以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、作業機械の一例として無線通信装置を有する油圧ショベルを例示して説明するが、作業現場で作業を行う際に無線通信装置を用いた通信を行うものであれば油圧ショベル以外の作業機械への適用も可能である。
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を図1〜9図を参照しつつ説明する。
図1は本実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの構成を模式的に示す側面図であり、図2は本実施の形態に係る通信状況通知システムを模式的に示す図である。また、図3は油圧ショベルが配置される作業現場の一例を示す等高線図、図4は図3における基地局と油圧ショベルとを含む平面による標高断面図である。
図1において、油圧ショベル1は、多関節型のフロント作業機30と、フロント作業機30を支持する上部旋回体20と、上部旋回体20を旋回可能に支持する下部走行体10とで構成されている。上部旋回体20と下部走行体10は、油圧ショベル1の車体を構成している。
フロント作業機30は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム31,アーム33及びバケット35)を連結して構成されている。ブーム31の基端は上部旋回体20の前部においてブームピン37を介して回動可能に支持されている。ブーム31の先端にはアームピン38を介してアーム33の一端が回動可能に連結されており、アーム33の他端(先端)にはバケットピン39を介してバケット35が回動可能に連結されている。ブーム31はブームシリンダ32によって駆動され、アーム33はアームシリンダ34によって駆動され、バケット35はバケットシリンダ36によって駆動される。
ブーム31と上部旋回体20の旋回フレーム21との連結部分には、ブーム31の姿勢情報として旋回フレーム21に対するブーム31の相対角度(以降、「ブーム角度」と称する)を検出する姿勢センサとしてのブーム角度センサ63が設けられている。同様に、アーム33とブーム31との連結部分には、アーム33の姿勢情報としてブーム31に対するアーム33の相対角度(以降、「アーム角度」と称する)を検出する姿勢センサとしてのアーム角度センサ65が設けられている。また、バケットシリンダ36のボトム側端部(ブーム31との連結部側の端部)には、バケットシリンダ36のストローク位置から、バケット35の姿勢情報としてアーム33に対するバケット35の相対角度(以降、「バケット角度」と称する)を算出するための姿勢センサとしてのバケットシリンダストロークセンサ67が設けられている。なお、各被駆動部材31,33,35のそれぞれに対応する姿勢センサとしては、被駆動部材31,33,35の連結部分に設けられる角度センサ、油圧アクチュエータ32,34,36に設けられるストロークセンサ、及び被駆動部材31,33,35に設けられる傾斜センサの少なくとも何れか一種を選択して用いても良い。
下部走行体10は、左右一対のクローラフレーム12a(12b)にそれぞれ掛け回された一対のクローラ11a(11b)と、クローラ11a(11b)をそれぞれ駆動する走行油圧モータ13a(13b)(図示しない減速機構を含む)とから構成されている。なお、図1において、下部走行体10の各構成については、左右一対の構成のうちの一方のみを図示して符号を付し、他方の構成については図中に括弧書きの符号のみを示して図示を省略する。
上部旋回体20は、基部となる旋回フレーム21上に各部材を配置して構成されており、上部旋回体20を構成する旋回フレーム21が下部走行体10に対して旋回可能となっている。上部旋回体20の旋回フレーム21上には、オペレータが搭乗して操作レバー装置(図示せず)により油圧ショベル1の操作を行うための運転室23が配置されているほか、原動機であるエンジン22と、エンジン22により駆動されるメイン油圧ポンプ41及びパイロット油圧ポンプ42と、各油圧アクチュエータを駆動するための油圧回路システム40が搭載されている。また、上部旋回体20には、車体の水平面に対する傾きを検出する車体傾斜センサ68が配置されている。
図2において、通信状況通知システムは、油圧ショベル1が作業を行う作業現場の少なくとも一部を通信対象の範囲とする位置に配置された基地局2に設けられた基地局無線機(基地局無線通信装置)220と、基地局無線機220との無線通信を行うために油圧ショベル1に設けられた無線機(車体無線通信装置)120を有する車載システム100と、油圧ショベル1による作業の管理を行う作業管理所3に設けられ、基地局2の基地局無線機220を介して油圧ショベル1の無線機120との無線通信を行うための無線機(管理所無線通信装置)320を有する管理所システム300とから構成されている。
車載システム100は、無線機120と、油圧ショベル1の作業現場における位置情報を演算する車体位置情報演算装置としてのGPS(Global Positioning System)160と、基地局無線機220と無線機120との無線通信に関する制御を行う電波強度演算システム110と、オペレータによる油圧ショベル1での作業を支援する施工支援車載システム140と、電波強度演算システム110及び施工支援車載システム140からの情報を表示する表示装置150と、無線機120、電波強度演算システム110、及び、施工支援車載システム140を接続して情報の授受を行うHUB130とを備えている。
電波強度演算システム110は、GPS160からの情報に基づいて、油圧ショベル1の作業現場における位置情報を取得する自車位置取得部(車体位置情報取得装置)112と、各種情報を記憶する記憶装置113と、油圧ショベル1の無線機120と基地局無線機220との無線通信における健全性に関する演算を行う無線信号強度予測演算部(制御装置)111とを有している。
