以下、本発明のさらに具体的でかつ例示的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
<本発明の第1実施形態>
図1には、本発明の例示的な第1実施形態に従うカートリッジ12であって、プランジャ10がシリンダ18に嵌合されて成るものが部分断面側面図で示されている。
まず、概略的に説明するに、カートリッジ12は、手持ち型(図1に示すガン型でも、図示しないストレート型でも可)のディスペンサ20への装填に先立ち、シリンダ18に粘性材料14が予め充填される(例えば、加圧されて粘性材料14がカートリッジ12内に押し込まれるか、または、負圧で粘性材料14がカートリッジ12内に吸引される)。
ディスペンサ20は、シリンダ18の先端に吐出ノズル16が着脱可能に装着されている。充填済のカートリッジ12は、ディスペンサ20に着脱可能にまたは交換可能に装填される。図1には、ディスペンサ20が、組立状態かつ使用状態で示されている。
カートリッジ12は、ディスペンサ20を伴うことなく、それ単独で使用することも可能であり、その場合、カートリッジ12は、ディスペンシング・シリンジと称されることがある。すなわち、カートリッジ12は、ディスペンシング・シリンジと称される用途のために使用することも可能なのである。
粘性材料14の一例は、高粘性かつ非導電性のシーラントであり、そのシーラントの用途の一例は、航空機である。航空機は、気密性が要求される機械であり、組み付けられる部品間に隙間が残存しないように、それら部品間の隙間がシーラントによって充填される。そのシーラントとして粘性材料14が使用されることがある。
その一例を具体的に説明するに、最近の航空機においては、それの外板を構成する非導電性のパネルを内部フレームに装着するために、金属製(導電性)のリベットが、前記パネルのうち、テーパ部を有する貫通穴内に打ち込まれる。
その打ち込まれたリベットのうちの皿状のヘッドが露出しないように、そのヘッドの表面上に非導電性のシーラント14が塗布される。この時点では、シーラント14が、前記パネルの表面から隆起している。そのシーラント14のうち、前記パネルの表面から隆起している部分が作業者によって削り落とされることによって整形され、その結果、シーラント14の表面が、前記パネルの表面と一致する。続いて、それらパネルの表面とシーラント14の表面とが、同じ塗料によって塗装される。
この例示的なシーラント塗布方法が米国特許第8,617,453号公報に開示されており、この公報は、引用により、全体的に本願書類に合体させられる。
まず、ディスペンサ20を説明するに、図1に示すように、ディスペンサ20は、円筒状のリテーナ22と、そのリテーナ22に着脱可能に装着される本体部24とを有する。本体部24は、作業者によって握られるハンドル26と、そのハンドル26に対して相対的に変位可能に装着されたトリガ(レバー、スイッチ、ボタン等でもよく、いずれにしても、操作部材の一例)28とを有する。
本体部24は、さらに、空圧制御ユニット30を有する。その空圧制御ユニット30は、トリガ28によって操作されるバルブ32を有し、そのバルブ32は、プランジャ10の背後に位置するチャンバ33と、ホース接続口34とを互いに流体的にかつ選択的に接続する。そのホース接続口34には、フレキシブルなホース36を介して、圧縮ガスを供給する高圧源38が接続されている。
作業者によってトリガ28が引かれると、バルブ32が閉位置から開位置に切り換わり、その結果、高圧源38から圧縮ガスがバルブ32を通過してチャンバ(加圧室)33内に導入される。プランジャ10の背後に圧縮ガスが作用すると、プランジャ10がシリンダ18に対して相対的に前進し(図1においては、左方に移動し)、それにより、粘性材料14がシリンダ18から吐出される。粘性材料14の一例は、高粘性かつ非導電性のシーラントであり、そのシーラントの用途の一例は、航空機部品のシールである。
次に、カートリッジ12を概略的に説明するに、側面断面図である図2に示すように、カートリッジ12は、プランジャ10がシリンダ18内に嵌合されることにより、構成されている。プランジャ10の素材として、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)を選んだり、それたとほぼ同等の弾性を有する合成樹脂を選んだり、それらより高い弾性を有する合成樹脂を選んだり、それらより低い弾性を有する合成樹脂を選んだり、合成ゴム(例えば、NBR)を選ぶことが可能である。合成ゴムという材料は、例えばPEやPPのような合成樹脂より剛性が低く、その代わりに弾性が高い。
次に、シリンダ18をより詳細に説明するに、シリンダ18は、円筒状の内部空間70を有し、その内部空間70内にプランジャ10が着脱可能かつ実質的に気密かつ軸方向摺動可能に嵌合される。
具体的には、シリンダ18は、一様な断面で真っ直ぐに延びる筒状の本体部60と、その本体部60の両端部のうちの一方に接続された中空の底部62とを、互いに同軸的に有している。底部62は、それの先端において、本体部60より小径の筒部64を有する一方、本体部60と接続される側において、テーパ部66を有している。筒部64内の貫通穴が、シリンダ18の吐出口67であり、筒部64には、図1に示すように、吐出ノズル16が着脱可能に(例えば、ねじ結合により)装着される。本体部60の他方の端部は、開口部68である。シリンダ18を構成する材料の一例は、PP(ポリプロピレン)であるが、これに限定されない。
本実施形態においては、粘性材料14が、外部(図7に示す容器112)からカートリッジ12内へ、そのカートリッジ12の吐出口67を通過するように充填され、その充填後、粘性材料14を吐出して使用するために、その粘性材料14が、カートリッジ12から、同じ通路、すなわち、吐出口67内の通路(シリンダ18のうち最も小径である通路)を通過して排出される。すなわち、粘性材料14の、カートリッジ12に対する出入りが、最小径通路である吐出口67を通過するように行われるのである。
図2に示すように、シリンダ18の内部空間70は、プランジャ10により、互いに軸方向に並んだ、粘性材料14を収容する充填室72(前記前室の一例)と、前記圧縮ガスが導入される加圧室74(前記後室の一例)とに分離されている。充填室72は、吐出口67に連通する一方、加圧室74は、図1に示すように、チャンバ33およびバルブ32を介して高圧源38に接続される。
図2は、カートリッジ12のみを示しているが、このカートリッジ12は、それ単独で、粘性材料14をディスペンシングするためのディスペンシング・シリンジとして使用することが可能である。すなわち、図2に示すカートリッジ12は、本発明のいくつかの実施形態に従うディスペンシング・シリンジでもあるのである。
次に、プランジャ10をより詳細に説明するに、図3(a)に示すように、プランジャ10は、軸方向に延びる筒状の本体部80を有する。その本体部80は、同軸の外周面82を有し、その外周面82は、プランジャ10がシリンダ18に嵌合された状態(以下、単に「嵌合状態」という。)において、そのシリンダ18の内周面84に半径方向に対向する。
一例においては、本体部80が、図3(b)および(c)に示すように、同一断面で軸方向に延びる中空の周壁部86と、その周壁部86の一端部を閉塞する底部88とを有する。別の例においては、本体部80が、図示しないが、同一断面で軸方向に延びる、完全なまたは部分的な中実部と、その中実部の一端部に形成された底部とを有する。
一例においては、底部88の外面90が、図3(a)および(c)に示すように、外向きに凸となるが頂点を有しない曲面(例えば、半球面)である。別の例においては、底部88の外面90が、図示しないが、外向きに凸となるとともに頂点を有する円錐面である。
図3(a)ないし図3(c)に示すように、プランジャ10においては、本体部80の外周面82上に、各々、概して軸方向に延びる複数本のリッジ100(プランジャ10と一体的な前記実在部の一例)と複数本の溝102(前記空隙部すなわち前記軸方向連続クリアランスを画定するもの)とが周方向に交互に配置されている。それにより、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間の空間をシールするシール部104が構成されている。
本実施形態においては、前記実在部が、プランジャ10とシリンダ18とが相互に半径方向に接近する限度を規定するスペーサ(すなわち半径方向間隔規定部材またはプランジャ10のセンタリング部材)として機能する。
カートリッジ12は、軸方向に一列に並んだ複数のスライス断面部の集まりとして観察することが可能である。それらスライス断面部は、例えば、カートリッジ12を任意の複数の軸方向位置においてスライスすることを想定することによって取得される。いずれのスライス断面部も、図3(b)に示すように、プランジャ10外周面82のうち対応する部分と、シリンダ18の内周面84のうち対応する部分とによって画定される環状部を有する。図3に示す例においては、すべてのスライス断面部が、同じ形状を有しており、各環状部は、図3(b)に示すように、複数本のリッジ100(実在部またはスペーサ)と複数本の溝102(空隙部)とが周方向に交互に並んでいる。
前記複数のスライス断面部は、互いに隣接した2つのスライス断面部より成るスライス断面部対を複数有する。いずれのスライス断面部対も、各スライス断面部対に属する2つのスライス断面部の一方である第1スライス断面部のうちの前記環状部は、複数の第1空隙部(溝102)を、それと周方向に並んだ複数の第1実在部(リッジ100)と共に有し、他方のスライス断面部である第2スライス断面部のうちの前記環状部は、複数の第2空隙部(溝102)を、それと周方向に並んだ複数の第2実在部(リッジ100)と共に、かつ、前記複数の第1空隙部と連通する状態で有する。
なお付言するに、図3に示す例においては、前記複数の第1空隙部と前記複数の第2空隙部とが互いに完全に同じ位相を有するが、それら空隙部が軸方向に連通する限り、それら空隙部が、互いに完全に同じ位相を有することは不可欠ではない。
