図1は、本発明が適用されたハイブリッド車両用動力伝達装置10(以下、「動力伝達装置10」という。)の構成を説明する骨子図である。図1の骨子図において、ハイブリッド車両(以下、「車両」という。)は、走行用の駆動力源であるエンジン14と、そのエンジン14の動力を左右一対の駆動輪16に伝達するための動力伝達装置10とを備えている。動力伝達装置10には、エンジン14から入力軸34を介して入力される動力を第1電動機MG1および出力歯車30に分配する遊星歯車装置28、第2電動機MG2の出力軸である第2ロータ軸44に連結された第2出力歯車46、カウンタ軸36、差動歯車装置22、および左右一対の車軸24などが備えられている。また、車両には、エンジン14により回転駆動されることで、油圧制御回路の元圧となる作動油圧を発生させるとともに、第1電動機MG1、第2電動機MG2、遊星歯車装置28などに潤滑油を供給するための機械式オイルポンプ26が備えられている。
遊星歯車装置28は、第1電動機MG1の第1ロータ軸32に連結された回転要素であるサンギヤS、駆動輪16に動力伝達可能に連結された回転要素であり、ピニオンギヤPを介してサンギヤSと噛み合うリンクギヤR、およびピニオンギヤPを自転および公転可能に支持するキャリアCAを3つの回転要素(回転部材)として有するシングルピニオン型の遊星歯車装置であり、差動機構として機能する。入力軸34はエンジン14に連結され、キャリアCAは入力軸34を介してエンジン14に連結されている。リングギヤRは円筒状部材であって、ピニオンギヤPと噛合う内歯歯車を備えるとともに、その外周面には出力歯車30が形成されている。出力歯車30は、入力軸34と平行を成すカウンタ軸36と一体的に設けられたカウンタドリブン歯車38と噛み合わされている。また、カウンタ軸36と一体的に設けられたカウンタドライブ歯車40が、差動歯車装置22のデフ入力歯車42と噛み合わされている。
第2出力歯車46は、カウンタドリブン歯車38と噛み合わされている。これにより、第2電動機MG2は、カウンタ軸36、差動歯車装置22および車軸24を介して駆動輪16に動力伝達可能に連結される。
機械式オイルポンプ26は、第1ロータ軸32と同心に、第1ロータ軸32の内周側に貫通して配置されたオイルポンプ駆動軸76が連結されている。また、オイルポンプ駆動軸76は、入力軸34を介してエンジン14に連結されており、機械式オイルポンプ26は、エンジン14により回転駆動させられる。このため、エンジン14の回転速度Neが大きいほど、機械式オイルポンプ26からのオイル吐出量が多くなる。
第1電動機MG1および第2電動機MG2は、交流同期電動機から構成されており、いずれも駆動力を発生させるモータ(電動機)および反力を発生させるジェネレータ(発電機)としての機能を有するモータジェネレータであるが、第1電動機MG1は少なくともジェネレータとしての機能を備え、第2電動機MG2は少なくともモータとしての機能を備える。
以上のように構成された動力伝達装置10において、エンジン14からの動力は、リングギヤRに形成された出力歯車30に伝達され、カウンタ軸36に設けられたカウンタドリブン歯車38およびカウンタドライブ歯車40を介して差動歯車装置22のデフ入力歯車42に出力される。また、第2電動機MG2からの動力は、第2出力歯車46を介してカウンタドリブン歯車38に伝達され、カウンタドライブ歯車40を介してデフ入力歯車42に出力される。
また、車両は、エンジン14を除いて、動力伝達装置10などを収容する非回転部材としてのトランスアクスルケース50(以下、「ケース50」という。)を備えている。トランスアクスルケース50は、アルミニウム純度の低い鋳物用アルミニウムから形成された、たとえばアルミニウム合金製であり、高強度を有している。ケース50は、エンジン14とは反対側から順番に配置されたリヤカバー52、筒状の第1本体ケース54、筒状の第2本体ケース56およびフロントカバー58から構成されている。ケース50は、リヤカバー52と第1本体ケース54、第1本体ケース54と第2本体ケース56、第2本体ケース56とフロントカバー58とのそれぞれの第1ロータ軸32の回転軸線C1方向の端面(合わせ面)が例えばボルト等により液密に連結されて構成されている。機械式オイルポンプ26を収容するオイルポンプボデー66は、リヤカバー52に締結されることによりケース50に一体に固定されている。オイルポンプボデー66は、アルミニウム合金のような導電性部材で形成されている。
