この発明を適用した車両用動力ユニットの概要を図1に示してある。この発明の実施形態における車両用動力ユニット1は、代表的に、アクチュエータ2、入力軸3、車軸4、および、減速機構5を備えている。
アクチュエータ2は、例えば、後述する電動モータなどの駆動用アクチュエータ51,52、あるいは、ブレーキ装置や回生用モータ(発電機)などの制動用アクチュエータ61,62である。したがって、アクチュエータ2は、例えば、車両を駆動するための駆動トルク、あるいは、車両を制動するための制動トルクなどのトルクを発生する。この図1に示す車両用動力ユニット1において、アクチュエータ2として、駆動トルクを発生する駆動用アクチュエータ51(または、52)を装備すれば、駆動用アクチュエータ51(または、52)を動力源とする車両の駆動ユニットを構成することができる。アクチュエータ2として、制動トルクを発生する制動用アクチュエータ61(または、62)を装備すれば、制動用アクチュエータ61(または、62)を動力源とする車両の制動ユニットを構成することができる。
入力軸3は、例えば、後述するサンギヤ軸15、カウンタギヤ軸20、または、ピニオン軸23が連結される。もしくは、サンギヤ軸15、カウンタギヤ軸20、または、ピニオン軸23が入力軸3として機能する。入力軸3には、上記のアクチュエータ2が発生するトルクが入力される。
車軸4は、後述するキャリア軸16が連結される。もしくは、キャリア軸16が車軸4として機能する。車軸4から、車両(図示せず)の車輪6に動力が伝達される。
減速機構5は、遊星歯車機構7、カウンタギヤセット8、および、外接ギヤセット9から構成されている。減速機構5は、入力軸3と車軸4との間で回転数を減速するとともに、入力軸3に入力されるトルクを車軸4に伝達する。
遊星歯車機構7は、互いに差動回転する三つの回転要素として、サンギヤ10、リングギヤ11、および、キャリア12を有している。また、キャリア12によって保持され、サンギヤ10およびリングギヤ11の両方に噛み合うプラネタリギヤ13を有している。すなわち、図1には、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成された遊星歯車機構7の例を示してある。そして、この遊星歯車機構7は、リングギヤ11の外周部に、後述する外接ギヤセット9の第1ピニオン21と噛み合う外歯ギヤ14が形成されている。
上記の遊星歯車機構7は、サンギヤ軸15、および、キャリア軸16により、減速機構5のケース17に支持されている。サンギヤ軸15は、サンギヤ10の回転軸であって、サンギヤ10および後述するセンターギヤ18と一体に回転する。キャリア軸16は、キャリア12の回転軸であって、キャリア12と一体に回転する。サンギヤ軸15とキャリア軸16とは、同一の回転軸線上で相対回転可能に配置されている。
図1に示す例では、サンギヤ軸15に入力軸3が連結されている。もしくは、サンギヤ軸15が入力軸3として機能する。すなわち、実質的に、サンギヤ軸15が、この車両用動力ユニット1における入力軸3となっている。また、キャリア軸16に車軸4が連結されている。もしくは、キャリア軸16が車軸4として機能する。すなわち、実質的に、キャリア軸16が、この車両用動力ユニット1における車軸4となっている。
なお、図1では、遊星歯車機構7がシングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成された例を示しているが、この発明の実施形態における遊星歯車機構7は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構によって構成することもできる。
カウンタギヤセット8は、センターギヤ18、および、少なくとも一つのカウンタギヤ19から構成されている。図1では、センターギヤ18、および、二つのカウンタギヤ19から構成されたカウンタギヤセット8を示してある。センターギヤ18は、サンギヤ軸15に取り付けられている。すなわち、センターギヤ18は、サンギヤ10と同一の回転軸線上に配置されている。カウンタギヤ19は、カウンタギヤ軸20に取り付けられている。カウンタギヤ軸20は、カウンタギヤ19の回転軸であって、カウンタギヤ19と一体に回転する。カウンタギヤ19は、センターギヤ18と、後述する外接ギヤセット9の第2ピニオン22との間に配置されており、センターギヤ18および第2ピニオン22の両方に噛み合っている。
外接ギヤセット9は、第1ピニオン21、第2ピニオン22、および、ピニオン軸23から構成されている。第1ピニオン21は、前述の外歯ギヤ14よりも小径の歯車であって、外歯ギヤ14に噛み合っている。第2ピニオン22は、第1ピニオン21と同様に小径の歯車であって、カウンタギヤ19に噛み合っている。この発明の実施形態における減速機構5は、上記のような外接ギヤセット9を、少なくとも一組備えていればよい。図1では、二組の外接ギヤセット9を示してある。後述するように、外接ギヤセット9でリングギヤ11を支持することを考慮すると、リングギヤ11の円周方向で等間隔に、少なくとも三組の外接ギヤセット9を設けることが好ましい。
図1で示した減速機構5の具体的な構成を図2に示してある。上記のように、減速機構5は、主に、遊星歯車機構7、カウンタギヤセット8、および、外接ギヤセット9から構成されている。図1,図2に示す例では、サンギヤ軸15が入力軸3となっている。また、キャリア軸16が車軸4となっている。
入力軸3およびサンギヤ軸15は、ケース17に組み付けられたベアリング24により、ケース17に回転可能に支持されている。車軸4およびキャリア軸16は、ケース17に組み付けられたベアリング25により、ケース17に回転可能に支持されている。キャリア軸16のケース17の内側の端部に、ベアリング26が組み付けられている。そのベアリング26を介して、サンギヤ軸15とキャリア軸16とが、相対回転可能に連結されている。このように、入力軸3と車軸4とは、同一の回転軸線CL1上に配置されている。
遊星歯車機構7は、ケース17の内部でカウンタギヤセット8と並列するように配置されている。サンギヤ10は、サンギヤ軸15に取り付けられており、サンギヤ軸15と一体に回転する。したがって、サンギヤ10およびサンギヤ軸15は、ベアリング24によってケース17に回転可能に支持されている。キャリア12は、キャリア軸16に取り付けられている。あるいは、キャリア12とキャリア軸16とが一体に形成されている。キャリア12は、キャリア軸16と一体に回転する。したがって、キャリア12およびキャリア軸16は、ベアリング25によってケース17に回転可能に支持されている。そして、リングギヤ11の外周部に外歯ギヤ14が形成されており、その外歯ギヤ14と、外接ギヤセット9の第1ピニオン21とが噛み合っている。
カウンタギヤセット8は、上記のようにケース17の内部で遊星歯車機構7と並列し、遊星歯車機構7に対向するように配置されている。センターギヤ18は、サンギヤ軸15に取り付けられており、サンギヤ軸15と一体に回転する。カウンタギヤ19は、カウンタギヤ軸20に取り付けられており、カウンタギヤ軸20と一体に回転する。カウンタギヤ軸20は、サンギヤ軸15と平行に配置されており、ケース17に組み付けられたベアリング27およびベアリング28により、ケース17に回転可能に支持されている。
外接ギヤセット9は、遊星歯車機構7およびカウンタギヤセット8の外周側に配置されている。第1ピニオン21は、ピニオン軸23に取り付けられており、ピニオン軸23と一体に回転する。第1ピニオン21は、外歯ギヤ14に噛み合っている。同様に、第2ピニオン22は、ピニオン軸23に取り付けられており、ピニオン軸23と一体に回転する。したがって、第1ピニオン21および第2ピニオン22は、図2に示すように、同一の回転軸線CL2上に配置されている。第2ピニオン22は、カウンタギヤ19に噛み合っている。ピニオン軸23は、サンギヤ軸15と平行に配置されており、ケース17に組み付けられたベアリング29およびベアリング30により、ケース17に回転可能に支持されている。したがって、外接ギヤセット9は、第1ピニオン21、第2ピニオン22、および、ピニオン軸23が、全て一体となって回転し、外歯ギヤ14と、センターギヤ18およびカウンタギヤ19との間でトルクを伝達する。
