグ溝322が面取部321の長手方向の中央部に開口するので、ラグ溝322と面取部321との組み合わせによる排水作用がさらに向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、周方向細溝24からクローズドラグ溝41の外側セカンド陸部34側の終端部までの距離Di(図8における距離Diの最小値Di_minおよび最大値Di_maxを含む。)と、外側セカンド陸部34の接地幅Wr4(図7参照)とが、0.10≦Di/Wr4≦0.80の関係を有する。これにより、外側セカンド陸部34におけるクローズドラグ溝41のタイヤ幅方向への延在長さDiが適正化される利点がある。すなわち、上記下限により、外側セカンド陸部34内におけるクローズドラグ溝41の延在長さDiが確保されて、クローズドラグ溝41によるウェット性能の向上作用が確保される。また、上記上限により、クローズドラグ溝41の延在長さDiが過大となることに起因する外側セカンド陸部34の剛性低下が抑制される。
また、この空気入りタイヤ10では、周方向細溝24からクローズドラグ溝41の外側ショルダー陸部35側の終端部までの距離Do(図8における距離Doの最小値Do_minおよび最大値Do_maxを含む。)と、外側ショルダー陸部35の接地幅Wr5(図7参照)とが、0.10≦Do/Wr5≦0.60の関係を有する。これにより、外側ショルダー陸部35におけるクローズドラグ溝41のタイヤ幅方向への延在長さが適正化される利点がある。すなわち、上記下限により、外側ショルダー陸部35内におけるクローズドラグ溝41の延在長さDoが確保されて、クローズドラグ溝41によるウェット性能の向上作用が確保される。また、上記上限により、クローズドラグ溝41の延在長さDoが過大となることに起因する外側ショルダー陸部35の剛性低下が抑制される。
また、この空気入りタイヤ10では、クローズドラグ溝41のタイヤ周方向に対する傾斜角θが、55[deg]≦θ≦75[deg]の範囲にある(図8参照)。これにより、クローズドラグ溝41の排水性が向上する利点があり、また、クローズドラグ溝41に起因するタイヤのパターンノイズが低減される利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、クローズドラグ溝41の溝幅W41と周方向細溝24の溝幅Wsとが、0.30≦W41/Ws≦1.50の関係を有する。これにより、クローズドラグ溝41の排水作用が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、外側センター主溝23の左右のエッジ部が、溝およびサイプの開口部をもたないプレーン構造を有する(図2参照)。かかる構成では、外側センター主溝23がプレーン構造のエッジ部を有するので、溝あるいはサイプの開口部を有するエッジ部と比較して、タイヤのドライ操縦安定性能および騒音性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、内側セカンド陸部32が、一方の端部にて内側セカンド陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部に開口すると共に、他方の端部にて面取部321の最大幅位置3211の近傍で終端する、あるいは最大幅位置3211に接続する細溝323を備える。かかる構成では、面取部321の中央部に開口する横溝が幅広なラグ溝322であり、且つ、面取部321の最大幅位置3211で終端あるいは開口する横溝が幅狭な細溝323なので、次の利点がある。すなわち、(a)内側セカンド陸部32に配置されたすべての溝が幅広な横溝である構成(図示省略)と比較して、内側セカンド陸部32の剛性が確保されて、タイヤのドライ性能が確保される利点がある。また、(b)内側セカンド陸部32に配置されたすべての溝が幅狭な細溝あるいはサイプである構成(図示省略)と比較して、内側セカンド陸部32の排水性が向上して、タイヤのウェット操縦安定性能が向上する利点がある。また、(c)幅広なラグ溝が面取部の最大幅位置に開口すると共に幅狭な細溝あるいはサイプが面取部の中央部で終端あるいは開口する構成(図示省略)と比較して、ラグ溝322から面取部321への排水作用を確保しつつ面取部321の最大幅位置3211における内側セカンド陸部32の剛性を確保できるので、タイヤのドライ操縦安定性能とウェット操縦安定性能とを両立できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ10では、外側セカンド陸部34および外側ショルダー陸部35が、相互に異なる延在長さをもつ複数種類のクローズドラグ溝41A、41Bを備える(図2参照)。