JP6630479B2 - 刃部材 - Google Patents

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本発明は刃先部にフッ素樹脂コーティングを施した各種刃部材に関するものである。
下記の特許文献1や特許文献2にかかる刃部材の刃先部において、その尖端縁の外側には一つのフッ素樹脂層が設けられて露出している。
特開2009−281995号公報 特開2008−245931号公報
前記刃先部の外側に一つのフッ素樹脂層を設ける際には、スプレーなどによる塗装やスパッタリングなどによる蒸着など、各種の成膜手段のうち一つの成膜手段を採用することができる。例えば、塗装により成膜されたフッ素樹脂層は、比較的、滑りが良いために摩擦抵抗の低減により切断性能に優れている反面、剥がれ易くなって耐久性に劣る場合がある。また、蒸着により成膜されたフッ素樹脂層は、比較的、剥がれにくくなって耐久性に優れている反面、滑りが悪いために摩擦抵抗の増加により切断性能に劣る場合がある。このように、採用した成膜手段に応じてフッ素樹脂層の性能が異なるので、刃先部にフッ素樹脂コーティングを施した刃部材において、そのフッ素樹脂コーティングで所望の性能を得ることが難しい。
この発明は、刃先部にフッ素樹脂コーティングを施した刃部材において、そのフッ素樹脂コーティングで所望の性能を得易くすることを目的としている。
後記実施形態(図1〜4に示す第1実施形態図5〜6に示す第2実施形態とのうち特に第1実施形態)の図面の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる刃部材(18)においては、本体(1)に設けた尖端縁(8)の外側に蒸着により設けた第一のフッ素樹脂層(15)と、この第一のフッ素樹脂層(15)の外側に塗装により設けた第二のフッ素樹脂層(21)とを備え、この第一のフッ素樹脂層(15)の膜厚を10〜200nmに設定するとともに、この第二のフッ素樹脂層(21)の膜厚を第一のフッ素樹脂層(15)の膜厚より大きい50〜5000nmに設定し、この第一のフッ素樹脂層(15)の分子量をこの第二のフッ素樹脂層(21)の分子量より小さくするとともに、この第一のフッ素樹脂層(15)の硬度をこの第二のフッ素樹脂層(21)の硬度より大きくした。
請求項1の発明では、本体(1)の尖端縁(8)の外側に第一のフッ素樹脂層(15)を蒸着により設けたので、第一のフッ素樹脂層(15)が本体(1)の尖端縁(8)から剥がれにくくなって耐久性に優れ、刃部材(18)の切断性能を高めることができる。また、第一のフッ素樹脂層(15)の外側に第二のフッ素樹脂層(21)を塗装により設けたので、第二のフッ素樹脂層(21)の外側の滑りが良くなって、摩擦抵抗の低減により刃部材(18)の切断性能を高めることができる。従って、尖端縁(8)の外側に積層したフッ素樹脂コーティングの性能を高めることができる。
さらに、請求項1の発明では、第一のフッ素樹脂層(15)より硬度の小さい第二のフッ素樹脂層(21)がまず切断に伴う摩擦力を低減して切断抵抗が小さくなり、第一のフッ素樹脂層(15)が本体(1)の尖端縁(8)から剥がれにくくなって耐久性に優れ、刃部材(18)の切断性能を高めることができる。従って、尖端縁(8)の外側に積層したフッ素樹脂コーティングの性能を高めることができる。
さらに、請求項1の発明では、第二のフッ素樹脂層(21)より分子量の小さい第一のフッ素樹脂層(15)の分子同士が絡み合って配置され易いので、第一のフッ素樹脂層(15)が本体(1)の尖端縁(8)から剥がれにくくなって耐久性に優れ、刃部材(18)の切断性能を高めることができる。また、第一のフッ素樹脂層(15)より分子量の大きい第二のフッ素樹脂層(21)の分子同士が互いに移動し易い滑らかな状態で配置され易いので、第二のフッ素樹脂層(21)の外側の滑りが良くなって、摩擦抵抗の低減により刃部材(18)の切断性能を高めることができる。従って、尖端縁(8)の外側に積層したフッ素樹脂コーティングの性能を高めることができる。
