以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る無線端末及び基地局切替方法を具体的に開示した本実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
図1は、本実施の形態の無線端末100が通信可能な基地局200、及び基地局200により提供されるスモールセルの一例を示す模式図である。無線通信システム10は、少なくとも一つの無線端末100及び複数の基地局200を含む構成である。無線端末100とそれぞれの基地局200とは、無線通信回線を介して接続される。なお図1では、説明を簡単にするために、無線端末100は1台のみ図示され、図1紙面の左右方向にX軸、同紙面の上下方向にY軸、X軸及びY軸にともに垂直な方向にZ軸方向が規定される。
無線通信システム10は、無線端末100が無線通信の際に接続する通信相手となるそれぞれの基地局200が同一の無線規格方式に準拠した無線通信をそれぞれ実行可能なネットワークを構成する。無線端末100は、基地局200との間での通信試行(通信トライ)が成功した場合に、その基地局200との間で無線通信を開始する。以下、無線規格方式として、高周波数帯(例えば、5G(第5世代移動通信システム)での使用が検討されている28GHz帯、又はミリ波(つまり、30GHz〜300GHz帯))を例示して説明する。但し、図1に示すそれぞれの基地局200は、複数の異なる無線通信方式(例えば無線アクセス技術(RAT:Radio Access Technology)やセル半径)に対応した基地局でもよい。無線アクセス技術(RAT)は、例えば無線通信規格、無線周波数の情報を含む。無線通信規格は、例えばLTE(Long Term Evolution)、無線LAN(Local Area Network)、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunication)、3G(第3世代移動通信システム)、4G(第4世代移動通信システム)であってもよい。
無線通信システム10により構成されるネットワークは、C/U分離型のネットワークでなくてもよいし、C/U分離型のネットワークであってもよい。本実施の形態では、C/U分離型ではないネットワークを例示する。つまり、無線通信システム10では、制御データの通信とユーザデータの通信とが同じ基地局200により実施される。
それぞれの基地局200は、上述した28GHz帯又はミリ波に基づく高速なスループットを提供可能なスモールセル基地局であり、高密度に配置される。また、それぞれの基地局200は、例えば工場、工事現場、スタジアム、国際会議場等の大会議室に配置される。無線端末100は、いずれのスモールセル基地局との間においても、制御データを通信し、ユーザデータを通信する。制御データは、C(Control)−Planeに係るデータを含む。ユーザデータは、U(User)−Planeに係るデータを含む。ユーザデータは、例えば画像データ(例えば動画、静止画)、音声データを含み、データ量の多いデータを含み得る。
C−planeは、無線通信における呼接続や無線資源割当の制御データを通信するための通信プロトコルである。U−planeは、無線端末100と基地局200との間で、割り当てられた無線資源を使用して実際に通信(例えば映像通信、音声通信、データ通信)するための通信プロトコルである。
基地局(スモールセル基地局)200のセル半径は、例えば10m〜100mであり、マクロセルに比べて比較的小さい。スモールセル基地局が採用可能な無線アクセス技術(RAT)は、多様であり、複数種類存在する。なお例えば、山間部、砂漠地帯、森林地帯においてセル半径が100m以上であってもよいし、マクロセルを提供可能な基地局(不図示)のセル半径よりも大きいことも考えられる。つまり、マクロセル基地局,スモールセル基地局の区別は、セル半径の大きさを意識していない。
図1では、「SBS」(△)がスモールセル基地局(基地局200)を示し、「T」(●)が無線端末100を示す。スモールセル基地局(基地局200)を囲む線は、そのスモールセル基地局による通信可能範囲を示す。それぞれの基地局200の通信可能範囲は、例えば基地局200の位置とセル半径に応じて定まり、全ての基地局200の通信可能範囲は同一面積でもよいし異なる面積でもよい。
無線端末100及び基地局200は、それぞれが採用可能な無線アクセス技術(RAT、例えば無線通信規格や無線周波数)から無線通信に用いる無線アクセス技術(RAT)を設定し、設定された無線アクセス技術(RAT)を用いて無線通信する。それぞれの無線端末100及び基地局200は、1つ以上の無線アクセス技術(RAT)を採用可能である。無線アクセス技術(RAT)の具体的な情報として、例えば以下のRAT1〜RAT5を含む。RAT1は、例えば周波数帯が700MHz〜3GHzのLTEである。RAT2は、例えば周波数帯が15GHzのLTE−Advancedである。RAT3は、例えば周波数帯が5GHzの無線LAN通信である。RAT4は、例えば周波数帯が15GHz帯の無線通信方式であり、第5世代移動通信方式である。RAT5は、例えば周波数帯が60GHz帯の無線通信方式(例えばミリ波通信)(例えばWiGig)である。
図2は、本実施の形態の無線端末100の内部構成の一例を詳細に示すブロック図である。無線端末100は、プロセッサ150、メモリ160、GPS(Global Positioning System)アンテナ101、GPS受信部102、送信アンテナ108、受信アンテナ109、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)アンテナ121及びBLE受信部122を含む構成である。
プロセッサ150は、メモリ160と協働して、各種処理や制御を行う。具体的には、プロセッサ150は、メモリ160に保持されたプログラム及びデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、以下の各部の機能を実現する。この各部は、位置情報生成部103、無線資源導出部104、無線資源割当管理部105、送信パケット生成部106、無線送信部107、無線受信部110、受信パケット復号部111を含む。
メモリ160は、例えば無線端末100の処理時に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、無線端末100の動作を規定したプログラム及びデータを格納するROM(Read Only Memory)とを有する。RAMには、各種データや情報が一時的に保存される。ROMには、無線端末100の動作(例えば、本実施の形態に係る基地局切替方法として行われる処理(ステップ))を規定したプログラムが書き込まれている。
また、蓄積部の一例としてのメモリ160は、累計通信履歴テーブルT1や、上位通信履歴テーブルT2、基地局種別管理テーブルT3を保存する。なお図2では、メモリ160は、プロセッサ150とは別構成として示されているが、プロセッサ150に内蔵されてもよい。メモリ160は、一次記憶装置とともに、二次記憶装置を含んでもよい。
GPSアンテナ101は、複数(例えば3つ又は4つ)のGPS衛星50から発信された時刻及び各GPS衛星50の位置(座標)を示す複数の信号を受信してGPS受信部102に出力する。それぞれのGPS衛星50は、時刻及び各GPS衛星50の位置(座標)を示す信号を発信する。
取得部の一例としてのGPS受信部102は、GPSアンテナ101により受信された複数の信号に基づいて、GPS受信部102の位置情報(つまり、無線端末100自身の位置情報)を算出して取得する。この算出により得られた位置情報は、例えば屋外に位置する無線端末100の現在位置を示し、具体的には緯度、経度、高度の情報である。なお、GPS受信部102は、プロセッサ150内に設けられても構わない。GPS受信部102は、算出により得られた無線端末100の位置情報をプロセッサ150に出力する。なお、GPS受信部102の位置情報の算出は、GPS受信部102の代わりに、プロセッサ150の位置情報生成部103により行われてもよい。この場合、位置情報生成部103には、GPSアンテナ101が受信した複数の信号に含まれる時刻及び各GPS衛星50の位置を示す情報が、GPS受信部102を介して入力される。
ここで、無線端末100が屋外に位置する場合には、複数のGPS衛星50からの信号に基づいて算出された無線端末100の位置情報の信頼性は相当に高い。しかし、無線端末100が屋内(例えば建物内又は地下街とするがこれらに限定されない。以下同様。)、又は屋外と屋内との境界付近に位置する場合には、複数のGPS衛星50からの信号に基づいて算出された無線端末100の位置情報は一定の誤差を含む場合がある。このように、無線端末100が屋内、又は屋外と屋内との境界付近に位置する場合には、無線端末100は、屋内に設置された複数のBLEビーコン60から発信された時刻及び各BLEビーコン60の位置(座標)を示す複数の信号に基づいて、現在の無線端末100自身の位置情報を算出して取得する。無線端末100は、例えばBLEビーコン60からの信号の受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)が所定の閾値より大きいと判断した場合には、屋内、又は屋外と屋内との境界付近に位置すると判断し、複数のBLEビーコン60から発信された信号に基づいて、自己の位置情報を算出する。なお、無線端末100が屋内、又は屋外と屋内との境界付近に位置すると判断する方法は、上述した受信電界強度と所定の閾値との比較結果に基づく方法に限定されない。
