JP6644540B2 - 食肉の熟成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、微生物を用いた食肉の熟成方法等に関する。
屠畜直後の食肉は、死後硬直が起こるため、一定期間を低温の環境下で菌の増殖を防ぎながら保管し、食肉の肉組織を再び柔らかくする(解硬)ことが多い。解硬に要する期間は、種類などにより異なるが、例えば2〜5℃で貯蔵した場合、牛肉では7〜10日、豚肉では3〜5日、鶏肉では半日ほどかかる。また、牛肉の場合は、さらにタンパク質をアミノ酸へ、また脂肪を脂肪酸へと分解し呈味や風味を増加する熟成(エイジング)を経てから食用とされることもある。
食肉の熟成方法としては一般に、ウェットエイジングとドライエイジングが知られている。
ウェットエイジングは、屠殺後直ちに部位ごとにカットした食肉を、バキュームパック(真空包装)内で乾燥させずに熟成をさせる方法をいう。
ドライエイジングは、部分ごとにカットした肉を専用の熟成庫の中で、温度・湿度・風・空気中の微生物を管理し、肉の表面を乾燥させながら熟成させる方法をいう。ドライエイジングでは、食肉の水分が1〜3割失われ、その分アミノ酸の凝集による旨味が詰まった食味となるが、食への関心が高まっている昨今、さらに旨味や香りを持った熟成肉を得る方法が求められている。
そこで本発明は、食肉を従来の方法よりさらに風味や味わいに優れ、肉汁の保持力が高く柔らかい食肉に熟成させる方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、本発明者らは、エダケカビ属、コウジカビ属、及びブロコスリックス属の菌の組み合わせによる酵素の働きにより食肉を熟成させることによって、風味や味わいに優れ、肉汁の保持力が高く柔らかい食肉を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕 エダケカビ属(Thamnidium)、コウジカビ属(Aspergillus)、及びブロコスリックス属(Brochothrix)の菌と、食肉とを接触させる工程を含む、食肉の熟成方法:
〔2〕 前記エダケカビ属の菌は、エダケカビ(Thamnidium elegans)である、上記〔1〕に記載の食肉の熟成方法:
〔3〕 前記コウジカビ属の菌は、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の食肉の熟成方法:
〔4〕 前記ブロコスリックス属の菌は、ブロコスリックス・テルモスファクタ(Brochothrix thermosphacta)である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法:
〔5〕 前記菌と食肉とを接触させる工程は、0℃〜10℃の条件下で行う、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法:
〔6〕 前記菌と食肉とを接触させる工程は、湿度50%〜90%の条件下で行う、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法:
〔7〕 前記菌と食肉とを接触させる工程は、送風しながら行う、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法:
〔8〕 前記菌と食肉とを接触させる工程は、10日〜80日間行う、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法:
〔9〕 前記菌と食肉とを接触させる工程は、熟成庫内で行う、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法:
〔10〕 前記菌と食肉を接触させる工程は、食肉中の遊離アミノ酸総量を増加させる工程を含む、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法:
〔11〕 前記菌と食肉とを接触させる工程は、食肉中のアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン及びアラニンのいずれか1以上のアミノ酸の量を増加させる工程を含む、上記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法:
〔12〕 前記食肉は、牛肉である、上記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法:及び
〔13〕 エダケカビ、アスペルギルス・ニゲル、及びブロコスリックス・テルモスファクタを含む食肉熟成用キット:
に、関する。
