本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、無線通信システム1の構成の例を示す図である。無線通信システム1は、M種類(Mは2以上の整数)の無線方式を用いて通信するシステムである。無線方式は、例えば、PHY/MAC技術を用いた無線方式である。PHY/MAC技術を用いた無線方式は、例えば、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等の無線規格の方式である。
無線通信システム1は、送信機2aと、受信機3aとを備える。無線通信システム1の一部又は全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、送信機2a及び受信機3aの各記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより実現されてもよいし、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。記憶部は、例えば、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)を有する記憶装置である。
送信機2aは、送信側の無線通信装置である。送信機2aは、送信機制御部20と、送信機無線部21−1〜21−Mと、アンテナ22−1〜22−Mとを備える。送信機制御部20は、アプリケーションデータを取得する。送信機制御部20は、送信機制御部20によって取得されたデータを、M個のデータとなるよう複製する。送信機制御部20は、複製されたデータのパケットを、送信機無線部21−1〜21−Mに出力する。送信機制御部20は、送信機無線部21ごとの変調方式及び符号化率のパラメータを表す制御信号を、送信機無線部21−1〜21−Mに出力する。
送信機無線部21の無線方式は、例えば、CSMA/CAベースのIEEE802.11に代表される無線LANの無線方式である。送信機無線部21の無線方式の周波数帯域は、送信機無線部21ごとに異なる。すなわち、送信機無線部21−m(mは、1からMのいずれか)は、第mの無線方式に基づいて、パケットを送信する。送信機無線部21の無線方式の周波数帯域は、無線局免許を必要とする周波数帯域であるライセンスバンドでもよいし、無線局免許を必要としない周波数帯域であるアンライセンスバンドでもよい。
送信機無線部21−mは、バックオフ値のカウンタ(バックオフカウンタ)と、ACK機構(応答機構)等とを有する。送信機無線部21−mは、変調方式と符号化率(Modulation and Coding scheme: MCS)とを、他の送信機無線部21とは独立して自送信機無線部に設定する。これによって、送信機無線部21−mは、他の送信機無線部21がパケットを送信するタイミングとは独立したタイミングで、パケットを送信することが可能である。
送信機無線部21−mは、パケットを送信機制御部20から取得した場合、送信機無線部21−mの周波数帯域のチャネルが他の無線端末等によって使用状態となっている否かを判定する。送信機無線部21−mは、チャネルが未使用状態(アイドル状態)である場合、アンテナ22−mを介して、CSMA/CAに基づいてパケットを受信機3aに送信する。
受信機3aは、受信側の無線通信装置である。受信機3aは、アンテナ31−1〜31−Mと、受信機無線部32−1〜32−Mと、受信機制御部33とを備える。パケット同士の衝突が発生した場合には、パケットのデータ損失が発生するので、受信機3aはパケットを正常に復調することができない。受信機3aは、パケットを正常に復調することができた場合、肯定応答信号であるACK(ACK: ACKnowledgement)信号を送信機2aに送信する。受信機3aは、パケットを正常に復調することができなかった場合、否定応答信号であるNACK信号を送信機2aに送信する。
以下、送信機2aの送信機無線部21−1〜21−Mに共通する事項については、符号の一部を省略して「送信機無線部21」と表記する。送信機無線部21は、パケットを送信してから一定時間以内にACK信号を受信した場合、送信機2aから送信されたパケットが受信機3aによって正しく復調されたと判定する。送信機無線部21は、送信機2aから送信されたパケットが受信機3aによって正しく復調されたと判定した場合、送信機制御部20にACK信号を出力する。
