JP6680611B2 - ガスの分離方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数種類のガスや不純物を含有したガス体に含まれるガスの分子径を変化させて、ガス体から目的ガスを分離するためのガス分離方法に関する。
従来から、電子部品の洗浄、エアコンや冷蔵庫などの冷媒、スプレー剤等として多用されていたフロンガス類のCFC(クロロフルオロカーボン)類は、オゾン層を破壊する環境汚染物質であることが指摘されており、オゾン層破壊を防止するためのモントリオール議定書によって、その製造が中止された。フロンガス類のHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)類については、2020年に製造が中止される。また、消火剤として用いられているハロンガスについては、ハロン破壊処理ガイドラインが制定され、今後破壊が進んでいくと考えられる。また、代替フロンガスとして使用されているPFC類,SF6(六フッ化硫黄),HFC(ハイドロフルオロカーボン)類は、オゾン層は破壊しないが、二酸化炭素を1とした場合の地球温暖化係数は、PFC類のCF4(四フッ化炭素)が6500、SF6が23900と極端に高く、地球温暖化に大きな影響を与えている。そのため、PFC類,SF6,HFC類は京都議定書においても温暖化ガスに指定されており、排出が厳しく制限されている。さらに、2015年末に開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、2020年以降の温暖化対策の国際枠組み『パリ協定』が採択され、途上国を含むすべての国(196カ国・地域)が史上初めて、ともに温暖化防止に努めると約束した。
また、使用済みのオゾン層破壊ガスや地球温暖化ガス等(以下、「環境汚染ガス」という)の排出量も年々増加している。使用済みの環境汚染ガスは、ゴミ,水分,油分などの不純物を含有していたり、使用中に変性していたり、或いは複数種類のガスが混合していたりするため、そのままでは再使用に供することができない。そこで、従来、環境汚染ガスの殆んどは専ら無害化のために破壊処理や分解処理されているのが現状である。
一方において、近時は資源の枯渇化も問題視されており、環境汚染ガスの再資源化を図ることが重要視されてきている。そのため、排出された環境汚染ガスを無害化するとともに含有資源を回収して再使用することや、排出された環境汚染ガスから不純物や不要なガスを除去して、再使用可能に分離して再生することが無害化処理の次の課題となっている。
本出願人もフロンガスと溶媒としての水を混合したものを加熱して過熱蒸気とし、該過熱蒸気を所定の温度に加熱した常圧の反応装置内を所定の反応時間保持して通過させることにより、フロンガス等を分解処理する手段(特許文献1)等の過熱蒸気を使用した種々の分解手段を提供している。
更に、本出願人は回収フロンを液状態で取り出して蒸発器に送り込み、該蒸発器を加熱することにより、液状態の回収フロンをガス化し、ガス化した回収フロンを凝縮工程に送り込んで再び液化することにより、回収フロンから空気,油分,水分等の不純物を除去して蒸発浄化する回収フロンの再生方法や、2種類以上のフロンが混入している回収フロンを液状態で取り出して蒸発器に送り込み、該蒸発器を加熱することにより、液状態の回収フロンの内、より低沸点のフロンの構成比が大きい状態でガス化し、ガス化した回収フロンを凝縮工程に送り込んで再び液化することにより、2種類以上のフロンが混入している回収フロンから特定のフロンを回収して蒸留精製する回収フロンの再生方法を提供している(特許文献2)。
特許第3219689号公報 特許第3816066号公報
回収された環境汚染ガス、例えば機器の交換や故障時において回収されたフロンガス類の冷媒ガスには、機器の損耗に伴う金属粉や潤滑油の混入、或いは稀ではあるが使用中の温度変化などで変性した冷媒ガスが混合されており、又回収中に配管内のゴミ,水分,空気なども混入して回収される。更に、冷媒ガスの回収装置は、回収する冷媒ガスの種類ごとに専用の回収装置に交換されるわけではないため、回収装置内に残留している異種ガスが混入された状態で回収されている。そのため、回収された冷媒ガスはそのままの状態では再使用に供することができない。
フィルターによって異物を除去するとともに、特許文献2に示すような沸点の違いに着目して、蒸留或いは精留によってガスの分離を実行したとしても、再使用可能な純度までガス分離の精度を高めることは困難である。何故なら、ガスは沸点以下であっても平衡圧になるまで蒸発して存在するし、共沸現象が起きたりするためである。冷媒ガスにとって異種ガスの混入は冷却性能に直接的に大きな影響を与えるため、純度の維持は重大な課題である。また、半導体製造過程で使用されるドライエッチング剤であるCF4に代表されるガスでは製品に与える影響は甚大であるため、更に純度維持は重要で厳密に管理されている。
よって、特許文献2に示す蒸留や精留を用いた冷媒ガスの分離手段では、異種ガスが混入している場合、これを除去して使用可能な純度まで精製するという問題を解決することができず、最も重要な純度を回復させることが難しいため、これらの分離手段は専ら異種ガスの混入が使用目的に応じた所定の基準値以下の場合に限定されている。よって、再使用されている冷媒ガスは、純度の要求が高くない極く一部のガスにとどまっているのが現状である。異種ガスの混入が基準値を超える冷媒ガスは破壊処理や分解処理されているのが一般的である。
このことは、冷媒ガス等の環境汚染ガスに限ることではなく、どのようなガスであっても一定の目的を達成するために使用するガスである以上、純度が下がると目的とする性能を維持することができなくなるため、それらの回収ガスの再使用は厳しく制限されている。多様なガスにはそれぞれ固有の用途があり、必要とするガスの純度は用途や目的に応じて決定される。例えば冷媒として使用されるフロンガス類は99.6%以上の純度と定められており、半導体製造工程での洗浄剤として使用される場合は99.99%以上の純度が要求されている。そのため、再使用を可能とするためには、用途に応じた純度でのガスの分離・回収の可否を正確に判定する必要がある。
シリカゲル,活性アルミナ,ゼオライト等の吸着剤を用いた分離手段も知られており、これらの吸着剤を用いてガス中の水蒸気だけを選択的に吸着分離することは、従来より行われている。具体的には、極性のある水分子の特性を利用して、シリカゲルなどの親水性の強い吸着剤を用いて分離吸着させる手段と、ゼオライトなどの水分子だけが通過可能な細孔を持つ吸着剤を用いて水蒸気だけを吸着させる手段が知られている。
吸着剤は多種類のものが提供されているが、その多くは多孔質であって細孔径の分布が広いため、広範囲のガスを吸着することはできるものの、多様なガスに汎用的に使用することが困難であり、使用可能で実用性の高い吸着剤を自在に選択できる状況にない。また、既存の吸着剤を使用して特定のガスを選択して吸着することはできない。なお、前記したように水分子の極性等のガスの特性を利用して吸着する手段は適用可能なガスが限定的である。
水蒸気の場合、水分子の直径は0.3nm程度であり、他のガスの分子直径に比べて少し小さいため、水分子のみが通過可能なサイズの細孔を有する多孔質素材、具体的にはゼオライトを選択することにより、水分子のみを選択して分離することが可能である。しかしながら、複数種類のガスや不純物を含有したガス体から目的ガスのみ分離するために、目的ガスのみを通過させ、或いは通過させない吸着剤としての多孔質素材を得るためには、細孔径を0.01nm〜0.03nm程度のオーダーで自在に選択できる多孔質素材が必要となる。何故なら、ガスの分子直径は0.2nm〜2nmと想定され、中でもフロンガス類の冷媒ガスの分子直径は、冷媒ガスの種類により0.3nmから0.5nmあたりまでの狭い範囲に密集して分布しているため、前記オーダーの径差を有する吸着剤でなければ、目的ガスのみを選択吸着することができないためである。
ゼオライトは細孔径にばらつきがなく安定した細孔径を有する吸着剤として注目され、天然のものも含めて200種類程度が今日まで盛んに研究開発されてきたが、産業的に実用されているのは僅かに20種類程度と少ない。そこで、市販されている代表的なゼオライトの構造コードによる種類と細孔径を表1に示す。表1において、ゼオライトの細孔径を短径×長径で表しており、均一な細孔径を複数有するものについては、それぞれの細孔径を記載してある。例えば、構造コードEDIのゼオライトは「0.20nm×0.31nm」と「0.28nm×0.38nm」の2種類の細孔径からなる均一な細孔を有し、構造コードLTAのゼオライトは、「0.41nm×0.41nm」の1種類の細孔径からなる均一な細孔を有する。
Figure 0006680611
また、金属と有機リガンドが相互作用することで、多孔質の配位ネットワーク構造をもつ材料である金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)なども安定した細孔径をもつ物質として最近注目されている。しかしながら、金属有機構造体(以下、「MOF」という)は未だ提供されている種類が少ない。そのため、前記したゼオライトやMOFを使用したとしても細孔径を0.01nm〜0.03nm程度のオーダーで自在に選択することはできないため、既存の多孔質素材はいずれも多様なガスを吸着する吸着剤として使用することができない。そのため、前記した既存の分離手段を利用して多様な分子径を有する目的ガスを純度を維持して分離することは困難である。
ゼオライトは、ガスの分子直径とほぼ同様の0.2nm〜2nmの細孔径の範囲において均一な細孔を有している。そのため、ゼオライトが分離対象としてのガスの分子径に対応して0.01nm〜0.03nm程度のオーダーで自在に選択できる豊富な品揃えを有していれば、その中から分離基準となる細孔径を有するゼオライトを選択すればよいが実際はそうはなっていない。
前記した水蒸気を初めとするいくつかのガスについては、従来より吸着剤を用いた分離手段の実用化が報告されているものの、多様に存在するガス、特には環境汚染ガスについての吸着分離技術の研究は端緒に立ったに過ぎない。その主たる理由は、後述するように商業用途に供される吸着剤の種類が少なく、更にガスの分離に利用可能な細孔径を有する吸着剤が少ないことと、何よりガスの分子についての研究が進んでおらず、現状では目的に沿った分離吸着の可否判断および純度維持の可否判断を的確に実施して、ガス分離条件を決定することが困難であるためである。
ガスの分子が吸着剤の細孔を通過できるか否かの判断は、細孔径とガスの分子径の大小によって決定される。吸着剤として利用可能なゼオライト等の細孔径は、前記したように精確に特定されている。一方、ガスの分子径は、従来より、物質が正常沸点の液として占める容積、即ち分子容から求まるものとして理解されている。即ち、ガスの分子径も細孔径同様に固定として認識されている。しかしながら、ガスの分子径の研究はその段階に留まっており、ガスの分子径についての詳細な研究、更にはガスの分子径を単体としてではなく、吸着剤の細孔との相対的な関係、特に細孔を通過する際、具体的にはガスの分子が吸着剤の細孔に衝突した際のガスの分子径についての分析や研究は全く行われていなかった。
