JP6678593B2 - 標的細胞を単離する方法 - Google Patents

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Description

発明の分野
細胞または他の生物学的材料、例えば細胞小器官またはウイルスなどの標的生物学的実体の単離方法に関する。本方法は、カラムクロマトグラフィー方法を含むクロマトグラフィー方法を規定すると解釈しうる。本方法は、試料から標的細胞を単離するための新しい構成および対応する機器にも関係する。本発明は、標的細胞を単離するための、表面にリガンドを有する固定相の使用にも関係する。
発明の背景
所望の細胞タイプの純粋かつ機能的な細胞集団の単離は、さまざまな治療的、診断的、および生物工学的応用における前提条件である。
クロマトグラフィーは、低分子量の分子およびタンパク質を含む高分子量の分子を分離するための確立された技法である。この技法は細胞分離にも、特に所望の細胞タイプに特異的な免疫リガンドなどの固定化リガンドを使用するアフィニティークロマトグラフィーの形で、応用されている。一例として、モノクローナル免疫グロブリンで標識し、それを、ウサギ抗マウスIgGが共有結合されたポリアクリルアミドビーズのカラムにローディングすることにより、異なるT細胞サブセットが分離されている(Braun, R., et al., Journal of Immunological Methods(1982)54, 251-258(非特許文献1))。さらにもう1つの例として、ヒマラヤフジマメ(Dolichos biflorus)凝集素に共有結合でコンジュゲートされたSepharose 6MBを使用するレクチン-アフィニティーカラムクロマトグラフィーが、白血病細胞を健常白血球から分離するために使用されている(Ohba, H., et al, Cancer Letters(2002)184, 207-214(非特許文献2))。
細胞は一般にタンパク質よりはるかに大きいので、細胞は、タンパク質とは対照的に、従来のクロマトグラフィー収着剤のビーズの細孔にはほとんど進入しない。大きな細孔を持つ収着剤を使用しても、拡散制限(diffusional limitation)ゆえに、この分離現象を大幅に克服することはできない。一方、タンパク質だけがアクセスできる細孔内の表面積は、通常、タンパク質と細胞の両方がアクセスできる表面積を大きく上回る。したがって、細胞用アフィニティーマトリックスを作製する目的で、タンパク質性の受容体結合リガンドまたは他の受容体結合リガンドの固定化に従来のクロマトグラフィー収着剤を使用するには、細胞がアクセスできない細孔または空洞にその大半が固定化されてしまうことから、通常、大過剰の無駄な受容体結合リガンドを使用することが必要になる。特異的受容体結合試薬は、多くの場合、高価であり、所望の規模で生産することが難しく、それが、この局面を深刻な問題にしている。そこで、細胞のアフィニティークロマトグラフィーにおける代替的技法として、クリオゲルの形態にあるモノリシック(monolithic)収着剤の使用が提案されている(例えばDainiak,M.B., et al., Adv. Biochem. Engin./Biotechnol.(2007), 106, 101-127(非特許文献3)を参照されたい)。しかし、モノリシック収着剤は数が少ないので、所望の収着剤をモノリシックカラムの形態で商業的に入手することはできないことがある。さらにまた、アフィニティークロマトグラフィーの場合は、一般に、所望の細胞を溶出させるために使用した競合化合物を、これらの細胞から除去する必要が残る。したがって、細胞の生存可能性という面でのモノリシック収着剤の潜在的利点は、アフィニティークロマトグラフィーカラムから細胞を溶出させるために使用された化合物を除去するために必要になる追加手順によって、打ち消されうる。
現在使用されている最も重要な細胞単離方法は磁石支援細胞選別法(magnet-assisted cell sorting: MACS)および蛍光支援細胞選別法(fluorescence-assisted cell sorting: FACS(商標))である。典型的には抗体にカップリングされた発蛍光団を使って細胞を標識するフローサイトメトリーによる細胞選別では、細胞が個別に分析される。細胞は細胞選別装置を使って超高圧下で高速に分離される。FACS(商標)技術は、一組のマーカーによって規定される細胞を、異なる発蛍光団を持つ対応する抗体セットを適用することにより、一段階で単離することを可能にする。したがってこの方法は信頼できるが、時間集約的かつ費用集約的であり、手間が掛かる。特に、非常に大きく多様な細胞集団、例えば1×1010個の細胞を含有するアフェレーシス産物から選択する場合、フローサイトメーターの非常に長い選別時間は、適当な選択プロセスにとって許容することができない。FACS(商標)のもう1つの短所は、複雑で干渉を起こしがちなフローサイトメーターを、治療用細胞製品を単離するために必要となるGMP環境に適合させることは、ほとんど不可能だという点である。そのうえ、細胞選択手順において適用される圧力は、細胞エフェクター機能を損ないうる。
細胞の磁石支援単離法は、研究および治療的応用に広く使用されているシステムである。単離される細胞の収率と純度はFACS(商標)技術と比較して際立ってはいないが、この選択手順はロバストであり、高度な自動化を必要としない。磁石支援単離法の大きな短所は、単離された細胞上の磁気ビーズを含む残存染色試薬であり、それらは、単離された細胞集団のエフェクター機能を損ないうる。加えて、単離された細胞上のこれら残存磁性試薬ゆえに、連続的陽性選択プロセスが不可能である。連続的陽性選択手順は、一組のマーカーによって規定される細胞集団を選択するのに必須である。
依然として磁気ラベルまたは蛍光ラベルを利用してはいるが、細胞の単離における著しい進歩が、例えば国際特許出願WO 02/054065(特許文献1)、米国特許第7,776,562号(特許文献2)および米国特許第8,299,782号(特許文献3)に記載されている「Streptamer(登録商標)」技術である。この技術では、細胞の表面上に位置する受容体分子に対して低アフィニティー結合を呈する受容体分子結合試薬が、細胞の可逆的染色および単離に使用される。(関心対象の細胞集団以外のすべての細胞集団の除去を目指す)磁気陰性選択と組み合わせて現在使用されている単回陽性選択法とは対照的に、各選択後に低アフィニティー受容体結合試薬を除去するStreptamer(登録商標)技術を使った連続的陽性選択では、非常に高い純度および収率の細胞集団が生じる。
加えて、国際特許出願WO 2013/124474(特許文献4)には、カラムクロマトグラフィーによる標的細胞のクロマトグラフィー単離方法が記載されている。この方法では、標的細胞の表面上に位置する受容体分子に結合するFabフラグメントなどの受容体分子結合試薬が、ストレプトアビジン結合ペプチドなどのアフィニティータグを介して固定クロマトグラフィー相上に可逆的に固定化される。この固定化のために、固定相は、アフィニティータグとの可逆的結合を形成するアフィニティー試薬、例えば、受容体分子結合試薬の一部であるストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するストレプトアビジンムテインを含む。次に、標的細胞を含有する試料を固定相と接触させて、受容体分子結合試薬への結合によって、その固定相上に可逆的に固定化する。次に、やはりアフィニティー試薬の結合部位に結合する競合試薬を加えることで、受容体分子結合試薬を固定相から解離させ、よって標的細胞も固定相から放出させることにより、標的細胞を固定相から単離/溶出させる。(一価)抗体フラグメントの代わりにインタクトなモノクローナル抗体を受容体分子結合試薬として使用する同様のクロマトグラフィー精製法が、米国特許第6,022,951号(特許文献5)の実施例11に記載されている。
しかし国際特許出願WO 2013/124474(特許文献4)の方法にはいくつかの制約がありうるだろう。Fabフラグメントをクロマトグラフィーカラム(固定クロマトグラフィー相)上に固定化し、次に標的細胞を含む試料をそのクロマトグラフィーカラムに適用する場合は、試料をカラムにローディングするために使用される流速ゆえに、複合体形成のオン速度(kon)、すなわち受容体分子へのFabフラグメントの結合のオン速度(kon)が、標的細胞の固定化にとっての制限になりうる。そのような場合は、標的細胞のすべてがクロマトグラフィーカラムに結合することにはならないだろう。これは、精製された標的細胞の収率を低下させることになりうる。加えて、クロマトグラフィーカラム上の固定化Fabフラグメントの分布が不均一になりうる。カラムにFabフラグメントをローディングする場合、Fabフラグメントは主としてカラムの上部に結合して、この上部では高密度すぎ、カラムの下部では低密度すぎることになりうる。これが不十分な複合体形成につながって、単離される細胞の収率に影響を及ぼすだろう。加えて、クロマトグラフィー樹脂全体がFabフラグメントで均一にコーティングされることを保証するには、比較的多量のFabフラグメントが必要である。Fabフラグメントと標的細胞の受容体分子との間の複合体形成のオン速度が律速になるという問題を避けるために、国際特許出願WO 2013/124474(特許文献4)の方法では、まずFabフラグメントを、標的細胞を含有する試料と共にインキュベートし、そのインキュベーション混合物をクロマトグラフィーカラムに適用することが可能である。この場合は、受容体分子に対するFabフラグメントのアフィニティーが制限になりうるだろう。例えば、そのアフィニティーは、固定相/クロマトグラフィーへの標的細胞の効率のよい結合を保証するのに十分なFabフラグメント分子を細胞表面に与えうるほどには、高くないこともありうる。加えて、標的細胞上の選ばれた受容体分子には、流れゆえに、クロマトグラフィー樹脂上へのアビディック結合(avidic binding)に必要なクラスターを形成するチャンスがないこともありうる(受容体分子へのFabフラグメントの結合が平衡に達しないこともありうる)。加えて、固定相上での固定化の程度は、Fabフラグメントのタイプおよび標的細胞表面上の選ばれた受容体分子ごとに異なりうる。したがって、精製効率は、考慮している標的細胞集団に依存して変動しうるだろう。
Streptamer(登録商標)技術または国際特許出願WO 2013/124474(特許文献4)に記載の方法は一般に奏功するが、上述の欠点ゆえに、例えば考慮した標的細胞のすべてのタイプに関して、すなわち所与の受容体分子とその受容体分子結合試薬とからなる結合ペアに固有の結合特徴の性質に関係なく、精製プロトコールの標準化が可能な方法は、今なお必要とされている。
国際特許出願WO 02/054065 米国特許第7,776,562号 米国特許第8,299,782号 国際特許出願WO 2013/124474 米国特許第6,022,951号
Braun, R., et al., Journal of Immunological Methods(1982)54, 251-258 Ohba, H., et al, Cancer Letters(2002)184, 207-214 Dainiak,M.B., et al., Adv. Biochem. Engin./Biotechnol.(2007), 106, 101-127
本開示は、概して、細胞単離のための固相技法またはクロマトグラフィー技法に関すると解釈することができる。本明細書において提供されるのは、既知の受容体分子を表面に有している所望の生物学的実体、例えば標的細胞を単離するための方法である。本明細書において開示する方法は、そのような細胞を、そのような受容体が表面にない他の細胞から分離することを含みうる。一般に、各方法は、調節性T細胞またはセントラルメモリーT細胞などの複雑な細胞集団を研究、診断目的、そして特に治療目的のために単離することを可能にする、迅速で効率のよい穏やかな単離手順を提供する。生物学的細胞または生物学的細胞の集団を単離しようとする場合、本明細書において開示する方法は、濃縮、単離および/または精製のために使用された試薬類を本質的に含まない、濃縮され、単離され、かつ/または精製された標的細胞または標的細胞集団の取得を可能にする。
第1の局面において、本発明は、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を単離する方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:
- i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含む、受容体分子結合試薬、
ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含み、リガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBをさらに含む、(可溶性)多量体化試薬、
および
iii)標的細胞を含む試料
を接触させ、
それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、および
- 標的細胞、受容体分子結合試薬および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、固相上での標的細胞の固定化が、少なくとも受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合を破壊すると可逆的である、工程。
第2の局面において、本発明は、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を単離する代替的方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:
(i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含み、さらにリガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBを含む、受容体分子結合試薬、
ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含む、(可溶性)多量体化試薬、
および
iii)標的細胞を含む試料
を接触させ、
それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、固相上での標的細胞の固定化が、
- 標的細胞、受容体分子結合試薬および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、固相上での標的細胞の固定化が、
a)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合、および/または
b)固相のリガンドLと受容体分子結合試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBとの間の結合
を破壊すると可逆的である、工程。
上に示したとおり、第1局面または第2局面の方法のいくつかの態様では、受容体分子結合試薬と、可溶性多量体化試薬と、標的細胞を含有する試料とを、同時に一緒にインキュベートする。別の態様では、受容体分子結合試薬と多量体化試薬とを互いに接触させることで、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬を含む複合体を形成させてから、この複合体を標的細胞と接触させる(インキュベートする)。
第1局面または第2局面の方法において、受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(Kd)は低アフィニティーでありうる。つまり、受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(Kd)は、約10-2〜約10-7Mの範囲にありうる。本発明の別の態様において、受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合は高アフィニティーでありうる。つまり、受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(Kd)は、約10-7〜約10-10Mの範囲にありうる。
いくつかの態様において、第1局面または第2局面の方法は、固定相を競合試薬と接触させる工程を、さらに含みうる。この競合試薬は、結合パートナーCと結合部位Zとの間の結合を破壊する能力を有する。固定相をこの競合試薬と接触させることにより、標的細胞は固定相から溶出する。
第3の局面において、本発明は、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を固相上に固定化する方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:
- (i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含む、受容体分子結合試薬、
ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含み、リガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBをさらに含む、(可溶性)多量体化試薬、
および
iii)標的細胞を含む試料
を接触させ、
それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、
- 標的細胞、受容体分子結合試薬および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、固相上での標的細胞の固定化が、少なくとも受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合を破壊すると可逆的である、工程。
第4の局面において、本発明は、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を固相上に固定化する代替的方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:
i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含み、さらにリガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBを含む、受容体分子結合試薬、
ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含む、(可溶性)多量体化試薬、
および
iii)標的細胞を含む試料
を接触させ、
それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、
- 標的細胞、受容体分子結合試薬および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、固相上での標的細胞の固定化が、
a)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合、および/または
b)固相のリガンドLと受容体分子結合試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBとの間の結合
を破壊すると可逆的である、工程。
第5の局面において、本発明は、試料から標的細胞を単離するための構成を提供する。この構成は、
- リガンドLを含む固相であって、リガンドLは、標的細胞を単離するために使用される受容体分子結合試薬または(可溶性)多量体化試薬中に存在するリガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有し、リガンドLはそれによって、固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする、固相、
- a)細胞分離に適した第1固定相であって、ゲル濾過マトリックスおよび/またはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスであり、前記マトリックスが、受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに特異的に結合する結合部位Zを有するアフィニティー試薬を含み、それによって、第1固定相上での受容体分子結合試薬の固定化と、標的細胞を含む溶出液からの受容体分子結合試薬の除去とを可能にする、第1固定相、
または
b)リガンドLを含む第2固定相であって、リガンドLは、標的細胞を単離するために使用される受容体分子結合試薬または多量体化試薬中に存在するリガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有し、リガンドLはそれによって、第2固定相上での受容体分子結合試薬または多量体化試薬の固定化と、標的細胞を含む溶出液からの受容体分子結合試薬または多量体化試薬の除去とを可能にする、第2固定相
のうちの少なくとも1つ
を含む。
第6の局面において、本発明は、試料から標的細胞を単離するための機器を提供する。この機器は、試料から標的細胞を単離するための第5の局面による構成を含む。
第7の局面において、本発明は、標的細胞を可逆的に固定化しまたは単離するための、リガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有するリガンドLを含む固相の使用を提供する。リガンドはビオチンまたはビオチンの誘導体でありうる。適切なビオチン誘導体の例として、デスチオビオチン、イミノビオチン、2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン)安息香酸(HABA)またはストレプトアビジン結合ペプチドが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。この第7の局面は、本発明の第1局面または第2局面に従って標的細胞を単離するための方法、または本発明の第3局面または第4局面に従って標的細胞を固定化するための方法における、リガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有するリガンドLを含む固相の使用を包含する。
[本発明1001]
以下の工程を含む、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を単離する方法:
- i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含む、受容体分子結合試薬、
ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含み、リガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBをさらに含む、多量体化試薬、
および
iii)標的細胞を含む試料
を接触させ、
それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、および
- 標的細胞、受容体分子結合試薬、および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、固相上での標的細胞の固定化が、少なくとも受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合を破壊すると可逆的である、工程。
[本発明1002]
受容体分子結合試薬と多量体化試薬とを互いに接触させることで、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬を含む複合体を形成させてから、この複合体を標的細胞と接触させる(インキュベートする)、本発明1001の方法。
[本発明1003]
受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(K d )が低アフィニティーである、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(K d )が約10 -2 〜約10 -10 Mの範囲にある、本発明1001〜1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(K d )が約10 -3 M〜約10 -10 M、または約10 -3 M〜約10 -9 M、または約10 -3 M〜約10 -8 M、または約10 -3 M〜約10 -7 Mの範囲にある、本発明1003の方法。
[本発明1006]
固相が、ビーズ、プラスチックプレート、またはクロマトグラフィーに適した固定相から選択される、本発明1001〜1004のいずれかの方法。
[本発明1007]
受容体分子結合試薬に含まれるパートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間に形成される可逆的結合が、競合条件下で解離可能(破壊可能)である、本発明1001〜1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
固相を、結合パートナーCと結合部位Zとの間に形成される可逆的結合を破壊する能力を有する競合試薬と接触させ、それによって標的細胞/多価結合複合体を破壊し、固相から(溶出によって)標的細胞を放出させることを可能にする工程を含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
多量体化試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBと固定相上に含まれるリガンドLとの間に形成される結合が解離可能(破壊可能)である、本発明1001〜1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間に形成される結合が、競合条件下で解離可能(破壊可能)である、本発明1009の方法。
[本発明1011]
固相を、リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間に形成される結合を解離させる(破壊する)能力を有する競合試薬と接触させ、それによって固相から標的細胞を放出させる工程を含む、本発明1010の方法。
[本発明1012]
結合パートナーCと結合部位Zとの間に形成される可逆的結合を破壊するためと、リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間に形成される結合を破壊するためとに、同じ競合試薬が使用される、本発明1007〜1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
固相から放出された標的細胞を収集する工程をさらに含む、本発明1005〜1011のいずれかの方法。
[本発明1014]
受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の可逆的結合が、約10 -5 〜約10 -13 MのK d を有する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1015]
結合パートナーCと結合部位Zとが、
- ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン類似体、および、ストレプトアビジンに結合するリガンド、
- 二価カチオンの存在下で結合する結合ペア、
- オリゴヒスチジンペプチド、および、各キレート基Kが遷移金属イオンに結合する能力を有し、それによって結合部分Aにオリゴヒスチジンペプチドに結合する能力を与える、少なくとも2つのキレート基Kを含む結合部分A、
- 抗原および該抗原に対する抗体であって、結合パートナーCが該抗原を含み、かつ多量体化試薬が該抗体を含む、抗原および該抗原に対する抗体、
の群から選択される結合ペアを形成する、本発明1001〜1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
(a)結合パートナーCが、ビオチンを含み、かつ、多量体化試薬が、ビオチンに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体またはアビジン類似体を含むか、または
