JP6631816B2 - エアゾール缶天蓋用鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、エアゾール缶天蓋用鋼板に関し、具体的には、加工性のみならず耐圧強度にも優れたエアゾール缶天蓋用鋼板に関するものである。
気化した液化ガスまたは圧縮ガス等の噴射剤の圧力によって、内容物を容器の外に自力で放出させる製品は、一般に「エアゾール製品」と称されている。このエアゾール製品は、図1に示したように、大きく分けて、キャップ1、ボタン(アクチュエータ)2a・バルブ2b・ディップチューブ2cなどからなる噴射機構2および容器3の3つの部分からなり、ボタンを押してバルブを開くと、容器内で圧力を加えられている内容物が噴射剤と混合してディープチューブを通ってボタンの孔から、減圧による噴射剤の急激な膨張によって細かい霧状や泡状となって一気に放出される。
上記のように、エアゾール製品の容器には、高い内圧に対する耐圧性と気密性が必要なため、缶が一般的に用いられている。上記のエアゾール缶には、比較的小型のアルミ製のモノブロック缶(DI缶)もあるが、大量生産に適し、安価なぶりき(スチール)製の3ピース溶接缶(ぶりきサイドシーム溶接缶)が主流である。このぶりき製エアゾール缶(容器)は、図2に示したように、シーム溶接した缶胴4と、底蓋5、および、噴射機構2を備えた天蓋6から構成されるのが一般的であり、上記天蓋6は、噴射機構を設けたマウンテンカップ7と、そのマウンテンカップと缶胴との間を接続する目金蓋8の2部材で構成されるのが一般的である。
上記エアゾール缶に要求される耐圧性能は、一般に、試料(空にしたエアゾール缶)の内部に水を充填し、缶内部の加える水圧を徐々に高めていき、天蓋や底蓋等に膨らみやバックリング等の変形が認められ、圧力指示計の減圧が認められた時点の圧力(変形圧)と、容器が破裂したときの圧力(破裂圧)で評価しており、高圧ガス保安法では上記変形圧を1.3MPa以上、上記破裂圧を1.5MPa以上と定められている。
上記耐圧強度を得るため、底蓋は、鋼板を円形に打抜いた後、主にプレス加工によってドーム状に成形して作製され、ドーム形状の凸部を缶内部に向けて突出させて缶胴部に巻き締めによって取り付け、底蓋にかかる圧力を分散させることで強度を確保することができる。そのため、底蓋に用いられる鋼板には、軽度の張出成形程度の加工性しか施されないため、JIS G3303に規定された調質度がT−5レベルの比較的硬質の鋼板を適用しても加工性が問題となることはなかった。(特許文献1〜3参照)
WO2012/077628 特開2012−207305号公報 特開2013−147744号公報
しかしながら、天蓋(目金蓋、マウンテンカップ)は、底蓋のようにドーム状に成形して圧力を分散することができないことから、カウンターシンク等を設けて断面形状を複雑化することで強度を確保せざるを得ない。そのため、天蓋に使用される鋼板には、強度に優れるだけでなく、加工性にも優れていることが求められることになる。そのため、従来、上記天蓋には、JIS G3303に規定された調質度がT−3以下の鋼板が適用されてきた。しかし、加工性を重視し、軟質材を適用すると、耐圧強度を満たさなくなるおそれがある。また、近年におけるコスト削減を目的とした板厚低減要求に応えるためには、天蓋、特に、目金蓋に用いられる素材鋼板特性を把握しておくことが望まれている。
そこで、本発明の目的は、加工性に優れるだけでなく、耐圧強度にも優れるエアゾール缶天蓋用の鋼板を提供することを目的とする。
発明者らは、上記の課題の解決に向け、天蓋用鋼板の機械的特性に着目して鋭意検討を重ねた。その結果、エアゾール缶の天蓋の耐圧強度に最も大きな影響を及ぼす因子は素材鋼板のn値であること、さらに、上記n値と素材鋼板の板厚および降伏応力が所定の関係を満たすことで、高い耐圧強度を確保することができることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、エアゾール缶の天蓋に用いられる鋼板であって、板厚tが0.30〜0.38mmの範囲で、n値が0.165以上であることを特徴とするエアゾール缶天蓋用鋼板である。
本発明のエアゾール缶天蓋用鋼板は、降伏応力YSが200〜350MPaで、上記降伏応力YS(MPa)、板厚t(mm)およびn値が、下記(1)式;
YS×t×n値≧4.70 ・・・(1)
を満たすことを特徴とする。
