以下、図面を参照して、本発明に係る走行ロボットの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態の走行ロボット1の斜視図である。また、図2は、本実施形態の走行ロボット1の平面図である。また、図3は、本実施形態の走行ロボット1を前側から見た正面図である。図4は、本実施形態の走行ロボット1を右側から見た側面図である。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、図1〜図4に示すように、走行ロボット1が取り付けられるレールRに沿った方向の一方側を前側とし、他方側を後側とする。また、前後方向と直交する水平方向の一方側を左側とし、他方側を右側とする。さらに、以下の図面では、ギヤの歯を省略して図示している。
本実施形態の走行ロボット1は、地下鉄等のレールRに沿った走行とレールRから離れた不整地との両方を走行可能とする無人のロボットであり、図1〜図4に示すように、ベースフレーム2と、可動ユニット3と、開閉モータ4(可動ユニット駆動モータ)と、開閉動力伝達機構5と、バッテリ6と、制御ユニット7と、補助輪8と備えている。
ベースフレーム2は、可動ユニット3、開閉モータ4、開閉動力伝達機構5、バッテリ6及び制御ユニット7を支持する略板状の剛性部材である。このベースフレーム2は、左右方向の幅が、レールRの頭部の幅よりも広く設定されている。可動ユニット3は、左右方向の側端部に各々設置されている。つまり、本実施形態においては、可動ユニット3として、ベースフレーム2の左側端部に配置された左側可動ユニット30と、ベースフレーム2の右側端部に配置された右側可動ユニット31とが備えられている。なお、左側可動ユニット30と右側可動ユニット31との構造は、左右対称であることを除いて同一であることから、ここでは左側可動ユニット30の詳細な構造について説明し、右側可動ユニット31の詳細な構造については説明を省略する。
左側可動ユニット30は、脚フレーム3aと、ボギー機構3bと、車輪駆動モータ3cと、走行動力伝達機構3dとを備えている。脚フレーム3aは、図1及び図4に示すように、ベースフレーム2の右側端部に沿って前後方向に亘って設けられており、根元部(図1及び図3に示す上端部)が図4に示す軸受10及び開閉動力伝達機構5の後述する平歯車5fを介してベースフレーム2に回動可能に接続されている。このような脚フレーム3aは、前後方向に沿った軸芯を中心としてベースフレーム2に対して回動可能とされている。また、脚フレーム3aは、先端部(図1及び図3に示す下端部)に前後方向に配列された2つのボギー機構3bが取り付けられている。
ボギー機構3bは、脚フレーム3aの前側と後側とに各々設置されている。つまり、左側可動ユニット30には、脚フレーム3aの前側に配置された前側ボギー機構33と、脚フレーム3aの後側に配置された後側ボギー機構34とが備えられている。なお、前側ボギー機構33と後側ボギー機構34との構造は、同一であることから、ここでは前側ボギー機構33の詳細な構造について説明し、後側ボギー機構34の詳細な構造について説明を省略する。
図5は、本実施形態の走行ロボット1の前側ボギー機構33を含む鉛直面での断面図である。図4及び図5に示すように、前側ボギー機構33は、車輪保持フレーム3e(車輪保持部)と、車輪3fとを備えている。車輪保持フレーム3eは、図5に示すように、軸受12及び軸受13を介して走行動力伝達機構3dの後方シャフト3iあるいは前方シャフト3mに回転可能に支持されており、これによりベースフレーム2に対して軸受12及び軸受13の軸芯を中心として揺動可能とされている。車輪3fは、車輪保持フレーム3eの前後に各々設けられている。これらの車輪3fは、互いの回転軸芯が平行となり、これらの回転軸芯がベースフレーム2の前後方向に直交するように配列されている。
各々の車輪3fは、平歯車が一体化されたホイール3f1と、ホイール3f1に外装されたタイヤ3f2と、ホイール3f1を回転軸芯に沿った方向に貫通する車輪軸3f3とを有している。この車輪軸3f3が、図5に示すように軸受14及び軸受15を介して車輪保持フレーム3eに接続されることにより、各々の車輪3fが車輪保持フレーム3eに対して回転可能に支持されている。また、本実施形態の走行ロボット1においては、騒音を可能な限り抑えて走行できるように、また簡易的なサスペンション機能を持たせるために、スポンジ状のタイヤ3f2を用いることが好ましい。
