JP6678931B2 - 動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤 - Google Patents
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Description
(1)
以下の(a)、(b)及び(c)からなる群から選択された、アミノ基及びカルボキシル基を同一分子中に有する両性高分子化合物を含む、動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤:
(a) ε−ポリ−L−リジンをブチル無水コハク酸と反応させてカルボキシル化した両性高分子化合物;
(b) ε−ポリ−L−リジンを、ブチル無水コハク酸及び無水コハク酸と反応させてカルボキシル化した両性高分子化合物; 又は
(c) ε−ポリ−L−リジンを、次の式I:
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はC1〜C4のアルキル基であるか、あるいはR1及びR2が一体となって形成されたC1〜C6のアルカン−ジイル基であり;
R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又はC1〜C4のアルキル基であるか、あるいはR3及びR4が一体となって形成されたC1〜C6のアルカン−ジイル基であり;
R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子又はC1〜C4のアルキル基であるか、あるいはR5及びR6が一体となって形成されたC1〜C6のアルカン−ジイル基である)
で表される化合物と反応させてカルボキシル化した両性高分子化合物。
(2)
式Iで表される化合物が、次の式II:
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はC1〜C4のアルキル基であるか、あるいはR1及びR2が一体となって形成されたC1〜C6のアルカン−ジイル基である)
で表される化合物である、(1)に記載の動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤。
(3)
両性高分子化合物において、ε−ポリ−L−リジンの側鎖のアミノ基のうち、カルボキシル化されたアミノ基の割合が、50%〜75%の範囲にある、(1)又は(2)に記載の動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤。
(4)
ε−ポリ−L−リジンを、ブチル無水コハク酸及び無水コハク酸と反応させてカルボキシル化した両性高分子化合物が、
ε−ポリ−L−リジンの側鎖のアミノ基のうち、無水コハク酸との反応によってカルボキシル化されたアミノ基の数Aに対する、
ε−ポリ−L−リジンの側鎖のアミノ基のうち、ブチル無水コハク酸との反応によってカルボキシル化されたアミノ基の数Bの比率B/Aが、
2/30〜40/30の範囲にある、(1)〜(3)のいずれかに記載の動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤。
(5)
(1)〜(4)のいずれかに記載された動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤を含有する生理溶液からなる、動物細胞凍結保存液。
(6)
(1)〜(4)のいずれかに記載された動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤を、2〜40重量%で含有し、
エチレングリコール又はプロピレングリコールを、3〜8Mの濃度で含有する、生理溶液からなる、動物細胞凍結保存液。
(7)
さらに、スクロースを、0.1〜1Mの濃度で含有する、(6)に記載の動物細胞凍結保存液。
(8)
動物細胞凍結保存液が、動物細胞ガラス化状態凍結保存液である、(5)〜(7)のいずれかに記載の動物細胞凍結保存液。
(9)
(5)〜(8)のいずれかに記載の動物細胞凍結保存液中へ、動物細胞を浸漬する工程、
動物細胞凍結保存液中の動物細胞を、降温して凍結する工程、
を含む、動物細胞凍結保存方法。
(10)
動物細胞を、降温して凍結する工程の後に、
凍結した、動物細胞凍結保存液中の動物細胞を、昇温して解凍する工程、
を含む、(9)に記載の動物細胞凍結保存方法。
(11)
動物細胞を、降温して凍結する工程が、
動物細胞を、降温してガラス化状態で凍結する工程、である、(9)〜(10)のいずれかに記載の動物細胞凍結保存方法。
(12)
動物細胞を、昇温して解凍する工程が、
動物細胞を、昇温して再結晶化することなく解凍する工程、である、(10)〜(11)のいずれかに記載の動物細胞凍結保存方法。
