JP6636746B2 - プラズマイオン源質量分析方法及び装置 - Google Patents

プラズマイオン源質量分析方法及び装置 Download PDF

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Description

本発明は、プラズマをイオン源として用いる質量分析方法及び装置に関し、詳しくはICP(誘導結合プラズマ)質量分析装置のようなプラズマイオン源質量分析装置を用いて測定を行うに際して、質量分析計に導入される被分析イオン(分析対象イオン)に対する干渉イオンの影響を排除するための新規な方法及び装置に関する。
プラズマイオン源を用いた質量分析法、例えばICP質量分析法は、無機元素、特に微量の金属を分析するために有用であり、半導体、地質及び環境産業を含む多くの分野で広く利用されている。ICP質量分析法によれば、周期律表の大半の元素について実質的に同時に多元素分析を行うことが可能であり、また元素濃度の定量を10億分の1(ppb)或いは1兆分の1(ppt)という優れた感度レベルで行うことができる。
ICP質量分析装置は、イオン源として誘導結合アルゴンプラズマを使用し、プラズマで生成された被分析元素のイオンはビームとして質量分析計に導入され、質量電荷比(m/z)に応じて分離され、測定される。典型的には、被測定元素は試料溶液中に溶解され、内部標準として添加された元素と共にポンプにより、試料エアロゾルを発生するネブライザへと送られる。試料エアロゾルはプラズマに供給され、そこで脱溶媒化され、原子化され、イオン化される。その結果得られた元素イオンは、プラズマから、サンプリングコーン及びスキマーコーンとして知られる2つのオリフィスを有するインタフェース及びイオンレンズを介して質量分析計に移送されるが、干渉イオンの影響を排除するため、多くの場合にイオンレンズの後段にはコリジョン/リアクション(衝突/反応)セルが配置される。コリジョン/リアクションセル(以下単に「反応セル」ともいう)には、水素やアンモニアなどの反応性ガスや、ヘリウムのような不活性ガスが供給され、イオンレンズから導入されてくるイオンビーム中の多原子分子イオンをガス分子と反応させて選択的に中和したり、ガス分子との衝突によって運動エネルギーを喪失させることによって、これらのイオンが測定信号に干渉するのを防止する作用を有する。
特許文献1は、ICP質量分析装置などにおいて、集束されたイオンビーム中における特定のイオンの強度を低減させる方法を開示している。この方法は、イオンビームをイオントラップ内の反応性ガス中を通過させるものであり、ArやArHのようなイオン化したキャリアガス及びキャリアガス原子を含有する多原子イオンから電荷を反応性ガスに移動させ、次いで荷電した反応性ガスを選択的に除去することによって、キャリアガスに起因する干渉イオンの影響を排除する。例えばイオントラップに供給される反応性ガスとして、Hが挙げられている。
特許文献2は、ICP質量分析装置などに用いられる反応性コリジョン(衝突)セルに関し、アンモニアを反応性ガスとしてコリジョンセルに導入し、アルゴンのようなキャリアガスに由来する、被分析イオンと同じ質量電荷比を有するArやAr含有多原子イオンのような干渉イオンの影響を排除することを開示している。反応性ガスとしては他にメタンが例示されている。
国際公開WO97/25737号公報 国際公開WO98/56030号公報
従来から、コリジョン/リアクションセルに供給される反応性ガスとしては、水素やアンモニア、メタンなどが広く用いられている。しかしながらこれらの反応性ガスは可燃性、爆発性や毒性が強く、取り扱いに安全上の注意を要する不具合がある。本発明の一つの課題は、安全性が高く、取り扱いに便利な反応性ガスを用いたプラズマイオン源質量分析方法及び装置を提供することである。
本発明の別の課題は、反応性ガスの選択肢の幅を広げ、種々の干渉イオンの影響を効果的に排除することのできる、プラズマイオン源質量分析方法及び装置を提供することである。
本発明によれば、さまざまな液体物質(以下では「液体材料」とも言う)から得られる気体を反応性ガスとして用いることにより、上記の課題の解決が図られる。このようにして得られる反応性ガスは安全で取り扱いが容易である一方、従来用いられていた水素やアンモニアなどの反応性ガスと同様に干渉イオンを排除する作用を有する。