BLEアンテナ121は、複数(例えば2つ)のBLEビーコン60から発信された時刻及び各BLEビーコン60の位置(座標)を示す複数の信号を受信してBLE受信部122に出力する。それぞれのBLEビーコン60は、時刻及び各BLEビーコン60の位置(座標)を示す信号を発信する。また、それぞれのBLEビーコン60間の距離は既知である。それぞれの無線端末100は、それぞれのBLEビーコン60間の距離情報を予め取得していてもよいし、直接又はネットワーク(不図示)を介して外部装置(不図示。例えば他の無線端末、距離情報管理サーバ)から取得してもよい。
取得部の一例としてのBLE受信部122は、BLEアンテナ121により受信された複数の信号に基づいて、例えば三角測量法を用いてBLE受信部122の位置情報(つまり、無線端末100自身の位置情報)を算出して取得する。この算出により得られた位置の情報は、屋内又は屋外と屋内との境界付近に位置する無線端末100の現在位置を示す。
なお、BLE受信部122は、BLEアンテナ121により受信された複数の信号と公知の方法(例えばPDR(Pedestrian Dead Reckoning)やPMM(Pedestrian Map Matching))とを組み合わせ用い、無線端末100の屋内、又は屋外と屋内との境界付近における位置情報を算出してもよい。
ここで、それぞれのBLEビーコン60の設置位置は、緯度、経度及び高度の情報を有すると言えるので、無線端末100が屋外に位置する場合と同様に、無線端末100が屋内、又は屋外と屋内との境界付近に位置する場合でも、屋外での位置情報の取得方法は屋内に拡張できて、緯度、経度及び高度と同様の位置情報を取得できる。なお、BLE受信部122は、プロセッサ150内に設けられても構わない。BLE受信部122は、算出により得られた無線端末100の位置情報をプロセッサ150に出力する。なお、BLE受信部122の位置情報の算出は、BLE受信部122の代わりに、プロセッサ150の位置情報生成部103により行われてもよい。この場合、位置情報生成部103には、BLEアンテナ121が受信した複数の信号に含まれる時刻及び各BLEビーコン60の位置を示す情報が、BLE受信部122を介して入力される。
図4は、無線端末100の位置毎の通信履歴を保持した累計通信履歴テーブルT1の一例を示す模式図である。累計通信履歴テーブルT1は、無線端末100が複数の基地局200のうちいずれかの基地局(以下、「接続対象基地局」ともいう)との間で過去に無線通信した時の累計の通信履歴(通信実績)の情報を保持する。接続対象基地局は、無線端末100と通信接続された基地局200である。累計通信履歴テーブルT1は、それぞれの無線端末100のメモリ160に保持される。
累計通信履歴テーブルT1が保持する通信履歴は、例えば無線端末100が接続対象基地局との間で無線通信した時の順番(順序i)を示す情報と、その無線通信時の無線端末100の位置(緯度X、経度Y、高度Z)を示す情報と、接続対象基地局の識別番号mを示す情報とを対応付けて有する。例えば第1回目の接続対象基地局との間の通信接続時では、無線端末100は、位置(X1、Y1、Z1)に存在しており、番号3の接続基地局との間で無線通信を行ったことを意味する。接続対象基地局の番号は、それぞれの無線端末100において既知であり、例えばメモリ160に予め保持されている。図4では、過去の累計として、例えば100回分の通信履歴が示されている。なお、過去の累計として、100回に限らず、例えば300回分の通信履歴が使用されてもよい。
なお、図4では示されていないが、通信履歴は、接続対象基地局が採用する無線アクセス技術(RAT、例えば5G又はミリ波)、接続対象基地局との通信回数(無線接続回数)、及び接続対象基地局との通信時の通信量(通信データ量)の情報を含んでもよい。
本実施の形態では、無線端末100と接続対象基地局との通信履歴は累計通信履歴テーブルT1としてメモリ160に管理される。また、無線資源導出部104により導出された接続対象基地局との間で通信接続がトライされて成功すると、通信履歴は更新部の一例としての無線資源割当管理部105によって更新される。
位置情報生成部103は、例えば無線端末100が屋外に位置する場合には、GPS受信部102からの情報を基に、無線端末100の位置情報(つまり、現在の無線端末100の位置情報)を生成して無線資源導出部104に出力する。位置情報生成部103は、例えば無線端末100が屋内、又は屋外と屋内との境界付近に位置する場合には、BLE受信部122からの情報を基に、無線端末100の位置情報(つまり、現在の無線端末100の位置情報)を生成して無線資源導出部104に出力する。
導出部の一例としての無線資源導出部104は、位置情報生成部103により生成された無線端末100の位置情報(つまり、現在の無線端末100の位置情報)と、メモリ160の累計通信履歴テーブルT1とに基づいて、複数の基地局200から、データ(例えば制御データ、ユーザデータ)の通信に用いる無線資源の一例としての接続対象基地局(以下、「A基地局」とも称する)と、その接続対象基地局の次に接続優先度の高い無線資源の一例としての接続準備基地局(以下、「B基地局」とも称する)を少なくとも導出する。また、無線資源導出部104は、現在の無線端末100の位置情報と累計通信履歴テーブルT1とに基づいて、接続準備基地局(B基地局)の次に接続優先度が高い無線資源の一例としての1つ以上の接続準備候補基地局(以下、「C基地局」とも称する)を導出する。
具体的には、無線資源導出部104は、現在の無線端末100の位置情報と通信履歴の無線端末100の位置情報とに基づく距離diが小さい所定数(n:2以上の整数である既定値)の通信履歴の中で、例えば無線通信に割り当てた回数が多い順に各種の基地局(例えば、接続対象基地局、接続準備基地局、接続準備候補基地局)を導出する。また、無線資源導出部104は、無線受信部110からの通信断検出信号に基づいて接続対象基地局(A基地局)との通信切断を検出した時、通信切断が発生する前に無線通信していた接続対象基地局(A基地局)を、通信切断基地局の一例としての遮蔽発生基地局(以下、「D基地局」とも称する)として導出する。無線資源導出部104は、導出した無線資源(例えば無線基地局の識別番号)の導出結果を無線資源割当管理部105に出力する。
図3は、無線資源導出部104の内部構成の一例を詳細に示すブロック図である。無線資源導出部104は、距離di計算部1041と、接続候補優先度決定部1042と、接続トライ管理制御部1043と、接続準備管理制御部1044と、通信監視部1045と、基地局分類管理部1046とを有する。
距離di計算部1041は、図4の累計通信履歴テーブルT1を参照し、位置情報生成部103から出力された現在の無線端末100の位置(Xk、Yk、Zk)と通信履歴の無線端末100の位置(Xi、Yi、Zi)とに基づく距離diを、数式(1)に従って算出する。ここでは、i=1〜100としている。なお、距離diの算出例は数式(1)のハミング距離に限定されず、数式(2)のユークリッド距離であってもよい。
なお、距離di計算部1041は、距離diの算出時に、無線端末100の位置(緯度、経度、高度)のうち特定の要因(例えば高度)に重み付け係数を乗じてもよい(数式(3)参照)。数式(3)において、|Zk−Zi|の係数の「10」はあくまで重み付け係数の一例である。無線端末100の位置情報の中で緯度や経度が同じでも、高度が異なると通信環境が大きく異なる場合がある。このような場合、高度に上述した重み付け係数(例えば10)を考慮(具体的には、乗算)することで、無線資源導出部104は、無線端末100の現在の位置に相応しい通信環境を提供可能な基地局200(順に、接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)、接続準備候補基地局(C基地局))を導出できる。
接続候補優先度決定部1042は、数式(1)又は数式(2)により算出したそれぞれの距離diの中で、上位10(例えばn=10の場合)個の順序iと、基地局200の識別番号mを示す情報とを抽出することで、図5の上位通信履歴テーブルT2を生成する。
