以下、本発明の一実施形態であるスライドテーブル装置1を図1及び図2にもとづいて説明する。
図1および図2に示すように、スライドテーブル装置1は、断面T字形状のベース10と、ベース10にX軸方向に摺動自在に搭載されるテーブルと、後述する静圧ポケット2a、2b、5aに供給する流体の流量を制御する流量制御装置3と、流量制御装置3の上流側に接続される管路4と、管路4の上流側に接続されるポンプ11とを備えている。テーブルは、断面コ字形状のテーブル本体2と、テーブル本体2のX軸方向と交差する方向の両端の下部に固定される一対の裏板5とを備えている。
テーブル本体2は、ベース10に対向する下面に、静圧ポケット2aが前後左右の4箇所で下向きに開口している。ベース10に対向する側面に、静圧ポケット2bが前後左右の4箇所で横向きに開口している。また、裏板5は、ベース10に対向する上面に、静圧ポケット5aが前後左右の4箇所で上向きに開口している。静圧ポケット2a、2b、5aは、一定の深さを持った溝であり、ベース10側から見ると四角形状を有している。
テーブル本体2は、ベース10に対向する下面および側面間に、排出溝2eが形成され、ベース10に対向する下面に、一対の静圧ポケット2a間で排出溝2fが形成されている。また、裏板5の上面には、これとテーブル本体2の側面とが交差する位置で排出溝5bが形成されている。
図2に示すように、テーブル本体2および一対の裏板5は、静圧ポケット2a、2b、5aの周囲でベース10側へ突出したベース面2d、5dを有し、ベース面2d、5dはベース10と平行な面を有し、図3に示すようにベース面2d、5dおよびベース10間に可変絞り38を構成する。この可変絞り38は、図2に示すように静圧ポケット2a、2b、5aから排出溝2e、2f、5bあるいは外部へ至る途中で設けられている。図3に示すようにベース面2d、5dおよびベース10間の隙間t1を変えることによって、可変絞り38の開度が変えられるようになっている。
テーブル本体2および一対の裏板5に複数の流量制御装置3が固定されている。一つの流量制御装置3に対し一つの静圧ポケット2a、2b、5aが下流側で連通している。流量制御装置3は、静圧ポケット2a、2b、5aの圧力に応じてこれに供給する流体の流量を制御する機能を有する。静圧ポケット2a、2b、5aは、ベース10との間で静圧を発生させる機能を有する。テーブル本体2および一対の裏板5には、静圧ポケット2a、2b、5aを流量制御装置3の後述する第1吐出通路31eに連通する第2吐出通路2cが形成されている。
各流量制御装置3は、上流側で管路4を介してポンプ11に連通している。管路4およびポンプ11は、テーブルの外に設けられている。管路4は、流量制御装置3とポンプ11を繋ぐ機能を持っている。ポンプ11は、静圧ポケット2a、2b、5aに流体を供給する機能を持っている。
テーブル本体2および一対の裏板5には、図3に示すように流量制御装置3を設置する円筒形状の設置穴2gが開口され、各設置穴2gに流量制御装置3が嵌め込まれ、ボルト36を介して流量制御装置3は、テーブル本体2および一対の裏板5に固定されている。
流量制御装置3は、いくつかの実施形態があり、順に説明する。第1の実施形態として、流量制御装置3は、図3に示すように、弁筐30と、弁筐30の内部室を吐出室31aと背圧室32aとに区画する円盤状で鋼板製のダイアフラム33とを備えている。
弁筐30は、第1の弁筐体31と、第1の弁筐体31にボルト35を介して連結される第2の弁筐体32とを備えている。第1の弁筐体31および第2の弁筐体32には、互いに密接する一対の合せ面31n、32nを有する。第1の弁筐体31の中央には円筒状の嵌合凸部31bが形成され、第2の弁筐体32の右面中央には円筒状の嵌合凹部32bが形成され、嵌合凹部32bに嵌合凸部31bが嵌合されている。
嵌合凸部31bの中央には、僅かに凹んだ円筒状の第1圧力凹部31cが形成され、嵌合凸部31bの外径側には、ダイアフラム33が載置される載置面31dが形成されている。
