以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
(実施の形態1)
初めに、本発明の一実施形態である実施の形態1の鉄道車両及び交通システムについて説明する。本実施の形態1の鉄道車両は、鉄道車両及び自動車の走行に用いられる走行路上、及び、鉄道車両の走行に用いられる鉄道線路上を走行可能である。
<交通システム>
初めに、本実施の形態1の交通システムについて説明する。図1及び図2は、実施の形態1の交通システムを模式的に示す図である。
図1に示すように、本実施の形態1の交通システムは、走行路10と、鉄道線路20と、鉄道車両30と、を備えている。走行路10は、鉄道車両30及び自動車50の走行に用いられる。鉄道線路20は、走行路10に接続されており、鉄道車両30の走行に用いられる。即ち、鉄道車両30は、走行路10上、及び、鉄道線路20上を走行可能である。
走行路10は、走行路10(ある方向)に沿った舗装部11と、磁性部材12と、を有するが、それらの詳細な構成については、後述する。鉄道線路20は、通常の鉄道線路であり、2本のレール21を有する。2本のレール21は、鉄道線路20にそれぞれ沿っており、且つ、鉄道線路20の幅方向において、互いに間隔を空けて配置されている。
本実施の形態1の交通システムにおいては、鉄道車両30は、走行路10上において、例えば自動車50の前方又は後方を、当該自動車50との間隔を任意に制御して単独又は隊列として走行することができる。即ち、本実施の形態1の交通システムにおいては、鉄道車両30は、走行路10上を、自動車50と一緒に走行することができる。走行路10上を走行可能な鉄道車両30の詳細な構成については、後述する図3及び図4を用いて説明する。
鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムは、鉄道線路上を走行する鉄道車両の車幅方向における案内力が、鉄道用車輪に含まれるフランジにより発生するため、道路と自動車とを備えた交通システムに比べ、車両が走行する際に高い安全性及び高い信頼性を有することに、特長を有する。一方、道路と自動車とを備えた交通システムは、自動車のタイヤがゴム等の弾性体よりなるため、鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムに比べ、地上側設備の保守作業を行う作業量が少なくて済むことに、特長を有する。
また、鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムは、鉄道用車輪及び鉄道線路のいずれも鉄よりなるため、車両が走行する際の転がり抵抗が、道路と自動車とを備えた交通システムに比べて小さいこと、及び、車両が走行する際に消費するエネルギーが、道路と自動車とを備えた交通システムに比べて小さいことに、特長を有する。一方、道路と自動車とを備えた交通システムは、自動車のタイヤがゴム等の弾性体よりなるため、車両が走行する際のグリップ力が、鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムに比べて大きいこと、及び、車両が走行する際の操舵力又は案内力が、鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムに比べて大きいことに、特長を有する。
また、鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムは、高度な運行管理システムと、信号保安システムと、を備えているために、道路と自動車とを備えた交通システムに比べ、高速且つ高密度な輸送が可能であることに、特長を有する。一方、道路と自動車とを備えた交通システムは、鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムに比べ、高い利便性を有するドアツードア輸送が可能であること、及び、高い柔軟性を有するオンデマンド輸送が可能であることに、特長を有する。
本実施の形態1の交通システムでは、鉄道車両30及び自動車50が、走行路10上を走行可能である。これにより、鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムの特長と、道路と自動車とを備えた交通システムの特長とのいずれをも有する交通システムを実現することができる。
従って、本実施の形態1の交通システムでは、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に高い安全性及び高い信頼性を有し、且つ、走行路10の保守作業を行う作業量が少なくて済む。また、詳細は、後述する図3及び図4を用いて説明するものの、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に消費するエネルギーが小さく、且つ、鉄道車両30が走行路10上を走行する際の案内力を確保できる。また、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に高速で高密度な輸送が可能であり、且つ、高い利便性及び高い柔軟性を有する輸送が可能である。
図1に示すように、走行路10は、例えば高速道路等の道路60と併設することが好ましい。これにより、例えば建設コストを削減することができる。
図2に示すように、例えば中小都市としての都市CT1と都市CT2との間に、都市CT1と都市CT2とを結ぶ鉄道としての鉄道線路20と、都市CT1と都市CT2とを結ぶ道路60と、が並走して設けられていた場合を考える。また、都市CT1と都市CT2との間の地域RG1及びRG2のうち、地域RG2よりも都市CT1側に位置する地域RG1では、道路60は、鉄道線路20に比べ、曲がりくねっておらず、距離が短いものとする。また、都市CT1と都市CT2との間の地域のうち、地域RG1よりも都市CT2側に位置する地域RG2では、鉄道線路20は、道路60に比べ、曲がりくねっておらず、距離が短いものとする。
このような場合には、地域RG1において、道路60に、鉄道車両30(図1参照)及び自動車50(図1参照)が走行可能な走行路10を併設し、地域RG2において、鉄道線路20の一部を、鉄道車両30及び自動車50が走行可能な走行路10に変更することが好ましい。
これにより、地域RG1の走行路10と、地域RG2における走行路10及び鉄道線路20と、を備えた新たな交通システムを建設することができ、都市CT1と都市CT2とを結ぶ交通システムの距離を短くすることができる。そして、走行路10上及び鉄道線路20上を走行可能な鉄道車両30が走行路10上及び鉄道線路20上を走行することにより、従来の鉄道線路20上のみを走行する場合に比べ、都市CT1と都市CT2との間を移動する時間を短縮することができる。また、地域RG1及びRG2において、走行路10を建設するだけでよいので、都市CT1と都市CT2との間に新たな高速鉄道を建設する場合に比べて、例えば用地取得費用が少なくて済むことにより建設コストを削減することができる。
図1に示すように、本実施の形態1の交通システムは、走行路10と、鉄道線路20と、道路60と、鉄道車両30と、を備えていてもよく、走行路10に加えて、道路60も、鉄道車両30及び自動車50の走行に用いられてもよい。このような場合、道路60は、走行路10と接続されており、鉄道車両30の走行に用いられる。即ち、鉄道車両30は、走行路10上、鉄道線路20上、及び、道路60上を走行可能である。これにより、鉄道車両30が、道路60に面したあらゆる場所に到達することができるので、高い利便性を有するドアツードア輸送を更に容易に実現することができる。
<鉄道車両>
次に、本実施の形態1の鉄道車両30、即ち走行路10上を自動車50と一緒に走行可能な鉄道車両30について説明する。
図3は、実施の形態1の鉄道車両の側面図である。図4は、実施の形態1の鉄道車両の平面図である。なお、図3及び図4は、走行路10上を走行する際の鉄道車両30を示す。また、図4では、理解を簡単にするために、鉄道車両30の車体31を除去して車輪部32及び磁石部33を透視した状態を示す。
図5及び図6は、実施の形態1の鉄道車両が有する車輪部を示す正面図である。図5は、鉄道車両30が走行路10上を走行する際の鉄道用車輪38及びタイヤ付き車輪39を示し、図6は、鉄道車両30が鉄道線路20上を走行する際の鉄道用車輪38及びタイヤ付き車輪39を示す。
図3及び図4に示すように、鉄道車両30は、車体31と、複数の車輪部32と、磁石部33と、を有する。複数の車輪部32は、車体31を支持する。磁石部33は、車体31の下側に設けられた永久磁石34又は電磁石35を含む。なお、鉄道車両30が車体31を支持する台車36を有する場合には、台車36は、台車枠36aと、台車枠36aに軸受(図示は省略)を介して回転可能に設けられた複数の車輪部32を有する。
本願明細書において、車体31の下側に設けられている場合、とは、鉛直方向において、車体31の下面よりも下方に配置されている場合、又は、鉛直方向において、車体31の下面よりも上方であって、且つ、車体31の中央よりは下方に配置されている場合、を意味する。
走行路10は、舗装部11と、磁性部材12と、を有する。舗装部11は、走行路10(ある方向)に沿っており、例えばアスファルトよりなる。磁性部材12は、舗装部11の上面に埋め込まれ、且つ、磁性を有する。磁性部材12は、走行路10(ある方向)に沿って連続的に形成されている。磁性部材12として、各種の磁性鋼板、又は、鉄等の金属若しくはフェライト等の非金属等の各種の磁性材料を含有する各種の無機材料若しくは有機材料を用いることができ、磁性部材12は、例えば鉄板、又は、フェライト等を含有するアスファルトよりなる。
本願明細書において、磁性材料とは、磁性材料よりなる磁性部材が磁石に吸引又は吸着される材料であればよいので、常磁性、強磁性又はフェリ磁性を有する材料を意味する。
図4乃至図6に示すように、複数の車輪部32の各々は、車軸37と、鉄道用車輪38と、タイヤ付き車輪39と、を含む。車軸37は、車軸37の両端にある鉄道用車輪38とタイヤ付き車輪39を接続する一体構造ではなく、両端それぞれに独立して設けられる場合もある。
鉄道用車輪38は、車軸37に設けられている。鉄道用車輪38は、車輪本体部40と、フランジ部41と、を含む。車輪本体部40は、車軸37に設けられている。フランジ部41は、鉄道車両30の車幅方向において車輪本体部40よりも中心側に設けられている。車輪本体部40及びフランジ部41は、例えば鉄等の金属よりなる。
タイヤ付き車輪39は、ホイール部42と、タイヤ部43と、を含む。ホイール部42は、車軸37に設けられている。タイヤ部43は、ホイール部42の外周に装着されている。ホイール部42は、車軸37に設けられており、鉄道用車輪38と同軸且つ一体的に回転可能に設けられている。従って、タイヤ付き車輪39も、鉄道用車輪38と同軸且つ一体的に回転可能に設けられている。ホイール部42は、例えば鉄又はアルミニウム等の金属よりなり、タイヤ部43は、例えばゴム等の弾性体よりなる。
図4乃至図6に示す例では、鉄道用車輪38とタイヤ付き車輪39との組において、タイヤ付き車輪39は、鉄道車両30の車幅方向において、鉄道用車輪38よりも中心側と反対側に設けられている。しかし、タイヤ付き車輪39は、鉄道車両30の車幅方向において、鉄道用車輪38よりも中心側に設けられていてもよい。
本実施の形態1の鉄道車両30では、タイヤ付き車輪39の半径RD1が変更可能である。後述するように、タイヤ部43の内部に充填又は封入されている空気等の気体の圧力、又は、タイヤ部43の内部に充填又は封入されている樹脂の弾性率を変更し、タイヤ付き車輪39の半径RD1を変更することにより、鉄道車両30は、走行路10上、及び、鉄道線路20上を走行することができる。
図3及び図4に示すように、鉄道車両30は、更に、制御部CU1と、制御部CU2と、を有する。制御部CU1は、タイヤ付き車輪39の半径RD1(図5参照)を制御する。制御部CU2は、磁石部33と磁性部材12との間の磁気力を制御する。
制御部CU1は、鉄道用車輪38とタイヤ付き車輪39との組において、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に鉄道用車輪38に含まれるフランジ部41が走行路10の上面に接触せず、且つ、鉄道車両30が鉄道線路20上を走行する際にタイヤ付き車輪39が地上側設備に接触しないように、タイヤ付き車輪39の半径RD1を制御する。
これにより、タイヤ付き車輪39の外周面(踏面)が走行路10の上面に接触した状態で、鉄道車両30が走行路10上を走行することができ、且つ、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に、鉄道用車輪38が走行路10に接触することを防止することができる。そして、鉄道用車輪38に含まれる車輪本体部40の外周面(踏面)が鉄道線路20(図1参照)の上面に接触した状態で、鉄道車両30が鉄道線路20上を走行することができ、且つ、鉄道車両30が鉄道線路20上を走行する際に、タイヤ付き車輪39が鉄道線路20やその周辺の地上側設備に接触することを防止することができる。
