JP6637393B2 - 四重極型質量分析計及び質量分析方法 - Google Patents

四重極型質量分析計及び質量分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、選択イオン検出測定及びスキャン測定を行う質量分析計及び質量分析計及び質量分析計を使用した質量分析方法に関する。
質量分析を行う装置としては、例えば、4つの電極を有する四重極型質量分析計が実用化されている。四重極型質量分析計は、四重極質量電極を備え、その四重極質量電極に印加する電圧によって、特定の質量電荷比(質量mと電荷zの比の値:m/z)を持つイオンのみを四重極質量電極を通過させて、その通過したイオンを検出するものである。四重極質量電極に印加する電圧は、直流電圧と高周波交流電圧を重畳した電圧であり、測定手法ごとに予め設定された条件で決まる電圧である。
このような四重極型質量分析計でイオン検出を行う際の測定手法としては、選択イオン検出測定と称される測定手法と、スキャン測定と称される測定手法とがある。
選択イオン検出測定手法は、ターゲットとなる質量電荷比に対応した電圧を四重極質量電極に印加して、そのターゲットとなる質量電荷比のイオン強度を検出するものである。ターゲットが複数存在する場合には、各ターゲットの質量電荷比に対応して、一定期間毎に四重極質量電極の電圧を複数段階に変化させる。以下の説明では、選択イオン検出測定は、SIM(Selected Ion Monitoring)測定と称する。
SIM測定は、例えば麻薬の検査やドーピング検査のように、既知であるターゲット物質がどの程度混入しているかを検査する定量分析に適している。
SIM測定手法では、四重極質量電極に、ターゲットになる質量電荷比に対応した特定の電圧を印加して、測定が行われる。この場合、ある1つの質量電荷比に対応した電圧を一定時間四重極質量電極に印加して、多くのサンプリング値を取得し、各サンプル値を積分する処理が行われる。したがって、SIM測定時には、SN比の高い測定結果を得ることができる。
一方、スキャン測定手法は、開始電圧から終了電圧までの範囲で、連続的に電圧を変化させ、一定の範囲内で連続的にイオン強度を検出するものである。すなわち、スキャン測定手法は、所定範囲の質量電荷比のイオンを全て検出する。スキャン測定時には、四重極質量電極に印加する電圧が連続的に変化するため、広範囲な質量域の測定結果を得ることができる。但し、スキャン測定時のSN比は、SIM測定時より悪くなる。
スキャン測定は、未知のサンプルに対して、どのような物質が存在するかを判断する定性分析に適している。
また、従来の質量分析計としては、例えば特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、スキャン測定とSIM測定を行うことが記載されている。
特開2000−195464号公報
ところで、スキャン測定手法で測定する場合と、SIM測定手法で測定する場合とでは、各測定で得られる信号波形の特性及び周波数帯域が異なる。すなわち、スキャン測定時には、スキャン速度に符合した高周波成分が含まれる。一方、SIM測定時には、特定の信号成分のみを取得するため、取り込まれる信号波形はほぼ直流成分になる。
このように測定手法によって得られる信号波形の特性が異なるが、特許文献1に記載された技術では、フィルタの特性及び周波数帯域が1つに固定されていた。その結果、従来の質量分析計では、いずれか一方の手法での測定時の特性が犠牲になっていた。例えば、フィルタの特性及び周波数帯域を、SIM測定時に得られる直流成分を整形するために好適な特性及び周波数帯域に合わせた場合、スキャン測定時において、ピーク成分がフィルタ回路でカットされて、適切なピーク検出ができなくなる可能性がある。
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、SIM測定とスキャン測定のいずれの測定手法であっても良好に質量分析を行える質量分析計及び質量分析方法を提供することにある。
本発明の質量分析計は、イオン源と、分析部と、検出器と、フィルタ部と、データ処理部と、制御部と、を備えている。イオン源は、試料をイオン化する。分析部は、イオン源で発生したイオンを質量電荷比ごとに分離させる。検出器は、分析部を通過したイオンを検出する。フィルタ部は、検出器で得たイオン検出信号を通過させて、整形する。データ処理部は、フィルタ部を通過したイオン検出信号から質量分析結果を得る。制御部は、分析部で分離された特定の質量電荷比のイオンを検出器で検出させる選択イオン検出測定と、分析部で分離された所定範囲の質量電荷比のイオンを検出器で定量的に検出させるスキャン測定とを、選択的に実行させる。そして、制御部は、選択イオン検出測定を行う場合と、スキャン測定を行う場合とで、フィルタ部における通過させる信号の応答特性、又は通過させる信号の周波数帯域のうち少なくとも一方を変化させる。
また本発明の質量分析方法は、以下(1)から(5)に示す工程を含んでいる。
(1)イオン源により試料をイオン化させる工程。
(2)イオン源で発生したイオンを質量電荷比ごとに分析部で分離させる工程。
(3)分析部を通過したイオンを検出器で検出する工程。
(4)検出器で得たイオン検出信号を通過させて、フィルタ部で整形する工程。
(5)フィルタ部を通過したイオン検出信号から質量分析結果をデータ処理部で得る工程。
また、分析部で分離された特定の質量電荷比のイオンを検出器で検出させる選択イオン検出測定と、分析部で分離された所定範囲の質量電荷比のイオンを検出器で定量的に検出させるスキャン測定とを、制御部により選択的に実行させる。そして、制御部は、選択イオン検出測定を行う場合と、スキャン測定を行う場合とで、フィルタ部における通過させる信号の応答特性、又は通過させる信号の周波数帯域のうち少なくとも一方を変化させる。
本発明の質量分析計及び質量分析方法によれば、SIM測定とスキャン測定のいずれの測定手法であっても良好に質量分析を行うことができる。
