しかし、ホイートストンブリッジ回路を用いる上述のガス検出器においては、4個の抵抗部のうち発熱抵抗体以外の抵抗部が経年などの要因により劣化しても、抵抗部の劣化を検出することができない。
そして、抵抗部に劣化が生じて抵抗値が変動した場合、発熱抵抗体から被検出雰囲気に奪われる熱量の測定精度が低下してしまい、ガス濃度の検出精度が低下する虞がある。
つまり、ホイートストンブリッジ回路における4個の抵抗部のうち発熱抵抗体以外の抵抗部の抵抗値が変動した場合、発熱抵抗体の抵抗値(あるいは発熱抵抗体の両端電圧)の検出精度が低下する。これにより、発熱抵抗体から被検出雰囲気に奪われる熱量の測定精度が低下し、ガス濃度の検出精度が低下する。
本発明は、ホイートストンブリッジ回路に備えられる抵抗部の劣化を検出できるガス検出器を提供すること、または、ホイートストンブリッジ回路に備えられる抵抗部の抵抗値が変動した場合であっても、ガス濃度の検出精度の低下を抑制するガス検出器およびプログラムを提供することを目的とする。
本発明の1つの局面におけるガス検出器は、発熱抵抗体と、ホイートストンブリッジ回路と、ブリッジ制御部と、演算部と、を備えると共に、演算部は、ガス濃度演算部と、基準判定値記憶部と、検出時判定値演算部と、判定平均値演算部と、劣化判定部と、を備える。
発熱抵抗体は、被検出雰囲気内に配置されて、自身の温度変化により抵抗値が変化する。ホイートストンブリッジ回路は、発熱抵抗体と第1抵抗部とが直列に接続された第1辺と、第2抵抗部と第3抵抗部とが直列に接続された第2辺と、が並列に接続されて構成されている。ブリッジ制御部は、ホイートストンブリッジ回路が平衡状態となるように、ホイートストンブリッジ回路への通電状態を制御する。演算部は、被検出雰囲気内における特定ガス濃度を演算する。
ブリッジ制御部は、出力端子および2つの入力端子を有する演算増幅器を備える。ブリッジ制御部は、演算増幅器の出力に従って、演算増幅器の2つの入力端子間の電位差がゼロとなるようにホイートストンブリッジ回路への通電状態を制御している。
ホイートストンブリッジ回路は、基準点と、高電位点と、第1電位点と、第2電位点と、を備えて構成されている。
基準点は、第1辺と第2辺と接続点のうちの一方の接続点であり、ブリッジ制御部による印加電圧の低電位側に接続される。
高電位点は、第1辺と第2辺と接続点のうちの他方の接続点であり、ブリッジ制御部による印加電圧の高電位側に接続される。
第1電位点は、第1抵抗部と発熱抵抗体との接続点であり、演算増幅器の一方の入力端子に接続される。第2電位点は、第2抵抗部と第3抵抗部との接続点が演算増幅器の他方の入力点に接続される。
また、第1抵抗部は、第2抵抗部および第3抵抗部に比べて、経時的劣化または環境負荷による劣化に由来した抵抗値の変化割合が小さい特性を有している。なお、環境負荷による劣化とは、温度や湿度、通電などの影響による劣化を意味している。
ガス濃度演算部は、少なくとも第1電位点の電位に基づき検出される発熱抵抗体の両端電圧を用いて、被検出雰囲気内における特定ガス濃度を演算する。なお、第1辺の発熱抵抗体と第2辺の第3抵抗部との接続点が基準点となる場合には、第1電位点と基準点との間の電圧は、発熱抵抗体の両端電圧に相当する。このとき、基準点の電位がグランド電位(=0V)である場合には、第1電位点そのものの電位が発熱抵抗体の両端電圧に相当する。
基準判定値記憶部には、基準判定値が記憶されている。基準判定値は、基準となる高電位点の電位である基準トップ電位と、基準となる第1電位点および第2電位点のうちいずれかの電位である基準中間電位と、に基づき定められている。
検出時判定値演算部は、高電位点の電位である検出時トップ電位と、第1電位点および第2電位点のうちいずれかの電位である検出時電位と、に基づき検出時判定値を演算する。
判定平均値演算部は、複数の検出時判定値の平均値である検出時判定平均値を演算する。なお、複数の検出時判定値の平均値の演算方法としては、加重平均、相加平均、移動平均などを採用することができる。
劣化判定部は、基準判定値と検出時判定平均値とに基づいて、第2辺(第2抵抗部および第3抵抗部のうち少なくとも一方)の劣化状態を判定する。
このような構成のガス検出器においては、第1抵抗部が第2抵抗部および第3抵抗部に比べて劣化に由来した抵抗値の変化割合が小さい特性を有していることから、ホイートストンブリッジ回路の抵抗部の中での相対的な比較においては、第2抵抗部および第3抵抗部が直列に接続された第2辺における劣化が第1抵抗部よりも早期に発生しやすくなる。
そして、基準判定値は、基準となる第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値に基づいて値が定まり、検出時判定値は、ガス検出器動作時における第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値に基づいて値が定まる。検出時判定平均値は、検出時判定値と同様に、ガス検出器動作時における第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値に基づいて値が定まる特性を有すると共に、平均値であることからノイズなどの影響による突発的な数値変動が生じにくい特性を有する。
なお、基準判定値は、例えば、ガス検出器の出荷前段階における第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値に基づいて定められた基準値であってもよい。
このため、第2抵抗部および第3抵抗部がいずれも劣化していない(第2辺が劣化していない)場合には、ガス検出器動作時における第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値は、基準となる第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値と比べて大差がないため、検出時判定平均値は基準判定値と同程度の値を示すことになる。この場合、例えば、基準判定値と検出時判定平均値との差分値は小さい値を示し、あるいは、基準判定値と検出時判定平均値との比は、1.0に近い値を示す。
他方、第2抵抗部および第3抵抗部のうち少なくとも一方(つまり、第2辺)が劣化した場合には、ガス検出器動作時における第2抵抗部および第3抵抗部のうち少なくとも一方の抵抗値は劣化状態に応じた値に変化するため、検出時判定平均値は基準判定値とは異なる値を示すことになる。このとき、例えば、基準判定値と検出時判定平均値との差分値は大きい値を示し、あるいは、基準判定値と検出時判定平均値との比は、1.0から離れた値(1.0よりも十分に大きい値、あるいは、1.0よりも十分に小さい値)を示す。
このため、劣化判定部は、基準判定値と検出時判定平均値とに基づいて、第2辺の劣化状態を判定することが可能となる。例えば、基準判定値と検出時判定平均値との差分値、あるいは、基準判定値と検出時判定平均値との比に基づいて、第2辺の劣化状態を判定できる。
よって、本発明のガス検出器においては、ホイートストンブリッジ回路に備えられる抵抗部の劣化を検出できる。
次に、本発明の他の局面におけるガス検出器は、発熱抵抗体と、ホイートストンブリッジ回路と、ブリッジ制御部と、演算部と、を備えると共に、演算部は、ガス濃度演算部と、基準判定値記憶部と、検出時判定値演算部と、判定平均値演算部と、電圧補正部と、を備える。
発熱抵抗体は、被検出雰囲気内に配置されて、自身の温度変化により抵抗値が変化する。ホイートストンブリッジ回路は、発熱抵抗体と第1抵抗部とが直列に接続された第1辺と、第2抵抗部と第3抵抗部とが直列に接続された第2辺と、が並列に接続されて構成されている。ブリッジ制御部は、ホイートストンブリッジ回路が平衡状態となるように、ホイートストンブリッジ回路への通電状態を制御する。演算部は、被検出雰囲気内における特定ガス濃度を演算する。
ブリッジ制御部は、出力端子および2つの入力端子を有する演算増幅器を備える。ブリッジ制御部は、演算増幅器の出力に従って、演算増幅器の2つの入力端子間の電位差がゼロとなるようにホイートストンブリッジ回路への通電状態を制御している。
ホイートストンブリッジ回路は、基準点と、高電位点と、第1電位点と、第2電位点と、を備えて構成されている。
基準点は、第1辺と第2辺と接続点のうちの一方の接続点であり、ブリッジ制御部による印加電圧の低電位側に接続される。
高電位点は、第1辺と第2辺と接続点のうちの他方の接続点であり、ブリッジ制御部による印加電圧の高電位側に接続される。
第1電位点は、第1抵抗部と発熱抵抗体との接続点であり、演算増幅器の一方の入力端子に接続される。第2電位点は、第2抵抗部と第3抵抗部との接続点が演算増幅器の他方の入力点に接続される。
また、第1抵抗部は、第2抵抗部および第3抵抗部に比べて、経時的劣化または環境負荷による劣化に由来した抵抗値の変化割合が小さい特性を有している。なお、環境負荷による劣化とは、温度や湿度、通電などの影響による劣化を意味している。
ガス濃度演算部は、少なくとも第1電位点の電位に基づき検出される発熱抵抗体の両端電圧を用いて、被検出雰囲気内における特定ガス濃度を演算する。なお、第1辺の発熱抵抗体と第2辺の第3抵抗部との接続点が基準点となる場合には、第1電位点と基準点との間の電圧は、発熱抵抗体の両端電圧に相当する。このとき、基準点の電位がグランド電位(=0V)である場合には、第1電位点そのものの電位が発熱抵抗体の両端電圧に相当する。
基準判定値記憶部には、基準判定値が記憶されている。基準判定値は、基準となる高電位点の電位である基準トップ電位と、基準となる第1電位点および第2電位点のうちいずれかの電位である基準中間電位と、に基づき定められている。
検出時判定値演算部は、高電位点の電位である検出時トップ電位と、第1電位点および第2電位点のうちいずれかの電位である検出時電位と、に基づき定められる検出時判定値を演算する。