なお、タイヤ付き車輪39が地上側設備に接触しない、とは、例えば鉄道車両30が鉄道用分岐器を通過する際に、鉄道用分岐器に含まれる分岐レールにタイヤ付き車輪39が接触しないことを意味する。
制御部CU2は、走行路10上を走行している鉄道車両30が緊急に減速及び逸脱防止する必要があるときに、磁石部33と磁性部材12との間の磁気力により鉄道車両30の制動力及び案内力が補われるように、即ち鉄道車両30の制動力と案内力がアシストされるように、磁気力を制御する。
図1に示したように、鉄道車両30が、走行路10上において、例えば自動車50の後方を、当該自動車50と間隔を空けて走行する場合には、鉄道車両30の制動距離を、自動車50の制動距離と略等しくすることが望ましい。しかし、鉄道車両30の重量が、自動車50の重量よりも大きいため、鉄道車両30の制動距離は、自動車50の制動距離に比べて長くなる場合が考えられる。そのような場合に、制御部CU2が、走行路10上を走行している鉄道車両30の制動力が補われるように、磁気力を制御することにより、鉄道車両30の制動距離を、自動車50の制動距離に近づけることができる。
図3及び図4に示す例では、鉄道車両30は、走行方向における前端部から後端部にかけて順次連結された車両CR1、CR2及びCR3を有する。このような場合、鉄道車両30の走行方向における長さを例えば20m程度とし、車両CR1及び車両CR3の各々の走行方向における長さを例えば8m程度とし、車両CR2の走行方向における長さを例えば4m程度とすることができる。これにより、例えば鉄道線路20の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する道路60に併設された走行路10上を容易に走行することができる。
なお、鉄道車両30の走行方向とは、鉄道車両30の車長方向であって、且つ、鉄道車両30が進行する方向と同一方向を意味する。
また、図3及び図4では図示を省略するものの、鉄道車両30は、例えば主電動機又はエンジン等の、車輪部32が有する鉄道用車輪38及びタイヤ付き車輪39を回転駆動することにより鉄道車両30が走行方向に推進する推進力を発生する推進部を有してもよい。即ち、鉄道車両30は、電車、燃料電池車、ハイブリッド車、ディーゼル車又はその他の各種の駆動方式を有する鉄道車両であってもよい。
また、鉄道車両30が主電動機を有する場合、鉄道車両30は、主電動機を駆動するために主電動機に供給する電力を架線(図示は省略)集電するための集電装置であるパンタグラフ44を有してもよい。また、鉄道車両30は、例えばブレーキ等の、鉄道車両30が走行方向と反対方向に制動する制動力を発生する制動部を有してもよい。
なお、鉄道車両30が、走行路10上、鉄道線路20上、及び、道路60上を走行可能であり、且つ、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数が変更可能である場合、制御部CU1は、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御する。そして、好適には、制御部CU1は、鉄道車両30が走行路10上を走行する際であって、且つ、通常走行時に、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、鉄道車両30が道路60上を走行する際のタイヤ部43の道路60の路面に対する摩擦係数と比較して、同程度以下となるように、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御する。
なお、本願明細書では、ある値と比較して同程度以下であるとは、その値の例えば120%以下であることを意味してもよく、その値よりも小さくなる場合を含んでもよい。或いは、タイヤ部43の道路60の路面に対する摩擦係数が下限値と上限値とを備えた一定の範囲を有してもよく、そのような場合には、同程度以下であるとは、タイヤ部43の道路60の路面に対する摩擦係数の上限値以下であることを意味してもよい。
これにより、走行路10上でのタイヤ付き車輪39の転がり抵抗を、道路60上でのタイヤ付き車輪39の転がり抵抗よりも小さくすることができるので、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に消費するエネルギーを低減することができる。一方、走行路10上を走行する鉄道車両30が緊急に減速する必要があるときには、制御部CU2が、鉄道車両30の制動力が補われるように、磁石部33と磁性部材12との間の磁気力を制御するため、走行路10上でのタイヤ付き車輪39の転がり抵抗が小さい状態であっても、走行路10上を走行している鉄道車両30の制動距離を短くすることができる。そのため、鉄道車両30が走行路10上を走行する際の安全性及び経済性を両立させることができる。
また、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、タイヤ部43の道路60の路面に対する摩擦係数と同等かそれ以上となるように制御すれば、走行用の消費エネルギーの低減は実現しなくなるが、制動距離を一層短くすることや、路面状態が滑りやすい場合のタイヤスリップ防止に寄与する。即ち、制御部CU1は、鉄道車両30が走行路10上を走行する際であって、且つ、急制動時及びスリップ発生時は、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、鉄道車両30が道路60上を走行する際のタイヤ部43の道路60の路面に対する摩擦係数と比較して、同程度以上となるように、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御する。
なお、本願明細書では、ある値と比較して同程度以上であるとは、その値の例えば80%以上であることを意味してもよく、その値よりも大きくなる場合を含んでもよい。或いは、タイヤ部43の道路60の路面に対する摩擦係数が下限値と上限値とを備えた一定の範囲を有してもよく、そのような場合には、同程度以上であるとは、タイヤ部43の道路60の路面に対する摩擦係数の下限値以上であることを意味してもよい。
<タイヤ付き車輪>
次に、図5及び図6を引き続き参照し、本実施の形態1の鉄道車両30が有するタイヤ付き車輪について説明する。
図5及び図6に示すように、鉄道用車輪38に含まれる車輪本体部40は、半径RD2を有し、鉄道用車輪38に含まれるフランジ部41は、半径RD2よりも大きい半径RD3を有する。タイヤ部43をタイヤ付き車輪39の径方向に膨張又は収縮させることにより、タイヤ付き車輪39の半径RD1が変更可能である。
制御部CU1(図3参照)は、鉄道用車輪38とタイヤ付き車輪39との組において、図5に示すように、鉄道車両30(図3参照)が走行路10(図3参照)上を走行する際に半径RD1が半径RD3よりも大きくなるように、タイヤ部43をタイヤ付き車輪39の径方向に膨張させることにより半径RD1を制御する。そして、制御部CU1は、鉄道用車輪38とタイヤ付き車輪39との組において、図6に示すように、鉄道車両30が鉄道線路20(図1参照)上を走行する際に半径RD1が半径RD2よりも小さくなるように、タイヤ部43をタイヤ付き車輪39の径方向に収縮させることにより半径RD1を制御する。
これにより、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に、鉄道用車輪38が走行路10に接触することを、確実に防止することができる。そして、鉄道車両30が鉄道線路20上を走行する際に、タイヤ付き車輪39が地上側設備に接触することを、確実に防止することができる。
なお、車輪本体部40の車幅方向における中心側と反対側(フランジ部41側と反対側)の部分の半径は、車輪本体部40の車幅方向における中心側(フランジ部41側)の部分の半径よりも短い。そのため、本願明細書において、車輪本体部40が有する半径RD2とは、車輪本体部40の半径の最大値、即ち車輪本体部40の車幅方向における中心側(フランジ部41側)の部分の半径を意味する。
また、制御部CU1(図3参照)は、鉄道車両30が鉄道線路20上を走行する際には、半径RD1が車輪本体部40の車幅方向における中心側と反対側(フランジ部41側と反対側)の部分の半径よりも小さくなるように、半径RD1を制御してもよい。これにより、鉄道車両30が鉄道線路20上を走行する際に、タイヤ付き車輪39が地上側設備に接触することを、更に確実に防止することができる。
図7及び図8は、実施の形態1の鉄道車両が有するタイヤ付き車輪を示す断面図である。図7は、タイヤ部43の内部に空気等の気体が充填されている場合を示し、図8は、タイヤ部43の内部に樹脂が充填されている場合を示す。なお、後述する実施の形態2の自動車50が有する車輪52の断面構造も、実施の形態1の鉄道車両30が有するタイヤ付き車輪39の断面構造と同様にすることができるので、図7及び図8は、便宜的に、実施の形態2の自動車50が有する車輪52の断面構造も示すものとする。
図7に示すように、タイヤ部43の内部には、例えば空気等の気体が充填又は封入されていてもよく、制御部CU1(図3参照)は、タイヤ部43の内部に充填又は封入されている気体の圧力を変更することにより、半径RD1(図5参照)を変更してもよい。なお、タイヤ部43は、タイヤ43aと、タイヤ43aとホイール部42との間の空間43bと、を含み、タイヤ部43の内部とは、空間43bを意味する。
具体的には、制御部CU1は、鉄道車両30(図3参照)が走行路10(図3参照)上を走行する際には、気体の圧力を増加させてタイヤ部43をタイヤ付き車輪39の径方向に膨張させることにより、半径RD1が半径RD3(図5参照)よりも大きくなるように制御してもよい。そして、制御部CU1は、鉄道車両30が鉄道線路20(図1参照)上を走行する際には、気体の圧力を減少させてタイヤ部43をタイヤ付き車輪39の径方向に収縮させることにより、半径RD1が半径RD2よりも小さくなるように制御してもよい。このような方法により、制御部CU1は、タイヤ付き車輪39の半径RD1を容易に制御することができる。
なお、鉄道車両30が、走行路10上、鉄道線路20上、及び、道路60(図1参照)上を走行可能であり、且つ、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数が変更可能である場合を考える。このような場合には、制御部CU1は、タイヤ部43の内部に充填又は封入されている気体の圧力を変更することにより、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御してもよい。
具体的には、鉄道車両30が走行路10上を走行する際の気体の圧力を、鉄道車両30が道路60上を走行する際の気体の圧力よりも増加させることにより、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、タイヤ部43の道路60の路面に対する摩擦係数よりも小さくなるように制御してもよい。
或いは、図8に示すように、タイヤ部43の内部には、弾性率、硬度又は粘度が変更可能な樹脂43cが充填又は封入されていてもよく、制御部CU1(図3参照)は、タイヤ部43の内部に充填又は封入されている樹脂43cの弾性率、硬度又は粘度を変更することにより、半径RD1(図5参照)を変更してもよい。なお、樹脂43cは、タイヤ43aとホイール部42との間の空間43bに充填されている。
具体的には、制御部CU1は、鉄道車両30(図3参照)が走行路10(図3参照)上を走行する際には、樹脂43cの弾性率、硬度又は粘度を増加させてタイヤ部43をタイヤ付き車輪39の径方向に膨張させることにより、半径RD1が半径RD3(図5参照)よりも大きくなるように制御してもよい。そして、制御部CU1は、鉄道車両30が鉄道線路20(図1参照)上を走行する際には、樹脂43cの弾性率、硬度又は粘度を減少させてタイヤ部43をタイヤ付き車輪39の径方向に収縮させることにより、半径RD1が半径RD2よりも小さくなるように制御してもよい。このような方法によっても、制御部CU1は、タイヤ付き車輪39の半径RD1を容易に制御することができる。
このような樹脂43cとして、各種の有機材料よりなる樹脂、又は、各種の無機材料を含有する各種の有機材料よりなる樹脂を用いることができる。一例として、電気粘性(Electro−Rheological:ER)流体をゲル化したゲルであって、電界を印加することによって表面の粘着特性が変更可能な電気粘着ゲル(Electro-Adhesive Gel:EAG)を用いることができる。
なお、鉄道車両30が、走行路10上、鉄道線路20上、及び、道路60(図1参照)上を走行可能であり、且つ、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数が変更可能である場合を考える。このような場合には、制御部CU1は、タイヤ部43の内部に充填又は封入されている樹脂43cの弾性率を変更することにより、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御してもよい。