本発明の熟成方法によれば、食肉の旨味呈味アミノ酸、甘味呈味アミノ酸、遊離アミノ酸総量、及び不飽和脂肪酸量をバランスよく増加させて、風味や味わいに優れ、肉汁の保持力が高く柔らかい食肉を得ることができる。
図1は、約10日間熟成した部分肉を示す。 図2は、約10日間熟成した部分肉を示す。 図3は、20−25日間熟成した部分肉を示す。 図4は、20−25日間熟成した部分肉を示す。 図5は、約30日間熟成した部分肉を示す。 図6は、約30日間熟成した部分肉を示す。 図7は、約40日間熟成した部分肉を示す。 図8は、約40日間熟成した部分肉を示す。 図9は、検体1と検体2の加圧保水性の値を示す。 図10は、検体1と検体2の脂質の構成比率を示す。 図11は、検体1と検体2の脂質中に占めるオレイン酸の比率を示す。 図12は、検体1と検体2の旨味呈味系アミノ酸量を示す。 図13は、検体1と検体2の甘味呈味系アミノ酸量を示す。 図14は、検体1と検体2の遊離アミノ酸総量を示す。 図15は、検体2に含まれる揮発性物質のガスクロマトグラフチャートである。
本発明に係る食肉の熟成方法は、エダケカビ属(Thamnidium)、コウジカビ属(Aspergillus)、及びブロコスリックス属(Brochothrix)の菌と、食肉とを接触させる工程を含む。
本発明に係る熟成方法に用いる食肉は、一般に食用に供されるものであれば特に限定されず、例えば、牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉、馬肉、兎肉、猪肉、山羊肉、家禽肉、鴨肉、七面鳥肉、及び鳩肉等が挙げられる。
食肉の部位は、特に限定されず、ロース、サーロイン、カタロース、カタ、モモ、バラ、ヒレ、及びスネ等が挙げられる。
食肉の形態は、特に限定されず、屠体、枝肉、部分肉、及び精肉等が挙げられる。また、食肉は、皮下脂肪又は骨を含んでいてもよい。
本明細書においてエダケカビ属(Thamnidium)の菌は、エダケカビ(Thamnidium elegans)であってもよい。
本明細書においてコウジカビ属(Aspergillus)の菌は、アスペルギルス・フラブス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、カツオブシカビ(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・パラシティクス(Aspergillus parasiticus)、ショウユコウジカビ(Aspergillus sojae)、タマリコウジカビ(Aspergillus tamari)、及びアスペルギルス・ニゲル(クロコウジカビ)(Aspergillus niger)等を例示できる。
本明細書においてブロコスリックス属(Brochothrix)の菌は、ブロコスリックス・テルモスファクタ(Brochothrix thermosphacta)であってもよい。
本発明に係る熟成方法に用いるエダケカビ属、コウジカビ属、及びブロコスリックス属の菌の割合は特に限定されないが、エダケカビ属、コウジカビ属、及びブロコスリックス属の菌数の合計のうち、エダケカビ属の菌数を30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上としてもよい。
本発明に係るエダケカビ属、コウジカビ属、及びブロコスリックス属の菌と食肉とを接触させる工程を行う方法は特に限定されないが、例えば菌を接種した木質基剤を菌床として食肉の近くに配置する、食肉の近くの空気中に菌を噴霧する、又は菌を直接食肉に接種することによって行うことができる。また、菌と食肉とを接触させる工程は、2回以上繰り返してもよい。例えば、菌と食肉とを上記方法で接触させ、一定期間経過した後に、再度同一の又は異なる方法で、菌と食肉とを接触させてもよい。
本発明における菌と食肉とを接触させる工程は、0℃以上、又は1℃以上の条件で行ってもよく、2℃以下、3℃以下、4℃以下、5℃以下、6℃以下、7℃以下、8℃以下、9℃以下、又は10℃以下の条件下で行ってもよい。
本発明における菌と食肉とを接触させる工程の湿度は、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、又は70%以上の条件で行ってもよく、75%以下、80%以下、85%以下、又は90%以下の条件下で行ってもよい。
本発明における菌と食肉とを接触させる工程は、食肉の表面全体に送風しながら行ってもよい。風は、適度に食肉を乾燥させることができれば特に限定されず、例えば、業務用の扇風機によって送風することができる。食肉中の水分は、食品の構成成分であるタンパク質や炭水化物と固く化学結合した結合水と、環境、温度、及び湿度の変化で容易に移動や蒸発を起こす自由水とを含む。食肉に風を当て食肉中の自由水の割合(水分活性:Aw)の減少を促すことで、食肉のうま味を凝縮させることができる。
