JP6652995B2 - 複合トレーディングメカニズム - Google Patents

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Description

本開示は、概して複合トレーディングメカニズムに関する。
(優先権請求)
本出願は、2010年1月26日付で届出られた米国特許仮出願番号61/298,542に対して優先権を請求するものである。
一般に、オークションの入札段階(事前段階)において、入札者は、関心の対象である情報について多大な不確実性に直面する。かかる情報は、オークション出品物の価格査定および/または当該出品物に対する最適な入札戦略に影響することから、競売価格にも影響を及ぼす。
事前段階でのそのような不確実かつ関連性の深い情報の中には、一旦オークションが開始されると、事後の段階で(入札者が落札する可能性も含めて)実現を果たすものも含まれる。以下の段落では、説明の便宜上、一般に入札者を買い手と称し、売り手についてもこれに準ずる。
入札者は、たとえば、落札した商品または商品セットの査定価格は、複数品目オークションにおける総販売量や、他の誰がいくらで何を落札したかなどの情報によるという意味で、出品物の全体的な品目配分状況に関心をもっている。たとえば、有価証券オークションでは、発行総額が二次市場での流動性に影響しやすいことから、入札者は発行総額に関心をもつことがある。また、小売チェーン店の清算オークションや株式非公開化において、市場シェアの20%を保有している入札者は、落札者の市場シェアが、オークション成立後の小売市場の競争状況に影響を及ぼすことから、第二のシェア保有率が5%以下なのか、あるいは残りの80%のシェアが他の入札者によって均等に保有されているかなどという情報に関心がある。
また入札者は、応募超過のレベル、複数品目オークションにおける平均落札額、または特定のオークションにおける勝敗率の統計データなどの落札条件についても関心を抱いている。たとえば、米国国債のオークションが開催されると、米国財務省その他の公官庁は定期的に平均落札価格などの統計データを発表する。このような情報を入札者が予見できれば、オークションが応募超過になればなるほど、入札者はより積極的に入札を行うことができる。その上、あるいはそれに代えて、入札者は、共通価格または独立価格の品目の価格査定を調整することができる(即ち、特定の品目に対する入札者の入札価格は、少なくとも部分的には、他の入札者が提示する価格に依存する)。
さらに、たとえば、ある株式のオークションが1日に3回行われるような複数回のオークションを考えてみよう。当日株式を購入しようとする入札者は、最も流動性の高いオークションを選択することによって、落札価格に対する入札価格の影響を最小限に抑えるべく、どのオークションがより高い流動性をもつか(つまり、どれだけ多くの売り手が株式を売却するか)に関心をもつ場合がある。
オークションにおける入札価格が、目的の品目を落札できる可能性に影響するほか、多くのオークション方式では落札価格にも影響することを入札者は承知している。入札段階での不確実性のため、入札者は、落札するために必要以上の高額を支払ったり、あるいは支払額が当該商品の事後の価格査定を上回るのではないかという恐れから、入札価格をシェード(即ち、控えめな価格を提示)したり、入札する商品または商品セットの数量を減らしたり、入札に参加しなかったりすることがある。
共通価格オークション市場で過剰な支払を行うリスクを表す「勝者の呪い」という言葉がよく知られている。即ち、落札を前提としつつも、入札者は対象品目の査定価格を下方修正する必要がある。もし入札者が、(たとえば、複数品目オークションで)積極的な入札が落札価格を引き上げることを知っていると、事前に勝者の呪いを予見して控えめな入札価格を提示することになる。
これに関連するもうひとつの考え方として「暴露リスク」がある。たとえば、一組で相互補完的であると見なした商品を購入しようとする買い手が、個々の商品ごとにしか入札できず、一組ではなくその中の少数しか落札できないリスクがあるため、当初の査定価格よりずっと高い価格で商品セットを落札することになる場合がある。その結果、買い手は当該商品の入札をあきらめるか、入札価格を下げることになる。全般的な品目配分が入札者にとって不利な状況下で一組の商品を落札するリスクのせいで、控えめな価格を提示する入札者は、より広い意味で上に述べた暴露リスクを負っている。
一方、入札価格のシェーディングまたは入札参加者の減少は、取引量や収益が少なすぎるなどの適正値以下の品目配分状況をもたらす。
この要約は、下記の実施形態の説明で述べる概念を単純な形式で紹介するためのものであり、特許請求の主題の主な特徴または重要な特徴を特定することを目的としておらず、またかかる主題の請求範囲を決定するためのものでもない。
本開示の各種実施形態、つまりトレーディングの方法について述べる。実施形態の一つでは、少なくとも一人のトレーダーからの注文を受け、その注文は少なくとも一つの複合注文を含む。またもう一つの実施形態では、注文が格納される。もう一つの実施形態では、注文とトレーディングメカニズムに基づいて取引が生成される。さらにもう一つの実施形態では、取引についての報告がなされる。
本開示の各種実施形態、すなわちトレーディング装置について述べる。トレーディング装置は、注文レシーバーと、注文格納モジュールと、取引生成部と、報告モジュールとを含む。注文レシーバーは、少なくとも一人のトレーダーから注文を受信し、注文は、少なくとも一つの複合注文を含む。注文格納モジュールは、注文を格納する。取引生成部は、トレーディングメカニズムに基づいて取引を生成する。報告モジュールは、取引を報告する。
本開示は、概して複合トレーディングメカニズムについて述べる。
本発明技術の実施形態に基づくトレーディング方法を実施するためのシステム例を示すブロック図である。 本発明技術の実施形態に基づくトレーディング方法を実施するための別のシステム例を示すブロック図である。 本発明技術の実施形態に基づくトレーディング方法を実施するためのさらに別のシステム例を示すブロック図である。 本発明技術の実施形態に基づくトレーディング方法の一例を示すフローチャートである。 本発明技術の実施形態に基づくトレーディング方法の別の一例を示すフローチャートである。 本発明技術の実施形態に基づくトレーディングに用いられるコンピューターシステムの一例を示すブロック図である。 本発明技術の実施形態に基づくトレーディングメカニズムにおいて取引量を増大させる方法を示すフローチャートである。 本発明技術の実施形態に基づくオークションメカニズムにおいてオークションの収益を増大させる方法を示すフローチャートである。 本発明技術の実施形態に基づくトレーディングメカニズムにおいて収益を増大させる方法を示すフローチャートである。 トレーディングメカニズムの収益を増大させる方法を示したものである。 本発明技術の実施形態に基づくオークション装置を示したものである。 本発明技術の実施形態に基づく別のオークション装置を示したものである。 本発明技術の実施形態に基づくさらに別のオークション装置を示したものである。 本発明技術の実施形態に基づくトレーディング装置を示したものである。
本説明で解説する図面は、特記なき限り、正しい縮尺で描かれたと見なしてはならない。
本発明技術の実施形態について、その詳細を添付図面で実例を示しながら説明する。各技術は、各種実施形態と関連付けて説明されているが、本発明技術はこれらの実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明技術はその代替物、改造物および同等物をも包含し、これらは、添付の請求項に定義されたとおり、各種実施形態の趣旨および範囲に含まれることがある。
さらに、以下の詳細説明では、本発明技術を完全に理解するため、数々の具体的な詳細が説明されている。ただし本発明技術は、これらの具体的な詳細を伴わなくても実施可能である。また他の例では、本実施形態の態様を不必要に曖昧化することを避けるため、周知の方法、手順、構成要素およびサーキットについての説明を省略した。
以下の説明においては、特記なき限り、現行の詳細説明の全体を通じて、「受領」、「格納」、「生成」、「報告」、「管理」、「通信」、「送信」、「比較」、「執行」、「有効化」、「利用」などの用語は、コンピューターシステムまたは類似の電子機器の動作および過程について言及するものである。コンピューターシステムまたは類似の電子機器は、同システムのレジスターやメモリー内にある物理的(電子的)な量として表わされるデータを処理し、それをコンピューターシステムのメモリーやレジスター内にある物理量として同様に表わされるデータ、当該格納情報、送信信号またはディスプレイ装置に変換する。また本発明技術は、たとえば光コンピューターなど他のコンピューターシステムにも適している。
以下に、本文書で使用される用語の定義を示す。本文書は、トレーディングメカニズムと、それに含まれるオークションメカニズムのサブセットについて考察する。さらに、簡易設定とより高度な設定についても考慮する。
一般的定義
トレーディングメカニズムとは、一組の注文に応じて取引を生成するために利用されるメカニズムで、クリアリングメソッド(決済手続き法)およびその他の取引ルールを含む。
クリアリングメソッドとは、取引を生成するために利用されるアルゴリズムで、トレーディングフォーマット、目標ルール、タイブレーキングルール、および必要に応じてその他のルールを含む。
オークションまたはオークションメカニズムとは、トレーディングメカニズムのサブセットで、それに用いられるトレーディングフォーマットがオークションフォーマットである。ここで言うオークションとは、一種類以上の商品(即ち、一種類の商品のオークションと複数種類の商品のオークションがあり、後者は以後複数品目オークションという)について、典型的なオークション(入札者が商品を購入する)、逆オークション(入札者が商品を売却する)、およびダブルオークション(入札者が商品を購入、売却する)ものである。
トレーディングメカニズムに適用される技術の利用に関する本発明技術の実施形態の説明は、オークション(またはオークションメカニズム)にも適用できることを理解する必要がある。さらに、本文書に特記なき限り、「オークション」という語を用いた説明はトレーディングにも適用できることを理解する必要がある。そこで、たとえば、トレーディングメカニズムにおける「注文」、「入札者」、「取引の結果」(または「取引」および「取引での品目配分と代価授受」)は、オークションにおいては、特記なき限り、「入札」、「入札者」、「オークションの品目配分と代価授受」として適用でき、またその逆も同様である。本文書の大部分では、説明の便宜上、オークション用語が使用されている。
複合オークションまたは複合オークションメカニズムとは、複合入札の可能なオークション(またはオークションメカニズム)をいう。複合入札については、「構造」の項で定義する。
複合トレーディングメカニズムとは、複合注文の可能なトレーディングメカニズムをいう。複合注文については、「構造」の項で定義する。
商品、ユニット、物品、品目の各語は互いに入れ替えて使用でき、有形財と無形財の双方を指すことがある。しかも、本発明技術の実施形態は、単一の商品にも複数の商品にも適用できる。複数の商品は、複数の同一商品および/または複数の異種商品を含む場合がある。同一商品とは、実際に同一の品目(たとえば、特定の発行債券など)や、入札者がほとんど同一の代替物と見なす品目を指すことがある。
最後に、特定のアプリケーションに特定の実施形態を適用すべき、あるいは適用可能な選択肢が本文書全体にわたって説明されている。これらの選択肢は、往々にして競売人と同一であるオークションデザイナー(またはメカニズムデザイナー)に一任されるが、このことが、メカニズムデザインの選択に際して用語を互いに入れ替えて使用できる理由でもある。
簡易設定
簡易設定とは、一度限りの封印入札オークション(またはトレーディングメカニズム)に適用される設定であり、取引決済のためにオークション外の情報にアクセスする必要がなく、時間要素が導入されないものをいう(時間要素があれば、一人の入札者が別の時点で同一の札を入れるようなケースを見分けられる)。このような設定は、国債オークション、IPO、不動産競売、電波入札などのオークションで広く一般に利用されている。
許容入札セット:オークションにおいて入札者が提出できる入札の種類をいう。たとえば、複数品目オークションでは、入札者がある価格pで、ある数量qまで品目を購入したい旨を表明することだけが許容されている。もし入札者が、少なくともある最低数量qminを落札できなければその品目を購入しない旨を表明したとすると、最初に説明した無条件入札に加えて、最低数量限定入札が許容できる第二の入札となる。
簡易設定の用語を以下に説明するが、それらを充実させて以後の高度設定にも適用する。
オークションで提出される入札セット:入札者が提出するすべての入札をいう。それらの入札の一部は、無効であることが判明したり、入札者によって取り消されたり、入札内容が変更されることがある。
オークション入札セットまたは有効かつ未決済の入札セット:提出された入札のサブセット、即ち、オークションの決済段階で有効かつ未決済の入札をいう(入札者によって取り消しも修正もされない)。
入札者iによる個別入札の入札情報:通常入札内容として理解されている情報(どの品目にどの位の価格で、どのような条件で入札するか)および入札者の身元情報を含む情報。
入札者iの入札情報:オークションの決済段階で有効かつ未決済の入札であり、入札者が提出したすべての入札の総合的な入札情報を含む。
オークションの入札情報:参加する各入札者の入札情報を含む情報。
入札者iを除く入札情報:オークションの入札情報から入札者iに関する入札情報を除外して得られる情報。
オークションの売買品目セット:オークションの決済段階で、オークションにおいて売買される品目セットの候補の中から生成される(オークション開始時から知られている)。
オークションで売買される品目セットの候補:オークションにおいて売買される可能性のある品目セットをいう。本発明技術の実施形態の一部では、どの品目をどれだけの数量売買するかは、オークションの決済段階で(即ち、オークションの品目配分と代価授受の時点で)決断することができる。たとえば、競売主催者はオークションの当初の段階で、オークションで売却予定のシェアは100万と200万の間であること、あるいは債券を想定金額10億から20億の間で売却する意向であることを発表することにより、売却品目の候補を指定できる。決済段階では、競売主催者は提出された入札に基づいて売却総量を決定することができる。あるいは競売主催者は、2種の債券AとBをまとめて想定金額20億でオークションにかけることを発表することにより、オークションの売却品目セットの候補を指定し、その後オークションの決済時点で債券AとB(即ち、オークションの売却品目セット)の各数量を決定することができる。ダブルオークションにおいては、品目セットの候補と決済時点で生じる品目セットとの間に当然差が存在することに注意されたい。というのは、たとえば株式のダブルオークションにおける入札者は、株式が取引される(それによって候補セットが定義される)ことは承知しているが、同時に総取引高(オークションの売買品目セット)は、オークションで買い手と売り手が提出する入札内容によって異なることも理解している。
オークションの品目配分:X={X,・・・X}で表わされ、参加入札者iのそれぞれがXの品目のどのセットを売買したかを特定する。
オークションにおける代価授受:T={T,・・・T}で表わされ、参加入札者iのそれぞれが、どれほどの代価(通常は価格)を授受したかを特定する。
オークションにおける入札者iの品目配分と代価授受:それぞれXおよびTで表わされ、当該入札者が購入または売却した商品と、オークションで支払いまたは受領を行った代金を指す。
入札者iを除くオークションの品目配分と代価授受:それぞれX−XおよびT−Tで表わされ、入札者iによって売買された品目と授受された代金であるXおよびTに関する情報を除去した後のオークションとその品目配分および代価授受を指す。たとえば、買い手iが、商品A,B,CおよびDのオークションにおいて、品目AおよびBを価格5および6で落札したとすると、X=(XiA,XiB,XiC,XiD)=(1,1,0,0)とT=(5,6,0,0)が成り立つ。商品が売却されたか購入されたかによって、Xは正の値も負の値も取り得ることに注意されたい。故に、X=(XiA,XiB,XiC,XiD)=(1,−1,0,0)は、入札者iが商品Aを購入し、商品Bを売却したことを表す。同様に、特定品目の代価授受についても正数であるとは限らず(負の代価授受は、入札者がある物品を売却したことを表わす)、また入札者がある品目を「購入」した場合(たとえば、オークションに類似の設定で、コーディネーションを目的としてオークションメカニズムを適用する場合)でも、代価授受はゼロである必要がなく、また代価授受は金銭によらなくてもよい(オークションに参加する入札者は、特定の額に相当するポイントで「支払い」を行うこともできる)。さらに、XおよびTの指定方法は、どの方法が最も便利かによる。たとえば、有価証券オークションで100シェアを単価7ドルで落札した入札者jにとっては、X=100、T=7と記すことが好都合な場合もある。
域内オークション情報:競売主催者から入札者に送られるメッセージに含まれる情報や、システムを通じて入札者に何らかの方法で公開される情報を指す。
高度設定
高度設定:簡易設定に変数としての時間要素(たとえば、入札提出時期が問題になる場合)を加え、またはトレーディングメカニズムを外生変数および/またはプラットフォームに連結させることにより充実させたもの(ここで外生というのは、トレーディングメカニズムの外部で生成されることを意味する)。この設定用にあつらえた実施形態は、たとえば、株式売買のために一時間ごとにオークションを開催することによって、トレーディング用プラットフォームの作成に適用できる。
この設定は簡易設定よりも充実しているので、簡易設定の項で説明した発明の実施形態の機能はすべて高度設定にも依然として存在する(高度設定は、発明の潜在的実施形態の機能を追加したに過ぎない)。
この設定では、提出された入札その他の情報はすべてタイムスタンプが押され、それ故に時間tにおける現在の変数値と、オークション開始時から時間tまでの変数値の集合体として定義される時間tまでの変数の履歴(または、以下の場合時間tまでの履歴)とを区別する必要性が生じる。
時間tにおける域内オークション情報:オークション開催中の時間tにおいて、競売主催者から入札者に送られるメッセージに含まれる情報や、システムを通じて入札者に何らかの方法で公開される情報を指す。
時間tにおける域内オークション情報の履歴:オークション開始時から時間tまでの間の域内オークション情報の集合体を含む。
時間tにおける入札者iの域内オークション情報:時間tにおいて入札者iに送られる域内オークション情報を指す。
時間tまでの入札者iに関する域内オークション情報の履歴(または、域内オークション情報の時間tまでの履歴):入札者iに関する域内オークション情報の履歴を指す。
時間tにおける入札者iを除く域内オークション情報:時間tにおける入札者の域内オークション情報の集合体から時間tにおける入札者iの域内オークション情報を除外して得られる情報である。
入札者iを除外した域内オークション情報の時間tまでの履歴:入札者iについて時間tまでの域内オークション情報の履歴を、入札者全員に送られる時間tまでの域内オークション情報の履歴に含まれる情報から除外して求められる。
高度設定によるオークションメカニズムは、オークションの品目に対する入札が外生変数に依存することを可能とし、あるいは入札者が外生的プラットフォームで商品を直接売買することを可能とする。「外生」という語は、オークションの外部で生成されることを意味する。もう一度繰り返すと、時間tにおける外生変数の数値と、時間tまでの数値の履歴(オークション開始時から時間tまでの数値の集合体を含む)とを区別することが重要である。外生的トレーディングの場では、時間tにおける数値は、最も有利な価格とそれらの価格で取引可能な外生的トレーディングの数量を指すことができ、数値の履歴はやはり、オークション開始時から時間tまでの間の数値の集合体となる。
オークション入札に関して言えば、高度設定での入札者iの各入札は、簡易設定の場合に加えてタイムスタンプが追加される。入札者iの時間tにおける有効かつ未決済の入札セットは、オークション開始時より時間tまでに入札者iが提出し、時間tまで有効なすべての入札を含む。すべての入札者についてこれらの入札を統合すると、オークションにおける時間tにおける有効かつ未決済の入札セットが得られる。
入札者iの時間tまでの入札履歴:時間tまでに当該入札者によって提出されたすべての入札から成り、たとえば、依然有効でかつ未決済の入札および期限切れの入札を含む。
オークションにおける時間tまでの入札履歴:すべての入札者について個別の入札履歴を統合したもの。入札者iを除くオークションにおける時間tまでの入札履歴とは、当該入札者のオークション入札履歴を差し引いて求められる。
一部の実施形態において、本発明はトレーディングプラットフォームとして実行される。即ち、1日や1時間などの間隔をおいて一連のオークションが開催される。その場合、上記の履歴について言えば、オークション開始時とは現行のオークションの開始時をいうのではなく、現行のオークションが属する一連のシーケンスの最初のオークションの開始時をいう。シーケンスについては、オークションデザイナーに一任される。たとえば、任意の取引日において、オークションが午前9時から午後5時まで毎時行われるとすると、シーケンスは同じ日に開催される一連のオークションと定義するのが自然で、午後3時のオークションについて検討される履歴に関連性のある開始時間は、同日開催される最初のオークション開始時間の午前9時である。
