JP6628385B6 - 改変されたCas9タンパク質及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、より標的可能な領域が拡張された、改変されたCas9タンパク質及びその用途に関する。
クラスター化した規則的な配置の短い回文反復配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats:CRISPR)は、Cas(CRISPR−associated)遺伝子と共に、細菌及び古細菌において侵入外来核酸に対する獲得耐性を提供する適応免疫系を構成することが知られている。CRISPRは、ファージまたはプラスミドDNAに起因することが多く、大きさの類似するスペーサーと呼ばれる独特の可変DNA配列が間に入った、24〜48bpの短い保存された反復配列からなる。また、リピート及びスペーサー配列の近傍には、Casタンパク質ファミリーをコードする遺伝子群が存在する。
CRISPR−Casシステムにおいて、外来性のDNAは、Casタンパク質ファミリーによって30bp程度の断片に切断され、CRISPRに挿入される。Casタンパク質ファミリーの一つであるCas1及びCas2タンパク質は、外来性DNAのproto−spacer adjacent motif(PAM)と呼ばれる塩基配列を認識して、その上流を切り取って、宿主のCRISPR配列に挿入し、これが細菌の免疫記憶となる。免疫記憶を含むCRISPR配列が転写されて生成したRNA(pre−crRNAと呼ぶ。)は、一部相補的なRNA(trans−activating crRNA:tracrRNA)と対合し、Casタンパク質ファミリーの一つであるCas9タンパク質に取り込まれる。Cas9に取り込まれたpre−crRNA及びtracrRNAはRNaseIIIにより切断され、外来配列(ガイド配列)を含む小さなRNA断片(CRISPR−RNAs:crRNAs)となり、Cas9−crRNA−tracrRNA複合体が形成される。Cas9−crRNA−tracrRNA複合体はcrRNAと相補的な外来侵入性DNAに結合し、DNAを切断する酵素(nuclease)であるCas9タンパク質が、外来侵入性DNAを切断することよって、外から侵入したDNAの機能を抑制及び排除する。
Cas9タンパク質は外来侵入性DNA中のPAM配列を認識して、その上流で二本鎖DNAを平滑末端になるように切断する。PAM配列の長さや塩基配列は細菌種によってさまざまであり、Streptococcus pyogenes(S.pyogenes)では「NGG」の3塩基を認識する。Streptococcus thermophilus(S.thermophilus)は2つのCas9を持っており、それぞれ「NGGNG」又は「NNAGAA」の5〜6塩基をPAM配列として認識する。Francisella novicida(F.novicida)では「NGR」の3塩基を認識する。PAM配列の上流の何bpのところを切断するかも細菌種によって異なるが、S.pyogenesを含め大部分のCas9オルソログはPAM配列の3塩基上流を切断する。
近年、細菌でのCRISPR−Casシステムを、ゲノム編集に応用する技術が盛んに開発されている。crRNAとtracrRNAを融合させて、tracrRNA−crRNAキメラ(以下、ガイドRNA(guide RNA:gRNA)と呼ぶ。)として発現させ、活用している。これによりnuclease(RNA−guided nuclease:RGN)を呼び込み、目的の部位でゲノムDNAを切断する。
CRISPR−Casシステムには、typeI、II、IIIがあるが、ゲノム編集で用いるのはもっぱらtypeII CRISPR−Casシステムであり、typeIIではRGNとしてCas9タンパク質が用いられている。S.pyogenes由来のCas9タンパク質はNGGという3つの塩基をPAM配列として認識するため、グアニンが2つ並んだ配列がありさえすればその上流を切断できる。
CRISPR−Casシステムを用いた方法は、目的のDNA配列と相同な短いgRNAを合成するだけでよく、単一のタンパク質であるCas9タンパク質を用いてゲノム編集ができる。そのため、従来用いられていたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)やトランス活性化因子様作動体(TALEN)のようにDNA配列ごとに異なる大きなタンパク質を合成する必要がなく、簡便かつ迅速にゲノム編集を行うことができる。
特許文献1には、S.pyogenes由来のCRISPR−Casシステムを活用したゲノム編集技術が開示されている。
特許文献2には、S.thermophilus由来のCRISPR−Casシステムを活用したゲノム編集技術が開示されている。さらに、特許文献2には、Cas9タンパク質のD31A又はN891A変異体が、一方のDNA鎖のみにnickを入れるDNA切断酵素であるnickaseとして機能することが開示されている。さらに、DNA切断後の修復メカニズムで挿入欠失などの変異を起こしやすい非相同末端結合の発生率は少ないままで、野生型Cas9タンパク質と同程度の相同組み換え効率を有することが示されている。
非特許文献1には、S.pyogenes由来のCas9を使用したCRISPR−Casシステムであって、2つのCas9タンパク質のD10A変異体と、該D10A変異体と複合体を形成する1対の標的特異的ガイドRNAを利用するダブルニッカーゼシステムが開示されている。各Cas9タンパク質のD10A変異体及び標的特異的ガイドRNAの複合体は、ガイドRNAと相補するDNA鎖に1つだけニックを作る。一対のガイドRNAは約20塩基程度ずれており、標的DNAの反対鎖に位置する標的配列のみを認識する。各Cas9タンパク質のD10A変異体及び標的特異的ガイドRNAの複合体によって作られた2つのニックはDNA二本鎖切断(DNA double−strand break:DSB)を模倣する状態になり、一対のガイドRNAを利用することで高レベルの効率を維持しつつ、Cas9タンパク質媒介型遺伝子編集の特異性を改善できることが示されている。
特許文献3には、S.pyogenes由来のCas9タンパク質の各種変異体が、特許文献4には、F.novicida由来のCas9タンパク質の各種変異体が開示されている。
WO2014/093661 特表2015−510778号公報 WO2016/141224 WO2017/010543
Ran, F. A., et al., Double Nicking by RNA-Guided CRISPR Cas9 for Enhanced Genome Editing Specificity, Cell, vol.154, p1380-1389, 2013.