さらに付言するに、図3に示す例においては、前記複数の第1実在部と前記複数の第2実在部とが互いに完全に同じ位相を有するとともに、前記複数の第2実在部は省略可能であり、この場合、前記複数の第1実在部は、前記複数の第2空隙部のうちのいくつかに軸方向に隣接することになるが、前記複数の第1空隙部と前記複数の第2空隙部とが軸方向に連通する限り、本発明の目的を達することが可能である。
図3に示す例においては、前記複数のスライス断面部における前記複数の第1空隙部と前記複数の第2空隙部との共同により、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間に、少なくとも軸方向成分を有する向き(図3に示す例においては、軸方向成分のみを有する向き)に延びる複数の軸方向連続クリアランス106が、溝102の本数と同数分、形成される。各軸方向連続クリアランス106は、充填室72と加圧室74とを互いに連通させる通路として機能し得る。
本実施形態においては、リッジ100が前記スペーサとして機能し、そのスペーサは、本来の機能、すなわち、プランジャ10とシリンダ18とが相互に半径方向に接近する限度を規定する機能のみならず、軸方向連続クリアランス106の周方向位置を規定する機能をも有する。
図3(c)に示すように、粘性材料14が外部から充填室72に充填されると、その充填された粘性材料14の一部が軸方向連続クリアランス106内に進入してその軸方向連続クリアランス106内を加圧室74に向かって流動し、それにより、軸方向連続クリアランス106が粘性材料14によって充填される。各軸方向連続クリアランス106は、それに粘性材料14が完全に充填されない段階においては、充填室72と加圧室74とを互いに連通させる通路として機能する。
シール部104は、前記一部の粘性材料14で充填された軸方向連続クリアランス106と、前記複数の第1実在部(複数本のリッジ100)と、前記複数の第2実在部(複数本のリッジ100)との共同により、形成される。
仮に、カートリッジ12が、水のような典型的な液体に対して使用される状況を想定すると、この場合、その液体がそれ自体粘性を有しないため、その液体が軸方向連続クリアランス106内に進入してその軸方向連続クリアランス106内を加圧室74に向かって流動し、それにより、その液体によって軸方向連続クリアランス106が一時的に充填されたとしても、その液体が軸方向連続クリアランス106内に滞留しない。すなわち、液体は自己保持性を有しないのである。
これに対し、粘性材料14は、液体より高い粘性を有するため、軸方向連続クリアランス106が粘性材料14によって充填されると、その粘性材料14が軸方向連続クリアランス106内に滞留される。それにより、シール部104が好適に形成される。すなわち、シール部104は、粘性材料14の自己保持性を利用して好適に形成されるのである。
シール部104の機能を説明するに、シール部104は、それが形成された後、粘性材料14のうち後続する部分(粘性材料14のうち、例えば、新たに充填室72内に充填される部分)をブロックし、それにより、その後続する部分が充填室72から、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間を通過して、加圧室74に漏れることを阻止する。
図3(b)に示すように、複数本のリッジ100の先端面は、前記嵌合状態において、シリンダ18の内周面84に局部的に、かつ、カートリッジ12の作動中(充填中と吐出中)またはディスペンサ20の作動中(吐出中)、少なくとも一時的に(例えば、実質的に常時)接触してそのシリンダ18を支持する。これにより、ディスペンサ20の作動中、シリンダ18内におけるプランジャ10の姿勢が安定化する。
プランジャ10とシリンダ18との嵌合、すなわち、プランジャ10のうち、シリンダとの接触部と、シリンダ18のうち、プランジャ10との接触部との半径方向接触状態は、例えば、スナグフィット(例えば、滑り嵌め、止まり嵌め、締り嵌め、締め代が実質的に0である嵌め合い)として実現される。このスナグフィットは、すきまが0より大きいルーズフィット(例えば、すきま嵌め)より、すきまが小さい。
図4に示すように、粘性材料14が外部から充填室72に充填されると、軸方向連続クリアランス106が上流側の領域(同図においてプランジャ10より左側の領域)から下流側の領域(同図においてプランジャ10より右側の領域)に順次、粘性材料14の一部によって充填される。その際、その一部の粘性材料14は、各溝102において、矢印A,B,C,D,EおよびFでそれぞれ示すように、主に軸方向に上流側から下流側に移動する。
この際、リッジ100の先端面とシリンダ18の内周面84との間に少なくとも一時的に(例えば、実質的に常時)半径方向隙間が存在する可能性がある。その半径方向隙間が存在すると、粘性材料14の一部は、周方向に移動して前記半径方向隙間を充填する。これにより、リッジ100の先端面とシリンダ18の内周面84との間にも、粘性材料14の充填による自己シールが形成される。
このように、充填段階においては、粘性材料14の一部が、軸方向連続クリアランス106内を、少なくとも軸方向に移動することにより、軸方向連続クリアランス106の全体が粘性材料14の一部によって充填される。その結果、軸方向連続クリアランス106を充填する一部の粘性材料14であって充填室72から供給されたものが、粘性材料14の別の一部が充填室72から加圧室74に漏れることをブロックする。すなわち、粘性材料14の一部がシール部104を形成するのであり、具体的には、粘性材料14の一部が、残りの部分をシールするために、シール部104を形成するのである。
この充填段階の終了時点、すなわち、規定量の粘性材料14が充填室72に充填された時点で、軸方向連続クリアランス106が、少なくとも1つのスライス断面部において、周方向の全体(前記環状部の全周または一部であって、軸方向連続クリアランス106がそもそも占有している部分の全体)にわたり、実質的に完全に粘性材料14によって充填され(後述の完全充填状態)、かつ、その軸方向連続クリアランス106を下流側にはみ出る粘性材料14が存在しないか、存在するとしても、そのはみ出る量が規定量を超えないように、プランジャ10の形状(例えば、リッジ100の本数、各リッジ100の形状)およびサイズ(例えば、リッジ100の幅寸法および高さ寸法)、プランジャ10の表面粗さを含む複数のファクタがそれぞれ設定されている。
それらファクタの効果を例示すれば、リッジ100の本数が多いほど、粘性材料14が軸方向連続クリアランス106内を移動する際の抵抗が増加し、その移動速度が低下する。また、同様に、各リッジ100の幅寸法が大きいほど(すなわち、各溝102の幅寸法が小さいほど)、粘性材料14が軸方向連続クリアランス106内を移動する際の抵抗が増加し、その移動速度が低下する。また、同様に、リッジ100の高さ寸法が小さいほど、粘性材料14が軸方向連続クリアランス106内を移動する際の抵抗が増加し、その移動速度が低下する。
また、プランジャ10の表面が凹凸面である場合の方が、表面凹凸を実質的に有しない平滑面である場合より、粘性材料14が軸方向連続クリアランス106内を移動する際の抵抗が増加し、その移動速度が低下する。
粘性材料14の挙動をさらに詳細に説明すると、粘性材料14が外部から充填室72内に充填される充填工程においては、粘性材料14の一部が充填室72から軸方向連続クリアランス106に進入し、それにより、その軸方向連続クリアランス106がその一部の粘性材料14である充填粘性材料14によって充填される。
その充填状態においては、その充填粘性材料14の軸方向連続クリアランス106内の流動性が、プランジャ10の軸方向において、軸方向連続クリアランス106が存在しない場合より高く、それにより、軸方向連続クリアランス106がプランジャ10の軸方向に充填粘性材料14によって充填されることが促進される。
軸方向連続クリアランス106が充填粘性材料14により、少なくとも1つのスライス断面部において、周方向の全体にわたり、実質的に完全に粘性材料14によって充填される完全充填状態においては、粘性材料14のうち、先行して軸方向連続クリアランス106内に進入してそれを充填した部分により、粘性材料14のうち、後続する部分が充填室72から加圧室74に漏れることが充填粘性材料14によってブロックされる。
その完全充填状態に移行する前の不完全充填状態においては、充填室72内に予定外に存在する予定外ガスが軸方向連続クリアランス106のうち粘性材料14によって充填されていない未充填部を通過して加圧室74に抜けることが許可される。これにより、充填室72内に充填された粘性材料14のガス抜きまたは脱泡が達成される。
前記完全充填状態において粘性材料14を充填室72から吐出するために圧縮ガスが加圧室74に導入される吐出工程においては、圧縮ガスが加圧室74から充填室72に漏れることが充填粘性材料14によってブロックされる。これにより、圧縮ガスの、加圧室74からの予定外の漏れが阻止される。
以上の説明から明かなように、本実施形態によれば、プランジャ10の外周面82上に、各々軸方向に延びる複数本のリッジ100がそれぞれ互いに周方向において離散的に形成される。そのプランジャ10がシリンダ18に嵌合された嵌合状態において、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間に、軸方向に連続する複数の軸方向連続クリアランス106が形成される。
その軸方向連続クリアランス106が形成された状態で、シリンダ18内の充填室72に外部から粘性材料14の一部が充填されると、軸方向連続クリアランス106がその一部の粘性材料14によって充填される。その一部の粘性材料14で充填された軸方向連続クリアランス106は、複数本のリッジ100と共同することにより、シール部104として機能し、その際、充填される対象である粘性材料14の一部がそのシール部104を形成する。
よって、本実施形態によれば、粘性材料14の充填段階においては、シール部104の完成前にあっては、予定された空気抜き(すなわち、充填室72内における粘性材料14の脱気)が実現され、また、シール部104の完成後にあっては、粘性材料14の予定外の漏れが防止され、さらに、粘性材料14の吐出段階においては、それの全工程を通じて、圧縮ガスの予定外の漏れが防止される。