オークションが実際にシーケンスで行われるとすると、時間tまでの取引履歴を定義することも有用である。この履歴は、一連のオークションの開始時から時間tまでに成立した取引(即ち、取引の成立したオークションの品目配分と代価授受) についての情報を指す。オークションの決済手続きには一定の時間Dを要するが、これは高速トレーディングアプリケーションでは問題となり得ることに注意されたい。もしそうであれば、時間tまでの取引履歴は、時間tに開始された決済手続きを通じて生じた取引も含むことになる(時間tにおける有効かつ未決済の入札を入力データとして取り入れたという意味で)。入札者に取引履歴を一切提供しないか、あるいは全部または一部を提供するかは、本発明の競売主催者の一存による。ただし実際には、取引報告書に関連して規制当局の要件が適用される場合がある。たとえば、一連のオークションが株式を対象に開催された場合、成立した取引についての価格と数量を報告する義務が規制要件に明記されている可能性がある。
次に、本発明技術の実施形態の概要について述べる。そこで、議論の焦点はトレーディングの装置と方法を提供する本発明技術の実施形態に向けられる。
概要
一般に、本発明技術の実施形態は、参加トレーダーのメッセージ欄に複合注文(即ち、許容可能な一組の注文)が含まれる複合トレーディングメカニズム用のシステムと方法を提供する。簡単に言えば、複合注文には、他のトレーダーの提出した注文の確定および/またはそのトレーダーに割り当てられた取引(数量と価格)以外の取引結果を知って初めて確認できる諸条件が含まれる。
たとえば複合注文では、すべてのトレーダーに対して、複数品目オークションで売却総量がある最小値を上回る場合に限り特定数量の品目を購入できるとか、落札した他のトレーダーが購入できる最大数量は一定限度以下であるよう指定するなどの特徴を条件付けることもできる。また複合注文は、他のトレーダーが落札に成功または失敗した入札によって形成される統計データに関する諸条件を含むこともでき、それによってトレーダーは、入札対象の一定範囲で最低限度の入札数がなかった場合に限って、特定品目を特定数量だけ入札できたり、または統一価格の複数品目オークションにおいて、落札できる可能性のある品目の平均値が、今回オークションに参加しなかったと仮定して最後に落札した注文数量が特定数量またはそれ以下だけ低い場合にのみ、特定の価格と数量を入札することが可能となる。
以下の説明では、本発明技術の構成要素の構造についてまず説明し、次に動作中の構成要素について説明する。
構造
図1Aおよび1Bは、下記に説明した簡易設定で用いられる本発明技術の一実施形態に係るトレーディング装置の例を示すブロック図である。図1Aについて言えば、本発明技術のトレーディング装置100は、注文受付部102、注文格納モジュール104、取引生成部106および報告モジュール108を含む。
一つの実施形態では、トレーディング装置100は有線または無線で、取引および/またはオークションの参加実体に接続される。たとえば、必ずしもこの例である必要はないが、トレーディング装置100は、競売主催者のシステム114に内蔵または外付で取り付けられる。また、もう一つの実施形態では、トレーディング装置100は、入札者のシステム110に有線または無線で接続される。さらに、もう一つの実施形態では、別の取引市場などの外生変数に接続されている。もう一つの実施形態では、入札者のシステム110が入札者から入札を受信する。
一つの実施形態では、注文受付部102は、少なくとも一人のトレーダーから注文を受信する。この「注文」には、少なくとも一つの複合注文が含まれる。注文受付部102は、一つの実施形態では、以下に挙げた項目から成る条件カテゴリーのグループから選択した条件を付けた複合注文を少なくとも一つ受信する。即ち、購入品目、売却品目、オークションの品目配分と代価授受、注文に含まれる情報から派生した統計データ、注文に含まれる少なくとも何らかの情報を用いる必要のある変数、無品目取引、少なくとも一つの複合注文に適した注文機能、および域内取引情報への影響。これらの条件カテゴリーは、決してすべての項目を網羅したものではないことに注意されたい。
さらに、注文受付部102は、もう一つの実施形態では、注文の価格インパクト、オークション規模、市場規模、流動性、応募超過、競争レベル、エクィティ(均衡性)、分散度、需給不均衡、安定性、市場の勢いから成る概念グループのうちの一つを表わす変数の条件を含む複合注文を少なくとも一つ受けとる。
注文格納モジュール104は、一つの実施形態では、注文を格納する。一つの実施形態では、注文格納モジュール104は、オークションに出品される品目、トレーダーの身元、トレーダーのパスワード、トレーダーの入札情報(提出された入札セットと、オークションの品目配分および数量から派生した有効かつ未決済の取引を含む)などを含み、必ずしもこれらに限定されない情報を格納する。
ここで図1Aと1Bについて述べると、一つの実施形態では、取引生成部106は、注文とトレーディングメカニズム146に基づいて取引を生成する。一つの実施形態では、取引生成部106は、コンパレーター120と取引執行装置122を含む。コンパレーター120は、格納された注文とトレーディングメカニズム146を比較する一方、取引執行装置122は、コンパレーター120の比較に基づいて取引を執行する。もう一つの実施形態では、取引生成部106は、(下記に説明するトレーディングメカニズム146の)決済方法148を実行する決済方法モジュール124を含む。
一つの実施形態では、報告モジュール108は、取引について報告する。取引の対象となる品目としては以下の例が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない:公共債、民間債、為替、手形、株式、投資信託証券、デリバティブ、オプション、クレジットデフォルトスワップ(CDS)、バリアンススワップ(VAR)、商品取引、電力、石油採掘権、排出権枠、排出権クレジット、不動産、オンライン広告権、特許、電波ライセンス、空港発着枠、データ容量、その他の有形、無形財。
さらに別の様々な実施形態では、トレーディング装置100は、以下のものを一つ以上含む:注文管理部158、域内オークション情報モジュール128、トレーディングメカニズム格納モジュール138、選択可能注文入力フォーム140、取引格納モジュール142、命令レシーバー144、およびトレーディングメカニズム146。
一つの実施形態では、注文管理部158は、注文に関連するイベントを管理する。一つの実施形態では、注文管理部158は、以下に挙げる項目から選択した注文関連イベントを管理するように構成されている:注文の提出、注文の修正、注文の取消し、諸注文から有効かつ未決済の注文セットの作成、注文の受領確認、注文の一部公表、および注文に応じて生成される取引。ただし、上記のイベントはすべてを網羅したものではないことに注意されたい。
再び図1Aおよび1Bについて述べると、一つの実施形態では、トレーディング装置100は域内取引情報モジュール128を含む。この域内取引情報モジュール128は、注文および/または取引に基づいて域内取引情報を報告し、また生成する。
さらに図1Aおよび1Bについて述べると、一つの実施形態では、トレーディング装置100はトレーディングメカニズム格納モジュール138を含む。このトレーディングメカニズム格納モジュール138は、トレーディングメカニズム146を格納する。一つの実施形態では、トレーディングメカニズム格納モジュール138は、取引生成部106によってアクセス可能である。
一つの実施形態では、トレーディング装置100は、少なくとも一人のトレーダー112が選択できる選択可能注文入力フォーム140を含む。さらに、一つの実施形態では、選択可能注文入力フォームは、以下に挙げた項目から成る選択可能注文入力フォームのグループから選択される:文章指定子、数学的条件指定子、関数指定子、領域指定子、および少なくとも一人のトレーダー112の取引目的。ただし、上記の選択可能注文入力フォームは、すべてを網羅したものでないことに注意されたい。
さらに、以下に挙げた項目を含むが、必ずしもこれらに限定されない選択可能入力フォームを用いて数式も選択可能である:一組の有限数オプションセットからの選択、文章の指定、数学的条件、関数または領域の指定。
さらに、下記の動作の項で詳細に説明するとおり、上記の非複合条件は次の項目を含むが、必ずしもこれらに限定されない:価格連動条件、経路指定条件、取引の影響を受けた条件、最低執行数量および一括条件。もう一つの実施形態では、少なくとも一つの複合注文のそれぞれは、少なくとも一つの複合条件と、以下の項目グループから選択した少なくとも一つの非複合条件とを含む:価格連動条件、経路指定条件、取引の影響を受けた条件、最低執行数量および一括条件。
一つの実施形態では、トレーディングメカニズム格納モジュール138は、オークションの運営に利用されるトレーディングメカニズム146と域内取引情報をすべて保存する。
一つの実施形態では、トレーディング装置100は、取引保存モジュール142を含む。この取引格納モジュール142は、取引関連情報を格納する。たとえば、必ずしもこの例である必要はないが、取引格納モジュールは、オークションの品目配分や数量、その他トレーディングメカニズム146から関連情報を得てオークションを決済する取引生成部106から派生する追加情報を格納する。
一つの実施形態では、トレーディング装置100は、命令レシーバー144を含む。この命令レシーバー144は、取引の報告に関する命令を受けとる。
一つの実施形態では、トレーディング装置100は、ダイナミックオークションの少なくとも1つのラウンドで運用される。一つの実施形態では、トレーディングメカニズム126は、決済方法148を含む。もう一つの実施形態では、トレーディングメカニズム146は、少なくとも一つの取引ルール156を含む。一つの実施形態では、当該トレーディングメカニズムに関連する少なくとも一つの取引ルール156は、以下のルールグループから選択される:注文に関するルール、換金に関するルール、品目候補セットに関するルール、および取引の決済時期に関するルール。これらのルールは、すべてを網羅したものではないことに留意されたい。さらに、一つの実施形態では、トレーディングメカニズムに関連する少なくとも一つの取引ルールは、以下に挙げるルールの一つでもよいが、必ずしもこれらに限定されない:上記の少なくとも一つの複合注文の許容条件を指定するパラメーター、上記の非複合注文の許容条件を指定するパラメーター、上記の注文を修正するためのパラメーター、上記の注文を提出するためのタイミング要件を指定するパラメーター、取引される品目候補セット、参加トレーダーの数とその身元情報、所定の取引供託金、当該取引生成部に当該格納済み注文と当該トレーディングメカニズムとを比較させる原因となるイベントを指定するパラメーター、当該取引生成部に当該取引を執行させる原因となるイベントを指定するパラメーター、上記取引の生成後、少なくとも一人の上記トレーダーと通信すべき当該取引に関する情報、他の取引市場との通信に関するルール、少なくとも一人の上記トレーダーと通信すべき域内取引情報、当該トレーディングメカニズムについて当該トレーダーとの通信を指定するパラメーター、当該注文の執行ごとに生じる金銭の授受、当該注文の少なくとも一つの特徴に基づいてその執行ごとに生じる金銭の授受、当該取引が生成された時点で生じる情報と当該取引を生成するために用いられる情報のいずれか一方に基づいて注文の執行ごとに生じる金銭の授受、および予算均衡ルール。
一つの実施形態では、決済方法148は、少なくとも以下のいずれか一つを含む:トレーディングフォーマット150、トレーディング目的152およびタイブレーカー154。
もう一つの実施形態では、トレーディング装置100で用いられるトレーディングフォーマット150は、以下のフォーマットを含むグループの中から選択される:第一価格オークションフォーマット、第二価格オークションフォーマット、第一価格組合せオークションフォーマット、第二価格組合せオークションフォーマット、差別価格オークションフォーマット、統一価格オークションフォーマット、差別価格組合せオークションフォーマット、統一価格組合せオークションフォーマット、および組合せオークションフォーマット。ただし、これらのトレーディングフォーマットはすべてを網羅したものでないことに留意されたい。
もう一つの実施形態では、トレーディング目的152を最適化するには、少なくとも一つの選択基準、つまり以下の項目から成るグループの中から選択した基準に基づいて生成される取引の効果について考慮する必要がある:競売主催者の収益、競売主催者のコスト、取引利益、取引高、競売主催者の収益の最大化、エクィティ、分散度および価格安定性。ただし、これらの選択基準はすべてを網羅したものでないことに留意されたい。
簡易設定による入札/発注
本発明技術の一つの実施形態は、オークションメカニズムの一つのクラスであり、その最も重要な特徴は、入札者が新しいタイプの複合入札を提出できる点にある。特に、本発明のオークションでは、少なくとも一人の入札者iが少なくとも一つの複合入札を提出することが可能で、その複合入札には、オークションの決済時に満たされるべき一つの複合条件が少なくとも一つ含まれている。
入札者iによる入札に含まれる条件は、以下に挙げる(a)、(b)の二つの特徴を備えていれば複合条件と呼ばれる:入札条件を確認することが、(a)次の(1)、(2)の場合には必ずしも可能ではない:(1)入札者iの品目配分と代価授受(X,T)、および(2)入札者iの固有情報しか知らない場合(ここで、「必ずしも」というのは、多数の入札者が多くの入札を提出しており、その条件を確認するのは、(a)に含まれる情報を得ただけでは不可能であることを意味する)、および(b)少なくとも時には、入札者iを除くオークションの品目配分と代価授受(X−X,T−T)に含まれる情報のうち少なくともその一部、および/またはオークションにおける入札内容の全部または一部に含まれるか、そこから派生する情報の利用を必要とする(ここで、「少なくとも時には」というのは、多数の入札者が多くの入札を提出しており、その条件を確認するには(b)の情報を少なくとも多少利用することが必要であることを意味する)。
以下に、まず複合条件の5つのカテゴリーから始めて、簡易設定の場合の許容できる入札について説明する。簡易設定では、さらに多くの複合条件カテゴリーが存在する可能性があることに注意されたい。これらの5つのカテゴリーの説明は、互いに排他的でも網羅的でもない。
複合条件の最初のカテゴリーは、オークションで売買される品目セットの条件である。これらの条件は、たとえば売買の対象となる品目セットの候補が事前に一組しか知られてないとすると、重要となってくる。その場合、a)たとえば株式オークションで10万株を落札した入札者は、その数字だけからは、全体でどれだけのシェアが売却されたかを知る由もないので、上のことが成り立ち、したがってb)当該入札者は、オークション全体の品目配分(この場合は、売却総量)に関する情報を見つけ出す必要があることからも上のことが成り立つ。第一カテゴリーの複合入札の例としては、総取引量が特定の数量以上であることや(その総量は、売却または購買のために提出される入札に依存するため事前には不明なので)、売却総量または発行総量の規制条件を含む有価証券オークションでの入札を条件としたダブルオークション入札が挙げられる(競売主催者によって事前に総量が決められていない限り)。
複合条件の第二のカテゴリーは、売買される品目セットの条件以外で、入札者iを除くオークションでの品目配分および/または代価授受の条件である。
第二の複合カテゴリーの例としては、以下のものが挙げられる。異種品目のオークションにおいて、入札者iは、商品Bが他の特定入札者jによって落札されないことを条件に、商品Aを5ドルで入札するとする。この入札は、上記の条件a)、b)の両方を満たす。つまり、もし入札者iがたまたま入札を行わず、商品Aと共に商品Bを落札できなかったと仮定すると、入札者iにとっては、自分自身が落札した品目(Xに関する情報)について知っているだけでは、入札者jが商品Bを落札したかどうかを確認するのは不可能であるが、彼自身を除く品目配分X−X(入札者i以外に誰が商品Bを落札したかを特定する)に関する情報を利用すればそれは可能である。条件a)およびb)には、「必ずしも」と「少なくとも時には」という語が用いられているが、それは入札者iがたまたま入札を行って商品Bを落札した場合、彼は確かに入札者jが商品Bを落札できなかったことを知ることができ、したがって、彼が落札した商品Xについての知識に基づいて商品Aの条件を確認(この場合、条件が満たされたことを確認)することができるが、他の入札者が落札した商品X−Xについての知識がないので、条件a)とb)の両方を満たすことはできない。
複合条件の第三のカテゴリーは、入札者iを除く入札情報に含まれる情報から派生する統計データの条件であり(落札に成功、失敗した場合の両方があり得る)、その場合、提出された入札セットに含まれる少なくとも何らかの情報について知っているだけで統計データが形成できる。
第三のカテゴリーの例としては、入札者iが商品Aを入札し、商品Aに対して4ドル以上の入札価格を提示した入札者が少なくとも3人いなければならない旨の条件を含めるような場合が挙げられる。この入札は(X,T)について知るだけでは確認できないが、入札者iを除く入札情報に含まれる情報によって形成される単純な統計データを用いて確認できる。
複合条件の第四のカテゴリーは、入札者iを除く入札情報に含まれる少なくとも何らかの情報を利用してのみ計算が可能な変数の条件である(その場合、計算にはたとえば、入札者iの入札の一部または全部を除外した現行オークションで落札に成功、失敗した場合の両方の入札セットとして別な仮想オークションを利用し、それを仮想オークションの入札セットとして解決する必要があるかも知れない)。
第四のカテゴリーの入札の例は以下のような場合である。株式の統一価格オークションに参加した上記の入札者jが、落札する株の価格インパクトが仮に一株当りの平均で最高0.0001ドルであることを条件に、単価7ドル以下で1,000株購入する意向を示したとする(あるいは、購入する株式の各シェアに0.0001ドルの上限を設けてもよい)。ここで、入札者jが条件とする変数は、自分の入札の価格インパクトであり、これは、オークションの流動性と規模に関連している。本文書の動作の項では、価格インパクトの計算方法および価格インパクトに対する制約の異なるバージョンがどのようなものかが説明されている。ただし、このような制約に関する基本的な考え方は、株式を落札した入札者iが、入札に参加しなかった時と比べて、オークションの決済時点でどの程度価格を変動させるかを把握することにある。価格インパクトの計算には、入札者iを除くオークション入札セットでの入札(オークションにおいて落札に成功した入札と失敗した入札の両方)を利用することが必要であると共に、これらの入札を(入札者iが参加しない)他の仮想オークションを解決するために利用することが必要なので、この入札は上記の第三のカテゴリーに分類される。
価格インパクトを条件とするほか、入札者はオークションの規模、市場規模、需給の不均衡(たとえば、買い手より売り手の方がずっと多いなど)、応募超過、競争、流動性、オークションの品目配分の分散度(即ち、複数品目オークションで少数の入札者が全商品の大部分を落札したり、あるいは多数の「小口」落札者が出る)、またはエクィティ(たとえば、特定の入札者グループが多くの品目を落札する場合を捉えるが、分散度と異なるのは、この場合落札者の身元情報が重要な点)などを含み、必ずしもこれらに限定されない変数を条件とすることができる。これらの変数の具体的な定義や、入札者がこれらの変数のどの条件(もしあるとすれば)を提出することが許されるかの選択は、オークション(またはメカニズム)のデザイナーに一任される。
もう一つ本発明に適合するのは、第五カテゴリーの複合入札である。これらの入札は無品目複合入札である。即ち、第一から第四までのカテゴリーの条件を含むことができるが、それらのいずれのカテゴリーとも異なる。というのは、入札者は、オークションのどの品目にも入札しないで、有効な条件に基づいて代価授受(または数量)に値をつける。たとえば、上の最初の例で入札者kが、もし商品Cが特定の入札者hによって落札されなければ1ドルを支払うとする(これは第二カテゴリーの複合入札に似ているが、たとえば商品Aを対象とした入札に条件が付けられていない点が異なる)。第五カテゴリーの複合入札は、オークションに類似の設定で特に有用な可能性があり、そのような場では、本発明が意思決定のコーディネーションに利用される。
本発明のオークションのいくつかの実施形態では、入札者は複数の複合条件を付けて入札を提出してもよい。特に上記のカテゴリーのうち、同一のカテゴリーに属する条件または異なるカテゴリーに属する条件、またはその両方の条件を組み合わせることができる。このようにして、有価証券のオークションにおける入札者は、株式を一株当たり70ドル以下で1,000ドルまで購入する意向を示すが、ただし一株当たりの価格インパクトが0.0001ドルであること、また総発行株数が一定数以上であることを条件とすることができる。入札者の入札は、複合入札でも非複合入札でも、最小執行規模などのオークションで標準的に用いられる条件を含むことができる。即ち、先の例の入札者jは、そのオークションで少なくとも600株を購入する意向であるという条件を付けることもできる。いくつかの実施形態では、複合入札と従来技術による条件付入札を組み合わせてもよい。たとえば、入札者iは、落札するセットXに、商品AとBをまとめて購入する意向であり、他の特定の入札者が商品Cを落札しない場合に限って購入するという条件を付けることができる。