上記のように、外接ギヤセット9は、外歯ギヤ14とセンターギヤ18との間でトルクを伝達するために設けられている。そのため、この発明の実施形態における減速機構5は、少なくとも一組の外接ギヤセット9を備えていればよい。ただし、複数の外接ギヤセット9を設けることにより、第1ピニオン21を介して、リングギヤ11を回転可能に支持することができる。したがって、三組以上の外接ギヤセット9を、リングギヤ11の円周方向で等間隔に設けることにより、リングギヤ11を安定してバランスよく支持することができる。なお、設けられる外接ギヤセット9の組数に対応して、カウンタギヤ19が設けられる。例えば、四組の外接ギヤセット9が設けられる場合は、それに対応して四つのカウンタギヤ19が設けられる。すなわち、四組の外接ギヤセット9における四つの第2ピニオン22にそれぞれ噛み合う、四つのカウンタギヤ19が設けられる。また、図1,図2では、二組の外接ギヤセット9、および、それに対応する二つのカウンタギヤ19を示してあるが、上記のように、三組以上の外接ギヤセット9、および、それに対応する三個以上のカウンタギヤ19を設けることができる。
この発明の実施形態における減速機構5では、上記のようにカウンタギヤセット8および外接ギヤセット9が設けられることにより、外歯ギヤ14とセンターギヤ18との間でトルクを伝達することができる。すなわち、センターギヤ18に入力されたトルクを外歯ギヤ14に伝達し、リングギヤ11を駆動することができる。図1,図2に示す例では、サンギヤ軸15と入力軸3とが一体に回転する。したがって、入力軸3に入力されたトルクは、サンギヤ軸15からサンギヤ10に直接伝達される。それと共に、センターギヤ18と外歯ギヤ14との間で、カウンタギヤセット8および外接ギヤセット9を経由して、トルクが伝達される。外歯ギヤ14に伝達されたトルクは、外歯ギヤ14すなわちリングギヤ11を、センターギヤ18およびサンギヤ10の回転方向と逆の回転方向に回転させる。その結果、遊星歯車機構7の差動作用により、サンギヤ10の回転数に対してキャリア12の回転数が大きく減速される。すなわち、この発明の実施形態における減速機構5は、入力軸3と車軸4との間で極めて高い減速比を得ることが可能な高減速機能を有している。
上記のように入力軸3およびサンギヤ軸15にトルクが入力されてサンギヤ10が回転する場合に、遊星歯車機構7における各回転要素の回転状態を図3の共線図に示してある。前述したように、図1,図2に示す遊星歯車機構7は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、サンギヤ軸15が入力軸3となっており、キャリア軸16が車軸4(すなわち出力軸)となっている。したがって、サンギヤ(S)10が入力要素(IN)となり、キャリア(C)12が出力要素(OUT)となっている。
上記のようなシングルピニオン型の遊星歯車機構を用いて、従来、減速装置が構成されている。例えば、この図3の共線図に破線で示すように、サンギヤ(S)を入力要素(IN)、キャリア(C)を出力要素(OUT)とし、リングギヤ(R)の回転を止めた状態で固定することにより、入力要素の回転数に対して出力要素の回転数を減速させる減速装置が構成される。それに対して、この発明の実施形態における減速機構5では、上記のような従来の減速装置と同様に、サンギヤ(S)10を入力要素とし、キャリア(C)12を出力要素とした場合に、リングギヤ(R)11が、サンギヤ10およびキャリア12の回転方向と逆の回転方向に回転する。すなわち、センターギヤ18およびサンギヤ10にトルクが入力され、サンギヤ10が、所定の回転数で図3の共線図における「正」方向に回転する場合、リングギヤ11は、センターギヤ18と外歯ギヤ14との間で、カウンタギヤセット8および外接ギヤセット9を介して伝達されるトルクにより、図3の共線図における「逆」方向に回転する。このように、サンギヤ10が「正」方向に回転する際に、リングギヤ11が「逆」方向に回転することにより、キャリア12の回転数が引き下げられ、サンギヤ10の回転数に対してキャリア12の回転数が大幅に減速される。図3の共線図に破線で示す従来の減速装置と比較して、入力要素と出力要素との間の減速比がより大きくなっている。
さらに、この発明の実施形態における減速機構5では、上記のように、リングギヤ11に形成した外歯ギヤ14にトルクを伝達することにより、リングギヤ11を「逆」方向に回転させている。そのため、例えば、前述の特許文献2に記載された複合遊星歯車機構のように、リングギヤの内歯によって動力伝達する構成と比較して、ギヤ比の設定の自由度が大幅に高くなる。その結果、入力軸3と車軸4との間の減速比を大幅に増大させることができる。
一般に、サンギヤを入力要素、キャリアを出力要素とし、リングギヤを固定したシングルピニオン型の遊星歯車機構で減速装置を構成した場合、減速比γは、サンギヤの歯数をZsとし、リングギヤ(内歯)の歯数をZrとすると、
γ=1+Zr/Zs
となる。なお、この場合の減速比γは、出力要素の回転数NOUTに対する入力要素の回転数NINの割合(すなわち、γ=NIN/NOUT)である。このような従来の遊星歯車機構では、単体で実現可能な減速比γは、4から10程度と言われている。一方、例えば、外径が300mm程度の体格を想定して比較すると、前述の特許文献2に記載された複合遊星歯車機構では、得られる減速比γは、最大で、概ね100程度である。それに対して、この発明の実施形態における減速機構5では、上記のようにリングギヤ11の内歯の歯数や内径による制約を受けることがなく、ギヤ比の設定の自由度が高いことから、理論上、概ね10000程度の非常に大きな減速比γを得ることができる。
このように、この発明の実施形態における車両用動力ユニット1は、従来の構成と比較して相当に大きな減速比を設定することが可能な高減速機能を有する減速機構5を備えている。その減速機構5は、図1,図2で示したように、一組の遊星歯車機構7と、一組の平行軸歯車対であるカウンタギヤセット8とを並列させた構成となっている。そのため、例えば、前述の特許文献2に記載されているような従来の複合遊星歯車機構による減速装置や、二段の歯車列による減速装置などと比較して、同等の体格で、減速比を大幅に増大させた減速機構5を構成することができる。もしくは、体格をより小型化した減速機構5を構成することができる。
そして、この発明の実施形態における車両用動力ユニット1では、上記のような高減速機能を有する減速機構5により、アクチュエータ2が発生するトルクを大幅に増幅して車軸4に伝達することができる。そのため、出力するトルクが大幅に増幅される分、アクチュエータ2を十分に小型化することができる。その結果、従来の駆動ユニットや制動ユニットと比較して、大幅に小型・軽量化した車両用動力ユニット1を構成することができる。
前述したように、図1に示す車両用動力ユニット1において、アクチュエータ2として、駆動用アクチュエータ51(または、52)を装備すれば、駆動用アクチュエータ51(または、52)が出力する駆動トルクを、減速機構5によって大幅に増幅して車軸4に伝達することができる。そのため、駆動用アクチュエータ51(または、52)を大幅に小型化することができ、軽量でコンパクトな駆動ユニットを構成することができる。また、アクチュエータ2として、制動用アクチュエータ61(または、62)を装備すれば、制動用アクチュエータ61(または、62)が出力する制動トルクを、減速機構5によって大幅に増幅して車軸4に伝達することができる。そのため、制動用アクチュエータ61(または、62)を大幅に小型化することができ、軽量でコンパクトな制動ユニットを構成することができる。
図1,図2では、一つのアクチュエータ2が発生するトルクを、一本の入力軸3(すなわち、サンギヤ軸15)に入力するように構成した車両用動力ユニット1を示している。それに加えて、この発明の実施形態における車両用動力ユニット1は、複数のアクチュエータ2がそれぞれ発生するトルクを、複数の入力軸3にそれぞれ入力するように構成することもできる。なお、以下に図示して説明する車両用動力ユニット1の他の例において、前述の図1,図2、あるいは、既出の図面で示した車両用動力ユニット1の例と構成および機能が同じ部材や部品については、図1,図2、あるいは、既出の図面で用いた参照符号と同じ参照符号を付けてある。