図2は、動力伝達装置10に適用された車両用電動機の軸受電蝕防止装置92の周辺を拡大して示す断面図である。第1電動機MG1は、第1本体ケース54に固定された円筒状のステータ60と、そのステータ60の内側に所定の間隔を隔てて第1ロータ軸32に固定された円筒状のロータ62と、そのロータ62のロータコア62aを長手方向の中央部において回転軸線C1まわりに回転可能に支持する中空の第1ロータ軸32とを備えている。
上記第1電動機MG1のロータ62は、第1電動機MG1のステータコアの内周側において回転軸線C1方向に積層されている複数枚の円板状の電磁鋼板から構成されたロータコア62aを備えている。そのロータコア62aの外周面に複数の磁極を形成するためにロータコア62a内に複数個の永久磁石が埋設されている。第1電動機MG1のロータ62は、第1ロータ軸32の径方向に円環状に突き出したフランジ部32aと、第1ロータ軸32の外周面の一部に形成された雄ネジ部32bに螺合するナット64とに狭圧されることによって、第1ロータ軸32に固定されている。
第1本体ケース54は、遊星歯車装置28等を収容する空間と第1電動機MG1等を収容する空間を隔てる隔壁54aを備えており、隔壁54aには、その内周端部から回転軸線C1方向にロータ62側へ円筒状に突き出した第1円筒状突部54bが一体に形成されている。第1電動機MG1の第1ロータ軸32は、その第1ロータ軸32のオイルポンプボデー66側の軸端部の外周面とオイルポンプボデー66(図1に示す)との間に配設された第1ボールベアリング68(図1に示す)、および第1ロータ軸32のオイルポンプボデー66側とは反対側の軸端部96の外周面と第1本体ケース54の隔壁54aに形成された第1円筒状突部54bの内周面との間に配設された第2ボールベアリング70によって、回転軸線C1まわりに回転可能にケース50に支持されている。要するに、第1電動機MG1の第1ロータ軸32は、第1ボールベアリング68を介して回転自在にケース50に固定されたオイルポンプボデー66に支持された軸端部と、第2ボールベアベアリング70を介して回転自在にケース50に支持された軸端部96とを備えている。なお、第1ボールベアリング68および第2ボールベアリング70は、本発明の軸受に対応する。
オイルポンプボデー66に収容される機械式オイルポンプ26は、そのポンプロータに第1ロータ軸32の内周側に回転軸線C1と同心に配置されたオイルポンプ駆動軸76が連結されている。オイルポンプ駆動軸76は、機械式オイルポンプ26に連結された一端部とは反対側の他端部が入力軸34のエンジン14の駆動力が入力される端部とは反対側の軸端部34dに形成された、後述する第3供給油路34aに連通し、それよりも大径の円柱状穴に嵌合されることにより、入力軸34と連結されている。機械式オイルポンプ26は、入力軸34およびオイルポンプ駆動軸76を介して伝達されるエンジン14の駆動力により回転駆動させられる。また、オイルポンプ駆動軸76および入力軸34は、第1ロータ軸32の内周側に同心に配置され、入力軸34の軸端部34dの外周面と第1ロータ軸32の軸端部96の内周面との間に配置されたベアリングたとえば第1ニードルベアリング78を介して、第1ロータ軸32と相対回転可能に第1ロータ軸32の軸端部96に支持されている。また、入力軸34と第2本体ケース56との間に第2ニードルベアリング80が配置されており、入力軸34は第2ニードルベアリング80を介してケース50に相対回転可能に支持されている。なお、オイルポンプ駆動軸76と入力軸34は、本発明の内周側回転軸に対応する。
サンギヤSは、円筒状であり、第1ロータ軸32側へ回転軸線C1方向に環状に突出した第2円筒状突部94を備え、第2円筒状突部94の内周面には内周スプライン歯が形成されている。第1ロータ軸32は、第2ボールベアリング70を介して回転自在にケース50に支持された軸端部96の外周面に外周スプライン歯を有している。サンギヤSは、その第2円筒状突部94の内周面に形成された内周スプライン歯と第1ロータ軸32の軸端部96の外周面に形成された外周スプライン歯とによりスプライン嵌合部98が形成されることにより、第1ロータ軸32の軸端部96に連結されて、入力軸34の外周側に同心に配置されている。なお、サンギヤSは、本発明の外周側回転軸に対応する。