本発明のいくつかの実施形態における入札者は、複数の複合入札を提出することができる(各複合入札には複合条件が付いている)。複合入札とは、少なくとも一つの複合条件を含む入札であることを再確認されたい(複数の複合条件と任意の数の従来技術の条件を含んでもよい)。
本発明技術のいくつかの実施形態では、従来技術によるダイナミックオークションの任意のラウンドでも有効な入札として、上記の複合入札を提出してもよい。かかるダイナミックオークションには、少なくとも一つのラウンドで現在および/または将来のラウンドでの入札が手動および/自動で調整、入力できるような入札が含まれるが、必ずしもこれに限定されない。たとえば、本発明のオークションは、一つまたは複数のラウンドで実行でき、その結果(または結果から派生する情報)については、最終ラウンドの優先的なダイナミックオークションが行われるまで、品目配分を実行することなく(商品が売買されないという意味で)当該ラウンドで入札者に通信できる。
実施形態のいくつかでは、許容入札セットは複合入札を含んでもよいが、従来技術でよく用いられる他の入札も含めることができる。そのような他の入札は、無条件および/または一つ以上の非複合条件付きである。
高度設定による入札/発注
図1Cは、本発明技術の実施形態によるトレーディング装置を、下記で説明する高度設定で用いる例を示すブロック図である。
一つの実施形態では、トレーディング装置100は外部通信モジュール130を含む。外部通信モジュール130は、外部取引市場および/またはデータベースとコミュケーションを行う。外部取引市場とは、トレーディング装置100を含む取引市場以外の取引市場である。
一つの実施形態では、外部通信モジュール130は、注文経路指定モジュール132および/または外生情報アクセス部134を含む。注文経路指定モジュール132は、注文の一部を外部取引市場に送る。ここで「一部」とは、全注文より少ない注文と、注文全部を指すことに留意されたい。外生情報アクセス部134は、外部取引市場および/またはデータベースからの情報にアクセスする。
高度設定による本発明の実施形態では、簡易設定の場合に比べて、入札者は別のタイプの入札を多数提出することができる。これら別のタイプの入札は、以下に説明する価格連動入札、経路指定入札、取引の影響を受けた入札のほか、高度設定において、簡易設定の複合入札からどのように繰り越して充実させるかについての詳細な説明が含まれる。
まず最初に、取引の概念、即ち、価格連動注文について述べるのが有用である。注文の価格連動を行うことは、変動の激しい連続市場(たとえば、ミリ秒単位の執行と高頻度取引戦略が通常用いられる米国の株式市場)において有利である。具体的に言うと、入札者は、特定数量の株式を現在の中間値から何セント(最小価格変動幅)を引いた値に等しい価格で購入する意向を示すことによって、ある株式の最高入札価格(または言い値、または中間値)を示す変数に連動させて発注することができる。価格連動注文の価格は、トレーダーが絶えず監視する必要もなく、その注文を連動させた変数に連続的に調節される(でなければ、トレーダーは価格連動注文を絶え間なく反復するため、発注と取消しを繰り返さねばならず、市場が急速に変動するような場合には機会を失う)。次に、本発明の一つの特徴として、価格連動のより一般的なバージョンについて説明する。
本発明のいくつかの実施形態では、入札者は(複合入札と同じように)条件付の価格連動入札を提出することができ、価格連動入札に含まれる条件によって異なるカテゴリーを区別することが有用である。
価格連動入札の第一カテゴリーは、オークションの決済時の条件を含む。たとえば、本発明のオークションがニューヨーク証券市場(NYSE)の特定の上場株式を対象に行われた場合、入札者はオークションが5分以内または午後3時までに決済する場合に限り購入したい旨を指定して、単価30ドル、10,000株の注文をオークションの決済時の条件とすることができる。あるいは、入札者は特定の単価と数量の入札を午後4時以降は取り消す旨を指定することもできる。
価格連動入札の第二カテゴリーは、少なくとも一つの外生変数、即ち、オークションの決済時における当該変数の実現を条件とすることを含む。先の例の入札者は、決済時の株式のNBBO(National Best Bid and Offer price:全米市場最良価格)の中間値、当該中間値の特定区間内の値動き、決済時までの3分間における乱高下の出現のほか、コールオプション(買付選択権)の価格や当該コールオプションの決済時における未決済の最高価格入札の出来高など、他の外生変数によって形成される統計データを入札の条件とすることができる。
上記の第一および第二のカテゴリーの条件を伴う入札の例としては、入札者が、特定の株の株価(または何らかの外生変数)が午後3時までに特定の区間内から逸脱しない限り、株式を購入する旨を指定する場合がある。
連動入札の第三のカテゴリーは、競売主催者が送信する域内オークション情報を含む。たとえば、競売主催者が送信する域内オークションメッセージに、ある固定サイズの注文に適用可能な価格帯が含まれるならば、入札者は、かかる価格帯が指定の区間内にあることを条件に特定の数量の株式を購入すべく入札を提出することができる。あるいは、域内オークション情報に入札数に関する情報や、最近の3分間に提出された入札総量が含まれるならば、入札者は、かかる入札数や数量があるしきい値以上であることを条件に入札することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、入札者は、外生変数の条件の組合せおよび/またはそれらの条件と複合入札に関連してこれまで説明した他の条件の組合せを含むことができる。一つの実施形態では、これらの外生変数の条件の組合せと他の条件との組合せには、少なくとも一つの複合条件が含まれる。
本発明技術の実施形態では、入札者は、経路指定入札、即ち、少なくとも入札の一部が他の(外部の)取引市場に送られて執行し得るか、あるいは執行される必要のある入札を提出することが許されている。たとえば、オークションの入札者は、入札の価格インパクトが特定の額以下であることを条件に、また経路指定した分を指値(または成り行き)で、特定の証券市場または一群の取引市場に(おそらく注文転送システムを使って)送信する旨を指定したうえ、株式を一株当り5ドル以下で10万株入札し、オークションで落札した株式の一株ごとに特定株数の他の株式を購入することができる。
もう一つ本発明のオークションのフォーマットに適合するのは、取引の影響を受けた入札(trade−inspired bid)、即ち、次の特徴を持つ入札である:a)トレーディングメカニズム用に従来技術に存在する注文方式の自然類似物(証券取引所その他の取引市場に提出されるという意味で)であり、b)単純に価格と数量から成っているわけではない(その他の仕様も含む)。自然類似物とは、注文を定義付ける特徴が入札に活かされるということである。たとえば、「即時約定もしくは取消し」(IOC)注文が市場に送られ、取引の執行がないと注文が即時取消しとなる。入札類似物というのは、即時入札を行ってその結果オークションの決済時に落札しなければ、即時に取消しとなる入札である。本発明のいくつかの実施形態では、入札者はそこで「取消しまで有効/付け合わせ」(good−till−cancel/crossing)注文、逆指値注文(ストップオーダー)および上記a)とb)の条件を満たす他の標準注文を提出することができる。入札者は、他の変数次第では(たとえば、一部の株式ではNBBOの中間値によっては)入札の有効期限が切れるよう指定し、公開部分と非公開部分を指定し(予約注文の場合のように)、入札の非公開部分に複合条件を含めることができる。
本章の高度設定の項では、簡易設定における定義と比べて、複合入札がより充実する。特に、入札者iがオークションの時間tに入札を提出するとして、決済プロセスが時間tに開始される(したがって、時間tの時点では有効かつ未決済の入札に基づく)と共に、オークションの品目配分と代価授受(X,T)(ここで(X,T)は入札者iの品目配分と代価授受を示す)が生成されるようなオークションで決済されて初めて満たされるような条件が付いていた場合を想定してみる。かかる入札に含まれる条件は、以下の二つの特徴を備えていれば、複合条件と呼ばれる。即ち、条件の確認が、a)次の1−6を知っただけでは必ずしも可能ではない:1.入札者iの品目配分と代価授受(X,T)、2.入札者iの入札履歴、3.決済プロセス開始時間t、4.時間tまでの外生変数、5.時間tまでの取引履歴から(X,T)に関する情報を差し引いた情報(「時間tまで」とは時間tの直前までをいう)、6.時間tまでの入札者iに関する域内オークション情報の履歴から品目配分と代価授受の情報(X,T)を差し引いた情報(上記の「必ずしも」というのは、多数の入札者が多くの入札を提出しており、その条件を確認するのは、(a)に含まれる情報を得ただけでは不可能であることを意味する)、およびb)少なくとも時には、入札者iを除くオークションの品目配分と代価授受(X−X,T−T)に含まれる情報のうち少なくともその一部、および/または時間tまでのオークション情報の全部または一部に含まれるか、そこから派生する情報の利用を必要とする(ここで、「少なくとも時には」というのは、多数の入札者が多くの入札を提出しており、その条件を確認するには(b)の情報を少なくとも多少利用することが必要であることを意味する)。
上記の条件a)およびb)は、簡易設定の場合の類似条件を模倣しているものの、それらとはわずかに異なる。簡単に言うと、複合入札では、入札者iは自分に得られる情報だけに依存したのでは見出せないような何かを入札の条件とすることができる。上記の1.と2.は、簡易設定の場合とほとんど同じであるが、ただ入札者iは、簡易設定の場合には有効かつ未決済の入札を一件だけ行っていたのに対して、この場合は入札履歴を積み重ねている。
決済時間tに関する情報3および外生変数4は条件a)に含まれる。というのは、そうでなければ、時間tの値に連動させた入札または時間tまでの外生変数の履歴は、複合と見なされ、これは本来の意図ではないからである。同様に、時間tまでの取引履歴も含まれる。というのは、そうでなければ、アルゴリズム取引戦略は、入札者が取引履歴に依存して入札を提出すると仮定すると、複合入札と見なされるからで、これも本来の意図ではない。時間tにおける取引は明らかに除外されているので、これらの入札は連動入札ではないことに注意されたい。時間tにおける取引情報を除外する理由は、品目配分と代価授受(X,T)がすべて含まれているからで、これによって、特に(X−X,T−T)が含まれることになる。最後に、域内オークション情報が5に含まれる。というのは、そうでなければ、上記のように域内オークション情報に基づいてオークション情報またはアルゴリズム注文に連動させた注文は複合となり、これも本来の意図ではないからである。しかも、メカニズムの一般的な設定では、時間tに送信される域内オークション情報が域内オークションメカニズムに含まれることを防止することができないので、時間tにおける品目配分と代価授受(X,T)に関する情報を差し引くことが必要となる(実際には、決済プロセスが事実上一瞬で終了するならば、アプリケーションの目的で(X,T)を含めるのは可能である)。
複合入札の定義についてまず一般的に言えることは、選択された特定のメカニズムによって、より正確には、時間tにおいて入札者iが利用可能な域内オークション情報の履歴によって、入札が複合かどうかが決まるということである。入札者iが単価5ドルで1万シェアを入札するが、少なくともほかに3人の入札者が単価4.5ドル以上で1万シェアを入札することを条件にしている場合を考えてみる。このオークションでは、封印入札のみが許容されているとすると、入札は複合となる。提出されたすべての入札が直ちに公表されると、入札は非複合である。というのは、入札者iが利用できる時間tまでの域内オークションメッセージの履歴は、提出されたすべての入札に関する情報を含み、よって入札者iの条件を確認できるからである。入札を公表するかしないかの選択を入札者ができるとすれば、上記の入札も複合となる。というのは、多数の入札者と入札が存在し、上記のa)が成り立つからである(即ち、単価4.5ドル以上で1万シェアを入札する入札者のうち、多くて二人しか入札公表を選択しなかった場合はいつでも)。
簡易設定からの複合入札のカテゴリーは繰り越される。これは、第一と第二のカテゴリー(売買された品目の条件と品目配分および代価授受によってそれぞれ定義される)については明らかである。
複合入札の第三のカテゴリー(入札者iの入札以外の入札に含まれる情報を条件とする)では、入札者はたとえば、直近の3分間に単価49ドルで少なくとも一定数量の入札が行われることを条件に、単価50ドルで購入する旨の入札を提出することができる。この例では、単に未決済の入札だけではなく他の入札者の入札履歴も考慮に入れることに注意されたい(簡易設定で挙げた例のように、あたかも商品Aの単価5ドルでの入札が、単価4.5ドル以上で少なくとも3つ以上の入札が商品Aに対してあることを条件にしたように)。
複合入札の第四カテゴリーも、簡易設定に比べて高度設定の場合にはより大きな自由度が得られる。入札者はたとえば、単にこの入札のもつ価格インパクトだけでなく、仮に直近の5分間の最高値または最低値で、入札の価格インパクトの大きさと比較して価格インパクトの変化がどのくらいかを条件に、特定のシェアを入札することができる。もう一度繰り返すが、この例は履歴を考慮に入れたものである。
第五カテゴリーは、第一から第四のいずれのカテゴリーとも同じく、条件付の入札であるが、(簡易設定の項で説明したとおり)品目を直接入札しないので、四つの各カテゴリーの入札が繰り越されることを前提にすれば、当然第五カテゴリーも繰り越される。
高度設定の場合、複合入札のカテゴリーをさらに二つ説明するのが有用である。ただし、これらの追加カテゴリーの存否に係らず、カテゴリー群として排他的でも網羅的でもないことに注意されたい(簡易設定の場合に酷似している)。また、高度設定では、入札者は簡易設定の項で既に説明した変数をすべて条件とする可能性があり、しかも時間要素を追加したことで、それを行うのに一層の柔軟性が得られることに注意されたい。また時間要素を追加したことにより、入札者は、安定性や市場の勢いなどの変数と条件とすることができる。ここで安定性とは、価格の大幅な変動の見込みがないことをいう。たとえば、入札者は、より少ない数量を前提とすると、より低い価格で多くの入札があることを条件に入札を行うことができる(当該入札の数が多いほど、価格の下落または流動性の低下がより起りやすい)。市場の勢いは、直近の3分間に現価格よりも高いまたは低い価格で提出された(未執行の)入札の数を条件とする入札によって説明される。
本発明技術のいくつかの実施形態では、入札者は、決済プロセスで入札者と照合される入札情報に係る条件を含む第六カテゴリーの複合入札を提出できる。たとえば、ダブルオークションにおける入札者は、品目を購入する相手の入札者の入札が特定の時間間隔(たとえば、オークションの決済の少なくとも5秒前)の中で提出された場合にのみ特定の商品を購入したい旨を指定できる。あるいは、入札者は自分の待ち順に条件をつけることもできる。たとえば、特定の価格で一組の商品を購入したい場合に、その価格で購入する最後の入札者にならないことを条件とすることもできる(同価格の入札が時間優先順位で整理される、つまり同価格の入札のうち、先に提出されたものが後に提出されたものに優先される)。あるいは、入札者はある商品を落札する他の入札者の身元情報や品目を落札した他の入札からどのくらい時間が経過しているかなどを条件に入札することもできる。
本発明技術のいくつかの実施形態では、入札者は、もし自分の入札が有効で未決済の一組の入札に含まれており、変数が適宜更新されているとすれば、その入札が域内オークションメッセージに含まれる変数に及ぼす影響を条件として第七カテゴリーの複合入札を提出できる。この入札が複合入札かどうかは、もちろん入札者の入手できる域内オークション情報によることに注意されたい。また、この種の入札は連動機能をもっている。最後に、オークションの決済段階で入札が執行されるよりかなり前に当該入札条件が満たされることもある。実際問題としては、入札者によるゲームプレイを避けるため、条件が満たされたときにそれを入札者に知らせない方がよいと思われる。そのような入札の悪用を避けるもう一つの方法は、この入札カテゴリーは提出後少なくとも一定の時間(たとえば3秒間)は取消しできない旨を指定することである。
第七のカテゴリーの入札の例は次のようなものである:もし域内オークションメッセージが、固定サイズの注文に適用できそうな価格帯を含むとすれば、入札者は、自分の入札がその価格帯に及ぼす価格インパクトが一株当り特定の額(または注文全体である一定額)を超えないことを条件として含めることができる。この例は、入札者の価格インパクトを条件として入札する場合に直感的に似ていることに注意されたい。この入札は、入札の決済時点(条件の実現後ずっと後のこともあり得る)で、入札者が上記a)で入手できる自分の品目配分と代価授受、時間情報およびその他の情報について知っただけでは条件を確認できないが、オークション情報の全体を知れば確認できる故に、複合入札である。
第七カテゴリーの複合入札では、当該条件が計算しやすいこともあり、価格インパクトを条件とした第四カテゴリーの複合入札で行われる計算に比べて、コンピューター依存度のより少ないオークションを実行することが可能となる。
最後に、もう一度繰り返すと、簡易設定の項で説明した本発明の態様はすべて高度設定の場合にも含まれる。その上、オークションメカニズム機能と入札機能は任意に組み合わせることができる。したがって、具体的に言うと、入札者は複数の複合入札(それぞれが複数の複合条件をもっていることもある)を提出することができる。ここで複合入札とは、少なくとも一つの複合条件を含む入札を指すが、二つ以上の複合条件を含んでいてもよく、また従来技術の既存の条件をいくつでも含むことができる。入札者はまた、本章で説明した非複合条件の任意のサブセットを含む入札を提出する(つまり、経路指定および/またはその他の取引の影響を受けた条件(trade−inspired condition)を備えた連動入札を行う)こともできる。本発明によるオークションを、(簡易設定の項で述べたとおり)ダイナミックオークションの1ラウンドとして、あるいはその一部として一回開催することもできる。
これに関連して、本アプリケーションで説明した複合入札のうち、どれを提出するか、また複合入札、即ち、複合条件をどのように定式化するかは、オークションデザイナーによって決定される。定式化には、必ずしもこれらに限定されないが、以下のものが含まれる:一組の有限数オプションセットからの選択、文章の指定、数学的条件、関数または領域の指定。
さらに、説明の便宜上、以下に、網羅的ではないが本発明が適用される商品のリストを示す:公共債および民間債、為替、手形、株式(ETFのようなバスケットを含む)、デリバティブ(オプション、クレジットデフォルトスワップ(CDS)、バリアンススワップ(VAR)などを含む)、商品取引(電力を含む)、石油採掘権、排出権枠または排出権クレジット、不動産、オンライン広告権、電波ライセンス、空港発着枠、データ容量、その他の有形、無形財。
動作
取引ルール(決済を除く)
決済に関するルール
決済プロセス、構成要素
決済方法:理論と長所
動作
簡易設定
本発明技術を用いたオークションプロセスの基本的スケジュールは、オークションを開始し、入札を募集し、決済を行い、関連する結果を入札者に知らせる必要があるという意味で、標準的なものである。本発明技術の実施形態は、競売主催者のシステム(10)を提供し、競売主催者は、通信ネットワーク(30)(101)を通じて参加入札者全員にオークションメッセージを送信する。それらのメッセージにはオークションメッセージ、具体的には取引ルール(オークションで競売される可能性のある品目セットの候補、入札期間、許容可能な入札の種類、入札預託金などを含む)および/またはオークションの決済を行うために用いる決済方法その他の関連情報を含む場合がある。
入札者は入札システムに入札を提出し(20i)、それがネットワークを通じて送信され(30)、受信されてオークションデータベースに格納される(30)(102)。入札者は、入札が受領された旨を確認するメッセージをオークションコンピューターから受けとることがある。入札者は、オークションの決済が開始される前に、入札を修正したり、取消したりすることができる。入札はオークションデータベースに格納され(45)、オークションプログラムがアクセスして(46)入札の妥当性をチェックし、オークションの有効かつ未決済の入札セットが生成される(103)。
オークションデータベースは入札者の入札を受けとると、有効かつ未決済のセットを計算、更新する。特に、このセットの決定方法は、オークションデザイナーに一任される。この場合、デザインの選択方法としては、孤立した無効な入札(たとえば、入札期限の過ぎた商品を購入しようとする入札)の取り消しや、より積極的な関与(たとえばデザイナーが、先に提出された入札に混じって無効な入札がある場合に最新の入札を破棄したり、未決済の入札セットとの関連で利害相反につながる最古の入札を破棄するなど)の簡単な方法がある。
オークションプログラム(46)は、決済の所定の時点で、有効かつ未決済のセットと決済方法を用いてオークションの決済を行い、その結果を保存し(即ち、品目配分と代価授受(45−5)を行い)、オークションの結果および/または入札内容から追加情報(45−6)を導き出し、その一部または全部がオークションデータベースに格納される(45)(104).
