JP6643778B2 - 音響装置、電子鍵盤楽器およびプログラム - Google Patents

音響装置、電子鍵盤楽器およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、電子鍵盤楽器での演奏音をヘッドホンを介して聴取する際に適切な音像定位処理を実行可能な音響装置に係わり、特に、鍵盤中央部と両端部に渡って演奏音の音像定位感を自然なものとする装置等に関する。
電子ピアノには、実際のアコースティックピアノの演奏音をサンプリングしたものを音源とするものがある。例えばアコースティックピアノの筺体部における、演奏者位置前方かつ近傍等に複数のマイクロフォンを設置し、各鍵を押鍵していき総ての鍵の押鍵による音を録音し、これを2チャンネルの信号として電子ピアノ内に記憶しておき、電子ピアノの鍵盤が押鍵された際に対応する記憶音を呼び出すようにしている。
この際、ステレオでの立体感を得るため、左右のチャンネルに対するマイクロフォンは数十センチ以上離れた位置に設置される。このため、鍵によっては、2つのマイクロフォンへの音波信号の到達時間には差、即ち、位相差が生じる。スピーカからの演奏音を聴取する場合には空間でのクロストークにより、この位相差が緩和され問題とならない反面、ヘッドホンによって演奏音を聴取する場合には、「クロストーク」が無いため、演奏音は、位相差に違和感を感じる場合がある。つまり、鍵盤の左端から右端まで各鍵を押鍵する際、ヘッドホンでその演奏音を聞いて行くと音像の定位が自然に感じられない事がある。
そこで、電子ピアノの演奏音をヘッドホンを介して演奏者に聴取させる場合の音像の定位感を、この演奏音をスピーカを介して聴取させる場合の音像の定位感とを近づけ、総ての鍵に対する演奏音に渡って音像の定位感を自然にするように提案された装置があった(例えば、特許文献1の図1等参照。)。
この音響特性制御装置によれば、まず、帯域分割手段が左右2チャンネルの入力信号を複数の帯域に分割し、分割した各帯域に属する左右2チャンネルの帯域分割信号を各々出力し、次いで、信号生成手段が、帯域分割手段により分割された各帯域の左右2チャンネルの帯域分割信号について、当該帯域の左右2チャンネルの帯域分割信号の和であるMID成分信号と当該帯域の左右2チャンネルの分割信号の差であるSIDE成分信号とを生成する。
そして、信号生成手段は、各帯域のMID成分信号とSIDE成分信号とを混合して帯域毎の左右2チャンネルの成分信号を生成し、各帯域の左チャンネル成分信号をヘッドホンの左ヘッドホンユニットに出力すると共に、各帯域の右チャンネル成分信号をヘッドホンの右ヘッドホンユニットに出力する。このようにして、音響特性制御装置は電子ピアノの演奏音をヘッドホンを介して聴取した場合とスピーカから聴取した場合とで音像の広がり感を近づけるものであった。
特開2013−34094号公報(第3−8頁、第1図)
しかしながら、この音響特性制御装置によれば、帯域分割手段が左右2チャンネルの入力信号を複数の帯域に分割する等の演算量の多い処理を実行することが必要であるし、また、各チャンネル信号の和と差の信号に係数を乗じるため、相互のチャンネルに混合される割合は、左・右のチャンネルで同じ値となり、異なる係数を乗じることができず、音像の定位感を向上するのには限界があった。
また、ヘッドホンを介しての演奏音の聴取の場合には、演奏音の実空間での反射が無いため、音像が頭の内部に定位しがちであり、残響音を付加することによってこの違和感を解消することも考えられるが、残響音の付加はステレオでの処理であり残響音自体には左・右の情報として左右チャンネル間の情報しか持たず、直接音の位相差には対応できないという問題もあった。
本発明は、以上述べてきた従来の課題を解決するためになされたもので、電子ピアノの演奏音をヘッドホンを介して聴取する際の音像定位の仕方をより自然で明確なものとした音響装置、電子鍵盤楽器およびプログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者は、300(Hz)〜1300(Hz)の演奏者略正面位置近傍の鍵に対する音の左右チャンネルの位相差を低減させることによって、ヘッドホンを介しての演奏音の聴取の際の音像定位感を自然で明確なものとした。一般的な88鍵のピアノの場合、概ね音程基音の周波数が「130(Hz)」の「C3」(左から28鍵目)から基音の周波数が「1048(Hz)」の音程「C6」(左から64鍵目)が演奏者の略正面位置に位置する。ピアノの演奏音は基音の他倍音を含んでいるため、300(Hz)〜1300(Hz)に対し位相差を低減することで、これらの演奏音に対する左右チャンネルの位相差を低減させることが可能となり、演奏音の音像定位感を自然とすることが可能となる。そして、以下ではこの事を実現可能な音響装置等を提供する。
即ち、本発明の第1の態様は、左チャンネル信号と右チャンネル信号で成る2チャンネルの演奏音に基づいて、ヘッドホン用の2チャンネル信号を出力する音響装置であって、
前記左チャンネル信号に基づいて、前記右チャンネル側へのクロストークである第1クロストークを生成出力する第1クロストーク生成部と、
前記右チャンネル信号に基づいて、前記左チャンネル側へのクロストークである第2クロストークを生成出力する第2クロストーク生成部と、
前記第1クロストークと前記右チャンネル信号とを加算する第1加算部と、
前記第2クロストークと前記左チャンネル信号とを加算する第2加算部と、
前記第1加算部による加算信号の内の所定周波数範囲の信号を抽出出力する第1信号抽出部と、
