JP6670971B1 - 鋼製構造部材の接続金物及び接続構造 - Google Patents
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Abstract
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例えば、特許文献1には、柱梁架構を構成する上階の梁と下階の梁とに鉄筋コンクリート製の支持部が設けられ、これら上下の支持部間に、制震部材としての鋼材型の制震ダンパーが接続金物(ブラケット)を介して接続された制震間柱が開示されている。鋼材型の制震ダンパーとは、地震の際に建物に生じる揺れのエネルギーを自らが塑性変形することで吸収する部材であって、例えばH形鋼で形成されている。接続金物は、ベースプレートの裏面から剪断力伝達部材及びアンカーボルトが突出され、これら剪断力伝達部材及びアンカーボルトが支持部のコンクリートに埋設されることにより、制震ダンパーが接続金物を介して支持部に接続される。
本発明に係る構造部材の接続金物は、鋼製の構造部材の接続端が一方の面に接続されるベース板と、前記ベース板の他方の面に、該他方の面上に対して起立又は垂下するように固定されたジベル板とを備える。前記ジベル板には、前記ベース板から離れる方向に並ぶ複数の肉抜き部が形成され、前記複数の肉抜き部のうち前記ベース板に最も近い第一の肉抜き部は、前記第一の肉抜き部よりも前記ベース板から遠い第二の肉抜き部よりも小さい。
加えて、ジベル板の第一の肉抜き部がコンクリートの表面に近い場合には、第一の肉抜き部の位置を起点にコンクリートがコーン状破壊することがある。第一の肉抜き部を第二の肉抜き部より小さくすることにより、第一の肉抜き部が抵抗する引抜力が抑制され、コーン状破壊を効果的に抑制できる。これにより、鋼製の構造部材を接続される鉄筋コンクリート構造又は鉄骨鉄筋コンクリート構造の構造物の健全性を高めることができる。
前記複数の肉抜き部を、前記ジベル板に形成された貫通孔とした場合、前記第一の肉抜き部である第一の貫通孔の内径は、前記第二の肉抜き部である第二の貫通孔の内径よりも小さくされる。
前記複数の肉抜き部を、前記ジベル板の側縁に形成された切欠部とした場合は、前記第一の肉抜き部である第一の切欠部は、前記第二の肉抜き部である第二の切欠部よりも小さくされる。
ここで、構造部材の回転ずれは、構造部材のフランジと平行に配置されたジベル板の抜出しによって引き起こされる。このため、ジベル板の抜出しを防ぐ(すなわち、引抜きに対する剛性を高める)ことが非常に重要となる。
(第1実施形態)
図1、図2に示すように、鉄筋コンクリート構造10は、上階の梁12と、下階の梁14と、制震間柱20とを備えた架構式構造である。制震間柱20は、例えば、鉄筋コンクリート構造10の架構の上階の梁12と下階の梁14との間に取付けられている。制震間柱20は、上部支持部21と、下部支持部22と、鋼材型の制震ダンパー(構造部材)25と、接続構造30とを備えている。
制震ダンパー25は、上側接続端(接続端)25a及び下側接続端(接続端)25bにウエブ26及びフランジ27を備えている。制震ダンパー25は、ウエブ26の両端部にフランジ27が接続されることにより断面H状に形成された鋼材ダンパーである。
実施形態においては、制震ダンパー25を鋼材ダンパーとした例について説明するが、制震ダンパー25は鋼材ダンパーに限らない。その他の例として、制震ダンパー25を摩擦ダンパー、粘弾性ダンパー、オイルダンパー、粘性ダンパーとしてもよい。
制震ダンパー25は、下側端面21a及び上側端面22aに接続構造30により接続された状態において、所定の水平荷重(せん断力Qu)が作用した際に剪断パネルとしての機能を果たす。
下部接続構造32は、制震ダンパー25の下側接続端25bに、例えば溶接で接続されている。よって、下部接続構造32が下部支持部22の上側端面22a側に接続されることにより、制震ダンパー25の下側接続端25bが下部接続構造32を介して下部支持部22の上側端面22a側に接続されている。
上部接続構造31及び下部接続構造32は、上下方向において対称に構成されている。よって、以下、下部接続構造32について説明して上部接続構造31の詳しい説明を省略する。
接続金物35は、ベース板41と、第一のジベル板42と、第二のジベル板43とを備えている。