具体的には、鉄道車両30が走行路10上を走行する際の樹脂の弾性率を、鉄道車両30が道路60上を走行する際の樹脂の弾性率よりも増加させることにより、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、タイヤ部43の道路60の路面に対する摩擦係数よりも小さくなるように制御してもよい。
<磁石部>
次に、本実施の形態1の鉄道車両が有する磁石部の各種の例について、当該鉄道車両の走行に用いられる走行路の種類に対応させて説明する。なお、以下に示す各種の例を、単独で用いてもよく、複数の例を組み合わせて用いてもよい。
図9乃至図11、図13及び図16は、実施の形態1の鉄道車両が有する磁石部及び車輪部並びに走行路を模式的に示す正面図である。図12、図14及び図15は、実施の形態1の鉄道車両が有する磁石部に含まれる複数の電磁石を模式的に示す平面図である。図17は、実施の形態1の交通システムのうち、図16に示す走行路付近の部分を示す図である。
なお、図12、図14及び図15においては、複数の電磁石が有する磁極であって、走行路10側(下側)に形成される磁極を示し、「N」はN極を意味し、「S」はS極を意味する。また、図17においては、磁性部材12の図示を省略している。
また、図12、図14及び図15においては、鉄道車両30又は自動車50の走行方向をX軸方向とし、鉄道車両30又は自動車50の車幅方向をY軸方向とし、鉛直方向であって、且つ、上方に向かう方向をZ軸方向としている。
また、後述する実施の形態2の自動車50(後述する図19参照)が有する複数の電磁石55b及び55cの平面配置も、実施の形態1の鉄道車両30が有する複数の電磁石35b及び35cの平面配置と同様にすることができる。そのため、図12、図14及び図15は、便宜的に、実施の形態2の自動車50が有する複数の電磁石55b及び55cの平面配置も示すものとする。
図9乃至図11に示す例では、走行路10としての走行路10aは、舗装部11としての舗装部11aと、磁性部材12としての磁性部材12aと、のみを有する。舗装部11aは、走行路10a(ある方向)に沿っており、例えばアスファルトよりなる。磁性部材12aは、舗装部11aの上面に埋め込まれ、且つ、磁性を有し、例えば鉄板、又は、フェライト等を含有するアスファルトよりなる。磁性部材12aは、走行路10a(ある方向)に沿って連続的に形成されている。
なお、磁性部材12aのうち、走行路10aの路幅方向における中心側と反対側の部分を、磁性部材12aの側面部13と称する場合、図9乃至図11に示すように、側面部13の上部13aは、側面部13の下部13bよりも路幅方向に後退しており、磁性部材12aは、側面部13の下部13bが上下両側から舗装部11aに挟まれるように、舗装部11aの上面に埋め込まれている。これにより、磁性部材12aを舗装部11aに確実に埋め込むことができるので、磁石部33により磁性部材12aに上方に磁気力としての磁気吸引力が印加された場合でも、磁性部材12aが上方に動かないように、磁性部材12aを確実に固定することができる。
まず、図9に示す例を説明する。図9に示す例では、磁石部33としての磁石部33aは、高さ位置が変更可能な永久磁石34を含み、制御部CU2は、永久磁石34と磁性部材12aとの間の磁気力としての磁気吸引力を制御する。
好適には、制御部CU2は、鉄道車両30が走行路10a上を通常走行しているときに、永久磁石34を高さ位置HP1よりも高い高さ位置HP2に上昇させて走行路10aから遠ざけることにより磁気吸引力を制御する。そして、制御部CU2は、走行路10a上を走行している鉄道車両30が緊急に減速及び逸脱防止する必要があるときに、永久磁石34を高さ位置HP2よりも低い高さ位置HP1に下降させて走行路10aに近づけることによって、磁気力により鉄道車両30の制動力及び案内力が補われるように、磁気吸引力を制御する。
このとき、永久磁石34と磁性部材12aとの間に磁気吸引力が作用することにより、タイヤ付き車輪39が走行路10aに(下方に)押し付けられて、タイヤ部43(図5参照)の舗装部11aの上面に対する摩擦係数が大きくなるので、鉄道車両30の制動力を補うことができる。或いは、制御部CU2が、永久磁石34を下降させて走行路10aの磁性部材12aに接触させて吸着させることにより、永久磁石34が走行路10aの磁性部材12aに吸着し、永久磁石34と走行路10aとの間の摩擦係数が大きく、永久磁石34と走行路10aの磁性部材12aとの間の磁気吸引力も最大となるようにしてもよい。このような場合として、例えば横転防止の必要があるときが挙げられる。なお、後述する図10に示す例でも、横転防止の必要があるときに、制御部CU2が、電磁石35aを走行路10aの磁性部材12aに吸着させることにより磁気力を最大化してもよい。
磁石部33aが電磁石ではなく永久磁石34を含むことにより、電磁石に電流を流す必要がないので、鉄道車両30が走行路10a上を走行する際に鉄道車両30が消費するエネルギーを低減することができる。また、例えばばね及び止め金具等により永久磁石34を緊急時に下降可能に保持することにより、例えば停電時でも永久磁石34を下降して走行路10aに近づけることができ、鉄道車両30の制動力と案内力を確実に補うことができる。
また、好適には、永久磁石34は、走行方向における前方及び後方に走行可能な鉄道車両30に含まれる各車両CR1、CR2及びCR3の前端部及び後端部に設けられる。そして、鉄道車両30が走行方向における前方に走行する際に、各車両の後端部に設けられた永久磁石34が磁石部33aとして用いられ、鉄道車両30が走行方向における後方に走行する際に、各車両の前端部に設けられた永久磁石34が磁石部33aとして用いられる。これにより、緊急時に永久磁石34を下降させて走行路10aに接触させた場合でも、鉄道車両30を安全に制動することができる。
次に、図10に示す例を説明する。図10に示す例では、磁石部33としての磁石部33bは、電磁石35として、電流を流すことにより磁界を形成する電磁石35aを含み、制御部CU2は、電磁石35aと磁性部材12aとの間の磁気力を制御する。磁石部33bは、電磁石35aを複数個有していなくてもよく、磁石部33bは、電磁石35aを1個のみ有してもよい。
好適には、制御部CU2は、鉄道車両30が走行路10a上を通常走行しているときに、電磁石35aに磁界を発生させず、且つ、走行路10a上を走行している鉄道車両30が緊急に減速及び逸脱防止する必要があるときに、電磁石35aに磁界を形成させることによって、磁気力により鉄道車両30の制動力及び案内力が補われるように、磁気力を制御する。
このとき、電磁石35aと磁性部材12aとの間に磁気吸引力が作用することにより、タイヤ付き車輪39が走行路10aに(下方に)押し付けられて、タイヤ部43(図5参照)の舗装部11aの上面に対する摩擦係数が大きくなるので、鉄道車両30の制動力を補うことができる。このとき更に、電磁石35aが磁性部材12aの上方から逸脱し始めた場合には、磁気吸引力の、鉄道車両30の車幅方向(後述する図12に示すY軸方向)の分力として案内力が得られる。
磁石部33bが永久磁石ではなく電磁石35aを含むことにより、電磁石35aに流す電流量を変更することにより電磁石35aが形成する磁界の強度を変更することができるので、電磁石35aと磁性部材12aとの間の磁気力の大きさを変更することができ、鉄道車両30の制動力及び案内力を補う量を必要に応じて制御することができる。
次に、図11及び図12に示す例を説明する。図11及び図12に示す例では、磁石部33としての磁石部33cは、電磁石35として、電流を流すことにより磁界を形成する電磁石35bを複数個含み、制御部CU2は、複数の電磁石35bの各々と磁性部材12aとの間の磁気力を制御する。複数の電磁石35bは、例えば鉄道車両30の走行方向(図12のX軸方向)及び車幅方向(図12のY軸方向)にマトリクス状に配列されている。
好適には、制御部CU2は、鉄道車両30が走行路10a上を通常走行しているときに、複数の電磁石35bに磁界を発生させず、且つ、走行路10a上を走行している鉄道車両30が緊急に減速及び逸脱防止する必要があるときに、複数の電磁石35bに磁界を形成させることによって、磁気力により鉄道車両30の制動力及び案内力が補われるように、磁気力を制御する。このとき、複数の電磁石35bの各々と磁性部材12aとの間に磁気吸引力が作用することにより、タイヤ付き車輪39が走行路10aに(下方に)押し付けられて、タイヤ部43(図5参照)の舗装部11aの上面に対する摩擦係数が大きくなるので、鉄道車両30の制動力を補うことができる。このとき更に、電磁石35bが磁性部材12aの上方から逸脱し始めた場合には、磁気吸引力の車幅方向(Y軸方向)の分力として案内力が得られる。
図12では、鉄道車両30が緊急に減速する必要があるときに、マトリクス状に配列された電磁石35bのうち、走行方向(X軸方向)に配列された複数の電磁石35bの各々が、互いに等しい極性であって、S極又はN極のうちいずれかである極性を有し、且つ、電磁石35bの各々の下側に形成されている磁極を有することが示されている。
磁性部材12aとして、例えば鉄板よりなる磁性部材12aを用いる場合、磁性部材12aは、導電性を有する。磁性部材12aが導電性を有する場合、複数の電磁石35bと、走行路10aに沿って連続的に形成された磁性部材12aとにより、リニア誘導モータLM1が形成される。なお、リニア誘導モータLM1が形成されるためには、複数の電磁石35bは、少なくとも鉄道車両30の走行方向(X軸方向)に沿って配列されていればよい。
本願明細書において、導電性を有する、とは、半導体の導電率よりも高い導電率を有することを意味し、導電率(電気抵抗率の逆数)が105Sm−1以上、即ち電気抵抗率が10−5Ωm以下であることを意味する。
なお、後述する図14を用いて説明するのと同様に、制御部CU2は、鉄道車両30が走行路10a上を走行する際に、複数の電磁石35bにより形成される磁界が、走行方向と反対方向に移動するように、複数の電磁石35bの各々に流れる電流を制御することによって、磁気力により走行方向における鉄道車両30の推進力が補われるように、磁気力を制御してもよい。或いは、図12に示す例でも、後述する図15を用いて説明するのと同様に、制御部CU2は、鉄道車両30が走行路10a上を走行する際に、複数の電磁石35bにより形成される磁界が、走行方向と反対方向に対して平面視で傾斜した方向に移動するように、複数の電磁石35bの各々に流れる電流を制御することにより、走行方向における鉄道車両30の推進力が補われるとともに、車幅方向における鉄道車両30の案内力が発生して増大するように、磁気力を制御してもよい。即ち、制御部CU2は、鉄道車両30が走行路10a上を走行する際に、複数の電磁石35bと磁性部材12aとの間の磁気力により、鉄道車両30の推進力及び案内力、又は、鉄道車両30の制動力及び案内力が補われるように、複数の電磁石35bと磁性部材12aとの間の磁気力を制御してもよい。
しかし、磁性部材12aが導電性を有する場合、磁性部材12aは、例えば銅又はアルミニウム等の導電性材料の導電率よりも低い導電率を有する、例えば鉄等の磁性材料よりなる。そのため、リニア誘導モータLM1が鉄道車両30を駆動する駆動力は、後述する図13を用いて説明するように、走行路10bが例えば銅又はアルミニウム等の導電性材料よりなる導電性部材14を有する場合に複数の電磁石35cと導電性部材14とにより形成されるリニア誘導モータLM2が鉄道車両30を推進する推進力に比べて小さい。
次に、図13乃至図15に示す例を説明する。図13乃至図15に示す例では、交通システムは、走行路10a(図9参照)に加えて、鉄道車両30及び自動車の走行に用いられる走行路10としての走行路10bを有する。即ち、鉄道車両30は、走行路10b上を走行可能である。走行路10bは、走行路10a又は鉄道線路20(図1参照)に接続されている。なお、交通システムは、走行路10aを有さず、走行路10bのみを有してもよいが、例えば鉄板の材料コストよりも高い材料コストを有する銅板等を用いなくて済む走行路10aを有することにより、交通システムの建設コストを削減することができる。
走行路10bは、走行路10aと同様に、舗装部11としての舗装部11bと、磁性部材12としての磁性部材12bと、を有する。舗装部11bは、走行路10aが有する舗装部11aと同様に、走行路10b(ある方向)に沿っており、例えばアスファルトよりなる。磁性部材12bは、走行路10aが有する磁性部材12a(図9参照)と同様に、舗装部11bの上面に埋め込まれ、且つ、磁性を有し、例えば鉄板、又は、フェライト等を含有するアスファルトよりなる。磁性部材12bは、走行路10b(ある方向)に沿って連続的に形成されている。