さらに、請求項1の発明にかかる本体の尖端縁(8)において刃付けされた基材(1)の尖端部(3)の外側にマグネトロンスパッタリングなどのスパッタリングにより設けたクロム層を備え、このクロム層の膜厚を10〜20nmに設定し、このクロム層の外側に前記第一のフッ素樹脂層(15)を設けた。請求項1の発明では、本体の尖端縁(8)のクロム層に対する第一のフッ素樹脂層(15)の密着性が増すため、第一のフッ素樹脂層(15)が基材(1)の尖端部(3)から剥がれにくくなって耐久性に優れ、ひいては第一のフッ素樹脂層(15)の外側に設けた第二のフッ素樹脂層(21)も基材(1)の尖端部(3)から剥がれにくくなって耐久性に優れ、刃部材(18)の切断性能を高めることができる。
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記蒸着は物理的蒸着である。請求項2の発明では、物理的蒸着の採用により、前述したように、刃部材(18)の切断性能を高めることができる。
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記物理的蒸着はスパッタリングである。請求項3の発明では、スパッタリングの採用により、前述したように、刃部材(18)の切断性能を高めることができる。
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記スパッタリングは高周波マグネトロンスパッタリングである。
請求項1〜4のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項5の発明において、本体(1)の尖端縁(8)のうち最尖端で第二のフッ素樹脂層(21)に生じる丸みを抑えるように塗装した。請求項5の発明では、切断時に最尖端の丸みにより切断性能が劣ることを防止して刃部材(18)の切断性能を高めることができる。
請求項1〜5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項6の発明において、前記塗装はスプレー塗装である。
請求項1〜6のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項7の発明において、前記第一のフッ素樹脂層(15)と第二のフッ素樹脂層(21)とは少なくとも一部が同じ成分であるフッ素樹脂を含んでいる。請求項7の発明において、第二のフッ素樹脂層(21)は、第一のフッ素樹脂層(15)との密着性や相性に優れているとともに、本体(1)の尖端縁(8)から剥がれにくくなって耐久性に優れている。従って、刃部材(18)の切断性能を高めて、尖端縁(8)の外側に積層したフッ素樹脂コーティングの性能を高めることができる。
求項の発明を前提とする請求項の発明において、前記基材(1)の尖端部(3)には硬化処理が施され、この尖端部(3)の尖端角度を12〜30度に設定し、この尖端部(3)の最尖端の半径を10〜40nmに設定した。
本発明は、刃先部(20,32)にフッ素樹脂コーティングを施した刃部材(18,30)において、フッ素樹脂コーティングで所望の性能を得易くすることができる。
(a)は第1実施形態にかかる刃部材の基材を多数並べた状態を示す図であり、(b)は同じく基材の尖端部を示す部分拡大断面図である。 (a)は第1実施形態にかかる刃部材の刃先部においてクロム層の成膜手段を示す概略図であり、(b)は同じく基材の尖端部にクロム層を設けた本体を多数並べた状態を示す図であり、(c)は同じく本体の尖端縁を模式的に示す部分拡大断面図である。 (a)は第1実施形態にかかる刃部材の刃先部において第一のフッ素樹脂層の成膜手段を示す概略図であり、(b)は同じく尖端縁のクロム層に第一のフッ素樹脂層を設けた本体を多数並べた状態を示す図であり、(c)は同じく本体の尖端縁を模式的に示す部分拡大断面図である。 (a)は第1実施形態にかかる刃部材の刃先部において第二のフッ素樹脂層の成膜手段を示す概略図であり、(b)は同じく第一のフッ素樹脂層に第二のフッ素樹脂層を設けた刃部材を多数並べた状態を示す図であり、(c)は同じく刃先部を模式的に示す部分拡大断面図である。 (a)は第2実施形態にかかる刃部材の刃先部において混合層の成膜手段を示す概略図であり、(b)は同じく本体である基材の尖端縁に混合層を設けた本体を多数並べた状態を示す図であり、(c)は同じく本体の尖端縁を模式的に示す部分拡大断面図である。 (a)は第2実施形態にかかる刃部材の刃先部においてフッ素樹脂層の成膜手段を示す概略図であり、(b)は同じく混合層にフッ素樹脂層を設けた刃部材を多数並べた状態を示す図であり、(c)は同じく刃先部を模式的に示す部分拡大断面図である。
以下、本発明の第1実施形態にかかる刃部材について図1〜4を参照して説明する。
図1(a)に示すように多数の基材1を並べた成膜対象物2において、基材1はステンレス鋼により成形されている。基材1としては、ステンレス鋼以外の金属材料や、金属材料以外の材料、例えば、セラミックスや合成樹脂などを用いてもよい。図1(b)に示すように、基材1には刃付けされた尖端部3が形成されている。尖端部3には例えば窒化やホウ化や炭化などの硬化処理が施されている。尖端部3の尖端角度を12〜30度、好ましくは14〜24度に設定し、また、尖端部3の最尖端の半径を10〜40nmに設定することが好ましい。
図2(a)に示す周知のマグネトロンスパッタ装置4(成膜手段)において、アルゴンガスが導入された成膜室内には多数の基材1を並べた成膜対象物2とターゲット5としての板状またはブロック状のクロムとが相対向して取り付けられている。マグネトロンスパッタリングを行うと、真空中でグロー放電によりイオン化されたアルゴンイオンがターゲット5としてのクロムに照射されることにより、ターゲット5の表面のクロムが原子あるいは分子の状態でたたき出されて基材1の尖端部3に堆積される。そのため、図2(b)に示すように多数の本体6を並べた成膜対象物7において、本体6の尖端縁8には図2(c)に示すように基材1の尖端部3の外側でクロム層9が設けられる。クロム層9の膜厚を10〜50nmに設定し、20nm程度に設定することが好ましい。
図3(a)に示す周知の高周波マグネトロンスパッタ装置10(成膜手段)において、アルゴンガスが導入された成膜室内には多数の本体6を並べた成膜対象物7とターゲット11としての板状またはブロック状のフッ素樹脂とが取り付けられている。フッ素樹脂としては例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いる。高周波マグネトロンスパッタリングを行うと、真空中でグロー放電によりイオン化されたアルゴンイオンがターゲット11としてのフッ素樹脂の表面に照射されて無秩序にぶつかることにより、ターゲット11の表面にあるフッ素樹脂の長鎖状重合体は、無秩序に切断されて種々の原子あるいは分子の状態でたたき出され、本体6の尖端縁8に堆積される。そのため、図3(b)に示すように多数の本体12を並べた成膜対象物13において、本体12の尖端縁14には図3(c)に示すようにクロム層9の外側で第一のフッ素樹脂層15が設けられる。第一のフッ素樹脂層15は、スパッタリング前のフッ素樹脂Cの長鎖状重合体と異なり、その長鎖状重合体が無秩序に切断された短鎖状重合体やモノマー、あるいは、−CF−の繰り返し構造のみならず、−C−や−CF−や−CF−などの繰り返し構造が混在して、複雑な結合状態になる。また、スパッタリングにより、ターゲット11の表面にあるフッ素樹脂の長鎖状重合体が無秩序に切断されるので、第一のフッ素樹脂層15の分子量がスパッタリング前のフッ素樹脂の分子量より小さくなり、第一のフッ素樹脂層15が複雑な結合状態になるので、第一のフッ素樹脂層15の硬度がスパッタリング前のフッ素樹脂の硬度より大きくなる。第一のフッ素樹脂層15の膜厚を10〜200nm程度に設定することが好ましい。