(13)
降温して凍結する工程が、
降温速度5℃/分〜50℃/分で降温して凍結する工程、である、(9)〜(12)のいずれかに記載の動物細胞凍結保存方法。
(14)
昇温して解凍する工程が、
昇温速度5℃/分〜100℃/分で昇温して解凍する工程、である、(10)〜(13)のいずれかに記載の動物細胞凍結保存方法。
本発明の動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤は、以下の(a)、(b)及び(c)からなる群から選択された、アミノ基及びカルボキシル基を同一分子中に有する両性高分子化合物を含む、動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤にある:
(a) ε−ポリ−L−リジンをブチル無水コハク酸と反応させてカルボキシル化した両性高分子化合物;
(b) ε−ポリ−L−リジンを、ブチル無水コハク酸及び無水コハク酸と反応させてカルボキシル化した両性高分子化合物; 又は
(c) ε−ポリ−L−リジンを、次の式I:
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はC1〜C4のアルキル基であるか、あるいはR1及びR2が一体となって形成されたC1〜C6のアルカン−ジイル基であり;
R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又はC1〜C4のアルキル基であるか、あるいはR3及びR4が一体となって形成されたC1〜C6のアルカン−ジイル基であり;
R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子又はC1〜C4のアルキル基であるか、あるいはR5及びR6が一体となって形成されたC1〜C6のアルカン−ジイル基である)
で表される化合物と反応させてカルボキシル化した両性高分子化合物。
ε−ポリ−L−リジンは、公知のε−ポリ−L−リジンを使用することができる。ε−ポリ−L−リジンは、例えば分子量が100〜100,000であり、好適な実施の態様において、微生物または酵素により生産される数平均分子量が例えば1000〜2万、1000〜1万のε−ポリ−L−リジンを使用することができる。ε−ポリ−L−リジンは、ストレプトマイセス属(Streptomyces)に属する放線菌により生産されてもっぱら食品添加物として用いられており、重合度15〜35のものの他、重合度が20以下のものの生産も試みられている。数平均分子量または数平均重合度の測定は、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)法により、例えば、アトー(株)製の電気泳動装置及びデンシトグラフ(AE−6920V型)を用いて容易に測定することができる。加熱処理による高分子量化により分子量3万以上として用いることもできる。末端のみにフリーのカルボキシル基を有するポリリジンは、側鎖に1級アミノ基を有しており、このアミノ基が、後述する反応によってカルボキシル化される。
アミノ基及びカルボキシル基を同一分子中に有する両性高分子化合物は、ε−ポリ−L−リジンの側鎖のアミノ基のうち、カルボキシル化されたアミノ基の割合を、例えば50%〜75%、60%〜70%の範囲とすることができる。
ブチル無水コハク酸(BSA)は、実施例に記載の化学反応式の通り、ε−ポリ−L−リジン(PLL)の側鎖のアミノ基と反応して、カルボキシル化した両性高分子化合物(BSA−PLL)を生成し、これはアミノ基及びカルボキシル基を同一分子中に有する両性高分子化合物であり、本発明の動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤である。
ε−ポリ−L−リジン(PLL)の側鎖のアミノ基が、ブチル無水コハク酸(BSA)及び無水コハク酸(SA)と反応して、カルボキシル化した両性高分子化合物(BSA−SA−PLL)は、アミノ基及びカルボキシル基を同一分子中に有する両性高分子化合物であり、本発明の動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤である。ε−ポリ−L−リジンとの反応は、ブチル無水コハク酸及び無水コハク酸を、同時に反応させてもよく、前後して反応させてもよく、いずれを前又は後に反応させてもよい。ε−ポリ−L−リジンの側鎖のアミノ基のうち、無水コハク酸との反応によってカルボキシル化されたアミノ基の数Aに対する、ε−ポリ−L−リジンの側鎖のアミノ基のうち、ブチル無水コハク酸との反応によってカルボキシル化されたアミノ基の数Bの比率B/Aを、例えば、2/30〜40/30の範囲、10/30〜40/30の範囲、30/40〜40/30の範囲とすることができる。
