以下、添付図面を参照して、本願の開示する洗浄水供給装置および水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.水洗大便器の構成>
まず、実施形態に係る水洗大便器の構成について図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係る水洗大便器の構成を示す図である。
図1に示すように、実施形態に係る水洗大便器100は、たとえばトイレ室の床面に載置される便器本体200と、便器本体200の後方に配置され、便器本体200に対して洗浄水を供給する洗浄水供給装置1とを備える。
便器本体200は、汚物を受けるボウル部210と、このボウル部210の底部から後方へ延びる排水トラップ管路220とを有する。ボウル部210にはリム吐水を行うリム吐水口212及びジェット吐水を行うジェット吐水口214が形成されている。リム吐水口212は、ボウル部210の上部後方に形成され、ボウル部210の上縁に沿って洗浄水を吐出する。ジェット吐水口214は、ボウル部210の底部に形成され、排水トラップ管路220に向けて洗浄水を吐出する。排水トラップ管路220は、封水を形成するとともに、下水配管(図示せず)と連通している。
洗浄水供給装置1は、図示しない制御部によって制御されるバルブユニット600と、バルブユニット600の下流に設けられ洗浄水を貯留するタンク800と、タンク800内の下流に設けられ洗浄水を加圧する加圧ポンプ900とを備える。
バルブユニット600の上流側には、図示しない給水源からの洗浄水を供給する給水路320が接続される。また、バルブユニット600の下流側には、リム吐水口212に洗浄水を供給するためのリム側給水路340とタンク800に洗浄水を供給するためのタンク側給水路360とが接続される。
バルブユニット600は、入水部610と、入水部610の下流側に設けられる定流量弁620と、定流量弁620の下流に設けられるダイヤフラム式の給水弁部640とを備える。また、バルブユニット600は、給水弁部640の下流に設けられるバキュームブレーカ部680と、バキュームブレーカ部680の下流に設けられる切替弁部660と、切替弁部660の下流側に設けられる出水部670とを備える。
入水部610は、給水路320に接続され、図示しない給水源からの洗浄水が導入される。定流量弁620は、給水路320から定流量弁620に流れ込んで下流側へ向かう洗浄水の流量を一定にする。給水弁部640は、給水弁を開閉させることにより、リム吐水口212及びジェット吐水口214における洗浄水の吐水と止水とを切替える。
バキュームブレーカ部680は、洗浄水の逆流を防止するバキュームブレーカ687を含んで構成される。切替弁部660は、リム側給水路340またはタンク側給水路360へ向けて洗浄水を供給する。なお、バキュームブレーカから溢れ出た洗浄水は、バキュームブレーカ部680の水受け部684によって捕集された後、水受け部684の底面に接続された排水路390によってタンク800に排出される。
出水部670は、リム側給水路340に接続され、リム側給水路340に対して洗浄水を導出するリム側出水部671と、タンク側給水路360に接続され、タンク側給水路360に対して洗浄水を導出するタンク側出水部672とを備える。
タンク800の下部には、ポンプ側給水路370が接続されており、このポンプ側給水路370の下流端には加圧ポンプ900が接続されている。加圧ポンプ900は、ジェット側給水路380によりジェット吐水口214と接続されており、タンク800に貯水された洗浄水を加圧してジェット側給水路380経由でジェット吐水口214へ供給する。
実施形態に係るバルブユニット600は、入水部610、定流量弁620および給水弁部640を含む第1ユニット601と、バキュームブレーカ部680、切替弁部660および出水部670を含む第2ユニット602とに分割可能に構成される。以下では、かかるバルブユニット600の構成について具体的に説明する。
<2.バルブユニットの構成>
バルブユニット600の具体的な構成について図2A〜図3Bを参照して説明する。図2Aはバルブユニット600の正面図であり、図2Bは同側面図である。また、図3Aはバキュームブレーカ部680および切替弁部660周辺の正断面図であり、図3Bは同側断面図である。
なお、以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図2A〜図3Bに示すように、バルブユニット600は、第1ユニット601と第2ユニット602とを備える。