第1圧力凹部31cの底面中央には、第1吐出通路31eの一端が開口している。第1圧力凹部31cの底面には、半径方向の途中に環状凹部31fが形成されている。第1圧力凹部31cの底面は、環状に凹んだ環状凹部31fによって、内径側の弁座面31gと、外径側の減衰ランド31hに分けられる。
第2の弁筐体32の嵌合凹部32bの中央には、凹んだ円筒状の第2圧力凹部32cが形成され、嵌合凹部32bの外周には、ダイアフラム33を収容する収容面32dが形成されている。第2圧力凹部32cの底面中央には、供給通路32eの他端が開口している。
ダイアフラム33は、厚さ0.4mm程度の弾性部材であり、外力がかからず弾性変形が無い自然状態で背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状を有している。これが、ダイアフラム33自体が持つ初期設定機能である。ダイアフラム33は、載置面31dおよび収容面32d間に配置され、ダイアフラム33は載置面31dに接し、収容面32dに対しては隙間を有している。ダイアフラム33には、左右に貫通する貫通孔33aが、環状凹部31fに対応する位置で円周方向に複数形成されている。
ダイアフラム33および第2圧力凹部32cによって背圧室32aが構成され、ダイアフラム33および第1圧力凹部31cによって吐出室31aが構成される。吐出室31a内において、環状凹部31fから第1吐出通路31eへ至る途中で可変絞り37が設けられている。可変絞り37は、ダイアフラム33および弁座面31g間に設けられ、ダイアフラム33および弁座面31g間の隙間t2を変えることによって、可変絞り37の開度が変えられるようになっている。ダイアフラム33の背圧室32a側には、可変絞り37前の圧力が作用し、ダイアフラム33の吐出室31a側でかつ弁座面31gの外径側には、可変絞り37前の圧力が作用し、ダイアフラム33の吐出室31a側でかつ弁座面31gの内径側には、可変絞り37後の圧力が作用する。こうして、流量制御装置3は、可変絞り37前後の圧力差が大きくなると隙間t2が減少して、環状凹部31fから第1吐出通路31eへ流れる流体の流量を減少させ、可変絞り37前後の圧力差が小さくなると隙間t2が増加して、環状凹部31fから第1吐出通路31eへ流れる流体の流量を増加させる働きをする。
次に本発明の一実施形態である静圧流体軸受装置の動作について説明する。この場合、第1の実施形態である流量制御装置3の動作も併せて説明する。
図2に示すようにポンプ11から管路4を経て各流量制御装置3へ流体が供給され、図3に示すように背圧室32a、ダイアフラム33の貫通孔33a、可変絞り37、第1吐出通路31eおよび第2吐出通路2cを経由して図2に示すように静圧ポケット2a、2b、5aへ流体が供給される。
静圧ポケット2aからは、可変絞り38へ経て排出溝2e、2fへ流体が流出する。静圧ポケット2bからは、ベース面2dとベース10との間の隙間t1、すなわち可変絞り38を経て排出溝2e、5bへ流体が流出する。静圧ポケット5aからは、可変絞り38を経て排出溝5bおよび外部へ流体が流出する。
静圧ポケット2bには、研削力あるいは切削力の水平方向の力と、対向する静圧ポケット2bの静圧とが作用する。静圧ポケット5aには、研削力あるいは切削力の垂直方向の力と、対向する静圧ポケット2aの静圧が作用する。静圧ポケット2aには、研削力あるいは切削力の垂直方向の力と、対向する静圧ポケット5aの静圧と、テーブルの自重とが作用する。
各静圧ポケット2a、2b、5aは、流路の前後に可変絞り37および可変絞り38を有し、可変絞り37前と可変絞り38後の圧力差が、他の可変絞り37前と可変絞り38後の圧力差と同じになるように、可変絞り38の変化に呼応して可変絞り37が変化する。すなわち、可変絞り38の絞り抵抗が増加すると、可変絞り37の絞り抵抗が減少し、可変絞り38の絞り抵抗が減少すると、可変絞り37の絞り抵抗が増加する。
静圧ポケット2bを例に動作を説明する。研削力の水平方向の力が作用すると、一方の静圧ポケット2bの可変絞り38の絞り抵抗が減少する。
