図1は本発明の実施形態に係るショベル(掘削機)の側面図である。ショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載される。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられる。エンドアタッチメントとして、法面用バケット、浚渫用バケット等が用いられてもよい。
ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例として掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられる。掘削アタッチメントには、バケットチルト機構が設けられてもよい。
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサS1は水平面に対する傾斜を検出して上部旋回体3に対するブーム4の回動角度を検出する加速度センサである。
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出する。本実施形態では、アーム角度センサS2は水平面に対する傾斜を検出してブーム4に対するアーム5の回動角度を検出する加速度センサである。
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出する。本実施形態では、バケット角度センサS3は水平面に対する傾斜を検出してアーム5に対するバケット6の回動角度を検出する加速度センサである。掘削アタッチメントがバケットチルト機構を備える場合、バケット角度センサS3はチルト軸回りのバケット6の回動角度を追加的に検出する。
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ等であってもよい。
上部旋回体3には、運転操縦部としての操作装置26などが設けられ、該操作装置26など覆うキャビン10が設けられている。上部旋回体3には、更にエンジン11等の動力源が搭載される。上部旋回体3には、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5が取り付けられる。また、キャビン10内には施工支援装置としてのカメラS6が配置される。更に、通信装置S7及び測位装置S8が取り付けられてもよい。
機体傾斜センサS4は水平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は上部旋回体3の前後軸及び左右軸回りの傾斜角を検出する2軸加速度センサである。なお、上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交してショベルの旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。
旋回角速度センサS5は、例えばジャイロセンサであり、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。なお、旋回角速度センサS5は、レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。
カメラS6は、ショベルの周辺の画像を取得するステレオ撮影可能な撮像装置である。本実施形態では、カメラS6はキャビン10内の前側(進行方向側)上方位置に取り付けられる1又は複数台のステレオカメラである。カメラS6は単眼カメラであってもよい。この場合、カメラS6は、撮像位置を僅かに異ならせて撮像した2つのカメラ画像をステレオペア画像とする。但し、本実施形態ではカメラS6を、地形形状取得装置としてのステレオカメラS6と記載する。ステレオカメラS6は、キャビン10の本体(フレーム体)に対して固定されている。
なお、撮像位置の移動は、例えば、上部旋回体3の旋回によって実現され、且つ、ジャイロセンサ、GNSS(Global Navigation Satellite System)等を用いて測定される。
通信装置S7は、ショベルと外部との間の通信を制御する装置である。通信装置S7は、例えば、GNSS等の測量システムとショベルとの間の無線通信を制御する。ショベルは、通信装置S7を用いることで無線通信を介して目標施工面に関する情報等を含む設計データを取得できる。但し、ショベルは、半導体メモリ等を用いて設計データを取得してもよい。
測位装置S8は、ショベルの位置及び向きを測定する装置である。本実施形態では、測位装置S8は、電子コンパスを組み込んだGNSS受信機であり、ショベルの存在位置の緯度、経度、高度を測定し、且つ、ショベルの向きを測定する。
キャビン10内には、入力装置D1、音声出力装置D2、表示装置D3、記憶装置D4、ゲートロックレバーD5、コントローラ30、及びマシンガイダンス装置50が設置される。