次に、プランジャ10のより具体的な構造を例示的に説明する。
本実施形態においては、図3(a)および図3(b)に示すように、プランジャ10が8本のリッジ100を有する。別の例においては、図5(a)、図5(b)および図5(c)にそれぞれ示すように、プランジャ10が4本のリッジ100を有する。いずれの例においても、同じプランジャ10に複数本のリッジ100が存在するが、1つのプランジャ10に1本のリッジ100しか存在しなくても、本発明の目的を達成し得る。
本実施形態においては、図3(b)に示すように、複数本のリッジ100が、外周面82上に、それぞれ互いに実質的に等間隔でかつ全周的に離散している。別の例においては、図示しないが、リッジ100の本数が1本のみである。
本実施形態においては、図3(a)に示すように、各リッジ100が、プランジャ10の外周面82の1本の母線に沿って延びる直線状を成している。すなわち、各リッジ100が、軸方向に延びる成分のみ有し、周方向に延びる成分は有しないのである。また、この例においては、各リッジ100は、1本の連続体を構成している。
別の例においては、図示しないが、各リッジ100が、プランジャ10の外周面82の複数本の母線を横切るように延びるらせん状を成している。すなわち、各リッジ100が、軸方向に延びる成分のみならず、周方向に延びる成分も有するのである。
さらに、いずれの例においても、それら複数本のリッジ100がプランジャ10の外周面82上において互いに交差しない。リッジ100間の交差点が存在しないのであり、仮に存在すると、粘性材料14が外周面82上を軸方向に円滑に流動することがその交差点によって物理的に阻害されることが予想される。
本実施形態においては、複数本のリッジ100の各々が、図3(a)および図3(b)に示すように、複数本の溝102の各々より狭い幅寸法を有する。
本実施形態においては、図3(a)および図3(c)に示すように、複数本のリッジ100のうちの少なくとも1つが、プランジャ10の長さ寸法のうちの実質的な全部にわたり延びている。各リッジ100が長いほど、プランジャ10がシリンダ18に対して傾倒する角度の最大値が減少し、よって、プランジャ10の傾倒角度を減少させるために効果的である。
本実施形態においては、図5(a)に示すように、複数本のリッジ100のうちの少なくとも1つが、プランジャ10の長さに沿って変化しない幅寸法を有する。
別の例においては、図5(b)に示すように、複数本のリッジ100のうちの少なくとも1つが、充填室72から加圧室74に向かうにつれて増加する幅寸法を有する。
図5(b)に示す例においては、リッジ100間の周方向間隔が、加圧室74に近い位置において、充填室72に近い位置におけるより小さくなり、よって、前記吐出段階におけるシール部104のシーリング能力が、加圧室74に近い位置において、充填室72に近い位置におけるより高い。したがって、この例によれば、吐出段階において、圧縮ガスが加圧室74から充填室72に漏れてしまう可能性が効果的に抑制される。
本実施形態においては、図6(a)に示すように、複数本のリッジ100のうちの少なくとも1本が、複数本の溝102のうち隣接するものの底面(軸方向において一定である外径を有する)からの高さ寸法であって、プランジャ10の長さに沿って変化しないものを有する。
別の例においては、図6(b)に示すように、複数本のリッジ100のうちの少なくとも1本が、複数本の溝102のうち隣接するものの底面からの高さ寸法であって、充填室72から加圧室74に向かうにつれて増加するものを有する。図6(b)に示す例は、図5(b)に示す例と組み合わせることが可能である。
図6(b)に示す例においては、軸方向連続クリアランス106のうちの最小クリアランスの厚さ(すなわち、リッジ100の先端面とシリンダ18の内周面84との間のクリアランスのうち最小の部分の厚さ)が、加圧室74に近い位置において、充填室72に近い位置におけるより小さくなり、よって、前記吐出段階におけるシール部104のシーリング能力が、加圧室74に近い位置において、充填室72に近い位置におけるより高い。したがって、この例によれば、吐出段階において、圧縮ガスが加圧室74から充填室72に漏れてしまう可能性が効果的に抑制される。
一例においては、図5(c)に示すように、複数本のリッジ100のうちの少なくとも1本が、軸方向に連続しておらず、複数のリッジ・セグメント108がそれぞれ互いに離散的に軸方向に一列に並ぶように構成され、それにより、1本のリッジ100が、複数の不連続体を構成する。
図5(c)に示す例においても、カートリッジ12が、軸方向に一列に並んだ複数のスライス断面部を有する。いずれのスライス断面部も、プランジャ10外周面82のうち対応する部分と、シリンダ18の内周面84のうち対応する部分とによって画定される環状部を有する。しかし、図5(c)に示す例においては、図3に示す例とは異なり、すべてのスライス断面部が同じ形状を有するわけではない。
具体的には、図5(d)に示すように、前記複数のスライス断面部のうち、1つのリッジ・セグメント108を含む1つのスライス断面部のうちの前記環状部は、図5(d)に示すように、複数の第1空隙部(複数本の溝102)を、それと周方向に並んだ複数の第1実在部(複数本のリッジ100)と共に有する。
これに対し、そのスライス断面部に軸方向に隣接する別のスライス断面部、すなわち、いずれのリッジ・セグメント108も含まないスライス断面部のうちの前記環状部は、図5(e)に示すように、周方向に連続した1つの第2空隙部(複数本の溝102と複数の空乏部(互いに隣接した2つのリッジ・セグメント108間の空間とが互いに合体したもの)を、それと周方向に並んだ複数の第2実在部を伴うことなく、かつ、前記複数の第1空隙部と連通する状態で有する。
図5(c)に示す例においては、前記複数のスライス断面部における複数の第1空隙部と複数の第2空隙部との共同により、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間に、図3に示す例とは異なり、軸方向成分のみ周方向成分をも有する向きに延びる1つの連続した軸方向連続クリアランス106が形成される。
なお付言するに、複数のリッジ・セグメント108を複数の点状隆起部(例えば、半球状、円錐状、円筒状)に置換し、かつ、それら点状隆起部を、複数の母線に沿って離散的に1次元的に配列したり、プランジャ10の外周面82および/またはシリンダ18の内周面84上に軸方向にも周方向にも分散するように2次元的に配列することが可能である。
この態様においては、各点状隆起部が、前記スペーサとして機能し、また、前記環状部のうち、それら点状隆起部を除く部分が、1つの連続した軸方向連続クリアランス106として機能する。この場合、その軸方向連続クリアランス106は、軸方向にも周方向にも連続して延びる。
本実施形態においては、図3(c)に示すように、プランジャ10が中空構造を採用しており、本体部80のうちの周壁部86が半径方向に弾性変形することが、中実構造を採用する場合より容易である。
本実施形態においては、プランジャ10が、複数本のリッジ100において半径方向に弾性変形し、それにより、複数本のリッジ100の先端部がシリンダ18の内周面84に接触すると、それらリッジ100が半径方向内向きに弾性変形する。その結果、複数本のリッジ100がシリンダ18の内周面84に強く接触することが阻止される。
本実施形態においては、図3(b)に示すように、各リッジ100の断面が、概して矩形を有する断面である。
いくつかの別の例においては、各リッジ100の断面が、他の形状を有する断面、例えば、半径方向外向きに先細となる断面(概して三角形状、半球状または台形状を成す断面)であることが可能である。
それらの別の例においては、各リッジ100の断面が矩形断面である場合より、概して三角形状、半球状または台形状を成す断面である場合の方が、粘性材料14の周方向流動性が向上し、よって、各リッジ100の先端面とシリンダ14の内周面84との間の半径方向クリアランスが粘性材料14によって充填されることが促進される。
本実施形態においては、図3(b)に示すように、各溝102の断面が、概して矩形を有する断面である。
いくつかの別の例においては、各溝102の断面が、他の形状を有する断面、例えば、半径方向内向きに先細となる断面(概して三角形状、半球状または台形状を成す断面)であることが可能である。一例においては、各リッジ100の断面が、半径方向外向きに先細となる断面であり、一方、各溝102の断面が、半径方向内向きに先細となる断面である。
本実施形態においては、図3(b)に示すように、シリンダ18の内周面84が円形断面を有する状態で、プランジャ10の外周面82が円形断面を有していて、プランジャ10の外周面82のうち、複数本のリッジ100を形成する部分をある軸方向位置において切断することによって取得される断面を表すプロファイル(図形)を構成する複数のセグメントのそれぞれの外側アウトラインが、プランジャ10と同心の一つの真円上に位置し、それにより、それら外側アウトラインがそれぞれ、一つの中心点を共有する複数の円弧として記述される。
別の例においては、図示しないが、シリンダ18の内周面84が円形断面を有する状態で、プランジャ10の外周面82が非円形断面を有していて、複数本のリッジ100についての複数本の外側アウトラインが、プランジャ10と同心の一つの閉じた線であって非円形状を成すもの(例えば、長円、楕円、多角形)上に位置する。
次に、プランジャ10の、側面視におけるアスペクト比(縦横比)を説明する。
プランジャ10を代表する軸方向寸法(例えば、図3(c)において、周壁部86の、充填室72側のエッジ位置から、加圧室74側のエッジ位置までの軸方向長さ)は、同じプランジャ10を代表する直径方向寸法(例えば、図3(b)において、プランジャ10を軸方向に投影して取得されるシルエットに外接する一円周の直径)より長い。このような寸法効果により、プランジャ10が、シリンダ18内において、圧縮ガスの作用時に、その圧縮ガスによって予定外に傾倒する角度の最大値が減少する。