一方、走行路10bは、走行路10aと異なり、導電性部材14を有する。導電性部材14は、舗装部11bの上面に埋め込まれ、且つ、磁性部材12bの導電性よりも高い導電性を有する。なお、磁性部材12bが導電性を有さず、導電性部材14のみが導電性を有してもよい。導電性部材14は、走行路10bに沿って連続的に形成されている。
本願明細書において、導電性を有しない、とは、半導体の導電率と同等か又は半導体の導電率よりも低い導電性を有することを意味し、導電率(電気抵抗率の逆数)が105Sm−1未満、即ち電気抵抗率が10−5Ωmを超えることを意味する。
図13乃至図15に示す例では、磁石部33としての磁石部33dは、電磁石35としての電磁石35cを複数個含み、制御部CU2は、複数の電磁石35cの各々と磁性部材12bとの間の磁気力、及び、複数の電磁石35cの各々と導電性部材14との間の磁気力を制御する。複数の電磁石35cは、例えば鉄道車両30の走行方向(図14のX軸方向)及び車幅方向(図14のY軸方向)にマトリクス状に配列されている。即ち、図13乃至図15に示す磁石部33dは、図11及び図12に示した磁石部33cと同様の磁石部である。
複数の電磁石35cと、走行路10bに沿って連続的に形成された導電性部材14とにより、リニア誘導モータLM2が形成される。なお、リニア誘導モータLM2が形成されるためには、複数の電磁石35cは、少なくとも鉄道車両30の走行方向(X軸方向)に沿って配列されていればよい。
図14に示すように、好適には、制御部CU2は、鉄道車両30が走行路10b上を走行する際に、複数の電磁石35cにより形成される磁界が、走行方向と反対方向に移動するように、複数の電磁石35cの各々に流れる電流を制御することにより、走行方向における鉄道車両30の推進力が補われるように、複数の電磁石35cと導電性部材14との間の磁気力を制御する。
このとき、複数の電磁石35cにより形成される磁界が、見かけ上走行方向と反対方向に移動することにより、導電性部材14の内部に誘導電流が流れ、リニア誘導モータLM2が導電性部材14を走行方向と反対方向(後方)に押す力が発生する。そのため、逆に鉄道車両30が導電性部材14から走行方向(前方)に鉄道車両30を推進する推進力を受けることになり、鉄道車両30の推進力を補うことができる。
導電性部材14に含まれる例えば銅又はアルミニウム等の導電性材料は、例えば鉄等の磁性材料の導電率よりも高い導電率を有する。そのため、鉄道車両30が走行路10b上を走行する際にリニア誘導モータLM2が鉄道車両30を推進する推進力は、鉄道車両30が走行路10a上を走行する際にリニア誘導モータLM1が鉄道車両30を推進する推進力に比べて大きい。
走行路10が走行路10に沿って勾配を有する場合には、走行路10として、走行路10aに代えて走行路10bを設けることが望ましい。これにより、走行路10のうち上り勾配を有する部分でも、鉄道車両30が速度を減少させることなく走行することができる。
図示は省略するものの、好適には、制御部CU2は、走行路10b上を走行する鉄道車両30が緊急に減速する必要があるときに、複数の電磁石35cにより形成される磁界が、走行方向に移動するように、複数の電磁石35cの各々に流れる電流を制御することにより、走行方向における鉄道車両30の制動力が補われるように、複数の電磁石35cと磁性部材12bとの間の磁気力を制御する。
このとき、複数の電磁石35cにより形成される磁界が、見かけ上走行方向に移動することにより、導電性部材14の内部に誘導電流が流れ、リニア誘導モータLM2が導電性部材14を走行方向(前方)に押す力が発生する。そのため、逆に鉄道車両30が導電性部材14から走行方向と反対方向(後方)に鉄道車両30を制動する制動力を受けることになり、鉄道車両30の走行方向の制動力を補うことができる。
鉄道車両30が走行路10b上を走行する際にリニア誘導モータLM2が鉄道車両30を制動する制動力は、鉄道車両30が走行路10a上を走行する際にリニア誘導モータLM1が鉄道車両30を制動する制動力に比べて大きい。そのため、前述したように、走行路10が勾配を有する場合に、走行路10として、走行路10aに代えて走行路10bを設けることにより、走行路10のうち下り勾配を有する部分でも、鉄道車両30が緊急時に確実に速度を減少させることができる。
図15に示すように、好適には、制御部CU2は、鉄道車両30が走行路10b上を走行する際に、複数の電磁石35cにより形成される磁界が、走行方向と反対方向に対して平面視で傾斜した方向に移動するように、複数の電磁石35cの各々に流れる電流を制御することにより、走行方向における鉄道車両30の推進力が補われるとともに、車幅方向における鉄道車両30の案内力が発生して増大するように、複数の電磁石35cと導電性部材14との間の磁気力を制御する。即ち、制御部CU2は、鉄道車両30が走行路10b上を走行する際に、複数の電磁石35cと導電性部材14との間の磁気力により、鉄道車両30の推進力及び案内力、又は、鉄道車両30の制動力及び案内力が補われるように、複数の電磁石35cと導電性部材14との間の磁気力を制御する。
このとき、複数の電磁石35cにより形成される磁界が、見かけ上車幅方向に移動することにより、導電性部材14の内部に誘導電流が流れ、リニア誘導モータLM2が導電性部材14を車幅方向に押す力が発生する。そのため、逆に鉄道車両30が導電性部材14から車幅方向に案内する案内力を受けることになり、鉄道車両30の車幅方向の案内力を向上させることができる。
なお、前述した図12を用いて説明したのと同様に、制御部CU2は、鉄道車両30が走行路10b上を通常走行しているときに、複数の電磁石35cに磁界を発生させず、且つ、走行路10b上を走行している鉄道車両30が緊急に減速及び逸脱防止する必要があるときに、複数の電磁石35cに磁界を形成させることにより、磁気力としての磁気吸引力により鉄道車両30の制動力及び案内力が補われるように、磁気力を制御してもよい。
次に、図16及び図17に示す例を説明する。図16及び図17に示す例では、交通システムは、走行路10aに加えて、鉄道車両30の走行に用いられる走行路10としての走行路10cを有する。即ち、鉄道車両30は、走行路10c上を走行可能である。走行路10cは、走行路10a又は鉄道線路20に接続されている。
走行路10cは、走行路10aと同様に、舗装部11としての舗装部11cと、磁性部材12としての磁性部材12cと、を有する。舗装部11cは、走行路10aが有する舗装部11aと同様に、走行路10c(ある方向)に沿っており、例えばアスファルトよりなる。磁性部材12cは、走行路10aが有する磁性部材12aと同様に、舗装部11cの上面に埋め込まれ、且つ、磁性を有し、例えば鉄板、又は、フェライト等を含有するアスファルトよりなる。磁性部材12cは、走行路10c(ある方向)に沿って連続的に形成されている。
一方、走行路10cは、走行路10aと異なり、電磁石15を有する。電磁石15は、舗装部11cの上面に埋め込まれ、且つ、交流電流を流すことにより交流磁界を形成する。なお、走行路10cが複数の電磁石15を有する場合には、複数の電磁石15は、走行路10cに沿って配列されている。
図16に示す例では、磁石部33としての磁石部33eは、電磁石35として、電流を流すことにより磁界を形成する電磁石35dを複数個含み、制御部CU2は、複数の電磁石35dと磁性部材12cとの間の磁気力を制御する。複数の電磁石35dは、例えば鉄道車両30の走行方向及び車幅方向にマトリクス状に配列されている。即ち、図16に示す磁石部33eは、図11に示した磁石部33cと同様の磁石部である。複数の電磁石35dと、走行路10cに沿って連続的に形成された磁性部材12cとにより、リニア誘導モータLM3が形成される。なお、リニア誘導モータLM3が形成されるためには、複数の電磁石35dは、少なくとも鉄道車両30の走行方向に沿って配列されていればよい。
また、図16及び図17に示す例では、鉄道車両30が走行路10c上を走行する際に、交流磁界を形成する電磁石15と、複数の電磁石35dとの間で電磁誘導により電力が授受される。これにより、鉄道車両30が走行路10c上を走行する際に、地上側設備から鉄道車両30に電力を非接触で供給することができるほか、鉄道車両30において余剰となった電力を非接触で地上側設備に回生することができる。
なお、図17に示すように、走行路10cは、複数の電磁石15を有してもよく、また、図示は省略するものの、磁石部33は、電磁石35としての電磁石35dを、1個のみ含んでもよい。また、複数の電磁石35dと複数の電磁石15とにより形成されるリニア誘導モータを用いて、鉄道車両30の推進力又は制動力を補うことができる。
図17に示すように、走行路10cは、走行路10aと鉄道線路20との間に設けられていてもよい。即ち、鉄道線路20が、走行路10cを介して走行路10aに接続されていてもよい。また、実施の形態1の交通システムは、走行路10cと鉄道線路20との間に設けられた走行路10dを有してもよい。走行路10dは、2本のレール21と、2つのスロープ16と、を有する。2本のレール21は、走行路10dの幅方向において互いに間隔を空けて配置されている。2つのスロープ16は、2本のレール21の各々よりも走行路10dの幅方向における中心側と反対側にそれぞれ配置されている。2つのスロープ16の各々の上面は、走行路10c側の端部から鉄道線路20側の端部に向かって、高さ位置が低くなるように、傾斜している。
これにより、鉄道車両30が走行路10d上を走行する際に、タイヤ付き車輪39の半径RD1(図5参照)を減少させることにより、タイヤ付き車輪39がスロープ16に接触した状態から鉄道用車輪38がレール21に接触した状態に滑らかに変化させることができ、走行路10a上及び走行路10c上を走行してきた鉄道車両30が、鉄道線路20上に進入することができる。また、鉄道車両30が走行路10d上を走行する際に、タイヤ付き車輪39の半径RD1を増加させることにより、鉄道用車輪38がレール21に接触した状態からタイヤ付き車輪39がスロープ16に接触した状態に滑らかに変化させることができ、鉄道線路20上を走行してきた鉄道車両30が、走行路10c上及び走行路10a上を走行することができる。
また、走行路10dは、複数の電磁石17と、架線22と、を有し、複数の電磁石17及び架線22には、変電所23から電力が供給されてもよい。これにより、鉄道車両30が走行路10d上を走行する際に、複数の電磁石17及び電磁石35dを介して電力が供給される状態から、架線22及びパンタグラフ44を介して電力が供給される状態に変更することができ、走行路10a上及び走行路10c上を走行してきた鉄道車両30が、鉄道線路20上に進入することができる。また、鉄道車両30が走行路10d上を走行する際に、架線22及びパンタグラフ44を介して電力が供給される状態から、複数の電磁石17及び電磁石35dを介して電力が供給される状態に変更することができ、鉄道線路20上を走行してきた鉄道車両30が、走行路10c上及び走行路10a上を走行することができる。なお、変電所23から複数の電磁石15に電力が供給されてもよい。
なお、走行路10dは、駅24を有してもよい。これにより、走行路10dで駅24に停車している間に、鉄道用車輪38とタイヤ付き車輪39との間の切り替え、及び、複数の電磁石17及び電磁石35dを介しての電力の供給と、架線22及びパンタグラフ44を介しての電力の供給との間の切り替えを行うことができるので、交通システムの利便性が高まる。
また、前述したように、図17においては、磁性部材12a(図9参照)及び磁性部材12c(図16参照)の図示を省略しているが、走行路10cについては、走行路10cが磁性部材12cを有さないものであってもよい。
<制御方法>
次に、本実施の形態1の鉄道車両が有する制御部を用いた制御方法の例について説明する。図18は、実施の形態1の鉄道車両が有する情報入力部、演算部及び制御部の構成を示すブロック図である。
図18に示すように、鉄道車両30は、例えば情報入力部RU1と、演算部OU1と、制御部CU1と、制御部CU2と、を有する。
情報入力部RU1には、鉄道車両30の内部又は外部のネットワークNW1から各種の情報が入力され、情報入力部RU1は、入力された各種の情報を取得する。情報入力部RU1には、各種の情報が入力される。情報入力部RU1は、例えば気象情報入力部RU11と、路面情報入力部RU12と、他車情報入力部RU13と、管制情報入力部RU14と、緊急情報入力部RU15と、を含む。鉄道車両30の外部のネットワークNW1からの各種の情報は、例えば無線通信により情報入力部RU1に入力される。
気象情報入力部RU11には、鉄道車両30の内部又は外部のネットワークNW1から、降雪、降水又は風等に関する気象情報が入力される。路面情報入力部RU12には、鉄道車両30の内部又は外部のネットワークNW1から、積雪、水たまり、障害物、勾配又は曲線等に関する路面情報が入力される。他車情報入力部RU13には、鉄道車両30の外部のネットワークNW1として、他の鉄道車両30、又は、他の自動車50から情報が入力され、例えば前方走行車両からのセンシング情報又は走行情報等が入力される。管制情報入力部RU14には、鉄道車両30の内部又は外部のネットワークNW1から、経路情報、隊列情報又は運行指示情報等が入力される。緊急情報入力部RU15には、鉄道車両30の内部又は外部のネットワークNW1から、地震又は乗員異常等に関する緊急情報が入力される。