図5は、上位n個の距離diと無線資源(基地局の番号)との対応関係を示す上位通信履歴テーブルT2の一例を示す模式図である。上位通信履歴テーブルT2は、接続候補優先度決定部1042により生成される。上位通信履歴テーブルT2は、累計通信履歴テーブルT1の通信履歴の中で、接続対象基地局との間で過去に無線通信を行った時の無線端末100の位置情報との現在の無線端末100の位置情報との間の距離diが小さい上位所定数(n)個の通信履歴が抽出されたものである。上位通信履歴テーブルT2は、それぞれの無線端末100のメモリ160に保持される。
上位通信履歴テーブルT2が保持する通信履歴は、例えば無線端末100が接続対象基地局との間で無線通信した時の順番(順序i)を示す情報と、その無線通信時の無線端末100の位置(緯度X、経度Y、高度Z)と現在の無線端末100の位置(緯度X、経度Y、高度Z)との間の距離diを示す情報と、接続対象基地局の識別番号mを示す情報とを対応付けて有する。図5では、所定数(n)は「10」の例が示されている。つまり、距離di「0.13」が最小値(つまり、無線端末100の現在の位置に最も近い、過去の通信実績がある位置)であり、距離di「9.89」が最大値(つまり、上位10個の通信履歴の中で、無線端末100の現在の位置から最も離れた、過去の通信実績がある位置)である。例えば、距離diが最も小さい「0.13」の時に、無線端末100は番号8の接続対象基地局との間で無線通信を行ったことを意味する。同様に、距離diが最も大きい「9.89」の時に、無線端末100は番号3の接続対象基地局との間で無線通信を行ったことを意味する。
なお、累計通信履歴テーブルT1,上位通信履歴テーブルT2は、上り回線21用と下り回線22用とで別個に設けられてもよいし、共通して設けられてもよい。また、累計通信履歴テーブルT1,上位通信履歴テーブルT2に保持される基地局200が採用可能な無線アクセス技術(RAT)は、無線端末100も採用可能な無線アクセス技術(RAT)である。
なお、上り回線21は、無線端末100から基地局200に向かう無線回線である。下り回線22は、基地局200から無線端末100に向かう無線回線である。無線回線は、様々な公衆回線、携帯電話回線、広域無線回線等を広く含む。
接続候補優先度決定部1042は、上位通信履歴テーブルT2の距離diが小さいn個(n:2以上の整数である既定値)の通信履歴の中で、例えば割り当て回数が多い順に接続優先度が高い基地局200として、接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)、接続準備候補基地局(C基地局)を導出(選定)する。接続候補優先度決定部1042は、導出(選定)結果を、接続トライ管理制御部1043、接続準備管理制御部1044及び基地局分類管理部1046に出力する。接続候補優先度決定部1042における導出例については後述する。
なお、接続候補優先度決定部1042は、数式(1)や数式(2)のように、3次元要素を有する距離diを算出しているが、数式(1)や数式(2)におけるZ座標を考慮に入れない2次元要素を有する距離diを算出してもよい。これにより、距離diとして2次元要素のみを考慮すればいい場合(例えば過去の全ての無線通信時と同じ高度の位置で新たに通信接続を要求する時)には、上位通信履歴テーブルT2を生成する時の接続候補優先度決定部1042の計算負荷が軽減される。
なお、接続候補優先度決定部1042は、上述した距離diの算出において、累計通信履歴テーブルT1の全ての通信履歴を用いて上位通信履歴テーブルT2を生成したが、累計通信履歴テーブルT1のうち所定数(例えば100又は300)のみの通信履歴を用いて上位通信履歴テーブルT2を生成してもよい。これにより、上位通信履歴テーブルT2を生成する時の接続候補優先度決定部1042の計算負荷が軽減される。
また、接続候補優先度決定部1042は、無線端末100に新たな通信接続の要求が発生した時点の時間帯と同一の時間帯における通信履歴から所定数個の通信履歴を用いて上位通信履歴テーブルT2を生成してもよい。これにより、接続候補優先度決定部1042は、例えば昼間の時間帯や夜間の時間帯のように、時間帯毎に異なる通信環境に応じた通信履歴を有する上位通信履歴テーブルT2を生成できる。
また、接続候補優先度決定部1042は、距離diが所定の閾値dth(既定値)以下となる通信履歴のみから所定数(n)個の通信履歴を抽出することで、上位通信履歴テーブルT2を生成してもよい。これにより、距離diが所定の閾値dthより大きい通信履歴(言い換えると、無線端末100の過去の無線通信時の位置と現在の位置とが大きく離れている場合の通信履歴)を排除して上位通信履歴テーブルT2の生成が可能となるので、無線端末100は、現在の位置の周囲に設けられたネットワーク環境に沿う、より適切な無線資源の割り当てを行うことができる。
なお、接続候補優先度決定部1042は、上位通信履歴テーブルT2の中で無線資源(接続基地局の識別番号)の割り当て回数が多い接続対象基地局を優先して各種の基地局200(接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)、接続準備候補基地局(C基地局))を導出すると説明したが、導出方法はこれに限定されない。例えば、接続候補優先度決定部1042は、上位通信履歴テーブルT2の通信履歴に通信データ量が含まれている場合に、この通信データ量(言い換えると、送受信データバイト数)が多い順に、上述した各種の基地局200を導出してもよい。これにより、無線端末100は、例えば5G(第5世代移動通信システム)やミリ波のような高速なスループットが得られるスモールセル(言い換えると、通信データ量が多い可能性が高いセル)を提供可能な基地局200を優先して割り当てることが可能となり、快適な通信データ量を行い易くなる。
接続トライ管理制御部1043は、接続候補優先度決定部1042により導出(選定)された接続対象基地局(A基地局)に対し、無線端末100との間での通信試行(通信トライ)の実行を管理する。例えば、接続トライ管理制御部1043は、接続対象基地局(A基地局)との間での通信試行(通信トライ)の実行を無線資源割当管理部105に指示する。接続トライ管理制御部1043は、接続対象基地局(A基地局)との間での通信試行(通信トライ)の成否の結果(接続トライ可否信号)を無線資源割当管理部105から取得し、基地局分類管理部1046に出力する。
接続準備管理制御部1044は、接続候補優先度決定部1042により導出(選定)された接続準備基地局(B基地局)に対し、無線端末100との間での接続準備(スタンバイ)の状態を維持するための制御信号の交信の実行を管理する。例えば、接続準備管理制御部1044は、接続準備基地局(B基地局)との間での制御信号(上述参照)の交信の実行を無線資源割当管理部105に指示する。接続準備管理制御部1044は、接続準備基地局(B基地局)との間での制御信号の交信の成否の結果(交信可否信号)を無線資源割当管理部105から取得し、基地局分類管理部1046に出力する。
監視部の一例としての通信監視部1045は、接続対象基地局(A基地局)との間の通信中に、その接続対象基地局(A基地局)との通信切断の有無を監視する。通信監視部1045は、例えば人体や車等の遮蔽物の挿入等によって通信中の接続対象基地局(A基地局)との間の伝搬路の通信品質が劣化した事で、接続対象基地局(A基地局)との間の通信が切断した場合、無線受信部110から出力された通信断検出信号を取得する。通信監視部1045は、その通信断検出信号(つまり、接続対象基地局(A基地局)との通信切断に基づく通信断検出信号)を基地局分類管理部1046に出力する。
また、通信監視部1045は、遮蔽発生基地局(D基地局)からの信号を無線受信部110において受信できた場合(例えば、人又は車両等の遮蔽物が取り除かれた場合又はいなくなった場合)に、無線受信部110から出力された通信検出信号を取得する。通信監視部1045は、その通信検出信号(つまり、遮蔽発生基地局(D基地局)からの信号受信に基づく通信検出信号)を基地局分類管理部1046に出力する。
基地局管理部の一例としての基地局分類管理部1046は、接続候補優先度決定部1042から出力された基地局200の導出(選定)結果を取得し、図6に示すように、接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)、接続準備候補基地局(C基地局)と分類分けして管理する。基地局分類管理部1046は、分類分け結果を、図7に示す基地局種別管理テーブルT3としてメモリ160に保存する。また、基地局分類管理部1046は、接続トライ管理制御部1043からの接続トライ可否信号や接続準備管理制御部1044からの交信可否信号、並びに通信監視部1045からの通信断検出信号を基に、基地局種別管理テーブルT3中における各種の基地局200の分類を切り替える事によって更新する。
例えば、基地局分類管理部1046は、接続トライ管理制御部1043からの接続トライ可否信号において接続トライが成功した事を認識すると、接続トライの対象となった基地局200を接続対象基地局(A基地局)と分類して基地局種別管理テーブルT3を更新する。