(b)結合パートナーCが、ストレプトアビジンまたはアビジンに可逆的に結合するビオチン類似体を含み、かつ、多量体化試薬が、ストレプトアビジンもしくはアビジン、または該ビオチン類似体に可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはアビジン類似体を含むか、または
(c)結合パートナーCが、ストレプトアビジン結合ペプチドまたはアビジン結合ペプチドを含み、かつ、多量体化試薬が、ストレプトアビジンもしくはアビジン、または該ストレプトアビジン結合ペプチドもしくは該アビジン結合ペプチドに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはアビジン類似体を含む、
本発明1015の方法。
[本発明1017]
多量体化試薬が、野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Val 44 -Thr 45 -Ala 46 -Arg 47 (SEQ ID NO:19)を含むストレプトアビジンムテイン、または野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Ile 44 -Gly 45 -Ala 46 -Arg 47 (SEQ ID NO:20)を含むストレプトアビジンムテインを含み、かつ、結合パートナーCが、以下の配列の1つを含むか、または以下の配列の1つからなるストレプトアビジン結合ペプチドを含む、本発明1016の方法:
a)-Trp-Xaa-His-Pro-Gln-Phe-Yaa-Zaa-(SEQ ID NO:1)、配列中、Xaaは任意のアミノ酸であり、YaaおよびZaaはどちらもGlyであるか、または、YaaがGluであり、かつZaaがLysもしくはArgである、
b)-Trp-Arg-His-Pro-Gln-Phe-Gly-Gly-(SEQ ID NO:2)、
c)-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(SEQ ID NO:3)、
d)少なくとも2つのストレプトアビジン結合ペプチドの連続的構成、ここで、各ペプチドはストレプトアビジンに結合し、2つのペプチド間の距離は少なくとも0であり、かつ50アミノ酸を上回らず、前記少なくとも2つのペプチドのそれぞれはアミノ酸配列-His-Pro-Baa-を含み、配列中のBaaはグルタミン、アスパラギン、およびメチオニンからなる群より選択される、
e)前記少なくとも2つのペプチドの1つが配列-His-Pro-Gln-を含む、d)で述べた連続的構成、
f)前記ペプチドの1つがアミノ酸配列-His-Pro-Gln-Phe-(SEQ ID NO:4)を含む、d)で述べた連続的構成、
g)少なくとも1つのペプチドが少なくともアミノ配列-Oaa-Xaa-His-Pro-Gln-Phe-Yaa-Zaa-(SEQ ID NO:5)を含み、配列中、OaaはTrp、Lys、またはArgであり、Xaaは任意のアミノ酸であり、かつ、YaaおよびZaaはどちらもGlyであるか、または、YaaがGluであり、かつZaaがLysもしくはArgである、d)で述べた連続的構成、
h)少なくとも1つのペプチドが少なくともアミノ酸配列-Trp-Xaa-His-Pro-Gln-Phe-Yaa-Zaa-(SEQ ID NO:6)を含み、配列中、Xaaは任意のアミノ酸であり、YaaおよびZaaはどちらもGlyであるか、YaaがGluであり、かつZaaがLysまたはArgである、d)で述べた連続的構成、
i)少なくとも1つのペプチドが少なくともアミノ酸配列-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(SEQ ID NO:7)を含む、d)で述べた連続的構成、
j)アミノ酸配列-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(Xaa)n-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(SEQ ID NO:8)、配列中、Xaaは任意のアミノ酸であり、nは0〜12の整数である、
k)
Figure 0006678593
からなる群より選択されるアミノ酸配列。
[本発明1018]
二価カチオンの存在下で結合する結合ペアに関して、
結合パートナーCがカルモジュリン結合ペプチドを含み、かつ多量体化試薬がカルモジュリンを含むか、または
結合パートナーCがFLAGペプチドを含み、かつ多量体化試薬がFLAGペプチドに結合する抗体を含むか、または
結合パートナーCがオリゴヒスチジンタグを含み、かつ多量体化試薬がキレートされた遷移金属を含む、
本発明1015の方法。
[本発明1019]
二価カチオンがCa 2+ 、Ni 2+ 、またはCo 2+ からなる群より選択される、本発明1018の方法。
[本発明1020]
結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合が金属イオンキレーションによって破壊される、本発明1018の方法。
[本発明1021]
金属キレーションがEDTAまたはEGTAの添加によって実行される、本発明1020の方法。
[本発明1022]
結合パートナーCに含まれる抗原がエピトープタグである、本発明1015の方法。
[本発明1023]
エピトープタグが、Mycタグ
Figure 0006678593
、HAタグ
Figure 0006678593
、VSV-Gタグ
Figure 0006678593
、HSVタグ
Figure 0006678593
、およびV5タグ
Figure 0006678593
からなる群より選択される、本発明1022の方法。
[本発明1024]
結合パートナーCに含まれる抗原がタンパク質である、本発明1015の方法。
[本発明1025]
タンパク質が、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質(MBP)、キチン結合タンパク質(CBP)、およびチオレドキシンの群から選択される、本発明1023の方法。
[本発明1026]
リガンド結合パートナーLBへのリガンドLの結合の解離定数K d が、結合部位Zへの可逆的結合パートナーCの結合の解離定数K d より小さい、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1027]
リガンドLおよびリガンド結合パートナーLBが、
- リガンド結合パートナーLBとしてのストレプトアビジンまたはストレプトアビジン類似体、およびストレプトアビジンに結合するリガンドL(分子)、
- 二価カチオンの存在下で結合する結合ペア、
- リガンドLとしてのオリゴヒスチジンペプチド、および、各キレートK基が遷移金属イオンに結合する能力を有し、それによってオリゴヒスチジンペプチドに結合する能力を部分Aに与える、リガンド結合パートナーLBとしての少なくとも2つのキレート基Kを含む結合部分A、
- 抗原および該抗原に対する抗体であって、リガンドLが該抗原を含み、かつリガンド結合パートナーLBが該抗体を含む、抗原および該抗原に対する抗体、
- リガンド結合パートナーLBとしての、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質(MBP)、キチン結合ドメイン、およびセルロース結合ドメインの群から選択されるタンパク質、ならびにリガンドLとしての、それぞれグルタチオン、マルトース、キチン、またはセルロース、
- リガンド結合パートナーLBとしての抗体Fcドメイン、およびリガンドLとしての免疫グロブリン結合タンパク質、例えばプロテインA、プロテインG、またはプロテインL、
の群から選択される結合ペアを形成する、本発明1009〜1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
(a)リガンドLがビオチンを含み、かつリガンド結合パートナーLBが、ビオチンに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体またはアビジン類似体を含むか、または
(b)リガンドLが、ストレプトアビジンまたはアビジンに可逆的に結合するビオチン類似体を含み、かつリガンド結合パートナーLBが、ストレプトアビジンもしくはアビジン、または該ビオチン類似体に可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはアビジン類似体を含むか、または
(c)リガンドLがストレプトアビジン結合ペプチドまたはアビジン結合ペプチドを含み、かつリガンド結合パートナーLBが、ストレプトアビジンもしくはアビジン、または該ストレプトアビジン結合ペプチドもしくは該アビジン結合ペプチドに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはアビジン類似体を含む、
本発明1027の方法。
[本発明1029]
リガンド結合パートナーLBが、野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Val 44 -Thr 45 -Ala 46 -Arg 47 (SEQ ID NO:19)を含むストレプトアビジン類似体、または野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Ile 44 -Gly 45 -Ala 46 -Arg 47 (SEQ ID NO:20)を含むストレプトアビジン類似体を含む、本発明1028の方法。
[本発明1030]
二価カチオンの存在下で結合する結合ペアに関して、
リガンドLがカルモジュリン結合ペプチドを含み、かつリガンド結合パートナーLBがカルモジュリンを含むか、または
リガンドLがオリゴヒスチジンタグを含み、かつリガンド結合パートナーLBが、少なくとも2つのキレート基Kを含む結合部分Aを含み、各キレート基Kは遷移金属イオンに結合する能力を有し、それによって部分Aにオリゴヒスチジンペプチドに結合する能力を与える、
本発明1027の方法。
[本発明1031]
結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合が金属イオンキレーションによって解離される(破壊される)、本発明1030の方法。
[本発明1032]
金属キレーションがEDTAまたはEGTAの添加によって実行される、本発明1031の方法。
[本発明1033]
結合パートナーCに含まれる抗原がエピトープタグである、本発明1027の方法。
[本発明1034]
エピトープタグが、Mycタグ
Figure 0006678593
、HAタグ
Figure 0006678593
、VSV-Gタグ
Figure 0006678593
、HSVタグ
Figure 0006678593
、V5タグ
Figure 0006678593
、T7エピトープ
Figure 0006678593
、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ
からなる群より選択される、本発明1033の方法。
[本発明1035]
- 競合試薬がビオチンまたはビオチン誘導体であり、
- 結合パートナーCがストレプトアビジンに結合するリガンドであり、かつ多量体化試薬がストレプトアビジンまたはストレプトアビジンであり、かつ
- リガンドLがビオチンまたはビオチン類似体であり、かつリガンド結合パートナーLBがストレプトアビジンまたはストレプトアビジン類似体である、
本発明1012〜1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
多量体化試薬の結合部位Zとリガンド結合パートナーLBとが同一である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1037]
受容体分子に特異的に結合する受容体分子結合試薬が、抗体、二価抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様の結合特性を有するタンパク質性結合分子、およびMHC分子からなる群より選択される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1038]
二価抗体フラグメントが(Fab) 2 'フラグメントまたは二価一本鎖Fvフラグメントである、本発明1037の方法。
[本発明1039]
一価抗体フラグメントが、Fabフラグメント、Fvフラグメント、および一本鎖Fvフラグメント(scFv)からなる群より選択される、本発明1038の方法。
[本発明1040]
抗体様の結合特性を有するタンパク質性結合分子が、アプタマー、リポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテイン、グルボディ、アンキリンスキャフォールドに基づくタンパク質、結晶性スキャフォールドに基づくタンパク質、アドネクチン、およびアビマーの群より選択される、本発明1037の方法。
[本発明1041]
試料が、標的細胞と、細胞表面上に前記受容体分子を欠くさらなる細胞との混合物を含み、かつ、方法が、該さらなる細胞から標的細胞を分離する工程を含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1042]
以下の工程を含む、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を単離する方法:
- i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含み、リガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBをさらに含む、受容体分子結合試薬、および
ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含む多量体化試薬、
iii)標的細胞を含む試料
を接触させ、
それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、
- 標的細胞、受容体分子結合試薬、および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、固相上での標的細胞の固定化が、
a)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合、および/または
b)固相のリガンドLと受容体分子結合試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBとの間の結合
を破壊すると可逆的である、工程。
[本発明1043]
受容体分子結合試薬と多量体化試薬とを互いに接触させることで、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬を含む複合体を形成させてから、この複合体を標的細胞と接触させる(インキュベートする)、本発明1042の方法。
[本発明1044]
受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(K d )が低アフィニティーである、本発明1042または1043の方法。
[本発明1045]
受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(K d )が約10 -2 〜約10 -10 Mの範囲にある、本発明1042〜1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
以下の工程を含む、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を固相上に固定化する方法:
- i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含む、受容体分子結合試薬、
ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含み、リガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBをさらに含む、多量体化試薬、
および
ii)標的細胞を含む試料
を接触させ、
それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、
- 標的細胞、受容体分子結合試薬、および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、固相上での標的細胞の固定化が、少なくとも受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合を破壊すると可逆的である、工程。
[本発明1047]
受容体分子結合試薬と多量体化試薬とを互いに接触させることで、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬を含む複合体を形成させてから、この複合体を標的細胞と接触させる(インキュベートする)、本発明1046の方法。
[本発明1048]
受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(K d )が低アフィニティーである、本発明1046または1047の方法。
[本発明1049]
受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(K d )が約10 -2 〜約10 -10 Mの範囲にある、本発明1046〜1048のいずれかの方法。
[本発明1050]
以下の工程を含む、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を固相上に固定化する方法:
- i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含み、リガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBをさらに含む、受容体分子結合試薬、および
ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含む多量体化試薬、
iii)標的細胞を含む試料
を接触させ、
それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、
- 標的細胞、受容体分子結合試薬、および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、固相上での標的細胞の固定化が、
a)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合、および/または
b)固相のリガンドLと受容体分子結合試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBとの間の結合
を破壊すると可逆的である、工程。
[本発明1051]
受容体分子結合試薬と多量体化試薬とを互いに接触させることで、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬を含む複合体を形成させてから、この複合体を標的細胞と接触させる(インキュベートする)、本発明1050の方法。
[本発明1052]
受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(K d )が低アフィニティーである、本発明1050または1051の方法。
[本発明1053]
受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(K d )が約10 -2 〜約10 -10 Mの範囲にある、本発明1050〜1052のいずれかの方法。
[本発明1054]
- リガンドLを含む固相であって、リガンドLは、標的細胞を単離するために使用される受容体分子結合試薬または多量体化試薬中に存在するリガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有し、リガンドLはそれによって、固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする、固相、
- a)細胞分離に適し、ゲル濾過マトリックスおよび/またはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスである第1固定相であって、該マトリックスが、受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに特異的に結合する結合部位Zを有するアフィニティー試薬を含み、それによって、第1固定相上での受容体分子結合試薬の固定化と、標的細胞を含む溶出液からの受容体分子結合試薬の除去とを可能にする、第1固定相、
または
b)リガンドLを含む第2固定相であって、リガンドLは、標的細胞を単離するために使用される受容体分子結合試薬または多量体化試薬中に存在するリガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有し、リガンドLはそれによって、第2固定相上での受容体分子結合試薬または多量体化試薬の固定化と、標的細胞を含む溶出液からの受容体分子結合試薬または多量体化試薬の除去とを可能にする、第2固定相
のうちの少なくとも1つ
を含む、試料から標的細胞を単離するための構成。
[本発明1055]
固相と第1固定相または第2固定相の少なくとも一方とが流体接続されている、本発明1054の構成。
[本発明1056]
第1固定相および/または第2固定相がクロマトグラフィーカラムに含まれているか、または平面固定相である、本発明1054または1055の構成。
[本発明1057]
固相が標的細胞を単離するためのバッチ式リアクターに含まれているか、または固相が固定相である、本発明1054〜1056のいずれかの構成。
[本発明1058]
バッチ式リアクターが、固相上にリガンドLが固定化されている固相を含む容器であるか、またはバッチ式リアクターが、ビーズ上に固定化されたリガンドLを有するビーズを含む、本発明1057の構成。
[本発明1059]
バッチ式リアクター中にビーズを保持するための保持手段をさらに含む、本発明1058の構成。
[本発明1060]
ビーズが磁気ビーズであり、かつ保持手段が磁石である、本発明1059の構成。
[本発明1061]
固相が第1固定相に流体接続されており、かつ第1固定相が第2固定相に流体接続されている、本発明1054〜1060のいずれかの構成。
[本発明1062]
固相が第2固定相に流体接続されており、かつ第2固定相が第1固定相に流体接続されている、本発明1054〜1062のいずれかの構成。
[本発明1063]
固相および/または第2固定相に含まれるリガンドLがビオチンまたはビオチンの誘導体である、本発明1054〜1062のいずれかの構成。
[本発明1064]
ビオチンの誘導体が、デスチオビオチン、イミノビオチン、2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン)安息香酸(HABA)、またはストレプトアビジン結合ペプチドである、本発明1063の構成。
[本発明1065]
第1固定相に含まれるアフィニティー試薬が、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンのムテイン、アビジン、またはアビジンのムテインである、本発明1054〜1063のいずれかの構成。
[本発明1066]
本発明1054〜1065のいずれかの標的細胞を単離するための構成を含む、試料から標的細胞を単離するための機器。
[本発明1067]
標的細胞を可逆的に固定化または単離するための、リガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有するリガンドLを含む固相の使用。
[本発明1068]
リガンドがビオチンまたはビオチンの誘導体である、本発明1066の使用。
[本発明1069]
ビオチンの誘導体が、デスチオビオチン、イミノビオチン、2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン)安息香酸(HABA)、またはストレプトアビジン結合ペプチドである、本発明1068の使用。
[本発明1070]
本発明1001〜1054のいずれかの標的細胞を単離する方法または標的細胞を固定化するための方法における、リガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有するリガンドLを含む固相の使用。
本明細書において提示する細胞単離の態様を、図面に図解する。理論に束縛されることは望まないが、図面には基礎にある分離機序に関する推論が含まれる。これらの推論は説明だけを目的としており、達成されうる分離を分子レベルで思い描く方法の視覚化を可能にするのに役立つに過ぎない。
(図1)標的細胞表面上に受容体分子(4)を有する標的細胞(3)を単離する方法の一態様を表す。標的細胞は、少なくとも1つの特定の特異的受容体分子(4)の存在によって規定することができる。受容体分子結合試薬(1)を用意する。受容体分子結合試薬(1)は、受容体分子(4)に特異的に結合することができる結合部位(B)を有する。受容体分子結合試薬(1)は、Fabフラグメントなどの(一価)抗体フラグメントであってもよいだろう。つまり、結合部位(B)は抗原結合部位であってもよいだろう。受容体分子結合試薬(の結合部位B)と受容体分子との間の結合に関する解離定数(Kd)は、本明細書に定義する低アフィニティーでありうる。受容体分子結合試薬(1)は、多量体化試薬(2)の結合部位(Z)に可逆的に結合することができる結合パートナー(C)も含む。結合パートナー(C)は、例えば、ストレプトアビジン結合ペプチドなどのアフィニティータグまたはペプチドでありうる。さらに詳しく述べると、結合パートナー(C)は、例えば、米国特許第5,506,121号に記載されているペプチドTrp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys(SEQ ID NO:3、「Strep-tag(登録商標)II」としても知られている)などのストレプトアビジン結合ペプチド、または国際特許公開WO 02/077018もしくは米国特許第7,981,632号に記載されている2つ以上の個別結合モジュールの連続的構成を有するストレプトアビジン結合ペプチドでありうる。そのような連続的構成の具体例は、配列
Figure 0006678593
(SEQ ID NO:13、「Twin-Strep-tag(登録商標)」というその商標名でも知られている)である。結合パートナー(C)は、受容体分子結合試薬に融合またはコンジュゲートすることができる。受容体分子結合試薬(1)がFabフラグメントである場合は、結合パートナーCを、その抗体フラグメントの重鎖または軽鎖のいずれかのC末端に融合してもよいだろう。
可溶性多量体化試薬(2)は、結合パートナー(C)に可逆的に結合する能力を有する複数の結合部位Zを含有している。受容体結合試薬(1)は、結合パートナー(C)を介して多量体化試薬(2)上の結合部位(Z)に結合する。多量体化試薬(2)と複数の受容体結合試薬(1)とが互いに結合すると、それらは、受容体分子結合試薬の結合部位(B)に関して、多価結合複合体を形成する。したがって、例えば国際特許出願WO 02/054065または米国特許第7,776,562号に記載されているように、この多価結合複合体は、(一価)受容体分子結合試薬のみの結合と比較して、アビディティ効果をもたらし、それにより、単一型では標的細胞に安定に結合せず、受容体分子から迅速に解離してしまうであろう低アフィニティー一価受容体分子結合試薬を使用することが可能になる。この多価複合体中に含まれる、そのように多量体化した受容体分子結合試薬(1)は、その後(下記参照)、標的細胞(3)に結合することができる。結合パートナー(C)としてストレプトアビジン結合ペプチドを使用する場合、多量体化試薬(2)は、図1に模式的に示すその(ビオチン)結合部位Zを介してストレプトアビジンペプチド(=結合パートナーC1)が可逆的に結合する任意のストレプトアビジンムテインであることができる。そのような多量体化試薬は、野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Val44-Thr45-Ala46-Arg47(SEQ ID NO:19)を含むストレプトアビジンムテイン(類似体)、または野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Ile44-Gly45-Ala46-Arg47(SEQ ID NO:20)を含むストレプトアビジンムテイン(類似体)でありうる。そのようなムテインは例えば米国特許第6,103,493号に記載されており、ムテイン「m1」およびムテイン「m2」の形態で、IBA GmbH(ドイツ・ゲッチンゲン)から、Strep-Tactin(登録商標)という商標で市販されている。