サンギヤSは、その円筒状の外周面から外周側へ突出するように形成された鍔部82を備えている。鍔部82と第1本体ケース54の隔壁54aとの間に軸方向の荷重を受ける第1スラストベアリング84が配置されている。また、キャリアCAのピニオンギヤPを回転可能に支持するピニオンシャフトの両端を支持する円盤状の一対の支持壁のうちの一つに連結される、入力軸34の外周面から外周側に延出して形成された壁部86と、サンギヤSの第1電動機MG1とは反対側の環状端面との間には、第2スラストベアリング88が配置されている。また、壁部86と第2本体ケース56との間には、第3スラストベアリング90が配置されている。
オイルポンプ駆動軸76は、円筒状部材であり、その内部に第1供給油路76aを備えるとともに、第1供給油路76aに連通する第1径方向油路76bを備えている。第1ロータ軸32は、第2径方向油路32cを備えている。オイルポンプ駆動軸76が入力軸34を介してエンジン14により回転駆動させられて機械式オイルポンプ26が駆動すると、オイルポンプ駆動軸76に形成された第1供給油路76a、第1径方向油路76b、第1ロータ軸32に形成された第2径方向油路32cなどを介して、オイルが第1電動機MG1のロータコア62a内に形成された第2供給油路62bに供給されて第1電動機MG1が冷却されるようになっている。
また、入力軸34は、第1供給油路76aに連通する第3供給油路34aと、その第3供給油路34aに径方向に連通する第3径方向油路34bおよび第4径方向油路34cを備えている。第4径方向油路34cから供給されるオイルにより、遊星歯車装置28および第3スラストベアリング90などが潤滑される。
また、動力伝達装置10には、電動オイルポンプが備えられている。たとえば、エンジン14が停止させられた電動機走行時などにおいて、機械式オイルポンプ26が駆動させられない場合には、電動オイルポンプからのオイルがオイルポンプ駆動軸76の第1供給油路76a、入力軸34の第3供給油路34aに供給される。
第1電動機MG1は、たとえば500Vから600V程度の比較的高い駆動用3相交流電圧がステータコイルに印加される永久磁石型交流同期型電動機(モータジェネレータ)であり、図示しないバッテリから出力され且つ図示しないインバータによりスイッチング制御された交流駆動電流がステータ60のステータコイルに供給されると、そのステータ60の磁極により形成される移動(回転)磁界によって、ロータコア62a内に埋設された永久磁石による固定磁極が吸引(または反発)してロータ62が回転軸線C1まわりに回転駆動させられる。
ところで、第1電動機MG1の回転駆動に伴い、導電体から形成される第1ロータ軸32に誘起される軸電圧が増大すると、第1ロータ軸32と、その第1ロータ軸32の軸端部96に支持された入力軸34およびオイルポンプ駆動軸76および、その第1ロータ軸32を支持するケース50との間に電圧差が発生し、その電圧差が第1ボールベアリング68、第2ボールベアリング70、あるいは第1ニードルベアリング78の耐電圧を超えるとそれらのベアリングに電蝕が発生する可能があった。とりわけ、第1ニードルベアリング78は、第1ボールベアリング68および第2ボールベアリング70よりも相対的に耐電圧が低いため、第1ロータ軸32の軸電圧が第1ニードルベアリング78の耐電圧を超える可能性のある所定回転速度A以上の高回転域で第1電動機MG1が作動させられるときに、第1ロータ軸32の軸端部96から入力軸34の軸端部34dを介したオイルポンプ駆動軸76への通電経路が形成されることによる、第1ニードルベアリング78の電蝕の発生が問題となる。このため、第1ニードルベアリング78の電蝕の発生を抑制する車両用電動機の軸受電蝕防止装置92が備えられている。
