JP6638867B1 - 被覆鋼板 - Google Patents

被覆鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP6638867B1
JP6638867B1 JP2019532167A JP2019532167A JP6638867B1 JP 6638867 B1 JP6638867 B1 JP 6638867B1 JP 2019532167 A JP2019532167 A JP 2019532167A JP 2019532167 A JP2019532167 A JP 2019532167A JP 6638867 B1 JP6638867 B1 JP 6638867B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
inorganic pigment
inorganic
coating film
steel sheet
pigment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019532167A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2020121431A1 (ja
Inventor
邦彦 東新
邦彦 東新
史生 柴尾
史生 柴尾
靖洋 森
靖洋 森
学 大谷
学 大谷
長瀬 孫則
孫則 長瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Application granted granted Critical
Publication of JP6638867B1 publication Critical patent/JP6638867B1/ja
Publication of JPWO2020121431A1 publication Critical patent/JPWO2020121431A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B15/00Layered products comprising a layer of metal
    • B32B15/04Layered products comprising a layer of metal comprising metal as the main or only constituent of a layer, which is next to another layer of the same or of a different material
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B15/00Layered products comprising a layer of metal
    • B32B15/18Layered products comprising a layer of metal comprising iron or steel
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B27/00Layered products comprising a layer of synthetic resin
    • B32B27/06Layered products comprising a layer of synthetic resin as the main or only constituent of a layer, which is next to another layer of the same or of a different material
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B27/00Layered products comprising a layer of synthetic resin
    • B32B27/18Layered products comprising a layer of synthetic resin characterised by the use of special additives
    • B32B27/20Layered products comprising a layer of synthetic resin characterised by the use of special additives using fillers, pigments, thixotroping agents
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B27/00Layered products comprising a layer of synthetic resin
    • B32B27/36Layered products comprising a layer of synthetic resin comprising polyesters
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B9/00Layered products comprising a layer of a particular substance not covered by groups B32B11/00 - B32B29/00
    • B32B9/04Layered products comprising a layer of a particular substance not covered by groups B32B11/00 - B32B29/00 comprising such particular substance as the main or only constituent of a layer, which is next to another layer of the same or of a different material
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C25ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
    • C25DPROCESSES FOR THE ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PRODUCTION OF COATINGS; ELECTROFORMING; APPARATUS THEREFOR
    • C25D9/00Electrolytic coating other than with metals
    • C25D9/04Electrolytic coating other than with metals with inorganic materials
    • C25D9/08Electrolytic coating other than with metals with inorganic materials by cathodic processes
    • C25D9/10Electrolytic coating other than with metals with inorganic materials by cathodic processes on iron or steel

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Ceramic Engineering (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Abstract

本発明の一態様に係る被覆鋼板は、鋼板と、Zn、およびV又はZrを含有する無機皮膜と、膜厚が5超〜20μmであり、バインダー樹脂と、粒径が10〜500nmである無機顔料Aと、粒径が1000〜10000nmである無機顔料Bと、を含む塗膜と、を有する。無機顔料Aおよび無機顔料Bの少なくとも一方がPを含有する。塗膜の無機顔料Aの体積部と無機顔料Bの体積部との合計量が、塗膜100体積部に対して、5〜50体積部であり、無機顔料Aの体積部(A)と無機顔料Bの体積部(B)との比が、0.5≦(A)/(B)≦2.0である。塗膜の膜厚をtとしたとき、塗膜の圧延方向に垂直な断面で、板幅方向に平行な方向に20μm、板厚方向にtμmの領域で観察される、無機顔料Aの個数が60〜100000個であり、無機顔料Bの個数が2〜50個である。