即ち本発明の一つの側面によれば、導入される試料をプラズマでイオン化して真空中に引き込み、試料イオンを含むイオンビームを生成し、イオンビームを構成するイオンの分離及び検出を行う、プラズマイオン源を用いた質量分析方法であって、イオンの分離及び検出に先立ち、液体物質を気化して得られた反応性ガスをイオンビームに接触させる、質量分析方法が提供される。
液体物質としては水、水溶液、有機溶媒、水と有機溶媒の混合液などを広く用いることができ、これらから気化して得られる所望の反応性ガスに応じて選択される。典型的には液体物質は水であり、反応性ガスである水蒸気はキャリアガス、例えばヘリウムガスに混入されてイオンビームと接触されるが、キャリアガスは必ずしも用いなくともよい。他の具体的な液体物質の例としては、過酸化水素水やアンモニア水のような水溶液、メタノールやベンゼンのような有機溶媒が挙げられる。
また本発明の別の側面によれば、導入される試料をイオン化するためのプラズマを発生するプラズマ発生手段と、発生したプラズマの一部を真空中に引き込むインターフェース手段と、真空中に引き込まれたプラズマから試料イオンを含むイオンビームを生成する引出電極手段と、イオンビームから干渉イオンを除去するためのコリジョン/リアクションセルと、イオンを質量電荷比に応じて分離するイオン分離手段と、イオン分離手段により分離されたイオンを検出して検出信号を出力する検出手段を含む、プラズマイオン源質量分析装置であって、液体物質を気化し得られた反応性ガスをコリジョン/リアクションセルに供給する手段が備えられている、プラズマイオン源質量分析装置が提供される。
液体物質としては上記した方法の場合と同様に、水、水溶液、有機溶媒、水と有機溶媒の混合液などを広く用いることができ、これらから気化して得られる所望の反応性ガスに応じて選択される。具体例としては水の他、過酸化水素水やアンモニア水のような水溶液、メタノールやベンゼンのような有機溶媒が挙げられる。液体物質を気化し得られた反応性ガスをコリジョン/リアクションセルに供給する手段は、一例において、液体物質から気化される反応性ガスをキャリアガスに混入し、コリジョン/リアクションセルに供給する。典型的には液体物質は水であり、反応性ガスである水蒸気はキャリアガス、例えばヘリウムガスに混入されてコリジョン/リアクションセルに供給される。キャリアガスは飽和水蒸気を含み、コリジョン/リアクションセルに対する反応性ガスの導入量は、キャリアガスの流量を制御することによって制御可能である。
液体材料から気化される反応性ガスのキャリアガスに対する混入は、例えばキャリアガスを液体材料中でバブリングさせたり、容器中の液体材料の液面上部を通してキャリアガスを流すことによって行うことができる。一例では、水を収容した容器中に膜チューブを端部を除いて浸して加湿器を構成し、膜チューブにキャリアガスとしてヘリウムガスを通過させて、温度に応じた飽和蒸気圧に従って所定量の水蒸気をヘリウムガスに混入させることができる。膜チューブは例えば中空糸膜チューブであり、外側から中空糸膜の壁面を介して内部に浸透する水分子、すなわち水蒸気によってキャリアガスを湿らせる。
液体物質として水を用いる場合、脱イオン水、蒸留水(純水)、MilliQ水、超純水などを用いることができるが、揮発性の不純物を含むものでなければ特に制限されるものではない。またメタノール、ベンゼンなどの有機溶媒を用いた場合、これらは干渉イオンのみならず、被分析イオン(被干渉イオン)ともよく反応するため、反応の結果生成した、被分析元素を含むイオン(SiOH、VCなど)を測定することで、スペクトル干渉を避ける効果が期待される。こうした反応の例として以下のものを挙げることができる。
メタノールの場合
Si + CHOH → SiOH + CH
Sc + CHOH → ScOH + CH
ベンゼンの場合
+ C → VC
また、液体物質として水などの溶媒に溶解した物質を利用する場合、たとえば上記のように水溶液を用いる場合、過酸化水素水やアンモニア水から蒸発した過酸化水素やアンモニアをキャリアガスとともに反応セルに導入することが考えられる。強力な酸化力を有する前者は、酸化物イオンの生成反応が期待され、後者は、従来の高圧ガスボンベから得られるアンモニアの代替としての利用が期待される。