図4(a)に示す周知のスプレー塗装装置16(成膜手段)においては、成膜対象物13が塗装ノズル17の下方で取り付けられる。分子量が1万から数十万のフッ素樹脂を水分散させた溶液を成膜対象物13に塗装ノズル17によりスプレー塗装を行うと、図4(b)に示すように多数の本体18(刃部材)を並べた成膜対象物19において、本体18の尖端縁20(刃先部)には図4(c)に示すように第一のフッ素樹脂層15の外側で第二のフッ素樹脂層21が塗装される。第二のフッ素樹脂層21を乾燥させた後、加熱炉内において360度程度で2時間ほど焼成する。焼成後、第二のフッ素樹脂層21の膜厚は第一のフッ素樹脂層15の膜厚より大きくなり、その膜厚を50〜5000nmに設定し、数百nm程度に設定することが好ましい。第一のフッ素樹脂層15の分子量は第二のフッ素樹脂層21の分子量より小さくなっているとともに、第一のフッ素樹脂層15の硬度は第二のフッ素樹脂層21の硬度より大きくなっている。
次に、図4に示す本体18をミクロトームに利用する場合について説明する。
本体である刃部材18を利用してミクロトームによる薄切テストを行った際、第二のフッ素樹脂層21は、第一のフッ素樹脂層15に対するスプレー塗装の採用によりテスト片に対し滑り易くなって、それらの間の摩擦抵抗が低減する。その摩擦抵抗の低減により、第二のフッ素樹脂層21を第一のフッ素樹脂層15から剥がす力や、第一のフッ素樹脂層15をクロム層9から剥がす力や、クロム層9を基材1の尖端部3から剥がす力が、いずれも小さくなる。第一のフッ素樹脂層15と第二のフッ素樹脂層21とは、少なくとも一部が同じ成分であるフッ素樹脂を含んでいるばかりでなく、その摩擦抵抗の低減により、互いに剥がれにくい。第一のフッ素樹脂層15は、その摩擦抵抗の低減ばかりでなく、尖端縁8のクロム層9に対するスパッタリングの採用に伴う密着性の向上により、そのクロム層9に対し剥がれにくい。尖端縁8のクロム層9は、その摩擦抵抗の低減ばかりでなく、基材1の尖端部3に対するスパッタリングの採用に伴う密着性の向上により、その尖端部3に対し剥がれにくい。例えば、ベアリング式ミクロトームにて、パラフィンに埋設した豚舌の薄切テストを行うと、きれいに薄切ができない状態までの薄切回数を使用限界数とした場合、従来の刃部材に比して、本発明による刃部材18は1.2〜2倍の使用限界数を示した。
本体である刃部材18の最尖端において、スプレー塗装後や焼成後に第二のフッ素樹脂層21に生じる丸み部分を剥がしたり溶剤によって除去したり、その丸み部分を生じないようにスプレー塗装を行ったり、スプレー塗装時に最尖端にのみフッ素樹脂が塗布されないようにマスキングを行ったり、その最尖端の塗布量が他所の塗布量よりも少なくなるように塗装することによって、第二のフッ素樹脂層21に生じる丸みを抑え、切断時に最尖端の丸みにより切断性能が劣ることを防止して刃部材18の切断性能を高めることができる。特に、この丸み部分を少なくすることにより、初期の切断時から刃部材18の最尖端の性能がより一層発揮されて初期切断性能が良くなる。
次に、本発明の第2実施形態にかかる刃部材について図5〜6を参照して説明する。
図5(a)に示す周知の高周波アンバランスドマグネトロンスパッタ装置22(成膜手段)においては、アルゴンガスが導入された成膜室内に多数の基材1を並べた成膜対象物2と一対のターゲット23とが取り付けられている。一対のターゲット23は成膜対象物2に向けられた状態で互いに並べられ、一方のターゲット23は板状またはブロック状のフッ素樹脂であり、他方のターゲット23は板状またはブロック状のクロムである。成膜対象物2は一方のターゲット23または他方のターゲット23に交互に対向するように移動し得る。フッ素樹脂としては例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いる。