判定平均値演算部は、複数の検出時判定値の平均値である検出時判定平均値を演算する。なお、複数の検出時判定値の平均値の演算方法としては、加重平均、相加平均、移動平均などを採用することができる。
電圧補正部は、基準判定値と検出時判定平均値とに基づいて、発熱抵抗体の両端電圧を補正する。
このような構成のガス検出器においては、第1抵抗部が第2抵抗部および第3抵抗部に比べて劣化に由来した抵抗値の変化割合が小さい特性を有しているから、ホイートストンブリッジ回路の抵抗部の中での相対的な比較においては、第2抵抗部および第3抵抗部が直列に接続された第2辺における劣化が第1抵抗部よりも早期に発生しやすくなる。
そして、基準判定値は、基準となる第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値に基づいて値が定まり、検出時判定値は、ガス検出器動作時における第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値に基づいて値が定まる。検出時判定平均値は、検出時判定値と同様に、ガス検出器動作時における第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値に基づいて値が定まる特性を有すると共に、平均値であることからノイズなどの影響による突発的な数値変動が生じにくい特性を有する。
なお、基準判定値は、例えば、ガス検出器の出荷前段階における第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値に基づいて定められた基準値であってもよい。
このため、第2抵抗部および第3抵抗部がいずれも劣化していない(第2辺が劣化していない)場合には、ガス検出器動作時における第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値は、基準となる第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値と比べて大差がないため、検出時判定平均値は基準判定値と同程度の値を示すことになる。この場合、例えば、基準判定値と検出時判定平均値との差分値は小さい値を示し、あるいは、基準判定値と検出時判定平均値との比は、1.0に近い値を示す。この場合、発熱抵抗体の両端電圧(換言すれば、第1電位点と基準点との間の電位差)は、特定ガス濃度に応じた適切な値を示す。
他方、第2抵抗部および第3抵抗部のうち少なくとも一方(つまり、第2辺)が劣化した場合には、ガス検出器動作時における第2抵抗部および第3抵抗部のうち少なくとも一方の抵抗値は劣化状態に応じた値に変化するため、検出時判定平均値は基準判定値とは異なる値を示すことになる。このとき、例えば、基準判定値と検出時判定平均値との差分値は大きい値を示し、あるいは、基準判定値と検出時判定平均値との比は、1.0から離れた値(1.0よりも十分に大きい値、あるいは、1.0よりも十分に小さい値)を示す。この場合、発熱抵抗体の両端電圧(換言すれば、第1電位点と基準点との間の電圧)は、第2辺の劣化状態の影響を受けて変動するため、特定ガス濃度に応じた適切な値とは異なる値を示す。
そして、発熱抵抗体の両端電圧の変動量は、第2辺の劣化状態に応じて変化するため、電圧補正部は、基準判定値と検出時判定平均値とに基づいて、第2辺の劣化状態の影響を低減するように、発熱抵抗体の両端電圧を補正することができる。
これにより、ガス濃度演算部が発熱抵抗体の両端電圧を用いて特定ガス濃度を演算するにあたり、第2辺の劣化状態の影響を低減しつつ、特定ガス濃度を演算できる。
よって、本発明のガス検出器においては、ホイートストンブリッジ回路に備えられる抵抗部の抵抗値が変動した場合であっても、ガス濃度の検出精度の低下を抑制できる。
次に、上記のガス検出器においては、判定平均値演算部は、加重平均値の演算手法に基づいて、最新の検出時判定値と前回の検出時判定平均値とを用いて最新の検出時判定平均値を演算してもよい。
加重平均値の演算を繰り返し実行することで、2個の数値に基づいて、長期間にわたる検出時判定値の変化傾向が反映された検出時判定平均値を演算することができる。例えば、前回演算時に得られた検出時判定平均値と最新の検出時判定値との2個の数値を用いて、検出時判定平均値を取得することができる。
これにより、長期間にわたる検出時判定値の変化傾向が反映された検出時判定平均値を演算するにあたり、3個以上の検出時判定値を記憶する必要が無くなり、検出時判定値を記憶するための記憶部の記憶容量が膨大になることを抑制できる。例えば、演算部を、CPU,RAM,ROMなどを備えるマイクロコンピュータなどで実現する場合に、記憶部の記憶容量が増大することを抑制できる。これに伴い、ガス検出器全体としてのコストの増大も抑制できる。
加重平均値の演算を用いる場合、前回の検出時判定平均値の加重割合(反映割合)を相対的に大きくし、最新の検出時判定値の加重割合を相対的に小さくすることで、長期間にわたる検出時判定値の傾向が反映されやすくなる。反対に、前回の検出時判定平均値の加重割合を相対的に小さくし、最新の検出時判定値の加重割合を相対的に大きくすることで、最新の検出時判定値の値が反映されやすくなる。
次に、上記のガス検出器においては、演算部は、現状反映値記憶部と、初期値設定部と、を備えてもよい。
現状反映値記憶部は、検出時判定平均値が予め定められた条件を満たす場合に、その検出時判定平均値を現状反映値として記憶する。現状反映値記憶部は、現状反映値と最新の検出時判定平均値との差分値が予め定められた変動判定閾値を超えた場合に、最新の検出時判定平均値を現状反映値として記憶する。現状反映値記憶部は、当該ガス検出器が動作停止状態であるときにも現状反映値を記憶する。
初期値設定部は、当該ガス検出器の起動後初回の検出時判定平均値の演算時までに、現状反映値を検出時判定平均値の初期値として設定する。
このような構成のガス検出器においては、検出時判定平均値は、上述のように、ガス検出器動作時における第2抵抗部および第3抵抗部の各抵抗値に基づいて値が定まる特性を有しているため、第2辺の劣化状態に応じて値が変動する。そして、第2辺の劣化状態に一定量を超える変化が生じた場合には、現状反映値記憶部において、現状反映値と最新の検出時判定平均値との差分値が変動判定閾値を超えたと判定される。
このため、現状反映値記憶手段により記憶された現状反映値は、第2辺の劣化状態に一定量を超える変化が生じる毎に値が更新されることとなり、現状反映値は、最新の第2辺の劣化状態に応じた値が設定される。
そして、現状反映値記憶部が、当該ガス検出器が動作停止状態であるときにも現状反映値を記憶するとともに、初期値設定部が、当該ガス検出器の起動後(動作開始後)から初回の検出時判定平均値の演算時までに、現状反映値を検出時判定平均値の初期値として設定する。
また、判定平均値演算部は、当該ガス検出器の起動後初回の検出時判定平均値の演算時において、前回の検出時判定平均値として検出時判定平均値の初期値を用いることができる。
このため、このガス検出器は、検出時判定平均値を演算するにあたり、ガス検出器の起動直後から、第2辺の劣化状態が反映された「前回の検出時判定平均値」(換言すれば、現状反映値)を利用することができる。
なお、このような処理を実行しない場合でも、検出時判定平均値が繰り返し演算されることで、第2辺の劣化状態が反映された「前回の検出時判定平均値」を得ることはできるが、加重平均値の演算手法に用いる前回の検出時判定平均値が最新の検出時判定値とあまりにもかけ離れた値であると、ガス検出器の最新の状態を反映した(換言すれば、信頼性の高い)検出時判定平均値が得られるまで相応の時間を要する。
よって、このガス検出器によれば、ガス検出器の起動直後から、第2辺の劣化状態が反映された検出時判定平均値を得られることで、起動直後から、ホイートストンブリッジ回路に備えられる抵抗部の劣化検出を、精度良く、早期に実現できる。また、このガス検出器によれば、起動直後から、信頼性の高い検出時判定値が得られるため、基準判定値と検出時判定平均値に基づく発熱抵抗体の両端電圧の補正を精度良く行うことができる。
次に、上記の電圧補正部を備えるガス検出器においては、演算部は、基準判定値と検出時判定平均値とに基づいて、第2辺(第2抵抗部および第3抵抗部のうち少なくとも一方)の劣化状態を判定する劣化判定部を備えてもよい。
このような劣化判定部を備えるガス検出器は、ホイートストンブリッジ回路に備えられる第2辺の劣化を検出できる。
つまり、このガス検出器によれば、ホイートストンブリッジ回路に備えられる第2辺(第2抵抗部および第3抵抗部のうち少なくとも一方)の抵抗値が変動した場合であってもガス濃度の検出精度の低下を抑制できるとともに、ホイートストンブリッジ回路に備えられる第2辺の劣化を検出できる。
次に、上記の電圧補正部を備えるガス検出器においては、被検出雰囲気の温度である環境温度の変化により抵抗値が変化する測温抵抗体を備えて、ガス濃度演算部が、発熱抵抗体の両端電圧に加えて、測温抵抗体を用いて検出した環境温度を用いて特定ガス濃度を演算してもよい。
このように、発熱抵抗体の両端電圧に加えて環境温度を用いて特定ガス濃度を演算することで、環境温度の変化による影響を抑制しつつ特定ガス濃度を演算できるため、特定ガス濃度の検出精度を向上できる。
次に、上記のガス検出器においては、演算部は、第1電位点の電位を取得する取得部を有し、取得部によって取得された第1電位点の電位が、ガス濃度演算部による特定ガス濃度の演算、および検出時判定値演算部による検出時判定値の演算に用いられる、という構成であっても良い。
つまり、このガス検出器においては、ブリッジ制御部により、第1電位点と第2電位点とは同電位に制御されている。また、第1電位点と基準点との間の電圧は、発熱抵抗体の両端電圧に基づき検出できる。なお、基準点の電位は、発熱抵抗体の一端の電位であることから、第1電位点の電位は、発熱抵抗体の両端電圧に相当する。