キャリアガスとしては上記のようにヘリウムを一例として挙げることができるが、水素、酸素など気体の反応ガスをキャリアガスとして用い、液体物質を気化して得られた反応性ガスを混入させて、複数の反応を起こすことも可能である。キャリアガスを用いる場合、その流量は0.1〜20mL/分の範囲にあるのが好ましく、典型的には1〜10mL/分の範囲にある。反応性ガスである水蒸気の流量は、キャリアガス中の水蒸気の分圧に依存し、その最大流量は気化時の温度に依存する飽和水蒸気圧で規定される。温度25℃で気化した飽和水蒸気を含むキャリアガスを用いる場合、水蒸気流量は0.0023〜0.46mg/分の範囲にあるのが好ましく、典型的には0.023〜0.23mg/分の流量となるように混入されうる。また温度35℃で気化した飽和水蒸気を含むキャリアガスを用いる場合は、水蒸気流量は0.004〜0.8mg/分の範囲にあるのが好ましく、典型的には0.04〜0.4mg/分の流量となるように混入されうる。
ICP質量分析に必要な微小流量を得る観点からは、キャリアガスに対する反応性ガスの混入のために加湿器を用いるのが好ましい。加湿器としては例えば、液体物質中に浸漬されたメンブレンチューブを用いることができる。しかし所要の微小流量が得られるのであれば混入方法に特に制限はなく、他の反応性ガス混入方法として、流量制御したキャリアガスを液体物質中に通気することで反応ガスを混入して反応セルに導入する方法(バブリング法)、共に流量制御した液体物質とキャリアガスを混合して気化部へ導入し、加熱により連続気化を行う直接加熱気化方法などがある。あるいは、液体物質を充填した気化タンクから発生した気化ガスを流量制御してそのまま反応セルに導入するベーキング法を用いることもできる。この場合、キャリアガスは用いても、用いなくてもよい。
なお反応性ガス導入する位置は、コリジョン/リアクションセル以外の他の位置であってもよく、また必要に応じてコリジョン/リアクションセルに加えて、かかる他の位置からの導入を行ってもよい。こうした他の導入位置としては、サンプリングコーンあるいはスキマーコーンのオリフィス部が挙げられる。米国特許第7329863号には、かかる導入を行うICP質量分析装置が記載されている。
本発明によれば、常温で液体である物質から気化させた反応性ガスを用いるため、反応性ガスの選択肢の幅が広がり、種々の干渉イオンに合わせて反応性ガスを選択することができるため、測定元素(分析対象)に応じて干渉イオンの影響を効果的に排除することができる。また、例えば水のように安定な液体材料を用いることにより、安全性が高く、取り扱いに便利な反応性ガスを用いたプラズマイオン源質量分析方法及び装置を提供することができる。
本発明が用いられるプラズマイオン源質量分析装置の一例の基本的な構成を示す概略図である。
本発明によるガス供給装置の適用例を示す概略図である。
(a)から(c)は、いずれも本発明によるガス供給装置の別の適用例を示す概略図である。
本発明によるガス供給装置を用いた場合の反応性ガス流量とイオン強度の関係を示すグラフである。
図1は、プラズマイオン源質量分析装置の一例として、ICP質量分析装置の基本的な構成を示す。図1に示すICP質量分析装置100は、試料採取部110と、試料導入部120と、試料をイオン化するためのプラズマPを生成する誘導結合プラズマイオン源130と、プラズマPに面する位置に置かれ、試料から生成された元素イオンをプラズマから引き出すインタフェース部140と、インタフェース部140の後に置かれ、引き出されたイオンを加速してイオンビームとして送り出すイオンレンズ部150と、イオンレンズ部150の背後に置かれたイオンガイド部であるコリジョン/リアクションセル160と、元素イオンを質量に関して分離するための、質量フィルタ170及びイオン検出器180とからなるイオン分離部を有する。これらは全て、ICP質量分析装置のシステムコントローラによって制御可能であり、またシステムコントローラはパーソナルコンピュータのようなコンピュータによって制御されうる。
試料採取部110において、通常は溶液形態であるバイアル中の試料112は蠕動ポンプ111によって吸い上げられ、試料導入部120に設けられた温度制御されたスプレーチャンバ122の端部から突き出たネブライザ121中に送り込まれる。試料採取部110には複数のバイアルを備えることができ、それぞれに被測定試料や各種の標準液、チューニング液、校正液、リンス液などを収容して、自動的に切り替えを行うことができる。ネブライザ121は、高圧のアルゴン(Ar)ガスを用いて霧化することによって試料エアロゾルを形成し、このエアロゾルはスプレーチャンバ122を通過することによって大きい液滴を取り去られてから、イオン源130中に吹き込まれる。