高周波アンバランスドマグネトロンスパッタリングを行うと、真空中でグロー放電によりイオン化されたアルゴンイオンがターゲット23としてのフッ素樹脂及びクロムの表面に照射されて無秩序にぶつかることにより、一方のターゲット23の表面にあるフッ素樹脂の長鎖状重合体は、無秩序に切断されて種々の原子あるいは分子の状態でたたき出され、基材1の尖端部3に堆積されるとともに、他方のターゲット23の表面のクロムが原子あるいは分子の状態でたたき出されて基材1の尖端部3に堆積される。そのため、図5(b)に示すように多数の本体24を並べた成膜対象物25において、本体24の尖端縁26には図5(c)に示すように基材1の尖端部3の外側で混合層27が設けられる。混合層27は、スパッタリング前のフッ素樹脂Cの長鎖状重合体と異なり、その長鎖状重合体が無秩序に切断された短鎖状重合体やモノマー、あるいは、−CF−の繰り返し構造のみならず、−C−や−CF−や−CF−などの繰り返し構造が混在して、複雑な結合構造を含んだ状態になる。混合層27の膜厚を10〜200nm程度に設定することが好ましい。ちなみに、各ターゲット23の電源の電圧または電流を調整することにより、成膜後の混合層27においてフッ素樹脂とクロムとの混合割合を任意に調整することができる。
混合層27において、クロムは基材1の尖端部3に対する隣接部でフッ素樹脂層33に対する隣接部よりも多く含まれ、フッ素樹脂はフッ素樹脂層33に対する隣接部で基材1の尖端部3に対する隣接部よりも多く含まれている。この場合、混合層27において、基材1の尖端部3に対する隣接部におけるフッ素樹脂の割合を0〜30%に設定することが好ましく、その隣接部におけるクロムの割合を70〜100%に設定することが好ましい。また、フッ素樹脂層33に対する隣接部におけるフッ素樹脂の割合を50〜100%に設定することが好ましく、その隣接部におけるクロムの割合を0〜50%に設定することが好ましい。
図6(a)に示す周知のスプレー塗装装置28(成膜手段)においては、成膜対象物25が塗装ノズル29の下方で取り付けられる。分子量が1万から数十万のフッ素樹脂を水分散させた溶液を成膜対象物25に塗装ノズル29によりスプレー塗装を行うと、図6(b)に示すように多数の本体30(刃部材)を並べた成膜対象物31において、本体30の尖端縁32(刃先部)には図6(c)に示すように混合層27の外側でフッ素樹脂層33が塗装される。フッ素樹脂層33を乾燥させた後、加熱炉内において360度程度で2時間ほど焼成する。焼成後、フッ素樹脂層33の膜厚は混合層27の膜厚より大きくなり、フッ素樹脂層33の膜厚を50〜5000nmに設定し、数百nm程度に設定することが好ましい。
次に、図6に示す本体30をミクロトームに利用する場合について説明する。
本体である刃部材30を利用してミクロトームによる薄切テストを行った際、フッ素樹脂層33は、混合層27に対するスプレー塗装の採用によりテスト片に対し滑り易くなって、それらの間の摩擦抵抗が低減する。その摩擦抵抗の低減により、フッ素樹脂層33を混合層27から剥がす力や、混合層27を基材1の尖端部3から剥がす力が、いずれも小さくなる。フッ素樹脂層33は、その摩擦抵抗の低減ばかりでなく、少なくとも一部が同じ成分であるフッ素樹脂を含む混合層27に対し剥がれにくい。クロムを含む混合層27は、その摩擦抵抗の低減ばかりでなく、基材1の尖端部3に対するスパッタリングの採用に伴う密着性の向上により、その尖端部3に対し剥がれにくくなると考えられる。
本体である刃部材30の最尖端においても、第1実施形態と同様に、スプレー塗装後や焼成後にフッ素樹脂層33に生じる丸みを抑えることにより、切断時に刃部材30の切断性能を高めることができる。