送信機無線部21は、パケットを送信してから一定時間以内にACK信号を受信しなかった場合、送信機2aから送信されたパケットが受信機3aによって正しく復調されなかったと判定する。送信機無線部21は、送信機2aから送信されたパケットが受信機3aによって正しく復調されなかったと判定した場合、送信したパケットのデータと同一のデータのパケットを再送信する。
以下、受信機3aの受信機無線部32−1〜32−Mに共通する事項については、符号の一部を省略して「受信機無線部32」と表記する。受信機無線部32は、パケットを正常に復調することができた場合、ACK信号を送信機2aに送信する。受信機無線部32は、自受信機無線部が使用するチャネルが他の無線端末等によって使用状態である場合には、次にチャネルが未使用状態になった場合に、ACK信号を送信機2aに送信する。受信機無線部32は、パケットを正常に復調することができなかった場合、NACK信号を送信機2aに送信する。
受信機制御部33は、受信機無線部32−1〜32−Mのうち少なくとも一つがパケットを正常に復調した場合、復調された各パケットのうち最先で正常に復調されたパケットを取得する。受信機制御部33は、最先で正常に復調されたパケットのデータに基づいて、アプリケーションデータを生成する。受信機制御部33は、生成されたアプリケーションデータを所定の装置に出力する。
図2は、送信機2aの構成の例を示す図である。以下では、送信機2aが備える受信機無線部32の数と無線方式の種類の数とを表すMは、一例として3である。送信機2aは、送信機制御部20と、送信機無線部21−1〜21−3とを備える。送信機無線部21は、変調部210と、RF部211と、RF部212と、ACK受信部213と、送信処理部214とを備える。
送信機制御部20は、送信機制御部20によって取得されたデータを、3個のデータとなるよう複製する。送信機制御部20は、複製されたデータのパケットを、送信機無線部21−1〜21−3に出力する。これによって、各送信機無線部21は、同一のデータを取得することができる。
変調部210は、複製されたデータに変調処理を施す。RF部211は、変調処理が施されたデータを無線信号のパケットに変換し、アンテナ22を介して無線送信する。RF部212は、アンテナ22が受信した無線信号のパケットを、電気信号に変換する。ACK受信部213は、RF部212から取得した電気信号から、ACK信号を抽出する。
送信処理部214は、アンテナ22がパケットを送信してから一定時間以内にACK信号を受信したか否かを判定する。送信処理部214は、アンテナ22がパケットを送信してから一定時間以内にACK信号を受信しなかった場合、送信機2aから送信されたパケットが受信機3aによって正しく復調されなかったと判定する。送信処理部214は、送信機2aから送信されたパケットが受信機3aによって正しく復調されなかったと判定した場合、送信したパケットのデータと同一のデータのパケットをアンテナ22が再送信するよう、変調部210に制御信号を出力する。
送信処理部214は、アンテナ22がパケットを送信してから一定時間以内にアンテナ22がACK信号を受信した場合、送信機2aから送信されたパケットが受信機3aによって正しく復調されたと判定する。
図3は、受信機3aの構成の例を示す図である。受信機3aは、アンテナ31−1〜31−3と、受信機無線部32−1〜32−3と、受信機制御部33とを備える。受信機無線部32は、RF部320と、復調部321と、ACK送信部323と、RF部324とを備える。RF部320は、アンテナ31が受信した無線信号のパケットを、電気信号に変換する。
復調部321は、RF部320から取得された電気信号に、復調処理を施す。復調部321は、RF部320から取得された電気信号に、巡回冗長検査(CRC: Cyclic Redundancy Check)等を用いた復調処理を施す。復調部321は、パケットを正常に復調することができた場合、復調されたパケットのデータを受信機制御部33に出力する。復調部321は、パケットを正常に復調することができた場合、パケットを正常に復調することができたことを表す信号を、ACK送信部323及び受信機制御部33に出力する。復調部321は、パケットを正常に復調することができなかった場合、パケットを正常に復調することができなかったことを表す信号を、ACK送信部323に出力する。
ACK送信部323は、復調部321がパケットを正常に復調することができたか否かを判定する。ACK送信部323は、パケットを正常に復調することができたことを表す信号を取得した場合、ACK信号をRF部324に送信する。ACK送信部323は、パケットを正常に復調することができなかったことを表す信号を取得した場合、NACK信号をRF部324に送信する。