イオン源130はICPトーチ131を具備し、大気圧下に置かれている。このトーチ131はその中をArガスが流れる一連の同心状石英管で構成され、この石英管は高周波(RF)電源に接続されたコイル132の内部に配置される。このコイルによってトーチの先端近傍に作り出される高周波磁界がトーチを通過するAr原子を励起させ、高エネルギープラズマPを生成し維持することを可能にする。霧化された試料エアロゾルはトーチ131の前方よりプラズマ中に吹き込まれ、そこで脱溶媒化され、原子化され、イオン化される。イオン化された試料はプラズマP中に含まれ、トーチ131の内部で生じているガス流によって、プラズマPはインタフェース部140に向かって伸びる。
インタフェース部140には、一般的にサンプリングコーン141及びスキマーコーン142の2つのコーン部材が設けられる。インタフェース部140において、試料イオンを含むプラズマの一部は、プラズマPに直接面するサンプリングコーン141中央のオリフィス(アパーチャともいう)を通過してスキマーコーン142に達し、スキマーコーン142中央に形成されたオリフィスを通過して、イオンビームとしてその背後に向けて引き出される。なおスキマーコーン142を通過しない気体分子や中和されたイオンは、ロータリポンプによってインタフェース部140から排気される。ロータリポンプは一般的に油回転ポンプであるが、他の種類の真空ポンプが使用される場合もある。また、スキマーコーンの背後にさらなるコーンが使用される場合もある。
サンプリングコーン141及びスキマーコーン142を通してプラズマから引き出たイオンビームは、イオンレンズ部150によって加速される。イオンレンズ部150は典型的には引出し電極151、一連の集束レンズ152、及び軸をずらして取り付けられたオメガレンズ153を具備する。引出し電極151は、プラズマと異なる十分大きな電位とされ、プラズマPからのイオンをイオンビームの形で取り出し、イオンビームは後段に位置するイオンガイド部のコリジョン/リアクションセル160内へ導かれる。イオンレンズ150はターボ分子ポンプを用いて高真空に排気されている。
コリジョン/リアクションセル160には、161で示すようにガスを導入可能である。上述したように従来のセルでは水素やアンモニアなどの反応性ガスが導入され、セル内に導入されてきたイオンビームから干渉イオンを除去する作用を有する。すなわちコリジョン/リアクションセル160は、キャリアガスやプラズマガス、さらにはプラズマトーチに用いられる補助ガスに由来する元素を含み、被分析イオンの質量スペクトルに干渉を生じるような多原子分子イオンを、反応性ガスの分子との衝突による電荷移動反応、運動エネルギーの低下、化学反応等を生じさせることによって除去する。コリジョン/リアクションセル160内には、四重極又は八重極162のような多重極電極イオンガイド等が含まれうる。セル160内に導かれたイオンビームは、多重極電極により生成される電場によって決められる軌道に沿って後段に誘導される。
コリジョン/リアクションセル160から取り出されたイオンビームは、質量フィルタ170及びイオン検出器180より構成されるイオン分離部内に導入される。質量フィルタ170は、例示的に4本の平行ロッドで構成される四重極質量フィルタ171を具備し、これらのロッドには高周波及び直流電圧が印加される。印加される高周波電圧と直流電圧の任意の組合せに応じて、質量フィルタは特定の質量/電荷比のイオンだけを分離する。なお、質量フィルタには四重極以外のイオン分離機構を用いることができ、代表的なものに、磁場セクターを用いる磁場型、イオンの飛行時間により分離する飛行時間型、3次元四重極などのイオントラップを用いたイオントラップ型、イオンサイクロトロン共鳴及びフーリエ変換を用いたフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型、電場型フーリエ変換を用いたオービトラップ型などがあり、これらを複数直列接続したタンデム型のものもある。
続いて、分離されたイオンはイオン検出器180へ通過され、これによって異なる元素のイオンを分離し、測定することが可能になる。イオン分離部は、イオンレンズ部150と同様にターボ分子ポンプを用いて排気されており、質量フィルタ171によって分離された不要なイオン及び他の分子等が排出される。
