JP6681851B2 - 炭酸泉からの二酸化炭素抽出方法 - Google Patents
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Description
すなわち,地下水から得られる天然の炭酸泉(以下,単に「天然炭酸泉」という)は,二酸化炭素を豊富に含むものであり,ほとんどそのままの状態で温泉(風呂湯)として利用されてきた。天然炭酸泉は,二酸化炭素に由来する保温効果や血行促進効果などがあるとされ,その効果などから,長らく人々に愛されてきたものである。このような事情もあって,天然温泉水が入手できない環境でも利用可能なように,人工での炭酸泉製造に関する技術の開発が行われている(特許文献1,2)。
すなわち,この先行技術においては,天然炭酸泉において緑藻が含まれること,ならびに緑藻が生存可能であることを開示・示唆するものに過ぎず,あくまで緑藻を得るための手段として,天然炭酸泉の一部が用いられているに過ぎない。
本発明の第一の構成は,炭酸泉から二酸化炭素を抽出することを特徴とする二酸化炭素抽出方法である。
これら工程のいずれか又は複数を含むことを特徴とする第一の構成に記載の二酸化炭素抽出方法である。
本発明の第三の構成は,前記pH調整工程において,炭酸泉のpHを8.0以下に調整を行うことを特徴とする第二の構成に記載の二酸化炭素抽出方法である。
本発明の第四の構成は,前記pHが,6.2以下であることを特徴とする第三の構成に記載の二酸化炭素抽出方法である。
本発明の第五の構成は,前記pHが,5.2以下であることを特徴とする第四の構成に記載の二酸化炭素抽出方法である。
本発明の第六の構成は,前記物理刺激が,撹拌により行われることを特徴とする第二の構成に記載の二酸化炭素抽出方法である。
本発明の第七の構成は,前記撹拌における回転数が,150rpm以上であることを特徴とする第六の構成に記載に二酸化炭素抽出方法である。
本発明の第八の構成は,前記温度調整における炭酸泉の温度が,20度以上に調整してなることを特徴とする第一から第七の構成に記載の二酸化炭素抽出方法である。
本発明の第十の構成は,第一から第八の構成に記載の二酸化炭素抽出方法により二酸化炭素抽出後の炭酸泉を用いて,微細藻類の培養を行うことを特徴とする培養方法である。
本発明の第十一の構成は,前記微細藻類が,シアノバクテリア,珪藻,黄緑藻,渦鞭毛藻,紅藻,褐藻,緑藻のいずれか又は複数から選択されることを特徴とする第九又は第十の構成に記載の培養方法である。
すなわち,本発明の二酸化炭素抽出方法によれば,炭酸泉から二酸化炭素を抽出することができ,この二酸化炭素を微細藻類の培養に用いることが可能となる。加えて,二酸化炭素抽出後の炭酸泉を微細藻類の培養に用いることも可能であり,これら一連の技術を用いることにより,炭酸泉を用いた微細藻類の大量培養が期待できる。
炭酸泉として,典型的には,二酸化炭素を含有する温泉水を用いることができる。このような温泉水としては,例えば,霧島山系に属する温泉水(鹿児島県霧島市や宮崎県高原町由来のもの)が挙げられる。
本発明における炭酸泉は,温泉水のような自然発生的に生じる天然炭酸泉を原則として用いるものであるが,人工的に生じる炭酸泉を完全に排除する趣旨ではない。すなわち,本発明の趣旨に鑑み,二酸化炭素抽出の観点から,何らかの理由で人工的に発生した二酸化炭素を含む水等について,本発明を適用してもよい。
例えば,温度を上げると二酸化炭素抽出を増やすことができるが,あえて温度を下げることにより,二酸化炭素抽出を減らす,もしくは抽出の構成から段階的に温度管理を行い特定のポイントで温度を上昇させ二酸化炭素排出を促すなどすることができる。
