以下に、本発明の実施の形態にかかる変状検出システムおよび変状検出方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる変状検出システムの構成例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる変状検出システム100は、構造物の表面を3次元点群で表す3次元点群のデータである3次元点群データDpgを生成する走行型計測装置1と、3次元点群データDpgに基づいて、構造物の表面に生じる段差を検出する段差検出装置2とを備える。以下においては、上記構造物の表面がトンネル5の内壁面5aであるものとして説明するが、構造物の表面はトンネル5の内壁面5aに限定されず、橋梁の表面、道路の表面、または建物の表面などであってもよい。
走行型計測装置1は、不図示のレーザスキャナ装置を有しており、走行しながらレーザスキャナ装置によって得られるデータからトンネル5の内壁面5aの3次元点群データDpgを生成する。走行型計測装置1は、MMSとも呼ばれる。3次元点群データDpgには、複数の3次元点の計測データが含まれており、各3次元点の計測データには、3次元直交座標系における3次元点の位置を示すデータが含まれる。
段差検出装置2は、通信部10と、記憶部11と、処理部12とを備える。通信部10は、ネットワーク3を介して走行型計測装置1と通信可能に接続される。ネットワーク3は、例えば、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)である。通信部10は、走行型計測装置1からネットワーク3を介して送信される3次元点群データDpgを受信する。
記憶部11は、トンネル5の形状データDfを記憶している。形状データDfは、例えば、トンネル5の内壁面5aの断面形状を示すデータである。内壁面5aの断面形状は、トンネル軸方向に直交する面でトンネル5の内壁を切断したと仮定した場合における内壁面5aを示す線の形状である。トンネル軸方向は、トンネル5が延伸する方向である。
処理部12は、取得部21と、データ変換部22と、段差検出部23とを備える。取得部21は、通信部10を介して走行型計測装置1から3次元点群データDpgを取得し、記憶部11から形状データDfを取得する。データ変換部22は、取得部21によって取得された形状データDfに基づいてトンネル5の内壁面5aに対応する基準面を設定し、設定した基準面を用いて、取得部21によって取得された3次元点群データDpgを要素点群データDeへ変換する。要素点群データDeは、基準面に行列状に配列される複数の点から選択される1つの点の位置と基準面からのずれ量とで各々表される複数の要素点のデータを含む。
基準面に行列状に配列される複数の点は、基準面に格子を形成したと仮定した場合の格子点と言え、以下、基準面に行列状に配列される複数の点の各々を格子点と記載する場合がある。行方向に隣接する2つの格子点の間隔と、列方向に隣接する2つの格子点の間隔とは同じである。また、行方向および列方向の一方は、トンネル軸方向であり、他方はトンネル周方向である。なお、トンネル周方向は、トンネル軸方向に直交する面でトンネル5の内壁面5aを切断した場合の内壁面5aを示す線に沿った方向である。
段差検出部23は、要素点群データDeに含まれる複数の要素点に対してガウシアン差分フィルタをかけて得られる結果に基づいて、内壁面5aに生じている段差の位置を検出する。例えば、段差検出部23は、ガウシアン差分フィルタをかけた後の複数の要素点のうち隣接する2つの要素点同士を結ぶ線が基準面に交差する位置を特定し、特定した位置を内壁面5aに生じている段差の位置として検出する。
図2は、実施の形態1にかかる変状検出システムによる計測処理およびデータ変換処理の流れを説明するための図である。図2に示すように、走行型計測装置1は、トンネル5の内壁面5aを計測し、3次元点群データDpgを生成する(ステップS1)。段差検出装置2の取得部21は、走行型計測装置1から送信される3次元点群データDpgを取得する(ステップS2)。
段差検出装置2のデータ変換部22は、記憶部11に記憶された形状データDfに基づいてトンネル5の内壁面5aに対応する基準面Swrを設定し、取得部21で取得された3次元点群データDpgを要素点群データDeへ変換するデータ変換処理を行う(ステップS3)。要素点群データDeは、基準面Swrに行列状に配列される複数の格子点Pgから選択される1つの格子点Pgの位置と基準面Swrからのずれ量とで各々表される複数の要素点Peのデータを含むデータである。基準面Swrは、形状データDfに基づいて得られるトンネル5の内壁面5aを示す面である。基準面Swrは、トンネル5の内壁面5aに凹凸がないと仮定した場合のトンネル5の内壁面5aであり、仮想的な面である。
図2において、要素点群データDeを表す図では、要素点Peの位置を分かりやすくするために、トンネル軸方向で隣接する要素点Pe間とトンネル周方向で隣接する要素点Pe間とが各々破線で接続されている。また、図2に示す基準面Swrは、トンネル軸方向における位置とトンネル周方向における位置と基準面Swrからのずれ量とを各々異なる軸とする直交座標系である展開図座標系の平面へ変換された後の基準面である。以下においては、説明の便宜上、展開図座標系へ変換前の基準面Swrを基準面Swr’と記載する場合がある。
ステップS3において、データ変換部22は、3次元点群データDpgに含まれる各3次元点の基準面Swr’に対する位置を算出する。算出される3次元点の位置は、トンネル軸方向の位置とトンネル周方向の位置と基準面Swr’からのずれ量とで表される。トンネル軸方向の位置およびトンネル周方向の位置は、基準面Swr’上の位置である。また、基準面Swr’からのずれ量は、基準面Swr’からの距離で大きさが表され、基準面Swr’と直交する方向であって基準面Swr’から見た方向が極性として表される。
次に、データ変換部22は、基準面Swr’に対する各3次元点の位置と、展開図座標系へ変換後の基準面Swrに行列状に配列される複数の格子点Pgとに基づいて、3次元点群データDpgを展開図座標系の要素点群データDeへ変換する。
例えば、データ変換部22は、3次元点群データDpgを展開図座標系のデータである展開図点群データDpg1へ変換する。データ変換部22は、3次元点群データDpgに含まれる各3次元点のトンネル周方向の位置を、展開図座標系においてトンネル周方向を示す一つの軸上の位置へ変換することによって、3次元点群データDpgを展開図点群データDpg1へ変換する。
データ変換部22は、展開図点群データDpg1に含まれる複数の3次元点のうちトンネル軸方向における位置とトンネル周方向における位置とが1つの格子点Pgの位置から予め定められた範囲内にある1つ以上の3次元点を1つの格子点Pgに割り当てる。データ変換部22は、割り当てた1つの格子点Pgのトンネル軸方向における位置とトンネル周方向における位置とを、要素点Peのトンネル軸方向における位置とトンネル周方向における位置に決定する。
また、データ変換部22は、1つの格子点Pgに割り当てられた1つ以上の3次元点の基準面Swrからのずれ量から、要素点Peにおける基準面Swrからのずれ量を算出する。例えば、データ変換部22は、1つの格子点Pgに割り当てられた1つ以上の3次元点の基準面Swrからのずれ量を平均化して得られる値を要素点Peにおける基準面Swrからのずれ量にすることができる。
データ変換部22は、このように1つ以上の3次元点を1つの格子点Pgに割り当てて要素点Peを算出する処理を格子点Pg毎に行うことで、展開図点群データDpg1を要素点群データDeへ変換する。
図3は、実施の形態1にかかる変状検出システムによる段差検出処理の流れを説明するための図である。図3において、要素点群データDeを表す図では、図2に示す要素点群データDeと同様に、要素点Peの位置を分かりやすくするために、要素点Pe間が破線で接続されている。
図3に示すように、段差検出部23は、データ変換部22によって変換された要素点群データDeに含まれる複数の要素点Peに対してガウシアン差分フィルタをかける処理であるガウシアン差分処理を行う。ガウシアン差分フィルタは、DoG(Difference of Gaussian)とも呼ばれる。ガウシアン差分処理には、第1フィルタ処理(ステップS4)と、第2フィルタ処理(ステップS5)と、差分演算処理(ステップS6)とが含まれる。
段差検出部23は、ステップS4の第1フィルタ処理として、要素点群データDeに含まれる複数の要素点Peに対して第1ガウシアンフィルタをかける処理を行う。また、段差検出部23は、ステップS5の第2フィルタ処理として、要素点群データDeに含まれる複数の要素点Peに対して第2ガウシアンフィルタをかける処理を行う。第1ガウシアンフィルタおよび第2ガウシアンフィルタによって基準面Swrからの要素点Peのずれ量に対する平滑化処理が行われる。
第1ガウシアンフィルタと第2ガウシアンフィルタとは、互いに特性が異なるガウシアンフィルタであり、少なくとも一部のパラメータの値が互いに異なる。段差検出部23は、ステップS6の差分演算処理において、第1フィルタ処理を行って得られる第1ガウシアンフィルタの出力と第2フィルタ処理を行って得られる第2ガウシアンフィルタの出力との差分を算出する。