特許文献1に開示されているS.pyogenes由来のCas9(本明細書中、SpCas9とも称する)タンパク質は、認識可能なPAM配列が「NGG(Nは任意の塩基)」の2塩基である。また、非特許文献1に開示されているダブルニッカーゼシステムでは、SpCas9タンパク質を使用しており、認識可能なPAM配列が標的配列内のセンス鎖及びアンチセンス鎖に1か所ずつ計2か所必要となるため、さらに編集可能な標的配列が制限される。
このように従来のCas9タンパク質には、認識可能なPAM配列に制限があるため、編集可能な標的配列が制限されるという問題点があった。
本発明は、ガイドRNAとの結合能は維持しつつ標的配列の制限が緩和された改変されたCas9タンパク質及びその用途を提供することを目的とする。
本発明者らは、Cas9タンパク質として、SpCas9タンパク質に着目し、上記課題を解決すべく鋭意検討した。結果、SpCas9タンパク質の所定の位置のアミノ酸を特定のアミノ酸に置換する(変異を導入する)ことによって、ガイドRNAとの結合能は維持しつつ、従来NGG(Nは任意の塩基)の2塩基であったPAM配列をNGの1塩基の配列とすることに成功し、本発明を完成するに至った。
本明細書中、変異を導入する前のCas9タンパク質を野生型Cas9タンパク質、変異を導入した後のCas9タンパク質を改変されたCas9タンパク質あるいは変異型Cas9タンパク質と称する場合がある。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1335位のアルギニンがアラニン、グリシン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、バリン、スレオニン、アスパラギン及びアスパラギン酸からなる群より選ばれる1つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAとの結合能を有するタンパク質。
[2]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、さらに1219位に変異を有する、上記[1]に記載のタンパク質。
[3]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、さらに1322位に変異を有する、上記[1]又は[2]に記載のタンパク質。
[4]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1335位のアルギニンがアラニン、グリシン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、バリン、スレオニン、アスパラギン及びアスパラギン酸からなる群より選ばれる1つのアミノ酸で置換され、さらに1219位に変異を有するアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAとの結合能を有するタンパク質。
[5]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1335位のアルギニンがアラニン、グリシン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、バリン、スレオニン、アスパラギン及びアスパラギン酸からなる群より選ばれる1つのアミノ酸で置換され、さらに1322位に変異を有するアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAとの結合能を有するタンパク質。
[6]1335位のアルギニンの置換がアラニンへの置換である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のタンパク質。
[7]1335位のアルギニンの置換がイソロイシン、メチオニン、スレオニン又はバリンへの置換である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のタンパク質。
[8]1219位の変異がグルタミン酸のフェニルアラニンへの置換である、上記[2]又は[4]記載のタンパク質。
[9]1322位の変異がアラニンのアルギニン、ヒスチジン又はリジンへの置換である、上記[3]又は[5]記載のタンパク質。
[10]1322位の変異がアラニンのアルギニンへの置換である、上記[9]記載のタンパク質。
[11]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、さらに、1111位、1135位、1218位及び1337位からなる群より選択される少なくとも1つの位置に変異を有する、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のタンパク質。
[12]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、さらに、1111位、1135位、1218位及び1337位からなる群より選択される少なくとも2つの位置に変異を有する、上記[11]に記載のタンパク質。
[13]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、さらに、1111位、1135位、1218位及び1337位からなる群より選択される少なくとも3つの位置に変異を有する、上記[11]に記載のタンパク質。
[14]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、さらに、1111位、1135位、1218位及び1337位に変異を有する、上記[11]に記載のタンパク質。
[15]1111位の変異がロイシンのアルギニン、ヒスチジン又はリジンへの置換であり;
1135位の変異がアスパラギン酸のバリンへの置換であり;
1218位の変異がグリシンのアルギニン、ヒスチジン又はリジンへの置換であり;
1337位の変異がスレオニンのアルギニン、ヒスチジン又はリジンへの置換である、上記[11]〜[14]のいずれかに記載のタンパク質。
[16]配列番号1の変異が施された位置以外の部位において80%以上の同一性を有する、上記[1]〜[15]のいずれかに記載のタンパク質。
[17]配列番号1の変異が施された位置以外の部位において1〜数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加された、上記[1]〜[15]のいずれかに記載のタンパク質。
[18]RNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する、上記[1]〜[17]のいずれかに記載のタンパク質。
[19]さらに、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、ヌクレアーゼ活性を一部あるいは全部を欠失する変異を有する、上記[1]〜[16]のいずれかに記載のタンパク質。
[20]ヌクレアーゼ活性を一部あるいは全部欠失する変異が、配列番号1で表されるアミノ酸配列における、(i)10位、762位、839位、983位及び986位からなる群より選択される少なくとも1つの位置又はそれに相当する位置、及び/又は(ii)840位及び863位からなる群より選択される位置又はそれに相当する位置における変異である、上記[19]に記載のタンパク質。
[21]10位のアスパラギン酸がアラニン又はアスパラギンに置換し;又は
840位のヒスチジンがアラニン、アスパラギン又はチロシンに置換している、上記[20]に記載のタンパク質。
[22]転写制御因子タンパク質又はドメインを連結した、上記[19]〜[21]のいずれかに記載のタンパク質。
[23]転写制御因子が転写活性化因子である、上記[22]記載のタンパク質。
[24]転写制御因子が転写サイレンサー又は転写抑制因子である、上記[22]記載のタンパク質。
[25]上記[1]〜[24]のいずれかに記載のタンパク質をコードする核酸。
[26]上記[1]〜[24]のいずれかに記載のタンパク質と、標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM(Proto-spacer Adjacent Motif)配列の1塩基上流から20塩基以上24塩基以下上流までの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むガイドRNAと、を備えるタンパク質−RNA複合体。
[27]標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に改変するための方法であって、
標的二本鎖ポリヌクレオチドと、タンパク質と、ガイドRNAとを混合し、インキュベートする工程と、
前記タンパク質が、PAM配列の上流に位置する結合部位で前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを改変する工程と、を備え、
前記標的二本鎖ポリヌクレオチドは、NG(Nは任意の塩基を、Gはグアニンをそれぞれ意味する)からなるPAM配列を有し、
前記タンパク質は、上記[1]〜[24]のいずれかに記載のタンパク質であり、
前記ガイドRNAは、前記標的二本鎖ポリヌクレオチド中の前記PAM配列の1塩基上流から20塩基以上24塩基以下上流までの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むものである方法。
[28]改変が、標的二本鎖ポリヌクレオチドの部位特異的な切断である、上記[27]記載の方法。
[29]改変が、標的二本鎖ポリヌクレオチドにおける部位特異的な、1以上のヌクレオチドの置換、欠失及び/又は付加である、上記[27]記載の方法。
[30]細胞の標的遺伝子の発現を増大させる方法であって、前記細胞内で上記[23]に記載のタンパク質と、前記標的遺伝子に対する1つ又は複数のガイドRNAとを発現させることを含む、方法。
[31]細胞の標的遺伝子の発現を減少させる方法であって、前記細胞内で上記[24]に記載のタンパク質と、前記標的遺伝子に対する1つ又は複数のガイドRNAとを発現させることを含む、方法。
[32]細胞が真核細胞である、上記[30]又は[31]に記載の方法。
[33]細胞が酵母細胞、植物細胞又は動物細胞である、上記[30]又は[31]に記載の方法。
本発明によれば、ガイドRNAへの結合力を保ちながら、PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質を得ることができる。また、前記Cas9タンパク質を利用した簡便且つ迅速で標的配列に部位特異的なゲノム編集技術を提供することができる。