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部として機能する。本実施形態では、コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成される。コントローラ30の各種機能は、CPUが内部メモリに格納されたプログラムを実行することで実現される。
マシンガイダンス装置50は、ショベルの操作をガイドする。本実施形態では、マシンガイダンス装置50は、例えば、操作者が設定した目標施工面とバケット6の先端(爪先)位置との鉛直方向における距離を視覚的に且つ聴覚的に操作者に報知する。これにより、マシンガイダンス装置50は操作者によるショベルの操作をガイドする。なお、マシンガイダンス装置50は、その距離を視覚的に操作者に知らせるのみであってもよく、聴覚的に操作者に知らせるのみであってもよい。具体的には、マシンガイダンス装置50は、コントローラ30と同様、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成される。マシンガイダンス装置50の各種機能はCPUが内部メモリに格納されたプログラムを実行することで実現される。マシンガイダンス装置50は、コントローラ30とは別個に設けられてもよく、或いは、コントローラ30に組み込まれていてもよい。
入力装置D1は、ショベルの操作者がマシンガイダンス装置50に各種情報を入力するための装置である。本実施形態では、入力装置D1は、表示装置D3の周囲に取り付けられるメンブレンスイッチである。入力装置D1としてタッチパネル等が用いられてもよい。
音声出力装置D2は、マシンガイダンス装置50からの音声出力指令に応じて各種音声情報を出力する。本実施形態では、音声出力装置D2として、マシンガイダンス装置50に直接接続される車載スピーカが利用される。なお、音声出力装置D2として、ブザー等の警報器が利用されてもよい。
表示装置D3は、マシンガイダンス装置50からの指令に応じて各種画像情報を出力する。本実施形態では、表示装置D3として、マシンガイダンス装置50に直接接続される車載液晶ディスプレイが利用される。
記憶装置D4は、各種情報を記憶するための装置である。本実施形態では、記憶装置D4として、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体が用いられる。記憶装置D4は、マシンガイダンス装置50等が出力する各種情報を記憶する。
ゲートロックレバーD5は、ショベルが誤って操作されるのを防止する機構である。本実施形態では、ゲートロックレバーD5は、キャビン10のドアと運転席との間に配置される。キャビン10から操作者が退出できないようにゲートロックレバーD5が引き上げられた場合に、各種操作装置は操作可能となる。一方、キャビン10から操作者が退出できるようにゲートロックレバーD5が押し下げられた場合には、各種操作装置は操作不能となる。
図2は、図1のショベルの駆動系の構成例を示す図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細実線でそれぞれ示される。
エンジン11はショベルの動力源である。本実施形態では、エンジン11は、エンジン負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を採用したディーゼルエンジンである。エンジン11における燃料噴射量、燃料噴射タイミング、ブースト圧等は、エンジンコントローラユニット(ECU)D7により制御される。
エンジン11には油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続される。メインポンプ14には高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17が接続される。
コントロールバルブ17は、ショベルの油圧系の制御を行う油圧制御装置である。右側走行用油圧モータ、左側走行用油圧モータ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、旋回用油圧モータ等の油圧アクチュエータは、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。なお、旋回用油圧モータは旋回用電動発電機であってもよい。
パイロットポンプ15にはパイロットラインを介して操作装置26が接続される。操作装置26はレバー及びペダルを含む。また、操作装置26は、油圧ライン及びゲートロック弁D6を介してコントロールバルブ17に接続される。