複数の要素点Peに対してガウシアン差分フィルタをかけることで、複数の要素点Peの各々の基準面Swrからのずれ量の差分がガウシアン差分フィルタから出力される。基準面Swrからのずれ量の差分は、要素点Peにおける基準面Swrからのずれ量に対して第1ガウシアンフィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量と、要素点Peにおける基準面Swrからのずれ量に対して第2ガウシアンフィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量との差分である。
基準面Swrからのずれ量の差分は、例えば、要素点Peに対して第2ガウシアンフィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量から要素点Peに対して第1ガウシアンフィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量を減算して得られる。ガウシアン差分フィルタをかけた後の要素点Peの位置は、トンネル軸方向の位置と、トンネル周方向の位置と、基準面Swrからのずれ量の差分とで表される。
次に、段差検出部23は、要素点群データDeの複数の要素点Peに対してガウシアン差分フィルタをかけて得られる結果に基づいて、段差の位置を検出する(ステップS7)。ステップS7において、段差検出部23は、差分演算処理の結果として得られる要素点Pe毎の基準面Swrからのずれ量の差分に基づいて、零交差が生じる位置を特定する。零交差が生じる位置は、基準面Swrからのずれ量の差分が零になる位置であり、トンネル軸方向の位置とトンネル周方向の位置とで表される。
具体的には、段差検出部23は、トンネル軸方向の位置とトンネル周方向の位置と基準面Swrからのずれ量の差分とを各々異なる軸とする直交座標系で要素点Peを扱う。段差検出部23は、トンネル軸方向またはトンネル周方向で隣接し且つガウシアン差分フィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量の差分値の極性が異なる2つの要素点Pe同士を結ぶ線が零交差する位置である零交差点を特定する。零交差点は、トンネル軸方向の位置とトンネル周方向の位置とで表される。段差検出部23は、零交差点の位置をトンネル5の内壁面5aに生じている段差の位置として検出する。
走行型計測装置1がトンネル5内を走行しながらトンネル5の内壁面5aをレーザスキャナ装置で計測する場合、トンネル5の内壁面5aに対して走行型計測装置1のレーザスキャナ装置からのレーザが正対して照射される。そのため、トンネル5の内壁面5aに生じる段差に対してレーザの照射方向が平行になり、走行型計測装置1の計測によって得られるトンネル5の3次元点群において段差による3次元点の疎密差が現われにくい。また、トンネル5の内壁面5aにおける段差は、浮きまたは剥離に伴う段差でありその高さは相対的に低いことから、このことからも、トンネル5の内壁面5aを表す3次元点群に段差による3次元点の疎密差が生じにくい。
段差検出装置2の処理部12は、複数の要素点Peに対してガウシアン差分フィルタをかけて得られる結果に基づいて、トンネル5の内壁面5aにおける段差の位置を検出する。そのため、処理部12は、トンネル5の内壁面5aを表す3次元点群において段差による3次元点の疎密差が少ない場合であっても、トンネル5の内壁面5aに生じる段差の位置を精度よく検出することができる。
また、トンネル軸方向およびトンネル周方向の各々で要素点Peは等間隔に配置され、各要素点Peに対して1以上の3次元点が割り当てられる。そのため、複数の要素点Peがトンネル軸方向およびトンネル周方向の各々で等間隔に配置される。これにより、処理部12は、トンネル5の内壁面5aの全体に亘って段差を同じ精度で検出することができる。
また、処理部12は、複数の3次元点を一つの要素点Peに割り当てることができるため、3次元点群データDpgで表される3次元点群に含まれる3次元点の数に比べ、要素点群データDeで表される要素点群に含まれる要素点Peの数を減らすことができる。そのため、ガウシアン差分フィルタの処理における処理部12の負荷を軽減することができる。
以下、実施の形態1にかかる変状検出システム100についてさらに詳細に説明する。図1に示す走行型計測装置1は、レーザスキャナ装置に加え、2次元画像を撮像する撮像部を有しており、走行しながら撮像部によって得られる撮像データからトンネル5の内壁面5aの画像データDimgを生成する。画像データDimgは、撮像部によって撮像された画像である撮像画像を繋ぎ合せて得られるトンネル5の内壁面5aの全体画像を示すデータである。
走行型計測装置1は、トンネル5の内壁面5aを定期的に計測し、計測を行う毎に3次元点群データDpgと画像データDimgを生成する。走行型計測装置1は、トンネル5の内壁面5aを計測する毎に、3次元点群データDpgと画像データDimgを段差検出装置2へネットワーク3を介して送信する。なお、3次元点群データDpgと画像データDimgとには各々走行型計測装置1によって計測された時刻である計測時刻の情報が含まれる。
次に、段差検出装置2の構成についてさらに具体的に説明する。図4は、図1に示す段差検出装置をさらに詳細化した構成例を示す図である。図4に示すように、段差検出装置2は、図1に示す段差検出装置2の構成に加え、入力部13と、表示部14とを備える。
通信部10は、図1に示す走行型計測装置1によって生成されたデータをネットワーク3経由で受信する。具体的には、通信部10は、走行型計測装置1からネットワーク3経由で3次元点群データDpgと画像データDimgを受信する。
記憶部11は、形状データDfと、3次元点群データDpgと、画像データDimgと、変状データDdfとを記憶する。形状データDfは、トンネル5の断面形状を示すデータである。形状データDfは、設計図から得られる内壁面5aの断面形状のデータに代えて、3次元点群データDpgから得られる内壁面5aの断面形状のデータであってもよい。
処理部12は、例えば、3次元点群データDpgで示される内壁面5aの3次元点群に柱体を当てはめて内壁面5aの断面形状を推定することによって形状データDfを生成することができる。また、処理部12は、3次元点群データDpgに含まれる複数の3次元点のうちトンネル軸方向に直交する面である直交面から設定された距離内にある複数の3次元点を直交面に投影し、投影した複数の点を曲線近似することによって形状データDfを生成することもできる。
また、形状データDfは、トンネル5の内壁面5aの全体形状を示すデータであってもよい。処理部12は、例えば、3次元点群データDpgで示される内壁面5aの3次元点群に柱体を当てはめて内壁面5aの全体形状を推定することによって形状データDfを生成することができる。
3次元点群データDpgおよび画像データDimgは、上述したように、走行型計測装置1によって生成され通信部10で受信されるデータであり、上述した時刻情報を含む。
変状データDdfは、内壁面5aに生じた変状の種別、範囲、および時刻などを示すデータを含む。変状の種別には、亀裂、段差、剥離、および漏水などがある。変状の範囲は、内壁面5aにおける変状の範囲であり、例えば、基準面Swr’における範囲または基準面Swrにおける範囲である。変状の時刻は、変状が検出された時刻であり、例えば、変状が検出された3次元点群データDpgに含まれる時刻情報で示される時刻である。
処理部12は、取得部21と、データ変換部22と、段差検出部23と、段差評価部24と、属性設定部25と、座標変換部26と、表示処理部27とを備える。取得部21は、走行型計測装置1からネットワーク3を介して3次元点群データDpgおよび画像データDimgを取得し、取得した3次元点群データDpgおよび画像データDimgを記憶部11に記憶させる。なお、取得部21は、3次元点群データDpgおよび画像データDimgが記録された不図示の記録媒体から3次元点群データDpgおよび画像データDimgを取得することもできる。
データ変換部22は、形状データDfに基づいて内壁面5aに対応する基準面Swrを設定し、3次元点群データDpgを要素点群データDeへ変換する。要素点群データDeは、上述したように、基準面Swrに行列状に配列される複数の格子点Pgから選択される1つの格子点Pgの位置と基準面Swrからのずれ量とで各々表される複数の要素点Peのデータを含む。なお、データ変換部22は、3次元点群データDpgから形状データDfを生成する上述した処理を行うことができる。
図5は、実施の形態1にかかるデータ変換部による3次元点群データの要素点群データへの変換方法を説明するための図である。図6は、実施の形態1にかかるデータ変換部による要素点における基準面からのずれ量の第1の決定方法を説明するための図である。図7は、実施の形態1にかかるデータ変換部による要素点における基準面からのずれ量の第2の決定方法を説明するための図である。図8は、実施の形態1にかかるデータ変換部による要素点における基準面からのずれ量の第3の決定方法を説明するための図である。