このため、第1電位点の電位、第2電位点の電位、発熱抵抗体の両端電圧をそれぞれ個別に検出する信号経路を備える複雑な構成ではなく、第1電位点の電位を取得する取得部のみを備える簡易な構成であっても、その取得値を、第2電位点の電位および発熱抵抗体の両端電圧として利用することができる。
よって、このガス検出器によれば、ガス検出器として簡易な構成を採用しつつ、発熱抵抗体の劣化判定や、特定ガス濃度の検出精度の向上を実現できる。
次に、上記のガス検出器においては、演算部は、基準トップ電位と、基準中間電位と、に基づき基準判定値を演算する基準判定値演算部を有してもよい。
つまり、ガス検出器は、基準判定値を予め基準判定値記憶部に記憶させておく構成ではなく、基準判定値を基準判定値演算部にて演算し、その基準判定値が基準判定値記憶部に記憶される構成であっても良い。
例えば、基準判定値演算部は、ガス検出器の出荷前段階において、基準判定値を演算しても良い。このとき、基準判定値は、ガス検出器の出荷前段階における基準トップ電位および基準中間電位に応じた値が設定される。換言すれば、第2抵抗部および第3抵抗部のいずれも劣化していない状況下での基準トップ電位および基準中間電位に応じた値が、基準判定値として設定される。
これにより、基準判定値と検出時判定平均値とに基づいて、第2辺の劣化状態を判定する際の判定精度を向上できる。
本発明の他の局面におけるプログラムは、コンピュータに、上述のガス検出器における演算部の機能を実現させるものであってもよい。
このようなプログラムを、コンピュータに実行させれば、そのコンピュータは、上述したガス検出器と同様の作用及び効果を奏する。また、プログラムはネットワーク等を用いて流通させることも可能である上、コンピュータにおけるプログラムの入れ替えは、部品の入れ替えに比較して容易である。したがって、ガス検出器の機能向上を容易に行うこともできる。
このプログラムは、例えば、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶させ、記憶させたプログラムをコンピュータに実行させることにより利用することができる。なお、記録媒体は、持ち運び可能なものであってもよいし、コンピュータに予め組み込まれたものであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介してコンピュータにロードされるものであってもよい。
本発明のガス検出器においては、ホイートストンブリッジ回路に備えられる抵抗部の劣化を検出できる。
また、本発明のガス検出器においては、ホイートストンブリッジ回路に備えられる抵抗部の抵抗値が変動した場合であっても、ガス濃度の検出精度の低下を抑制できる。
さらに、本発明のプログラムは、上述したガス検出器と同様の作用及び効果を奏する。
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
第1実施形態として、被検出雰囲気に含まれる可燃性ガスである水素ガスの濃度を検出する可燃性ガス検出装置1について説明する。
可燃性ガス検出装置1は、熱伝導式のガス検出器であり、例えば、燃料電池自動車の客室内や車体に設置されて、水素の漏れを検出する目的等に用いられる。
図1は、可燃性ガス検出装置1の全体構成を説明する図である。
可燃性ガス検出装置1は、水素ガス濃度を検出するガス検出素子10と、ガス検出素子10を制御する制御部20と、ガス検出素子10の出力信号に基づいて水素ガス濃度を演算する処理を少なくとも実行する演算部30と、制御部20および演算部30に電力を供給する直流電源40と、を主に備えている。
ガス検出素子10は、凹部13が形成された裏面が被検出雰囲気に晒された状態で配置されるものである。ガス検出素子10は、図2(a)の平面視図、および、図2(b)のA−A線矢視断面図に示すように、平板状に形成された基部11と、基部11の一方の面(以下、「表面」と表記する。)に配置された複数の電極12と、他方の面(以下、「裏面」と表記する。)に形成された凹部13と、を主に備えている。
基部11は、ガス検出素子10の本体を構成するものであり、シリコンを主体とする部材である。基部11は、縦横ともに数mm程度の大きさ(本実施形態では、3mm×3mm程度の大きさ)に形成された矩形状の板部材である。基部11に対して複数の電極や凹部13などを形成する技術としては、シリコン基板に対して行われるマイクロマシニング技術(マイクロマシニング加工)などを例示することができる。
基部11は、シリコンを主体に形成されたシリコン基板111と、シリコン基板111の表面に形成された絶縁層112と、を備えて構成されている。シリコン基板111の中央には、平面視においてシリコン基板111をほぼ正方形に除去した凹部13が形成されている。シリコン基板111の裏面においては、凹部13を介して絶縁層112が露出している。言い換えると、基部11は、シリコン基板111を枠体とし、絶縁層112を薄膜とするダイヤフラム構造で形成されている。
絶縁層112のうち凹部13に対応する領域には、線状の発熱抵抗体15が渦巻き状に埋設されている。また、絶縁層112のうち周縁部のうち図2(a)の上側領域には、詳細には図示しないが、被検出雰囲気の温度を測定する測温抵抗体16が埋設されている。
基部11は、上述のような凹部13を備えて、発熱抵抗体15が設けられる絶縁層112の下方を空間部とすることにより、発熱抵抗体15が周囲(シリコン基板111など)と熱的に絶縁され、昇温、降温を短時間で行うことができ、発熱抵抗体15の消費電力を低減することができる。
なお、絶縁層112は、単一の材料で形成されてもよいし、異なる材料を用いて複数層を成すように形成されていてもよい。また、絶縁層112を構成する絶縁性材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2 )や窒化珪素(Si3N4)を挙げることができる。
発熱抵抗体15は、自身の温度変化により抵抗値が変化する材料であって、温度抵抗係数が大きな導電性材料で形成されている。測温抵抗体16は、電気抵抗が温度に比例して変化する導電性材料で形成されており、本実施形態では、温度の上昇に伴って抵抗値が増大する導電性材料で形成されている。
発熱抵抗体15および測温抵抗体16は、同じ材料で形成されていてもよく、本実施形態では発熱抵抗体15および測温抵抗体16が白金(Pt)で形成されている。
測温抵抗体16は、一定電流の通電時において温度に応じた抵抗値が変化した場合には、自身の両端電圧(両端電位差)が変化する。そして、測温抵抗体16の両端電圧を増幅した電圧は、後述する温度検出信号VTとして出力される。この温度検出信号VTは、ガス検出素子10が晒される被検出雰囲気の温度が予め設定された基準温度の時に、所定の電位差である基準値となる。
電極12は、基部11の表面のうち矩形の4つの頂点のそれぞれの近傍に形成された4個の電極であり、例えばアルミニウム(Al)または金(Au)を用いて形成されている。電極12のうち、図2(a)における下側の2つの頂点に配置された2つが第1電極121、第1接地電極122であり、図2(a)における上側の2つの頂点に配置された2つが第2電極123、第2接地電極124である。
なお、第1電極121は、後述する通電制御回路21の接続点P+に接続され、第2電極123は、後述する温度調整回路25の接続点P−に接続されている。第1接地電極122および第2接地電極124は、いずれも制御部20と共通のグランドラインに接続されている。
基部11の内部(詳細には絶縁層112の内部)には、配線17および配線膜18が設けられている。配線17および配線膜18は、発熱抵抗体15と、第1電極121および第1接地電極122と、を電気的に接続するものである。基部11の表面に形成される第1電極121および第1接地電極122と、絶縁層112の内部に形成される配線膜18とは、導電性を有するコンタクトホールによって電気的に接続されている。言い換えると、発熱抵抗体15は、一端において第1電極121と導通可能に接続され、他端において第1接地電極122と導通可能に接続されている。
なお、配線17および配線膜18を構成する材料としては、発熱抵抗体15を構成する材料と同じ材料を用いることができる。
また、絶縁層112の内部には、測温抵抗体16と、第2電極123および第2接地電極124と、を電気的に接続する配線膜(図示せず)も設けられている。言い換えると、測温抵抗体16は、一端において第2電極123と導通可能に接続され、他端において第2接地電極124と導通可能に接続されている。
なお、測温抵抗体16と第2電極123とを電気的に接続する配線膜や、測温抵抗体16と第2接地電極124とを電気的に接続する配線膜を構成する材料としては、測温抵抗体16を構成する材料と同じ材料を用いることができる。
[1−2.制御部]
図1に戻り、制御部20には、通電制御回路21と、温度調整回路25と、が設けられている。
通電制御回路21は、発熱抵抗体15への通電制御を行う。また、通電制御回路21は、発熱抵抗体15の両端電圧(端子間電圧)に対応する検出信号V1の出力や、第1ブリッジ固定抵抗211と第2ブリッジ固定抵抗212との接続端部PVの電位に対応するTOP電圧信号V2の出力を行う。
なお、検出信号V1は、第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+の電位に対応する第1中間電位信号V3にも相当する。
温度調整回路25は、測温抵抗体16への通電を行う。また、温度調整回路25は、被検出雰囲気の温度に係る温度検出信号VTを出力する。
また、後述するように、第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+と、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−とは、増幅回路220および電流調整回路230によるフィードバック制御によって、それぞれの電位が同電位となるように制御されている。接続点P+および接続点P−は、演算増幅器221の非反転入力端子および反転入力端子にそれぞれ接続されてバーチャルショートされることからも、同電位である。このため、検出信号V1は、第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+の電位に対応する第1中間電位信号V3のみならず、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−の電位に対応する第2中間電位信号V4にも相当する。