図4に示す車両用動力ユニット1は、複数の外接ギヤセット9を備えている。具体的には、複数の第1ピニオン21、複数の第2ピニオン22、および、複数のピニオン軸31を備えている。図4では、二組の外接ギヤセット9を示してあるが、三組以上の外接ギヤセット9を備えていてもよい。複数のピニオン軸31には、それぞれ、第1ピニオン21および第2ピニオン22が取り付けられている。また、複数の入力軸3を備えている。複数の入力軸3は、それぞれ、複数のピニオン軸31の一方(図4での左側)の端部に連結している。もしくは、ピニオン軸31の一方の端部が、ケース17の外部まで延長されており、その延長部分が入力軸3を形成している。すなわち、ピニオン軸31が入力軸3となっている。図4に示す例では、二本のピニオン軸31が、それぞれ、入力軸3となっている。そして、この図4に示す車両用動力ユニット1は、複数のアクチュエータ2を備えている。図4では、二つのアクチュエータ2を示してある。例えば、アクチュエータ2の出力軸(図示せず)が、入力軸3に連結されている。したがって、複数のアクチュエータ2は、それぞれ、発生したトルクを入力軸3に入力する。
また、図5に示す車両用動力ユニット1は、複数のカウンタギヤセット8を備えている。すなわち、複数のカウンタギヤ19、および、複数のカウンタギヤ軸41を備えている。図5では、二つのカウンタギヤ19、および、二本のカウンタギヤ軸41を示してあるが、二つ以上のカウンタギヤ19、および、二本以上のカウンタギヤ軸41を備えていてもよい。複数のカウンタギヤ軸41には、それぞれ、カウンタギヤ19が取り付けられている。また、複数の入力軸3を備えている。複数の入力軸3は、それぞれ、複数のカウンタギヤ軸41の一方(図5での左側)の端部に連結している。もしくは、カウンタギヤ軸41の一方の端部が、ケース17の外部まで延長されており、その延長部分が入力軸3を形成している。すなわち、カウンタギヤ軸41が入力軸3となっている。図5に示す例では、二本のカウンタギヤ軸41が、それぞれ、入力軸3となっている。そして、この図5に示す車両用動力ユニット1は、複数のアクチュエータ2を備えている。図5では、二つのアクチュエータ2を示してある。例えば、アクチュエータ2の出力軸(図示せず)が、入力軸3に連結されている。したがって、複数のアクチュエータ2は、それぞれ、発生したトルクを入力軸3に入力する。
上記のように、図4,図5に示す車両用動力ユニット1では、複数の入力軸3が設定され、それら複数の入力軸3に、それぞれ、トルクを入力するアクチュエータ2が設けられる。したがって、例えば、いずれかのアクチュエータ2が発生するトルクの伝達系統を主系統とし、他のいずれかのアクチュエータ2が発生するトルクの伝達系統を冗長系として、独立した二系統の動力源を有する車両用動力ユニット1を構成することができる。そのため、コンパクトで信頼性に優れた車両用動力ユニット1を構成することができる。
例えば、図6に示す車両用動力ユニット1は、複数の入力軸3が設定され、それら複数の入力軸3に、それぞれ、駆動トルクを入力する駆動用アクチュエータ51、および、駆動用アクチュエータ52が設けられている。駆動用アクチュエータ51、および、駆動用アクチュエータ52は、いずれも、駆動トルクを発生するアクチュエータ2である。例えば、永久磁石式の同期モータ、あるいは、誘導モータなどによって構成されている。
このように、図6に示す車両用動力ユニット1では、少なくとも二つの駆動用アクチュエータ51、および、駆動用アクチュエータ52が設けられることにより、例えば、駆動用アクチュエータ51が発生する駆動トルクの伝達系統を主系統とし、駆動用アクチュエータ52が発生する駆動トルクの伝達系統を冗長系とすることができる。すなわち、独立した二系統の駆動力源を有する駆動ユニットを構成することができる。そのため、コンパクトで信頼性に優れた駆動ユニットを構成することができる。
また、駆動用アクチュエータ51、および、駆動用アクチュエータ52は、それぞれ、出力特性が異なるモータによって構成することができる。例えば、駆動用アクチュエータ51は、通常(中・低車速)の走行に適した同期モータによって構成される。一方、駆動用アクチュエータ52は、高速走行に適した誘導モータによって構成される。したがって、例えば、車速や駆動力の要求量に応じて使用するモータを切り替えることにより、走行状況に即した駆動力を効率良く発生することができる。そのため、コンパクトで信頼性に優れ、かつ、エネルギ効率の良い駆動ユニットを構成することができる。
図7に示す車両用動力ユニット1は、複数の入力軸3が設定され、それら複数の入力軸3に、それぞれ、制動トルクを入力する制動用アクチュエータ61、および、制動用アクチュエータ62が設けられている。制動用アクチュエータ61、および、制動用アクチュエータ62は、いずれも、制動トルクを発生するアクチュエータ2である。それら制動用アクチュエータ61、および、制動用アクチュエータ62は、例えば、通電されることにより発生する磁気吸引力を利用して所定の回転部材を制動する励磁作動型の電磁ブレーキ、あるいは、電動モータによって駆動される送りねじ機構を用いて摩擦制動力を発生させる電動ブレーキなどによって構成されている。あるいは、モータで発電する際に発生する抵抗力を利用して所定の回転部材を制動する回生ブレーキなどによって構成されている。
このように、図7に示す車両用動力ユニット1では、少なくとも二つの制動用アクチュエータ61、および、制動用アクチュエータ62が設けられることにより、例えば、制動用アクチュエータ61が発生する制動トルクの伝達系統を主系統とし、制動用アクチュエータ62が発生する制動トルクの伝達系統を冗長系とすることができる。すなわち、独立した二系統の動力源を有する制動ユニットを構成することができる。そのため、コンパクトで信頼性に優れた制動ユニットを構成することができる。
また、制動用アクチュエータ61、および、制動用アクチュエータ62は、それぞれ、機能や用途が異なるブレーキ機構によって構成することができる。具体的には、制動用アクチュエータ61は、通電することにより作動して制動トルクを発生する通常制動用アクチュエータとして構成される。例えば、前述の励磁作動型の電磁ブレーキ、あるいは、回生ブレーキなどによって構成される。制動用アクチュエータ62は、通電することにより作動して制動トルクを発生するとともに、通電を停止した状態で制動トルクを保持することが可能な駐車制動用アクチュエータとして構成される。例えば、前述の送りねじ機構を用いた電動ブレーキなどによって構成される。そのため、コンパクトで信頼性に優れ、かつ、通常の制動機能および駐車制動機能を有する制動ユニットを構成することができる。
図8に示す車両用動力ユニット1は、複数の入力軸3が設定され、それら複数の入力軸3に、それぞれ、駆動トルクを入力する駆動用アクチュエータ71、および、制動トルクを入力する制動用アクチュエータ72が設けられている。駆動用アクチュエータ71は、前述の駆動用アクチュエータ51,52と同様に、駆動トルクを発生するアクチュエータ2である。制動用アクチュエータ72は、前述の制動用アクチュエータ61,62と同様に、制動トルクを発生するアクチュエータ2である。
このように、図8に示す車両用動力ユニット1では、少なくとも二本の入力軸3を設定することにより、それら少なくとも二本の入力軸3に、それぞれ、駆動トルクを入力する駆動用アクチュエータ71、および、制動トルクを入力する制動用アクチュエータ72を設けることができる。したがって、駆動力と共に、制動力を発生することができる。そのため、制動機能を有するコンパクトな駆動ユニットを構成することができる。
図9に示す車両用動力ユニット1は、少なくとも四本の入力軸3が設定され、それら少なくとも四本の入力軸3に、それぞれ、駆動トルクを入力する複数の駆動用アクチュエータ81,82、および、制動トルクを入力する複数の制動用アクチュエータ83,84が設けられている。駆動用アクチュエータ81,82は、いずれも、前述の駆動用アクチュエータ51,52等と同様に、駆動トルクを発生するアクチュエータ2である。制動用アクチュエータ83,84は、いずれも、前述の制動用アクチュエータ61,62等と同様に、制動トルクを発生するアクチュエータ2である。