このように各工程単独で二酸化炭素抽出を制御することができるが,複数の工程を組み合わせることにより,より精密な二酸化炭素抽出量の管理が可能となり,本発明の有用性を向上させるものである。
本発明において,炭酸泉pHを8.0以下に調整を行うことが好ましい。これにより,炭酸泉からの二酸化炭素を効率的に抽出できるという効果を有する。また,pHについては,6.2以下であることがより好ましく,5.2以下であることがさらに好ましい。これらpH調整については,二酸化炭素抽出速度と抽出後の炭酸泉利用など,種々の観点から適宜調整することができる。
本発明において,物理刺激を撹拌により行うことが好ましい。これにより,物理刺激を簡易かつ容易に構成でき,炭酸泉からの二酸化炭素をより効率的に行うことができるという効果を有する。撹拌における回転数については,抽出を行う炭酸泉の規模や物理刺激を行う構造などを考慮し適宜調整することができるが,典型的には,150rpm以上の回転数で撹拌を行えばよい。
本発明において,炭酸泉温度を20度以上に調整することが好ましい。これにより,炭酸泉からの二酸化炭素を,より効率的に行うことができるという効果を有する。炭酸泉の温度調整については,温度調整が可能な限り特に限定する必要はなく,種々の手段を用いて温度調整を行うことができる。
また,天然炭酸泉の場合,採取時から20℃を超えている場合もあり,この場合は,二酸化炭素抽出量をコントロールするという観点から,温度を下げて冷やし,一時的に二酸化炭素抽出を抑制することもできる。
本発明において用いられる微細藻類について,二酸化炭素を必要とする微細藻類に適用しうるものであり,種々の微細藻類を用いることができ,また,微細藻類について天然のものを用いてもよいし,遺伝子組み換え等を行った人工のものを用いてもよい。
このような微細藻類として例えば,シアノバクテリア,珪藻,黄緑藻,渦鞭毛藻,紅藻,褐藻,緑藻などが挙げられる。
1.炭酸泉は,既に炭酸泉として知られている複数地域でサンプルを入手した。炭酸泉サンプルについては,以降,下記のとおり表記する。
炭酸泉サンプルA…宮崎県高原町由来の炭酸泉サンプル
炭酸泉サンプルB…鹿児島県霧島市由来の炭酸泉サンプル
3.炭酸泉を密閉フラスコ内に入れ,各種実験条件に調整を行い,炭酸泉から気泡が1つ発生してから所定時間内に発生する気泡を,水で満たした10mLメスシリンダー中に誘導・回収を行った。
4.メスシリンダー中において,減った水の量(気泡として空洞となった量)を測定し,二酸化炭素の発生量とした。
5.pHについては,予備検討を行ったうえで,塩酸または水酸化ナトリウムを所定量,炭酸泉に加え,事後的にpHの確認を行った。
6.回転については,密閉フラスコ内に回転子を入れ,スターラーの回転数を設定することにより,調整を行った。
7.温度については,水もしくはお湯が入ったボウルに密閉フラスコを入れ,湯煎による温度調整を行った。
<実験1.pH変化による二酸化炭素発生量の変化>
炭酸泉のpHを変化させ,二酸化炭素発生量がどのように変化するかを調べるため,炭酸泉サンプルAを用いて検討を行った。
(1) pHが8.0を超えると,二酸化炭素の発生はほとんど見られなかった。
(2) 一方,pHが7あたりから二酸化炭素の発生が見られ,特に,pH6あたりから急激に二酸化炭素の発生量が増加していった。
(1) pH7.1において,二酸化炭素の発生(2.4mL)が確認された。
(2) 一方,pH2.3においては,34.2mLの二酸化炭素発生が確認され,pH7.1と比較すると,およそ14倍であった。
(1) pH8.0未満にpHを調整すれば二酸化炭素を得ることができる。
(2) pH6.2以下でより効果的に二酸化炭素を発生させることができる。
(3) pH5.2以下でさらに効果的に二酸化炭素を発生させることができる。