ベース板41は、対向する2つの長辺41aと、対向する2つの短辺41bとにより平面視矩形状に形成されている。ベース板41は、上面(一方の面)41cに制震ダンパー25の下側接続端25bが、例えば、溶接により接続されている。ベース板41の下面(他方の面)41dのうち、2つの短辺41bの近傍に第一のジベル板42が間隔をおいて対向するように設けられている。
第一のジベル板42は、ベース板41から離れる方向に並び、間隔を置いて形成された円形の貫通孔(肉抜き部)45、46、47を有する。第1実施形態においては、これら複数の貫通孔45、46、47として、例えば、第一の貫通孔45、第二の貫通孔46、及び第三の貫通孔(第二の貫通孔)47を例に説明するが、これに限定しない。
ベース板41の下面41dのうち、2つの長辺41a寄りの部位に第二のジベル板43が間隔をおいて設けられている。2つの第二のジベル板43の第四の貫通孔48に第三の鉄筋38が挿通され、両端部38aが第四の貫通孔48から外側に向けて直線上に突出されている。
この状態において、ベース板41の下面41dが下部支持部22の上側端面22aに接触する。ベース板41は、下部支持部22の上側端面22aに接触した状態において、2枚の第一のジベル板42、2枚の第二のジベル板43、第一の鉄筋36、第二の鉄筋37、及び第三の鉄筋38により上側端面22a側に固定されている。
上部接続構造31のベース板41は、上部支持部21の下側端面21aに接触した状態において、2枚の第一のジベル板42、2枚の第二のジベル板43、第一の鉄筋36、第二の鉄筋37、及び第三の鉄筋38により固定されている。
制震ダンパー25のウエブ26にせん断力Quが作用することにより、第二のジベル板43の第四の貫通孔48及び第三の鉄筋38にせん断力Quに抵抗する力が作用する。よって、制震ダンパー25のウエブ26に作用するせん断力Quに対して、下部支持部22の上側端面22aに対する下部接続構造32のずれ変形を小さく抑えることができる。
同様に、制震ダンパー25のウエブ26に作用するせん断力Quに対して、上部支持部21の下側端面21aに対する上部接続構造31のずれ変形を小さく抑えることができる。
このように、第一の貫通孔45の孔径d1を第二の貫通孔46の孔径d2より小さくすることにより、制震ダンパー25のウエブ26に作用する曲げモーメントMuに対して、第一のジベル板42のずれ変形を小さく抑えることができる。
同様に、制震ダンパー25のウエブ26に作用する曲げモーメントMuに対して、上部支持部21の下側端面21aに対する上部接続構造31(図1参照)のずれ変形を小さく抑えることができる。
これにより、地震や風荷重により制震ダンパー25に曲げモーメントMuと、せん断力Quとが作用した場合に、制震ダンパー25を効果的にせん断塑性変形させてエネルギーを吸収することにより建物の損傷を抑制できる。
第一実施形態の変形例を図6に示す。本変形例では、第一のジベル板42は、ベース板41の幅方向に離間した二辺に間隔を置いて形成された半円形の切欠部(肉抜き部)48、49、50を有する。第一の切欠部48は、第一の切欠部48、第二の切欠部49、及び第三の切欠部50のうちベース板41に最も近い位置に配置されている。第二の切欠部49は、第一の切欠部48よりもベース板41から遠い位置に配置されている。第三の切欠部50は、第二の切欠部49よりもベース板41から遠い位置に配置されている。第二の切欠部49及び第三の切欠部50は同じ形状、同じ大きさに形成されている。第一の切欠部48の半径(r1)は、第二の切欠部49及び第三の切欠部50の半径(r2)よりも小さく形成されている。なお、第一のジベル板42には複数の貫通孔40が形成されているが、貫通孔40の孔径はすべて同じであり、よって貫通孔40は本発明における肉抜き部には該当しない。
また、第一の切欠部48の大きさを意図的に小さくすることにより、第一の切欠部48が抵抗する引抜力が抑制され、コーン状破壊を効果的に抑制できる。これにより、制震ダンパー25を接続される建物の健全性を高めることができる。
また、接続金物35及び接続構造30を、制震部材ではなく単純な柱、梁、ブレース等の構造部材を躯体に接続するために用いてもよい。
図7に示すように、接続金物100は、第一のジベル板102が第1実施形態の第一のジベル板42と異なるだけで、その他の構成は第1実施形態の接続金物35と同様である。
第一のジベル板102は、第一のジベル縦辺(側縁)102aに形成された複数の切欠部104を有する。切欠部104は、例えば、半円形に形成されている。複数の切欠部104は、第一のジベル縦辺102aに、ベース板41から離れる方向に並び、間隔をおいて形成されている。