図1Aは、実施例1におけるDNA切断活性測定試験のアガロースゲル電気泳動の結果を表わした図である。PAM配列として「TGT」を用い、制限酵素としてEcoRIを用いた。 図1Bは、実施例1におけるDNA切断活性測定試験のアガロースゲル電気泳動の結果を表わした図である。PAM配列として「TGG」を用い、制限酵素としてHindIIIを用いた。 図1Cは、実施例1におけるDNA切断活性測定試験のアガロースゲル電気泳動の結果を表わした図である。PAM配列として「TGNA」を用い、制限酵素としてBamHIを用いた。 図1Dは、実施例1におけるDNA切断活性測定試験のアガロースゲル電気泳動の結果を表わした図である。PAM配列として「TGN」を用い、制限酵素としてBamHIを用いた。 図2は、実施例2におけるDNA切断活性測定試験のアガロースゲル電気泳動の結果を表わした図である。 図3は、実施例3におけるDNA切断活性測定試験の結果を表わしたグラフである。PAM配列として「TGA」を用い、制限酵素としてBamHIを用いた。 図4は、実施例4におけるDNA切断活性測定試験の結果を表わしたグラフである。 図5は、実施例5におけるDNA切断活性測定試験の結果を表わしたグラフである。
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味を有する。
<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質>
本実施形態のタンパク質は、ガイドRNAへの結合力を保ちながら、PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質である。本実施形態のタンパク質によれば、簡便且つ迅速で標的配列に部位特異的なゲノム編集技術を提供することができる。
本明細書中において、「ガイドRNA」とは、tracrRNA−crRNAのヘアピン構造を模倣したものであり、標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM配列の1塩基上流から、好ましくは20塩基以上24塩基以下、より好ましくは22塩基以上24塩基以下までの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを5’末端領域に含むものである。さらに、標的二本鎖ポリヌクレオチドと非相補的な塩基配列からなり、一点を軸として対称に相補的な配列になるように並び、ヘアピン構造をとり得る塩基配列からなるポリヌクレオチドを1つ以上含んでいてもよい。
ガイドRNAは、本発明の変異型Cas9タンパク質と結合して、該タンパク質を標的DNAに導く機能を有する。ガイドRNAは、その5’末端に標的DNAに相補的な配列を有し、該相補的な配列を介して標的DNAに結合することにより、本発明の変異型Cas9タンパク質を標的DNAに導く。変異型Cas9タンパク質がDNAエンドヌクレアーゼとして機能する場合には、標的DNAが存在する部位でDNAを切断し、例えば、標的DNAの機能を特異的に喪失させることができる。
ガイドRNAは、切断あるいは修飾すべき標的DNAの配列情報に基づき設計され調製される。具体的には実施例で用いられるような配列が挙げられる。
本明細書において、「エンドヌクレアーゼ」とは、ヌクレオチド鎖の途中を切断する酵素を意味する。よって、エンドヌクレアーゼ活性を有する、本実施形態のPAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質は、ガイドRNAにより誘導され、DNA鎖の途中を切断する酵素活性を有する。
本明細書において、「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」とは、アミノ酸残基のポリマーを意味し、互換的に使用される。また、1つ若しくは複数のアミノ酸が、天然に存在する対応アミノ酸の化学的類似体、又は修飾誘導体である、アミノ酸ポリマーを意味する。
本明細書中において、「配列」とは、任意の長さのヌクレオチド配列を意味しており、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドであり、線状、環状、又は分岐状であり、一本鎖又は二本鎖である。
本明細書中において、「PAM配列」とは、標的二本鎖ポリヌクレオチド中に存在し、Cas9タンパク質により認識可能な配列を意味し、PAM配列の長さや塩基配列は細菌種によって異なる。本実施形態のPAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質により認識可能な配列は、「5’−NG−3’」で表すことができる。
なお、本明細書において、「N」は、アデニン、シトシン、チミン及びグアニンからなる群から選択された任意の1塩基を意味し、「A」はアデニン、「G」はグアニン、「C」はシトシン、「T」はチミン、「R」はプリン骨格を有する塩基(アデニン又はグアニン)、「Y」はピリミジン骨格を有する塩基(シトシン又はチミン)を意味する。
本明細書中において、「ポリヌクレオチド」とは、線状又は環状配座であり、一本鎖又は二本鎖形態のいずれかである、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを意味し、ポリマーの長さに関して制限するものとして解釈されるものではない。また、天然ヌクレオチドの公知の類似体、並びに塩基部分、糖部分及びリン酸部分のうち少なくとも一つの部分において修飾されるヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格)を包含する。一般に、特定ヌクレオチドの類似体は、同一の塩基対合特異性を有し、例えば、Aの類似体は、Tと塩基対合する。
一実施形態において、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1335位に変異を有するアミノ酸配列からなり、且つ、ガイドRNAとの結合能を有するタンパク質(態様1)を提供する。加えて、態様1のタンパク質はRNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する。
配列番号1は、SpCas9タンパク質の全長アミノ酸配列である。SpCas9タンパク質中のPAM配列認識部位の配列は、配列番号1の1097番目〜1368番目までの271残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号1の1335位における変異は、具体的には、1335位のアルギニンの、アラニン、グリシン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、スレオニン、バリン、アスパラギン及びアスパラギン酸からなる群より選ばれる1つのアミノ酸への置換である。好ましくはアラニンへの置換である。また、1335位における別の好ましい変異は、イソロイシン、メチオニン、スレオニン又はバリンへの置換である。
1335位における変異によりPAM配列中の3番目のグアニン(5’−NG『G』−3’)との水素結合がなくなるため、該タンパク質のPAM配列の認識を広範化することができる。
本発明の別の一実施態様において、本発明は、前記態様1の変異に加えて、さらに1219位に変異を有し、且つ、ガイドRNAとの結合能を有するタンパク質(態様2)を提供する。加えて、態様2のタンパク質は、RNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する。
該1219位における変異は、具体的には、1219位のグルタミン酸のフェニルアラニンへの置換である。
1219位における変異は、RNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ活性の発現速度の上昇(維持)に寄与し得る。
本発明の別の一実施態様において、本発明は、前記態様1又は2の変異に加えて、さらに1322位に変異を有し、且つ、ガイドRNAとの結合能を有するタンパク質(態様3)を提供する。加えて、態様3のタンパク質は、RNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する。
該1322位における変異は、具体的には、1322位のアラニンのアルギニン、ヒスチジン又はリジンへの置換である。好ましくは、アルギニンへの置換である。
1322位における変異は、RNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ活性の活性上昇(活性維持)に寄与し得る。
本発明の別の一実施態様において、本発明は、前記態様1、2又は3の変異に加えて、さらに、1111位、1135位、1218位及び1337位からなる群より選択される少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、特に好ましくは4つ全ての位置に変異を有し、且つ、ガイドRNAとの結合能を有するタンパク質(態様4)を提供する。態様4のタンパク質はRNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する。
該1111位における変異は、具体的には、1111位のロイシンのアルギニン、ヒスチジン又はリジンへの置換である。好ましくは、アルギニンへの置換である。
該1135位における変異は、具体的には、1135位のアスパラギン酸のバリンへの置換である。
該1218位における変異は、具体的には、1218位のグリシンのアルギニン、ヒスチジン又はリジンへの置換である。好ましくは、アルギニンへの置換である。
該1337位における変異は、具体的には、1337位のスレオニンのアルギニン、ヒスチジン又はリジンへの置換である。好ましくは、アルギニンへの置換である。
本発明の別の一実施態様において、本発明は、前記態様1、2、3又は4の変異に加えて、さらに、(i)10位、762位、839位、983位、986位からなる群より選択される少なくとも1つの位置、及び/又は(ii)840位及び863位からなる群より選択される位置に変異を有し、且つ、ガイドRNAとの結合能を有するタンパク質(態様5)を提供する。
該10位における変異は、具体的には、10位のアスパラギン酸のアラニン又はアスパラギンへの置換である。
該762位における変異は、具体的には、762位のグルタミン酸のグルタミンへの置換である。
該839位における変異は、具体的には、839位のアスパラギン酸のアラニン又はアスパラギンへの置換である。