第1ユニット601は、第2ユニット602の下部に配置され、入水部610、定流量弁620(図3A参照)および給水弁部640を含んで構成される。入水部610、定流量弁620および給水弁部640は、水平方向(ここでは、X軸方向)に並べて配置される。入水部610は、水平方向に向けて開口する入水口611を有し、かかる入水口611から導入された洗浄水を定流量弁620および給水弁部640へ導く。定流量弁620は、たとえば入水部610内の入水口611よりも下流側の位置に設けられる。
図3Aに示すように、給水弁部640は、圧力室641と、給水弁642と、電磁弁643と、ハウジング644とを備える。圧力室641は、入水部610に連通する入水口641aと、バキュームブレーカ部680に連通する出水口641bとを有する。入水口641aは、水平方向に向けて開口し、出水口641bは、鉛直方向に向けて開口する。給水弁642は、圧力室641の内部に設けられ、出水口641bを閉鎖または開放することにより、出水口641bよりも下流側への洗浄水の吐水と止水とを切替える。
電磁弁643は、圧力室641の側方に設けられる。電磁弁643が開放されると、圧力室641の圧が抜け、洗浄水の水圧によって給水弁642が押し下げられる。これにより、出水口641bが開放されて、洗浄水がバキュームブレーカ部680へ流入する。一方、電磁弁643が閉鎖されると、圧力室641の圧が高まり、給水弁642が押し上げられる。これにより、出水口641bが閉鎖されて、バキュームブレーカ部680への洗浄水の供給が停止される。
ハウジング644は、上側ハウジング645と下側ハウジング646とを有し、これらを上下方向に組み付けることにより形成される。上述した圧力室641は、かかるハウジング644の内部に形成される。上側ハウジング645は、下側ハウジング646の上部に設けられ、圧力室641における給水弁642よりも上方の空間を形成する。また、下側ハウジング646は、圧力室641における給水弁642よりも下方の空間を形成する。なお、上側ハウジング645は、入水部610と一体成形により形成される。
図2Aおよび図2Bに示すように、上側ハウジング645の外周部には上側フランジ部647が設けられ、下側ハウジング646の外周部には下側フランジ部648が設けられる。上側フランジ部647には、ネジSが上方から挿入される複数の上側ネジ穴647aが周方向に沿って形成される。また、下側フランジ部648には、複数の上側ネジ穴647aに対応する位置に複数の下側ネジ穴648aが形成される。
かかるハウジング644は、上側ネジ穴647aとこれに対応する下側ネジ穴648aとにネジSを挿入し、上側ハウジング645と下側ハウジング646とをネジSで締結することにより形成される。
一方、第2ユニット602は、第1ユニット601の上部に配置され、バキュームブレーカ部680、切替弁部660および出水部670(リム側出水部671およびタンク側出水部672)を含んで構成される。
図3Bに示すように、バキュームブレーカ部680は、バキュームブレーカ687と、水受け部684とを備える。また、バキュームブレーカ687は、通水路681と、大気導入口682と、弁体683とを備える。
通水路681は、上流側(給水弁部640側)に入水口685、下流側(切替弁部660側)に出水口686を有する。入水口685は鉛直方向に向けて開口し、出水口686は水平方向に向けて開口する。大気導入口682は、通水路681と外部とを連通する開口部であり、入水口685の上方に設けられ、鉛直方向に向けて開口する。
弁体683は、通水路681内に設けられ、洗浄水の水圧によって通水路681内を上下動する。かかる弁体683は、通水時には水圧により上昇して入水口685と出水口686とを連通させ、非通水時には自重により降下して入水口685と大気導入口682とを連通させる。
水受け部684は、大気導入口682の上部に設けられる。水受け部684は、大気導入口682と連通しており、大気導入口682から溢れ出た洗浄水を受ける。水受け部684の底面には、排水路390(図1参照)が接続されており、水受け部684により捕集された洗浄水は、排水路390経由でタンク800に排出される。