オークションの決済プロセスについては、本章の最後で(独創的なオークションシステムの一部である)許容可能な入札セットの説明の後に詳細を説明する。その理由は、許容可能な入札の特徴が、入札主催者がオークションの決済のために指定する必要のある決済メカニズムの構成要素と、指定された決済メカニズムに基づいて決済を執行するプロセスに影響するからである。
ステップ(104)でオークションの結果(45−6)から派生した情報として例示されているのは、複数品目のオークションで落札した入札の平均額、つまり平均落札額である。入札から派生する情報には、入札の際に形成される統計データ(たとえば、オークションにおける超過募集のレベルを一定の最低競売価格を上回りながら落札に失敗した入札数量により示す統計データ)や、入札内容に基いたより高度な計算を伴う派生情報(たとえば、複数品目オークションにおける3大落札額の価格インパクトを表わす変数で、これは当該オークションで落札に成功した入札と失敗した入札の両方に基いたいくつかの仮想オークションから解答を求める必要がある;この例については、本文書の実例の項で詳細を説明する)などが含まれる。
オークションコンピューター(40)は、競売主催者と入札者にユーザーによって異なる関連情報を返り返すが、それには(45−5)および(45−6)の情報の任意のサブセットが含まれる。かかる情報は入札者によって異なるので、競売主催者は、たとえば入札者iにその品目配分と代価授受(X,T)のほか、複数品目のオークションでは平均落札額のみを伝える決定を下すことができる。
競売主催者には、オークションの換金に関して、即ち、入札者へのまたは入札者からの現金の受け渡し方法をトレーダーの取引執行に関連付けるなどのいくつかの選択がある。説明の便宜上、これらのオプションは高度設定の場合を示す。その理由は、本発明の実施形態が高度設定でトレーディングプラットフォームの実行に用いられる可能性があり、(単発のオークションでは、参加費のみが課されるのに対して)トレーディングプラットフォームでは一般的に取引手数料や割戻し(即ち、現金授受)が課されるからである。
図2Aと2Bは、本発明技術の実施形態によるトレード方法の一例を示すフローチャートである。これらに示されたステップは、同時または順次行うことができることに注意されたい。
次に図1A−1C、2Aおよび2Bを見てみると、ステップ202において、一つの実施形態では少なくとも一人のトレーダー112からの注文が受信される。その注文には、本項で説明するとおり少なくとも一つの複合注文が含まれる。
本項で説明するとおり、一つの実施形態では、ステップ204において注文が格納される。一つの実施形態では、注文がトレーディング装置100の内部に格納される。ただし、もう一つの実施形態では、トレーディング装置に有線、無線で接続された外付けの格納媒体に格納される。
一つの実施形態では、206において、注文とトレーディングメカニズム146に基づいて取引が生成される。一つの実施形態では、204に格納された注文は、トレーディングメカニズム146と比較される。この比較に基づいて取引が執行される。一つの実施形態では、決済方法148の執行を通じて取引が生成される。
一つの実施形態では、ステップ208において、取引が報告される。一つの実施形態では、少なくとも一人のトレーダー112に取引が報告される。
本項で説明するとおり、一つの実施形態では、ステップ210において以下のイベントグループの中から選択された注文に関連するイベントを管理する:注文の提出、注文の修正、注文の取消し、有効かつ未決済の注文セットの生成、注文の受領確認、注文の一部公表、注文に応じて生成される取引。もう一つの実施形態では、ステップ212において、注文および/または取引に基づく域内取引情報が報告、生成される。
本項で説明するとおり、一つの実施形態では、ステップ216において、トレーディングメカニズムが格納される。本項で説明するとおり、ステップ218では、少なくとも一人のトレーダー112から選択可能な注文入力の選択情報を受けとる。実施形態では、そのような選択可能な注文入力の選択情報を、以下に挙げるが必ずしもそれらに限定されない任意の数の入力フォームを用いてトレーディング装置100が受けとる:音声コマンド、タッチスクリーン、キーボード入力、入力コントロールを用いたアイコン選択など。
一つの実施形態では、ステップ220において、取引に関連する情報が保存される。一つの実施形態では、ステップ222で取引報告命令が受けとられる。一つの実施形態では、これらの取引報告命令は、どこで何を報告するかの報告モジュールに関する命令を出す。一つの実施形態では、これらの報告命令は、トレーディング装置100に接続された入力装置を通じて入力される。一つの実施形態では、報告命令は競売主催者のシステム114から受信することもできる。もう一つの実施形態では、報告命令は、競売主催者のシステム114とは異なる実体から受けとることもできる。
本項で説明するとおり、一つの実施形態では、トレーディング方法200は、ダイナミックオークションの少なくとも一つのラウンドで作動する。
高度設定
一つの実施形態では、オークションデータベースが入札者から入札を受けとって、有効かつ未決済の入札を計算、更新する。
再び図1A、2Aおよび2Bについて説明すると、ステップ214において、一つの実施形態が外部取引市場および/またはデータベースと通信する。外部取引市場は、少なくとも一人のトレーダー112から注文を受けるトレーディング装置100を含み、必ずしもそれに限定されないトレーディング装置を含む取引市場とは異なる市場である。一つの実施形態では、ステップ214における通信には、注文の一部を外部取引市場に送信したり、外部取引市場および/またはデータベースからの情報にアクセスすることも含まれる。
取引ルール(決済を除く)
以下のルールおよびその任意の組合せは本発明に適合し、その定義はオークションデザイナーに一任される。
入札者は、特定のまたは任意の待ち時間の後、いつでも入札を取り消すことができるが、このルールは一部または全部の入札に適用可能で、時間の経過に伴って変わり、それまでに提出された個別の入札またはその組合せ、またはその両方によっても異なる。
入札者はその一部または全部について入札を修正することができ、入札の優先順位を、特定のまたは任意の時間だけ、あるいは他のルールに従って維持したり遅らせたりすることができる。今までに提出された入札について、たとえば、未決済の入札の最大入札回数や、入札者が一定時間内に入札を修正できる最大回数など、任意の時間間隔に適用されるルールの場合を含み必ずしもそれらに限定されないある時点までのルールが存在する場合がある。しかも、これらのルールは、入札の種類によって異なる場合がある。
透明性要件については、本発明のオークションには、オークションデザイナーが特定の実施形態を選択するある程度の自由が残されている。たとえばデザイナーは、競売主催者または入札者が、入札ごとにまたは全部の入札について、入札の一部または全部を、域内オークション情報全体を通じて、またはオークションの決済後に公表することを選択できる。入札者は情報を公表したり、参加入札者全員にメッセージを送信することを選択できる。
競売主催者が公表することに決めた域内オークション情報には、現行の入札に関する情報、現行の入札から派生する情報、オークション結果履歴その他の任意情報が含まれる。たとえば、直近の3分間に決済されたオークション全般の実現ボラティリティ(RV)や、株式取引に興味がある旨の表明(購入、売却のいずれに関心があるかを開示しない)、所定サイズの入札が取引執行されそうな価格帯についての情報(即ち、もしあるとすれば、ダブルオークションにおける予想落札価格はいくらか)などが含まれる。さらに、一回または複数のある時点、またはどんな時点でも、競売主催者はその入札者のグループがどの域内オークションメッセージを受け取るか(即ち、入札者全員が同じ域内オークション情報を受け取るとは限らないことを意味する)を決定することができる。
本発明のオークションでは、オークションで売買される品目セットに対する選択権を行使したり、あるいは単に売買される品目の候補セットを(たとえば、当初の域内オークションメッセージにそのような情報を含めることにより)発表することができる。
オークションの換金については、競売主催者は参加費を徴収できるほか、証券取引所が取引手数料の請求および/または約定注文に対する割戻しの支払を行うように、売買される商品の代金請求または支払を入札者が行うことができる。手数料/割戻しの3つのカテゴリーを区別することは有用である。まず最初のカテゴリーは、トレーディングメカニズムおよび/またはオークションの従来技術に見られる標準的な手数料/割戻し、即ち、一組の商品当りの手数料と割戻しで、これはたとえば注文が勘定元帳に掲載されているか(流動性が与えられたことで、約定時に割戻しが支払われる)、あるいは勘定元帳にある注文に対応して約定のため送信される成行き注文か(流動性が失われたことで、手数料が課される)によって異なる場合がある。本発明のいくつかの実施形態では、第二カテゴリー、即ち、差額手数料/割戻しが存在する場合もある。つまり、入札の特徴次第では、競売主催者は入札者に手数料を課すことがある。たとえば、落札に成功した入札者は、提出した入札に、たとえば最小執行規模や注文の価格インパクトに対する条件などの制約が含まれていた場合、一株当りの手数料をより多く支払うかも知れない。あるいは、取引の場で入札者が「分割注文」を行った場合には、より多額の手数料を支払うこともあり得る。たとえば、入札者がある総量を落札したが、その落札数量は、数多くの小口注文から成っているような場合である。
いくつかの実施形態において、競売主催者は、入札の執行時の決済条件に依存する第三カテゴリーの手数料を課したり、割戻しを支払うこともできる。手数料および/または割戻しの支払は、当該入札が有効かつ未決済の入札セットに含まれてからオークションが決済するまでの時間の長さによって変動する(これは、入札者が入札時期を知っていればいつでも推定することができるものである)。支払額を決定する他の評価基準は、落札額の順位(入札者にとって推定するのが極めて困難または不可能なオークションの品目配分による)や、入札または入札者がどの程度の流動性を提供したか(入札者の入札が、たとえば当該入札者がいなかった場合の取引高と比べて総取引高をどれくらい増大させることで品目配分にどの程度影響したかによって測定する)などを含むが、必ずしもこれらに限定されない。同じく、本発明のいくつかの実施形態では、入札者は、たとえば入札の執行時に自ら進んで支払う一株当りの手数料の最高額を指定する選択権を有する。
本発明のいくつかの実施形態では、品目配分を実行中に入札者が支払う割戻しの総額と入札者から受けとる手数料は、常に正数である場合もあるが、必ずしもそうである必要はない。競売主催者は、手数料の請求と割戻しの支払を4通りの方法で行うことができる。即ち、予算に関して自由裁量を用い、品目割当てのあるものについては自分の予算を均衡させる(したがって、割戻しと手数料が相殺される)ことだけを選択し、あるいは他の品目割当てについては、決済時に支払う(割戻し額が徴収した手数料を上回る場合)能力が求められるような方法である。この柔軟性のため、一連のオークションを運営するオークション主催者は、たとえば出来高や価格安定性に対するより大きなコントロールを得られる可能性がある。
競売主催者は、上記の4種類の手数料および/または割戻しの任意の組合せを選択して含めることができる。
決済に関するルール
本発明のいくつかの実施形態では、オークションの決済段階で他の交換所および/または取引市場(たとえば、株式の代替執行市場、ATS)に注文が送られる。特にこれは、経路指定入札(後に定義)が認められる場合に必要となる。オークションの決済プログラムは、たとえば、オークションの有効かつ未決済の入札データベースに含めるため、NBBOでの未決済取引高情報にアクセスしてそれを読み出す必要がある。特に、トレードスルールールなどの規制によって、一定価格以下の売買可能な取引を(市場外で)さばくためにNBBO外の価格で決済する取引市場が求められるとすれば、上記のようなことがアプリケーションで必要となる。その場合、オークションプログラムは、現在最良価格を提示している市場にいるそれぞれの売り手または買い手と取引するために注文を送る必要がある。これは、オークションの観点から見れば、オークションから送られる注文が全部または一部しか約定しないか、あるいは予想価格で取引されないなどの執行リスクがある。そこで競売主催者は、トレーダーに対してどの程度までのリスクなら進んでとれるかの選択(たとえば、取引高の10%までの偏差など)および/または注文の一部約定に起因して、変動の一部または全部を補填する選択を与える(たとえば、オークション決済時の目標出来高を達成しようとする際に生じる価格差を補填することにより)。
オークションの決済時期について言うと、高度設定の環境下では、競売主催者にとっていくつかの選択がある。特定の時点で(たとえば、午前9時から午後5時まで毎時間)、あるいはデータベースにある有効な入札から派生する情報および/またはオークション外からの情報と照合して確認できる条件によって決済時期を選択できる。たとえば競売主催者は、継続的に有効かつ未決済の入札セットをモニターし、その結果生じる品目配分を計算し、その結果生じる取引が特定の出来高に達したときのみ、および/または外生変数の不安定度が一定数以下の場合にのみその品目配分を決済(実行)することができる。あるいは、ある株式が最低限の出来高に達し、前回と今回のオークション決済価格の差が特定数以下のときのみ、オークションを決済することができる。あるいはまた、たとえば一つのオークションから次のオークションまでの価格の下落が大きいとして、競売主催者が手動で取引停止を行いたい場合など、条件によっては取引を生じさせるかどうかについての自由裁量を行使することもできる。
競売主催者がオークションの決済時期を選択できるということは、いくつかの実施形態では、取引がいつ約定するかしないか、そもそも約定するのかどうかについて、入札者は正確には知らないことを意味する。
有効かつ未決済の現行入札セットに基づいて、その結果生じる品目配分を計算する過程は、多くの時間を要する。時間tにおける有効かつ未決済の入札に基づいて決済プロセスが開始されると、そのプロセスは時間t+Dまで終了しないことがある。したがって、時間間隔[t,t+D]に提出された入札の処理方法と、その同じ期間に生じる取消しの処理方法(これは、決済プロセスで現在用いられている有効かつ未決済の入札に影響する)を指定することが必要となる。競売主催者は、新規入札がデータベースに収集され、決済済みオークションからの有効な入札と一緒にまとめられるよう指定することができる。競売主催者は、入札者がいつでも入札を取り消すことを容認できるが、決済プロセスが完了するまでそのプロセスで用いられた入札の取消しを遅らせることもできる。決済プロセスで約定しなかったり、または部分的に約定した入札をどう処理するかのデザイン上の選択を行う必要があることに注意されたい。一つの選択の可能性として、これらの入札の未約定部分を決済後に有効かつ未決済の入札に含めてしまうこともできる。
以下に、一連のオークションが運営される際の一つのオークションから次のオークションへの移行について説明する。まず、外生変数と域内オークションメッセージについての情報は、常に送信することができる。ここで、時間t’に開始されたオークションを考えてみる。時間t(t>t’)において、本オークションの決済プロセスが開始し、時刻t+Dに完了する(取引もその時刻に執行される)と仮定する。そこで、有効かつ未決済の入札のデータベースが更新され(たとえば決済時に一部約定して依然有効な入札と、時刻tおよびt+Dの間に提出された有効な入札セットとを一緒にまとめることにより)、次のオークションで最初に提示される有効かつ未決済の入札として役立つ。そのような次のオークションは、時刻t+Dに開始するようにデザインされる。時刻t’に開始したオークションの取引情報も時刻t+Dに発表され、次のオークションで得られる取引の履歴に加えられる。一般的に、次のオークションの開始時には、時刻t+Dまでの全履歴(域内オークション情報の履歴、外生変数情報、提出済み入札と有効かつ未決済の入札のセットを含む)にアクセスが可能となる。
決済方法
複合オークションメカニズムの決済メカニズムには、個別商品の第一または第二価格オークション、複数品目オークションにおける差別価格と統一価格、以上のフォーマットの組合せバージョン、その他の組合せオークション、および下記に説明する一般的複合取引フォーマットなどを含む従来技術を用いた任意の標準的オークションのフォーマットを用いてもよい。また、オークションの品目候補の一部または全部の最低競売価格のような他の標準的機能を含めるのも本発明に矛盾しない。競売主催者は、たとえば統一価格オークションでの価格設定は比例配分されていてもよい旨を示して、タイブレーキングルールを指定することもできる(もっと特殊な代替法として、同一価格の入札間に時間優先順位を認めて先に提出された入札が約定するようにすることもできる。もう一つの代替法は、最小規模や特定の複合制限などの制約を含まない入札に優先権を与える方法である)。特に、タイブレーキングルールは、いくつかの決済価格の中からどのように選択するか(たとえば、オークションの一価格が、売買されるすべての商品に適用されることが義務付けられたダブルオークションにおける任意の品目配分に、複数の入札価格が一致しているような場合)に関するルールを含めることを意味する。
さらに、決済方法の選択には、目的関数を選択することも含まれる、目的関数の役割は、オークションにおいて決済方法とタイブレーキングルールによって品目配分と代価授受の複数の候補が選択された場合、その中から品目配分と代価授受を選択することである。目的関数という語は、必ずしも選択を自動化する数学的関数をいうではなく、競売主催者が先の品目配分と代価授受の候補の中から選択するために考慮する基準を指す。潜在的な選択基準としては、競売主催者がオークションから得る収益、オークションにかかる費用、取引からの利益、またはオークションにおけるエクィティや分散度などの他の変数(オークションの結果に基いた統計データによって表わすことが可能)などがある。競売主催者は、これらの選択基準の任意の基準、または自ら自由に選ぶ価値関数に基いた任意の組合せを最大化することを選択できる。価値関数は時間と共に変化することがあり、競売主催者は、オークション結果の候補の中から「手動」で選択することができる。実際には、競売主催者の目的関数の開示を含む落札者の正確な決定方法をオークションの開始に先立って発表することは望ましいといえる。
決済プロセスにおける目的関数と許容可能な入札の意味を説明するために、単純な例として額面価格10億または20億を売却することを決定し、発行総額に対する条件を付けた入札の提出を入札者に認める債券発行人を考えてみる(上の例の入札者jは、最小限600シェア、最大限1,000シェアを、もし発行総額が10億ならばシェア当り7ドル、20億ならばシェア当り6.5ドルで購入したい旨を表明する)。債券発行者の目的が収益の最大化であり、統一価格オークションのフォーマットを選択するとすれば、本質的にこの単純なケースの決済プロセスは、二つの独立した統一価格オークション、即ち、額面価格10億と20億の債券(それぞれの発行額を条件として有効な入札のみを考慮)を決済し、いずれか一方の収益の高いほうを選択することになる。複合オークションの決済方法についてのさらに詳しい説明は後述する。
高度設定の場合、競売主催者は第1章の簡易設定でのオークションを運営する競売主催者に比べて決済方法に関してより多くの選択肢をもっている。たとえば、競売主催者は収益の最大化だけでなく、収益と価格安定基準の組合せを最大化しようとするかも知れない。統一価格オークションを利用して株式のダブルオークションを運営する競売主催者にとって自然な価格安定基準は、当該株式の直近の競売価格と現行オークションの潜在的価格の差、あるいは、一旦現行オークションの潜在的価格を含むとすれば、現行オークションに到るまでの特定の時間間隔内での競売価格の実現ボラティリティであり得る。一般的に、本発明のいくつかの実施形態では、競売主催者は、過去のオークションの結果によって形成された測定基準を含む目的関数を選択する可能性があり、しかもこれらの目的関数は時間と共に変化する(たとえば、競売商品または関連資産の価格不安定度がオークションの前後に高くなる場合にのみ、競売主催者は価格安定を目的関数に含めることもある)。
一般的に、トレーディングメカニズム(即ち、オークションメカニズムとは限らないトレーディングメカニズム)の決済プロセスは、一組の有効かつ未決済の入札を採用し、その一組の注文に決済方法を適用することを伴う。この決済方法は、メカニズムデザイナーの指定する任意の方法であり得る(デザイナーは完全なコントロールを保有し、たとえば奇数秒に提出された注文をすべて無視して、たとえそれが明らかに賢明な取引フォーマットでなくても、残りの一組の入札の競売を開始することもできる)。取引フォーマットがたまたまオークションフォーマットの場合、そのトレーディングメカニズムはオークションメカニズムでもあるトレーディングメカニズムのサブグループに属する。
この時点で、実際に用いられている非オークションメカニズムをいくつか紹介し、それらのメカニズムに関連して複合注文がどのようなものかを説明するのが有用である。
まず最初に、たとえばNYSEなどのほとんどの取引市場で用いられているトレーディングメカニズムを考えてみる。高度設定の項で紹介された用語を使うと、このメカニズムには以下の要素が含まれる:許容できる入札/注文のセット(指値注文、成行き注文、そして通常は多数の他の種類の注文を含む)、有効かつ未決済の注文セットの計算ルール(たとえば、株価がある限度以下に下落した瞬間に売りの逆指値注文が発効するなど)、域内取引情報および取引情報に関するルール(予約注文の場合のように、勘定元帳にある注文をすべて公開または一部非公開にする。取引はSECの取引後価格透明性に基づいて報告される)。さらにこのメカニズムには、クロス注文に関するルール(即ち、一組の有効かつ未決済の注文に基づいてどのように取引を生成するか)が含まれ、これらのルールは取引フォーマット(タイブレーキングルールを含む)を代表するものである。