データ変換部22は、形状データDfに基づいて、図5に示すトンネル5の内壁面5aの全体形状を特定する。例えば、データ変換部22は、内壁面5aの断面形状をトンネル軸方向に連続させることで内壁面5aの全体形状を特定する。また、データ変換部22は、形状データDfが内壁面5aの全体形状を示す3次元データである場合、形状データDfに含まれる3次元データから内壁面5aの全体形状を特定することができる。
そして、データ変換部22は、特定した内壁面5aの全体形状を基準面Swr’に設定する。データ変換部22は、3次元点群データDpgに含まれる各3次元点を基準面Swr’に直交する方向から基準面Swr’へ投影する。データ変換部22は、基準面Swr’に投影された各3次元点の基準面Swr’上の位置と、投影前の各3次元点の基準面Swr’からのずれ量とを算出する。基準面Swr’からのずれ量の大きさは3次元点における基準面Swr’からの距離を表し、基準面Swr’からのずれ量の極性は基準面Swr’と直交する方向であって基準面Swr’から見た方向を表す。
次に、データ変換部22は、各3次元点における投影後の基準面Swr’上の位置と投影前の基準面Swr’からのずれ量に基づいて、3次元点群データDpgを展開図座標系のデータである展開図点群データDpg1へ変換する。展開図座標系は、トンネル軸方向における位置とトンネル周方向における位置と基準面Swrからのずれ量とを各々異なる軸とする直交座標系である。展開図点群データDpg1は、トンネル軸方向における位置と、トンネル周方向における位置と、基準面Swrからのずれ量とで各々表される複数の3次元点のデータを含む。
データ変換部22は、3次元点の投影後の基準面Swr’上の位置を3次元点の基準面Swr上の位置へ変換し、投影前の基準面Swr’からのずれ量を基準面Swrからのずれ量とすることで、3次元点群データDpgを展開図点群データDpg1へ変換する。基準面Swrからのずれ量の大きさは3次元点における基準面Swrからの距離を表し、基準面Swrからのずれ量の極性は基準面Swrと直交する方向であって基準面Swrから見た方向を表す。
次に、データ変換部22は、展開図点群データDpg1に含まれる複数の3次元点のうちトンネル軸方向における位置とトンネル周方向における位置とが1つの格子点Pgの位置から予め定められた範囲内にある1つ以上の3次元点を1つの格子点Pgに割り当てる。データ変換部22は、割り当てた1つの格子点Pgのトンネル軸方向における位置とトンネル周方向における位置とを、要素点Peのトンネル軸方向における位置とトンネル周方向における位置に設定する。
また、データ変換部22は、1つの格子点Pgに割り当てられた1つ以上の3次元点の基準面Swrからのずれ量から、要素点Peの基準面Swrからのずれ量を決定する。例えば、図6に示すように、データ変換部22は、格子点Pgに最も近い3次元点の基準面Swrからのずれ量を、要素点Peの基準面Swrからのずれ量に決定することができる。格子点Pgに最も近い3次元点は、格子点Pgとの直線距離が最も短い3次元点である。
また、図7に示すように、データ変換部22は、格子点Pgから予め定められた範囲内にある3次元点の基準面Swrからのずれ量を平均して得られる値を、要素点Peの基準面Swrからのずれ量に決定することができる。図7に示す例では、格子点Pgから予め定められた範囲内にある格子点Pgにハッチングが付されている。図7に示すように、格子点Pgから予め定められた範囲内には7つの3次元点が存在するため、これらの7つの3次元点の基準面Swrからのずれ量の平均値が、要素点Peの基準面Swrからのずれ量に決定される。
また、図8に示すように、データ変換部22は、格子点Pgから予め定められた範囲内にある複数の3次元点を基準面Swrに直交する方向に並べた場合に、並び順の真ん中に位置する3次元点の値を、要素点Peの基準面Swrからのずれ量に決定することができる。図8に示す例では、格子点Pgから予め定められた範囲内にある格子点Pgにハッチングが付されている。図8に示すように、格子点Pgから予め定められた範囲内には7つの3次元点が存在し、7つの3次元点を基準面Swrに直交する方向に並べた場合に、並び順の4番目の位置になる3次元点の基準面Swrからのずれ量が、要素点Peの基準面Swrからのずれ量に決定される。
データ変換部22は、このように1つ以上の3次元点を1つの格子点Pgに割り当てて要素点Peを算出する処理を、格子点Pg毎に行うことで、展開図点群データDpg1を要素点群データDeへ変換する。なお、データ変換部22は、例えば、3次元点群データDpgから展開図点群データDpg1への変換を行わずに、3次元点群データDpgから要素点群データDeへ直接変換する構成であってもよい。
データ変換部22は、基準面Swr’上に複数の格子点Pgを配置することもできる。この場合、データ変換部22は、基準面Swr’上に1つ以上の3次元点を1つの格子点Pgに割り当てる処理を格子点Pg毎に行った後、展開図座標系のデータへ変換することで、要素点群データDeを生成する。
図4に戻って、処理部12の説明を続ける。処理部12の段差検出部23は、データ変換部22によって変換された要素点群データDeに対してガウシアン差分フィルタをかける処理であるガウシアン差分処理を行う。図9は、実施の形態1にかかるガウシアン差分処理を説明するための図である。なお、図9においてステップ関数を示す図以外の図は、y軸を省略している。
ガウシアン差分フィルタは、下記式(1)に示すガウス関数を用いた2つの異なる第1ガウシアンフィルタおよび第2ガウシアンフィルタの各々の出力間の差分を出力するフィルタである。下記式(1)において、「x」は、xy座標系におけるx軸の座標であり、「y」は、xy座標系におけるy軸の座標であり、「σ」は、パラメータである。
ここで、トンネル5の内壁面5aに生じる段差が下記式(2)に示すステップ関数s(x,y)で表されるとする。下記式(2)において、「a」は、ステップの大きさ、すなわち、段差の高さを示す。下記式(2)に示すステップ関数s(x,y)は、図9のように表される。また、下記式(2)において、x軸の座標が零である位置をエッジの位置としており、x軸の座標が零である位置が段差の位置である。x座標は、要素点Peにおけるトンネル軸方向の位置およびトンネル周方向の位置のうち一方の位置を示し、y座標は、要素点Peにおけるトンネル軸方向の位置およびトンネル周方向の位置のうち他方の位置を示す。以下においては、x座標がトンネル軸方向の位置であり、y座標がトンネル周方向の位置であるものとして説明する。
第1ガウシアンフィルタは、下記式(3)のように表される。下記式(3)において、「Sσ1(x,y)」は、xy座標系における任意の位置における第1ガウシアンフィルタの出力を示す。
上記式(3)において、「*」はコンボリューションであり、「σ1」は第1ガウシアンフィルタのパラメータであり、「u」は、注目点になる要素点Pe以外の要素点Peにおけるトンネル軸方向の位置である。また、上記式(3)において、「v」は、注目点になる要素点Pe以外の要素点Peにおけるトンネル周方向の位置であり、「a」は、上記式(2)に示すステップ関数s(x,y)のステップの大きさである。
第2ガウシアンフィルタは、下記式(4)のように表される。下記式(4)において「Sσ2(x,y)」は、xy座標系における任意の位置における第2ガウシアンフィルタの出力を示し、「σ2」は第2ガウシアンフィルタのパラメータである。第1ガウシアンフィルタと第2ガウシアンフィルタとはパラメータの値が互いに異なるため、図9に示すように、第1ガウシアンフィルタの特性と第2ガウシアンフィルタの特性とは互いに異なる。図9に示す例では、σ2>σ1である。また、図9において第1ガウシアンフィルタの特性を示す図は、横軸がx軸の座標を示し、縦軸が第1ガウシアンフィルタの出力を示す。また、図9において第2ガウシアンフィルタの特性を示す図は、横軸がx軸の座標を示し、縦軸が第2ガウシアンフィルタの出力を示す。
そして、ガウシアン差分フィルタは、下記式(5)のように表される。下記式(5)において、「H(x,y)」は、ガウシアン差分フィルタの出力を示す。下記式(5)および図9に示すように、ガウシアン差分フィルタの特性は、ステップ関数s(x,y)の演算結果が「a」に変化する位置、すなわちx=0である場合に、零交差する。段差位置は、上述したようにx=0の位置であるため、段差検出部23は、零交差が生じる位置を段差の位置として検出する。図9においてガウシアン差分フィルタの特性を示す図は、横軸がx軸の座標を示し、縦軸がガウシアン差分フィルタの出力を示す。
図4に示すように、段差検出部23は、段差位置検出部31と、段差高検出部32と、ベクトル生成部33とを備える。段差検出部23の段差位置検出部31は、要素点群データDeに対して上記式(5)で示されるガウシアン差分フィルタの演算を行う。具体的には、段差位置検出部31は、要素点群データDeに含まれる各要素点Peに対して、上記式(5)の演算を行う。そして、段差位置検出部31は、ガウシアン差分フィルタの出力に基づいて、零交差が生じる位置を段差の位置として決定する。
また、図9に示されるガウシアン差分フィルタの特性を示す曲線において零交差が生じる位置での傾き∇H(x,y)は、下記式(6)の演算によって求めることができる。下記式(6)において、零交差が生じる位置をx=0とした場合、下記式(7)のように表される。
そして、∇H(0,y)の絶対値は、下記式(8)のように表すことができる。下記式(8)へ∇H(0,y)の絶対値、「σ1」の値、および「σ2」の値を代入することによって、段差の高さである「a」を算出することができる。