切替弁部660は、固定弁体661と、可動弁体662と、シャフト666と、モータ667と、ケーシング部668とを備える。固定弁体661は、円板状の対向面661aを有し、かかる対向面661aに、洗浄水が流入する流入口663と、2つの流出口664,665とが形成される。流入口663および2つの流出口664,665は、たとえば、対向面661aの中心部から外周部に向かって扇状に広がる形状を有し、対向面661aに対して周状に並べて配置される。流入口663および2つの流出口664,665は、いずれも水平方向に向けて開口する。
切替弁部660の流入口663は、バキュームブレーカ部680の出水口686と同一の高さに位置し、出水口686と連接する。また、2つの流出口664,665のうち、流出口664はリム側出水部671に連通し、流出口665はタンク側出水部672に連通する。
リム側出水部671は、リム側給水路340に接続され、リム側給水路340に対して洗浄水を導出する。また、タンク側出水部672は、タンク側給水路360に接続され、タンク側給水路360に対して洗浄水を導出する。リム側出水部671およびタンク側出水部672は、バキュームブレーカ部680および切替弁部660の並び方向(図3Aにおいて紙面に垂直な方向)を切替弁部660の前後方向とした場合における切替弁部660の側方(図3Bにおいて紙面に垂直な方向)にそれぞれ設けられる。
なお、ここでは、固定弁体661に2つの流出口664,665が形成される場合の例について説明するが、固定弁体661には、3つ以上の流出口が形成されてもよい。また、固定弁体661は、給水弁部640からバキュームブレーカ部680へ至る流路を構成する。かかる流路は、上方に延びており(図3B参照)、洗浄水はかかる流路を上昇してバキュームブレーカ部680へ流入する。
可動弁体662は、たとえば扇形状を有し、固定弁体661の対向面661aに接する位置に設けられる。シャフト666は、可動弁体662を回転可能に支持し、モータ667は、シャフト666を回転させる。モータ667がシャフト666を回転させ、シャフト666の回転に伴って可動弁体662が回転することにより、可動弁体662は、対向面661aに沿って摺動して流出口664,665の開口面積を変化させる。なお、モータ667としては、たとえばステッピングモータを用いることができる。
かかる切替弁部660は、可動弁体662を摺動させて、流出口664,665のうちの一方を可動弁体662で塞ぐことにより、流入口663から流入した洗浄水の流出先をリム吐水口212とタンク800との間で切り替えることができる。たとえば、流出口665を可動弁体662で塞いだ場合、流入口663から流入した洗浄水は流出口664を介してリム吐水口212へ流出する。一方、流出口664を可動弁体662で塞いだ場合、流入口663から流入した洗浄水は流出口665を介してタンク800へ流出する。
図4Aはバルブユニット600の分離斜視図であり、図4Bは同分離正面図であり、図4Cは同分離側面図である。
図4A〜図4Cに示すように、実施形態に係るバルブユニット600は、第1ユニット601と第2ユニット602とに分離可能である。これにより、第1ユニット601および第2ユニット602を適宜組み替えることができるため、たとえばバキュームブレーカ部680の構成を変更したい場合には、第2ユニットのみ新たに製造して既存の第1ユニット601に組み付ければよい。このように、実施形態に係るバルブユニット600によれば、汎用性の高い洗浄水供給装置1を提供することができる。
また、バルブユニット600を第1ユニット601と第2ユニット602とに分割可能とすることにより、ユニットごとに、要求される強度に応じた材料を選択することが可能となる。
具体的には、実施形態に係るバルブユニット600では、入水部610から出水部670(リム側出水部671およびタンク側出水部672)までの流路のうち、第1ユニット601に形成される第1流路P1(図3A参照)は、上記流路のうち、第2ユニット602に形成される第2流路P2(図3B参照)よりも剛性の高い材料により形成される。このように、比較的強度を求められる1次側の流路である第1流路P1を2次側の流路である第2流路P2よりも剛性の高い材料で形成することにより、製造コストを低く抑えることができる。
第1流路P1は、入水部610と給水弁部640の上側ハウジング645および下側ハウジング646とによって構成され、第2流路P2は、切替弁部660とバキュームブレーカ部680とによって構成される。第1流路P1を構成する入水部610、上側ハウジング645および下側ハウジング646は、たとえばPPS(ポリフェニレンスルファイド)で形成され、第2流路P2を構成する切替弁部660およびバキュームブレーカ部680は、POM(ポリアセタール)またはPP(ポリプロピレン)で形成される。