記憶装置113は、油圧ショベル1の無線機120の無線通信における受信電力(アンテナ利得など)を記憶する車載無線受信電力記憶部113aと、基地局2の位置(基地局無線機220の位置)を記憶する基地局無線位置記憶部113bと、作業管理所3の地形情報演算システム310(後述)から基地局2を介して得られる、基地局2を含む油圧ショベル1周辺の地形データ(周辺地形データ)を記憶する周辺地形データ記憶部113cと、基地局2の基地局無線機220の無線通信における出力電力を記憶する基地局無線出力電力記憶部113dと、油圧ショベル1の無線機120の無線通信における受信限界(最大側および最少側の受信限界電力)を記憶する車載無線機受信限度記憶部113eとを有している。
無線信号強度予測演算部111は、基地局無線機220の位置と油圧ショベル1の位置とに基づいて、基地局無線機220と油圧ショベル1の距離を演算し、その演算した距離に基づいて、基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120の一方から他方に送信される通信電波の距離による減衰である距離減衰R(後述)を演算する距離減衰演算部111bと、基地局2と油圧ショベル1の間の地形の地形データに基づいて、基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120の一方から他方に送信される通信電波の地形による減衰である地形減衰F(後述)を演算する地形減衰演算部111aと、距離減衰Rと地形減衰Fとに基づいて、基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120の間の無線通信における受信信号の強度の推定値である無線信号強度予測値を演算し、表示装置150に表示する無線信号強度予測演算部111cとを有している。
施工支援車載システム140は、油圧ショベル1による作業の進捗管理や作業目標、車体位置等の情報を取得および表示することによりオペレータの効率的な作業を支援するものである。例えば、GPS160などから得られる車体位置の情報を基に油圧ショベル1の周辺の作業対象となる地形のデータを取得するとともに、姿勢センサ63,65,67や車体傾斜センサ68などから得られる情報に基づいてフロント作業機30の姿勢(例えば、バケット35の爪先位置)を演算し、地形データとフロント作業機30の姿勢とを表示装置150に同時に表示することで、オペレータの作業を支援する。
表示装置150は、運転室23内のオペレータから見やすい位置、かつ、外部視野確保の妨げにならない位置に配置されている。表示装置150は、油圧ショベル1に関する種々の情報や設定画面等を表示するものであり、例えば、タッチパネル式などの入力も可能なモニタ装置であっても良く、或いは、図示しない操作装置によって設定画面等の操作や入力を行うのもであっても良い。
管理所システム300は、基地局2の基地局無線機220を介して油圧ショベル1の無線機120との無線通信を行うための無線機(管理所無線通信装置)320と、油圧ショベル1の施工支援車載システム140と一体となってオペレータの作業を支援する施工支援システム340と、作業現場の地形に関するデータの処理を行う地形情報演算システム310と、無線機320、施工支援システム340、及び、地形情報演算システム310を接続して情報の授受を行うHUB330とを備えている。
地形情報演算システム310は、各種情報の記憶を行う記憶装置312と、油圧ショベル1周辺の地形データ(周辺地形データ)を生成して油圧ショベル1に送信する地形データ配信処理部311とを有している。
記憶装置312は、油圧ショベル1の電波強度演算システム110の自車位置取得部112で得られて基地局2を介して送信されてきた油圧ショベル1の位置情報を記憶する車両位置記憶部312aと、基地局2の位置(基地局無線機220の位置)を記憶する基地局無線位置記憶部312bと、航空測量で得られた作業現場全体の地形データを記憶する航空測量地形記憶部312cとを有している。
地形データ配信処理部311は、油圧ショベル1の電波強度演算システム110の自車位置取得部112で得られて基地局2を介して送信されてきた油圧ショベル1の位置情報と記憶装置312の航空測量地形記憶部312cの情報(3D地形データ)とに基づいて基地局2を含む油圧ショベル1周辺の地形データ(周辺地形データ)を生成し、基地局2の基地局無線機220を介して油圧ショベル1に送信する。なお、周辺地形データは、3D地形データを基地局2を含む油圧ショベル1周辺の地形データに限定したものであり、3D地形データよりも小さいデータサイズとすることができる。
ここで、油圧ショベル1の電波強度演算システム110における無線信号強度予測演算部111の処理原理について説明する。ここでは、図3及び図4に示すように基地局2が配置され、油圧ショベル1が位置するような場合を例として考える。
基地局2及び油圧ショベル1の位置関係が図3及び図4のような場合、基地局2の基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120の間の無線通信における距離、すなわち、基地局2の基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120(以降、説明の簡単のために基地局無線機220及び無線機120のアンテナについては記載を省略する)とを結ぶ線分71の長さによる距離減衰Rは、下記の(式1)により求められる。
R=(λ/(4πd))^2 ・・・(式1)
上記の(式1)において、λは無線電波の波長であり、dは線分71の長さである。