通電制御回路21は、発熱抵抗体15の温度を一定温度に保つ回路(換言すれば、発熱抵抗体15の抵抗値を一定値に保つ回路)である。通電制御回路21には、発熱抵抗体15を含むホイートストンブリッジ回路であるブリッジ回路210と、ブリッジ回路210で検出される電位差を増幅する増幅回路220と、増幅回路220の出力に従ってブリッジ回路210に流れる電流を増減調整する電流調整回路230と、が設けられている。
ブリッジ回路210は、発熱抵抗体15と、第1ブリッジ固定抵抗211と、第2ブリッジ固定抵抗212と、抵抗値を切替可能な可変抵抗部213と、を備えるホイートストンブリッジ回路である。ブリッジ回路210は、発熱抵抗体15と第1ブリッジ固定抵抗211とが直列に接続された第1辺と、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213とが直列に接続された第2辺と、が並列に接続されて構成されている。
第1ブリッジ固定抵抗211は、発熱抵抗体15と直列接続されている。発熱抵抗体15の端部のうち、第1ブリッジ固定抵抗211との接続端部とは反対側の端部PGは、接地されている。第1ブリッジ固定抵抗211の端部のうち、第2ブリッジ固定抵抗212との接続端部PVは、電流調整回路230(詳細には、定温度制御回路231)に接続されている。なお、本実施形態では、発熱抵抗体15の一端が基準点としてグランドラインに接続されるため、発熱抵抗体15の一端の電位はグランド電位(=0V)となり、接続点P+の電位は、発熱抵抗体15の両端電圧に相当する。
なお、第1ブリッジ固定抵抗211は、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213と比べて、相対的に劣化しがたい抵抗素子(換言すれば、経時的劣化または環境負荷による劣化(温度や湿度、通電などの影響による劣化)に由来した抵抗値の変化割合が小さい特性を有している抵抗素子)で構成されている。
本実施形態では、高温高湿負荷試験(85℃/85%RHの環境下で、定格電力の10分の1の電力を、90分ON/30分OFFの切替を1000Hにわたり繰り返す負荷試験)における抵抗変動率が0.5%以内の抵抗素子を用いた。
また、第2ブリッジ固定抵抗212は、可変抵抗部213と直列接続されている。可変抵抗部213の端部のうち、第2ブリッジ固定抵抗212との接続端部とは反対側の端部PGは、接地されている。第2ブリッジ固定抵抗212の端部のうち、第1ブリッジ固定抵抗211との接続端部PVは、電流調整回路230(詳細には、定温度制御回路231)に接続されている。
第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+は、第1固定抵抗222を介して演算増幅器221の非反転入力端子に接続されている。接続点P+の電位は、検出信号V1として演算部30に供給されている。また、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−は、第2固定抵抗223を介して演算増幅器221の反転入力端子に接続されている。
なお、第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+と、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−とは、増幅回路220および電流調整回路230によるフィードバック制御によって、それぞれの電位が同電位となるように制御されている。このため、接続点P−の電位が必要な場合には、代わりに接続点P+の電位を検出しても良い。
可変抵抗部213は、自身の抵抗値を切り替え可能に構成されており、ブリッジ回路210のバランスを変化させるために備えられている。図3に、可変抵抗部213の回路構成を表す回路図を示す。
可変抵抗部213は、抵抗素子214、調整用抵抗部215、抵抗素子217、切替スイッチ218を備えている。
抵抗素子214および調整用抵抗部215が直列接続され、抵抗素子214の一端が接続点P−に接続され、調整用抵抗部215の一端が端部PGに接続されている。抵抗素子217および切替スイッチ218が直列接続され、抵抗素子217の一端が端部PGに接続され、切替スイッチ218の一端が接続点P−に接続されている。
切替スイッチ218は、演算部30から出力された切替信号CG1に従って切り替え動作を行うものである。つまり、切替スイッチ218は、可変抵抗部213の抵抗値を、「抵抗素子214および調整用抵抗部215の直列接続回路に相当する抵抗値」、または「抵抗素子214および調整用抵抗部215の直列接続回路に、抵抗素子217を並列接続した回路に相当する抵抗値」のいずれかに切り替えるために備えられている。
なお、調整用抵抗部215は、抵抗素子215aおよび抵抗素子215bが直列接続されると共に、第1端子216a、第2端子216b、第3端子216cを備えている。
第1端子216aは、抵抗素子215aの端部のうち抵抗素子214に接続される端部に接続されており、第2端子216bは、抵抗素子215aと抵抗素子215bとの接続点に接続されており、第3端子216cは、抵抗素子215bの端部のうち端部PGに接続される端部に接続されている。
この調整用抵抗部215は、第1端子216a、第2端子216b、第3端子216cの短絡状態の組合せにより、調整用抵抗部215としての抵抗値を変更可能に構成されている。例えば、第1端子216a、第2端子216b、第3端子216cのいずれも短絡しない状態では、調整用抵抗部215の抵抗値は、抵抗素子215aと抵抗素子215bと直列接続に相当する抵抗値と等しくなる。また、第1端子216aと第2端子216bとを短絡した状態では、調整用抵抗部215の抵抗値は、抵抗素子215bの抵抗値と等しくなる。さらに、第2端子216bと第3端子216cとを短絡した状態では、調整用抵抗部215の抵抗値は、抵抗素子215aの抵抗値と等しくなる。また、第1端子216aと第3端子216cとを短絡した状態では、調整用抵抗部215の抵抗値は、ゼロと等しくなる。
なお、第1端子216a、第2端子216b、第3端子216cの短絡状態は、調整用抵抗部215の抵抗値が設計目標値となるように、設計段階で決定される。そして、可燃性ガス検出装置1の製造段階では、設計段階で決定された短絡状態となるように、調整用抵抗部215が製造される。なお、調整用抵抗部215の抵抗値における設計目標値は、ガス検出の用途や目的等に応じて決定される。
このような構成の調整用抵抗部215を備えることで、可変抵抗部213としての抵抗値の調整を容易に実現できる。
そして、図1に示すブリッジ回路210は、切替スイッチ218(図3参照)の切り替え動作に伴って可変抵抗部213の抵抗値を切り替えることで、発熱抵抗体15の設定温度を、第1設定温度CH(高温側設定温度。例えば、400℃)または第2設定温度CL(低温側設定温度。例えば、300℃)のいずれかに切り替え可能に構成されている。
なお、第1設定温度CHに設定する場合には、切替スイッチ218がオフ状態(開放状態)となり、可変抵抗部213の抵抗値が「抵抗素子214および調整用抵抗部215の直列接続回路に相当する抵抗値」に設定される。このときの発熱抵抗体15の両端電圧が、高温時電圧VHである。
また、第2設定温度CLに設定する場合には、切替スイッチ218がオン状態(短絡状態)となり、可変抵抗部213の抵抗値が「抵抗素子214および調整用抵抗部215の直列接続回路に、抵抗素子217を並列接続した回路に相当する抵抗値」に設定される。このときの発熱抵抗体15の両端電圧が、低温時電圧VLである。
なお、本実施形態では、第1設定温度CH(高温側設定温度)と第2設定温度CL(低温側設定温度)との温度差が100℃以上であるため、高温時電圧VHと低温時電圧VLとの比率における分解能を高めることができる。つまり、第1設定温度CHと第2設定温度CLとの温度差を50℃以上として、被検出雰囲気の湿度Hを精度良く算出することで、高温時電圧VHと低温時電圧VLとの比率における分解能を高めることができる。
図1に戻り、増幅回路220は、差動増幅回路であって、演算増幅器221と、第1固定抵抗222と、第2固定抵抗223と、第3固定抵抗224と、コンデンサ225と、を備える。第1固定抵抗222は、演算増幅器221の非反転入力端子と接続点P+との間に接続されている。第2固定抵抗223は、演算増幅器221の反転入力端子と接続点P−との間に接続されている。第3固定抵抗224およびコンデンサ225は、演算増幅器221の反転入力端子と出力端子との間に並列接続されている。
増幅回路220は、非反転入力端子の入力電圧が反転入力端子の入力電圧より大きい場合には、出力である調整信号Cの値が大きくなる。その結果、ブリッジ回路210に流れる電流が減少する。逆に、非反転入力端子の入力電圧が反転入力端子の入力電圧より小さい場合には、調整信号Cの値が小さくなる。その結果、ブリッジ回路210に流れる電流が増大する。
電流調整回路230のスイッチング回路232は、ブリッジ回路210に直流電源Vccを供給する電源ラインと、電流調整回路230の通電状態を変化させる制御ラインCL1との間に接続されている。スイッチング回路232は、演算部30からの作動許可信号S1に従ってオン,オフ動作するトランジスタからなり、このトランジスタがオンしている所定期間には、起動信号S11を制御ラインCL1に出力するように構成されている。なお、トランジスタがオンする所定期間は、調整信号Cの出力を妨げないように予め設定されている。