本発明の第1の実施の形態例にかかる質量分析計を示す構成図である。 本発明の第1の実施の形態例にかかるフィルタ部におけるフィルタ回路の回路図である。 本発明の第1の実施の形態例にかかるスキャン測定状態の例を示す特性図である。 本発明の第1の実施の形態例にかかるSIM測定状態の例を示す特性図である。 本発明の第1の実施の形態例にかかる測定手順の例を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態例にかかるスキャン測定時とSIM測定時の周波数特性及び周波数帯域の例を示す特性図である。 検出信号に含まれる周波数成分を示す説明図である。 フィルタ部の特性例を示す特性図である。 本発明の第2の実施の形態例にかかる質量分析計を示す構成図である。 本発明の第3の実施の形態例にかかる質量分析計を示す構成図である。
以下、本発明の質量分析計及び質量分析方法の実施の形態例について図1〜図10を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
1.第1の実施の形態例
1−1.質量分析計の構成例
まず、図1〜図7を参照して質量分析計の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)について説明する。
図1は、本例の質量分析計の構成例を示す図である。
図1に示す装置は、本発明の質量分析計の一例として、4つの電極を有する四重極型質量分析計(質量分析計)100を適用したものである。この質量分析計100は、四重極質量電極を使ってイオン化された試料の分析を行う装置であり、測定を行うモードとして、SIM測定モードとスキャン測定モードの2種類が用意されている。各モードの詳細については後述する。
質量分析計100は、イオン源120と、イオン光学系130と、分析部140と、検出器150と、制御ボード160とを備えている。質量分析計100は、試料前処理装置200で前処理された試料がインターフェース110を介してイオン源120に供給される。インターフェース110を配置するのは1つの例であり、試料前処理装置200とイオン源120とが直接接続された構成としてもよい。
制御ボード160は、制御部161と、フィルタ印加電圧生成部164と、IVアンプ166と、アナログ/デジタル変換器167と、デジタルフィルタ回路170と、データ処理部168と、フィルタ特性パラメータメモリ180とを有している。
イオン源120は、試料前処理装置200から供給された試料をイオン化する。イオン源120で得られたイオンiは、イオン光学系130を介して分析部140に供給される。
そして、分析部140を通過したイオンiの強度が検出器150で検出される。イオン源120及びイオン光学系130には、制御ボード160から、出力が駆動信号として供給される。なお、制御ボード160とイオン源120及びイオン光学系130との間には、アンプなどの回路部品を配置してもよい。
分析部140は、イオン源120で発生したイオンを質量電荷比に応じて分離させる。また、分析部140は、電極部の一例を示す四重極質量電極141を備える。この四重極質量電極141は、4本の円柱状電極から構成されている。四重極質量電極141は、円柱状電極に印加された電圧に対応した質量電荷比(質量/電荷:m/z)を持つイオンのみが通過し、その他の質量電荷比のイオンは電極に衝突して通過できないように構成される。四重極質量電極141の各円柱状電極には、制御ボード160のフィルタ印加電圧生成部164で生成された電圧が印加される。このフィルタ印加電圧生成部164により四重極質量電極141に印加される電圧は、制御部161の制御下で設定される。
フィルタ印加電圧生成部164から四重極質量電極141に印加される電圧Vsは、次式により定義される。
Vs=±(V+Ucosωt)
ここで、Vは直流電圧、Uは高周波の交流電圧の最大値(ピーク値)である。ωは、ω=2π×fで定義される角周波数である(fは周波数)。制御部161は、印加電圧Vsを可変する際に、高周波交流電圧のピーク値Uと直流電圧Vの比率が一定になるように制御する。
この印加電圧Vsで、四重極質量電極141を通過する質量電荷比が決まる。
検出器150から出力されるイオン強度の信号は、電流を電圧に変換するIVアンプ166を介してアナログ/デジタル変換器167に供給される。アナログ/デジタル変換器167は、供給されるイオン検出信号(アナログ信号)をデジタルデータに変換する。
アナログ/デジタル変換器167により変換されたデジタルデータは、フィルタ部の一例を示すデジタルフィルタ回路170を介してデータ処理部168に供給される。デジタルフィルタ回路170は、供給されるイオン検出信号(デジタルデータ)をデジタル処理で波形整形して出力する回路である。デジタルフィルタ回路170としては、例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタが使用される。
デジタルフィルタ回路170は、通過させる信号の応答特性(フィルタ特性)及び通過させる信号の周波数帯域(周波数帯域)が変化可能に構成されている。そして、デジタルフィルタかいど170のフィルタ特性及び周波数帯域を決めるパラメータは、フィルタ特性パラメータメモリ180から供給されてセットされる。フィルタ特性パラメータメモリ180は、少なくとも2種類のパラメータを保持し、測定モード(スキャン測定モードとSIM測定モード)によってデジタルフィルタ回路170にセットするパラメータを切替える処理を行う。このパラメータを切替える処理は、制御部161の制御下で実行される。
デジタルフィルタ回路170とフィルタ特性パラメータメモリ180の詳細構成については後述する(図2)。
デジタルフィルタ回路170を通過したデジタルデータは、データ処理部168に供給される。データ処理部168は、デジタルフィルタ回路170から供給されるデータの積算などのデータ処理を行い、イオン強度のデータを取得する。データ処理部168で得られたイオン強度のデータは、制御部161に送られる。制御部161は、四重極質量電極141に供給した電圧と、データ処理部168から送られたイオン強度のデータとから、質量分析結果のデータを作成する。制御部161が作成した質量分析結果のデータは、例えば、RAMに記憶されたり、外部の表示部に表示されたりする。
1−2.フィルタ回路の構成例
次に、図2を参照してフィルタ部の一例を示すデジタルフィルタ回路170とフィルタ特性パラメータメモリ180の構成例を説明する。
図2は、デジタルフィルタ回路170とフィルタ特性パラメータメモリ180の構成を示す回路図である。