Description

本発明は、自動車用、家電用、建材用、土木用、機械用、家具用、容器用等に使用される被覆鋼板に関する。
家電用、建材用、自動車用等の外装材として、所望の形状に加工された後に塗装が施された塗装製品や、鋼板表面に塗膜が被覆されたプレコート金属板が使用されている。
一般的に、プレコート鋼板は、機能がそれぞれ異なる複数の塗膜を鋼板表面に塗装されるため、塗膜との密着性に優れることが要求される。多くの場合、プレコート鋼板は、耐食性を有するプライマー層、および意匠性、耐溶剤性などを有するトップ層の2層からなる塗膜を塗装される。例えば、特許文献1には、Znめっき上に、複数の防錆顔料を含有する塗膜を有する塗装鋼板が開示されている。
近年、製造性、経済性の観点から、加工性に優れ、且つ安価に製造することができる着色鋼板の検討がなされている。例えば、特許文献2には、2〜10μmの厚みの、樹脂をベースとした黒色塗膜が形成されたクロメートフリー黒色塗装金属板が開示されている。
日本国特開2008−291160号公報 国際公開第2010/137726号 国際公開第2012/133671号
特許文献1には、化成処理が施された亜鉛メッキ鋼板上に、硬化塗膜が形成されてなる塗装亜鉛メッキ鋼板が開示されている。特許文献1では、複数の防錆顔料を含有する塗膜の上にさらに塗膜が形成されることが前提である。特許文献1において、複数の防錆顔料を含有する塗膜1層だけでは、耐食性を向上させる効果を得ることは難しく、塗膜から多くのZnが溶出することで耐食性に劣る場合があった。
特許文献2に記載のクロメートフリー黒色塗装金属板は、製品形状に加工されるまでの工程や、加工中などに塗膜に傷が付いた際、金属板にも傷が付くことで金属部分が露出すると、金属板の表面において傷が目立つ場合があった。
本発明者らは、鋼板上に、陰極電解処理によって、Znと、V又はZrとを含む硬質な無機皮膜を形成し、その上にさらに塗膜を1層塗布することによって上記課題の解決を図った。すなわち、鋼板上に硬質な無機皮膜を形成させることによって、鋼板まで傷が到達しにくくなり、V又はZrによって耐食性にも優れる被覆鋼板を、安価に製造することで、上記課題の解決を図った。
特許文献3には、ZnとVとを含むめっき層を有する表面処理鋼板が開示されている。
しかしながら、本発明者らは、特許文献3に記載のめっき層や、陰極電解処理によって形成されたZnとV又はZrとを含む無機皮膜は、加熱されると、水を含んだガスを発生することを知見した。更に、本発明者らは、特許文献3に記載のめっき層や、上記無機皮膜上に、さらに塗料を塗布し、加熱して塗膜を形成する場合に、上記めっき層または上記無機皮膜からガスが発生し、そのガスが塗膜を突き破ることで、塗膜を形成した鋼板の意匠性が劣化することを知見した。上記めっき層または上記無機皮膜からガスが発生するのは、めっき層または無機皮膜表面に吸着される水などが原因であると考えられる。意匠性や耐疵付き性、耐溶剤性に優れる被覆鋼板を得るためには、硬化反応(重合反応、縮合反応等)させた塗膜を形成することや塗膜の膜厚を厚くすることが必要である。しかし、本発明者らは、硬化反応させた塗膜を形成する場合や、塗膜の膜厚を厚くする場合に、塗膜の下層から発生したガスが塗膜を突き破る欠陥が顕著に発生することを知見した。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、意匠性、耐疵付き性、耐溶剤性、耐食性、加工性および密着性に優れる被覆鋼板を提供することを目的とする。
上記課題を解決するべく、本発明者らは、無機皮膜上に塗布する塗膜について検討した。塗膜の耐溶剤性を向上させるため、塗膜を硬化反応させた場合、塗膜のガス透過性が低下する場合がある。そこで本発明者らは、塗膜の耐溶剤性および耐食性を維持しつつ、加熱時に塗膜の下層の無機皮膜からガスが発生しても、塗膜に欠陥を発生させない方法について検討した。その結果、所定の平均粒径を有し、且つ平均粒径が異なる少なくとも2種の無機顔料を所定の含有量、所定の比率および所定の個数で塗膜中に含有させることによって、塗膜中のバインダー樹脂と無機顔料との界面をガスが透過することで塗膜のガス透過性が向上し、被覆鋼板の意匠性が向上することを知見した。一方、本発明者らは、塗膜のガス透過性が向上すると、塗膜中のバインダー樹脂と無機顔料との界面における腐食因子の透過性も向上し、被覆鋼板の耐食性が劣ることを知見した。
本発明者らが更に鋭意検討した結果、塗膜中にPを含有する無機顔料を含有させることによって、ガス透過性の高い塗膜であっても、耐食性を向上させることができることを知見した。これは、以下のメカニズムによるためであると考えられる。塗膜が硬化直後に水冷されたときに、塗膜の下層の無機皮膜から発生するガスに含まれる水蒸気のうち一部が冷却されることで水となる。この水に無機顔料中のPが溶出し、溶出したPが水と共に無機皮膜中に浸透することで、無機皮膜のpHが低下する。無機皮膜のpHが低下することで、無機皮膜中のVまたはZrがイオン化される。Pとイオン化されたVまたはZrとが化合することで、無機皮膜と塗膜との界面にリン化合物からなる保護皮膜が形成される。無機皮膜と塗膜との界面に保護皮膜が形成されることによって、無機皮膜中のZnやFeの塗膜への溶出を抑制することができるため、被覆鋼板の耐食性が向上する。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係る被覆鋼板は、鋼板と、
前記鋼板の少なくとも一方の表面に形成され、Zn、およびV又はZrを含有する無機皮膜と、
前記無機皮膜上に形成され、膜厚が5超〜20μmであり、バインダー樹脂と、粒径が10〜500nmである無機顔料Aと、粒径が1000〜10000nmである無機顔料Bと、任意で、粒径が500nm超、1000nm未満である無機顔料C、粒径が10nm未満である無機顔料および粒径が10000nm超である無機顔料と、からなる塗膜と、
を有する被覆鋼板であって、
前記無機顔料Aおよび前記無機顔料Bの少なくとも一方がPを含有し、
前記塗膜の前記無機顔料Aの体積部と前記無機顔料Bの体積部との合計量が、前記塗膜100体積部に対して、5〜50体積部であり、前記無機顔料Aの体積部(A)と前記無機顔料Bの体積部(B)との比が、0.5≦(A)/(B)≦2.0であり、
前記塗膜の前記膜厚をtとしたとき、前記塗膜の圧延方向に垂直な断面で、板幅方向に平行な方向に20μm、板厚方向にtμmの領域で観察される、前記無機顔料Aの個数が60〜100000個であり、前記無機顔料Bの個数が2〜50個であり、前記無機顔料Cの個数が10個以下であり、粒径が10nm未満である前記無機顔料の個数が0〜30個であり、粒径が10000nm超である前記無機顔料の個数が0〜4個である。
(2)上記(1)に記載の被覆鋼板では、前記塗膜中の前記Pを含有する前記無機顔料Aまたは前記無機顔料Bが、さらにMgを含有してもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の被覆鋼板では、前記バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂を含んでもよい。
(4)上記(3)に記載の被覆鋼板では、前記メラミン樹脂が、ブチル化メラミン樹脂であってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の被覆鋼板では、前記バインダー樹脂が、エポキシ樹脂を含んでもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の被覆鋼板では、前記無機皮膜中の、前記Vと前記Znとの質量比であるV/Zn、又は前記Zrと前記Vとの質量比であるZr/Znが、金属換算で0.05〜0.50であってもよい。
本発明に係る上記態様によれば、意匠性、耐疵付き性、耐溶剤性、耐食性、加工性および密着性に優れる被覆鋼板を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る被覆鋼板の断面図である。 同実施形態に係る被覆鋼板の塗膜に含まれる無機顔料の粒径と個数との関係の一例を示す図である。
以下に本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る被覆鋼板10を示す図である。本実施形態に係る被覆鋼板10は、鋼板4の少なくとも一方の表面に、陰極電解処理によって形成された無機皮膜5と、その上にバインダー樹脂3や粒径が異なる2種以上の無機顔料を含有する塗料を塗布し、加熱し、乾燥させることによって形成された塗膜6とを有する。なお、図1では、被覆鋼板10の板厚方向に塗膜6を拡大して図示している。
本実施形態に係る被覆鋼板10は、鋼板4の少なくとも一方の表面に無機皮膜5を有し、無機皮膜5上に塗膜6を有することで、加工性、密着性、意匠性、耐疵付き性、耐溶剤性および耐食性に優れる。なお、本実施形態において加工性に優れるとは、実用上加工された部分の塗膜が亀裂などの不具合が視認され難いことを意味し、密着性に優れるとは、実用上塗膜が鋼板から剥離し難いことを意味し、意匠性に優れるとは、塗膜表面に視認される欠陥が少ないことを意味し、耐疵付き性に優れるとは、傷が付いた際に傷が視認され難いことを意味し、耐溶剤性に優れるとは、塗膜が溶剤で擦られた際に痕が視認され難いことを意味し、耐食性に優れるとは、実用環境で使用されている間での腐食生成物の発生が少ないことを意味する。
(鋼板4)
本実施形態に係る鋼板4は特に限定されるものではなく、例えば、極低C型(フェライト主体組織)、Al−k型、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等のいずれの型の鋼板を用いても良い。
(無機皮膜5)
本実施形態に係る被覆鋼板10は、鋼板4の少なくとも一方の表面に、陰極電解処理によって形成された、Zn、およびV又はZrを含有する無機皮膜5を有する。無機皮膜5中のZnは、Znの金属、酸化物、水酸化物のいずれか1つ以上の形態で存在する。無機皮膜5中のVまたはZrは、VもしくはZrの酸化物、水酸化物のいずれか1つ以上の形態で存在する。無機皮膜5がZnを含有することで、被覆鋼板10の耐食性が確保され、無機皮膜5がV又はZrを含有することで、無機皮膜5中のZnの塗膜6への溶解が抑制され、また被覆鋼板10の硬度が向上される。そのため、被覆鋼板10は、耐食性および耐疵付き性に優れる。
なお、本実施形態において、無機皮膜5がZn、およびV又はZrを含むとは、無機皮膜5について成分分析した場合に、無機皮膜5中にZnが少なくとも1g/m、およびV又はZrが少なくとも0.1g/m含まれることを意味する。