多量体化試薬(2)は、リガンド(L)に特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナー(LB)も含んでいる。図1に示す例において、リガンド結合パートナー(LB)は、例えばヘキサ-ヒスチジンタグまたはグルタチオン-S-トランスフェラーゼでありうる。この場合、ストレプトアビジンムテイン(単量体)は、ヘキサ-ヒスチジンタグまたはグルタチオン-S-トランスフェラーゼのどちらかを融合パートナーとする融合タンパク質として組換え生産することができる。
図1の方法では、次に、標的細胞(3)を含む試料を多価結合複合体と接触させると、標的細胞(3)が多価結合複合体に結合する。クロマトグラフィーマトリックス(5)は固相(固定相)として用意される。クロマトグラフィーマトリックス(5)は、リガンド結合パートナー(LB)が結合するリガンド(L)を含有し、それによって標的細胞は、標的細胞/多価結合複合体の一部として固定相(5)上に固定化される。図1の例において、リガンドLは、例えば、遷移金属が錯化していて、ヘキサ-ヒスチジンタグなどのオリゴヒスチジンペプチドに結合する能力を有する、キレート基でありうる。固相または固定相(5)は、TALON(登録商標)樹脂(Westburg、オランダ・ルースデン)などの固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)樹脂であってもよいだろう。あるいは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼをリガンド結合パートナーLBとして使用するなら、リガンドLはグルタチオンであってもよいだろう。この場合、固相(5)は、グルタチオンがカップリングされたセファロースマトリックスでありうる。
リガンドLへのリガンド結合パートナー(LB)の結合の結果として、標的細胞(3)は固相上に固定化され、試料からは標的細胞(3)が枯渇していく。標的細胞(3)はこうして試料中の他の構成要素から分離されていく。所望であれば、次に、適切な洗浄緩衝液で固相を洗浄してもよい(図1には示していない)。その後、競合試薬(6)を固定相(5)と接触させる。競合試薬(6)はリガンド(L)に特異的に結合して、リガンド(L)とリガンド結合パートナー(LB)との間の結合を破壊しうる。加えて、受容体分子結合試薬の結合パートナー(C)と多量体化試薬(2)の結合部位(Z)との間の結合も破壊される。これは、例えば、多量体化試薬の結合部位(Z)に結合することによって受容体分子結合試薬(2)の結合パートナーCを多量体化試薬(2)の結合部位(Z)から解離させる競合試薬(12)によって達成されうる。この例では低アフィニティー受容体分子結合試薬(1)を使用しているので、受容体分子結合試薬(1)は受容体分子(4)から解離する(図1には示していない)。結果として、標的細胞(3)は、単離に使用した試薬を一切含まずに、固定相(5)から放出されてくる。リガンドLが、遷移金属が錯化しているキレート基であり、リガンド結合パートナーLBがオリゴヒスチジンタグである例では、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合を、EDTAまたはEGTAなどの金属キレーターによって破壊しうる。この例は、競合試薬が競合剤そのものである必要はなく、リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間または結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間のいずれかに形成された結合を破壊できる任意の化合物であることができることを示している。多量体化試薬(2)がストレプトアビジンムテインであり、結合パートナーCがストレプトアビジン結合ペプチドである、図1のこの例では、各競合試薬(12)は、ストレプトアビジンのビオチン結合部位に結合する任意の化合物、例えば遊離のストレプトアビジン結合ペプチド、またはビオチンもしくはビオチン誘導体、例えばイミノビオチンまたはデスチオビオチンでありうる。同様に、競合試薬はpHのシフトであることもできる。というのも、ストレプトアビジンへのストレプトアビジン結合ペプチドの結合は、pH4などの低pHによって破壊することができるからである。加えて、ここで、図1に示すように固形支持体上に固定化された標的細胞(3)の溶出/単離には、リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間の結合を破壊する必要はないことに注意されたい。むしろ、固形支持体から標的細胞を放出するには、多量体化試薬の結合部位Zへの受容体分子結合試薬(1)の結合パートナーCの結合を破壊すれば十分である。したがって、これに関連して、リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間に形成される結合は可逆的である必要さえなく、不可逆的であることもでき、標的細胞(3)が受容体分子結合試薬(1)の結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間に形成された可逆的結合を介して結合している多量体化試薬(2)の固定化に役立つことしかできなくてもよいことに注意されたい。ただし、リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間に形成される結合も可逆的であれば、有利でありうる。というのも、それにより、固相の再生が可能になるからである。これに関連して、リガンド結合パートナーLBは多量体化試薬(2)に含まれるのではなく受容体分子結合試薬(1)に含まれていてもよいことにも注意されたい。多量体化試薬がストレプトアビジンムテインであり、かつリガンドLがそこに遷移金属が錯化していて、オリゴヒスチジンペプチドに結合する能力を有するキレート基である、図1のこの具体例において、受容体分子結合試薬は、その2つのポリペプチド鎖の一方(例えば重鎖)のC末端に結合パートナーCとしてストレプトアビジン結合ペプチドを持ち(上記参照)、かつ他方のポリペプチド鎖(例えば軽鎖)のC末端にリガンド結合LBとしてヘキサヒスチジンタグを持つ、Fabフラグメントなどの抗体フラグメントでありうる。ヘキサヒスチジンタグが立体的にアクセス可能であることを確実にするために、Fabフラグメントの軽鎖は、定常ドメインのC末端とヘキサヒスチジンタグとの間に「延長部分(extender)」として、人工的リンカーを有してもよいだろう。これに関連して、前記2つの結合の破壊、すなわち多量体試薬(2)と受容体分子結合試薬(1)の結合パートナーCとの間の結合および固相のリガンドLと多量体化試薬のリガンド結合パートナーLBとの間の結合の破壊は、競合試薬としてビオチンとEDTAの両方を含有する緩衝液の添加によって、都合よく同時に達成できることにも注意されたい。ビオチンは結合パートナーC(ストレプトアビジン結合ペプチド)を多量体化試薬から解離させ、金属キレーターとしてのEDTAは、リガンドLへのヘキサヒスチジンタグの結合を媒介する金属イオンを錯化することによってヘキサヒスチジンタグを放出させ、よって受容体分子結合試薬を固相から放出させるであろう。
(図2)標的細胞表面上に受容体分子(4)を有する標的細胞(3)を単離する方法のさらなる一態様を表す。受容体分子(4)に特異的に結合することができる結合部位(B)を有する受容体分子結合試薬(1)を用意する。受容体分子結合試薬(1)は、可溶性多量体化試薬(2)の結合部位(Z)に可逆的に結合することができる結合パートナー(C)も含んでいる。多量体化試薬(2)は、受容体結合試薬(1)に含まれる結合パートナー(C)に特異的に結合する複数の結合部位(Z)を有する。標的細胞(3)に結合することができる多価結合複合体が形成される。多量体化試薬(2)の結合部位(Z)は、固相に含まれるリガンド(L)に結合する能力を有するリガンド結合パートナー(LB)も規定する。したがって、図2の例では、リガンド結合パートナーLBは結合部位Zと同一である。標的細胞(3)を含む試料を多価結合複合体と接触させると、標的細胞(3)が前記結合複合体に結合する。リガンド結合パートナー(LB)をも規定する結合部位(Z)に結合することができるリガンド(L)を含む、クロマトグラフィー用の固定相またはビーズなどの固相(5)を用意する。結果として、多量体化試薬(2)上の遊離の結合部位(Z)はリガンド(L)に結合し、それにより、標的細胞/多価結合複合体の一部として標的細胞を固定相(5)上に固定化する。これにより、試料からは標的細胞(3)が枯渇し、標的細胞(3)は試料の他の構成要素から分離される。
図2に図解する本発明の方法の例において、受容体分子結合試薬(1)は、ここでも、受容体分子(4)に対してその結合部位(B)が低アフィニティー結合を呈するFabフラグメントなどの抗体フラグメントでありうる。受容体分子結合試薬の結合パートナーCはストレプトアビジン結合ペプチドでありうる。例えば結合パートナーCは、Junttila et al., Proteomics 5(2005), 1199-1203または米国特許第7,981,632号に記載の、配列Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys(SEQ ID NO:3、「Strep-tag(登録商標)」)、配列
Figure 0006678593
(SEQ ID NO:11、「di-tag3」としても知られている)、または配列
Figure 0006678593
(SEQ ID NO:12、「di-tag2」としても知られている)のストレプトアビジン結合ペプチドであることができる。CD3、CD4、CD8(T細胞マーカー)、CD8、CD62L、CD45RA(メモリーT細胞のマーカー)、CD4、CD25、CD45RA(調節性T細胞のマーカー)、CD56(ナチュラルキラー細胞のマーカー)、CD19(B細胞マーカー)およびCD34(幹細胞マーカー)などの細胞表面受容体に結合するような組換えFabフラグメントは、例えば「Streptamer(登録商標)」試薬として、IBA GmbH(ドイツ・ゲッチンゲン)から市販されており、したがって、本発明の方法を使ってそれぞれの細胞を単離するための受容体結合分子として使用することができる。ここで言及するストレプトアビジン結合ペプチドはいずれも、同じ結合部位、すなわちストレプトアビジンのビオチン結合部位に結合する。そのようなストレプトアビジン結合ペプチドの1種または複数種を結合パートナーCとして使用するなら、多量体化試薬(2)は、野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Val44-Thr45-Ala46-Arg47(SEQ ID NO:19)を含むストレプトアビジンムテイン「m1」、または野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Ile44-Gly45-Ala46-Arg47(SEQ ID NO:20)を含むストレプトアビジンムテイン(類似体)「m2」などといった、ストレプトアビジンムテインである。典型的には可溶性の多量体化試薬(2)が使用される。ストレプトアビジンムテインの場合、この可溶性多量体化試薬は、例えば、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはストレプトアビジンもしくはアビジンの任意のムテイン(類似体)のオリゴマーまたはポリマーでありうる。そのような多量体化試薬は、例えば、IBA GmbH(ドイツ・ゲッチンゲン)から「Strep-Tactin(登録商標)PE for Fab Streptamers」(カタログ番号6-5001-010または6-5011-010)として市販されている。これらのオリゴマーはストレプトアビジン、アビジンまたはそれらのムテインの四量体を3つまたはそれ以上含みうる。これらのオリゴマーまたはポリマーは多糖によって架橋されていてもよい。ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはストレプトアビジンもしくはアビジンのムテインのそのようなオリゴマーまたはポリマーは、第1工程として、本質的にNoguchi, A., Takahashi, T., Yamaguchi, T., Kitamura, K., Takakura, Y., Hashida, M. & Sezaki, H.(1992)「Preparation and properties of the immunoconjugate composed of anti-human colon cancer monoclonal antibody and mitomycin C dextran conjugate」Bioconjugate Chemistry 3, 132-137に記載されているように、多糖、例えばデキストランにカルボキシル残基を導入することによって、調製することができる。第2工程では、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはそれらのムテインを、内部リジン残基および/または遊離N末端の1級アミノ基を介して、デキストラン主鎖中のカルボキシル基に、従来のカルボジイミドケミストリーを使ってカップリングする。あるいは、グルタルジアルデヒド(glutardialdehyde)などの二官能性リンカーで架橋することによって、または文献記載の他の方法によって、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはストレプトアビジンもしくはアビジンの任意のムテインの適切な架橋オリゴマーまたはポリマーを得てもよい。「クリックケミストリー」によって、例えば、アジドと末端アルキン基との間の1,3-双極子付加環化反応によって、ストレプトアビジンのオリゴマーまたはポリマーを得ることも可能である。この目的のために、アジド基とアルキン基をそれぞれ、アジドスクシンイミジルエステル(Life Technologiesから入手可能、カタログ番号A10280)およびアルキンスクシンイミジルエステル(Life Technologiesから入手可能、カタログ番号A10279)などといった市販の試薬によって、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテイン中に導入することができる。次に、アジド基を持つストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインを、通常は化学量論的モル量の、アルキン基を持つストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインと反応させることで、オリゴマー状(すなわち3つ以上の個別ストレプトアビジン四量体)またはポリマー状の多量体化試薬を得る。
図2の例において、固相のリガンドLは、例えば、固相に共有結合で取り付けられたビオチンであることができる。固相のビオチンは多量体化試薬(2)の遊離結合部位(Z)に結合し、それによって、標的細胞を、標的細胞/多価結合複合体の一部として固相(5)上に固定化する。そのような固相は、例えば、Affiland S.A.(ベルギー・アンス-リエージェ(Ans-Liege))から入手できる(d)-ビオチンSepharose(商標)、IBA GmbH(ドイツ・ゲッチンゲン)から入手できるビオチン-アガロース、または本明細書の実験項に記載する実験プロトコールを使って得られるビオチンが共有結合されたSuperflow(登録商標)アガロースでありうる。この例において、固相のリガンドLは、もう1つの選択肢として、デスチオビオチン、イミノビオチン、2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン)安息香酸(HABA)またはストレプトアビジン結合ペプチドなどといった、ビオチンの誘導体であってもよい。
次に、固定相(5)を競合試薬(7)と接触させる。競合試薬(7)はそれ自体が(全体として)多量体化試薬(2)の結合部位(Z)に結合できるものであってよい。あるいは、競合試薬(7)は、受容体分子結合試薬(1)の結合部位(C)に結合する結合部位(8)を有しうる。多量体化試薬(2)への競合試薬(7)の競合的結合により、競合試薬は、受容体分子結合試薬(1)の結合部位Cと多量体化試薬(2)の結合部位(Z)との間の結合を、例えば解離によって、破壊する。上に説明したように、固相のリガンドLも、多量体化試薬(2)の結合部位(Z)に結合する。したがって競合試薬は、結合しているリガンドLも、多量体化試薬(2)から解離させる。そうすることにより、多量体化試薬(2)は、固相(5)から放出されていく。標的細胞(3)は多量体化した受容体分子結合試薬(1)に結合していたので、標的細胞(3)も、固相(固定相)(5)から放出されていき、例えば、固定相(5)をクロマトグラフィーマトリックスとするカラムから溶出する。図2のこの例では、競合試薬(7)は、多量体化試薬(2)の結合部位(Z)に「全体として」結合するビオチンであってもよいだろう。この場合、遊離のビオチンは、多量体化試薬(2)において、固相(5)に共有結合でカップリングされているビオチンを(競合的に)解離させることになり、受容体分子結合試薬として作用しかつストレプトアビジン結合ペプチドを持つFabフラグメントと共に、リガンドLとして作用する。したがって、固相(5)がクロマトグラフィー材料である場合、固定化標的細胞(3)を遊離のビオチンと接触させた後に、結果として得られる溶出液は、単離された標的細胞(3)、遊離の受容体分子結合試薬(1)、(可溶性)ストレプトアビジン多量体化試薬(2)ならびに遊離のビオチンを含有する。このように、この単離混合物は、国際特許出願WO 2013/124474に記載の「選択カートリッジ(selection cartridge)」の溶出液と同じ試薬を含有する。これは、もし固相(5)がクロマトグラフィー用の固定相(5)であるなら、本発明の方法は、国際特許出願WO 2013/124474の「選択カートリッジ」で実施される標的細胞の単離方法に取って代わることができることを意味している。したがって、本発明の方法は、それをカラムクロマトグラフィーに実装した場合には、国際特許出願WO 2013/124474の「選択カートリッジ」に取って代わることができる。加えて、そのようなクロマトグラフィーカラムの溶出液の試薬は、国際特許出願WO 2013/124474に記載の「除去カートリッジ(removal cartridge)」によって除去することができる。これに関連して、ビオチン-Sepharose(商標)などの固相は、滅菌された形態で入手できることに注意されたい。したがって、滅菌ビオチン-Sepharose(商標)含有カートリッジを使用することにより、本発明の方法は、GMP条件下で細胞を単離するための自動化閉鎖系に容易に実装することができる。したがって、本発明は、細胞ベースの治療法のためのT細胞またはB細胞などといった関心対象の標的細胞を得るための、簡単でしかもエレガントなアプローチを提供する。これに関連して、本発明には、同じ(標準化された)多量体化試薬を、所望する任意の細胞タイプの単離に使用することができるという、追加の利点があることにも注意されたい。本多量体化試薬は同じ固相(例えばビオチン-Sepharose(商標))と一緒に使用することができるので、a)固相上での固定化のために十分な遊離結合部位Zとb)受容体分子結合試薬の多価複合体を形成するために同じ所定の(過剰な)数の遊離結合部位Zとを提供するオリゴマー状ストレプトアビジンムテインなどといった同じ多量体化試薬を、常に使用することが可能である。したがって本発明は、ある特定細胞タイプの単離に使用される特異的受容体分子結合試薬とは無関係に、多価結合複合体の形成のために十分な数の結合部位Zが確実に提供されるようにすることを可能にする。加えて、固相上での細胞の固定化に先だって標的細胞が多量体化試薬および受容体分子結合試薬と共にインキュベートされることは、本発明の方法のさらなる利点である。結合した細胞を含有する多価複合体を形成させるためのこのインキュベーションは、a)所定の小体積において行うことができ、それによって形成される複合体の濃度が増加し、かつb)ここでも単離しようとする細胞タイプとは無関係に、所定の時間内に行うことができる。したがって本発明により、標的細胞の性質に依存することなく、標的細胞の単離を標準化することが可能になる。
(図3)受容体分子結合試薬(1)が2つ以上の試薬またはサブユニットから形成される、標的細胞を分離/単離する方法の一態様を示す。アダプター試薬(9)と受容体分子結合プレ試薬(pre-reagent)(100)とを互いに接触させていく。受容体分子結合プレ試薬(100)は、アダプター試薬(9)に含まれる結合部分(10)のための結合部位(11)を有する。アダプター試薬(9)と受容体結合プレ試薬(100)は結合部位(11)および結合部分(10)を介して互いに結合する。こうして形成された受容体結合試薬(1)は結合部位(B)を有し、これは、受容体結合プレ試薬(100)に含まれていたものでありうる。受容体結合試薬(1)は、多量体化試薬(2)の結合部位(Z)に特異的かつ可逆的に結合することができる結合パートナー(C)も含む。結合パートナー(C)は、アダプター試薬(9)に含まれていたものでありうる。後は、図1に表したように、本方法を行いうる。結合パートナー(C)に結合する能力を有する複数の結合部位(Z)を含有する多量体化試薬(2)を加えうる。多量体化試薬(2)は、リガンド(L)に特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナー(LB)も含む。受容体分子結合試薬(1)は、結合パートナー(C)を介して、多量体化試薬(2)上の結合部位(Z)に結合する。標的細胞(3)に結合することができる多価結合複合体が形成される。標的細胞(3)を含有する試料をこの多価結合複合体と接触させると、標的細胞(3)は多価結合複合体に結合する。リガンド結合パートナー(LB)が結合するリガンド(L)を含有する固定相(5)を用意する。結果として、標的細胞/多価結合複合体が、固定相(5)上に固定化されていく。リガンド(L)に特異的に結合する競合試薬(6)を加える。これにより、リガンド(L)とリガンド結合パートナー(LB)との間の結合が破壊され、標的細胞/多価結合複合体は固定相(5)から放出されていく。
(図4)受容体分子結合試薬が、例えば図2の例で言及したストレプトアビジン結合ペプチドを持つFabフラグメント(111)である、標的細胞を分離/単離する方法の一態様をさらに図解している。Fab分子は、標的細胞表面上の受容体分子、例えばT細胞上に存在するCD3またはCD8などの細胞表面受容体に結合する。多量体化試薬は多量体型ストレプトアビジンムテイン(12)、例えば野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Val44-Thr45-Ala46-Arg47(SEQ ID NO:19)を含むストレプトアビジンムテイン「m1」のオリゴマー、または野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Ile44-Gly45-Ala46-Arg47(SEQ ID NO:20)を含むストレプトアビジンムテイン「m2」のオリゴマーである。このオリゴマーは、複数のストレプトアビジンムテイン分子を化学的にカップリングすることによって形成されうる。この多量体型ストレプトアビジンムテイン(12)は、Fabフラグメント(111)のストレプトアビジン結合ペプチドに対して、複数の結合部位Zを含有する。多量体型ストレプトアビジンムテイン(12)は、Ni Sepharose(商標)、NTA-アガロース、His60 Ni、HisPur樹脂またはTALON樹脂など(ここに挙げたものは市販されている固相の一部でしかない)の金属アフィニティーマトリックスに結合することができる6×Hisタグも含有する。ストレプトアビジン結合ペプチドを持つFabフラグメント(111)、多量体型ストレプトアビジンムテイン(12)および標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を接触させていると、標的細胞/多価結合複合体が形成される。この標的細胞/多価結合複合体を、固定化金属イオンを含む固定相と接触させると、複合体が、そしてそれによって標的細胞が、固定相上に固定化されていく。次に、例えばビオチンおよびEDTAまたはイミダゾールを加えることによって、標的細胞を溶出させることができる。
(図5)オリゴヒスチジンタグに結合することができる多量体化試薬のアセンブリを可能にする適切な部分を表す。図5A〜図5Dに示す部分は、Schmidt, J. et al., J. Biol. Chem. [2011]286, 48, 41723-41735から採用したものである。これらの化合物はビオチンと、オリゴヒスチジンタグに結合する能力を有する複数のニトリロ三酢酸(NTA)部分とを含有する。多量体化剤は、これらの試薬のいずれかをストレプトアビジンと反応させることによって得られる。ストレプトアビジンはホモ四量体であり、したがってビオチンに対する結合部位を4つ提供し、ビオチンはストレプトアビジンに不可逆的に結合するので、これらのビオチン化化合物の反応は複数(4〜16個)のキレート基Kを持つ試薬を生成させ、ここでは、各キレート基KがNi2+またはCo2+などの遷移金属イオンに結合する能力を有することにより、オリゴヒスチジンペプチドに結合する能力を多量体化試薬に与える。したがって、図5中の部分のキレート基をそのような遷移金属と錯化させると、多量体化試薬は、オリゴヒスチジンタグを持つ受容体分子結合試薬との多価複合体を形成することができる。Schmidtら(2011、前記)が記載しているように、受容体分子結合試薬は、例えば、オリゴヒスチジンタグがN末端に融合している可溶性主要組織適合遺伝子複合体(MHC)ペプチドでありうる。単なる一具体例として、そのようなMHCペプチドは、Schmidtら(2011、前記)が記述しているように、His-6タグ、His-12タグまたは2_His-6タグを含有するHLA-A0201ペプチドでありうる。そのような受容体結合試薬は「Histamer」とも呼ばれ、TC Metrix SA(スイス・エパランジュ)から、多量体型ニトリロ三酢酸(NTA)部分を結合部位Zとして使用する本明細書に記載の多量体化試薬と共に市販されている。
(図6)末梢血からCD4+細胞を濃縮するための実験の結果を示す。多量体型Strep-Tactin(登録商標)を多量体化試薬として使用し、ストレプトアビジン結合ペプチドを持つ抗CD4 Fabフラグメントを受容体分子結合試薬として使用した。ヒト血液からのCD4+白血球を例示的な標的細胞とした。固定相はビオチンをリガンドLとして含有した。蛍光活性化細胞選別法(FACS)を使って、細胞をフローサイトメトリー分析によって特徴づけた。図6Aは、全細胞のプロット(Accuri C6フローサイトメーター)を表す(ゲーティングなし)。細胞をCD3-PEおよびCD4-APCで染色した。図6Bは全細胞のプロット(ゲートP1)を表す。細胞をCD3-PEおよびCD4-APCで染色した。図6Cは全細胞のプロット(ゲートP1)を表す。細胞を染色しなかった。図6Dは、フラクションD+Wの細胞のプロット(ゲートP1)を表す。細胞をCD3-PEおよびCD4-APCで染色した。図6EはフラクションEのプロット(ゲートP1)を表す。細胞をCD3-PEおよびCD4-APCで染色した。図6FはフラクションRの細胞のプロット(ゲートP1)を表す。細胞をCD3-PEおよびCD4-APCで染色した。
