JP6652140B2 - リグニン抽出物を有効成分とする植物病害防除剤 - Google Patents

リグニン抽出物を有効成分とする植物病害防除剤 Download PDF

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Description

本明細書は、リグニン抽出物を有効成分とする植物病害防除剤に関する。
植物の構成成分であるリグノセルロース材料に由来する材料は、環境負荷が小さい成分として期待されている。こうしたリグノセルロース由来成分としては、例えば、金属イオンとリグニン含有材料とを接触させることによってリグニン含有材料から抽出されるリグニン抽出物が知られている。このリグニン抽出物は、シワ改善効果やシミ改善効果があることが知られている(特許文献1)。
植物においては、種々の感染性の病原体の攻撃にさらされており、農産物の安定生産のためには病害防除が必須である。植物病害防除剤としては、植物が本来的に有する防御応答遺伝子の発現を促進する抵抗性誘導活性に基づく抵抗性誘導剤がある。抵抗性誘導剤であれば、種々の病原体に対する防除用となることが期待されている。
特開2010−30921号公報
しかしながら、有用な抵抗性誘導剤は未だ少なく、その開発には時間とコストを要する。また、近年、こうした農薬等の環境負荷や安全性の評価にも時間を要する。したがって、この種の薬剤の開発は容易ではない。
本明細書は、環境負荷が少なく、しかも広い範囲の病原体に有用な植物病害防除剤を提供する。
本発明者は、植物の構成成分であるリグニンに由来するリグニン抽出物が、植物病原体の感染症に対する防除作用を有することを見出した。本明細書によれば、以下の手段が提供される。
(1)鉄イオンとリグニン含有材料とを接触させることによって前記リグニン含有材料中のリグニンの分解を促進することによって抽出されるリグニン抽出物を有効成分とする、植物病害防除剤。
(2)前記リグニン抽出物は、前記リグニン材料を鉄イオンの存在下で発酵させることによって前記リグニン含有材料から抽出される、(1)に記載の植物病害防除剤。
(3)前記発酵は、乳酸菌を用いて行う、(2)に記載の植物病害防除剤。
(4)前記リグニン含有材料は、草本類の茎葉を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の植物病害防除剤。
(5)抵抗性誘導剤である、(1)〜(4)のいずれかに記載の植物病害防除剤。
(6)植物病害性細菌に対する防除用である、(1)〜(5)のいずれかに記載の植物病害防除剤。
(7)前記植物病害性細菌は黒斑細菌病菌である、(6)に記載の植物病害防除剤。
(8)植物病害性糸状菌に対する防除用である、(1)〜(5)のいずれかに記載の植物病害防除剤。
(9)前記植物病害性糸状菌は野菜類炭そ病菌である、(8)に記載の植物病害防除剤。
(10)植物病害性ウイルスの防除用である、(1)〜(5)のいずれかに記載の植物病害防除剤。
(11)前記植物病害性ウイルスは、トマトモザイクウイルス(ToMV)、オオバコモザイクウイスル(PIAMV)、ジャガイモXウイルス(PVX)、タバコモザイクウイルス(TMV)、ジャガイモMウイルス(PVM)及びキュウリモザイクウイルス(CMV)からなる群から選択される1種又は2種以上のウイルスである、(10)に記載の植物病害防除剤。
(12)植物病害性細菌、植物病害性糸状菌及び植物病害性ウイルスに対する防除用である、(1)〜(5)のいずれかに記載の植物病害防除剤。
(13)黒斑細菌病菌、野菜類炭そ病菌、トマトモザイクウイルス(ToMV)、オオバコモザイクウイスル(PIAMV)、ジャガイモXウイルス(PVX)、タバコモザイクウイルス(TMV)、ジャガイモMウイルス(PVM)及びキュウリモザイクウイルス(CMV)に対する防除用である、(12)に記載の植物病害防除剤。
(14)(1)〜(13)のいずれかに記載の植物病害防除剤を含有する、植物育成用組成物。
(15)(1)〜(13)のいずれかに記載の植物病害防除剤を用いて、植物の病害を防除する方法。
(16)(1)〜(13)のいずれかに記載の植物病害防除剤を用いて、植物の病害を防除し、植物を生産する方法。
リグニン抽出溶液を散布したシロイヌナズナの黒斑細菌病菌の感染量を示す図である。 リグニン抽出溶液を散布したシロイヌナズナのアブラナ科野菜類炭そ病菌の感染量を示す図である。 リグニン抽出溶液を散布したシロイヌナズナの抵抗性関連遺伝子の発現量を示す図である。 リグニン抽出溶液のToMV-ベンサミアーナタバコ評価系による評価結果を示す図である。 リグニン抽出溶液のToMV-トマト評価系による評価結果を示す図である。 リグニン抽出溶液のけるリグニン抽出物濃度とToMV-ベンサミアーナタバコ評価系による感染抑制効果との関係を示す図である。 リグニン抽出溶液のウイルス(PlAMV)に対する感染抑制効果の評価結果を示す図である。 リグニン抽出溶液のウイルス(PVX)に対する感染抑制効果の評価結果を示す図である。 リグニン抽出溶液のウイルス(TMV)に対する感染抑制効果の評価結果を示す図である。 リグニン抽出溶液のウイルス(PVM)に対する感染抑制効果の評価結果を示す図である。 リグニン抽出溶液のウイルス(CMV)に対する感染抑制効果の評価結果を示す図である。 サトウキビ由来及び竹由来のリグニン抽出溶液のToMVの感染抑制効果の評価結果を示す図である。