前記第2加算部による加算信号の内の前記所定周波数範囲の信号を抽出出力する第2信号抽出部と、を備え、
前記左チャンネル信号または前記右チャンネル信号を入力した信号に対して遅延器と乗算器とローパスフィルタとを介した遅延信号を生成し、この生成した遅延信号に対して、左耳用頭部伝達関数(または右耳用頭部伝達関数)を右耳用頭部伝達関数(または左耳頭部伝達関数)で除算した伝達関数を乗じ、伝達関数が「1」となる方を主出力とし、他方をクロストーク側であるサブ出力とする初期反射処理部を更に1以上備えた音響装置とした。
この発明によれば、第1クロストーク生成部は、左チャンネル信号に基づいて、右チャンネル側へのクロストークである第1クロストークを生成出力し、第2クロストーク生成部は、右チャンネル信号に基づいて、左チャンネル側へのクロストークである第2クロストークを生成出力する。また、第1加算部は、第1クロストークを右チャンネル信号に加え、第2加算部は、第2クロストークと左チャンネル信号とを加算する。そして、第1信号抽出部は、第1加算部による加算信号の内の所定周波数範囲の信号を抽出出力すると共に、第2信号抽出部は、第2加算部による加算信号の内の前記所定周波数範囲の信号を抽出出力する。
つまり、第1クロストーク生成部および第2クロストーク生成部のそれぞれが生成したクロストークがそれぞれ右チャンネル信号、左チャンネル信号に加算され、第1信号抽出部および第2信号抽出部によって音質補正が行われる。この結果、ヘッドホンを介して電子ピアノの演奏音を聴取したとしても、低音鍵から高音鍵までの演奏に渡り、音像の定位感がより自然なものとなる。
また、第1クロストーク生成部および前記第2クロストーク生成部を、ハイパスフィルタとローパスフィルタとを縦続接続した構成とし、その結果、バンドパスフィルタを実現することができる。更に、第1クロストーク生成部および第2クロストーク生成部を、ローシェルビングフィルタとハイシェルビングとを縦続接続した構成、ハイパスフィルタとハイシェルビングフィルタとを縦続接続した構成、および、ローシェルビングフィルタとローパスフィルタを縦続接続した構成の内のいずれかとすることできるため、装置構成も簡素で済むという利点もある。
また、第1クロストーク生成部および第2クロストーク生成部のそれぞれの出力直後に乗算器を設ける構成とすれば、クロストーク信号を調整することが可能となるし、第1クロストーク生成部および第2クロストーク生成部のそれぞれの入力直前に乗算器を設けた構成として、処理全体の音量調整を行うことも可能となる。
また、第1信号抽出部および前記第2信号抽出部のそれぞれを、「ローシェルビングフィルタおよび/またはハイシェルビングフィルタ」を含んで構成された音響装置とすることができる。つまり、「ローシェルビングフィルタとハイシェルビングフィルタとの組合せ」、「ハイシェルビングフィルタ単独」、「ローシェルビングフィルタ単独」の構成態様とすれば、構成が簡易となって好ましい。そして、第1クロストーク生成部および第2のクロストーク生成部が、300(Hz)〜1300(Hz)の信号が通過する通過周波数特性を有する構成とすれば、演奏者の略正面位置に位置する、音程C3(基音130(Hz))〜音程C6(基音1048(Hz))」の鍵の押鍵操作によっても、音像定位感が自然となる。
また、前記左チャンネル信号または前記右チャンネル信号を入力した信号に対して遅延器と乗算器とローパスフィルタとを介した遅延信号を生成し、
この生成した遅延信号に対して、左耳用頭部伝達関数(または右耳用頭部伝達関数)を右耳用頭部伝達関数(または左耳頭部伝達関数)で除算した伝達関数を乗じ、伝達関数が「1」となる方を主出力とし、他方をクロストーク側であるサブ出力とする初期反射処理部を更に1以上備えた構成とすることもできる。つまり、伝達関数「1」の方を主出力、もう一方をサブ(クロストーク)出力とすることができる。この構成によれば、初期反射音を考慮した処理を実行することができ、この結果、クロストークに加えて音像定位を補強することが可能になる。
本発明の他の態様によれば、鍵盤を備え、押鍵操作に応じて対応する左チャンネルおよび右チャンネルの2チャンネルの音信号を出力する電子鍵盤楽器において、
前記左チャンネル信号に基づいて、前記右チャンネル側へのクロストークである第1クロストークを生成出力する第1クロストーク生成部と、
前記右チャンネル信号に基づいて、前記左チャンネル側へのクロストークである第2クロストークを生成出力する第2クロストーク生成部と、
前記第1クロストークを前記右チャンネル信号に加える第1加算部と、
前記第2クロストークを前記左チャンネル信号に加える第2加算部と、
前記第1加算部による加算信号の内の所定周波数範囲の信号を抽出出力する第1信号抽出部と、
前記第2加算部による加算信号の内の前記所定周波数範囲の信号を抽出出力する第2信号抽出部と、を備え、
前記左チャンネル信号または前記右チャンネル信号を入力した信号に対して遅延器と乗算器とローパスフィルタとを介した遅延信号を生成し、この生成した遅延信号に対して、左耳用頭部伝達関数(または右耳用頭部伝達関数)を右耳用頭部伝達関数(または左耳頭部伝達関数)で除算した伝達関数を乗じ、伝達関数が「1」となる方を主出力とし、他方をクロストーク側であるサブ出力とする初期反射処理部を更に1以上を備える電子鍵盤楽器も提供される。