ゲートロック弁D6は、コントロールバルブ17と操作装置26とを接続する油圧ラインの連通・遮断を切り換える。本実施形態では、ゲートロック弁D6は、コントローラ30からの指令に応じて油圧ラインの連通・遮断を切り換える電磁弁である。コントローラ30は、ゲートロックレバーD5が出力する状態信号に基づいてゲートロックレバーD5の状態を判定する。そして、コントローラ30は、ゲートロックレバーD5が引き上げられた状態にあると判定した場合に、ゲートロック弁D6に対して連通指令を出力する。連通指令を受けると、ゲートロック弁D6は開いて油圧ラインを連通させる。その結果、操作装置26に対する操作者の操作が有効となる。一方、コントローラ30は、ゲートロックレバーD5が引き下げられた状態にあると判定した場合に、ゲートロック弁D6に対して遮断指令を出力する。遮断指令を受けると、ゲートロック弁D6は閉じて油圧ラインを遮断する。その結果、操作装置26に対する操作者の操作が無効となる。
圧力センサ29は、操作装置26の操作内容を圧力の形で検出する。圧力センサ29は、検出値をコントローラ30に対して出力する。
また、図2はコントローラ30と表示装置D3との接続関係を示す。本実施形態では、表示装置D3はマシンガイダンス装置50を介してコントローラ30に接続される。なお、表示装置D3、マシンガイダンス装置50、及びコントローラ30は、CAN等の通信ネットワークを介して接続されてもよく、専用線を介して接続されてもよい。
表示装置D3は画像を生成する変換処理部D3aを含む。本実施形態では、変換処理部D3aは、ステレオカメラS6の出力に基づいて表示用のカメラ画像を生成する。そのため、表示装置D3は、マシンガイダンス装置50に接続されたステレオカメラS6の出力をマシンガイダンス装置50を介して取得する。但し、ステレオカメラS6は、表示装置D3に接続されてもよく、コントローラ30に接続されてもよい。
また、変換処理部D3aは、コントローラ30又はマシンガイダンス装置50の出力に基づいて表示用の画像を生成する。本実施形態では、変換処理部D3aは、コントローラ30又はマシンガイダンス装置50が出力する各種情報を画像信号に変換する。なお、コントローラ30が出力する情報は、例えば、エンジン冷却水の温度を示すデータ、作動油の温度を示すデータ、燃料の残量を示すデータ等を含む。また、マシンガイダンス装置50が出力する情報は、バケット6の先端(爪先)位置を示すデータ、作業対象の法面の向きを示すデータ、ショベルの向きを示すデータ、ショベルを法面に正対させるための操作方向を示すデータ等を含む。
なお、変換処理部D3aは、表示装置D3が有する機能としてではなく、コントローラ30又はマシンガイダンス装置50が有する機能として実現されてもよい。
また、表示装置D3は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。なお、蓄電池70はエンジン11のオルタネータ11a(発電機)で発電した電力で充電される。蓄電池70の電力は、コントローラ30及び表示装置D3以外のショベルの電装品72等にも供給される。また、エンジン11のスタータ11bは、蓄電池70からの電力で駆動され、エンジン11を始動する。
エンジン11は、エンジンコントローラユニットD7により制御される。エンジンコントローラユニットD7からは、エンジン11の状態を示す各種データ(例えば、水温センサ11cで検出される冷却水温(物理量)を示すデータ)がコントローラ30に常時送信される。したがって、コントローラ30は一時記憶部(メモリ)30aにこのデータを蓄積しておき、必要なときに表示装置D3に送信することができる。
また、コントローラ30には以下のように各種のデータが供給され、コントローラ30の一時記憶部30aに格納される。
まず、可変容量式油圧ポンプであるメインポンプ14のレギュレータ14aから斜板傾転角を示すデータがコントローラ30に供給される。また、メインポンプ14の吐出圧力を示すデータが、吐出圧力センサ14bからコントローラ30に送られる。これらのデータ(物理量を表すデータ)は一時記憶部30aに格納される。また、メインポンプ14が吸入する作動油が貯蔵されたタンクとメインポンプ14との間の管路には油温センサ14cが設けられており、その管路を流れる作動油の温度を表すデータが油温センサ14cからコントローラ30に供給される。
また、燃料収容部55における燃料収容量検出部55aから燃料収容量を示すデータがコントローラ30に供給される。本実施形態では、燃料収容部55としての燃料タンクにおける燃料収容量検出部55aとしての燃料残量センサから燃料の残量状態を示すデータがコントローラ30に供給される。
具体的には、燃料残量センサは、液面に追従するフロートと、フロートの上下変動量を抵抗値に変換する可変抵抗器(ポテンショメータ)とで構成される。この構成により、燃料残量センサは、表示装置D3で燃料の残量状態を無段階表示させることができる。なお、燃料収容量検出部の検出方式は、使用環境等に応じて適宜選択され得るものであり、燃料の残量状態を段階表示させることができる検出方式が採用されてもよい。