本明細書は、リグニン含有材料を鉄イオンと接触させてリグニンの分解を促進することによりリグニン含有材料から抽出されるリグニン抽出物(以下、本リグニン抽出物)を有効成分とする薬剤に関する。本リグニン抽出物は、植物が植物性病原体に感染するのを抑制する作用又は植物に植物性病原体する抵抗性を発揮させる作用を有している。本明細書に開示される薬剤は、抵抗性誘導剤である病害防除剤として用いられる。
本発明者らによれば、本リグニン抽出物は、直接的に病原性細菌や糸状菌を防除する作用が低いにも関わらず、植物体に供給したときに、有効にこうした病原性細菌や糸状菌の感染抑制効果を示すことを確認している。また、本リグニン抽出が、ヒトの皮膚や眼に対する刺激性がなく、毒性も認められないことも確認している。以上のことから、本リグニン抽出物は、環境負荷が少なく、広い範囲の病原体に有効であることがわかる。
本明細書の開示を理論的に拘束するものではないが、本リグニン抽出物のこうした作用のメカニズムとしては以下が考えられる。
本リグニン抽出物は、植物に供給することで病原体に対する抵抗性を誘導して、病原体に対する抵抗性を発揮させて抵抗性誘導剤として機能することができる。後述するように、本リグニン抽出物によれば、感染防御応答に関与していることが知られているキチナーゼ遺伝子(AtChi570、AtChi620)を始めとする複数の抵抗性関連遺伝子の発現を促進することができる。
また、細胞が細胞分裂するために鉄イオンが必要であるが、本リグニン抽出物は、当該鉄イオンに結合して錯体を形成して鉄イオンを消費する。細菌及び糸状菌等の病原菌が増殖する際にも鉄が必要となるため、本リグニン抽出物が鉄を消費することによって、病原菌の増殖抑制作用が発揮されるものと考えられる。
また、ウイルスの感染が成立し、ウイルスが増殖する際にも鉄が必要である。このため本リグニン抽出物は、ウイルスの増殖抑制作用を発揮するものと考えられる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(リグニン抽出物)
本薬剤の有効成分であるリグニン抽出物は、水性媒体の存在下、鉄イオンとリグニン含有材料とを接触させて、前記リグニン含有材料中のリグニンの分解を促進することによって前記リグニン含有材料から抽出される。以下、このリグニン抽出物(以下、本リグニン抽出物という。)の製造方法について説明する。
(リグニン抽出物の製造方法)
(リグニン含有材料)
リグニン含有材料としては、植物構造体に含まれているリグニン又は当該リグニンの誘導体を含んでいればよい。すなわち、ここでいうリグニン及び当該リグニン誘導体は、パルプ製造工程において強アルカリ下や強酸下でのリグニンの重縮合を促進する条件下で処理されたリグニンを実質的に含まないものである。したがって、本明細書におけるリグニン含有材料は、黒液などを含まない。
こうしたリグニン含有材料としては、植物由来のリグノセルロース系材料のそのまま、あるいは緩和な条件で処理されたリグノセルロース系材料処理物が挙げられる。リグノセルロース系材料としては、植物の全体又は部分、木質部分を有する加工品等が挙げられる。植物としては、特に限定しないが、針葉樹、広葉樹、ユーカリ等の木本類ほか、イネ、ムギ、トウモロコシ、サトウキビ、ケナフ、ゲットウ(月桃)、クマザサなどのササ、タケ等の草本類が挙げられる。植物由来のリグノセルロース材料の非利用材料を用いることもできる。非利用材料としては、間伐材、剪定された植物の枝葉等、マツカサなどの非食用である果実、食用部分の収穫後の茎葉等が挙げられる。なかでも、リグノセルロース系材料としては、ゲットウなどの草本類の茎葉を好ましく用いることができる。これらは、木本類よりも組織が粗であるため、効率的にリグニン抽出物を得ることができる。また、クロロフィルを含有する葉の部分を用いることで、リグニン抽出物にクロロフィル抽出物も含まれることになる。
リグニン含有材料は、抽出効率を考慮すると、ある程度破砕されていることが好ましい。例えば、草本類由来のリグノセルロース系材料は、適度に切断されていることが好ましく、木本類のリグノセルロース系材料は、チップ状あるいは粉末状となっていることが好ましい。