また、本発明のエアゾール缶天蓋用鋼板は、C:0.001〜0.10mass%、Si:0.001〜0.05mass%、Mn:0.30〜0.70mass%、P:0.001〜0.05mass%、S:0.001〜0.05mass%、Al:0.01〜0.10mass%およびN:0.001〜0.008mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする。
また、本発明のエアゾール缶天蓋用鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Cr:0.02〜0.05mass%およびNb:0.001〜0.020mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする。
また、本発明のエアゾール缶天蓋用鋼板は、上記鋼板の表面に、電気錫めっき層あるいは電解クロム酸処理層を有することを特徴とする。
本発明によれば、エアゾール缶の天蓋用として必要な加工性を確保した上で、エアゾール缶の耐圧強度をも高めることができる天蓋用鋼板を提供することができるので、エアゾール缶の安定生産と耐圧強度の確保に大きく寄与する。
エアゾール缶の概略構造を説明する図である。 エアゾール缶本体(容器)の構成を説明する図である。 耐圧試験後の天蓋断面の板厚分布と硬さ分布の測定結果を示すグラフである。 YS×t×n値と耐圧強度との関係を示すグラフである。
まず、本発明を開発する契機となった調査について説明する。
板厚が0.34mmで、調質度がT−2.5クラスの成分組成が異なる2種類のブリキ板(高Mn材;C:0.07mass%、Mn:0.52mass%、低Mn材;C:0.06mass%、Mn:0.22mass%)から、直径約100mmφの円板をブランキングし、プレス成形してエアゾール缶の天蓋(目金蓋)を製造した。
次いで、上記目金蓋を、底部に底蓋を巻き締めして取り付けた缶胴のトップに巻き締めして取り付け、マウンテンカップのない缶胴径がφ66mmのエアゾール缶とした後、該エアゾール缶に水を充填して水圧を徐々に高めて1.4MPaまで加圧し、変形が起こるか否かを調査する耐圧試験に供した。
その結果、高Mn材を使用したエアゾール缶では1.4MPaでも変形は起こらなかったが、低Mn材のエアゾール缶では、天蓋(目金蓋)の缶胴との巻き締め部の内縁に沿って形成したカウンターシンク部(図2中の6c)が膨れ上がる変形が認められた。
そこで、耐圧試験前の目金蓋のカウンターシンク部の断面について、高Mn材と、低Mn材の板厚とマイクロビッカース硬さHV0.5を測定した。
その結果を、図3に示す。この図から、耐圧強度が劣っていた低Mn材は、カウンターシンク部の板厚が約10μm程薄く、硬さHV0.5は、全体的に約10%程度低いこと、したがって、低Mn材の耐圧強度が低い原因は、全体的硬さ不足(強度不足)に加え、カウンターシンク部の板厚減少が大きかったことが考えられた。
一般に、強度の指標となる断面係数には板厚の2乗のパラメータが入っているため、製品の強度は板厚の2乗に比例することから、強度に及ぼす板厚の影響が大きいことが知られている。そこで、上記板厚差が生じた原因を探るため、上記耐圧強度が1.4MPa以上であった高Mn材と、1.4MPa未満であった低Mn材の素材自体の機械的特性を、それぞれ3点ずつ測定し、その平均値を表1に示した。
なお、上記表1中に記載されたYS,TSおよびElは、JIS Z2201に規定されたJIS5号引張試験片を用いてJIS Z2241に準拠して測定した下降伏応力、引張強さおよび破断伸びの値である。また、HR30Tは、JIS Z2245に記載されたロックウェルスーパーフィシャル硬さの値である。また、n値は、JIS Z2201に規定されたJIS5号引張試験片を用いてJIS Z2253に準拠し、2点法で測定した値である。また、r値は、JIS Z2201に規定されたJIS5号引張試験片を用いてJIS Z2254に規定された固有振動法で測定した平均r値である。なお、上記YS,TS,Eおよびn値は、いずれも圧延方向における値である。
ここで、r値(塑性歪比)は、引張試験片に一様伸び限界以下の歪を付与したとにときの板厚方向の真歪εに対する幅方向の真歪εの比、r=(ε/ε)であり、r値が大きいほど、板幅減少に対する板厚減少の比が小さい、すなわち、板幅減少より板厚の減少が小さく(板が破断し難い)、深絞り性に優れることを意味する。