図2に示すデジタルフィルタ回路170は、FIRフィルタを適用した例である。図2に示すように、デジタルフィルタ回路170は、入力端子171と、複数の遅延素子172,172,172,・・・,172と、複数の係数乗算器173,173,173,・・・,173と、複数の加算器174,174,174,・・・,174と、出力端子175とを備えている。また、フィルタ特性パラメータメモリ180は、第1メモリ群181と、第2メモリ群182、入力端子183とを備えている。
入力端子171には、n個(nは整数)の遅延素子172,172,172,・・・,172が直列に接続される。遅延素子172〜172の段数(個数)nは、例えば125個程度とする。それぞれの遅延素子172〜172は、このデジタルフィルタ回路170を駆動するクロックに同期して、入力データを1クロックずつ遅延させる素子である。
そして、1段目の遅延素子172の入力データと、各段の遅延素子172〜172の出力データを、それぞれ係数乗算器173,173,173,・・・,173に供給する。また、これらの係数乗算器173〜173には、フィルタ特性パラメータメモリ180の第1メモリ群181又は第2メモリ群から係数値が供給される。そして、係数乗算器173〜173には、メモリ群181又は182から供給される係数値がセットされる。
すなわち、第1メモリ群181は、n個のメモリ181,181,181,・・・,181を備え、各メモリ181〜181が係数値h(0),h(1),h(2),・・・h(n)を保持する。また、第2メモリ群182についても、n個のメモリ182,182,182,・・・,182を備え、各メモリ181〜182が係数値h(0)′,h(1)′,h(2)′,・・・h(n)′を保持する。
第1メモリ群181の各メモリ181〜181が保持する係数値h(0)〜h(n)は、スキャン測定モードで測定する際に使用する値である。第2メモリ群182の各メモリ182〜182が保持する係数値h(0)′〜h(n)′は、SIM測定モードで測定する際に使用する値である。
また、フィルタ特性パラメータメモリ180の入力端子183には、制御部161から切替え指令が入力される。そして、入力端子183に得られる切替え指令により、デジタルフィルタ回路170の係数乗算器173〜173にセットされる係数値が、第1メモリ群181が保持した係数値h(0)〜h(n)と、第2メモリ群182が保持した係数値h(0)′〜h(n)′のいずれか一方に選択される。
なお、第1メモリ群181が保持した係数値h(0)〜h(n)をセットしたときのデジタルフィルタ回路170の信号通過特性と、第2メモリ群182が保持した係数値h(0)′〜h(n)′をセットしたときのデジタルフィルタ回路170の信号通過特性の例については後述する。
そして、係数乗算器173〜173で係数が乗算されたデータが、各段の加算器174,174,174,・・・,174に順に供給されて加算され、全ての段の出力が加算されたデータが出力端子175から出力される。
1−3.質量分析方法
次に、上述した質量分析計100を用いた質量分析方法について図3〜図5を参照して説明する。
まず、図3A〜図4Bを参照して、スキャン測定時及びSIM測定時における印加される電圧のタイムチャート及び、検出されるイオン検出信号について説明する。
図3Aは、スキャン測定時における四重極質量電極141に印加される電圧のタイムチャートを示すグラフ、図3Bは、スキャン測定時のイオン検出信号(MS信号)の一例を示すグラフである。
図3Aにおいて、横軸は、時間であり、縦軸は、四重極質量電極141に印加される電圧Vsを示している。電圧Vsは、検出される質量電荷比m/zに対応する。図3Bにおいて、横軸は時間であり、縦軸はMS信号の強度を示している。
スキャン測定では、図3Aに示すように、四重極質量電極141に印加する電圧Vsを一定範囲内で直線状に増加させ、スキャン範囲の上端の電圧Vsに到達すると、スキャン範囲の下端の電圧Vsまで戻し、電圧Vsを直線状に増加させる処理を繰り返す。
そして、このようなスキャン測定時の電圧Vsの直線状の変化で得られるイオン検出信号としては、図3Bに示すように、特定の質量電荷比の箇所でパルス状のピークが検出される。なお、図3Aの例のスキャン測定では、一定範囲内で直線状に電圧Vsが増加する処理を繰り返すようにしたが、図3Aの例とは逆に、一定範囲内で直線状に電圧Vsが減少する処理を繰り返すようにしてもよい。また、電圧Vsが増加又は減少する速さ(スキャン速度)についても、測定目的に応じて適切なスキャン速度が設定可能である。
図4Aは、SIM測定時における四重極質量電極141に印加される電圧のタイムチャートを示すグラフ、図4Bは、SIM測定時のイオン検出信号(MS信号)の一例を示すグラフである。
図4Aにおいて、横軸は、時間であり、縦軸は、四重極質量電極141に印加される電圧Vsを示している。電圧Vsは、検出される質量電荷比m/zに対応する。図4Bにおいて、横軸は時間であり、縦軸はMS信号の強度を示している。
図4Aに示す例では、3つのターゲットの質量電荷比のイオン強度を検出するものである。そして、SIM測定時では、検出する質量電荷比に対応した電圧Vsを四重極質量電極141に印加する。そのため、図4Aに示すように、3つのターゲットの質量電荷比に対応した電圧Vs1,Vs2,Vs3に順に切り替え、それぞれの電圧Vs1,Vs2,Vs3を一定期間継続させる処理が繰り返されている。
このようなSIM測定時の電圧Vsの段階的な変化で得られるイオン検出信号としては、図4Bに示すように、それぞれの電圧Vsごとの値になる。なお、SIM測定時に各電圧Vs1,Vs2,Vs3を維持する時間は、同じ一定時間としてもよいが、検出を行うターゲットごとの個別の測定時間を設定してもよい。
なお、図4Aに示す例では、3つのターゲットのイオン強度を検出する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、イオン強度を検出するターゲットの数は、2つ以下、或いは4つ以上であってもよい。または1つのターゲットのイオン強度を検出してもよい。そして、ターゲットの数が1つの場合、四重極質量電極141に印加される電圧Vsの値は、1つとなる。
次に、図5を参照して、質量分析方法の流れについて説明する。
図5は、測定手順の例を示すフローチャートである。