この発明よれば、第1クロストーク生成部および第2クロストーク生成部のそれぞれが生成したクロストークがそれぞれ、電子鍵盤楽器の音信号の右チャンネル信号、左チャンネル信号のそれぞれに加算され、第1信号抽出部および第2信号抽出部によって音質補正が行われる。この結果、ヘッドホンを介して電子ピアノの演奏音を聴取したとしても、低音鍵から高音鍵までの演奏に渡り、音像の定位感がより自然な電子鍵盤楽器を実現可能となる。
上述した発明の構成要素はハードウエアでもソフトウエアでも実現可能である。ハードウエアの場合には、例えば、各機能に対応する機能部を備えた集積回路等で実現可能である。ソフトウエアの場合には、例えば、CPU、DSP等のプロセッサが、ROM等の不揮発性記録デバイスに記録されたプログラムを、RAM等の記憶デバイスの記憶領域をワークエリアとして実行する構成としても実現可能である。
つまり、本発明の更に他の態様は、左チャンネル信号と右チャンネル信号で成る2チャンネルの演奏音に基づいて、ヘッドホン用の2チャンネル信号を出力するためのプログラムであって、
前記左チャンネル信号に基づいて、前記右チャンネル側へのクロストークである第1クロストークを生成出力する第1クロストーク生成機能と、
前記右チャンネル信号に基づいて、前記左チャンネル側へのクロストークである第2クロストークを生成出力する第2クロストーク生成機能と、
前記第1クロストークと前記右チャンネル信号とを加算する第1加算機能と、
前記第2クロストークと前記左チャンネル信号とを加算する第2加算機能と、
前記第1加算機能による加算信号の内の所定周波数範囲の信号を抽出出力する第1信号抽出機能と、
前記第2加算機能による加算信号の内の前記所定周波数範囲の信号を抽出出力する第2信号抽出機能と、
前記左チャンネル信号または前記右チャンネル信号を入力した信号に対して遅延器と乗算器とローパスフィルタとを介した遅延信号を生成し、この生成した遅延信号に対して、左耳用頭部伝達関数(または右耳用頭部伝達関数)を右耳用頭部伝達関数(または左耳頭部伝達関数)で除算した伝達関数を乗じ、伝達関数が「1」となる方を主出力とし、他方をクロストーク側であるサブ出力とする初期反射処理機能と、をコンピュータに実現するためのプログラムである。
CPU、DSP等のプロセッサがROMに記録されたこのプログラムを実行することによって、第1クロストーク生成機能、第2クロストーク生成機能、第1加算機能、第2加算機能、第1信号抽出機能、および、第2信号抽出機能等が実現できる、その結果、上記のような装置を提供することが可能となる。
本発明によれば、電子ピアノの演奏音をヘッドホンを介して聴取する際の音像定位の仕方をより自然で明確なものとした音響装置、電子鍵盤楽器およびプログラムを提供することができるという効果が得られる。
音響装置の基本構成を示す構成図である。 電子ピアノ600に音響装置1(2)を内蔵する構成の説明図である。 音響装置1の構成図である。 動作のシミュレーション例である。 音響装置2の構成図である。 動作のシミュレーション例である。 頭部伝達関数の説明図である。 シェルビングフィルタの特性の模式的説明図である。 初期反射音処理部300を加えた基本構成例である。 初期反射処理部300の構成図である。 効果の説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
(基本構成・動作等)
図1は音響装置の基本構成を示す構成図である。基本構成は、直接音処理部100と、初期反射音処理部300と、音質調整用フィルタ200、201とを有している。演奏者の演奏音は左チャンネル信号(Lch)と右チャンネル信号(Rch)から成る2チャンネルの信号であり、これが端子50、端子51を介してそれぞれ乗算器10、乗算器11によってその係数で調整され、この乗算された左チャンネル信号と右チャンネル信号とが直接音処理部100に入力される。また、乗算器10、乗算器11での乗算結果である2チャンネルの信号は、端子50、51を介して初期反射音処理部300にも入力される。
そして、直接音処理部100によって直接音処理が行われた信号と、初期反射音処理部300によって初期反射音処理が行われた信号とが、それぞれ、加算器400、加算器401によって加算される。加算器400は、直接音処理部100および初期反射音処理部300の左チャンネル側の出力信号同士を加算して音質調整用フィルタ200に供給する。同様に、加算器401は、直接音処理部100および初期反射音処理部300の右チャンネル側の出力信号同士を加算して音質調整用フィルタ201に供給する。音質調整用フィルタ200、音質調整用フィルタ201は、供給された信号の調整を行って出力する。これらの出力信号は、ヘッドホンのプラグをヘッドホン端子206aとヘッドホン端子206bとなる不図示の差し込み口に装着することによって演奏音として聴取することが可能となる。なお、音質調整用フィルタ200、201は以下の実施形態では音質の補正を行う音質補正フィルタとして実現される。
直接音処理部100が実行する直接音処理は、主に低域音、高域音の広がりを維持しつつ、中域音の音像の定位を明確にしてステレオ信号の各チャンネル間の位相差によって生じる音像定位の違和感を低減する。これは、ピアノの鍵盤は演奏者の左側が低音側、右側が高音側となっていて、これに対応して概ね左方向が低音、右方向が高音に音像定位しているからである。但し、ピアノは弦だけから音が発生されるのではなく、ピアノ筺体等の全体が複雑に作用するため単純に鍵位置と音像とが必ずしも対応しない。電子ピアノが記憶しているステレオ音源は、グランドピアノ等のアコースティックピアノの各鍵の音を例えば演奏者前方に設置された複数本のマイクロフォンで収音し、上記の定位となるようにしてステレオ音源としている。この音源からの音をヘッドホンで聴取するとスピーカでの再生とは異なりクロストークが存在しないため、左右チャンネル間における位相差が生じて違和感となる。適度な位相差は「300〜1300(Hz)」の成分を含む演奏者の略正面位置の近傍の鍵に対応する音であり、この音が演奏者略前方位置に定位することが自然であり明確な定位が要求される。