該983位における変異は、具体的には、983位のヒスチジンのアスパラギン又はチロシンへの置換である。
該986位における変異は、具体的には、986位のアスパラギン酸のアスパラギンへの置換である。
該840位における変異は、具体的には、840位のヒスチジンのアラニン、アスパラギン又はチロシンへの置換である。
該863位における変異は、具体的には、863位のアスパラギンのアスパラギン酸、セリン又はヒスチジンへの置換である。
態様5として好ましくは、10位のアスパラギン酸がアラニン若しくはアスパラギンに置換し、又は840位のヒスチジンが、アラニン、アスパラギン若しくはチロシンに置換したタンパク質である。
(i)の変異又は(ii)の変異を有する態様5のタンパク質は、ニッカーゼ活性を有する。
(i)の変異及び(ii)の変異を有する態様5のタンパク質は、ガイドRNAと結合し標的DNAへと運ばれるがエンドヌクレアーゼ活性が失活している。
本発明の別の一実施態様において、本発明は、前記態様1〜5のタンパク質と機能的に同等なタンパク質(態様6)を提供する。前記態様1〜5のタンパク質と機能的に同等であるためには配列番号1で表されるアミノ酸配列において、前記態様1〜5で変異が施された位置以外の部位において、80%以上の配列同一性を有し、且つガイドRNAとの結合能を有する。変異によりアミノ酸に増減があった場合には、該「変異が施された位置以外の部位」は「変異が施された位置に相当する位置以外の部位」と解することができる。係る同一性としては、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましく、99%以上が最も好ましい。アミノ酸配列同一性は自体公知の方法により決定できる。例えば、アミノ酸配列同一性(%)は、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。また、別の局面では、同一性(%)は、当該分野で公知の任意のアルゴリズム、例えば、Needlemanら(1970) (J. Mol. Biol. 48: 444-453)、Myers及びMiller (CABIOS, 1988, 4: 11-17)のアルゴリズム等を使用して決定することができる。Needlemanらのアルゴリズムは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれており、同一性(%)は、例えば、BLOSUM 62 matrix又はPAM250 matrix、並びにgap weight: 16、14、12、10、8、6若しくは4、及びlength weight: 1、2、3、4、5若しくは6のいずれかを使用することによって決定することができる。また、Myers及びMillerのアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラムに組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、例えば、PAM120 weight residue table、gap length penalty 12、gap penalty 4を用いることができる。
前記態様1〜5のタンパク質と機能的に同等なタンパク質として、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、前記態様1〜5で変異が施された位置以外の部位において、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加され、且つ、ガイドRNAとの結合能を有するタンパク質(態様7)が提供される。変異によりアミノ酸に増減があった場合には、該「変異が施された位置以外の部位」は「変異が施された位置に相当する位置以外の部位」と解することができる。
「アミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加」を人為的に行う場合の手法としては、例えば、所定のアミノ酸配列をコードするDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res., 12, 9441-9456 (1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、またはそれ以上である。また前記置換、欠失、挿入または付加のうち、特にアミノ酸の置換が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、i)グリシン、アラニン;ii)バリン、イソロイシン、ロイシン;iii)アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;iv)セリン、スレオニン;v)リジン、アルギニン;vi)フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
本発明のPAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質として、好ましくは、配列番号1において1335位のアルギニンがアラニンに(R1335A)、1111位のロイシンがアルギニンに(L1111R)、1135位のアスパラギン酸がバリンに(D1135V)、1218位のグリシンがアルギニンに(G1218R)、1219位のグルタミン酸がフェニルアラニンに(E1219F)、1322位のアラニンがアルギニンに(A1322R)、1337位のスレオニンがアルギニンに(T1337R)に変異したアミノ酸配列(配列番号18)を含むタンパク質が挙げられる。
配列番号1において1335位のアルギニンがイソロイシン(R1335I)、メチオニン(R1335M)、スレオニン(R1335T)又はバリン(R1335V)に(より好ましくはR1335M及びR1335V)、1111位のロイシンがアルギニンに(L1111R)、1135位のアスパラギン酸がバリンに(D1135V)、1218位のグリシンがアルギニンに(G1218R)、1219位のグルタミン酸がフェニルアラニンに(E1219F)、1322位のアラニンがアルギニンに(A1322R)、1337位のスレオニンがアルギニンに(T1337R)に変異したアミノ酸配列を含むタンパク質もまた本発明のPAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質として好ましい。該タンパク質は、それぞれ、配列番号18において1335位のアラニンがイソロイシン、メチオニン、スレオニン又はバリンに変異したアミノ酸配列を含むタンパク質に相当する。
本明細書中、置換箇所までのアミノ酸残基数を表わす数字の左側に表示したアルファベットは置換前のアミノ酸の1文字表記を示し、右側に表示したアルファベットは置換後のアミノ酸の1文字表記を示している。
本実施形態におけるPAM認識が広範化されたCas9タンパク質は、例えば次のような方法により作成することができる。まず、前記PAM認識が広範化されたCas9タンパク質をコードする核酸を含むベクターを用いて、宿主を形質転換する。続いて、当該宿主を培養して前記タンパク質を発現させる。培地の組成、培養の温度、時間、誘導物質の添加等の条件は、形質転換体が生育し、前記タンパク質が効率よく産生されるよう、公知の方法に従って当業者が決定できる。また、例えば、選択マーカーとして抗生物質抵抗性遺伝子を発現ベクターに組み込んだ場合、培地に抗生物質を加えることにより、形質転換体を選択することができる。続いて、宿主が発現した前記タンパク質を適宜自体公知の方法により精製することにより、PAM認識が広範化されたCas9タンパク質が得られる。
宿主としては、特に限定されず、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、又は、大腸菌、枯草菌、酵母等の微生物が挙げられる。
<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質−ガイドRNA複合体>
一実施形態において、本発明は、上述の<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質>において示されたタンパク質と、標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM(Proto−spacer Adjacent Motif)配列の1塩基上流から20塩基以上24塩基以下上流までの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むガイドRNAと、を備えるタンパク質−RNA複合体を提供する。
本実施形態のタンパク質−RNA複合体によれば、PAM配列が広範化され、簡便且つ迅速で標的配列に対し部位特異的な標的二本鎖ポリヌクレオチドの編集をすることができる。
前記タンパク質及び前記ガイドRNAは、in vitro及びin vivoにおいて、温和な条件で混合することで、タンパク質−RNA複合体を形成することができる。温和な条件とは、タンパク質が分解又は変性しない程度の温度及びpHを示しており、温度は4℃以上40℃以下が好ましく、pHは4以上10以下が好ましい。
また、前記タンパク質及び前記ガイドRNAを混合し、インキュベートする時間は、0.5時間以上1時間以下が好ましい。前記タンパク質及び前記ガイドRNAによる複合体は、安定しており、室温で数時間静置しても安定性を保つことができる。
<CRISPR−Casベクターシステム>
一実施形態において、本発明は、上述の<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質>において示されたタンパク質をコードする遺伝子を含む第1のベクターと、標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM配列の1塩基上流から20塩基以上24塩基以下上流までの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むガイドRNAを含む第2のベクターと、を備えるCRISPR−Casベクターシステムを提供する。
本実施形態のCRISPR−Casベクターシステムによれば、PAM配列が広範化され、簡便且つ迅速で標的配列に対し部位特異的な標的二本鎖ポリヌクレオチドの編集をすることができる。