電流調整回路230の定温度制御回路231は、直流電源Vccを供給する電源ラインとブリッジ回路210(詳細には、接続端部PV)との間に接続されている。定温度制御回路231は、制御ラインCL1を流れる信号に従って通電状態(オン抵抗)が変化するトランジスタからなる。具体的には、スイッチング回路232の出力である起動信号S11に従って、ブリッジ回路210へ電流供給を開始する。そして、ブリッジ回路210への電流供給が開始されると、増幅回路220の出力である調整信号Cに従って、調整信号Cが大きいほど、オン抵抗が大きくなって、ブリッジ回路210に流れる電流が減少し、逆に、調整信号が小さいほど、オン抵抗が小さくなって、ブリッジ回路210に流れる電流が増大するように構成されている。
上述の構成を有する通電制御回路21においては、直流電源40からブリッジ回路210への通電が開始されると、増幅回路220および電流調整回路230は、接続点P+と接続点P−との間に生じる電位差がゼロになるようにブリッジ回路210に流れる電流を調整するフィードバック制御を行う。これにより、発熱抵抗体15の抵抗値、言い換えると発熱抵抗体15の温度が、可変抵抗部213によって決まる一定値、言い換えると、第1設定温度CHまたは第2設定温度CLに制御される。
具体的には、被検出雰囲気中の可燃性ガスの濃度が変化することにより、発熱抵抗体15から可燃性ガスに奪われる熱量が、発熱抵抗体15において発生する熱量より大きくなった場合には、発熱抵抗体15の温度が低下して、発熱抵抗体15の抵抗値が減少する。逆に、発熱抵抗体15から可燃性ガスに奪われる熱量が、発熱抵抗体15において発生する熱量より小さくなった場合には、発熱抵抗体15の温度が上昇して、発熱抵抗体15の抵抗値が増大する。
上述のように発熱抵抗体15の抵抗値が減少すると、増幅回路220および電流調整回路230は、ブリッジ回路210に流れる電流、言い換えると、発熱抵抗体15において発生する熱量を増大させる。逆に、発熱抵抗体15の抵抗値が増大すると、ブリッジ回路210に流れる電流、言い換えると、発熱抵抗体15において発生する熱量を減少させる。このようにして、増幅回路220および電流調整回路230は、発熱抵抗体15の抵抗値、言い換えると発熱抵抗体15の温度を一定の値に近づけるフィードバック制御を行う。
接続点P+の電位を表す検出信号V1を測定することにより、発熱抵抗体15に流れる電流の大きさ、即ち、発熱抵抗体15の温度(言い換えると抵抗値)を一定に保つために必要な熱量が判る。発熱抵抗体15から可燃性ガス(水素ガス)へ奪われる熱量がわかり、奪われる熱量は水素ガスの濃度に依存するため、検出信号V1を測定することにより、水素ガス濃度が判る。
[1−3.温度調整回路]
次に、温度調整回路25について説明する。
温度調整回路25には、測温抵抗体16を含むホイーストーンブリッジであるブリッジ回路250と、ブリッジ回路250から得られる電位差を増幅する増幅回路260と、が設けられている。
ブリッジ回路250は、測温抵抗体16、第1ブリッジ固定抵抗251、第2ブリッジ固定抵抗252、第3ブリッジ固定抵抗253を備えるホイートストンブリッジ回路である。
第1ブリッジ固定抵抗251は、測温抵抗体16と直接接続されている。測温抵抗体16の端部のうち第1ブリッジ固定抵抗251との接続端部とは反対側の端部は、接地されている。第1ブリッジ固定抵抗251の端部のうち第2ブリッジ固定抵抗252との接続端部は、直流電源Vccを供給する電源ラインに接続されている。
また、第2ブリッジ固定抵抗252は、第3ブリッジ固定抵抗253に直列接続されている。第3ブリッジ固定抵抗253の端部のうち第2ブリッジ固定抵抗252との接続端部とは反対側の端部は、接地されている。第2ブリッジ固定抵抗252の端部のうち第1ブリッジ固定抵抗251との接続端部は、直流電源Vccを供給する電源ラインに接続されている。
第1ブリッジ固定抵抗251と測温抵抗体16との接続点P−は、第2温調抵抗263を介して演算増幅器261の反転入力端子に接続されている。第2ブリッジ固定抵抗252と第3ブリッジ固定抵抗253との接続点P+は、第1温調抵抗262を介して演算増幅器261の非反転入力端子に接続されている。また、演算増幅器261の出力は、温度検出信号VTとして演算部30に供給されている。
増幅回路260は、差動増幅回路であって、演算増幅器261と、第1温調抵抗262と、第2温調抵抗263と、第3固定抵抗264と、コンデンサ265と、を備える。第1温調抵抗262は、演算増幅器261の非反転入力端子と接続点P+との間に接続されている。第2温調抵抗263は、演算増幅器261の反転入力端子と接続点P−との間に接続されている。第3固定抵抗264およびコンデンサ265は、演算増幅器261の反転入力端子と出力端子との間に並列接続されている。
[1−4.演算部]
演算部30は、温度調整回路25から出力される温度検出信号VTと、通電制御回路21から出力される検出信号V1に基づき水素ガス濃度を演算するものである。演算部30は、直流電源40から給電が開始されて起動するものであり、起動後、演算部30は各部を初期化してガス濃度演算処理を開始するものである。
演算部30には、ガス濃度演算処理などの各種の演算処理を実行する中央演算装置(CPU)や、CPUで各種の演算処理を実行させる各種のプログラムやデータなどを格納するROMやRAMなどの記憶装置や、各種信号を入出力するためのIOポートや、計時用タイマー等が設けられている(図示せず。)。
上述の記憶装置には、温度換算データと、電圧換算データと、湿度換算データと、濃度換算データと、が少なくとも記憶されている。また、記憶装置には、後述する基準トップ電位V20および基準中間電位V10に基づいて基準抵抗値R0を演算するための演算式なども記憶されている。
温度換算データとしては、被検出雰囲気の環境温度Tと温度検出信号VTでもある温度電圧VTとの相関関係を表す温度換算データが含まれる。
電圧換算データとしては、発熱抵抗体15の抵抗値と発熱抵抗体15の両端電圧との相関関係を表す電圧換算データが含まれる。
湿度換算データとしては、被検出雰囲気内の湿度Hと高温時電圧VH、低温時電圧VLおよび温度電圧との相関関係を表す湿度換算データが含まれる。
濃度換算データとしては、高温時電圧VHまたは低温時電圧VLと可燃性ガスのガス濃度Xとの相関関係を表す濃度換算データが含まれる。
なお、本実施形態は、高温時電圧VHと水素ガスのガス濃度Xとの相関関係を表す濃度換算データを用いる構成である。なお、各換算データは、換算用マップデータや換算用計算式等からなるものであり、実験等により得られたデータに基づいて予め作成されたものである。
上述の湿度換算データには、環境温度T(ひいては温度電圧VT)と後述する電圧比VC(0)との相関関係を表す電圧比換算用マップデータ、および、後述する電圧比差ΔVCと湿度Hとの相関関係を表す湿度換算用マップデータが含まれている。
上述の濃度換算データには、温度電圧VTと後述する高温時電圧VH(0)との相関関係を表す高温時電圧換算用マップデータ、高温時電圧VHおよび湿度Hと後述する高温時電圧変化ΔVH(H)との相関関係を表す湿度電圧変化換算用マップデータ、および、温度電圧VTおよび高温時電圧VHと後述するガス感度G(VT)との相関関係を表すガス感度換算用マップデータが含まれている。
[1−5.水素ガス濃度の検出方法]
次に、本実施形態の可燃性ガス検出装置1による水素ガス濃度の検出方法について説明する。水素ガス濃度を検出する際には、可燃性ガス検出装置1は、図4(a)および図4(b)に示すように、一定の周期時間tの間(以下「低温期間t」と表記する。)に発熱抵抗体15の設定温度を低温側の第2設定温度CLに保持する制御処理と、一定の周期時間tの間(以下「高温期間t」と表記する。)に高温側の第1設定温度CHに保持する制御処理と、を交互に繰り返し行う。
具体的には、可燃性ガス検出装置1の演算部30が切替信号CG1を出力することにより、低温期間tの間、ブリッジ回路210の抵抗値、即ち、発熱抵抗体15の端子間電圧を低温時電圧VLに保持する制御処理と、高温期間tの間、発熱抵抗体15の端子間電圧を高温時電圧VHに保持する制御処理と、を交互に繰り返し行う。
本実施形態では、低温期間tおよび高温期間tは、それぞれ同一長さであり、具体的には、200msである。なお、低温期間tおよび高温期間tを合計した1サイクルである2tの長さは、長くても5秒以下であることが望ましい。1サイクルの長さが長くなると、環境変化に対する出力の追従性、言い換えると出力の精度が悪くなるためである。
そして、演算部30は、可燃性ガス検出装置1の出荷前段階に実行する基準判定値演算処理や、ガス検出時に実行するガス濃度演算処理などの各種制御処理を実行する。
まず、基準判定値演算処理について説明する。
基準判定値演算処理は、可燃性ガス検出装置1の出荷前段階に1回のみ実行されて、基準抵抗値R0を演算するための制御処理である。図5は、基準判定値演算処理の処理内容を示すフローチャートである。
基準判定値演算処理が起動されると、まず、S110(Sはステップを表す)では、装置内の各部への通電を開始する。具体的には、通電制御回路21による発熱抵抗体15への通電や、温度調整回路25による測温抵抗体16への通電を開始する。
次のS120では、通電制御回路21から低温時電圧VL,高温時電圧VH,基準トップ電位V20、基準中間電位V10を取得し、温度調整回路25から温度電圧VTを取得する。
なお、基準トップ電位V20は、このときに検出されるTOP電圧信号V2の電位であり、基準中間電位V10は、このとき検出される検出信号V1の電位であり、温度電圧VTは、このとき検出される温度検出信号VTの電圧である。
次のS130では、基準抵抗値R0を[数1]に基づいて演算する。
なお、R211は、第1ブリッジ固定抵抗211の抵抗値である。
なお、基準抵抗値R0は、可燃性ガス検出装置1の出荷前段階における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値に基づいて値が定まる。