可変絞り38の絞り抵抗が減少(t1増加)すると、図3に示すようにダイアフラム33の背圧室32a側の面に作用する圧力P0と、ダイアフラム33の吐出室31a側の面に第1吐出通路31eと対応する位置で作用する圧力P1と、ダイアフラム33の弾性変形の復元力とが釣り合う位置へダイアフラム33が変形する。すなわち、ダイアフラム33は、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が大きくなり、嵌合凸部31bの方向に押される力を受けて、吐出室31a側に撓んだ形状(t2減少)に弾性変形(変位)する。
研削力の水平方向の力が無くなり、可変絞り38の絞り抵抗が増加すると、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が小さくなり、ダイアフラム33は、平板状になり、背圧室32a側へ凸状に弾性復帰する復元力を蓄えた状態となる。すなわち、ダイアフラム33の背圧室32a側の面に作用する圧力P0と、ダイアフラム33の吐出室31a側の面に第1吐出通路31eと対応する位置で作用する圧力P1と、ダイアフラム33の弾性変形の復元力とが釣り合った状態である。
流量制御装置3へポンプ11から流体が供給されていない状態では、ダイアフラム33に流体の圧力が作用せず、図4に示すようにダイアフラム33は、弾性変形の復元力がゼロとなり、これ自体の自然状態、すなわち、背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状になる。
流量制御装置3と静圧ポケット2bを含む流路に圧力変動、すなわち圧力振動が発生した場合、ダイアフラム33が平板状から背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状に変形あるいは背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状から平板状に変形し、これらの変形が交互に行われ、ダイアフラム33と弁座面31gおよび減衰ランド31hとの間の流体の粘性抵抗とによって、ダイアフラム33の撓み変形が抑えられ、結果として流量制御装置3と静圧ポケット2a、2b、5aを含む流路に圧力変動、すなわち圧力振動が抑えられる。よって、静圧ポケット2bの圧力に連成してダイアフラム33が自励振動するのを抑えられる。
上述した第1の実施形態として、ダイアフラム33は、弁座面31gおよび減衰ランド31hに接近した状態から、弁座面31gおよび減衰ランド31hに平行な状態(図3)へ変化したり、逆に、弁座面31gおよび減衰ランド31hに平行な状態(図3)から弁座面31gおよび減衰ランド31hに接近した状態に変化する。圧力差(=圧力P0−圧力P1)があるときにダイアフラム33が平板状になるようにし、しかも弁座面31gおよび減衰ランド31hがダイアフラム33と平行に形成されている(図3)ので、弁座面31gおよび減衰ランド31hの加工が容易になる。これに対し、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が無いときに平板状になる従来のダイアフラム33を使用すると、圧力差(=圧力P0−圧力P1)によってダイアフラム33が減衰ランド31h側へ撓んだ形状から、より大きな圧力差(=圧力P0−圧力P1)によってダイアフラム33が減衰ランド31h側へさらに撓んだ形状に変化する。減衰ランド31h側へ撓んだダイアフラム33と弁座面31gおよび減衰ランド31hとを平行な位置関係とするには、弁座面31gおよび減衰ランド31hをすり鉢状に加工しなければならず、加工が大変である。