また、操作装置26を操作した際にコントロールバルブ17に送られるパイロット圧が、圧力センサ29で検出され、検出したパイロット圧を示すデータがコントローラ30に供給される。
また、本実施形態では、図2に示すように、ショベルは、キャビン10内にエンジン回転数調整ダイヤル75を備える。エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン11の回転数を調整するためのダイヤルであり、本実施形態ではエンジン回転数を4段階で切り換えできるようにする。また、エンジン回転数調整ダイヤル75からは、エンジン回転数の設定状態を示すデータがコントローラ30に常時送信される。また、エンジン回転数調整ダイヤル75は、SPモード、Hモード、Aモード、及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えできるようにする。なお、図2は、エンジン回転数調整ダイヤル75でHモードが選択された状態を示す。
SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベルを稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリングモードは、エンジン11をアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数を利用する。そして、エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定された回転数モードのエンジン回転数で一定に回転数制御される。
次に、図3を参照しながら、マシンガイダンス装置50の各種機能要素について説明する。図3は、マシンガイダンス装置50の構成例を示す機能ブロック図である。
本実施形態では、コントローラ30は、ショベル全体の動作の制御に加えて、マシンガイダンス装置50によるガイダンスを行うか否かを制御する。具体的には、コントローラ30は、ゲートロックレバーD5の状態、圧力センサ29からの検出信号等に基づいてマシンガイダンス装置50によるガイダンスを行うか否かを制御する。
次に、マシンガイダンス装置50について説明する。本実施形態では、マシンガイダンス装置50は、例えば、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、入力装置D1、及びコントローラ30から出力される各種信号及びやデータを受信する。そして、マシンガイダンス装置50は、受信した信号及びデータに基づいてアタッチメント(例えば、バケット6)の実際の動作位置を算出する。そして、マシンガイダンス装置50は、アタッチメントの実際の動作位置と目標動作位置との距離に応じて、音声出力装置D2及び表示装置D3に警報指令を送信し、通報を発令させる。
マシンガイダンス装置50は、様々な機能を担う機能部を含む。本実施形態では、マシンガイダンス装置50は、アタッチメントの動作をガイダンスするための機能部として、傾斜角算出部501、高さ算出部503、比較部504、警報制御部505、及びガイダンスデータ出力部506を含む。また、マシンガイダンス装置50は、ショベル周辺の地形を計測するための機能部として、ステレオペア画像取得部507、地形データ生成部508、座標変換部509、座標修正部510、及び地形データ表示部511を含み、ショベルの計測装置として機能する。
傾斜角算出部501は、機体傾斜センサS4からの検出信号に基づいて、水平面に対する上部旋回体3の傾斜角(ショベルの傾斜角)を算出する。すなわち、傾斜角算出部501は、機体傾斜センサS4からの検出信号を用いて、ショベルの傾斜角を算出する。
高さ算出部503は、傾斜角算出部501が算出した傾斜角と、センサS1〜S3の検出信号から算出されたブーム4、アーム5、バケット6の角度とから、エンドアタッチメントの作業部位としてのバケット6の先端(爪先)の高さを算出する。本実施形態では、バケット6の先端で掘削を行うため、バケット6の先端(爪先)はエンドアタッチメントの作業部位に相当する。一方、バケット6の背面で土砂をならすような作業をするときには、バケット6の背面がエンドアタッチメントの作業部位に相当する。また、バケット6以外のエンドアタッチメントとしてブレーカを用いた場合には、ブレーカの先端がエンドアタッチメントの作業部位に相当する。
比較部504は、高さ算出部503が算出したバケット6の先端(爪先)の高さと、ガイダンスデータ出力部506から出力されるガイダンスデータで示されるバケット6の先端(爪先)の目標高さとを比較する。ここで、目標高さは、予め入力された設計図面とショベルの現在位置と作業姿勢とから算出されるようにしてもよい。また、設定された過去のショベルの爪先位置と、入力された目標深さと、角度と現在の作業姿勢(現在の爪先位置)から算出されるようにしてもよい。