この図9に示す例では、車両用動力ユニット1は、二本のピニオン軸31、および、二本のカウンタギヤ軸41を備え、それらに対応する四本の入力軸3が設定されている。そして、ピニオン軸31に対応する二本の入力軸3に、それぞれ、駆動トルクを入力する駆動用アクチュエータ81、および、駆動用アクチュエータ82が設けられている。また、カウンタギヤ軸41に対応する二本の入力軸3に、それぞれ、制動トルクを入力する制動用アクチュエータ83、および、制動用アクチュエータ84が設けられている。これに限らず、例えば、ピニオン軸31に対応する二本の入力軸3の一方に、駆動用アクチュエータ81を設け、他方に、制動用アクチュエータ83を設けることができる。また、カウンタギヤ軸41に対応する二本の入力軸3の一方に、駆動用アクチュエータ82を設け、他方に、制動用アクチュエータ84を設けることができる。あるいは、四本のピニオン軸31と、それらに対応する四本の入力軸3とを設け、それら四本の入力軸3に、それぞれ、駆動用アクチュエータ81,82、および、制動用アクチュエータ83,84を設けることもできる。あるいは、四本のカウンタギヤ軸41と、それらに対応する四本の入力軸3とを設け、それら四本の入力軸3に、それぞれ、駆動用アクチュエータ81,82、および、制動用アクチュエータ83,84を設けることもできる。
このように、図9に示す車両用動力ユニット1では、少なくとも四本の入力軸3を設定することにより、それら少なくとも四本の入力軸3に、それぞれ、複数の駆動用アクチュエータ81,82、および、複数の制動用アクチュエータ83,84を設けることができる。したがって、少なくとも二つの駆動用アクチュエータ81,82と、少なくとも二つの制動用アクチュエータ83,84とを備えた駆動ユニットを構成することができる。例えば、いずれか一方の駆動用アクチュエータ81(または、82)、および、いずれか一方の制動用アクチュエータ83(または、84)を主系統とし、他方の駆動用アクチュエータ82(または、81)、および、他方の制動用アクチュエータ84(または、83)を冗長系として、独立した二系統の駆動力源および制動装置を有する駆動ユニットを構成することができる。そのため、コンパクトで信頼性に優れ、かつ、制動機能を有する駆動ユニットを構成することができる。
また、前述の図6,図7で示した例のように、二つの駆動用アクチュエータ81,82を、それぞれ、低回転型のモータで構成した中・低車速走行用の駆動用アクチュエータ81、および、高回転型のモータで構成した高車速走行用の駆動用アクチュエータ82とすることができる。加えて、二つの制動用アクチュエータ83,84を、それぞれ、通常制動用アクチュエータ、および、駐車制動用アクチュエータとすることができる。そのため、コンパクトで信頼性に優れ、かつ、通常の制動機能および駐車制動機能を有し、なおかつ、エネルギ効率の良い駆動ユニットを構成することができる。
この発明の実施形態における車両用動力ユニット1は、車軸4の回転軸線CL1方向において、アクチュエータ2を、減速機構5の車輪6側に配置するように構成することができる。
例えば、図10,図11に示す車両用動力ユニット1は、複数の外接ギヤセット9を備えている。具体的には、複数の第1ピニオン21、複数の第2ピニオン22、および、複数のピニオン軸91を備えている。図10,図11では、二組の外接ギヤセット9を示してあるが、三組以上の外接ギヤセット9を備えていてもよい。複数のピニオン軸91には、それぞれ、第1ピニオン21および第2ピニオン22が取り付けられている。また、複数の入力軸3を備えている。そして、複数の入力軸3は、それぞれ、複数のピニオン軸91の一方(図10,図11での右側)の端部に連結している。もしくは、ピニオン軸91の一方の端部が、ケース17の外部まで延長されており、その延長部分が入力軸3を形成している。すなわち、ピニオン軸91が入力軸3となっている。図10,図11に示す例では、二本のピニオン軸91が、それぞれ、入力軸3となっている。
また、図10,図11に示す車両用動力ユニット1は、上記の複数の入力軸3に対応する複数のアクチュエータ2を備えている。図10,図11では、二つのアクチュエータ2を示してある。例えば、アクチュエータ2の出力軸(図示せず)が、入力軸3に連結されている。したがって、複数のアクチュエータ2は、それぞれ、発生したトルクを入力軸3に入力する。アクチュエータ2として、例えば、前述したような駆動用アクチュエータ51,52、または、制動用アクチュエータ61,62の少なくともいずれかを用いることができる。
このように、図10,図11に示す車両用動力ユニット1では、突出方向が等しい入力軸3および車軸4を備えた駆動ユニットまたは制動ユニットが構成される。そのような車両用動力ユニット1は、特に、車両のホイールの内側に駆動ユニットを組み込んだインホイールモータを構成するのに適している。あるいは、二つの駆動ユニットを、入力軸3および車軸4と反対側の背面同士を対向させて車体に搭載するオンボードタイプの駆動ユニットを構成するのに適している。例えば、図11に示すボルト92およびフランジ93は、インホイールモータを構成する際に、車両用動力ユニット1の車軸4に車輪6のホイールを固定するためのものである。また、ボルト94は、車両用動力ユニット1(インホイールモータ)を車体側に連結するためのものである。この図11に示す車両用動力ユニット1を用いて、インホイールモータを構成した例を図12に示してある。
図12に示すインホイールモータ100は、車両用動力ユニット1、および、車輪6から構成されている。図12に示す車両用動力ユニット1は、上記の図10,図11で示した車両用動力ユニット1と同じ構成である。インホイールモータ100に適用される車両用動力ユニット1では、複数のアクチュエータ2のうちの少なくとも一つが、前述した駆動用アクチュエータ51(または、52)のような、車両の駆動力源となるモータを備えた駆動用アクチュエータによって構成されている。図12に示す例では、アクチュエータ2として、駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、制動用アクチュエータ61(または、62)が装備されている。
上記の図11にも示してあるように、この車両用動力ユニット1は、キャリア軸16の先端16aが、ケース17の外側(図11,図12での右側)に向けて突出しており、その先端16aに、車軸4が連結されている。車軸4のキャリア軸16との連結側と反対側(図11,図12での右側)の端部4aには、上述したような、車軸4に車輪6を固定するためのフランジ93が形成されている。フランジ93は、車軸4の回転軸線CL1方向において、ケース17に取り付けられるアクチュエータ2よりも車軸4の先端側(図11,図12での右側)の位置に形成されている。
車輪6は、路面に接地するタイヤ101、および、タイヤ101が装着されるホイール102を有している。そのホイール102の内周部分に、車両用動力ユニット1が配置されている。すなわち、ホイール102の内周部分に、車両用動力ユニット1のアクチュエータ2、入力軸3、車軸4、および、減速機構5が配置されている。そして、車軸4のフランジ93に取り付けられたボルト92により、車軸4にホイール102が締結されている。上記のように、フランジ93は、回転軸線CL1方向において、アクチュエータ2よりも車軸4の先端側に形成されている。そのため、アクチュエータ2は、ケース17に組み付けられた状態で、回転軸線CL1方向で減速機構5とホイール102との間に配置される。
上記のように車両用動力ユニット1と車輪6とから構成されたインホイールモータ100は、ケース17に取り付けられたボルト94により、例えば、車両のサスペンション機構103に締結されている。
このように、この発明の実施形態における車両用動力ユニット1によってインホイールモータ100を構成することにより、インホイールモータ100の大幅な小型・軽量化を図ることができる。その結果、インホイールモータ100を装備した車両のばね下荷重を大幅に低減することができ、車両の乗り心地やタイヤの接地性を向上させることができる。
また、図10,図11で示した車両用動力ユニット1を用いることにより、減速機構5とホイール102との間にアクチュエータ2が配置された状態で、インホイールモータ100が構成される。すなわち、回転軸線CL1方向において、車軸4がホイール102に向けて突出する側に、アクチュエータ2が配置される。したがって、減速機構5のホイール102と反対の背面側(図11,図12での左側)には、アクチュエータ2、および、アクチュエータ2からトルクを入力する入力軸3は配置されない。そのため、減速機構5の背面側を、例えばサスペンション機構103を介して、容易に車体に設置することができる。したがって、コンパクトで搭載性に優れたインホイールモータ100を構成することができる。