次のS140では、S130で得られた基準抵抗値R0を記憶装置に記憶する。
次のS150では、S130で得られた基準抵抗値R0の値を現状反映抵抗値Rpに代入する(Rp=R0)ことで、現状反映抵抗値Rpを記憶装置に記憶する。なお、現状反映抵抗値Rpは、後述するガス濃度演算処理で利用される変数の1つである。
S150での処理が完了すると、基準判定値演算処理が終了する。
このようにして基準判定値演算処理は、基準抵抗値R0を演算するとともに、基準抵抗値R0を記憶装置に記憶する。また、基準判定値演算処理は、基準抵抗値R0を用いて、現状反映抵抗値Rpの出荷時設定値を設定する。
次に、ガス濃度演算処理について説明する。
ガス濃度演算処理は、可燃性ガス検出装置1によるガス検出時に実行されることで、可燃性ガス濃度を演算するための制御処理である。なお、ガス濃度演算処理は、基準判定値演算処理が実行されて基準抵抗値R0が記憶装置に記憶された状況下で実行が許可される。図6は、ガス濃度演算処理の前半の処理内容を示すフローチャートであり、図7は、ガス濃度演算処理の後半の処理内容を示すフローチャートである。
ガス濃度演算処理が起動されると、まず、S210では、装置内の各部への通電を開始する。具体的には、通電制御回路21による発熱抵抗体15への通電や、温度調整回路25による測温抵抗体16への通電を開始する。
次のS215では、記憶装置に記憶されている「現状反映抵抗値Rp」の値を「抵抗平均値Ra」に設定する。つまり、本処理で使用する変数の1つである「抵抗平均値Ra」に対して初期値を設定する。
次のS220では、通電制御回路21から低温時電圧VL,高温時電圧VH,検出時トップ電位V21、検出時中間電位V11を取得し、温度調整回路25から温度電圧VTを取得する。
なお、検出時トップ電位V21は、このときに検出されるTOP電圧信号V2の電位であり、検出時中間電位V11は、このとき検出される検出信号V1の電位であり、温度電圧VTは、このとき検出される温度検出信号VTの電圧である。
次のS230では、検出時抵抗値R1を[数2]に基づいて演算する。
なお、R211は、第1ブリッジ固定抵抗211の抵抗値である。
次のS240では、S230で得られた検出時抵抗値R1を用いて、検出時抵抗値R1の平均値である抵抗平均値Raを演算する。ここでは、加重平均値としての抵抗平均値Raを演算するための[数3]を用いて、抵抗平均値Raを演算する。
なお、W1は、加重平均値としての抵抗平均値Raを演算する際の検出時抵抗値R1の加重割合(全体を100とした場合の割合)であり、「100−W1」は、加重平均値としての抵抗平均値Raを演算する際の「前回の抵抗平均値Ra」の加重割合である。なお、本実施形態では、加重割合W1に「1」が設定されている。
なお、検出時抵抗値R1は、可燃性ガス検出装置1のガス検出時(換言すれば、可燃性ガス検出装置1の動作時)における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値に基づいて値が定まる。また、検出時抵抗値R1に基づき算出される抵抗平均値Raについても、可燃性ガス検出装置1のガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値に基づいて値が定まる。
次のS245では、現状反映抵抗値Rpの値を更新するための現状反映値更新処理を実行する。図8は、現状反映値更新処理の処理内容を示すフローチャートである。
現状反映値更新処理が起動されると、まず、S510では、抵抗平均値Raと現状反映抵抗値Rpとの差分値の絶対値が変動判定閾値Dthよりも大きいか否かを判定し、肯定判定する場合にはS520に移行し、否定判定する場合には本処理(現状反映値更新処理)を終了する。
なお、変動判定閾値Dthは、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値に基づいて定まる検出時抵抗値R1の変動量が予め定められた数値を超えたか否かを判定するために設定されている。詳細には、変動判定閾値Dthは、検出時抵抗値R1の平均値(抵抗平均値Ra)の変動量が予め定められた数値を超えたか否かを判定するために設定されている。本実施形態では、変動判定閾値Dthには0.08[Ω]が設定されている。
S510で肯定判定されてS520に移行すると、S520では、抵抗平均値Raの値を現状反映抵抗値Rpに代入し(Rp=Ra)、現状反映抵抗値Rpを記憶装置に記憶することで、現状反映抵抗値Rpを更新する処理を実行する。このとき現状反映抵抗値Rpが記憶される記憶装置31は、不揮発性メモリであり、可燃性ガス検出装置1(演算部30)が動作停止状態であるときにも現状反映抵抗値Rpを記憶することができる。
S510で否定判定されるか、S520が終了すると、再び、ガス濃度演算処理(詳細には、S250)に移行する。
ガス濃度演算処理のS250に移行すると、S250では、S240で得られた抵抗平均値Raと、記憶装置に記憶されている基準抵抗値R0との差分値(差分抵抗ΔR)を[数4]に基づいて演算する。
ここで、基準抵抗値R0は、可燃性ガス検出装置1の出荷前段階における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値に応じた値を示しており、抵抗平均値Raは、可燃性ガス検出装置1のガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値に応じた値を示している。
このため、差分抵抗ΔRは、可燃性ガス検出装置1の出荷前段階とガス検出時とにおける、第2ブリッジ固定抵抗212(あるいは可変抵抗部213)の抵抗値の差に応じた値を示す。換言すれば、差分抵抗ΔRは、可燃性ガス検出装置1の出荷前段階とガス検出時とにおける、第2ブリッジ固定抵抗212(あるいは可変抵抗部213)の劣化状態の差に応じた値を示す。
次のS260では、差分抵抗ΔRの絶対値が劣化判定閾値Rth以下であるか否かを判定し、肯定判定する場合にはS280に移行し、否定判定する場合にはS270に移行する。
なお、劣化判定閾値Rthは、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213のうち少なくとも一方が劣化状態である場合に差分抵抗ΔRの絶対値が示す数値範囲と、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213のいずれも劣化状態ではない場合に差分抵抗ΔRの絶対値が示す数値範囲と、の境界値が設定される。本実施形態では、劣化判定閾値Rthには「2.0[Ω]」が設定されている。
そして、S260で肯定判定する場合には、ブリッジ回路210の第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213のいずれも劣化していないと判定でき、S260で否定判定する場合には、ブリッジ回路210の第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213のうち少なくとも一方が劣化していると判定できる。
このため、S260で否定判定されてS270に移行すると、S270では、抵抗の劣化を通知する処理を行う。例えば、可燃性ガス検出装置1に設けられた表示部(図示省略)に抵抗の劣化状態を示す表示を行う処理や、音声通知部(図示省略)から音声メッセージを出力する処理などを行い、使用者に対して通知する。
S270での処理が完了すると、S280に移行する。
他方、S260で肯定判定されるかS270での処理が完了してS280に移行すると、S280では、差分抵抗ΔRに基づいて電圧誤差ΔV1を演算する。このとき、発熱抵抗体15の抵抗値と発熱抵抗体15の両端電圧との相関関係を表す電圧換算データを用いて、電圧誤差ΔV1を演算する。
次のS290では、S280で得られた電圧誤差ΔV1を用いて、高温時電圧VHを補正して、補正後高温時電圧VH’を演算する。具体的には、[数5]を用いて、補正後高温時電圧VH’を演算する。
次のS300では、S290で得られた補正後高温時電圧VH’と、高温時電圧VHと低温時電圧VLとの比率とを用いて、補正後低温時電圧VL’を演算する。具体的には、[数6]を用いて、補正後低温時電圧VL’を演算する。
なお、補正後低温時電圧VL’の演算方法は、[数6]を用いる方法に限られることはなく、例えば、[数5]を用いた補正後高温時電圧VH’の演算方法と同様の方法で、電圧誤差ΔV1を用いて補正後低温時電圧VL’を演算しても良い。
次のS310では、補正後高温時電圧VH’および補正後低温時電圧VL’に基づいて、電圧比VCを演算する。具体的には、[数7]を用いて電圧比VCを演算する。
次のS320では、S220で取得した温度電圧VTおよび電圧比換算用マップデータに基づいて、環境温度Tひいては温度電圧VTにおけるガス濃度Xがゼロ、および、湿度Hがゼロのときの電圧比VC(0)を演算する。
次のS330では、S310で得られた電圧比VC、および、S320で得られた電圧比VC(0)を、[数8]の入力値として、環境温度Tひいては温度電圧VTにおける電圧比差ΔVCを演算する。
次のS340では、S330で得られた電圧比差ΔVC、および、湿度換算用マップデータに基づいて、電圧比差ΔVCのときの湿度Hを演算する。
次のS350では、S290で得られた補正後高温時電圧VH’と、S220で取得した温度電圧VTと、高温時電圧換算用マップデータと、に基づいて、環境温度Tひいては温度電圧VTにおけるガス濃度Xがゼロ、および、湿度Hがゼロのときの補正後高温時電圧VH’(0)を演算する。
次のS360では、S290で得られた補正後高温時電圧VH’と、S340で得らえた湿度Hと、湿度電圧変化換算用マップデータと、に基づいて、補正後高温時電圧VH’のうちの湿度Hに起因する電圧変化分を表す高温時電圧変化ΔVH’(H)を演算する。