図10は、実施の形態1にかかる段差位置検出部による段差の位置を検出する方法の一例を示す図である。図10では、ガウシアン差分フィルタをかけた後の4つの要素点Peの位置が黒丸で示されている。図10に示す要素点Peの位置は、トンネル軸方向の位置とトンネル周方向の位置と基準面Swrからのずれ量の差分とを各々異なる軸とする直交座標系の位置である。基準面Swrからのずれ量の差分は、上述したように、要素点Peに対して第1ガウシアンフィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量と、要素点Peに対して第2ガウシアンフィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量との差分である。
図10に示す「H(xn,yn)」、「H(xn+1,yn)」、「H(xn,yn+1)」、および「H(xn+1,yn+1)」は、4つの要素点Peに対してガウシアン差分フィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量の差分を示す。nは整数である。具体的には、「H(xn,yn)」は、トンネル軸方向の位置が「xn」であり且つトンネル周方向の位置が「yn」である要素点Pe(xn,yn)に対してガウシアン差分フィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量の差分である。「H(xn+1,yn)」は、トンネル軸方向の位置が「xn+1」であり且つトンネル周方向の位置が「yn」である要素点Pe(xn+1,yn)に対してガウシアン差分フィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量の差分である。
「H(xn,yn+1)」は、トンネル軸方向の位置が「xn」であり且つトンネル周方向の位置が「yn+1」である要素点Pe(xn,yn+1)に対してガウシアン差分フィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量の差分である。「H(xn+1,yn+1)」は、トンネル軸方向の位置が「xn+1」であり且つトンネル周方向の位置が「yn+1」である要素点Pe(xn+1,yn+1)に対してガウシアン差分フィルタをかけて得られる基準面Swrからのずれ量の差分である。「xn」と「xn+1」とは、トンネル軸方向の位置が隣接する2つ要素点Peの位置を示し、「yn」と「yn+1」とは、トンネル周方向の位置が隣接する2つ要素点Peの位置を示す。
段差位置検出部31は、ガウシアン差分フィルタをかけて得られる複数の要素点Peのうちトンネル軸方向の位置が隣接する2つの要素点Pe同士を結ぶ線が零交差する位置である零交差点を判定する。例えば、段差位置検出部31は、トンネル軸方向の位置が隣接する要素点Pe(xn,yn)と要素点Pe(xn+1,yn)とで基準面Swrからのずれ量の差分の極性が異なるか否かを判定する。すなわち、段差位置検出部31は、「H(xn,yn)」と「H(xn+1,yn)」とで極性が異なるか否かを判定する。段差位置検出部31は、要素点Pe(xn,yn)における「H(xn,yn)」と要素点Pe(xn+1,yn)における「H(xn+1,yn)」とで極性が異なると判定した場合、要素点Pe(xn,yn)と要素点Pe(xn+1,yn)を内分して零交差点を求める。例えば、下記式(9)の演算によって、トンネル軸方向において零交差が生じる位置である零交差点の位置xcを算出することができる。
また、段差位置検出部31は、ガウシアン差分フィルタをかけて得られる複数の要素点Peのうちトンネル周方向の位置が隣接する2つの要素点Pe同士を結ぶ線が零交差する位置である零交差点を判定する。例えば、段差位置検出部31は、トンネル周方向の位置が隣接する要素点Pe(xn,yn)と要素点Pe(xn,yn+1)とで基準面Swrからのずれ量の差分の極性が異なるか否かを判定する。すなわち、段差位置検出部31は、「H(xn,yn)」と「H(xn,yn+1)」とで極性が異なるか否かを判定する。段差位置検出部31は、要素点Pe(xn,yn)における「H(xn,yn)」と要素点Pe(xn,yn+1)における「H(xn,yn+1)」とで極性が異なると判定した場合、要素点Pe(xn,yn)と要素点Pe(xn,yn+1)を内分して零交差点を求める。例えば、下記式(10)の演算によって、トンネル周方向において零交差が生じる位置である零交差点の位置ycを算出することができる。
なお、段差位置検出部31は、基準面Swrからのずれ量の差分の極性が異なる2つの要素点Peのうち基準面Swrからのずれ量の差分の絶対値が小さい要素点Peの位置を段差の位置として検出することができる。このように、段差位置検出部31は、零交差点に近い位置を段差の位置として検出することもできる。
次に、図4に示す段差高検出部32について説明する。段差高検出部32は、内壁面5aに生じる段差の高さを検出する。図11は、実施の形態1にかかる段差高検出部による段差の高さを検出する方法の一例を示す図である。なお、図11では、図10と同様にガウシアン差分フィルタをかけた後の4つの要素点Peの位置が黒丸で示されている。
段差高検出部32は、ガウシアン差分フィルタの出力H(x,y)における零交差点での傾き∇H(x,y)を求める。段差高検出部32は、零交差点での傾き∇H(x,y)に基づいて、段差の高さを算出する。
図11に示す例では、段差高検出部32は、零交差点P(xc,yn)および零交差点P(xn+1,yc)での傾き∇H(x,y)を、零交差点P(xc,yn)と零交差点P(xn+1,yc)とを結んで得られる後述の段差ベクトル毎に算出する。例えば、段差高検出部32は、零交差点P(xc,yn)および零交差点P(xn+1,yc)での傾き∇H(x,y)として、要素点Pe(xn,yn)、要素点Pe(xn+1,yn)、および要素点Pe(xn+1,yn+1)とを含む面の零平面に対する傾きを求める。零平面は、ガウシアン差分フィルタの出力H(x,y)が零になる面である。
また、段差高検出部32は、零交差点P(xc,yn)および零交差点P(xn+1,yc)での傾き∇H(x,y)として、要素点Pe(xn,yn)、要素点Pe(xn+1,yn)、要素点Pe(xn+1,yn+1)、および要素点Pe(xn+1,yn+1)とを含む面の零平面に対する傾きを求めることもできる。
このように、段差高検出部32は、ガウシアン差分フィルタをかけた後の複数の要素点Peのうち隣接する3以上の要素点Peであって少なくとも1つの要素点Peと他の且つ残りの要素点Peとでガウシアン差分フィルタをかけて得られる値の極性が異なる3以上の要素点Peを含む面の傾きを傾き∇H(x,y)として、段差の高さを検出する。
また、段差高検出部32は、ガウシアン差分フィルタをかけて得られる値であるガウシアン差分フィルタの出力H(x,y)の極性が異なる2つの要素点Pe同士を結ぶ線の零平面に対する傾きを傾き∇H(x,y)として段差の高さを検出することができる。図11に示す例では、段差高検出部32は、零交差点P(xc,yn)での傾き∇H(x,y)として、要素点Pe(xn,yn)と要素点Pe(xn+1,yn)とを結ぶ線の零平面に対する傾きを傾き∇H(x,y)として求めることができる。
また、図11に示す例では、段差高検出部32は、零交差点P(xn+1,yc)での傾き∇H(x,y)として、要素点Pe(xn+1,yn)と要素点Pe(xn+1,yn+1)とを結ぶ線の零平面に対する傾きを傾き∇H(x,y)として求めることができる。また、段差高検出部32は、零交差点P(xc,yn+1)および零交差点P(xn+1,yc)での傾き∇H(x,y)として、要素点Pe(xn,yn)と要素点Pe(xn+1,yn)とを結ぶ線の零平面に対する傾きと要素点Pe(xn+1,yn)と要素点Pe(xn+1,yn+1)とを結ぶ線の零平面に対する傾きとの平均値を傾き∇H(x,y)として求めることもできる。
そして、段差高検出部32は、下記式(11)の演算によって、段差の高さ「a」を検出する。下記式(11)は、上記式(8)に基づいて求めることができる。
次に、ベクトル生成部33について説明する。ベクトル生成部33は、内壁面5aに生じる段差の高さを検出する。図12は、実施の形態1にかかるベクトル生成部による段差ベクトルを生成する方法の一例を示す図である。なお、図12では、図10と同様にガウシアン差分フィルタをかけた後の4つの要素点Peの位置が黒丸で示されている。
ベクトル生成部33は、隣接する4つの要素点Peを直線で結んで構成されるメッシュ内で、2以上の零交差点がある場合、零交差点を結ぶ線を段差ベクトルの単位ベクトルとして生成する。要素点Peがトンネル軸方向とトンネル周方向とに各々10ずつ配列されている場合、隣接する4つの要素点Peを直線で結んで構成されるメッシュの数は、81個である。ベクトル生成部33は、各メッシュに対して、2以上の零交差点がある場合に零交差点を結ぶ線を単位ベクトルとして生成する処理を行う。図12に示す例では、ベクトル生成部33は、零交差点P(xc,yn)と零交差点P(xn+1,yc)とを結ぶ線を単位ベクトルとして生成する。