なお、図12に示す例では、インホイールモータ100に装備されるアクチュエータ2として、一つの駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、一つの制動用アクチュエータ61(または、62)が設けられている。それに対して、この発明の実施形態におけるインホイールモータ100は、一つの駆動用アクチュエータ51(または、52)だけが設けられた構成であってもよい。あるいは、二つ以上の駆動用アクチュエータ51(または、52)が設けられた構成であってもよい。また、少なくとも一つの駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、二つ以上の制動用アクチュエータ61(または、62)が設けられた構成であってもよい。
さらに、図12に示す車両用動力ユニット1のアクチュエータ2として、一つの制動用アクチュエータ61(または、62)だけ、あるいは、複数の制動用アクチュエータ61(または、62)だけを装備することもできる。すなわち、アクチュエータ2として、駆動用アクチュエータを設けずに、少なくとも一つの制動用アクチュエータ61(または、62)を装備した車両用動力ユニット1を構成することもできる。その場合、コンパクトなインホイールタイプの制動ユニットを構成することができる。
図13,図14に、この発明の実施形態における車両用動力ユニット1を用いて、オンボード・2モータ駆動ユニット200を構成した例を示してある。オンボード・2モータ駆動ユニット200は、車体に設置される(すなわち、オンボードタイプの)二基の車両用動力ユニット1から構成されている。具体的には、オンボード・2モータ駆動ユニット200は、一方の車輪6すなわち左側車輪201に動力を伝達する車軸4と、アクチュエータ2と、入力軸3と、減速機構5とを有する左側ユニット202、および、他方の車輪6すなわち右側車輪203に動力を伝達する車軸4と、アクチュエータ2と、入力軸3と、減速機構5とを有する右側ユニット204から構成されている。
左側ユニット202および右側ユニット204は、共に同じ構成であって、いずれも、上述したいずれかの図で示した例の車両用動力ユニット1と同じ構成である。例えば、図13,図14に示す左側ユニット202および右側ユニット204は、共に、前述の図10で示した車両用動力ユニット1と同じ構成である。
左側ユニット202および右側ユニット204は、いずれも、複数の入力軸3を備えている。また、それら複数の入力軸3にそれぞれトルクを入力する複数のアクチュエータ2を備えている。図13,図14に示す例では、アクチュエータ2として、駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、制動用アクチュエータ61(または、62)が装備されている。
左側ユニット202および右側ユニット204は、互いの車軸4の回転軸線CL1を一致させ、それぞれの車軸4の突出方向が車幅方向(図13,図14での左右方向)で互いに反対を向くように配置されている。すなわち、左側ユニット202および右側ユニット204は、それぞれ、ケース17の車軸4が突出する方向と反対側の背面17a同士を対向させて配置されている。
この発明の実施形態におけるオンボード・2モータ駆動ユニット200では、左側ユニット202と右側ユニット204とを連結するクラッチを設けることができる。図13,図14に示す例では、左側ユニット202と右側ユニット204との間に、クラッチ205が設けられている。左側ユニット202は、サンギヤ軸15を車幅方向で左側車輪201と反対の方向(図13,図14での右方向)に突出させた左側連結部206を有している。同様に、右側ユニット204は、サンギヤ軸15を前車幅方向で右側車輪203と反対の方向(図13,図14での左方向)に突出させた右側連結部207を有している。そして、クラッチ205は、車幅方向で左側ユニット202と右側ユニット204との間に配置され、上記の左側連結部206と右側連結部207とを選択的に連結するように構成されている。
したがって、クラッチ205は、左側ユニット202のサンギヤ軸15と、右側ユニット204のサンギヤ軸15とを連結する摩擦係合力を発生することにより、左側車輪201と右側車輪203との間の差動回転を制限する差動制限機構として機能する。図14に示す例では、クラッチ205は、通電が無い状態では圧縮コイルばねの弾性力を利用して摩擦係合力を発生し、通電されることにより磁気吸引力を発生して摩擦係合力を減少させる無励磁作動型の電磁クラッチによって構成されている。したがって、クラッチ205は、通電がない通常時は、圧縮コイルばねによる付勢力によって係合し、左側車輪201と右側車輪203との間の差動回転を制限する。そして、通電されることによって解放し、左側車輪201と右側車輪203との間の差動制限を解除する。
このように、この発明の実施形態における車両用動力ユニット1によってオンボード・2モータ駆動ユニット200を構成することにより、オンボード・2モータ駆動ユニット200の大幅な小型・軽量化を図ることができる。そのため、このオンボード・2モータ駆動ユニット200を搭載する車両の軽量化に寄与し、車両のエネルギ効率を向上させることができる。また、小型化により、車両への搭載性や車両の居住性を向上させることができる。さらに、この発明の実施形態におけるオンボード・2モータ駆動ユニット200によれば、左側車輪201と右側車輪203とでそれぞれ発生させる駆動力および制動力を、左右で独立に制御することができる。したがって、例えば、トルクベクタリングが可能な車両を構成することができる。また、上述したようなクラッチ205を設けることにより、差動制限機能を有するオンボード・2モータ駆動ユニット200を構成することができる。そのため、このオンボード・2モータ駆動ユニット200を搭載する車両の走行性能を向上させることができる。
また、前述の図10で示した車両用動力ユニット1によってオンボード・2モータ駆動ユニット200を構成することにより、左側ユニット202および右側ユニット204においては、いずれも、減速機構5と車輪6との間にアクチュエータ2が設置される。すなわち、回転軸線CL1方向において、それぞれの車軸4が車輪6に向けて突出する側に、アクチュエータ2が配置される。したがって、減速機構5の背面17a側には、アクチュエータ2、および、アクチュエータ2からトルクを入力する入力軸3は配置されない。そのため、左側ユニット202および右側ユニット204のそれぞれの背面17a同士を対向させて配置する場合に、回転軸線CL1方向におけるサイズを短縮することができる。したがって、特に車幅方向の体格を小型化したコンパクトなオンボード・2モータ駆動ユニット200を構成することができる。
なお、図13,図14に示す例では、オンボード・2モータ駆動ユニット200に装備されるアクチュエータ2として、一つの駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、一つの制動用アクチュエータ61(または、62)が設けられている。それに対して、この発明の実施形態におけるオンボード・2モータ駆動ユニット200は、一つの駆動用アクチュエータ51(または、52)だけが設けられた構成であってもよい。あるいは、二つ以上の駆動用アクチュエータ51(または、52)が設けられた構成であってもよい。また、少なくとも一つの駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、二つ以上の制動用アクチュエータ61(または、62)が設けられた構成であってもよい。
さらに、図13,図14に示す左側ユニット202および右側ユニット204のアクチュエータ2として、一つの制動用アクチュエータ61(または、62)だけ、あるいは、複数の制動用アクチュエータ61(または、62)だけを装備することもできる。すなわち、アクチュエータ2として、駆動用アクチュエータを設けずに、少なくとも一つの制動用アクチュエータ61(または、62)を装備して車両用動力ユニット1を構成することもできる。その場合、コンパクトなオンボードタイプの制動ユニット(インボードブレーキ)を構成することができる。