警報制御部505は、比較部504での比較結果に基づいて、通報が必要と判断した場合には通報指令を音声出力装置D2及び表示装置D3の両方又は一方に送信する。音声出力装置D2及び表示装置D3は、通報指令を受けると所定の通知音を発してショベルの操作者に通報する。この通報は、アタッチメントの実際の動作位置と目標動作位置との距離に応じて多段階に設定してもよい。
ガイダンスデータ出力部506は、上述のように、マシンガイダンス装置50の記憶装置に予め格納されていたガイダンスデータからバケット6の目標高さのデータを抽出して比較部504に対して出力する。この際、ガイダンスデータ出力部506は、ショベルの傾斜角に対応するバケット6の目標高さのデータを出力する。
ステレオペア画像取得部507はステレオペア画像を取得する機能要素である。ステレオペア画像は、三角測量の手法を用いてステレオカメラS6と測定対象となる点(以下、「測定点」とする。)との距離を導き出すために用いる1対のカメラ画像である。本実施形態では、ステレオペア画像取得部507は、ステレオカメラS6が出力する1対のカメラ画像をステレオペア画像として取得する。また、ステレオカメラS6の取り付け位置、取り付け角度、焦点距離等のステレオカメラS6に関するパラメータは予め記憶装置D4等に記憶されている。ステレオペア画像取得部507は、それらパラメータを必要に応じて記憶装置D4等から読み出す。
ここで、図4及び図5を参照し、ステレオカメラS6の詳細について説明する。図4は、ステレオペア画像とステレオカメラS6との関係を示す上面図である。また、図5は、ステレオカメラS6の取り付け位置を示すショベルの左側面図である。
図4に示すように、ステレオカメラS6がショベルに取り付けられている場合、ステレオペア画像取得部507は、ステレオカメラS6における1対の撮像部S61、S62のそれぞれが同時に撮像した1対のカメラ画像をステレオペア画像として取得する。そして、取得した1対のカメラ画像のそれぞれにおける測定点Pに対応する画素の間のズレと、撮像部S61と撮像部S62との間の距離Lとに基づいて三角測量の手法を用いてステレオカメラS6と測定点Pとの距離を取得する。
また、図4では、撮像部S61の撮像範囲は、破線で囲まれた撮像範囲Raで表される。また、撮像部S62の撮像範囲は、破線で囲まれた撮像範囲Rbで表される。また、撮像範囲Raと撮像範囲Rbとの重複撮像範囲Rはドットパターンでハッチングされている。一点鎖線で囲まれる測定対象範囲Xは測定点の存在範囲を示す。本実施形態では、測定対象範囲Xは各カメラ画像の中心部分に限定される。各カメラ画像の周縁部は口径食、歪み等の影響により距離を正確に導き出せない場合があるためである。但し、本発明は測定対象範囲Xが周縁部を含む構成を除外しない。
また、ステレオペア画像取得部507は、所定の取得条件が満たされる度にステレオペア画像を取得する。所定の取得条件は、例えば、上部旋回体3の旋回角度、ショベルの移動距離等に基づいて設定される。本実施形態では、ステレオペア画像取得部507は、上部旋回体3が所定の旋回角度αだけ旋回する毎にステレオペア画像を取得する。旋回角度は、例えば、旋回角速度センサS5の出力から導き出される。また、ステレオペア画像取得部507は、ショベルが所定の距離Dだけ移動(走行)する毎にステレオペア画像を取得してもよい。移動距離は、例えば、測位装置S8の出力から導き出される。或いは、ステレオペア画像取得部507は、所望の測定点の画像を含むステレオペア画像が効率的に取得できるように、取得条件となる旋回角度、移動距離等に関する閾値を動的に決定してもよい。また、ステレオペア画像取得部507は、所定の時間間隔毎にステレオペア画像を取得してもよく、ショベルの操作者による操作入力(例えばスイッチ操作)に応じて任意のタイミングでステレオペア画像を取得してもよい。計測装置としてのマシンガイダンス装置50は、このように取得したステレオペア画像から、施工の途中、或いは、施工後において、ショベル周辺の地形情報を計測する。また、地形情報だけでなく、ステレオカメラS6により撮影された画像には、通常、アタッチメントが含まれている。このため、ステレオカメラS6の撮像画像に基づいて画像アタッチメントの動きを取得してもよい。更に、ステレオカメラS6の撮像画像中に周辺の設置物が含まれている場合には、撮影された設置物の設置位置情報を地形情報と関連づけて記録させてもよい。更に、ステレオカメラS6により撮影された画像を用いて、作業対象物の種類(土砂、岩等)を判断し、作業内容を推定するようにしてもよい。
次に、図6〜図9を参照しながらステレオカメラS6を搭載したキャビン10の構成を説明する。