初期反射音処理部300が実行する初期反射音処理は、ヘッドホン特有の密閉感を緩和するもので、この処理によってもステレオ信号の各チャンネル間の位相差によって生じる音像定位の違和感を低減する。音質調整用フィルタ200、音質調整用フィルタ201は、直接音処理、初期反射音処理による周波数特性の乱れを補正する。また、具体的には、(A)直接音処理と音質補正処理(図3、図5)、(B)直接音処理と初期反射処理を加算して音質補正処理を行う(図10の組合せがある。
図2は、図3などで説明する音響装置1(音響装置2)を搭載した電子ピアノ600の模式的な構成図である。鍵盤610を備えた電子ピアノ600には、音響装置1(音響装置2)が信号処理部620に内蔵されている。そして、音響装置1(音響装置2)の出力がDAC630、631によってデジタル・アナログ変換される。このデジタル・アナログ変換された信号はヘッドホン00を介して聴取することが可能である。なお、ヘッドホン00は、不図示の差し込み口にヘッドホン00側のプラグ(不図示)を差し込みようにされている。
(第1実施形態の構成)
図3は本発明の第1実施形態である音響装置1の構成図である。本実施形態の音響装置1は、直接音処理部100と、この直接音処理部100の出力信号の音質を補正する音質補正フィルタ20a、20bを有して構成される。電子ピアノの演奏音を2チャンネル信号(左チャンネル信号、右チャンネル信号)で入力するための端子50、端子51が接続されている。端子50、端子51を介して入力された左チャンネル信号(Lch)、右チャンネル信号(Rch)のそれぞれは、係数gL1の乗算器10、係数gR1の乗算器11によって係数が乗じられて振幅調整されて直接音処理部100に入力される。
直接音処理部100は、クロストークフィルタ20と、クロストークフィルタ25とを備えている。クロストークフィルタ20は、入力信号から右チャンネル信号へのクロストークLcを生成する一方、クロストークフィルタ25は、入力信号から左チャンネルへのクロストークRcを生成する。クロストークフィルタ20の出力直後には乗算器30(係数gL2)が設けられていて、この係数gL2を調整してクロストークフィルタ20の出力を調整する事が可能になっている。同様に、クロストークフィルタ25の出力直後には乗算器31(係数gR2)が設けられていて、この係数gR2を調整してクロストークフィルタ25の出力を調整する事が可能になっている。
更に、加算器40は、乗算器10の乗算結果である信号L1と乗算器31の乗算結果である信号Rcとを加算し、同様に、加算器41は、乗算器11による乗算結果である信号R1と乗算器30の乗算結果である信号Lcとを加算する。加算器40の加算信号L2は音質補正フィルタ210aに入力され、また、加算器41の加算信号R2は音質補正フィルタ200bに入力される。そして、音質補正フィルタ210aおよび質補正フィルタ210bによって音質補正された信号(L4、R4)は、ヘッドホン用端子206a、206bから出力される。つまり、演奏者がヘッドホンを介して演奏音を聴取する場合にはヘッドホンの左・右音用のプラグをヘッドホン用端子206a、206bに接続する。
そして、本実施形態では、クロストークフィルタ20は、ハイパスフィルタ21とローパスフィルタ22とを縦続接続して構成し、同様に、クロストークフィルタ25は、ハイパスフィルタ26とローパスフィルタ27とを縦続接続して構成している。ここで、ハイパスフィルタ21とハイパスフィルタ26の通過周波数特性は同一であり、また、ローパスフィルタ22とローパスフィルタ27の通過周波数特性も同一に設定している。このような簡易な構成でクロストークフィルタ20、クロストークフィルタ25を実現することが可能である。なお、ハイパスフィルタ2とハイパスフィルタ26とを独立でその周波数特性を設定する事もでき、また、ローパスフィルタ22とローパスフィルタ27とを独立でその周波数特性を設定する事もできる。
また、音質補正フィルタ20aは、ローシェルビングフィルタ202とハイシェルビングフィルタ203とを縦続接続して構成し、同様に、音質補正フィルタ20bは、ローシェルビングフィルタ204とハイシェルビングフィルタ205とを縦続接続して構成している。図8(a)、(b)はそれぞれ、ローシェルビングフィルタとハイシェルビングフィルタの一般的な周波数特性を模式的に図示したものであり、横軸に周波数、縦軸に通過信号振幅を示している。シェルビングフィルタの周波数特性は、低域から高域にかけて持ち上げたり減衰させたりしていて、段差(棚(shelf))がつくような形の信号通過周波数特性になっている。音質補正フィルタ20a、20bもこのようなシェルビングフィルタを用いて実現できるので、簡易な構成で実現可能である。