また、リグニン含有材料としては、リグノセルロース系材料を緩和な条件で処理した材料であってもよい。例えば、特開平2−233701号公報や特開平9−278904号公報に記載のリグノフェノール誘導体等が挙げられる。また、茶ガラ、杉酒等の植物性の食品廃棄物等が挙げられる。例えば、クマザサから精油を水蒸気蒸留で抽出し、精油を分離後の蒸留水にはクマザサのリグニン由来のポリフェノール類が含まれている。こうした蒸留残渣もリグニン含有材料として用いることができる。さらに、サトウキビの搾汁後の残渣であるバガス、リグノセルロースからセルロースを分離後の残渣等も挙げられる。かかる緩和な条件としては、好ましくは、100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下、一層好ましくは60℃以下の温度で、弱アルカリ〜弱酸のpH条件(例えば、pH10〜2程度)での処理が好ましい。
(鉄イオン)
鉄イオンは、水の存在下で2価又は3価のイオンとして存在できればよい。いずれの形態であっても、水の存在下で、結果的にリグニンの分解を促進することができる。こうした鉄イオン源としては、硫酸鉄(II)(FeSO)、硫酸第二鉄(III)((Fe)(SO)、いわゆる鉄さび(酸化鉄(III)及びその水和物、酸化鉄(II、III)及びその水和物、水酸化鉄、各種オキシ水酸化鉄)が挙げられる。こうした鉄錆びは、水の存在下において、鉄イオン(II)や鉄イオン(III)を生成する鉄イオン源となる。また、金属鉄が錆びるときには、水の存在下で鉄イオン(Fe(II))が溶出し、水酸化鉄を経て、結果としては、鉄(III)の含水酸化物などのオキシ水酸化鉄(III)が生成し、あるいは鉄イオン(II)が空気酸化されて鉄イオン(III)となって、結果として、鉄(III)の含水酸化物などのオキシ水酸化鉄(III)を生じうる。このため、金属鉄あるいは鉄を含む金属合金も鉄イオン源となりうる。したがって、例えば、抽出工程に用いる混合機や圧搾機が鉄製内表面を有するもの及び当該内表面に鉄錆びを有するものも鉄イオン源となる。
鉄イオン(III)は、抽出物の安定性(嫌気発酵(腐敗))の抑制、コスト、入手容易性等の観点においても好ましい。
(抽出工程)
リグニン含有材料から本リグニン抽出物を生成させ抽出する工程は、鉄イオンとリグニン含有材料とを接触させることでリグニンの酸化を促進する工程である。この工程により、リグニンを分解し、低分子化し、及び/又は緩やかに改変できる。
抽出工程は、水性媒体の存在下で行う。鉄イオン(II)及び(III)を介在させるためである。水性媒体は、水、及び水と水に相溶性のある有機溶媒との混液が挙げられる。抽出工程における水性媒体は、リグニン含有材料自体から細胞液又は細胞間液として供給されるほか、リグニン含有材料に付随しても供給されうる。また、水性媒体は、別途抽出工程に供給されてもよい。抽出工程における水性媒体は、リグニン含有材料と空気中の酸素との接触が適度に可能な程度であることが好ましい。気液界面によって、リグニンの分解が促進されるからである。特に、草本類のリグノセルロース系材料を用いる場合には、水性媒体は必ずしも添加する必要はないが、抽出液の濃度や抽出効率を考慮して適宜水等を添加することができる。一方、木粉等の木本類のリグノセルロース系材料を用いる場合には、適量の水を用いることが好ましい。
抽出工程においては、水のほか他の溶媒を積極的に添加することもできる。こうした溶媒は、水を相溶するかあるいは相分離するものであってもよいが、水の存在によるリグニンの分解等を阻害しないものを適宜選択することができる。
抽出工程は、金属イオンが存在しうる状態で適宜リグニン含有材料を静置してもよいし、撹拌などにより混合してもよい。金属イオンを含む水性媒体中にリグニン含有材料を浸漬しておくと抽出物を得られやすくなる。例えば、抽出工程で用いる金属塩の溶液中にリグニン含有材料を1時間から24時間程度浸漬しおくことで、緩やかに金属イオンとリグニン含有材料との接触が実現する。その後の発酵を考慮すると、常温あるいはそれよりも低温下で静置するのが好ましい。浸漬後のリグニン含有材料は、浸漬液とともに混合、発酵等を引き続き行ってもよいし、浸漬後のリグニン含有材料を新たに鉄イオンと接触させて抽出工程を行ってもよい。抽出工程を実施してもよいし、浸漬液から分離したリグニン含有材料につき改めて金属イオンと接触させて抽出工程を実施してもよい。
抽出工程において、金属イオンを含んだ水性媒体下でリグニン含有材料を混合(攪拌や振動による)することができる。混合等を伴う抽出工程の時間は、特に限定しないが、例えばリグノセルロース系材料からリグニン抽出物を得る場合には、リグニンによるセルロースの拘束状態がおおよそ解除される程度に行われればよい。特に限定しないが、例えば、数十分〜数時間程度で実施することができる。抽出工程においては、必要に応じ、混合等を停止したりすることもできる。また、抽出工程では、適宜、金属塩溶液を添加するなどして金属イオン濃度を調節することを含んでいてもよい。
また、抽出工程では、リグノセルロース系材料の形態によっては、圧搾や破砕を伴うこともできる。
抽出工程における混合・撹拌や、圧搾・破砕は、鉄イオンとリグニン含有材料との接触機会、接触面積及び接触時間を増大させることのほか、鉄イオンとリグニン含有材料との接触及びリグニンの分解を気体と液体との気液界面で生じさせることにも意義がある。こうした条件下では、鉄イオンの存在に基づくフェントン反応によりリグニンの分解が促進されると考えられるからである。