図3は、図2の一点鎖線の領域内を拡大して示す断面図であり、軸受電蝕防止装置92の要部を説明する断面図である。サンギヤSは、第2スラストベアリング88が配設された側の端部の内周面の一部が内周側に突出した内周側突出部100を備えている。サンギヤSは、内周側突出部100よりも第1ロータ軸32側であって、第2円筒状突部94を除いた内周面に相対回転不能に嵌め入れられた円筒状の固定部材102を備えている。固定部材102は、導電体であり、サンギヤSの上記内周面に嵌合させられる嵌合部104と、嵌合部104の第1ロータ軸32側の端部が内周側に突出した固定部106とを備えている。一端が固定部106に固定されることによりサンギヤSに固定されたバネ108およびバネ108の他端に溶接等により連結されて通電部材として機能する円筒状のメタルブッシュ110が、入力軸34の外周面とサンギヤSの内周面との間の環状空間に設けられている。入力軸34に設けられた第3径方向油路34bは、第3供給油路34aと上記環状空間とを連通させる。第3径方向油路34bは、その上記環状空間内への開口がバネ108の一端と他端との間に設けられており、バネ108の他端に連結されたメタルブッシュ110の一端にオイルを供給可能とする本発明の供給口として機能する。エンジン14の作動時には機械式オイルポンプ26からのオイルが、エンジン14の停止時には電動オイルポンプからのオイルがそれぞれ、第3供給油路34aおよび第3径方向油路34bを介して矢印で示されるように上記環状空間に供給される。メタルブッシュ110には、エンジン駆動状態であっても或いはエンジン停止状態であっても第1電動機MG1の高回転により上記環状空間に発生する遠心油圧により回転軸線C1方向において矢印X1方向への推力が付与される。バネ108は、第3径方向油路34bからのオイルによって、メタルブッシュ110に発生する矢印X1方向への推力とは逆向きの矢印Y1方向にメタルブッシュ110を付勢する。第1電動機MG1の第1ロータ軸32の第1電動機回転速度Nmg1が大きくなるに従い、メタルブッシュ110に加えられるオイルの圧力すなわち遠心油圧による矢印X1方向の推力が大きくなり、メタルブッシュ110のバネ108の変位が零のときの初期位置からの変位量が大きくなる。メタルブッシュ110は、バネ108の付勢力(バネ張力)がオイルの遠心油圧による推力よりも大きくバネ108の変位が零の初期位置と、オイルの遠心油圧による推力がバネ108の付勢力よりも大きく、メタルブッシュ110の初期位置から回転軸線C1方向への変位が最大となる最大変位位置との間で、入力軸34とサンギヤSとの間の上記環状空間内において回転軸線C1方向に移動可能に設けられている。図3の回転軸線C1よりも上側は、メタルブッシュ110が最大変位位置にある状態を、図3の回転軸線C1よりも下側は、メタルブッシュ110が初期位置にある状態をそれぞれ示している。また、入力軸34には、回転軸線C1方向においてメタルブッシュ110の最大変位位置に対応する外周面から外周側に突設されメタルブッシュ110を摺動可能に狭持する環状突出部112が形成されている。環状突出部112は、固定部材102およびバネ108を介してメタルブッシュ110が連結されたサンギヤSと入力軸34との相対回転時に、メタルブッシュ110が初期位置にある場合にはメタルブッシュ110と摺動せず、メタルブッシュ110が最大変位位置にある場合にはメタルブッシュ110の回転軸線C1方向の幅全体で摺動する。環状突出部112がメタルブッシュ110の内周面の回転軸線C1方向の少なくとも一部に摺動するときには、サンギヤSと入力軸34とがメタルブッシュ110および固定部材102を介して電気的に導通させられ、第1ロータ軸32からサンギヤS、入力軸34を経てオイルポンプ駆動軸76への通電経路が成立する。メタルブッシュ110は、エンジン14が停止状態であって、第1電動機回転速度Nmg1が所定回転速度A以上のときに、その内周面の一部が環状突出部112に摺動させられて上記通電経路を成立させ、エンジン14が停止状態であって、第1電動機回転速度Nmg1が所定回転速度A未満のときに、その内周面が環状突出部112に摺動させられずに上記通電経路を成立させない。ここで、第1電動機MG1の上記所定回転速度Aは、環状突出部112の回転軸線C1方向の長さ、メタルブッシュ110の回転軸線C1方向の長さ、バネ108のバネ力などにより決定される。
このように、第1ロータ軸32、オイルポンプ駆動軸76、入力軸34、サンギヤS、一端が固定部材102を介してサンギヤSに固定されたバネ108、バネ108の他端に連結されたメタルブッシュ110、入力軸34に設けられた第3供給油路34a、第3径方向油路34bおよび環状突出部112などから電動機の軸受電蝕防止装置92が構成される。