また、以降の説明の都合上、音質補正フィルタ210aの前段のローシェルビングフィルタ202の出力信号を信号L3とし、音質補正フィルタ20a全体での出力信号を信号L4としている。同様に、音質補正フィルタ210bの前段のローシェルビングフィルタ204の出力信号を信号R3とし、音質補正フィルタ20b全体での出力信号を信号R4としている。なお、音質補正フィルタ20a、20bは、ローシェルビングフィルタのみで実現したり、ハイシェルビングフィルタのみで実現したりすることも可能である。本実施形態では、ローシェルビングフィルタ20とローシェルビングフィルタ204の通過周波数特性同一であり、また、ハイシェルビングフィルタ202とハイシェルビングフィルタ205の通過周波数特性も同一に設定している。また、音質補正フィルタ20a、20bは例えば「300(Hz)〜1300(Hz)」で信号を通過しこれ以外をなだらかに阻止する周波数特性する。なお、ローシェルビングフィルタ20とローシェルビングフィルタ204の通過周波数特性は独立に設定可能でもあり、また、ハイシェルビングフィルタ20とハイシェルビングフィルタ205の周波数特性も独立で設定も可能である。
(動作)
次に動作を説明する。電子ピアノから端子50、端子51を介して、2チャンネルのステレオ信号(L0、R0)が供給されると、信号L0、R0にはそれぞれ乗算器10、乗算器11の係数gL1、gR1が乗じられて音量調整される。次いで、乗算器10の出力信号L1と乗算器11の出力信号R1とがそれぞれ、クロストークフィルタ20、クロストークフィルタ25に入力される。この結果、信号L1から右チャンネル(Rch)へのクロストークが生成出力されると共に、信号R1から左チャンネル(Lch)へのクロストークが生成出力される。クロストークフィルタ20、クロストークフィルタ25によって生成出力されたクロストークは、それぞれ、乗算器30、31によってその係数gL2、係数gR2が乗じられレベル調整される。
そして、加算器40によって、レベル調整されたクロストーク(Rc)と信号L1が加算され、同様に、加算器41によって、レベル調整されたクロストーク(Lc)と信号R1が加算され、その結果得られる信号L2、R2はそれぞれ音質補正フィルタ20a、210bで所定周波数成分の信号が抽出・出力され信号L4、R4となる。クロストークが加算された帯域での振幅は上昇するので必要に応じて音質補正フィルタによって低音域、高音域の補正を行う。ここでクロストークフィルタ20、クロストークフィルタ25は、例えば「300(Hz)〜1300(Hz)」なる信号が通過する特定周波数特性を有し、この特定周波数特性で信号の通過(濾波)が行われる。
(具体例)
クロストークフィルタ20、クロストークフィルタ25のそれぞれを構成する、ハイパスフィルタ21、ハイパスフィルタ26のカットオフ周波数を「300(Hz)」、ローパスフィルタ22、27のカットオフ周波数を「1300(Hz)」と設定した。また、クロストークのゲインを「0.5(gL2、gR2)」、音質補正フィルタ20a、20bのローシェルビングフィルタ20、ローシェルビングフィルタ204のカットオフ周波数「300(Hz)」とハイシェルビングフィルタ203、ハイシェルビングフィルタ205のカットオフ周波数「1300(Hz)」とした。なお、シェルビングフィルタにおいては、その周波数特性の変化部の中央の周波数を便宜上カットオフ周波数(fc)と称することとする(図8参照)。
図4(a)、図4(b)、図4(c)は、それぞれ信号L2、信号L3、信号L4に関するものである。なお、各図面の横軸は対数表示された周波数、縦軸は振幅である。信号L2、信号L3、信号L4のそれぞれに対して、シミュレーション結果RO、LO、MIXを示している。「LO」は、左チャンネル信号(Lch)のみが入力された場合、「RO」は右チャンネル信号(Rch)のみが入力された場合、「MIX」は左チャンネル信号(Lch)と右チャンネル信号に同じ信号が入力された場合の周波数特性である。図4(c)のMIXの周波数振幅特性はほぼフラットであるが、クロストークフィルタの通過域では、それ以外の帯域より右チャンネル成分が多く含まれる事が分かる。その結果、クロストークフィルタの通過域、すなわち演奏者の正面付近の鍵盤に対応する音では、左右チャンネル間位相差が低減し、また、他の帯域では、従来のステレオ感が維持され、低域から高域までの音像定位感が自然となる。
また、図11は、図3で示した第1実施形態(クロストークフィルタがハイパス(300(Hz))+ローパスフィルタ(1300(Hz)))の場合でクロストーク係数(乗算器30、乗算器31の係数)が「0.3」の場合でLch、Rch間に位相差(0度、30度、60度、90度)があるステレオ信号が入力された場合における、直接音処理結果のステレオ信号位相差を50Hz、500Hz、1Khzに関して測定したものを示す図面である。横軸に入力ステレオ信号間の位相差を、縦軸に直接音処理による出力ステレオ信号間の位相差をとっている。まず、入力ステレオ信号間の位相差が0度の場合、いずれの場合(50、500、1kHz)も直接音処理による出力信号間の位相差も0度である。入力ステレオ信号間の位相差が30度の場合、クロストークフィルタの帯域外である50(Hz)では直接音処理結果も同じく30度であるが、クロストークフィルタ帯域内の500(Hz)、1k(Hz)では位相差が小さくなっている。入力ステレオ信号間の位相差が60度、90度の場合にも同様の傾向がある。
以上説明してきたようにして、本発明の実施形態によれば、クロストークフィルタ20(第1クロストーク生成部)およびクロストークフィルタ25(第2クロストーク生成部)のそれぞれが生成したクロストークが、それぞれ加算器41、加算器40によって、右チャンネル信号R1、左チャンネル信号L1に加算される。次いで、音質補正フィルタ20a(第1信号抽出部)および音質補正フィルタ20b(第2信号抽出部)によって音質補正が行われる。この結果、ヘッドホンを介して電子ピアノの演奏音を聴取したとしても、低音鍵から高音鍵までの演奏に渡り、音像の定位感が明確でより自然なものとなる。