プランジャ10を代表する軸方向寸法の、同じプランジャ10を代表する直径方向寸法に対する比率であるアスペクト比は、約1以上としたり、約1.2以上としたり、約1.5以上とすることが可能であり、そのアスペクト比が大きいほど、プランジャ10の、シリンダ18内での傾倒防止効果が増加する。
次に、粘性材料14をカートリッジ12内に充填する充填方法を図7ないし図11を参照して説明する。
カートリッジ12への充填に先立ち、粘性材料14は、図7に示す容器112内において製造されて保存される。その後、容器112内に収容された粘性材料14が、容器112から複数本のカートリッジ12に分配される。容器112内の粘性材料14は、その容器112内に押出ピストン122が押し込まれることにより、容器112から押し出される。押し出された粘性材料14は、シリンダ18内に充填される。
図7には、容器112が側面断面図で示されている。本実施形態においては、同じ容器112が、粘性材料14の製造(後に詳述する2液混合)と、その製造後における粘性材料14の脱泡(後に詳述する攪拌機による真空遠心脱泡)と、カートリッジ12への充填に先立つ粘性材料14の貯蔵・輸送と、カートリッジ12への充填とに使用される。
図7に示すように、容器112は、軸方向に延びる中空のハウジング150と、そのハウジング150内に同軸的に形成された円筒状のチャンバ152とを有している。そのチャンバ152は、開口部154と底部156とを有している。底部156の内面は、概して半球状を成す凹面を有している。このように底部156が連続的な内面を有することにより、チャンバ152内において粘性材料14が、底部156の内面が平面である場合よりスムーズに流れ、その結果、粘性材料14の攪拌効率が向上する。容器112を構成する材料の一例は、POM(ポリアセタール)であり、別の例は、テフロン(登録商標)であるが、それらに限定されない。
チャンバ152の底部156には、そのチャンバ152内に収容されている粘性材料14(A液とB液との混合物)を、シリンダ18に向けて排出するための排出通路157が形成されており、その排出通路157は、着脱可能なプラグ(図示しない)によって選択的に閉塞される。
図7に示すように、容器112から粘性材料14を排出するために、その容器112のチャンバ152内に押出ピストン122が押し込まれる。その押出ピストン122は、本体部158と、その本体部158の後端部に形成された係合部159とを有している。本体部158は、容器112のチャンバ152の内面形状を補完する外面形状(例えば、概して半球状を成す凸部を有する形状)を有している。係合部159は、本体部158より小径であり、そこに外力が充填装置210(図10参照)から負荷されることにより、押出ピストン122が前進させられる。押出ピストン122がチャンバ152内を排出通路157に向かって接近するにつれて、その排出通路157から粘性材料14が押し出される。
図8には、粘性材料14を容器112からカートリッジ12に移送して充填する充填装置210が部分断面正面図で示され、図9には、その充填装置210が部分断面側面図で示されている。図10には、使用状態にある充填装置210のうちの要部が、拡大された部分断面正面図で示されている。
本実施形態においては、粘性材料14を容器112からカートリッジ12に移し変える際、容器112が、図10に示すように、チャンバ152の開口部154が下を向く一方、底部156の排出通路157が上を向く姿勢(逆さま姿勢)で空間内に保持される。この状態で、押出ピストン122がチャンバ152内を上昇させられる。その結果、チャンバ152から粘性材料14が上向きに押し出される。
さらに、粘性材料14を容器112からカートリッジ12に移し変える際、カートリッジ12が、開口部68が上を向く一方、底部62が下を向く姿勢で空間内に保持される。この状態で、容器112から上向きに押し出された粘性材料14が、カートリッジ12の底部62から注入される。
図8および図9に示すように、充填装置210は、それの下部において、容器112を着脱可能に保持する容器ホルダ機構270を有する一方、上部において、カートリッジ12を着脱可能に保持するカートリッジホルダ機構272を有している。
容器ホルダ機構270は、設置されるベースプレート280と、そのベースプレート280より上方に位置する昇降不能なトッププレート282と、それらベースプレート280およびトッププレート282によって両端をそれぞれ固定された、垂直にかつ互いに平行に延びる複数本のシャフト(本実施形態においては、図8および図9に示すように、容器ホルダ機構270の垂直中心線を隔てて互いに対称的に配置された2本のシャフト)284とを有している。トッププレート282は、貫通穴290を有する。その貫通穴290は、容器ホルダ機構270の垂直中心線と同軸である。
トッププレート282の下面にガイドプレート292が固定されている。このガイドプレート292は、貫通穴290と同軸のガイド穴294を有する。ガイド穴294は、ガイドプレート292を、厚さ方向に、一様な断面で貫通している。このガイド穴294は、図10に示すように、容器112の底部156の外径よりわずかに大きい内径を有しており、容器112はガイド穴294内にがたなく嵌合することが可能である。このガイド穴294のおかげで、容器112が、水平方向(容器112の直径方向)における位置に関し、トッププレート282に対して相対的に位置合わせされる。
図10に示すように、容器112の底部156がガイド穴294に嵌合している状態において、容器112は、それの底部156の先端面(同一平面上にある)においてトッププレート282の下面に突き当たる。これにより、容器112は、垂直方向(容器112の軸線方向)における位置に関し、トッププレート282に対して相対的に位置合わせされる。
図8および図9に示すように、容器ホルダ機構270は、さらに、昇降可能な可動プレート300を有する。その可動プレート300は、シャフト284に軸方向に摺動可能に嵌合する複数本のスリーブ302を有している。作業者は、ロック機構304を操作することにより、可動プレート300を、垂直方向における任意の位置に移動させて停止させることが可能である。
可動プレート300は、段付きの位置決め穴306を、ガイド穴294と同軸的に有している。その位置決め穴306は、可動プレート300を厚さ方向に貫通している。この位置決め穴306は、図10に示すように、ガイド穴294に近い側に大径穴310を有する一方、反対側に小径穴312を有しており、それら大径穴310と小径穴312との間に、ガイド穴294の側を向く肩面314を有している。
大径穴310は、容器112の開口部154の外径より僅かに大きい内径を有しており、これにより、容器112は、水平方向(容器112の直径方向)における位置に関し、可動プレート300(ひいてはトッププレート282)に対して相対的に位置合わせされる。
肩面314には、容器112の開口部154の先端面(同一平面上にある)が突き当たり、これにより、容器112は、垂直方向(容器112の軸線方向)における位置に関し、可動プレート300(ひいてはトッププレート282)に対して相対的に位置合わせされる。
小径穴312は、押出ピストン122の外径よりわずかに大きい内径を有しており、この小径穴312に押出ピストン122が摺動可能に嵌合する。小径穴312は、押出ピストン122の軸方向運動をガイドするガイド穴として機能する。
容器112に押出ピストン122が挿入されることによって容器セットが構成され、その容器セットは、可動プレート300が、トッププレート282から下方に十分に退避させられた状態で、トッププレート282にセットされる。その後、可動プレート300が、容器112の開口部154の先端面が肩面314に突き当たるまで、上昇させられる。この位置において、可動プレート300がシャフト284に固定される。これにより、容器セットの、容器ホルダ機構270への保持作業が終了する。
図8および図9に示すように、容器ホルダ機構270は、さらに、アクチュエータとしてのエアシリンダ320を、ガイド穴294と同軸的に有している。昇降部材としてのロッド322がエアシリンダ320から上方に延び出しており、そのロッド322の先端にプッシャ324が装着されている。プッシャ324は、図10に示すように、容器ホルダ機構270に保持された容器セットのうちの押出ピストン122の係合部159に係合する。その係合状態においては、プッシャ324の前進に伴い、押出ピストン122が容器112に対して前進し、チャンバ152の容積を減少させる。
エアシリンダ320は複動式であり、プッシャ324の、初期位置から作用位置までの前進(加圧による上昇)と、作用位置から非作用位置までの後退(加圧による下降)と、任意の位置での停止(エアシリンダ320内の両ガス室からの排気が阻止される)とが作業者の操作に応じて選択的に行われる。エアシリンダ320は、切換バルブを有する空圧制御ユニット325aを介して高圧源(一次圧の高さは、例えば、0.2MPa)325bに接続されている。
図9に示すように、容器ホルダ機構270は、さらに、ダンパとしてのガススプリング326を備えている。ガススプリング326は、垂直に延びるとともに、それの両端部において、ベースプレート280と可動プレート300とにそれぞれ、ピボット可能に連結されている。ガススプリング326は、ロック機構304がアンロック状態にあるときに、可動プレート300が自重で下降する運動を制限するために設置されている。
図8および図9に示すように、カートリッジホルダ機構272は、トッププレート282に固定されたベースフレーム330と、アクチュエータとしてのエアシリンダ332と、トップフレーム334と、可動フレーム336とを備えている。
エアシリンダ332は、垂直に延びて、トッププレート282とトップフレーム334とに固定された本体部340と、その本体部340に対して直線運動させられる昇降ロッド342とを有している。昇降ロッド342の上端部(本体部340から突出した端部)は、可動フレーム336に固定されている。