例えば、基地局分類管理部1046は、接続準備管理制御部1044からの交信可否信号において交信が成功した事を認識すると、交信対象となった基地局200を接続準備基地局(B基地局)と分類して基地局種別管理テーブルT3を更新する。
例えば、基地局分類管理部1046は、通信監視部1045からの通信断検出信号を取得すると、現在通信中の基地局として認識されている接続対象基地局(A基地局)を、遮蔽発生基地局(D基地局)と分類して基地局種別管理テーブルT3を更新する。
ここで、無線資源導出部104が導出する基地局200の種別について、図6を参照して説明する。図6は、本実施の形態の無線端末100により管理される基地局200の分類例を示す説明図である。
上述したように、本実施の形態では、無線資源導出部104により、複数の基地局200から、接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)、接続準備候補基地局(C基地局)、遮蔽発生基地局(D基地局)が導出される。つまり、無線資源導出部104は、複数の基地局200の中で複数の基地局200を、接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)、接続準備候補基地局(C基地局)、遮蔽発生基地局(D基地局)として分類分けして管理する。
接続対象基地局(A基地局)は、無線端末100との間の接続優先度が最も高い基地局200であり、無線資源導出部104により1つ導出(選定)される。略称に用いた「A」は、ACCESS(アクセス)を意味する。
接続準備基地局(B基地局)は、無線端末100との間の接続優先度が接続対象基地局(A基地局)の次に高い基地局200であり、無線資源導出部104により1つ導出(選定)される。略称に用いた「B」は、BACKUP(バックアップ)を意味する。
接続準備候補基地局(C基地局)は、無線端末100との間の接続優先度が接続準備基地局(B基地局)の次に高い基地局200であり、無線資源導出部104により1つ以上導出(選定)される。略称に用いた「C」は、CANDIDATE(候補)を意味する。
遮蔽発生基地局(D基地局)は、無線端末100との間の接続優先度が最も低い基地局200であり、接続対象基地局(A基地局)との間の伝搬路の品質劣化等によって通信切断が生じた時(例えば人体や車等の遮蔽物が伝搬路に入った場合)に、無線資源導出部104により導出(選定)される。略称に用いた「D」は、DISCONNECT(切断)を意味する。
無線資源割当管理部105は、無線資源導出部104から出力された無線資源の導出結果を取得する。この無線資源の導出結果には、無線資源導出部104により導出された無線資源としての接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)、接続準備候補基地局(C基地局)、遮蔽発生基地局(D基地局)を示す識別番号の他に、例えばそれぞれの基地局200と無線端末100との間で使われている無線通信規格が何であるかという情報や、周波数帯域に関する情報が含まれてもよい。
無線資源割当管理部105は、接続対象基地局(A基地局)や接続準備基地局(B基地局)との無線通信に用いられる無線資源を割り当て、管理する。この無線資源は、例えば無線通信に使用される無線周波数、無線周波数のリソースブロック(RB:Resource Block)を含む。リソースブロックは、例えば無線周波数(例えばサブキャリア周波数)の周波数軸及び時間軸(例えばタイムスロット)で分割された、無線周波数の割り当ての単位を指す。
無線資源割当管理部105は、無線周波数の割り当て候補のリソースブロックが割り当て可能か否かを、接続対象基地局(A基地局)や接続準備基地局(B基地局)に問い合わせる。接続対象基地局(A基地局)や接続準備基地局(B基地局)は、無線周波数の割り当て候補に基づいて、この無線周波数のリソースブロックの割り当て状況を検索し、リソースブロックが割り当て可能か否かを判定し、判定結果を無線端末100へ送信する。無線資源割当管理部105は、この判定結果を参照し、割り当て候補の無線周波数のリソースブロックが割り当て可能か否かを判定する。判定結果は、例えばリソースブロックの割り当て可否の情報や、リソースブロックを割り当て可能な場合に割り当てられる無線周波数のリソースブロックの情報を含む。
無線資源割当管理部105は、上述判定結果に基づいて、接続対象基地局(A基地局)や接続準備基地局(B基地局)との通信に用いる無線周波数の未割り当てのリソースブロックを割り当てる。無線資源割当管理部105は、リソースブロックの割り当てるとともに、AMC(Adaptive Modulation and Coding)を指定してもよい。
なお、無線資源割当管理部105は、割当候補の無線周波数を割当不可能な場合、無線周波数を次の優先順位のものに変更し、その次の優先順位の割当候補の無線周波数から新たに無線周波数を選定する。また、無線資源割当管理部105は、接続対象基地局(A基地局)や接続準備基地局(B基地局)に対してリソースブロックを割当可能な無線周波数が存在しない場合、無線通信するべき基地局を、接続優先度が次に高い基地局に変更する旨のメッセージを無線資源導出部104に出力してもよい。無線資源導出部104は、このメッセージを取得すると、1つ以上の接続準備候補基地局(C基地局)のいずれかから新たに接続対象基地局(A基地局)や接続準備基地局(B基地局)を選定してもよい。
また、無線資源割当管理部105は、送信パケット生成部106又は受信パケット復号部111から無線資源の使用履歴の情報を取得する。この使用履歴の情報は、例えば無線端末100と無線通信した接続対象基地局(A基地局)の情報と、その接続対象基地局(A基地局)との通信に使用された無線周波数の情報と、この無線周波数を用いて通信された通信量の情報とが含まれる。更新部の一例としての無線資源割当管理部105は、例えば取得された使用履歴の情報に含まれる無線周波数と一致する累計通信履歴テーブルT1の無線周波数に対して、使用履歴の情報に含まれる通信量を加算し、累計通信履歴テーブルT1を更新してもよい。
無線資源割当管理部105は、割り当てられた無線資源の情報、つまり接続対象基地局との通信に用いる無線周波数及びリソースブロックの情報を、無線送信部107又は無線受信部110へ送る。この場合、無線資源割当管理部105は、割り当てられた上り回線21用の無線資源の情報を無線送信部107へ送る。また、無線資源割当管理部105は、割り当てられた下り回線22用の無線資源の情報を、無線受信部110へ送る。
送信パケット生成部106は、入力されるアップリンクデータ(UL Data)を用いて、基地局200へ送信されるパケット(送信パケット)を生成する。送信パケットは、上り回線21のデータを含む。上り回線21のデータ(例えば制御データ、ユーザデータ)は、例えばメモリ160、記憶装置等の外部装置(不図示)、各種ソフトウェアの処理部(不図示)から得られる。
送信パケット生成部106は、送信パケットの通信に係る無線資源の使用履歴の情報を、無線資源割当管理部105へ送る。
通信部の一例としての無線送信部107は、送信パケット生成部106により生成された送信パケット(例えば、ユーザデータ)を、無線資源割当管理部105により割り当てられた無線資源を用いて、送信アンテナ108及び上り回線21を介して、無線資源割当管理部105から指示された接続対象基地局(A基地局)に送信する。また、無線送信部107は、送信パケット生成部106により生成された送信パケット(例えば、接続準備(スタンバイ)の状態を維持するための制御信号)を、無線資源割当管理部105により割り当てられた無線資源を用いて、送信アンテナ108及び上り回線21を介して、無線資源割当管理部105から指示された接続準備基地局(B基地局)に送信する。
通信部の一例としての無線受信部110は、接続対象基地局(A基地局)からのパケット(例えば、ユーザデータ)を、無線資源割当管理部105により割り当てられた無線資源を用いて、下り回線22及び受信アンテナ109を介して受信する。また、無線受信部110は、接続準備基地局(B基地局)からのパケット(例えば、接続準備(スタンバイ)の状態を維持するための制御信号)を、無線資源割当管理部105により割り当てられた無線資源を用いて、下り回線22及び受信アンテナ109を介して受信する。
受信パケット復号部111は、無線受信部110により受信されたパケットを復号して復号データを得る。復号データは、下り回線22のデータを含む。下り回線22のデータ(例えば制御データ、ユーザデータ)は、例えばメモリ160、記憶装置や表示装置等の外部装置(不図示)、各種ソフトウェアの処理部(不図示)に渡される。
また、下り回線22のデータは、公知の方法で選定された接続候補基地局の情報が含まれる場合がある。この接続候補基地局の情報は、無線資源割当管理部105へ送られる。
また、下り回線22のデータは、無線資源の割り当てに関する制御情報を含むことがある。この制御情報は、無線資源割当管理部105へ送られる。この制御情報は、例えば接続基地局によりリソースブロックを割当可能か否かが判定された判定結果が含まれる。