図5に示すように、まず、制御部161は、現在の測定モードがスキャン測定モードかSIM測定モードかを判断する(ステップS11)。ステップS11の処理において、制御部161がスキャン測定モードであると判断した場合、制御部161は、フィルタ特性パラメータメモリ180にスキャン測定モードであると指令を送る。そして、制御部161は、第1メモリ群181の各メモリ181〜181が保持した係数値h(0)〜h(n)を、デジタルフィルタ回路170の係数乗算器173〜173にセットする(ステップS12)。これにより、デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性及び周波数帯域は、スキャン測定に適したフィルタ特性及び周波数帯域に変化する。なお、スキャン測定に適したフィルタ特性及び周波数帯域については、後述する。
デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性及び周波数帯域を設定した後に、制御部161からの指示により、四重極質量電極141に所定の電圧を印加する。すなわち、四重極質量電極141には、例えば、図3Aに示すように、一定範囲内で直線状に電圧Vsが増加するように電圧が印加される。そして、徐々に検出する質量電荷比が高くなるスキャン測定モードでの測定を行う。
そして、質量分析計100は、試料をイオン源120でイオン化し、イオンを分析部140で質量電荷比ごとに分離させて、分析部140を通過したイオンを検出器150で検出する。そして、検出器150で得たイオン検出信号を通過させて、フィルタ部であるデジタルフィルタ回路170で整形し、データ処理部168で通過したイオン検出信号から質量分析結果を得る。
次に、制御部161は、この質量分析計100での測定が終了したか否かを判断する(ステップS14)。このステップS14の判断で、測定が終了してなく次の測定があると判断した場合、ステップS11の判断に戻る。また、ステップS14の判断で測定が終了したと判断した場合には、ここでの処理を終了する。
また、ステップS11の処理において、制御部161がSIM測定モードであると判断した場合、制御部161は、フィルタ特性パラメータメモリ180にSIM測定モードであると指令を送る。そして、制御部161は、第2メモリ群182の各メモリ182〜182が保持した係数値h(0)〜h(n)を、デジタルフィルタ回路170の係数乗算器173〜173にセットする(ステップS12)。これにより、デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性及び周波数帯域は、SIM測定に適したフィルタ特性及び周波数帯域に変化する。なお、SIM測定に適したフィルタ特性及び周波数帯域については、後述する。
デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性及び周波数帯域を設定した後に、制御部161からの指示により、四重極質量電極141に所定の電圧を印加する。すなわち、四重極質量電極141には、例えば、図4Aに示すように、ターゲットの質量電荷比に対応した電圧Vsが一定時間印加される。そして、SIM測定モードでの測定を行う。
データ処理部168で量分析結果を得るまでの工程は、上述した工程と同様であるため、その説明は省略する。
次に、制御部161は、スキャン測定モードと同様に、この質量分析計100での測定が終了したか否かを判断する(ステップS14)。このステップS14の判断で、測定が終了してなく次の測定があると判断した場合、ステップS11の判断に戻る。また、ステップS14の判断で測定が終了したと判断した場合には、ここでの処理を終了する。
なお、スキャン測定時に検出器150が出力する検出信号は、例えば図3Bに示すように、試料の質量電荷比に対応した箇所でピークが現われる波形が得られる。また、SIM測定時に検出器150が出力する検出信号は、図4Bに示すように、各段階の電圧ごとにほぼ一定のレベルの波形が得られる。
1−4.フィルタ回路のフィルタ特性及び周波数帯域の設定例
次に、スキャン測定時とSIM測定時に、デジタルフィルタ回路170に設定する特性の例について図6及び図7を参照して説明する。
まず、スキャン測定時には、検出器150が検出した信号成分に含まれるピーク波形を忠実に取り込む必要がある。すなわち、図3Bに示すように、スキャン測定時には、試料の質量電荷比に対応した箇所でピークとなるパルス性の波形が検出され、そのピーク波形に含まれる周波数成分を考慮したフィルタ特性の選定が必要になる。
図6は、スキャン測定時のピーク信号に含まれる周波数成分を説明する図である。
図6に示すように、ピーク信号の立ち上がり時間をTrとしたとき、そのピーク信号に含まれる周波数成分BWは、BW=0.35/Trで表すことができる。忠実な波形のデータを取得するためには、周波数成分BWの10倍程度の周波数帯域が必要になる。
例えば、立ち上がり時間Trが100μ秒の場合、その波形に含まれる周波数成分BWは、BW=0.35/100−6=3500Hzとなる。したがって、スキャン測定時に、このようなピーク波形を良好に取得するためには、デジタルフィルタ回路170として、3500Hzの10倍の約35kHzの広帯域特性が必要になる。
一方、SIM測定時の検出信号はほぼ直流成分である。したがって、スキャン測定時にはデジタルフィルタ回路170として、直流成分を歪み無く精度良く取り出すことができる特性及び周波数帯域が必要になる。
図7は、スキャン測定時の検出信号の周波数特性と、SIM測定時の検出信号の周波数特性とを比較した概要を示す図である。図7の横軸は周波数であり、縦軸は信号の強度である。
図7に実線で示すSIM測定時の検出信号は、ほぼ直流成分であり、高周波成分がほとんど含まれない。一方、図7に破線で示すスキャン測定時の検出信号は、図3Bに示すようにパルス状の信号であるため、高周波成分が含まれる。
本例のデジタルフィルタ回路170は、それぞれの測定モード時に、それぞれの測定モードで得られる信号を適正に抽出できるフィルタ特性及び周波数帯域を設定する。具体的には、スキャン測定モード時には、デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性を、スキャン測定時の検出信号に含まれる高周波成分が平坦、すなわち通過帯域の特性が平坦な特性とする。また、スキャン測定モード時には、上述したように、デジタルフィルタ回路170の周波数帯域を、周波数成分BWの10倍程度の周波数帯域に設定する。