無機皮膜5中のZnおよびVの質量比であるV/Zn、または無機皮膜5中のZnおよびZrの質量比であるZr/Znは、金属換算で0.05〜0.50であることが好ましい。V/Znの金属換算値は、無機皮膜5中のVの含有量を、無機皮膜5中のZnの含有量で除して得ることができる。また、Zr/Znの金属換算値は、無機皮膜5中のZrの含有量を、無機皮膜5中のZnの含有量で除して得ることができる。
無機皮膜5中のV/ZnまたはZr/Znを0.05以上とすることで、被覆鋼板10の耐食性および耐疵付き性をより向上することができる。無機皮膜5中のV/ZnまたはZr/Znを0.50以下とすることで、無機皮膜5と鋼板4との密着性をより向上することができる。
無機皮膜5中のZnおよびVまたはZr以外の成分は、特に限定されない。無機皮膜5には、例えば、5%未満のFe、Ni等が含まれていてもよい。
無機皮膜5の成分は、被覆鋼板の任意の位置から試料を切り出し、表面の塗膜を塗膜剥離剤で擦ることにより除去した後、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法や蛍光X線分光分析法等の既知の方法で分析することができる。ICP発光分光分析で無機皮膜5の成分を分析する場合は、鋼板が溶解しないように、塩酸等にインヒビターを添加した溶液で溶解し測定するとよい。
(塗膜6)
本実施形態に係る被覆鋼板10は、無機皮膜5の上に、粒径が10〜500nmである無機顔料A(無機顔料1)と、粒径が1000〜10000nmである無機顔料B(無機顔料2)との少なくとも2種を含有する塗膜6を有する。塗膜6は、無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)を所定の含有量、所定の比率および所定の個数で含有する。これにより、無機皮膜5上に塗料を塗布し、加熱して塗膜6を形成する場合に、無機皮膜5から発生するガスが塗膜6のバインダー樹脂3と無機顔料A(無機顔料1)および/または無機顔料B(無機顔料2)との界面を透過し易くなるため、被覆鋼板10が良好な外観を得ることができる。
塗膜6中の無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)の少なくとも一方は、Pを含有する。そのため、本実施形態に係る塗膜6の断面について、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析法)により元素マッピング分析したとき、無機顔料A(無機顔料1)または無機顔料B(無機顔料2)の何れか一方はPが検出される。本実施形態に係る塗膜6中のPは、リン化合物の形態で存在する。塗膜6が硬化直後に水冷されたときに、塗膜6の下層の無機皮膜5から発生するガスに含まれる水蒸気のうち一部が冷却されることで水となる。この水にPを含有する無機顔料中のPが溶出し、溶出したPが水と共に無機皮膜5中に浸透することで、無機皮膜5のpHが低下する。無機皮膜5のpHが低下することで、無機皮膜5中のVもしくはZrがイオン化される。Pとイオン化されたVまたはZrとが化合することで、無機皮膜5と塗膜6との界面にリン化合物からなる保護皮膜が形成される。無機皮膜5と塗膜6との界面に保護皮膜が形成されることで、無機皮膜5中のZnや鋼板4中のFeの腐食因子による溶解が抑制される。以上のメカニズムにより、被覆鋼板10が、優れた耐食性を得ることができると考えられる。
無機皮膜5上に塗料を塗布した後、塗膜6の表面から塗料に含まれる溶剤が揮発するため、塗膜6は表面から硬化する。そのため、無機皮膜5中のガスが塗膜6中を透過するためには、無機皮膜5から塗膜6表面までのバインダー樹脂3と無機顔料A(無機顔料1)および/または無機顔料B(無機顔料2)との界面の経路を確保することが重要である。どのような顔料を用いた場合であっても、略全ての顔料同士が接するように、塗膜6中に多くの顔料を添加することで経路は形成される。
本発明者らは、経路を最適に形成する方法について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、無機皮膜5中に、粒径が10〜500nmである無機顔料A(無機顔料1)および粒径が1000〜10000nmである無機顔料B(無機顔料2)を含有させ、塗膜6の無機顔料A(無機顔料1)の体積部(A)および無機顔料B(無機顔料2)の体積部(B)の合計量が、塗膜100体積部に対して、5〜50体積部であり、且つ前記無機顔料A(無機顔料1)の体積部(A)と前記無機顔料B(無機顔料2)の体積部(B)との比が0.5≦(A)/(B)≦2.0であり、且つ、塗膜6の膜厚をtとしたとき、圧延方向に垂直な断面で、板幅方向に平行な方向に20μm、板厚方向にtμmの領域(20μm×tμmの領域)において観察される、無機顔料A(無機顔料1)の個数が60〜100000個、および無機顔料B(無機顔料2)の個数が2〜50個であると、経路を最適に形成できることを知見した。ガスが経路を最適に形成できることのメカニズムの詳細については不明であるが、本発明者らは以下のように推認している。本実施形態における無機顔料A(無機顔料1)の最大の粒径は、無機顔料B(無機顔料2)の最小の粒径の半径以下の大きさである。このため、隣接する粒径が比較的大きい無機顔料B(無機顔料2)と無機顔料B(無機顔料2)同士のすき間は、無機顔料A(無機顔料1)で埋まりやすくなる。このため、無機顔料B(無機顔料2)とバインダー樹脂3との界面のみならず、隣接する無機顔料B(無機顔料2)同士の間に位置する無機顔料A(無機顔料1)とバインダー樹脂3との界面も、ガスの経路として作用する。また、無機顔料B(無機顔料2)同士の接点のみならず、無機顔料B(無機顔料2)と無機顔料A(無機顔料1)との接点も経路となる。これにより、無機皮膜5から塗膜6表面にかけての経路が最適に形成される。このため、無機皮膜5から発生したガスが塗膜6表面から抜け易くなり、塗膜6に欠陥が発生し難くなる。
塗膜6が無機顔料A(無機顔料1)のみを含む場合、無機顔料B(無機顔料2)と無機顔料A(無機顔料1)とが塗膜6中に混在している場合と比べ、ガスの経路となる顔料とバインダー樹脂3との界面の面積が大きくなりすぎる。このため塗膜6中のバインダー樹脂3と無機顔料A(無機顔料1)との界面におけるガス透過性が大きくなりすぎ、被覆鋼板10の耐食性が劣化する。一方、塗膜6が無機顔料B(無機顔料2)のみを含む場合、無機顔料B(無機顔料2)と無機顔料A(無機顔料1)とが塗膜6中に混在している場合と比べ、ガスの経路となる顔料とバインダー樹脂3との界面の面積が小さくなる。また、無機顔料B(無機顔料2)同士の接点の数も、無機顔料B(無機顔料2)と無機顔料A(無機顔料1)とが塗膜6中に混在している場合の顔料同士の接点よりも少なくなる。このため、塗膜6のガス透過性が不十分となり、被覆鋼板10の意匠性が劣化する。
一般に、無機顔料は粒径が小さいため、塗料中に分散する過程で凝集しやすい。そのため、粒径が小さい無機顔料を、無機顔料それぞれの粒径である一次粒径のまま塗膜6中に分散させることは難しい。粒径が小さい無機顔料(粒径が100nm以下の無機顔料)は凝集し、その凝集した無機顔料は、一次粒径よりも大きな粒径を持つ二次粒子の形態で塗膜6中に存在する場合がある。この二次粒子(無機顔料が凝集した粒子)の粒径を、以下「二次粒径」と記載する。本実施形態における塗膜6中の無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)の粒径は、一次粒径だけでなく、二次粒径も含むものとする。すなわち、粒径が10〜500nmである無機顔料A(無機顔料1)とは、塗膜6中に存在する、一次粒径および二次粒径が10〜500nmである無機顔料を示し、粒径が1000〜10000nmである無機顔料B(無機顔料2)とは、塗膜6中に存在する、一次粒径および二次粒径が1000〜10000nmである無機顔料を示す。
塗膜6の無機顔料A(無機顔料1)の体積部(A)と無機顔料B(無機顔料2)の体積部(B)の合計量は、塗膜6の100体積部に対して、5〜50体積部である。塗膜6中の無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)の合計量が5体積部未満の場合は、ガスの経路となる顔料とバインダー樹脂3との界面の面積が小さくなるため塗膜6のガス透過性が不十分となり、被覆鋼板10の意匠性が劣化する。一方、塗膜6中の無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)の合計量が50体積部超の場合は、顔料とバインダー樹脂3との界面の面積が大きくなりすぎるため、塗膜6のガス透過性が高くなりすぎ、無機皮膜5や被覆鋼板10の耐食性が劣化する。さらに、無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)の合計量が多くなることでバインダー樹脂3の量が少なくなりすぎ、塗膜6の耐久性が低下する。加工性の観点から、塗膜6の無機顔料A(無機顔料1)の体積部および無機顔料B(無機顔料2)の体積部の合計量は、塗膜6の100体積部に対して、10〜30体積部であることが好ましい。
塗膜6の無機顔料A(無機顔料1)の体積部(A)と無機顔料B(無機顔料2)の体積部(B)との比は、0.5≦(A)/(B)≦2.0である。塗膜6の無機顔料A(無機顔料1)の体積部(A)と無機顔料B(無機顔料2)の体積部(B)との比が0.5未満、または2.0超の場合は、塗膜6のガス透過性が劣化するため、被覆鋼板10の意匠性が劣化する。塗膜6の無機顔料A(無機顔料1)の体積部(A)と無機顔料B(無機顔料2)の体積部(B)との比は、0.7≦(A)/(B)≦1.7が好ましい。
塗膜6の膜厚は、5超〜20μm(5μm超、20μm以下)である。塗膜6の膜厚が5μm以下の場合、塗膜6に疵が付いた場合の、塗膜6の膜厚に対しての疵の深さの比率が大きくなりやすい。このため、疵が目立ちやすく被覆鋼板10の耐疵付き性が劣化する。塗膜6の膜厚が20μm超の場合、塗膜6が厚くなることでガス透過性が低下し、被覆鋼板10の意匠性が劣化する。塗膜6の膜厚は、7μm超、または16μm以下が好ましい。
塗膜6中の無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)の個数は、塗膜6の膜厚をtとしたとき、圧延方向に垂直な断面で、板幅方向に平行な方向に20μm、板厚方向にtμmの領域(20μm×tμmの領域)で、無機顔料A(無機顔料1)の個数が60〜100000個、および無機顔料B(無機顔料2)の個数が2〜50個である。塗膜6中の上記領域内における無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)のそれぞれの個数を上記範囲内とすることで、ガスの経路となる顔料とバインダー樹脂3との界面の面積を確保しつつ、バインダー樹脂3の量も十分に保つことができる。このため、塗膜6のガス透過性と耐久性を保つことができ、その結果、被覆鋼板10の意匠性および耐食性を向上することができる。