そこで、本発明者らは、吸着剤の細孔とガスの分子径との関係について研究するため、その前提として、実用されている各種ゼオライトと、冷媒ガス及び製造業などで雰囲気ガスや原料ガスとして産業用途に使用されている代表的な産業用ガスの分子径を比較検討した。そのデータを表2に示すとともに、図38にグラフ化して示す。ゼオライトとしては、細孔径が0.330nm〜0.470nmの範囲に属している構造コードRHO,CHA,MWW,AEL,LTA,FER,TONの7種類のゼオライト(以下、それぞれ「ゼオライトRHO」,「ゼオライトCHA」,「ゼオライトMWW」,「ゼオライトAEL」,「ゼオライトLTA」,「ゼオライトFER」,「ゼオライトTON」という)を使用した。なお、各ゼオライトの細孔径は、表1に示す短径を表示し、均一な細孔径を複数有する「ゼオライトMWW」及び「ゼオライトFER」については、短径が最も大きい細孔径を表示している。これは、ガスの分子径は、後述するように球の直径として表わされるため、ガスの分子径が多孔質素材の細孔の短径より小さい場合は、ガスの分子は多孔質素材の細孔を通過でき、そうでない場合は、多孔質素材からの斥力により細孔を通過できないためである。
冷媒ガスとしては、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)であるR22,HFC(ハイドロフルオロカーボン)であるR32,R125,R134a,R143aの5種類の冷媒ガスを使用した。産業用ガスとしては、窒素(N2),酸素(O2),アルゴン(Ar)等の18種類のガスを使用した。なお、冷媒ガスの分子径は一般にガスの分子径として認識されている分子容から求めた分子径を使用し、その他のガスについては、移動現象論に関する書籍「Transport Phenomena」(R. Byron Bird ,Warren E. Stewart,Edwin N. Lightfoot 共著)から抜粋して使用した。
Figure 0006680611
表2では、各種ゼオライトの細孔径及びガスの分子径を0.01nmのオーダーで分類し、図38では各種ガスの分子径を小さいものから順に点グラフとして表示するとともに、ゼオライトの細孔径を横線で示した。表2及び図38に示すように各種ガスの分子径は狭い範囲に密集しており、これらのガスをゼオライト、或いは他の多孔質素材を使用して分離するためには、ガスの分子径の中間の細孔径を有するゼオライト又は他の多孔質素材が必要となる。しかしながら、そのようなオーダーでゼオライトは提供されていないのが現実であり、ゼオライトに代わる他の多孔質素材も提供されていない。例えば、細孔径が0.46nmのゼオライトTONであれば、表2,図38に示したR125,R134a,R143aを除く全てのガスが通過してしまい、細孔径が0.38nmのゼオライトCHAでは、分子径が0.368nmの窒素より分子径が小さいガスは全て通過してしまい目的とするガスのみを分離することができない。
分離手段としての多孔質素材の細孔径は、ゼオライトやMOFのように均一な細孔であっても、活性炭やシリカゲルのように一定の分布幅を有する細孔であっても、その細孔径及び分布は多孔質素材毎に特定されており、測定又はその分子構造から計算によって求めることが可能である。図39はゼオライトの細孔径と他の多孔質素材の細孔径の分布の一例を示すグラフである。図において、21,22,23,24は、それぞれ均一な細孔径0.28nm,0.4nm,0.46nm,0.74nmを有して市販されているゼオライトEDI,ゼオライトAEL,ゼオライトTON,ゼオライトFAUを示している。一方、25,26は一定の細孔分布を有する他の多孔質素材を示しており、例えば多孔質素材25は細孔径が0.3nm〜0.6nmの範囲に分布しており、多孔質素材26は細孔径が0.6nm〜1.4nmの範囲に分布している。多孔質素材に関する研究は日々進化しており、近時は限られた狭い範囲の分子径分布を有する多孔質素材、例えば分子ふるい炭素も提供されている。また、既存のシリカゲル,活性アルミナ,アルミノリン酸塩型モレキュラーシープ,多孔性シリカ,イオン交換樹脂等において狭い範囲の分子径分布を有する素材の開発が期待されているところである。
しかしながら、現状では表2に示す細孔径の範囲(0.330nm〜0.470nm)においては掲示した7種類の構造コードを有するゼオライト以外に市販されているゼオライトは存在せず、又表1に示すように市販されているゼオライトそのものの数が少ない。そのため、冷媒ガス等の各種ガス体から目的ガスのみを通過させるために必要とされる0.01nm〜0.03nm程度のオーダーで自在に選択できる多孔質素材は存在していない。
前記したように、分離手段としてのゼオライト等の多孔質素材の細孔径は物理的に確定しており、分離対象としてのガスの分子径も分子容から求まる計算値として確定しており、両者はともに不変と認識されている。そのため、ガスの分子が多孔質素材の細孔を通過することの可否は、通過量や通過効率を考慮しなければ、ガスの分子径よりも大きい細孔が存在しているか否かである。即ち、細孔径とガスの分子径の相対的な大小関係によって分離の可否が決定される。そのため、ガスの分子径の分布に対応する細孔径を有する多孔質素材が存在しないため、各種のガス、特に0.3nmから0.5nmあたりまでの狭い範囲に密集している冷媒ガスの分布に対応する多孔質素材が提供されていない現状では、目的に応じた純度を維持してガスを分離することは困難であった。
そこで、本発明は、多孔質素材を使用してガス体から使用可能な用途に応じた純度を維持した状態で目的ガス分離することを可能とするという新たな課題を設定し、この課題を解決するために、分子容から求まる固定値として認識されるに留まっていた回収ガスやその他のガス体に含まれるガスの分子径を用途に応じて的確に変化させて、ガス体から目的ガスを分離するためのガス分離方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、ゼオライト等の多孔質素材は固体であり、その細孔径は物理的に確定しているが、ガスの分子径は従来、分子容から求まる固定値として認識されてはいるものの流体であり、又従来研究対象とされてこなかったことから、ガスの分子径についての考察が課題解決の要と考え、視点を変えて研究することとした。ガスの分子径についての知見を得るために、新たな視点として気体分子間のポテンシャルエネルギーを数式を用いて近似的に表し、平均自由工程,拡散係数等の気体分子の輸送現象を考える場合に必要な気体分子の直径を与える経験的モデルであるレナード−ジョーンズ・ポテンシャル(Lennard−Jones・potential)に着目し、窒素(N2)を例として分子間の距離Rについて研究を行った。
レナードジョーンズは気体分子間に働く力は、気体分子間の距離Rが大きいと0であり、充分に小さいと斥力となり、適当な大きさだと引力(ファン・デル・ワールス力)となるため、気体分子間のポテンシャルエネルギーはRの関数で表せると考え、下記数1式なる仮説を提案している。なお、数1式を初めとする各計算式においてUはポテンシャルエネルギーを表している。
Figure 0006680611
数1式において、m=12,n=6 とした場合の値が実験値に適合するとしてよく用いられており(12,6)−ポテンシャルと呼ばれて下記数2式で表される。(ε、σ)はレナードジョーンズパラメータであり、εはポテンシャルエネルギーの最小値を表し、σはポテンシャルエネルギー=0の場合の分子間の距離を表している。σの値は、平均自由行程、拡散係数等を求める場合の分子直径として一般に用いられる。
Figure 0006680611
窒素ガスについてのε、σの値はレナードジョーンズパラメータより、ε=0.00789eV,σ=0.368nmで与えられているため、これを数2式に代入し、得られたポテンシャルエネルギーを図40に示す。
一方で、分子の運動エネルギーの目安を kT(kはボルツマン定数、Tは絶対温度)とすると、例えば温度300Kの時のポテンシャルエネルギーを求めると次の通りである。
Figure 0006680611
次に、この値を数2式に代入してσ300を求めると[σ300=0.936σ]となる。よって、元の衝突距離(分子直径)より、約7%ほど小さくなっている。これを図示すると図41に示すようになる。
上記結果は、窒素の分子は、温度300Kに加熱することによって、熱エネルギーによってポテンシャルエネルギーが付与されて運動エネルギーに変換され、分子速度が速くなることを示しており、ポテンシャルエネルギー=0で衝突した場合に比べて、衝突距離(分子直径)が約7%ほど弾性的に縮小変化することを示している。
この研究から、本発明者らはガスの分子径は分子容から求まり、その値は固定されているが、温度条件によってガスの分子に外力が加わった場合には、分子容から求めた分子径の値は変わらないものの、その値から弾性的に縮小変化することが可能なのではないかとの着想を得た。そこで、この着想を命題として、ガスの分子径と温度及びガスの分子径の衝突について研究を進めた結果、細孔への衝突によってガスの分子に外力が加わった場合には、分子容から求まる固定値から、温度によって変化するガスの分子の速度に応じて一定の範囲で弾性的に縮小変化可能であるとの知見を得た。即ち、ガスの分子径は、そのポテンシャルエネルギー(PE)がゼロであれば、分子容から求まる固定値のままであるが、温度によりポテンシャルエネルギーを得て運動エネルギーに変わることによって速度が与えられた場合には、分子容から求まる固定値から弾性的に縮小変化することを解明し、速度を付与するためのポテンシャルエネルギーは、温度によって得られるため、ガスの分子の温度を制御することにより、ガスの分子径を縮小変化させることに成功した。
そこで、前記知見に基づき、ガス温度条件の制御とガスの分子径の縮小変化についての技術的因果関係、更には、これらと分離手段としての多孔質素材,多孔質素材の細孔及び細孔径等との関係について研究を進めた結果、前記した課題を解決する手段として本発明を完成した。
本発明は、分離対象としての目的ガスを含む複数のガスを含有するガス体を多孔質素材からなる分離手段に供給し、目的ガスを多孔質素材の細孔を通過させ、又は通過させないことによって、ガス体から目的ガスを分離するガスの分離方法であって、ガスの温度を特定温度に制御することによって、ガスが多孔質素材の細孔に衝突した際のガス体を構成する各ガスの分子直径を衝突直径の分布範囲縮小変化させ、特定温度に保持したガス体を、目的ガスと、その他のガスの衝突直径の分布範囲を基準として選択した多孔質素材からなる分離手段に供給することを特徴とするガスの分離方法(なお衝突直径とは、特定温度において、ガス体を構成する各ガスの分子の速度が分子毎に異なることに起因して、特定の速度で多孔質素材の細孔に衝突したガスの分子が分子毎に縮小変化する最小の分子直径をいい、衝突直径の分布範囲とは、ガス体を構成する各ガスの特定温度における衝突直径の上限値から下限値の範囲をいう)を基本として提供する。
そして、衝突直径の上限値から下限値の範囲は、特定温度におけるガス体を構成する各ガスの分子の最低速度の衝突直径から最高速度の衝突直径までの範囲である手段提供する。
また、ガスの温度を、ガスが変質しない温度範囲で制御する手段、ガスの温度を、−70℃〜300℃の温度範囲において制御する手段を提供する
更に、多孔質素材として、目的ガス又はその他のガスのどちらか一方の衝突直径の分布範囲より大径であって、かつ、他方の衝突直径の分布範囲より小径の細孔を有する多孔質素材を選択する手段を提供する。
更に、細孔径が均一サイズに特定された多孔質素材を使用する手段、細孔径が一定範囲に分布し、該細孔径の分布の上限が、目的ガス又はその他のガスのどちらか一方の衝突直径の分布範囲より大径であって、かつ、他方の衝突直径の分布範囲より小径である多孔質素材を使用する手段を提供する。