一方、n値(加工硬化指数)は、引張試験で得られる荷重−伸び曲線を近似的にσ=K・ε(σ:真応力、ε:真歪、K:定数)と表したときのnのことであり、均一伸びに相当し、n値が高いほど歪みの伝播性がよく、局部的な板厚減少が起こり難く(板が破断し難く)、したがって、張出成形性に優れていることを意味する。
したがって、同じ加工を受ける場合、r値が高い材料も、n値が高い材料も、加工部における板厚減少抑制に同様の効果が期待される。
しかし、上記表1を見ると、耐圧強度が優れた高Mn材は、n値は高いがr値は低いのに対して、耐圧強度が低い低Mn材は、n値は低いがr値は高いという結果となっており、r値による板厚減少抑制効果がまったく認められない。
この原因について、発明者らは、エアゾール缶の天蓋(目金蓋)のような形状の加工は、材料の流れ込みを伴う絞り成形よりもむしろ材料の流れ込みのない張出成形に近い加工であるため、n値の板厚減少抑制効果がr値のそれより顕著になったものと考えている。さらに、n値が高いということは、均一成形を促進して製品全体に加工歪が及ぶようになるため、成形後の製品全体の硬さ上昇にも寄与したものと考えられた。
以上の調査結果から、エアゾール缶の天蓋(目金蓋)に用いられる鋼板に望ましい特性としては、r値よりもむしろn値が高いことが必須の要件であることが明らかとなった。
本発明は、上記の知見にさらに検討を加えて開発したものである。
次に、本発明のエアゾール缶天蓋に求められる要求特性について説明する。
まず、本発明が対象とするエアゾール缶の天蓋は、シーム溶接された缶胴の上部周縁に巻き締めにより取り付けられるものであり、内容物の噴射するボタン・バルブ等の噴射機構を設けたマウンテンカップと組み合わせて天蓋を構成する目金蓋であってもよいし、噴射機構を設けたマウンテンカップと目金蓋を一体化した天蓋であってもよい。
上記エアゾール缶に求められる耐圧強度は、高圧ガス保安法では、エアゾール缶が変形を開始する圧力である変形圧が1.3MPa以上、エアゾール缶が破裂する圧力である破裂圧が1.5MPa以上と定められているが、製缶メーカからは、安全性を考慮し、上記基準を超える耐圧強度が要求されている。そこで、本発明においては、変形圧:1.4MPa以上の天蓋を開発目標とする。
次に、上記エアゾール缶の天蓋に用いられる鋼板について説明する。
板厚t:0.30〜0.38mm
エアゾール缶の天蓋に用いられる鋼板の板厚については、一般に、0.33〜0.38mmのものが使用されている。しかし、近年のコストダウンの観点から板厚を低減することが指向されていることを考慮し、本発明の鋼板の板厚は、0.30〜0.38mmの範囲とする。なお、板厚の上限値は、素材コスト削減の観点から、0.35mmが好ましく、0.33mmがより好ましい。
降伏応力YS:200〜350MP以下
まず、本発明が対象としているエアゾール缶の天蓋(目金蓋)は、ドーム状にして内圧を分散させることはできないため、底蓋と比較し、複雑な形状にして耐圧強度を確保している。したがって、底蓋に用いられる鋼板と比較し、加工性が求められる。そこで、本発明の天蓋用鋼板としては、加工性を重視する観点から、降伏応力を350MPa以下と規定する。ただし、降伏応力が低くなり過ぎると、天蓋成形に伴う加工硬化量を加味したとしても、耐圧強度を満たすことができなくなるおそれがある。そこで、本発明の鋼板の降伏応力は200〜350MPaの範囲とする。好ましくは、240〜300MPaの範囲である。
n値:0.165以上
上述したように、エアゾール缶の天蓋用鋼板に求められる特性として、天蓋成形に伴う大きな加工硬化量を達成するため、r値よりもむしろ、n値が高いことが必要であり、具体的には0.165以上であることが必要である。n値を高くすることによって、加工を受けた部分の強度を大きく高めることができるだけでなく、加工歪を成形品のすべての部位に伝播することができるので、局部的な板厚減少を抑制しつつ、成形後の天蓋を全域に亘って強化することが可能となる。好ましくは0.170以上、より好ましくは0.175以上である。なお、n値の上限は、フェライト単相からなる鋼板の場合、通常、0.30程度である。
YS×t×n値:4.70以上
エアゾール缶の天蓋の耐圧強度は、天蓋加工後の降伏応力、即ち、加工前の素材鋼板の降伏応力と天蓋加工時の加工硬化量(n値)の和によって影響され、上記加工後の降伏応力が高いほど、耐圧強度は高くなる。また、前述したように、耐圧強度は、上記加工後の降伏応力の他に、板厚の2乗によっても大きく影響される。さらに、耐圧強度は、エアゾール缶の胴径によっても影響され、大きな胴径ほど耐圧強度が低下する。