本発明実施形態には、取引市場や他の株式の代替執行市場で用いられるような従来技術のトレーディングメカニズムの増強も含まれ、それらのメカニズムの変更、増強は、複合注文の導入により複合トレーディングメカニズムとなる。既に述べたとおり、潜在的な複合注文は極めて多数あり、そのうちの多くは複合トレーディングメカニズムで用いられる。以下の段落で、3種類のトレーディングメカニズムにおける複合注文の例を極めて簡潔に示す。ここで、上記の換金に関するいずれの選択も(たとえば、差額手数料/割戻し)、取引の場に適用できることに再び注意されたい。
取引所で用いられるトレーディングメカニズムでは、トレーダーは以下のような複合注文を提出することができる:非公開で(勘定元帳に表示されていない)、価格、数量のほか恐らく最小規模、および少なくとも注文の執行3分前までに提出された注文にのみ対抗できる(注文の執行がNBBOの範囲内で行われた場合)という複合条件を指定する注文。あるいはトレーダーは、総取引高が特定の金額を上回るか、または結局購入する数量の何倍かを上回る場合にのみ特定の数量を購入または売却したい旨を表明した複合条件を含めることもできる(完全を期して補足すると、勘定元帳に記された任意の注文、さらに正確には提示される任意の数量は、複合条件を付けることが禁じられる可能性があることに注意)。もう一つの複合注文では、直近の数秒間に提出された複合注文が少なくとも特定の数量あり、直ちに取り消されることなく、ある一定の閾値を上回る価格であることを条件として、取引価格と取引数量を指定することができる。
もう一つの例として、NYSEのマッチポイントなどのメカニズムを考えてみる。この場合、提出される注文は、トレーダーが売買したい数量のみを含む。注文は、他の取引市場で決定された価格でその日のうちに何度もクロス取引/決済される(たとえば、NYSEのクロス取引に先立つ時間の中で無作為に選択した時間(分)における価格の平均を選択することにより)。価格が他所で決められるという事実によって、需要と供給のバランスをとることは不可能であることから、注文は決済時に比例配分される必要がある。売り注文より買い注文の方が多いときは、売り注文はすべて約定し、買い注文は比例配分される。買い注文より売り注文の方が多いときは、その逆になる。この場合トレーダーは、正に自分が誤った側にいるときに、注文が約定してしまうことを懸念する(売り手の方が多いとき売り注文がすべて約定する、つまり価格が下落する可能性がある)。この懸念は、大量の取引を行う者にとってはさらに重大なものである。このような状況の中での複合入札は、需要に対する供給の比率がある数字を超えるか、またはある数字以下になるという条件を含んでいてもよい。あるいは、特定の数量まで買い注文を入れる複合入札は、トレーダーがクロス注文で買う数量の少なくとも何倍かの総取引高のある場合に限るという条件を含めることもできる。
もう一つの例として、現在システム内にある注文に部分的に基づく域内取引情報を発信するパイプライン取引を考えてみる。大口注文を対象としたパイプライン取引では、10万シェアの注文がどのくらいの価格で執行されるかというような固有ブロック価格帯というものが考案された。この価格帯は、システム内の有効かつ未決済の注文セットに関する情報と、株式の不安定度などのファンダメンタル情報を勘案する。そこで、先に紹介された第七カテゴリーの複合注文は、そのようなブロック価格帯に及ぼす影響を条件として含めることもできる。条件が満足されなかったり、相手側に十分な気配がない(こちらの注文に対応する買い注文も売り注文もない)場合は、トレーダーは自分の注文が執行されたかどうか知ることができないことに注意されたい。トレーダーによるゲームプレイを避けるため、競売主催者は常に、この種の複合注文(または複合注文一般)は、少なくとも何秒間は取り消すことができない旨を指定することもできる。
他の実施形態では、顧客が複合注文を提出し、取引の結果を生じてa)取引執行後、未約定の顧客注文を別な場所で執行するか、b)取引を執行しないで取引の結果から派生した情報を用いて、別な場所で顧客注文の全部または一部を執行できるようにすることにより、銀行は本発明の実施形態を利用することができる。
複合注文が取引市場または他のトレーディング用プラットフォームで認められるならば、それらの市場に注文を送るアルゴリズム的取引戦略は、複合注文も送ったり、それらの複合注文の執行過程から収集した情報を利用するように修正され得ることに注意されたい。
トレーディングメカニズムと決済手続きについて
決済手続きについて説明する前に、一旦決済方法が選択され、すべての入札が集められると、オークション決済をめぐる数学的問題は完全に定義されることに注意されたい。
簡単に言えば、複合入札(即ち、簡易設定と高度設定の双方)を認める任意のオークション(またはトレーディングメカニズム)および複合入札を認めるより一般的な任意のトレーディングメカニズム(オークションとその他のメカニズムを含む)は、下記に説明する2段階を執行することにほかならない。説明の便宜上、以下の説明はオークション用語でなされているが、複合トレーディングメカニズムでも全く同じことであることに注意されたい(実際、取引市場などで実際に用いられるトレーディングメカニズムから派生する複合トレーディングメカニズムは、2段階のそれぞれにおいて、典型的なオークションよりもずっと計算の複雑性が少ないことがある)。
複合オークションメカニズムの解決は、以下のような過程で行われる:
1. 様々な市況に対応した仮想オークションを解決/決済する(決済方法としてオークション用フォーマットとタイブレーキングルールを利用)。
2. その結果が、対応する市況の均衡状態に関連のある仮想オークションの結果を選択する(選択された決済方法の一部として定義された目的関数を用いて)。
上記の用語を以下に定義する。市況という概念は、ゲーム理論に由来している。将来を展望する者にとって、可能性としての世界は、逆風の吹く場合と吹かない場合の2通りある。あるいは、ゲーム番組の参加者は、ドアの後ろに今何が隠れているか疑問に思い、次の3通りの状態があると考えるかも知れない:一つは何も隠れていない状態、もう一つは100ドルが隠れている状態、さらにもう一つは1万ドルが隠れている状態。さらにその参加者は、市況のそれぞれに確率を割り当てることもできる。同様に、あるオークションにおいて、各入札者は入札段階では知りえない市況を想像する。つまり、債券オークションでは、他の入札者が大いに興味をもったりそれほど興味をもたないために応募超過または応募過少になり、また、特定の入札者が特定の品目の落札に成功または失敗したり、あるいは、競売主催者が先に発表した潜在的発行量の範囲内で大量または少量の債券を発行することを決定したりする。
実際には、最適な入札戦略を選択した入札者は、起こり得る市況とその尤度について推定を行ってから入札を実施する。ただし、入札者の直面する困難は、ある市況が実現すると、特定の入札が愚かなものになってしまうことである。かなり応募超過の複数品目オークションに参加する入札者は、ただ入札価格をもっと高くしておけばよかったと後悔するのではなく、自分の入札が(統一価格と差別価格のいずれのオークションでも)価格に影響することを知っており、オークションに出品された商品に共通価格または独立価格が付けられているとすれば(即ち、当該商品に対する各入札者の評価が少なくとも部分的に他の入札者の評価に依存するとすれば)、自分がさらに「勝者の呪い」のリスクを負うことになるのを知っているため、そもそもそのような選択をしなかったことを後悔する。
本発明の複合入札によって、入札者は、自分が関心をもっていることがらを条件として直感的に含めることができる。不動産オークションで、ある入札者が、友人が隣の家を落札できる場合のみ家を購入したいとすると、それを第二カテゴリーの条件に含めることができる。その場合、関連する市況とは、「私の友人が隣の家を落札する」および「私の友人が隣の家を落札しない」である。
債券オークションの入札者は、特定の価格pを上回る入札の数がnを超えることを条件として複合入札を提出することができ(第三カテゴリーの複合入札に相当)、関連する市況は「価格pを上回る入札の数がnを超える」および「価格pを上回る入札の数がn以下」である。
あるいは、複数品目オークションの入札者は、所定の数量と価格を対象とする入札は、比較的小さな価格インパクトを与えがちで、総取引高がより大きくなることを知っているので、総取引高に関心を抱く(よって、総取引高が大きいことを条件により積極的に入札を行う)。同様に、債券オークションの入札者は、債券発行額が第二市場における債券の流動性に影響しやすい(大きな発行額の方が流動性が大きい傾向にある)ので、債券発行額に関心をもち、それを条件とする可能性が高い。その結果、競売主催者は、入札者が次の3通りの市況を識別できるようにすることができる:即ち、総取引高が[0,q1]または[q1,q2]の間、またはq2より大きい範囲にある場合である。あるいは、競売主催者は、発行額が[q1,q2]または[q2,q3]のいずれかの範囲にあることを公表できる。
上の例では、競売主催者が考慮する市況は2−3通りであるように見える。総取引高に関連する例では、確かにオークションの解決には、次に説明するような2−3通りの仮想オークションのみが関係してくる。ところが、異なる品目を対象としたオークションの場合、または落札者が誰かが問題となる場合には、入札者の複合入札に含まれる条件によって暗黙のうちに「識別」された市況を詳細化させることが必要となる。隣の家に関する上の例を考えてみる。友人が隣の家を落札するには、可能性として多くの配分があり、そのすべてを考慮する必要がある。その結果、オークションの解決には、友人が隣の家を落札する特定の配分にそれぞれ対応した詳細な市況を定義することが必要となる。このように、詳細化された市況のグループは、入札者が「友人が隣の家を落札する」と表現する広義な市況に対応する。
各入札者が異なる複合条件を提出する場合、決済時の状態で市況を詳細化することが特に重要である。たとえば、もう一人の入札者が、他の特定の入札者Yが特定の家Hを落札するかどうかを条件に含めるとする。この場合、市況は4通りの異なるグループに分けられる(たとえば、一つのグループは、第一の入札者の友人が隣の家を落札し、しかもYがHを落札しないケース)。同様に、互いに異なる商品のオークションにおける入札者が「いずれの入札者も5品目を超えて落札しない」および「少なくとも一人の入札者が5品目以上落札する」という条件を指定することを認められる場合、各入札者によって識別される市況に匹敵する詳細化された市況は2グループ存在する。
関連のある市況(のグループ)で異なるものを特定することは計算上非常に困難なので、どのような複合入札を入札者が表現することを認めるかを選択するのはメカニズムデザインの重要な一部である。計算上の困難を緩和するには、入札者が複合入札を一つだけ提出することを認めるか、許容できる条件を制限する(たとえば、上の例では総取引高を、所定の3区間の一つに限って条件とする)ことを認めることが望ましいと思われる。基本的に、このデザイン上の選択は、入札者の望むことと計算上可能でかつ特定の配分に適することとの間のトレードオフを行うと共に、(他の入札者よりもその品目について多くの情報を得ている故に、特定の条件を指定するであろう)入札者に対する奨励策とその入札者の戦略的行動を考慮に入れる必要を伴う。このデザイン上の選択/問題は、従来技術による組合せオークションで生じるそれに極めて類似しており、全部かゼロかの入札が競売主催者にとって決済段階での複雑性を増すことになる(全部かゼロかの入札とは、たとえば、入札者が商品A,B,Cを購入する意向をもっているが、ただしその全部を落札できるときに限られる旨を指定するような入札をいう)。
関連する市況を特定した後、競売主催者は、詳細化した市況で仮想オークションの解決に取りかかる。計算の観点からは、一部のオークションデザインでは、詳細化した市況グループのみを対象として仮想オークションを解決するだけで十分であり、それが計算上の問題を大いに軽減する(この点については、下記に詳細を示す)。
仮想オークションを解決するステップは、まずオークションにおける有効かつ未決済の入札セットの中で、未決済の入札、即ち、市況を条件とした有効な入札セットの特定が必要となる。たとえば、上記のオークションにおける入札者が、総取引高が[0,q1]の間にあることを条件として入札する場合、その入札は、実際に総取引高が[0,q1]に収まるような市況の場合に限って有効となる。しかも、いかなる市況であろうと、複合条件の付いていない入札はすべて有効である。このように、上の例では、総取引高にいかんにかかわらず、数量と価格を含む単純な入札は有効となる。
市況に対応した有効な入札セットを特定すると、競売主催者は、当該入札に基づいてオークションの解決に取りかかる。このオークションは、様々な市況に関連する数多くのオークションの一つに過ぎないという事実を強調するため、仮想オークションと呼ばれる。
対応する有効な入札セットについて、仮想オークションがどのように運営されるかは、指定されたオークションフォーマットと決済方法の一部であるタイブレーキングルールによって定義される。仮想オークションの解決は計算上困難であり得る一方、それを行う方法は従来技術の標準的な方法であることに注意されたい。
競売主催者が統一価格オークションのフォーマットで特定数量の株式を売却することを決定し、その目的がオークションから最大限の収益を得ることであると発表し、入札者が100万から200万株、または200万から300万株の間で取引できるようにした極めて単純なケースにおけるステップ1とステップ2を以下に説明する。
ステップ1では、市況のそれぞれについて、有効な入札セットを特定する必要がある。次に、2通りの市況のそれぞれについて、競売主催者は、それらの有効な入札セットから(各入札を最高値から最低値の順に整理することによって)需要曲線を再構成する。たとえば第一の区間[100万,200万]の範囲で売却されたと想定される総取引量q について、競売主催者は最後の落札価格p を特定し、関連収益をq ,p と計算する(正式には、競売主催者は、当該区間で生成され得る各数量について統一価格オークションを解決し、関連するオークション収益を計算する)。第一の区間における任意の数量について、仮にQ ,P を最大収益とする(もし同額があれば、競売主催者は、数量の大きい方を選択してタイブレーキングを行う)。ただし、Q は実際に存在しない可能性がある。即ち、総取引量が[100万,200万]の区間にあることを条件としたすべての入札を合計した総需要が100万未満のような場合である。Q が存在するとすれば、総取引量が[100万,200万]の区間にあるような(そしてもちろん、発行数量がちょうどQ であるような)市況が均衡状態にあることを示している。
次に、競売主催者は、[200万,300万]の数量の第二の区間について同じプロセスを繰り返し、Q ,P でもう一つの均衡状態を見つけるかも知れない(直感的にこれは、オークションに対する関心が比較的高かったことを意味し得る)。説明の便宜上、ここでは競売主催者とは上記のステップを実行する者と定義されているが、実際には、決済方法を実行するアルゴリズムによって行われることに注意されたい。
第2ステップでは、競売主催者は自分の目的関数(即ち、収益を最大化すること)を用いて、利用しうる均衡状態の中から選択する。この場合、Q とQ に関連する均衡状態が存在するならば、彼は収益の大きい方を選ぶであろう。この例で、入札者が総取引量を条件として入札できるようにすることは、オークションが応募過少の場合(したがって、Q もQ も存在せず、Q だけですら存在しない)には競売主催者にとって有利にならないが、実際にオークションが応募超過になった場合には(即ち、仮に150万株または200万株という事前に定められた売却数量を選択する場合に比べて、応募超過を利用してたとえば230万株を発行することができる)、競売主催者にとって、応募超過のレベルを活用することが可能となる。
一歩離れて見ると、複合入札のオークションを決済するには、特定の市況について、いくつかの仮想オークションを解決する必要がある。ただし、これらの仮想オークションのそれぞれのフォーマットは、従来技術にある標準フォーマットであり、それらのオークションの解決には標準的な方法が用いられる。
上記の例は、市況のそれぞれについて解決すべき仮想オークションが標準的な統一価格オークションであり、解決が簡単なので、極めて単純な例である。ところが、従来技術のオークションの実際の適用例では、当該オークションを解決することは難しい。たとえば、標準的な統一価格オークションでの入札における(通常の)最小執行規模に関する制限は、当該オークションを統一価格組合せオークションに変えてしまう。即ち、入札者は依然として最低落札価格を支払わなくてはならないが、落札者の決定は集合詰め問題(set−packing problem)であることから、NP困難(NP hard)とされる問題のクラスに属する。複雑性を軽減する方法の一つは、大量の、たとえば1,000株の取引でのみ、最小執行規模を指定できるようにすることである。同様に、互いに異なる商品のオークションにおける落札者の決定は、特に全部かゼロかの入札では、大変難しい組合せ問題を解決しなければならない。このような組合せ問題では、たとえば高度なタイブレーキングルールを含める必要があるが、これも特定の適用によって異なる。これらのオークションを実用的に処理しやすいものにするために、オークションデザイナーは、許容できる入札の数を制限したり(たとえば、入札可能な組合せを制限したり、入札者が提出できる全部かゼロかの入札の数を制限することにより)、そもそも入札対象の品目数を制限することを選んできた。制約条件の拘束を伴う入札をどう処理するかについては、多少の自由度も存在する。たとえば、過去に競売主催者は、一定数量を売却する統一価格オークションで、それを含めることが高収益につながるにもかかわらず、最小数量制限のある入札を拒否してきた。拒否することに決めた理由の一つは、オークションを解決する計算の複雑性を軽減するためであり、もう一つの理由は、さもなくば入札者にとって、より大きな数量に対してより低い価格で入札し、それより高い価格で最小執行規模の条件なしの入札(次に低い入札の数量と価格によっては起りうる)に勝つことを期待して、最小執行規模を条件に含めることが奨励されるからである。
前段落から明らかなように、先の例の入札者が複合入札に最小規模制限を含めることを認めることは、解決すべき仮想オークションが統一価格組合せオークションになるということを意味する。その結果、発行数量と最小執行規模を条件とした複合入札のオークション全体の決済を行うことは、それ相応により困難となる。処理しやすさを保証するためデザイン上の選択を行う必要があるかも知れず(標準的な統一価格組合せオークションの場合と同じく)、上で述べたように、所定の規模が大きい場合にのみ最小規模の条件を認めることも選択の一つであり得る。
一般に、本発明のオークションは、そもそも解決困難な仮想オークションの集合体を解決することになるので、解決することは困難である。既に解決困難な理論的問題の難度を上げようとすることは、直感に反することである。各仮想オークションの難度(つまり、各複合オークションの難度)は、オークションにかけられる商品の数、入札者数、入札者が提出でき、また実際に提出する複合制約の数と種類、これらの入札どうしの相互作用、競売主催者の選択する決済方法などによる。ただし、オークションデザイナーは、複合オークションの処理しやすさを保証しつつ、特定の適用に最も適した方法で特定の複合オークションメカニズムを選択することができることに注意されたい。
上記のステップ1とステップ2を分かりやすく解説するため、複合オークションのいくつかの例を以下に挙げる。
一つの商品が売りに出され、入札者が、価格Pを上回る入札が少なくともいくつかあること、または[P,P]の区間にある入札が少なくともいくつかあることを条件に入札を提出するケースを考えてみる。この場合競売主催者は、入札者がその条件の中に含めた価格と最小入札数によって示唆された市況に沿ってオークションを運営する必要がある。特定の市況について、たとえば価格が[P,P](上の場合P<P<Pを意味する)の範囲にあり、入札数がnを超える場合を考えてみると、競売主催者は、[P,P]の区間において、対応する有効な入札としては、入札数がnもないことを見出すこともある。もしそうならば、この状態は均衡状態とは言えない。その代り、このオークションのプロセスでは、価格が[P,P]の区間にあり、n’>nとして入札数がn’を超える市況に関連したもう一つの均衡状態が見出される。この例での複合入札の種類は、提出された入札から派生する単純な統計データを条件としているので、第三カテゴリーに相当する。これに類似した第三カテゴリーの複合入札として、平均落札価格が特定の区間にあるか、またはあるレベル以上であることを条件とした複数品目オークションの複合入札が挙げられる。この場合、競売主催者は、ある平均値または平均値どうしの間隔に対応した市況から入札を始め、これらの市況のそれぞれについて統一価格の仮想オークションを実行して、見つけ得る最適な均衡状態を選択する。
次に、第四カテゴリーの例は、入札が価格インパクトのような変数を条件としている場合である。まず簡単な例から始めるために、ある有価証券の複数品目オークションを考えてみる。競売主催者は、ある数量Qの有価証券を、統一価格フォーマットを使って売りに出すこと、その目的は収益の最大化であること、入札者は価格インパクトを条件として、即ち、落札される出品単位当り(または落札される各品目の平均当り)の価格インパクトがL以下であること(ここで、Lは1セントの何分の1かで、入札者によって指定される)を条件に入札できることを発表する。価格インパクトを条件にすることは、オークションの規模や流動性(流動性という語は、取引市場やダブルオークションの場では一般にラムダで表される)を条件とする場合に類似することから、ここではギリシャ文字ラムダにちなんで大文字Lが使用される。(複合と非複合を含めて)すべての入札を集めた後オークションを解決するには、落札されるいくつかの入札に備わった価格インパクトLによって識別できる異なった市況を考慮に入れる必要がある。任意の市況L**の場合、有効かつ未決済の入札セットは、任意の非複合入札のほか、L>L**としたときの価格インパクトが最大Lであることを指定する複合入札を含む(即ち、これらすべての入札者は最大Lまでの価格インパクトを受け入れるので、それを下回る価格インパクトL**も受け入れる)。