エアシリンダ332は複動式であり、昇降ロッド342の、初期位置から作用位置までの前進(加圧による上昇)と、作用位置から非作用位置までの後退(加圧による下降)と、任意の位置での浮動(エアシリンダ332内の両ガス室からの排気がいずれも許可される)とが作業者の操作に応じて選択的に行われる。すなわち、エアシリンダ332は、前進モードと、後退モードと、浮動モードとに選択的に移行するようになっているのである。エアシリンダ332は、空圧制御ユニット325aを介して高圧源325aに接続されている。
本体部340には、複数本のスリーブ(本実施形態においては、エアシリンダ332を隔てて互いに対称的に配置された2本の平行スリーブ)344が固定されている。それらスリーブ344に、垂直に延びる複数本のシャフト346が摺動可能に嵌合されている。それらシャフト346の上端部はいずれも、可動フレーム336に固定されている。
カートリッジホルダ機構272においては、ベースフレーム330、トップフレーム334、本体部340およびスリーブ344がそれぞれ静止部材であるのに対し、可動フレーム336、昇降ロッド342およびシャフト346はそれぞれ、互いに一体的に昇降させられる可動部材である。
図9に示すように、カートリッジホルダ機構272は、さらに、ダンパとしてのガススプリング350を備えている。ガススプリング350は、ベースフレーム330と、可動フレーム336との間を垂直に延びている。ガススプリング350は、ガス室(図示しない)を有するシリンダ352と、そのシリンダ352に対して伸縮させられるロッド354とを備えている。シリンダ352は、それの一端部においてベースフレーム330に、ピボット可能に連結されている。
ロッド354の先端部は、可動フレーム336の下面に分離可能に係合させられている。したがって、ロッド354は、可動フレーム336によって圧縮させられることはあるが、伸張させられることはない。ロッド354は、圧縮状態において、可動フレーム336に上向きの力を付与し、それにより、可動フレーム336が上昇することをアシストする。
本実施形態においては、容器112とカートリッジ12とが、例えばおねじとめねじとの螺合により、互いに直接的に接続されることにより、容器112が充填装置210に保持されている状態において、カートリッジ12が、直径方向と軸線方向との双方に関し、容器112に対して位置合わせされる。
図10に示すように、前記容器セットが容器ホルダ機構270によって保持され、かつ、その容器セットにカートリッジ12が接続されている状態で、ロッド360がカートリッジ12内に挿入される。
そのロッド360は、カートリッジホルダ機構272によって保持されている。本実施形態においては、カートリッジホルダ機構272が、ロッド360を保持し、そのロッド360がカートリッジ12内に挿入されることにより、結果的に、カートリッジ12がカートリッジホルダ機構272によって保持されている。
ロッド360は、剛性を有して真っ直ぐに延びるチューブとして構成されている。このロッド360は、鋼製のパイプ(合成樹脂製のパイプでも可)であり、軸方向に圧縮力を伝達することが可能である。
ロッド360は、それの先端面において、ストッパ362によって実質的に気密に閉塞されている。ロッド360は、ストッパ362の先端面において、プランジャ10の底部88の内面89に突き当たり、これにより、プランジャ10に対するロッド360の接近限度が一義的に決まる。
図10に示すように、押出ピストン122が容器112内に押し込まれることにより、その容器112から粘性材料14が底部156から押し出され、その押し出された粘性材料14は、充填室72に充填される。その充填される粘性材料14の容積が増加するにつれて、プランジャ10が、その粘性材料14によって押されて、シリンダ18に対して上昇させられる。それに伴い、ロッド360がカートリッジ12に対して上昇させられる。
図8および図9に示すように、ロッド360が、可動フレーム336に固定されている。ロッド360は、充填装置210の垂直中心線(ガイド穴294の中心線と同軸)と同軸的に延びている。充填装置210により、カートリッジ12の、トッププレート282に対する位置に関し、位置合わせされる。
次に、本充填方法を、図11に示す工程図を参照して具体的に説明するが、それに先立ち、粘性材料14の製造方法を説明する。
粘性材料14は、高粘性の合成樹脂であり、また、一定温度(例えば、50℃)以上に加熱されると硬化し、一旦硬化すると、温度が低下しても性状が復元しない熱硬化性を有する。粘性材料14は、硬化していない状態で、一定温度(例えば、−20℃)以下に冷凍されると、粘性材料14における化学反応の進行(硬化)が停止する。その後、粘性材料14を加熱して解凍すると、粘性材料14における化学反応の進行(硬化)が再開されるという性質を有する。
本実施形態においては、粘性材料14は、2液混合タイプであり、A液(硬化剤)およびB液(主剤)という2液を混合させることによって提供される。A液の一例は、米国PRC-DeSoto International社のPR-1776 B-2, Part A(促進剤であり、二酸化マンガン分散である。)であり、これに組み合わされるB液の一例は、米国PRC-DeSoto International社のPR-1776 B-2, Part B(ベース成分であり、充填変性ポリスルフィド樹脂である。)である。
したがって、図11に示すように、粘性材料14を製造するために、まず、ステップS11において、容器112内において2液が混合される。次に、ステップS12において、容器112内に収容された粘性材料14に対して攪拌脱泡が攪拌機(図示しない)を用いて行われる。本実施形態においては、同じ容器112が、粘性材料14を製造するための2液の混合と、粘性材料14の、攪拌機による攪拌脱泡とに使用される。
攪拌機の一例が、特開平11−104404号公報に開示されており、この公報の内容は、全体的に、引用によって本明細書に合体させられる。本実施形態においては、この種の攪拌機が、粘性材料14で充填された容器112を、真空圧下において、公転軸まわりに公転させつつ、その公転軸に対して偏心した自転軸まわりに自転させ、それにより、容器112内において粘性材料14を攪拌しつつ脱泡する。
攪拌機内において、粘性材料14は、攪拌機による遊星運動に起因した遠心力により、攪拌される。さらに、粘性材料14内に混入した気泡は、攪拌機による遊星運動に起因した遠心力と、真空雰囲気に起因した負圧との共同作用により、粘性材料14から排出され、その結果、粘性材料14が脱泡される。これにより、粘性材料14にボイドが発生することが完全にまたは十分に防止される。
以上のようにして粘性材料14が容器112内において混合されて攪拌脱泡されると、図10に示すように、充填装置210を用いて粘性材料14を容器112からカートリッジ12に移送して充填する作業が開始される。
まず、ステップS21において、作業者が、図7に示すように、粘性材料14で充填された容器112内に押出ピストン122を挿入することにより、前記容器セットを準備する。
次に、ステップS22において、作業者が、図10に示すように、前記容器セットを逆さま姿勢で充填装置210のうちの容器ホルダ機構270にセットすることにより、前記容器セットを充填装置210に保持させる。
具体的には、可動プレート300は、前記容器セットが容器ホルダ機構270に保持されるのに先立ち、前記容器セットから下方に退避させられている。作業者は、まず、退避している可動プレート300に前記容器セットを逆さま姿勢で所定位置に載せる。その後、作業者は、可動プレート300を、前記容器セットと一緒に、容器112がトッププレート282に突き当たるまで上昇させる。最後に、作業者は、可動プレート300をその位置に固定する。
続いて、ステップS23において、作業者が、図10に示すように、カートリッジ12内にプランジャ10を挿入することにより、カートリッジ12を準備する。
その後、ステップS24において、図10に示すように、先に充填装置210によって逆さま姿勢で保持されている容器セットに、カートリッジ12を実質的に気密に接続し、それにより、カートリッジ12を充填装置210に保持させる。
カートリッジ12の充填装置210への装着に先立ち、エアシリンダ332は、前述の前進モードにあって、昇降ロッド342を押し出しており、その結果、ロッド360は、カートリッジ12から上方に退避した位置にある。すなわち、カートリッジ12の充填装置210への装着がロッド360によって邪魔されないようになっているのである。
続いて、ステップS25において、エアシリンダ332が、前述の後退モードに切り換えられて、昇降ロッド342を引き込むことにより、退避位置にあるロッド360を、カートリッジ12内に挿入する。ロッド360のストッパ362が、カートリッジ12内に先に存在するプランジャ10に突き当たるまで、ロッド360がエアシリンダ332によって下降させられる。プランジャ10の前進限度は、例えば、容器112の底部156のうち、排出通路157を形成する部分の先端部との当接によって規定される。
その後、エアシリンダ332は、前述の浮動モードに切り換えられ、その結果、前述の、ガススプリング350によるアシストを無視すると、ロッド360からプランジャ10には、ロッド360の重量、および、そのロッド360と一緒に昇降する部材の重量との和から摺動抵抗を除外した値を有する力が作用する。その力は、プランジャ10をカートリッジ12の底部62に向かって押し付ける向きの力であって、充填室72の容積を減少させる向きの力である。
続いて、ステップS26において、図10に示すように、押出ピストン122が上昇して容器112内に押し込まれる。それに伴い、容器112から粘性材料14が、重力に抗して押し出され、これにより、充填室72内への充填が開始される。
粘性材料14が容器112からカートリッジ12の充填室72内に流入すると、充填室72内に存在する空気が、流入した粘性材料14によって圧縮される。
それにより、カートリッジ12内において、充填室72が、カートリッジ12の外部に連通した加圧室74(大気圧)より高圧であるという差圧が発生する。その差圧により、充填室72内の空気が、プランジャ10とシリンダ18との間の半径方向クリアランス(シール部104が完成していない状態にある)を通過して、加圧室74に流入し、ひいては、カートリッジ12の開口部68から外部に排出される。これにより、充填室72の空気に対し、空気抜きが行われる。