一方、SIM測定モード時には、高周波成分をカットする帯域を上げるために、周波数帯域をスキャン測定モード時よりも狭める。そして、フィルタ特性を、SIM測定時の検出信号に含まれる直流成分を良好に抽出するために、通過帯域から除去帯域への変化が急峻な特性に設定する。これにより、SIM測定モード時におけるSN比を向上させることができる。
次に、デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性及び周波数帯域を設定する上で考慮する必要がある波形歪みについて図8A〜図8Cを参照して説明する。
図8A〜図8Cは、3つの方式のフィルタ回路の特性例を示す。図8Aは、各形式のフィルタ回路の群遅延特性を示し、横軸は周波数、縦軸は遅延量である。図8Bは、各形式のフィルタ回路の周波数特性を示し、横軸は周波数、縦軸はゲインである。図8Cは、各形式のフィルタ回路の波形歪み特性を示し、横軸は時間、縦軸はレスポンスである。
図8A〜Cにおいて、特性f1はベッセル型フィルタ回路の特性例、特性f2はチェビシェフ型フィルタ回路の特性例、特性f3はバターワース型フィルタ回路の特性例を示す。
図8Aに示す遅延特性では、ベッセル型フィルタ回路の特性f1が、最も平坦で群遅延が少ない特性であることが判る。一方、チェビシェフ型フィルタ回路の特性f2や、バターワース型フィルタ回路の特性f3では、周波数によって遅延量が比較的大きく変動し、群遅延特性が平坦でないことが判る。
図8Bに示す周波数特性では、ベッセル型フィルタ回路の特性f1が、最も周波数帯域が広い特性である。そして、バターワース型フィルタ回路の特性f3は、ベッセル型フィルタ回路の特性f1よりも若干周波数帯域が狭く、チェビシェフ型フィルタ回路の特性f2は、バターワース型フィルタ回路の特性f3よりもさらに周波数帯域が狭いことが判る。
また、ベッセル型フィルタ回路の特性f1は、通過帯域から除去帯域への変化が、他の特性よりも緩やかであることが判る。そして、チェビシェフ型フィルタ回路の特性f2及びバターワース型フィルタ回路の特性f3は、ベッセル型フィルタ回路の特性f1よりも通過帯域から除去帯域への変化が急峻であることが判る。
図8Cに示す波形歪み特性では、ベッセル型フィルタ回路の特性f1が最も波形歪みが少ない特性であり、チェビシェフ型フィルタ回路の特性f2やバターワース型フィルタ回路の特性f3では、ある程度の波形歪みが生じていることが判る。一方、検出感度から見た場合、チェビシェフ型フィルタ回路の特性f2が特定の帯域(図8Cでは低域側)で最も高い感度を有する。
これらの特性を比較すると判るように、ベッセル型フィルタ回路は、群遅延特性が一定であり、波形の歪みが少なく、かつ通過帯域が広帯域なフィルタ回路である。したがって、ベッセル型フィルタ回路は、スキャン測定時に検出される高周波成分が含まれる広帯域な検出信号を平坦な特性で歪みなく抽出するのに適したフィルタ回路である。チェビシェフ型フィルタ回路やバターワース型フィルタ回路は、群遅延特性が平坦ではなく、鋭い立ち上がりの波形に対してリンギングが発生する。
例えば図8Cに示す波形歪み特性でのチェビシェフ型フィルタ回路の特性f2やバターワース型フィルタ回路の特性f3は、波打った状態で変化して平坦でなく、図8Aに示す周波数特性からもこれらの特性f2,f3は平坦でない。このような特性f2,f3を持ったフィルタ回路にパルス信号を入力させるとリンギングが発生し、リンギングの影響でゴーストピークが現われると共にノイズが発生するおそれがある。しかしながら、ベッセル型フィルタ回路の特性f1の場合には、通過帯域の特性が平坦であり、パルス信号を入力させてもリンギングが発生せず、良好に処理できる。
一方、チェビシェフ型フィルタ回路やバターワース型フィルタ回路は、低域成分の検出感度が高く特定の周波数以上の高周波成分をカットするように作用し、ノイズとなる高周波成分が除去されたSN比の高い信号が得られるという利点がある。したがって、SIM測定時には、チェビシェフ型フィルタ回路又はバターワース型フィルタ回路とするのが好ましい。SIM測定時の検出信号は図7に示すようにほぼ直流成分で低域側の成分のみであるため、パルス信号を抽出する場合のような波形歪みの問題が生じることがない。
以上のフィルタ回路のフィルタ特性及び周波数帯域を考慮して、本例の質量分析計100では、デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性及び周波数帯域を変化させている。例えば、スキャン測定時に、デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性及び周波数帯域が、ベッセル型フィルタ回路のフィルタ特性及び周波数帯域となるように、通過帯域を広げ、通過帯域が歪みの少ない平坦な特性に設定する。スキャン測定時に係数乗算器173〜173にセットされる係数値h(0)〜h(n)として、ベッセル型フィルタ回路となる係数値する。このベッセル型フィルタ回路となる係数値は、図5のフローチャートに示す手順では、ステップS12に、フィルタ特性パラメータメモリ180の第1メモリ群181から読み出して、係数乗算器173〜173にセットされる。
また、SIM測定時には、デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性及び周波数帯域が、例えばチェビシェフ型フィルタ回路又はバターワース型フィルタ回路のフィルタ特性及び周波数帯域となるように、通過帯域を狭め、通過帯域から除去帯域への変化が急峻な特性に設定する。すなわち、SIM測定時に係数乗算器173〜173にセットされる係数値h(0)′〜h(n)′として、チェビシェフ型フィルタ回路又はバターワース型フィルタ回路となる係数値する。このチェビシェフ型フィルタ回路又はバターワース型フィルタ回路となる係数値は、図5のフローチャートに示す手順では、ステップS13に、フィルタ特性パラメータメモリ180の第2メモリ群182から読み出して、係数乗算器173〜173にセットされる。