ガイドRNAは、標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM配列の1塩基上流から、好ましくは20塩基以上24塩基以下、より好ましくは22塩基以上24塩基以下までの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを5’末端領域に含むものを適宜設計すればよい。さらに、標的二本鎖ポリヌクレオチドと非相補的な塩基配列からなり、一点を軸として対称に相補的な配列になるように並び、ヘアピン構造をとり得る塩基配列からなるポリヌクレオチドを1つ以上含んでいてもよい。
本実施形態のベクターは、発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターとしては特に制限されず、例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13等の大腸菌由来のプラスミド;pUB110、pTP5、pC194等の枯草菌由来のプラスミド;pSH19、pSH15等の酵母由来プラスミド;λファージ等のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス等のウイルス;及びこれらを改変したベクター等を用いることができる。
上述の発現ベクターにおいて、前記Cas9タンパク質、及び前記ガイドRNA発現用プロモーターとしては特に限定されず、例えば、EF1αプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウィルス)プロモーター、HSV−tkプロモーター等の動物細胞における発現用のプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、REF(rubber
elongation factor)プロモーター等の植物細胞における発現用のプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等の昆虫細胞における発現用のプロモーター等を使用することができる。これらプロモーターは、前記Cas9タンパク質、及び前記ガイドRNA、又は前記Cas9タンパク質、及び前記ガイドRNAを発現する細胞の種類に応じて、適宜選択することができる。
上述の発現ベクターは、さらに、マルチクローニングサイト、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、複製起点等を有していてもよい。
<標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に改変するための方法>
[第1実施形態]
一実施形態において、本発明は、標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に改変するための方法であって、
標的二本鎖ポリヌクレオチドと、タンパク質と、ガイドRNAとを混合し、インキュベートする工程と、前記タンパク質が、PAM配列の上流に位置する結合部位で前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを改変する工程と、を備え、
前記標的二本鎖ポリヌクレオチドは、NG(Nは任意の塩基を、Gはグアニンをそれぞれ意味する)からなるPAM配列を有し、
前記タンパク質は、上述の<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質>において示されたタンパク質であり、
前記ガイドRNAは、前記標的二本鎖ポリヌクレオチド中の前記PAM配列の1塩基上流から20塩基以上24塩基以下上流までの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むものである方法を提供する。
本実施形態の方法によれば、PAM配列が広範化された変異型Cas9タンパク質を用いることで、簡便であって迅速、且つ標的配列に対し部位特異的に標的二本鎖ポリヌクレオチドを改変することができる。
本実施形態において、標的二本鎖ポリヌクレオチドは、NG(Nは任意の塩基を、Gはグアニンをそれぞれ意味する)からなるPAM配列を有するものであればよく、特別な限定はない。
本実施形態において、タンパク質及びガイドRNAについては、上述の<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質>において示されたとおりである。
標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に改変するための方法について、以下に詳細を説明する。
まず、前記タンパク質及び前記ガイドRNAを温和な条件で混合し、インキュベートする。温和な条件とは、上述のとおりである。インキュベートする時間は、0.5時間以上1時間以下が好ましい。前記タンパク質及び前記ガイドRNAによる複合体は、安定しており、室温で数時間静置しても安定性を保つことができる。
次に、前記標的二本鎖ポリヌクレオチド上において、前記タンパク質及び前記ガイドRNAは複合体を形成する。前記タンパク質は、「5’−NG−3’」からなるPAM配列を認識し、PAM配列の上流に位置する結合部位で、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに結合する。前記タンパク質がエンドヌクレアーゼ活性を有する場合当該部位で該ポリヌクレオチドを切断する。前記Cas9タンパク質がPAM配列を認識し、PAM配列を起点として、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの二重らせん構造が引き剥され、前記ガイドRNA中の前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに相補的な塩基配列とアニーリングすることで、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの二重らせん構造が部分的にほぐれる。このとき、前記Cas9タンパク質は、PAM配列の上流に位置する切断部位、及びPAM配列と相補的な配列の上流に位置する切断部位で、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドのリン酸ジエステル結合を切断する。
[第2実施形態]
本実施形態において、インキュベート工程の前に、さらに、上述のCRISPR−Casベクターシステムを用いて、上述の<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質>において示されたタンパク質と、ガイドRNAとを発現させる発現工程を備えていてもよい。
本実施形態の発現工程において、まず、上述のCRISPR−Casベクターシステムを用いて、Cas9タンパク質及びガイドRNAを発現させる。発現させる具体的な方法としては、Cas9タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター、及びガイドRNAを含む発現ベクターそれぞれを用いて、宿主を形質転換する。続いて、当該宿主を培養してCas9タンパク質、及びガイドRNAを発現させる。培地の組成、培養の温度、時間、誘導物質の添加等の条件は、形質転換体が生育し、融合タンパク質が効率よく産生されるよう、公知の方法に従って当業者が決定できる。また、例えば、選択マーカーとして抗生物質抵抗性遺伝子を発現ベクターに組み込んだ場合、培地に抗生物質を加えることにより、形質転換体を選択することができる。続いて、宿主が発現したCas9タンパク質、及びガイドRNAを適宜の方法により精製することにより、Cas9タンパク質、及びガイドRNAが得られる。
<標的二本鎖ヌクレオチドを部位特異的に修飾するための方法>
[第1実施形態]
一実施形態において、本発明は、標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に改変するための方法であって、
標的二本鎖ポリヌクレオチドと、タンパク質と、ガイドRNAとを混合し、インキュベートする工程と、前記タンパク質が、PAM配列の上流に位置する結合部位で前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに結合する工程と、前記ガイドRNAと前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの相補的結合によって決定される領域において、修飾された前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを得る工程と、を備え、
前記標的二本鎖ポリヌクレオチドは、NG(Nは任意の塩基を、Gはグアニンをそれぞれ意味する)からなるPAM配列を有し、
前記タンパク質は、上述の<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質>
において示されたタンパク質であり、
前記ガイドRNAは、前記標的二本鎖ポリヌクレオチド中の前記PAM配列の1塩基上流から20塩基以上24塩基以下上流までの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むものである方法を提供する。
本実施形態の方法によれば、PAM配列が広範化されたRNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼを用いることで、簡便であって迅速、且つ標的配列に対し部位特異的に標的二本鎖ポリヌクレオチドを修飾することができる。
本実施形態において、標的二本鎖ポリヌクレオチド、タンパク質及びガイドRNAについては、上述の<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質>、及び<標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に改変するための方法>において示されたとおりである。
標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に改変するための方法について、以下に詳細を説明する。標的二本鎖ポリヌクレオチドに部位特異的に結合するまでの工程は上述の<標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に切断するための方法>に示された工程と同様である。続いて、前記ガイドRNAと前記二本鎖ポリヌクレオチドの相補的結合によって決定される領域において、目的に応じた修飾が施された標的二本鎖ポリヌクレオチドを得ることができる。