また、図4に示すような線分71を含む鉛直面における地形の断面を考える。図4において、範囲70は、基地局2の基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120の間の無線通信における第1フレネルゾーンを示している。例えば、第1フレネルゾーン70と地形との重複が無い場合においては第1フレネルゾーン70と地形との距離が最も近い位置H、第1フレネルゾーン70と地形との重複が有る場合においては第1フレネルゾーン70と地形との重複が最も大きい位置H(言い換えると、線分71に垂直な方向において第1フレネルゾーン70と地形の重なりが最も大きい位置H)について、第1フレネルゾーン70の直径Aは、下記の(式2)で求められる。
A/2=sqrt(λ×(d1×d2)/(d1+d2)) ・・・(式2)
上記の(式2)において、d1は基地局無線機220から位置Hまでの距離、d2は油圧ショベル1の無線機120から位置Hまでの距離であり、線分71の距離d=d1+d2である。
また、位置Hにおける重複距離B(地形と線分71との距離であり、地形が線分71と重複する場合には負の値をとる)を考えると、B/Aの計算結果から図5に示す減衰テーブルを用いて地形減衰Fを求めることができる。図5は、減衰テーブルを示す図であり、縦軸に地形減衰Fを、横軸にB/Aをそれぞれ示している。図5の減衰テーブルでは、B/Aが増加するのに従って地形減衰Fが減少し、B/A=1/2となる(すなわち、第1フレネルゾーン70と地形との重複が無くなる)と地形減衰Fがほぼ0(ゼロ)となる。
そして、距離減衰Rと地形減衰Fとを用いて、油圧ショベル1の無線機120の無線通信における受信電力Prを、下記の(式3)から求めることができる。
Pr=G−R−F ・・・(式3)
上記の(式3)において、Gは、基地局無線機220の無線出力(基地局無線出力電力記憶部113dの情報)や無線機120のアンテナ利得(車載無線受信電力記憶部113aの情報)から得られる定数である。
なお、地形減衰Fを考慮しない理想的な無線通信における一般的な受信利得PRは、下記の(式4)から求めることができる。
PR=((λ/(4πD))^2)×GT×GR×PT ・・・(式4)
上記の(式4)において、PTは送信電力(W)、GRは受信利得(倍)、GTは送信利得(倍)、λは波長(m)、Dは距離(m)である。
次に、本実施の形態の通信状況通知システムにおける処理の流れを説明する。
図6は作業管理所の地形データ配信処理部における処理内容を示すフローチャートであり、図7は油圧ショベルの電波強度演算システムにおける処理内容を示すフローチャートである。
図6において、作業管理所3の管理所システム300における地形データ配信処理部311は、記憶装置312の航空測量地形記憶部312cからの3D地形データを取得し(ステップS300)、車載システム100の電波強度演算システム110における自車位置取得部(車体位置情報取得装置)112で得られた油圧ショベル1の位置情報を基地局2を介して取得し(ステップS310)、3D地形データと油圧ショベル1の位置情報とから、基地局2を含む油圧ショベル1の周辺の地形データ(周辺地形データ)を生成し(ステップS330)、生成した周辺地形データを基地局2を介して油圧ショベル1の車載システム100に送信する。
図6において、油圧ショベル1の車載システム100における電波強度演算システム110は、作業管理所3の管理所システム300における地形情報演算システム310から基地局2を介して送信され、記憶装置113の周辺地形データ記憶部113cに記憶された周辺地形データを取得し(ステップS100)、自車両(油圧ショベル1)の位置情報を取得して(ステップS110)、受信電力Prの演算範囲を選定する(ステップS120)。受信電力Prの演算は、周辺地形データの全体について行う必要がなく、自車両(油圧ショベル1)周辺についてのみ行えば良いため、ステップS120においては自車両を含む予め定めた範囲を受信電力Prの演算範囲として選定する。
続いて、基地局2の基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120の間の無線通信における距離による距離減衰Rを演算する(ステップS130)。
続いて、基地局2の基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120を結ぶ線分71を含む鉛直面における地形の断面形状(標高断面)を演算し(ステップS140)、第1フレネルゾーン70を演算して(ステップS150)、第1フレネルゾーン70と地形の最も近い位置H(又は重複する位置H)を求め、位置Hにおける第1フレネルゾーン70の直径Aと重複距離BとからB/Aを演算する(ステップS160)。そして、ステップS160で求めたB/Aと減衰テーブルとから地形減衰Fを演算する(ステップS170)。なお、減衰テーブルは、無線信号強度予測演算部111が予め持っている場合を例示して説明しているが、記憶装置113に記憶させるように構成しても良い。
続いて、ステップS130で演算した距離減衰RとステップS170で演算した地形減衰Fとから、油圧ショベル1の無線機120の無線通信における受信電力Prを演算する(ステップS180)。
ここで、ステップS120で選定した演算範囲の全体に対して受信電力Prの演算を行ったかどうかを判定し、判定結果がNOの場合には判定結果がYESになるまで、油圧ショベル1(の無線機120)が演算範囲の各位置にあると仮定してステップS130〜S180の処理を繰り返し、判定結果がYESの場合には、無線機120から受信電力の計測値を取得し(ステップS200)、受信電力Prと受信電力の計測値とを表示装置150に表示させる(ステップS210)。
図8は、油圧ショベルの表示装置の表示例を示す図である。また、図9は、図8の表示内容を説明する標高断面図である。