RF部324は、ACK送信部323からACK信号を取得した場合、ACK信号を表す無線信号のパケットを、アンテナ31を介して送信機2aに無線送信する。RF部324は、ACK送信部323からNACK信号を取得した場合、NACK信号を表す無線信号のパケットを、アンテナ31を介して送信機2aに無線送信する。
受信機制御部33は、受信機無線部32−1〜32−Mのうち少なくとも一つがパケットを正常に復調した場合、復調された各パケットのうち最先で正常に復調されたパケットを取得する。
次に、無線通信システム1の動作の例を説明する。
図4は、無線通信システム1の動作の例を示すタイムチャートである。無線端末4は、送信機2a以外の無線端末(無線通信装置)である。無線端末5は、受信機3a以外の無線端末(無線通信装置)である。
無線端末4は、ランダムバックオフ値に応じた待ち時間が経過した後に、第1無線方式に基づいて無線端末5にパケットを送信する。送信機2aの送信機無線部21−1は、ランダムバックオフ値に応じた待ち時間が経過した後に、第1無線方式に基づいて受信機3aの受信機無線部32−1にパケットを送信する。送信機2aの送信機無線部21−1と無線端末4とは、同じ待ち時間が経過した後に、同じタイミングでパケットを送信する。このため、送信機2aが送信したパケットと、無線端末4が送信したパケットとが衝突する。無線端末5は、第1無線方式に基づいて、NACK信号を無線端末5に送信する。受信機3aの受信機無線部32−1は、第1無線方式に基づいて、NACK信号を送信機2aの送信機無線部21−1に送信する。送信機2aの送信機無線部21−1は、衝突したパケットのデータと同一のデータのパケットを再送信する。
送信機2aの送信機無線部21−2は、第2無線方式に基づいて、受信機3aの受信機無線部32−2にパケットを送信する。受信機3aの受信機無線部32−2は、第2無線方式に基づいて、ACK信号を送信機2aの送信機無線部21−2に送信する。
送信機2aの送信機無線部21−3は、第3無線方式に基づいて、受信機3aの受信機無線部32−3にパケットを送信する。受信機3aの受信機無線部32−3は、第3無線方式に基づいて、ACK信号を送信機2aの送信機無線部21−3に送信する。
送信機無線部21−1〜21−3が送信する各パケットのデータは、同一である。したがって、送信機無線部21−2が送信したパケットと送信機無線部21−3が送信したパケットとのうちいずれかが、送信機無線部21−1が再送信したパケットよりも先に送信された場合には、送信機2aは、従来の無線方式と比較して伝送遅延を短縮することができる。
図5は、送信機2aの動作の例を示すフローチャートである。送信機制御部20は、アプリケーションのデータを取得する(ステップS101)。送信機制御部20は、取得されたデータを、送信機無線部21の無線方式の数だけ複製する(ステップS102)。図5では、ステップS103からステップS106までの動作は、送信機無線部21ごとに独立している。
変調部210は、複製されたデータを変調する(ステップS103)。RF部211は、変調されたデータのパケットを、CSMA/CAに基づいて無線送信する(ステップS104)。送信処理部214は、アンテナ22がパケットを送信してから一定時間以内にACK信号を受信したか否かを判定する(ステップS105)。アンテナ22がパケットを送信してから一定時間以内にACK信号を受信した場合(ステップS105:YES)、送信機制御部20は、処理を終了する。
アンテナ22がパケットを送信してから一定時間以内にACK信号を受信していない場合(ステップS105:NO)、送信処理部214は、送信したパケットのデータと同一のデータのパケットをアンテナ22が再送信するよう、変調部210に制御信号を出力する(ステップS105)。送信機制御部20は、ステップS104に処理を戻す。
図6は、受信機3aの動作の例を示すフローチャートである。図6では、ステップS201からステップS204までの動作は、受信機無線部32ごとに独立している。アンテナ31は、無線信号のパケットを受信する(ステップS201)。ACK送信部323は、復調部321がパケットを正常に復調することができたか否かを判定する(ステップS202)。