次の式Iで表されるGA誘導体(グルタル酸無水物誘導体)は、ε−ポリ−L−リジンの側鎖のアミノ基と反応して、カルボキシル化した両性高分子化合物(GA−PLL)を生成し、これはアミノ基及びカルボキシル基を同一分子中に有する両性高分子化合物であり、本発明の動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤である。
好適な実施の態様において、3,3−ジメチルグルタル酸無水物(DMGA)が、ε−ポリ−L−リジンの側鎖のアミノ基と反応して、カルボキシル化した両性高分子化合物(DMGA−PLL)を得ることができる。
本発明の動物細胞凍結保存液は、上記動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤を含有する生理溶液である。生理溶液としては、特に制限はなく、例えば、公知の組成の生理食塩水、PBS、細胞培養培地等をあげることができる。動物細胞凍結保存液に含有される動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤は、例えば2〜40重量%、3〜30重量%、5〜20重量%とすることができる。あるいは、両性高分子の分子量が2000〜20000の場合に、例えば1〜100mM、5〜50mM、10〜30mMの濃度とすることができる。
好適な実施の態様において、動物細胞凍結保存液には、スクロースが、含有される。スクロースの含有量は、例えば0.1〜1M、0.3〜0.6Mの範囲とすることができる。
好適な実施の態様において、動物細胞凍結保存液には、エチレングリコール(EG)又はプロピレングリコール(PG)が含有され、好ましくはエチレングリコールが含有される。エチレングリコール等は、動物細胞凍結保存液において有効な成分であるが、その含有量は細胞毒性の観点から少ないほうが好ましい。本発明によれば、この含有量を低減しつつ、十分に優れたガラス化能を実現することができるために、エチレングリコール濃度を、例えば3〜8M、4〜7M、4.5〜7M、5〜7M、4M以上、4.5M以上などの範囲から選択して使用することができる。
本発明の動物細胞凍結保存方法は、動物細胞凍結保存液中へ、動物細胞を浸漬する工程、動物細胞凍結保存液中の動物細胞を、降温して凍結する工程、を含む方法によって実施することができる。
動物細胞の損傷を防ぐためには、降温して凍結する際に、凍結保存液に結晶化が生じることなく、ガラス化状態(アモルフォス状態)を維持したままで、凍結できることが好ましい。降温速度を大きくすれば結晶化が生じにくくなるが、降温速度の増大には、細胞の取り扱いについての制約の増大が伴うために、熱容量が大きく熱伝導が不均一な三次元細胞構造体、組織、臓器等では、降温速度の増大によるひび割れ、クラックの形成などによる組織の破壊などのため、困難な選択肢となる。本発明によれば、例えば5℃/分〜50℃/分、10℃/分〜30℃/分の範囲の降温速度から選択して、結晶化を生じることなく、ガラス化状態で凍結することができる。結晶化の発生の有無は、実施例に示すDSC測定によって、検出することができる。
動物細胞をいったんガラス化状態で凍結しても、昇温して解凍する際に、ガラス化状態が破れて、凍結保存液の再結晶化が生じてしまうことがあり、動物細胞の凍結保存による損傷を防ぐためには、この再結晶化を防いで、解凍できることが好ましい。昇温速度を大きくすれば再結晶化が生じにくくなるが、昇温速度の増大には、降温速度と同様に、細胞の取り扱いについての制約の増大が伴うために、熱容量が大きく熱伝導が不均一な三次元細胞構造体、組織、臓器等では、昇温速度の増大によるひび割れ、クラックの形成などによる組織の破壊などのため、困難な選択肢となる。本発明によれば、例えば5℃/分〜100℃/分、5℃/分〜50℃/分、10℃/分〜50℃/分の範囲の昇温速度から選択して、再結晶化を生じることなく、ガラス化状態を維持して解凍することができる。再結晶化の発生の有無は、実施例に示すDSC測定によって、検出することができる。
本発明におけるガラス化能とは、ガラス状態を維持して結晶化を防ぐ能力であり、例えば、降温時に結晶化を防ぐ能力、あるいは昇温時に再結晶化を防ぐ能力のいずれであってもよく、両方であってもよい。降温時又は昇温時のいずれかにおける能力が優れていれば、優れたガラス化能を有することとなる。優れたガラス化能を備えた動物細胞凍結保存液を使用すれば、熱容量が大きく熱伝導が不均一な三次元細胞構造体、組織、臓器等に対しても、良好な凍結保存を可能とするので、本発明の動物細胞凍結保存液は、三次元細胞構造体、組織、臓器等の形態の動物細胞に対する使用に好適なものである。そのために、本発明の動物細胞凍結保存液によれば、動物細胞を高い生存率で、凍結することができ、保存することができ、解凍することができる。