その結果、本実施形態によれば、充填室72内への粘性材料14の充填中に、充填室72から空気が加圧室74に排出され、充填室72内の粘性材料14内に空気が混入することも、充填室72内に粘性材料14が空気と共存することも起こらずに済む。
さらに、本実施形態によれば、カートリッジ12内のプランジャ10に、充填室72の容積が減少する向きの力がロッド360によって付与される。その付与される力は、カートリッジ12内に流入した粘性材料14にプランジャ10が接近する向きの力である。
よって、本実施形態によれば、ロッド360による力の付与によっても、上述の差圧が発生し、ロッド360による力の付与が存在しない場合より、カートリッジ12に大きな差圧が発生する。それにより、充填室72内に存在する空気が、プランジャ10とシリンダ18との間の半径方向クリアランスを通過して加圧室74に流入する現象が促進される。
やがて、図10に示す初期状態(プランジャ10の下端位置)にある充填室72内の空気全部が粘性材料14で充填される(充填室72内のもともとの空気がすべて粘性材料14で置換される)に至る。続いて、粘性材料14の充填が継続すると、充填室72の容積が増加し、それに伴い、プランジャ10、ロッド360および可動フレーム336が上昇しようとする。
このとき、充填室72内の粘性材料14の最初の一部が、シール部104を形成するために消費され、そのシール部104が完成すると、粘性材料14のうちの残りの部分が、シール部104により、加圧室74への流出が阻止される。シール部104により粘性材料ブロックが行われるのである。
本実施形態においては、粘性材料14がプランジャ10に、それの開口部68からではなく、吐出口67から充填され、それにより、充填が開始された当初の充填室72内においては、プランジャ10に近い方に空気の層(上層)が形成され、その空気の層より下方に粘性材料14の層が形成される。その結果、充填室72内に空気が存在する限り、粘性材料14がプランジャ10に接触しないようになっている。
粘性材料14が充填室72内を上昇し、充填室72内の空気が完全に抜けると、粘性材料14がプランジャ10に接触し、そのプランジャ10とシリンダ18との間のクリアランスに粘性材料14が進入する。その結果、粘性材料ブロックを行うシール部104がそれらプランジャ10とシリンダ18との間に形成される。そのシール部104の完成後は、双方向の空気漏れも阻止される。
粘性材料14のカートリッジ12内への充填に先立ち、図9に示すガススプリング350は、可動フレーム336によって圧縮されている状態にある。その反作用として、ガススプリング350は、可動フレーム336をロッド360と共に上昇させる力を、可動フレーム336に付与している。
したがって、図10に示す初期状態(プランジャ10の下端位置)における充填室72内の空気全体が粘性材料14で充填されるに至った後、充填室72の容積がさらに増加すると、それに伴い、プランジャ10、ロッド360および可動フレーム336が、充填室72内の粘性材料14の圧力をそれほど上昇させることなく、上昇することが可能となる。
すなわち、ステップS27において、ロッド360および可動フレーム336の上昇が、ガススプリング350によって機械的にアシストされるのである。
その後、ステップS28において、シリンダ18に充填された粘性材料14の量が規定量に達し、ロッド360が規定位置まで上昇することが待たれる。ロッド360が規定位置まで上昇すると、エアシリンダ320の切換えによって押出ピストン122の前進が停止させられ、その後、エアシリンダ332が昇降ロッド342を押し出すことにより、プランジャ10をシリンダ18内に残したまま、ロッド360を上昇させ、それにより、ロッド360をカートリッジ12から引き抜く。
続いて、ステップS29において、作業者が、カートリッジ12を、容器112および充填装置210から取り外す。
その後、ステップS30において、作業者が、前記容器セットを、充填装置210から取り外す。
以上で、1個の容器112から1本のカートリッジ12への粘性材料14の移送充填が完了する。
上述の例示的な粘性材料充填方法が米国特許第9,126,702号公報に開示されており、この公報は、引用により、全体的に本願書類に合体させられる。
次に、本実施形態によって得られる例示的な作用効果を説明する。
1.自己シーリング機能
本実施形態によれば、プランジャ10がシリンダ18に嵌合されると、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間に軸方向連続クリアランス106が形成される。その軸方向連続クリアランス106は、充填室72から加圧室74に向かうガスおよび粘性材料14の流れを許容する。
その軸方向連続クリアランス106がプランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間に形成された状態で、シリンダ18内の充填室72に外部から粘性材料14が充填されると、軸方向連続クリアランス106が粘性材料14の一部によって充填される。その一部の粘性材料14で充填された軸方向連続クリアランス106は、シール部104として機能する。
すなわち、本実施形態によれば、カートリッジ12がいわゆる自己シーリング機能を有するのであり、換言するに、充填されるとともに吐出される対象である粘性材料14の一部が自らシール部104としても機能するのである。
よって、本実施形態によれば、シリンダ18への粘性材料14の充填段階においては、シール部104の完成前にあっては、充填室72から加圧室74に向かうガスの流れ、すなわち、予定されたガス抜き(すなわち、粘性材料14の脱気または脱泡)が実現される。また、シール部104の完成後にあっては、充填室72から加圧室74に向かう粘性材料14の流れ、すなわち、予定外の粘性材料漏れが防止される。さらに、粘性材料14の吐出段階においては、それの全工程を通じて、加圧室74から充填室72に向かうガスの流れ、すなわち、予定外のガス漏れが防止される。
2.スムーズなプランジャ・スライド特性
さらに、本実施形態によれば、カートリッジ12のうちのあるスライス断面部を見た場合に、その位置において、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84とは、全周にわたるのではなく、周方向における一部すなわち前記実在部またはスペーサにおいてしか、互いに接触する可能性を有しない。
よって、カートリッジ12のうちのあるスライス断面部を見た場合に、その位置において、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84とが、全周にわたり互いに接触する前述の従来のディスペンサ(すなわち、前述の周方向ランドを有するディスペンサ)より、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間の、各断面における接触面積が減少し、ひいては、両者が軸方向に相対的に変位する際に発生する摺動抵抗が低減する。
したがって、本実施形態によれば、カートリッジ12からの粘性材料14の吐出段階において、プランジャ10が、前述の周方向ランドが用いられる場合よりスムーズにシリンダ18に対してスライドすることが促進される。
その結果、粘性材料14を吐出させるためにプランジャ10に前進力または推進力が作用させられたために、そのプランジャ10にこじりモーメントが予定外に発生し、プランジャ10がシリンダ18に対して傾倒して、プランジャ10がシリンダ18に局部的に接触しても、プランジャ10が同じ軸方向位置に滞留する可能性が減少する。プランジャ10のこじりによってプランジャ10がシリンダ18に固着する現象が発生せずに済むのである。
プランジャ10の固着が防止されると、プランジャ10の軸力の過剰な上昇(例えば、空圧プランジャ用カートジッジ12においては、背圧の過剰な上昇)が防止され、より大きなこじりモーメントの発生も防止され、プランジャ10がシリンダ18に対して大きく傾倒することも防止され、ひいては、プランジャ10がシリンダ18に局部的に強く接触することも防止される。
その結果、カートリッジ12からの粘性材料14の吐出段階において、プランジャ10の傾倒が原因で、完成されたシール部104に局部的に亀裂が発生することが防止される。その亀裂の発生が防止されると、加圧室74から充填室72に向かう予定外のガス漏れが防止される。
よって、本実施形態によれば、カートリッジ12からの粘性材料14の吐出段階において、プランジャ10がシリンダ18に対して予定外に傾倒する傾向が抑制され、それにより、その傾倒が原因で充填室72内の粘性材料14に気泡が混入してしまう可能性が軽減される。
3.スナグフィットによるプランジャ姿勢の動的安定化
さらに、本実施形態によれば、カートリッジ12のうちのあるスライス断面部を見た場合に、その位置において、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84とは、周方向における一部すなわち前記実在部またはスペーサにおいて、少なくとも一時的に(例えば、実質的に常時)互いに接触する可能性がある。すなわち、前述のように、カートリッジ12は、嵌合方式として、スナグフィットを採用しているのである。
これに対し、プランジャ10とシリンダ18との間の摺動抵抗をさらに低減させるために、プランジャ10をシリンダ18にルーズにフィットさせ、それにより、本実施形態に従うカートリッジ12より低い頻度でしか、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84とが互いに接触しないようにする対策を講じることも考えられる。
しかし、このルーズフィット対策を講じる場合には、ディスペンサ20の作動中、プランジャ10がシリンダ18内において側方に変位したり、シリンダ18に対して傾倒する傾向が増加し、そのため、シリンダ18内におけるプランジャ10の相対的な動的姿勢が安定しない可能性がある。