復調部321がパケットを正常に復調することができた場合(ステップS202:YES)、RF部324は、ACK信号を表す無線信号のパケットを、アンテナ31を介して送信機2aに無線送信する(ステップS203)。復調部321がパケットを正常に復調することができなかった場合(ステップS202:NO)、RF部324は、NACK信号を表す無線信号のパケットを、アンテナ31を介して送信機2aに無線送信する(ステップS204)。受信機無線部32は、ステップS201に処理を戻す。
図7は、シミュレーションの諸元の例を示す図である。送信機無線部21が送信するパケットのデータ長は、送信機無線部21−1〜21−3について同じである。送信機無線部21が使用するバックオフ値は、送信機無線部21ごとに異なるランダムな値である。送信の待ち時間は、例えば、バックオフ値を時間スロット長に乗算した結果に応じて定まる。チャネルが未使用状態(アイドル状態)である場合、他の無線通信システムの無線端末がパケットを送信する確率は、30%(=0.3)である。全ての送信機において、送信バッファは、フル状態である。
図8は、シミュレーションの結果の例を示す図である。横軸は、アクセスポイント(AP)である受信機3aが収容する送信機2aの総数(X台)を表す。縦軸は、送信機2aがパケットを送信してから、受信機3aがパケットを受信するまでの時間(伝送遅延時間)を表す。受信機で収容される総送信機数は実施形態の技術と従来の技術とで同一とし、使用する無線方式も3種類で同一とした。
「実施形態の技術」は、無線通信システム1の動作のシミュレーションの結果を表す。図8では、3種類の無線方式を用いてパケットを送信する実施形態の無線通信システムの動作のシミュレーションの結果の伝送遅延時間の平均値と伝送遅延時間の累積分布確率の99%値を表す。1台の受信機3aが、X台の送信機2aを収容する。「従来技術」は、X台の送信機を3種類の無線方式に割り当てて、独立にパケットを送信する従来の無線通信システムの動作のシミュレーションの結果を表す。従来技術では、無線通信システムの1台の受信機が、無線方式あたり(X/3)台の送信機を収容する。図8では、実施形態の技術のシミュレーション結果と同様、伝送遅延時間の平均値と伝送遅延時間の累積分布確率の99%値を示す。
送信機2aは、送信されたパケット同士の衝突が発生した場合、コンテンションウィンドウを指数関数的に広げて、衝突が発生すること無く受信機3aにパケットが受信できるまで再送信する。送信機数が増大するとパケット衝突が増えるため、伝送遅延時間が増大する。実施形態の技術では、無線方式あたりの収容する送信機数は従来技術と比較して3倍となるため、パケットの衝突確率が増大し、平均値でみると従来技術よりも伝送遅延時間が増大する。しかしながら、実施形態の技術は3種類の無線方式の内、最初に受信したパケットを選択するため、より小さいランダムバックオフ値が選択される可能性が高く、かつ干渉などによる衝突確率も低くなるため、伝送遅延時間の累積分布確率の99%値でみると従来技術よりも伝送遅延時間を短縮することができる。
以上のように、第1実施形態の無線通信システム1は、送信機2aと、受信機3aとを備える。送信機2aは、送信機制御部20と、複数の送信機無線部21とを有する。受信機3aは、複数の受信機無線部32と、受信機制御部33とを有する。送信機制御部20は、データを複製する。複数の送信機無線部21は、複製されたデータを互いに異なる無線方式で変調する。複数の送信機無線部21は、変調されたデータのパケットを互いに異なる周波数帯域で無線方式ごとに送信する。複数の送信機無線部21は、パケットが正常に復調されるまで、パケットを再送信する。複数の受信機無線部32は、送信されたパケットを無線方式ごとに復調する。受信機制御部33は、最先で正常に復調されたパケットを取得する。
これによって、第1実施形態の無線通信システム1は、伝送遅延の短縮と信頼性の向上とを図ることが可能である。
(第2実施形態)
第2実施形態では、いずれかの受信機無線部32がパケットを正常に復調できた場合には、全ての受信機無線部32がACK信号を送信機2aに送信する点が、第1実施形態と相違する。第2実施形態では、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