図8において、表示装置150には、受信電力Prの油圧ショベル1周辺における分布を示す受信レベルマップ80と、受信レベルマップ80の受信電力Prの表示と受信レベルとの対応を示す凡例としてのレベルスケール81と、油圧ショベル1の位置における受信電力Prの演算値を示す受信電力演算値通知バー82と、無線機120の受信電力の計測値を示す受信電力計測値通知バー83と、地形と第1フレネルゾーン70との関係を示す位置関係通知バー84とが表示されている。
受信レベルマップ80には、演算範囲(図7のステップS120参照)における受信電力Prの演算結果がマップ形式で表示されており、演算範囲における油圧ショベル1の位置が示されている。レベルスケール81は、受信レベルマップ80に表示される受信電力Prの受信レベルの表示に対する凡例を例えば6段階で連続的に示すものであり、図8の例では上方に行くに従って受信電力Prが大きいことを、下方に行くに従って受信電力Prが小さいことを示している。
レベルスケール81において、凡例81aは受信電力Prが非常に小さく無線機120の受信限度以下の受信レベルであって受信不可の場合を示しており、凡例81bは受信可能限界を示しており、凡例81cは受信可能を示しており、凡例81eは受信電力Prが非常に大きく無線機120の受信限度以上の受信レベルであって受信不可の場合を示している。
レベルスケール81に示された各凡例は受信レベルマップ80の表示と対応しているため、受信レベルマップ80の範囲80a〜80dは、それぞれ、レベルスケール81の凡例81a〜80dに対応している。
受信電力演算値通知バー82および受信電力計測値通知バー83は、一端をレベルスケール81の凡例81a側に揃えてレベルスケール81に沿って配置されており、受信電力演算値通知バー82および受信電力計測値通知バー83の長さ(凡例81a側とは異なる他端の位置)をレベルスケール81の凡例81a〜81eの示す受信電力に対応させて変化させる。すなわち、受信電力演算値通知バー82および受信電力計測値通知バー83をレベルスケール81と容易に比較することができ、計測値および演算値を容易に把握することができる。例えば、図8の例では、受信電力演算値通知バー82は油圧ショベル1の位置における受信電力の演算値が受信可能限界であることを示しており、受信電力計測値通知バー83は無線機120の受信電力が受信不可のレベルであることを示している。
位置関係通知バー84は、図9に示すような地形と第1フレネルゾーン70との関係を示しており、図8の例では、位置Hにおける第1フレネルゾーン70の直径Aと、油圧ショベル1から見て線分71と位置Hにおける地形とが成す角Cとを示している。
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
作業機械に設置された車体通信機と地上に設置された基地局通信機との間で無線通信を行う通信システムによって、作業の進捗管理や作業目標の取得、車体位置の計測などを行う作業機械では、無線通信機器の間での無線通信ができなくなった場合などには、その原因を特定して対策を行い、無線通信を回復する必要がある。しかしながら、無線通信に用いられる電波は不可視であり、通信状況を目視で確認することはできない。また、無線通信ができなくなる要因としては様々な要因が想定される。特に、建設現場のように作業によって現場の地形が変化したり作業機械や建設資材の位置が変動したりする場合には、通信機器における送信アンテナと受信アンテナ間を結ぶ直線的な無線電波による通信状況のほかに、地面を含む地形や建物、作業機械や建設資材などに反射した無線電波の干渉によっても通信状況が変化するために原因の特定が著しく困難になる。例えば、作業現場の地形、作業機械や建設資材の位置の変化などが原因で無線通信ができなくなった場合に、その原因を的確に特定できなかった場合には、判断を誤って問題のない無線機の設定変更や交換などを実施してしまうことが考えられ、適切な対策をとれずに無線通信の回復が遅れて作業が滞ってしまう可能性がある。
これに対して本実施の形態の油圧ショベル1においては、作業現場の少なくとも一部を通信対象の範囲とする位置に配置された基地局2に設けられた基地局無線通信装置(例えば、基地局無線機220)と、作業現場で作業を行う作業機械(例えば、油圧ショベル1)に設けられた、基地局無線通信装置との無線通信を行うための車体無線通信装置(例えば、無線機120)とを備えた作業機械の通信状態通知システムにおいて、作業機械の作業現場における位置情報を取得する車体位置情報取得装置(例えば、自車位置取得部112)と、基地局無線通信装置の位置を記憶する基地局無線通信装置位置記憶部(例えば、基地局無線位置記憶部113b)と、作業機械の周囲の地形データを記憶する周辺地形データ記憶部113cと、を有する記憶装置113と、作業機械の運転室23に設けられた表示装置150と、制御装置(例えば、無線信号強度予測演算部111)とを備え、制御装置は、基地局無線通信装置の位置と作業機械の位置とに基づいて、基地局無線通信装置と作業機械の距離dを演算し、距離に基づいて、基地局無線通信装置と作業機械の車体無線通信装置の一方から他方に送信される通信電波の距離による減衰である距離減衰Rを演算する距離減衰演算部111bと、地形データに基づいて、基地局無線通信装置と作業機械の車体無線通信装置の一方から他方に送信される通信電波の地形による減衰である地形減衰Fを演算する地形減衰演算部111aと、距離減衰と地形減衰とに基づいて、基地局無線通信装置と車体無線通信装置の間の無線通信における受信信号の強度の推定値である無線信号強度予測値(例えば、受信電力Pr)を演算し、表示装置に表示する無線信号強度予測演算部111cとを有して構成したので、通信状況の健全性を通知することによって、通信状況の変化の原因の判断を支援することができる。