最も短尺な第一のクローズドラグ溝41Aのタイヤ幅方向の延在長さL1_minと最も長尺な第二のクローズドラグ溝41Bのタイヤ幅方向の延在長さL1_maxとが、1.10≦L1_max/L1_min≦3.00の関係を有する。かかる構成では、相互に異なる延在長さをもつ複数種類のクローズドラグ溝41A、41Bがタイヤ周方向に所定間隔で配列されるので、必然的に、少なくとも一方の陸部(図2では外側セカンド陸部34)におけるクローズドラグ溝41A、41Bの終端部が、タイヤ幅方向に相互にオフセットしつつタイヤ周方向に配列される。このため、クローズドラグ溝の左右の終端部がタイヤ幅方向の位置を揃えて配列される構成(図示省略)と比較して、長尺なラグ溝部(図
2では、第二のクローズドラグ溝41Bの外側セカンド陸部34側の部分)が1つの陸部(図2では、外側セカンド陸部34)の踏面に配置され、同時に、幅広な接地領域が隣り合う長尺なラグ溝部の間に形成される。これにより、タイヤのウェット性能およびドライ性能が効率的に向上する利点がある。
図9は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。図10は、図9に記載した従来例の試験タイヤを示す説明図である。
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)ドライ操縦安定性能および(2)ウェット操縦安定性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ245/40R18 97Yの試験タイヤがリムサイズ18×8.5Jのリムに組み付けられ、この試験タイヤにJATMAの規定内圧および規定荷重が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である乗用車の総輪に装着される。
(1)ドライ操縦安定性能に関する評価では、試験車両が平坦な周回路を有するドライ路面のテストコースを60[km/h]〜100[km/h]で走行する。そして、テストドライバーがレーチェンジ時およびコーナリング時における操舵性ならびに直進時における安定性について官能評価を行う。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。また、評価が98以上であれば、ドライ操縦安定性能が維持されているといえる。
(2)ウェット操縦安定性能に関する評価では、試験車両が雨天条件下で所定のテストコースを走行し、ラップタイムが計測される。そして、この測定結果に基づいて指数評価が行われる。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
実施例の試験タイヤは、図1および図2の構成を備え、3本の周方向主溝21〜23と周方向細溝24とを備える。また、内側セカンド陸部32が、面取部321と、面取部321の中央部に開口するラグ溝322とを備える。また、外側セカンド陸部34および外側ショルダー陸部35が、複数のクローズドラグ溝41を備える。また、図2において、トレッド幅TWが200[mm]であり、タイヤ赤道面CLから内側ショルダー主溝21の距離Dg1が60.0[mm]であり、内側センター主溝22まで距離Dg2が20.0[mm]であり、外側センター主溝23までの距離Dg3が25.0[mm]であり、周方向細溝24までの距離Dg4が60.0[mm]である。また、周方向主溝21〜23の溝幅が15.0[mm]であり、周方向細溝24の溝幅Wsが5.0[mm]である。また、内外のショルダー陸部31、35の幅Wr1、Wr5が36.0[mm]であり、内外のセカンド陸部32、34の幅Wr2、Wr4が27.0[mm]である。また、面取部321のピッチ長Pcが73[mm]であり、ピッチ数が30である。また、クローズドラグ溝41の配置間隔P1とショルダーラグ溝42の配置間隔P2とがP1/P2=0.50の関係を有する。
従来例の試験タイヤは、図10の構成を備え、実施例1の試験タイヤと比較して内側セカンド陸部32、外側セカンド陸部34および外側ショルダー陸部35の構成が相異する。
試験結果が示すように、実施例の試験タイヤでは、タイヤのドライ操縦安定性能およびウェット操縦安定性能が両立することが分かる。