無水コハク酸(SA、東京化成)を、εポリLリジン(25%水溶液、JNC、平均分子量4000)のアミノ基に対して、15〜50mol%(あるいは15〜65mol%)となるように添加し、50℃で1時間反応させ、カルボキシル化ポリリジン(COOH−PLL)を作成した。なお、出発材料であるεポリLリジン(PLL)の量に換算して10重量%の濃度で使用した場合に、PLLの平均分子量4000の値から25mMに相当するので、例えば、COOH−PLLの濃度の表記としてPLL換算10重量%となる場合には、以下では25mMと表記することがある。このカルボキシル化ポリリジンは、以下において、SA−PLL、又はCOOH−PLLと記載することがある。特に記載がない場合には、COOH−PLLのカルボキシル基導入量はεポリLリジンの側鎖のアミノ基に対して65%であり、これをPLL(0.65)又はSA(65)−PLLと記載することがある。このCOOH−PLLの合成の反応式を、以下に示す。
ブチル無水コハク酸(BSA、東京化成)を、εポリLリジン(25%水溶液、JNC、平均分子量4000)のアミノ基に対して、15〜50mol%(あるいは15〜65mol%)となるように添加し、50℃で1時間反応させ、ブチルカルボキシル化ポリリジン(BSA−PLL)を作成した。なお、出発材料であるεポリLリジン(PLL)の量に換算して10重量%の濃度で使用した場合に、PLLの平均分子量4000の値から25mMに相当するので、例えば、BSA−PLLの濃度の表記としてPLL換算10重量%となる場合には、以下では25mMと表記することがある。このBSA−PLLの合成の反応式を、以下に示す。上段が反応物、下段が生成物である。
εポリLリジン(25%水溶液、JNC、平均分子量4000)のアミノ基に対して、上記ブチル無水コハク酸によるブチル化に加えて、上記無水コハク酸(SA)によるカルボキシル化を行って、ブチルカルボキシル化−カルボキシル化−ポリリジン(BSA−SA−PLL)を作成した。後述する略号中のカッコ内の数字は、ポリリジンのアミノ基に対するそれぞれのカルボキシル基の導入率を示す。例えばBSA(35)−SA(30)−PLLは、ポリリジンのアミノ基のうち、35%をBSAと反応させ、30%をSAと反応させた両性電解質ポリマーを示す。トータルのカルボキシル基導入量を65%とした。他にBSA(15)−SA(50)−PLL、BSA(50)−SA(15)−PLLも合成した。なお、単にBSA−PLLと表記した場合には、50%をBSA−PLLとのみ置換したBSA(50)−PLLであり、SAと反応させていないものである。なお、出発材料であるεポリLリジン(PLL)の量に換算して10重量%の濃度で使用した場合に、PLLの平均分子量4000の値から25mMに相当するので、例えば、BSA−SA−PLLの濃度の表記としてPLL換算10重量%となる場合には、以下では25mMと表記することがある。
3,3−ジメチルグルタル酸無水物(DMGA、シグマアルドリッチ)を、εポリLリジン(25%水溶液、JNC、平均分子量4000)のアミノ基に対して、15−50mol%(あるいは15−65mol%)となるように添加し、50℃で1時間反応させ、ジメチルグルタルカルボキシル化ポリリジン(DMGA−PLL)(3,3ジメチル無水グルタル化ポリリジン)を作成した。なお、出発材料であるεポリLリジン(PLL)の量に換算して10重量%の濃度で使用した場合に、PLLの平均分子量4000の値から25mMに相当するので、例えば、DMGA−PLLの濃度の表記としてPLL換算10重量%となる場合には、以下では25mMと表記することがある。この3,3−ジメチルグルタル酸無水物(DMGA)の構造式を以下に示す。(このDMGA−PLLの合成の反応式を、以下に示す。なお、DMGA−PLLの構造式中の2種類の繰り返し単位は、εポリLリジンの鎖中にDMGAによる修飾反応がなされた結果として、必ずしも規則的あるいは周期的に出現するものではなく、ポリマーの鎖中に存在する割合のみを規定することが通常であることを当業者は理解している。つまり、繰り返しの値X及びYは、分子内における各部分構造のモル分率を意味する。Y/(X+Y)の比率は、DMGAによって修飾された繰り返し単位の含有率であり、例えば0.5〜0.70、0.5〜0.65の範囲とすることができる。)
エチレングリコール(EG)とスクロースの混合溶液(リン酸緩衝液PBS溶液)をベースとし、各カルボキシル化ポリリジンを最終12.5mMとなるように調整したガラス化液を作成した。スクロースの濃度は0.5Mで固定し、EGの濃度を4−6.5Mまで変えた。