すなわち、地形情報から演算した無線機120の現在地(油圧所べり1の位置)における受信電力の演算値がデータ通信に適した受信電力かどうかを確認可能であるので、受信電力の演算値が受信限界付近であれば、通信不可でデータ通信ができない状態になった場合でもその可能性がある位置であるとオペレータが判断でき、無線機120の故障を疑うことなく施工箇所の移動や施工方法の変更などによって通信可能な状態に回復させることを検討することができ、時間のロスを少なくすることができる。また、受信電力が強すぎるために受信不可となっている場合でもオペレータがそのことを容易に判断することができるため、無線機120の受信電力を弱めるための減衰器を付加することなどを即座に検討可能であり、問題の早期解決を図ることができる。
また、無線機120の受信電力の計測値を受信電力計測値通知バー83で表示するように構成したので、受信電力がデータ通信可能な適正な範囲であるかどうかをオペレータが容易に確認することができ、例えば、受信電力が十分な受信レベルであるのに受信不可となった場合に、無線機120と接続された他の機器との有線通信部分などに問題がある可能性に容易に至ることができる。
また、受信電力の演算値を受信レベルマップ80で表示するように構成したので、現在の油圧ショベル1の稼動位置が受信電力について無線通信に向かない可能性がある位置(例えば、受信不可となっている範囲内の位置)であるかどうかをオペレータが容易に判断できるので、例えば、油圧ショベル1の移動によって無線通信が可能となる可能性や、後の油圧ショベル1の移動によって無線通信ができなくなる可能性があることをオペレータが認識することができる。
また、地形と第1フレネルゾーン70との関係を位置関係通知バー84で表示するように構成したので、基地局2の基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120との間で見通しがあるかどうかを容易に確認することができる。すなわち、位置関係通知バー84によって、油圧ショベル1から見た場合の線分71と位置Hにおける地形とが成す角Cを容易に確認することができるので、受信電力の演算値では受信可能となっているが無線機120が受信不可となっている場合(すなわち、受信電力の計測値が受信不可となっている場合)には、油圧ショベル1と基地局2との間に他の作業機械や建設資材が配置されていたり、作業の進捗が進んだことによって地形が変化、演算に用いた地形データが古くなっていたりする可能性に容易に至ることができる。なお、近年は、ドローンやレーザスキャナなどを利用した3D地形データの取得に関する技術が進んでおり、例えば、基地局2を含む油圧ショベル1の周辺の地形データのみを必要に応じて取得することは容易である。なお、角Cに代えて重複距離Bを表示するように構成しても良い。
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図10〜図13を参照しつつ説明する。本実施の形態では第1の実施の形態との相違点についてのみ説明するものとし、図面において第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態は、第1の実施の形態において無線通信に対する地面における反射波の影響を考慮した構成としたものである。
図10及び図11は、本実施の形態における油圧ショベルの表示装置の表示例を示す図であり、図10は反射波を考慮する場合の一例を、図11は反射波を考慮する場合の他の例をそれぞれ示している。また、図12は無線通信に対する地面における反射波について説明する標高断面図であり、図13及び図14は直接波と反射波の合成について説明する図である。
図10及び図11において、表示装置150には、受信電力Prの油圧ショベル1周辺における分布を示す受信レベルマップ80と、受信レベルマップ80の受信電力Prの表示と受信レベルとの対応を示す凡例としてのレベルスケール81と、油圧ショベル1の位置における受信電力Prの演算値を示す受信電力演算値通知バー82と、無線機120の受信電力の計測値を示す受信電力計測値通知バー83と、地形と第1フレネルゾーン70との関係を示す位置関係通知バー84と、受信電力Prの演算における反射波の考慮の有無および方法を切り換える演算方法選択部85が表示されている。
演算方法選択部85の「無」ボタン85aを選択した場合、すなわち、受信電力Prの演算において反射波を考慮しない場合には、第1の実施の形態と同様の演算および表示を行う。なお、本実施の形態においては、演算方法選択部85で3つの演算方法(反射波を考慮しない場合も含む)から1つの演算方法を選択的に設定するように構成したが、これに限られず、2つの演算方法や、4つ以上の演算方法から1つの演算方法を選択するように構成しても良い。
図10に示すように、演算方法選択部85の「A」ボタン85bを選択した場合、すなわち、「A」ボタン85bに対応して予め登録されている方法(以降、演算方法Aと称する)を用いて反射波を考慮した受信電力Prの演算を行う場合には、受信レベルマップ80及び受信電力演算値通知バー82に演算方法Aにより演算された受信電力Prの分布および演算値が表示される。同様に、図11に示すように、演算方法選択部85の「B」ボタン85cを選択した場合、すなわち、「B」ボタン85cに対応して予め登録されている方法(以降、演算方法Bと称する)を用いて反射波を考慮した受信電力Prの演算を行う場合には、受信レベルマップ80及び受信電力演算値通知バー82に演算方法Bにより演算された受信電力Prの分布および演算値が表示される。
図12に示すように、基地局2の基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120との間の無線通信においては、線分71に沿って伝搬する直接波だけではなく、経路73に沿うような地面などで反射して伝搬する反射波が存在する。本実施の形態においては、第1フレネルゾーン70と地形との重複部分が有る場合は、その重複部分(位置H)で反射する反射波について考慮し、第1フレネルゾーン70と地形との重複部分が無い場合は基地局無線機220と無線機120の中間、すなわち、反射前後の経路長が等しくなる位置で反射する反射波について考慮するものとする。例えば、基地局無線機220から出力されて無線機120で受信される電波の受信電力Prは、直接波の受信電力(振幅)Pr1と反射波の受信電力(振幅)Pr2の合成波として、下記の(式5)により表される。