ベクトル生成部33は、単位ベクトルを生成したメッシュに隣接するメッシュである隣接メッシュのうち零交差点を共有する隣接メッシュの単位ベクトルを、連続する単位ベクトルとして接続する。これにより、ベクトル生成部33は、連続する段差に対応する段差ベクトルを生成することができる。なお、ベクトル生成部33は、いずれの隣接メッシュにも単位ベクトルがない場合、一つの単位ベクトルを段差ベクトルとして扱う。
ベクトル生成部33は、段差ベクトルの節を減らすことで段差ベクトルを簡略化することもできる。例えば、ベクトル生成部33は、生成した段差ベクトルをDouglas−Peucker法などを用いて、段差ベクトルの節を減らすことができる。なお、段差ベクトルの節は、段差ベクトルを構成する連続する2つの単位ベクトルが為す角が0度以外の角度である場合に零交差点の位置に形成される。
段差検出部23は、検出した段差の位置を示す情報、検出した段差の高さを示す情報、および生成した段差ベクトルを示す情報を含む段差データを、記憶部11に記憶される変状データDdfに加えることによって、変状データDdfを更新する。また、段差検出部23は、段差の検出に用いられた3次元点群データDpgに含まれる時刻情報を段差データに追加することができる。
図4に戻って、処理部12の説明を続ける。処理部12の段差評価部24は、段差検出部23によって検出された段差の高さおよび段差の広がりに基づいて、段差の状態をレベルで表す状態レベルを判定する。段差評価部24は、判定した段差レベルを示す情報を段差データに追加することができる。
段差評価部24は、基準面Swr上での広がりを段差の広がりとして算出する。段差ベクトルの広がりは、例えば、段差ベクトルの長さ、および段差ベクトルが存在する2次元範囲の大きさの少なくとも一方から算出される。段差ベクトルが存在する2次元範囲の大きさは、例えば、段差ベクトルを囲むことができる最も小さい矩形の面積である。
段差評価部24は、段差の高さと段差の広がりとをパラメータとする演算式またはテーブルを用いて、段差の状態レベルを判定することができる。状態レベルは、例えば、段差の危険度または段差の劣化度を示す。段差評価部24は、例えば、段差検出部23によって生成された段差ベクトル毎に、第1レベル、第2レベル、および第3レベルからなる3段階のレベルから1つのレベルを判定することができる。第1レベルは、例えば、段差が危険な状態でないことを示すレベルである。第2レベルは、例えば、段差が危険な状態でないが注意を要する状態であることを示すレベルである。第3レベルは、例えば、段差が危険な状態であることを示すレベルである。
段差評価部24は、2段階のレベルから段差の状態レベルを判定することもでき、4段階以上のレベルから段差の状態レベルを判定することもできる。段差評価部24は、判定した段差の状態レベルを示す情報を段差データに追加することができる。この場合、段差データには、検出した段差の位置を示す情報、検出した段差の高さを示す情報、および生成した段差ベクトルを示す情報に加え、段差の状態レベルを示す情報が含まれる。
属性設定部25は、段差評価部24によって算出された段差ベクトルの長さおよび段差の広がりなどの情報を段差の属性情報として記憶部11に記憶されている段差データに追加する。また、属性設定部25は、入力部13によって入力される段差の属性情報を記憶部11に記憶されている段差データを追加する。入力部13によって入力される段差の属性情報は、例えば、識別番号およびコメントなどの段差属性を示す情報である。属性設定部25は、段差データに含まれる段差ベクトルの情報に段差の属性情報を関連付ける。入力部13は、例えば、キーボードなどである。このように、属性設定部25によって段差データに段差の属性情報を含めることができる。
座標変換部26は、記憶部11に記憶された変状データDdfの段差データに含まれる段差ベクトルの情報に基づいて、段差ベクトルを上述した展開図座標系の座標から上述した3次元直交座標系の座標へ変換する。座標変換部26は、変換した3次元直交座標系の段差ベクトルの座標を示す情報を3次元段差ベクトルデータとして記憶部11に記憶された段差データに追加することができる。これにより、段差データには、展開図座標系の段差ベクトルの情報と3次元直交座標系の段差ベクトルの情報とが含まれる。
また、座標変換部26は、記憶部11に記憶された変状データDdfと画像データDimgに基づいて、トンネル5の画像をトンネル5の内壁面5aの形状に沿うように座標変換して、トンネル5の3次元画像を生成することもできる。また、座標変換部26は、記憶部11に記憶された3次元点群データDpgに基づいて、トンネル5の内壁面5aの3次元点群を3次元座標系から展開図座標系へ変換し、変換した3次元点群を展開図平面へ投影し、投影した複数の点を2次元点群とする2次元点群データを記憶部11に記憶させることができる。
表示処理部27は、記憶部11に記憶された形状データDfおよび変状データDdfに基づき、基準面Swrで表される展開図に対して、段差ベクトルを示す図形と段差属性を示す情報とを付加した図である変状展開図を示す2次元画像を表示部14に表示させることができる。表示処理部27は、記憶部11に記憶された形状データDf、変状データDdf、および画像データDimgに基づいて、トンネル5の内壁面5aの撮像画像に変状展開図を示す画像を重畳した2次元画像を表示部14に表示させることができる。また、表示処理部27は、記憶部11に記憶した形状データDf、変状データDdf、および2次元点群データに基づいて、変状展開図に2次元点群を重畳した2次元画像を表示部14に表示させることもできる。
図13は、実施の形態1にかかる変状展開図の一例を示す図である。図13に示す変状展開図80は、トンネル5の内壁面5aの外形を展開した外形枠81と、段差ベクトル82a,82b,82c,82dと、属性情報83a,83b,83c,83dを含む。段差ベクトル82a,82b,82c,82dは、段差ベクトルを示す2次元の図形である。
属性情報83a,83b,83c,83dは、段差ベクトルの長さを示す情報である。属性情報83a,83b,83c,83dは、段差ベクトルの長さに代えてまたは加えて、入力部13から入力された識別番号およびコメントを含んでいてもよい。
また、表示処理部27は、記憶部11に記憶された3次元点群データDpgと3次元段差ベクトルデータとに基づいて、トンネル5の内壁面5aを表す3次元点群に、3次元の段差ベクトルを重畳した3次元画像を表示部14に表示させることができる。また、表示処理部27は、3次元点群データDpgと3次元段差ベクトルデータと画像データDimgに基づいて、トンネル5の内壁面5aを表す3次元点群に、トンネル5の3次元画像と3次元の段差ベクトルとを重畳した3次元画像を表示部14に表示させることもできる。
図14は、実施の形態1にかかるトンネルの内壁面を表す3次元点群に3次元の段差ベクトルを重畳した3次元画像の一例を示す図である。図14に示す3次元画像90は、トンネル5の内壁面5aを表す3次元点群91と、段差ベクトル92a,92b,92c,92dとを含む。段差ベクトル92a,92b,92c,92dは、段差ベクトルを示す3次元の図形である。なお、3次元画像90は、段差ベクトルの属性情報を含むこともできる。
また、表示処理部27は、段差検出部23によって検出された段差の情報を時刻情報に基づいて時系列に表示部14に表示させることができる。例えば、表示処理部27は、段差データに含まれる時刻情報に基づいて、各時刻で検出された段差ベクトルを検出時刻の順に切り替えながら、表示部14に表示させることができる。これにより、変状検出システム100の利用者は、段差の状態変化を把握することができる。例えば、表示処理部27は、各時刻で検出された段差ベクトル82a,82b,82c,82dを検出時刻の順に切り替えながら表示部14に表示させることができる。また、表示処理部27は、各時刻で検出された段差ベクトル92a,92b,92c,92dを検出時刻の順に切り替えながら表示部14に表示させることができる。
図15は、実施の形態1にかかる段差検出装置の処理部による処理手順の一例を示すフローチャートである。図15に示す処理は、処理部12によって繰り返し実行される。図15に示すように、段差検出装置2の処理部12は、段差検出タイミングになったか否かを判定する(ステップS10)。例えば、処理部12は、走行型計測装置1から3次元点群データDpgを取得した場合、または入力部13への特定操作があった場合に、段差検出タイミングになったと判定する。
処理部12は、段差検出タイミングになったと判定した場合(ステップS10:Yes)、段差検出処理を行う(ステップS11)。ステップS11の段差検出処理は、図16に示すステップS20からS23の処理であり、後で詳述する。次に、処理部12は、ステップS11で検出した段差の段差ベクトルを3次元直交座標系の段差ベクトルへ変換する座標変換処理を行う(ステップS12)。また、処理部12は、ステップS11で検出した段差の高さと段差の広がりとをパラメータとする演算式またはテーブルを用いて、段差の状態レベルを判定する段差評価処理を行う(ステップS13)。