図9は、受信機3bの構成の例を示す図である。無線通信システム1は、送信機2aと、受信機3bとを備える。受信機3bは、アンテナ31−1〜31−3と、受信機無線部32−1〜32−3と、受信機制御部33とを備える。ACK送信部323は、パケットを正常に復調することができたことを表す信号を取得した場合、RF部324及びアンテナ31を介して、ACK信号を送信機2aに送信する。ACK送信部323は、ACK信号を送信機2aに送信した場合、ACK信号を送信したことを表す情報を、受信機制御部33に送信する。受信機制御部33は、ACK信号を送信したことを表す情報をいずれかのACK送信部323から取得した場合、ACK信号を送信する指示を表す制御信号を、ACK信号を送信していない受信機無線部32のACK送信部323に出力する。
ACK送信部323は、ACK信号を送信する指示を表す制御信号を、自ACK送信部323がパケットを受信中又は復調中に取得した場合には、自ACK送信部323がパケットを受信中でなく且つ復調中でない状態に遷移するまで待つ。ACK送信部323は、自ACK送信部323がパケットを受信中でなく且つ復調中でない状態に遷移した場合、キャリアセンスを実行する。ACK送信部323は、自ACK送信部323が使用するキャリアが未使用状態である期間に、RF部324及びアンテナ31を介して、ACK信号を送信機2aに送信する。ACK送信部323は、ACK信号を送信する指示を表す制御信号を、パケットを受信中又は復調中に取得した場合には、パケットが正常に復調できなかった場合でも、ACK信号を送信機2aに送信する。
次に、無線通信システム1の動作の例を説明する。
図10は、無線通信システム1の動作の例を示すタイムチャートである。
図10では、受信機無線部32−1は、受信機無線部32−2がパケットを正常に復調できた場合には、受信機無線部32−1がパケットを正常に復調できなかった場合でも、ACK信号を送信機2aに送信する。受信機無線部32−3は、受信機無線部32−2がパケットを正常に復調できた場合には、受信機無線部32−3がパケットを正常に復調できなかった場合でも、ACK信号を送信機2aに送信する。これによって、無線通信システム1は、送信機2aが不要な再送信をしないので、伝送遅延を短縮することができる。
図11は、受信機3bの動作の例を示すフローチャートである。受信機無線部32は、ACK信号の送信を受信機制御部33が自受信機無線部32に指示したか否かを判定する(ステップS301)。ACK信号の送信を受信機制御部33が自受信機無線部32に指示した場合(ステップS301:YES)、受信機無線部32は、ACK信号を送信する(ステップS302)。受信機無線部32は、パケットを受信する(ステップS303)。受信機無線部32は、パケットを正常に復調できたか否かを判定する(ステップS304)。
パケットを正常に復調できなかった場合(ステップS304:NO)、受信機無線部32は、NACK信号を送信する(ステップS305)。パケットを正常に復調できた場合(ステップS304:YES)、受信機無線部32は、ACK信号を送信する(ステップS306)。受信機制御部33は、いずれかの受信機無線部32がパケットを正常に復調できたか否かを判定する(ステップS307)。
いずれの受信機無線部32もパケットを正常に復調できていない場合(ステップS307:NO)、受信機3bは処理を終了する。いずれかの受信機無線部32がパケットを正常に復調できた場合(ステップS307:YES)、受信機制御部33は、パケットを正常に復調できていない受信機無線部32に、送信機2aへのACK信号の送信を指示する(ステップS308)。
以上のように、第2実施形態の無線通信システム1は、複数の送信機無線部21と、複数の受信機無線部32とを備える。複数の送信機無線部21は、パケットが正常に復調できたことを表すACK信号を受信するまで、パケットを無線方式ごとに再送信する。複数の受信機無線部32は、いずれかの無線方式のパケットが正常に復調できた場合、全ての無線方式のACK信号を、複数の送信機無線部21に無線方式ごとに送信する。
これによって、第2実施形態の無線通信システム1は、伝送遅延の短縮と信頼性の向上とを図ることが可能である。
(第3実施形態)
第3実施形態では、いずれかの送信機無線部21がACK信号を受信した場合には、全ての送信機無線部21が待機状態に遷移する点が、第1及び第2実施形態と相違する。第3実施形態では、第1及び第2実施形態との相違点についてのみ説明する。