(図7)図6に表したFACS分析の結果を要約した表を示す。全細胞の分析により、ゲーティングされたリンパ球の集団内で39.56%のCD4+細胞濃度が明らかになった。フロースルーフラクションおよび洗浄液フラクション中の細胞は、4.01%というCD4+細胞濃度まで枯渇する。ビオチンによる溶出により、95.04%というCD4+細胞の純度が明らかになった。カラム樹脂のピペット処理後に、物理的に溶出させた細胞は依然として88.26%の純度を示した。
(図8)実施例において行われる細胞精製カラムの例示的な組み立てを示す。市販のスピンカラムの下端を切除する(図8A)。次にカラムの上部を、メンブレンを含む市販遠心管の適切なキャップに挿入する(図8B)。上部カラム部分を持つキャップを、付属チューブ上に置く(図8C)。
(図9)国際特許出願WO 2013/124474に記載されているようにピペットチップをカラムとして使用するクロマトグラフィー精製(実施例10.1)、または細胞をCD8結合Fabフラグメントおよびビオチン化固相と共にプレインキュベートする本発明の方法の一態様を使用するクロマトグラフィー精製(実施例10.2)のどちらか一方によって、末梢血単核球(PBMC)の調製物からCD8+細胞を単離するための比較実験の結果を示す。図9Aは、国際特許出願WO 2013/124474に記載されている単離における、標的細胞を選択(単離)する前の初期PBMC調製物の、ウォッシュスルー(wash through)フラクションの、および溶出フラクション(CD8+細胞陽性フラクション)の、蛍光活性化細胞選別法(FACS)を使ったフローサイトメトリー分析のAccuri C6プロットを示し、一方、図9Bは、本発明の方法の一態様を使った単離における、標的細胞を選択(単離)する前の初期PBMC調製物の、ウォッシュスルーフラクションの、および溶出フラクション(CD8+細胞陽性フラクション)の、FACS分析のAccuri C6プロットを示す。図9Cは、単離されたCD8+細胞の収率および純度を両方法について比較した、棒グラフを示す。図9Cにおいて、0015という数字は国際特許出願WO 2013/124474による方法の結果を表し、一方、0016という数字は本発明の方法のこの態様の結果を表す。図9Cにおいて%で示す収率および純度に関する数値は、3回の独立した実験の平均値である。
(図10)国際特許出願WO 2013/124474に記載されているようにピペットチップをカラムとして使用するクロマトグラフィー精製、または細胞をCD3結合Fabフラグメントおよびビオチン化固相と共にプレインキュベートする本発明の方法の一態様を使用するクロマトグラフィー精製のどちらか一方によって、末梢血単核球(PBMC)の調製物からCD3+細胞を単離するための比較実験の結果を示す。図10Aは、国際特許出願WO 2013/124474に記載されている単離における、標的細胞を選択(単離)する前の初期PBMC調製物の、ウォッシュスルーフラクションの、および溶出フラクション(CD3+細胞陽性フラクション)の、蛍光活性化細胞選別法(FACS)を使ったフローサイトメトリー分析のAccuri C6プロットを示し、一方、図10Bは、本発明の方法の一態様を使った単離における、標的細胞を選択(単離)する前の初期PBMC調製物の、ウォッシュスルーフラクションの、および溶出フラクション(CD8+細胞陽性フラクション)の、FACS分析のAccuri C6プロットを示す。図10Cは、単離されたCD3+細胞の収率および純度を両方法について比較した、棒グラフを示す。図10Cにおいて、0015という数字は国際特許出願WO 2013/124474による方法の結果を表し、一方、0016という数字は本発明の方法のこの態様の結果を表す。図10Cにおいて%で示す収率および純度に関する数値は、3回の独立した実験の平均値である。
発明の詳細な説明
本明細書では、表面上の共通する特異的受容体分子によって規定される細胞および他の生物学的実体、例えば細胞小器官、ウイルス、リポソームまたはプリオンなどを、一般的には(バッチ方式または連続方式で行うことができる)流体クロマトグラフィーによって、単離または分離するための方法を提供する。以下で使用する「標的細胞」という用語は、一般に、そのような生物学的実体(細胞、細胞小器官、ウイルス、リポソームまたはプリオン)のすべてを指す。
以下の開示では、本発明を、本発明の第1局面の方法に関して広く一般に説明するが、以下の開示を本明細書において規定する本発明の第2局面、第3局面および第4局面の方法でも同様に実施できることは、明らかである。
本発明は、可溶性多量体化試薬を、受容体分子結合試薬または可溶性多量体化試薬のどちらか一方の一部であるリガンド結合パートナーLBに結合するリガンドLを有する固定相と組み合わせて使用することにより、例えば国際特許出願WO 2013/124474に記載されている公知の方法を上回る利点が、いくつか得られるという、驚くべき発見に基づいている。
第1に、本発明は、受容体結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞の試料をインキュベートしてから、その反応混合物を固定相と接触させる。そうすることにより、受容体分子への、したがって標的細胞への、受容体分子結合試薬の結合が平衡に達することを保証することができる。このインキュベーションは、多量体化試薬の複数の結合部位Zに一価受容体分子結合試薬を結合させることによる、一価受容体分子結合試薬の多量体化を含むので、これにより、受容体分子結合試薬を標的細胞とインキュベートした時に、アビディティ効果が確かに達成されうることが、保証される。加えて、受容体分子結合試薬および/または選択した標的細胞の種類に依存することなく、所定の多量体化試薬を使用することができるので、使用する受容体分子結合試薬および標的細胞とは無関係に、精製プロトコールを標準化することができる。
第2に、可溶性多量体化試薬は(多量体化した)受容体分子結合試薬への受容体分子結合試薬のアクセス可能性を改良すると考えられる。というのも、可溶性であることで、この多量体化試薬は、例えば、クロマトグラフィーマトリックスなどの固体表面上に固定化された立体的に制限され可動性も制限されている多量体化試薬よりも、間隙に入り込みやすく、または標的細胞の表面上の複雑な受容体分子と、よりよく相互作用することができるからである。
第3の利点として、受容体分子結合試薬が細孔に進入することで標的細胞の単離に利用できなくなることを防止するために、理想的には小さな孔径を有するクロマトグラフィーマトリックスを使用すべきである国際特許出願WO 2013/124474の方法と比較して、本方法では、未結合の受容体分子結合試薬が固相と接触することがないので、任意の固相を使用することができる。
第4に、常に同じ所定の多量体化試薬を使用することが可能であるため、所定の、そして少量の受容体分子結合試薬を、細胞の単離に使用することができる。
第5に、標的細胞の(形成された多量体型結合複合体の一部としての)固定化は、受容体分子結合試薬または多量体化試薬のどちらか一方のリガンド結合パートナーLBによって媒介されるので、この固定化は、使用する受容体分子結合試薬および標的細胞のタイプには依存しない。実際、任意の所与の細胞タイプの固定化に、同じ相互作用(リガンドLへのLBの結合)を使用することができる。したがって、これも、単離/精製プロトコールの標準化を可能にする。
最後に、本明細書においても説明するように、可溶性多量体化試薬の使用は、使用したすべての試薬(受容体分子結合試薬、多量体化試薬および競合試薬)のクロマトグラフィーによる除去を可能にする。これにより、リガンドLを含む固相の構成を、本明細書において説明する第1固定相または第2固定相の少なくとも一方と共に使用することが可能になる。そのような構成は、結果として、本明細書に記載する単離方法の容易な自動化を可能にし、よって、例えばGMP条件下で標的細胞を単離するための、自動化された閉じた機器の開発を可能にする(ここで、本明細書において記載するすべての試薬ならびにリガンドLを含む固相および第1固定相または第2固定相は、いずれもGMP条件下で調製できることに注意されたい)。
別段の言明がある場合を除き、この文書において使用する以下の用語は、明細書でも、請求項でも、以下に与える定義を有する。
本明細書において使用する「競合試薬」という用語は、一対の結合剤または結合部分間での複合体の形成、例えば受容体結合試薬に含まれる結合部位Bと標的細胞表面上の受容体分子との間、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬に含まれる結合部位Zとの間、またはリガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の複合体の形成を低減し、妨害し、または抑止することができる任意の試薬または条件を指す。「競合」という用語は、結合の任意の妨害を指し、そのような妨害の性質は問わないものとする。そのような妨害は、いくつかの態様では、一定の結合部位への非競合的結合でもありうる。可逆的結合がCa2+、Ni2+、Co2+、またはZn2+などの錯化した金属イオンによって媒介される場合、そのような競合機序の一例は、EDTAまたはEGTAなどのキレート試薬による金属キレーションである。この機序は、Ca2+の存在下で結合するカルモジュリンとカルモジュリン結合ペプチドなどの結合ペア、または固定化金属-キレートアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に使用される結合ペアにあてはまる。いくつかの態様において、競合試薬は、結合パートナーの1つの上に含まれる結合部位、例えば結合部位B、結合部位Z、結合パートナーCまたはリガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有する結合部位を有しうる。競合試薬全体がこれらの結合パートナーの1つの上に含まれる結合部位に特異的に結合する能力を有することも可能である。いくつかの態様において、競合は緩衝液のpHまたは塩強度の変化によってもたらされ、その場合、競合試薬は、増加したまたは減少したpHまたは塩強度のいずれかである。pHの変化は、例えば、ストレプトアビジン結合ペプチドへのストレプトアビジンの結合を解離させ/破壊するために、またはプロテインAもしくはプロテインGと抗体Fcドメインとの間の結合を解離させ/破壊するために、使用することができる。
「単離された」という用語は、1つまたは複数の標的細胞が、その/それらの正常な生理学的環境、例えば自然供給源から取り出されていることを示す。1つまたは複数の単離された細胞は、例えば、元々与えられたものとは異なる媒体、例えば水溶液に含まれるか、または異なる生理的環境下に置かれうる。典型的には、単離された細胞は、その環境、例えば適宜、溶液/懸濁液中に存在する全細胞において、それらが採取された環境における分率よりも高い分率を構成する。所望の標的細胞の単離は、いくつかの態様では、本明細書に記載する方法に加えて、遠心分離、濾過、または細胞クロマトグラフィーなどの一般的な細胞濃縮技法を含みうる。B細胞またはT細胞などのリンパ球は、例えば、末梢血、血液、脳脊髄液、またはそれらの濃縮フラクションから取得しうる。B細胞またはT細胞は、末梢血単核球(PBMC)、例えばヒトPBMCから取得しうる。そのようなPBMCは、例えば、細胞密度および/または細胞サイズに基づく公知の標準的技法を使って濃縮しうる。具体例として、PBMCは、密度勾配遠心分離により、例えばスクロース、デキストラン、Ficoll(登録商標)またはPercoll(登録商標)を使って、濃縮または単離しうる。
「単離された」は、典型的には、得られた試料、例えば溶出液またはフラクションが、細胞(細胞集団)の本質的に主要なタイプとして、標的細胞を含有すること、例えば標的細胞が、試料中に存在する細胞の約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約85%超、または約90%超に相当することを意味する。いくつかの態様において、単離された標的細胞は、試料中に存在する細胞の約95%超、または約97%超を占める。一態様において、単離された標的細胞は、試料中に存在する細胞の約99%超を占める。「単離された」は、標的細胞を含有する試料が、本明細書に記載する単離/精製方法を経た後に、反応物、例えば本明細書に規定する受容体結合試薬、多量体化試薬、または競合試薬を含まないことも包含する。
本明細書にいう「単離」とは、標的細胞を単離するために使用した試料の含有量(濃度)と比較して、本明細書に記載する方法の結果として得られる試料では標的細胞が濃縮されていることを意味する。上記に合致して、これは標的細胞が試料において、例えば試料中の細胞の全量の約0.1%というおよその含有量から、本明細書において開示する方法を使って得られる溶出液またはフラクションなどの試料における例えば約10%以上または20%以上まで、濃縮されうることを意味する。いくつかの態様において、標的細胞は、試料中の細胞の全量の約0.1%というおよその含有量から、本明細書に記載する方法で得られる試料における30%以上、例えば40%以上まで濃縮されうる。「単離」という用語には、試料における標的細胞の存在または非存在の検出も包含される。したがって、標的細胞の単離は、分析的目的または調製的目的のいずれかに使用することができる(例えば、標的細胞集団の存在を検出するために使用することができるだけでなく、試料中に存在する細胞の定量または細胞ベースの治療法を目的とする大規模な細胞の単離にも使用することができる)。分析目的には、診断的応用が含まれるほか、基礎研究における応用も含まれうる。例えばそのような基礎研究における応用では、例えばある特定受容体分子、例えばGタンパク質共役受容体(GPCR)または他の任意の生理学的に重要な受容体(例えばインスリン受容体)が、選ばれた宿主細胞中で組換え発現しているかどうか(下記参照)というスクリーニング目的に、本文書に記載する単離方法が使用される。
標的細胞の単離、精製または濃縮との関連において「固定相」とは、クロマトグラフィー系のうち、移動相と接触している部分である。クロマトグラフィー系に適用される試料の個々の構成要素は、移動相と固定相の間で各々の分配を示しうる。クロマトグラフィー中、固定相は一定の空間内に維持され、多くの態様では、少なくとも本質的に固定された位置を有する。「クロマトグラフィーマトリックス」および「固定相」という用語は本明細書においては相互に可換的に使用される。本発明では、固定相をバッチ方式または貫流方式のいずれかで使用しうる。
本明細書において使用する「標的細胞」という用語は、膜(これは、脂質二重層であることもできる)が、内部環境を外部環境(周囲)から隔離していて、1種類または複数種類の特異的受容体分子を、その生物学的実体/小胞の表面上に含んでいる、すべての生物学的実体/小胞を包含する。したがって、標的細胞/生物学的実体/小胞または標的細胞の集団は、その表面上の少なくとも1つの共通する特異的受容体分子の存在によって規定される。
標的細胞または標的細胞の集団は、例えばさまざまな異なる細胞または細胞集団を含みうる試料から単離される。少なくとも1つの特定受容体分子を含有する事実上任意の標的細胞を、試料に含まれる他の構成要素から分離することができる。本明細書に記載する方法では、後述するようにアビディティ効果を達成するために、受容体分子は標的細胞の表面上に典型的には2コピー以上存在する。
いくつかの態様において、標的細胞は細菌細胞などの原核細胞でありうる。細胞は、いくつかの態様では、古細菌でありうる。細胞は、いくつかの態様では、ウイルスまたは細胞小器官、例えばミトコンドリア、クロロプラスト、ミクロソーム、リソソーム、ゴルジ装置または核でありうる。いくつかの態様において、細胞は、真核細胞、例えば植物細胞、真菌細胞、酵母細胞、原生動物または動物細胞でありうる。標的細胞は、いくつかの態様では、細胞核を含む。いくつかの態様において、標的細胞は哺乳動物細胞、例えば限定するわけではないが、ヒト、マウス、ウサギ、モルモット、リス、ハムスター、ネコ、イヌ、キツネザル、ヤギ、ブタ、ウマ、アカゲザル、マカク、またはチンパンジーから得られる細胞である。哺乳動物細胞の例には、血液細胞または組織細胞、例えば肝細胞または幹細胞、例えば適切な供給源に由来するCD34陽性末梢幹細胞またはNanogもしくはOct-4発現幹細胞があるが、それらに限定されるわけではない。血液細胞は、例えば、白血球または赤血球でありうる。白血球は、例えば、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球、マクロファージまたは樹状細胞でありうる。各リンパ球は、例えば、T細胞、例えばCMV特異的CD8+Tリンパ球、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞(メモリーT細胞の具体例はCD62LCD8特異的セントラルメモリーT細胞である)または調節性T細胞(Tregの具体例はCD4CD25CD45RATreg細胞である)、Tヘルパー細胞(例えばCD4Tヘルパー細胞)、B細胞またはナチュラルキラー細胞でありうるが、これらは具体例の一部に過ぎない。
標的細胞は典型的には、細胞集団を含む細胞であるか、または上述のように、膜(これは、いくつかの態様では脂質二重層でありうる)が内部を周囲から隔離している生物学的実体の他の任意の集団である。標的細胞は、特定の特異的受容体分子を表面上に有することを、さらなる特徴とする。そのような標的細胞は、引き続いて、使用した精製試薬、例えば受容体結合試薬、競合試薬および/または多量体化試薬をいずれも除去することで、本明細書に記載する方法によって精製することができる。それぞれの方法または使用には、標的が細胞または細胞小器官であるなら、生理学的状態を変化させないという利点の他に、それら精製された生物学的実体を医薬として使用する際に、精製試薬が患者などの対象に投与されないという規制上の利点もある。
標的細胞は、例えば組織の細胞、例えば器官またはその一部の細胞でありうる。各器官の例には、副腎組織、骨、血液、膀胱、脳、軟骨、大腸、眼、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋、神経、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、小腸、脾臓、胃、精巣、胸腺、腫瘍、血管もしくは子宮組織、または結合組織があるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、細胞は幹細胞、リンパ球またはがん細胞である。
標的細胞を単離しようとする試料は、任意の起源を有しうる。例えば試料は、ヒト、動物、植物、細菌、真菌、または原生動物に由来しうる。したがって、限定するわけではないが、土壌試料、空気試料、環境試料、細胞培養試料、骨髄試料、食品試料、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、糞便試料、精液試料、リンパ液試料、脳脊髄液試料、鼻咽頭洗浄液試料、喀痰試料、口腔スワブ試料、のどスワブ試料、鼻腔スワブ試料、気管支肺胞洗浄液試料、気管支分泌物試料、乳汁試料、羊水試料、生検試料、がん試料、腫瘍試料、組織試料、細胞試料、細胞培養試料、細胞溶解物試料、ウイルス培養物試料、爪試料、毛髪試料、皮膚試料、法医学的試料、感染試料、院内感染試料、腔(space)試料またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される以下の試料のいずれか。所望であれば、各試料は、任意の程度に前処理されていてもよい。具体例として、組織試料は、本明細書に記載する方法において使用する前に、消化、ホモジナイズ、または遠心分離されていてもよい。もう1つの具体例では、血液などの体液の試料を、血液細胞の標準的な単離によって得てもよいであろう。本明細書に記載する単離方法を基礎研究において使用する場合、試料はインビトロ細胞培養実験の細胞試料であってもよいだろう。試料は典型的には、溶液または分散液などの流体の形態で調製されたものであるだろう。
標的細胞表面上に位置する受容体分子は、生物学的実体のアクセス可能な表面上に位置するものを含めて、本発明の方法における分離プロセス中に、細胞表面上に存在する任意の分子でありうる。受容体分子は、受容体分子結合試薬が結合対象とする分子である。いくつかの態様において、受容体はペプチドまたはタンパク質、例えば膜受容体タンパク質である。いくつかの態様において、受容体は脂質または多糖である。タンパク質である受容体分子は、末梢膜タンパク質または内在性膜タンパク質でありうる。これは、いくつかの態様において、膜をまたぐ1つまたは複数のドメインを有しうる。いくつかの具体例として、膜タンパク質は、CD3、CD4、CD8、CD247(T細胞マーカー)、CD8、CD62L、CD45RA(メモリーT細胞のマーカー)、CD4、CD25、CD45RA(調節性T細胞のマーカー)、CD56(ナチュラルキラー細胞のマーカー)、CD19(B細胞マーカー)およびCD34、Oct-4、Nanog(幹細胞マーカー)などのCD分子(分化抗原群(cluster of differentiation))でありうるが、これらは具体例の一部に過ぎない。したがって標的細胞は、例えば、血液細胞の集団または部分集団、例えばリンパ球、例えばT細胞、Tヘルパー細胞、例えばCD4Tヘルパー細胞、B細胞またはナチュラルキラー細胞;単球;または幹細胞、例えばCD34陽性末梢幹細胞またはNanogもしくはOct-4発現幹細胞でありうる。表面上にCD8を有するT細胞の大半は細胞傷害性T細胞である。したがって標的細胞はCD8細胞傷害性T細胞でありうる。受容体は腫瘍細胞のマーカーであってもよい。膜タンパク質は、Gタンパク質共役受容体、例えば匂い受容体、ロドプシン受容体、ロドプシンフェロモン受容体、ペプチドホルモン受容体、味覚受容体、GABA受容体、オピエート受容体、セロトニン受容体、Ca2+受容体、メラノプシン、神経伝達物質受容体、受容体キナーゼ、例えばセリン/スレオニンキナーゼ、チロシンキナーゼ、ポリン/チャネル、例えばクロライドチャネル、カリウムチャネル、または細胞接着受容体、例えばメタロプロテアーゼ、インテグリンまたはカドヘリンであってもよい。
本明細書に記載する方法は、流体クロマトグラフィーの一部として、典型的には液体クロマトグラフィーの一部として、実施しうる。本発明においては、その材料が、標的細胞などの選ばれた生物学的実体のクロマトグラフィー単離に適切である限り、任意の材料をクロマトグラフィーマトリックスとして使用しうる。適切なクロマトグラフィー材料は、充填クロマトグラフィーカラムにおいて細胞単離および/または細胞分離に望ましい条件下で使用した場合に、細胞の生存性(または生物学的実体の生存性もしくは安定性)にとって、少なくとも本質的に無害である、すなわち有害でない。本明細書に記載する方法において使用されるクロマトグラフィーマトリックスは、典型的には予め定められた場所、典型的には予め定められた位置に留まるが、分離しようとする試料の場所およびそこに含まれる構成要素の場所は変化していく。具体例として、充填床クロマトグラフィーカラムを使用する場合、固定相は一般にカラムの底部とフローアダプタとの間に閉じ込められる。クロマトグラフィーを拡張床(expanded bed)吸着として行う場合、樹脂は使用に際して流動化状態になり、使用されるビーズは、個々のビーズがその沈降速度が上向き液体流速度と一致する位置をとる濃度勾配の形で配置される。このように、クロマトグラフィーマトリックスは、当業者の一般的理解と合致して、固定相はクロマトグラフィー系のうち移動相がその中を通過する部分であり、そこでは、液相に含まれる構成要素が相間に散在していくという点で、「固定相」である。
カラムクロマトグラフィーにおいてビーズを使用する場合、ビーズは一般にサイズがかなり均一であるが、拡張床吸着ビーズでは、サイズが不定であって、典型的には約50〜約400mmの範囲にある。これに関して、液体試料に加えられ、試料と混合され、次に例えばビーズを一時的にその場に(例えば外部磁性体によって、または遠心分離によって)保持しつつ上清(液体)を捨てることなどによって試料から取り出される、自由に移動できる磁気ビーズなどの粒子は、一態様では、本明細書にいう固定相ではないことに注意されたい。しかし、本発明の方法は、バッチ方式でも実施することができる。そのような方法では、(磁気)ビーズを、そのようなビーズの上に標的細胞を(標的細胞、受容体結合試薬およびアフィニティー/多量体化試薬の間で形成される複合体によって)固定化するために、標的細胞を含有する試料に加え、次に、例えばビーズを一時的にその場に保持しつつ、上清を捨てることなどによって、ビーズを試料から分離する。このようなバッチ法も本発明の方法である。
典型的には、各クロマトグラフィーマトリックスは固相または半固相の形態を有し、一方、単離/分離しようとする標的細胞を含有する試料は流体相である。分離を達成するために使用される移動相も同様に流体相である。クロマトグラフィーマトリックスは(任意の適切なサイズおよび形状の)粒状物質またはモノリシッククロマトグラフィー材料、例えば紙基材またはメンブレンであることができる。したがってクロマトグラフィーは、例えばカラムクロマトグラフィーであることができる。いくつかの態様において、クロマトグラフィーは平面クロマトグラフィーでありうる。いくつかの態様において、クロマトグラフィーは拡張床クロマトグラフィーでありうる。粒状マトリックス材料をカラムクロマトグラフィーにおいて使用する場合、その粒状マトリックス材料は、例えば約5μm〜約200μm、または約5μm〜約400μm、または約5μm〜約600μmの平均粒径を有しうる。以下に詳しく説明するように、クロマトグラフィーマトリックスは、例えば、ポリマー樹脂または金属酸化物またはメタロイド酸化物であるか、それらを含みうる。平面クロマトグラフィーを使用する場合、マトリックス材料は、平面クロマトグラフィーに適した任意の材料、例えば従来のセルロース系または有機ポリマー系メンブレン(例えば紙メンブレン、ニトロセルロースメンブレンまたはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブレン)またはシリカコートガラスプレートでありうる。一態様において、クロマトグラフィーマトリックス/固定相は、非磁性材料または非磁化可能材料である。
当技術分野において使用されていて、本明細書に記載する方法においても好適な、非磁性または非磁化可能クロマトグラフィー固定相には、誘導体化シリカまたは架橋ゲルがある。架橋ゲル(これは典型的にはビーズ状に製造される)は、天然ポリマー、すなわち自然に見いだされるポリマークラスに基づきうる。例えば、クロマトグラフィー固定相の基礎となる天然ポリマーは多糖である。各多糖は一般に架橋される。多糖マトリックスの例は、アガロースゲル(例えばSuperflow(商標)アガロースまたはSepharose(登録商標)材料、例えばさまざまなビーズサイズおよび孔径で市販されているSuperflow(商標)Sepharose(登録商標))または架橋デキストランのゲルである。さらにもう1つの具体例は、デキストランが共有結合されている粒状架橋アガロースマトリックスであり、これは、Sephadex(登録商標)またはSuperdex(登録商標)として、どちらもGE Healthcareから、(さまざまなビーズサイズおよびさまざまな孔径で)市販されている。そのようなクロマトグラフィー材料のもう1つの具体例はSephacryl(登録商標)であり、これもGE Healthcareからさまざまなビーズサイズおよび孔径で入手できる。
架橋ゲルは、合成ポリマー、すなわち自然には見いだされないポリマークラスにも基づきうる。通常、細胞分離用のクロマトグラフィー固定相の基礎となるそのような合成ポリマーは、極性モノマー単位を有しそれゆえに本質的に極性を有するポリマーである。そのような極性ポリマーは親水性である。親水性(「水親和性」)分子は、疎油性(「嫌脂質性」)とも呼ばれ、水との双極子-双極子相互作用を形成することができる部分を含有する。疎水性(「嫌水性」)分子は、親油性とも呼ばれ、水から分離する傾向を有する。