撹拌を行う際の回転子の回転数を変化させ,二酸化炭素発生量がどのように変化するかを調べるため,炭酸泉サンプルAを用いて検討を行った。
(1) 回転数が100rpm未満においては,発生量の変化はほとんど見られなかった。
(2) 回転数が150rpmを超えると発生量は直線的に増加していった。
(1) 回転数が100rpm未満においては,発生量の変化はほとんど見られなかった。
(2) 一方,回転数が150rpmにおいては,100rpm未満と比較して,およそ2倍の発生量であった。
(1) 回転数が100rpm未満の場合,発生量に関する大きな変化は見られない。
(2) 回転数が150rpmを超えると,発生量が直線的に増加していく。
炭酸泉の温度を変化させ,二酸化炭素発生量がどのように変化するかを調べるため,炭酸泉サンプルAを用いて検討を行った。
(1) 17.1℃では発生量は小さく,22.4℃で十分と評価しうる発生量が得られた。
(2) また,全体として,温度が高くなるほど,発生量が高くなる傾向が見られ,特に,32.6℃を超えると十分な二酸化炭素発生量であることが分かった。
2.実験方法の限界もあり,湯煎開始ですぐに目的温度に炭酸泉が到達できるわけではなく,また,実測に至る前には既に二酸化炭素発生が始まっていることから,評価が難しいが,おおむね,20℃以上で十分な二酸化炭素発生量が得られ,30℃以上でさらに好ましい二酸化炭素発生量が得られると考えられた。
実験1とは異なる炭酸泉サンプルを用いて,同様の検討を行った。
(1) pHが8.0を超えると,炭酸泉サンプルAと同様,二酸化炭素の発生はほとんど見られなかった。
(2) 一方,pHが7あたりから二酸化炭素の発生が見られ,バラツキはあるものの直線的に発生量が増加していった。
2.これより,pH8.0未満にpHを調整すれば二酸化炭素を得ることができること,また, pH7.2以下でより効果的に二酸化炭素を発生させることができることが確認された。
Claims (10)
- 天然温泉由来の炭酸泉から二酸化炭素を抽出する二酸化炭素抽出方法であって,
二酸化炭素抽出前に,炭酸泉に対し,攪拌による物理刺激を与える物理刺激工程を含むことを特徴とする二酸化炭素抽出方法。
- 前記二酸化炭素抽出前に,
炭酸泉のpHを調整するpH調整工程,
炭酸泉の温度を調整する温度調整工程,
これら工程のいずれか又は複数をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素抽出方法。
- 前記pH調整工程において,炭酸泉のpHを8.0以下に調整を行うことを特徴とする請求項2に記載の二酸化炭素抽出方法。
- 前記pHが,6.2以下であることを特徴とする請求項3に記載の二酸化炭素抽出方法。
- 前記pHが,5.2以下であることを特徴とする請求項4に記載の二酸化炭素抽出方法。
- 前記撹拌における回転数が,150rpm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載に二酸化炭素抽出方法。
- 前記温度調整における炭酸泉の温度が,20度以上に調整してなることを特徴とする請求項2から6いずれかに記載の二酸化炭素抽出方法。
- 請求項1から7いずれかに記載の二酸化炭素抽出方法により抽出された二酸化炭素を用いて,微細藻類の培養を行うことを特徴とする培養方法。
- 請求項1から7いずれかに記載の二酸化炭素抽出方法により二酸化炭素抽出後の炭酸泉を用いて,微細藻類の培養を行うことを特徴とする培養方法。
- 前記微細藻類が,シアノバクテリア,珪藻,黄緑藻,渦鞭毛藻,紅藻,褐藻,緑藻のいずれか又は複数から選択されることを特徴とする請求項8又は9に記載の培養方法。
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