イオン検出器180は、質量フィルタの直ぐ後に配置される電子増倍管型検出器181を含む。各質量のイオン信号は増幅された後、多チャンネル計数装置を用いて測定される。所与の質量、即ち元素の信号強度は、試料溶液中におけるその元素の濃度に正比例している。誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)の場合は、ダイナミックレンジが大きく、検出される信号は極微量(例えば0.1cps)から主成分(例えば、1010cps)にまで及ぶ。一般に、検出される信号が低い場合にはイオンカウンティングによる計測が使用され、検出される信号が高い場合にはアナログ計測が使用される。例えば、イオンカウンティングの場合には、イオンが、二次電子増倍管に導入されることにより10から10倍に増幅された電子に変換される。そのような電子を電圧パルスに変換して一定時間計数することにより、イオンカウントが求められる。また、検出される信号の強度が大きい場合、ファラデーカップが用いられる場合もある。
図2は、図1のICP質量分析装置10に本発明を適用した例を示す概略図である。反応性ガスは、機外に設けられた加湿器200を用いてコリジョン/リアクションセル160へとチューブ161を介して供給される。加湿器200は例えば液体物質205として水を収容しており、下流において結露を生じないように、図示しないヒーターを用いて温度制御されている。加湿器200はメンブレンチューブ、例えば中空糸膜チューブを用いて構成されており、反応性ガスとして一定量の水蒸気を、液体材料中に浸漬した中空糸膜チューブ201内へと、中空糸膜の壁面を介して浸透させ供給する。液体物質を透過させうるのであれば、これ以外にも種々のメンブレンチューブを用いることができる。加湿器200から延びるチューブ202は、必要に応じて結露防止のために加熱され、代替的に或いはそれに加えて、断熱材料により被覆される。加湿器200の上流にはキャリアガス源203があり、ヘリウムガスを供給している。キャリアガスの流量は前述のように0.1〜20mLの範囲、典型的には1〜10mL/分の範囲で制御可能である。反応性ガスである水蒸気は、前述したようにキャリアガス中における飽和蒸気圧によって規定される範囲内で、例えば25℃では0.023から0.23mg/分の制御可能な流量となるように加湿器200で混入される。チューブ202とチューブ161の間にはフローコントローラ204が設けられて、流量制御が行われる。
図3(a)から(c)はそれぞれ、図2の加湿器200と同様に図1のICP質量分析装置100に適用可能な、液体物質から気化させて反応性ガスを得るための装置の別の実施形態を示す。得られた反応性ガスは、コリジョン/リアクションセル160へと供給される。
図3(a)はバブリング法を用いた気化装置300を示す。液体物質305は恒温槽301内のタンク302に収容され、マスフローコントローラ(MFC)で流量制御されたキャリアガスを用いて、液体物質が気化される。即ちチューブ303を介してタンク302内へとバブリングされたキャリアガスは液体物質で飽和状態とされ、チューブ304からコリジョン/リアクションセルに向けて供給される。好適な制御のため、液体物質305の温度を図示しないセンサによってモニタし、やはり図示しないヒータを用いて制御することが可能である。また、オリフィスなどの流量制限器をチューブ304の途中に設けることで、タンクと真空中に置かれたセルとの間で圧力差を発生させ、タンク内圧力を維持できる。これにより、過剰な気化を防ぎ、反応性ガスを安定的にキャリアガス中に供給して、キャリアガス中に一定濃度で混入した反応性気化ガスを効率良く連続発生させることができる。
図3(b)はベーキング法を用いた気化装置310を示す。液体物質315は加熱恒温槽311内のタンク312に充填されているが、タンク312にはキャリアガスは供給されていない。タンク312からコリジョン/リアクションセルへと延びるチューブには、気化ガス流量の制御を行うマスフローコントローラMFCが加熱恒温槽311の内側に設けられている。気化ガスはそのまま反応セルへと導かれるが、所望であればキャリアガスと合流するようにしてもよい。液体物質315から直接加熱気化された物質蒸気316は、直接マスフローコントローラMFCで制御されて、反応性ガスとして連続供給可能である。