抽出工程における金属イオンの存在量は、特に限定しない。草本類の茎葉の破砕物をリグニン含有材料として用いるとき、十分量の金属イオンの存在により抽出液が着色する。例えば、鉄イオンの場合は黒色化する。したがって、抽出液の外観色を観察することで適当な金属イオン濃度を設定できる。金属イオンとして鉄イオンを用いる場合、典型的には、硫酸第二鉄溶液を用いることができる。また、鉄イオン濃度も特に限定しない。一例としては、硫酸第二鉄溶液として、0.2g/l以上1g/l以下程度の溶液を用いることができる。
鉄イオンを利用した処理を促進するには、リグニン含有材料の発酵を伴うことが好ましい。理由は明らかではないが、病原体の感染抑制作用等の優れた本リグニン抽出物を得ることができる。発酵には、常在菌であってもよいが、好ましくは乳酸菌を用いる。乳酸菌としては、特に限定しないが、発酵食品にも用いられる乳酸菌を好ましく用いることができる。乳酸菌としては、例えば、ラクトバシラス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、リューコノストック属等、公知の乳酸菌を適宜選択して用いることができる。例えば、Lactobacillus casei strain shirota、L.カゼイ YIT 9029等が好ましい。
発酵は、好ましくは好気発酵にて行う。発酵における好気条件は特に限定しないが、好気的発酵を維持でき、リグニンの分解を促進できる範囲に適宜設定すればよい。また、発酵のための温度条件も特に限定しないが、25℃以上40℃以下程度とすることができる。また、撹拌/通気条件も特に限定しないで、好気的発酵を維持でき、リグニンの分解を促進できる範囲で適宜設定すればよい。例えば、当初の24時間程度を撹拌通気培養し、その後72時間程度を静置培養としてもよい。この他、良好な好気発酵を確保できるように当業者であれば各種の条件を適宜設定することができる。なお、乳酸菌を用いた発酵など発酵を伴って抽出する場合には、リグニン含有材料の状態にもよるが、20時間程度から80時間程度とすることができ、また、必要に応じて1週間程度まで継続することもできる。
抽出工程に先立ってあるいは抽出工程における発酵に先立って、リグニンの分解を促進し、あるいはセルロースとの分離を促進する各種操作を実施することができる。例えば、特開平2−233701号公報や特開平9−278904号公報に記載のリグノフェノール誘導体化、リグノセルロース材料の破砕や抽出処理に用いられる爆砕や蒸煮、酸化処理、還元処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理、微生物処理、水や有機溶媒の亜臨界流体処理、超臨界流体処理等が挙げられる。これらの処理は、好ましくは、抽出工程に先立って行う。
なお、酸化処理用の酸化剤としては、オゾンやFe3+−HCl系、アルカリ−H系、Ce4+などが挙げられる。還元処理用の還元剤としては、テトラヒドリドアルミン酸リチウムやテトラヒドロホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。なかでも、リグニンに含まれるカルボニル基を選択的に還元するテトラヒドロホウ酸ナトリウムが好適に用いられる。アルカリ処理用の薬剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニア、炭酸ナトリウウム、ホウ酸ナトリウムなど種々の塩基性化合物が挙げられる。酸処理用の薬剤としては、硫酸や塩酸、硝酸、燐酸、有機酸などが好適に用いられる。酵素処理としては、リグニンの断片化を促進するペルオキシダーゼや配糖体を形成する糖化酵素、グルクロン酸化するグルクロン酸転移酵素などが好適に用いられる。
抽出工程に先立って、あるいは抽出工程における発酵に先だって、リグニンの溶出を促進し、金属イオンとの結合を促進するために加熱してもよい。例えば、80℃以上100℃以下程度に加熱することが好ましい。好ましくは、80℃以下である。また、加圧も要するものではないが、加圧してもよい。これらの処理は、好ましくは抽出工程に先だって行う。
抽出工程実施後の抽出液は、リグニンの鉄イオンの存在下での分解物を含んでいる。抽出液中には、リグノセルロース系材料をリグニン含有材料に用いた場合など、高分子リグニンが固形分として存在する場合がある。この場合には、必要に応じ、遠心分離やろ過などにより公知の固液分離手法により液体部分をリグニン抽出物として分離することができる。また、使用したリグニン含有材料の種類やリグニン抽出物の用途に応じ、抽出液中の夾雑成分を適宜除去してもよい。
抽出工程により得られる抽出液は通常着色している。抽出液にクエン酸などの酸や、他のハーブ等の植物をクエン酸で抽出した抽出物(典型的には抽出液)を添加することで、抽出液の色調を淡色側に変化させたり、明度を向上させたりすることができる。このような色調調製用の抽出物としては、例えば、シソ葉、ハイビスカスの花弁、桜葉等の淡ピンク色〜淡紫色を呈するようなクエン酸抽出液を用いることができる。クエン酸濃度は適宜設定すればよい。なお、色調調整はできるだけ低温で実施することが好ましい。