示差走査熱量計(DSC)(セイコーインスツル社製、製品名DSC6200)による各ガラス化液の評価を以下のように行った。
[DSCによる従来のガラス化液の再結晶化評価]
従来のガラス化液の特性を、液体窒素でいったん凍結した後に、上記のDSC測定の手順で、ただし50℃/minの昇温速度として、評価した。従来のガラス化液としては、以下のものを使用した。これらのDSC測定結果を図1に示す。
・DAP213: DMSO 2M、アセトアミド 1M、プロピレングリコール 3M を含む水溶液
・EG6.5M−Suc0.75M: エチレングリコール 6.5M、スクロース0.75M を含む水溶液
・EG6.5M−Suc0.75M−PLL(0.65)10%: エチレングリコール 6.5M、スクロース0.75M、SA(65)−PLL 10重量% を含む水溶液
[DSCによるガラス化液の結晶化試験]
各ガラス化液の結晶化の特性を、上記のDSC測定の手順(ただし、降温速度10℃/min、昇温速度10℃/min)によって、評価した。ガラス化液としては、以下のものを使用した。DSC測定結果を、図2a(COOH−PLL)、図2b(BSA−PLL)、図2c(BSA(35)−SA(30)−PLL)にそれぞれ示す。
・COOH−PLL: SA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 6M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・BSA−PLL: BSA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 6M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・BSA(35)−SA(30)−PLL: BSA(35)−SA(30)−PLL 25mM、エチレングリコール 6M、スクロース 0.5M を含む水溶液
[DSCによるガラス化液の結晶化試験]
各ガラス化液の結晶化の特性を、上記のDSC測定の手順(ただし、降温速度10℃/min、昇温速度10℃/min)によって、評価した。ガラス化液としては、以下のものを使用した。これらは、実施例1のBSA−PLLにおいて、エチレングリコール濃度を、6Mから、それぞれ5M及び4.5Mへと減少させたガラス化液である。DSC測定結果を、図3a(BSA−PLL、EG5M)、図3b(BSA−PLL、EG4.5M)にそれぞれ示す。
・BSA−PLL、EG5M: BSA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・BSA−PLL、EG4.5M: BSA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 4.5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
[DSCによるガラス化液の結晶化試験]
各ガラス化液の結晶化の特性を、上記のDSC測定の手順(ただし、降温速度10℃/min、昇温速度10℃/min)によって、評価した。ガラス化液としては、以下のものを使用した。これらは、実施例1のBSA(35)−SA(30)−PLLにおいて、エチレングリコール濃度を、6Mから、5.5Mへと減少させたガラス化液である。DSC測定結果を、図4(BSA(35)−SA(30)−PLL、EG5.5M)に示す。
・BSA(35)−SA(30)−PLL: BSA(35)−SA(30)−PLL 25mM、エチレングリコール 5.5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
[DSCによるガラス化液の再結晶化試験]
各ガラス化液の結晶化の特性を、上記のDSC測定の手順(ただし、降温速度10℃/min、昇温速度40℃/min)によって、評価した。ガラス化液としては、以下のものを使用した。DSC測定結果を、図5a(COOH−PLL)、図5b(BSA−PLL)、図5c(BSA(35)−SA(30)−PLL)にそれぞれ示す。
・COOH−PLL: SA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 6.5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・BSA−PLL: BSA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 6M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・BSA(35)−SA(30)−PLL: BSA(35)−SA(30)−PLL 25mM、エチレングリコール 6.5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