以上説明したように、本例の質量分析計100によると、デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性及び周波数帯域が、スキャン測定時とSIM測定時のぞれぞれで、適したフィルタ特性及び周波数帯域のものとなり、スキャン測定とSIM測定のいずれでも、最適な信号処理特性で質量分析ができるようになる。
すなわち、スキャン測定時には、デジタルフィルタ回路170のフィルタ特性及び周波数帯域が、検出されるピーク信号波形を少ない歪みで忠実に収集できるようになり、スキャン範囲で検出された質量電荷比を適正に検出できるようになる。また、SIM測定には、デジタルフィルタ回路170が高周波成分をカットするフィルタ特性及び周波数帯域となり、高周波成分が含まれない信号成分を高いSN比で適正に検出でき、ターゲットとなる質量電荷比の検出が低ノイズで正確にできるようになる。
なお、本例では、スキャン測定時ではデジタルフィルタ回路170をベッセル型フィルタ回路に変化させ、SIM測定時ではデジタルフィルタ回路170をチェビシェフ型フィルタ回路又はバターワース型フィルタ回路に変化させた例を説明したが、これに限定される場合ではない。
ここで、次数の小さいバターワース型フィルタ回路やチェビシェフ型フィルタ回路は、次数の高いバターワース型フィルタ回路やチェビシェフ型フィルタ回路よりも、群遅延特性が平坦で、鋭い立ち上がりの波形に対してリンギングが発生し難い。そのため、スキャン測定モード時のスキャン速度が遅く、測定範囲が狭い場合では、デジタルフィルタ回路170を次数の小さいバターワース型フィルタ回路やチェビシェフ型フィルタ回路になるように設定してもよい。そして、そして、SIM測定モード時では、デジタルフィルタ回路170を次数の高いバターワース型フィルタ回路やチェビシェフ型フィルタ回路になるように設定してもよい。
さらに、本例では、デジタルフィルタ回路170として、スキャン測定時にベッセル型フィルタ回路としての通過特性(すなわち高周波帯域まで良好に抽出できる特性)を有するようにした。そして、SIM測定時にチェビシェフ型フィルタ回路又はバターワース型フィルタ回路としての通過特性(すなわち低域成分をSN比が高い状態で抽出できる特性)を有するようにした。しかしながら、これらの具体的なフィルタ形式は一例であり、その他のフィルタ形式で同様の特性を得るようにしてもよい。すなわち、スキャン測定時には、高い周波数成分が含まれる広帯域の検出信号を歪みなく適正に抽出できるフィルタ特性とする。そして、SIM測定時には、信号成分が含まれない特定の周波数よりも高域の高周波帯域をカットして、ほぼ直流成分の検出信号を高いSN比で抽出できるフィルタ特性とすればよい。これらの特性が得られるフィルタ回路として、図2に示すようなFIRフィルタを適用したのも一例であり、その他の構成のフィルタ回路を適用してもよい。
2.第2の実施の形態例
次に、図9を参照して、第2の実施の形態例にかかる質量分析計及び質量分析方法について説明する。
図9は、第2の実施の形態例にかかる質量分析計の構成例を示す図である。
この第2の実施の形態例にかかる質量分析計100Aが、第1の実施の形態例にかかる質量分析計100と異なる点は、フィルタ部の構成である。そのため、ここでは、フィルタ部について説明し、第1の実施の形態例にかかる質量分析計100と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図9に示すように、第2の実施の形態例にかかる質量分析計100Aのフィルタ部には、第1フィルタ回路191と、第2フィルタ回路192が設けられている。第1フィルタ回路191と第2フィルタ回路192は、互いにフィルタ特性及び周波数帯域が異なる。
第1フィルタ回路191は、スキャン測定時に使用するフィルタ回路である。そのため、第1フィルタ回路191は、スキャン測定時に検出される高周波成分が含まれる広帯域な検出信号を平坦な特性で歪みなく抽出するのに適したフィルタ回路である。すなわち、第1フィルタ回路191は、通過帯域が広帯域で、かつ通過帯域の特性が平坦な特性を有している。第1フィルタ回路191としては、例えば、ベッセル型フィルタ回路が適用される。
第2フィルタ回路192は、SIM測定時に使用するフィルタ回路である。そのため、第2フィルタ回路192は、低域成分の検出感度が高く特定の周波数以上の高周波成分をカットするのに適したフィルタ回路である。すなわち、第2フィルタ回路192は、通過帯域が第1フィルタ回路191よりも狭く、通過帯域から除去帯域への変化が急峻な特性を有している。第2フィルタ回路192としては、例えば、チェビシェフ型フィルタ回路又はバターワース型フィルタ回路が適用される。
第1フィルタ回路191及び第2フィルタ回路192と、アナログ/デジタル変換器167との間には、第1切替スイッチ193が設けられている。また、第1フィルタ回路191及び第2フィルタ回路192と、データ処理部168との間には、第2切替スイッチ194が設けられている。
第1切替スイッチ193及び第2切替スイッチ194は、それぞれ制御部161の指令で、接続が第1フィルタ回路191又は第2フィルタ回路192に切り替わるスイッチである。制御部161は、スキャン測定を行うときには、第1切替スイッチ193及び第2切替スイッチ194を第1フィルタ回路191に接続させる。これにより、アナログ/デジタル変換器167で変換されたデジタルデータは、第1切替スイッチ193を介して、第1フィルタ回路191に供給される。そして、第1フィルタ回路191により整形された出力データは、第2切替スイッチ194を介してデータ処理部168に出力される。
また、制御部161は、SIM測定を行うときには、第1切替スイッチ193及び第2切替スイッチ194を第2フィルタ回路192に接続させる。これにより、アナログ/デジタル変換器167で変換されたデジタルデータは、第1切替スイッチ193を介して、第2フィルタ回路192に供給される。そして、第2フィルタ回路192により整形された出力データは、第2切替スイッチ194を介してデータ処理部168に出力される。
このように、第2の実施の形態例にかかる質量分析計100Aは、スキャン測定を行う場合と、SIM測定を行う場合とで、フィルタ回路191、192を切り替えている。これにより、スキャン測定時とSIM測定時に応じて、フィルタ部全体のフィルタ特性及び周波数帯域が変化したものとみなすことができる。