塗膜6には、無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)以外の粒径(500nm超、1000nm未満)を持つ無機顔料Cが含まれていてもよい。ただし、塗膜6に含まれる、粒径が500nm超、1000nm未満の無機顔料の個数は、上述した20μm×tμmの領域(板幅方向に平行な方向に20μm、板厚方向に膜厚tμmの領域)において10個以下が好ましい。塗膜6中の、粒径が500nm超、1000nm未満の無機顔料Cの個数が、上記領域(20μm×tμmの領域)において10個以下であると、無機顔料Bとその他の無機顔料Cとが接触する部分が多くなり過ぎることがなく、かつ、無機顔料Bが無機顔料Cに押され、無機顔料B(無機顔料2)同士が接触し易い。このため、塗膜6のガス透過性をより向上することができ、被覆鋼板10の意匠性をより向上することができる。
また、塗膜6中に、粒径が「10nm未満」あるいは「10000nm超」の無機顔料が含まれても、「10nm未満」の粒径が30個以下、「10000nm超」の粒径が4個以下であれば、本実施形態に係る被覆鋼板の特性に影響を及ぼさない。
被覆鋼板10の塗膜6中の無機顔料の粒径は、以下の方法により得る。まず、被覆鋼板10の圧延方向に垂直な断面を観察できるように、ミクロトーム法により薄膜試料を作製する。得られた薄膜試料の20μm×tの領域(板幅方向に平行な方向に20μm、板厚方向に膜厚tμmとなる領域)において、200kV電界放出型透過電子顕微鏡(FE−TEM)を用いて倍率10万倍で少なくとも5領域観察する。下記式1を用いて、観察領域における全ての無機顔料の円相当径を算出し、この円相当径をそれぞれの無機顔料の粒径とする。
円相当径=2√(S/π) … 式1
ただし、Sは無機顔料の面積であり、πは円周率である。
上記観察領域において、粒径が10〜500nmである無機顔料を無機顔料A(無機顔料1)とし、粒径が500nm超、1000nm未満の無機顔料を無機顔料Cとし、粒径が1000〜10000nmである無機顔料を無機顔料B(無機顔料2)とする。更に、上記観察領域において観察された無機顔料A(無機顔料1)と、無機顔料Cと、無機顔料B(無機顔料2)との個数をそれぞれ求め、複数の観察領域(5領域)における個数の平均を算出することで、無機顔料A(無機顔料1)、無機顔料Cおよび無機顔料B(無機顔料2)の個数を得る。
また、上記観察領域についてEDXによりP元素マッピング分析し、無機顔料A(無機顔料1)および/または無機顔料B(無機顔料2)がP(リン化合物)を含む無機顔料であるか否かを判断する。また、Mg元素マッピング分析により、P(リン化合物)を含む無機顔料Aおよび/または無機顔料BがMgを含有するか否かを判断する。
本実施形態に係る被覆鋼板10は、上述の方法によって塗膜6中の無機顔料の粒径を測定した場合、粒径が10〜500nmの範囲内である無機顔料A(無機顔料1)と、粒径が1000〜10000nmの範囲内である無機顔料B(無機顔料2)との少なくとも2種を含む。本実施形態に係る被覆鋼板10の、塗膜6中の無機顔料の粒径と個数との関係は、図2に示すようなものとなる。
塗膜6中における無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)の含有量は、塗膜6の塗膜断面の観察により算出する。以下に、その算出方法の一例を説明する。
200kV電界放出型透過電子顕微鏡(FE−TEM)を用いて倍率10万倍で塗膜6の断面(圧延方向に垂直な方向で切断された鋼板のうちの塗膜6の部分)を、少なくとも5視野観察する。全視野において観察される塗膜6の、全体の面積を求める。次に各視野における無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)それぞれの個数の平均値および平均粒径を求める。この無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)それぞれの個数の平均値と平均粒径とから、無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)の全視野における合計の面積が得られる。塗膜6の全体の面積と、無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)の全視野における合計の面積とから、塗膜6に対する無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)それぞれの面積比率(塗膜6の面積:無機顔料A(無機顔料1)の面積、塗膜6の面積:無機顔料B(無機顔料2)の面積)が得られる。体積比率は、面積比率を3/2乗することで算出することができるため、塗膜6の面積に対する無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)それぞれの面積比率を3/2乗することで、塗膜6に対する無機顔料A(無機顔料1)および無機顔料B(無機顔料2)それぞれの体積比率(塗膜6の体積:無機顔料A(無機顔料1)の体積、塗膜6の体積:無機顔料B(無機顔料2)の体積)が得られる。これらの体積比率から、塗膜6の100体積部に対する無機顔料A(無機顔料1)の体積部および無機顔料B(無機顔料2)の体積部を算出する。これらの合計値を算出することで、塗膜6の100体積部に対する無機顔料A(無機顔料1)の体積部および無機顔料B(無機顔料2)の体積部の合計量を得る。また、得られた塗膜6の100体積部に対する無機顔料A(無機顔料1)の体積部および無機顔料B(無機顔料2)の体積部とから、無機顔料A(無機顔料1)の体積部(A)と無機顔料B(無機顔料2)の体積部(B)との比((A)/(B))を得る。
本実施形態に係る被覆鋼板10の塗膜6に用いることができる、Pを含有しない無機顔料としては、一般的に塗料として使用されている、水や油に不溶の粉末の塗料を用いることができる。例えば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、シリカ、アルミニウム、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、バナジン酸塩顔料、モリブデン酸塩顔料等が挙げられる。なお、塗膜6の無機顔料として、水や油に溶解する化合物を用いた場合、被覆鋼板10の耐食性が著しく低下する場合がある。本実施形態に係る被覆鋼板10の塗膜6に用いる無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、シリカおよびアルミニウムが好ましい。
上述のように、塗膜6中の無機顔料A又は無機顔料Bは、P(リン化合物)を含有する。塗膜6中の無機顔料に含まれるPは、無機皮膜5から発生したガス中の水に適度に溶出し、無機皮膜5中に浸透して、無機皮膜5中の無機成分(VまたはZr)と化合することで、無機皮膜5と塗膜6との界面に、リン化合物からなる保護皮膜を形成する。塗膜6中のPを含む無機顔料として、例えば、リン酸塩顔料、リンモリブデン酸塩顔料等が挙げられる。特に、リン酸化合物と有機酸とを焼成させて作製した無機顔料は、P成分が容易に溶出するため、塗膜6中のPを含む無機顔料として適している。また、塗膜6中のPを含む無機顔料として、縮合リン酸アルミニウム、リン酸塩顔料をアルカリ土類金属イオンで修飾した顔料なども挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしてはCaイオン、Mgイオンなどが挙げられる。
塗膜6中のPを含有する無機顔料が、トリポリリン酸アルミニウム、オルソリン酸亜鉛モリブデン、ポリリン酸亜鉛等であると、被覆鋼板10の耐食性をより向上することができるため好適である。
塗膜6中のPを含有する無機顔料が、さらにMgを含有する場合、無機皮膜5と塗膜6との界面に保護皮膜がより形成され易くなり、被覆鋼板10の耐食性をより向上することができる。PとMgとを含む無機顔料としては、リン酸マグネシウム、重りん酸マグネシウム、トリポリリン酸アルミニウムのマグネシウム処理品などが挙げられる。
本実施形態に係る被覆鋼板10の塗膜6は、バインダー樹脂3を1種または2種以上含む。バインダー樹脂3は、樹脂の末端に官能基として、水酸基、カルボン酸基、アミノ基あるいはエポキシ基を有する。塗膜6中のバインダー樹脂3としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂3を硬化反応させるためには、一般的に硬化する官能基として知られている官能基同士を組み合わせたバインダー樹脂を用いればよく、例えば、水酸基とアミノ基、カルボン酸基とアミノ基や水酸基、エポキシ基などの組合せを用いればよい。
バインダー樹脂3がポリエステル樹脂とメラミン樹脂とを含むことで、硬化塗膜になるため、塗膜6の耐溶剤性をより向上させることができる。また、ポリエステル樹脂によって、無機皮膜5と塗膜6との密着性および加工性を向上させるため好適である。
本実施形態に係る塗膜6に用いることができるポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールとの重合反応によって形成することができる。また、本実施形態に係る塗膜6に用いることができるポリエステル樹脂は、変性させたものでもよい。
前記多価カルボン酸成分としては、特に制限はないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。前記多価カルボン酸成分として、これらのうち1種又は2種以上を任意に使用することができる。
前記多価アルコールとしては特に制限はないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、トリエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール−A、ダイマージオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。前記多価アルコールとして、これらのうち1種又は2種以上を任意に使用することができる。
前記メラミン樹脂としては、特に制限は無いが、例えば、メチル化メラミン、ブチル化メラミン等が挙げられる。市販のメラミン樹脂としては、オルネックス社製のメラミン樹脂「サイメルTM」、「マイコートTM」、DIC社製メラミン樹脂「スーパーベッカミンTM」などを使用することができる。