本明細書中において、「改変」とは、標的二本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列が変化することを意味する。例えば、標的二本鎖ポリヌクレオチドの切断、切断後の外因性配列の挿入(物理的挿入又は相同指向修復を介する複製による挿入)による標的二本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列の変化、切断後の非相同末端連結(NHEJ:切断により生じたDNA末端どうしが再び結合すること)に加え、機能的なタンパク質や塩基配列の付加による標的二本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列の変化等が挙げられる。
本実施形態における標的二本鎖ポリヌクレオチドの修飾により、標的二本鎖ポリヌクレオチドへの変異の導入、又は、標的二本鎖ポリヌクレオチドの機能を破壊、改変することができる。
[第2実施形態]
本実施形態において、インキュベート工程の前に、さらに、上述のCRISPR−Casベクターシステムを用いて、上述の<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質>において示されたタンパク質と、ガイドRNAとを発現させる発現工程を備えていてもよい。
本実施形態の発現工程において、まず、上述のCRISPR−Casベクターシステムを用いて、Cas9タンパク質及びガイドRNAを発現させる。発現させる具体的な方法としては、上述の<標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に改変するための方法>の[第2実施形態]において例示された方法と同様である。
<標的二本鎖ポリヌクレオチドを細胞内において部位特異的に改変するための方法>
一実施形態において、本発明は、標的二本鎖ポリヌクレオチドを細胞内において部位特異的に改変するための方法であって、
上述のCRISPR−Casベクターシステムを細胞に導入し、上述の<PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質>において示されたタンパク質と、ガイドRNAとを発現させる発現工程と、
前記タンパク質が、PAM配列の上流に位置する結合部位で前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに結合する工程と、
前記ガイドRNAと前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの相補的結合によって決定される領域において、改変された前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを得る工程と、を備え、
前記標的二本鎖ポリヌクレオチドは、NG(Nは任意の塩基を、Gはグアニンをそれぞれ意味する)からなるPAM配列を有し、
前記ガイドRNAは、前記標的二本鎖ポリヌクレオチド中の前記PAM配列の1塩基上流から20塩基以上24塩基以下上流までの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むものである方法を提供する。
本実施形態の発現工程において、まず、上述のCRISPR−Casベクターシステムを用いて、細胞内において、Cas9タンパク質及びガイドRNAを発現させる。
本実施形態の方法の適用対象となる細胞の由来となる生物としては、例えば、原核生物、酵母、動物、植物、昆虫等が挙げられる。前記動物としては、特別な限定はなく、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、マウス、ラット等が挙げられ、これらに限定されない。また、細胞の由来となる生物の種類は、所望の標的二本鎖ポリヌクレオチドの種類、目的等により任意に選択することができる。
本実施形態の方法の適用対象となる動物由来の細胞としては、例えば、生殖細胞(精子、卵子等)、生体を構成する体細胞、幹細胞、前駆細胞、生体から分離されたがん細胞、生体から分離され不死化能を獲得して体外で安定して維持される細胞(細胞株)、生体から分離され人為的に遺伝子改変された細胞、生体から分離され人為的に核が交換された細胞等が挙げられ、これらに限定されない。
生体を構成する体細胞としては、例えば、皮膚、腎臓、脾臓、副腎、肝臓、肺、卵巣、膵臓、子宮、胃、結腸、小腸、大腸、膀胱、前立腺、精巣、胸腺、筋肉、結合組織、骨、軟骨、血管組織、血液、心臓、眼、脳、神経組織等の任意の組織から採取される細胞等が挙げられ、これらに限定されない。体細胞として、より具体的には、例えば、線維芽細胞、骨髄細胞、免疫細胞(例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、好中球、マクロファージ、単球、等)、赤血球、血小板、骨細胞、骨髄細胞、周皮細胞、樹状細胞、ケラチノサイト、脂肪細胞、間葉細胞、上皮細胞、表皮細胞、内皮細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、肝細胞、膵島細胞(例えば、α細胞、β細胞、δ細胞、ε細胞、PP細胞等)、軟骨細胞、卵丘細胞、グリア細胞、神経細胞(ニューロン)、オリゴデンドロサイト、マイクログリア、星状膠細胞、心筋細胞、食道細胞、筋肉細胞(例えば、平滑筋細胞、骨格筋細胞等)、メラニン細胞、単核細胞等が挙げられ、これらに限定されない。
幹細胞とは、自分自身を複製する能力と他の複数系統の細胞に分化する能力を兼ね備えた細胞である。幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞、胚性生殖幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、腸幹細胞、がん幹細胞、毛包幹細胞等が挙げられ、これらに限定されない。
がん細胞とは、体細胞から派生して無限の増殖能を獲得した細胞である。がん細胞の由来となるがんとしては、例えば、乳がん(例えば、浸潤性乳管がん、非浸潤性乳管がん、炎症性乳がん等)、前立腺がん(例えば、ホルモン依存性前立腺がん、ホルモン非依存性前立腺がん等)、膵がん(例えば、膵管がん等)、胃がん(例えば、乳頭腺がん、粘液性腺がん、腺扁平上皮がん等)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫等)、結腸がん(例えば、消化管間質腫瘍等)、直腸がん(例えば、消化管間質腫瘍等)、大腸がん(例えば、家族性大腸がん、遺伝性非ポリポーシス大腸がん、消化管間質腫瘍等)、小腸がん(例えば、非ホジキンリンパ腫、消化管間質腫瘍等)、食道がん、十二指腸がん、舌がん、咽頭がん(例えば、上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん等)、頭頚部がん、唾液腺がん、脳腫瘍(例えば、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫等)、神経鞘腫、肝臓がん(例えば、原発性肝がん、肝外胆管がん等)、腎臓がん(例えば、腎細胞がん、腎盂と尿管の移行上皮がん等)、胆嚢がん、胆管がん、膵臓がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、卵巣がん(例、上皮性卵巣がん、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍等)、膀胱がん、尿道がん、皮膚がん(例えば、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞がん等)、血管腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病等)、メラノーマ(悪性黒色腫)、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様ガン等)、副甲状腺がん、鼻腔がん、副鼻腔がん、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、ユーイング腫瘍、子宮肉腫、軟部組織肉腫等)、転移性髄芽腫、血管線維腫、隆起性皮膚線維肉腫、網膜肉腫、陰茎癌、精巣腫瘍、小児固形がん(例えば、ウィルムス腫瘍、小児腎腫瘍等)、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、慢性骨髄増殖性疾患、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病等)等が挙げられ、これらに限定されない。
細胞株とは、生体外での人為的な操作により無限の増殖能を獲得した細胞である。細胞株としては、例えば、HCT116、Huh7、HEK293(ヒト胎児腎細胞)、HeLa(ヒト子宮頸がん細胞株)、HepG2(ヒト肝がん細胞株)、UT7/TPO(ヒト白血病細胞株)、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞株)、MDCK、MDBK、BHK、C−33A、HT−29、AE−1、3D9、Ns0/1、Jurkat、NIH3T3、PC12、S2、Sf9、Sf21、High Five、Vero等が挙げられ、これらに限定されない。
CRISPR−Casベクターシステムの細胞への導入方法としては、使用する生細胞に適した方法で行うことができ、エレクトロポレーション法、ヒートショック法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、パーティクル・ガン法、ウイルスを用いた方法や、FuGENE(登録商標) 6 Transfection Reagent(ロシュ社製)、Lipofectamine 2000 Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine LTX Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine 3000 Reagent(インビトロジェン社製)などの市販のトランスフェクション試薬を用いた方法などを挙げることができる。
続く、修飾工程については、上述の<標的二本鎖ヌクレオチドを部位特異的に改変するための方法>の[第1実施形態]に示された方法と同様である。
本実施形態における標的二本鎖ポリヌクレオチドの修飾により、標的二本鎖ポリヌクレオチドへの変異の導入、又は、標的二本鎖ポリヌクレオチドの機能が破壊、改変された細胞を得ることができる。