図15には、この発明の実施形態における制動用アクチュエータ61(62、72、83、または、84)の具体的な構成の一例を示してある。図15に示す制動用アクチュエータ61(62、72、83、または、84)は、通常の制動時に作動させるサービスブレーキ機構301、および、駐車時あるいは停車時に作動させて制動力を保持するパーキングブレーキ機構302を備えている。サービスブレーキ機構301は、通電されることにより作動して所定の回転部材を制動する励磁作動型の電磁ブレーキである。図15に示す例では、サービスブレーキ機構301は、多板式の電磁ブレーキによって構成されている。具体的には、サービスブレーキ機構301は、摩擦プレート303、押圧プレート304、コイル305、および、出力軸306を備えている。
摩擦プレート303は、所定の摩擦材であり、複数の回転プレート303a、および、複数の固定プレート303bから構成されている。図15に示す例では、摩擦プレート303は、三枚の回転プレート303a、および、三枚の固定プレート303bから構成されている。回転プレート303aは、出力軸306に、出力軸306と一体回転するように固定されている。回転プレート303aは、全体または少なくとも一部が磁性体によって形成されている。固定プレート303bは、出力軸306の軸線方向への移動が可能であり、かつ、出力軸306の回転方向へは回転が不可能なように、制動用アクチュエータ61(62、72、83、または、84)のケース307に組み込まれている。固定プレート303bは、全体または少なくとも一部が磁性体によって形成されている。これら複数の回転プレート303aと、複数の固定プレート303bとが、回転軸線CL2方向(図15の左右方向)に交互に配置され、多板の摩擦プレート303が構成されている。
押圧プレート304は、円環状の磁性体によって形成されている。押圧プレート304は、回転軸線CL2方向に移動が可能であり、かつ、出力軸306の回転方向へは回転が不可能なように、ケース307に組み込まれている。
コイル305は、ケース307に固定されており、所定の電圧が印加されることによって磁気吸引力を発生する。コイル305で発生させた磁気吸引力は、摩擦プレート303および押圧プレート304に作用し、押圧プレート304を摩擦プレート303側へ吸着させる。したがって、コイル305に通電することにより、摩擦プレート303が押圧プレート304によって押圧され、摩擦プレート303の回転プレート303aと固定プレート303bとが摩擦係合し、制動トルクが発生する。
出力軸306は、例えば前述の図11で示したように、減速機構5の入力軸3およびピニオン軸91に連結され、それら入力軸3およびピニオン軸91と一体に回転する。また、出力軸306には、上記のように、回転プレート303aが一体に回転するように取り付けられている。したがって、回転プレート303aと固定プレート303bとが摩擦係合することによって発生する制動トルクは、この出力軸306を介して、減速機構5の入力軸3に伝達される。
したがって、このサービスブレーキ機構301は、コイル305に通電することによって発生する磁気吸引力により、押圧プレート304を摩擦プレート303側に吸引する。押圧プレート304が吸引されることにより、その押圧プレート304が摩擦プレート303を押圧する。そして、摩擦プレート303に押圧力が作用することにより、回転プレート303aと固定プレート303bとが摩擦係合する。したがって、このサービスブレーキ機構301は、コイル305に通電することによって回転プレート303aと固定プレート303bとを摩擦係合させるように作動し、制動トルクを発生する。なお、サービスブレーキ機構301は、コイル305への通電がない状態では、上記のように作動することなく、上記のような制動トルクを発生しない。
パーキングブレーキ機構302は、通電することにより作動して制動トルクを発生するとともに、通電を停止した状態で制動トルクを保持することが可能なように構成されている。具体的には、パーキングブレーキ機構302は、制動モータ308、送りねじ機構309、および、制動モータ用減速機構310を備えている。
制動モータ308は、通電することにより作動して駆動トルクを出力する電気モータである。制動モータ308は、ステータ308a、ロータ308b、および、ロータ308bと一体に回転するロータ軸308cを有している。ステータ308aは、回転不可能にケース307に固定されている。ロータ軸308cは、この制動モータ308の出力軸となっており、後述する制動モータ用減速機構310の入力軸310aと一体に回転する。
送りねじ機構309は、回転運動を直線運動に変換し、押圧プレート304を回転軸線CL2方向で摩擦プレート303側(図15での左側)へ押圧して回転プレート303aと固定プレート303bとを摩擦係合させるための軸力を発生する。それとともに、軸力を発生している状態で通電を停止した場合であっても、回転プレート303aと固定プレート303bとを摩擦係合させて出力軸306を制動した状態を維持することが可能なように構成されている。送りねじ機構309は、押圧部材309a、および、送りねじ部材309bから構成されている。
押圧部材309aは、円板状の非磁性体によって形成されている。押圧部材309aの中央部分には、押圧部材309aの板厚方向(図15での左右方向)に貫通する送りねじの雌ねじ部309cが形成されている。押圧部材309aは、押圧プレート304と同様に、回転軸線CL2方向に移動が可能であり、かつ、出力軸306の回転方向へは回転が不可能なように、ケース307に組み込まれている。押圧部材309aは、回転軸線CL2方向で押圧プレート304に隣接して配置されている。押圧部材309aは、押圧プレート304と接触し、押圧プレート304に回転軸線CL2方向の軸力(押圧力)を作用させる接触面309dを有している。
送りねじ部材309bは、送りねじ機構309の回転軸となっている。送りねじ部材309bは、外周部に送りねじの雄ねじ部309eが形成されている。送りねじ部材309bは、後述する制動モータ用減速機構310の出力軸310bと一体に回転する。
押圧部材309aの雌ねじ部309cに送りねじ部材309bの雄ねじ部309eがねじ込まれており、それによって送りねじ機構309が構成されている。送りねじ機構309の雌ねじ部309cおよび雄ねじ部309eは、例えば、ボールねじ、あるいは、台形ねじや角ねじによって形成されている。
送りねじ機構309は、送りねじ部材309bを所定の回転方向(正転方向)へ回転させることにより、押圧部材309aを回転軸線CL2方向で押圧プレート304に近付ける前進方向(図15での左方向)の軸力を発生する。また、送りねじ機構309は、送りねじ部材309bを正転方向と反対方向(逆転方向)へ回転させることにより、押圧部材309aを回転軸線CL2方向で押圧プレート304から遠ざける後退方向(図15での右方向)の軸力を発生する。
制動モータ用減速機構310は、入力軸310a、および、出力軸310bを有しており、入力軸310aと出力軸310bとの間で回転数を減速する。したがって、制動モータ用減速機構310は、入力軸310aに入力されるトルクを増幅して出力軸310bに伝達する。入力軸310aには、上述した制動モータ308のロータ軸308cが連結されている。もしくは、入力軸310aとロータ軸308cとが一体に形成されている。すなわち、入力軸310aは、ロータ軸308cと一体に回転する。出力軸310bには、上述した送りねじ機構309の送りねじ部材309bが連結されている。もしくは、出力軸310bと送りねじ部材309bとが一体に形成されている。すなわち、出力軸310bは、送りねじ部材309bと一体に回転する。
したがって、このパーキングブレーキ機構302では、制動モータ308の出力トルクを、制動モータ用減速機構310によって増幅して送りねじ機構309に伝達する。そのため、出力トルクが増幅される分、制動モータ308を小型化することができる。その結果、パーキングブレーキ機構302の小型・軽量化を図ることができる。ひいては、大幅に小型・軽量化した制動用アクチュエータ61(62、72、83、または、84)を構成することができる。