(第2実施形態)
(構成)
図5は本発明の第2実施形態の音響装置2の構成図である。図3と同じ機能を有する部分には同一符号を付している。音響装置2は、音響装置1のクロストークフィルタ20、クロストークフィルタ25におけるハイパスフィルタ21、ハイパスフィルタ26を「ローシェルビングフィルタ52、ローシェルビングフィルタ54」とした点、クロストークフィルタ20、クロストークフィルタ25におけるローパスフィルタ22、ローパスフィルタ27を「ハイシェルビングフィルタ56、ハイシェルビングフィルタ58」とした点が異なり、他の点は異なる所がない。クロストークフィルタをバンドパスフィルタで構成した場合、バンドパスフィルタの下限以下の帯域においてもチャンネル間の位相差による違和感が感ぜられる時、または、低音鍵押鍵による演奏音の広がりを抑制したい時等には、ハイパスフィルタを音響装置2のようにローシェルビングフィルタとし、少量のクロストーク成分を加算して微調整を行うものである。同様に、バンドパスフィルタの上限以上の帯域においても音像定位を調整するため、バンドパスフィルタのローパスフィルタをハイシェルビングフィルタとし、少量のクロストーク成分を加算して微調整を行う。
(動作例等)
次に、動作例等について説明する。クロストークフィルタ28、クロストークフィルタ29のローシェルビングフィルタ52、ローシェルビングフィルタ54のカットオフ周波数「300(Hz)」、ハイシェルビングフィルタ56、ハイシェルビングフィルタ58のカットオフ周波数「1300(Hz)、−12(dB)」とした。また、クロストークのゲインを「0.4(gL2、gR2)」、音質補正フィルタ200a、200bのローシェルビングフィルタ202、ローシェルビングフィルタ204のカットオフ周波数「300(Hz)、+1.7(DB)」ハイシェルビングフィルタ203、ハイシェルビングフィルタ205のカットオフ周波数「1300(Hz)、+1.7(DB)」、とした。
図6に動作のシミュレーション例を示す。図6(a)、図6(b)、図6(c)はそれぞれ信号L2、信号L3、信号L4に関するものである。各図面の横軸は対数表示された周波数、縦軸は振幅である。信号L2、信号L3、信号L4のそれぞれに対して、シミュレーション結果RO、LO、MIXを示している。「LO」は、左チャンネル信号(Lch)のみが入力された場合、「RO」は右チャンネル信号(Rch)のみが入力された場合、「MIX」は左チャンネル信号(Lch)と右チャンネル信号に同じ信号が入力された場合の周波数特性である。クロストークフィルタがバンドパスフィルタの場合、通過帯域以外の加算割合は徐々減少するが、シェルビングフィルタの場合は図6(a)の「RO」の様に減少量を一定値として(図4(a)のROと比較すれば分かり易い)、全帯域でこの一定値となる効果を維持する。
その結果、左・右チャンネルの位相差が減少し、違和感が減少する。音の広がりも減少する傾向になる。なお、以上において、クロストークフィルタを「ハイパスフィルタとローパスフィルタの組み合わせ」、「ローシェルビングフィルタとハイシェルビングフィルタの組合せ」として説明してきたが、他に「ハイパスフィルタとハイシェルビングフィルタの組合せ」、「ローパスフィルタとローシェルビングフィルタの組合せ」とすることも可能である。第1実施形態と第2実施形態、またはその組み合わせは、元の電子ピアノ音源の左右チャンネル間位相差の量、すなわち聴感上の違和感の量に応じて使い分けることが可能である。
(初期反射音処理)
直接音処理部100、101による直接音処理に加え、「方向情報」を持つ複数の初期反射成分を付加する事で自然な音の広がり感を付加しつつ、位相差による音像定位の違和感の低減の補強が可能である。「初期反射音」とは、音源から放射された音波が室内の壁等に反射して聴取者に届く音で、音源から聴取者に直接到達する直接音よりも遅延して聴取者に到達する。一般に、直接音から50(msec)以内程度に到達する音を指す。それ以降遅延する反射音は後期残響音と称され区別される。初期反射音に持たせる「方向情報」は、頭部伝達関数(HRTF)を模したフィルタ処理にて実現する。頭部伝達関数は、音源の位置Pから聴取者Tの両耳ER、ELまでの伝達関数である。例えば図7に示すように、音源Pと聴取者Tの両耳ER、ELとが配置されていると仮定する。右耳ERの方が音源Pに近いため、左耳ELに比べて到達時刻が速く振幅も大きい。音源Pの位置が変化すると頭部伝達関数(HRTF)も変化する。
(初期反射の信号処理)
さて、図9は初期反射音処理部300を更に用いた基本構成図である。図1で示した構成において、初期反射音処理部300は、単一初期反射処理部310La、単一初期反射処理部310Ra、…、単一初期反射処理部310Ln、単一初期反射処理部310Rnを有している。このように、初期反射音処理部300は複数の単一初期反射処理部310を備えて構成されている。そして、単一反射処理部310La、…、310Lnは、左チャンネル信号(Lch)を入力して、処理結果の左チャンネル側出力信号を加算器402La、…、402Lnに供給する一方、処理結果の右チャンネル側出力信号を加算器403La、…、403Lnに供給する。一方、単一反射処理部310Ra、…、310Rnは、右チャンネル信号(Rch)を入力して、処理結果の左チャンネル側出力信号を加算器402Ra、…、402Rnに供給する一方、処理結果の右チャンネル側出力信号を加算器403Ra、…、403Rnに供給する。このように、単一初期反射処理部310は、左チャンネル信号(Lch)を入力と、右チャンネル信号(Rch)を入力それぞれに処理を行う処理を多数設けて、異なる方向情報等に対応している。