本発明における菌と食肉とを接触させる工程は、10日以上、20日以上、30日以上、又は40日以上の期間行ってもよく、50日以下、60日以下、70日以下、又は80日以下の期間行ってもよい。
一般に、接触させる工程の期間(熟成期間)が概ね2ヶ月未満の場合、その期間に応じて肉汁保持力、風味、味わい、及び、柔らかさが向上する傾向にある。
本発明における菌と食肉とを接触させる工程は、熟成庫内で行ってもよい。
本明細書において熟成庫とは、熟成庫の内部空間を所望の温度、及び湿度に保つことができ、また送風することができればよく、その構造は特に限定されない。本明細書における熟成庫は、一般に入手可能な食肉熟成庫であってもよいし、食品用冷蔵庫、又は食品用冷蔵庫に送風機等を備える等の加工を加えたものでもよい。
熟成庫内の気流は、熟成庫内の温度のむら、湿度のむらを防ぎ、菌が食肉表面全体へ均一に接触し、食肉全体がなるべく均一に熟成が進むものであればよく、肉の表面に風を当ててもよいし、当てなくてもよい。
熟成庫を用いる場合、本明細書における菌と食肉とを接触させる工程は、菌を接種した木質基剤を菌床として熟成庫内に設置する、又は熟成庫内に菌を噴霧することによって行ってもよい。また、菌と食肉とを接触させる工程は、あらかじめ熟成庫内に菌を蔓延させてから食肉を熟成庫に入れることによって行ってもよいし、食肉を熟成庫に入れた後から、菌を蔓延させることによって行ってもよい。
熟成庫を用いる場合、菌が蔓延している熟成庫内に、さらに菌を追加してもよい。
菌は、熟成庫約15m3あたり約1×106以上、約1×107以上、又は約1×108以上を菌床に接種してもよいし、約1×109個以下、約1×1010個以下、又は約1×1011個以下を菌床に接種してもよい。菌と食肉が蔓延している熟成庫内にさらに菌を追加で蔓延させる場合の菌数及び時期は、食肉の香りや肉の表面の状態から当業者は適宜判断することができる。
本明細書において食肉が熟成したことの評価は、例えば屠殺直後の肉と比較して、食肉中の遊離アミノ酸総量が増加したことで判断することができる。本明細書における遊離アミノ酸は、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、アルギニン、トレオニン、アラニン、プロリン、システイン、チロシン、バリン、メチオニン、リジン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、及びトリプトファン等が挙げられる。
また、本明細書において食肉が熟成したことの評価は、食肉中の旨味呈味アミノ酸として知られているアスパラギン酸及びグルタミン酸の量が増加したことで判断してもよいし、甘味呈味アミノ酸として知られているグリシン及びアラニンの量が増加したことで判断してもよい。さらに、本明細書において食肉が熟成したことの評価は、食肉中のアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、及びアラニンのうち、1以上、2以上、3以上、及び4のアミノ酸量が増加したことで判断してもよい。
熟成した食肉中の遊離アミノ酸総量は、特に限定されないが、例えば食肉100gあたり300mg以上、400mg以上、500mg以上、600mg以上、及び700mg以上含まれていてもよい。
本明細書において食肉が熟成したことの評価は、例えば屠殺直後の肉と比較して、食肉中の脂質の量、不飽和脂肪酸、又は一価脂肪酸の割合が増加したことで判断してもよい。また、本明細書において食肉が熟成したことの評価は、食肉中のオレイン酸、又はリノレン酸の割合が増加したことで判断してもよい。
本発明に係る食肉熟成用キットは、エダケカビ、アスペルギルス・ニゲル、及びブロコスリックス・テルモスファクタが含まれる。かかるキットには、例えば、エダケカビ、アスペルギルス・ニゲル、及びブロコスリックス・テルモスファクタを含むバイアルが含まれる。また、菌を保持するための菌床、復水液、及び培養液等が含まれていてもよい。それぞれの菌が1つの菌床等に含まれていてもよいし、3つの菌が一つの菌床等に含まれていてもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなくさまざまな態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。
A.本発明による熟成肉の製造及びその評価
1.アミノ酸の分析