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 第1実施形態においては、本体の尖端縁8の外側に第一のフッ素樹脂層15をスパッタリングにより設けたので、第一のフッ素樹脂層15が本体の尖端縁8から剥がれにくくなって耐久性に優れ、ひいては第一のフッ素樹脂層15の外側に設けた第二のフッ素樹脂層21も本体の尖端縁8から剥がれにくくなって耐久性に優れ、刃部材18の性能を高めることができる。また、第1実施形態においては、第一のフッ素樹脂層15の外側に第二のフッ素樹脂層21をスプレー塗装により設けたので、第二のフッ素樹脂層21の外側の滑りが良くなって、摩擦抵抗の低減により刃部材18の性能を高めることができる。従って、尖端縁8の外側に積層したフッ素樹脂コーティングの性能を高めることができる。ちなみに、スパッタリングにより成膜された第一のフッ素樹脂層15の硬度は、塗装により成膜された第二のフッ素樹脂層21の硬度より大きくなり、その第一のフッ素樹脂層15の分子量はその第二のフッ素樹脂層21の分子量より小さくなる。
(2) 第2実施形態においては、基材1の尖端部3の外側にフッ素樹脂とクロムとの混合層27をスパッタリングにより設けたので、混合層27が基材1の尖端部3から剥がれにくくなって耐久性に優れ、ひいては混合層27の外側に設けたフッ素樹脂層33も基材1の尖端部3から剥がれにくくなって耐久性に優れ、刃部材30の性能を高めることができる。また、第2実施形態においては、フッ素樹脂とクロムとの混合層27の外側にフッ素樹脂層33をスプレー塗装により設けたので、フッ素樹脂層33の外側の滑りが良くなって、摩擦抵抗の低減により刃部材30の性能を高めることができる。従って、尖端部3の外側に積層したフッ素樹脂コーティングの性能を高めることができる。
(3) 第1実施形態においては、フッ素樹脂に対する金属の密着性が他の金属に比べて良いために本体の尖端縁にクロム層を介してフッ素樹脂層を設けることが従来から行われていることに鑑み、本体の尖端縁8のクロム層9により、第一のフッ素樹脂層15が基材1の尖端部3から剥がれにくくなって耐久性に優れ、ひいては第一のフッ素樹脂層15の外側に設けた第二のフッ素樹脂層21も基材1の尖端部3から剥がれにくくなって耐久性に優れ、刃部材18の性能を高めることができる。従って、尖端部3の外側に積層したフッ素樹脂コーティングの性能を高めることができる。
(4) 第2実施形態においては、フッ素樹脂に対する金属の密着性が他の金属に比べて良いために本体の尖端縁にクロム層を介してフッ素樹脂層を設けることが従来から行われていることに鑑み、クロムを含む混合層27により、混合層27が基材1の尖端部3から剥がれにくくなって耐久性に優れているとともに、混合層27の外側に設けたフッ素樹脂層33が混合層27から剥がれにくくなって耐久性に優れ、ひいてはフッ素樹脂層33も基材1の尖端部3から剥がれにくくなって耐久性に優れ、刃部材30の性能を高めることができる。従って、尖端部3の外側に積層したフッ素樹脂コーティングの性能を高めることができる。
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 前記第1,2実施形態では、成膜手段として、マグネトロンスパッタリングや高周波マグネトロンスパッタリングや高周波アンバランスドマグネトロンスパッタリングやスプレー塗装を採用した。それらのスパッタリング以外に、イオンビームスパッタリングなどの他のスパッタリングを採用することができる。スパッタリング以外に、真空蒸着やイオンプレーティングなどの物理的蒸着を採用することができる。スパッタリングなどの物理的蒸着以外に、化学的蒸着を採用することができる。スプレー塗装以外に、電着塗装やどぶ漬け塗装などの他の塗装を採用することができる。
・ 前記第2実施形態において、フッ素樹脂とクロムとの混合物であるターゲット23を移動不能に成膜室内に取り付け、多数の基材1を並べた成膜対象物2をそのターゲット23と対向して成膜室内に取り付けてもよい。
・ 前記第1実施形態にかかる本体の尖端縁8においては、基材1の尖端部3の外側にクロム層9を設けてクロム層9の外側に第一のフッ素樹脂層15を設けたが、クロム層9を省略して基材1の尖端部3の外側に第一のフッ素樹脂層15を設けてもよい。