ここで、制震ダンパー25の回転ずれに対しては、制震ダンパー25のフランジ27に沿って平行に配置された第一のジベル板102の抜出しによって引き起こされる。このため、第一のジベル板102の抜出しを防ぐ(すなわち、引抜きに対する剛性を高める)ことが重要となる。
さらに、第一のジベル縦辺102aに複数の切欠部104を形成することにより、第一のジベル板102の板サイズ、板厚を変えることなく、第一のジベル板102の抜出しに対する耐力、弾性剛性を一層高めることができる。よって、第一のジベル板102のずれ変形を抑えることができ、第一のジベル板102を一層コンパクトに形成できる。これにより、制震ダンパー25を効果的にせん断塑性変形させてエネルギーを一層良好に吸収でき、第一のジベル板102による下部支持部22の鉄筋への干渉を抑えて一層良好に施工性を高めることができる。
図8に示すように、接続金物200は、第一のジベル板202が第2実施形態の第一のジベル板102と異なるだけで、その他の構成は第2実施形態の接続金物100と同様である。
第一のジベル板202は、第一のジベル縦辺(側縁)202aに形成された複数の切欠部204を有する。切欠部204は、例えば、V字状の凹形に形成されている。複数の切欠部204は、第一のジベル縦辺202aに、ベース板41から離れる方向に並び、凹凸が連続するように並んで形成されている。
さらに、第一のジベル縦辺202aに複数の切欠部204を形成することにより、第一のジベル板202の板サイズ、板厚を変えることなく、第一のジベル板202の抜出しに対する耐力、弾性剛性を一層高めることができる。よって、第一のジベル板202のずれ変形を抑えることができ、第一のジベル板202を一層コンパクトに形成できる。これにより、制震ダンパー25を効果的にせん断塑性変形させてエネルギーを一層良好に吸収でき、第一のジベル板202による下部支持部22の鉄筋への干渉を抑えて一層良好に施工性を高めることができる。
以下、第1実施例から第5実施例の第一のジベル板を例に引張力と引抜変位との関係を表1、図9から図11のグラフに基づいて説明する。表1において、第1実施例から第5実施例の第一のジベル板は、例えば、第1実施形態の第一のジベル板42に相当する部材である。また、第1実施例から第5実施例の第一の貫通孔、及びその他の貫通孔は、例えば、第1実施形態の第一の貫通孔45、第二、第三の貫通孔46,47に相当する孔である。また、第一の貫通孔、その他の貫通孔の孔径に、第1実施形態の孔径d1,d2を付して説明する。また、第一の貫通孔の埋込深さLは、例えば、第1実施形態の下部支持部22の上側端面22aから第一の貫通孔45の中心までの距離である。また、切欠部は、例えば、第2実施形態の第一のジベル縦辺102aに形成された複数の切欠部104に相当する部位である。
さらに、図9から図11において、縦軸は引張力(kN)を示し、横軸は引抜変位(mm)を示す。また、第1実施例の第一のジベル板をG1、第2実施例の第一のジベル板をG2として説明する。また、第3実施例の第一のジベル板をG3、第4実施例の第一のジベル板をG4、第5実施例の第一のジベル板をG5として説明する。
表1に示すように、第1実施例及び第2実施例の第一のジベル板は、第一の貫通孔の埋込深さLを210mmと大きく設定されている。加えて、第2実施例の第一のジベル板は、第一の貫通孔がその他の貫通孔の孔径d2より小さい孔径d1に形成されている。よって、第一のジベル板の引張降伏を第一の貫通孔の近傍において遅らせることができる。
これにより、図9に示すように、グラフG2の引抜力がグラフG1の引抜力より大きくなる。このように、第一の貫通孔の孔径d1を小さく形成することにより、下部支持部22の上側端面22aから第一のジベル板が引き抜かれる引抜力(すなわち、終局耐力)を約13%高めることができることがわかる。
表1に示すように、第3実施例及び第4実施例の第一のジベル板は、第一の貫通孔の埋込深さLを100mmと小さく抑えられている。加えて、第3実施例の第一のジベル板は、第一の貫通孔がその他の貫通孔の孔径d2より小さい孔径d1に形成されている。このように、第3実施例の第一のジベル板によれば、第一の貫通孔の埋込深さLを小さく抑えた状態において、第一の貫通孔の孔径d1を小さく形成することにより、下部支持部22のコンクリートがコーン状破壊することを効果的に抑制できる。
表1に示すように、第5実施例及び第1実施例の第一のジベル板は、第一の貫通孔の埋込深さLを210mmと大きく設定されている。加えて、第5実施例の第一のジベル板は、第一のジベル縦辺に複数の切欠部が形成されている。よって、下部支持部22に対する第一のジベル板の抜出しによる初期耐力、初期剛性を高めることができる。