そこで、発明者らは、上記した素材鋼板の降伏応力、n値および板厚の2乗が、耐圧強度(変形圧)に及ぼす影響について調査し、3ピース溶接エアゾール缶で実用されている中で最も胴径が大きいφ211(缶径:66mm)における耐圧強度(変形圧)が1.4MPa以上を満たす条件を検討した。具体的には、後述する実施例の表2に示した成分組成を有するA〜Iの鋼を溶製し、実施例に記載したのと同様の方法で板厚が0.28〜0.38mmの冷延鋼板を作製し、これらの鋼板について、同じく実施例に記載したのと同様の方法で、機械的特性と耐圧強度を測定した。
その結果、図4に示したように、YS(MPa)、板厚t(mm)およびn値が、下記(1)式;
YS×t×n値≧4.70 ・・・(1)
の関係を満たしている場合にのみ、耐圧強度(変形圧):1.4MPa以上を達成することができることを見出した。上記(1)式左辺の値は、好ましくは5.0以上、より好ましくは6.0以上である。
一方、上記(1)式左辺の値は、安全性を高める観点からは大きいほど好ましいといえるが、大きくし過ぎてもオーバースペックとなるだけであるので、上限は10とするのが好ましい。
次に、本発明のエアゾール缶天蓋用鋼板の成分組成について説明する。
本発明のエアゾール缶天蓋用鋼板は、上記した特性を有する鋼板であれば、成分組成に特に制限されないが、以下の成分組成を有することが好ましい。
C:0.001〜0.10mass%
Cは、鋼板の強度を確保するために必須の元素であり、少なくとも0.001mass%を含有していることが必要である。一方、C含有量が0.10mass%を超えると、鋼が過剰に硬質になったり、連続鋳造時に包晶反応に起因したスラブ割れを起こしたりするおそれがある。よって、C含有量は0.001〜0.10mass%の範囲とするのが好ましい。なお、天蓋の耐圧強度を安定して確保する観点からは、C含有量は0.01mass%以上がより好ましく、0.05mass%以上がさらに好ましい。また、天蓋としての加工性を確保する観点からC含有量は0.09mass%以下がより好ましく、0.08mass%以下がさらに好ましい。
Si:0.001〜0.05mass%
Siは、固溶強化能を有する元素であるが、耐食性には好ましくない元素であるので、Si含有量は0.05mass%以下とするのが好ましい。しかし、過剰な低減は精錬コストの上昇を招くので、Si含有量は0.001mass%以上とするのが好ましい。より好ましいSi含有量は0.002〜0.02mass%の範囲である。
Mn:0.30〜0.70mass%
Mnは、Sと結合して熱延での熱間脆性を防止するだけでなく、鋼を固溶強化したり、結晶粒を細粒化し、鋼板の強度を高めるので、n値を高めるために極めて有効が元素である。上記効果を得るためには0.30mass%以上の含有が必要である。一方、Mn含有量が0.70mass%を超えると、鋼が硬質化し過ぎ、天蓋としての加工性を確保することができなくなる。よって、Mn含有量は0.30〜0.70mass%の範囲とするのが好ましい。Mn含有量は、より好ましくは0.35〜0.60mass%、さらに好ましくは0.40〜0.60mass%の範囲である。
P:0.001〜0.05mass%
Pは、鋼中に不可避的に混入してくる不純物であり、高い固溶強化能を有する反面、耐食性を著しく害する元素でもある。よって、本発明では、P含有量は0.05mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.02mass%以下である。しかし、過剰なPの低減は、精錬コストの上昇を招くだけであるので、P含有量は0.001mass%以上とするのが好ましい。
S:0.001〜0.05mass%
Sは、鋼中に不可避的に混入してくる不純物であり、Mnと結合してMnSを形成し、熱間脆性や耐食性の低下をもたらすので、S含有量は0.05mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.03mass%以下である。しかし、過剰なSの低減は、精錬コストの上昇を招くだけであるので、S含有量は0.001mass%以上とするのが好ましい。S含有量は、より好ましくは0.005〜0.025mass%の範囲である。