前記メラミン樹脂としてブチル化メラミン樹脂を用いた場合、ガスが透過しやすくなるため、被覆鋼板10の意匠性をより向上することができる。そのため、本実施形態に係る被覆鋼板10は、塗膜6のバインダー樹脂3がポリエステル樹脂とブチル化メラミン樹脂とを含むことが好ましい。
ブチル化メラミン樹脂は自己縮合性に優れる。自己縮合は、塗膜6の温度がより高温になってから反応が進むため、メチル化メラミンの反応(自己縮合)が開始するまでの時間(バインダー樹脂3が硬化するまでの時間)が長くなる。バインダー樹脂3が硬化するまでの時間が長くなることで、無機皮膜5から発生したガスが塗膜6表面から抜けることができる時間が長くなり、ガスがより多く透過するため、被覆鋼板10の意匠性がより向上する。ブチル化メラミン樹脂は水に不溶であるため、塗料は水系ではなく溶剤系を用いることが好ましい。
本実施形態に係る被覆鋼板10では、塗膜6のバインダー樹脂3が、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。エポキシ樹脂は樹脂の溶融粘度を低下させる。そのため、溶媒が乾燥した後、塗膜6が硬化するまでの時間における、塗膜6のガス透過性をより向上することができ、被覆鋼板10の意匠性をより向上することができる。
[Pes]/[Me]で表される、バインダー樹脂3中のポリエステル樹脂とメラミン樹脂との重量比率は、1≦[Pes]/[Me]≦10であることが好ましい。なお、[Pes]はバインダー樹脂3中のポリエステル樹脂の重量を示し、[Me]はバインダー樹脂3中のメラミン樹脂の重量を示す。バインダー樹脂3中のポリエステル樹脂とメラミン樹脂との重量比率が上記範囲内である場合、塗膜6のガス透過性をより向上させることができ、被覆鋼板10の意匠性をより向上することができる。
バインダー樹脂3がポリエステル樹脂とメラミン樹脂とを含有する場合、塗膜6中に、さらにアミン中和したドデシルベンゼンスルホン酸およびアミン中和したパラトルエンスルホン酸の1種以上を含むことがより好ましい。これらの1種以上を塗膜6中に含むと、バインダー樹脂3に含まれるポリエステルとメラミンの架橋反応が抑制され、メラミンの自己縮合反応を促進するため、塗膜6のガス透過性がより向上し、被覆鋼板10の意匠性がより向上する。
塗膜6中のバインダー樹脂の成分の種類および重量は、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)、またはNMR装置(核磁気共鳴装置)を用いることにより分析することができる。
次に、本実施形態に係る被覆鋼板10の製造方法について説明する。本実施形態に係る被覆鋼板10は、陰極電解処理により、鋼板4の少なくとも一方の表面に無機皮膜5を形成し、無機皮膜5上に塗料を塗布して塗膜6を形成することで製造される。
陰極電解処理は、Znイオン、およびVイオンもしくはZrイオンを含有する溶液を用いることができる。Znイオン、およびVイオンもしくはZrイオンを含む溶液は、公知の方法によって作製することができるが、例えば硫酸の中に硫酸Znと、酸化バナジルもしくは硝酸ジルコニルとを溶解させることによって作製することができる。
陰極電解処理の溶液のpHは、1.0〜4.0であることが望ましい。陰極電解処理の溶液のpHが1.0より低いと、VイオンもしくはZrイオンが無機皮膜5中に取り込まれない場合がある。陰極電解処理の溶液のpHが4.0より大きいと、溶液中にVイオンもしくはZrイオンが酸化物として沈殿してしまい、VイオンもしくはZrイオンが無機皮膜5中に取り込まれない場合がある。
陰極電解処理の溶液中のVイオンもしくはZrイオンと、Znイオンとの質量比(Vイオン/Znイオン、もしくはZrイオン/Znイオン)が0.2〜0.9であることが望ましい。陰極電解処理の溶液中のVイオン/Znイオン、もしくはZrイオン/Znイオンが0.2より小さいと、もしくは0.9より大きいと、VイオンもしくはZrイオンが無機皮膜5中に取り込まれない場合がある。
陰極電解処理の溶液中のイオンの含有量はICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法や蛍光X線分光分析法等の既知の方法で分析することができる。また、陰極電解処理の溶液中のイオンの含有量は、陰極電解処理の溶液に溶解させた成分量(硫酸Zn、酸化バナジル、硝酸ジルコニル等の量)を、Vイオン(g/L)、Znイオン(g/L)、Zrイオン(g/L)に換算することによっても得ることができる。
塗膜6を形成するための塗料の塗布方法としては、例えば、バーコーター法、ロールコート法、リンガーロールコート法、エアースプレー法、エアーレススプレー法、浸漬法等の周知の方法が挙げられる。
塗膜6を形成するための塗料の乾燥方法としては、特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて用いる方法が挙げられる。
以下に、本発明の実施例について詳細に記載する。実施例での条件は本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した例に過ぎず、本発明はこの条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
1.鋼板
鋼板としては、JIS G 3141:2011に記載の、板厚0.8mmで、一般的な絞り用の冷延鋼板であるSPCDの鋼板を用いた。
2.無機皮膜
ZnイオンおよびVイオンを含む溶液と、ZnイオンおよびZrイオンを含む溶液とを作製した。溶液は、硫酸の中に硫酸Znと、酸化バナジルもしくは硝酸ジルコニルを溶解させて、作製した。溶液中に溶解させた成分量を調整することで、無機皮膜の成分を調整した。溶液のpHは、硫酸の量と水酸化Naの量とで調整した。作製した溶液を表1に示す。表1中の各イオンの質量(g/L)は、溶液に溶解させた成分量(硫酸Zn、酸化バナジル、硝酸ジルコニル)を、各イオン量に換算することで得た。
表1の溶液を用いて、陰極電解処理により上記鋼板の両面に無機皮膜を形成した。形成された無機皮膜中の各成分は、ICP発光分光分析法で同定し、確認した。鋼板の両面に形成した無機皮膜の成分を表2に示す。
Figure 0006638867
Figure 0006638867
3.塗膜
ソルベッソ150を溶剤として、表3に記載のバインダー樹脂と、表4−1に記載の無機顔料と、必要に応じて表4−2に記載の添加物とを混合し、撹拌して塗料を作製した。作製した塗料を表5−1および表5−2に示す。
表4−1には、無機顔料の2次粒径が記載されているが、この値は推定値である。表4−1に記載の無機顔料を混合して作製した塗料を無機皮膜上に塗膜として形成した際、塗膜中の無機顔料の粒径は、表4−1の1次粒径および2次粒径の値になるとは限らない。
なお、表5−1および表5−2中の[Pes]/[Me]は、バインダー樹脂中のポリエステル樹脂とメラミン樹脂との重量比率を示し、[Pes]+[Me]は、バインダー樹脂中のポリエステル樹脂とメラミン樹脂との重量の合計量を示す。
Figure 0006638867
Figure 0006638867
Figure 0006638867
Figure 0006638867
Figure 0006638867
上記無機皮膜の上に表5−1および表5−2に記載の塗料をバーコーターで10μm塗布した後、30秒で到達板温度が230℃になるように熱風炉で加温した。その後、水に浸漬して冷却することで塗膜を形成させた。以上の方法により、被覆鋼板を得た。
得られた被覆鋼板の塗膜について、無機皮膜の成分、塗膜の成分を以下の方法により分析した。得られた結果を表6−1および表6−2に記載する。
(無機皮膜)
無機皮膜の成分は、以下の方法により分析した。被覆鋼板の任意の位置から試料を切り出し、表面の塗膜を塗膜剥離剤により除去した。表面に露出した無機皮膜について、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法を行うことにより、無機皮膜の成分を分析した。ICP発光分光分析法では、鋼板が溶解しないように、塩酸にインヒビターを添加した溶液で溶解して測定した。無機皮膜が1g/m以上のZnを含有した場合は、表6−1および表6−2に「Yes」と記載し、Znが1g/m未満の場合は「No」と記載した。また、無機皮膜が0.1g/m以上のVもしくはZrを含有した場合は、表6−1および表6−2に「Yes」と記載し、VもしくはZrが0.1g/m未満の場合は「No」と記載した。
(塗膜中の無機顔料)
被覆鋼板10の圧延方向に垂直な断面を観察できるように、ミクロトーム法により薄膜試料を作製した。得られた薄膜試料の塗膜部分の20μm×tμmの領域(板幅方向に平行な方向に20μm、鋼板の板厚方向に膜厚tμmの領域)において、200kV電界放出型透過電子顕微鏡(FE−TEM)を用いて倍率10万倍で5領域観察した。下記式1を用いて、観察視野における全ての無機顔料の円相当径を算出し、この円相当径をそれぞれの無機顔料の粒径とした。
上記観察領域における粒径が10〜500nmの範囲内である無機顔料Aと、粒径が500nm超、1000nm未満の無機顔料と、粒径が1000〜10000nmの範囲内である無機顔料Bとの個数をそれぞれ求め、複数の観察領域における個数の平均を算出することで、無機顔料A、粒径が500nm超、1000nm未満の無機顔料および無機顔料Bの個数を得た。
上記観察領域についてEDXにより元素マッピング分析し、無機顔料Aまたは無機顔料BがP(リン化合物)を含む無機顔料であるか否かを判断した。また、元素マッピング分析により、P(リン化合物)を含む無機顔料Aまたは無機顔料BがMgを含有するか否かを判断した。
円相当径=2√(S/π) … 式1
ただし、Sは無機顔料の面積であり、πは円周率である。
塗膜が、粒径が10〜500nmの範囲内である無機顔料Aを含み、且つ塗膜中の無機顔料Aの個数が60〜100000個であった場合は、表6−1および表6−2の無機顔料Aの欄に「Yes」と記載し、塗膜が無機顔料Aを含まなかった場合は「No」と記載した。また、塗膜中の無機顔料Aの個数が60個未満であった場合は、表6−1および表6−2の無機顔料Aの欄に「未満」と記載し、塗膜中の無機顔料Aの個数密度が100000個超であった場合は「超」と記載した。
塗膜が、粒径が1000〜10000nmの範囲内である無機顔料Bを含み、且つ塗膜中の無機顔料Bの個数が2〜50個であった場合は、表6−1および表6−2の無機顔料Bの欄に「Yes」と記載し、塗膜が無機顔料Bを含まなかった場合は「No」と記載した。また、塗膜中の無機顔料Bの個数が2個未満であった場合は、表6−1および表6−2の無機顔料Bの欄に「未満」と記載し、塗膜中の無機顔料Bの個数が50個超であった場合は「超」と記載した。