好適な合成ポリマーの具体例は、ポリアクリルアミド、スチレン-ジビニルベンゼンゲル、およびアクリレートとジオールまたはアクリルアミドとジオールのコポリマーである。具体例は、Fractogel(登録商標)として市販されているポリメタクリレートゲルである。さらにもう1つの例は、Toyopearl(登録商標)として市販されているエチレングリコールとメタクリレートのコポリマーである。いくつかの態様において、クロマトグラフィー固定相は、多糖およびアガロースの複合材マトリックスまたは複合材またはコポリマー、例えばポリアクリルアミド/アガロース複合材、または多糖およびN,N'-メチレンビスアクリルアミドの複合材マトリックスもしくは複合材もしくはコポリマーなどといった、天然および合成ポリマー構成要素も含みうる。デキストランとN,N'-メチレンビスアクリルアミドのコポリマーの具体例は、上述したSephacryl(登録商標)シリーズの材料である。誘導体化シリカは、合成ポリマーまたは天然ポリマーにカップリングされたシリカ粒子を含みうる。そのような態様の例には、多糖グラフトシリカ、ポリビニルピロリドングラフトシリカ、ポリエチレンオキシドグラフトシリカ、ポリ(2-ヒドロキシエチルアスパルトアミド)シリカおよびポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)グラフトシリカがあるが、それらに限定されるわけではない。
本明細書に記載する方法において使用されるクロマトグラフィーマトリックスなどの固相は、磁気誘引可能(magnetically attractable)粒子も含みうる。そのような各磁気誘引可能粒子は、多量体化試薬のリガンド結合パートナーLBに結合する能力を有するリガンドLを含みうる。磁気誘引可能粒子は反磁性、強磁性、常磁性または超常磁性材料を含有しうる。超常磁性材料は永久磁化されることなく誘起磁場をもって磁場に応答する。酸化鉄に基づく磁性粒子は、例えばDynal BiotechからDynabeads(登録商標)として、Miltenyi Biotecから磁性MicroBeadsとして、CPG Inc.から磁性多孔性ガラスビーズとして市販されているほか、Roche Applied Science、BIOCLON、BioSource International Inc.、micromod、AMBION、Merck、Bangs Laboratories、Polysciences、またはNovagen Inc.などといったさまざまな他の供給源からも市販されているが、これらは一部に過ぎない。超常磁性CoおよびFeCoならびに強磁性Coナノ結晶に基づく磁性ナノ粒子は、例えばHuetten, A.ら(J. Biotech.(2004), 112, 47-63)によって記載されている。いくつかの態様において、本明細書に開示する方法において使用されるクロマトグラフィーマトリックスは、磁気誘引可能物を一切含まない。
標的細胞を単離する方法において、クロマトグラフィーマトリックスはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスとして使用しうる。アフィニティークロマトグラフィーマトリックスはそれ自体が、選択した標的に特異的に結合する能力を有する永続的に結合された(通常は共有結合された)部分を含みうる。例えば従来のアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、所与の特定標的に結合する抗体を含みうる。あるいは、固定化金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に使用されるクロマトグラフィーマトリックスを、例えば金属イオンおよびタンパク質の一定の露出側鎖またはオリゴヒスチジンタグとの間に配位結合を形成することができる三座配位イミノ二酢酸などのキレートリガンド剤で修飾する。このように当技術分野において、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、一般に、単離しようとする標的に単独で特異的に結合することができるように設計されている。本明細書に開示する方法のいくつかの態様では、固定相が、国際特許出願WO 2013/124474に記載されている「選択カートリッジ」の代用品として使用される。
多量体化試薬は、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーCに対して、2つ以上の結合部位Zを含む。その場合に、形成される非共有結合的複合体では、2つ以上の受容体結合試薬が多量体化試薬に結合している。結合した受容体結合試薬は互いに密に配置されるので、(少なくとも2コピーの)受容体分子を有する標的細胞が試料中に存在していて、当該特定受容体分子に結合することができる1つまたは複数の結合部位Bを有する受容体結合試薬と接触した場合には、アビディティ効果が生じうる。いくつかの態様において、受容体結合試薬は、標的細胞上の受容体に対して複数の、例えば2つまたはそれ以上の、結合部位Bを含む。
したがって、多量体化試薬に複数の受容体結合試薬が結合している本明細書に記載する方法では、米国特許第7,776,562号または国際特許出願WO 02/054065号に記載されているような、標的細胞/多価結合複合体の形成を可能にするアビディティ(多量体化)効果が生じうる。この標的細胞/多価結合複合体を固定相上に可逆的に固定化し、それによって標的細胞を固定相上に固定化することができる。多量体化試薬の結合部位Zと受容体分子結合試薬の結合パートナーCとの間の結合は競合剤の添加によって破壊することができるので、次いで、受容体分子結合試薬が標的細胞から完全に解離することで受容体分子結合試薬が標的細胞の機能的状態に影響を及ぼすことを回避する温和な条件下で、標的細胞を溶出させることができる。したがって、このアフィニティークロマトグラフィー方法による標的細胞のこの単離には、共通する特異的受容体分子によって規定される標的細胞集団の機能的状態を変化させることなく、標的細胞集団(または本明細書に記載する他の任意の生物学的実体)を単離/精製することが可能であるという利点だけでなく、細胞精製用の磁気ビーズを使用する必要が全くなくなり、その結果、細胞のさらなる取り扱いがいずれも簡単になり、やはり本明細書に記載するように、標的細胞の単離を自動化する道がさらに開けるという、追加の利点もある。
クロマトグラフィーマトリックス、例えば第1固定相、または使用するのであれば第2固定相は、いくつかの態様では、クロマトグラフィーカラムに含まれ、例えばそこに充填される。いくつかの態様では、第1固定相および第2固定相を使用する。第1固定相は上述の固定相に対応し、これは例えばリガンドLを含む。第2固定相は、第1固定相からの溶出液から、使用した試薬、例えば受容体結合試薬、競合試薬および/または多量体化試薬を枯渇させるために使用しうる。したがって、そのような第2固定相は、国際特許出願WO 2013/124474に記載の「除去カートリッジ」であることができる。いくつかの態様において、第2固定相は、典型的には、そこに共有結合で取り付けられたアフィニティー試薬を含む。このアフィニティー試薬は、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーCに結合することができる。このアフィニティー試薬は競合試薬に結合することができてもよい。そのクロマトグラフィーマトリックスはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスでありうる。これはアフィニティー試薬がカップリングされたゲル濾過マトリックスであってもよい。固定化されたアフィニティー試薬を使うことで、クロマトグラフィーマトリックスは、移動相から受容体分子結合試薬を枯渇させることができる。クロマトグラフィーマトリックスと接触させる試料、例えばクロマトグラフィーマトリックスが充填されたカラムにローディングされる試料からも、同様に受容体結合試薬を枯渇させることができる。具体例として、結合パートナーCとしてストレプトアビジン結合ペプチドを使用し、競合試薬としてビオチンを使用する場合、アフィニティー試薬は、sephararose(商標)などのクロマトグラフィーマトリックスにカップリングされたストレプトアビジンであることができる(そのような「除去カートリッジ」の詳細な説明については国際特許出願WO 2013/124474を参照されたい)。加えて、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインの可溶性オリゴマーを可溶性多量体化試薬として使用する場合、そのような多量体化試薬は、固定相上にビオチンが固定化/共有結合でカップリングされているさらなる(第3)固定相によって、溶出液から除去することができる(Affiland S.A.(ベルギー・アンス-リージェ)から市販されているビオチン-セファロース、または本願の実験項において調製するビオチンが共有結合で結合されているSuperflow(登録商標)アガロースを参照されたい)。可溶性ストレプトアビジンに基づく多量体化試薬は、固相上に、そのビオチン基への結合によって固定化されるであろう。こうして本発明は、本発明の方法に使用されるすべての試薬が除去された標的細胞の自動化された単離の実現を可能にする。
標的細胞を含有する試料を適用した後、ここで使用されるクロマトグラフィーマトリックスは、クロマトグラフィーマトリックス上に固定化されていない物質をすべて除去するために、続いて移動相、例えば緩衝液などの水性媒体で洗浄しうる。そのような洗浄は、本明細書に記載する方法または使用に関連して使用される任意の固定相で行いうる。各クロマトグラフィーマトリックスは、第1固定相として、または二次的固定相として、使用しうる。
上述した非共有結合的多価複合体の形成によって標的細胞はアフィニティークロマトグラフィーマトリックス上に固定化されることになるが、次に、例えば条件を変化させることなどによって、その非共有結合的多価複合体の解離を誘発しうる。そのような条件の変化は、例えば水性移動相のpHまたはイオン強度の変化でありうる。いくつかの態様では、受容体分子結合試薬と多量体化試薬との間の可逆的非共有結合的複合体の解離を誘発するために、競合試薬が使用される。競合試薬は、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーに対する多量体化試薬の結合部位を占有しまたはブロックすることによって、多量体化試薬に会合することができる。多量体化試薬に対して特に高いアフィニティーを有する競合試薬を使用することによって、または受容体分子結合試薬の濃度と比較して過剰量の競合試薬を使用することによって(この場合、競合試薬は多量体化試薬の結合部位Zに対して、受容体結合試薬の結合パートナーCよりも低いアフィニティーを有してもよいだろう)、受容体結合試薬と多量体化試薬との間の非共有結合を破壊しうる。標的細胞をクロマトグラフィーマトリックスから、例えばクロマトグラフィーマトリックスを充填したカラムから、溶出させることが可能になる。溶出液を収集し、それによって標的細胞を収集する。
クロマトグラフィーにおいて移動相として使用される流体相は、標的細胞の生物学的活性を保存するのに適した任意の流体でありうる。典型的には流体は液体である。いくつかの態様において、各液体は水であるか、または例えば水溶液の形態で水を含む。各水溶液は、例えばそこに溶解または懸濁された、さらなる構成要素を含んでもよい。具体例として、水溶液は、1種または複数種の緩衝化合物を含みうる。当技術分野では数多くの緩衝化合物が使用されており、本明細書に記載するさまざまなプロセスを行うために、それらを使用しうる。緩衝液の例には、リン酸塩の溶液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)、炭酸塩の溶液、コハク酸塩の溶液、炭酸塩の溶液、クエン酸塩の溶液、酢酸塩の溶液、ギ酸塩の溶液、ホウ酸塩の溶液、N-(2-アセトアミド)-2-アミノ-エタンスルホン酸塩の溶液(ACESとも呼ばれる)、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸の塩の溶液(HEPESとも呼ばれる)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン-プロパンスルホン酸の塩の溶液(HEPPSとも呼ばれる)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)の塩の溶液(PIPESとも呼ばれる)、(2-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-1-エタンスルホン酸の塩の溶液(TESとも呼ばれる)、2-シクロヘキシルアミノ-エタンスルホン酸の塩の溶液(CHESとも呼ばれる)およびN-(2-アセトアミド)-イミノ二酢酸の塩の溶液(ADAとも呼ばれる)があるが、それらに限定されるわけではない。これらの塩には任意の対イオンを使用してよく、アンモニウム、ナトリウム、およびカリウムを具体例として挙げることができる。緩衝剤のさらなる例には、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、両性イオン型緩衝剤、例えばベタイン、エチルアミン、トリエチルアミン、グリシン、グリシルグリシン、ヒスチジン、トリス-(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリスとも呼ばれる)、ビス-(2-ヒドロキシエチル)-イミノ-トリス(ヒドロキシメチル)-メタン(ビス-トリスとも呼ばれる)、およびN-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-グリシン(トリシンとも呼ばれる)があるが、それらに限定されるわけではなく、これらは一部に過ぎない。緩衝液はさらに、単離しようとする標的細胞を安定化する構成要素、例えば(血清)アルブミンなどのタンパク質、成長因子、微量元素なども含みうる。適切な移動相の選択は当業者の知識の範囲内にあり、経験的事実に基づいて行うことができる。
国際特許出願WO2013/011011と合致して、受容体分子結合試薬と標的細胞上の受容体分子との間の結合の強さは、受容体結合試薬を介した多量体化試薬への標的細胞の結合の可逆性にとって、本質的ではないと言える。むしろ、結合の強さとは無関係に、つまり結合部位Bを介した受容体結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(Kd)が、例えばKdが約10-3〜約10-7Mの範囲内にある低アフィニティーであろうと、例えばKdが約10-7〜約1×10-10Mの範囲内にある高アフィニティーであろうと、結合部位Bを介した受容体結合試薬と標的細胞表面上の受容体分子との結合の解離が十分に速く起こる限り、標的細胞を可逆的に結合させることができる。これに関して、結合部位Bを介した受容体結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離速度定数(koff)は約3×10-5-1以上の値を有しうる。この解離速度定数は、受容体結合試薬の結合部位Bと標的細胞の表面上の受容体分子との間に形成された複合体の解離反応を特徴づける定数である。受容体結合試薬の結合部位Bと標的細胞の表面上の受容体分子との間の会合反応に関する会合速度定数(kon)は、任意の値を有しうる。受容体分子と受容体結合試薬との間の十分に可逆的な結合を保証するには、約3×10-5-1以上、約5×10-5-1以上、例えば約1×10-4-1以上、約1.5×10-4-1以上、約2.0×10-4-1以上、約2.5×10-4-1以上、約3×10-4-1以上、約3.5×10-4-1以上、約4×10-4-1以上、約5×10-4-1以上、約7.5×10-4-1以上、約1×10-3-1以上、約1.5×10-3-1以上、約2×10-3-1以上、約2.5×10-3-1以上、約3×10-3-1以上、約4×10-3-1以上、約5×10-3-1以上、約7.5×10-3-1以上、約1×10-2-1以上、約5×10-2-1以上、約1×10-1-1以上または約5×10-1-1以上の値を有するように、結合平衡のkoff値を選択することが有利である。koff速度、kon速度またはKD(下記参照)に関して本明細書において使用する「約」という用語は、±20.0%、例えば±15.0%、±10.0%、±8.0%、±9.0%、±7.0%、±6.0%、±5.0%、±4.5%、±4.0%、±3.5%、±3.0%、±2.8%、±2.6%、±2.4%、±2.2%、±2.0%、±1.8%、±1.6%、±1.4%、±1.2%、±1.0%、±0.9%、±0.8%、±0.7%、±0.6%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、または±0.01%の許容誤差を含むことを意味する。ここでは、本明細書において使用される速度定数および熱力学定数の値が、大気圧、すなわち1.013バールおよび室温、すなわち25℃という条件を指すことに注意されたい。
いくつかの態様において、受容体分子結合試薬は、受容体分子に特異的に結合する能力を有する単一の(一価)結合部位Bを有する。そのような一価受容体分子結合試薬の例は、可溶性MHC Iペプチド(細胞特異的抗原提示ペプチドと複合体化しているもの(そのようなMHC分子は、例えば国際特許出願WO 02/054065またはSchmidt, J. et al., J. Biol. Chem.[2011]286, 48, 41723-41735に記載されており、例えばIBA GmbHまたはTCMetrix S.A.から市販されている)、例えばFabフラグメント、Fvフラグメントまたは一本鎖Fvフラグメント(scFv)などの一価抗体フラグメント、または一価人工結合分子(タンパク質性その他)、例えばリポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテイン(「アンチカリン(登録商標)」としても知られている)である。あるいは、受容体分子結合試薬は、2つ以上の結合部位Bを有してもよい。そのような受容体分子結合試薬の例は、インタクトな(二価)抗体分子または両結合部位が保持されている抗体フラグメント、例えばF(ab')2フラグメントである。受容体分子結合試薬は五量体型IgE分子などの多価分子であってもよい。
いくつかの態様において、本明細書に記載する可逆的試薬との組み合わせで、本明細書に記載する標的細胞の単離を可能にしているのは、分子レベルでは、少なくとも結合部位Bによる受容体分子結合試薬と標的細胞上の受容体分子との結合の(3×10-5-1以上という)koff速度ではない。むしろ、例えば米国特許第7,776,562号または国際特許出願WO 02/054065に記載されているように、受容体分子と受容体分子結合試薬の結合部位Bとの間の低アフィニティー結合が、固定化された多量体化試薬によって媒介されるアビディティ効果と相まって、標的細胞の可逆的単離を可能にしているのである。これらの態様では、多量体化試薬の2つ以上の結合部位Zと少なくとも2つの受容体結合試薬の結合パートナーCとの間で複合体が形成されて、標的細胞の可逆的固定化と、それに続く固相からの標的細胞の溶出(結合パートナーCと結合部位Zとの間に形成された結合(複合体)を破壊し、それが結果として、標的細胞からの受容体結合試薬の解離につながることになる競合試薬の添加による)を可能にすることができる。そのような低結合アフィニティーは、約10-2Mまたは10-3M〜約10-7M、または約10-3M〜約10-6M、または約10-4M〜約10-7Mの範囲にある解離定数(KD)を特徴としうる。
上述のように、受容体分子結合試薬は、受容体分子に結合することができる結合部位Bに加えて、結合パートナーCを有する。この結合パートナーCは多量体化試薬の結合部位Zに可逆的に結合することができ、ここで多量体化試薬は、結合パートナーCに対して1つまたは複数の結合部位を有している。受容体結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間に形成される非共有結合的結合は、それが本発明の方法を実行する条件下で破壊可能または可逆的である限り、任意の望ましい強さおよびアフィニティーを有しうる。受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合の解離定数(KD)は、約10-2M〜約10-13Mの範囲にある値をとりうる。したがって、この可逆的結合は、例えば、約10-2M〜約10-13M、または約10-3M〜約10-12M、または約10-4M〜約10-11M、または約10-5M〜約10-10MのKDを有することができる。この結合のKDは、受容体分子結合試薬の結合部位Bと受容体分子との間に形成される結合のKD、koffおよびkon速度と共に、任意の適切な手段によって、例えば蛍光滴定法、平衡透析法または表面プラズモン共鳴法によって、決定することができる。受容体分子結合試薬は少なくとも1つ、例えば2つ、3つまたはそれ以上の第2の結合パートナーCを含んでもよく、多量体化試薬は受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーに対して少なくとも2つ、例えば3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたはそれ以上の結合部位を含みうる。米国特許第7,776,562号または国際特許出願WO 2002/054065に記載されているように、結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとが(多価)複合体において可逆的に結合しまたは多量体化してアビディティ効果を引き起こすことができる限り、結合パートナーCと1つまたは複数の対応する結合部位Zを有する多量体化試薬との任意の組み合わせを選ぶことができる。
受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCは、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、脂質、糖、オリゴ糖、または多糖でありうる。そのような結合パートナーは、多量体化試薬の結合部位に対して、他の物質よりも高いアフィニティーを有する。各結合パートナーの例には、免疫グロブリン分子、そのフラグメント、および抗体様の機能を有するタンパク質性結合分子があるが、それらに限定されるわけではない。
いくつかの態様において、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーCはビオチンを含み、多量体化試薬は、ビオチンに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体またはアビジン類似体を含む。いくつかの態様において、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーCは、ストレプトアビジンまたはアビジンに可逆的に結合するビオチン類似体を含み、多量体化試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、各ビオチン類似体に可逆的に結合するストレプトアビジン類似体またはアビジン類似体を含む。いくつかの態様において、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーCは、ストレプトアビジン結合ペプチドまたはアビジン結合ペプチドを含み、多量体化試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、各ストレプトアビジン結合ペプチドまたはアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体またはアビジン類似体を含む。
いくつかの態様において、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーCは、以下の配列の1つを含むか、または以下の配列の1つからなる、ストレプトアビジン結合ペプチドを含みうる:
a)-Trp-Xaa-His-Pro-Gln-Phe-Yaa-Zaa-(SEQ ID NO:1)、配列中、Xaaは任意のアミノ酸であり、YaaおよびZaaはどちらもGlyであるか、または、YaaがGluであり、かつZaaがLysもしくはArgである、
b)-Trp-Arg-His-Pro-Gln-Phe-Gly-Gly-(SEQ ID NO:2)、
c)-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(SEQ ID NO:3)、
d)少なくとも2つのストレプトアビジン結合ペプチドの連続的構成、ここで、各ペプチドはストレプトアビジンに結合し、2つのペプチド間の距離は少なくとも0であり、かつ50アミノ酸を上回らず、前記少なくとも2つのペプチドのそれぞれはアミノ酸配列-His-Pro-Baa-を含み、配列中のBaaはグルタミン、アスパラギンおよびメチオニンからなる群より選択される、
e)前記少なくとも2つのペプチドの1つが配列-His-Pro-Gln-を含む、d)で述べた連続的構成、
f)前記ペプチドの1つがアミノ酸配列-His-Pro-Gln-Phe-(SEQ ID NO:4)を含む、d)で述べた連続的構成、
g)少なくとも1つのペプチドが少なくともアミノ配列-Oaa-Xaa-His-Pro-Gln-Phe-Yaa-Zaa-(SEQ ID NO:5)を含み、配列中、OaaはTrp、LysまたはArgであり、Xaaは任意のアミノ酸であり、かつYaaおよびZaaはどちらもGlyであるか、または、YaaがGluであり、かつZaaがLysもしくはArgである、d)で述べた連続的構成、
h)少なくとも1つのペプチドが少なくともアミノ酸配列-Trp-Xaa-His-Pro-Gln-Phe-Yaa-Zaa-(SEQ ID NO:6)を含み、配列中、Xaaは任意のアミノ酸であり、YaaおよびZaaはどちらもGlyであるか、YaaがGluであり、かつZaaがLysまたはArgである、d)で述べた連続的構成、
i)少なくとも1つのペプチドが少なくともアミノ酸配列-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(SEQ ID NO:7)を含む、d)で述べた連続的構成、
j)アミノ酸配列-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(Xaa)n-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(SEQ ID NO:8)、配列中、Xaaは任意のアミノ酸であり、nは0〜12の整数である、
k)
Figure 0006678593
からなる群より選択されるアミノ酸配列。これらの場合、多量体化試薬は、ストレプトアビジンムテイン(類似体)Val44-Thr45-Ala46-Arg47またはストレプトアビジンムテイン(類似体)Ile44-Gly45-Ala46-Arg47を含みうる。これらはどちらも例えば米国特許第6,103,493号に記載されており、Strep-Tactin(登録商標)という商標で市販されている。このような多量体型ストレプトアビジンムテインは多量体化したStrep-Tactinと呼ばれる場合もある。
いくつかの態様において、受容体分子結合試薬の結合パートナーCは、アフィニティータグとして当業者に公知である部分を含む。そのような態様において、多量体化試薬は、対応する結合パートナー、例えば当該アフィニティータグに結合することが公知である抗体または抗体フラグメントを含む。公知のアフィニティータグのいくつかの具体例として、受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCは、オリゴヒスチジン、マルトース結合タンパク質、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)またはチオレドキシン、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAGペプチド、HAタグ(配列:Tyr-Pro-Tyr-Asp-Val-Pro-Asp-Tyr-Ala、SEQ ID NO:15)、VSV-Gタグ(配列:Tyr-Thr-Asp-Ile-Glu-Met-Asn-Arg-Leu-Gly-Lys、SEQ ID NO:16)、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質DのHSVタグまたはHSVエピトープ(配列:Gln-Pro-Glu-Leu-Ala-Pro-Glu-Asp-Pro-Glu-Asp、SEQ ID NO:17)、T7エピトープ(Ala-Ser-Met-Thr-Gly-Gly-Gln-Gln-Met-Gly、SEQ ID NO:21)、マルトース結合タンパク質(MBP)、配列Glu-Gln-Lys-Leu-Ile-Ser-Glu-Glu-Asp-Leu(SEQ ID NO:14)の転写因子c-mycの「myc」エピトープ、V5タグ(配列:Gly-Lys-Pro-Ile-Pro-Asn-Pro-Leu-Leu-Gly-Leu-Asp-Ser-Thr、SEQ ID NO:18)、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)を含みうる。そのような態様において、多量体化試薬の1つまたは複数の結合部位、この場合は抗体または抗体フラグメントと、抗原との間に形成される複合体は、遊離の抗原、すなわち遊離のペプチド(エピトープタグ)または遊離のタンパク質(例えばMBPまたはCBP)を加えることによって、競合的に破壊することができる。アフィニティータグはオリゴヌクレオチドタグであってもよいだろう。そのようなオリゴヌクレオチドタグは、例えば、多量体化試薬に連結されたまたは多量体化試薬に含まれる相補的配列を有するオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせるために使用しうる。