(本リグニン抽出物)
本リグニン抽出物は、鉄イオン存在下でのリグニンの抽出物であり、典型的には、本明細書に開示される上記した製造方法によって得ることができる。本リグニン抽出物は、液状、スラリー状、ペースト状、粉末等の固体状であってもよい。例えば、上記方法による抽出液をそのままであってもよいし、希釈、濃縮等したものであってもよい。また、抽出液をフリーズドライ等により乾燥して固形化又は粉末化したものであってもよい。本リグニン抽出物には、腐敗防止作用があり、それ自体安定性に優れている。
本リグニン抽出物は、植物に対する病害防除作用を発揮することができる。病害防除作用とは、植物病害の原因となる病原体を死滅させる作用、病原体の増殖を抑制する作用、病原体の感染を抑制する作用を含む。したがって、本リグニン抽出物を植物病害防除剤の有効成分として用いることができる。本リグニン抽出物は、鉄イオンに結合して錯体を形成することによって、病原体への鉄イオン供給を阻害する作用があると考えられる。そのため、本リグニン抽出物が植物病害防除作用を示す病原体は、特に制限されるものではなく、植物の主な病原体である、細菌、糸状菌などの真菌又はウイルスのうちのいずれであってもよい。
細菌による植物病害としては、例えば、水稲のもみ枯病、麦類の黒節病、じゃがいもの輪腐病、そうか病、野菜類の軟腐病、腐敗病、斑点細菌病、黒斑細菌病、青枯病、トマトのかいよう病、葉こぶ病、ニンジンの根頭がんしゅ病、こぶ病等が挙げられ、好ましくは、黒斑細菌病である。真菌である糸状菌による植物病害としては、例えば、水稲の紋枯れ病やいもち病、麦類のうどんこ病、豆類のダイズ赤かび病、果樹や野菜類の灰色かび病、白さび病、べと病、斑点病、さび病、炭そ病、根こぶ病等が挙げられ、好ましくは、炭そ病である。ウイルスによる植物病害としては、水稲の萎縮病、野菜類のモザイク病等が挙げられ、好ましくは、モザイク病である。
植物病害の原因となる細菌としては、例えば、アグロバクテリウム属、クラビバクター属、エルウィニア属、シュードモナス属、ラルストニア属、コリネバクテリウム属、クルトバクテリウム属、バークホルデリア属、キサントモナス属、リゾバクター属、クロストリジウム属に属する細菌が挙げられる。好ましくは、黒斑細菌病を引き起こす、シュードモナス属のシュードモナス・シリンゲ・パソバー・マクリコラ(Pseudomonas syringae pv. maculicola)である。
植物病害の原因となる糸状菌としては、例えば、空気伝染性糸状菌のうどんこ病菌(Erysiphe属菌、Sphaerotheca属菌、Leveillula属菌)、ボトリチス(Botrytis)属菌、フルビア (Fulvia fulva)属菌、コリネスポラ(Corynespora)属菌、アルブゴ(Albugo)属菌、べと病菌(プシウドペロノスポラ(Pseudoperonospora)属菌、Peronospora属菌、Plasmopara属菌、Bremia属菌)、ピリキュラリア(Pyricularia)属菌、いもち病菌(Pyricularia grisea)、ごま葉枯病菌(Cochliobolus miyabeanus)、サーコスポラ類縁菌(Cercospora属菌、Cercosporella属菌、Pseudocercospora属菌、Paracercospora属菌 Mycovellosiella属菌)、炭そ病菌(コレトトリカム(Colletotrichum)属菌、Glomerella属菌)、さび病菌(Puccinia属菌)、アルタナリア(Alternaria)属菌、スクレロチニア(Sclerotinia)属菌、土壌伝染性糸状菌の根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)、フィトフィトラ(Phytophthora)属菌、フザリウム(Fusarium)属菌、バーティシリウム(Verticillium)属菌、ピシウム(Pythium)属菌、リゾクトニア(Rhizoctonia)属菌が挙げられる。好ましくは、炭そ病菌である。
植物病害の原因となるウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、タバコモザイクウイルス(TMV)、トウガラシマイルドモットルウイルス (PMMoV)、トマトモザイクウイルス (ToMV)、メロンえそ斑点ウイルス(Melon necrotic spot virus:MNSV)、スイカ緑斑モザイクウイルス(Cucumber green mottle mosaic virus:CGMMV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス(Kyuri green mottle mosaic virus:KGMMV)、オオバコモザイクウイルス(PlAMV、ジャガイモXウイルス(PVX)、タバコモザイクウイルス(TMV)、ジャガイモモザイクウイルス(PVM)及びキュウリモザイクウイルス(CMV)が挙げられる。好ましくは、各種モザイクウイルスやジャガイモXウイルスが挙げられる。なお、上記列挙したウイルスが属するポテックスウイルス属、トバモウイルス属カルラウイルス属及びククモウイルス属についても同様に本リグニン抽出物が有効である。