また、受信パケット復号部111は、受信パケットの通信に係る無線資源の使用履歴の情報を、無線資源割当管理部105へ送る。
次に、図4、図5及び図7を参照して無線資源導出部104が接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)及び接続準備候補基地局(C基地局)を導出する例を具体的に説明する。図7は、図6に示す上位通信履歴テーブルT2に基づいて決定された接続優先度が遮蔽によって更新されることの一例を示す説明図である。図4により、過去に100回分の通信履歴が累計通信履歴テーブルT1に保持されており、無線端末100に101回目の通信接続の要求が位置(Xk、Yk、Zk)にて発生したとする。
無線資源導出部104は、図4の累計通信履歴テーブルT1を参照し、無線端末100の現在の位置(Xk、Yk、Zk)と通信履歴の無線端末100の位置(Xi、Yi、Zi)とに基づく距離diを、数式(1)、数式(2)又は数式(3)に従って算出する。
無線資源導出部104は、数式(1)、数式(2)又は数式(3)により算出したそれぞれの距離diの中で、上位10(例えばn=10の場合)個の順序iと、基地局200の識別番号mを示す情報とを抽出することで、図5の上位通信履歴テーブルT2を生成する。図5の上位通信履歴テーブルT2により、無線資源(例えば接続基地局の識別番号)として、無線資源(8)が3回、無線資源(6)が3回、無線資源(7)が2回、無線資源(11)が1回、無線資源(1)が1回、使用(割り当て)されたことが判明可能となる。
そこで、無線資源導出部104は、101回目の新たな通信接続の要求に対し、割り当てるべき無線資源の接続優先度の順位として、距離diが小さくかつ割り当て回数の多い順に、無線資源(8)→無線資源(6)→無線資源(7)→無線資源(11)→無線資源(1)と決定(導出)する。言い換えると、無線資源導出部104は、無線資源(8)の基地局200を接続対象基地局(A基地局)、無線資源(6)の基地局200を接続準備基地局(B基地局)、無線資源(7)の基地局200を接続準備候補基地局(C基地局)、無線資源(11)の基地局200を接続準備候補基地局(C基地局)、無線資源(1)の基地局200を接続準備候補基地局(C基地局)と導出(選定)する(図7参照)。
図7に示す基地局種別管理テーブルT3では、基地局の種別として、接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)、接続準備候補基地局(C基地局)、遮蔽発生基地局(D基地局)とそれぞれの基地局200に対応する識別番号が示されている。図7の紙面左側に示された基地局種別管理テーブルT3は、例えば無線端末100と無線資源(8)の基地局200(つまり、接続対象基地局(A基地局))との間の伝搬路に遮蔽物が挿入される前の状態を示す。従って、無線端末100は、先ず無線資源(8)の基地局200と接続を試み(トライし)、接続試行が成功した場合には、無線資源(6)の基地局200を接続準備基地局(B基地局)として、無線資源(6)の基地局200との間で接続準備(スタンバイ)の状態を維持するための制御信号の交信を行う。また、無線端末100は、無線資源(7)、無線資源(11)、無線資源(1)のそれぞれの基地局200を接続準備候補基地局(C基地局)と設定する。なお、無線端末100は、無線資源(8)の基地局200との接続試行が失敗した場合には、無線資源(6)の基地局200との間で接続試行を行う。この接続試行が成功した場合には、無線端末100は、無線資源(6)の基地局を接続対象基地局(A基地局)と設定する。
また、図7の紙面右側に示された基地局種別管理テーブルT3は、例えば無線端末100と無線資源(8)の基地局200(つまり、接続対象基地局(A基地局))との間の伝搬路に遮蔽物が挿入された後の状態を示す。従って、無線端末100は、無線資源(8)の次に接続優先度が高い無線資源(6)の基地局200を新たな接続対象基地局(A基地局)に繰り上げるように設定し、無線資源(6)の次に接続優先度が高い無線資源(7)の基地局200を新たな接続準備基地局(B基地局)に繰り上げるように設定する。更に、無線端末100は、遮蔽物の挿入によって通信断となった基地局200(つまり、通信断が発生するまでは接続対象基地局(A基地局)だった基地局200)を遮蔽発生基地局(D基地局)に繰り下げるように設定する。
このように割り当てるべき無線資源の接続優先度の順位が決定されるが、現在の無線端末100にとって、必ずしも無線資源(8)の基地局200がベストな無線資源の基地局200とならないことも想定される。これは、例えば他の複数の無線端末によって、無線資源(8)が占有されていることがあり得るためである。重要なのは、無線資源導出部104によって、割り当てるべき無線資源としての基地局200の接続優先度が絞り込まれ、かつ接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)、接続準備候補基地局(C基地局)、遮蔽発生基地局(D基地局)に分類できたことである。
ここで、無線資源(8)、無線資源(6)の順と、無線資源(11)、無線資源(1)の順は、それぞれ距離diが小さい順に対応している。これにより、無線資源導出部104は、無線端末100の過去の無線通信の実績が多い順に基地局を割り当て可能となり、無線端末100の現在の位置においてより安定した通信環境の中で快適にデータ通信を行い易くできる。
次に、本実施の形態の無線通信システム10の無線端末100に新たな通信接続要求が発生した時の動作手順について、図8及び図9を参照して説明する。
図8及び図9は、本実施の形態の無線端末100に通信接続要求が発生した場合の動作手順の一例を詳細に説明するフローチャートである。図8及び図9では、説明を簡単にするために、無線端末100が屋外に位置する場合を例示して説明するが、無線端末100が屋内、又は屋外と屋内との境界付近に位置する場合でも同様である。
図8において、無線端末100の無線受信部110又は無線送信部107は、新たな接続要求が発生したか否かを判定する。この接続要求は、例えば無線端末100から基地局200への接続要求、又は基地局200から無線端末100への接続要求のいずれでもよい。例えば、無線端末100がコンテンツサーバ(不図示)上の動画データを取得して再生する場合、無線端末100から基地局200への接続要求が発生する。例えば、他の無線端末から無線端末100へ電話がかかってくる場合、いずれかの基地局200から無線端末100への接続要求が発生する。
GPS受信部102は、GPSアンテナ101により受信された複数の信号に基づいて、GPS受信部102の位置情報(つまり、無線端末100自身の位置情報)を算出して取得する。GPS受信部102は、算出により得られた無線端末100の位置情報をプロセッサ150に出力する。位置情報生成部103は、例えば無線端末100が屋外に位置する場合には、GPS受信部102からの情報を基に、無線端末100の位置情報(つまり、現在の無線端末100の位置情報)を生成して無線資源導出部104に出力する。
無線資源導出部104の距離di計算部1041は、メモリ160の累計通信履歴テーブルT1を参照し、無線端末100の現在の位置情報と通信履歴の無線端末100の位置情報とに基づく距離diを、数式(1)〜数式(3)のうちいずれか(例えば数式(1))に従って算出する(S1)。いずれの数式が使用されるかは、それぞれの無線端末100において予め設定される。無線資源導出部104の接続候補優先度決定部1042は、無線端末100の現在の位置情報と通信履歴の無線端末100の位置情報とに基づく距離diが小さい所定数(n:2以上の整数である既定値)の通信履歴を抽出して取得する(S1)。ステップS1により抽出された結果は、例えば図5に示す上位通信履歴テーブルT2である。
無線資源導出部104の接続候補優先度決定部1042は、ステップS1において抽出された上位n個全ての通信履歴に含まれる無線資源(例えば基地局200の識別番号、接続回数)を把握(認識)する。無線資源導出部104の接続候補優先度決定部1042は、距離diや無線資源に基づいて、複数の基地局200から、データ(例えば制御データ、ユーザデータ)の通信に用いる接続対象基地局(A基地局)と、その接続対象基地局の次に接続優先度の高い接続準備基地局(B基地局)と、その接続準備基地局(B基地局)の次に接続優先度が高い、1つ以上の接続準備候補基地局(C基地局)を導出(決定)する(S2)。
無線資源導出部104の接続トライ管理制御部1043は、ステップS2において導出された接続対象基地局(A基地局)との間での通信試行(通信トライ)の実行を無線資源割当管理部105に指示する。