有効な入札を識別した後、これらの入札は、L<L**となるような市況の需要曲線を再現するために指値注文される。(L<L**となるような市況における)入札の価格インパクト、より正確に言えば、落札した入札の一部である任意の落札品目の価格インパクトは、次のように定義付けられる:当該市況での仮想オークションを決済するような価格pと、落札した入札セットを除外したと仮定した場合のオークションを決済するような価格p’との差額であり、最高非落札価格はむしろ落札した入札セットに含まれる。同様に、落札した各品目の平均額の価格インパクトを入札者が表明した場合、ある一人の入札者が落札したn個の入札(その入札者による入札総量のごく一部かも知れない)は、落札した入札を含めたときの価格と、需要曲線において落札した入札をその次のn個の高額入札品目に置き換えたときの価格との差額をnで割って計算される。
L<L**となるような各市況における仮想オークションを解決するため、競売主催者は、提出された入札のうちどの部分が落札するかを見極める必要があり、またたとえば、落札したすべての入札がL<L**となるような価格インパクトに矛盾しない落札群は存在しないことを見出すかも知れない。直感的見解では、価格インパクトに関する条件を表わすものは、最後に落札した品目の右側に現れる需要曲線の形である。この情報は入札者にとって重要で、時に商品が共通価格または独立価格の特徴を備えており、入札者の評価が他の入札者の評価に依存するような場合に特に重要となる。しかも、この商品を後日再販しようと計画している入札者(たとえば、オンザラン(直近発行)債券として後で二次市場で再販するつもりでいる米国国債の入札参加ディーラー)にとっては、重要なことがらである。価格インパクトを条件とすることによって、入札者は例の需要曲線の形を「見極め」、大量に購入する限りにおいて先を(数量的に)「見通す」ことができる。即ち、価格インパクトの条件付の複合入札で大口買いをする入札者は、小口の入札を行う入札者よりもずっと先を見通すことができる。より具体的には、最初に価格pで落札に失敗した入札から始まって、需要曲線が、入札者の勝ち取った品目(落札額)に等しい値だけ左側に移動し、その曲線がある新価格p’において点Qで縦の直線と交わる(Qはそのオークションで売却された合計定量)。即ち、もっと先を見通すためには、さらに多くの品目を実際に購入する必要があるので、入札者は本質的にゲームプレイができないようになっている。需要曲線の形を予見する能力のおかげで、入札者が「勝者の呪い」を懸念する度合いが低くなる可能性がある。要するに入札者は、市場規模が十分にあるときに限って、大きな数量の落札が保証されるような入札を提出することができる。
L<L**となるような各市況において落札される入札セットを決定する問題は、競売主催者にとって、落札する入札群(繰り返すと、提出された入札総量のごく一部かも知れない)に対応する落札数量Qを選択する最良の(最大収益をもたらす)方法を選んだ後、収益が最大となる市況を伴うようなオークションの品目配分と代価授受を選択する必要があるので、これは組合せ問題である。
入札者が価格インパクトの条件付けを行うもう一つの方法は、品目の一定量Qの価格インパクトがLを超えてはならない旨を表明した条件を含めることである。この場合、落札するすべての入札において、関連する市況の需要曲線上のQまでは「見通す」ことができる。このような価格インパクトに関する条件は、たとえば入札者が(複合入札によって各入札者が「勝者の呪い」から一層保護されるような上記の例とは対照的に)、オークションの応募超過レベルまで各自の入札を調節できることを競売主催者が望むような場合に有用となり得る。
価格インパクトを条件とする複合入札も、統一価格フォーマットのダブルオークションの一部となり得る。上記の価格インパクトの第一の例を考えてみる。ダブルオークションでは、買い手はL<Lを明記した条件を含め、売り手はL<L を明記した条件を含めることもあり得る。ここでLは、売買された各品目の需要側の価格インパクトでLはその供給側の価格インパクトである。その結果、競売主催者が考慮する必要のある市況は、L **とL **の組合せであり、上の例のようにそこから[競売手続きが]開始する。直感的に見ると、供給曲線との交点における最後に落札に失敗した入札から開始する需要曲線が(品目の落札額だけ)左に移動し、新しい点p’で供給曲線と交わることで、価格インパクトの条件によって、買い手は次に起こることを「見通す」ことができる。このように価格インパクトは、需要曲線と供給曲線の相対的な形状を表わす。
ダブルオークションまたは任意のトレーディングメカニズムで価格インパクトを条件とすることは、トレーダーが「勝者の呪い」についてあまり心配しなくて済むことと、流動性のあるオークション(市場)ではさらに積極的に取引できることから、トレーダーにとって有利である。特に、一日のうちに何度もオークションが開催されるケースを考えてみよう。入札者は、特定のオークションでその規模が十分でないと自分の入札の価格インパクトが大きいのではないかという懸念から、積極的に入札しようと努める。
実際には、トレーダーが取引量を市場規模に合わせることを選択する十分な証拠がある。トレーダーは、情報が漏れるのを防止し、先頭で目立つのを避けるため、大口注文を小口注文に分割し、そのいずれもトレーディング用プラットフォームで一定期間取引を行う。その際、小口注文は各市場で取引される現出来高に比べて「小規模」である。さらに、VWAP(出来高加重平均価格)アルゴリズムのようなダイナミックなトレーディング戦略では、たとえば個々の株式の過去の出来高分布を計算した後、その株式の大口の買い(または売り)注文を一定期間ダイナミックに出し、出来高が厚い(よって価格インパクトが小さい)ときに、より多く買い(売り)注文を出すことになる。
注文を大口と小口に分割することは普通であるが、取引市場の注文控え元帳にはどこにも流動性は見えなくとも、売りと買いの著しい気配があるという意味で、多くの場合市場は両面性をもっている。価格インパクトを条件とする複合入札を行うダブルオークションでは、入札者が「先手を打って」先頭に立つことを心配する必要がない。その代り入札者は、複合入札期間を通じて、ある価格で入札すると、それに関連する価格インパクトに対するコントロールを維持することができる。
次に、複合オークションを再現する代替方法について述べることが重要かと思われる。入札者が市況を条件として入札できるようにする代りに、さもなければ標準的なオークション出品物の定義に市況を入力しておくことができる。たとえば、他に5件の入札があることを条件とした商品Aを対象に複合入札を行う代りに、競売主催者は、次の2品目を対象とする入札を認めることができる:「商品Aに対して少なくとも5件の入札がある場合の商品A」と「商品Aに対して5件未満の入札がある場合の商品A」。同様に、複数品目オークションで、総取引量が100万シェア以上かそれを下回ることを条件とすることを入札者に認める代りに、入札者が次の2通りの異なる品目に対して入札できるようにすることができる:「100万シェア以上の総取引量の一部として売られるシェア」と「100万シェア未満の総取引量の一部として売られるシェア」。これら2例のオークションでは、競売主催者は、2つの異なる品目のうち1つだけ購入できることを事前に発表する。これらのオークションの解決には、(関連市況を詳細化した情勢が微妙に入札によって区分される複合オークションの標準的定義の場合と同じように)品目によって定義される市況に対応して詳細化された市況グループについて、仮想オークションを解決するのと同じ手続きをとることが必要となる。具体的に言うと、競売主催者は各市況について、その市況に関連する品目を対象としたすべての入札を利用して仮想オークションを実行する(100万シェア以上が売れる市況での仮想オークションは、「100万シェア以上の総取引量の一部として売られるシェア」に対するすべての入札を利用する)。このような複合オークションのデザイン方法は、あまり直感的ではないが、それが、本発明の説明が「複合品目」ではなく複合入札を認めることを対象にしている理由でもある。
次に、複合オークションメカニズムでは、異なる市況で異なる種類のオークションを解決する必要があることに注意されたい。たとえば、複合品目のオークションである一つの商品を売る場合、競売主催者は少量または大量の商品を発行し、少量の場合の市況で差別価格オークションが行われることを指定することができる。また競売主催者(またはオークションデザイナー)は、いくつかの市況でオークションを開催し、受ける注文を他の市況での非オークション取引フォーマットに合わせることを選ぶこともできる。つまりそれは、全体的なメカニズムが、複合オークションメカニズムではなく複合トレーディングメカニズムであることを意味する。
最後に、複合オークションフォーマットを従来技術に存在するダイナミックオークションの場に適用することが重要かと思われる。これらのオークションは、第一ラウンドから始めて何ラウンドも開催され、最終ラウンドでオークションが終了する。各ラウンドでは、売りに出された諸品目の時価が一組設定される(売りに出された品目、たとえば発行債券の数量は、時間と共に変化するかも知れないことに注意)。オークションの進行と共に、競売主催者は入札者と連絡を取り合い、通常、入札者が各ラウンドで入札を変更することを認める。入札者は現ラウンドで入札を提出し、そこでは、入札は過去のラウンドで明らかになった情報に依存するが、今後のラウンドで有効となる入札を提出することもできる。オークションは初回のラウンドで開始し、均衡状態に達する(即ち、需要と供給が等しくなる)最終ラウンドで終了する。従来技術のダイナミックオークションのいくつかは、第一および第二カテゴリーの複合入札が緩和しようとする問題と同じ問題を緩和しようと試みる。たとえば入札者jは、各ラウンドで特定の入札者が特定の品目を落札することを防止するような方法で自分の入札を調節できる。
本発明の複合オークションは、以下の2つの方法においてダイナミックオークションのラウンドとは異なる:まず第一に、ダイナミックオークションの各ラウンドで入札者に知らされる情報は、オークションが一旦終了してから明らかになる市況に関連する情報を含むことが推定される。たとえば、あるオークションの入札者は何ラウンドかの後に、競争が厳しすぎてオークションが応募超過であることに気が付くかも知れない。反対に、特に複合入札用に有効な条件にかかわる情報は、域内オークション情報によって知らされない情報である必要がある。直感的には、ダイナミックオークションにおいて、入札者は自分の入札をオークションが進むにつれて発見することがらに合わせて調節するより多くの選択肢をもっている。それと対照的に、複合オークションの入札者は、何かを発見したらそれに対して何をするかを指定しなければならない。第二に、ダイナミックオークションが完全自動方式で運営されたとしても、オークションは、封印入札オークション(入札者はどのラウンドでも、入札内容を変更できない)のように、その構造上、依然として経路依存性を有する。即ち、ダイナミックオークションはある時点で開始され、均衡状態に到達し次第終了する。特に、ダイナミックオークションを終了する決定が第nラウンドで下され、それが現在計算されている場合、アルゴリズムは「将来を見通す」ことができず、第nラウンドでオークションを終了するかどうかの決定は、第nラウンドの後のラウンドで有効な入札に基づいてなされる。
時には、ダイナミックオークションで見られる均衡状態は、複合オークションのそれと同じものである。ただし、もし複数の均衡状態があるとすれば、ダイナミックオークションで見られる均衡状態が最良のものかどうかの保証はなく、それは単に最初に(初回ラウンドで開始された経路上に)出現した均衡状態にしか過ぎない。一方複合オークションでは、最初にすべての均衡状態のセットが識別され(ダイナミックオークションの経路を通って到達したかどうかも考慮しないで)、そのセットの中から最良の均衡状態が選択される。
トレーディングメカニズムと動機について
複合オークションの利点となり得る点を指摘することは有用である。実際には、入札者が「そのオークションは高度に応募超過である」とか「そのオークションは応募過少である」など[の表現で示される]異なった潜在的市況の存在を予測するという事実と、それが入札者に示す不確実性が、最適な入札戦略の選択を複雑にしてしまう。その結果、複合入札は、このような困難を軽減し、より簡単な入札を可能にしてくれる可能性がある。
複合入札は、入札者が自分にとって不利と思われるオークションの結果をいくつか識別し、それらを基本的に除外し、それによって入札者が直面する事前の不確実性とそれに関連する暴露リスクを軽減することを可能とし、そのおかげで入札者は一層の自信をもって入札できるので、一般的に入札者に恩恵を与える。
上記の利点は、出品商品が共通価値または独立価値を備えている場合に顕著となり(入札者による商品の評価が少なくとも部分的には他の入札者の評価に依存しているという意味で)、入札者は「勝者の呪い」を恐れ、商品価値についての不確実性が甚だしいときは更にそうなるので、オークションは低調な取引で終わってしまうことになる。
ただし、純粋に私的な価値をもつ商品であっても、複数の代替商品がオークションにかけられるとき、あるいは一連のオークションが実施され(一日に数回株式のオークションが行われるように)、その中の任意のオークションの流動性が変動するようなとき(そのため、大口の買い手はどのオークションに大口の売り手がいるかを知らないことがある)、複合入札は魅力的であり得る。特に、現行のオークションのシステムは、特定の代替商品により大きな流動性があればあるほど、あるいは、一連のオークションの場合は、特定のオークションにより大きな流動性があればあるほど、入札者がより積極的な入札を提出できるようなものである。いずれの場合も、複合入札は、オークションの流動性と規模が大きいときにより大口の売買を行えることを暗に保証するものである。一連のオークションの場合、複合入札は、大口の買い手と売り手がお互いを「発見」し、どのオークションに入札するかを決定する逐次的な調整問題を解決することができるようにする(大幅な価格インパクトの恐れもなく、大口入札を行うことにより)。
複合入札は、逐次的な調整問題のほかに、不動産オークションで隣り合う家の購入を希望した友人同士の例のように、オークションで生じるより一般的な調整問題を緩和するのにも役立つ。あるいは別の例としては、いずれの技術特許を買うか、または将来の開発のため、どのモールを購入するかを決定しようとしている会社のグループなどが挙げられる。
次に、先に説明したとおり、本発明によるオークションを決済するには、(組合せ問題も表わし得る)いくつかの仮想オークションを解決し、提出した入札に基づいて均衡状態が存在するような一つの仮想オークションの結果を選択することが必要となってくる。ゲーム理論に当てはめて言えば、このプロセスは、ゲーム中に起こりうる均衡状態のセットを特定し、均衡状態の選択に関与、即ち、最も有利な結果をもたらしそうな均衡状態を選択することに相当する。ゲーム理論では、多くのゲームに複数の均衡状態が存在するが、通常これは、ゲームのプレーヤーがどの均衡状態を選択するかについての調整がつかず(即ち、均衡状態を選択する方法がなく)、すべてのプレーヤーにとって不利な均衡状態になってしまう可能性があるので、ゲームの特徴としては望ましくない。
実際には、均衡状態を選択する明らかな方法もなく、複数の均衡状態が存在し、それが重要性をもつことがあり得る(これについては、下記に説明する)。しかも、開催されるオークションの文脈の中で複数の均衡状態が存在するならば、これら複数の均衡状態は、決済プロセスのそれとして反映されることがある。ただこの場合、実際に競売主催者は、[自分にとって]最も有利なものを選択できる(より正確には、最も有利な均衡状態は決済プロセスで指定された目的関数によって選択される)。もしそうであるとすれば、複数の均衡状態の存在とその選択は、正に本発明の複合入札の利点の一つである。
実際に起こる複数の均衡状態に関して、以下の4通りの例を考えてみる。まず第一に、ほとんどの典型例が銀行経営にかかわるもので、(簡単に言えば)二つの均衡状態が存在するケースと考えられる。一つの均衡状態:経営の行き詰った銀行がつぶれるのを恐れて、すべての顧客が同時に預金を引き出し、銀行は破綻する。もう一つの均衡状態:その銀行の顧客は、銀行がまだ経営能力を維持していると信じ、他日、銀行はその困難な状態から回復する。
第二の例は、近年規制当局や学会で注目を集めた問題、金融システムの体系的リスクの文脈中での複数の均衡状態に関するものである。相互連結したある銀行のシステムについて、(再び単純化のために)2通りの市況/均衡状態を考えてみる。一つは、ほとんどまたはすべての銀行が破綻する(銀行は互いに融資する関係でつながりがあり、しかも/または類似の資産を保有し、破綻した銀行の強制破産と一掃処分のため、それらの資産は価値が下落していることが十分にある場合、もう一つは、すべての銀行が経営能力を維持している場合である。オークションの決済プロセスにおいて均衡状態を選択するのは実際に可能ではない。システム的に重要な金融機関の破綻を避けるため、規制当局は、信頼を築く方向で努力している。
第三の例は、トレーディングのグリッドロック(行き詰まり)で、これはたぶん本発明のオークションの適用に最も深く関係していると思われる。有価証券の市場で、その規模が小さく入札の価格インパクトが大きくなり勝ちな場合、買い手も売り手も入札や大口の注文を控えるので、取引高と価格発見が低調になり、低調を維持する可能性があり、価格発見もないことから、入札者はそもそも大口商品の正確な価格に確信をもてない。ただし、このような市場では、取引高がより大きく価格発見がより容易な流動性との均衡状態も存在する。総取引高が大きいことを前提とすると、(資産の正確な査定価格から大幅に外れて)入札者の間で「勝者の呪い」と自分たちの注文の価格インパクトに対する懸念が薄れ、彼らは比較的大口の数量とより積極的な価格を指定した入札を提出する。
実際に生じる問題は、一つの市況/均衡状態から次にどのように移行するかということである。各入札者が大口の入札を行うとすれば、市場は流動性をもつが、大口の入札は、市場に流動性がある場合のみ起こることで、これは卵が先か鶏が先かという問題である。この場合、入札者が取引高を条件として入札できるダブルオークションが役立ち得る。決済プロセスが、グリッドロックに見合った均衡状態(即ち、総取引高が低く、その低い取引高を条件とした個別の入札量もまた小さい)および流動性の高いもう一つの均衡状態(高い総取引高を条件としたより大きな入札量を伴う)を回復することになるであろう。グリッドロックを呈する均衡状態ではなく、流動性のある均衡状態を選ぶことができるということは、オークションに先立つグリッドロック状態に比べて、より取引を促進させ、取引高と参加入札者の福利および価格発見を向上させることになる。
第四の例として、一軒のバーを考えてみよう。このバーは満員で、そのため人気を呼び、もっと多くの人々を惹きつけ、いつも満員となる。あるいは、このバーはほとんど空で、そのため人気がなく、誰も惹きつけず、ほとんど空の状態が継続する。一旦均衡状態の一つに落ち着いて、バーが人気のあるまま、または人気のないまま営業を続けると、一つの均衡状態から別の均衡状態に移行する(即ち、均衡状態を選択する)のが困難になる。同様に、業界見本市の出展ブースを入札しようとする会社は、多くの他社も出展することを知れば、とにかく入札するか、またはより高値で入札するので、見本市の人気が上がり、より多くのマスコミ報道を惹きつけ、見本市に代表を送ることが時間と人材をつぎ込む価値のあるものになり勝ちである。見本市またはイベントのオーガナイザーは、通常他のクライアントが既に登録している方がさらに多くのクライアントに登録してもらい易いことを知っているので、複合オークションが有用であることに気づくであろう。
最後に、オークションの決済段階で、売りに出された品目セットに対して競売主催者が裁量を発揮すると、複数品目の統一価格オークションにおける競売価格のような競売結果に左右される変数をより上手にコントロールできる。このようなオークションにおいて、各入札者は売りに出された競売品目セットが内生的であることを理解しており、それに応じて結果的に自分の入札を調整する。それにもかかわらず、売りに出された品目に対して裁量を発揮できることにより、競売主催者は、従来技術で競売品目のセットの異なるいくつかのオークションを同時に実施し、最良の結果をもたらすオークションを選択できるのと同じような選択肢を得ることができる。たとえば、債券発行に際して、統一価格の決済方法と発行総額の範囲のみを指定する一方、入札者に発行総額を条件に入札させることは、その発行額の範囲内の各数量に対して統一価格オークションを実施し、そのうちの有利なオークション(たとえば、各数量が最大収益をもたらすようなオークション)を選択するのに似ている。あるいは、統一価格の決済方法と債券A、Bの総発行高を指定することは、目標取引総額を生じる債券A、Bの発行高の各組合せについてオークションを同時に実施し、債券A、Bの発行高の有利な組合せを選択するのに似ている。
言い換えれば、オークションの完了時に、競売主催者に売買品目に対する選択権を与えることで、競売主催者が事前に予見できない状況に対するより適切な対応を可能とする。たとえば、債券の発行者は、発行高の上限に近い数量を発行することにより、期待以上のレベルの応募超過を活用できるかも知れない。あるいは、発行数量と価格の最適の組合せを選択することにより、収益増をより巧みにコントロールできる可能性もある。また、もし債券発行者が競売価格をコントロールすることに関心があれば、おそらく第二市場の影響のせいで、非収益の極大化、つまり市場への供給過多を防止し、目標利率に沿った小口の数量を選択するかも知れない。
本発明技術のさらなる実施形態を以下に示す。
図4には、トレーディングメカニズムで取引高を増大させる方法400が示され、方法は、
トレーディングメカニズムが、複合注文を受信できるようにすること402、
複合注文を利用して、取引を生成すること404を含み、複合注文の利用により、取引にかかわる取引量が、複合注文を利用しない取引にかかわる取引量と比べて増大する。