Al:0.01〜0.10mass%
Alは、製鋼過程で脱酸剤として添加し、鋼の清浄度を高めるために必要な元素である。また、固溶NをAlNとして固定し、時効性を改善する効果もある。上記効果を得るためには、0.01mass%以上含有するのが好ましい。しかし、Alを0.10mass%超え含有しても、上記効果が飽和し、原料コストが上昇するだけであるので、Al含有量は0.10mass%以下とするのが好ましい。より好ましいAl含有量は、0.02〜0.07mass%の範囲である。
N:0.001〜0.008mass%
Nは、鋼中に不可避的に混入してくる不純物であり、時効硬化を起こす有害元素であるため、N含有量は0.008mass%以下とするのが好ましい。しかし、過剰なNの低減は、精錬コストの上昇を招くだけであるので、N含有量は0.001mass%以上とするのが好ましい。より好ましいN含有量は0.001〜0.005mass%の範囲である。
本発明のエアゾール缶天蓋用鋼板において、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、CrおよびNbについては、下記の範囲で含有することができる。
Cr:0.02〜0.05mass%
Crは、焼鈍時におけるCの鋼板表面への偏析を防止し、鋼板表面の清浄性を向上する効果がある元素である。上記効果を得るためには、0.02mass%以上の含有が必要である。一方、0.05mass%を超える含有は、上記効果が飽和することに加えて、熱延鋼板が過度の硬質化して冷間圧延の負荷が増大するので好ましくない。よって、Crを含有する場合は、0.02〜0.05mass%の範囲とするのが好ましい。
Nb:0.001〜0.020mass%
Nbは、CやNを固定し、時効性を改善するとともに、結晶粒を微細化して鋼板の強度を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて含有することができる。上記効果は、0.001mass%以上の含有により得られる。しかし、0.020mass%を超える添加は、スラブ割れを引き起こすおそれがある。よって、Nbを含有する場合は、0.001〜0.020mass%の範囲とするのが好ましい。
次に、本発明のエアゾール缶天蓋用鋼板の製造方法について簡単に説明する。
本発明のエアゾール缶天蓋用鋼板は、前述した特性を有する鋼板であれば、特に製造方法に依存しないが、鋼素材であるスラブを熱間圧延し、冷間圧延して所定の板厚の冷延板とした後、バッチ焼鈍あるいは連続焼鈍で再結晶焼鈍を施した後、調質圧延(スキンパス)して製造するのが好ましい。なお、上記各製造工程における条件は、常法に準じて行えばよく、特に制限はないが、以下の条件で行なうのが好ましい。
本発明の鋼板の素材となるスラブは、上記成分組成を有する鋼を転炉や真空脱ガス設備等を用いた従来公知の精錬プロセスで溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法等、従来公知の方法により製造することができる。
続く、熱間圧延は、所定の温度にスラブを再加熱した後、あるいは、連続鋳造で製造された高温状態のスラブを再加熱することなく、熱間圧延し、所定の板厚の熱延板とする。上記スラブの再加熱温度SRTは、圧延負荷および仕上圧延終了温度を確保する観点から1000℃以上とするのが好ましい。しかし、過剰な加熱は、熱エネルギーの無駄となるので、上限は1300℃とするのが好ましい。また、熱間圧延における仕上圧延終了温度FDTはAr変態点以上950℃以下とするのが好ましい。仕上圧延終了温度がAr変態点未満となると、鋼板組織が粗大化し、機械的特性、特にr値が大きく劣化する。一方、950℃を超えると、スケール性欠陥が発生するようにかる。また、巻取温度CTは500〜800℃の範囲とするのが好ましい。巻取温度が800℃を超えると、酸洗工程における脱スケール性が低下し、一方、500℃未満となると、巻取り時の鋼板形状が悪化するからである。
続く冷間圧延は、圧下率を80〜90%の範囲として行うのが好ましい。圧下率が80%未満では、鋼板の結晶粒径が粗大となって表面外観が劣化する傾向であり、一方、90%を超えると、圧延負荷が増大し、圧延後の鋼板形状を制御し難くなるからである。