枝肉を解体し、通常の食品用冷蔵庫にて4日間保管した牛サーロインステーキ(検体)を、東京食肉安全検査センターにて遊離アミノ酸の分析を行った(表1)。遊離アミノ酸の分析方法はHPLC法によるものである。
(単位 mg/100g)
2.菌体の調製
エダケカビ(NBRC 6152)、アスペルギルス・ニゲル(NBRC 33023)、及びブロコスリックス・テルモスファクタ(NBRC 012167)はいずれも、独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入した。
菌体が入ったアンプルを開封した後、直ちに滅菌したパスツールピペットを用いて、復水液約0.2mlを加えた。2−3分間置いてから、よく攪拌して菌体を懸濁させた後、培養基に接種した。エダケカビ及びアスペルギルス・ニゲルは25℃、ブロコスリックス・テルモスファクタは24℃で培養した。
エダケカビ及びアスペルギルス・ニゲルの復水液は、以下の方法により作製した。すなわち、ペプトン 5g、酵母エキス 3g、MgSO4・7H2O 1gを蒸留水 1L中に溶解した。混合液をpH7.0に調製し、オートクレーブで滅菌した。
エダケカビ及びアスペルギルス・ニゲルの培養基は、以下の方法により作製した。すなわち、皮を剥き1cm角程度に切ったジャガイモ 200gを沸騰させた1Lの蒸留水で20分煮、モスリン綿(帆布、あるいは3重にしたガーゼでも良い)で煮汁を濾過した。濾過した煮汁を1Lになるよう蒸留水でメスアップし、スクロース 20gと寒天粉 20gを加え、撹拌・加熱して溶解した。混合液をpH5.6に調製し、オートクレーブで
滅菌した。
ブロコスリックス・テルモスファクタの復水液は、以下の方法により作製した。すなわち、ポリペプトン 10g(和光純薬工業株式会社)、酵母エキス 2g、MgSO4・7H2O 1gを蒸留水 1L中に溶解した。混合液をpH7.0に調製し、オートクレーブで滅菌した。
ブロコスリックス・テルモスファクタの培養基は、以下の方法により作製した。すなわち、ポリペプトン 10g、酵母エキス 2g、MgSO4・7H2O 1g、寒天 15gを蒸留水 1L中に溶解した。混合液をpH7.0に調製し、オートクレーブで滅菌した。
培養基上で培養されたエダケカビ、アスペルギルス・ニゲル、及びブロコスリックス・テルモスファクタは、再度、復水液に1mLあたり約1×106個に懸濁した。
3.菌体の接種
菌床となる杉板、むしろ、及びおがくずを熱湯消毒した後、天日干しでよく乾燥させた。その後、杉板、むしろ、及びおがくずを1〜2℃、湿度約70%の約15m2の熟成庫内に設置した。その後、上記2の方法で作製したエダケカビの懸濁液200mL、アスペルギルス・ニゲル及びブロコスリックス・テルモスファクタの懸濁液それぞれ100mLを、熟成庫内の杉板、むしろ、及びおがくずに接種した。約14日間、菌を菌床全体に蔓延させ、その後、屠殺後1週間の牛サーロインの部位の部分肉を熟成庫内に設置した。
4.牛肉食味要素分析
上記3.の方法で作製し10日間熟成させた牛サーロイン(検体1)、及び40日間熟成させた牛サーロイン(検体2)を、日本認証サービス株式会社にて牛肉食味要素の分析を行った。
(1)食感・ジューシーさ分析(表2)
検体2は検体1よりも加圧保水性が高い特徴がみられた(図9)。
(2)脂質構成(融点・脂質・脂肪酸組成)(表3)
検体2は検体1よりも脂肪融点が高いが、赤身中の脂質量は同等であった。脂肪酸組成について、検体2は検体1よりも飽和脂肪酸比率が低く、不飽和脂肪酸比率が高かった(図10)。多価不飽和脂肪酸比率では、検体間に差異はみられなかったが、一価不飽和脂肪酸、特に脂の甘みや香りにプラス要素となるオレイン酸の比率は検体2が検体1よりも高かった(図10、11)。他の脂肪酸については、2検体でほぼ同様の組成を示した。
(単位 融点:℃、脂質:g/100g、脂肪酸組成:%)
(3)遊離アミノ酸類及びペプチド総量(表4、5)
全体的に、味わいや風味の指標となる遊離アミノ酸量は、検体1よりも検体2において豊富であり、旨味を呈するアミノ酸(図12)、甘味を呈するアミノ酸(図13)、遊離アミノ酸総量(図14)の含有量も検体2が検体1を大きく上回った。
(単位:mg/100g)
(4)総括
検体2は検体1よりも加圧保水性が高い、すなわち肉汁の保持力が高い肉質であった。脂肪酸組織に関して、検体2は食味評価にプラスとなる不飽和脂肪酸、特に脂の甘み・香りを向上させるオレイン酸の比率が検体1よりも高く、脂に良好な風味を呈した。旨味成分として、検体2は全体的に遊離アミノ酸量が検体1よりも非常に多く、遊離アミノ酸総量も非常に多いという特徴があり、味わいや風味に関して特に優れていた。
B.風味の評価
上述のA.における40日間熟成させた牛サーロイン(検体2)と、比較のための本発明とは別の方法で熟成させた熟成牛肉(検体3)から、以下のようにして揮発性物質を抽出し、ガスクロマグラフ分析を行った。