塗膜中の、粒径が500nm超〜1000nm未満の無機顔料(無機顔料C)の個数が10個以下であった場合は、表6−1および表6−2の「500nm超〜1000nm未満の粒子が10個」の欄に「Yes」と記載し、塗膜中の、粒径が500nm超〜1000nm未満の無機顔料(無機顔料C)の個数が10個超であった場合は、「No」と記載した。
塗膜中の無機顔料Aおよび無機顔料Bの少なくとも一方がP(リン化合物)を含む無機顔料であった場合、表6−1および表6−2の「P含有」の欄に「Yes」と記載し、塗膜中の無機顔料Aおよび無機顔料BがP(リン化合物)を含まない無機顔料であった場合、「No」と記載した。
塗膜中の無機顔料Aまたは無機顔料BがP(リン化合物)を含み、且つPを含む無機顔料Aまたは無機顔料BがさらにMgを含んだ場合は、表6−1および表6−2の「P*Mg」の欄に「Yes」と記載し、Pを含む無機顔料Aまたは無機顔料BがMgを含まなかった場合は「No」と記載した。
塗膜100体積部に対する無機顔料Aの体積部および無機顔料Bの体積部は、以下の方法により得た。
200kV電界放出型透過電子顕微鏡(FE−TEM)を用いて倍率10万倍で塗膜の断面(圧延方向に垂直な方向で切断された鋼板のうちの塗膜6の部分)を、5視野観察した。全視野において観察される塗膜の全体の面積を求めた。次に、各視野における無機顔料Aおよび無機顔料Bそれぞれの個数の平均値および平均粒径を求めた。この無機顔料Aおよび無機顔料Bそれぞれの個数の平均値と平均粒径とから、無機顔料Aおよび無機顔料Bの全視野における合計の面積を得た。塗膜の全体の面積と、無機顔料Aおよび無機顔料Bの全視野における合計の面積とから、塗膜の面積に対する無機顔料Aおよび無機顔料Bそれぞれの面積比率(塗膜の面積:無機顔料Aの面積、塗膜の面積:無機顔料Bの面積)を得た。塗膜の面積に対する無機顔料Aおよび無機顔料Bそれぞれの面積比率を3/2乗することで、塗膜に対する無機顔料Aおよび無機顔料Bそれぞれの体積比率(塗膜の体積:無機顔料Aの体積、塗膜の体積:無機顔料Bの体積)を得た。これらの体積比率から、塗膜100体積部に対する無機顔料Aの体積部および無機顔料Bの体積部を算出した。これらの合計を算出することで、塗膜100体積部に対する無機顔料Aの体積部と無機顔料Bの体積部との合計((A)+(B))を得た。また、得られた塗膜100体積部に対する無機顔料Aの体積部および無機顔料Bの体積部とから、無機顔料Aの体積部(A)と無機顔料Bの体積部(B)との比((A)/(B))を得た。
得られた塗膜100体積部に対する無機顔料Aの体積部と無機顔料Bの体積部との合計((A)+(B))、並びに、無機顔料Aの体積部(A)と無機顔料Bの体積部(B)との比((A)/(B))を表6−1および表6−2に示す。
(塗膜中のバインダー樹脂)
塗膜中のバインダー樹脂の成分の種類は、NMR装置(核磁気共鳴装置)を用いて分析した。
バインダー樹脂中のポリエステル樹脂とメラミン樹脂との重量比率[Pes]/[Me]が1〜10であった場合は、表6−1および表6−2の「1≦Pes/Me≦10」の欄に「Yes」と記載し、[Pes]/[Me]が1未満、または10超であった場合は「No」と記載した。
バインダー樹脂がブチル化メラミン樹脂を含んだ場合は、表6−1および表6−2の「BuMe含有」の欄に「Yes」と記載し、ブチル化メラミン樹脂を含まなかった場合は「No」と記載した。
バインダー樹脂がエポキシ樹脂を含んだ場合は、表6−1および表6−2の「Ep含有」の欄に「Yes」と記載し、エポキシ樹脂を含まなかった場合は「No」と記載した。
Figure 0006638867
Figure 0006638867
表6−1および表6−2の被覆鋼板について、以下の試験1〜6を行った。試験1〜6のうち、全ての試験における評価が3以上の場合を、本発明に係る被覆鋼板が所望する特性を有する被覆鋼板であるとして、合格と判定した。試験1〜6のうち、1つでも評価が2以下であった場合を、本発明に係る被覆鋼板が所望する特性を有しない被覆鋼板であるとして、不合格と判定した。以下に試験1〜6について詳細に説明する。
試験1.耐溶剤性
被覆鋼板の耐溶剤性は、表6−1および表6−2の被覆鋼板から所定の大きさの試験片を採取し、この試験片をラビングテスターに設置後、エタノールを含浸させた脱脂綿を49.03kPa(0.5kgf/cm)の荷重で10往復擦った後の塗膜の状態を、下記の評価基準により評価した。
5:擦り面に全く跡が付かない。
4:擦り面に極僅かに跡が付く(目を凝らして何とか擦り跡が判別できるレベル)。
3:擦り面に僅かに跡が付く(目を凝らすと擦り跡が判別できるレベル)。
2:擦り面に明確な跡が付く(瞬時に擦り跡が判別できるレベル)。
1:擦り面で塗膜が完全に溶解し、無機皮膜が露出する。
試験2.耐疵付き性
被覆鋼板の耐疵付き性は、表6−1および表6−2の被覆鋼板から所定の大きさの試験片を採取し、この試験片をラビングテスターに設置後、ラビングテスターの摺動冶具の先端に右川ゴム製造所社製の円柱状の消しゴムを取り付け、16Nの荷重で100往復擦った後の塗膜および無機皮膜の状態を下記の評価基準により評価した。
5:鋼板の露出がない。
4:鋼板の露出幅が1mm未満。
3:鋼板の露出幅が1mm以上2mm未満。
2:鋼板の露出幅が2mm以上3mm未満。
1:鋼板の露出幅が3mm以上。
試験3.耐食性
被覆鋼板の耐食性は、表6−1および表6−2の被覆鋼板から所定の大きさの試験片を採取し、この試験片の端面をマスキングした後、JIS Z 2371:2000に準拠して塩水噴霧試験(SST)を48時間行い、塗膜表面の錆発生状況を観察し、下記の評価基準により評価した。
5:錆発生無し。
4:錆発生面積が試験片全面の1%未満。
3:錆発生面積が試験片全面の1%以上、3%未満。
2:錆発生面積が試験片全面の3%以上、5%未満。
1:錆発生面積が試験片全面の5%以上。
試験4.外観(意匠性)
被覆鋼板の意匠性は、表6−1および表6−2の被覆鋼板から50×50mmの試験片を採取し、この試験片におけるわき(発泡によって生じたピンホール)の数によって評価した。
5:ピンホールが0個である。
4:ピンホールが1個以上、5個未満である。
3:ピンホールが5個以上、10個未満である。
2:ピンホールが10個以上、20個未満である。
1:ピンホールが20個以上である。
試験5.加工性
表6−1および表6−2の被覆鋼板から、幅を5cmとし、所定の長さに切断して得た試験片について、JIS G 3312:2013に準じて、20℃の雰囲気中で2T曲げ試験を行った。具体的には、上記試験片と同一の鋼板から採取した塗板を2枚内側にはさまるようにして、塗膜が塗装されている表面を外側にして180度密着曲げを行った。被覆鋼板の意匠性は、試験後の塗膜の状態を観察し、下記の評価基準により評価した。
5:塗膜に亀裂等の不具合がなく、均一な着色外観である。色落ちも認められない。
4:塗膜に極僅かの亀裂が認められるため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である(試験後の試験片と、試験前の別の試験片とを横に並べて何とか分かるレベル)。
3:塗膜に僅かの亀裂が認められるため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である(試験後の試験片と、試験前の別の試験板とを横に並べると分かるレベル)。
2:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが認められる(試験後の試験片のみを見て何とか分かるレベル)。
1:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが著しい(試験後の試験片のみを見て分かるレベル)。
試験6.密着性
被覆鋼板の密着性(塗膜と無機皮膜との密着性)は、試験5の加工性評価後、テープ剥離試験(使用したテープ:ニチバン社製セロテープ(登録商標))を実施し、塗膜剥離の発生状況を観察し、下記の評価基準により評価した。
5:剥離無し。
4:剥離した塗膜が、テープを貼付した面積の0%超、5%未満。
3:剥離した塗膜が、テープを貼付した面積の5%以上、20%未満。
2:剥離した塗膜が、テープを貼付した面積の20%以上50%未満。
1:剥離した塗膜が、テープを貼付した面積の50%以上、70%未満。
上記試験1〜6の評価結果を、表7−1および表7−2に示す。
Figure 0006638867
Figure 0006638867
上記表7−1から分かるように、本発明の実施例1〜56はいずれも耐溶剤性、耐疵付き性、耐食性、外観(意匠性)、加工性、密着性に優れていた。
比較例1〜5は、無機皮膜がVまたはZrを含まなかったため、耐疵付き性および耐食性が劣った。
比較例6は、塗膜が無機顔料Aおよび無機顔料Bを含まなかったため、耐食性および意匠性が劣った。
比較例7は、塗膜中の無機顔料Aおよび無機顔料BがPを含まなかったため、耐食性が劣った。
比較例8及び11は、塗膜が無機顔料Aを含まなかったため、耐食性および意匠性が劣った。
比較例9は、塗膜が無機顔料Bを含まなかったため、意匠性が劣った。
比較例10、17、20および21は、塗膜が無機顔料Aまたは無機顔料Bのいずれか一方を含まず、且つ無機顔料がAまたは無機顔料BがPを含まなかったため、耐食性および意匠性が劣った。
比較例12は、塗膜に含まれる無機顔料Aおよび無機顔料Bの個数が少なく、(A)/(B)が小さかったため、意匠性が劣った。
比較例13は、塗膜に含まれる無機顔料Aおよび無機顔料Bの個数が多く、(A)+(B)が50体積部超のため、耐食性および意匠性が劣った。
比較例14は、塗膜に含まれる無機顔料Bの個数が少なく、且つ(A)/(B)が小さく、比較例15は、塗膜に含まれる無機顔料Aの個数が多く、(A)/(B)が大きく、且つPを含まなかったため、それぞれ意匠性が劣った。
比較例16は、塗膜が無機顔料Bを含まなかったため、耐食性および意匠性が劣った。
比較例18は、塗膜が無機顔料Bを含まなかったため、耐食性及び意匠性が劣った。
比較例19は、(A)+(B)が50体積部超であり、(A)/(B)が小さかったため、加工性および密着性が劣った。
比較例22は、塗膜の膜厚が5μmであったため、耐疵付き性が劣った。
比較例23は、塗膜の膜厚が20μm超であったため、意匠性が劣った。
1 無機顔料A
2 無機顔料B
3 バインダー樹脂
4 鋼板
5 無機皮膜
6 塗膜
10 被覆鋼板