静圧ポケット2a、2b、5a毎に流量制御装置3のダイアフラム33の弾性係数が異なる。研削力あるいは切削力が作用しない平衡状態で、流量制御装置3のダイアフラム33が平板状になるようにするには、静圧ポケット5aに通じる流量制御装置3のダイアフラム33の弾性係数を最も大きく、静圧ポケット2aに通じる流量制御装置3のダイアフラム33の弾性係数を最も小さくする必要がある。これは、静圧ポケット5aの可変絞り38前後の圧力差は小さく、静圧ポケット5aの可変絞り37前後の圧力差は大きく、静圧ポケット2aの可変絞り38前後の圧力差は大きく、静圧ポケット5aの可変絞り37前後の圧力差は小さいためである。
第2の実施形態として、流量制御装置3は、図5乃至図7に示すように、弁筐30と、弁筐30の内部室を吐出室31aと背圧室32aとに区画する円盤状で鋼板製のダイアフラム33とを備えている。第1の実施形態と同一部品、同一部位、同一面については、同一番号を付与し、第2の実施形態としての流量制御装置3の説明を割愛する。
ダイアフラム33は、外力がかからず、弾性変形が無い自然状態で平板状の形状を有している。ダイアフラム33は、後述する初期設定機能によって、図6に示すように背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状を有している。
嵌合凸部31bには、第1圧力凹部31cの外径側でダイアフラム33が載置される載置面31jが形成され、載置面31dの外径側でテーパ面31kが形成され、テーパ面31kの外径側で背圧室32aと反対側へ凹んだ環状の凹部が形成されている(図7)。
載置面31dは、第1圧力凹部31cに対して背圧室32a側へ突出した平らな面である。テーパ面31kは、外径側に向って背圧室32aと反対側へ傾斜した面である。初期設定機能によって、ダイアフラム33が背圧室32a側へ凸状に撓んだときに、ダイアフラム33は、テーパ面31kと面接触する。環状の凹部は、ダイアフラム33が背圧室32a側へ凸状に撓んだときに、ダイアフラム33の外周が接触しないように逃がす溝である(図7)。
第2の弁筐体32の嵌合凹部32bには、第2圧力凹部32cの外径側でダイアフラム33を収容する収容面が形成され、収容面の外径側で吐出室31aと反対側へ凹んだ環状のリング溝32fが形成されている。収容面は、第2圧力凹部32cに対して吐出室31a側へ突出した平らな面である。リング溝32fには、環状のOリング34が配置されている。Oリング34は、ゴム製の弾性部材であり、ダイアフラム33に接触した状態において、圧縮変形されている。
ダイアフラム33を背圧室32a側へ凸状に撓ませる初期設定機能は、載置面31dと、Oリング34とを有する。この所期設定機能は、載置面31dを支点にし、ダイアフラム33の外周をOリング34の作用点にしている。載置面31dに対しOリング34の位置を変えることによって、ダイアフラム33の撓み量を変えることができる。載置面31dに対しOリング34を近づける程、ダイアフラム33の背圧室32a側への撓み量が大きくなる。支点である載置面31dと、作用点であるOリング34との間の距離が、モーメント長さであり、モーメント長さが大きい程、ダイアフラム33を撓ませる力が大きくなる。Oリング34の弾性係数が大きい程、ダイアフラム33を撓ませる力が大きくなる。
静圧ポケット2bを例に動作を説明する。研削力の水平方向の力が作用すると、一方の静圧ポケット2bの可変絞り38の絞り抵抗が減少する。
可変絞り38の絞り抵抗が減少(t1増加)すると、ダイアフラム33の背圧室32a側の面に作用する圧力P0と、ダイアフラム33の吐出室31a側の面に第1吐出通路31eと対応する位置で作用する圧力P1と、ダイアフラム33の弾性変形の復元力と、Oリング34の弾性変形の復元力とが釣り合う位置へダイアフラム33が変形する。すなわち、ダイアフラム33は、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が大きくなり、嵌合凸部31bの方向に押される力を受けて、吐出室31a側に撓んだ形状(t2減少)に弾性変形(変位)する。