植物病害防除剤の剤型は各種の形態を採ることができる。具体的には、液剤、粉剤、粒剤、乳剤、水和剤、油剤、エアゾール、フロアブル剤などとして使用することができる。好ましくは、水和剤である。
本リグニン抽出物を含有する植物病害防除剤は、本リグニン抽出物以外の任意の成分をさらに含んでいてもよい。例えば、溶媒、担体、pH調整剤、植物体への展着力を高めるための展着剤、植物への浸透性を高めるための界面活性剤等の成分、肥効を高めるためのミネラル等の肥料成分、農薬成分、バインダー、増量剤等が挙げられる。
なお、各成分の添加量や添加方法及び製剤化方法については、本技術分野に周知の方法に従うことができる。当業者は、上記の一般的な説明及び実施例の具体的開示を基にして、又は必要に応じてそれらに適宜修飾や改変を加えることにより、本リグニン抽出物を含有する上記各種製剤を容易に製造できる。製剤中におけるリグニン抽出物含有量は、特に、特に限定されず、製剤の用途に応じて適宜選択される。
また、植物病害防除剤は、いわゆる農薬として使用することができるほか、各種肥料や植物栄養剤などの植物生育用組成物、植物防虫用組成物、種々の目的のための葉などの植物体の一部又は全体への塗布、噴霧ないし散布用組成物などの各種の植物用の組成物に添加して用いることもできる。すなわち、本開示の実施形態として、本リグニン抽出物を植物病害防除成分として含有する各種の植物育成用組成物が挙げられる。
本リグニン抽出物を含有する植物病害防除剤は、対象とする植物に接触させることにより、上記のような病原体に対する感染を抑制することができる。植物病害防除剤を植物に接触させる方法は、特に限定されず、その剤型や用途に応じて適宜選択することができ、例えば、葉、茎、子実など植物体の一部又は全体に塗布、噴霧又は散布する方法が挙げられる。また、水耕栽培における水耕液や土壌などの植物を栽培する媒体に接触させることもでき、例えば、かかる栽培媒体への混和や散布が挙げられる。好ましくは、葉及び茎等の植物体表面への散布である。
(植物病害の防除方法及び植物の生産方法)
本明細書は、本明細書に開示する植物病害防除剤を用いて植物の病害を防除する方法、本明細書に開示する植物病害防除剤を用いて植物の病害を防除して植物を育成又は生産する方法を提供する。植物病害防除剤は、上述のとおり、各種の植物病原体に有効である。したがって、各種用途の植物、例えば、食用、工芸用(燃料用途を含む)などの各種の作物を生産する方法を実施することができる。また、さらに、こうした植物の全体又は一部を収穫することにより、安全でかつ病害のない植物を提供することができる。
植物病害防除剤を各種の植物に適用して植物を育成することは、対象食物に応じた育成方法や薬剤の適用時期など、当業者において公知の方法を適用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(リグニン抽出物の調製)
本実施例では、草本系の事例として、ショウガ科ハナミョウガ属の月桃(ゲットウ(サンニン))の茎葉部分(3キログラム単位)の破砕物を鉄イオン源としての錆びを内部に有する鉄製破砕機に投入し、水を添加することなく、植物から抽出される液を利用して、25℃〜35℃で、連続振動して常在菌(ゲットウに付着している)での発酵を72時間継続し、20〜25mmのフィルター処理後にクエン酸紫蘇溶液で色を調整し、孔径0.45μmのフィルター(ミリポア社製)によって再度濾過した。
(黒斑細菌病菌に対する感染抑制効果の評価)
実施例1で調製したリグニン抽出溶液を用いて、以下の方法で、黒斑細菌病菌に対する感染抑制効果を評価した。シロイヌナズナに、リグニン抽出溶液が10、50及び100質量%となるように展着剤を添加したリグニン抽出溶液を茎葉散布した。リグニン抽出溶液の散布から2日後、シロイヌナズナにそれぞれ黒斑細菌病菌(1×10cfu/ml)を噴霧接種した。接種から3日後、接種葉をサンプリングし、定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)法により、シロイヌナズナに感染した黒斑細菌病菌のハウスキーピング遺伝子であるrpoD遺伝子の発現量を定量することで、黒斑細菌秒菌のシロイヌナズナへの感染量を定量した。なお、コントロールとして、リグニン抽出溶液を含まない展着剤のみを含む溶液を散布し、同様の定量を行った。結果を図1に示す。
図1に示すように、コントロールと比較して、50%リグニン抽出溶液において有意に発病抑制効果が認められた。また、100%リグニン抽出溶液においてさらに強い発病抑制効果が認められた。以上により、リグニン抽出溶液は植物病原性細菌に対する病害防除効果を有することがわかった。