次のS370では、S290で得られた補正後高温時電圧VH’、S350で得られた高温時電圧VH’(0)、S360で得られた高温時電圧変化ΔVH’(H)を、[数9]の入力値として、補正後高温時電圧VH’のうちの可燃性ガスに起因する電圧変化分を表す高温時電圧変化ΔVH’(G)を演算する。
次のS380では、S290で得られた補正後高温時電圧VH’、S220で得られた温度電圧VT、ガス感度換算用マップデータに基づいて、補正後燃性ガスに対する感度(単位はガス濃度Xの逆数)を表すガス感度G(VT)を演算する。
次のS390では、S370において算出した高温時電圧変化ΔVH’(G)、S380において算出したガス感度G(VT)を、[数10]の入力値として、可燃性ガス(水素)のガス濃度Xを演算する。
S390の完了後、再びS220に移行し、上述の処理を繰り返し実行する。
このように、ガス濃度演算処理においては、差分抵抗ΔRの絶対値に基づいて、ブリッジ回路210の第2辺(第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213が直列に接続された辺)の劣化状態を判定できる。
また、ガス濃度演算処理においては、差分抵抗ΔRを用いて高温時電圧VHおよび低温時電圧VLを補正し、その補正により得られる補正後高温時電圧VH’および補正後低温時電圧VL’を用いてガス濃度Xを演算している。換言すれば、ガス濃度演算処理においては、差分抵抗ΔRを用いて発熱抵抗体15の両端電圧(高温時電圧VHおよび低温時電圧VL)を補正して、ガス濃度Xを演算している。
[1−6.効果]
以上説明したように、本実施形態の可燃性ガス検出装置1においては、第1ブリッジ固定抵抗211は、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213と比べて、相対的に劣化しがたい抵抗素子(換言すれば、経時的劣化または環境負荷による劣化(温度や湿度、通電などの影響による劣化)に由来した抵抗値の変化割合が小さい特性を有している抵抗素子)で構成されている。
このため、相対的な比較においては、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213が直列に接続された第2辺における劣化が第1ブリッジ固定抵抗211よりも早期に発生しやすくなる。
そして、基準抵抗値R0は、可燃性ガス検出装置1の出荷前段階における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値に応じた値を示しており、検出時抵抗値R1は、可燃性ガス検出装置1のガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値に応じた値を示している。また、抵抗平均値Raは、検出時抵抗値R1と同様に、ガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値に基づいて値が定まる特性を有すると共に、検出時抵抗値R1の平均値であることからノイズなどの影響による突発的な数値変動が生じにくい特性を有する。
そして、ガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213がいずれも劣化していない場合には、ガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値は、可燃性ガス検出装置1の出荷前段階における抵抗値と比べて大差がない。このため、ガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213がいずれも劣化していない場合には、抵抗平均値Raは基準抵抗値R0と同程度の値を示すことになり、抵抗平均値Raと基準抵抗値R0との差分値である差分抵抗ΔRの絶対値は小さい値を示す。
他方、ガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213のうち少なくとも一方(つまり、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213が直列に接続された第2辺)が劣化した場合には、ガス検出時における当該第2辺の抵抗値は劣化状態に応じた値に変化する。このため、ガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213のうち少なくとも一方が劣化した場合には、抵抗平均値Raは基準抵抗値R0とは異なる値を示すことになり、抵抗平均値Raと基準抵抗値R0との差分値である差分抵抗ΔRの絶対値は大きい値を示す。とりわけ、劣化の程度がひどくなるほど、抵抗平均値Raと基準抵抗値R0との差分値である差分抵抗ΔRの絶対値はより大きい値を示す。
これらのことから、演算部30がガス濃度検出処理のS260を実行することで、抵抗平均値Raと基準抵抗値R0との差分値(差分抵抗ΔR)の絶対値に基づいて、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213のうち少なくとも一方(つまり、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213が直列に接続された第2辺)の劣化状態を判定することが可能となる。
よって、可燃性ガス検出装置1においては、ブリッジ回路210に備えられる第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213(つまり、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213が直列に接続された第2辺)の劣化を検出できる。
次に、可燃性ガス検出装置1においては、S240において抵抗平均値Raを演算するにあたり、加重平均値の演算手法に基づいて、最新の検出時抵抗値R1と前回の抵抗平均値Raとを用いて最新の抵抗平均値Raを演算している。
このような加重平均値の演算を繰り返し実行することで、2個の数値(最新の検出時抵抗値R1、前回の抵抗平均値Ra)に基づいて、長期間にわたる検出時抵抗値R1の変化傾向が反映された抵抗平均値Raを演算することができる。
これにより、長期間にわたる検出時抵抗値R1の変化傾向が反映された抵抗平均値Raを演算するにあたり、3個以上の検出時抵抗値R1を記憶する必要が無くなり、検出時抵抗値R1を記憶するための記憶部の記憶容量が膨大になることを抑制できる。具体的には、演算部30におけるROMやRAMなどの記憶装置の記憶容量が増大することを抑制できる。これに伴い、可燃性ガス検出装置1の全体としてのコストの増大も抑制できる。
次に、可燃性ガス検出装置1においては、演算部30が現状反映値更新処理を実行することで、最新の抵抗平均値Raと現状反映抵抗値Rpとの差分値の絶対値が変動判定閾値Dthよりも大きいと判定される場合に(S510で肯定判定)、抵抗平均値Raの値を現状反映抵抗値Rpに代入し(Rp=Ra)、現状反映抵抗値Rpを更新する。このとき、現状反映抵抗値Rpを記憶装置(不揮発性メモリ)に記憶する。
抵抗平均値Raは、ガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213の各抵抗値に基づいて値が定まる特性を有しているため、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213が直列に接続された第2辺の劣化状態に応じて値が変動する。そして、当該第2辺の劣化状態に一定量を超える変化が生じた場合には、最新の抵抗平均値Raと現状反映抵抗値Rpとの差分値の絶対値が変動判定閾値Dthよりも大きいと判定される(S510で肯定判定)。
このため、現状反映値更新処理のS520で記憶された現状反映抵抗値Rpは、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213が直列に接続された第2辺の劣化状態に一定量を超える変化が生じる毎に値が更新されることとなり、現状反映抵抗値Rpは、最新の抵抗部の劣化状態に応じた値が設定される。そして、演算部30の記憶装置(詳細には、不揮発性メモリ)は、可燃性ガス検出装置1が動作停止状態であるときにも現状反映抵抗値Rpを記憶する。
また、演算部30は、ガス濃度演算処理のS215にて、記憶装置に記憶されている「現状反映抵抗値Rp」の値を「抵抗平均値Ra」に設定する。つまり、演算部30は、可燃性ガス検出装置1の起動後初回の抵抗平均値Raの演算時(S240の初回実行時)までに、「現状反映抵抗値Rp」の値を「抵抗平均値Ra」の初期値として設定する。
このため、演算部30は、可燃性ガス検出装置1の起動後初回の抵抗平均値Raの演算時(S240の初回実行時)において、「前回の抵抗平均値Ra」として「抵抗平均値Raの初期値」(換言すれば、現状反映抵抗値Rp)を用いることができる。
このため、この可燃性ガス検出装置1は、抵抗平均値Raを演算するにあたり、可燃性ガス検出装置1の起動直後から、抵抗値の劣化状態が反映された「前回の抵抗平均値Ra」(換言すれば、現状反映抵抗値Rp)を利用することができる。
なお、このような処理を実行しない場合でも、抵抗平均値Raが繰り返し演算されることで、第2辺の劣化状態が反映された「前回の抵抗平均値Ra」を得ることはできるが、相応の時間を要するため、可燃性ガス検出装置1の起動直後から第2辺の劣化状態が反映された「前回の抵抗平均値Ra」を利用することは難しい。
よって、この可燃性ガス検出装置1によれば、可燃性ガス検出装置1の起動直後から、抵抗値の劣化状態が反映された抵抗平均値Raを得られることで、起動直後から、ホイートストンブリッジ回路に備えられる抵抗部の劣化検出を、精度良く、早期に実現できる。また、この可燃性ガス検出装置1によれば、起動直後から、信頼性の高い抵抗平均値Raが得られるため、抵抗平均値Raおよび基準抵抗値R0に基づく発熱抵抗体15の両端電圧の補正を精度良く行うことができる。