(1)揮発性物質の抽出
サンプル(検体2、検体3)を30℃で凍結保存し、解凍してひき肉とした。20gのひき肉を170℃のホットプレートで軽く焦げ目がつくまで焼き、90%メタノール40mlとヘキサン40mlを加えて30秒間ホモジナイズし、メタノール層を回収し、さらに4回ヘキサンで洗浄した。メタノール層にジクロロメタン20mlと0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)40mlを加えて混和後静置し、ジクロロメタン層を分取して、硫酸ナトリウムで脱水した。ついで、シリカゲル(ワコーゲルC−100)を3g加えて混和後ろ過し、ヘキサンを2ml加えて減圧濃縮して最終的に1mlとし、その20μlを分析に用いた。
(2)ガスクロマトグラフ分析
ヘッドスペースサンプラーを装備したガスクロマトグラフ装置(PerkinElmer,Clarus580GC)を用い、キャピラリーカラム(InertCAP PureWAX、0.25mm×60m)を用い、120℃で2分間加熱して気化した物質をトラップして昇温分析した。早退ピーク強度はジブチルヒドロキシトルエンを内部標準として算出した。
(3)結果
得られたチャートを図15に示す。
検体2については、82min付近にピークが確認された。シミラリティ検索の結果、このピークは、2−フェニルエチルアルコールのものであると同定された。
2−フェニルエチルアルコールは、天然に広く存在する無色の液体で、バラ、カーネーション、ヒヤシンス、アレッポマツ、イランイラン、ゼラニウム、ネロリ、キンコウボク等の様々な精油に含まれる快い花の香りを持つ物質であり、特にバラの香りを加えたいときに香料として用いられている。
以上より、本発明の熟成方法で熟成させた牛肉には、バラのような香気成分が多く含まれることが確認された。この成分が、本発明の熟成方法による熟成肉が優れた風味を呈する一因となっていると考えられる。

Claims (11)

  1. エダケカビ(Thamnidium elegans)アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)、及びブロコスリックス・テルモスファクタ(Brochothrix thermosphacta)と、食肉とを接触させる工程を含む、食肉の熟成方法。
  2. 前記エダケカビエダケカビ(NBRC 6152)であり、前記アスペルギルス・ニゲルは、アスペルギルス・ニゲル(NBRC 33023)であり、前記ブロコスリックス・テルモスファクタは、ブロコスリックス・テルモスファクタ(NBRC 012167)である、請求項1に記載の食肉の熟成方法。
  3. 前記菌と食肉とを接触させる工程は、0℃〜10℃の条件下で行う、請求項1又は2に記載の食肉の熟成方法。
  4. 前記菌と食肉とを接触させる工程は、湿度50%〜90%の条件下で行う、請求項1〜のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法。
  5. 前記菌と食肉とを接触させる工程は、送風しながら行う、請求項1〜のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法。
  6. 前記菌と食肉とを接触させる工程は、10日〜80日間行う、請求項1〜のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法。
  7. 前記菌と食肉とを接触させる工程は、熟成庫内で行う、請求項1〜のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法。
  8. 前記菌と食肉を接触させる工程は、食肉中の遊離アミノ酸総量を増加させる工程を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法。
  9. 前記菌と食肉とを接触させる工程は、食肉中のアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン及びアラニンのいずれか1以上のアミノ酸の量を増加させる工程を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法。
  10. 前記食肉は、牛肉である、請求項1〜のいずれか1項に記載の食肉の熟成方法。
  11. エダケカビ、アスペルギルス・ニゲル、及びブロコスリックス・テルモスファクタを含む食肉熟成用キット。
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