本発明の変異型Cas9タンパク質として、エンドヌクレアーゼ活性を有さない態様(例、態様5)を用いた場合には、該タンパク質はPAM配列の上流に位置する結合部位で前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに結合することができるが、そこにとどまって切断することができない。従って、例えば該タンパク質に蛍光タンパク質(例、GFP)等の標識タンパク質を融合させておくと、ガイドRNA−変異型Cas9タンパク質を介して標識タンパク質を標的二本鎖ポリヌクレオチドに結合させることができる。変異型Cas9タンパク質に結合させる物質を適宜選択することによって多様な機能を標的二本鎖ポリヌクレオチドに与えることが可能となる。
さらに、変異型Cas9タンパク質あるいは変異型Cas9から一部あるいは全部の切断酵素活性を欠失したタンパク質のN末端あるいはC末端に転写制御因子タンパク質又はドメインを連結することができる。転写制御因子又はそのドメインとしては、転写活性化因子又はそのドメイン(例、VP64、NF−κB p65)及び転写サイレンサー又はそのドメイン(例、ヘテロクロマチンタンパク質1(HP1))又は転写抑制因子又はそのドメイン(例、クルッペル関連ボックス(KRAB)、ERFリプレッサードメイン(ERD)、mSin3A相互作用ドメイン(SID))が挙げられる。
DNAのメチル化状態を修飾する酵素(例、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)、TET)やヒストンサブユニットを修飾する酵素(例、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンデメチラーゼ)を連結することもできる。
<遺伝子治療>
一実施形態において、本発明は、ゲノム編集を実行し、遺伝子を治療するための方法及び組成物を提供する。以前に知られている標的化された遺伝子組換えの方法と対照的に、本実施形態の方法は、実行が、効率的かつ安価であり、そして任意の細胞または生物に適応可能である。細胞又は生物の二本鎖核酸の任意のセグメントは、本実施形態の遺伝子治療方法により改変することができる。本実施形態の遺伝子治療方法は、全ての細胞に内在性である相同組換えプロセス及び非相同組換えプロセスの両方を利用する。
本明細書において、「ゲノム編集」とは、CRISPR/Cas9システムやTranscription Activator−Like Effector Nucleases(TALEN)等の技術により標的化された遺伝子組換えまたは標的化された変異を実行することにより、特異的な遺伝子破壊やレポーター遺伝子のノックイン等を行う新しい遺伝子改変技術を意味する。
また、一実施形態において、本発明は、標的化されたDNA挿入又は標的化されたDNA欠失を行う遺伝子治療方法を提供する。この遺伝子治療方法は、ドナーDNAを含む核酸構築物を用いて、細胞を形質転換する工程を包含する。標的遺伝子切断後のDNA挿入およびDNA欠失に関するスキームについては、公知の方法に従って当業者が決定できる。
また、一実施形態において、本発明は、体細胞及び生殖細胞の両方で利用され、特定の遺伝子座で遺伝子操作を行う遺伝子治療方法を提供する。
また、一実施形態において、本発明は、体細胞において遺伝子を壊すための遺伝子治療方法を提供する。ここで、遺伝子は、細胞又は生物に対して有害な産物を過剰発現し、細胞又は生物に対して有害な産物を発現する。このような遺伝子は、疾患において生じる1つ以上の細胞型において過剰発現され得る。本実施形態の遺伝子治療方法による、前記過剰発現した遺伝子の破壊は、前記過剰発現した遺伝子に起因する疾患を被る個体に、より良い健康をもたらすることができる。すなわち、細胞のほんの小さな割合の遺伝子の破壊が働き、発現レベルを減少し、治療効果を生じさせる。
また、一実施形態において、本発明は、生殖細胞において遺伝子を壊すための遺伝子治療方法を提供する。特定の遺伝子が破壊された細胞は、特定の遺伝子の機能を有さない生物を作製するために活用することができる。前記遺伝子が破壊された細胞において、遺伝子は完全にノックアウトさせることができる。この特定の細胞における機能の欠損は、治療効果を有し得る。
また、一実施形態において、本発明は、遺伝子産物をコードするドナーDNAを挿入する遺伝子治療方法を提供する。この遺伝子産物は、構成的に発現された場合、治療効果を有する。例えば、膵細胞の個体群において、活性プロモーター及びインシュリン遺伝子をコードするドナーDNAの挿入を引き起こすために、前記ドナーDNAを、糖尿病を被る個体(患者)に挿入する方法が挙げられる。次いで、前記ドナーDNAを含む膵細胞の前記個体群は、インシュリンを生成し、糖尿病患者を治療することができる。さらに、前記ドナーDNAは植物に挿入され、薬剤的関連遺伝子産物を生成させることができる。タンパク質産物の遺伝子(例えば、インシュリン、リパーゼまたはヘモグロビン)は、制御エレメント(構成的活性プロモーター、または誘導性プロモーター)と一緒に植物に挿入され、植物中で大量の医薬品を生成することができる。次いで、このようなタンパク質産物は、植物から単離することができる。
トランスジェニック植物又はトランスジェニック動物は、核酸移入技術(McCreath,K.J.ら(2000)Nature 405:1066−1069;Polejaeva,I.A.ら,(2000)Nature 407:86−90)を用いる方法で作製することができる。組織型特異的ベクター又は細胞型特異的ベクターは、選択した細胞内でのみ遺伝子発現を提供するために利用することができる。
また、上記の方法を生殖細胞に用いた場合、標的遺伝子にドナーDNAを挿入させて、後の全ての細胞分裂により、設計された遺伝的変更を有する細胞を生成することができる。
本実施形態の遺伝子治療方法の適用対象としては、例えば、任意の生物、培養細胞、培養組織、培養核(培養細胞、培養組織、又は培養核インタクトには、生物を再生するために使用可能な細胞、組織又は核を含む)、配偶子(例えば、発達の様々な段階の卵又は精子)等が挙げられ、これらに限定されない。
本実施形態の遺伝子治療方法の適用対象となる細胞の由来としては、任意の生物(昆虫、真菌、げっ歯類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、及び他の農業上重要な動物、並びに他の哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ及びヒトが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない)等が挙げられ、これらに限定されない。
さらに、本実施形態の遺伝子治療方法は、植物において使用することができる。本実施形態の遺伝子治療方法の適用対象となる植物としては、特別な限定はなく、任意の様々な植物種(例えば、単子葉植物又は双子葉植物等)において適用することができる。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
1.野生型及び変異型SpCas9の調製
(1)コンストラクトの設計
遺伝子合成によりコドンが最適化された野生型あるいは変異型SpCas9遺伝子を、pET vector(Novagen)に組み込んだ。さらに、HisタグとSpCas9遺伝子の間にTEV認識配列を付加した。完成したコンストラクトから発現するCas9のN末端には6残基のヒスチジンが連続し(Hisタグ)、TEVプロテアーゼ認識サイトが付加される設計になっている。
使用したSpCas9遺伝子の塩基配列は以下の通り。
WT:野生型SpCas9の塩基配列:配列番号2
m0:変異型SpCas9遺伝子(R1335A)の塩基配列:配列番号3
m4:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R)の塩基配列:配列番号4
m18:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R)の塩基配列:配列番号5
m19:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R/L1111R)の塩基配列:配列番号6
m20:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R/L1111R/D1332R)の塩基配列:配列番号7
m21:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R/L1111R/D1332R/A1322R)の塩基配列:配列番号8
m22:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R/L1111R/D1332R/A1322R/D1284R/A1285R)の塩基配列:配列番号9
m23:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/L1111R/D1332R/A1322R)の塩基配列:配列番号10
m24:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/L1111R/D1332R/A1322R/D1284R/A1285R)の塩基配列:配列番号11
m25:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R)の塩基配列:配列番号12
m26:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/L1111R/A1322R)の塩基配列:配列番号13
m29:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/L1111R)の塩基配列:配列番号14
m32:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/E1219M)の塩基配列:配列番号15
m33:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/E1219F)の塩基配列:配列番号16
m34:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/E1219W)の塩基配列:配列番号17
m43:変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/E1219F/D1135V)の塩基配列:配列番号18