図10は一方向情報付き単一初期反射処理部の構成図である。入力信号に初期反射遅延時間に応じた遅延である初期反射遅延800を乗じる。反射音は、反射の影響や伝搬距離の長さによる空気減衰の影響で高音域が減衰するので係数810を乗じ、更に高音域を減衰させるためローパスフィルタ820(LPF)によるフィルタリング処理を施す。方向処理部900では、任意の方向の頭部伝達関数を使用し、左耳用、右耳用のフィルタ910、920によるフィルタリング処理を施してそれぞれのチャンネル用信号(Lch、Rch)とする。方向処理部900は、それぞれ左耳用頭部伝達関数910、右耳用頭部伝達関数920で成っていて、これらの頭部伝達関数は、FIRフィルタによるインパルス応答の畳み込みで実現できるが、図10(b)に示すように一層簡易な、遅延器936とEQ(イコライザ)932、934による処理でも構わない。なお、レベル調整のため乗算器938を設けて遅延器936の出力信号に係数を乗じて右チャンネル信号(Rch)を生成している。
一方、図10(b)の構成において、方向処理部930において、左チャンネル信号(Lch)は「1」としている。FIRフィルタによるインパルス応答の畳み込み演算量の削減を目的として、方向処理部920を頭部伝達関数の左・右耳間の差分を周波数特性を模した「疑似HRTF」で実現している。つまり、図10(b)の構成の場合、左耳用頭部伝達関数および右耳用頭部伝達関数のそれぞれを音源Pに近い右耳の伝達関数で除して「1」とし、右耳の伝達関数で除した左耳への伝達関数の周波数振幅特性を、IIRフィルタによるEQ932、934と、遅延器936と、乗算器938とで実現することが可能である。場合によっては、左耳用頭部伝達関数および右耳用頭部伝達関数のそれぞれを左耳用伝達関数で除して「1」としても良い。また、入力は左チャンネル信号の場合も右チャンネル信号の場合もあり得る。つまり、伝達関数が「1」となる方を主出力とし、もう一方をサブ出力(クロストーク)とすることができる。
この構成例によれば、ピアノ音源の場合、相対的に左チャンネル信号には低音域成分が右チャンネル信号には高音域成分が多く含まれるが、初期反射音処理部300を付加する事により、直接音処理での音像定位補正処理に加え低音域および高音域での音像定位明確化を補強することができる。例えば、左チャンネル信号を入力し、初期反射を正面に対して右45度に定位させると、左寄りだった低音音像を若干正面側に寄せることが可能となる。また、初期反射処理の結果、遅延した信号を直接音に加算することになるが、遅延した信号を加算すると「櫛形フィルタ」となり、周波数的にピークディップを有する。遅延時間が増加すると、周波数のピークディップの間隔が密になる。遅延時間が互いに素となる反射の数だけ増加すると、これらピークディップが平坦化され、この周波数の乱れが緩和される。
このように、複数の遅延を加算することで周波数特性の制御ができるため、意図的に低音を増幅し、直接音処理で不足する低音域を補うことが可能である。つまり、直接音処理に初期反射音を加えることで少なくとも以下の効果を得ることができる。(1)ヘッドホンを介しての演奏音の聴取での閉塞感を緩和できる。(2)直接音処理に加えて、両耳間の位相差による違和感を低減できる。(3)音像定位の制御に寄与する。(4)直接音処理での低音域での不足を補うことができる。
なお、以上述べてきた音響装置1、音響装置2、初期反射音処理部300等は、CPU、DSP等のプロセッサが、ROM等の記録媒体に記録されたプログラムを実行することによって実現可能である。また、以上述べてきた本発明の実施形態に対して種々の変形等を施すことが可能である。
以上説明してきたように、本発明は音楽分野、例えば、電子鍵盤楽器等に利用することができる。
10 乗算器
11 乗算器
20 クロストークフィルタ
21 ハイパスフィルタ
22 ローパスフィルタ
25 クロストークフィルタ
26 ハイパスフィルタ
27 ローパスフィルタ
30 乗算器
31 乗算器
50 端子
51 端子
52 ローシェルビングフィルタ
54 ローシェルビングフィルタ
56 ハイシェルビングフィルタ
58 ハイシェルビングフィルタ
100 直接音処理部100
200 音質調整用フィルタ
201 音質調整用フィルタ
202 ローシェルビングフィルタ
203 ハイシェルビングフィルタ
204 ローシェルビングフィルタ
205 ハイシェルビングフィルタ
210a 音質補正フィルタ
210b 音質補正フィルタ
206a、206b ヘッドホン用端子
300 初期反射音処理部
310a、310b、…、310n 単一反射初期反射処理部
400 加算器
401 加算器
600 電子ピアノ

Claims (9)

  1. 左チャンネル信号と右チャンネル信号で成る2チャンネルの演奏音に基づいて、ヘッドホン用の2チャンネル信号を出力する音響装置であって、
    前記左チャンネル信号に基づいて、前記右チャンネル側へのクロストークである第1クロストークを生成出力する第1クロストーク生成部と、
    前記右チャンネル信号に基づいて、前記左チャンネル側へのクロストークである第2クロストークを生成出力する第2クロストーク生成部と、