図3(c)は直接気化法を用いた気化装置320の概略を示す。この装置では、液体物質325とキャリアガス323のそれぞれをマスフローコントローラMFC326及び324で流量制御し、気液混合部327で混合する。混合物は加熱気化部328へと導入され、連続気化が行われる。図3(a)から(c)に例示した種類の具体的な気化装置は、例えば株式会社堀場エステックから入手可能な装置の流量を低減させるように改造することで実施可能である。
本発明の効果について、アジレント・テクノロジー社のICP質量分析装置8800(試作機)を用いて検証を行った。この装置は、コリジョン/リアクションセルの前後それぞれに四重極構成を備える。被分析元素としてはK、Ca、Fe、78Se及び80Seを用い、反応性ガスとして水素(H)及びアンモニア(NH)のそれぞれを用いた場合と、図2の装置を用いてヘリウムに水蒸気を混入して湿らせたものを反応性ガスとして用いた場合との比較を、バックグラウンド及び感度のそれぞれについて行った。図2の膜チューブ201としては、フッ素系イオン交換樹脂からなるチューブ型メンブラン膜(商品名サンセップ(AGCエンジニアリング株式会社製))を用いた。各元素について、最も低いバックグランド相当濃度(BEC)が得られる反応ガス流量におけるBECと感度を表1に示す。測定に用いた試料は、元素濃度1ppbの水溶液と純水(ブランク液)である。結果を表1に示す。
表1から理解されるように、ヘリウムのようなキャリアガスに混入された水蒸気は、反応性ガスとして十分に機能する。それによって達成される分析性能は、元素ごとに違いはあるものの、水素やアンモニアによって得られる結果と遜色なく、加湿器を用いて水から得られた反応性ガスが、水素やアンモニアの安全で安価な代替物でありうることが示される。
図4は、上記のようにして本発明を適用した場合の、反応性ガス流量とイオン強度の関係を示すグラフの一例であり、水蒸気流量に対するSeとArのイオン強度、およびバックグランド相当濃度(BEC)を示している。図4において、横軸は水蒸気流量(反応セルに1分当たりに導入された水蒸気重量)を表す。左縦軸はイオン強度(一秒当たりに計測されたイオン数(counts per second, cps)で、試料がブランク液(Se濃度が0の純水)の場合が丸印、濃度1ppbのセレン(Se)水溶液の場合が四角印でプロットされている。右縦軸は、両試料で測定されたイオン強度から算出したバックグランド相当濃度をpptで表している。左右縦軸は対数表示されている。質量フィルタの質量/電荷比はm/z=80に設定された。したがって、ブランク液の場合はプラズマに由来するアルゴン二量体イオン(40Ar )の強度、Se水溶液の場合は40Ar と試料由来の80Seの足し合わされた強度が測定される。干渉イオン40Ar の強度に比して80Seの強度が低いと、試料中のSe元素の分析は困難となる。
図4のグラフにおいて、水蒸気流量が0.047mg/分のとき、ブランク液とSe水溶液のイオン強度に違いがなく、いずれもほぼ2,200,000cpsである。これは、Se水溶液におけるSe強度が40Ar 強度に比べて極めて低いためで、測定されたイオンのほとんどがAr であることを示している。このような状態では、Seの測定はできない。しかし、水蒸気流量を増してゆくと、ブランク液のm/z=80のイオン強度、すなわちAr 強度は指数関数的に低下し、0.16mg/分(He流量9.5sccm)においては僅かに40cpsとなる。これはAr が水分子と反応するためであると考えられる。一方、Se水溶液のm/z=80のイオン強度は、はじめは指数関数的に低下するが、0.1mg/分以上では強度低下が緩やかになる。これは、水蒸気流量が高くなるとAr 強度が十分に低減され、計測されるイオンのほとんどが、水と反応しないSeであったことを示している。0.16mg/分の水蒸気流量において、イオン強度は、13186cpsであった。このうちの40cps分が40Ar の寄与であるとすると、Seの正味の強度は13146cpsである。濃度1ppbのSe水溶液がこのSeイオン強度を与えるので、感度(単位濃度当たりのイオン信号強度)は、13146cps/ppbと測定される。バックグランドを形成する40cps分は、濃度3.04pptのSeのイオン強度に相当する(40/13146=0.00304ppb=3.04ppt)。このBECと呼ばれる量は、どの程度の低濃度までSeが分析できるかの指標を与える。先に表1で示したように、Fe、K、Caにそれぞれ干渉するArO、ArH、およびArの低減にも水蒸気は効果的であった。