エンジン14が停止状態であって第1電動機回転速度Nmg1が所定回転速度A以上の場合には、環状突出部112がメタルブッシュ110の内周面の少なくとも一部に摺動し、第1ロータ軸32からサンギヤS、固定部材102、メタルブッシュ110および入力軸34を介してオイルポンプ駆動軸76への通電経路が成立させられる。このため、第1電動機MG1が、第1ロータ軸32の軸電圧が第1ニードルベアリング78の耐電圧を超える可能性のある所定回転速度A以上の高回転域で作動させられる際に、図2の回転軸線C1よりも上側に示されるように軸受電蝕防止装置92は上記通電経路が成立するオン(ON)状態とされる。これにより、第1ニードルベアリング78およびそれよりも耐電圧の高い第1ボールベアリング68および第2ボールベアリング70の電蝕の発生が抑制される。また、エンジン14が停止状態であって第1電動機回転速度Nmg1が所定回転速度A未満の場合には、環状突出部112がメタルブッシュ110の内周面に摺動せず、図2の回転軸線C1よりも下側に示されるように、軸受電蝕防止装置92は上記通電経路が成立しないオフ(OFF)状態とされる。一方、図6のロータ軸の支持構造210では、ブッシュ224がサンギヤ220と回転軸226との間に回転軸線方向に移動不能に設けられ、サンギヤ220と回転軸226との相対回転時にブッシュ224が回転軸226に常に摺動させられる。
上述のように、本実施例の電動機の軸受電蝕防止装置92では、第3供給油路34aおよび第3径方向油路34bからのオイルによる遠心油圧とバネ108の付勢力とが平衡するまでメタルブッシュ110が入力軸34とサンギヤSとの間の環状空間において回転軸線C1方向へ移動させられ、エンジン14が停止状態であって第1電動機回転速度Nmg1が所定回転速度A以上の場合に、環状突出部112がメタルブッシュ110の内周面の一部に摺動することにより、第1ロータ軸32からサンギヤS、メタルブッシュ110および入力軸34を介するオイルポンプ駆動軸76への通電経路が成立させられる。これにより、エンジン14が停止状態であって第1電動機MG1が所定回転速度A以上の高回転域で作動させられる際に、第1電動機MG1の第1ロータ軸32に設けられた第1ニードルベアリング78などの電蝕の発生が抑制される。また、本実施例の軸受電蝕防止装置92は、エンジン14が停止状態であって第1電動機MG1が所定回転速度A未満の低回転域で作動させられる際に、環状突出部112がメタルブッシュ110の内周面に摺動しない上記通電経路が成立させられない状態となる。一方、図6のロータ軸の支持構造210では、ブッシュ224が回転軸線方向において位置不変に回転軸226とサンギヤ220との間に配設され、サンギヤ220と回転軸226との相対回転時にブッシュ224が回転軸226に常に摺動させられる。このため、本実施例の軸受電蝕防止装置92は、図6のロータ軸の支持構造210と比較して、メタルブッシュ110の引摺損失が低減される。
図5は、本実施例の電動機の軸受電蝕防止装置120の要部断面図である。本実施例の電動機の軸受電蝕防止装置120では、バネ122が、その一端が固定部材102の固定部106に固定されることによりサンギヤSに固定され、その他端が円筒状のメタルブッシュ110の一端に当接させられて、入力軸124の外周面とサンギヤSの内周面との間の環状空間に設けられている。入力軸124には、第3供給油路34aと入力軸124の外周側とを連通させる第3径方向油路34b’が形成されている。第3径方向油路34b’は、メタルブッシュ110のバネ122が当接させられた他端とは反対側の一端にオイルを供給可能に、その中心が回転軸線C1方向において内周側突出部100に対してメタルブッシュ110とは反対側に位置するように入力軸124に設けられている。また、本実施例の軸受電蝕防止装置120が備えられた動力伝達装置には電動オイルポンプは備えられておらず、機械式オイルポンプ26からのオイルのみが入力軸124の第3供給油路34aおよび第3径方向油路34b’からメタルブッシュ110の一端に供給される。バネ122は、第3径方向油路34b’からのオイルによってメタルブッシュ110に発生する矢印Y2方向への推力と逆向きにメタルブッシュ110を矢印X2方向へ付勢する。