Claims (6)

  1. 鋼板と、
    前記鋼板の少なくとも一方の表面に形成され、Zn、およびV又はZrを含有する無機皮膜と、
    前記無機皮膜上に形成され、膜厚が5超〜20μmであり、バインダー樹脂と、粒径が10〜500nmである無機顔料Aと、粒径が1000〜10000nmである無機顔料Bと、任意で、粒径が500nm超、1000nm未満である無機顔料C、粒径が10nm未満である無機顔料および粒径が10000nm超である無機顔料と、からなる塗膜と、
    を有する被覆鋼板であって、
    前記無機顔料Aおよび前記無機顔料Bの少なくとも一方がPを含有し、
    前記塗膜の前記無機顔料Aの体積部と前記無機顔料Bの体積部との合計量が、前記塗膜100体積部に対して、5〜50体積部であり、前記無機顔料Aの体積部(A)と前記無機顔料Bの体積部(B)との比が、0.5≦(A)/(B)≦2.0であり、
    前記塗膜の前記膜厚をtとしたとき、前記塗膜の圧延方向に垂直な断面で、板幅方向に平行な方向に20μm、板厚方向にtμmの領域で観察される、前記無機顔料Aの個数が60〜100000個であり、前記無機顔料Bの個数が2〜50個であり、前記無機顔料Cの個数が10個以下であり、粒径が10nm未満である前記無機顔料の個数が0〜30個であり、粒径が10000nm超である前記無機顔料の個数が0〜4個であることを特徴とする被覆鋼板。
  2. 前記塗膜中の前記Pを含有する前記無機顔料Aまたは前記無機顔料Bが、さらにMgを含有することを特徴とする請求項1に記載の被覆鋼板。
  3. 前記バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆鋼板。
  4. 前記メラミン樹脂が、ブチル化メラミン樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の被覆鋼板。
  5. 前記バインダー樹脂が、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の被覆鋼板。
  6. 前記無機皮膜中の、前記Vと前記Znとの質量比であるV/Zn、又は前記Zrと前記Vとの質量比であるZr/Znが、金属換算で0.05〜0.50であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の被覆鋼板。
JP2019532167A 2018-12-12 2018-12-12 被覆鋼板 Active JP6638867B1 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2018/045652 WO2020121431A1 (ja) 2018-12-12 2018-12-12 被覆鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6638867B1 true JP6638867B1 (ja) 2020-01-29
JPWO2020121431A1 JPWO2020121431A1 (ja) 2021-02-15