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる質量分析計100と同様であるため、それらの説明は省略する。このような、フィルタ特性及び周波数帯域が異なる2つのフィルタ回路191、192を有するフィルタ部を備えた質量分析計100Aによっても、第1の実施の形態例にかかる質量分析計100と同様の作用効果を得ることができる。
3.第3の実施の形態例
次に、図10を参照して、第3の実施の形態例にかかる質量分析計及び質量分析方法について説明する。
図10は、第3の実施の形態例にかかる質量分析計の構成例を示す図である。
上述した第1の実施の形態例にかかる質量分析計100及び第2の実施の形態例にかかる質量分析計100Aでは、フィルタ部として、デジタルフィルタ回路を用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。フィルタ部としては、アナログ信号を処理するアナログフィルタを用いてもよい。第3の実施の形態例にかかる質量分析計10は、フィルタ部としてアナログフィルタを適用したものである。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかる質量分析計100と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図10に示すように、質量分析計10は、イオン源11と、分析部12と、検出器13と、制御部31とを備えている。また、質量分析計10は、IVアンプ23と、フィルタ部である第1フィルタ24A及び第2フィルタ24Bと、アナログ/デジタル変換器25と、データ処理部26と、フィルタ印加電圧生成部21とを備えている。
イオン源11で得られたイオンは、イオン光学系(不図示)を介して分析部12に供給され、分析部12を通過したイオンの強度が検出器13で検出される。分析部12は、第1の実施の形態例にかかる分析部140と同様に、四重極質量電極を備える。分析部12の四重極質量電極に印加する電圧は、フィルタ印加電圧生成部21で設定される。
検出器13は、四重極質量電極に印加した電圧に対応した質量電荷比のイオン強度を出力する。検出器13が出力したイオン強度の信号は、IVアンプ23に供給される。そして、イオン強度の信号は、IVアンプ23で電流を電圧に変換されて、第1フィルタ24A又は第2フィルタ24Bによって整形される。第1フィルタ24A又は第2フィルタ24Bによって整形されたイオン強度の信号は、アナログ/デジタル変換器25に供給される。
アナログ/デジタル変換器25は、供給される信号をデジタルデータに変換する。アナログ/デジタル変換器25で変換されたデータは、データ処理部26に供給される。データ処理部26は、イオン強度のデータから質量分析結果のデータを作成し、制御部31に出力する。
第1フィルタ24A及び第2フィルタ24Bは、例えばローパスフィルタが用いられる。第1フィルタ24Aは、キャン測定時に使用するフィルタである。そのため、第1フィルタ24Aは、スキャン測定時に検出される高周波成分が含まれる広帯域な検出信号を平坦な特性で歪みなく抽出するのに適したフィルタに設計されている。すなわち、第1フィルタ24Aは、通過帯域が広帯域で、かつ通過帯域の特性が平坦な特性を有している。
第2フィルタ24Bは、SIM測定時に使用するフィルタ回路である。そのため、第2フィルタ24Bは、低域成分の検出感度が高く特定の周波数以上の高周波成分をカットするのに適したフィルタに設計されている。すなわち、第2フィルタ24Bは、通過帯域が第1フィルタ24Aよりも狭く、通過帯域から除去帯域への変化が急峻な特性を有している。
また、第1フィルタ24A及び第2フィルタ24Bと、IVアンプ23との間には、第1切替スイッチ32が設けられている。また、第1フィルタ24A及び第2フィルタ24Bと、アナログ/デジタル変換器25との間には、第2切替スイッチ33が設けられている。
第2の実施の形態例にかかる質量分析計100Aと同様に、制御部31は、スキャン測定を行うときには、第1切替スイッチ32及び第2切替スイッチ33を第1フィルタ24Aに接続させる。また、制御部31は、SIM測定を行うときには、第1切替スイッチ32及び第2切替スイッチ33を第2フィルタ24Bに接続させる。
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる質量分析計100及び第2の実施の形態例にかかる質量分析計100Aと同様であるため、それらの説明は省略する。このようなアナログフィルタからなるフィルタ部を備えた質量分析計10によっても第1の実施の形態例にかかる質量分析計100及び第2の実施の形態例にかかる質量分析計100Aと同様の作用効果を得ることができる。
4.変形例
なお、上述した各実施の形態例で説明した構成や処理は、あくまでも好適な一例を示すものであり、本発明はここで説明した実施の形態例に限定されるものではない。
また、上述した実施の形態例では、スキャン測定用のフィルタ特性及び周波数帯域と、SIM測定用のフィルタ特性及び周波数帯域の2つを用意して、対応した測定モード時に、それぞれのフィルタ特性及び周波数帯域を変更するようにした。これに対して、SIM測定時には、図4Aに示すように、四重極質量電極141に印加する電圧Vsを複数段階に変化させるが、SIM測定時の各段階での電圧Vsごとに、フィルタ特性を変化させてもよい。
すなわち、図4Aに示すSIM測定時には、それぞれの段階で同じ値の電圧Vsが続く間、検出信号を積算する処理が行われるが、それぞれの値の電圧Vsが続く期間は、ターゲットとなる質量電荷比に応じて可変に設定する場合がある。このような場合、それぞれの電圧Vsが続く期間に応じて、検出信号を通過させるフィルタ回路の信号通過特性を、複数段階に変化させるようにしてもよい。この場合には、例えば図2に示すメモリ群181,182を増やし、係数乗算器173a〜173nにセットできる係数値の種類を増やすことで対処できる。あるいは、第2の実施の形態例にかかる質量分析計100Aや第3の実施の形態例にかかる質量分析計10のように、複数種類のフィルタを用意する場合では、フィルタの数を増やすことで対処できる。