更に、多孔質素材の原料がゼオライト,金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks),又は分子ふるい炭素を原料として形成された手段、ガス体が、クロロフルオロカーボン(CFC)類,ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類,ハイドロフルオロカーボン(HFC)類,テトラフルオロメタン(CF4)を含むパーフルオロカーボン(PFC)類,六フッ化硫黄(SF6),ハロン類,四塩化炭素(CCl4),トリクロロエタン,メタン,臭化メチル,ヘリウム,窒素酸化物(NOx),二酸化炭素(CO2),硫黄酸化物(SOx),水素(H2),窒素(N2),酸素(O2),アルゴン(Ar)から選択された1又は複数のガスを含んでいる手段提供する。
そして分離手段が多孔質素材の分離膜からなる手段分離手段が多孔質素材の吸着剤からなる手段提供する。
以上記載した本発明によれば、ガス体の温度を特定温度に制御することによって、ガス体を構成する各ガスの分子は特定温度の持つ熱エネルギーによってポテンシャルエネルギーを得て、ポテンシャルエネルギーが運動エネルギーに変換されることによって、速度を与えられる。この速度は各ガスの分子毎に異なるため、特定の速度で多孔質素材の細孔に衝突した際の各ガスの分子直径は、各ガスの分子の速度が分子毎に異なることに起因して、分子毎に縮小変化する最小の分子直径の上限値から下限値の分布範囲である衝突直径の分布範囲に縮小変化することとなる。
本発明は、従来、分子容から求められた値であって変化することのない固定値として認識されていたガスの分子径を、固定値から前記した衝突直径の分布範囲に弾性的に縮小変化させ、特定温度に保持したガス体を、目的ガスと、その他のガスの衝突直径の分布範囲を基準として選択した多孔質素材、例えば目的ガス又はその他のガスのどちらか一方の衝突直径の分布範囲より大径であって、かつ、他方の衝突直径の分布範囲より小径の細孔径を有する多孔質素材からなる分離手段に供給し、目的ガスを多孔質素材の細孔を通過させ、又は通過させないことによって、ガス体から目的ガスを分離することができる。
その結果、回収ガスやその他のガス体に含まれる各ガスの分子径を衝突直径の分布範囲に縮小変化させて、ガス体から、使用可能な用途に応じた純度を維持した状態で目的ガスを分離することが可能となる。よって、従来では処理できなかったガスを既存の多孔質素材を使用して用途に応じて的確に処理できるため、混合ガスの分離や不要なガスの除去、必要なガスの選択的な分離・再利用、ガスを多孔質素材に吸着させることによるガス貯蔵の効率化等が可能となる。
また、ガス体を構成する各ガスの分子径を速度に応じた衝突直径の分布範囲に縮小変化させることによって、ガスの分離手段として使用可能な多孔質素材の選択基準を緩和することができる。具体的には再使用を可能とする純度の高いガスの分離のためには、分離手段として、0.01nm〜0.03nm程度のオーダーの多孔質素材が必要であるところ、そのオーダーを1桁緩和して0.2nm〜2nmの範囲の細孔径を有する既存の多孔質素材を使用可能とすることができる。そのため、人工的に製造された高価な合成ゼオライトよりも安価に得られるものの種類が僅かであるため、分離手段として使用することが困難であった天然のゼオライトを分離手段として使用する途を開くことができる。
また、ガス体の温度条件を制御することによって、ガス体を構成する各ガスの分子径を衝突直径の分布範囲まで弾性的に縮小変化させること、及びその変化幅を精確に把握することが可能となるため、分離作業のハンドリングがよく、ガスの用途に応じて再使用を前提としたそれぞれのガスの用途に応じた純度を維持することが可能なガスの分離を実用レベルで実現することができる。しかも、目的ガスが分離手段を通過する方法によっても、又は通過しない方法によっても分離することができる。
また、分離手段としての多孔質素材に特に限定はなく、ゼオライトのように均一な細孔径を有する素材はもちろん、細孔径が一定の分布範囲を有する素材であっても、ガス体中の分離対象である目的ガスと、その他のガスの分子径が重複しない温度条件において、ガス体中の目的ガス又はその他のガスのどちらか一方の分子径より大径の細孔を有し、かつ、他方の分子径より小径の細孔を有すれば使用可能である。そのため、使用する多孔質素材の選択が容易であるとともに、その幅が広がるため、最適の多孔質素材を選択することが容易である。よって、本発明によれば、複数の多孔質素材を使用して、複数種類のガスや不純物を含有したガス体から目的ガスを再使用可能な純度を維持して分離することができる。
多孔質素材を吸着剤として使用し、本発明によって温度を制御してガスの分子径を弾性的に縮小変化させることによって、従来吸着できなかったガスを吸着可能とし、かつ、貯蔵する際にも温度を制御することによってガスの分子径を大きくすることで脱着を抑制することが可能となるため、多孔質素材をガスの貯蔵に使用することが可能となる。また、多孔質素材を分離膜として使用することにより、吸着・脱着を介さず、多孔質素材の細孔をガスが通過することだけで分離が可能となる。多孔質素材からなる分離膜は製造が困難なことから、限られた多孔質素材しか用いられておらず、適用可能なガスの種類が限られていたが、本発明によって適用可能なガスの範囲を広げることができる。
本発明にかかる分子径の変化の要旨を示す説明図。 分子径の説明図。 分子径の説明図。 基本直径及び衝突直径と細孔径との関係を示す説明図。 基本直径及び衝突直径と細孔径との関係を示す説明図。 基本直径と細孔径との関係を示す説明図。 0℃におけるR22の速度分布を示すグラフ。 0℃におけるR32の速度分布を示すグラフ。 0℃におけるR22の衝突直径の変化状況を示すグラフ。 0℃におけるR32の衝突直径の変化状況を示すグラフ。 ガスの分離の分析結果を示すグラフ。 0℃におけるR22とR32の速度密度分布を示すグラフ。 20℃におけるR22の速度分布を示すグラフ。 20℃におけるR32の速度分布を示すグラフ。 ガスの分離の分析結果を示すグラフ。 0℃におけるR125の衝突直径の変化状況を示すグラフ。 ガスの分離の分析結果を示すグラフ。 0℃におけるR32とR125とR134aの衝突直径の変化状況を示すグラフ。 ガスの分離の分析結果を示すグラフ。 ガスの分離の分析結果を示すグラフ。 50℃におけるR125の実測粘性係数と補正粘性係数に基づく衝突直径の比較グラフ。 50℃と100℃におけるR125の衝突直径の比較グラフ。 50℃におけるR125の吸着状況を示すグラフ。 100℃におけるR125の吸着状況を示すグラフ。 温度変化による実測粘性係数の変化を示すグラフ。 R32の実測粘性係数と補正粘性係数の対比グラフ。 R125の実測粘性係数と補正粘性係数の対比グラフ。 R134aの実測粘性係数と補正粘性係数の対比グラフ。 R143aの実測粘性係数と補正粘性係数の対比グラフ。 R22の実測粘性係数と補正粘性係数の対比グラフ。 R22,R32,R125,R134a,R143aの補正粘性係数のグラフ。 R22,R32,R125,R134a,R143aの実測粘性係数に基づく平均直径と補正粘性係数に基づく平均直径の対比グラフ。 R32の各温度における分子速度と衝突直径を示すグラフ。 R125の各温度における分子速度と衝突直径を示すグラフ。 R134aの各温度における分子速度と衝突直径を示すグラフ。 R143aの各温度における分子速度と衝突直径を示すグラフ。 R22の各温度における分子速度と衝突直径を示すグラフ。 ゼオライトの細孔径と代表的なガスの分子径の分布を示すグラフ。 吸着剤の細孔径とその分布を示すグラフ。 窒素の分子径を示す説明図。 窒素の分子径を示す説明図。
以下、本発明にかかるガス分離方法の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は、複数種類のガスや不純物を含有したガス体に含まれるガスの分子径を変化させて、ガス体から目的ガスを分離するものであり、特には回収ガスやその他のガスから、用途に応じて使用可能な純度を維持した状態で目的ガスを分離するものである。
前記窒素に関する検証で使用したレナード−ジョーンズ・ポテンシャルは経験的モデルに基づく仮定であるとともに、温度,圧力などの関係についても明確にされていないが、分子間のポテンシャルエネルギーが0となる場合の分子間の距離σは、レナードジョーンズパラメータとして与えられている。そこで、本発明では、ポテンシャルエネルギーが0となる場合の分子間の距離であって、従来よりガスの分子径として認識されている、物質が正常沸点の液として占める容積、即ち分子容から求まるガスの分子直径(以下、「基本直径σ」という)を基本として、ガスの分子径と温度との関係について研究を行った。
図2はレナード−ジョーンズ・ポテンシャルと基本直径σとの関係を模式化して示す分子径の説明図であり、縦軸はポテンシャルエネルギーを、横軸は距離を示している。図に示すように、分子自体で速度を有していないガスの分子Aが、引力や斥力からポテンシャルエネルギーを得て同一のガスの分子Bに衝突し、ポテンシャルエネルギーが0となる位置で停止した時の分子間距離が基本直径σである。なお、εはポテンシャルエネルギーの最下点のエネルギーを表し、沸点から求まる。よって、基本直径σとεは下記式から求まる。
Figure 0006680611
Figure 0006680611
一方、ガスの分子が沸点以上の特定温度を得てポテンシャルエネルギーが増加すると、このポテンシャルエネルギーが運動エネルギーに変わり初速度を持つこととなる。例えばレナード−ジョーンズ・ポテンシャルと基本直径σとの関係を模式化して示す分子径の説明図である図3に示すように、ガスの分子Aが特定温度において初速度V0を持って同一のガスの分子Bに衝突すると、増加したポテンシャルエネルギーが0になる位置まで進んでから停止することとなるためガスの分子A,B間の衝突距離は短くなる。即ち、ガスの分子A,B間の分子間距離が変化することとなる。そこで、本発明では、ガスの分子が持つ速度による分子径の変化と基本直径σとの関係について研究を進め、次の知見を得た。
知見1:ガスの分子径は、分子が速度を持つことによって、衝突時において基本直径σから弾性的に変化すること。
知見2:変化する分子径は、速度を持たずに引力や斥力によって与えられるポテンシャルエネルギーのみで衝突する場合の基本直径σに比べて縮小すること。
知見3:ガスの分子径が縮小変化する量は、分子の持つポテンシャルエネルギーの量によって異なること。
知見4:ガスの分子が持つポテンシャルエネルギーを構成するエネルギーには、並進エネルギー,回転エネルギー,振動エネルギーが存在するが、これらのエネルギーの中で分子の速度に影響を与えるのは主に並進エネルギーと回転エネルギーであること。
知見5:ポテンシャルエネルギーは温度によって異なるため、ガスの分子径は、温度の変化に起因して基本直径σから弾性的に縮小変化可能であること。
知見6:沸点における分子径を表す基本直径σは、沸点から温度が上昇するに伴って縮小方向に弾性的に変化可能となること。
知見7:ガスの分子径は、沸点以上の温度において、基本直径σより大きくなることはないこと。
知見8:ガスの分子の速度は一定の分布を有しており、同一温度であっても速度の異なる分子群として構成されること。
前記した知見1〜知見8の技術的因果関係について精査し、研究を進めた結果、本発明者らは、ガスの分子が衝突によって外力が加わった場合には、ガスの分子が速度を有していれば、基本直径σから一定の範囲で弾性的に縮小変化可能であり、ガスの分子の速度は温度によって変化すること、即ち、ガスの分子径は、そのポテンシャルエネルギー(PE)がゼロであれば、基本直径σのままであるが、ポテンシャルエネルギーを得て速度が与えられた場合には、その速度による運動エネルギーによって、基本直径σから弾性的に縮小変化するとの技術的結論に想到した。この結論に基づき、ガスの分子に運動エネルギーを付与するためのポテンシャルエネルギーは、温度によって得られるため、ガスの分子の温度を制御することによってガスの分子径を縮小変化させることの実験に成功した。