(アブラナ科野菜類炭そ病菌に対する感染抑制効果の評価)
実施例1で調製したリグニン抽出溶液を用いて、以下の方法で、アブラナ科野菜類炭そ病菌に対する感染抑制効果を評価した。シロイヌナズナに、リグニン抽出溶液を茎葉散布した。リグニン抽出溶液の散布から2日後、シロイヌナズナにアブラナ科野菜類炭そ病菌(5×10胞子/ml)を噴霧接種した。接種から5日後、接種葉をサンプリングし、qRT−PCR法によりシロイヌナズナに感染したアブラナ野菜類炭疽病菌のハウスキーピング遺伝子であるactin遺伝子発現量を定量することで、アブラナ科野菜類炭そ病菌のシロイヌナズナへの感染量を定量した。なお、コントロールとして、リグニン抽出溶液を含まない展着剤のみを散布し、同様の定量を行った。結果を図2に示す。
図2に示すように、コントロールと比較して、リグニン抽出溶液において有意に発病抑制効果が認められた。以上により、リグニン抽出溶液は植物病害性糸状菌に対する病害防除効果を有することがわかった。
(抵抗性関連遺伝子の発現誘導の評価)
実施例1で調製したリグニン抽出溶液を用いて、以下の方法で、抵抗性誘導活性効果を評価した。シロイヌナズナに、リグニン抽出溶液を茎葉散布した。24及び48時間後、リグニン抽出溶液を散布した葉をサンプリングし、qRT−PCR法により、抵抗性関連遺伝子AtPR1、AtPDF1.2、AtChi570、AtChi620、AtPR2、AtPR3及びAtVSP2(Narusaka M, Minami T, Iwabuchi C, Hamasaki T, Takasaki S, Kawamura K, Narusaka, Y., Yeast cell wall extract induces disease resistance against bacterial and fungal pathogens in Arabidopsis thaliana and Brassica crop., PLoS One. 2015 Jan7;10(1):e0115864. doi: 10.1371/journal.pone.0115864. eCollection 2015. PubMed, PMID: 25565273; PubMed Central PMCID: PMC4286235)の発現量を定量した。なお、コントロールとして、リグニン抽出溶液を含まない展着剤のみを散布し、同様の定量を行った。結果を図3に示す。
図3に示すように、コントロールと比較して、リグニン抽出溶液において抵抗性関連遺伝子の弱い発現誘導が認められた。特に、感染防御応答に関与していることが知られているキチナーゼ遺伝子(AtChi570、AtChi620)の発現が認められた。以上により、リグニン抽出溶液は既存の殺菌性農薬とは異なる機序で、細菌病及び糸状菌病を防除していることがわかった。
(本リグニン抽出物のToMVに対するによる評価)
実施例1で調製したリグニン抽出溶液を、ToMV(トマトモザイクウイルス)-ベンサミアーナタバコ評価系及びToMV-トマト評価系を用いて評価した。すなわち、リグニン抽出溶液を、ベンサミアーナタバコの葉に噴霧処理を行い、その3日後に、ToMVウイルスを接種した。ウイルスの接種は、ToMV(GFP発現ウイルス)のプラスミド(pTLBN.G3)2μgについて、AmpliCap-MaxTM T7 High Yield Message Maker Kits (cap analogue:GTP=4:1)を用いてRNAを転写し、RNA転写物を20倍に希釈し、カーボランダムを用いてベンサミアーナタバコ葉に10μL塗布することにより行った。ウイルスの接種から3日後に、GFPの蛍光斑点(ToMVの感染、増殖部位に一致する)をカウントし、ウイルスの感染抑制率を検定し、リグニン抽出溶液の評価を行った。結果を図4に示す。なお、感染抑制率は、以下の式から算出した。

感染抑制率(防除価)%=100-(処理植物の蛍光斑点数の平均)/(未処理植物の蛍光斑点数の平均)×100
また、接種から6日後の葉から、RNAを抽出し、感染したRNAをqRT-PCR法により定量した。結果を併せて図4に示す。また、RNA転写物を5倍希釈で10μl塗布する以外は上記と同様にして、トマト(スイートハート)の葉においても、ウイルスRNA量を測定した。結果を図5に示す。なお、これらの評価においては対照として、既存薬であるレンテミン(商品名)及びアスコルビン酸を用いた。
さらに、リグニン抽出溶液の原液及び希釈液(リグニン抽出物濃度20%、50%)につき、上記と同様にしてベンサミアーナタバコの葉を用いて感染抑制率及びウイルスRNA量を測定した。結果を図6に示す。