これに対し、本実施形態によれば、プランジャ10とシリンダ18とが前記実在部またはスペーサを介して少なくとも一時的に(例えば、実質的に常時)互いに接触することが可能な態様で実施することが可能であるため、プランジャ10がその実在部またはスペーサを介してシリンダ18によって側方から支持されることとなり、その結果、シリンダ18内におけるプランジャ10の相対的な動的姿勢の安定性が向上する。
4.シール部のための粘性材料の少量化
さらに、このルーズフィット対策を講じる場合には、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間に連続クリアランスがシリンダ18の内周面84の全周にわたって形成される。
これに対し、本実施形態によれば、連続クリアランス106がシリンダ18の内周面84の全周にわたってではなく、一部のみにわたって形成される。よって、本実施形態によれば、連続クリアランス106の全体容積、すなわち、粘性材料14の充填量が、前記ルーズフィット対策を講じる場合より、減少する。
したがって、本実施形態によれば、連続クリアランス106を充填してシール部104を形成するために消費される粘性材料14の量、すなわち、本来の用途に使用されずに廃棄されるかもしれない粘性材料14の量が少なくて済む。
5.シール部のための作業効率の向上
さらに、本実施形態によれば、粘性材料14の充填によってシール部104を形成するのに必要な時間が前記ルーズフィット対策を講じる場合より短縮される可能性がある。すなわち、より短時間でシール部104を完成させることが可能となるのであり、これにより、作業効率が向上する。
6.シール部の耐圧性能の向上
さらに、本実施形態によれば、前述のように、シール部104が、粘性材料14によって充填された連続クリアランス106と、粘性材料14より剛性が高い材料(例えば、プランジャ10(またはシリンダ18)の材料と同じ)より成るリッジ100(または他の任意のスペーサ)とが周方向に並んだ剛軟複合構造体として構成されている。
よって、本実施形態によれば、シール部104全体の剛性が、前記ルーズフィット対策を講じる場合より向上する。その結果、例えば、カートリッジ12から粘性材料14を吐出させる段階において、加圧室74からの圧縮ガスによってシール部104に亀裂が入る可能性やシール部104が局部的に破損する可能性が軽減される。すなわち、本実施形態によれば、シール部104の耐圧性能が向上するのである。
したがって、本実施形態によれば、粘性材料14の吐出段階において、圧縮ガスがシール部104内に予定外に侵入し、そのシール部104を通過して充填室72内に侵入する可能性も軽減される。すなわち、本実施形態によれば、粘性材料14の吐出段階において、圧縮ガスの漏れをより確実に防止することが容易となるのである。
なお付言するに、本実施形態においては、プランジャ10の各断面位置において、各リッジ100の周長が、隣接する軸方向連続クリアランス106の周長より短いが、これに代えて、少なくとも1本のリッジ100の周長が、隣接する軸方向連続クリアランス106の周長より長い態様で本発明を実施することが可能である。
この態様においては、例えば、プランジャ10の外周面82上に少なくとも1本の溝が少なくとも軸方向成分を有する向きに形成される。その結果、この例においては、プランジャ10の各断面において、前記少なくとも1本の溝がそれぞれ軸方向連続クリアランス106を形成し、一方、プランジャ10の外周壁部(すなわち、プランジャ10のうち、肉厚を有する円筒状の外殻として想定される部分)のうち前記少なくとも1本の溝を除く部分が前記スペーサとして作用する。本発明を実施する際に、前記スペーサの幅寸法が、軸方向連続クリアランス106の幅寸法より短くなければならないという制約は存在しない。
<本発明の第2実施形態>
次に、本発明の例示的な第2実施形態に従うカートリッジ12を説明する。ただし、第1実施形態と共通する要素については、同一の名称または符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、第1実施形態と異なる要素についてのみ詳細に説明する。
図12(a)は、第2実施形態に従うカートリッジ12の要部を示す断面図であり、図12(b)は、図12(a)におけるY−Y線での断面図である。
本実施形態においては、第1実施形態と同様に、前記複数の実在部またはスペーサが、プランジャ10に一体的に形成されるとともに、それの外周面(基本外周面)82から半径方向外向きに突出する複数の第1部材(例えば、複数の半球状隆起部)400として構成されている。
それら第1部材400は、図12(a)に示すように、プランジャ10の外周面(基本外周面)82上において、複数の空隙部、すなわち、1つの軸方向連続クリアランス106のうちの複数の部分を隔てて周方向に並んでいる。
さらに、それら第1部材400は、図12(b)に示すように、プランジャ10の外周面82(基本外周面)上において、複数の空乏部を隔てて軸方向に一列に並んでいる。本実施形態においては、1つのカートリッジ12に1つの連続した軸方向連続クリアランス106が形成されており、その軸方向連続クリアランス106は、軸方向成分のみならず周方向成分をも有する向きに延びている。その軸方向連続クリアランス106は、充填室72と加圧室74とを互いに連通させる通路として機能する。
各第1部材400は、ディスペンサ20の作動中、シリンダ18の内周面84に少なくとも一時的に(例えば、実質的に常時)接触してシリンダ18を支持する先端面を有する。
<本発明の第3実施形態>
次に、本発明の例示的な第3実施形態に従うカートリッジ12を説明する。ただし、第1実施形態と共通する要素については、同一の名称または符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、第1実施形態と異なる要素についてのみ詳細に説明する。
図13(a)は、第3実施形態に従うカートリッジ12の要部を示す断面図であり、図13(b)は、図13(a)におけるY−Y線での断面図である。
本実施形態においては、第1実施形態および第2実施形態とは異なり、前記複数の実在部またはスペーサが、シリンダ18に一体的に形成されるとともに、それの内周面(基本内周面)84から半径方向内向きに突出する複数の第2部材(例えば、半球状断面で真っ直ぐに延びる複数本のリッジ)500として構成されている。
それら第2部材500は、図13(a)に示すように、シリンダ18の内周面(基本内周面)84上において、複数の空隙部、すなわち、複数の第2部材500によって互いに分断された複数の軸方向連続クリアランス106を隔てて周方向に並んでいる。
さらに、それら第2部材500の各々は、図13(b)に示すように、シリンダ18の内周面(基本内周面)上において、軸方向に真っ直ぐに延びている。その結果、本実施形態においては、1つのカートリッジ12に、周方向に並んだ複数の軸方向連続クリアランス106(互いに隣接した2つの軸方向連続クリアランス106間に介在する1つの第2部材500により、互いに分断されている)が形成されており、各軸方向連続クリアランス106は、軸方向成分のみ有する向きに延びている。各軸方向連続クリアランス106は、充填室72と加圧室74とを互いに連通させる通路として機能する。
各第2部材500は、ディスペンサ20の作動中、プランジャ10の外周面82に少なくとも一時的に(例えば、実質的に常時)接触してプランジャ10を支持する先端面を有する。
なお付言するに、それら第2部材500は、図12に示す複数の第1部材400と同様に、軸方向のみならず周方向にも延びるように空間離散的に配置することが可能である。
<本発明の第4実施形態>
次に、本発明の例示的な第4実施形態に従うカートリッジ12を説明する。ただし、第1実施形態と共通する要素については、同一の名称または符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、第1実施形態と異なる要素についてのみ詳細に説明する。
図14(a)は、第4実施形態に従うカートリッジ12の要部を示す断面図であり、図14(b)は、図14(a)におけるY−Y線での断面図である。
本実施形態においては、第1実施形態ないし第3実施形態のいずれとも異なり、前記複数の実在部またはスペーサが、プランジャ10およびシリンダ18の双方から分離した複数の第3部材600であって、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間に配置されるものとして構成されている。
それら第3部材600は、図14(a)に示すように、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間において、複数の空隙部、すなわち、複数の第3部材600によって互いに分断された複数の軸方向連続クリアランス106を隔てて周方向に並んでいる。各軸方向連続クリアランス106は、充填室72と加圧室74とを互いに連通させる通路として機能する。
それら第3部材600は、図示しないが、周方向に延びる複数のスペーサ(すなわち周方向間隔規定部材)と共に使用され、互いに隣接した2つの第3部材600間に1つのスペーサが介在させられ、それにより、互いに隣接した2つの第3部材600が接近限度を超えて相互に接近することが阻止される。
さらに、それら第3部材600の各々は、図14(b)に示すように、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間において、軸方向に真っ直ぐに延びている。その結果、本実施形態においては、1つのカートリッジ12に、周方向に並んだ複数の軸方向連続クリアランス106(互いに隣接した2つの軸方向連続クリアランス106間に介在する1つの第3部材600により、互いに分断されている)が形成されており、各軸方向連続クリアランス106は、軸方向成分のみ有する向きに延びている。
それら第3部材600は、ディスペンサ20の作動中、シリンダ18の内周面84に少なくとも一時的に(例えば、実質的に常時)接触してシリンダ18を支持する外面と、プランジャ10の外周面82に少なくとも一時的に(例えば、実質的に常時)接触してプランジャ10を支持する内面とを有する。
<本発明の第5実施形態>