本発明者らは前記した技術的結論を敷衍することによって、ガスの分子は分子群として存在し、同一温度であっても分子毎に速度を異にするため、分子の速度によって分子径が縮小変化するのであれば、同一の温度であっても速度を異にする分子は、縮小変化範囲も異にするとの技術的結論に想到した。これらの結論を証明するために、ガスの分子の速度を求める手段について種々の研究を進め、その一手段として、実測することが可能な粘性係数に着目した。なお、ガスの分子の速度を求める手段に特定はなく、粘性係数に限ることなく、熱伝導係数を利用する手段、その他の手段であってもよい。要すれば、特定温度におけるガスの分子の速度を特定することができればよい。本実施形態ではガスの分子の速度を特定する手段として粘性係数を利用した。
運動流体の中で隣り合って流れている流体の部分の速度が異なる場合に、その間に速度が同じになろうとする方向に力が互いに作用し合うとき、その性質を粘性と呼び、そのような流体を粘性流体と呼ぶ。粘性流体がx軸に平行に流れ、速度uがy方向に変化するとき、y軸に垂直な面には単位体積あたり
τ=ηdu/dy
の力(すなわち接線応力)が作用する。ηを粘性係数(粘性率)という。
マックスウエルは分子を剛体球と仮定したうえで、粘性係数を分子動力学から下記数6式となることを示している。よって、この数6式をアレンジして分子直径dを求めることが可能である。即ち、ガスの分子直径は一般的に粘性係数を実測することによって知ることができる。
Figure 0006680611
分子速度aは1原子分子,2原子分子の場合、マックスウエル速度分布における分子平均速度を用いて分子径を求めるとレナードジョーンズパラメータの値や、基本直径と近い値を示す知見を得たため、分子の平均速度をそのまま用いることとし、分子の平均速度は下記数7式と表せる。この式は粘性係数が絶対温度の平方根に比例することを示しており、この温度における分子の平均速度で定義されている。このことは、1原子分子,2原子分子は仮定通り、かなり剛体球に近い弾性体であることを示している。
Figure 0006680611
3原子分子以上の多原子分子の場合、音速を分子速度aとして求めた分子径が先に述べた一般的に用いられている分子径によく適合する知見を経験的に得たことから下記数8式で示す音速を平均速度として用いて分子径を求める。
Figure 0006680611
数8式において、√vはマックスウエルによる2乗平均速度であり、下記数9式で表され、音速と密接な関係にあることがわかる。
Figure 0006680611
また、γは比熱比でγ=Cp/CvでCpは定圧比熱、Cvは定容比熱であり実測しても求められるが、分子の自由度からも求めることができ、自由度をFとすると下記数10式となる。多原子分子の場合、自由度6であるからγ=8/6=1.333となる。この値は常温付近では温度に依存しないことが確認されている。これらにより分子径dは粘性係数を用いて下記数11式から求めることができる。
Figure 0006680611
Figure 0006680611
多原子分子は剛体球とはみなせず、弾性をもつ性状である弾性球と推定される。音の伝搬は分子が衝突を繰り返すことにより伝搬されるから、この伝搬速度(音速)は分子の弾性的性状、すなわち粘性を包含した結果の速度であると考えられるから、音速を用いることに十分な合理性があると考えられる。一方、熱伝導度から求める場合は下記数12式によってκを計測すれば同様にしてdを求めることができる。
Figure 0006680611
冷媒ガスについては実測した粘性係数が示されているため、その一例としてHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)であるR22,HFC(ハイドロフルオロカーボン)であるR32,R125,R134a,R143aの5種類のガスの粘性係数を表3に示す。この表3をグラフ化したものが図25である。
Figure 0006680611
表3の実測した粘性係数の数値及び図25のグラフを精査したところ、5種類の冷媒ガスの粘性係数は温度の上昇に比例して大きく変化しているとともに、ガスの種類によって多少の差はあるものの10℃を超える付近から粘性係数が増大し始め、50℃を超えると一気に増大している。粘性係数は、分子が運動し、分子同士が衝突し合うために、分子が運動しにくくなる程度を表しているといえ、分子の運動の形態には、並進運動,振動運動,回転運動の3種類が存在することが知られており、実測した粘性係数、即ち表3及び図25に示す粘性係数にはこれら3つの運動全てが寄与している。
本発明者らは、幾多の実験結果や試行錯誤の中から、ガスの分子の衝突時における弾性的な縮小変化に寄与する運動エネルギーは、ガスの分子の運動エネルギー中、温度の変化に応じて直線的に変化するのは並進運動エネルギーと回転運動エネルギーであるから、これらに基づく粘性係数を使用することが可能であることに想到した。そこで、実測した粘性係数の数値が、振動運動エネルギーの影響によって並進運動、回転運動との相関関係から外れる場合には、粘性係数の数値から振動運動、回転運動の影響を排除する必要があると考え、実測された粘性係数の値と並進運動,振動運動,回転運動の3種類の運動の相関関係について研究を進めた。
並進運動,振動運動,回転運動相互の精確な因果関係は必ずしも明らかになっているとはいえないが、並進運動エネルギー及び回転エネルギーの2つのエネルギーはエネルギー準位が低く、温度に対し直線的に増加することが知られている。そのため、分子径と実測粘性係数の相関は分子の運動エネルギーが温度に対し比例的に増加している範囲で、マクスウエルの示す粘性係数を表す式は、温度、分子径との相互関係が満たされていると考えられる。
したがって一般的に常温程度までは分子の運動エネルギーは直線的な変化をするからこの範囲では問題なく実測粘性係数を使って分子径を特定することができる。ところが、温度が高くなり振動エネルギーの準位が変わると、その分子のエネルギーが急激に増加するため表3,図25に示すように実測粘性係数も急激に増加することになり、先に述べた相関が維持できなくなり分子径を正常に特定することができなくなると考えられる。
マックスウエルが、分子を剛体球と仮定したうえで、粘性係数を分子動力学から表した数6式は並進運動(平均速度)と分子径を変数として求められているが、回転運動、振動運動の影響も包括していると解釈でき、この数6式に該当するのは、温度により直線的に変化する並進運動と回転運動であり、振動運動は温度が低い常温付近では基底振動のみでその影響が無視できる範囲にあるときで、このとき粘性係数の変化と分子径の変化が相関している範囲にあると言える。換言すれば、振動運動による運動エネルギーが大きくなると、粘性係数の値が分子径との相関関係から外れてしまう。常温付近において、回転運動、振動運動による運動エネルギーが粘性係数に与える影響は、1原子分子、2原子分子については殆どなく考慮する必要はないが、多原子分子においては常温付近においても影響が生じることが知られている。この影響が生じる温度は分子個々により異なるため、実測した粘性係数の変化率の変化が大きくなる温度を知ることで推定することが可能である。或いは、所定の数式を解くことによって計算することも可能である。
前記した推定が可能な理由は、振動運動による運動エネルギー準位の間隔が他のエネルギー準位に比べて大きく、1つ上の準位に上がるために大きなエネルギーが必要であり、準位が上がることで粘性係数に大きな影響を与えていると考えられるためである。一方、平均速度は(√(8kB/πm)・√T)から求まるが、温度の平方根に比例して大きくなり、分子径は温度が高くなると小さくなり、その分子径の2乗に反比例するから、分子径が小さくなれば粘性係数は大きくなる。温度の平方根と分子径の2乗に逆比例するから互いの変化分が相殺されるため、並進運動と相関する粘性係数は直線に近似したグラフとなる。
そこで、フロンガス5種類の実測した粘性係数を示す表3,図25において、振動運動による運動エネルギーの影響が生じ始めるのは、粘性係数の変化率が大きくなっている事実から推定して、10℃〜20℃程度より高温部分である。図25において、粘性係数のグラフは5種類のフロンガス全て10℃あたりまでは直線で近似できる変化をしているため、この直線状の部分、具体的には最低温度の値(−70℃)と0℃又は10℃〜20℃程度までの略直線状となる2点を結び100℃くらいまで延長した直線状に補正した粘性係数とする。この補正した粘性係数は振動運動による運動エネルギーの影響を排除した並進運動エネルギー,回転運動エネルギーに基づく粘性係数(以下、「補正粘性係数」という)として使用することができる。即ち、粘性係数の式は振動エネルギーが一定の範囲(基底振動の範囲)で成立する関係式であると推定できるため、前記した補正手段によって、ガスの分子径を特定することは技術的相当性がある。
図25に示すR22,R32,R125,R134a,R143aの5種類のフロンガスの実測した粘性係数のグラフと、上記方法で補正した補正粘性係数のグラフをそれぞれ図26〜図30に示すとともに、その数値を表4に、補正後のグラフを5種類のフロンガスをまとめて図31に示す。
Figure 0006680611
表3に示す実測した粘性係数及び表4に示す補正した粘性係数に基づき、R32,R125,R134a,R143a,R22の5種類のガスについて−30℃〜100℃までの温度範囲において10℃毎の分子径を前記した計算方法に従って計算した。その結果を表5に示すとともに、図32にグラフとして示す。なお、この表5及び図32に示す分子径が本発明における平均直径σaに相当する。
Figure 0006680611
本発明者らは前記した温度制御によって基本直径σを平均直径σaまで弾性的に縮小変化可能とした手段による各種ガスの分離について種々の実験を重ねていった。その中で、前記したように求めた平均直径σaは、特定温度において平均速度で衝突したガスの分子が取り得る最小の分子直径であり、特定温度におけるガスの分子速度は一定の分布を有するため、平均速度とは異なる速度で衝突したガスの分子が弾性的に縮小する最小値は、平均直径σaとは異なるとの結論に至った。即ち、平均直径σaは、特定の速度で衝突したガスの分子が取り得る最小の分子直径ではあるが、特定温度におけるガスの分子の速度は一定の速度分布を有しており、平均直径σaは平均速度における分子径に過ぎないとの技術的結論を得るとともに、実験において特定温度に制御した平均直径σaが細孔径より大きくなり、細孔に入らないはずのガスの分子が、現実には細孔を通過している事象を確認した。
前記した通り、ガスの分子径は、温度制御によって与えられるポテンシャルエネルギーによる分子の速度に起因して、基本直径σから平均直径σaに弾性的に縮小変化する。一方において、ガスの分子は分子群として存在しており、その速度も一定の分布、即ち幅を有している(マクスウエルの速度分布)。そこで、これらの原則と実際の実験例に基づき、改めて平均直径σaについての考察を進めた結果、温度(粘性係数)と平均速度(速度)から求まる平均直径σaは、特定温度の平均速度における最小分子直径に過ぎず、分子群には平均速度以外の速度を有する分子も存在しており、これらの平均速度以外の速度を有するガスの分子が縮小変化する最小直径は、平均直径σaとは異なるとの技術的結論を得た。即ち、特定温度において特定速度で衝突したガスの分子が取り得る最小の分子直径(以下、「衝突直径σs」)という)は、速度に応じて一定の分布範囲を有するものであり、平均直径σaはその一例であるとの結論を得た。よって、平均直径σaは衝突直径σsに含まれ、基本直径σも沸点(特定温度)における速度0(特定速度)で衝突したガスの分子が取り得る最小の分子直径と捉えることができるため、広義では衝突直径σsに含まれることとなる。