一方、グラフG5の終局引抜力(すなわち、終局耐力)がグラフG1の終局引抜力より約15%小さくなる。グラフG5の終期引抜力は、例えば、第一の貫通孔45の孔径d1を変える方策との組み合わせや、第一のジベル板の板厚の調整で終局耐力を高めることは可能である。
図12に示すように、鉄筋コンクリート構造300は、隣り合う鉄筋コンクリート製の柱301、302と、一方の柱301に設けられた第一支持部303と、他方の柱302に設けられた第二支持部304と、第一、第二支持部303、304間に架設された制震ダンパー25と、接続構造30とを備えている。本構造は、第1実施形態の制震間柱20を、上下階の梁間ではなく左右に隣り合う柱301、302間に配設したものである。
図13、図14に示すように、鉄筋コンクリート構造400は、上階の梁401及び一方の柱403の上側交差部404と、下階の梁402及び他方の柱403の下側交差部405との間に制震ブレース410が斜めに架設されている。制震ブレース410の上端は、上側交差部404に設置された上側の接続金物(ブラケット)404aに接続され、ブレース410の下端は、下側交差部405に設置された下側の接続金物(ブラケット)405aに接続されている。
接続金物404a、405aは同じ構造を有しているので、以下では下側の接続金物405aについて説明し、接続金物404aの説明は省略する。
これにより、第4実施形態によれば、上記の実施形態と同様に、制震ブレース410を効果的にせん断塑性変形させてエネルギーを一層良好に吸収できる。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態や実施例を適宜組み合わせてもよい。
21 上部支持部(構造体)
22 下部支持部(構造体)
25 制震ダンパー
25a 上側接続端(接続端)
25b 下側接続端(接続端)
30 接続構造
31 上部接続構造
32 下部接続構造
35,100,200 制震ダンパーの接続金物
36,37,38 第一、第二及び第三の鉄筋(鉄筋)
41 ベース板
41c 下側ベース板の上面(一方の面)、上側ベース板の上面(他方の面)
41d 下側ベース板の下面(他方の面)、上側ベース板の下面(一方の面)
42,102,202 第一のジベル板(ジベル板)
43 第二のジベル板
45 第一の貫通孔
46 第二の貫通孔
47 第三の貫通孔(第二の貫通孔)
102a,202a 第一のジベル縦辺(側縁)
104,204 切欠部
Claims (7)
- 鋼製の構造部材の接続端が一方の面に接続されるベース板と、
前記ベース板の他方の面に、該他方の面上に対して起立又は垂下するように固定されたジベル板とを備え、
前記ジベル板には、前記ベース板から離れる方向に並ぶ複数の肉抜き部が形成され、
前記複数の肉抜き部のうち前記ベース板に最も近い第一の肉抜き部は、前記第一の肉抜き部よりも前記ベース板から遠い第二の肉抜き部よりも小さい、鋼製構造部材の接続金物。 - 前記複数の肉抜き部が、前記ジベル板に形成された貫通孔、及び前記ジベル板の側縁に形成された切欠部のいずれか一方、又は両方である、請求項1に記載の鋼製構造部材の接続金物。
- 前記複数の肉抜き部が、前記ジベル板に形成された貫通孔であって、前記第一の肉抜き部である第一の貫通孔の内径は、前記第二の肉抜き部である第二の貫通孔の内径よりも小さい、請求項1に記載の鋼製構造部材の接続金物。
- 前記複数の肉抜き部が、前記ジベル板の側縁に形成された切欠部であって、前記第一の肉抜き部である第一の切欠部は、前記第二の肉抜き部である第二の切欠部よりも小さい、請求項1に記載の鋼製構造部材の接続金物。
- 鋼製の構造部材と、鉄筋コンクリート構造又は鉄骨鉄筋コンクリート構造の構造物の躯体との接続構造であって、
請求項1から3のいずれか一項に記載の接続金物を含み、
前記ジベル板が前記躯体に埋設されている、接続構造。 - 前記躯体に埋設される鉄筋をさらに含み、
前記鉄筋は、前記躯体の内部で前記複数の肉抜き部に配設されている、請求項5に記載の接続構造。 - 鋼製の構造部材と、鉄筋コンクリート構造又は鉄骨鉄筋コンクリート構造の構造物の躯体との接続構造であって、
請求項4に記載の接続金物を含み、
前記ジベル板が前記躯体に埋設されている、接続構造。
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