好適な結合ペアのさらなる例として、受容体分子結合試薬中の結合パートナーCとして免疫グロブリンドメイン、例えば抗体Fcドメインを使用し、かつ多量体化試薬としてプロテインA、プロテインGまたはプロテインLを使用することが挙げられる。プロテインA、プロテインGおよびプロテインLは、いずれも、抗体Fcドメインに可逆的に結合することができる。その結合は、緩衝液条件を変化させることによって、例えば緩衝液の塩強度を増加させることによって、またはpHを例えば約7.0の中性pHから約3.0〜約2.5のpHへと低下させることによって、破壊することができる。
いくつかの態様において、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の1つまたは複数の結合部位Zとの間の結合は、二価、三価または四価カチオンの存在下で起こる。これに関して、いくつかの態様において、アフィニティー/多量体化試薬は、典型的には適切なキレーターを使って保持(例えば錯化)された二価、三価または四価カチオンを含む。そのような態様において、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーは、二価、三価または四価カチオンを含む(例えば錯化する)部分を含みうる。各金属キレーターの例には、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン(ニトリロ三酢酸、NTAとも呼ばれる)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(ジメルカプロール)、ポルフィンおよびヘムがあるが、それらに限定されるわけではない。一例として、EDTAは、例えばカルシウム(Ca2+)、マンガン(Mn2+)、銅(Cu2+)、鉄(Fe2+)、コバルト(Co3+)およびジルコニウム(Zr4+)など、大半の二価、三価および四価金属イオンと錯体を形成するが、BAPTAはCa2+に特異的である。具体例として、当技術分野において使用される標準的方法は、オリゴヒスチジンタグと、キレーター・ニトリロ三酢酸(NTA)を使って提示される銅(Cu2+)、ニッケル(Ni2+)、コバルト(Co2+)、または亜鉛(Zn2+)イオンとの間の錯体の形成である。
いくつかの態様において、受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCはカルモジュリン結合ペプチドを含み、かつ多量体化試薬は、例えば米国特許第5,985,658号に記載されている多量体型カルモジュリンを含む。いくつかの態様において、受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCはFLAGペプチドを含み、かつ多量体化試薬はFLAGペプチド(例えば米国特許第4,851,341号に記載のモノクローナル抗体4E11に結合するFLAGペプチド)に結合する抗体を含む。いくつかの態様において、FLAGペプチドに結合する抗体は市販のモノクローナル抗体M1でありうる。一態様において、受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCはオリゴヒスチジンタグを含み、かつ多量体化試薬は、遷移金属イオンに結合し、それによってオリゴヒスチジンタグに結合することもできる、キレート基Kを含む。これらの結合複合体の破壊はいずれも、金属イオンキレーション、例えばカルシウムキレーションにより、例えばEDTAまたはEGTA(前記)を加えることによって、実行しうる。カルモジュリン、4E11などの抗体、またはキレートされた金属イオンもしくは遊離のキレーターは、従来の方法によって、例えばビオチン化およびストレプトアビジンもしくはアビジンまたはそれらの多量体との複合体形成によって、または第1工程では本質的にNoguchi, A, et al. Bioconjugate Chemistry(1992)3, 132-137に記載されているように多糖、例えばデキストランにカルボキシル残基を導入し、第2工程では多糖(例えばデキストラン)主鎖中のカルボキシル基に従来のカルボジイミドケミストリーを使ってカルモジュリンまたは抗体またはキレートされた金属イオンもしくは遊離キレーターを、1級アミノ基を介して連結することによって、多量体化しうる。そのような態様において、受容体結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の1つまたは複数の結合部位Zとの間の結合は、金属イオンキレーションによって破壊することができる。金属キレーションは、EGTAまたはEDTAの添加によって実行しうる。
いくつかの態様において、可溶性多量体化試薬は、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはストレプトアビジンもしくはアビジンの任意の類似体のオリゴマーまたはポリマーである。結合部位Zは、アビジンまたはストレプトアビジンの天然ビオチン結合部位である。各オリゴマーまたはポリマーは、対応する単量体型のストレプトアビジンもしくはアビジンまたはそれらの類似体から得ることができる。そのような多量体化試薬は、例えばIBA GmbH(ドイツ・ゲッチンゲン)から「Strep-Tactin(登録商標)PE for Fab Streptamers」(カタログ番号6-5001-010または6-5011-010、蛍光ラベルにカップリングされているが、このラベルは本発明の方法に干渉しないので、除去する必要はない)として市販されている。加えて、オリゴマーまたはポリマーを形成させるためのさまざまな技法が当技術分野において公知である。各オリゴマーまたはポリマーは、例えば多糖によって架橋しうる。一態様において、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはストレプトアビジンもしくはアビジンの類似体のオリゴマーまたはポリマーは、第1工程として、本質的にNoguchi, A, et al., Bioconjugate Chemistry(1992)3, 132-137に記載されているように、多糖(例えばデキストラン)にカルボキシル残基を導入することによって調製される。次に、第2工程では、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはそれらの類似体を、従来のカルボジイミドケミストリーを使って、内部リジン残基および/または遊離N末端の1級アミノ基を介して、デキストラン主鎖中のカルボキシル基に連結しうる。ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはストレプトアビジンもしくはアビジンの類似体の架橋オリゴマーまたは架橋ポリマーは、リンカーとして機能するグルタルジアルデヒドなどの二官能性分子による架橋によって、または当技術分野において記載された他の方法によって得ることもできる。イミノチオラン/SMCC、NHS活性化カルボキシデキストランまたはデンドリマーの使用は、当技術分野において確立された架橋技法のさらなる例である。
具体例として、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはストレプトアビジンもしくはアビジンの類似体のオリゴマーまたはポリマーは、第1工程として、本質的にNoguchiら(Bioconjugate Chemistry[1992]3, 132-137)が記述しているように、デキストランなどの多糖にカルボキシル残基を導入することによって調製しうる。次に、第2工程では、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはそれらの類似体を、内部リジン残基および/または遊離N末端の1級アミノ基を介して、デキストラン主鎖中のカルボキシル基に、従来のカルボジイミドケミストリーを使ってカップリングすることができる。一態様において、このカップリング反応は、デキストラン1モルにつき約60モルのストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインというモル比で行われる。
いくつかの態様において、本明細書に記載する標的細胞の単離に使用されるストレプトアビジンムテインは、米国特許第6,103,493号に記載され、DE 196 41 876.3にも記載されているストレプトアビジンムテインである。これらのストレプトアビジンムテインは、野生型ストレプトアビジンのアミノ酸配列に基づいて、アミノ酸位置44〜53の領域内に少なくとも1つの変異を有する。いくつかの態様では、最小ストレプトアビジン(minimal streptavidin)のムテインを使用する。最小ストレプトアビジンのムテインは野生型ストレプトアビジンのアミノ酸10〜16の領域にあるN末端で始まり、野生型ストレプトアビジンのアミノ酸133〜142の領域にあるC末端で終わる。そのようなストレプトアビジンムテインの例は、位置44にGluの代わりに疎水性脂肪族アミノ酸、位置45に任意のアミノ酸、位置46に疎水性脂肪族アミノ酸、および/または位置47にValの代わりに塩基性アミノ酸を有する。ストレプトアビジンムテインは、ムテインVal44-Thr45-Ala46-Arg47またはストレプトアビジンムテイン(類似体)Ile44-Gly45-Ala46-Arg47でありうる。これらはどちらも例えば米国特許第6,103,493号に記載されており、Strep-Tactin(登録商標)という商標で市販されている。
野生型ストレプトアビジン(wt-ストレプトアビジン)として、Argarana et al., Nucleic Acids Res. 14(1986)1871-1882に開示されたアミノ酸配列が挙げられる。ストレプトアビジンムテインは、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または付加によって野生型ストレプトアビジンの配列とは区別され、wt-ストレプトアビジンの結合特性を保持しているポリペプチドである。ストレプトアビジン様ポリペプチドおよびストレプトアビジンムテインは、免疫学的には野生型ストレプトアビジンと本質的に等価であり、特にビオチン、ビオチン誘導体またはビオチン類似体にwt-ストレプトアビジンと同じアフィニティーまたは異なるアフィニティーで結合する能力を有するペプチドである。ストレプトアビジン様ポリペプチドまたはストレプトアビジンムテインは、野生型ストレプトアビジンの一部ではないアミノ酸を含有してもよいし、野生型ストレプトアビジンの一部しか含まなくてもよい。ストレプトアビジン様ポリペプチドは、宿主が生産したポリペプチドを野生型ストレプトアビジンの構造に変換するために必要な酵素を宿主が持っていないせいで、野生型ストレプトアビジンと同一でないポリペプチドでもある。「ストレプトアビジン」という用語には、ストレプトアビジン四量体およびストレプトアビジン二量体、特にストレプトアビジンホモ四量体、ストレプトアビジンホモ二量体、ストレプトアビジンヘテロ四量体およびストレプトアビジンヘテロ二量体も包含される。各サブユニットは通常、ビオチンまたはビオチン類似体に対する結合部位、またはストレプトアビジン結合ペプチドに対する結合部位を有する。ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインの例は、例えばWO 86/02077、DE 19641876 A1、US 6,022,951、WO 98/40396またはWO 96/24606に挙げられている。
上述のように、本発明において使用される固相は、多量体化試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBに(特異的に)結合することができるリガンドLを含む。リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間に形成される結合は、固相上での(多価結合複合体の一部としての)標的細胞の(可逆的)固定化をもたらす。したがって、LBとLとの間に形成される結合そのものは可逆的である必要はなく、不可逆的であることもできる。この場合、LとLBとの間には共有結合が形成されてもよいだろう。あるいは、Lがビオチンであり、LBがアビジンまたはストレプトアビジンのビオチン結合部位であってもよいだろう。この結合は、非共有結合的相互作用に基づいているが、約1×10-15Mの解離定数(Kd)を有し、不可逆であるとみなされる。
しかしLとLBとの間の結合が可逆的であることも可能である。この場合、リガンド結合パートナーLBに対するリガンドLの結合の解離定数Kdは、結合部位Zに対する結合パートナーCの可逆的結合の解離定数Kdを下回ることができる。言い換えると、LとLBとの間の結合は、結合部位Zに対する結合パートナーCの結合より強い。これに関連して、ここで考慮している2つの結合ペア(第1結合ペア:受容体分子結合試薬の結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Z;第2結合ペア:固相のリガンドLと多量体化試薬に含まれるリガンド結合パートナーLB)は、同じ競合試薬によって破壊する(解離させる)ことも、異なる競合試薬によって破壊する(解離させる)こともできるように選ぶことができることに注意されたい。
2つの異なる競合試薬の一例として、受容体分子結合試薬の結合パートナーCはストレプトアビジン結合ペプチドであり、かつ多量体化試薬の結合部位Zはストレプトアビジンムテインのビオチン結合部位であってもよいだろう。この結合は、ビオチンまたはその類似体の添加によって破壊することができる。固相のリガンドLはヘキサヒスチジンタグに結合することができるキレート基であり、かつ多量体化試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBはヘキサヒスチジンタグであってもよいだろう。この結合は、EDTAなどのキレート剤またはイミダゾールなどの競合剤の添加によって破壊することができる。
しかし、結合パートナーCと結合部位Zとの間に形成される可逆的結合の破壊と、リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間に形成される結合の破壊とに、同じ競合試薬を使用することは、有利でありうるだろう。この態様の一例として、受容体分子結合試薬の結合パートナーCはストレプトアビジン結合ペプチドであってよく、かつ多量体化試薬の結合部位Zはストレプトアビジンムテインのビオチン結合部位であってよいだろう。固相のリガンドLもビオチンであってよく、かつ多量体化試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBはやはりストレプトアビジンムテインのビオチン結合部位である。この結合はどちらの場合もビオチンまたはその類似体の添加によって破壊することができる。したがって、そのような態様では、結合部位Zと多量体化剤のリガンド結合パートナーLBとは同一でありうるだろう。そのような態様では、(2つ以上の受容体分子結合試薬が多量体化試薬に結合している多価複合体を形成させることによる)受容体分子結合試薬の多量体化後に、続いて起こるリガンドLの結合のための遊離の結合部位Z(この場合、それはリガンド結合パートナーLBと同じである)を依然として有する多量体化試薬が使用されることに注意されたい。当業者は各条件を、例えば受容体分子結合試薬に対する多量体化試薬のモル比を変化させ、続いて起こる、リガンドLを保持する固相へのこれらの多価結合複合体の結合の速度を決定することなどにより、経験的事実に基づいて決定することができる。
上記によれば、結合パートナーCおよび結合部位Zとして使用することができるものと同じ結合ペアを、リガンドLおよびリガンド結合パートナーLBとして使用することもできる。具体例では、リガンドLおよびリガンド結合パートナーLBが、以下の群から選択される結合ペアを形成する:
- リガンド結合パートナーLBとしてのストレプトアビジンまたはストレプトアビジン類似体、およびストレプトアビジンに結合するリガンドL(分子)、
- 二価カチオンの存在下で結合する結合ペア、
- リガンドLとしてのオリゴヒスチジンペプチド、およびリガンド結合パートナーLBとしての少なくとも2つのキレート基Kを含む結合部分A、ここで、各キレート基は遷移金属イオンに結合する能力を有し、それによってオリゴヒスチジンペプチドに結合する能力を部分Aに与える、
- 抗原、および該抗原に対する抗体、ここで、リガンドLは前記抗原を含み、かつリガンド結合パートナーLBは該抗原に対する前記抗体を含む、
- リガンド結合パートナーLBとしてのグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質(MBP)、キチン結合ドメイン、およびセルロース結合ドメインの群から選択されるタンパク質、ならびにリガンドLとしての、それぞれグルタチオン、マルトース、キチン、またはセルロース、
- リガンド結合パートナーLBとしての抗体Fcドメイン、およびリガンドLとしての免疫グロブリン結合タンパク質、例えばプロテインA、プロテインGまたはプロテインL。
本明細書に開示する方法は、標的細胞の生存可能性が少なくとも本質的には損なわれない任意の温度で行いうる。本明細書において、少なくとも本質的には害にならない、有害でないまたは少なくとも本質的には生存可能性を損なわない条件という場合、それは、その条件下で完全な生存可能性を伴って回収することができる標的細胞のパーセンテージが少なくとも70%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.5%であるような条件を指す。いくつかの態様において、本発明の方法は、約20℃以下、例えば約14℃以下、約9℃以下または約6℃以下の温度で行われる。標的細胞を包含するために水性媒体を使用するのであれば、単離しようとする標的細胞に依存して、適切な温度範囲は、例えば約2℃〜約45℃、例えば約2℃〜約40℃、約3℃〜約35℃、または約4℃〜約30℃でありうる。いくつかの態様において、本発明の方法は、一定の温度値で、または選択された温度値±約5℃、±約4℃、±約3℃、±約2℃、±約1℃または±約0.5℃で行われる。温度は、例えば、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃または約25℃の値を有するように選択しうる。いくつかの態様では、本発明の方法中に、温度を変化、すなわち増大、低下、またはそれらの組み合わせによって変動させる。温度は、例えば上に規定した範囲内で、例えば約2℃〜約40℃の範囲内、または約3℃〜約35℃の範囲内で変化させうる。当業者は、細胞の性質および単離条件を考慮して、経験的事実に基づいて適切な温度を決定することができる。例えば、がん細胞などの温度非感受性細胞は、室温か、さらには37℃などの高温で単離してもよいだろう。
本発明の方法において、受容体分子に特異的に結合する受容体分子結合試薬の1つまたは複数の結合部位Bは、例えば抗体、そのフラグメント、および抗体様の機能を有するタンパク質性結合分子でありうる。(組換え)抗体フラグメントの例は、Fabフラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fvフラグメント(scFv)、(Fab)2'フラグメントなどの二価抗体フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ(Iliades, P., et al., FEBS Lett(1997)409, 437-441)、デカボディ(Stone, E., et al., Journal of Immunological Methods(2007)318, 88-94)および他のドメイン抗体(Holt, L.J., et al., Trends Biotechnol.(2003), 21, 11, 484-490)である。いくつかの態様において、受容体分子結合試薬の1つまたは複数の結合部位は、「デュオカリン(duocalin)」としても知られている二量体型リポカリンムテインなどの二価タンパク質性人工結合分子でありうる。いくつかの態様において、受容体結合試薬は単一の第2結合部位を有しうる。すなわち受容体結合試薬は一価でありうる。一価受容体結合試薬の例には、一価抗体フラグメント、抗体様の結合特性を有するタンパク質性結合分子またはMHC分子があるが、それらに限定されるわけではない。一価抗体フラグメントの例には、Fabフラグメント、Fvフラグメント、および二価一本鎖Fvフラグメントを含む一本鎖Fvフラグメント(scFv)があるが、それらに限定されるわけではない。
上述のように、抗体様の機能を有するタンパク質性結合分子の一例は、リポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテインである(例えばWO 03/029462、Beste et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1999)96, 1898-1903を参照されたい)。ビリン結合タンパク質、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ヒトアポリポタンパク質Dまたはヒト涙液リポカリンなどのリポカリンは、それらが所与の標的に結合するように修飾することができる天然のリガンド結合部位を有する。受容体分子に特異的に結合する受容体結合試薬として使用することができる抗体様の結合特性を有するタンパク質性結合分子のさらなる例には、いわゆるグルボディ(glubody)(例えば国際特許出願WO 96/23879参照)、アンキリンスキャフォールドに基づくタンパク質(Mosavi, L.K., et al., Protein Science(2004)13, 6, 1435-1448)または結晶性スキャフォールドに基づくタンパク質(例えば国際特許出願WO 01/04144)、Skerra, J. Mol. Recognit.(2000)13, 167-187に記載のタンパク質、アドネクチン、テトラネクチンおよびアビマーがあるが、それらに限定されるわけではない。アビマーは、ヒト受容体ドメインファミリーのエクソンシャフリングによって導き出される多価アビマータンパク質を含めて、いくつかの細胞表面受容体において複数ドメインのストリングとして見いだされるいわゆるAドメインを含有する(Silverman, J., et al., Nature Biotechnology(2005)23, 1556-1561)。ヒトフィブロネクチンのドメインから誘導されるアドネクチンは、標的への免疫グロブリン様結合のために工学的に改変することができる3つのループを含有している(Gill, D.S. & Damle, N.K., Current Opinion in Biotechnology(2006)17, 653-658)。それぞれのヒトホモ三量体タンパク質から誘導されるテトラネクチンも同様に、所望する結合のために工学的に操作することができるC型レクチンドメイン中のループ領域を含有する(同上書)。
適切なタンパク質性結合分子のさらなる例は、EGF様ドメイン、クリングルドメイン、フィブロネクチンI型ドメイン、フィブロネクチンII型ドメイン、フィブロネクチンIII型ドメイン、PANドメイン、Glaドメイン、SRCRドメイン、クニッツ/ウシ膵臓トリプシン阻害因子ドメイン、テンダミスタット、カザール(Kazal)型セリンプロテアーゼ阻害因子ドメイン、トレフォイル(Trefoil)(P型)ドメイン、ヴォン・ヴィレブランド因子C型ドメイン、アナフィラトキシン様ドメイン、CUBドメイン、チログロブリンI型リピート、LDL受容体クラスAドメイン、Sushiドメイン、Linkドメイン、トロンボスポンジンI型ドメイン、免疫グロブリンドメインまたは免疫グロブリン様ドメイン(例えばドメイン抗体またはラクダ重鎖抗体)、C型レクチンドメイン、MAMドメイン、ヴォン・ヴィレブランド因子A型ドメイン、ソマトメジンBドメイン、WAP型の4ジスルフィドコアドメイン、F5/8C型ドメイン、ヘモペキシンドメイン、SH2ドメイン、SH3ドメイン、ラミニン型EGF様ドメイン、C2ドメイン、「カッパボディ」(Ill et al., Protein Eng(1997)10, 949-57参照)、いわゆる「ミニボディ」(Martin et al., EMBO J(1994)13, 5303-5309参照)、ダイアボディ(Holliger et al., PNAS USA(1993)90, 6444-6448参照)、いわゆる「ヤヌシス(Janusis)」(Traunecker et al., EMBO J(1991)10, 3655-3659、またはTraunecker et al., Int J Cancer(1992)Suppl 7, 51-52参照)、ナノボディ、マイクロボディ、アフィリン、アフィボディ、ノッチン、ユビキチン、ジンクフィンガータンパク質、自己蛍光タンパク質、またはロイシンリッチリピートタンパク質である。抗体様の機能を有する核酸分子の一例はアプタマーである。アプタマーは、所定の三次元モチーフにフォールディングして、所与の標的構造に対して高いアフィニティーを示す。
本明細書に開示する方法は、例えば上に詳述した方法を行うために設計されたパーツキットを使って行ってもよい。キットは上に規定した受容体分子結合試薬を含みうる。例えばキットは、受容体結合試薬が例えば溶液として充填されている入れ物を含みうる。キットはさらに、上に規定した多量体化試薬を含みうる。例えばキットは、多量体化試薬が例えば溶液として充填されている入れ物を含みうる。キットは上に規定したクロマトグラフィーマトリックスも含んでよく、そのマトリックスは、カートリッジなどのカラムに(事前に)充填されていてもよい。そのようなクロマトグラフィーマトリックスおよび/または入れ物に付随して、いくつかの態様では、本発明による方法を行うためのキットの使用方法に関する説明書の形式で通知がなされる。
本明細書に記載する方法は、複数の固定相の使用、例えば互いに独立して使用されるいくつかのクロマトグラフィーカラムの使用も含みうる。記載する方法は、互いに独立して使用される複数の受容体分子結合試薬および多量体化試薬の使用も含みうる。いくつかの態様では、対応する受容体分子結合試薬、多量体化試薬および固定相の第1のセットと、対応する受容体結合試薬、多量体化試薬および固定相の第2およびそれ以上のセットが使用される。そのような組合せは本発明による方法を複数回行うために使用しうる。一態様において、標的細胞は複数の異なる受容体分子をその表面に有する。それら受容体のそれぞれについて、本発明による方法を別々に行いうる。標的細胞が2回目の本発明の方法において固定相に固定化される時、1回目からの残留試薬、すなわち異なる受容体結合試薬および多量体化試薬はいずれも、典型的には、固定相には結合せず、したがって標的細胞から除去される。とはいえ、本明細書に記載する方法の反復はいずれも、標的細胞を固定化するために形成される各多価結合複合体用の適切なリガンドを用意することに加えて、先の作業から残留したあらゆる試薬を除去するのに「除去カートリッジ」として役立つ固定相の使用を含みうる。したがって、標的細胞上の第1受容体分子用に計画された1回目は、第1受容体分子結合試薬および第1多量体化試薬を使用することを伴いうる。第2受容体分子用に計画された2回目は、第2受容体分子結合試薬および第2多量体化試薬を使用することを伴いうる。