そのため、ガスの種類やガスの分離の純度によっては、平均直径σaを分離基準として使用することに価値を有するが、ガスの分離の精度を更に高めるためには、衝突直径σsの分布範囲を特定し、この衝突直径σsの分布範囲を分離基準とする必要がある。そこで、本発明者らは、この点を解明すべく、温度条件とガスの分子径の変化、特に平均直径σaについて、更に研究を進め、得られた平均直径σaに基づいて衝突直径σsの分布を特定することに成功した。
粘性係数と平均速度から求まる平均直径σaに対して、平均直径σaのポテンシャルエネルギーを基本として、特定温度において、分子の有する速度に応じて基本直径σから弾性的に縮小変化可能な最小値の衝突直径σs(min)及び最大値の衝突直径σs(max)を求めるとともに、各速度に応じた衝突直径σsの分布を求めることによって、任意の分子1個が弾性的に縮小変化し得る最小直径及びその変化の状況を特定することができる。なお、平均直径σa及び衝突直径σsの求め方の詳細は後述する。
図1はレナード−ジョーンズ・ポテンシャルと基本直径σ,平均直径σa,衝突直径σs(min),衝突直径σs(max)の関係を模式化することによって、本発明にかかる分子径の変化の要旨を示す説明図である。縦軸はポテンシャルエネルギー(エレクトロンボルト/ev)を、横軸は距離(m)を示しており、εはポテンシャルエネルギーの最下点のエネルギーを表している。図において、Pはレナード−ジョーンズ・ポテンシャルにおいてポテンシャルエネルギーが0となる位置をプロットしたものであり、このPにおける横軸の値Sが基本直径σの値となる。S1は、特定温度における粘性係数と平均速度から求めた平均直径σaの値であり、このS1の値からレナード−ジョーンズ・ポテンシャルをプロットして平均直径σaのポテンシャルエネルギーの量P1(εave)を求める。
このP1(εave)には、分子の速度を決定する並進運動エネルギー及び回転運動エネルギー(以下、この2つのエネルギーを合わせて「並進運動エネルギー等」という)以外に、振動エネルギーも含まれている。そこで、平均速度を持つ分子の並進運動エネルギー等を計算によって求めるとともに、実用的な最高速度を持つ分子の並進運動エネルギー等を計算によって求め、両者の差分を求める。この並進運動エネルギー等の差分だけ、衝突直径σs(min)のPEは、P1(εave)から増加することとなるので、その値を求めレナード−ジョーンズ・ポテンシャルにP2(εmax)としてプロットし、このP2(εmax)から、横軸における衝突直径σs(min)の位置を求めることができ、その結果衝突直径σs(min)の値を求めることができる。
同様にして、実用的な最小速度を持つ分子の並進運動エネルギー等を計算によって求め、平均速度を持つ分子の並進運動エネルギー等との差分を求める。この並進運動エネルギー等の差分だけ、衝突直径σs(max)のポテンシャルエネルギーは、P1(εave)から減少することとなるので、その値を求めレナード−ジョーンズ・ポテンシャルにP3(εmin)としてプロットし、このP3(εmin)から、横軸における衝突直径σs(max)の位置を求めて、衝突直径σs(max)の値を求める。なお、これらの計算方法については後述する。
よって、温度によってガスの分子間距離、即ち分子径が変化するのであれば、多孔質素材の細孔径の最大値が基本直径σを下回るため、ガスの分子が細孔を通過できない多孔質素材であっても、ガスの温度を制御することによってガスの分子径を衝突直径σsの分布範囲に縮小変化させることによって、同じ多孔質素材であっても細孔径の最大値が特定温度における衝突直径σsを上回るようになり、当該特定温度においてはガスの分子が多孔質素材の細孔を通過させることが可能である。また、逆にガスの温度条件によって衝突直径σsの分布範囲を制御することによって、多孔質素材の細孔を通過できていたガスの分子が通過できなくなるようにすることも可能である。なお、前記したように衝突直径σsは一定の分布範囲を有しているため、細孔の通過の可否は、通過量や効率等を考慮しなければ、細孔径より小さい衝突直径σs(min)が存在するか否かである。
そこで、分離手段としての多孔質素材の細孔Hを基準として、基本直径σと衝突直径σs(min)との関係を示す説明図である図4〜図6に基づいて検討した。図4は、ガス分子Aの基本直径σ>細孔Hの細孔径HD>ガス分子Aの衝突直径σs(min)にある条件を示している。ガス分子Aが初速度を有さずに引力や斥力だけから得たPEによって与えられた速度によって細孔Hに衝突する場合、基本直径σは細孔径HDより大きいため、細孔Hを通過することはできない。これに対して、ガス分子Aの温度を変化させることによって、増加させたPEから初速度を得たガス分子Aの分子直径は、速度によって基本直径σから衝突直径σs(min)の大きさまで弾性的に縮小変化し、細孔径HDより小さくなるため、細孔Hを通過することが可能となる。
図5は、ガス分子Aの基本直径σ>ガス分子Aの衝突直径σs(min)>細孔Hの細孔径HDにある条件を示している。図4と同様に、ガス分子Aが初速度を有さずに引力や斥力だけから得たPEによって与えられた速度によって細孔Hに衝突する場合、基本直径σは細孔径HDより大きいため、細孔Hを通過することはできない。また、温度を制御することにより、増加させたPEによって初速度を得たガス分子Aの分子直径の衝突直径σs(min)が、基本直径σより小さくはなるものの、細孔径HDより大きいため、増加したPEによって得た速度によって、細孔Hに衝突したとしても、細孔Hを通過することができない。
次に、図6は、ガス分子Aの基本直径σ<細孔Hの細孔径HDにある条件を示している。ガス分子Aが初速度を有さずに引力や斥力だけから得たPEによって与えられた速度で細孔Hに衝突する場合でも、基本直径σは細孔径HDより小さいため、平均直径σaの大きさに関わることなく、どのような温度においても細孔Hを通過することが可能である。
上記説明に示す通り、ガスの分子が細孔を通過することの可否は専らガスの分子の直径、特には温度制御によって変化する衝突直径σs(min)に左右される。この衝突直径σs(min)が、特定温度における分子の衝突時における分子直径として最小値を示す値であれば、これを基準として特定の細孔径に対するガスの分離の可否を精確に判定することができ、更に衝突直径σs(min)〜衝突直径σs(max)の範囲の衝突直径σsの分布範囲を考慮して、温度条件を制御することによって、既存の多孔質素材を使用してガスの分離を精確に行うことが可能となるケースが大幅に広がる。
そこで、フロンガス類について多孔質素材の細孔の通過の可否を、温度条件を特定温度に制御し、特定温度において、分子の有する速度に応じて弾性的に縮小変化する衝突直径σsの分布範囲を基準として、種々の実験を重ねた。その結果、意図したとおりに分離できるケースも多数実証することができた。よって、温度制御によって、ガスの分子の衝突時に、その分子径衝突直径σsの分布範囲に縮小変化させ、市販されている多孔質素材、例えばゼオライトの使用可能性を高め、その結果、フロンガス類や各種産業ガス類等のガスの分離を行うことが可能となった。
上記したとおり、本発明はガスの温度を特定温度に制御することによって、ガスの分子が多孔質素材の細孔に衝突した際の分子直径を分子の有する速度に応じて弾性的に縮小変化する衝突直径σsの分布範囲、即ち、最低速度における分子直径(衝突直径σs(max))から最高速度における分子直径(衝突直径σs(min))までの分布範囲まで弾性的に変化させる。
そして、複数のガスを含有するガス体中の各ガスの分子直径を衝突直径の分布範囲まで縮小変化させ、ガス体中の分離対象である目的ガスと、その他のガスの衝突直径の分布範囲が重複しない特定温度において、特定温度に保持したガス体を、目的ガスを一定以上の純度で分離可能な特定の細孔径を有する多孔質素材からなる分離手段に供給することによって、分離手段を介してガス体から目的ガスを分離することによってガスを分離する。
また、複数のガスを含有するガス体中の各ガスの分子直径を衝突直径σsの分布範囲まで変化させ、ガス体中の分離対象である目的ガスと、その他のガスの衝突直径σsの分布範囲が重複しない特定温度において、目的ガス又はその他のガスのどちらか一方の衝突直径σsの分布範囲より大径の細孔を有し、かつ、他方の衝突直径σsの分布範囲より小径の細孔を有する多孔質素材を選択し、前記特定温度に保持したガス体を、前記多孔質素材からなる分離手段に供給することによって、分離手段を介してガス体から目的ガスを分離する。
なお、複数の多孔質素材及び/又は複数の特定温度から、細孔を通過可能な最大の衝突直径の速度の√2倍以下の速度を有する分子数から、前記速度の√2倍を超える速度を有する分子数を除いたガスの分子数が多い多孔質素材及び/又は特定温度を選択することによって、一旦細孔を通過した後、再び細孔から出ていくガスの分子の量を少なくすることができ、ガスの分離を効率的に行うことができる。
本発明が対象とするガス体を構成するガスには、特に限定はなく、製造業などで雰囲気ガスや原料ガスとして使用されている産業用ガス,フロンガス等の冷媒ガス,炭酸ガス等の環境ガス,ヘリウム等の希少ガス,水素などの燃料ガス等が対象となる。例えば、クロロフルオロカーボン(CFC)類,ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類,ハイドロフルオロカーボン(HFC)類,テトラフルオロメタン(CF4)を含むパーフルオロカーボン(PFC)類,六フッ化硫黄(SF6),ハロン類,四塩化炭素(CCl4 ),トリクロロエタン,メタン,臭化メチル,ヘリウム,窒素酸化物(NOx),二酸化炭素(CO2),硫黄酸化物(SOx),水素(H2),窒素(N2),酸素(O2),アルゴン(Ar)等であり、ガス体はこれらのガスから選択された1又は複数のガスを含んでいればよい。なお、ガス体は、ガス以外にゴミ,水分,油分などの不純物を含有していてもよい。具体的には、複数のガスが混合された回収フロンガスのガス体等である。
本発明における目的ガスとは、ガス体に含まれているガスであって、分離手段による分離対象となるガスをいい、分離手段を通過することによって、又は通過しないことによってガス体から分離されるガスをいう。なお、再使用を目指すガスであるか、再使用のために除去されるガスであるかは問わない。
本発明では、分離手段として多孔質素材を使用する。多孔質素材の細孔径そのものには特に限定はないが、分離対象としてのガスの分子径が概ね0.2nm〜2nmの範囲にあることから、必然的に0.2nm〜2nmの範囲の細孔径を有する多孔質素材を使用する。従来、多孔質素材からなる分離手段を使用して、0.3nm〜0.5nmの狭い範囲に分子径が密集して分布している冷媒ガス等の各種ガスを再使用可能な純度を維持して分離するためには、分離手段としての多孔質素材の細孔径を0.01nm〜0.03nm程度のオーダーで自在に選択することが求められるが、本発明では多孔質素材の細孔径に求められるオーダーを、0.01nmから0.1nmと1桁緩和させることができ、前記した0.2nm〜2nmの範囲の細孔径を有する多孔質素材の中から容易に選択することが可能である。本発明はガスの分子径を変化させることによって吸着剤として使用する多孔質素材の細孔径に求められるサイズのオーダーを緩和することも特徴の1つとしている。