Family

ID=69183721

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019532167A Active JP6638867B1 (ja) 2018-12-12 2018-12-12 被覆鋼板

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6638867B1 (ja)
WO (1) WO2020121431A1 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0324295A (ja) * 1989-06-22 1991-02-01 Nippon Steel Corp 黒色表面処理鋼板の製造方法
JP2010090409A (ja) * 2008-10-03 2010-04-22 Nippon Parkerizing Co Ltd 表面処理金属材料、金属表面処理用処理液、塗装金属材料、およびそれらの製造方法
JP2016194137A (ja) * 2015-03-31 2016-11-17 新日鐵住金株式会社 表面処理鋼板、及び塗装部材
WO2016199852A1 (ja) * 2015-06-09 2016-12-15 新日鐵住金株式会社 表面処理鋼板

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0324295A (ja) * 1989-06-22 1991-02-01 Nippon Steel Corp 黒色表面処理鋼板の製造方法
JP2010090409A (ja) * 2008-10-03 2010-04-22 Nippon Parkerizing Co Ltd 表面処理金属材料、金属表面処理用処理液、塗装金属材料、およびそれらの製造方法
JP2016194137A (ja) * 2015-03-31 2016-11-17 新日鐵住金株式会社 表面処理鋼板、及び塗装部材
WO2016199852A1 (ja) * 2015-06-09 2016-12-15 新日鐵住金株式会社 表面処理鋼板

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
中野博昭、他4名: "硫酸塩水溶液からのZn-V酸化物複合電析", 鉄と鋼, vol. Wol.93、No.11, JPN6019028247, 1 November 2007 (2007-11-01), JP, pages 703 - 708, ISSN: 0004134985 *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2020121431A1 (ja) 2020-06-18
JPWO2020121431A1 (ja) 2021-02-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5383932B2 (ja) メタリック調外観を有するクロメートフリープレコート金属板およびその製造に用いる水系塗料組成物
Niknahad et al. The adhesion properties and corrosion performance of differently pretreated epoxy coatings on an aluminium alloy
JP6653026B2 (ja) 鋼板表面処理用溶液組成物、それを用いて表面処理された亜鉛系めっき鋼板、及びその製造方法
US7976902B2 (en) Coating solution for forming insulating film with excellent corrosion resistance property and film close adhesion property and film intensity without chrome and a method for making the insulation film on non-oriented electrical steel sheet by using it
US10706998B2 (en) Electrical steel sheet and method for producing electrical steel sheet
CN106232737B (zh) 耐腐蚀性涂料组合物
KR101725231B1 (ko) 도장 강판 및 외장 건재
Ramanathan et al. Comparative study on polyester epoxy powder coat and amide cured epoxy liquid paint over nano-zirconia treated mild steel
JP2012121331A (ja) 耐端面赤錆性に優れたクロムフリー塗装鋼板およびクロムフリー溶剤系塗料
KR102363571B1 (ko) 프리코트 강판
TW201638385A (zh) 電磁鋼板
KR20120008046A (ko) 표면 처리 금속판
JP6638867B1 (ja) 被覆鋼板
JP7120322B2 (ja) プレコート鋼板
Lewis et al. Conversion coatings for zinc electrodeposits from modified molybdate solutions
JP6750432B2 (ja) 有機樹脂被覆めっき鋼板
Tepe et al. Evaluation of pre-treatment processes for HRS (hot rolled steel) in powder coating
JP6123868B2 (ja) クロメートフリー着色塗装金属板の製造方法
CN113544312A (zh) 防腐蚀处理液及用途
Tepe et al. Evaluation of environmentally friendly Zr based nano structured conversion coating for HRS (Hot Rolled Steel) in powder coating
JP2009191245A (ja) 水性コーティング材
Tomachuk et al. Corrosion resistance of steel/zinc with silicate nanoparticles/polyurethane paint systems in NaCl solution
Jamil et al. Corrosion Resistance Synergistic Appraisal of Titanium-Impregnated Bisphenol A-Type Epoxy Duplex Coating System in Stimulated and Natural Marine Environments of Southeastern Coastal Area of China–Pakistan Economic Corridor
Jamil et al. Research Article Corrosion Resistance Synergistic Appraisal of Titanium-Impregnated Bisphenol A-Type Epoxy Duplex Coating System in Stimulated and Natural Marine Environments of Southeastern Coastal Area of China–Pakistan Economic Corridor
Hua Dong et al. Effects of composite ferrotitanium on epoxy coating

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190614

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20190614

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20190716

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190730

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190902

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20191023

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191113

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191126

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191209

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6638867

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151