処理部12は、ステップS13の処理が終了した場合、または段差検出タイミングになっていないと判定した場合(ステップS10:No)、属性入力があるか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14において、処理部12は、入力部13へ段差の属性情報が入力された場合に属性入力があると判定する。処理部12は、属性入力があると判定した場合(ステップS14:Yes)、入力された属性情報を記憶部11に記憶させる(ステップS15)。
処理部12は、ステップS15の処理が終了した場合、または属性入力がないと判定した場合(ステップS14:No)、表示要求があるか否かを判定する(ステップS16)。ステップS16において、処理部12は、例えば、入力部13への特定操作があった場合に、表示要求があると判定する。処理部12は、表示要求があると判定した場合(ステップS16:Yes)、表示要求の対象を表示部14に表示させる(ステップS17)。ステップS17において、処理部12は、表示要求が変状展開図の表示要求である場合、変状展開図を示す2次元画像を表示部14に表示させる。また、処理部12は、表示要求が時系列の表示要求である場合、段差検出部23によって検出された段差の情報を時刻情報に基づいて時系列に表示部14に表示させる。
処理部12は、ステップS17の処理が終了した場合、または表示要求がないと判定した場合(ステップS16:No)、図15に示す処理を終了する。
図16は、実施の形態1にかかる段差検出装置の処理部による段差検出処理の一例を示すフローチャートである。図16に示すように、段差検出装置2の処理部12は、3次元点群データDpgを要素点群データDeへ変換する(ステップS20)。次に、処理部12は、要素点群データDeをガウシアン差分フィルタにかけるガウシアン差分処理を行う(ステップS21)。処理部12は、ガウシアン差分フィルタの出力に基づいて、段差を検出する(ステップS22)。そして、処理部12は、検出した段差の情報を示す段差データを記憶部11に記憶して(ステップS23)、図16に示す処理を終了する。
図17は、実施の形態1にかかる段差検出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図17に示すように、段差検出装置2は、プロセッサ101と、メモリ102と、通信装置103と、入出力回路104と、表示装置105とを備えるコンピュータを含む。
プロセッサ101、メモリ102、通信装置103、入出力回路104、および表示装置105は、例えば、バス106によって互いにデータの送受信が可能である。通信部10は、通信装置103で実現される。記憶部11は、メモリ102によって実現される。入力部13は、入出力回路104によって実現される。表示部14は、表示装置105によって実現される。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、取得部21、データ変換部22、段差検出部23、段差評価部24、属性設定部25、座標変換部26、および表示処理部27の機能を実行する。プロセッサ101は、例えば、処理回路の一例であり、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processer)、およびシステムLSI(Large Scale Integration)のうち一つ以上を含む。
メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、およびEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)のうち一つ以上を含む。また、メモリ102は、コンピュータが読み取り可能なプログラムが記録された記録媒体を含む。かかる記録媒体は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルメモリ、光ディスク、コンパクトディスク、およびDVD(Digital Versatile Disc)のうち一つ以上を含む。なお、段差検出装置2は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を含んでいてもよい。
なお、上述した例では、段差検出装置2の段差検出部23によって段差が検出される構造物の表面は、トンネル5の内壁面5aであるが、段差検出装置2の段差検出部23は、トンネル5の内壁面5a以外に生じる段差を検出することができる。例えば、段差検出部23は、橋梁の表面、道路の表面、およびビルの表面を検出対象として、段差を検出することができる。また、段差検出部23は、3次元点群で表される構造物の表面が平面である場合、展開図座標系へ変換することなく、3次元点群データDpgを要素点群データDeへ変換することができる。
以上のように、実施の形態1にかかる変状検出システム100の段差検出装置2は、取得部21と、データ変換部22と、段差検出部23とを備える。取得部21はトンネル5の内壁面5aを3次元点群で表すデータである3次元点群データDpgとトンネル5の形状を示す形状データDfとを取得する。データ変換部22は、形状データDfに基づいてトンネル5の内壁面5aに対応する基準面Swrを設定し、3次元点群データDpgを、基準面Swrに行列状に配列される複数の点Pgから選択される1つの点Pgの位置と基準面Swrからのずれ量とで各々表される複数の要素点Peのデータを含む要素点群データDeへ変換する。段差検出部23は、要素点群データDeに含まれる複数の要素点Peに対してガウシアン差分フィルタをかけて得られる結果に基づいて、トンネル5の内壁面5aにおける段差の位置を検出する。トンネル5は、構造物の一例であり、トンネル5の内壁面5aは、構造物の表面の一例である。これにより、例えば、トンネル5の内壁面5aを表す3次元点群において段差による3次元点の疎密差が少ない場合であっても、トンネル5の内壁面5aに生じる段差の位置を検出することができる。
また、段差検出部23は、ガウシアン差分フィルタをかけた後の複数の要素点Peのうち互いに隣接し且つガウシアン差分フィルタをかけて得られる値の極性が異なる2つの要素点Pe同士を結ぶ線に零交差が生じる位置を特定し、特定した位置を段差の位置として検出する。これにより、ガウシアン差分フィルタから得られる結果から、トンネル5の内壁面5aに生じる段差の位置を精度よく検出することができる。
また、段差検出部23は、ガウシアン差分フィルタをかけた後の複数の要素点Peのうち隣接する3以上の要素点Peであって少なくとも1つの要素点Peと残りの要素点Peとでガウシアン差分フィルタをかけて得られる値の極性が異なる3以上の要素点Peを含む面の傾きに基づいて、段差の高さを検出する段差高検出部32を備える。これにより、ガウシアン差分フィルタから得られる結果から、段差の高さを検出することができる。
また、段差検出部23は、ガウシアン差分フィルタをかけて得られる結果から隣接する2つの要素点Pe同士を結ぶ線の零交差点の位置での傾きに基づいて段差の高さを検出する段差高検出部32を備える。これにより、ガウシアン差分フィルタから得られる結果から、段差の高さを精度よく検出することができる。
また、段差検出部23は、段差の位置を結んで得られるベクトルである段差ベクトルを生成するベクトル生成部33を備える。これにより、連続する段差を表す段差ベクトルを生成することができる。
また、段差検出装置2は、ベクトル生成部33で生成された段差ベクトルに基づいて段差の広がりを算出し、算出した段差の広がりと段差高検出部32によって検出された段差の高さとに基づいて、段差の状態をレベルで表す状態レベルを判定する段差評価部24を備える。これにより、段差の状態を容易に把握することができる。
また、段差検出装置2は、ベクトル生成部33によって生成された段差ベクトルを表示部14に表示させる表示処理部27を備える。これにより、段差の状態を容易に把握することができる。
また、表示処理部27は、トンネル5の展開図および撮像画像のうち少なくとも一つに段差ベクトル82a,82b,82c,82dを重畳した画像を表示部14に表示させる。これにより、例えば、段差の内壁面5a上の位置および段差の広がりなどを容易に把握することができる。
また、段差検出装置2は、段差ベクトル82a,82b,82c,82dを3次元座標系のデータへ変換する座標変換部26を備える。表示処理部27は、3次元座標系のデータに変換された段差ベクトル92a,92b,92c,92dを表示部14に表示させる。これにより、段差の状態を3次元で把握することができる。
また、表示処理部27は、トンネル5の内壁面5aを表す3次元点群の画像に3次元座標系のデータに変換された段差ベクトル92a,92b,92c,92dを重畳した画像を表示部14に表示させる。これにより、段差ベクトル92a,92b,92c,92dに対応する画像によりトンネル5の内壁面5aにおける段差の位置および段差の広がりなどを容易に把握することができる。
また、取得部21は、異なる時刻で各々トンネル5の内壁面5aを計測して得られた複数の3次元点群データDpgを取得する。複数の3次元点群データDpgは、トンネル5の内壁面5aを計測した時刻を示す時刻情報を含む。段差検出部23は、複数の3次元点群データDpgの各々から段差を検出し、検出した段差に時刻情報を関連付ける。表示処理部27は、段差検出部23によって検出された段差の情報を時刻情報に基づいて時系列に表示部14に表示させる。これにより、段差の状態を時系列に把握することができる。
実施の形態2.