図5には、オークションメカニズムでオークションの収益を増大させる方法500が示され、方法は、
オークションメカニズムが、価格連動入札、経路指定入札、および取引の影響を受けた入札から成るグループから選択された入札を受信できるようにすること502、
入札を利用して、オークションの品目配分と代価授受を生成すること504を含み、入札の利用により、オークションの品目配分にかかわる収益が、入札なしに生成されるオークションの品目配分にかかわる収益に比べて増大する。
図6には、トレーディングメカニズムの収益を改善する方法600が示され、方法は、
トレーディングメカニズムが、複合注文を受信できるようにすること602、
複合注文を利用して、取引を生成すること604
を含み、複合注文の利用により、取引にかかわる取引収益が、複合注文を利用しない取引にかかわる取引収益に比べて増大する。
図7には、トレーディングメカニズムの収益を増大させる方法700が示され、方法は、
トレーディングメカニズムが、少なくとも一つの注文の特徴が満たされること、および取引生成時の少なくとも一つの注文の役割のうちの少なくとも一つに基づいて、金銭授受を決定できるようにすること702、
注文を利用して、取引を生成すること704
を含み、金銭授受を決定できるようにすることにより、取引にかかわる収益が、金銭授受を決定できるようにすることなしにトレーディングメカニズムによって生成された取引にかかわる収益と比べて、増大する。
図8には、オークション装置800が示され、オークション装置は、
少なくとも一人の入札者から少なくとも一つの連動入札を含む入札を受信するように構成された入札レシーバー802と、
前記入札を格納するように構成された入札格納モジュール804と、
前記入札とオークションメカニズムとに基づいてオークションの品目配分と代価授受とを生成するように構成されたオークション生成部812と、
データベースと通信するように構成された外部通信モジュール806、および前記入札と前記オークションの品目配分および代価授受とに基づいて域内オークション情報を報告および生成するように構成された域内オークション情報モジュールのうちの少なくとも一つと、
前記オークションの品目配分および代価授受とを報告するように構成された報告モジュール810とを備える。
図9には、オークション装置900が示され、オークション装置は、
少なくとも一人の入札者から少なくとも一つの経路指定入札を含む入札を受信するように構成された入札レシーバー902と、
前記入札を格納するように構成された入札格納モジュール904と、
前記入札とオークションメカニズムとに基づいてオークションの品目配分と代価授受とを生成するように構成されたオークション生成部906と、
前記オークション装置を含む取引市場以外の少なくとも一つの取引市場と通信するように構成された外部通信モジュール908と、
前記オークションの品目配分と代価授受とを報告するように構成された報告モジュール910と
を備える。
図10には、オークション装置1000が示され、オークション装置は、
少なくとも一人の入札者から少なくとも一つの取引の影響を受けた入札を含む入札を受信するように構成された入札レシーバー1012と、
前記入札を格納するように構成された入札格納モジュール1002と、
前記入札とオークションメカニズムとに基づいてオークションの品目配分と代価授受とを生成するように構成されたオークション生成部1004と、
前記オークション装置とデータベースとを含む取引市場以外の少なくとも一つの取引市場と通信するように構成された外部通信モジュール1006、および前記入札と前記品目配分および代価授受とに基づいて域内オークション情報を報告および生成するように構成された域内オークション情報モジュール1008のうちの少なくとも一つと、
前記オークションの品目配分と代価授受とを報告するように構成された報告モジュール1010と
を備える。
図11には、トレーディング装置1100が示され、トレーディング装置は、
少なくとも一つの注文を少なくとも一人のトレーダーから受信するように構成された複合注文レシーバー1102と、
前記少なくとも一つの注文を格納するように構成された注文格納モジュール1104と、
前記少なくとも一つの注文とトレーディングメカニズムとに基づいて取引を生成するように構成された取引生成部1106と、
前記少なくとも一つの注文の特徴が満たされること、および取引生成時の少なくとも一つの該注文の役割のうち少なくとも一つに基づいて、金銭授受を決定するように構成された会計モジュール1108と、
前記取引を報告するように構成された報告モジュール1110と
を備える。
コンピューターシステム環境の例
図3においては、取引技術の一部が、たとえばコンピューターシステムのコンピューター読取可能格納媒体に存在するコンピューターで読取可能かつ実行可能な命令からなる。即ち、図3は、本発明技術の実施形態を実行するのに用いられるコンピューターの一例(下記に説明)を示すものである。
図3は、本発明技術の実施形態に基づいて使用されるコンピューターシステム300の一例を示す。図3のシステム300は単なる一例に過ぎず、本発明技術は、汎用ネットワークコンピューターシステム、埋込み型コンピューターシステム、ラウター、スイッチ、サーバー装置、ユーザー装置、各種中間連結装置/中間生成物、独立型コンピューターシステムなどを含む数多くの各種コンピューターシステムの上または内部で稼動するものと理解されている。図3に示したとおり、コンピューターシステム300は、それに連結された、たとえばフロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスクなどの周辺コンピューター読取可能媒体302によく適合する。
図3のシステム300には、情報交換のためのアドレス/データ用バス304と情報処理と命令用にバス304に連結されたプロセッサー306Aが含まれる。図3に示したとおり、システム300は、複数のプロセッサー306A、306Bおよび306Cが併存するようなマルチプロセッサー環境にも十分適している。反対に、システム300は、たとえばプロセッサー306Aのような単一のプロセッサーを搭載する場合にも十分適している。プロセッサー306A、306Bおよび306Cは、各種マイクロプロセッサーのうちの任意のものでよい。またシステム300には、プロセッサー706A、706Bおよび706C用の情報と命令を格納するためにバス704に連結されたコンピューター使用可能揮発性メモリー308、たとえばランダムアクセスメモリー(RAM)も含まれる。
システム300はまた、プロセッサー306A、306Bおよび306C用の情報と命令を格納するためにバス304に連結されたコンピューターで使用可能な非揮発性メモリー310、たとえば読取り専用メモリー(ROM)も含む。また、情報や命令を格納するためのバス304に連結されたデータ格納部312(たとえば、磁気ディスクまたは光学ディスクとディスクドライブ)もシステム300に含まれる。さらに、システム300は、情報交換のほか、プロセッサー306Aに、またはプロセッサー306A、306B、306Cに対するコマンド選択のためバス304に連結され、英数字キーとファンクションキーを含む英数字入力装置314も含む。また、システム300には、ユーザー入力情報の交換や、プロセッサー306Aに、またはプロセッサー306A、306B、306Cに対するコマンド選択のためバス304に連結されるオプションのカーソル制御装置316も含まれる。さらに、本実施形態のシステム300は、情報を表示するためバス304に連結されるオプションのディスプレイ装置318も含む。
再び図3において、オプションのディスプレイ装置318は、液晶装置、陰極線チューブ、プラズマディスプレイ装置、その他ユーザーが識別できるグラフィック画像や英数字を作成するのに適した他のディスプレイ装置でもよい。オプションのカーソル制御装置316を使うと、コンピューターのユーザーは、ディスプレイ装置318の表示画面上で可視シンボル(カーソル)の動きに対して動的信号を送ることができる。カーソル制御装置316の多くの実施例は、一定方向の動きや変位のあり方に対して信号を送る機能を備えたトラックボール、マウス、タッチパッド、ジョイスティックまたは英数字入力装置314の特殊キーなどとして知られている。あるいはそれに代えて、特殊キーや組合せキーコマンドを使って英数字入力装置314からの入力によりカーソルに対する指示および/またはその有効化を行える。
システム300はまた、他の方法、たとえば音声命令によってカーソルに対する指示を行うのに大変適している。さらにシステム300は、外付け機器接続用の入出力装置320も含む。たとえば、一つの実施形態では、入出力装置320は、システム300とインターネットを含み必ずしもそれに限定されない外部ネットワークの間で有線または無線の通信を行えるようにするモデムである。下記に、本発明技術の詳細な説明を行う。
再び図3において、システム300の他の各種構成要素が示されている。具体的に言うと、オペレーティングシステム322、アプリケーション324、モジュール326およびデータ328が、それらのある場合は一般的に、コンピューター使用可能揮発性メモリー308、即ち、ランダムアクセスメモリー(RAM)とデータ格納部312の一つまたはそれらの組合せの中に存在する。ただし、いくつかの実施形態では、オペレーティングシステム322は、ネットワークやフラッシュドライブのような他の場所に格納することもでき、さらにオペレーティングシステム322は、たとえばインターネットへの接続を通じて遠隔地からアクセスできるものと理解されている。一つの実施形態では、たとえば本発明技術は、RAM308内の記憶場所とデータ格納部312の記憶領域にアプリケーション324またはモジュール326として格納されている。本発明技術は、上記で説明したシステム300の一つまたは複数の構成要素に適用することができる。たとえば、コンテンツの転送に関与する装置を識別する方法が、オペレーティングシステム322、アプリケーション324、モジュール326および/またはデータ328に適用できる可能性がある。
コンピューターシステム300は、適切なコンピューター環境の一例に過ぎず、本発明技術の利用または機能の範囲に対するいかなる制限も示唆するものではない。また、コンピューターシステム300の環境は、その例に示された任意の構成要素またはそれらの組合せに関していかなる依存関係も必要条件もあると解釈されてはならない。
本発明技術は、プログラムモジュールがコンピューターによって実行されるように、コンピューターで実行可能な命令の一般的状況の中で説明することができる。一般的に、プログラムモジュールには、特定のタスクを遂行したり、特定の抽象データ型を実行するルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、データ構造などが含まれる。本発明技術は、通信ネットワークでリンクされた遠隔処理装置によってタスクが遂行される分散コンピューター環境でも実施できる。分散コンピューター環境では、プログラムモジュールは、メモリー格納装置を含む構内および遠隔のコンピューター格納媒体のいずれにも存在することがある。
本発明の原理、様相、実施形態とその具体的な例についてここで述べた説明は、それらの構造的、機能的な同等物を包含するよう意図されている。そのうえ、それらの同等物は、現在既知の同等物と、将来開発される同等物、即ち、構造のいかんにかかわらず、将来開発され同じ機能を果たす任意の構成要素の両方を含む。したがって、本発明の範囲は、本書で提示、説明された例示的実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明の範囲および主旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
コンセプト
本明細書は、少なくとも以下のコンセプトを開示した。
[コンセプト1]
トレーディング装置であって、
少なくとも一人のトレーダーから、少なくとも一つの複合注文を含む注文を受信するように構成された注文レシーバーと、
該注文を格納するように構成された注文格納モジュールと、
該注文とトレーディングメカニズムとに基づいて取引を生成するように構成された取引生成部と、
該取引を報告するように構成された報告モジュールと
を備えるトレーディング装置。
[コンセプト2]
前記注文の提出、該注文の修正、該注文の取消し、有効かつ未決済の注文セットの生成、該注文の受領確認、該注文の一部の公表、および該注文に基づいて生成される取引からなるグループから選択された前記注文に関連するイベントを管理するように構成された注文管理部
をさらに備える、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト3]
前記注文と前記取引とのうちの少なくとも一つに基づいて、域内取引情報を報告および生成するように構成された域内取引情報モジュール
をさらに備える、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト4]
外部取引市場とデータベースとのうちの少なくとも一つと通信するように構成された外部通信モジュールをさらに備え、該外部取引市場は、該トレーディング装置を含む取引市場以外の取引市場である、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト5]
前記外部通信モジュールが、
前記注文の一部を前記外部取引市場へ送信するように構成された注文経路指定モジュールと、
該外部取引市場と前記データベースとのうちの少なくとも一つからの情報にアクセスできるように構成された外生情報アクセス部と
を含む、コンセプト4に記載のトレーディング装置。
[コンセプト6]
前記トレーディングメカニズムを格納するように構成されたトレーディングメカニズム格納モジュールをさらに備える、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト7]
前記トレーディングメカニズム格納モジュールは、前記取引生成部によってアクセスできるように構成されている、コンセプト6に記載のトレーディング装置。
[コンセプト8]
前記少なくとも一人のトレーダーによって選択されるように構成された選択可能注文入力フォームをさらに備える、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト9]
前記選択可能注文入力フォームが、
文章指定子、数学的条件指定子、関数指定子、領域指定子、および少なくとも一人のトレーダーの取引目的からなる選択可能な注文入力フォームのグループから選択される、コンセプト8に記載のトレーディング装置。
[コンセプト10]
前記取引に関連する情報を格納するように構成された取引格納モジュール
をさらに備える、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト11]
取引報告命令を受信するように構成された命令レシーバー
をさらに備える、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト12]
前記取引生成部は、
格納された注文を前記トレーディングメカニズムと比較するように構成されたコンパレーターと、
該比較に基づいて前記取引を執行するように構成された取引執行装置と
を含む、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト13]
前記取引生成部は、
決済方法を執行するように構成された決済方法モジュール
を含む、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト14]
前記トレーディングメカニズムは、決済方法を含む、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト15]
前記決済方法は、トレーディングフォーマット、取引目的、およびタイブレーカーのうちの少なくとも一つを含む、コンセプト14に記載のトレーディング装置。
[コンセプト16]
該トレーディング装置によって用いられるトレーディングフォーマットが、
第一価格オークションフォーマット、第二価格オークションフォーマット、第一価格組合せオークションフォーマット、第二価格組合せオークションフォーマット、差別価格オークションフォーマット、統一価格オークションフォーマット、差別価格組合せオークションフォーマット、統一価格組合せオークションフォーマット、および組合せオークションフォーマットから成るグループから選択される、コンセプト15に記載のトレーディング装置。
[コンセプト17]
該トレーディング装置によって用いられるトレーディングフォーマットが、
取引市場フォーマット、提出される注文が数量だけから成る取引フォーマット、NYSEのマッチポイント、および現在システム内にある注文に一部基づく域内取引情報を送信するプラットフォームから成るグループから選択される、コンセプト15に記載のトレーディング装置。
[コンセプト18]
前記取引目的の最適化は、生成された取引が少なくとも一つの評価基準に与える効果を考慮することを含み、該評価基準は、
競売主催者の収益、競売主催者のコスト、取引利益、取引高、競売主催者の収益の最大化、均衡性、分散度および価格安定性から成るグループから選択される、コンセプト15に記載のトレーディング装置。
[コンセプト19]
前記トレーディングメカニズムは、
該トレーディングメカニズムに関連する少なくとも一つの取引ルール
を含む、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト20]
前記トレーディングメカニズムに関連する少なくとも一つの取引ルールは、
注文に関するルール、換金に関するルール、品目候補セットに関するルール、および取引の決済時期に関するルールから成るグループから選択される、コンセプト19に記載のトレーディング装置。
[コンセプト21]
前記少なくとも一つの複合注文の各々は、
少なくとも一つの複合条件と、
価格連動条件、経路指定条件、取引の影響を受けた条件、最低執行数量、および一括条件から成るグループから選択される少なくとも一つの非複合条件と
を含む、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト22]
該トレーディング装置が、ダイナミックオークションの少なくとも一つのラウンドで稼動する、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト23]
前記注文が、
公共債、民間債、為替、手形、株式、投資信託証券、デリバティブ、オプション、クレジットデフォルトスワップ(CDS)、バリアンススワップ(VAR)、商品取引、電力、石油採掘権、排出権枠、排出権クレジット、不動産、オンライン広告権、特許、電波ライセンス、空港発着枠、データ容量、その他の有形、無形財から成るグループから選択される品目を対象としている、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト24]
該トレーディング装置が、高度設定で稼動するように構成されている、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト25]
前記注文レシーバーが、
購入品目、売却品目、オークションの品目配分と代価授受、該注文に含まれる情報から派生した統計データ、変数であって、該変数の計算には、該注文に含まれる少なくとも何らかの情報を用いることが必要である、前記変数、無品目取引、少なくとも一つの複合注文に適した注文機能、および域内取引情報への影響から成る条件カテゴリーのグループから選択される条件を有する少なくとも一つの複合注文を受信するように構成されている、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト26]
前記注文レシーバーが、
注文の価格インパクト、オークション規模、市場規模、流動性、応募超過、競争レベル、均衡性、分散度、需給不均衡、安定性、および市場の勢いから成るグループから選択される一つの概念を表わす変数の条件を有する少なくとも一つの複合注文を受信するように構成されている、コンセプト1に記載のトレーディング装置。
[コンセプト27]
命令を格納した非一時的コンピューター読取可能格納媒体であって、前記命令は、コンピューターシステムにより実行されたとき、該コンピューターシステムに、
少なくとも一つの複合注文を含む注文を、少なくとも一人のトレーダーから受信すること、
該注文を格納すること、
該注文とトレーディングメカニズムとに基づいて取引を生成すること、
該取引を報告すること
を含むトレーディング方法を実行させる、格納媒体。
[コンセプト28]
該注文の提出、該注文の修正、該注文の取消し、有効かつ未決済の注文セットの生成、該注文の受領確認、該注文の一部の公表、該注文に基づいて生成される取引から成るイベントグループから選択された前記注文に関連するイベントを管理すること
をさらに含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト29]
前記注文と前記取引とのうちの少なくとも一つに基づいて域内取引情報を生成および報告すること
をさらに含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト30]
外部取引市場とデータベースとのうちの少なくとも一つと通信すること
をさらに含み、該外部取引市場が、トレーディング装置を含む取引市場以外の取引市場である、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト31]
前記通信することは、
前記注文の一部を前記外部取引市場に送信すること、
前記取引市場と前記データベースとのうちの少なくとも一つからの情報にアクセスすること
を含む、コンセプト30に記載のトレーディング方法。
[コンセプト32]
前記トレーディングメカニズムを格納すること
をさらに含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト33]