次に、本発明の例示的な第5実施形態に従うカートリッジ12を説明する。ただし、第1実施形態と共通する要素については、同一の名称または符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、第1実施形態と異なる要素についてのみ詳細に説明する。
第1実施形態においては、図3(b)に示すように、シリンダ18の内周面84の断面を表す図形の内側アウトラインが円周である状態で、プランジャ10の外周面(基本外周面)82の断面を表す図形の外側アウトラインも同様に、円周である。
これに対し、本実施形態においては、図15(a)に示すように、シリンダ18の内周面84の断面を表す図形の内側アウトラインが円周である状態で、プランジャ10の外周面82の断面を表す図形の外側アウトラインが、楕円または長円の外周(非円周である閉じた線の一例)である。
本実施形態においては、各スライス断面部において、プランジャ10の外周面82がシリンダ18の内周面84に対し、互いに半径方向に対向する2つの接点において接触する。その結果、いずれのスライス断面部も、同じ形状を有するとともに、各スライス断面部は、プランジャ10の外周面82がシリンダ18の内周面84に接触する接触部と、接触しない非接触部とを有する。ここに、「接触部」が、前記実在部またはスペーサの一例であり、また、「非接触部」が、前記空隙部の一例である。
よって、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、各スライス断面部の前記環状部において、接触部と非接触部とが交互に周方向に並んでおり、その結果、非接触部により、複数の軸方向連続クリアランス106が、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間に、周方向に空間離散的に形成されている。各軸方向連続クリアランス106は、充填室72と加圧室74とを互いに連通させる通路として機能する。
また、本実施形態においては、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間における半径方向クリアランスの厚さ寸法が、接触部から非接触部に接近するにつれて徐々に増加する。
本実施形態においては、前記スペーサとして機能する前記接触部と、軸方向連続クリアランス106として機能する前記非接触部との間の境界部が、周方向に実質的に連続的に変化する連続面(例えば、曲面)として構成される。その境界部が、それに代わり、角部を有する不連続面として構成される場合には、カートリッジ12を使用後に洗浄してリサイクルすることが必要である場合に、その使用後のカートリッジ12の表面のうちの鋭利な凹部に粘性材料14が入り込んでしまい、リサイクル作業の効率が低下してしまう可能性がある。
これに対し、本実施形態によれば、前記境界部が、角部を有しない連続面として構成されるため、カートリッジ12の表面に粘性材料14が付着しても、その付着物を簡単にカートリッジ12の表面から拭い去ることが可能となり、リサイクル作業を効率化することが容易となる。
ただし、本発明の目的を達成するために、前記スペーサと軸方向連続クリアランス106とが周方向に互いに実質的に連続的に接続されるようすることは、不可欠ではない。
なお付言するに、本実施形態に従うカートリッジ12においては、プランジャ10の外周面82(シリンダ18の内周面84に置換したり、シリンダ18の内周面84を追加することが可能である)の断面のアウトラインが、同心の真円に対して、2つの凸部が追加された曲線、2つの凹部が追加された曲線、または、2つの凸部と2つの凹部とが追加された曲線として定義することが可能である。
一変形例においては、プランジャ10の外周面82および/またはシリンダ18の内周面84の断面のアウトラインが、ジグザグ状に左右に振動しながら同心の真円に沿って進行することによって描かれる軌跡である波状曲線(例えば、波状スプライン曲線)に置換される。
この変形例においては、3以上の凸部と3以上の凹部とが周方向に交互に並び、それら凸部がそれぞれ前記スペーサとして機能する一方、それら凹部によって画定される複数の空間がそれぞれ軸方向連続クリアランス106として機能する。
別の変形例においては、プランジャ10の外周面82にもシリンダ18の内周面84にも、上述のような波状曲面が、相互に補完するように形成される。さらに、プランジャ10の外周面82のうちの凸部はシリンダ18の内周面84のうちの凹部に、プランジャ10の外周面82のうちの凹部はシリンダ18の内周面84のうちの凸部にというように、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84とが、半径方向隙間を残しつつ、軸方向摺動可能に嵌合させられる。
この別の変形例においては、複数の凸部および凹部のうち、相手部材に接触するものが、前記スペーサとして機能し、また、前記半径方向隙間が、軸方向連続クリアランス106として機能する。
この別の変形例においては、プランジャ10とシリンダ18とが、少なくとも1つの断面の位置において、全周にわたるか、または、周方向における一部に亘るように配置された凹凸嵌合部によって互いに軸方向にスライド可能に嵌合されている。
その結果、プランジャ10とシリンダ18とが、カートリッジ12の作動中、軸線周りにみだりに相対回転することが阻止され、このことによっても、シリンダ18内におけるプランジャ10の動的姿勢が安定化する。
上述のいくつかの変形例においては、凸部および/または凹部がそれぞれ、曲線のアウトラインを有するが、さらに別の変形例においては、凸部および/または凹部がそれぞれ、図15(b)に例示するように、複数本の直線セグメントが互いに接続されて成る折れ線のアウトラインを有する。
<本発明の第6実施形態>
次に、本発明の例示的な第6実施形態に従うカートリッジ12を説明する。ただし、第1実施形態と共通する要素については、同一の名称または符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、第1実施形態と異なる要素についてのみ詳細に説明する。
第1実施形態においては、図3(b)に示すように、シリンダ18の内周面84の断面を表す図形の内側アウトラインが円周である状態で、プランジャ10の外周面(基本外周面)82の断面を表す図形の外側アウトラインも同様に、円周である。
これに対し、本実施形態においては、図15(b)に示すように、シリンダ18の内周面84の断面を表す図形の内側アウトラインが円周である状態で、プランジャ10の外周面82の断面を表す図形の外側アウトラインが、多角形の外周(非円周である閉じた線の別の例)である。
本実施形態においては、各スライス断面部において、プランジャ10の外周面82がシリンダ18の内周面84に対し、互いに半径方向に対向する複数の頂点において接触する。その結果、いずれのスライス断面部も、同じ形状を有するとともに、各スライス断面部は、プランジャ10の外周面82がシリンダ18の内周面84に接触する接触部と、接触しない非接触部とを有する。ここに、「接触部」が、前記実在部またはスペーサの一例であり、また、「非接触部」が、前記空隙部の一例である。
よって、本実施形態においても、図15(a)に示す第5実施形態と同様に、各スライス断面部の前記環状部において、接触部と非接触部とが交互に周方向に並んでおり、その結果、非接触部により、複数の軸方向連続クリアランスが、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間に、周方向に空間離散的に形成されている。
また、本実施形態においても、第5実施形態と同様に、プランジャ10の外周面82とシリンダ18の内周面84との間における半径方向クリアランスの厚さ寸法が、接触部から非接触部に接近するにつれて徐々に増加するが、その増加勾配は、第5実施形態の方が緩やかである。
なお付言するに、上述のいずれの態様においても、曲げ弾性、ねじり弾性、面直方向の弾性等、プランジャ10およびシリンダ18のそれぞれの機械的性質については、例えば、プランジャ10の弾性をシリンダ18のそれと実質的に同じとしたり、シリンダ18のそれとは異なるようにすることが可能である。後者の場合、プランジャ10の弾性をシリンダ18のそれより強くしたり、弱くすることが可能である。
さらに付言するに、上述のいずれの態様においても、カートリッジ12に粘性材料14が吐出口67から充填室72内に充填され、その過程において、その粘性材料14によって軸方向連続クリアランス106が充填されてシール部104が形成され、その後、充填室72内に充填された粘性材料14が圧縮ガスによって吐出口67から吐出される。
これに代えて、シリンダ18にプランジャ10が嵌合されていない状態で、粘性材料14が、吐出口67が密閉された状態で、開口部68から充填室72内に充填され、その後、シリンダ18にプランジャ10が嵌合され、その過程において、充填室72内に充填された粘性材料14が軸方向連続クリアランス106内に進入してその軸方向連続クリアランス106が充填されてシール部104が形成される態様で本発明を実施することも可能である。
本明細書は、ここに記載されている技術の実施態様のいくつかの例における組成物、方法、システムおよび/または構造物ならびに用途についての十分な説明を提供する。当該技術の種々の実施態様を、ある程度の具体性を有するか、または少なくとも一つの個別の実施態様を参照して上述したが、当業者であれば、その開示された実施態様に対する多数の変更を、当該技術の精神からも範囲からも逸脱することなく、行うことが可能である。さらに、反対のことが請求の範囲の欄において明示されていないか、特定の順序が請求の範囲中の用語によって本質的に不可欠とされていない限り、いなかる作動をいなかる順序で行ってもよいことを理解すべきである。上記の説明に含まれるとともに添付図面に図示されるすべての事項は、特定の実施態様のみについての例示として解釈すべきであって、それら事項は、説明されている実施態様に限定するものではないということを意図している。詳細部または構造の変更は、後続する請求の範囲の欄中に定義されている当該技術の基本的な要素から逸脱することなく、行うことができる。