研削力の水平方向の力が無くなり、可変絞り38の絞り抵抗が増加すると、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が小さくなり、ダイアフラム33は、図5に示すように平板状になり、これ自体の弾性復元力はゼロの状態になり、Oリング34が大きく弾性変形し、大きな復元力を蓄えた状態となる。すなわち、ダイアフラム33の背圧室32a側の面に作用する圧力P0と、ダイアフラム33の吐出室31a側の面に第1吐出通路31eと対応する位置で作用する圧力P1と、Oリング34の弾性変形の復元力とが釣り合った状態である。
流量制御装置3へポンプ11から流体が供給されていない状態では、ダイアフラム33に流体の圧力が作用せず、Oリング34の弾性変形の復元力によってダイアフラム33は図6に示すように背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状になる。すなわち、ダイアフラム33の弾性変形の復元力と、Oリング34の弾性変形の復元力とが釣り合った状態である。
流量制御装置3と静圧ポケット2bを含む流路に圧力変動、すなわち圧力振動が発生した場合、ダイアフラム33が平板状から弁座面31gおよび背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状に変形あるいは弁座面31gおよび背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状から平板状に変形し、これらの変形が交互に行われ、ダイアフラム33と弁座面31gおよび減衰ランド31hとの間の流体の粘性抵抗とによって、ダイアフラム33の撓み変形が抑えられ、結果として流量制御装置3と静圧ポケット2a、2b、5aを含む流路に圧力変動、すなわち圧力振動が抑えられる。よって、静圧ポケット2bの圧力に連成してダイアフラム33が自励振動するのを抑えられる。
上述した第2の実施形態として、ダイアフラム33は、弁座面31gおよび減衰ランド31hに接近した状態から、弁座面31gおよび減衰ランド31hに平行な状態(図5)へ変化したり、逆に、弁座面31gおよび減衰ランド31hに平行な状態(図5)から弁座面31gおよび減衰ランド31hに接近した状態に変化する。圧力差(=圧力P0−圧力P1)があるときにダイアフラム33が平板状になるようにし、しかも弁座面31gおよび減衰ランド31hがダイアフラム33と平行に形成されているので、弁座面31gおよび減衰ランド31hの加工が容易になる。
これに対し、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が無いときに平板状になる従来のダイアフラム33を使用すると、圧力差(=圧力P0−圧力P1)によってダイアフラム33が弁座面31gおよび減衰ランド31h側へ撓んだ形状から、より大きな圧力差(=圧力P0−圧力P1)によってダイアフラム33が弁座面31gおよび減衰ランド31h側へさらに撓んだ形状に変化する。弁座面31gおよび減衰ランド31h側へ撓んだダイアフラム33と弁座面31gおよび減衰ランド31hとを平行な位置関係とするには、弁座面31gおよび減衰ランド31hをすり鉢状に加工しなければならず、加工が大変である。
載置面31dのテーパ面31k側の端が、曲げモーメントがかかるときの支点となるが、載置面31dとテーパ面31kが連続して設けられているので、載置面31dのテーパ面31k側の端が摩耗しにくい。
上述した第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、Oリング34の分だけ部品点数が多くなるものの、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が小さくなると、ダイアフラム33本来の平板状に戻るので、ダイアフラム33と弁座面31gおよび減衰ランド31hとの間の流体の粘性抵抗が、第1の実施形態と比較して若干大きくなる効果が得られる。
第3の実施形態として、流量制御装置3は、図8及び図9に示すように、弁筐30と、弁筐30の内部室を吐出室31aと背圧室32aとに区画する円盤状で鋼板製のダイアフラム33とを備えている。第1の実施形態と同一部品、同一部位、同一面については、同一番号を付与し、第3の実施形態としての流量制御装置3の説明を割愛する。