図12は、送信機2bの構成の例を示す図である。無線通信システム1は、送信機2bと、受信機3a又は受信機3bとを備える。送信機2bは、送信機制御部20と、送信機無線部21−1〜21−3と、アンテナ22−1〜22−3とを備える。送信処理部214は、ACK受信部213がACK信号を受信した場合、ACK信号を受信したことを表す情報を、送信機制御部20に出力する。送信機制御部20は、ACK信号を受信したことを表す情報を取得した場合、パケットが正常に復調されたと判定する。送信機制御部20は、パケットが正常に復調されたと判定した場合、パケットの送信の停止するよう、ACK信号を受信してない各送信処理部214に制御信号を出力する。送信機制御部20は、ACK信号を受信したことを表す情報を取得した場合、パケットの送信の停止するよう、全ての送信処理部214に制御信号を出力してもよい。
送信処理部214は、パケットの送信を停止する指示を表す制御信号を自送信処理部214がパケットを送信中に取得した場合には、自送信処理部214がパケットを送信後、ACK信号の受信を待たずに、待機状態に遷移する。送信処理部214は、パケットの送信を停止する指示を表す制御信号を自送信処理部214のNAV区間などの送信中断中に取得した場合には、送信を予定していたパケットをバッファから破棄し、待機状態に遷移する。
図13は、無線通信システム1の動作の例を示すタイムチャートである。図13では、送信機無線部21−2は、ACK信号を受信する。送信機無線部21−2は、ACK信号を受信したことを表す情報を、送信機制御部20に出力する。送信機制御部20は、ACK信号を受信したことを表す情報を取得した場合、パケットの送信の停止するよう、ACK信号を受信してない各送信処理部214に制御信号を出力する。
送信機無線部21は、パケットの送信を停止する指示を表す制御信号を自送信機無線部21がパケットを送信中に取得した場合には、自送信機無線部21がパケットを送信後、ACK信号の受信を待たずに、待機状態に遷移する。送信機無線部21は、パケットの送信を停止する指示を表す制御信号を自送信機無線部21のNAV区間などの送信中断中に取得した場合には、送信を予定していたパケットをバッファから破棄し、待機状態に遷移する。
図14は、送信機2bの動作の例を示すフローチャートである。送信機制御部20は、アプリケーションのデータを取得する(ステップS401)。変調部210は、複製されたデータを変調する(ステップS402)。送信処理部214は、パケットの送信を停止する指示を表す制御信号を送信機制御部20から取得したか否かを判定する(ステップS403)。パケットの送信を停止する指示を表す制御信号を送信機制御部20から取得した場合(ステップS403:NO)、送信処理部214は、パケットの送信を停止する(ステップS404)。
パケットの送信を停止する指示を表す制御信号を送信機制御部20から取得していない場合(ステップS403:NO)、送信処理部214は、バックオフ値のカウンタが0であるか否か、すなわち、待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS405)。バックオフ値のカウンタが0でない場合(ステップS405:NO)、送信機制御部20は、ステップS403に処理を戻す。バックオフ値のカウンタが0である場合(ステップS405:YES)、送信機制御部20は、変調されたデータのパケットを、CSMA/CAに基づいて受信機3bに送信する(ステップS406)。
送信機制御部20は、ACK信号を受信したことを表す情報を取得したか否かを判定する(ステップS407)。ACK信号を受信したことを表す情報を送信機制御部20が取得していない場合(ステップS407:NO)、送信処理部214は、パケットを受信機3bに送信する(ステップS408)。送信機制御部20は、ステップS403に処理を戻す。ACK信号を受信したことを表す情報を送信機制御部20が取得した場合(ステップS407:YES)、送信機制御部20は、処理を終了する。
以上のように、第3実施形態の無線通信システム1は、送信機制御部20と、複数の送信機無線部21と、受信機無線部32とを備える。複数の送信機無線部21は、パケットが正常に復調できたことを通知されるまで、パケットを無線方式ごとに再送信する。受信機無線部32は、無線方式のパケットが正常に復調できた場合、パケットが正常に復調できたことを表すACK信号を、送信機無線部21を介して、送信機制御部20に送信する。送信機制御部20は、ACK信号を受信した場合、パケットが正常に復調できたことを複数の送信機無線部21に通知する。
これによって、第3実施形態の無線通信システム1は、伝送遅延の短縮と信頼性の向上とを図ることが可能である。
上述した実施形態における無線通知システム、送信機、受信機の少なくとも一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。