演算部OU1は、情報入力部RU1から送られた各種の情報に基づいて、各種の制御パラメータの演算を行い、演算された制御パラメータを制御部CU1及びCU2に送る。これにより、情報入力部RU1に入力された各種の情報に基づいて、最適な制御パラメータを演算することができるので、鉄道車両30が走行路10上を走行する際の安全性及び経済性を向上させることができる。
鉄道車両30の内部に設けられた演算部OU1のみが演算を行ってもよい。或いは、情報入力部RU1が取得した情報の種類が膨大であるか又は演算量が膨大である場合、鉄道車両30の外部のネットワークNW1に設けられた外部演算部OU2に情報を送信して大部分の演算を行わせ、鉄道車両30の内部に設けられた演算部OU1は必要最低限の演算のみを行ってもよい。
演算部OU1及び外部演算部OU2のいずれかとして、例えばディープラーニング機能を備えた人工知能を用いることができ、例えば瞬時に緊急事態を回避できるより適切な制御パラメータを演算することができる。
外部演算部OU2として人工知能を用いる場合、走行車両からのセンシング情報を受け付け、最適な制御パラメータの出力を指示することができる。又は、外部演算部OU2として人工知能を用いる場合、走行路10全体を統制し、走行路10上を走行する複数の鉄道車両30及び複数の自動車50の各々に、運行判断を配信することができる。又は、走行路10のメンテナンス情報を収集し、収集したメンテナンス情報に基づいて適切なタイミングで補修を指示する場合にも、外部演算部OU2として人工知能を活用することができる。そして、人工知能を用いることにより、情報入力部RU1に入力された各種の情報に基づいて、最適な制御パラメータを更に迅速に演算することができるので、鉄道車両30が走行路10上を走行する際の安全性及び経済性を更に向上させることができる。
制御部CU1と、制御部CU2とは、演算部OU1から送られた各種の制御パラメータに基づいて、各種の制御を行う。
制御部CU1は、半径制御部CU11を有する。半径制御部CU11は、前述したように、タイヤ付き車輪39の半径RD1を制御する。そして、半径制御部CU11は、鉄道用車輪38とタイヤ付き車輪39との組において、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に鉄道用車輪38に含まれるフランジ部41が走行路10の上面に接触せず、且つ、鉄道車両30が鉄道線路20上を走行する際にタイヤ付き車輪39が地上側設備に接触しないように、タイヤ付き車輪39の半径RD1を制御する。
なお、鉄道車両30が、走行路10上、鉄道線路20上、及び、道路60上を走行可能な場合、制御部CU1は、摩擦係数制御部CU12を有してもよい。摩擦係数制御部CU12は、前述したように、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御する。そして、摩擦係数制御部CU12は、平常走行時であって路面が滑りにくい場合には、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、タイヤ部43の道路60の路面に対する摩擦係数よりも小さくなるように、タイヤ部43の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御する。
制御部CU2は、推進力制御部CU21と、案内力制御部CU22と、制動力制御部CU23と、垂直吸引力制御部CU24と、を有する。
推進力制御部CU21は、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に、複数の電磁石35により形成される磁界が、走行方向と反対方向に移動するように、複数の電磁石35の各々に流れる電流を制御することによって、複数の電磁石35の各々と磁性部材12との間の磁気力により走行方向における鉄道車両30の推進力が補われるように、複数の電磁石35の各々と磁性部材12との間の磁気力を制御する。なお、推進力制御部CU21は、例えば鉄道車両30が有する主電動機等の推進部が車輪を回転駆動して発生させる推進力を制御してもよい。
案内力制御部CU22は、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に、複数の電磁石35により形成される磁界が、車幅方向に移動するように、複数の電磁石35の各々に流れる電流を制御することによって、複数の電磁石35の各々と磁性部材12との間の磁気力により車幅方向における鉄道車両30の案内力が発生して増大するように、複数の電磁石35の各々と磁性部材12との間の磁気力を制御する。これに加えて、タイヤ付き車輪39の操舵角を制御する。
制動力制御部CU23は、走行路10上を走行している鉄道車両30が緊急に減速する必要があるときに、磁石部33と磁性部材12との間の磁気力により鉄道車両30の制動力が補われるように、磁石部33と磁性部材12との間の磁気力を制御する。なお、制動力制御部CU23は、例えば鉄道車両30が有するブレーキ等の制動部が鉄道車両30を制動する制動力を制御してもよい。
垂直吸引力制御部CU24は、走行路10上を走行している鉄道車両30に横転等の恐れが生じて路盤に吸着する必要があるときに、磁石部33と磁性部材12との間の磁気力を最大化するよう磁石部33を磁性部材12に吸着させる。即ち、垂直吸引力制御部CU24は、走行路10の路面に対して垂直方向の吸引力を制御する。更に、走行路10上を走行している鉄道車両30にスリップの恐れがあるような場合には、垂直吸引力制御部CU24は、磁石部33と磁性部材12との間の磁気力を発生させ、輪重を増加させる。
また、鉄道車両30は、情報出力部TU1を有してもよい。情報出力部TU1は、演算部OU1から送られた各種の制御パラメータを出力して、鉄道車両30の外部のネットワークNW1に送信する。例えば情報出力部TU1は、演算部OU1から送られた各種の制御パラメータを出力して、鉄道車両30の外部のネットワークNW1として、他の鉄道車両30又は他の自動車50に送信する。
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態1の鉄道車両30は、自動車50の走行に用いられる走行路10上、及び、鉄道線路20上を走行可能であり、鉄道用車輪38と、タイヤ付き車輪39と、磁石部33と、制御部CU1及びCU2と、を有する。走行路10は、舗装部11と、舗装部11に埋め込まれた磁性部材12と、を有する。制御部CU1は、鉄道車両30が走行路10上を走行する際に、鉄道用車輪38が走行路10に接触せず、且つ、鉄道車両30が鉄道線路20上を走行する際に、タイヤ付き車輪39が地上側設備に接触しないように、タイヤ付き車輪39の半径RD1を制御する。制御部CU2は、走行路10上で緊急時に制動力及び案内力が補われるように、磁石部33と磁性部材12との間の磁気力を制御する。
輸送需要がそれほど大きくない中小都市間に、鉄道線路と高速道路等の道路とが並走して設けられた場合、経済性が課題となる。具体的には、道路と自動車とを備えた交通システムにおいては、安全性及び信頼性を確保するために、タイヤのグリップ力を大きくする必要があるが、タイヤのグリップ力を大きくすると省エネルギー性が低下して経済性が低下する。また、鉄道車両と鉄道線路とを備えた交通システムにおいては、安全性及び信頼性を確保するために、地上側設備、即ちインフラストラクチャーを高頻度で高精度に維持管理する必要があるが、インフラストラクチャーを高頻度で高精度に維持管理すると、維持管理コストが輸送需要に見合わない金額まで増加して経済性が課題となる。
更に、自動車と道路とを備えた交通システム、及び、鉄道車両と鉄道線路とを備えた交通システムは、いずれも突風又は降雪等の気象災害の影響を受けやすい。
一方、本実施の形態1の鉄道車両30を備えた交通システムによれば、鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムと、自動車と道路とを備えた交通システムとの間で、インフラストラクチャーを整理統合することができる。即ち、既存のインフラストラクチャーを活用して新規なインフラストラクチャーを建設することができるので、新規なインフラストラクチャーを建設するための追加費用を抑制することができる。
また、本実施の形態1の鉄道車両30は、走行路10上を走行する際に、タイヤ付き車輪39のグリップ力が不足する場合には、磁石部33と磁性部材12との間の磁気吸引力により、グリップ力を補うことができる。一方、磁気吸引力により補われた場合でもなおグリップ力が不足する場合には、タイヤ部43の内部に充填又は封入された気体の圧力、又は、タイヤ部43の内部に充填又は封入された樹脂の弾性率を減少させる。これにより、本実施の形態1の鉄道車両30は、例えば降雪等で滑りやすい場合には、省エネルギー性を犠牲にしつつグリップ力が十分補われた状態で、走行することができる。
また、本実施の形態1の鉄道車両30は、タイヤ付き車輪39がスリップした時には、磁石部33と磁性部材12との間の磁気吸引力を作用させることにより、走行路10からの逸脱を防止して鉄道車両30を案内する案内力を向上させ、鉄道車両30を制動する制動力を向上させることができる。このように、案内力及び制動力のいずれをも向上させることにより、走行路10上における鉄道車両30の最高速度を、200km/h程度まで向上させることができる。また、本実施の形態1の鉄道車両30を備えた交通システムに、運行管理システムと、車両同士の間又は車両と地上との間の通信と、を適用することにより、鉄道車両30及び自動車50が走行路10上で渋滞を起こさずに走行することができる。
また、本実施の形態1では、鉄道線路のうち維持コストが輸送需要に見合わない部分を本実施の形態1の走行路10に置き換えることにより、維持コストを削減することができ、走行路10を自動車50と共同で利用することにより、利用効率を高めることができる。そして、鉄道線路のうち残っている部分と、鉄道線路の一部が置き換えられた走行路10との間を、本実施の形態1の鉄道車両30が直通運転する。同様に、高速道路等の道路で、維持コストが輸送需要に見合わない区間は、全部又は一部の車線を本実施の形態1の走行路10に置き換え、経済性を高めることができる。なお、走行路10のうち道路60と併設された部分では、状況に応じて、走行路10を道路60として使用することができる。
また、本実施の形態1の鉄道車両30は、突風等で横転するおそれがある場合には、磁性部材12に磁石部33を緊急吸着させることにより、突風等による横転を防止しつつ制動することができる。また、本実施の形態1の鉄道車両30は、磁石部33と磁性部材12との間の磁気吸引力によって、例えば降雪等で滑りやすい場合には、輪重を増加することでグリップ力を高めた走行を行い、タイヤ付き車輪39がスリップした場合でも、走行路10からの逸脱を防止して、鉄道車両30を車幅方向に案内することができる。そのため、気象災害の影響を受けにくい交通システムを実現することができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の一実施形態である実施の形態2の自動車及び交通システムについて説明する。本実施の形態2の自動車は、鉄道車両及び自動車の走行に用いられる走行路上、及び、自動車の走行に用いられる道路上を走行可能である。
<交通システム>
本実施の形態2の交通システムについては、前述した図1及び図2を用いて説明した実施の形態1の交通システムと同様にすることができる。そのため、以下では、図1及び図2を参照し、主として実施の形態1の交通システムと異なる点について、説明する。
図1及び図2に示すように、本実施の形態2の交通システムは、走行路10と、道路60と、自動車50と、を備えている。走行路10は、鉄道車両30及び自動車50の走行に用いられる。道路60は、走行路10に接続されており、自動車50の走行に用いられる。即ち、自動車50は、走行路10上、及び、道路60上を走行可能である。
本実施の形態2の交通システムにおいては、自動車50は、走行路10上において、例えば鉄道車両30の前方又は後方を、当該鉄道車両30との間隔を任意に制御して単独又は隊列として走行することができる。即ち、本実施の形態2の交通システムにおいては、自動車50は、走行路10上を、鉄道車両30と一緒に走行することができる。走行路10上を走行可能な自動車50の詳細な構成については、後述する図19及び図20を用いて説明する。
本実施の形態2の交通システムでは、実施の形態1の交通システムと同様に、鉄道車両30及び自動車50が、走行路10上を走行可能である。これにより、実施の形態1の交通システムと同様に、鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムの特長と、道路と自動車とを備えた交通システムの特長と、のいずれも有する交通システムを実現することができる。