水分子とAr の反応および、その反応速度定数kとしては、次式が知られている。
Ar + HO → H + 2Ar
k=1.6×10−9 cm・mol−1・s−1
比較のため、水素、アンモニア、メタンのAr との反応と反応速度定数を列記する。
Ar + H → ArH + H 又は ArH + Ar
k=0.63×10−9 cm・mol−1・s−1
Ar + NH → NH + 2Ar
k=0.55×10−9 cm・mol−1・s−1
Ar + CH → CH + 2Ar
k=0.93×10−9 cm・mol−1・s−1
以上のように水の反応速度定数は、水素、アンモニア、メタンのいずれの反応速度定数よりも高く、化学反応論の面からも水の有用性が示される。(参考文献 Anicich,V.G. J.Phys.Chem. Ref.Data 22,1469(1993))。これらによっても、水(水蒸気)のような液体物質が、水素、アンモニア、メタンなどの安全で有効な代替物であることが示される。
100 ICP質量分析装置
110 試料採取部
120 試料導入部
130 誘導結合プラズマイオン源
140 インタフェース部
150 イオンレンズ部
160 コリジョン/リアクションセル
170 質量フィルタ
180 検出器
200 加湿器
300,310,320 気化装置

Claims (15)

  1. 導入される試料をプラズマでイオン化して真空中に引き込み、試料イオンを含むイオンビームを生成し、イオンビームを構成するイオンの分離及び検出を行う、プラズマイオン源を用いた質量分析方法であって、イオンの分離及び検出に先立ち、干渉イオンを除去するために液体物質を気化して得られた反応性ガスをイオンビームに接触させる、質量分析方法。
  2. 液体物質が、水、過酸化水素水、アンモニア水、メタノール、又はベンゼンである、請求項1に記載の質量分析方法。
  3. 液体物質が水であり、反応性ガスが水蒸気である、請求項1に記載の質量分析方法。
  4. 反応性ガスがキャリアガスに混入されてイオンビームに接触される、請求項1から3のいずれか1項に記載の質量分析方法。
  5. キャリアガスに対する反応性ガスの混入が、キャリアガスを液体物質中に通過させることによって行われる、請求項4に記載の質量分析方法。
  6. キャリアガスの液体物質中への通過が、メンブレンチューブを用いて行われる、請求項5に記載の質量分析方法。
  7. キャリアガスの液体物質中への通過が、バブリングによって行われる、請求項5に記載の質量分析方法。
  8. 導入される試料をイオン化するためのプラズマを発生するプラズマ発生手段と、発生したプラズマの一部を真空中に引き込むインターフェース手段と、真空中に引き込まれたプラズマから試料イオンを含むイオンビームを生成する引出電極手段と、イオンビームから干渉イオンを除去するためのコリジョン/リアクションセルと、イオンを質量電荷比に応じて分離するイオン分離手段と、イオン分離手段により分離されたイオンを検出して検出信号を出力する検出手段を含む、プラズマイオン源質量分析装置であって、液体物質を気化し得られた反応性ガスをコリジョン/リアクションセルに供給する手段を有する、プラズマイオン源質量分析装置。
  9. 液体物質が、水、過酸化水素水、アンモニア水、メタノール、又はベンゼンである、請求項8に記載の質量分析装置。
  10. 液体物質が水であり、反応性ガスが水蒸気である、請求項8に記載の質量分析装置。
  11. 反応性ガスがキャリアガスに混入されてコリジョン/リアクションセルに供給される、請求項8から10のいずれか1項に記載の質量分析装置。
  12. キャリアガスに対する反応性ガスの混入が、キャリアガスを加湿器に通過させることによって行われる、請求項11に記載の質量分析装置。
  13. 加湿器がメンブレンチューブを用いて構成されている、請求項12に記載の質量分析装置。
  14. キャリアガスに対する反応性ガスの混入が、キャリアガスを液体物質を通してバブリングする気化装置を用いて行われる、請求項11に記載の質量分析装置。
  15. 反応性ガスのコリジョン/リアクションセルへの供給が、液体物質を加熱により気化する気化装置から行われる、請求項8から11のいずれか1項に記載の質量分析装置。
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