このような前側ボギー機構33は、軸受12及び軸受13の軸芯を中心として車輪保持フレーム3eが揺動可能とされている。したがって、車輪保持フレーム3eの前側に配置された車輪3fと後側に配置された車輪3fとは、互いが反対方向に移動される。つまり、図1〜図5に示すように車輪3fがレールRに対して側方から当接されている状態(車輪軸3f3が鉛直姿勢である状態)にて、車輪保持フレーム3eの前側に配置された車輪3fがベースフレーム2の左側方向に移動するように車輪保持フレーム3eが回動すると、車輪保持フレーム3eの後側に配置された車輪3fがベースフレーム2の右側方向に移動する。また、車輪保持フレーム3eの前側に配置された車輪3fがベースフレーム2の右側方向に移動するように車輪保持フレーム3eが回動すると、車輪保持フレーム3eの後側に配置された車輪3fがベースフレーム2の左側方向に移動する。一方で、図3の仮想線に示すように、車輪3fの車輪軸3f3が水平姿勢とされ、車輪3fがレールRから離間している状態にて、車輪保持フレーム3eの前側に配置された車輪3fが下側方向に移動するように車輪保持フレーム3eが回動すると、車輪保持フレーム3eの後側に配置された車輪3fがベースフレーム2の上側方向に移動する。また、車輪保持フレーム3eの前側に配置された車輪3fがベースフレーム2の上側方向に移動するように車輪保持フレーム3eが回動すると、車輪保持フレーム3eの下側に配置された車輪3fがベースフレーム2の左側方向に移動する。
車輪駆動モータ3cは、ボギー機構3bの車輪3fを回転駆動するための動力を生成するモータであり、ベースフレーム2に固定されている。この車輪駆動モータ3cは、ベースフレーム2の前後方向から見て、脚フレーム3aのベースフレーム2に対する回動軸芯(すなわち、軸受10及び平歯車5fを通過する軸芯)に重ねて配置されている。このような車輪駆動モータ3cは、ベースフレーム2の後側に向けて突出された出力軸3c1を有している。
走行動力伝達機構3dは、全ての車輪3fに接続されており、車輪駆動モータ3cで生成された動力を車輪3fに伝達する。この走行動力伝達機構3dは、第1傘歯車3gと、第2傘歯車3hと、後方シャフト3iと、後方プーリ3jと、後方平歯車3kと、前方シャフト3mと、前方プーリ3nと、前方平歯車3pと、タイミングベルト3qとを備えている。
第1傘歯車3gは、車輪駆動モータ3cの出力軸3c1に固定されている。この第1傘歯車3gは、車輪駆動モータ3cの出力軸3c1に伴って回転される。第2傘歯車3hは、後方シャフト3iの一端に固定されており、第1傘歯車3gと噛合されている。この第2傘歯車3hは、車輪駆動モータ3cで生成された動力を後方シャフト3iに伝達する。後方シャフト3iは、ベースフレーム2の後側端部寄りに配置されており、図5に示すように軸受16及び軸受17を介して脚フレーム3aに回転可能に支持されている。この後方シャフト3iは、後側ボギー機構34の車輪保持フレーム3eを貫通して設けられている。後方プーリ3jは、後方シャフト3iの途中部位に固定されており、後方シャフト3iに伴って回転される。この後方平歯車3kは、後側ボギー機構34が備える2つのホイール3f1同士の間に配置されており、各々のホイール3f1に噛合されている。このような後方平歯車3kは、車輪駆動モータ3cで生成された動力を後側ボギー機構34が備える2つの車輪3fに伝達して車輪3fを回転駆動する。
前方シャフト3mは、ベースフレーム2の前側端部寄りに配置されており、図5に示すように軸受18及び軸受19を介して脚フレーム3aに回転可能に支持されている。この前方シャフト3mは、前側ボギー機構33の車輪保持フレーム3eを貫通して設けられている。前方プーリ3nは、前方シャフト3mの途中部位に固定されており、タイミングベルト3qを介して伝達される動力により前方シャフト3mを回転させる。前方平歯車3pは、前側ボギー機構33が備える2つのホイール3f1同士の間に配置されており、各々のホイール3f1に噛合されている。このような前方平歯車3pは、車輪駆動モータ3cで生成された動力を前側ボギー機構33が備える2つの車輪3fに伝達して車輪3fを回転駆動する。タイミングベルト3qは、後方プーリ3jと前方プーリ3nとに回し掛けられた無端状のベルトであり、後方プーリ3jから伝達される回転動力を前方プーリ3nに伝達する。