・ 前記第1,2実施形態では、フッ素樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を採用したが、それ以外に例えば、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)などを採用してもよい。
・ 前記第1実施形態において、第一のフッ素樹脂層15と第二のフッ素樹脂層21とは、同じ組成のフッ素樹脂でも組成の異なるフッ素樹脂を用いてもよい。
・ 前記第1実施形態においては、クロム層9を採用したが、クロム層9以外の金属層であってもよい。金属としては、クロムに代えて、例えば、アルミニウムやチタニウムやタングステンなどの金属を用いることができる。
・ 前記第2実施形態においては、フッ素樹脂とクロムとの混合層27を採用したが、さらにフッ素樹脂及びクロムに加えて別の金属や樹脂も含めた混合層27であってもよい。また、クロムに代えて、例えば、アルミニウムやチタニウムやタングステンなどの金属とフッ素樹脂との混合層27であってもよい。
・ 病理検査などで使用するミクロトーム用替刃や剃刀用替刃や包丁やナイフや鋏や爪切りや外科用刃物などの各種刃部材において、刃先部にフッ素樹脂コーティングを施す場合に本発明を応用することができる。
1…基材、3…尖端部、4…マグネトロンスパッタ装置(成膜手段)、8…尖端縁、9…クロム層、10…高周波マグネトロンスパッタ装置(成膜手段)、15…第一のフッ素樹脂層、16…スプレー塗装装置(成膜手段)、18…本体(刃部材)、20…本体の尖端縁(刃先部)、21…第二のフッ素樹脂層、22…高周波アンバランスドマグネトロンスパッタ装置(成膜手段)、26…尖端縁、27…混合層、28…スプレー塗装装置(成膜手段)、30…本体(刃部材)、32…本体の尖端縁(刃先部)、33…フッ素樹脂層。

Claims (8)

  1. 本体に設けた尖端縁の外側に蒸着により設けた第一のフッ素樹脂層と、この第一のフッ素樹脂層の外側に塗装により設けた第二のフッ素樹脂層とを備え、
    この第一のフッ素樹脂層の膜厚を10〜200nmに設定するとともに、この第二のフッ素樹脂層の膜厚を第一のフッ素樹脂層の膜厚より大きい50〜5000nmに設定し、この第一のフッ素樹脂層の分子量をこの第二のフッ素樹脂層の分子量より小さくするとともに、この第一のフッ素樹脂層の硬度をこの第二のフッ素樹脂層の硬度より大きくし
    前記本体の尖端縁において刃付けされた基材の尖端部の外側にスパッタリングにより設けたクロム層を備え、このクロム層の膜厚を10〜20nmに設定し、このクロム層の外側に前記第一のフッ素樹脂層を設けたことを特徴とする刃部材。
  2. 前記蒸着は物理的蒸着であることを特徴とする請求項1に記載の刃部材。
  3. 前記物理的蒸着はスパッタリングであることを特徴とする請求項2に記載の刃部材。
  4. 前記スパッタリングは高周波マグネトロンスパッタリングであることを特徴とする請求項3に記載の刃部材。
  5. 本体の尖端縁のうち最尖端で第二のフッ素樹脂層に生じる丸みを抑えるように塗装したことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の刃部材。
  6. 前記塗装はスプレー塗装であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の刃部材。
  7. 前記第一のフッ素樹脂層と第二のフッ素樹脂層とは少なくとも一部が同じ成分であるフッ素樹脂を含んでいることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の刃部材。
  8. 前記基材の尖端部には硬化処理が施され、この尖端部の尖端角度を12〜30度に設定し、この尖端部の最尖端の半径を10〜40nmに設定したことを特徴とする請求項に記載の刃部材。
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