図6は、可動ウィンドウとしてのフロントウィンドウが閉じている状態を示す図である。(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図を示す。図7は、フロントウィンドウが開いている途中の状態を示す図である。(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図を示す。図8は、フロントウィンドウが開いた状態を示す図である。(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図を示す。図9は、図6(A)のI−I矢視断面図を示す。なお左側面図は、操作者視点であるキャビン10の前方向(アタッチメントの延在方向)に対しキャビン10の内部を見た図を示している。また、図示した左側面図は説明の関係上キャビン10の左側面に存在するドア部などを省略している。
キャビン10は、運転操縦部としての操作装置26、運転席60、入力装置D1、表示装置D3、ゲートロックレバーD5などを有している。また図示することは省略したが、キャビン10には、図1に示すコントローラ30、マシンガイダンス装置50などが搭載されている。
操作装置26は、操作レバー26A、走行レバー26B、ペダル26Cなどを有している。運転席60の左側下方位置には、ゲートロックレバーD5が設けられている。キャビン10から操作者が退出できないようにゲートロックレバーD5が引き上げられた場合に、各種操作装置は操作可能となる。一方、キャビン10から操作者が退出できるようにゲートロックレバーD5が押し下げられた場合には、各種操作装置は操作不能となる。運転席60は、アームレスト61を有している。
キャビン10は、フレーム体110を有している。フレーム体110は、縦フレームと横フレームと繋ぎフレームとを組み合わせて形成されている。縦フレームは、前方側(進行方向側、Z1側)に位置する左右一対の縦フレーム111と、後方側(Z2側)に位置する左右一対の縦フレーム112を有している。横フレームは、前方側の左右の縦フレーム111間に横架される横フレーム113と、後方側の左右の縦フレーム112間に横架される後方側の横フレーム114を有している。前方側の左右一対の縦フレーム111と後方側の左右一対の縦フレーム112とは、それぞれ左右一対の繋ぎフレーム115で連結されている。
キャビン10は、フレーム体110により形成された前面枠に窓面前部80を配置している。またキャビン10は、フレーム体110により形成された左右枠にそれぞれサイドウィンドウ90を配置している。更にキャビン10は、フレーム体110により形成された上面枠にヘッドウィンドウ100を配置している。
窓面前部80は、下部フロントウィンドウ81、フロントウィンドウ82、上部フロントウィンドウ83を有している。
フロントウィンドウ82は、フロントウィンドウ82をスライド移動可能なスライド機構を有している。本実施形態では、フロントウィンドウ82をスライドさせた際に、キャビン10内部に収納できるように、フロントウィンドウ82と下部フロントウィンドウ81とが分離している。
本実施形態のスライド機構は、左右一対の縦フレーム111の内側面にそれぞれ設けられた左右一対のスライドレール111aと、左右の繋ぎフレーム115の内側面にそれぞれ設けられた左右一対のスライドレール115aとを有している。フロントウィンドウ82は、左右のスライドレール111a間、及び左右のスライドレール115a間に配置される。スライドレール111aとスライドレール115aは、レール溝が連続するように形成され、フロントウィンドウ82の端部等に設けられた摺動部(不図示)がスライドレール111aからスライドレール115aに移動可能な構成とされてよい。摺動部はローラなどであってよい。
フロントウィンドウ82は、閉鎖時において下部フロントウィンドウ81と上部フロントウィンドウ83との間に配置される。フロントウィンドウ82は、開くとき下部フロントウィンドウ81と上部フロントウィンドウ83から離脱し、開方向(Y1側)へスライド移動する。フロントウィンドウ82は、閉めるとき閉方向(Y2側)へスライド移動して、下部フロントウィンドウ81と上部フロントウィンドウ83との間に配置される。
フロントウィンドウ82は、上部中央位置に切欠き部82aが形成されている。切欠き部82aに形成されるフロントウィンドウ82の切欠きの形状は、地形形状取得装置としてのステレオカメラS6の前面側の形状よりも大きい。フロントウィンドウ82は、上部左側位置と上部右側位置とに取っ手部82bがそれぞれ設けられている。取っ手部82bは、左右の何れか一方にのみ設けられてよい。操作者は、取っ手部82bを掴んでフロントウィンドウ82を開方向又は閉方向へスライドさせる。取っ手部82bは、フロントウィンドウ82を下部フロントウィンドウ81と上部フロントウィンドウ83との間に固定するロック機構を有してよい。
また、フロントウィンドウ82は、下部中央位置に切欠き部82cが形成されている。切欠き部82cにより形成されるフロントウィンドウ82の切欠きの形状は、ステレオカメラS6の底面の形状よりも大きい。切欠き部82cは、フロントウィンドウ82を開方向へスライド移動させてキャビン10の上面と平行となるように配置した際に、図8(B)に示すようにステレオカメラS6とフロントウィンドウ82との干渉を回避する。