実施の形態2にかかる変状検出システムは、段差検出装置が段差の経年変化を検出すると共に段差の分布などを算出する点で、実施の形態1にかかる変状検出システム100と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の変状検出システム100と異なる点を中心に説明する。
図18は、本発明の実施の形態2にかかる変状検出システムにおける段差検出装置の構成例を示す図である。図18に示すように、実施の形態2にかかる変状検出システムの段差検出装置2Aは、処理部12に代えて、処理部12Aを備える点で、段差検出装置2と異なる。処理部12Aは、比較部28と、統計処理部29とをさらに備える点で、処理部12と異なる。
比較部28は、走行型計測装置1において異なる時刻で各々計測されて得られる複数の3次元点群データDpgから各々段差検出部23によって検出される複数の段差データ同士を比較する。例えば、比較部28は、走行型計測装置1において異なる時刻で各々計測されて得られる複数の3次元点群データDpgから各々段差検出部23によって検出される段差の高さ同士を比較し、段差の高さの経年変化を判定する。また、比較部28は、異なる時刻で各々計測されて得られる複数の3次元点群データDpgから各々段差検出部23によって検出される段差の広がり同士を比較し、段差の広がりの経年変化を判定する。表示処理部27は、比較部28によって判定された段差の高さの経年変化と段差の広がりの経年変化とを示す情報を表示部14に表示させることができる。
比較部28は、例えば、前回計測された3次元点群データDpgを用いて検出される段差の高さと、今回計測された3次元点群データDpgを用いて検出される段差の高さとを比較し、高さが変化した段差を判定する。また、比較部28は、例えば、前回計測された3次元点群データDpgを用いて検出される段差の広がりと、今回計測された3次元点群データDpgを用いて検出される段差の広がりとを比較し、広がりが変化した段差を判定する。表示処理部27は、比較部28によって高さが変化したと判定された段差および比較部28によって広がりが変化したと判定された段差とを強調表示して表示部14に表示させることができる。
比較部28は、例えば、前回計測された3次元点群データDpgを用いて検出される段差の高さと、今回計測された3次元点群データDpgを用いて検出される段差の高さとの差分を算出することができる。また、比較部28は、例えば、前回計測された3次元点群データDpgを用いて検出される段差の広がりと、今回計測された3次元点群データDpgを用いて検出される段差の広がりとの差分を算出することができる。表示処理部27は、比較部28によって算出された段差の高さの差分を示す情報および段差の広がりの差分を示す情報を表示部14に表示させることができる。表示処理部27は、比較部28によって高さが変化したと判定された段差の高さの差分および比較部28によって広がりが変化したと判定された段差の広がりの差分とを強調表示して表示部14に表示させることもできる。
統計処理部29は、トンネル5の内壁面5aにおいて設定された領域毎に、段差ベクトルの数および長さの少なくとも1つを段差ベクトル情報として算出する統計処理を行う。例えば、統計処理部29は、トンネル5のスパンであるトンネルスパン毎に、トンネルスパンに含まれる段差ベクトルの数、トンネルスパンに含まれる段差ベクトルのトータルの長さ、トンネルスパンに含まれる段差ベクトルにおける段差の高さ、およびトンネルスパンに含まれる段差ベクトルの広がりなどを算出する。トンネルスパンに含まれる段差ベクトルにおける段差の高さは、例えば、複数の高さの段差から段差ベクトルが生成される場合、段差ベクトルの生成に用いられる複数の段差の高さの平均値、最大値、および最小値の少なくとも一つを含む。
また、統計処理部29は、トンネルスパン毎に、段差ベクトルの分布を算出することができる。段差ベクトルの分布とは、例えば、トンネルスパンがトンネル周方向に複数の領域に区分されたと仮定した場合において区分された各領域に存在する段差ベクトルの割合を意味する。
表示処理部27は、統計処理部29によって算出された結果を表示部14に表示させることができる。図19は、実施の形態2にかかる統計処理部によって算出された結果の一例を示す図である。図19に示すように、統計処理部29は、統計処理部29によって算出された各トンネルスパンの段差ベクトルの数を示すグラフを表示部14に表示させることができる。図19に示すグラフでは、2017年で発生した段差ベクトルの数、2018年で発生した段差ベクトルの数、および2019年で発生した段差ベクトルの数が、トンネルスパン毎に示されている。
また、統計処理部29は、各トンネルスパンの段差ベクトルの数に代えて、各トンネルスパンの段差ベクトルのトータルの長さを示すグラフ、または各トンネルスパンの段差ベクトルの分布を示すグラフなどを表示部14に表示させることができる。
図20は、実施の形態2にかかる段差検出装置の処理部による処理手順の一例を示すフローチャートである。図20のステップS30からS37の処理は、図15に示すステップS10からS17の処理と同じであるため、説明を省略する。図20に示す処理は、処理部12Aによって繰り返し実行される。
図20に示すように、段差検出装置2Aの処理部12Aは、比較処理タイミングになったか否かを判定する(ステップS38)。例えば、処理部12Aは、入力部13への特定操作があった場合に、比較処理タイミングになったと判定する。処理部12Aは、比較処理タイミングになったと判定した場合(ステップS38:Yes)、異なる時刻で各々計測されて得られる複数の3次元点群データDpgから各々段差検出部23によって検出される複数の段差データ同士を比較する比較処理を行い、比較処理の結果を表示部14に表示させる表示処理を行う(ステップS39)。
処理部12Aは、ステップS39の処理が終了した場合、または比較処理タイミングになっていないと判定した場合(ステップS38:No)、統計処理タイミングになったか否かを判定する(ステップS40)。例えば、処理部12Aは、入力部13への特定操作があった場合に、統計処理タイミングになったと判定する。処理部12Aは、統計処理タイミングになったと判定した場合(ステップS40:Yes)、段差ベクトルの数および長さの少なくとも1つをトンネル5の内壁面5aの設定された領域毎に段差ベクトル情報として算出する統計処理を行い、統計処理の結果を表示部14に表示させる表示処理を行う(ステップS41)。処理部12Aは、ステップS41の処理が終了した場合、または統計処理タイミングになっていないと判定した場合(ステップS40:No)、図20に示す処理を終了する。
実施の形態2にかかる段差検出装置2Aのハードウェア構成例は、図17に示す段差検出装置2のハードウェア構成と同じである。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、比較部28および統計処理部29の機能を実行することができる。
以上のように、実施の形態2にかかる変状検出システム100Aの段差検出装置2Aは、統計処理部29を備える。統計処理部29は、段差ベクトル82a,82b,82c,82dの数および長さの少なくとも1つをトンネル5の内壁面5aのトンネルスパン毎に段差ベクトル情報として算出する。トンネルスパンは、予め定められた領域の一例である。表示処理部27は、統計処理部29で算出された段差ベクトル情報をグラフ化して表示部14に表示させる。これにより、段差の状態をトンネルスパン毎に把握することができる。
また、段差検出装置2Aは、複数の3次元点群データDpgから各々段差検出部23によって検出される複数の段差のデータ同士を比較する比較部28を備える。これにより、例えば、段差の経年変化を把握することができる。
実施の形態3.