[細胞生存率試験]
各ガラス化液の細胞毒性を以下の細胞生存率試験によって評価した。
・BSA−PLL: BSA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・COOH−PLL: SA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 6.5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・Control: エチレングリコール 5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・BSA−SA−PLL: BSA(35)−SA(30)−PLL 25mM、エチレングリコール 5.5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・COOH−PLL: SA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 6.5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・Control: エチレングリコール 5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
無水コハク酸のみで65%カルボキシル化したCOOH−PLLでは、降温過程で結晶化を抑制するのに必要なEGの濃度は6.5M必要であったが、BSA−PLLではEGを5Mまで下げてもガラス化が可能であった。BSA−PLLのガラス化能の高さが確認された。
[DSCによるガラス化液の結晶化試験]
各ガラス化液の結晶化の特性を、上記のDSC測定の手順(ただし、降温速度10℃/min、昇温速度10℃/min)によって、評価した。ガラス化液としては、以下のものを使用した。DSC測定結果を、図7a(DMGA−PLL、EG6M)、図7b(DMGA−PLL、EG5M)、図7c(DMGA−PLL、EG4.5M)、図7d(DMGA−PLL、EG4M)にそれぞれ示す。
・DMGA−PLL、EG6M: DMGA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 6M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・DMGA−PLL、EG5M: DMGA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・DMGA−PLL、EG4.5M: DMGA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 4.5M、スクロース 0.5M を含む水溶液
・DMGA−PLL、EG4M: DMGA(65)−PLL 25mM、エチレングリコール 4M、スクロース 0.5M を含む水溶液
実施例7として、後述する実験を行った。特に記載のない限り、その他の条件は実施例1と同様にして行った。
エチレングリコール(EG)とスクロースの混合溶液(PBS)をベースとし、各カルボキシル化ポリリジンを最終25mMになるように調整したガラス化液を作成した。スクロース(Su)の濃度は0.5Mで固定し、EGの濃度を4Mから6.5Mまで変えた。使用したガラス化液の組成は、以下の通りである:
・Control : Su0.5M, EG6.5M : 図8
・SA-PLL(COOH-PLL)25mM, Su0.5M, EG6.5M : 図9
・COOH-PLL25mM, Su0.5M, EG5.5M : 図10a
・COOH-PLL25mM, Su0.5M, EG5M : 図10b
・BSA-PLL25mM, Su0.5M, EG5M : 図11a
・BSA-PLL25mM, Su0.5M, EG4.5M : 図11b
・DMGA-PLL 25mM, Su0.5M, EG4.5M : 図12a
・DMGA-PLL 25mM, Su0.5M, EG4M : 図12b
・COOH-PLL 25mM, Su0.5M, EG6M : 図13a
・BSA-PLL 25mM, Su0.5M, EG6M : 図13b
・DMGA-PLL 25mM, Su0.5M, EG6M : 図13c
各ガラス化液の評価を以下の様に行った。
各ガラス化液を10μL、DSC用のアルミパンに載せ、液体窒素によって10℃/minで温度を-170℃まで下げていき、結晶化およびガラス化の有無を確認した。さらにそこから10℃/minで室温まで昇温し、再結晶化の有無を確認した。
[細胞生存率試験]