上部フロントウィンドウ83は、フロントウィンドウ82の切欠き部82aの位置に配置される。上部フロントウィンドウ83は、上縁部を横フレーム113に直接固定されている。上部フロントウィンドウ83の形状は、ステレオカメラS6の前面側の形状よりも大きい。
ステレオカメラS6は、フロントウィンドウ82の切欠き部82aと対応する位置に配置されている。本実施形態ではステレオカメラS6は、切欠き部82aに配置された上部フロントウィンドウ83の内側に配置される。したがって上部フロントウィンドウ83により、ステレオカメラS6が保護される。ステレオカメラS6は、キャビン10を構成する横フレーム113の略中央位置に取付部材などを介してキャビン10の本体(横フレーム113)に対して固定される。
上部フロントウィンドウ83とフロントウィンドウ82は、図9(A)、図9(B)に示すようにその間にシール部材Sが介在されている。シール部材S1は、シール部材S1とシール部材S2を含む。シール部材S1は、上部フロントウィンドウ83の下縁部に設けられている。シール部材S2は、フロントウィンドウ82の上縁部に設けられている。シール部材S1は、前方側(Z1側)に庇部S1hを有する。庇部S1hは、雨水などがシール部材S1とS2の間から進入することを防止する。シール部材S1とシール部材S2とは、図9(B)に示すように互いに離間することが可能な構成とされている。
下部フロントウィンドウ81は、フレーム体110などに直接固定されている。下部フロントウィンドウ81は、フロントウィンドウ82の切欠き部82cと対応する凸部81aを有している。下部フロントウィンドウ81とフロントウィンドウ82との間は、図9に示したシール部材が介在されていてよい。
フロントウィンドウ82は、閉鎖時において図9(A)に示すように上部フロントウィンドウ83とシール部材S1を挟んで面一に配置されて、キャビン10の窓面前部80を構成する。操作者が取っ手部82bを開操作してフロントウィンドウ82を開く際には、図9(B)に示すように、該フロントウィンドウ82は後方側(Z2側)へ移動して、上部フロントウィンドウ83から離脱する。このとき、フロントウィンドウ82は、下部フロントウィンドウ81からも離脱する。開操作は、フロントウィンドウ82の固定を解除するロック解除操作とフロントウィンドウ82を上方へスライド移動させる操作を指す。
ここで再び図6〜図9を参照しながら、フロントウィンドウ82の開閉動作について説明する。
フロントウィンドウ82は、閉鎖時には図6に示すように下部フロントウィンドウ81と上部フロントウィンドウ83との間に配置されて窓面前部80を構成する。このとき上部フロントウィンドウ83の下縁部とフロントウィンドウ82の上縁部は、図9(A)に示すようにシール部材Sにより連結されている。
次に、操作者がフロントウィンドウ82の取っ手部82bを掴んで開操作すると、フロントウィンドウ82は、図7に示すように開方向へスライド移動する。このときフロントウィンドウ82は、図9(B)に示すG1、G2方向に移動するので、ステレオカメラS6と干渉することが無い。
フロントウィンドウ82は、スライド移動されていくと図8に示すようにキャビン10の上面と平行となる位置に配置される。このときキャビン10の正面は、図8(A)に示すようにフロントウィンドウ82の配置されていた部分が開放状態となっている。また、フロントウィンドウ82は、図8(B)に示すように切欠き部82cによりステレオカメラS6との干渉を避けることができている。
上述したようにフロントウィンドウ82は、上部中央位置に切欠き部82aを設け、切欠き部82aの位置に配置された上部フロントウィンドウ83の内側にステレオカメラS6を配置した。したがって、フロントウィンドウ82は、ステレオカメラS6と干渉することなく解放される。また、フロントウィンドウ82は、下部中央位置に切欠き部82cを設けた。したがって、フロントウィンドウ82を開方向へスライド移動させてキャビン10の上面と平行となる位置に配置しても、図8に示すようにフロントウィンドウ82とステレオカメラS6との干渉が回避される。
次に、図10を参照しながら本発明のショベルの別の実施形態について説明する。図10は、本発明の他の実施形態に係るショベルのフロントウィンドウが開いた状態を示す図である。(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図を示す。以下、図6〜図9に示す構成と共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。