実施の形態3にかかる変状検出システムは、変状サーバおよびデータサーバなどが用いられる点で、実施の形態1にかかる変状検出システム100と異なる。以下においては、実施の形態1にかかる変状検出システム100と同様の構成については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1にかかる変状検出システム100と異なる構成について主に説明するものとする。
図21は、本発明の実施の形態3にかかる変状検出システムの第1の構成例を示す図である。図21に示す変状検出システム100Bは、走行型計測装置1と、段差検出装置2Bと、変状サーバ4とを備える。変状サーバ4は、通信部40と、記憶部41と、処理部42とを備える。処理部42は、走行型計測装置1からネットワーク3および通信部40を介して3次元点群データDpgおよび画像データDimgを取得し、取得した3次元点群データDpgおよび画像データDimgを記憶部41に記憶させる。記憶部41は、取得部21Bによって取得される3次元点群データDpgおよび画像データDimgの他、形状データDfと変状データDdfとを記憶する。
段差検出装置2Bは、取得部21を有する処理部12に代えて、取得部21Bを有する処理部12Bを備える。取得部21Bは、変状サーバ4から、3次元点群データDpg、画像データDimg、形状データDf、および変状データDdfをネットワーク3および通信部10を介して取得する点で、取得部21と異なる。また、取得部21Bは、段差検出部23および段差評価部24によって生成された段差データを通信部10からネットワーク3を介して変状サーバ4へ送信する。変状サーバ4は、段差検出装置2Bから取得した段差データを記憶部41に記憶された変状データDdfへ追加して、変状データDdfを更新する。
このように、図21に示す変状検出システム100Bでは、データ量が多い3次元点群データDpgなどが変状サーバ4に記憶される。これにより、実施の形態1にかかる段差検出装置2の記憶部11の記憶容量に比べ、段差検出装置2Bの記憶部11の記憶容量を低減することができる。
図22は、実施の形態3にかかる変状検出システムの第2の構成例を示す図である。図22に示す変状検出システム100Cは、走行型計測装置1と、段差検出装置2Cと、変状サーバ4Cとを備える。変状サーバ4Cは、通信部40と、記憶部41と、処理部42Cとを備える。処理部42Cは、データ変換部51を備えており、上述した処理部42の機能に加え、データ変換部51によって3次元点群データDpgを要素点群データDeへ変換する機能を有する。データ変換部51の機能は、図4に示すデータ変換部22の機能と同じである。
段差検出装置2Cは、取得部21Bを有する処理部12Bに代えて、取得部21Cを有する処理部12Cを備える。取得部21Cは、変状サーバ4Cから、3次元点群データDpgおよび形状データDfに代えて、要素点群データDeをネットワーク3および通信部10を介して取得する点で、取得部21Bと異なる。段差検出装置2Cは、段差検出装置2Bと同様に、生成した段差データを変状サーバ4Cへ送信する。
このように、図22に示す変状検出システム100Cでは、データ量が多い3次元点群データDpgなどが変状サーバ4Cに記憶され、3次元点群データDpgが要素点群データDeへ変状サーバ4Cによって変換される。これにより、段差検出装置2Cの記憶部11の記憶容量を低減することができる。また、要素点群データDeは、3次元点群データDpgよりもデータ容量が小さいことから、変状検出システム100Cは、変状検出システム100Bに比べて、段差検出装置2Cと変状サーバ4Cとの間で通信量を削減することができる。
図23は、実施の形態3にかかる変状検出システムの第3の構成例を示す図である。図23に示す変状検出システム100Dは、走行型計測装置1と、変状サーバ4Dと、端末装置6とを備える。変状サーバ4Dは、段差検出装置2の機能のうち表示機能および入力受付機能を除く機能が実行される。変状サーバ4Dは、データ変換部51と、段差検出部52と、段差評価部53と、属性設定部54と、座標変換部55とを備える処理部42Dを有する。
データ変換部51は、データ変換部22と同様の機能を有しており、記憶部41に記憶された形状データDfおよび3次元点群データDpgに基づいて、3次元点群データDpgを要素点群データDeへ変換する。段差検出部52は、段差検出部23と同様に、要素点群データDeから段差を検出し、検出した段差に関する情報を含む段差データを生成する。段差検出部52は、生成した段差データを変状データDdfへ追加する。
段差評価部53は、段差評価部24と同様に、段差の状態レベルを判定し、判定した段差レベルを示す情報を段差データに追加する。属性設定部54は、端末装置6からの要求に基づいて、属性設定部25と同様に、段差データに段差属性を示す情報を追加する。座標変換部55は、座標変換部26と同様に、記憶部41に記憶された2次元座標のデータを3次元座標のデータへ変換し、記憶部41に記憶された3次元座標のデータを2次元座標のデータへ変換する。座標変換部55は、変換したデータを記憶部41へ記憶させる。
端末装置6は、通信部60と、処理部61と、入力部62と、表示部63とを備える。処理部61は、要求処理部70と、表示処理部71と、出力処理部72とを備える。要求処理部70は、入力部62への特定操作があった場合、特定操作に対応するデータの要求を変状サーバ4Dへ通信部60を介して行う。要求処理部70は、通信部60を介して変状サーバ4Dから要求に応じたデータを取得する。
表示処理部71は、要求処理部70によって取得されたデータを表示部63に表示させる。表示処理部71によって表示されるデータは、表示処理部27によって表示されるデータと同じである。これにより、端末装置6は、段差検出装置2と同様のデータを表示部63に表示させることができる。また、出力処理部72は、入力部62によって入力された段差の属性情報を変状サーバ4Dへ通信部60から送信する。これにより、変状サーバ4Dによって段差の属性情報が段差データに追加される。
このように、変状検出システム100Dでは、変状サーバ4Dによって主な処理が行われることから、端末装置6の処理負荷を軽減することができる。
図24は、実施の形態3にかかる変状検出システムの第4の構成例を示す図である。図24に示す変状検出システム100Eは、走行型計測装置1と、変状サーバ4Eと、端末装置6と、データサーバ7を備える。変状検出システム100Eでは、形状データDf、3次元点群データDpg、画像データDimg、および変状データDdfが変状サーバ4Eではなくデータサーバ7に記憶される点で変状検出システム100Dと異なる。
変状サーバ4Eは、ネットワーク3を介してデータサーバ7との間で、形状データDf、3次元点群データDpg、画像データDimg、および変状データDdfの送受信を行う。このように、変状検出システム100Eは、変状サーバ4Eが処理を行うサーバとして用いられ、データサーバ7が変状サーバ4Eまたは端末装置6で用いられるデータを記憶するデータサーバとして用いられる。
以上のように、実施の形態3にかかる変状検出システム100B,100C,100D,100Eでは、実施の形態1にかかる段差検出装置2が有する複数の機能の一部または全部を複数の装置に分散させている。これにより、システム設計の自由度を高めることができる。また、同様に、実施の形態2にかかる段差検出装置2Aが有する比較部28および統計処理部29の各々の機能を変状サーバ4,4C,4D,4Eに設けることもできる。
実施の形態3にかかる段差検出装置2B,2Cおよび端末装置6の各々のハードウェア構成例は、図17に示す段差検出装置2のハードウェア構成と同じである。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、段差検出装置2B,2Cおよび端末装置6の各々の各機能を実行することができる。
また、実施の形態3にかかる変状サーバ4,4C,4D,4Eおよびデータサーバ7の各々のハードウェア構成例は、図17に示す段差検出装置2のハードウェア構成のうち表示装置105を除いた構成である。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、変状サーバ4,4C,4D,4Eおよびデータサーバ7の各々の各機能を実行することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。