パーキングブレーキ機構302は、送りねじ機構309の送りねじ部材309bに正転方向のトルクを付与することにより、回転プレート303aと固定プレート303bとを摩擦係合させて出力軸306を制動することができる。すなわち、出力軸306に制動トルクを作用させることができる。また、送りねじ部材309bに逆転方向のトルクを付与することにより、このパーキングブレーキ機構302による出力軸306の制動を解除することができる。すなわち、出力軸306の制動トルクを低減する、もしくは、0にすることができる。
また、このパーキングブレーキ機構302における送りねじ機構309は、直線運動を回転運動に変換する場合の送りねじの逆効率が、回転運動を直線運動に変換する場合の送りねじの正効率よりも低く設定されている。すなわち、送りねじ機構309は、送りねじ部材309bを正転方向へ回転させて押圧部材309aを前進方向へ移動させる場合の正効率よりも、押圧部材309aを後退方向へ移動させて送りねじ部材309bを逆転方向へ回転させる場合の逆効率が低くなるように構成されている。したがって、送りねじ機構309で押圧部材309aおよび押圧プレート304を前進方向へ押圧し、出力軸306を制動した状態を維持することができる。そのため、制動モータ308によって送りねじ機構309を作動させ、出力軸306を制動した状態で、上述のサービスブレーキ機構301および制動モータ308に対する通電を停止した場合であっても、パーキングブレーキ機構302による出力軸306の制動状態を維持することができる。
上述したパーキングブレーキ機構302における制動モータ用減速機構310は、例えば、図16に示すように、前述の減速機構5と同様の歯車機構401によって構成することができる。この図16に示す歯車機構401は、減速機構5と同様に、遊星歯車機構7、カウンタギヤセット8、および、外接ギヤセット9から構成されている。歯車機構401は、所望する減速比や制動用アクチュエータ61(62、72、83、または、84)の体格に応じて適宜形成される。したがって、歯車機構401と減速機構5とは、体格の相違はあるものの、基本的に同じ構成である。そのため、この図16において、前述の図1,図2で示した減速機構5と構成および機能が同じ部材や部品については、図1,図2で用いた参照符号と同じ参照符号を付けてある。
図16に示す歯車機構401では、サンギヤ軸15が、制動モータ用減速機構310における入力軸310aとなっている。また、キャリア軸16が、制動モータ用減速機構310における出力軸310bとなっている。入力軸310aには、制動モータ308のロータ軸308cが連結されている。出力軸310bには、送りねじ機構309の送りねじ部材309bが連結されている。したがって、この歯車機構401による制動モータ用減速機構310は、制動モータ308の出力トルクを増幅して送りねじ機構309に伝達する。
前述した通り、この歯車機構401を用いて構成された制動モータ用減速機構310も、減速機構5と同様に、従来の構成と比較して相当に大きな減速比を設定することが可能な高減速機能を有している。したがって、この制動モータ用減速機構310により、制動モータ308の出力トルクを大幅に増幅して送りねじ機構309に伝達することができる。そのため、制動モータ308を大幅に小型化することができる。ひいては、大幅に小型・軽量化した制動用アクチュエータ61(62、72、83、または、84)を構成することができる。
図17,図18に、この発明の実施形態における車両用動力ユニット1を用いて構成したオンボード・2モータ駆動ユニットの他の例を示してある。なお、図17,図18に図示するオンボード・2モータ駆動ユニットにおいて、前述の図13,図14、あるいは、既出の図面で示した例と構成および機能が同じ部材や部品については、図13,図14、あるいは、既出の図面で用いた参照符号と同じ参照符号を付けてある。
図17に示すオンボード・2モータ駆動ユニット500は、オンボードタイプの二基の車両用動力ユニット1から構成されている。具体的には、オンボード・2モータ駆動ユニット500は、一方(図17での左側)の車輪(図示せず)に動力を伝達する車軸4と、アクチュエータ2と、入力軸3と、減速機構501とを有する左側ユニット502、および、他方(図17での右側)の車輪(図示せず)に動力を伝達する車軸4と、アクチュエータ2と、入力軸3と、減速機構501とを有する右側ユニット503から構成されている。
減速機構501は、基本的に前述の図13,図14で示した減速機構5と同じ構成である。前述の図13,図14では、二組の外接ギヤセット9を示してあるが、この図17に示す減速機構501は、一組の外接ギヤセット9を備えている。なお、前述の図13,図14で示した減速機構5と同様に二組の外接ギヤセット9を備えていてもよい。あるいは、三組以上の外接ギヤセット9を備えていてもよい。この図17に示す例のように外接ギヤセット9を一組だけ設ける場合であっても、リングギヤ11は、リングギヤ11の内歯に噛み合うプラネタリギヤ13によって回転可能に支持される。
左側ユニット502および右側ユニット503は、いずれも、複数の入力軸3を備えている。また、それら複数の入力軸3にそれぞれトルクを入力する複数のアクチュエータ2を備えている。図17に示す例では、カウンタギヤ軸20およびピニオン軸91に、それぞれ、入力軸3が連結されている。もしくは、カウンタギヤ軸20およびピニオン軸91が、それぞれ、入力軸3として機能する。すなわち、実質的に、カウンタギヤ軸20およびピニオン軸91が、この車両用動力ユニット1における入力軸3となっている。また、キャリア軸16に車軸4が連結されている。もしくは、キャリア軸16が車軸4として機能する。すなわち、実質的に、キャリア軸16が、この車両用動力ユニット1における車軸4となっている。また、この図17に示す例では、アクチュエータ2として、駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、制動用アクチュエータ61(または、62)が装備されている。なお、制動用アクチュエータ61(または、62)は、前述の図15で示した例のように、サービスブレーキ機構301、および、パーキングブレーキ機構302を備えていてもよい。
左側ユニット502および右側ユニット503は、互いの車軸4の回転軸線CL1を一致させ、それぞれの車軸4の突出方向が車幅方向(図17での左右方向)で互いに反対を向くように配置されている。すなわち、左側ユニット502および右側ユニット503は、それぞれ、ケース17の背面17a同士を対向させて配置されている。
前述の図13,図14で示したオンボード・2モータ駆動ユニット200における左側ユニット202および右側ユニット204では、いずれも、車両の外側に複数のアクチュエータ2が配置されている。すなわち、回転軸線CL1方向における背面17aの反対側に、複数のアクチュエータ2が配置されている。そのため、複数のアクチュエータ2は、それぞれ、車軸4を挟み、車軸4の径方向における外周側に位置している。前述の図14で示した例では、駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、制動用アクチュエータ61(または、62)が、それぞれ、車軸4を挟み、車軸4の径方向における外周側に配置されている。それに対して、この発明の実施形態におけるオンボード・2モータ駆動ユニットは、複数のアクチュエータ2を、車両の内側に配置することもできる。すなわち、回転軸線CL1方向におけるケース17の背面17a側に、複数のアクチュエータ2を配置することができる。あるいは、回転軸線CL1方向におけるケース17の背面17a側に、複数のアクチュエータ2のいずれかを配置することができる。
この図17に示すオンボード・2モータ駆動ユニット500では、回転軸線CL1方向におけるケース17の背面17a側に、駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、制動用アクチュエータ61(または、62)が配置されている。具体的には、左側ユニット502における背面17a側(図17での右側)に、駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、制動用アクチュエータ61(または、62)が配置されている。駆動用アクチュエータ51(または、52)の出力軸51a(または、52a)が、カウンタギヤ軸20と一体に回転する入力軸3に連結されている。制動用アクチュエータ61(または、62)の出力軸61a(または、62a)が、ピニオン軸91と一体に回転する入力軸3に連結されている。同様に、右側ユニット503における背面17a側(図17での左側)に、駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、制動用アクチュエータ61(または、62)が配置されている。駆動用アクチュエータ51(または、52)の出力軸51a(または、52a)が、カウンタギヤ軸20と一体に回転する入力軸3に連結されている。制動用アクチュエータ61(または、62)の出力軸61a(または、62a)が、ピニオン軸91と一体に回転する入力軸3に連結されている。