Pr=Pr1+Pr2×cos(θa) ・・・(式5)
上記の(式5)において、θaは、直接波と反射波の位相差である。
つまり、例えば、図13のように直接波と反射波の位相のずれが無く、振幅を強めあうような関係となる場合の受信電力Prは、下記の(式6)によって表されるように加算となる。
Pr=Pr1+Pr2 ・・・(式6)
また、例えば、図14のように直接波と反射波の位相が180度異なり、振幅を弱めあうような関係となる場合の受信電力Prは、下記の(式7)によって表されるように減算となる。
Pr=Pr1−Pr2 ・・・(式7)
また、直接波と反射波の位相差θaは、下記の(式8)により表される。
θa=(2π×Δd/λ)+φ ・・・(式8)
上記の(式7)において、Δdは直接波と反射波の経路差、φは反射時の位相変化、λは波長である。
直接波の受信電力(振幅)Pr1は、上記の(式1)〜(式3)により得られる。
また、反射波の受信電力(振幅)Pr2は、上記の(式1)〜(式3)で得られた演算結果に反射係数Kを乗算することにより得られる。ただし、反射係数Kは環境によって変化する値であるため、反射係数Kを算出して用いることは非常に煩雑となる。例えば、反射係数Kは、反射対象の材質によっても変化し、作業現場での存在が考えられるコンクリートや鉄板、土砂などが反射対象となる場合にそれぞれ異なる値をとる。また、土砂などのように水分の含有量によって反射係数Kが変化するものもあり、日射や降雨などの自然条件によって高頻度で変化することが考えられる。そこで、本実施の形態では、簡単のために反射係数をK=1として演算する。このように反射係数K=1に仮定することで生じる、オペレータに通信状況の健全性を通知するという目的の達成への影響は限定的である。なお、反射係数K=1に限定するものではなく、作業現場の状況に応じて適宜変更しても良い。
反射時の位相変化φは、反射対象の材質、反射角度、電波の偏波(電界の振動方向)で決まるため、位相変化φを正確に算出することは反射係数Kと同様に非常に困難である。ただし、作業現場においては、位相変化φ=0度、又は、位相変化φ=180度の何れかに仮定しても比較的精度の良い演算結果を得ることができる。したがって、本実施の形態では、位相変化φ=0,180(度)の何れかを選択的に用いるものとする。具体的には、例えば、位相変化φ=0(度)を用いて受信電力Prを演算する場合を演算方法Aとして登録し、また、位相変化φ=180(度)を用いて受信電力Prを演算する場合を演算方法Bとして登録して、演算方法選択部85のボタン85a〜85cの何れかを選択することにより、受信電力Prの演算方法を切り換える。
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、反射波を考慮した異なる複数の演算方法を選択的に切り換え可能に構成したので、反射体の物性値の計測が困難である作業現場においても、反射波の考慮の有無や、反射波をどのように考慮するかを選択することができ、反射波の影響によって無線通信に影響が出ている(例えば、通信不可となっている)ことが予測される作業現場においても、反射波の影響を考慮した判断が可能となる。一般的に、反射波の影響が出る範囲は狭いことが予想され、油圧ショベル1の位置が変われば通信可能となる可能性が高いため、演算方法の切り換えは無線通信によるデータ授受の重要度を考慮した移動、又は、作業継続の判断に有効である。
また、受信電力演算値通知バー82と受信電力計測値通知バー83とを比較することで反射波の影響の有無を判断することができる。
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図15及び図16を参照しつつ説明する。本実施の形態では第1の実施の形態との相違点についてのみ説明するものとし、図面において第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態は、第1の実施の形態において作業管理所3で油圧ショベル1の受信電力Prを演算し、演算結果を油圧ショベル1に送無するように構成としたものである。
図15は、本実施の形態に係る通信状況通知システムを模式的に示す図である。また、図16は作業管理所の電波強度演算システムにおける処理内容を示すフローチャートである。
図15において、通信状況通知システムは、油圧ショベル1が作業を行う作業現場の少なくとも一部を通信対象の範囲とする位置に配置された基地局2に設けられた基地局無線機(基地局無線通信装置)220と、基地局無線機220との無線通信を行うために油圧ショベル1に設けられた無線機(車体無線通信装置)120を有する車載システム100Aと、油圧ショベル1による作業の管理を行う作業管理所3に設けられ、基地局2の基地局無線機220を介して油圧ショベル1の無線機120との無線通信を行うための無線機(管理所無線通信装置)320を有する管理所システム300Aとから構成されている。
車載システム100Aは、無線機120と、油圧ショベル1の作業現場における位置情報を演算する車体位置情報演算装置としてのGPS(Global Positioning System)160と、油圧ショベル1全体の制御を行う車載コントロールユニット110Aと、オペレータによる油圧ショベル1での作業を支援する施工支援車載システム140と、車載コントロールユニット110A及び施工支援車載システム140からの情報を表示する表示装置150と、無線機120、車載コントロールユニット110A、及び、施工支援車載システム140を接続して情報の授受を行うHUB130とを備えている。