ダイアフラム33は、外力がかからず、弾性変形が無い自然状態で平板状の形状を有している。ダイアフラム33は、後述する初期設定機能によって、図9に示すように背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状を有している。
嵌合凸部31bには、第1圧力凹部31cの外径側でダイアフラム33が載置される載置面31jが形成され、載置面31jの外径側で背圧室32aと反対側へ凹んだ環状の凹部が形成されている。
載置面31jは、第1圧力凹部31cに対して背圧室32a側へ突出した平らな面である。環状の凹部は、ダイアフラム33が背圧室32a側へ凸状に撓んだときに、ダイアフラム33の外周が接触しないように逃がす溝である。
第2の弁筐体32の嵌合凹部32bには、第2圧力凹部32cの外径側でダイアフラム33を収容する収容面が形成され、収容面の外径側で吐出室31aへ突出した押圧面31mが形成されている。収容面は、第2圧力凹部32cに対して吐出室31a側へ突出した平らな面である。押圧面31mは、収容面に対して吐出室31a側へ突出した平らな面である。押圧面31mは、ダイアフラム33の外周を常に押圧している。
ダイアフラム33を背圧室32a側へ凸状に撓ませる初期設定機能は、載置面31jと、押圧面31mとを有する。この所期設定機能は、載置面31jをダイアフラム33の支点にし、押圧面31mをダイアフラム33の作用点にしている。ダイアフラム33の厚さ方向において載置面31jに対し押圧面31mの位置を変えることによって、ダイアフラム33の撓み量を変えることができる。載置面31jに対し押圧面31mを近づける程、ダイアフラム33の背圧室32a側への撓み量が大きくなる。ダイアフラム33の径方向において支点である載置面31jと、作用点である押圧面31mとの間の距離が、モーメント長さであり、モーメント長さが大きい程、ダイアフラム33を撓ませる力が大きくなる。
静圧ポケット2bを例に動作を説明する。研削力の水平方向の力が作用すると、一方の静圧ポケット2bの可変絞り38の絞り抵抗が減少する。
可変絞り38の絞り抵抗が減少(t1増加)すると、ダイアフラム33の背圧室32a側の面に作用する圧力P0と、ダイアフラム33の吐出室31a側の面に第1吐出通路31eと対応する位置で作用する圧力P1と、ダイアフラム33の弾性変形の復元力と、Oリング34の弾性変形の復元力とが釣り合う位置へダイアフラム33が変形する。すなわち、ダイアフラム33は、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が大きくなり、嵌合凸部31bの方向に押される力を受けて、吐出室31a側に撓んだ形状(t2減少)に弾性変形(変位)する。
研削力の水平方向の力が無くなり、可変絞り38の絞り抵抗が増加すると、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が小さくなり、ダイアフラム33の中央部分は、図8に示すようにほぼ平板状になり、背圧室32a側へ凸状に弾性復帰する復元力を蓄えた状態となる。すなわち、ダイアフラム33の背圧室32a側の面に作用する圧力P0と、ダイアフラム33の吐出室31a側の面に第1吐出通路31eと対応する位置で作用する圧力P1と、ダイアフラム33の弾性変形の復元力とが釣り合った状態である。
流量制御装置3へポンプ11から流体が供給されていない状態では、ダイアフラム33に流体の圧力が作用せず、載置面31jをダイアフラム33の支点にし、押圧面31mをダイアフラム33の作用点にしてダイアフラム33に曲げモーメントをかけ、図9に示すようにダイアフラム33を背圧室32a側へ凸状に撓ませた状態となる。すなわち、ダイアフラム33の弾性変形の復元力と、作用点及び支点による曲げモーメントとが釣り合った状態である。