このような左側可動ユニット30は、脚フレーム3aがベースフレーム2に回動可能に接続されることにより、全体が前後方向に沿う軸芯を中心としてベースフレーム2に対して回動可能とされている。また、左側可動ユニット30に対して対称形状とされた右側可動ユニット31も、同様に、全体が前後方向に沿う軸芯を中心としてベースフレーム2に対して回動可能とされている。
このような左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31は、車輪3fの車輪軸3f3が鉛直方向(上下方向)に向けられた姿勢(以下、当該姿勢を閉脚姿勢と称する)と、車輪3fの車輪軸3f3が水平方向(左右方向)に向けられた姿勢(以下、当該姿勢を開脚姿勢と称する)とに姿勢変更が可能とされている。なお、図3において実線で示された左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31の姿勢が閉脚姿勢であり、図3において仮想線で示された左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31の姿勢が開脚姿勢である。このような本実施形態の走行ロボット1においては、車輪3fの車輪軸3f3(すなわち回転軸芯)が、常にベースフレーム2の前後方向に対して直交した状態を維持しつつ、左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31の姿勢が変更される。
本実施形態の走行ロボット1においては、左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31が閉脚姿勢である場合に、車輪3fがレールRの頭部の側面に当接される。この状態で車輪3fが回転駆動されることにより、本実施形態の走行ロボット1はレールRに沿って移動することができる。また、本実施形態の走行ロボット1においては、左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31が開脚姿勢である場合に、レールRから外れた領域で車輪3fが地面に当接される。この状態で、車輪3fが回転駆動されることにより、本実施形態の走行ロボット1は地面上を走行することができる。
開閉モータ4は、可動ユニット3の姿勢を変更するための動力を生成するモータであり、ベースフレーム2に対して固定されている。この開閉モータ4は、出力軸4aが前方に突出するようにベースフレーム2の一部に形成された開口に収容された状態で保持されている。また、開閉モータ4は、前後方向から見て、ベースフレーム2の中心位置よりも右側に配置されている。
開閉動力伝達機構5は、左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31に接続されており、開閉モータ4で生成された動力を左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31に伝達する。この開閉動力伝達機構5は、第1ウォーム5aと、中央ウォームホイール5bと、第2ウォーム5cと、左側ウォームホイール5dと、右側ウォームホイール5eと、複数の平歯車5fとを備えている。
第1ウォーム5aは、開閉モータ4の出力軸4aに固定されている。中央ウォームホイール5bは、第1ウォーム5aと噛合される歯車であり、図3に示すように前側から見てベースフレーム2の中央部に配置されている。これらの第1ウォーム5aと中央ウォームホイール5bとによって1組のウォームギアが構成されている。つまり、本実施形態の走行ロボット1において開閉動力伝達機構5は、ウォームギアを含んで構成されている。