次に、これらポリマーを使用したガラス化液でヒト間葉系幹細胞(MSC)(理研バイオリソースセンター)シートをガラス化保存して、細胞の生存率を確認する実験を、後述の手順で行った。この実験の手順の概要を示す説明図を、スキーム1として示す。使用したガラス化液の組成は、以下の通りである:
・control: EG6M, Su0.5M : 図14a
・COOH-PLL: COOH-PLL25mM, EG6M, Su0.5M : 図14b
・BSA-PLL: BSA-PLL25mM, EG6M, Su0.5M : 図14c
・DMGA-PLL: DMGA-PLL25mM, EG6M, Su0.5M : 図14d
・control: EG6M, Su0.5M : 図15のa
・COOH-PLL: COOH-PLL25mM, EG6M, Su0.5M : 図15のb
・BSA-PLL: BSA-PLL25mM, EG6M, Su0.5M : 図15のc
・DMGA-PLL: DMGA-PLL25mM, EG6M, Su0.5M : 図15のd
培養液を除去した後、MSCシートに20%EG/DMEM溶液を2mL添加し、室温で25分放置し、平衡化させた。その後、溶液を除去した後、氷温で各ガラス化液を500μL添加し、20分放置後、液体窒素蒸気から1cmの地点にシャーレを維持し、凍結した。このときの液体窒素蒸気からの距離で凍結スピードを制御することが可能であり、蒸気から1cmの地点では約10℃/minの凍結スピードが得られることが分かっている。その後、蒸気雰囲気下で10分放置し、十分固化した後、液体窒素の浸漬し、凍結を完了させた。続いて解凍操作にうつった。解凍は、液体窒素から取り出したMSCシート培養ディッシュに37℃に暖めた1Mスクロース/DMEMを3ml加え、1分後に除去した。次に0.5Mスクロース/DMEM溶液を3mL加え、3分後に除去した。続いてDMEMを3mL加え、5分後に除去を2回くり返し、最後はDMEMを2mL添加して37℃のインキュベーター中で培養にうつった。翌日、Live/Deadアッセイにより生存率を評価した。
Claims (12)
- 以下の(c)の、アミノ基及びカルボキシル基を同一分子中に有する両性高分子化合物を含む、動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤:
(c) ε−ポリ−L−リジンを、次の式II:
R1及びR2は、メチル基である)
で表される化合物と反応させてカルボキシル化した両性高分子化合物。 - 両性高分子化合物において、ε−ポリ−L−リジンの側鎖のアミノ基のうち、カルボキシル化されたアミノ基の割合が、50%〜75%の範囲にある、請求項1に記載の動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤。
- 請求項1〜2のいずれかに記載された動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤を含有する生理溶液からなる、動物細胞凍結保存液。
- 請求項1〜2のいずれかに記載された動物細胞凍結保存液用ガラス化状態安定化剤を、2〜40重量%で含有し、
エチレングリコール又はプロピレングリコールを、3〜8Mの濃度で含有する、生理溶液からなる、動物細胞凍結保存液。 - さらに、スクロースを、0.1〜1Mの濃度で含有する、請求項4に記載の動物細胞凍結保存液。
- 動物細胞凍結保存液が、動物細胞ガラス化状態凍結保存液である、請求項3〜5のいずれかに記載の動物細胞凍結保存液。
- 請求項3〜6のいずれかに記載の動物細胞凍結保存液中へ、動物細胞を浸漬する工程、
動物細胞凍結保存液中の動物細胞を、降温して凍結する工程、
を含む、動物細胞凍結保存方法。 - 動物細胞を、降温して凍結する工程の後に、
凍結した、動物細胞凍結保存液中の動物細胞を、昇温して解凍する工程、
を含む、請求項7に記載の動物細胞凍結保存方法。 - 動物細胞を、降温して凍結する工程が、
動物細胞を、降温してガラス化状態で凍結する工程、である、請求項7〜8のいずれかに記載の動物細胞凍結保存方法。 - 動物細胞を、昇温して解凍する工程が、
動物細胞を、昇温して再結晶化することなく解凍する工程、である、請求項8〜9のいずれかに記載の動物細胞凍結保存方法。 - 降温して凍結する工程が、
降温速度5℃/分〜50℃/分で降温して凍結する工程、である、請求項7〜10のいずれかに記載の動物細胞凍結保存方法。 - 昇温して解凍する工程が、
昇温速度5℃/分〜100℃/分で昇温して解凍する工程、である、請求項8〜11のいずれかに記載の動物細胞凍結保存方法。
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