図4に示すように、リグニン抽出溶液は、農薬登録されたレンテミンや、ウイルス防除剤として特許登録されている資材(アスコルビン酸)と同等以上の効果を示した。また、併せて図4に示すように、RNA感染量の観点からも、レンテミンよりも優れた効果を示した。また、図5に示すように、トマトの葉においても、リグニン抽出溶液はレンテミンと同等以上の効果を呈した。さらに、図6に示すように、リグニン抽出溶液の原液を5倍に希釈してもToMVの感染に対して十分に感染抑制効果が認められた。
以上のことから、リグニン抽出溶液は、ウイルスに対しても有効な防除作用を発揮することがわかった。
実施例1で調製したリグニン抽出溶液及び比較例としての月桃の葉を蒸留した月桃蒸留水及びレンテミンを用いて、各種ウイルスについての防除作用の評価を行った。実施例5に記載したベンサミアーナタバコの葉を用いた評価系に準じて、ウイルス感染抑制率又はウイルスRNA量について評価した。評価対象としたウイルスは、ポテックスウイルス属のPlAMV(オオバコモザイクウイルス)、ポテックスウイルス属のPVX(ジャガイモXウイルス)、トバモウイルス属のTMV(タバコモザイクウイルス)、カルラウイルス属のPVM(ジャガイモモザイクウイルス)及びククモウイルス属のCMV(キュウリモザイクウイルス)とした。これらの結果を、図7〜図11に示す。
図7〜図11に示すように、リグニン抽出溶液は、いずれのウイルスに対してもレンテミンと同等がそれ以上の優れた効果を示した。PVX、PVM及びCMVなどの重大な被害を及ぼす可能性のある植物病害ウイルスについても有効であった。
実施例1に準じてサトウキビから72時間乳酸菌を用いて発酵して抽出したリグニン抽出溶液を実施例5に準じてベンサミアーナタバコに茎葉散布し、実施例5と同様にToMVに対する薬剤の感染抑制効果を評価した。
また、竹(孟宗竹)の粉(100g)に250mlの水を加え、実施例1に準じて24時間乳酸菌を用いて発酵して抽出したリグニン抽出溶液を、上記と同様にして、ToMVに対する薬剤の評価を行った。結果を図12に示す。
図12に示すように、サトウキビ由来のリグニン抽出溶液及び竹由来のリグニン抽出溶液のいずれも、高い感染抑制率を呈した。

Claims (18)

  1. リグニン含有材料を、鉄イオンの存在下、前記リグニン含有材料に付着している常在菌を用いて発酵させることによって前記リグニン含有材料から抽出されるリグニン抽出物を有効成分とする、植物病害防除剤。
  2. 前記発酵は、好気発酵である、請求項1に記載の植物病害防除剤
  3. 前記常在菌は、乳酸菌である、請求項1又は2に記載の植物病害防除剤
  4. 前記リグニン含有材料は、草本類の茎葉を含む、請求項1〜のいずれかに記載の植物病害防除剤。
  5. 前記リグニン含有材料はゲットウ由来のリグニン含有材料を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の植物病害防除剤。
  6. 前記リグニン抽出物は、鉄イオンの存在下、前記リグニン含有材料を前記ゲットウに付着している前記常在菌を用いて発酵させることによって前記リグニン含有材料から抽出される抽出物である、請求項5に記載の植物病害防除剤
  7. 抵抗性誘導剤である、請求項1〜のいずれかに記載の植物病害防除剤。
  8. 植物病害性細菌の感染を抑制する、請求項1〜のいずれかに記載の植物病害防除剤。
  9. 前記植物病害性細菌は黒斑細菌病菌である、請求項に記載の植物病害防除剤。
  10. 植物病害性糸状菌の感染を抑制する、請求項1〜のいずれかに記載の植物病害防除剤。
  11. 前記植物病害性糸状菌は野菜類炭そ病菌である、請求項10に記載の植物病害防除剤。
  12. 植物病害性ウイルスの防除用である、請求項1〜11のいずれかに記載の植物病害防除剤。
  13. 前記植物病害性ウイルスは、トマトモザイクウイルス(ToMV)、オオバコモザイク
    ウイスル(PIAMV)、ジャガイモXウイルス(PVX)、タバコモザイクウイルス(
    TMV)、ジャガイモMウイルス(PVM)及びキュウリモザイクウイルス(CMV)か
    らなる群から選択される1種又は2種以上のウイルスである、請求項12に記載の植物病害防除剤。
  14. 植物病害性細菌、植物病害性糸状菌及び植物病害性ウイルスに対する防除用である、請求項1〜13のいずれかに記載の植物病害防除剤。
  15. 黒斑細菌病菌、野菜類炭そ病菌、トマトモザイクウイルス(ToMV)、オオバコモザイクウイスル(PIAMV)、ジャガイモXウイルス(PVX)、タバコモザイクウイルス(TMV)、ジャガイモMウイルス(PVM)及びキュウリモザイクウイルス(CMV)に対する防除用である、請求項14に記載の植物病害防除剤。
  16. 請求項1〜15のいずれかに記載の植物病害防除剤を含有する、植物育成用組成物。
  17. 請求項1〜15のいずれかに記載の植物病害防除剤を用いて、植物の病害を防除する方法。
  18. 請求項1〜15のいずれかに記載の植物病害防除剤を用いて、植物の病害を防除し、前記植物を生産する方法。
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