第2ウォーム5cは、中央ウォームホイール5bの下方に配置されており、中央ウォームホイール5bに固定されている。この第2ウォーム5cは、中央ウォームホイール5bと共にベースフレーム2に対して回転可能に支持されており、中央ウォームホイール5bに伴って鉛直方向を向く軸芯を中心として回転される。左側ウォームホイール5dは、図3に示すように、第2ウォーム5cの左側に配置されており、この第2ウォーム5cと噛合されている。右側ウォームホイール5eは、第2ウォーム5cの右側に配置されており、この第2ウォーム5cと噛合されている。なお、これらの第2ウォーム5c、左側ウォームホイール5d及び右側ウォームホイール5eによって、1組のウォームギアが構成されている。
平歯車5fは、第2ウォーム5cの左側領域と右側領域とに各々3つずつ配置されており、ベースフレーム2に対して回転可能に支持されている。各々の領域に配置される3つの平歯車は、左右方向に配列されて、隣り合う平歯車5f同士と噛合されている。これらの平歯車5fは、左側ウォームホイール5dと左側可動ユニット30とを接続し、また右側ウォームホイール5eと右側可動ユニット31とを接続している。
例えば、第2ウォーム5cの左側領域に配置された3つの平歯車5fは、最も右側の平歯車5fが左側ウォームホイール5dに同軸固定され(例えば図1参照)、最も左側の平歯車5fが左側可動ユニット30の脚フレーム3aと固定されている。これらの第2ウォーム5cの左側領域に配置された3つの平歯車5fは、第2ウォーム5cから伝達された回転動力を左側可動ユニット30に伝達する。また、第2ウォーム5cの右側領域に配置された3つの平歯車5fは、最も左側の平歯車5fが右側ウォームホイール5eに同軸固定され、最も右側の平歯車5fが右側可動ユニット31の脚フレーム3aに固定されている。
このような開閉動力伝達機構5によって動力が伝達されることにより、左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31は、同期して姿勢変更される。つまり、左側可動ユニット30が開脚姿勢から閉脚姿勢に姿勢変更される場合には、右側可動ユニット31も開脚姿勢から閉脚姿勢に姿勢変更される。また、左側可動ユニット30が閉脚姿勢から開脚姿勢に姿勢変更される場合には、右側可動ユニット31も閉脚姿勢から開脚姿勢に姿勢変更される。
バッテリ6は、ベースフレーム2の上面に固定されている。このバッテリ6は、不図示の配線を介して、開閉モータ4、車輪駆動モータ3c及び制御ユニット7と電気的に接続されており、これらの開閉モータ4、車輪駆動モータ3c及び制御ユニット7に対して給電する電力を蓄えている。このバッテリ6は、図3に示すように、前後方向から見て、ベースフレーム2の中心位置よりも左側に配置されている。制御ユニット7は、ベースフレーム2の上面に固定されている。この制御ユニット7は、例えば、外部のコントローラ等と無線接続されており、外部から入力された指示に基づいて、開閉モータ4や車輪駆動モータ3cの制御を行う。
補助輪8は、図3に示すように、左側可動ユニット30と右側可動ユニット31との間であってベースフレーム2の下方に配置されるように、ベースフレーム2に対して回転可能に支持された従動輪である。本実施形態においては、この補助輪8が左右方向に離間して2つ設けられている。これらの補助輪8は、本実施形態の走行ロボット1がレールRに沿って走行する場合に、上方からレールRの頭部の上面に当接され、走行ロボット1の全体を下方から支持する。なお、走行ロボット1が可動ユニット3を開脚姿勢としてレールRから外れた領域を走行する場合に地面と接触しないように、補助輪8は、下端が開脚姿勢時の車輪3fの下端よりも上方に位置する径に設定されている。
このような構成の本実施形態の走行ロボット1によれば、レールRに沿って走行する場合には、補助輪8をレールRの頭部の上面に当接させた状態で、制御ユニット7の制御の下、可動ユニット3が閉脚姿勢とされる。このように可動ユニット3が閉脚姿勢とされると、左側可動ユニット30の車輪3fがレールRの頭部の左側面に当接され、右側可動ユニット31の車輪3fがレールRの頭部の右側面に当接される。これによって、走行ロボット1は、左側可動ユニット30と右側可動ユニット31とによってレールRを挟持するようにしてレールRに対して装着される。