無線資源割当管理部105は、ステップS2において決定された接続優先度の中で、最優先の無線資源(基地局200の識別番号)を無線送信部107及び無線受信部110に割り当て、その接続対象基地局(A基地局)への通信接続をトライする(S3)。例えば、送信パケット生成部106は、上り回線21のデータを含む送信パケットを生成する。無線送信部107は、決定された接続対象基地局(A基地局)へ、送信パケットを送信する。また、例えば、無線受信部110は、決定された接続対象基地局(A基地局)から、受信パケットを受信する。受信パケット復号部111は、受信パケットを復号し、下り回線22のデータを得る。
つまり、無線端末100は、通信接続をトライする基地局200(つまり、接続対象基地局(A基地局))に対し、無線端末100との無線通信において無線周波数のリソースブロックの割り当てが可能であるか否かを問い合わせる。接続対象基地局(A基地局)は、無線端末100からの問い合わせに対し、無線周波数のリソースブロックの割り当てが可能であると判断した場合に、通信接続に成功した旨のメッセージを無線端末100に送信する。接続トライ管理制御部1043は、接続対象基地局(A基地局)との間での通信試行(通信トライ)の成否の結果(接続トライ可否信号)を無線資源割当管理部105から取得する。
無線資源導出部104の基地局分類管理部1046は、最優先の基地局200(つまり、接続対象基地局(A基地局))との間で接続試行(接続トライ)が失敗した場合には(S3、NO)、接続優先度が次に高い基地局200(つまり、接続準備基地局(B基地局)と導出された基地局200)を最優先の基地局200(つまり、接続対象基地局(A基地局))と設定する(S4)。ステップS4の後、ステップS1において抽出されたn個全部の接続トライがなされた場合には(S5、YES)、図8に示す無線端末100はいずれの基地局200とも接続ができずに終了する。
なお、無線資源導出部104は、ステップS1において抽出されたn個全部の接続トライがなされた場合には(S5、YES)、公知の方法により、自己(無線端末100)の近傍の、通信接続が可能となり得る基地局(例えば5Gやミリ波以外の基地局)の候補を探索(セルサーチ)してもよい。この場合、無線資源導出部104は、無線端末100の近傍に所在する基地局200の探索結果に基づいて、接続候補となり得る基地局を決定する。
この公知の方法では、例えば無線資源導出部104が、RAT1〜5を使用する基地局を順に探索し、無線送信部107が、探索の結果を所定の基地局へ通知する。所定の基地局は、通知された探索の結果に応じて、接続候補となり得る基地局を選定し、その基地局の情報を無線端末100へ送信する。無線資源導出部104は、無線受信部110により受信され、受信パケット復号部111により復号された受信パケットから接続候補となり得る基地局の情報を取得し、接続候補の基地局として決定する。
なお、ここでは公知の方法として、セルサーチ結果を所定の基地局に通知して、所定の基地局が接続候補となり得る基地局の情報を無線端末100に伝達することを例示した。この代わりに、セルサーチ結果を所定の基地局に通知せずに、無線端末100が自ら、セルサーチ結果を基に接続候補となり得る基地局を決定してもよい。
一方、ステップS1において抽出されたn個全部の接続トライがなされていない場合には(S5、NO)、無線資源導出部104の接続トライ管理制御部1043は、ステップS4において設定された新たな接続対象基地局(A基地局)との間での通信試行(通信トライ)の実行を無線資源割当管理部105に指示する。接続トライ管理制御部1043は、接続対象基地局(A基地局)との間での通信試行(通信トライ)の成否の結果(接続トライ可否信号)を無線資源割当管理部105から取得する。
無線資源導出部104の基地局分類管理部1046は、最優先の基地局200(つまり、接続対象基地局(A基地局))との間で接続試行(接続トライ)が成功した場合には(S3、YES)、接続トライの対象となった基地局200を接続対象基地局(A基地局)と分類して基地局種別管理テーブルT3を更新する(S6)。これにより、無線端末100は、接続対象基地局(A基地局)との間でデータ(例えば制御データ、ユーザデータ(例えば映像データ))の送受信(通信)を行う事ができ、又は既に通信を実行していた場合にはその通信を継続できる(S7)。更に、更新部の一例としての無線資源割当管理部105は、通信の接続トライが成功した基地局200との間の通信履歴(具体的には、少なくとも接続対象基地局(A基地局)である基地局200の識別番号)を、累計通信履歴テーブルT1に書き込むことで更新する。
なお、ステップS3の通信の接続トライは、双方向通信でも、送信又は受信のいずれか一方でもよい。従って、累計通信履歴テーブルT1の更新についても、送信時又は受信時のいずれか一方でもよい。
ステップS7の後、無線資源導出部104の基地局分類管理部1046は、メモリ160に保存されている基地局種別管理テーブルT3を参照し、遮蔽発生基地局(D基地局)に設定されている基地局200が現在あるか否かを判断する(S8)。遮蔽発生基地局(D基地局)に設定されている基地局200が現在ない場合には(S8、NO)、無線端末100の処理はステップS12に進む。
一方、遮蔽発生基地局(D基地局)に設定されている基地局200が現在ある場合には(S8、YES)、無線資源導出部104の通信監視部1045は、無線受信部110がその遮蔽発生基地局(D基地局)からの信号を受信できたか否かを監視する(S9)。つまり、ステップS9では、通信監視部1045は、無線受信部110からの通信検出信号に基づいて、遮蔽発生基地局(D基地局)に設定されている基地局200からの信号を受信できた場合(S9、YES)、遮蔽に基づく通信切断が復帰して通信が回復したので遮蔽発生基地局(D基地局)は接続準備基地局(B基地局)になれる可能性が高い。従って、基地局分類管理部1046は、その遮蔽発生基地局(D基地局)と設定されている基地局200を接続準備基地局(B基地局)に設定する(S10)。なお、基地局分類管理部1046は、その遮蔽発生基地局(D基地局)と設定されている基地局200を接続準備候補基地局(C基地局)に設定してもよい(S10)。
一方、無線受信部110がその遮蔽発生基地局(D基地局)からの信号を受信できなかった場合(S9、NO)、遮蔽に基づく通信切断が維持されている状態であるとして、遮蔽発生基地局(D基地局)はそのままの設定が維持される事が好ましい。従って、基地局分類管理部1046は、その遮蔽発生基地局(D基地局)の設定を維持する(S11)。
ステップS10又はステップS11の後、ステップS7において通信を開始又は継続している接続対象基地局(A基地局)との間で通信が行われている中、無線資源導出部104の接続候補優先度決定部1042は、その接続対象基地局(A基地局)の次に接続優先度が高い接続準備基地局(B基地局)を1つ選定する(S12)。なお、ステップS12の処理は、ステップS2において接続準備基地局(B基地局)が導出されている場合には省略されても構わない。
無線資源導出部104の接続準備管理制御部1044は、接続準備基地局(B基地局)との間での制御信号(上述参照)の交信の実行を無線資源割当管理部105に指示する。
無線資源割当管理部105は、ステップS12において選定された接続準備基地局(B基地局)の識別番号を無線送信部107及び無線受信部110に割り当て、その接続準備基地局(B基地局)への通信の接続準備用のスタンバイ(つまり、制御信号の交信)を行う(S13)。例えば、送信パケット生成部106は、上り回線21の制御データを含む送信パケットを生成する。無線送信部107は、決定された接続準備基地局(B基地局)へ、送信パケットを送信する。また、例えば、無線受信部110は、決定された接続準備基地局(B基地局)から、受信パケットを受信する。受信パケット復号部111は、受信パケットを復号し、下り回線22の制御データを得る。
つまり、無線端末100は、通信の接続準備用のスタンバイ(つまり、制御信号の交信)を行う基地局200(つまり、接続準備基地局(B基地局))に対し、無線端末100との無線通信において無線周波数のリソースブロックの割り当てが可能であるか否かを問い合わせる。接続準備基地局(B基地局)は、無線端末100からの問い合わせに対し、無線周波数のリソースブロックの割り当てが可能であると判断した場合に、通信の接続準備用のスタンバイに成功した旨のメッセージを無線端末100に送信する。接続準備管理制御部1044は、接続準備基地局(B基地局)との間での通信の接続準備用のスタンバイの成否の結果(交信可否信号)を無線資源割当管理部105から取得する。接続準備管理制御部1044は、接続準備基地局(B基地局)との間での制御信号の交信の成否の結果(交信可否信号)を無線資源割当管理部105から取得する。なお、本実施の形態では、接続準備基地局(B基地局)との間の制御信号の交信は成功する事を前提とする。