また、スキャン測定時のスキャン速度(図3Aに示す電圧Vsが変化する速さ)により、検出信号を抽出するデジタルフィルタ回路170の特性を変化させてもよい。すなわち、スキャン測定時のスキャン速度によって、検出信号の高周波特性が異なるため、各測定時のスキャン速度によって決まる高周波特性に合わせた最適なフィルタ特性及び周波数帯域を設定するようにしてもよい。このようにスキャン速度によってフィルタ特性及び周波数帯域を変化させる場合にも、係数乗算器173a〜173nにセットできる係数値の種類を増やす場合と、フィルタの数を対応して増やす場合の、いずれの対処でもよい。
また、第1の実施の形態例及び第2の実施の形態例では、検出器150が出力した検出信号をアナログ/デジタル変換器167で変換したデジタルデータを通過させるデジタルフィルタ回路を適用した例を説明した。そして、第3の実施の形態例では、デジタル変換前のアナログ検出信号を通過させるアナログフィルタを適用した例を説明した。これらに対し、検出器が出力した検出信号を通過させるフィルタとして、アナログフィルタとデジタルフィルタ回路の双方を備えるようにしてもよい。そして、アナログフィルタとデジタルフィルタ回路の双方の信号通過特性を、スキャン測定時とSIM測定時とで変化させるようにしてもよい。
また、上述した実施の形態例では、質量分析計として四重極型質量分析計を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。質量分析計としては、磁場型質量分析計やイオントラップ型質量分析計を適用してもよい。
さらに、上述した実施の形態例では、スキャン測定時とSIM測定時においてフィルタ部のフィルタ特性と周波数帯域を両方変化させる例を説明したが、これに限定されるものではない。スキャン測定時又はSIM測定時に、フィルタ特性と周波数帯域のうちどちらか一方のみを変化させてもよい。
10、100、100A…四重極型質量分析計(質量分析計)、11、120…イオン源、12、140…分析部、13、150…検出器、21、164…フィルタ印加電圧生成部、23、166…IVアンプ、24A、191…第1フィルタ(フィルタ部)、24B、192…第2フィルタ(フィルタ部)、25、167…アナログ/デジタル変換器、26、168…データ処理部、31、161…制御部、32、193…第1切替スイッチ、33、194…第2切替スイッチ、130…イオン光学系、141…四重極質量電極、160…制御ボード、170…デジタルフィルタ回路(フィルタ部)、180…フィルタ特性パラメータメモリ、181…第1メモリ群、182…第2メモリ群、200…試料前処理装置

Claims (8)

  1. 試料をイオン化するイオン源と、
    前記イオン源で発生したイオンを質量電荷比ごとに分離させる分析部と、
    前記分析部を通過したイオンを検出する検出器と、
    前記検出器で得たイオン検出信号を通過させて、整形するフィルタ部と、
    前記フィルタ部を通過したイオン検出信号から質量分析結果を得るデータ処理部と、
    前記分析部で分離された特定の質量電荷比のイオンを前記検出器で検出させる選択イオン検出測定と、前記分析部で分離された所定範囲の質量電荷比のイオンを前記検出器で定量的に検出させるスキャン測定とを、選択的に実行させる制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記選択イオン検出測定を行う場合と、前記スキャン測定を行う場合とで、前記フィルタ部における通過させる信号の応答特性、又は通過させる信号の周波数帯域のうち少なくとも一方を変化させる
    質量分析計。
  2. 前記フィルタ部は、通過させる信号の応答特性、又は通過させる信号の周波数帯域のうち少なくとも一方が変化可能に構成されている
    請求項1に記載の質量分析計。
  3. 前記フィルタ部は、複数の係数乗算器を備えたデジタルフィルタ回路であり、
    前記制御部は、前記選択イオン検出測定を行う場合と、前記スキャン測定を行う場合とで、前記デジタルフィルタ回路における前記複数の係数乗算器の係数を切り換えて、通過させる信号の応答特性、又は通過させる信号の周波数帯域のうち少なくとも一方を変化させる
    請求項1又は2に記載の質量分析計。
  4. 前記フィルタ部は、
    前記スキャン測定を行う場合に用いられる第1フィルタと、
    前記選択イオン検出測定を行う場合に用いられる第2フィルタと、を有し、
    前記第1フィルタと前記第2フィルタは、通過させる信号の応答特性、又は通過させる信号の周波数帯域のうち少なくとも一方が異なる
    請求項1に記載の質量分析計。
  5. 前記スキャン測定を行う際の前記フィルタ部は、信号が通過する帯域の応答特性が平坦に設定される
    請求項1から4のいずれか1項に記載の質量分析計。
  6. 前記選択イオン検出測定を行う際の前記フィルタ部は、前記スキャン測定を行う場合よりも通過させる信号の周波数帯域が狭められる
    請求項1から5のいずれか1項に記載の質量分析計。
  7. 前記選択イオン検出測定を行う際の前記フィルタ部は、特定の周波数よりも高域の高周波帯域をカットし、信号を通過させる帯域から信号を除去する帯域への変化が前記スキャン測定よりも急峻な応答特性及び周波数帯域に設定される
    請求項6に記載の質量分析計。
  8. イオン源により試料をイオン化させる工程と、
    前記イオン源で発生したイオンを質量電荷比ごとに分析部で分離させる工程と、
    前記分析部を通過したイオンを検出器で検出する工程と、
    前記検出器で得たイオン検出信号を通過させて、フィルタ部で整形する工程と、
    前記フィルタ部を通過したイオン検出信号から質量分析結果をデータ処理部で得る工程と、を含み、
    前記分析部で分離された特定の質量電荷比のイオンを前記検出器で検出させる選択イオン検出測定と、前記分析部で分離された所定範囲の質量電荷比のイオンを前記検出器で定量的に検出させるスキャン測定とを、制御部により選択的に実行させ、
    前記制御部は、前記選択イオン検出測定を行う場合と、前記スキャン測定を行う場合とで、前記フィルタ部における通過させる信号の応答特性、又は通過させる信号の周波数帯域のうち少なくとも一方を変化させる
    質量分析方法。
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