本実施形態のショベルは、窓面前部800の内側面に投影画像を表示させる投影装置(プロジェクタ)S9をキャビン10内に有する。投影装置S9は、窓面前部800の内側面に施工を支援する情報を投影してよい。
投影装置S9は、キャビン10内の後方側(Z2側)の上方位置(Y1側)に設置されている。投影装置S9は、後方側(Z2側)の横フレーム114に支持部材を介して取付けられてよい。
窓面前部800は、下部フロントウィンドウ810、フロントウィンドウ820、上部フロントウィンドウ830を有している。
フロントウィンドウ820は、フロントウィンドウ820をスライド移動可能なスライド機構を有している。スライド機構は、図6〜図9で説明した機構と同じであるため説明は省略する。
フロントウィンドウ820は、閉鎖時において下部フロントウィンドウ810と上部フロントウィンドウ830の間に配置される。フロントウィンドウ820は、開くとき下部フロントウィンドウ810と上部フロントウィンドウ830から離脱し、開方向(Y1側)へスライド移動する。フロントウィンドウ820は、閉めるとき閉方向(Y2側)へスライド移動して下部フロントウィンドウ810と上部フロントウィンドウ830の間に配置される。
本実施形態のフロントウィンドウ820は、上部中央位置に切欠き部820aが形成されている。切欠き部820aに形成されるフロントウィンドウ820の切欠きの形状は、投影装置S9の底面の形状よりも大きい。投影装置S9は、切欠き部820aと対応した位置に配置される。切欠き部820aは、フロントウィンドウ820を開方向へスライド移動させてキャビン10の上面と平行となるように配置した際に、投影装置S9とフロントウィンドウ820との干渉を回避する。
フロントウィンドウ820は、上部左側位置と上部右側位置とに取っ手部820bが形成されている。取っ手820bは、左右の何れか一方にのみ取付けられていてよい。フロントウィンドウ820は、下縁部をフラットな形状に形成している。
上部フロントウィンドウ830は、前述した上部フロントウィンドウ83と同様の構成とされており共通する説明は省略する。図示例の上部フロントウィンドウ830には、内側にステレオカメラS6が配置されていないが、ステレオカメラS6が配置されていてもよい。その場合、フロントウィンドウ820には、下部中央位置に切欠き部が形成される。これは、フロントウィンドウ820を開方向へスライド移動させてキャビン10の上面と平行となる位置に配置した際に、フロントウィンドウ820とステレオカメラS6との干渉を回避するためである。
上部フロントウィンドウ830の下縁部とフロントウィンドウ820の上縁部との間には、図9に示すようなシール部材Sが介在されている。
下部フロントウィンドウ810は、前述した下部フロントウィンドウ81と略同様の構成とされており共通する説明は省略する。下部フロントウィンドウ810は、上縁部がフロントウィンドウ820の下縁部と同様にフラットに形成されている。なお下部フロントウィンドウ810は、フロントウィンドウ820の下部中央位置に切欠き部が形成されている場合には、該切欠き部に対応する凸部を有する。
フロントウィンドウ820は、操作者が取っ手部820bを掴んで開操作すると、開方向にスライド移動する。
フロントウィンドウ820は、開方向へスライド移動されていくと図10に示すようにキャビン10の上面と平行となる位置に配置される。このときキャビン10の正面は、図10(A)に示すようにフロントウィンドウ820の配置されていた部分が開放状態となっている。また、フロントウィンドウ820は、図10(B)に示すように切欠き部820aにより投影装置S9と干渉しない。
上述したように本実施形態のフロントウィンドウ820は、上部中央位置に切欠き部820aを設け、切欠き部820aに対応した位置に投影装置S9を配置した。したがって、フロントウィンドウ820は、投影装置S9と干渉することなく開閉される。上述した実施形態では、フロントウィンドウ82、820の上部中央位置にのみ切欠き82a,820aを形成した実施例を示したが、フロントウィンドウ82、820の上部中央位置だけでなく、上部中央位置から側方端部にわたって、上部全体を切欠くようにしてもよい。この場合、フロントウィンドウ82、820と上部フロントウィンドウ83、830の形状が単純になるため、製作コストが低減できる。同様に、フロントウィンドウ82、820の下部中央位置だけでなく、下部中央位置から側方端部にわたって、スライドさせた際に機器との干渉を防止できるよう、下部全体を切欠くようにしてもよい。この場合、下部フロントウィンドウ81、810の形状が単純になるため、製作コストが低減できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施形態では、施工支援装置としてステレオカメラS6と投影装置S9を実装した例を示したがこの限りではない。例えばレーザ距離計やヘッドアップディスプレイ装置などであってよい。