無線資源導出部104の基地局分類管理部1046は、最優先の基地局200(つまり、接続準備基地局(B基地局))との間で通信の接続準備用のスタンバイが成功した場合には、その対象となった基地局200を接続準備基地局(B基地局)と分類して基地局種別管理テーブルT3を更新する(S13)。これにより、無線端末100は、例えば接続対象基地局(A基地局)との間の伝搬路において遮蔽物が挿入された事によって通信切断が生じた場合でも、接続準備基地局(B基地局)との間で通信の接続準備用のスタンバイができているので、データ(例えば制御データ、ユーザデータ(例えば映像データ))の送受信(通信)に割り当てるためのバックアップ用基地局を確保でき、安定した通信の継続性を担保できる。
ステップS13の後、無線資源導出部104の基地局分類管理部1046は、ステップS2において導出されたn個の基地局200のうち、それぞれ1つずつの接続対象基地局(A基地局)及び接続準備基地局(B基地局)を除いた残り(つまり、(n−2))の基地局200を接続準備候補基地局(C基地局)と分類して基地局種別管理テーブルT3を更新する(S14)。これにより、ステップS13のスタンバイは成功するとの前提に立って説明したが、失敗する可能性もある事を考慮すると、無線端末100は、接続準備候補基地局(C基地局)の中からいずれか1つ(例えば接続準備候補基地局(C基地局)の中で距離diが最も小さい、接続回数が多い基地局200)を選定して、接続準備基地局(B基地局)として設定する事もできる。
図9において、ステップS14の後、無線資源導出部104の通信監視部1045は、現在通信中の接続対象基地局(A基地局)との間の伝搬路に遮蔽物(例えば人又は車両)又は遮蔽の予兆があるかどうかを監視する(S15)。本実施の形態の基地局200は5G(第5世代移動通信システム、例えば28GHz帯)又はミリ波を用いた無線通信(例えばミリ波帯の第5世代移動通信システムやWiGig(Wireless Gigabit:登録商標))を行うのでその電波の直進性が高く、接続対象基地局(A基地局)との間の伝搬路に遮蔽物が挿入された場合には、その伝搬路における通信品質が急激に劣化(例えば、スループットが低下したり、パケットエラー率が上昇したり)し、無線端末100と接続対象基地局(A基地局)との間の通信が切断してしまう。また、5Gやミリ波が基地局200において扱われない場合、電波の直進性が5Gやミリ波程高くない事もあるが、接続対象基地局(A基地局)との間の伝搬路に遮蔽物が挿入されそうである場合には、同様にその伝搬路における通信品質の劣化(例えば、スループットが低下したり、パケットエラー率が上昇したり)する事も考えられる。なお、5G(第5世代移動通信システム)では、例えば15GHz帯や28GHz帯のみならず、ミリ波(例えば30GHz〜300GHz)も含まれる。WiGig(登録商標)は、ミリ波の中でも60GHz帯である。
例えば無線端末100と現在通信中の接続対象基地局(A基地局)との間の伝搬路に遮蔽物が挿入された場合には(S15、YES)、無線端末100と接続対象基地局(A基地局)との間の通信が切断してしまう。この場合には、無線資源導出部104の基地局分類管理部1046は、ステップS13において通信の接続準備用のスタンバイをしている接続準備基地局(B基地局)を新たな接続対象基地局(A基地局)に切り替え、更に、通信切断の発生前の接続対象基地局(A基地局)を遮蔽発生基地局(D基地局)に切り替える(S16)。これにより、無線端末100は、現在通信中の接続対象基地局(A基地局)との間で遮蔽が生じて通信切断が生じても接続対象基地局(B基地局)に切り替える事で、その切り替え後でも同様に5Gやミリ波のような高周波数帯を用いた無線通信を継続できるので、高速なスループットが得られるスモールセルへの接続機会の喪失を回避できる。
ステップS16の後、無線端末100が現在の位置から所定の距離(既定値)を超えて大きく移動した場合には(S17、YES)、無線端末100が通信する基地局200を再度設定する必要があるので、無線端末100の処理はステップS1に戻る。一方、無線端末100が現在の位置から所定の距離を超えて大きく移動していない場合、又はステップS15において現在通信中の接続対象基地局(A基地局)との間の伝搬路に遮蔽物が挿入されていない場合には(S15、NO)、無線資源導出部104の基地局分類管理部1046は、現在通信中の接続対象基地局(A基地局)の設定を維持する(S18)。ステップS18の後、無線端末100の処理はステップS7に戻り、現在通信中の接続対象基地局(A基地局)との通信が継続される。
以上により、本実施の形態の無線端末100は、例えば5G(第5世代移動通信システムの一例としての28GHz帯)又はミリ波(例えば30GHz〜300GHz)を扱う複数の基地局200との間で通信可能である。無線端末100は、それぞれの基地局200との間の過去の通信時における、少なくとも無線端末100の位置情報と基地局200に関する情報とを通信履歴としてメモリ160に蓄積し、現在の無線端末100の位置情報を取得する。無線端末100は、現在の無線端末100の位置情報とメモリ160に蓄積された通信履歴とに基づいて、複数の基地局200から、データ通信に用いる接続対象基地局(A基地局)と接続対象基地局(A基地局)の次に接続優先度の高い接続準備基地局(B基地局)とを少なくとも導出する。無線端末100は、接続対象基地局(A基地局)との間での接続試行が成功した場合にデータ通信を行い、このデータ通信中に接続対象基地局(A基地局)との間の伝搬路に何かしらの遮蔽物(例えば人又は車両)が挿入された事で接続対象基地局(A基地局)との通信が切断した場合に、データ通信に用いる接続対象基地局(A)を、導出された接続準備基地局(B基地局)に切り替える。
これにより、無線端末100は、図1に示す無線通信システム10を構成する基地局200との間の伝搬路に遮蔽が生じた場合又はその遮蔽の予兆を認識した場合でも、無線通信の継続が可能となる他の基地局200(即ち、無線端末100が接続準備基地局(B基地局)と導出した基地局200)に迅速に切り替えてデータ通信用の基地局200を割り当てできる。従って、無線端末100は、例えばミリ波を扱う基地局200との通信が切断したためにミリ波より低速なスループットが得られるLTEを扱うマクロ基地局に接続する事無く、同様なミリ波を扱う基地局200(接続準備基地局(B基地局))に切り替えて通信を継続できるので、高速なスループットが得られるセルへの接続確率の低減を抑制できる。従って、無線端末100は、いずれかの基地局200を接続対象基地局(A基地局)や接続対象基地局(B基地局)として導出できるので、例えば公知の方法で基地局200を検索(セルサーチ)する必要がない。つまり、無線端末100は、採用可能な無線アクセス技術(RAT)を順次スキャンし、無線端末100の近傍に位置する基地局200を検索する必要がない。この場合、無線端末100は、図1に示す無線通信システム10のネットワーク内に存在する無線アクセス技術(RAT)の数と同数分のセルサーチを行う必要がない。そのため、無線端末100は、接続先の基地局200を探索するための処理負荷及び処理時間を低減でき、消費電力の増大を抑制できる。
また、無線端末100は、現在の無線端末100の位置情報と過去の通信履歴に含まれる無線端末100の位置情報とに基づく距離diが小さい所定数(n)個の通信履歴の中で、割り当て回数が多い順に接続対象基地局(A基地局)及び接続準備基地局(B基地局)を導出する。これにより、無線端末100は、距離diが小さい(言い換えると、現在の位置と過去の無線通信時の位置とが近い)時の通信履歴の中で使用回数が多かった基地局200の順に接続対象基地局(A基地局)及び接続準備基地局(B基地局)として導出でき、現在の位置において通信実績のある適切な基地局200と安定的に通信できる。
また、無線端末100は、距離diが所定の閾値dth以下である場合に、過去の所定数(n)個の通信履歴の中で、割り当て回数が多い基地局200の順に接続対象基地局(A基地局)及び接続準備基地局(B基地局)を導出する。これにより、距離diが所定の閾値dthより大きい通信履歴(言い換えると、無線端末100の過去の無線通信時の位置と現在の位置とが大きく離れている場合の通信履歴)を排除して上位通信履歴テーブルT2の生成が可能となる。従って、無線端末100は、現在の位置の周囲に設けられたネットワーク環境に沿う、より適切な無線資源(例えば基地局200の識別番号)の割り当てを行うことができる。
また、無線端末100は、接続対象基地局(A基地局)との間のデータ通信量の情報を通信履歴として更に蓄積し、距離diが小さい所定数(n)個の過去の通信履歴の中で、データ通信量が多い基地局200の順に接続対象基地局(A基地局)及び接続準備基地局(B基地局)を導出する。これにより、無線端末100は、例えば5G(第5世代移動通信システムの一例としての28GHz帯)やミリ波(例えば30GHz〜300GHz)のような高速なスループットが得られるスモールセル(言い換えると、通信データ量が多い可能性が高いセル)を提供可能な基地局200の順に優先して割り当て可能となり、快適な通信データ量を行い易くなる。