本発明はさらに、試料から標的細胞を単離するための構成を提供する。この構成は、
- リガンドLを含む固相であって、リガンドLは、標的細胞を単離するために使用される受容体分子結合試薬または多量体化試薬中に存在するリガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有し、リガンドLはそれによって、固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする、固相、
- a)細胞分離に適した第1固定相であって、ゲル濾過マトリックスおよび/またはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスであり、前記マトリックスが、受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに特異的に結合する結合部位Zを有するアフィニティー試薬を含み、それによって、第1固定相上での受容体分子結合試薬の固定化と、標的細胞を含む溶出液からの受容体分子結合試薬の除去とを可能にする、第1固定相、
または
b)リガンドLを含む第2固定相であって、リガンドLは、標的細胞を単離するために使用される受容体分子結合試薬または多量体化試薬中に存在するリガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有し、リガンドLはそれによって、第2固定相上での受容体分子結合試薬または多量体化試薬の固定化と、標的細胞を含む溶出液からの受容体分子結合試薬または多量体化試薬の除去とを可能にする、第2固定相
のうちの少なくとも1つ
を含む。
この構成において、固相と第1固定相または第2固定相の少なくとも一方とは流体接続されていてよい。本構成の一態様において、第1固定相および/または第2固定相はクロマトグラフィーカラムに含まれているか、または平面固定相である。
さらにもう1つの態様では、固相が標的細胞を単離するためのバッチ式リアクターに含まれている。バッチ式リアクターは固相上にリガンドLが固定化されている固相を含む容器でありうる。あるいは、バッチ式リアクターは、ビーズ上に固定化されたリガンドLを有するビーズを含む。異なる一態様において、固相はクロマトグラフィーに適した固定相である。
バッチ式リアクターがビーズを含む場合、本発明の構成はさらに、バッチ式リアクター中にビーズを保持するための保持手段を含みうる。ビーズが磁気ビーズである場合、保持手段は磁石でありうる。
本構成の一態様において、固相は第1固定相に流体接続されており、かつ第1固定相は第2固定相に流体接続されている。あるいは、本構成における固定相の順序は、固相が第2固定相に流体接続され、かつ第2固定相が第1固定相に流体接続されるように逆にしてもよい。
本構成の一態様において、固相および/または第2固定相に含まれるリガンドLは、ビオチンまたはビオチンの誘導体である。そのようなビオチンの誘導体の例には、デスチオビオチン、イミノビオチン、2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン)安息香酸(HABA)またはストレプトアビジン結合ペプチドがあるが、それらに限定されるわけではない。
本発明の構成のさらなる態様において、第1固定相に含まれるアフィニティー試薬は、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンのムテイン、アビジンまたはアビジンのムテインでありうる。
本発明は、本明細書に開示する標的細胞を単離するための構成を含む、試料から標的細胞を単離するための機器にも向けられる。
上記によれば、本発明は、標的細胞を可逆的に固定化しまたは単離するための、リガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有するリガンドLを含む固相の使用にも向けられる。例示的な使用において、リガンドはビオチンまたはビオチンの誘導体、例えばデスチオビオチン、イミノビオチン、2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン)安息香酸(HABA)またはストレプトアビジン結合ペプチドでありうる。本明細書において規定する標的細胞を単離する方法または標的細胞を固定化するための方法における、リガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有するリガンドLを含む固相の使用が、ここでは特に考えられる。
当業者には本発明の開示から容易に理解できるであろうが、既存のまたは後に開発される他の組成物、手段、使用、方法または工程であって、本明細書に記載の、対応する例示的態様と実質的に同じ機能を果たし、または実質的に同じ結果を達成するものは、本発明に従って、同様に利用しうる。
実験例
実施例1:「細胞精製カラム」の構築
Bio-Spin(登録商標)カラム(BioRad;カタログ番号732-6008)の下側の排出口をカラムの上端から約45mmの位置で切り取る(図8A)。残りの上側カラム体を「遠心試験管(Centrifuge and Test Tube)」(Becton-Dickinson;製品番号352235)の濾過管キャップに差し込む(図8B参照)。このキャップは、Superflow(商標)樹脂を保持する能力を有する35μmナイロンメッシュを備えている。このカラム付きキャップを12×75mmの5mlポリスチレン丸底試験管上に戻す(図8A)。このカラムはSuperflow樹脂を充填する準備ができている。
実施例2:ビオチン-Superflow(0.38mg/mlビオシチン)の調製
当技術分野において公知の標準的手順に従って、ビオシチン(Sigma-Aldrich、カタログ番号B4261)をSuperflow(登録商標)6(Sterogene、カタログ番号806)にカップリングした。簡単に述べると、Superflow樹脂を洗浄し、1M NaCO3に再懸濁した。アセトニトリル(10ml/ml);臭化シアン(0.2g/ml)を使って活性化を行った。樹脂を1M NaCO3、pH9.5および1M HClで洗浄した。ビオチン-Superflowを得るために、0.1Mホウ酸;0.5M NaSO4中で、ビオシチンをSuperflow樹脂にカップリングした(0.38mg/ml)。その結果得られたビオチン-Superflow樹脂を50mMトリス、pH8.0で洗浄した。
Superflow(登録商標)樹脂は、本発明の単離方法において固相として役立ち、ビオチンはリガンドLとして役立って、リガンドLとしてのビオチンとリガンド結合パートナーLBとしてのストレプトアビジンムテイン「Strep-Tactin(登録商標)」との間の結合による標的細胞/多価結合複合体の固相上での可逆的固定化を可能にする。
実施例3:Ficoll勾配遠心分離を使った血液からのリンパ球の単離
この実施例では、Amersham-Biosciences Ficoll-Paque(登録商標)Plusを、製造者のプロトコールに従って使用した(6×500ml #17-1440-03)。簡単に述べると、シリンジを使って、必要量のFicoll(希釈抗凝固処理血液試料4mlに対して3ml)を無菌的に取り出した。Ficoll-Paque Plus(3ml)を遠心管に加えた。Ficoll-Paque(登録商標)Plusの上に希釈血液試料(4ml)を注意深く重層した。遠心分離を室温(20℃)、400×gで、20分行った。界面のリンパ球層を乱さないようにして、きれいなパスツールピペットで上層を取り除いた。きれいなパスツールピペットを使って、リンパ球層をきれいな遠心管に撮した。3体積またはそれ以上の平衡塩類溶液を試験管中のリンパ球に加えた。パスツールピペットに静かに出し入れすることにより、リンパ球を懸濁した。18〜20℃、10〜100×gで、10分間、遠心分離を行い、次に上清を除去した。
実施例4:可溶性の多量体化したStrep-Tactin、ストレプトアビジン結合タグを保持する抗CD4 Fabフラグメント、およびT細胞を含有する多価結合複合体の調製
当技術分野において使用されている標準的プロトコールに従ってヒトバフィーコートの細胞を調製した。100μlの多量体化した可溶性Strep-Tactin(濃度1.7mg/ml、「Strep-tactin(登録商標)PE for Fab streptamer」として入手可能、カタログ番号6-5001-010、IBA GmbH(ドイツ・ゲッチンゲン)-ここで、ストレプトアビジンムテインのフィコエリトリン(PE)蛍光ラベルは、本発明の方法に干渉しないので試薬中に残っているが、これらの実験では使用されないことに注意されたい)を900μlの緩衝液IS(リン酸緩衝食塩水(PBS)pH7.4中、0.5%BSA(w/v)、PBS=8.06mM Na2HPO4、1.47mM KH2PO4、137mM NaCl)と混合することで、170μg/mlの1:10希釈液を得た。6μgの希釈された多量体化したStrep-Tactin(35.3μl)を、ストレプトアビジン結合ペプチド(
Figure 0006678593
Twin-Strep-tag(登録商標)としても知られている)をその重鎖に保持する4μgのCD4結合Fabフラグメント(250μg/mlを16μl、例えばCD4 Fab Streptamer単離キット、カタログ番号6-8000-206、IBA GmbH(ドイツ・ゲッチンゲン)の一部として入手可能)および74μlの緩衝液ISと混合して最終濃度を125μlとし、15ml管中、4℃で45分インキュベートした。このインキュベーション中に、Fabフラグメントは、それらのストレプトアビジン結合ペプチドを介して、(多量体化試薬として役立つ)多量体化したStrep-tactinに結合することになる。
1×107個の細胞量を100μlの体積で加え、抗CD4 Fabフラグメント/Strep-Tactin複合体と共に、氷上で20分インキュベートした。細胞を10mlの緩衝液ISに再懸濁し(洗浄のため)、400×gで遠心分離し、上清を除去し、細胞を3mlの緩衝液ISに再懸濁した。そうすることにより、標的T細胞が結合している多価結合複合体が形成される。
実施例5:CD4+T細胞のクロマトグラフィー単離
「細胞精製カラム」を実施例1の説明に従って組み立てた。カラムにベッド体積1mlのビオチン-Superflow(0.38mg/mlビオシチン)(実施例2参照)を充填した。実施例3で述べたように末梢血単球(PBMC)をバフィーコートから単離した。
100μlの多量体化したStrep-Tactin(1.7mg/ml)を900μlの緩衝液ISと混合することで、170μg/mlの1:10希釈液を得た。6μgの希釈された多量体化したStrep-Tactin(35.3μl)を実施例4で使用した4μgの抗CD4 Fabフラグメント(250μg/mlを16μl)および74μlの緩衝液ISと混合して最終体積を125μlとし、15ml管中、4℃で45分インキュベートした。実施例4に従って、1×107個の細胞を100μlの体積で加え、抗CD4 Fabフラグメント/Strep-Tactinと共に、4℃で20分インキュベートした。細胞を10mlの緩衝液ISに再懸濁し、400×gで遠心分離し、上清を除去し、細胞を3mlの緩衝液ISに再懸濁した。カラムを1mlの冷緩衝液ISで2回平衡化した。
固相のビオチンへのStrep-Tactinの遊離結合部位の結合によって標的細胞をカラム上に固定化するために、実施例4と同様にして得た細胞懸濁液(1×107細胞)を各1mlずつ3回にわけてカラムに適用した。合計3mlの体積は約15分以内にカラムを流れ抜けた。フロースルーを収集した。カラムを1mlの緩衝液ISで5回洗浄した。合計5mlが約25分以内にカラムを流れ抜けた。フロースルーおよび洗浄液体積を収集し、プールした(フラクションD+W)。1mMビオチンを含む1mlの緩衝液ISを5回加えることによって細胞を溶出させ、収集した(フラクションE)。合計5mlが約20分以内にカラムを流れ抜けた。非特異的な結合によって、またはカラム樹脂内での何らかの種類のスタッキングによって、溶出させることができなかった細胞を除去するために、カラムの下側の排出口にキャップをし、樹脂を1mlの緩衝液ISで再懸濁し、1mlピペットチップで上下にピペッティングすることにより、激しく混合した。次にキャップを取り除き、流出物を収集した。この手順を1回繰り返し、最初のフラクションと共にプールすることで、フラクションRを得た。収集した細胞懸濁液をすべて、緩衝液ISでの遠心分離(400×g)によって洗浄し、ゲーティング用抗体(gating antibody)で染色した。染色は、2μlのゲーティング用抗体、この場合はCD3-PEおよびCD4-APCを使って、50μlの緩衝液IS中で行った。細胞を暗所、4℃で20分インキュベートし、200μlの緩衝液ISにおける遠心分離(400×g)によって洗浄することで、FACS分析にかけられる状態にした。FACS分析はAccuri C6フローサイトメーターで行った。図6A〜6Fに、FACS分析において測定されたフラクションの Accuri C6プロットを図示する。
結果
図7に結果の概要を示す。
・全細胞のFACS分析により、ゲーティングされたリンパ球の集団内に濃度39.56%のCD4細胞が明らかになった。
・フロースルーおよび洗浄液フラクション中の細胞は、濃度4.01%まで、CD4細胞が枯渇していた。
・ビオチンによる溶出により、純度95.04%のCD4細胞が明らかになった。
・カラム樹脂のピペット処理後に、物理的に溶出させた細胞は、依然として、88.26%の純度を示した。
実施例6:GSTタグ付きStrep-TactinおよびFabフラグメントを含有する多価結合複合体を使ったT細胞の単離
確立された手順に従ってヒトバフィーコートの細胞を調製する。Strep-Tactinとグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質を標準的手順に従って生成させる。GST Spin Trapカラム(GE Healthcare Biosciences、スウェーデン国ウプサラ)を使用し、製造者の説明書に従って、前記融合タンパク質をアフィニティー精製する。「Controlled Protein-Protein Crosslinking Kit」(Thermo Fisher Scientific Inc、米国マサチューセッツ州ウォルサム、製品番号23456)を使用し、製造者の説明書に従って、GSTタグ付きStrep-Tactinを多量体化する。125μlの多量体化したGSTタグ付きStrep-Tactin(2.0mg/ml)を875μlのリン酸緩衝食塩水pH7.3と混合することで、250μg/mlの1:8希釈液を得る。6μgの希釈された多量体化したGST-Strep-Tactin(35.3μl)を、ストレプトアビジン結合ペプチドを保持する4μgのFabフラグメントと共にインキュベートし、次に、細胞を再懸濁するためにリン酸緩衝食塩水pH7.3を使って、実施例4で述べたように細胞に加える。
「細胞精製カラム」を実施例1に従って組み立てる。カラムにベッド体積1mlのグルタチオンSepharose(グルタチオンSepharose 4 Fast Flow、GE Healthcare Biosciences、スウェーデン国ウプサラ)を充填する。カラムを1mlの冷リン酸緩衝食塩水pH7.3で2回平衡化する。細胞懸濁液を少しずつカラムに適用する。フロースルーを収集し、カラムを1mlのリン酸緩衝食塩水pH7.3で5回洗浄する。洗浄液フラクションを収集する。10mMグルタチオンおよび1mMビオチンを含む1mlの50mMトリス/HCl、pH8.0を加えることによって細胞を溶出させる。溶出液を収集する。カラムをさらに、10mMグルタチオンを含有する1mlの50mMトリス/HCl、pH8.0で5回洗浄する。溶出しない細胞は実施例5で述べたように除去することができる。
実施例7:ビオチン-NTA、Fab-Hisを含有する多価結合複合体を使ったT細胞の単離
確立された手順に従ってヒトバフィーコートの細胞を調製する。6×Hisタグ付きCD4結合Fabフラグメントを標準的手順に従って生成させる。Ni-NTAスピンカラム(Qiagen、米国カリフォルニア州バレンシア)を使用し、製造者の説明書に従って、前記融合タンパク質をアフィニティー精製する。ビオチンと複数のニトリロ三酢酸(NTA)部分とのコンジュゲートをSchmidtら(前記, 2011)が記載したように合成する。そのビオチン/NTAコンジュゲートを1mg/ml NiCl2を含有するリン酸緩衝食塩水pH7.3に約0.1μg/mlの濃度で溶解し、ストレプトアビジンと接触させることで、リガンド結合パートナーLBとして作用することができるストレプトアビジンの遊離ビオチン部位を保った状態で、多量体型NTA部分を形成させる。88μlの多量体化したビオチン/Ni-NTAストレプトアビジンコンジュゲートを4μgの6×Hisタグ付きCD4-Fab(250μg/mlを16μl)および21μlの緩衝液ISと混合して最終体積を125μlとし、15ml管中、4℃で1時間インキュベートする。細胞を再懸濁するのにリン酸緩衝食塩水pH7.3を使用して、実施例4で述べたように、1×107細胞を100μlの体積で加え、多量体化したCD4-Fab/ビオチン/Ni-NTAと共に、氷上で20分インキュベートする。
「細胞精製カラム」を実施例1に従って組み立てる。実施例2において調製したベッド体積1mlのビオチン-Superflow(0.38mg/mlビオシチン)をカラムに充填する。カラムを1mlの冷リン酸緩衝食塩水pH7.3で2回平衡化する。細胞懸濁液を少しずつカラムに適用する。フロースルーを収集し、カラムを1mlのリン酸緩衝食塩水pH7.3で5回洗浄する。洗浄液フラクションを収集する。1mM EDTAを含有する1mlリン酸緩衝食塩水pH7.3を5回加えることによって細胞を溶出させる。EDTAの添加はヘキサヒスチジンタグを保持するCD4 Fabフラグメント(受容体分子結合試薬)を多量体化試薬から放出させ、それによって細胞も固相から放出させるが、多量体化試薬は固相上に(固相のリガンドLとして作用するビオチンへのストレプトアビジンの結合により)固定化されたままである。溶出液を収集する。カラムを1mlのリン酸緩衝食塩水pH7.3でさらに5回洗浄する。溶出しない細胞は実施例5で述べたように除去することができる。
実施例8:FLAG-Strep-Tactin、Fab-Strepを含有する多価結合複合体を使ったT細胞の単離
確立された手順に従ってヒトバフィーコートの細胞を調製する。ストレプトアビジン結合ペプチドを保持するCD4結合Fabフラグメントを実施例4および実施例5の場合と同じように使用する。FLAGタグ(DYKDDDDK)を持つStrep-Tactinを標準的な手順に従って生成させる。抗FLAG(登録商標)M2磁気ビーズ(Sigma-Aldrich)を使用し、製造者の説明書に従って、前記融合タンパク質をアフィニティー精製する。「Controlled Protein-Protein Crosslinking Kit」(Thermo Fisher Scientific Inc、米国マサチューセッツ州ウォルサム、製品番号23456)を使用し、製造者の説明書に従って、FLAGタグ付きStrep-Tactinを多量体化する。多量体化したFLAGタグ付きStrep-Tactin、Fab-Strep、および細胞を実施例4および実施例6で述べたように混和する。
「細胞精製カラム」を実施例1に従って組み立てる。ベッド体積1mlの抗FLAG(登録商標)M1アガロースアフィニティーゲル(Sigma-Aldrich)をカラムに充填する。カラムを1mlの冷リン酸緩衝食塩水pH7.3で2回平衡化する。細胞懸濁液を少しずつカラムに適用する。フロースルーを収集する。カラムを1mlリン酸緩衝食塩水pH7.3で5回洗浄した。洗浄液フラクションを収集する。1mMビオチンも含有する1mlのFLAGペプチド溶液(Sigma、製品番号F3290)の添加によって細胞を溶出させる。溶出液を収集する。カラムをさらに、1mlのFLAGペプチド/ビオチン溶液で2回洗浄する。溶出しない細胞は実施例5で述べたように除去することができる。
実施例9:多量体化したカルモジュリンとカルモジュリン結合ペプチドを保持するFabフラグメントとを含有する多価結合複合体を使ったT細胞の単離
CD4結合Fabフラグメントとカルモジュリン結合ペプチド(CBP)との融合タンパク質を標準的な手順に従って生成させる。カルモジュリンアフィニティー樹脂(Agilent Technologies、米国カリフォルニア州サンタクララ)を使用し、製造者の説明書によるバッチ結合法を使って、このFabフラグメント-CBP融合タンパク質をアフィニティー精製する。多量体化試薬はオリゴマー型Strep-Tactinであり、これにビオチン化カルモジュリンを加えることで、リガンド結合パートナーLBとして作用することができる遊離ビオチン結合部位を残す化学量論で、多量体化したカルモジュリンが得られる。抗CD4 Fabフラグメント-CBP融合タンパク質を、ビオチン化カルモジュリンが固定化されているオリゴマー型Strep-Tactinと共に、緩衝液IS中、4℃で1時間インキュベートする。
「細胞精製カラム」を実施例1に従って組み立てる。実施例2において調製したベッド体積1mlのビオチン-Superflow(0.38mg/mlビオシチン)をカラムに充填する。カラムを1mlの冷リン酸緩衝食塩水pH7.3で2回平衡化する。細胞懸濁液を少しずつカラムに適用する。フロースルーを収集し、カラムを1mlのリン酸緩衝食塩水pH7.3で5回洗浄する。洗浄液フラクションを収集する。1mM EDTAを含有する1mlリン酸緩衝食塩水pH7.3を5回加えることによって細胞を溶出させる。実施例7と同様に、この実施例でも、EDTAは、カルモジュリン結合ペプチドを保持するCD4 Fabフラグメント(受容体分子結合試薬)を多量体化試薬から放出させ、それによって細胞も固相から放出させるが、多量体化試薬は固相上に(固相のリガンドLとして作用するビオチンへのストレプトアビジンの結合によって)固定化されたままである。溶出液を収集する。カラムを、1mM EDTAを含有する1mlのリン酸緩衝食塩水pH7.3で、さらに5回洗浄する。溶出しない細胞は実施例5で述べたように除去することができる。
実施例10:ピペットチップに基づく、PBMCからのヒトCD8+細胞の一段階精製:非標識細胞およびFabフラグメント機能化樹脂を使用する方法(最新技術)と本発明のFabフラグメントプレインキュベート細胞およびビオチン樹脂を用いる方法との対比
この実験には、全血ユニットからのバフィーコートを使用し、室温での標準的Ficoll-Hypaque密度遠心分離を使って、末梢血単核球(PBMC)を調製した(実施例3参照)。
実施例10.1:先行技術の方法によるFab機能化樹脂を使った非標識細胞の単離(比較例)
本質的に国際特許出願WO 2013/124474に記載されているように、ピペットチップをカラムとして使用するクロマトグラフィー精製によって、CD8+細胞をPBMC調製物から単離した。
簡単に述べると、100μlのStrep-Tactin(登録商標)-アガロース(カタログ番号:6-0425-000、IBA GmbH、ゲッチンゲン)を充填したピペットチップに、2つのStrep-tagIIストレプトアビジン結合モジュール(下線部)の連続的構成、すなわち
Figure 0006678593
((SEQ ID NO:13)、この配列は「Twin-Strep-tag(登録商標)」というその商標名でも知られている)を重鎖のC末端に保持する抗CD8 Fabフラグメント(以下、抗CD8 Fab-TSTと呼ぶ。これはカタログ番号:6-8003の市販品(IBA GmbH、ゲッチンゲン)に対応する)1.5μgを、ローディングした。この目的を達成するために、細胞単離に先だって、Strep-Tactin(登録商標)-アガロースを含有するピペットチップに、300μlの緩衝液IS中の1.5μgの抗CD8-Fab-TSTを、200μl/分の速度で適用した。標的細胞を単離するために、1mlの緩衝液ISに再懸濁した1×107個の新鮮調製PBMCを、300μl/分の速度を使った試料の2回の上下サイクルにより、ピペットチップ中に存在するStrep-Tactin(登録商標)-アガロースマトリックスに適用した。次に、1mlの緩衝液ISを使って2ml/分の速度で3回洗浄(緩衝液を上下にピペッティング)することにより、結合していない(CD8陰性)細胞をチップから除去した。最後に、1mlの100μM D-ビオチン溶液を使って600μl/分の流速ですすぐことによって、結合している細胞をアフィニティーマトリックスから脱離させ、次に、1mlの緩衝液ISを使って2ml/分の流速で2回フラッシングすることにより、CD8+標的細胞をチップから溶出させた。溶出したCD8陽性フラクションと、先に除去したCD8陰性フラクションとを個別に(別々の容器に)プールし、フローサイトメトリーで分析することで、収率および純度を決定した。この目的を達成するために、細胞を100μlの緩衝液ISに再懸濁し、抗ヒトCD8-PE(OKT8)抗体(BioLegend製、カタログ番号300908)および抗ヒトCD3-APC(OKT3)抗体(BioLegend製、カタログ番号317318)を使って、暗所、4℃で、20分染色した。その後、細胞を洗浄し、緩衝液ISに再懸濁した。死細胞と生細胞とを区別するためにヨウ化プロピジウム(PI)を加えた。データはフローサイトメーター(Accuri C6、BD)で取得し、C Flow Plus Analysisソフトウェア(BD)で分析した。
実施例10.2:本発明の方法に従ってビオチン化樹脂を使った、Fabフラグメントと共にプレインキュベートした細胞の単離
1μgの多量体化した可溶性Strep-Tactin(多量体化試薬として使用したカタログ番号:6-0911-000(IBA GmbH、ゲッチンゲン))を、1.5μgの抗CD8 Fab-TST(多量体化試薬に対する結合パートナーCを含有する受容体分子結合試薬になる)と共に、暗所、4℃で、45分インキュベートした。新鮮調製PBMC(30μlの緩衝液IS中に1×107細胞)をFabフラグメント/多量体化したStrep-Tactinの調製物に撮した。PMBCとFabフラグメントが負荷されている多量体化したStrep-Tactinとを含有する反応混合物を、暗所、4℃で20分インキュベートし、1mlの緩衝液ISで1回洗浄した。
ピペットチップに、リガンドLを含む固相として役立つ100μlのビオチン-アガロース(カタログ番号:6-0446-000、IBA GmbH、ゲッチンゲン)を充填した。抗CD8 Fab-TST/多量体化したStrep-Tactinとプレインキュベートした細胞を、300μl/分の速度を使った試料の2回の上下サイクルにより、ピペットチップ中に存在するStrep-Tactin(登録商標)-アガロースマトリックスに適用した。次に、1mlの緩衝液ISを使って2ml/分の速度で3回洗浄(緩衝液を上下にピペッティング)することにより、結合していない(CD8陰性)細胞をチップから除去した。最後に、1mlの100μM D-ビオチン溶液を使って600μl/分の流速ですすぐことによって、結合している細胞をアフィニティーマトリックスから脱離させ、次に、1mlの緩衝液ISを使って2ml/分の流速で2回フラッシングすることにより、CD8+標的細胞をチップから溶出させた。溶出したCD8陽性フラクションと、先に除去したCD8陰性フラクションとを個別に(別々の容器に)プールし、フローサイトメトリーで分析することで、収率および純度を決定した。この目的を達成するために、細胞を100μlの緩衝液ISに再懸濁し、抗ヒトCD8-PE(OKT8)抗体(BioLegend製、カタログ番号300908)および抗ヒトCD3-APC(OKT3)抗体(BioLegend製、カタログ番号317318)を使って、暗所、4℃で、20分染色した。その後、細胞を洗浄し、緩衝液ISに再懸濁した。死細胞と生細胞とを区別するためにヨウ化プロピジウム(PI)を加えた。データはフローサイトメーター(Accuri C6、BD)で取得し、C Flow Plus Analysisソフトウェア(BD)で分析した。
実施例10.1の結果と実施例10.2の結果の比較