図1に示すように、本実施の形態2の交通システムは、走行路10と、鉄道線路20と、道路60と、自動車50と、実施の形態1の鉄道車両30と、を備えていてもよい。このような場合、鉄道線路20は、走行路10と接続されており、実施の形態1の鉄道車両30の走行に用いられる。
<自動車>
次に、本実施の形態2の自動車50、即ち走行路10上を鉄道車両30と一緒に走行可能な自動車50について説明する。なお、走行路10については、前述した図3及び図4を用いて説明した実施の形態1の走行路と同様にすることができる。
図19は、実施の形態2の自動車の側面図である。図20は、実施の形態2の自動車の平面図である。なお、図19及び図20は、走行路10上を走行する際の自動車50を示す。また、図20では、理解を簡単にするために、自動車50の車体51を除去して車輪52及び磁石部53を透視した状態を示す。
図19及び図20に示すように、自動車50は、車体51と、複数の車輪52と、磁石部53と、を有する。複数の車輪52は、車体51を支持する。磁石部53は、車体51の下側に設けられた永久磁石54又は電磁石55を含む。
走行路10は、実施の形態1と同様に、舗装部11と、磁性部材12と、を有する。舗装部11は、走行路10(ある方向)に沿っており、例えばアスファルトよりなる。磁性部材12は、舗装部11の上面に埋め込まれ、且つ、磁性を有する。磁性部材12は、走行路10(ある方向)に沿って連続的に形成されている。磁性部材12として、各種の磁性鋼板、又は、鉄等の金属若しくはフェライト等の非金属等の各種の磁性材料を含有する各種の無機材料若しくは有機材料を用いることができ、磁性部材12は、例えば鉄板、又は、フェライト等を含有するアスファルトよりなる。
複数の車輪52の各々は、ホイール部56と、タイヤ部57と、を含む。自動車50は、車体51の下側に設けられた車軸58を有し、ホイール部56は、車軸58に設けられている。タイヤ部57は、ホイール部56の外周に装着されている。ホイール部56は、例えば鉄又はアルミニウム等の金属よりなり、タイヤ部57は、例えばゴム等の弾性体よりなる。なお、車軸58は、懸架部59により車体に懸架されている。そのため、車体51は、懸架部59及び車軸58を介して車輪52により支持されている。
本実施の形態2の自動車50では、複数の車輪52の各々のタイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数が変更可能である。車輪52においては、前述した図7及び図8を用いて説明したタイヤ付き車輪39と同様に、タイヤ部57の内部に充填又は封入されている気体の圧力、又は、タイヤ部57の内部に充填又は封入されている樹脂の弾性率を変更することができる。そして、気体の圧力又は樹脂の弾性率を変更して、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数を、タイヤ部57の道路60(図1参照)の路面に対する摩擦係数よりも小さくすることにより、自動車50は、走行路10上及び道路60上の各々を最適な走行条件で走行することができる。
自動車50は、更に、制御部CU3と、制御部CU4と、を有する。制御部CU3は、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御する。制御部CU4は、磁石部53と磁性部材12との間の磁気力を制御する。
制御部CU3は、自動車50が走行路10上を走行する際であって、且つ、通常走行時に、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、自動車50が道路60(図1参照)上を走行する際のタイヤ部57の道路60の路面に対する摩擦係数と比較して、同程度以下となるように、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御する。これにより、走行路10上での車輪52の転がり抵抗を、道路60上での車輪52の転がり抵抗よりも小さくすることができるので、自動車50が走行路10上を走行する際に消費するエネルギーを低減することができる。
制御部CU4は、走行路10上を走行している自動車50が緊急に減速及び逸脱防止する必要があるときに、磁石部53と磁性部材12との間の磁気力により自動車50の制動力及び案内力が補われるように、即ち自動車50の制動力と案内力がアシストされるように、磁気力を制御する。これにより、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数を、タイヤ部57の道路60の路面に対する摩擦係数よりも小さくした場合でも、走行路10上を走行している自動車50の制動距離を短くして、道路60上を走行している自動車50の制動距離に近づけることができる。
即ち、本実施の形態2の自動車50は、制御部CU3が、複数の車輪52の各々の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御し、制御部CU4が、磁石部53と磁性部材12との間の磁気力を制御することにより、走行路10上を走行している自動車50の安全性及び経済性を両立させることができる。
また、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、タイヤ部57の道路60の路面に対する摩擦係数と同等かそれ以上となるように制御すれば、走行用の消費エネルギーの低減は実現しなくなるが、制動距離を一層短くすることや、路面状態が滑りやすい場合のタイヤスリップ防止に寄与する。即ち、制御部CU3は、自動車50が走行路10上を走行する際であって、且つ、急制動時及びスリップ発生時は、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、自動車50が道路60上を走行する際のタイヤ部57の道路60の路面に対する摩擦係数と比較して、同程度以上となるように、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御する。
また、図19及び図20では図示を省略するものの、自動車50は、例えば主電動機又はエンジン等の、複数の車輪52のいずれかを回転駆動することにより自動車50が走行方向に推進する推進力を発生する推進部を有してもよい。即ち、自動車50は、電気自動車、燃料電池車、ハイブリッド自動車、ガソリン若しくはディーゼル車又はその他の各種の駆動方式を有する自動車であってもよい。
また、自動車50は、例えばブレーキ等の、自動車50が走行方向と反対方向に制動する制動力を発生する制動部を有してもよい。また、自動車50は、例えばステアリング等の、自動車50を車幅方向に案内する案内力を発生する案内部を有してもよい。なお、自動車50の走行方向とは、車長方向であって、且つ、自動車50の後端部から前端部に向かう方向を意味する。
<車輪>
次に、本実施の形態2の自動車50が有する車輪52について説明する。本実施の形態2の自動車50が有する車輪52については、前述した図7及び図8を用いて説明した実施の形態1の鉄道車両30が有するタイヤ付き車輪39と同様にすることができる。
図7に示すように、タイヤ部57は、タイヤ57aと、タイヤ57aとホイール部56との間の空間57bと、を含み、タイヤ部57の内部とは、空間57bを意味する。
図7に示すように、タイヤ部57の内部には、例えば空気等の気体が充填又は封入されていてもよく、制御部CU3(図19参照)は、タイヤ部57の内部に充填又は封入されている気体の圧力を変更することにより、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御してもよい。
具体的には、自動車50が走行路10上を走行する際の気体の圧力を、自動車50が道路60上を走行する際の気体の圧力よりも増加させることにより、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、タイヤ部57の道路60の路面に対する摩擦係数よりも小さくなるように制御してもよい。
或いは、図8に示すように、タイヤ部57の内部には、弾性率、硬度又は粘度が変更可能な樹脂57cが充填又は封入されていてもよく、制御部CU3(図19参照)は、タイヤ部57の内部に充填又は封入されている樹脂57cの弾性率、硬度又は粘度を変更することにより、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御してもよい。
具体的には、自動車50が走行路10上を走行する際の樹脂57cの弾性率を、自動車50が道路60上を走行する際の樹脂57cの弾性率よりも増加させることにより、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、タイヤ部57の道路60の路面に対する摩擦係数よりも小さくなるように制御してもよい。なお、図8に示すように、樹脂57cは、タイヤ57aとホイール部56との間の空間57bに充填されている。
<磁石部>
次に、本実施の形態2の自動車が有する磁石部の各種の例について、当該自動車の走行に用いられる走行路の種類に対応させて説明する。なお、以下に示す各種の例を、単独で用いてもよく、複数の例を組み合わせて用いてもよい。
図21乃至図25は、実施の形態2の自動車が有する磁石部及び車輪並びに走行路を模式的に示す正面図である。図26は、実施の形態2の交通システムのうち、図25に示す走行路付近の部分を示す図である。なお、実施の形態2の自動車50が有する磁石部53に含まれる複数の電磁石55については、図12、図14及び図15を参照して説明する。
図21乃至図23に示す例では、走行路10としての走行路10aは、舗装部11としての舗装部11aと、磁性部材12としての磁性部材12aと、のみを有する。走行路10aについては、前述した図9乃至図11を用いて実施の形態1で説明した走行路10aと同様にすることができる。
まず、図21に示す例を説明する。図21に示す例では、磁石部53としての磁石部53aは、高さ位置が変更可能な永久磁石54を含み、制御部CU4は、永久磁石54と磁性部材12aとの間の磁気力としての磁気吸引力を制御する。
好適には、制御部CU4は、自動車50が走行路10a上を通常走行しているときに、永久磁石54を高さ位置HP3よりも高い高さ位置HP4に上昇させて走行路10aから遠ざけることにより磁気吸引力を制御する。そして、制御部CU4は、走行路10a上を走行している自動車50が緊急に減速及び逸脱防止する必要があるときに、永久磁石54を高さ位置HP4よりも低い高さ位置HP3に下降させて走行路10aに近づけることによって、磁気力により自動車50の制動力及び案内力が補われるように、磁気吸引力を制御する。
このとき、永久磁石54と磁性部材12aとの間に磁気吸引力が作用することにより、車輪52が走行路10aに(下方に)押し付けられて、タイヤ部57(図19参照)の舗装部11aの上面に対する摩擦係数が大きくなるので、自動車50の制動力を補うことができる。或いは、制御部CU4が、永久磁石54を下降させて走行路10aの磁性部材12aに接触させて吸着させることにより、永久磁石54が走行路10aの磁性部材12aに吸着し、永久磁石54と走行路10aとの間の摩擦係数が大きく、永久磁石54と走行路10aの磁性部材12aとの間の磁気吸引力も最大となるようにしてもよい。このような場合として、例えば横転防止の必要があるときが挙げられる。なお、後述する図22に示す例でも、横転防止の必要があるときに、制御部CU4が、電磁石55aを走行路10aの磁性部材12aに吸着させることにより磁気力を最大化してもよい。
磁石部53aが電磁石ではなく永久磁石54を含むことにより、電磁石に電流を流す必要がないので、自動車50が走行路10a上を走行する際に自動車50が消費するエネルギーを低減することができる。また、例えばばね及び止め金具等により永久磁石54を緊急時に下降可能に保持することにより、例えば自動車50のバッテリーが充電されていない時でも永久磁石54を下降して走行路10aに近づけることができ、自動車50の制動力を確実に補うことができる。
また、好適には、永久磁石54は、走行方向における自動車50の後端部に設けられる。そして、自動車50が走行する際に、後端部に設けられた永久磁石54が磁石部53aとして用いられる。これにより、緊急時に永久磁石54を下降させて走行路10aに接触させた場合でも、自動車50を安全に制動することができる。
次に、図22に示す例を説明する。図22に示す例では、磁石部53としての磁石部53bは、電磁石55として、電流を流すことにより磁界を形成する電磁石55aを含み、制御部CU4は、電磁石55aと磁性部材12aとの間の磁気力を制御する。
好適には、制御部CU4は、自動車50が走行路10a上を通常走行しているときに、電磁石55aに磁界を発生させず、且つ、走行路10a上を走行している自動車50が緊急に減速及び逸脱防止する必要があるときに、電磁石55aに磁界を形成させることによって、磁気力により自動車50の制動力及び案内力が補われるように、磁気力を制御する。