管理所システム300Aは、基地局2の基地局無線機220を介して油圧ショベル1の無線機120との無線通信を行うための無線機(管理所無線通信装置)320と、油圧ショベル1の施工支援車載システム140と一体となってオペレータの作業を支援する施工支援システム340と、基地局無線機220と無線機120との無線通信に関する制御を行う電波強度演算システム310Aと、電波強度演算システム310A及び施工支援システム340からの情報を表示する表示装置350と、無線機320、施工支援システム340、及び、電波強度演算システム310Aを接続して情報の授受を行うHUB330とを備えている。
電波強度演算システム310Aは、各種情報を記憶する記憶装置113Aと、油圧ショベル1の無線機120と基地局無線機220との無線通信における健全性に関する演算を行う無線信号強度予測演算部(制御装置)111Aとを有している。
記憶装置312Aは、油圧ショベル1の無線機120の無線通信における受信電力(アンテナ利得など)を記憶する車載無線受信電力記憶部113aと、基地局2の位置(基地局無線機220の位置)を記憶する基地局無線位置記憶部312bと、基地局2を含む油圧ショベル1周辺の地形データ(周辺地形データ)を記憶する周辺地形データ記憶部113cと、基地局2の基地局無線機220の無線通信における出力電力を記憶する基地局無線出力電力記憶部113dと、油圧ショベル1の無線機120の無線通信における受信限界(最大側および最少側の受信限界電力)を記憶する車載無線機受信限度記憶部113e、油圧ショベル1のGPS160の情報から車載コントロールユニット110Aで得られて基地局2を介して送信されてきた油圧ショベル1の位置情報を記憶する車両位置記憶部312aと、航空測量で得られた作業現場全体の地形データを記憶する航空測量地形記憶部312cとを有している。周辺地形データは、無線信号強度予測演算部111Aによって航空測量地形記憶部312cの作業現場全体の地形データから生成され、周辺地形データ記憶部113cに記憶される。
無線信号強度予測演算部111Aは、基地局無線機220の位置と油圧ショベル1の位置とに基づいて、基地局無線機220と油圧ショベル1の距離を演算し、その演算した距離に基づいて、基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120の一方から他方に送信される通信電波の距離による減衰である距離減衰Rを演算する距離減衰演算部111bと、基地局2と油圧ショベル1の間の地形の地形データに基づいて、基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120の一方から他方に送信される通信電波の地形による減衰である地形減衰Fを演算する地形減衰演算部111aと、距離減衰Rと地形減衰Fとに基づいて、基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120の間の無線通信における受信信号の強度の推定値である無線信号強度予測値を演算し、演算結果を基地局2の基地局無線機220を介して油圧ショベル1に送信して表示装置150に表示させるとともに、表示装置350に表示する無線信号強度予測演算部111cとを有している。
表示装置350は、作業管理所3内に配置されている。表示装置350は、油圧ショベル1や施工支援システム340などに関する種々の情報を表示するものであり、例えば、タッチパネル式などの入力も可能なモニタ装置であっても良く、或いは、図示しない操作装置によって設定画面等の操作や入力を行うのもであっても良い。
図16において、作業管理所3の管理所システム300Aにおける電波強度演算システム310Aは、記憶装置312Aの周辺地形データ記憶部113cに記憶された周辺地形データを取得し(ステップS400)、油圧ショベル1の位置情報を取得して(ステップS410)、受信電力Prの演算範囲を選定する(ステップS420)。
続いて、基地局2の基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120の間の無線通信における距離による距離減衰Rを演算する(ステップS430)。
続いて、基地局2の基地局無線機220と油圧ショベル1の無線機120を結ぶ線分71を含む鉛直面における地形の断面形状(標高断面)を演算し(ステップS440)、第1フレネルゾーン70を演算して(ステップS450)、第1フレネルゾーン70と地形の最も近い位置H(又は重複する位置H)を求め、位置Hにおける第1フレネルゾーン70の直径Aと重複距離BとからB/Aを演算する(ステップS460)。そして、ステップS460で求めたB/Aと減衰テーブルとから地形減衰Fを演算する(ステップS470)。
続いて、ステップS430で演算した距離減衰RとステップS470で演算した地形減衰Fとから、油圧ショベル1の無線機120の無線通信における受信電力Prを演算する(ステップS480)。
ここで、ステップS420で選定した演算範囲の全体に対して受信電力Prの演算を行ったかどうかを判定し、判定結果がNOの場合には判定結果がYESになるまで、油圧ショベル1(の無線機120)が演算範囲の各位置にあると仮定してステップS430〜S480の処理を繰り返し、判定結果がYESの場合には、演算結果を基地局2の基地局無線機220を介して油圧ショベル1に送信して表示装置150に表示させ(ステップS491)、基地局2の基地局無線機220を介して油圧ショベル1の無線機120の受信電力の計測値を取得し(ステップS500)、受信電力Prと受信電力の計測値とを表示装置350に表示させる(ステップS510)。
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、油圧ショベル1の無線通信が通信不可となった場合であっても最新の地形データを用いて受信電力Prを演算することが可能である。また、複数の作業機械(油圧ショベル1を含む)を管理することができるので、各作業機械の位置や電波環境、作業進捗等を考慮した指令を各作業機械のオペレータに出すことができる。