メタルブッシュ110は、バネ122の付勢力(バネ張力)がオイルの遠心油圧による推力よりも大きくバネ122の変位が零である初期位置と、オイルの遠心油圧による推力がバネ122の付勢力よりも大きく、メタルブッシュ110が初期位置から回転軸線C1方向へ固定部106側に変位してバネ122の初期位置からの変位量が最大となる最大変位位置との間で、入力軸124とサンギヤSとの間の上記環状空間内において回転軸線C1方向に移動可能に設けられている。図5の回転軸線C1よりも上側は、メタルブッシュ110が初期位置にある状態を、図5の回転軸線C1よりも下側は、メタルブッシュ110が最大変位位置にある状態をそれぞれ示している。また、入力軸124には、回転軸線C1方向においてメタルブッシュ110の初期位置に対応する外周面から外周側に突設されメタルブッシュ110を摺動可能に狭持する環状突出部126が形成されている。環状突出部126は、サンギヤSと入力軸124との相対回転時にメタルブッシュ110が初期位置にある場合にはメタルブッシュ110の軸方向の全長に摺動し、メタルブッシュ110が最大変位位置にある場合にはメタルブッシュ110に摺動しない。
メタルブッシュ110は、本発明の通電部材として機能するものであり、エンジン14の停止時には、第1電動機回転速度Nmg1に依らずメタルブッシュ110に遠心油圧による推力が作用せず、バネ122の矢印X2方向の付勢力により図5の回転軸線C1よりも上側に示される初期位置に位置させられ、その内周面が環状突出部126に摺動させられて、第1ロータ軸32からサンギヤS、固定部材102、メタルブッシュ110および入力軸124を介してオイルポンプ駆動軸76への通電経路を成立させる。また、メタルブッシュ110は、エンジン14の作動中で、第1電動機回転速度Nmg1が所定回転速度A以上のときに、機械式オイルポンプ26からのオイルによって第1電動機MG1の回転により発生する遠心油圧の矢印Y2方向への推力がバネ122の矢印X2方向への付勢力よりも大きく、図5の回転軸線C1よりも下側に示される最大変位位置に移動させられ、その内周面が環状突出部126に摺動させられずに上記通電経路を成立させない。また、メタルブッシュ110は、エンジン14の作動中で、第1電動機回転速度Nmg1が所定回転速度A未満のときに、バネ122の付勢力が第1電動機MG1の回転により発生する遠心油圧の推力よりも大きく、その内周面の一部が環状突出部126に摺動させられて上記通電経路を成立させる。上述のように、本実施例の軸受電蝕防止装置120によれば、前述の実施例2と同様の効果が得られる。
以上、本発明を表及び図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
たとえば、前述の実施例1の軸受電蝕防止装置92によれば、入力軸34と入力軸34の軸端部34dに嵌め合わされたオイルポンプ駆動軸76とが、軸端部34dの外周面と第1ロータ軸32の内周面との間に配設された第1ニードルベアリング78を介して支持されていたが、これに限定されるものではなく、入力軸34およびオイルポンプ駆動軸76に替えて、一端がエンジン14に連結され、他端が機械式オイルポンプ26に連結され、一部材として形成された内周側回転軸が第1ニードルベアリング78を介して第1ロータ軸32に支持されてもよい。このように構成された軸受電蝕防止装置であっても、第1ロータ軸32の軸電圧が第1ニードルベアリング78の耐電圧を超える可能性のある所定回転速度A以上で第1電動機MG1が作動させられる時に、第1ロータ軸32から、サンギヤS、メタルブッシュ110を介する上記内周側回転軸への通電経路が成立させられて、第1ニードルベアリング78の電蝕の発生が抑制される。
また、前述の実施例1の電動機の軸受電蝕防止装置92では、環状突出部112は、入力軸34の外周面の一部が外周側に突出することにより形成されていたが、これに限定されるものではなく、たとえば、環状突出部112がサンギヤSの内周面の一部が内周側に突出することにより形成される、あるいは入力軸34の外周面の一部が外周側に僅かに突出するとともに、サンギヤSの入力軸34の外周側に突出した外周面に回転軸線C1方向に対応する内周面の一部が内周側に僅かに突出することにより形成されてもよい。
また、前述の第1ニードルベアリング78は、必ずしも転動体がニードルである必要はなく、ローラやボールであるベアリングであってもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。