上記冷間圧延した鋼板は、その後、再結晶焼鈍を施すが、この方法としては、バッチ焼鈍(箱型焼鈍)、連続焼鈍のいずれの方法を用いてもよい。バッチ焼鈍は、時効性が低くかつ軟質な鋼板を製造するのに適した方法であり、この場合の焼鈍条件は、500〜700℃×1〜12hrの条件とするのが好ましい。一方、連続焼鈍は、時効性の低い鋼板を得るには不向きであるが、全長に渡って材質が安定しているという特長を有するとともに生産性が高い製造方法であり、この場合の焼鈍条件は、600〜800℃×10〜60秒の均熱条件とするのが好ましい。
上記冷間圧延した鋼板は、その後、機械的特性の改善(降伏点伸びの消失)、表面粗さの付与および形状矯正を目的として、伸び率:1.0〜4.0%の調質圧延を施す。伸び率が1.0%未満では、上記目的を十分に達成できず、一方、4.0%を超えると、加工硬化によって降伏応力が上昇し、n値が大きく低下してしまうからである。
上記調質圧延後の鋼板は、そのまま、無垢の状態で、天蓋用素材として使用することができるが、その後、上記鋼板の表面に電気錫めっきを施してJIS G3303に規定された「ぶりき」としたり、電解クロム酸処理を施してJIS G3315に規定された「ティンフリースチール」としてから、あるいは、さらに塗装やフィルムをラミネートしてから、天蓋用素材として使用してもよい。
表2に示した各種成分組成を有する鋼を常法の精錬プロセスで溶製し、連続鋳造して鋼スラブとした後、表3に示した種々の製造条件で、板厚が0.30〜0.38mmのぶりき原板とした後、(種類、目付量)片面あたり目付量:2.8g/mの電気錫めっき処理を施した。
次いで、上記めっき処理した鋼板から、試験片を採取し、降伏応力YS、引張強さTS、破断伸びEl、n値、r値および硬さHR30Tを、下記の方法で測定した。
・YS,TSおよびEl:JIS Z2201に規定された引張方向が圧延方向のJIS5号引張試験片を用いてJIS Z2241に準拠して測定した
・n値:JIS Z2201に規定された引張方向が圧延方向のJIS5号引張試験片を用いてJIS Z2253に準拠し、2点法で測定した
・r値:JIS Z2201に規定されたJIS5号引張試験片を用いてJIS Z2254に規定された固有振動法で測定した。
・HR30T:JIS Z2245に準じてロックウェルスーパーフィシャル硬さを測定した。
・耐圧強度:上記した各鋼板から、図2の6に示した天蓋を作製し、3ピース溶接型のエアゾール缶に組み立てた後、JIS S2148に規定された耐圧強度(変形圧)を測定した。
上記測定の結果を表3に併記した。この結果から、本発明の成分組成を満たす鋼素材を用いて、本発明に適合する条件で製造した鋼板は、いずれも(YS*t*n値)が4.70以上が得られており、エアゾール缶の天蓋用鋼板として用いた場合には、1.4MPa以上の耐圧強度(変形圧)が得られた。
1:キャップ
2:噴射機構
2a:ボタン(アクチュエータ)
2b:バルブ
2c:ディップチューブ
3:容器(缶)
4:缶胴
5:底蓋
6:天蓋
6a:マウンテンカップ
6b:目金蓋
6c:カウンターシンク

Claims (3)

  1. C:0.001〜0.10mass%、Si:0.001〜0.05mass%、Mn:0.30〜0.70mass%、P:0.001〜0.05mass%、S:0.001〜0.05mass%、Al:0.01〜0.10mass%およびN:0.001〜0.008mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するエアゾール缶の天蓋に用いられる鋼板であって、
    板厚tが0.30〜0.38mmの範囲で、n値が0.165以上であり、
    降伏応力YSが200〜350MPaで、上記降伏応力YS(MPa)、板厚t(mm)およびn値が、下記(1)式を満たすことを特徴とするエアゾール缶天蓋用鋼板。

    YS×t ×n値≧4.70 ・・・(1)
  2. 上記成分組成に加えてさらに、Cr:0.02〜0.05mass%およびNb:0.001〜0.020mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項に記載のエアゾール缶天蓋用鋼板。
  3. 上記鋼板の表面に、電気錫めっき層あるいは電解クロム酸処理層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のエアゾール缶天蓋用鋼板。
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