このとき、電磁石55aと磁性部材12aとの間に磁気吸引力が作用することにより、車輪52が走行路10aに(下方に)押し付けられて、タイヤ部57(図19参照)の舗装部11aの上面に対する摩擦係数が大きくなるので、自動車50の制動力を補うことができる。このとき更に、電磁石55aが磁性部材12aの上方から逸脱し始めた場合には、磁気吸引力の、自動車50の車幅方向の分力として案内力が得られる。
磁石部53bが永久磁石ではなく電磁石55aを含むことにより、電磁石55aに流す電流量を変更することにより電磁石55aが形成する磁界の強度を変更することができるので、電磁石55aと磁性部材12aとの間の磁気力の大きさを変更することができ、自動車50の制動力及び案内力を補う量を必要に応じて制御することができる。
次に、図23に示す例を説明する。図23に示す例では、磁石部53としての磁石部53cは、電磁石55として、電流を流すことにより磁界を形成する電磁石55bを複数個含み、制御部CU4は、複数の電磁石55bの各々と磁性部材12aとの間の磁気力を制御する。複数の電磁石55bは、図12に示すように、例えば自動車50の走行方向(X軸方向)及び車幅方向(Y軸方向)にマトリクス状に配列されている。
好適には、制御部CU4は、自動車50が走行路10a上を通常走行しているときに、複数の電磁石55bに磁界を発生させず、且つ、走行路10a上を走行している自動車50が緊急に減速及び逸脱防止する必要があるときに、複数の電磁石55bに磁界を形成させることによって、磁気力により自動車50の制動力及び案内力が補われるように、磁気力を制御する。このとき、複数の電磁石55bの各々と磁性部材12aとの間に磁気吸引力が作用することにより、車輪52が走行路10aに(下方に)押し付けられて、タイヤ部57(図19参照)の舗装部11aの上面に対する摩擦係数が大きくなるので、自動車50の制動力を補うことができる。このとき更に、電磁石55bが磁性部材12aの上方から逸脱し始めた場合には、磁気吸引力の車幅方向(Y軸方向)の分力として案内力が得られる。
図12に示すように、自動車50が緊急に減速する必要があるときに、マトリクス状に配列された電磁石55bのうち、走行方向(X軸方向)に配列された複数の電磁石55bの各々が、互いに等しい極性であって、S極又はN極のうちいずれかである極性を有し、且つ、電磁石55bの各々の下側に形成されている磁極を有することができる。
磁性部材12aとして、例えば鉄板よりなる磁性部材を用い、磁性部材12aが導電性を有する場合、複数の電磁石55bと、走行路10aに沿って連続的に形成された磁性部材12aとによりリニア誘導モータLM4が形成される。なお、リニア誘導モータLM4が形成されるためには、複数の電磁石55bは、少なくとも自動車50の走行方向(X軸方向)に沿って配列されていればよい。
なお、制御部CU4は、自動車50が走行路10a上を走行する際に、複数の電磁石55bにより形成される磁界が、走行方向と反対方向に移動するように、複数の電磁石55bの各々に流れる電流を制御することによって、磁気力により走行方向における自動車50の推進力が補われるように、磁気力を制御してもよい。或いは、制御部CU4は、自動車50が走行路10a上を走行する際に、複数の電磁石55bにより形成される磁界が、走行方向と反対方向に対して平面視で傾斜した方向に移動するように、複数の電磁石55bの各々に流れる電流を制御することにより、走行方向における自動車50の推進力が補われるとともに、車幅方向における自動車50の案内力が発生して増大するように、磁気力を制御してもよい。即ち、制御部CU4は、自動車50が走行路10a上を走行する際に、複数の電磁石55bと磁性部材12aとの間の磁気力により、自動車50の推進力及び案内力、又は、自動車50の制動力及び案内力が補われるように、複数の電磁石55bと磁性部材12aとの間の磁気力を制御してもよい。
しかし、磁性部材12aが導電性を有する場合、磁性部材12aは、例えば銅又はアルミニウム等の導電性材料の導電率よりも低い導電率を有する、例えば鉄等の磁性材料よりなる。そのため、リニア誘導モータLM4が自動車50を駆動する駆動力は、後述する図24を用いて説明するように、走行路10bが例えば銅又はアルミニウム等の導電性材料よりなる導電性部材14を有する場合に複数の電磁石55cと導電性部材14とにより形成されるリニア誘導モータLM5が自動車50を推進する推進力に比べて小さい。
次に、図24に示す例を説明する。図24に示す例では、交通システムは、走行路10a(図21参照)に加えて、鉄道車両30及び自動車50の走行に用いられる走行路10としての走行路10bを有する。走行路10bについては、図13を用いて実施の形態1で説明した走行路10bと同様にすることができ、走行路10bは、走行路10aと異なり、導電性部材14を有する。即ち、自動車50は、走行路10b上を走行可能である。走行路10bは、走行路10a又は道路60(図1参照)に接続されている。なお、交通システムは、走行路10aを有さず、走行路10bのみを有してもよいが、材料コストの安い走行路10aを有することにより、交通システムの建設コストを削減することができる。
即ち、走行路10bは、舗装部11bと、磁性部材12bと、導電性部材14と、を有し、タイヤ部57(図19参照)の舗装部11bに対する摩擦係数が変更可能である。制御部CU3は、タイヤ部57の舗装部11bに対する摩擦係数が、タイヤ部57の道路60の路面に対する摩擦係数よりも小さくなるように、タイヤ部57の舗装部11bに対する摩擦係数を制御する。
図24に示す例では、磁石部53としての磁石部53dは、電磁石55としての電磁石55cを複数個含み、制御部CU4は、複数の電磁石55cの各々と磁性部材12bとの間の磁気力、及び、複数の電磁石55cの各々と導電性部材14との間の磁気力を制御する。複数の電磁石55cは、図14に示すように、例えば自動車50の走行方向(X軸方向)及び車幅方向(Y軸方向)にマトリクス状に配列されている。即ち、図24に示す磁石部53dは、図23に示した磁石部53cと同様の磁石部である。
複数の電磁石55cと、走行路10bに沿って連続的に形成された導電性部材14とにより、リニア誘導モータLM5が形成される。なお、リニア誘導モータLM5が形成されるためには、複数の電磁石55cは、少なくとも自動車50の走行方向(X軸方向)に沿って配列されていればよい。
図14に示すように、好適には、制御部CU4は、自動車50が走行路10b上を走行する際に、複数の電磁石55cにより形成される磁界が、走行方向と反対方向に移動するように、複数の電磁石55cの各々に流れる電流を制御することにより、走行方向における自動車50の推進力が補われるように、磁気力を制御する。
このとき、複数の電磁石55cにより形成される磁界が、見かけ上走行方向と反対方向に移動することにより、導電性部材14の内部に誘導電流が流れ、リニア誘導モータLM5が導電性部材14を走行方向と反対方向(後方)に押す力が発生する。そのため、逆に自動車50が導電性部材14から走行方向(前方)に自動車50を推進する推進力を受けることになり、自動車50の推進力を補うことができる。
導電性部材14に含まれる例えば銅又はアルミニウム等の導電性材料は、例えば鉄等の磁性材料の導電率よりも高い導電率を有する。そのため、自動車50が走行路10b上を走行する際にリニア誘導モータLM5が自動車50を推進する推進力は、自動車50が走行路10a上を走行する際にリニア誘導モータLM4が自動車50を推進する推進力に比べて大きい。
走行路10が走行路10に沿って勾配を有する場合には、走行路10として、走行路10aに代えて走行路10bを設けることが望ましい。これにより、走行路10のうち上り勾配を有する部分でも、自動車50が速度を減少させることなく走行することができる。
図示は省略するものの、好適には、制御部CU4は、走行路10b上を走行する自動車50が緊急に減速する必要があるときに、複数の電磁石55cにより形成される磁界が、走行方向に移動するように、複数の電磁石55cの各々に流れる電流を制御することにより、走行方向における自動車50の制動力が補われるように、磁気力を制御する。
このとき、複数の電磁石55cにより形成される磁界が、見かけ上走行方向に移動することにより、導電性部材14の内部に誘導電流が流れ、リニア誘導モータLM5が導電性部材14を走行方向(前方)に押す力が発生する。そのため、逆に自動車50が導電性部材14から走行方向と反対方向(後方)に自動車50を制動する制動力を受けることになり、自動車50の走行方向の制動力を補うことができる。
自動車50が走行路10b上を走行する際にリニア誘導モータLM5が自動車50を制動する制動力は、自動車50が走行路10a上を走行する際にリニア誘導モータLM4が自動車50を制動する制動力に比べて大きい。そのため、前述したように、走行路10が勾配を有する場合に、走行路10として、走行路10aに代えて走行路10bを設けることにより、走行路10のうち下り勾配を有する部分でも、自動車50が緊急時に確実に速度を減少させることができる。
図15に示すように、好適には、制御部CU4は、自動車50が走行路10b上を走行する際に、複数の電磁石55cにより形成される磁界が、走行方向と反対方向に対して平面視で傾斜した方向に移動するように、複数の電磁石55cの各々に流れる電流を制御することにより、走行方向における自動車50の推進力が補われるとともに、車幅方向における自動車50の案内力が発生して増大するように、磁気力を制御する。即ち、制御部CU4は、自動車50が走行路10b上を走行する際に、複数の電磁石55cと導電性部材14との間の磁気力により、自動車50の推進力及び案内力、又は、自動車50の制動力及び案内力が補われるように、複数の電磁石55cと導電性部材14との間の磁気力を制御する。
このとき、複数の電磁石55cにより形成される磁界が、見かけ上車幅方向に移動することにより、導電性部材14の内部に誘導電流が流れ、リニア誘導モータLM5が導電性部材14を車幅方向に押す力が発生する。そのため、逆に自動車50が導電性部材14から車幅方向に案内する案内力を受けることになり、自動車50の車幅方向の案内力を向上させることができる。
なお、前述した図12を用いて説明したのと同様に、制御部CU4は、自動車50が走行路10b上を通常走行しているときに、複数の電磁石55cに磁界を発生させず、且つ、走行路10b上を走行している自動車50が緊急に減速及び逸脱防止する必要があるときに、複数の電磁石55cに磁界を形成させることにより、磁気力としての磁気吸引力により自動車の制動力及び案内力が補われるように、磁気力を制御してもよい。
次に、図25及び図26に示す例を説明する。図25及び図26に示す例では、交通システムは、走行路10aに加えて、自動車50の走行に用いられる走行路10としての走行路10cを有する。即ち、自動車50は、走行路10c上を走行可能である。走行路10cについては、走行路10cが鉄道車両30の走行ではなく自動車50の走行に用いられる点を除いて、図16及び図17を用いて実施の形態1で説明した走行路10cと同様にすることができる。即ち、走行路10cは、舗装部11cと、舗装部11cに埋め込まれた磁性部材12cと、舗装部11cに埋め込まれ、且つ、交流電流を流すことにより交流磁界を形成する電磁石15と、を有する。但し、本実施の形態2では、走行路10cは、自動車50の走行に用いられるため、走行路10cは、走行路10a又は道路60に接続されている。
図25に示す例では、磁石部53としての磁石部53eは、電磁石55として、電流を流すことにより磁界を形成する電磁石55dを複数個含み、制御部CU4は、複数の電磁石55dと磁性部材12cとの間の磁気力を制御する。複数の電磁石55dは、例えば自動車50の走行方向及び車幅方向にマトリクス状に配列されている。即ち、図25に示す磁石部53eは、図23に示した磁石部53cと同様の磁石部である。複数の電磁石55dと、走行路10cに沿って連続的に形成された磁性部材12cとにより、リニア誘導モータLM6が形成される。なお、リニア誘導モータLM6が形成されるためには、複数の電磁石55dは、少なくとも自動車50の走行方向に沿って配列されていればよい。
また、図25及び図26に示す例では、自動車50が走行路10c上を走行する際に、交流磁界を形成する電磁石15から、複数の電磁石55dとの間で電磁誘導により電力が授受される。これにより、自動車50が走行路10c上を走行する際に、地上側設備から自動車50に電力を非接触で供給することができるほか、自動車50において余剰となった電力を非接触で地上側設備に回生することができる。また、複数の電磁石55dと複数の電磁石15とにより形成されるリニア誘導モータを用いて、自動車50の推進力又は制動力を補うことができる。