次に、ガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213がいずれも劣化していない場合には、発熱抵抗体15の両端電圧に対応する検出信号V1は、水素濃度(特定ガス濃度)に応じた適切な値を示す。
他方、ガス検出時における第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213のうち少なくとも一方(つまり、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213が直列に接続された第2辺)が劣化した場合には、発熱抵抗体15の両端電圧に対応する検出信号V1は、第2ブリッジ固定抵抗212(あるいは可変抵抗部213)の劣化状態の影響を受けて変動するため、水素濃度(特定ガス濃度)に応じた適切な値とは異なる値を示す。
そして、発熱抵抗体15の両端電圧の変動量は、第2ブリッジ固定抵抗212(あるいは可変抵抗部213)の劣化状態に応じて変化する。このため、演算部30がガス濃度検出処理のS290を実行することで、電圧誤差ΔV1を用いて高温時電圧VHを補正して、補正後高温時電圧VH’を演算する。この補正後高温時電圧VH’は、第2ブリッジ固定抵抗212(あるいは可変抵抗部213)の劣化状態の影響を低減するように補正された発熱抵抗体15の補正後両端電圧に相当する。
同様に、補正後低温時電圧VL’は、第2ブリッジ固定抵抗212(あるいは可変抵抗部213)の劣化状態の影響を低減するように補正された発熱抵抗体15の補正後両端電圧に相当する。
これにより、演算部30がガス濃度検出処理を実行して、発熱抵抗体15の両端電圧(検出信号V1)を用いて水素濃度(特定ガス濃度)を演算するにあたり、第2ブリッジ固定抵抗212(あるいは可変抵抗部213)の劣化状態の影響を低減しつつ、水素濃度(特定ガス濃度)を演算できる。
よって、可燃性ガス検出装置1においては、ブリッジ回路210に備えられる第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213のうち少なくとも一方(つまり、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213が直列に接続された第2辺)が劣化して抵抗値が変動した場合であっても、水素濃度の検出精度の低下を抑制できる。
次に、可燃性ガス検出装置1は、被検出雰囲気の温度である環境温度の変化により抵抗値が変化する測温抵抗体16を備えており、ガス濃度検出処理を実行する演算部30は、測温抵抗体16の抵抗値に基づき検出される環境温度T(ひいては温度電圧VT)を取得する。
ガス濃度検出処理を実行する演算部30は、発熱抵抗体15の両端電圧に対応する検出信号V1に加えて、測温抵抗体16の抵抗値に応じて変化する温度電圧VTを用いて、水素濃度(特定ガス濃度)を演算する。
このように、発熱抵抗体15の両端電圧に加えて環境温度Tを用いて水素濃度(特定ガス濃度)を演算することで、環境温度Tの変化による影響を抑制しつつ水素濃度(特定ガス濃度)を演算できる。
よって、可燃性ガス検出装置1によれば、環境温度Tの変化による影響を抑制しつつ水素濃度(特定ガス濃度)を演算できるため、水素濃度(特定ガス濃度)の検出精度を向上できる。
次に、可燃性ガス検出装置1においては、検出信号V1は、発熱抵抗体15の両端電圧(端子間電圧)に対応する検出信号のみならず、第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+の電位に対応する第1中間電位信号V3や、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−の電位に対応する第2中間電位信号V4にも相当する。
このため、発熱抵抗体15の両端電圧(端子間電圧)、接続点P+の電位、接続点P−の電位をそれぞれ個別に検出する信号経路を備える複雑な構成ではなく、接続点P+の電位を検出する信号経路のみを備える簡易な構成であっても、その検出値を、発熱抵抗体15の両端電圧(端子間電圧)、接続点P−の電位として利用することができる。
よって、可燃性ガス検出装置1によれば、信号経路について簡易な構成を採用しつつ、発熱抵抗体15の劣化判定や、水素濃度(特定ガス濃度)の検出精度の向上を実現できる。
[1−7.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
可燃性ガス検出装置1がガス検出器の一例に相当し、ブリッジ回路210がホイートストンブリッジ回路の一例に相当し、増幅回路220および電流調整回路230がブリッジ制御部の一例に相当し、演算部30が演算部の一例に相当する。
第1ブリッジ固定抵抗211が第1抵抗部の一例に相当し、第2ブリッジ固定抵抗212が第2抵抗部の一例に相当し、可変抵抗部213が第3抵抗部の一例に相当する。
端部PGが基準点の一例に相当し、接続端部PVが高電位点の一例に相当し、接続点P+が第1電位点の一例に相当し、接続点P−が第2電位点の一例に相当する。
ガス濃度演算処理を実行する演算部30がガス濃度演算部の一例に相当し、基準抵抗値R0が基準判定値の一例に相当し、S150を実行する演算部30が基準判定値演算部の一例に相当し、検出時抵抗値R1が検出時判定値の一例に相当し、検出時中間電位V11が検出時電位の一例に相当し、S220を実行する演算部30が取得部の一例に相当し、S230を実行する演算部30が検出時判定値演算部の一例に相当し、S240を実行する演算部30が判定平均値演算部の一例に相当し、抵抗平均値Raが検出時判定平均値の一例に相当する。
S260を実行する演算部30が劣化判定部の一例に相当し、S290およびS300を実行する演算部30が電圧補正部の一例に相当する。S245(換言すれば、S510、S520)を実行する演算部30が現状反映値記憶部の一例に相当し、変動判定閾値Dthが変動判定閾値の一例に相当し、S215を実行する演算部30が初期値設定部の一例に相当する。
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−の電位を演算部30に取り込む信号経路を設けることなく、第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+の電位を演算部30に取り込む信号経路のみを設けて、接続点P+の電位を接続点P−の電位として利用する構成である。しかし、信号経路の構成はこのような構成に限られることはなく、例えば、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−の電位を演算部30に取り込む信号経路を別途設けて、この信号経路を介して演算部30が接続点P−の電位を取り込む構成であっても良い。
また、上記実施形態では、ホイートストンブリッジ回路に関して、発熱抵抗体の一端が基準点に接続される構成であったが、発熱抵抗体の一端が高電位点に接続される構成であっても良い。さらに、上記実施形態では、S260で否定判定されるとS270に移行して抵抗の劣化を通知する処理を行うようにしたが、S270の処理を省略し、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213が直列に接続された第2辺の劣化状態の影響を考慮して水素濃度の演算を行う構成を採っても良い。
また、上述した劣化判定閾値Rthの値は、「2.0[Ω]」に限られることはなく、ホイートストンブリッジ回路における抵抗部の劣化判定が可能な値であれば、任意の値を設定できる。
さらに、上述した加重割合W1の値は、「1」に限られることはなく、抵抗平均値Raの演算時における検出時抵抗値R1の反映割合に応じて任意の値を設定できる。例えば、抵抗平均値Raの演算時における検出時抵抗値R1の反映割合を大きくし、「前回の抵抗平均値Ra」の反映割合を小さくする場合にはより大きな値を設定することで、長期間にわたる検出時抵抗値R1の傾向が反映されやすくなる。反対に、抵抗平均値Raの演算時における検出時抵抗値R1の反映割合を小さくし、「前回の抵抗平均値Ra」の反映割合を大きくする場合にはより小さな値を設定することで、最新の検出時抵抗値R1の値が反映されやすくなる。
そして、抵抗平均値Raの演算方法は、加重平均値の演算方法に限られることはなく、相加平均や移動平均などを採用してもよい。
また、上記実施形態では、劣化判定処理および電圧補正処理(高温時電圧VH、低温時電圧VLの補正処理)を、ガス検出器の作動中は常時実行する構成について説明したが、これら各処理の実行タイミングは「常時」に限られることはない。例えば、ガス検出器の起動時毎に各処理を実行しても良く、あるいは、所定の時間間隔毎に各処理を実行しても良い。
さらに、ガス検出器の起動直後は、補正後の電圧値が大きく変動する虞があるため、起動後所定時間(例えば、5secなど)が経過した後に、電圧補正処理を実行する構成としても良い。
次に、上記実施形態では、基準判定値(基準抵抗値R0)と検出時判定平均値(抵抗平均値Ra)との差分値(差分抵抗ΔR)を用いて、劣化判定及び電圧補正を行う構成について説明したが、ガス検出器は、このような構成に限られることはない。例えば、基準判定値(基準抵抗値R0)と検出時判定平均値(抵抗平均値Ra)との比(抵抗比Rr(=Ra/R0))を用いて、劣化判定及び電圧補正を行う構成であってもよい。このとき、抵抗比Rrが1.0に近い値を示す場合には、劣化していないと判定し、抵抗比Rrが1.0から離れた値を示す場合には、劣化していると判定する。
次に、基準判定値演算処理の実行時期は、ガス検出器の出荷前段階に実行すれば良く、ガス検出器の出荷前段階であればどのタイミングでも良い。
次に、上記実施形態では、基準判定値(基準抵抗値R0)が基準判定値演算処理で演算される構成であるが、このような構成に限られることはなく、基準判定値が予め記憶部(ROMなど)に記憶されている構成であっても良い。また、記憶部は、ROMに限られることはなく、EEPROMなどの記憶部を用いてもよい。