    前記第1クロストークと前記右チャンネル信号とを加算する第1加算部と、
    前記第2クロストークと前記左チャンネル信号とを加算する第2加算部と、
    前記第1加算部による加算信号の内の所定周波数範囲の信号を抽出出力する第1信号抽出部と、
    前記第2加算部による加算信号の内の前記所定周波数範囲の信号を抽出出力する第2信号抽出部と、を備え、
    前記左チャンネル信号または前記右チャンネル信号を入力した信号に対して遅延器と乗算器とローパスフィルタとを介した遅延信号を生成し、この生成した遅延信号に対して、左耳用頭部伝達関数(または右耳用頭部伝達関数)を右耳用頭部伝達関数(または左耳頭部伝達関数)で除算した伝達関数を乗じ、伝達関数が「1」となる方を主出力とし、他方をクロストーク側であるサブ出力とする初期反射処理部を更に1以上備える音響装置。
  2. 請求項1に記載の音響装置において、
    前記第1クロストーク生成部および前記第2クロストーク生成部は、
    ハイパスフィルタとローパスフィルタとを縦続接続した構成であることを特徴とする音響装置。
  3. 請求項1に記載の音響装置において、
    前記第1クロストーク生成部および前記第2クロストーク生成部は、
    ローシェルビングフィルタとハイシェルビングとを縦続接続した構成、ハイパスフィルタとハイシェルビングフィルタとを縦続接続した構成、および、ローシェルビングフィルタとローパスフィルタとを構成の内のいずれかであることを特徴とする音響装置。
  4. 請求項1、2および3の内のいずれか一項に記載の音響装置において、
    前記第1クロストーク生成部および前記第2クロストーク生成部のそれぞれの出力直後に乗算器を設けたことを特徴とする音響装置。
  5. 請求項1、2、3および4の内のいずれか一項に記載の音響装置において、
    前記第1クロストーク生成部および前記第2クロストーク生成部のそれぞれの入力直前に乗算器を設けたことを特徴とする音響装置。
  6. 請求項1、2、3、4および5の内のいずれか一項に記載の音響装置において、
    前記第1信号抽出部および前記第2信号抽出部は、
    ローシェルビングフィルタおよび/またはハイシェルビングフィルタを含んで構成されたことを特徴とする音響装置。
  7. 請求項1、2、3、4、5および6の内のいずれか一項に記載の音響装置において、
    前記第1クロストーク生成部および前記第2のクロストーク生成部は、
    300(Hz)〜1300(Hz)の信号が通過する周波数特性を有することを特徴とする音響装置。
  8. 鍵盤を備え、押鍵操作に応じて対応する左チャンネルおよび右チャンネルの2チャンネルの音信号を出力する電子鍵盤楽器において、
    前記左チャンネル信号に基づいて、前記右チャンネル側へのクロストークである第1クロストークを生成出力する第1クロストーク生成部と、
    前記右チャンネル信号に基づいて、前記左チャンネル側へのクロストークである第2クロストークを生成出力する第2クロストーク生成部と、
    前記第1クロストークを前記右チャンネル信号に加える第1加算部と、
    前記第2クロストークを前記左チャンネル信号に加える第2加算部と、
    前記第1加算部による加算信号の内の所定周波数範囲の信号を抽出出力する第1信号抽出部と、
    前記第2加算部による加算信号の内の前記所定周波数範囲の信号を抽出出力する第2信号抽出部と、を備え、
    前記左チャンネル信号または前記右チャンネル信号を入力した信号に対して遅延器と乗算器とローパスフィルタとを介した遅延信号を生成し、この生成した遅延信号に対して、左耳用頭部伝達関数(または右耳用頭部伝達関数)を右耳用頭部伝達関数(または左耳頭部伝達関数)で除算した伝達関数を乗じ、伝達関数が「1」となる方を主出力とし、他方をクロストーク側であるサブ出力とする初期反射処理部を更に1以上備える電子鍵盤楽器
  9. 左チャンネル信号と右チャンネル信号で成る2チャンネルの演奏音に基づいて、ヘッドホン用の2チャンネル信号を出力するためのプログラムであって、
    前記左チャンネル信号に基づいて、前記右チャンネル側へのクロストークである第1クロストークを生成出力する第1クロストーク生成機能と、
    前記右チャンネル信号に基づいて、前記左チャンネル側へのクロストークである第2クロストークを生成出力する第2クロストーク生成機能と、
    前記第1クロストークと前記右チャンネル信号とを加算する第1加算機能と、
    前記第2クロストークと前記左チャンネル信号とを加算する第2加算機能と、
    前記第1加算機能による加算信号の内の所定周波数範囲の信号を抽出出力する第1信号抽出機能と、
    前記第2加算機能による加算信号の内の前記所定周波数範囲の信号を抽出出力する第2信号抽出機能と、
    前記左チャンネル信号または前記右チャンネル信号を入力した信号に対して遅延器と乗算器とローパスフィルタとを介した遅延信号を生成し、この生成した遅延信号に対して、左耳用頭部伝達関数(または右耳用頭部伝達関数)を右耳用頭部伝達関数(または左耳頭部伝達関数)で除算した伝達関数を乗じ、伝達関数が「1」となる方を主出力とし、他方をクロストーク側であるサブ出力とする初期反射処理機能と、をコンピュータに実現するためのプログラム。
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