次に、第1ユニット601および第2ユニット602の接続部の構成について説明する。第1ユニット601の給水弁部640は、出水口641b(図3A参照)の下流側に、鉛直方向に向けて開口する円筒形状の接続凸部650aを備える。また、第2ユニット602の固定弁体661は、バキュームブレーカ部680の入水口685(図3B参照)の上流側に、接続凸部650aよりも内径が大きく、鉛直方向に向けて開口する円筒形状の接続凹部650bを備える。
図3Bに示すように、第1ユニット601と第2ユニット602とは、接続凸部650aと接続凹部650bとを嵌め合わせることにより接続される。また、これにより、第1ユニット601の給水弁部640から第2ユニット602のバキュームブレーカ部680への流路が形成される。接続凸部650aと接続凹部650bとの間には、たとえばOリング等のシール部材650cが介設される。
また、図4Aに示すように、接続凸部650aの外周側には、接続凸部650aと所定の間隔をあけて、第1係合部651および第2係合部653が設けられる。第1係合部651は、鉛直方向に沿って延在する第1溝部651aと、第1溝部651aに連通し、接続凸部650aの周方向に沿って延在する第2溝部651bと、第2溝部651bの幅を狭める突起部651cとを備える。また、第2係合部653は、接続凸部650aの周方向に沿って延在する第3溝部653aを有する。
また、図4Cに示すように、接続凹部650bの外周面には、接続凹部650bの径方向外方に向けて突出する第1凸部652および第2凸部654が設けられる。
そして、図4Bに示すように、第2ユニット602を降下させて第1凸部652を第1係合部651の第1溝部651aに嵌め入れた後、第2ユニット602をひねって、第1凸部652が突起部651cを乗り越えるまで第1凸部652を第2溝部651bに沿って移動させる。これにより、第1凸部652と第1係合部651とが係合する。また、上記動作を行うことで、第2凸部654が第2係合部653の第3溝部653aに嵌め込まれて、第2凸部654と第2係合部653とが係合する。
このように、第1係合部651と第1凸部652とが係合し、第2係合部653と第2凸部654とが係合しているため、仮に、第2ユニット602に対して上向きの力が掛かったとしても、第2ユニット602の第1ユニット601からの抜けを防止することができる。したがって、第1ユニット601と第2ユニット602との接続をより確実なものとすることができる。
図5Aは、洗浄水供給装置1を組み込んだ水洗大便器100の平面図である。また、図5Bは、バルブユニット600から第2ユニット602を取り外した状態を示す平面図である。
図5Aに示すように、第1ユニット601は、第2ユニット602の下部に配置されており、第1ユニット601および第2ユニット602を上方から見たときに、第1ユニット601に設けられる複数の上側ネジ穴647aの一部が第2ユニット602によって隠れる位置に設けられる。従来のバルブユニットにおいては、上方から視認できない上側ネジ穴に対して上方からアクセスすることができないため、下方すなわち下側ハウジング側からネジを挿入するようにしていた。しかしながら、この場合、バルブユニット全体を水洗大便器100から取り外さねばならず、施工性やメンテナンス性の面で改善の余地があった。
これに対し、実施形態に係るバルブユニット600は、第1ユニット601と第2ユニット602とに分割可能であるため、複数の上側ネジ穴647aの少なくとも一つが第2ユニット602によって隠れる位置に設けられていたとしても、図5Bに示すように、第2ユニット602を取り外すことで、全ての上側ネジ穴647aに対して上方からネジSを挿入することができる。したがって、従来と比較して、施工性やメンテナンス性を向上させることができる。
<3.バルブニットの組み替え例>
次に、バルブユニット600の組み替え例について図6Aおよび図6Bを参照して説明する。図6Aは、第1変形例に係るバルブユニットの構成を示す図である。また、図6Bは、第2変形例に係るバルブユニットの構成を示す図である。
たとえば、図6Aに示すように、第1変形例に係るバルブユニット600Aは、第1ユニット601に対して第2ユニット602Aを組み付けて構成される。第2ユニット602Aは、切替弁部660の下流側の流路、具体的には、切替弁部660からタンク800へ至る流路と、切替弁部660からリム吐水口212へ至る流路とに、それぞれバキュームブレーカ部680を備える。