図17に示す例では、駆動用アクチュエータ51(または、52)の出力軸51a(または、52a)は、出力軸51a(または、52a)の突出方向と反対の方向に突出させた連結部51b(または、52b)を有している。そして、左側ユニット502における駆動用アクチュエータ51(または、52)の連結部51b(または、52b)と、右側ユニット503における駆動用アクチュエータ51(または、52)の連結部51b(または、52b)とが、クラッチ205を介して連結されている。クラッチ205は、前述の図13,図14で示したクラッチ205と同じ構成であり、図13,図14で示したクラッチ205と同様に機能する。したがって、この図17に示す例では、クラッチ205は、車幅方向で左側ユニット502と右側ユニット503との間に配置され、上記の左側ユニット502における連結部51b(または、52b)と右側ユニット503における連結部51b(または、52b)とを選択的に連結するように構成されている。
このように、図17に示すオンボード・2モータ駆動ユニット500では、車両の幅方向における内側に、複数のアクチュエータ2が配置される。すなわち、複数のアクチュエータ2は、車軸4を跨ぐことなく、車軸4の突出方向と反対の背面17a側に配置される。そのため、複数のアクチュエータ2を車軸4を挟んで配置する場合と比較して、車軸4の径方向におけるサイズを短縮することができる。したがって、特に車両の高さ方向および前後方向の体格を小型化したコンパクトなオンボード・2モータ駆動ユニット500を構成することができる。
図18に示すオンボード・2モータ駆動ユニット600は、オンボードタイプの二基の車両用動力ユニット1から構成されている。具体的には、オンボード・2モータ駆動ユニット600は、一方(図18での左側)の車輪(図示せず)に動力を伝達する車軸4と、アクチュエータ2と、入力軸3と、減速機構601とを有する左側ユニット602、および、他方(図18での右側)の車輪(図示せず)に動力を伝達する車軸4と、アクチュエータ2と、入力軸3と、減速機構601とを有する右側ユニット603から構成されている。
減速機構601は、基本的に前述の図17で示した減速機構501と同じ構成である。この図18に示す減速機構601においても、一組の外接ギヤセット9が設けられている。なお、前述の図13,図14で示した減速機構5と同様に二組の外接ギヤセット9を備えていてもよい。あるいは、三組以上の外接ギヤセット9を備えていてもよい。また、前述の図17で示した減速機構501と同様に、外接ギヤセット9を一組だけ設ける場合であっても、リングギヤ11は、リングギヤ11の内歯に噛み合うプラネタリギヤ13によって回転可能に支持される。
左側ユニット602および右側ユニット603は、いずれも、複数の入力軸3を備えている。また、それら複数の入力軸3にそれぞれトルクを入力する複数のアクチュエータ2を備えている。図18に示す例では、サンギヤ軸15およびピニオン軸91に、それぞれ、入力軸3が連結されている。もしくは、サンギヤ軸15およびピニオン軸91が、それぞれ、入力軸3として機能する。すなわち、実質的に、サンギヤ軸15およびピニオン軸91が、この車両用動力ユニット1における入力軸3となっている。また、キャリア軸16に車軸4が連結されている。もしくは、キャリア軸16が車軸4として機能する。すなわち、実質的に、キャリア軸16が、この車両用動力ユニット1における車軸4となっている。また、この図18に示す例では、アクチュエータ2として、駆動用アクチュエータ51(または、52)、および、制動用アクチュエータ61(または、62)が装備されている。なお、制動用アクチュエータ61(または、62)は、前述の図15で示した例のように、サービスブレーキ機構301、および、パーキングブレーキ機構302を備えていてもよい。
左側ユニット602および右側ユニット603は、互いの車軸4の回転軸線CL1を一致させ、それぞれの車軸4の突出方向が車幅方向(図18での左右方向)で互いに反対を向くように配置されている。すなわち、左側ユニット602および右側ユニット603は、それぞれ、ケース17の背面17a同士を対向させて配置されている。
前述したように、この発明の実施形態におけるオンボード・2モータ駆動ユニットは、回転軸線CL1方向におけるケース17の背面17a側に、複数のアクチュエータ2のいずれかを配置することができる。
この図18に示すオンボード・2モータ駆動ユニット600では、回転軸線CL1方向におけるケース17の背面17a側に、駆動用アクチュエータ51(または、52)が配置されている。一方、制動用アクチュエータ61(または、62)は、回転軸線CL1方向における車軸4の突出側に配置されている。具体的には、左側ユニット602における背面17a側(図18での右側)に、駆動用アクチュエータ51(または、52)が配置されている。一方、左側ユニット602における背面17aの反対側(図18での左側)に、制動用アクチュエータ61(または、62)が配置されている。駆動用アクチュエータ51(または、52)の出力軸51a(または、52a)が、サンギヤ軸15と一体に回転する入力軸3に連結されている。制動用アクチュエータ61(または、62)の出力軸61a(または、62a)が、ピニオン軸91と一体に回転する入力軸3に連結されている。同様に、右側ユニット603における背面17a側(図18での左側)に、駆動用アクチュエータ51(または、52)が配置されている。一方、右側ユニット603における背面17aの反対側(図18での右側)に、制動用アクチュエータ61(または、62)が配置されている。駆動用アクチュエータ51(または、52)の出力軸51a(または、52a)が、サンギヤ軸15と一体に回転する入力軸3に連結されている。制動用アクチュエータ61(または、62)の出力軸61a(または、62a)が、ピニオン軸91と一体に回転する入力軸3に連結されている。
前述の図17で示した例と同様に、この図18に示す例においても、駆動用アクチュエータ51(または、52)の出力軸51a(または、52a)は、連結部51b(または、52b)を有している。そして、左側ユニット602における駆動用アクチュエータ51(または、52)の連結部51b(または、52b)と、右側ユニット603における駆動用アクチュエータ51(または、52)の連結部51b(または、52b)とが、クラッチ205を介して連結されている。したがって、この図18に示す例では、クラッチ205は、車幅方向で左側ユニット602と右側ユニット603との間に配置され、上記の左側ユニット602における連結部51b(または、52b)と右側ユニット603における連結部51b(または、52b)とを選択的に連結するように構成されている。
このように、図18に示すオンボード・2モータ駆動ユニット600では、車両の幅方向における内側に、複数のアクチュエータ2のいずれかが配置される。すなわち、複数のアクチュエータ2は、車軸4を跨ぐことなく、車両の幅方向における内側と外側とに分かれて配置される。そのため、複数のアクチュエータ2を車軸4を挟んで配置する場合と比較して、車軸4の径方向におけるサイズを短縮することができる。また、複数のアクチュエータ2を車両の幅方向における内側と外側とに分けることにより、複数のアクチュエータ2を、車軸4の径方向でオーバーラップさせて配置することができる。例えば、図18に示す例では、駆動用アクチュエータ51(または、52)と制動用アクチュエータ61(または、62)とが、車軸4の径方向でオーバーラップして配置されている。そのため、車軸4の径方向におけるサイズの小型化を図ることができる。したがって、特に車両の高さ方向および前後方向の体格を小型化したコンパクトなオンボード・2モータ駆動ユニット600を構成することができる。