続いて、左側可動ユニット30の車輪駆動モータ3cと、右側可動ユニット31の車輪駆動モータ3cとを駆動することにより、8つの車輪3fの全てを回転駆動する。これによって、走行ロボット1がレールRに沿って移動される。なお、走行ロボット1が直進する場合には、左側可動ユニット30の車輪駆動モータ3cと、右側可動ユニット31の車輪駆動モータ3cとは同速回転される。また、走行ロボット1が左側に曲がる場合には、左側可動ユニット30の車輪駆動モータ3cよりも右側可動ユニット31の車輪駆動モータ3cの回転速度を増加させる。また、走行ロボット1が右側に曲がる場合には、右側可動ユニット31の車輪駆動モータ3cよりも左側可動ユニット30の車輪駆動モータ3cの回転速度を増加させる。
また、レールRを外れた地面を走行する場合には、制御ユニット7の制御の下、可動ユニット3が開脚姿勢とされる。このように可動ユニット3が開脚姿勢とされると、左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31の車輪軸3f3が水平姿勢となり、車輪3fのタイヤ3f2が地面に対して接地可能となる。これによって、走行ロボット1は、左側可動ユニット30及び右側可動ユニット31を開脚姿勢とした状態で、地面に沿って自立可能となる。
続いて、左側可動ユニット30の車輪駆動モータ3cと、右側可動ユニット31の車輪駆動モータ3cとを駆動することにより、8つの車輪3fの全てを回転駆動する。これによって、走行ロボット1が地面に沿って移動される。なお、走行ロボット1が直進する場合には、左側可動ユニット30の車輪駆動モータ3cと、右側可動ユニット31の車輪駆動モータ3cとは同速回転される。また、走行ロボット1が左側に曲がる場合には、左側可動ユニット30の車輪駆動モータ3cよりも右側可動ユニット31の車輪駆動モータ3cの回転速度を増加させる。また、走行ロボット1が右側に曲がる場合には、右側可動ユニット31の車輪駆動モータ3cよりも左側可動ユニット30の車輪駆動モータ3cの回転速度を増加させる。
以上の説明したような本実施形態の走行ロボット1においては、ベースフレーム2の左右両方の側端部に可動ユニット3が各々設置されており、これらの可動ユニット3が車輪3fを有すると共にベースフレーム2の前後方向に沿う軸芯を中心として回動可能とされている。このため、本実施形態の走行ロボット1によれば、2つの可動ユニット3をベースフレーム2に対して回動することにより、各々の可動ユニット3の車輪3fによってレールRを両側から挟むことができる。また、車輪3fの回転により滑らかにレールRに沿って移動することができる。
さらに、本実施形態の走行ロボット1においては、可動ユニット3が、ベースフレーム2に回動可能に接続された脚フレーム3aを備え、さらに脚フレーム3aに対して揺動可能な車輪保持フレーム3eによって複数の車輪3fが保持されている。このため、レールRが湾曲していた場合であっても、車輪保持フレーム3eが脚フレーム3aに対して傾くことにより車輪3fをレールRに常に押し当てて走行することができ、安定的に走行することができる。
また、車輪3fが地面等に接地するように可動ユニット3をベースフレーム2に対して回動させることにより、レールRがない場合であっても地面に沿って走行することができる。このとき、脚フレーム3aに対して揺動可能な車輪保持フレーム3eによって複数の車輪3fが保持されているため、不整地であっても車輪3fを常に地面等に接地させることができ、不整地を安定して走行することができる。
このように、本実施形態の走行ロボット1によれば、レールRに装着してレールRに沿って走行することができる。また、レールRから離れ、不整地を走行することもできる。したがって、本実施形態の走行ロボット1によれば、レールRに沿った移動と、不整地での移動との両方を行うことができる。
また、本実施形態の走行ロボット1においては、1つの脚フレーム3aに対して、ベースフレーム2の前後方向に配列されて複数の車輪保持フレーム3eが接続されている。このため、1つの脚フレーム3a(すなわち1つの可動ユニット3)に対して多数の車輪3fを設置することが可能となる。したがって、本実施形態の走行ロボット1によれば、より安定した走行を実現することができる。
また、本実施形態の走行ロボット1においては、車輪3fを回転駆動する動力を生成する車輪駆動モータ3cと、全ての車輪3fに接続されると共に車輪駆動モータ3cで生成された動力を全ての車輪3fに伝達する走行動力伝達機構3dとを備えている。このため、全ての車輪3fが駆動輪となり、不整地等をより安定して走行することが可能となる。