また、無線端末100は、導出された接続対象基地局(A基地局)との間でデータ通信を行うと、データ通信に関する接続対象基地局(A基地局)に関する情報を、現在の無線端末100の位置情報に対応付けた通信履歴としてメモリ160に更新して蓄積する。これにより、無線端末100は、無線通信を実際に行ったことの通信実績として、その通信相手である接続対象基地局(A基地局)の識別番号を通信時の位置と対応付けた通信履歴をメモリ160に蓄積して学習できる。
また、無線端末100は、導出された接続対象基地局(A基地局)との接続試行が失敗した場合に、導出した接続準備基地局(B基地局)をデータ通信に用いる接続対象基地局(A基地局)として導出する。これにより、無線端末100は、距離diを基に接続優先度が最も高い基地局200として導出した基地局200であっても他の無線端末によって無線資源が占有されている場合には、次に接続優先度が高い接続準備基地局(B基地局)を接続対象基地局(A基地局)として即座に設定できるので、無線端末100の位置の周囲の通信環境に応じた通信を適応的に行える。
また、基地局200に関する情報は、無線端末100との通信切断に基づく遮蔽発生基地局(D基地局)である旨の情報を含む。無線端末100は、遮蔽発生基地局(D基地局)からの信号を受信できた場合に、その通信切断基地局(D基地局)を、接続準備基地局(B基地局)又は接続準備基地局(B基地局)の次に接続優先度が高い接続準備候補基地局(C基地局)として導出する。これにより、例えば遮蔽物(例えば人又は車両)が瞬間的に挿入された事で遮蔽発生基地局(D基地局)と繰り下げて設定された基地局200からの信号を無線端末100が受信できた事で、その遮蔽発生基地局(D基地局)との間の伝搬路を遮蔽した要因が消滅した可能性が高くなったと考えられる。従って、無線端末100は、このような遮蔽発生基地局(D基地局)を、現在通信中の接続対象基地局(A基地局)との間の通信切断が生じた時のバックアップ用途の基地局として設定できる。
また、無線端末100は、無線端末100の位置情報と過去の通信履歴に含まれる無線端末の位置情報とに基づく距離(di)が小さいn個(n:2以上の整数)の通信履歴に基づいて、接続準備基地局(B基地局)の次に接続優先度が高い、1つ以上の接続準備候補基地局(C基地局)を導出する。これにより、無線端末100は、現在通信中の接続対象基地局(A基地局)との間の通信切断が生じた場合に、接続準備基地局(B基地局)が新たな接続対象基地局(A基地局)と繰り上げて設定するので、その新たな接続対象基地局(A基地局)に対応するバックアップ用としての接続準備基地局(B基地局)となり得る基地局200を確保できる。
また、無線端末100は、接続対象基地局(A基地局)との通信切断を検出した場合に、その接続対象基地局(A基地局)を、無線端末100との接続優先度が接続対象基地局(A基地局)及び接続準備基地局(B基地局)よりも低い遮蔽発生基地局(D基地局)に切り替える。これにより、例えば瞬間的な遮蔽が発生しただけで接続対象基地局(A基地局)ではなくなった基地局200はその遮蔽が消滅した(例えば瞬間的に人が通過しただけでその人が移動した)場合には、無線端末100と新たに通信できる可能性が高い。従って、無線端末100は、このような接続対象基地局(A基地局)を、今後通信に用いない基地局と位置付けるのではなく、接続準備基地局(B基地局)や接続準備候補基地局(C基地局)に繰り上げ設定される基地局200としての遮蔽発生基地局(D基地局)として設定できる。
また、無線端末100の位置情報は例えば屋外で有効な(緯度、経度、高度)の情報の組み合わせであり、無線端末100は、緯度、経度及び高度のうち、例えば高度を優先して距離diを導出する。無線端末100の位置情報の中で緯度や経度が同じでも、高度が異なると通信環境が大きく異なる場合がある。従って、無線端末100は、高度を優先して距離diを算出することで(例えば数式(3)参照)、自己の現在の位置に相応しい通信環境を提供可能な接続対象基地局(A基地局)、接続準備基地局(B基地局)を導出できる。
また、本実施の形態では、無線端末100が屋内、又は屋外と屋内との境界付近に位置する場合に、無線端末100の位置情報は、屋内に設置された複数のBLEビーコン60からの相対的な距離によって求められる位置情報であってもよい。これにより、無線端末100は、屋外に位置する場合には例えばGPS受信部102により算出される(緯度、経度、高度)の情報で位置を特定できる上、一方、屋内、又は屋外と屋内との境界付近に位置する場合には例えばBLE受信部122により算出される、BLEビーコン60からの相対距離の情報で位置を特定できる。
(本実施の形態の変形例)
本実施の形態の変形例(以下、「変形例」という)では、無線端末100と接続対象基地局(A基地局)との間の伝搬路に、人又は車両等の遮蔽物が頻繁に挿入されるケースを例示して説明する(図10参照)。図10は、無線端末100と基地局200との間の電波EWVの伝搬路において頻繁に遮蔽が生じるシーンの一例を示す説明図である。図10に示すように、無線端末100の位置が道路PHの一方で、無線端末100と通信中の接続対象基地局(A基地局)と設定された基地局200が道路PHを挟んだ反対側に位置しているとする。
車両CR1,CR2,CR3,CR4,CR5は、車両(例えば乗用車、バス、トラック、観光用の大型バス、レッカー車。これらに限定されない事は言うまでもない。)である。例えば5G(第5世代移動通信システムの一例としての28GHz帯)やミリ波(例えば30GHz〜300GHz)のような高周波数帯では、電波EWVの直進性がとても高い。このため、無線端末100と現在通信中の接続対象基地局(A基地局)との間の電波EWVの伝搬路に遮蔽物が頻繁に挿入されると(図10参照)、接続対象基地局(A基地局)は車両CR1〜CR5等の遮蔽物が挿入される度に、無線端末100によって遮蔽発生基地局(D基地局)に繰り下げて設定される。
そこで変形例では、無線端末100は、頻繁に遮蔽物が挿入される事を、接続対象基地局(A基地局)を導出する時の優先度判定に用いる。具体的には、無線端末100は、通信履歴に含まれる基地局200に関する情報の中に、基地局200毎に遮蔽発生基地局(D基地局)の設定回数を書き込んで保持する。無線端末100は、接続対象基地局(A基地局)を導出する時の優先度判定の際に、通信履歴に含まれる、基地局200毎の遮蔽発生基地局(D基地局)の設定回数を、距離diの小さい順に抽出されたn個の通信履歴中において接続対象基地局(A基地局)に設定された回数から減算する。
これは、無線端末100との接続回数が多くても、その無線端末100にとって頻繁に繰り返して遮蔽が発生する位置に基地局200が配置されている場合には、無線端末100の安定的な通信の継続に支障が出る可能性を考慮したものである。
また、無線端末100は、同一の通信と考えられる短時間(例えば既定値)内に、遮蔽発生基地局(D基地局)→接続準備基地局(B基地局)→接続対象基地局(A基地局)、或いは遮蔽発生基地局(D基地局)→接続準備候補基地局(C基地局)→接続準備基地局(B基地局)→接続対象基地局(A基地局)の順で接続対象基地局(A基地局)と設定された基地局200があった場合には、その基地局200に対する接続優先度を決定する際には、その基地局200との接続回数の値を考慮に入れない(つまり、ゼロとする)。この場合、通信履歴には、基地局200に関する情報として、基地局200の種別とともに接続時間も含まれる。これにより、無線端末100は、短時間内に種別が頻繁に変わる基地局200との間で無線通信しようとしても安定的な通信の継続が困難となるので、その事態を引き起こす可能性の高い基地局200の選定を積極的に回避できる。
また、無線端末100は、通信履歴の中に、例えば基地局200との接続時間と、この接続時間が所定時間(例えば1秒)未満の接続対象基地局(A基地局)となった接続回数を保持してもよい。この場合、無線端末100は、基地局200に対する接続優先度を決定する際には、接続時間が所定時間(例えば1秒)未満の接続対象基地局(A基地局)となった接続回数の値を考慮に入れない(つまり、ゼロとする)。これにより、無線端末100は、短時間内に接続対象基地局(A基地局)ではなくなる基地局200との間で無線通信しようとしても安定的な通信の継続が困難となるので、その事態を引き起こす可能性の高い基地局200の選定を積極的に回避できる。
以上により、変形例の無線端末100は、通信履歴として、接続対象基地局(A基地局)と無線端末100との間の通信切断の発生回数情報を更に含む。無線端末100は、距離diが小さいn個の通信履歴の中で、割り当て回数と通信切断の発生回数情報との差分に基づいて、接続対象基地局(A基地局)及び接続準備基地局(B基地局)を導出する。これにより、無線端末100は、無線端末100との接続回数が多くても、その無線端末100にとって頻繁に繰り返して遮蔽が発生する位置に配置されている基地局200を接続対象基地局(A基地局)や接続準備基地局(B基地局)として採用する事を積極的に排除でき、無線端末100の安定的な通信の継続に支障が出る可能性を低減できる。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。