少なくとも一人のトレーダーによる、選択可能な注文入力の選択を受信すること
をさらに含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト34]
前記取引に関連する情報を格納すること
をさらに含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト35]
取引報告の命令を受信すること
をさらに含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト36]
前記注文とトレーディングメカニズムとに基づいて取引を生成することは、
格納された注文を該トレーディングメカニズムと比較すること、
該比較に基づいて該取引を執行すること
を含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト37]
前記注文とトレーディングメカニズムとに基づいて取引を生成することは、
決済方法を実行すること
を含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト38]
前記取引を報告することは、
該取引を少なくとも一人のトレーダーに報告すること
を含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト39]
前記方法は、ダイナミックオークションの少なくとも一つのラウンドで稼動することを含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト40]
前記方法は、高度設定で稼動することからを含む、コンセプト27に記載のトレーディング方法。
[コンセプト41]
コンピューターにより実施される方法であって、
少なくとも一人のトレーダーから少なくとも一つの複合注文を受信すること、
該少なくとも一つの複合注文を格納すること、
該少なくとも一つの複合注文とトレーディングメカニズムとに基づいて取引を生成すること、
該取引を報告すること
を含む、方法。
[コンセプト42]
該注文の提出、該注文の修正、該注文の取消し、有効かつ未決済の注文セットの生成、該注文の受領確認、該注文の一部の公表、該注文に基づいて生成される取引から成るイベントグループから選択された前記注文に関連するイベントを管理すること
をさらに含む、コンセプト41に記載の方法。
[コンセプト43]
前記注文と取引とのうちの少なくとも一つに基づいて、域内取引情報を報告および生成すること
をさらに含む、コンセプト41に記載のトレーディング方法。
[コンセプト44]
少なくとも一つの取引市場と通信することをさらに含み、該取引市場は、トレーディング装置とデータベースとを含む取引市場以外の取引市場である、コンセプト41に記載のトレーディング方法。
[コンセプト45]
前記通信することは、
前記注文の一部を前記取引市場に送信すること、
該取引市場と前記データベースとのうちの少なくとも一つからの情報にアクセスすること
を含む、コンセプト44に記載のトレーディング方法。
[コンセプト46]
前記トレーディングメカニズムを格納すること
をさらに含む、コンセプト41に記載のトレーディング方法。
[コンセプト47]
少なくとも一人のトレーダーによる選択可能な注文入力の選択を受信すること
をさらに含む、コンセプト41に記載のトレーディング方法。
[コンセプト48]
前記取引に関連する情報を格納すること
をさらに含む、コンセプト41に記載のトレーディング方法。
[コンセプト49]
取引報告命令を受信すること
をさらに含む、コンセプト41に記載のトレーディング方法。
[コンセプト50]
前記注文とトレーディングメカニズムとに基づいて取引を生成することは、
格納された注文を該トレーディングメカニズムと比較すること、
該比較に基づいて、該取引を執行すること
を含む、コンセプト41に記載のトレーディング方法。
[コンセプト51]
前記注文とトレーディングメカニズムとに基づいて取引を生成することは、
決済方法を執行すること
を含む、コンセプト41に記載のトレーディング方法。
[コンセプト52]
前記方法は、ダイナミックオークションの少なくとも一つのラウンドで稼動することを含む、コンセプト41に記載のトレーディング方法。
[コンセプト53]
前記方法は、高度設定で稼動することを含む、コンセプト41に記載のトレーディング方法。
[コンセプト54]
トレーディングメカニズムにおいて取引量を増大させる方法であって、
トレーディングメカニズムが、複合注文を受信できるようにすること、
該複合注文を利用して取引を生成すること
を含み、該複合注文の利用によって、該取引に関連する取引量が、該複合注文を利用しない取引に関連する取引量に比べて増大する、方法。
[コンセプト55]
オークションメカニズムにおいてオークションの収益を増大させる方法であって、
該オークションメカニズムが、価格連動入札、経路指定入札、および取引の影響を受けた入札から成るグループから選択された入札を受信できるようにすること、
該入札を利用してオークションの品目配分と代価授受とを生成すること
を含み、該入札の利用によって、該オークションの品目配分が、該入札なしで生成されるオークションの品目配分に関連する収益に比べて増大する、方法。
[コンセプト56]
トレーディングメカニズムにおいて収益を増大させる方法であって、
該トレーディングメカニズムが、複合注文を受信できるようにすること、
該複合注文を利用して取引を生成すること
を含み、該複合注文の利用によって、該取引に関連する取引収益が、該複合注文を利用しない取引に関連する取引収益に比べて増大する、方法。
[コンセプト57]
トレーディングメカニズムにおいて収益を増大させる方法であって、
該トレーディングメカニズムが、少なくとも一つの注文の特徴が満たされること、および取引の生成時の少なくとも一つの注文の役割のうちの少なくとも一つに基づいて、金銭授受を決定できるようにすること、
該注文を利用して取引を生成すること
を含み、前記金銭授受を決定できるようにすることにより、該取引に関連する収益が、該金銭授受を決定できるようにすることなしに、トレーディングメカニズムによって生成される取引に関連する収益に比べて増大する、方法。
[コンセプト58]
オークション装置であって、
少なくとも一人の入札者から、少なくとも一つの価格連動入札を含む入札を受信するように構成された入札レシーバーと、
該入札を格納するように構成された入札格納モジュールと、
該入札とオークションメカニズムとに基づいて、オークションの品目配分と代価授受とを生成するように構成されたオークション生成部と、
データベースと通信するように構成された外部通信モジュール、および該入札と該オークションの品目配分および代価授受とに基づいて域内オークション情報を報告および生成するように構成された域内オークション情報モジュールのうちの少なくとも一つと、
該オークションの品目配分と代価授受とを報告するように構成された報告モジュールとを備えるオークション装置。
[コンセプト59]
オークション装置であって、
少なくとも一人の入札者から、少なくとも一つの経路指定入札を含む入札を受信するように構成された入札レシーバーと、
該入札を格納するように構成された入札格納モジュールと、
該入札とオークションメカニズムとに基づいてオークションの品目配分と代価授受とを生成するように構成されたオークション生成部と、
該オークション装置を含む取引市場以外の少なくとも一つの取引市場と通信するように構成された外部通信モジュールと、
該オークションの品目配分と代価授受とを報告するように構成された報告モジュールとを備えるオークション装置。
[コンセプト60]
オークション装置であって、
少なくとも一人の入札者から、少なくとも一つの取引の影響を受けた入札を含む入札を受信するように構成された入札レシーバーと、
該入札を格納するように構成された入札格納モジュールと、
該入札とオークションメカニズムとに基づいてオークションの品目配分と代価授受とを生成するように構成されたオークション生成部と、
該オークション装置およびデータベースを含む取引市場以外の少なくとも一つの取引市場およびデータベースのうちの少なくとも一つと通信するように構成された外部通信モジュール、および該入札と該品目配分および代価授受とに基づいて域内オークション情報を報告および生成するよう構成された域内オークション情報モジュールのうちの少なくとも一つと、
該オークションの品目配分と代価授受とを報告するように構成された報告モジュールとを備えるオークション装置。
[コンセプト61]
トレーディング装置であって、
少なくとも一人のトレーダーから少なくとも一つの注文を受信するように構成された複合注文レシーバーと、
前記少なくとも一つの注文を格納するように構成された注文格納モジュールと、
前記少なくとも一つの注文とトレーディングメカニズムとに基づいて取引を生成するように構成された取引生成部と、
少なくとも一つの注文の特徴が満たされること、および取引の生成時の前記少なくとも一つの注文の役割のうちの少なくとも一つに基づいて、金銭授受を決定するように構成された会計モジュールと、
該取引を報告するように構成された報告モジュールと
を備えるトレーディング装置。

Claims (14)

  1. 命令を格納した非一時的コンピューター可読記憶媒体であって、前記命令は、コンピューターシステムにより実行されたとき、該コンピューターシステムに、複数単位注文、複数品目注文、または複数単位注文および複数品目注文の組み合わせの注文をサポートする、トレーダー間の調整を強化するためのトレーディング方法であって、
    a)1つの決済において複数のトレーダーを照合するための決済方法を含むとともに、どの注文が許容可能であるのかを定義するメッセージ欄を含むトレーディングメカニズム有するトレーディング装置を提供すること、
    b)少なくとも一人の第1のトレーダーおよび該第1のトレーダー以外の少なくとも一人のトレーダーによって送信された許容可能な注文を受信すること、
    送信された前記許容可能な注文は、前記少なくとも一人の第1のトレーダーによって送信された少なくとも一つの許容可能な複合注文を含み、
    前記少なくとも一人の第1のトレーダーによって送信された前記少なくとも一つの許容可能な複合注文は、少なくとも一つのゼロではない価格を含み、かつ、複数単位注文、複数品目注文、および複数単位注文および複数品目注文の組み合わせのうちのいずれか一方のグループに属し、
    前記少なくとも一人の第1のトレーダーによって送信された前記少なくとも一つの許容可能な複合注文は、前記許容可能な複合注文の決済における生成された品目配分と代価授受のうちの少なくとも1つに関する少なくとも1つの複合条件を含み、前記複合注文は、前記生成された品目配分において配分された全品目のうちの第1のトレーダーの部分に関する条件として単独で表現することも、前記第1のトレーダーが前記決済において照合される注文についての情報に関する条件として単独で表現することができず、
    注文が複合しているのは、注文が、少なくとも一つの複合条件を含んでいる場合であり、複合条件は、前記注文の決済において少なくとも2つの起こり得る市況の状態のうちの少なくとも一つに基づいて定義される条件であり、
    前記トレーディングメカニズムについて、条件が複合しているのは、
    前記少なくとも一人の第1のトレーダー以外からの許容可能な注文のセットにおける少なくとも一つの注文の組に対して、決済における前記少なくとも一人の第1のトレーダーの品目配分と代価授受、決済の時刻まで存在する前記少なくとも一人の第1のトレーダーの入札履歴、前記決済の時刻、前記決済の時刻まで存在する外生変数の履歴、前記決済における取引品目配分と代価授受についての情報を除く前記決済の時刻までの取引履歴、および前記決済における取引品目配分と代価授受についての情報を除く前記決済の時刻までの前記トレーディングメカニズムにおける前記少なくとも一人の第1のトレーダーに利用可能な域内取引情報の履歴からなるグループに含まれる情報しか与えられていないときには、前記第1のトレーダーによって送信された注文に含まれる前記条件が前記許容可能な注文の決済において満たされているかどうかを判定することができないが、
    前記決済における品目配分と代価授受、および前記決済の時刻までのトレーディングメカニズムにおける全部の情報からなるグループに含まれる情報が与えられているときには判定することができる場合である、前記受信すること、
    c)前記トレーディング装置に備えられた注文レシーバーを用いて送信された前記許容可能な注文を格納すること、
    d)前記トレーディング装置に備えられた取引生成部を用いて送信された前記許容可能な注文と前記トレーディングメカニズムとに基づいて取引を生成すること、
    ここで、前記決済方法は、送信された前記許容可能な注文の決済において複数のトレーダーを照合し、
    取引を生成することは、前記決済方法を使用して生成された取引を選択することを含み、
    前記生成された取引は、前記決済において前記少なくとも2つの起こり得る市況の状態のうちの少なくとも一つに関連し、
    前記生成された取引を選択することは、前記決済方法の一部である目的関数を用いることを含み、
    前記決済において起こり得る市況の状態と関連する生成された取引は、前記決済において関連する起こり得る市況の状態を条件とした有効な注文の組に基づいて生成され、
    前記決済において市況の状態を条件とした前記有効な注文の組は、有効な注文の組みの一部であり、有効な注文の組におけるいくつかの複合注文は、前記決済において少なくとも一つの起こり得る市況の状態が確定しているときにのみ関して条件付きで有効であり、前記決済においていかなる市況の状態に関して、前記有効な注文の組における複合条件の無い注文はすべて有効であり、
    e)前記トレーディング装置に備えられた報告モジュールを用いて前記取引を報告することを含む前記トレーディング方法を実行させる、コンピューター可読記憶媒体。
  2. 前記注文レシーバーは、取引の品目配分および代価授受のうちの少なくとも一方に基づいて定義されない条件を有する少なくとも一つの複合注文を受信するように構成される、請求項1に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  3. 前記トレーディング装置は、単一の品目に対する注文をサポートし、
    前記トレーディング装置は、無品目注文をサポートし、
    前記注文レシーバーが、
    購入品目、売却品目、取引の品目配分と代価授受、該注文に含まれる情報から派生した統計データ、変数であって、該変数の計算には、該注文に含まれる少なくとも何らかの情報を用いることが必要である、前記変数、無品目取引、少なくとも一つの複合注文に適した注文機能、および域内取引情報への影響から成る条件カテゴリーのグループから選択される条件を有する少なくとも一つの複合注文を受信するように構成され、
    前記注文レシーバーが、
    注文の価格インパクト、オークション規模、市場規模、流動性、応募超過、競争レベル、均衡性、分散度、需給不均衡、安定性、および市場の勢いから成るグループから選択される一つの概念を表わす変数の条件を有する少なくとも一つの複合注文を受信するように構成されている、請求項1に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  4. 前記トレーディング装置は、
    前記注文の提出、該注文の修正、該注文の取消し、有効かつ未決済の注文セットの生成、該注文の受領確認、該注文の一部の公表、および該注文に基づいて生成される取引からなるグループから選択された前記注文に関連するイベントを管理するように構成された注文管理部、
    前記注文と前記取引とのうちの少なくとも一つに基づいて、域内取引情報を報告および生成するように構成された域内取引情報モジュール、
    前記取引に関連する情報を格納するように構成された取引格納モジュール、
    取引報告命令を受信するように構成された命令レシーバー、
    前記トレーディングメカニズムを格納するように構成されたトレーディングメカニズム格納モジュール、および
    外部取引市場とデータベースとのうちの少なくとも一つと通信するように構成された外部通信モジュールであって、該外部取引市場は、該トレーディング装置を含む取引市場以外の取引市場である、前記外部通信モジュールのうちの少なくとも一つをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  5. 前記トレーディング装置は、
    外部取引市場とデータベースとのうちの少なくとも一つと通信するように構成された外部通信モジュールであって、該外部取引市場は、該トレーディング装置を含む取引市場以外の取引市場である、前記外部通信モジュールをさらに含み、
    前記外部通信モジュールは、
    前記注文の一部を前記外部取引市場へ送信するように構成された注文経路指定モジュールと、
    該外部取引市場と前記データベースとのうちの少なくとも一つからの情報にアクセスできるように構成された外生情報アクセス部とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  6. 前記トレーディング装置は、前記トレーディングメカニズムを格納するように構成されたトレーディングメカニズム格納モジュールをさらに含み、
    前記トレーディングメカニズム格納モジュールは、前記取引生成部によってアクセスできるように構成されている、請求項1〜3および5のいずれか1項に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  7. 前記トレーディング装置は、前記少なくとも一人のトレーダーによって選択されるように構成された選択可能注文入力フォームをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  8. 前記選択可能注文入力フォームが、
    文章指定子、数学的条件指定子、関数指定子、領域指定子、および少なくとも一人のトレーダーの取引目的からなる選択可能な注文入力フォームのグループから選択される、請求項7に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  9. 前記決済方法は、トレーディングフォーマットおよびタイブレーカーのうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  10. 該トレーディング装置によって用いられるトレーディングフォーマットが、
    第一価格オークションフォーマット、第二価格オークションフォーマット、第一価格組合せオークションフォーマット、第二価格組合せオークションフォーマット、差別価格オークションフォーマット、統一価格オークションフォーマット、差別価格組合せオークションフォーマット、統一価格組合せオークションフォーマット、ダブルオークションフォーマット、および組合せオークションフォーマット、取引市場フォーマット、提出される注文が数量だけから成る取引フォーマット、NYSEのマッチポイント、および現在システム内にある注文に一部基づく域内取引情報を送信するプラットフォームのうちの一つであること、
    取引目的の最適化は、生成された取引が少なくとも一つの評価基準に与える効果を考慮することを含むことのうちの少なくとも一つを特徴とし、該評価基準は、
    競売主催者の収益、競売主催者のコスト、取引利益、取引高、均衡性、分散度および価格安定性から成るグループから選択される、請求項9に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  11. 前記トレーディングメカニズムは、
    該トレーディングメカニズムに関連する少なくとも一つの取引ルール
    を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  12. 前記トレーディングメカニズムに関連する少なくとも一つの取引ルールは、
    注文に関するルール、換金に関するルール、品目候補セットに関するルール、および取引の決済時期に関するルールから成るグループから選択される、請求項11に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  13. 前記取引生成部は、格納された注文を該トレーディングメカニズムと比較するように構成されたコンパレーターと、該比較に基づいて該取引を執行する取引執行装置とを含むこと、
    前記取引生成部は、決済方法を実行する決済方法モジュールを含むこと、
    少なくとも一つの複合注文は、少なくとも一つの複合条件と、価格連動条件、経路指定条件、取引の影響を受けた条件、最低執行数量、および一括条件から成るグループから選択される少なくとも一つの非複合条件とを含むこと、
    該トレーディング装置が、ダイナミックオークションの少なくとも一つのラウンドで稼動すること、
    前記注文が、公共債、民間債、為替、手形、株式、投資信託証券、デリバティブ、オプション、クレジットデフォルトスワップ(CDS)、バリアンススワップ(VAR)、商品取引、電力、石油採掘権、排出権枠、排出権クレジット、不動産、オンライン広告権、特許、電波ライセンス、空港発着枠、データ容量、その他の有形、無形財から成るグループから選択される品目を対象としていること、および
    該トレーディング装置が、高度設定で稼動するように構成されていることのうちの少なくとも一つを提供する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のコンピューター可読記憶媒体。
  14. 前記トレーディング装置は、少なくとも一つの注文の特徴が満たされること、および取引の生成時の前記少なくとも一つの注文の役割のうちの少なくとも一つに基づいて、金銭授受を決定するように構成された会計モジュールをさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のコンピューター可読記憶媒体。
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