また、本実施形態の走行ロボット1では、車輪駆動モータ3cが脚フレーム3aに固定されている。このため、脚フレーム3aの回転に伴って車輪駆動モータ3cも回転する。ここで、本実施形態の走行ロボット1においては、車輪駆動モータ3cが、ベースフレーム2の前後方向から見て、脚フレーム3aのベースフレーム2に対する回動軸芯に重ねて配置されている。このとき、車輪駆動モータ3cが脚フレーム3aのベースフレーム2に対する回動軸芯に重ねて配置されていると、車輪駆動モータ3cの質量による慣性モーメントを小さく抑えることができる。このため、開閉モータ4を小型化し、走行ロボット1の軽量化を図ることができる。
また、本実施形態の走行ロボット1においては、ベースフレーム2に固定されると共に可動ユニット3を回動する動力を生成する開閉モータ4と、ウォームギアを有すると共に可動ユニット3に接続され、開閉モータ4で生成された動力を可動ユニット3に伝達する開閉動力伝達機構5とを備えている。このため、開閉モータ4を停止した場合であっても、ウォームギアのセルフロック機能により、開脚姿勢の可動ユニット3が意図せずに閉脚姿勢となることを防止することができる。
また、本実施形態の走行ロボット1においては、ベースフレーム2に固定されるバッテリ6を備え、ベースフレーム2の前後方向から見て、ベースフレーム2の中心に対して一方側に開閉モータ4が設置され、他方側にバッテリ6が設置されている。このため、本実施形態の走行ロボット1においては、ベースフレーム2に支持される重量物が左右に分かれて配置されることになり、重量バランスを高め、走行時の安定性を向上させることができる。
また、本実施形態の走行ロボット1においては、ベースフレーム2の下方に配置されるようにベースフレーム2に支持される補助輪8を備えている。このため、本実施形態の走行ロボット1においては、レールRに沿って走行する場合に、補助輪8がレールRの頭部に当接し、走行上の安定性を向上させることができる。
なお、多くの地域でレールRの頭部の形状は略同一とされている。このため、本実施形態の走行ロボット1は、様々な地域で使用される電車の線路に容易に装着することができる。さらに、閉脚姿勢時の可動ユニット3のベースフレーム2に対する回動角度は変更することができる。このため、レールRの頭部の形状が異なる場合であっても、閉脚姿勢時の可動ユニット3のベースフレーム2に対する回動角度を変更することで車輪3fを頭部の側面に当接させることができる。したがって、本実施形態の走行ロボット1によれば、レールRの頭部の形状が異なる場合であっても、装着することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、走行ロボット1がレールRに装着され、レールRに沿って移動される構成を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、走行ロボット1を工場等の配管に装着し、配管に沿って移動される構成を採用することも可能である。このような場合であっても、本発明の走行ロボットによれば、可動ユニット3を開脚姿勢とすることにより、配管から外れて走行することも可能となる。このため、例えば苛酷事故が生じた発電プラントにおいて、作業者が近づけないような領域の観察を本発明の走行ロボットにより行うことも可能である。
また、上記実施形態の走行ロボット1に対して、カメラ等の撮像装置、各種センサ、マニピュレータ等を装着することもできる。これにより、周囲の撮像や周囲のデータを収集することができ、また簡易な作業を実施することが可能となる。また、走行ロボット1の正面側あるいは背面側に走行の妨げとなる異物を排除する排障器等を設置しても良い。
また、上記実施形態の走行ロボット1は、1台のみで移動される構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の走行ロボットを連動させて動作することもできる。例えば、2本で一対のレールの各々に走行ロボットを装着して同速で移動させ、2つの走行ロボットで1つの物を搬送する構成を採用することも可能である。