国際特許出願WO 2013/124474に記載の方法(図9A)および本発明の方法(図9B)を使った代表的単離実験のAccuri C6プロットからわかるように、どちらの方法もCD8+標的細胞を単離することができる。図9Cに示す両方法の結果の比較(図9Cにおいて、0015という数字は国際特許出願WO 2013/124474の方法の結果を表し、一方、0016という数字は本発明の方法の結果を表す;%で示す数値は3回の独立した実験の平均値である)は、受容体分子結合試薬として等量の抗CD8 Fab-TSTを使用した場合に、本発明の方法を使用するとCD8+細胞が89%の収率および70%の純度で得られたが、国際特許出願WO 2013/124474の方法では、純度63%のCD8+細胞が72%の収率で得られたことを示している。これは、単離しようとする標的細胞の収率と純度がどちらも、本発明の方法によって改良されることを示している。
実施例11:PBMCからのヒトCD3+細胞の、ピペットに基づく一段階精製:Fabフラグメントの使用量を減らした、非標識細胞およびFabフラグメント機能化樹脂を使用する方法とFabフラグメントプレインキュベート細胞およびビオチン樹脂を使用する方法との対比
この実験でも、本発明の標的細胞単離方法の性能を、国際特許出願WO 2013/124474に記載のピペットチップを使用するクロマトグラフィー精製と比較した。
この実験では、国際特許出願WO 2013/124474に記載されているように、非標識細胞とFabフラグメントで機能化したStrep-tactin樹脂とを使用し、実施例10で述べたようにピペットチップを使って、PBMC調製物からCD3+細胞を単離した。比較として、本発明の方法に従って、Fabフラグメントと共にプレインキュベートした細胞とビオチン樹脂とを使って、CD3+細胞を単離した。使用した抗CD3 Fabフラグメント(カタログ番号:6-8001、IBA GmbH、ゲッチンゲン)は、Twin-Strep-tag(登録商標)
Figure 0006678593
を、重鎖のC末端に保持していた。実施例10と比較して、Fabフラグメントの量は1.5μgから0.75μgに減らしたが、樹脂体積、多量体化した可溶性Strep-Tactinの量および細胞数は、それぞれ変化させなかった。得られたCD3陽性およびCD3陰性フラクションを、抗ヒトCD3-APC(OKT3)抗体(BioLegend製、カタログ番号317318)および抗ヒトCD4-PE(OKT4)抗体(BioLegend製、カタログ番号317410)を使って、フローサイトメトリーで分析した。
国際特許出願WO 2013/124474に記載の方法(図10A)および本発明の方法(図10B)を使った代表的単離実験のAccuri C6プロットからわかるとおり、これらの条件では、どちらの方法も、やはりCD8+標的細胞を単離することができる。図10Cに示す両方法の結果の比較(図10Cにおいて、0015という数字は国際特許出願WO 2013/124474による方法の結果を表し、一方、0016という数字は本発明の方法の結果を表す;%で示す数値は3回の独立した実験の平均値である)は、受容体分子結合試薬として等量の0.75抗CD8 Fab-TSTを使用した場合に、本発明の方法を使用するとCD8+細胞が72%の収率および90%の純度で得られたが、国際特許出願WO 2013/124474の方法では純度77%のCD8+細胞が9%の収率でしか得られなかったことを示している。このように、(実施例10において使用した量と比較して)受容体分子結合試薬の量を50%減らした場合には、本発明の方法を使用すれば標的の収率と純度がどちらも一定のままであったのに対して、国際特許出願WO 2013/124474の方法の収率は著しく低下した。
実施例5、10および11の結果を要約すると、本発明の方法は、PBMC調製物からCD4+細胞、CD8+細胞およびCD3+細胞を単離することができる。実施例10および実施例11の比較は、国際特許出願WO 2013/124474に記載の方法とは対照的に、収率および純度に著しい損失を伴わずに受容体分子結合試薬(例えば結合パートナーCとしてストレプトアビジン結合ペプチドを保持するFabフラグメント)の量を低減することができ、それによって費用および資源を節約できることを示している。この比較は、本発明の方法が国際特許出願WO 2013/124474に記載の方法よりもロバストであることも示している。
実施例12:本発明のビオチン化樹脂、Strep-TactinおよびFabフラグメントを使ったB細胞の単離
1μgの多量体化した可溶性Strep-Tactin(多量体化試薬として使用したカタログ番号:6-0911-000、IBA GmbH、ゲッチンゲン)を、1.5μgの抗CD19 Fabフラグメント(IBA GmbHからカタログ番号6-8013-100として入手することができる。このFabフラグメント(「抗CD 19 Fab-TST」)は、重鎖のC末端にTwin-Strep-tag(登録商標)を保持するので、多量体化試薬に対する結合パートナーCを含有する受容体分子結合試薬として役立つ)と共に、暗所、4℃で、45分インキュベートする。新鮮調製PBMC(30μlの緩衝液IS中に1×107細胞)をFabフラグメント/多量体化したStrep-Tactinの調製物に移す。PMBCとFabフラグメントが負荷されている多量体化したStrep-Tactinとを含有する反応混合物を、暗所、4℃で、20分インキュベートし、1mlの緩衝液ISで1回洗浄する。
ピペットチップに、リガンドLを含む固相として役立つ100μlのビオチン-アガロース(カタログ番号:6-0446-000、IBA GmbH、ゲッチンゲン)を充填する。次に、抗CD 19 Fab-TST/多量体化したStrep-Tactinと共にプレインキュベートした細胞を、300μl/分の速度を使った試料の2回の上下サイクルにより、ピペットチップ中に存在するStrep-Tactin(登録商標)-アガロースマトリックスに適用する。次に、1mlの緩衝液ISを使って2ml/分の速度で3回洗浄(緩衝液を上下にピペッティング)することにより、結合していない(CD19陰性)細胞をチップから除去する。最後に、1mlの100μM D-ビオチン溶液を使って600μl/分の流速ですすぐことによって、結合している細胞をアフィニティーマトリックスから脱離させ、次に、1mlの緩衝液ISを使って2ml/分の流速で2回フラッシングすることにより、CD 19+標的細胞をチップから溶出させる。溶出したCD19陽性フラクションと、先に除去したCD19陰性フラクションとを個別に(別々の容器に)プールし、フローサイトメトリーで分析することで、収率および純度を決定する。この目的を達成するために、細胞を100μlの緩衝液ISに再懸濁し、ヒト抗CD19-APC抗体(eBioscienceから入手する、クローン:SJ25C1、カタログ番号:17-0198-42)を使って、暗所、4℃で、20分染色する。その後、細胞を洗浄し、緩衝液ISに再懸濁する。死細胞と生細胞とを区別するためにヨウ化プロピジウム(PI)を加える。データはフローサイトメーター(Accuri C6、BD)で取得し、C Flow Plus Analysisソフトウェア(BD)で分析する。
本明細書における先に公表された文書の掲載または議論は、必ずしも、その文書が最新技術の一部または共通一般知識であることの自白であると解釈してはならない。
本明細書において例示的に説明した発明は、本明細書において具体的に開示されていない1つまたは複数の任意の要素、1つまたは複数の限定が存在しなくても、適切に実施しうる。したがって、例えば「を含む(comprising)」「を包含する(including)」、「を含有する(containing)」などの用語は、拡張的かつ非限定的に解釈されるものとする。加えて、本明細書において使用する用語および表現は、限定ではなく説明の観点から使用されたものであり、そのような用語および表現の使用に、本明細書に示し記載した特徴のいかなる等価物またはその一部分も排除しようとする意図はなく、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲内でさまざまな変更が可能であると認識される。したがって、本発明を例示的態様および随意の特徴によって具体的に開示したが、本明細書に開示するそこに体現された本発明の変更または変形を、当業者は用いることができ、そのような変更および変形は本発明の範囲内にあるとみなされると理解すべきである。
本発明を本明細書に広く包括的に説明した。包括的開示内に含まれる、より狭小な種概念および下位概念分類のそれぞれも、本発明の一部を形成する。これは、当該類概念から何らかの内容を除去する但し書きまたは消極的限定付きの、本発明の包括的説明を包含し、排除されたものが本明細書において具体的に言及されているか否かを問わない。
他の態様は以下の特許請求の範囲内にある。加えて、本発明の特徴または局面がマーカッシュ群で記載されている場合は、それによって本発明が、そのマーカッシュ群の任意の個別メンバーまたはメンバーのサブグループについても記載されていると、当業者は認識するであろう。

Claims (31)

  1. 以下の工程を含む、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を単離する方法:
    - i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含む、受容体分子結合試薬、
    ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含み、リガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBをさらに含かつ可溶性である、多量体化試薬、
    および
    iii)標的細胞を含む試料
    を接触させ、
    それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、および
    - 標的細胞、受容体分子結合試薬、および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
    それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、該固相が、クロマトグラフィーに適したものでありかつ非磁性材料または非磁化可能材料であり、該固相上での標的細胞の固定化が、少なくとも受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合を破壊すると可逆的である、工程。
  2. 受容体分子結合試薬と多量体化試薬とを互いに接触させることで、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬を含む複合体を形成させてから、この複合体を標的細胞と接触させる(インキュベートする)、請求項1記載の方法。
  3. 受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(Kd)が10-210-10Mの範囲にある、請求項1または2記載の方法。
  4. 受容体分子結合試薬と受容体分子との間の結合に関する解離定数(Kd)が10-3M〜10-10M範囲にある、請求項1または2記載の方法。
  5. 固相が、ビーズ、プラスチックプレート、またはクロマトグラフィーに適した固定相から選択される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
  6. 受容体分子結合試薬に含まれるパートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間に形成される可逆的結合が、競合条件下で解離可能(破壊可能)である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
  7. 固相を、結合パートナーCと結合部位Zとの間に形成される可逆的結合を破壊する能力を有する競合試薬と接触させ、それによって標的細胞/多価結合複合体を破壊し、固相から(溶出によって)標的細胞を放出させることを可能にする工程を含む、請求項6記載の方法。
  8. 多量体化試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBと固定相上に含まれるリガンドLとの間に形成される結合が解離可能(破壊可能)である、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
  9. リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間に形成される結合が、競合条件下で解離可能(破壊可能)である、請求項8記載の方法。
  10. 固相を、リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間に形成される結合を解離させる(破壊する)能力を有する競合試薬と接触させ、それによって固相から標的細胞を放出させる工程を含む、請求項9記載の方法。
  11. 結合パートナーCと結合部位Zとの間に形成される可逆的結合を破壊するためと、リガンド結合パートナーLBとリガンドLとの間に形成される結合を破壊するためとに、同じ競合試薬が使用される、請求項610のいずれか一項記載の方法。
  12. 固相から放出された標的細胞を収集する工程をさらに含む、請求項410のいずれか一項記載の方法。
  13. 受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の可逆的結合が、10-510-13MのKdを有する、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
  14. 結合パートナーCと結合部位Zとが、
    - ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン類似体、および、ストレプトアビジンに結合するリガンド、
    - 二価カチオンの存在下で結合する結合ペア、
    - オリゴヒスチジンペプチド、および、各キレート基Kが遷移金属イオンに結合する能力を有し、それによって結合部分Aにオリゴヒスチジンペプチドに結合する能力を与える、少なくとも2つのキレート基Kを含む結合部分A、
    - 抗原および該抗原に対する抗体であって、結合パートナーCが該抗原を含み、かつ多量体化試薬が該抗体を含む、抗原および該抗原に対する抗体、
    の群から選択される結合ペアを形成する、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
  15. (a)結合パートナーCが、ビオチンを含み、かつ、多量体化試薬が、ビオチンに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体またはアビジン類似体を含むか、または
    (b)結合パートナーCが、ストレプトアビジンまたはアビジンに可逆的に結合するビオチン類似体を含み、かつ、多量体化試薬が、ストレプトアビジンもしくはアビジン、または該ビオチン類似体に可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはアビジン類似体を含むか、または
    (c)結合パートナーCが、ストレプトアビジン結合ペプチドまたはアビジン結合ペプチドを含み、かつ、多量体化試薬が、ストレプトアビジンもしくはアビジン、または該ストレプトアビジン結合ペプチドもしくは該アビジン結合ペプチドに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはアビジン類似体を含む、
    請求項14記載の方法。
  16. 多量体化試薬が、野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Val44-Thr45-Ala46-Arg47(SEQ ID NO:19)を含むストレプトアビジンムテイン、または野生型ストレプトアビジンの配列位置44〜47にアミノ酸配列Ile44-Gly45-Ala46-Arg47(SEQ ID NO:20)を含むストレプトアビジンムテインを含み、かつ、結合パートナーCが、以下の配列の1つを含むか、または以下の配列の1つからなるストレプトアビジン結合ペプチドを含む、請求項15記載の方法:
    a)-Trp-Xaa-His-Pro-Gln-Phe-Yaa-Zaa-(SEQ ID NO:1)、配列中、Xaaは任意のアミノ酸であり、YaaおよびZaaはどちらもGlyであるか、または、YaaがGluであり、かつZaaがLysもしくはArgである、
    b)-Trp-Arg-His-Pro-Gln-Phe-Gly-Gly-(SEQ ID NO:2)、
    c)-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(SEQ ID NO:3)、
    d)少なくとも2つのストレプトアビジン結合ペプチドの連続的構成、ここで、各ペプチドはストレプトアビジンに結合し、2つのペプチド間の距離は少なくとも0であり、かつ50アミノ酸を上回らず、前記少なくとも2つのペプチドのそれぞれはアミノ酸配列-His-Pro-Baa-を含み、配列中のBaaはグルタミン、アスパラギン、およびメチオニンからなる群より選択される、
    e)前記少なくとも2つのペプチドの1つが配列-His-Pro-Gln-を含む、d)で述べた連続的構成、
    f)前記ペプチドの1つがアミノ酸配列-His-Pro-Gln-Phe-(SEQ ID NO:4)を含む、d)で述べた連続的構成、
    g)少なくとも1つのペプチドが少なくともアミノ配列-Oaa-Xaa-His-Pro-Gln-Phe-Yaa-Zaa-(SEQ ID NO:5)を含み、配列中、OaaはTrp、Lys、またはArgであり、Xaaは任意のアミノ酸であり、かつ、YaaおよびZaaはどちらもGlyであるか、または、YaaがGluであり、かつZaaがLysもしくはArgである、d)で述べた連続的構成、
    h)少なくとも1つのペプチドが少なくともアミノ酸配列-Trp-Xaa-His-Pro-Gln-Phe-Yaa-Zaa-(SEQ ID NO:6)を含み、配列中、Xaaは任意のアミノ酸であり、YaaおよびZaaはどちらもGlyであるか、YaaがGluであり、かつZaaがLysまたはArgである、d)で述べた連続的構成、
    i)少なくとも1つのペプチドが少なくともアミノ酸配列-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(SEQ ID NO:7)を含む、d)で述べた連続的構成、
    j)アミノ酸配列-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(Xaa)n-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(SEQ ID NO:8)、配列中、Xaaは任意のアミノ酸であり、nは0〜12の整数である、
    k)
    Figure 0006678593
    からなる群より選択されるアミノ酸配列。
  17. 二価カチオンの存在下で結合する結合ペアに関して、
    結合パートナーCがカルモジュリン結合ペプチドを含み、かつ多量体化試薬がカルモジュリンを含むか、または
    結合パートナーCがFLAGペプチドを含み、かつ多量体化試薬がFLAGペプチドに結合する抗体を含むか、または
    結合パートナーCがオリゴヒスチジンタグを含み、かつ多量体化試薬がキレートされた遷移金属を含む、
    請求項14記載の方法。
  18. 二価カチオンがCa2+、Ni2+、またはCo2+からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
  19. 結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合が金属イオンキレーションによって破壊される、請求項17記載の方法。
  20. 金属キレーションがEDTAまたはEGTAの添加によって実行される、請求項19記載の方法。
  21. 結合パートナーCに含まれる抗原がエピトープタグである、請求項14記載の方法。
  22. エピトープタグが、Mycタグ(配列: EQKLISEEDL、SEQ ID NO:14)、HAタグ(配列: YPYDVPDYA、SEQ ID NO:15)、VSV-Gタグ(配列: YTDIEMNRLGK、SEQ ID NO:16)、HSVタグ(配列: QPELAPEDPED、SEQ ID NO:17)、およびV5タグ(配列: GKPIPNPLLGLDST、SEQ ID NO:18)からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
  23. 結合パートナーCに含まれる抗原がタンパク質である、請求項14記載の方法。
  24. タンパク質が、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質(MBP)、キチン結合タンパク質(CBP)、およびチオレドキシンの群から選択される、請求項22記載の方法。
  25. リガンド結合パートナーLBへのリガンドLの結合の解離定数Kdが、結合部位Zへの可逆的結合パートナーCの結合の解離定数Kdより小さい、請求項1〜24のいずれか一項記載の方法。
  26. リガンドLおよびリガンド結合パートナーLBが、
    - リガンド結合パートナーLBとしてのストレプトアビジンまたはストレプトアビジン類似体、およびストレプトアビジンに結合するリガンドL(分子)、
    - 二価カチオンの存在下で結合する結合ペア、
    - リガンドLとしてのオリゴヒスチジンペプチド、および、各キレートK基が遷移金属イオンに結合する能力を有し、それによってオリゴヒスチジンペプチドに結合する能力を部分Aに与える、リガンド結合パートナーLBとしての少なくとも2つのキレート基Kを含む結合部分A、
    - 抗原および該抗原に対する抗体であって、リガンドLが該抗原を含み、かつリガンド結合パートナーLBが該抗体を含む、抗原および該抗原に対する抗体、
    - リガンド結合パートナーLBとしての、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質(MBP)、キチン結合ドメイン、およびセルロース結合ドメインの群から選択されるタンパク質、ならびにリガンドLとしての、それぞれグルタチオン、マルトース、キチン、またはセルロース、
    - リガンド結合パートナーLBとしての抗体Fcドメイン、およびリガンドLとしての免疫グロブリン結合タンパク質、例えばプロテインA、プロテインG、またはプロテインL、
    の群から選択される結合ペアを形成する、請求項825のいずれか一項記載の方法。
  27. 受容体分子に特異的に結合する受容体分子結合試薬が、抗体、二価抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様の結合特性を有するタンパク質性結合分子、およびMHC分子からなる群より選択される、請求項1〜26のいずれか一項記載の方法。
  28. 以下の工程を含む、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を単離する方法:
    - i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含み、リガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBをさらに含む、受容体分子結合試薬、および
    ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含み、かつ可溶性である、多量体化試薬、
    iii)標的細胞を含む試料
    を接触させ、
    それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、
    - 標的細胞、受容体分子結合試薬、および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
    それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、該固相が、クロマトグラフィーに適したものでありかつ非磁性材料または非磁化可能材料であり、該固相上での標的細胞の固定化が、
    a)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合、および/または
    b)固相のリガンドLと受容体分子結合試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBとの間の結合
    を破壊すると可逆的である、工程。
  29. 以下の工程を含む、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を固相上に固定化する方法:
    - i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含む、受容体分子結合試薬、
    ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含み、リガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBをさらに含み、かつ可溶性である、多量体化試薬、
    および
    iii)標的細胞を含む試料
    を接触させ、
    それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、
    - 標的細胞、受容体分子結合試薬、および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
    それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、該固相が、クロマトグラフィーに適したものでありかつ非磁性材料または非磁化可能材料であり、該固相上での標的細胞の固定化が、少なくとも受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合を破壊すると可逆的である、工程。
  30. 以下の工程を含む、標的細胞表面上に受容体分子を有する標的細胞を固相上に固定化する方法:
    - i)標的細胞表面上の受容体分子に特異的に結合する能力を有する結合部位Bと、多量体化試薬上の結合部位Zに可逆的に結合する能力を有する結合パートナーCとを含み、リガンドLに特異的に結合する能力を有するリガンド結合パートナーLBをさらに含む、受容体分子結合試薬、および
    ii)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCに可逆的に結合する能力を有する2つ以上の結合部位Zを含み、かつ可溶性である、多量体化試薬、
    iii)標的細胞を含む試料
    を接触させ、
    それによって、受容体分子結合試薬、多量体化試薬、および標的細胞が、多量体化試薬に結合した2つ以上の受容体分子結合試薬に結合している標的細胞を含む多価結合複合体を形成することを可能にする工程、
    - 標的細胞、受容体分子結合試薬、および多量体化試薬の多価結合複合体を、リガンドLを含む固相と接触させ、
    それによって、リガンドLとリガンド結合パートナーLBとの間の結合による固相上での標的細胞の可逆的固定化を可能にする工程であって、該固相が、クロマトグラフィーに適したものでありかつ非磁性材料または非磁化可能材料であり、該固相上での標的細胞の固定化が、
    a)受容体分子結合試薬に含まれる結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合、および/または
    b)固相のリガンドLと受容体分子結合試薬に含まれるリガンド結合パートナーLBとの間の結合
    を破壊すると可逆的である、工程。
  31. 請求項1〜27のいずれか一項記載の標的細胞を単離する方法または標的細胞を固定化するための方法における、リガンド結合パートナーLBに特異的に結合する能力を有するリガンドLを含む固相の使用。
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