流量制御装置3と静圧ポケット2bを含む流路に圧力変動、すなわち圧力振動が発生した場合、ダイアフラム33の中央部分がほぼ平板状(図8)から弁座面31gおよび背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状に変形あるいは弁座面31gおよび背圧室32a側へ凸状に撓んだ形状からほぼ平板状(図8)に変形し、これらの変形が交互に行われ、ダイアフラム33と弁座面31gおよび減衰ランド31hとの間の流体の粘性抵抗とによって、ダイアフラム33の撓み変形が抑えられ、結果として流量制御装置3と静圧ポケット2a、2b、5aを含む流路に圧力変動、すなわち圧力振動が抑えられる。よって、静圧ポケット2bの圧力に連成してダイアフラム33が自励振動するのを抑えられる。
上述した第3の実施形態として、ダイアフラム33は、弁座面31gおよび減衰ランド31hに接近した状態から、弁座面31gおよび減衰ランド31hに平行な状態(図8)へ変化したり、逆に、弁座面31gおよび減衰ランド31hに平行な状態(図8)から弁座面31gおよび減衰ランド31hに接近した状態に変化する。圧力差(=圧力P0−圧力P1)があるときにダイアフラム33の中央部分がほぼ平板状になるようにし、しかも弁座面31gおよび減衰ランド31hがダイアフラム33の中央部分と平行に形成されているので、弁座面31gおよび減衰ランド31hの加工が容易になる。
これに対し、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が無いときに曲げモーメントが無く、平板状になる従来のダイアフラム33を使用すると、圧力差(=圧力P0−圧力P1)によってダイアフラム33が弁座面31gおよび減衰ランド31h側へ撓んだ形状から、より大きな圧力差(=圧力P0−圧力P1)によってダイアフラム33が弁座面31gおよび減衰ランド31h側へさらに撓んだ形状に変化する。弁座面31gおよび減衰ランド31h側へ撓んだダイアフラム33と弁座面31gおよび減衰ランド31hとを平行な位置関係とするには、弁座面31gおよび減衰ランド31hをすり鉢状に加工しなければならず、加工が大変である。
上述した第3の実施形態は、第2の実施形態と比較して、Oリング34の分だけ部品点数が少なくなる効果が得られるものの、圧力差(=圧力P0−圧力P1)が小さくなったとき、ダイアフラム33の中央部分のみほぼ平板状になるので、第2の実施形態と比較して、ダイアフラム33と弁座面31gおよび減衰ランド31hとの間の流体の粘性抵抗が若干小さくなる。
本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
上述した第1の実施形態乃至第3の実施形態は、ダイアフラム33に上下に貫通する貫通孔33aを形成し、貫通孔33aは、連絡通路として背圧室32aおよび吐出室31aを連通させ、供給通路32eおよび第1吐出通路31eを同軸にしかもダイアフラム33の厚さ方向に配置した。他の実施形態として、ハウジングにダイアフラム33の径方向に第2圧力凹部32cに連通する第1供給通路32gを形成し、ハウジングにダイアフラム33の径方向に環状凹部31fに連通する第2供給通路31pを形成し、ハウジングに第1供給通路32gおよび第2供給通路31pが合流する第3供給通路を形成しても良い。第1供給通路32g、第2供給通路31p、第3供給通路の一部が、背圧室32aおよび吐出室31aを連通する連絡通路としての役目を持つ。
上述した第1の実施形態乃至第3の実施形態は、静圧ポケット2a、2b、5aに供給される流体の流量を流量制御装置3によって制御する例について述べた。他の実施形態として、油圧シリンダーに供給される流体の流量を流量制御装置3によって制御しても良い。
上述した第1の実施形態乃至第3の実施形態は、静圧ポケット2a、2b、5aに供給される流体の流量を流量制御装置3によって制御する例について述べた。他の実施形態として、転がり軸受に潤滑油を供給するノズルを備え、ノズルに供給される流体の流量を流量制御装置3によって制御しても良い。