<その他の実施の形態>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で変形することができる。
例えば、図17に示すように、実際の通信環境(受信電力の計測値)を受信レベルマップ80上に表示することにより、さらに精度よく通信状況の健全性を通知することができる。なお、通信環境の良否の判断方法としては、例えば、図18に示すように、予め定めた時間内で通信が可能であった受信電力(dBm)をサンプリングするとともに、図19に示すように、予め定めた時間内で通信が不可能であった受信電力(dBm)をサンプリングし、通信可能と不可の比率が一定以上であった受信電力(dBm)以上を良好な通信環境と判定することが考えられる。
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
(1)上記の実施の形態では、作業機械(例えば、油圧ショベル1)に設けられ、前記作業機械の作業現場を通信対象範囲とする基地局2に設けられた基地局無線通信装置(例えば、基地局無線機220)と無線通信を行う車体無線通信装置(例えば、無線機120)と、前記作業機械の前記作業現場における位置情報を取得する車体位置情報取得装置(例えば、自車位置取得部112)と、前記作業機械の運転室23に設けられた表示装置150と、記憶装置113と、制御装置(例えば、無線信号強度予測演算部111)とを備えた作業機械の通信状態通知システムにおいて、前記記憶装置は、前記基地局無線通信装置の位置を記憶する基地局無線通信装置位置記憶部(例えば、基地局無線位置記憶部113b)と、前記作業機械の周囲の地形データを記憶する周辺地形データ記憶部113cとを有し、前記制御装置は、前記基地局無線通信装置位置記憶部に記憶された前記基地局無線通信装置の位置と前記車体位置情報取得装置によって取得された前記作業機械の位置とに基づいて、前記基地局無線通信装置と前記作業機械の距離dを演算し、前記距離に基づいて、前記基地局無線通信装置と前記作業機械の車体無線通信装置の一方から他方に送信される通信電波の前記距離による減衰である距離減衰Rを演算する距離減衰演算部111bと、前記周辺地形データ記憶部に記憶された前記地形データに基づいて、前記基地局無線通信装置と前記作業機械の車体無線通信装置の一方から他方に送信される通信電波の地形による減衰である地形減衰Fを演算する地形減衰演算部111aと、前記距離減衰演算部によって演算された前記距離減衰と前記地形減衰演算部によって演算された前記地形減衰とに基づいて、前記基地局無線通信装置と前記車体無線通信装置の間の無線通信における受信信号の強度の推定値である無線信号強度予測値を演算し、前記表示装置に表示する無線信号強度予測演算部111cとを有するものとした。
これにより、通信状況の健全性を通知することによって、通信状況の変化の原因の判断を支援することができる。
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械の通信状態通知システムにおいて、前記無線信号強度予測演算部は、前記作業現場の前記作業機械を含む予め定めた範囲における前記無線信号強度予測値の分布を演算して前記表示装置に表示するものとした。
(3)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械の通信状態通知システムにおいて、前記車体位置情報取得装置、前記記憶装置、前記表示装置、及び、前記制御装置は、前記作業機械に設けられたものとした。
(4)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械の通信状態通知システムにおいて、前記作業機械(例えば、油圧ショベル1)による作業の管理を行う作業管理所3を備え、前記作業管理所は、前記基地局無線通信装置(例えば、基地局無線機220)を介して前記車体無線通信装置(例えば、無線機120)との無線通信を行うための管理所無線通信装置320と、管理所表示装置(例えば、表示装置350)と、前記記憶装置312Aと、前記制御装置(例えば、無線信号強度予測演算部111A)とを有し、前記記憶装置は、前記基地局無線通信装置位置記憶部(例えば、基地局無線位置記憶部312b)と、前記周辺地形データ記憶部113cとを有し、前記制御装置は、前記作業機械の前記車体位置情報取得装置から前記基地局無線通信装置を介して取得した前記作業機械の位置と前記基地局無線通信装置位置記憶部に記憶された前記基地局無線通信装置の位置とに基づいて、前記基地局無線通信装置と前記作業機械の距離dを演算し、前記距離に基づいて前記距離減衰Rを演算する前記距離減衰演算部111bと、前記周辺地形データ記憶部に記憶された前記地形データに基づいて前記地形減衰Fを演算する前記地形減衰演算部111aと、前記距離減衰演算部によって演算された前記距離減衰と前記地形減衰演算部によって演算された前記地形減衰とに基づいて前記無線信号強度予測値を演算し、前記無線信号強度予測値の演算結果を前記作業管理所に配置された前記管理所表示装置に表示させるとともに、前記無線信号強度予測値の演算結果を前記基地局無線通信装置を介して前記作業機械に送信し、前記作業機械の運転室に設けられた前記表示装置に表示させる前記無線信号強度予測演算部111cとを有するものとした。
(5)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械の通信状態通知システムにおいて、前記無線信号強度予測値の演算に反射波の影響を考慮した複数の演算方法のうちの何れか1つを選択的に切り換えて適用する切換部を備えたものとした。
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。