図26に示すように、走行路10cは、走行路10aと道路60との間に設けられていてもよい。即ち、道路60が、走行路10cを介して走行路10aに接続されていてもよい。また、実施の形態2の交通システムは、走行路10cと道路60との間に設けられた走行路10eを有してもよい。走行路10eは、舗装部11としての舗装部11dを有する。図26に示す例では、走行路10eの高さ位置は、道路60の高さ位置と等しく、走行路10aの高さ位置は、道路60の高さ位置よりも高く、走行路10cの上面は、走行路10e側の端部から走行路10a側の端部に向かって、高さ位置が上昇するように、傾斜している。
これにより、傾斜した走行路10c上を自動車50が走行する際に、地上側設備から自動車50に電力を非接触で供給することができる。また、複数の電磁石55dと複数の電磁石15とにより、自動車50を加速させる等、自動車50の推進力を補うことができる。
また、自動車50が走行路10e上を走行する際に、タイヤ部57の内部に充填又は封入された気体の圧力又は樹脂の弾性率を減少させ、複数の車輪52の各々の舗装部11dの上面に対する摩擦係数を増加させることにより、グリップ力が小さい状態で走行路10a上及び走行路10c上を走行してきた自動車50が、グリップ力が大きい状態で道路60に進入することができる。また、自動車50が走行路10e上を走行する際に、タイヤ部57の内部に充填又は封入された気体の圧力又は樹脂の弾性率を増加させ、複数の車輪52の各々の舗装部11dの上面に対する摩擦係数を減少させることにより、グリップ力が大きい状態で道路60上を走行してきた自動車50が、グリップ力が小さい状態で走行路10c上及び走行路10a上を走行することができる。
また、道路60は、架線61を有してもよく、走行路10eは、複数の電磁石18と、架線61と、を有してもよく、複数の電磁石18及び架線61には、変電所62から電力が供給されてもよい。また、自動車50は、集電装置であるパンタグラフ63を有してもよい。
これにより、自動車50が走行路10e上を走行する際に、複数の電磁石18及び電磁石55dを介して電力が供給される状態から、架線61及びパンタグラフ63を介して電力が供給される状態に変更することができ、走行路10a上及び走行路10c上を走行してきた自動車50が、例えばトロリーバスとして道路60上に進入することができる。また、自動車50が走行路10e上を走行する際に、架線61及びパンタグラフ63を介して電力が供給される状態から、複数の電磁石18及び電磁石55dを介して電力が供給される状態に変更することができ、例えばトロリーバスとして道路60上を走行してきた自動車50が、走行路10c上及び走行路10a上を走行することができる。また、変電所62から複数の電磁石15に電力が供給されてもよい。
なお、自動車50がバスである場合、走行路10eは、停留所64を有してもよい。これにより、走行路10eで停留所64に停車している間に、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数の切り替え、及び、複数の電磁石18及び電磁石55dを介しての電力の供給と、架線61及びパンタグラフ63を介しての電力の供給と、の間の切り替えを行うことができるので、交通システムの利便性が高まる。
また、図26においては、磁性部材12a(図21参照)及び磁性部材12c(図25参照)の図示を省略しているが、走行路10cについては、走行路10cが磁性部材12cを有さないものであってもよい。
<制御方法>
次に、本実施の形態2の自動車50が有する制御部を用いた制御方法の例について説明する。図27は、実施の形態2の自動車が有する情報入力部、演算部及び制御部の構成を示すブロック図である。
図27に示すように、自動車50は、例えば情報入力部RU2と、演算部OU3と、制御部CU3と、制御部CU4と、を有する。
情報入力部RU2には、自動車50の内部又は外部のネットワークNW2から各種の情報が入力され、情報入力部RU2は、入力された各種の情報を取得する。情報入力部RU2には、各種の情報が入力される。情報入力部RU2は、例えば気象情報入力部RU21と、路面情報入力部RU22と、他車情報入力部RU23と、管制情報入力部RU24と、緊急情報入力部RU25と、を含む。自動車50の外部のネットワークNW2からの各種の情報は、例えば無線通信により情報入力部RU2に入力される。
気象情報入力部RU21には、自動車50の内部又は外部のネットワークNW2から、降雪、降水又は風等に関する気象情報が入力される。路面情報入力部RU22には、自動車50の内部又は外部のネットワークNW2から、積雪、水たまり、障害物、勾配又は曲線等に関する路面情報が入力される。他車情報入力部RU23には、自動車50の外部のネットワークNW2として、他の鉄道車両30、又は、他の自動車50から情報が入力され、例えば前方走行車両からのセンシング情報又は走行情報等が入力される。管制情報入力部RU24には、自動車50の内部又は外部のネットワークNW2から、経路情報、隊列情報又は運行指示情報等が入力される。緊急情報入力部RU25には、自動車50の内部又は外部のネットワークNW2から、地震又は乗員異常等に関する緊急情報が入力される。
演算部OU3は、情報入力部RU2から送られた各種の情報に基づいて、各種の制御パラメータの演算を行い、演算された制御パラメータを制御部CU3及びCU4に送る。これにより、情報入力部RU2に入力された各種の情報に基づいて、最適な制御パラメータを演算することができるので、自動車50が走行路10上を走行する際の安全性及び経済性を向上させることができる。
自動車50の内部に設けられた演算部OU3のみが演算を行ってもよい。或いは、情報入力部RU2が取得した情報の種類が膨大であるか又は演算量が膨大である場合、自動車50の外部のネットワークNW2に設けられた外部演算部OU4に情報を送信して大部分の演算を行わせ、自動車50の内部に設けられた演算部OU3は必要最低限の演算のみを行ってもよい。
演算部OU3及び外部演算部OU4のいずれかとして、実施の形態1の演算部OU1及び外部演算部OU2と同様に、例えばディープラーニング機能を備えた人工知能を用いることができる。そして、人工知能を用いることにより、情報入力部RU2に入力された各種の情報に基づいて、最適な制御パラメータを更に迅速に演算することができるので、自動車50が走行路10上を走行する際の安全性及び経済性を更に向上させることができる。
制御部CU3と、制御部CU4とは、演算部OU3から送られた各種の制御パラメータに基づいて、各種の制御を行う。
制御部CU3は、摩擦係数制御部CU31を有する。摩擦係数制御部CU31は、前述したように、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御する。そして、摩擦係数制御部CU31は、自動車50が走行路10上を走行する際のタイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数が、自動車50が道路60上を走行する際のタイヤ部57の道路60の路面に対する摩擦係数よりも小さくなるように、タイヤ部57の舗装部11の上面に対する摩擦係数を制御する。
制御部CU4は、推進力制御部CU41と、案内力制御部CU42と、制動力制御部CU43と、垂直吸引力制御部CU44と、を有する。
推進力制御部CU41は、自動車50が走行路10上を走行する際に、複数の電磁石55により形成される磁界が、走行方向と反対方向に移動するように、複数の電磁石55の各々に流れる電流を制御することによって、複数の電磁石55の各々と磁性部材12との間の磁気力により走行方向における自動車50の推進力が補われるように、複数の電磁石55の各々と磁性部材12との間の磁気力を制御する。なお、推進力制御部CU41は、例えば自動車50が有する主電動機又はエンジン等の推進部が車輪を回転駆動することにより発生する推進力を制御してもよい。
案内力制御部CU42は、自動車50が走行路10上を走行する際に、複数の電磁石55により形成される磁界が、車幅方向に移動するように、複数の電磁石55の各々に流れる電流を制御することによって、複数の電磁石55の各々と磁性部材12との間の磁気力により車幅方向における自動車50の案内力が発生して増大するように、複数の電磁石55の各々と磁性部材12との間の磁気力を制御する。これに加えて、車輪52の操舵角を制御する。
制動力制御部CU43は、走行路10上を走行している自動車50が緊急に減速する必要があるときに、磁石部53と磁性部材12との間の磁気力により自動車50の制動力が補われるように、磁石部53と磁性部材12との間の磁気力を制御する。なお、制動力制御部CU43は、例えば自動車50が有するブレーキ等の制動部が自動車50を制動する制動力を制御してもよい。
垂直吸引力制御部CU44は、走行路10上を走行している自動車50に横転等の恐れが生じて路盤に吸着する必要があるときに、磁石部53と磁性部材12との間の磁気力を最大化するよう磁石部53を磁性部材12に吸着させる。即ち、垂直吸引力制御部CU44は、走行路10の路面に対して垂直方向の吸引力を制御する。更に、走行路10上を走行している自動車50にスリップの恐れがあるような場合には、垂直吸引力制御部CU44は、磁石部53と磁性部材12との間の磁気力を発生させ、輪重を増加させる。
また、自動車50は、情報出力部TU2を有してもよい。情報出力部TU2は、演算部OU3から送られた各種の制御パラメータを出力して、自動車50の外部のネットワークNW2に送信する。例えば情報出力部TU2は、演算部OU3から送られた各種の制御パラメータを出力して、自動車50の外部のネットワークNW2として、他の鉄道車両30又は他の自動車50に送信する。
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態2の自動車50は、鉄道車両30の走行に用いられる走行路10上、及び、道路60上を走行可能であり、タイヤ部57を含む車輪52と、磁石部53と、制御部CU3及びCU4と、を有する。走行路10は、舗装部11と、舗装部11に埋め込まれた磁性部材12と、を有する。制御部CU3は、タイヤ部57の舗装部11に対する摩擦係数が、タイヤ部57の道路60に対する摩擦係数よりも小さくなるように、タイヤ部57の舗装部11に対する摩擦係数を制御する。制御部CU4は、走行路10上で緊急時に制動力及び案内力が補われるように、磁石部53と磁性部材12との間の磁気力を制御する。
これにより、本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、鉄道線路と鉄道車両とを備えた交通システムと、自動車と道路とを備えた交通システムとの間で、インフラストラクチャーを整理統合することができる。
また、本実施の形態2の自動車50は、転がり抵抗を制御できる車輪52を用いることにより、省エネルギー性を確保することができる。車輪52のグリップ力が不足する場合には、磁石部53と磁性部材12との間の磁気吸引力により、グリップ力を補うことができる。一方、磁気吸引力により補われた場合でもなおグリップ力が不足する場合には、タイヤ部57の内部に充填又は封入された気体の圧力や、タイヤ部57の内部に充填又は封入された樹脂の弾性率を減少させる。これにより、本実施の形態2の自動車50は、例えば降雪等で滑りやすい場合には、省エネルギー性を犠牲にしつつグリップ力が十分補われた状態で、走行することができる。
また、本実施の形態2の自動車50は、車輪52がスリップした時には、磁石部53と磁性部材12との間の磁気吸引力を作用させることにより、走行路10からの逸脱を防止して自動車50を案内する案内力を向上させ、自動車50を制動する制動力を向上させることができる。このように、案内力及び制動力のいずれをも向上させることにより、走行路10上における自動車50の最高速度を、200km/h程度まで向上させることができる。また、本実施の形態2の自動車50を備えた交通システムに、運行管理システムと、車両同士の間又は車両と地上との間の通信と、を適用することにより、鉄道車両30及び自動車50が走行路10上で渋滞を起こさずに走行することができる。
また、本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、走行路10を鉄道車両30と共同で利用することにより、利用効率を高めることができる。そして、高速道路等の道路で、維持コストが輸送需要に見合わない区間は、全部又は一部の車線を本実施の形態2の走行路10に置き換え、経済性を高めることができる。
また、本実施の形態2の自動車50は、実施の形態1の鉄道車両30と同様に、磁性部材12に磁石部53を緊急吸着させることにより、突風等による横転を防止しつつ制動することができる。また、本実施の形態2の自動車50は、実施の形態1の鉄道車両30と同様に、磁石部53と磁性部材12との間の磁気吸引力によって、例えば降雪等で滑りやすい場合でもグリップ力を高めた走行を行い、車輪52がスリップした場合でも、自動車50を車幅方向に案内することができる。そのため、気象災害の影響を受けにくい交通システムを実現することができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。