また、図6Bに示すように、第2変形例に係るバルブユニット600Bは、第1ユニット601に対して第2ユニット602Bを組み付けて構成される。第2ユニット602Bは、バキュームブレーカ部680を備え、切替弁部660を備えない構成を有する。かかるバルブユニット600Bは、たとえば単一の吐水口を有する便器本体に対して組み込まれる。
その他、第2ユニットとしては、切替弁部による切り替え先を3系統(リム吐水口212およびタンク800に加え、手洗い器や局所洗浄ノズルなど)へ変更したものや、流路切替手段をモータ667から電磁弁や手動に変更したものを第1ユニット601に組み合わせることも可能である。
また、第1ユニットについても、たとえば、必要な流量に応じて給水弁642の径を変更したものや、給水弁642の開弁手段を電磁弁643からステッピングモータやサーボモータあるいは手動に変更したものを、上述した第2ユニット602,602A,602B等に適宜組み合わせることができる。
このように、第1ユニットと第2ユニットとを適宜組み合わせることにより、製造コストを抑えつつ、多種多様な便器本体に対応することが可能となる。
<4.バルブユニットのその他の構成>
実施形態に係るバルブユニット600では、バキュームブレーカ部680が切替弁部660の上流側に設けられる。この点について説明する。
切替弁部660は、たとえば流出口664を開放させた状態から流出口665を開放させた状態へ移行する際に、両方の流出口664,665が流入口663に連通した状態、すなわち、洗浄水が両方の流出口664,665から流出する状態(図3Aに示す状態)を経由する。この状態においては、各流出口664,665に流れる洗浄水の流量が、切替弁部660の上流側を流れる洗浄水の流量よりも少なくなる。
これに対し、実施形態に係る洗浄水供給装置1に係るバキュームブレーカ部680は、切替弁部660の上流側に設けられる。このため、水圧の低下による弁体683の動作不良の発生が抑制されることから、溢れ水の量を低減することができる。これにより、水受け部684を従来よりも小型化することができるため、従来と比較して洗浄水供給装置1を小型化することができる。
図3Bに示すように、ケーシング部668は、可動弁体662を挟んで固定弁体661の対向面661aと対向配置され、固定弁体661とともに流入口663から流出口664,665への洗浄水の流路となる内部空間を形成する。
実施形態に係る洗浄水供給装置1では、バキュームブレーカ部680よりも下流側に配置される切替弁部660、リム側給水路340およびタンク側給水路360等が、バキュームブレーカ部680の上面よりも低い位置に配置される。具体的には、水受け部684の上面よりも低い位置に、切替弁部660、リム側給水路340およびタンク側給水路360等が配置される。
ここで、バキュームブレーカ部680の取付位置は、便器本体200における越流面よりも所定以上高い位置でなければならないと規定されている。このため、バキュームブレーカ部680を規定よりも低い位置に取り付けることはできない。そこで、実施形態に係る洗浄水供給装置1では、切替弁部660、リム側給水路340およびタンク側給水路360等をバキュームブレーカ部680よりも下方に設けることとした。これにより、洗浄水供給装置1の高さ寸法を可及的に低くすることができるため、洗浄水供給装置1をさらに小型化することができる。
また、図3Aに示すように、実施形態に係る切替弁部660において、流出口664,665は、流入口663よりも下方に形成される。
バキュームブレーカ部680より下流側では残水が生じる可能性があるため、切替弁部660をバキュームブレーカ部680の下流側に設けた場合、切替弁部660内に残水が生じるおそれがある。残水は、切替弁部660内における流出口664,665よりも下方の空間に溜まることとなる。
従来の切替弁部は、流出口が流入口の上方に形成されていた。このため、従来の切替弁部をバキュームブレーカ部の下流側に設けることとすると、切替弁部内に多くの残水が発生するおそれがある。このため、従来では、切替弁部に残水が生じないように、バキュームブレーカ部の上流側に切替弁部を設けていた。
これに対し、実施形態に係る洗浄水供給装置1では、切替弁部660の残水対策として、流出口664,665を流入口663よりも下方に形成することとした。これにより、従来の切替弁部のように流出口が流入口よりも上方に形成される場合と比較して、切替弁部660内における流出口664,665よりも下方の空間が小さくなる。このため、従来の切替弁部と比較して、切替弁部660内の残水を低減することができ、残水に起因する凍結時の通水不良や破損の発生を抑えることができる。