多孔質素材としては、前記した条件を具備するものであれば特に限定はない。具体的には、ゼオライト,MOFを原料として形成された多孔質素材のように、均一な孔径の細孔を有する素材を使用することができる。なお、ゼオライトにはそれぞれ均一な孔径の細孔を複数有するものも存在するが、その最大の細孔径を使用すれば単一の細孔径を有するものと同様に使用することができる。
また、多孔質素材としては、細孔径の上限又は下限がガスの分子径の分布範囲である0.2nm〜2nmの範囲内にあれば、ガス分子の大きさに応じてガスの分子を分離する性質を有する分子ふるい炭素を原料として形成された多孔質素材のように一定の細孔分布を有するものであってもよい。即ち、多孔質素材は前記したものに限定されるわけではなく、細孔径の上限又は下限が0.2nm〜2nmの範囲内のものであれば、どのような素材であっても使用可能である。
この多孔質素材は、一例として、分離膜として提供される。分離膜とは、ガス分子の大きさを利用して、ガスを選択的に通過させることによって分離させる膜であり、分離膜を通過させること、又は通過させないことにより、ガス体を目的ガスとその他のガスに分離する膜である。
また、多孔質素材は、他例としては吸着剤として提供される。吸着剤とは、固体の内部に形成された細孔により、内部表面積を増加させ、細孔を通過したガス分子を細孔内に吸着させる素材であり、目的ガスのみを吸着剤の細孔を通過させて、吸着剤に吸着させることによって、又は目的ガスのみを吸着剤の細孔を通過させないことによって、ガス体から目的ガスを分離する素材である。
ガスの分子径を縮小変化させるための温度条件としては、ガス体に含まれるガスが変質しない温度範囲であればよく、具体的には−70℃〜300℃の温度範囲、より好ましくは−50℃〜150℃の温度範囲において制御することが適当である。前記したようにガスの分子径は粘性係数によって算出でき、又粘性係数は温度によって異なるため、分子径が温度のみを関数として求めること、即ち、温度条件によって分子径を一定範囲内において制御することを本発明の特徴の一つとしている。
目的ガスとその他のガスの分子径が重複しない範囲とは、文字通り目的ガスとその他のガスの分子径が同一ではない範囲をいう。本発明では前記重複しない範囲の中で、多孔質素材の細孔分布の上限が、目的ガス又はその他のガスの分子径のいずれか一方より小さい範囲を使用する。多孔質素材の細孔分布の上限より大きい分子径を有する目的ガス又はその他のガスは多孔質素材の細孔を通過できない。即ち、論理的には多孔質素材の細孔径よりもガスの分子径が小さい場合、そのガスは多孔質素材の細孔に取り込まれ、多孔質素材の細孔径よりガスの分子径が大きい場合、若しくは等しい場合は、そのガスは取り込まれない。例えば、多孔質素材として、ゼオライトTON(細孔径:0.46nm×0.57nm)を例に取ると、その短径0.46nmよりガスの分子径が小さい場合、そのガスはゼオライトTONの細孔に取り込まれ、短径0.46nmよりガスの分子径が大きい場合、若しくは等しい場合は、そのガスはゼオライトTONに取り込まれないこととなる。
よって、目的ガスとその他のガスの分子径が重複しない範囲は、目的ガスとその他のガスの分子径が僅かでも異なっていればよい。また、目的ガス及びその他のガスの分子径と多孔質素材の細孔径は、「目的ガスの分子径<多孔質素材の細孔径≦その他のガスの分子径」であれば、多孔質素材の細孔に目的ガスが取り込まれることとなる。
しかしながら、多孔質素材の細孔径とガスの分子径との差が0.01nm未満といった僅差な場合には、ガスの分子径が多孔質素材の細孔径より大きいと計算された場合でもそのガスが通過したり、又その逆に小さいと計算された場合でも通過しない場合が考えられる。これは、ガスの粘性係数の測定方法の違いや、測定誤差によりその分子径にも僅かな誤差が存在するためである。よって、このようにガスの分子径と多孔質素材の細孔径との差が僅差の場合は、分離試験を実施して温度条件や分離の可否を確認する必要があり、その結果に基づいて採否を決定することとなる。
そのため、好ましくは多孔質素材の細孔径とガスの分子径の離間距離はガスの種類にかかわらず、汎用的に分離可能であると考えられる0.01nm以上、より好ましくは0.03nm以上となるように多孔質素材や温度を選択することが望ましい。また、選択した多孔質素材、或いは選択可能な多孔質素材が複数存在する場合にも、目的ガスの分離を実施するための特定の多孔質素材を選択する。選択する多孔質素材は、多孔質素材の細孔を通過させるガスの最大分子径が、多孔質素材の細孔分布の上限以下となるものとする。多孔質素材の細孔径は、0.01nm以上離間している目的ガスとその他のガスの分子径の中間であること、そのために目的ガス及びその他のガスの分子径と0.005nm以上離間していることが適当である。なお、ガスの分離に用いる多孔質素材の細孔径は、温度によっては、変形したり、多孔質素材そのものが溶解することも考えられるが、上述した温度範囲において、その細孔径はガスの分離に影響を与えるほど変化しない(ただし、一部のMOFは除く)。
次に、HCFCのR22とHFCのR32の混合ガスを例として、本発明にかかるガス分離方法の実施例を説明する。先ず、ガス体にゴミ等の固形物や水分,油分などの不純物や汚染物を含有している場合、その他必要に応じてフィルター等を介して前処理工程を行い、不純物や汚染物をガス体から除去しておく。次に、ガス体の成分分析を行い、ガス体に含まれる目的ガスとその他のガスの種類を特定する。その結果、本実施例では、ガス体中に冷媒ガスであるR22,R32の2種類のガスが混合していることを特定した。
ガス体に含まれるガス(R22,R32)が変質しない温度範囲、本実施例では、−70℃〜300℃の範囲内の適当な温度範囲で必要とする温度範囲における一定の温度間隔における粘性係数を測定する。本実施例では、制御する特定温度が0℃のため、粘性係数への振動運動の影響を考慮する必要がないと思われるため、実測した粘性係数を使用した。よって、本実施例はR32とR22の混合ガスから用途に応じた純度で2つのガスを特定温度0℃で分離することである。
実測したR22及びR32の粘性係数は次の通りであった。
R32 :11.6μPa・s(0℃)
R22 :11.5μPa・s(0℃)
なお、実測に代えて、既に提供されている粘性係数のデータを使用してもよい。また、粘性係数は各ガスの粘性係数との相対的関係から定められる一定間隔で、複数の温度において求めることが好ましい。具体的には5℃〜20℃の間の一定間隔、例えば10℃間隔毎の粘性係数を求めるとよい。
R22,R32は多原子分子であるため、平均速度として音速を下記数13式を用いて計算する。
Figure 0006680611
そして、粘性係数と分子容から数4式を用いて基本直径σを計算するとともに、数5式を用いて、沸点からポテンシャルエネルギーの最下点のエネルギーεを計算する。その結果、R22及びR32の基本直径σ及びε並びに平均速度(音速)は次の通りである。
[R22]
基本直径σ =0.4500435053(nm)
ε =0.023027089(eV)
平均速度(音速)=187.13249(m/s)
[R32]
基本直径σ =0.397432713(nm)
ε =0.021939998(eV)
平均速度(音速)=241.266(m/s)
そして、粘性係数と平均速度から、特定温度(0℃)におけるガス体に含まれるガス(R22及びR32)の平均直径σaを数11式を用いて算出する。本実施例では、先ず平均速度における衝突直径σsである平均直径σaを用いて分離を行った。本来、本発明は一定の分布範囲を有する衝突直径σsを用いて分離を行うものであるが、平均直径σaも衝突直径σsの一種であるため、平均直径σaを用いたガスの分子の分離可否の判断によって精確な判断が可能であれば、平均直径σaを用いた判断であってもよい。R22及びR32の平均直径σaは次の通りである。
[R22]
平均直径σa =0.418689346(nm)
[R32]
平均直径σa =0.3686(nm)
次に、数14式を用いて、平均速度(音速)を中心として一定速度毎に、速度密度(F(v)を求める。R22及びR33は多原子分子であるため、数14式におけるαは数15式によって求まる。数15式において、Vsは平均速度として使用する音速を表す。なお、ガスの分子が1原子分子又は2原子分子の場合は、数14式におけるαは数16式によって求まる。
Figure 0006680611
Figure 0006680611
Figure 0006680611
前記した数14式において、速度vは未知数となるが、平均速度(音速)を中心として一定速度毎に任意の速度を代入して、各速度における速度密度を求める。表6はR22の音速187.13m/sを中心として、20m/s毎に速度密度を求めたものであり、図7はそのグラフである。また、表7はR32の音速241.266m/sを中心として、20m/s毎に速度密度を求めたものであり、図8はそのグラフである。
Figure 0006680611
Figure 0006680611
次に、基本直径σ,平均直径σa,εの数値を、前記した数2式に代入して、R22及びR32の平均直径σaの分子が持つトータルエネルギーを求める。上記計算の結果、R22のトータルエネルギーは0.077、R32のトータルエネルギーは0.079として求められた。
R22:U(r)=4ε{(σ/R)12−(σ/R)}=0.077
R32:U(r)=4ε{(σ/R)12−(σ/R)}=0.079
分子の速度を決定する並進運動エネルギー等は下記の数17式で求まるが、単位がJとなるから下記の数18式を用いてeVに変換する。
Figure 0006680611
Figure 0006680611
その結果、R22の平均速度(音速)における並進運動エネルギー等は下記の数19式に示すように、0.01569179eVとして求められる。更に、同様にして、平均速度(音速)+200m/sの速度を持つ分子の並進運動エネルギー等を求めると、0.067157325(eV)と求まる。
1/2m×(387.13)×6.24151×1018(eV)=0.067157325(eV)
平均速度(音速)と平均速度(音速)+200m/sとの速度を持つ分子のトータルエネルギーは、この並進運動エネルギー等の差分だけ異なるから、平均速度(音速)+200m/sの速度を持つ分子のトータルエネルギーは、0.128465535となる。
0.077+(0.067157325−0.01569179)=0.128465535
上記計算方法によって、R22及びR32の平均速度(音速)を中心として一定幅の速度における分子のトータルエネルギーを求める。表8は平均速度(音速)を中心としてR22の50m/sピッチのトータルエネルギーを求めたものであり、表9は同様にして平均速度(音速)を中心としてR32の50m/sピッチのトータルエネルギーを求めたものである。
Figure 0006680611
Figure 0006680611
そして、各速度における衝突直径σsを求める。先に例示した平均速度(音速)+200m/sの時の衝突直径は、レナード−ジョーンズ・ポテンシャルの数1式を下記の数19式に変形する。
Figure 0006680611
数19式における(σ/R)=Xとおけば、数19式は、下記の数20式となる。
Figure 0006680611
この数20式の2次方程式を解き正の値(A)を解として採用し、求めたい衝突直径σsは式中Rで表されているから、0.4087nmとなる。
R=衝突直径σs=0.4087nm
上記計算方法によって、R22及びR32の平均速度(音速)を中心として一定幅の速度における衝突直径σsを求める。表10は平均速度(音速)を中心としてR22及びR32の50m/sピッチの衝突直径σsを求めたものである。
Figure 0006680611