さらに、実施形態に係る洗浄水供給装置1では、図3Bに示すように、切替弁部660が有するケーシング部668の固定弁体661との対向面のうち、流出口664,665との対向面668aを流入口663との対向面668bよりも固定弁体661に近付けることとした。
これにより、残水が発生する空間である流出口664,665よりも下方の空間の容積を小さくすることができるため、かかる空間に溜まる残水の量を減らすことができる。したがって、切替弁部660内の残水をさらに低減することができる。
また、実施形態に係る洗浄水供給装置1では、切替弁部660内の残水を切替弁部660の外部に排出するために、図3Aに示すように、切替弁部660の可動弁体662に対して排出路669,669を設けることとした。
可動弁体662は、ケーシング部668(図3B参照)と対向する面に、排出路669,669を備える。排出路669,669は、たとえば可動弁体662の周縁部のうち可動弁体662の回転方向外側に面する周縁部から可動弁体662の回転方向に面する周縁部まで直線状に延びる溝である。2つの排出路669,669のうち、一方は流出口664へ向かって延び、他方は流出口665へ向かって延びている。
上述したように、残水は、切替弁部660内における流出口664,665よりも下方の空間に溜まる。排出路669,669は、流出口664,665よりも下方の空間まで延在しており、かかる空間に溜まった洗浄水は、排出路669,669の下端から毛管現象により排出路669,669を上昇して上端まで移動した後、流出口664,665から切替弁部660外へ排出される。
このように、実施形態に係る洗浄水供給装置1では、切替弁部660内の残水を排出路669,669を用いて毛管現象により流出口664,665へ導き、流出口664,665から切替弁部660の外部へ排出することとした。したがって、切替弁部660内の残水をさらに低減することができる。
なお、排出路669,669の下端は、流出口665を塞いだ状態および流出口664を塞いだ状態を両端とする可動弁体662の可動範囲において、常に、流出口664,665の最下位置以下となる場所に設けられることが好ましい。これにより、流出口664,665に溜まった洗浄水をより確実に切替弁部660の外部に排出することができる。
ここでは、可動弁体662に2つの排出路669,669を設ける場合の例について説明したが、可動弁体662には、少なくとも1つの排出路669が設けられていればよい。また、ここでは、可動弁体662に直線上の排出路669,669を設ける場合の例について説明したが、排出路は、必ずしも直線上であることを要さず、たとえば曲線状や波線状、ジグザク状に形成されてもよい。
また、ここでは、可動弁体662に排出路669を設けることとしたが、排出路は、固定弁体661に設けられてもよい。たとえば、固定弁体661には、流出口664,665の最下位置以下の場所に一端が設けられ、他端が流出口664,665の何れかに連通する溝を排出路として有していてもよい。また、可動弁体662および固定弁体661の両方に排出路を設けることも可能である。
また、ここでは、可動弁体662のケーシング部668との対向面に排出路669,669を設けることとしたが、排出路は、可動弁体662の周面に設けられてもよい。可動弁体662のケーシング部668(図3B参照)との対向面にシボ加工を施し、かかるシボ加工された表面を排出路として用いることとしてもよい。
上述してきたように、実施形態に係る洗浄水供給装置1は、入水部610と、給水弁部640と、バキュームブレーカ部680と、出水部670とを備える。入水部610は、洗浄水が導入される。給水弁部640は、入水部610の下流側に設けられ、流路を開閉する給水弁642を含む。バキュームブレーカ部680は、給水弁部640の下流側に設けられ、バキュームブレーカ687を含む。出水部670は、バキュームブレーカ部680の下流側に設けられ、洗浄水が導出される。また、実施形態に係る洗浄水供給装置1は、入水部610および給水弁部640を含む第1ユニット601と、バキュームブレーカ部680および出水部670を含む第2ユニット602とに分割可能に構成される。
したがって、実施形態に係る洗浄水供給装置1によれば、汎用性を向上させることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。