得られた衝突直径σsのデータに基づいて、速度の変化に伴う衝突直径σsの変化状況をグラフ化する。図9はR22の、図10はR32の衝突直径σsの変化状況を示すグラフである。表10及び図9から、R22の0℃の温度における衝突直径σsは、0.4087nm(音速+200m/s)〜0.4225nm(音速−150m/s)の範囲で分布しており、0.4087nmが図1における衝突直径σs(min)の値となり、0.4225nmが衝突直径σs(max)の値となる。R22の平均直径σaは、0.4187nmであるため、平均直径σaのみを基準として分離の可否を判断すると、分離手段として使用する多孔質素材の細孔径が、衝突直径σs(min)の0.4087nmより小径である場合、或いは衝突直径σs(max)の0.4225nmより大径の場合は精確に分離の可否を判断し、分離を行うことができる。しかしながら、細孔径が衝突直径σs(min)と衝突直径σs(max)の間に存在する場合は、平均直径σaを基準とする判断では精確な判断を行うことができない。
一方、表10及び図10から、R32の0℃の温度における衝突直径σsは、0.3620nm(音速+200m/s)〜0.3720nm(音速−200m/s)の範囲で分布しており、0.3620nmが図1における衝突直径σs(min)の値となり、0.3720nmが衝突直径σs(max)の値となる。R32の平均直径σaは、0.3686nmであって、衝突直径σs(min)の0.3620nm及び衝突直径σs(max)の0.3720nmとの差分が極めて小さいため、結果として平均直径σaを基準として分離の可否を精確に判断することが可能と判断できる。
本発明は、分離の可否の判断基準として、衝突直径σs(max)と衝突直径σs(min)の双方を使用すること、即ち、特定温度において、ガスの分子が弾性的に縮小変化する範囲を、ガスの分子速度に対応して一定の分布範囲を有するものと捉えたことに特徴を有する。
図9,図10に示す結果から、市販されている0.41nm×0.41nmの細孔径を有するゼオライトLTAを使用した場合のR22及びR32の分離の可否を判断すると、R32はどの速度域においても衝突直径σsはゼオライトの細孔0.41nmより小さいため、その細孔を通過することができる。一方、R22は速度370m/s以上の速度では衝突直径σsが0.41nmより小さく弾性変形するため、ゼオライトLTAを分離手段とする場合は、1度の作業ではR22及びR32を完全分離することができないことが判る。微量ではあるが、R22も細孔を通過することとなるためである。
上記した本発明に基づく判断及び分離状況を確認するため、本実施例で細孔径0.41nmのゼオライトLTAの細孔を通過して吸着されたガスを加熱脱着し、その脱着ガスをガスクロマトグラフィー (Gas Chromatography, GC) によって分析し、その結果を図11に示す。図11に示すように、R32のピークとともに、常時R22のピークが微量ではあるが検出されている。図11において、縦軸数値が1500以上で等間隔で見られるピークが全てR32であり、それ以外の小さなピークがR22を示す。このことからも、衝突直径σs(max)及び衝突直径σs(min)によって分離の可否を判断する本発明のガスの分子径の制御方法及びガスの分離方法が精確であることが実証されている。
次に、本実施例によるR32の純度を概算してみると、R22を100ml/min流すとすると、0.41nmの細孔径を有するゼオライトLTAの細孔を通過して吸着される部分のR22の面積は、100m/sの幅で密度0.0005であるから、その面積は3角形近似として次の通りとなる。
R22の細孔を通過する面積:100×0.0005×1/2=0.025
全体の面積は、高さ:0.0052,速度幅:450m/sであるから全面積は三角形近似して次の通りとなる。
全体の面積:450×0.0052×1/2=1.17
よってR22の吸着量は、次の通りである。
吸着量:100×0.025/1.17=2.137
R32も同量流すとすれば脱着時のR32の純度は、次の計算によって求められ、ゼオライトLTAの細孔を通過し、細孔を通過できないR22と1度の分離操作で分離されて吸着されるR32の純度は97.9%である。
R32の純度:1−2.137/(100+2.137)=97.9%
よって、この純度97.9%以上で使用可能な用途であれば、1度の分離操作で再使用可能であるし、この純度以上が必要なら、本実施例における運転温度0℃から温度を変えて同様の試算を繰り返すことで最適条件を見つけることが可能となる。
図12はR22とR32の速度密度分布を示すグラフであり、R22がゼオライトLTAの0.41nmの細孔径を有する細孔を通過するために必要とする370m/s以上の速度を有する分子数は極めて少ないことが判る。そのため、ガスの濃度によっては、分離処理をしたガスを再度、分離・脱着処理を行えば目的とする高純度のR32ガスが得られる。
例えば、1度の分離操作で得られた分離ガスを全く同じ条件で再度同じ工程で分離すると、分離ガスに2.137%のR22ガスが混合していることになるが、速度密度分布は分離処理前と同じであるから流量200ml/min流すとすると全体のR22の吸着量は、次のとおりである。
200×0.02137×0.025/1.17=0.0913ml/min
よって、2度目の分離操作を行ったR32の純度は、99.954%である。
1−0.0913/200=0.99954
特定温度を20℃とした以外は、実施例1と同一の条件で、R22及びR32の分離を行った。実施例1と同様の手順で、R22及びR32の20℃における衝突直径σs(max)と衝突直径σs(min)を求めるとともに、各速度における衝突直径σsを図13(R22)、図14(R32)に示すようにグラフ化した。
[R22]
衝突直径σs(max)=0.4128506(nm)
衝突直径σs(min)=0.4021751(nm)
[R32]
衝突直径σs(max)=0.3643(nm)
衝突直径σs(min)=0.3565(nm)
実施例1と同様に、0.41nm×0.41nmの細孔径を有するゼオライトLTAを使用して分離を行うと、R32の衝突直径σsはどの速度域においても衝突直径σsはゼオライトの細孔0.41nmより小さいため、その細孔を通過することができることは同じである。一方、R22は、特定温度が20℃の実施例2では速度180m/s付近以上の速度では衝突直径σsが0.41nmより小さく弾性変形するため、細孔を通過可能となり、特定温度が0℃の実施例1に比較して通過量が増大することとなり、この実施例2におけるR32の純度を計算すると、82.64%程度となる。
上記した本発明に基づく判断及び分離状況を確認するため、本実施例で細孔径0.41nmのゼオライトLTAの細孔を通過して吸着されたガスを加熱脱着し、その脱着ガスをガスクロマトグラフィー によって分析し、その結果を図15に示す。図15に示すように、R32のピークとともに、常時R22のピークが図11に示す実施例1より高く記録されており、R32の概略の純度は前記した82.64%に近い値と考えられる。
分離対象をR32とR125の混合ガスに代えた以外は実施例1と同一条件で分離を行った。実施例1に示す手段によって、R125の衝突直径σsの分布は図16に示す通りであり、衝突直径σs(min)も、使用するゼオライトの細孔径0.41nmよりも大きく、全ての分子が細孔内に入ることができない。一方、R32は実施例1に示すように、全ての分子が0.41nmの細孔を通過する。このため、実施例3では、特定温度0℃において、R32とR125を1度で完全に分離することができる。
実施例3の分離状況を確認するため、細孔径0.41nmのゼオライトLTAの細孔を通過して吸着されたガスを加熱脱着し、その脱着ガスをガスクロマトグラフィー によって分析し、その結果を図17に示す。図に示すように、R32のみのピークしか検出されておらず、R125が完全に分離されたことが判る。
R22の代替冷媒として、HFCのR32,R125,R134aの3種類の混合ガス(R407C)が市販されている。3種類のガスの混合比は、順に23%,25%,52%である。実施例4として、このR407Cの温度を0℃に制御することによって、実施例1と同様に、0.41nm×0.41nmの細孔径を有するゼオライトLTAを使用してR32のみを吸着分離した。使用したR407Cをガスクロマトグラフィーによって分析し、その結果を図19に示す。図19に示すように、R32,R125,R134aのピークが検出されている。
実施例1と同様の手順で、R32,R125,R134aの0℃における衝突直径σs(max)と衝突直径σs(min)を求めるとともに、各速度における衝突直径σsを図18に示すようにグラフ化した。
[R32]
衝突直径σs(max)=0.3720(nm)
衝突直径σs(min)=0.3620(nm)
[R125]
衝突直径σs(max)=0.45097(nm)
衝突直径σs(min)=0.4388(nm)
[R134a]
衝突直径σs(max)=0.4589(nm)
衝突直径σs(min)=0.4419(nm)
実施例1と同様に、0.41nm×0.41nmの細孔径を有するゼオライトLTAを使用して分離を行うと、R32はどの速度域においても衝突直径σsはゼオライトの細孔0.41nmより小さいため、その細孔を通過することができることは同じである。一方、R125とR134aは、どの速度域においても衝突直径σsはゼオライトの細孔0.41nmより大きいため、その細孔を通過することができない。その結果、ゼオライトにはR32のみが純度100%で吸着されて分離される。このことを確認するため、R407CからR32を分離吸着したゼオライトを160℃に保持して脱着処理を行い、得られた脱着ガスをガスクロマトグラフィーで分析したところ、図20に示すようにR32のピークのみが検出された。よって、R407CからR32のみを純度100%で分離することができた。なお、脱着ガスの当初において、僅かにR125及びR134aのピークが検出されているが、これはゼオライトの表面に吸着したR125及びR134aが脱着したものである。よって、この表面吸着を考慮し、脱着したガスR32の再利用に際しては、脱着当初のガスは一定時間だけ除去しておく必要がある。
実施例5として、実施例1と同様に、0.41nm×0.41nmの細孔径を有するゼオライトLTAを使用して、R125の温度を100℃に制御して吸着を行うとともに、比較例として制御温度を50℃として吸着実験を行った。この比較例としての50℃におけるR125の吸着実験が本発明において、平均直径σaを得るために使用する粘性係数を実測粘性係数から、一定温度以上は補正粘性係数に補正する必要があるとの知見を得た端緒となったものである。
50℃における実測粘性係数(16.5μPa・s:表3)と、50℃における補正粘性係数(14.01μPa・s:表4)に基づいて、それぞれ計算した平均直径σa及び衝突直径σsはそれぞれ次の通りである。
[50℃における実測粘性係数に基づく値]
実測粘性係数 =16.5μPa・s(表3)
平均直径σa =0.396nm(表5)
衝突直径σs(max)=0.3952nm
衝突直径σs(min)=0.3929nm
[50℃における補正粘性係数に基づく値]
補正粘性係数 =14.01μPa・s(表4)
平均直径σa =0.429nm(表5)
衝突直径σs(max)=0.4299nm
衝突直径σs(min)=0.4229nm
50℃における補正前の実測粘性係数に基づく衝突直径σs(max)〜衝突直径σs(min)及び50℃における補正後の補正粘性係数に基づく衝突直径σs(max)〜衝突直径σs(min)を図21にグラフとして示す。同グラフから判るように、実測粘性係数に基づく衝突直径σs(max)〜衝突直径σs(min)の値は、0.3952nm〜0.3929nmであって、衝突直径σsの全ての数値がゼオライトLTAの細孔径0.41nmより小さいため、細孔を通過して吸着されるはずであるが、実際には全く吸着されなかった。
図23は、特定温度として50℃に制御した状態でゼオライトLTAからなる吸着剤にR125を供給した場合の吸着状況を示すグラフであるが、同図に示すように流入させたR125の流入量と吐出されるR125の吐出量が同一であり、全くゼオライトLTAに吸着されていないことが判る。このことを確認するために、流入量を2度に亘って変化させてみたが全く同様の結果であった。この比較例の実験結果を含んだ種々の実験の結果、平均直径σaを算出するために使用する実測した粘性係数は、実測した粘性係数が加速度的に増加する10℃〜20℃付近以上の数値は使用できないことを知見し、前記した補正粘性係数を得るようにした。
50℃における補正後の補正粘性係数に基づく衝突直径σs(max)〜衝突直径σs(min)の値は、0.4299nm〜0.4229nmであって、衝突直径σsの全ての数値がゼオライトLTAの細孔径0.41nmより大きいため、細孔を通過することができず吸着されない。この結果は、図23に示す実際の実験結果とよく整合する。
そこで、100℃における補正粘性係数に基づく平均直径σa及び平均直径σa,衝突直径σs(min)の値を求めると次の通りである。
[100℃における補正粘性係数に基づく値]
補正粘性係数 =16.20μPa・s(表4)
平均直径σa =0.414nm(表5)
衝突直径σs(max)=0.4121nm
衝突直径σs(min)=0.4079nm
特定温度として100℃に制御した場合であっても、平均直径σaは0.414nmであって、ゼオライトLTAの0.41nmより大きいため、細孔を通過することができない。そのため、平均直径σaで通過の可否を判断する場合には、通過できない、即ち吸着できないとの結論となる。しかしながら、速度400m/sを超える当たりから、衝突直径σsの値は0.41nmより小さくなっている。事実、最大速度における衝突直径σs(min)の数値は0.4079nmであって、0.41nmよりも小さい。よって、特定温度として100℃に制御することによって、時間当たりの吸着量を別とすれば、R125をゼオライトLTAに吸着させることができる。
図24は、特定温度として100℃に制御した状態でゼオライトLTAからなる吸着剤にR125を供給した場合の吸着状況を示すグラフであるが、同図に示すように流入させたR125の流入量に対して、吐出されるR125の吐出量が明りょうに減少していることが判る。この減少分がゼオライトLTAに吸着されてたR125の量である。このことを確認するために、流入量を2度に亘って変化させてみたが全く同様の結果であった。この実施例5の実験結果を含めた種々の実験の結果、特定温度に温度を制御することによって、一定の分布範囲を有する衝突直径σs(max)〜衝突直径σs(min)にガスの分子径を縮小変化させ、かつ、この衝突直径σs(max)〜衝突直径σs(min)を基準としてガスの分離を行うことにより、精確なガスの分離を行うことができる。なお、補正粘性係数を使用するか実測粘性係数をそのまま使用するかは、制御する温度や多孔質素材,ガスの種類を総合的に勘案して判断すればよい。肝要なことは、特定温度における衝突直径σsの分布範囲(衝突直径σs(min)〜衝突直径σs(max))をガスの分離可否を判断する基準として使用することである。
以上記載した本発明によれば、ガス体の温度を特定温度に制御することによって、ガス体を構成する各ガスの分子は特定温度の持つ熱エネルギーによってポテンシャルエネルギーを得て、ポテンシャルエネルギーが運動エネルギーに変換されることによって、速度を与えられる。この速度は各ガスの分子毎に異なるため、特定の速度で多孔質素材の細孔に衝突した際の各ガスの分子直径は、各ガスの分子の速度が分子毎に異なることに起因して、分子毎に縮小変化する最小の分子直径の上限値から下限値の分布範囲である衝突直径の分布範囲に縮小変化することとなる。
本発明は、従来、分子容から求められた値であって変化することのない固定値として認識されていたガスの分子径を、固定値から前記した衝突直径の分布範囲に弾性的に縮小変化させ、特定温度に保持したガス体を、目的ガスと、その他のガスの衝突直径の分布範囲を基準として選択した多孔質素材、例えば目的ガス又はその他のガスのどちらか一方の衝突直径の分布範囲より大径であって、かつ、他方の衝突直径の分布範囲より小径の細孔径を有する多孔質素材からなる分離手段に供給し、目的ガスを多孔質素材の細孔を通過させ、又は通過させないことによって、ガス体から目的ガスを分離することができる。
その結果、回収ガスやその他のガス体に含まれる各ガスの分子径を衝突直径の分布範囲に縮小変化させて、ガス体から、使用可能な用途に応じた純度を維持した状態で目的ガスを分離することが可能となる。よって、従来では処理できなかったガスを既存の多孔質素材を使用して用途に応じて的確に処理できるため、混合ガスの分離や不要なガスの除去、必要なガスの選択的な分離・再利用、ガスを多孔質素材に吸着させることによるガス貯蔵の効率化等が可能となる。
また、ガス体を構成する各ガスの分子径を速度に応じた衝突直径の分布範囲に縮小変化させることによって、ガスの分離手段として使用可能な多孔質素材の選択基準を緩和することができる。具体的には再使用を可能とする純度の高いガスの分離のためには、分離手段として、0.01nm〜0.03nm程度のオーダーの多孔質素材が必要であるところ、そのオーダーを1桁緩和して0.2nm〜2nmの範囲の細孔径を有する既存の多孔質素材を使用可能とすることができる。そのため、人工的に製造された高価な合成ゼオライトよりも安価に得られるものの種類が僅かであるため、分離手段として使用することが困難であった天然のゼオライトを分離手段として使用する途を開くことができる。
また、ガス体の温度条件を制御することによって、ガス体を構成する各ガスの分子径を衝突直径の分布範囲まで弾性的に縮小変化させること、及びその変化幅を精確に把握することが可能となるため、分離作業のハンドリングがよく、ガスの用途に応じて再使用を前提としたそれぞれのガスの用途に応じた純度を維持することが可能なガスの分離を実用レベルで実現することができる。しかも、目的ガスが分離手段を通過する方法によっても、又は通過しない方法によっても分離することができる。
また、分離手段としての多孔質素材に特に限定はなく、ゼオライトのように均一な細孔径を有する素材はもちろん、細孔径が一定の分布範囲を有する素材であっても、ガス体中の分離対象である目的ガスと、その他のガスの分子径が重複しない温度条件において、ガス体中の目的ガス又はその他のガスのどちらか一方の分子径より大径の細孔を有し、かつ、他方の分子径より小径の細孔を有すれば使用可能である。そのため、使用する多孔質素材の選択が容易であるとともに、その幅が広がるため、最適の多孔質素材を選択することが容易である。よって、本発明によれば、複数の多孔質素材を使用して、複数種類のガスや不純物を含有したガス体から目的ガスを再使用可能な純度を維持して分離することができる。
多孔質素材を吸着剤として使用し、本発明によって温度を制御してガスの分子径を弾性的に縮小変化させることによって、従来吸着できなかったガスを吸着可能とし、かつ、貯蔵する際にも温度を制御することによってガスの分子径を大きくすることで脱着を抑制することが可能となるため、多孔質素材をガスの貯蔵に使用することが可能となる。また、多孔質素材を分離膜として使用することにより、吸着・脱着を介さず、多孔質素材の細孔をガスが通過することだけで分離が可能となる。多孔質素材からなる分離膜は製造が困難なことから、限られた多孔質素材しか用いられておらず、適用可能なガスの種類が限られていたが、本発明によって適用可能なガスの範囲を広げることができる。
σ…基本直径
σa…平均直径
σs…衝突直径
σs(max)…衝突直径の最大寸法
σs(min)…衝突直径の最小寸法

Claims (11)

  1. 分離対象としての目的ガスを含む複数のガスを含有するガス体を多孔質素材からなる分離手段に供給し、目的ガスを多孔質素材の細孔を通過させ、又は通過させないことによって、ガス体から目的ガスを分離するガスの分離方法であって、
    ガスの温度を特定温度に制御することによって、ガスが多孔質素材の細孔に衝突した際のガス体を構成する各ガスの分子直径を衝突直径の分布範囲縮小変化させ、
    特定温度に保持したガス体を、目的ガスと、その他のガスの衝突直径の分布範囲を基準として選択した多孔質素材からなる分離手段に供給することを特徴とするガスの分離方法
    (なお衝突直径とは、特定温度において、ガス体を構成する各ガスの分子の速度が分子毎に異なることに起因して、特定の速度で多孔質素材の細孔に衝突したガスの分子が分子毎に縮小変化する最小の分子直径をいい、衝突直径の分布範囲とは、ガス体を構成する各ガスの特定温度における衝突直径の上限値から下限値の範囲をいう)。
  2. 衝突直径の上限値から下限値の範囲は、特定温度におけるガス体を構成する各ガスの分子の最低速度の衝突直径から最高速度の衝突直径までの範囲である請求項1記載のガスの分離方法
  3. ガスの温度を、ガスが変質しない温度範囲で制御する請求項1又は記載のガスの分離方法
  4. ガスの温度を、−70℃〜300℃の温度範囲において制御する請求項1,2又は記載のガスの分離方法
  5. 多孔質素材として、目的ガス又はその他のガスのどちらか一方の衝突直径の分布範囲より大径であって、かつ、他方の衝突直径の分布範囲より小径の細孔を有する多孔質素材を選択する請求項1,2,3又は4記載のガスの分離方法。
  6. 細孔径が均一サイズに特定された多孔質素材を使用する請求項1,2,3,4又は記載のガスの分離方法。
  7. 細孔径が一定範囲に分布し、該細孔径の分布の上限が、目的ガス又はその他のガスのどちらか一方の衝突直径の分布範囲より大径であって、かつ、他方の衝突直径の分布範囲より小径である多孔質素材を使用する請求項1,2,3,4又は記載のガスの分離方法。
  8. 多孔質素材の原料がゼオライト,金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks),又は分子ふるい炭素を原料として形成された請求項1,2,3,4,5,6又は記載のガスの分離方法。
  9. ガス体が、クロロフルオロカーボン(CFC)類,ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類,ハイドロフルオロカーボン(HFC)類,テトラフルオロメタン(CF)を含むパーフルオロカーボン(PFC)類,六フッ化硫黄(SF),ハロン類,四塩化炭素(CCl ),トリクロロエタン,メタン,臭化メチル,ヘリウム,窒素酸化物(NOx),二酸化炭素(CO),硫黄酸化物(SOx),水素(H),窒素(N),酸素(O),アルゴン(Ar)から選択された1又は複数のガスを含んでいる請求項1,2,3,4,5,6,7又は記載のガスの分離方法。
  10. 分離手段が多孔質素材の分離膜からなる請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は記載のガスの分離方法。
  11. 分離手段が多孔質素材の吸着剤からなる請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は記載のガスの分離方法。
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