m61:変異型SpCas9遺伝子(R1335I/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/E1219F/D1135V)の塩基配列:m43の塩基配列(配列番号18)に対し、4003−4005位のgccがatcに変換した塩基配列。
m62:変異型SpCas9遺伝子(R1335L/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/E1219F/D1135V)の塩基配列:m43の塩基配列(配列番号18)に対し、4003−4005位のgccがctgに変換した塩基配列。
m63:変異型SpCas9遺伝子(R1335M/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/E1219F/D1135V)の塩基配列:m43の塩基配列(配列番号18)に対し、4003−4005位のgccがatgに変換した塩基配列。
m64:変異型SpCas9遺伝子(R1335F/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/E1219F/D1135V)の塩基配列:m43の塩基配列(配列番号18)に対し、4003−4005位のgccがtttに変換した塩基配列。
m65:変異型SpCas9遺伝子(R1335T/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/E1219F/D1135V)の塩基配列:m43の塩基配列(配列番号18)に対し、4003−4005位のgccがaccに変換した塩基配列。
m66:変異型SpCas9遺伝子(R1335V/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/E1219F/D1135V)の塩基配列:m43の塩基配列(配列番号18)に対し、4003−4005位のgccがgtgに変換した塩基配列。
(2)大腸菌での発現
作成したベクターを大腸菌Escherichia coli rosetta2 (DE3)株へ形質転換した。その後、20μg/mlカナマイシン及び20μg/mlクロラムフェニコールを含むLB培地で培養した。OD=0.8になるまで培養した時点で、発現誘導剤としてイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(Isopropyl β−D−1−thiogalactopyranoside:IPTG)(終濃度1mM)を添加し、37℃で4時間培養した。培養後、大腸菌を遠心(5,000g、10分)により回収した。
(3)野生型及び変異型SpCas9の精製
(2)で回収した菌体を緩衝液Aで懸濁し、超音波破砕した。遠心(25,000g,30分)により上清を回収し、緩衝液Aで平衡化したNi−NTA Superflow樹脂 (QIAGEN)と混合し、1時間穏やかに転倒混和した。素通り画分を回収した後、4カラム容量の緩衝液A、さらに2カラム容量の高塩濃度緩衝液Bで洗浄を行った。
次いで、再度2カラム容量の緩衝液Aで洗浄した後、5カラム容量の高イミダゾール濃度緩衝液Cで目的タンパク質を溶出した。
次いで、粗精製したサンプルをHiTrapSP(GE Healthcare)にチャージした。次いで、5カラム容量分の緩衝液D(0M NaCl)92.5%及び緩衝液F(2M NaCl)7.5%の混合溶液で洗浄を行った後、緩衝液Eを10%から50%へ(NaCl濃度は200mMから1Mへ)直線勾配をかけて目的タンパク質を溶出した。
緩衝液A〜Eの組成を以下に示す。
緩衝液A:20 mM Tris-HCl, pH 8.0, 300 mM NaCl, 20 mM imidazole
緩衝液B:20 mM Tris-HCl, pH 8.0, 1000 mM NaCl, 20 mM imidazole
緩衝液C:20 mM Tris-HCl, pH 8.0, 300 mM NaCl, 300 mM imidazole
緩衝液D:20 mM Tris-HCl, pH 8.0
緩衝液E:20 mM Tris-HCl, pH 8.0, 2000 mM NaCl
2.ガイドRNAの調製
目的のガイドRNA配列(ggaaauuaggugcgcuuggcguuuuagagcuagaaauagcaaguuaaaauaaggcuaguccguuaucaacuugaaaaagug;配列番号19)が挿入されたベクターの作製を行った。下線部が20塩基のガイド配列を示し、残りがscaffoldの部分(stem−loop 2)に相当する。ガイドRNA配列の上流にT7プロモーター配列を付加し、線状化したpUC119ベクター(TaKaRa)に組み込んだ。作製したベクターを元に、PCRを用いてin vitro転写反応の鋳型DNAを作製した。この鋳型DNAを用いて、37℃、4時間、T7 RNAポリメラーゼによるin vitro転写反応を行った。転写産物を含む反応液に等量のフェノールクロロホルムを加えて混合した後、20℃にて遠心(10,000g、2分)し、上清を回収した。上清に1/10量の3M 酢酸ナトリウムおよび2.5倍量の100%エタノールを添加し、4℃にて遠心(10,000g、3分)し、転写産物を沈殿させた。上清を廃棄して70%エタノールを添加し、4℃にて遠心(10,000g、3分)し再び上清を廃棄した。沈殿を風乾後、TBE緩衝液に再懸濁し、7M Urea変性10%PAGEにより精製した。目的RNAの分子量に位置するバンドを切り出し、Elutrap電気溶出システム(GE Healthcare)によりRNAを抽出した。その後、抽出したRNAをPD−10カラム(GE Healthcare)に通し、緩衝液を緩衝液H(10 mM Tris−HCl (pH 8.0)、150mM NaCl)に交換した。
3.プラスミドDNA切断活性測定試験
DNA切断活性測定試験に用いるために、標的DNA配列およびPAM配列が挿入されたベクターの作製を行った。標的DNA配列にPAM配列1〜4をそれぞれ付加し、線状化したpUC119ベクターに組み込んだ。標的配列およびPAM配列1〜4を表1に示す。
作製したベクターを用いて、大腸菌Mach1株(Life Technologies)を形質転換し、20μg/mLアンピシリンを含むLB培地で37℃にて培養した。
培養後、菌体を遠心(8,000g、1分)により回収し、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを精製した。
精製したPAM配列が付加した標的プラスミドDNAを用いて切断実験を行った。プラスミドDNAは、制限酵素により1本に線状化した。この線状化DNA中の標的DNA配列を野生型、又は変異型のSpCas9が切断すると、約1,000bpと約2,000bpの切断産物ができる。切断の際のバッファーとしては下記の組成のcleavage buffer Bを用いた。
B(×10)の組成
200 mM HEPES 7.5
1000 mM KCl
50% glycerol
10 mM DTT
5 mM EDTA
20 mM MgCl2
反応後のサンプルについて、1%濃度のアガロースゲルを用いて電気泳動を行い、切断産物のバンドを確認した。結果を図1A〜Dに示す。図中、「Substrate」とは基質を示し、「Product」とは切断産物を示す。PAM配列及び反応条件を図中に示す。
野生型SpCas9では、PAM配列の三番目の塩基がGの場合のみ認識し、標的プラスミドDNAが切断されたのに対し、変異型SpCas9では、三番目の塩基がG以外のPAM配列も認識し、標的プラスミドDNAを切断することができた。
よって、野生型のSpCas9ではPAM配列「NGG」を認識するのに対し、変異型のSpCas9ではPAM配列「NG」を認識することが確かめられた。
以上から、変異型のSpCas9ではPAM配列が広範化されており、簡便且つ迅速に標的配列に対し部位特異的な標的二本鎖ポリヌクレオチドの切断を行えることが明らかとなった。
実施例2
実施例1で調製した変異型SpCas9(m43)を用いて、実施例1と同様にしてプラスミドDNA切断活性測定試験を行った。結果を図2に示す。
野生型SpCas9では、PAM配列の三番目の塩基がGの場合のみ認識し、標的プラスミドDNAが切断されたのに対し、変異型SpCas9では、三番目の塩基がG以外のPAM配列も認識し、標的プラスミドDNAを切断することができた。
よって、野生型のSpCas9ではPAM配列「NGG」を認識するのに対し、変異型のSpCas9ではPAM配列「NG」を認識することが確かめられた。
実施例3
実施例1で調製した変異型SpCas9(m43、m61〜m66)を用いて、実施例1と同様にしてプラスミドDNA切断活性測定試験を行った。尚、切断産物の検出には、MultiNAキャピラリー電気泳動装置(島津製作所)を用いた。PAM配列としては、PAM配列4である5’−TGC−3’を用いた。切断実験は0.5分(0.5m)及び2分(2m)で行った。結果を図3に示す。m61、m63、m65及びm66に優れたDNA切断活性が確認された。
実施例4
実施例1で調製した変異型SpCas9(m43、m61、m63及びm66)を用いて、実施例1と同様にしてプラスミドDNA切断活性測定試験を行った。切断実験は0.5分(0.5m)及び2分(2m)で行った。結果を図4に示す。
野生型SpCas9では、PAM配列の三番目の塩基がGの場合のみ認識し、標的プラスミドDNAが切断されるのに対し、変異型SpCas9では、三番目の塩基がG以外のPAM配列も認識し、標的プラスミドDNAを切断することができた。m61、m63及びm66、特にm63とm66はm43では効率の低かったTGA及びTGCのPAM配列を用いた場合でも高い効率でDNAを切断できることが確認された。
実施例5
実施例1で調製した野生型SpCas9及び変異型SpCas9(WT、m43)及び実施例1と同様にして調製した下記の変異型SpCas9を用いて実施例1と同様にしてプラスミドDNA切断活性測定試験を行った。切断実験は、経時的(0、0.5、1、2、5分)に行った。結果を図5に示す。m43においてWTに匹敵する切断活性の立ち上がりが確認された。
変異型SpCas9遺伝子(R1335A/G1218R/T1337R/L1111R/A1322R/D1135V)の塩基配列:m25の塩基配列(配列番号12)に対し、3403−3405位のgacがgttに変換した塩基配列。
本発明によれば、標的二本鎖ポリヌクレオチドへの結合力を保ち、さらにエンドヌクレアーゼ活性を保ちながら、PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質を得ることができる。また、前記Cas9タンパク質を利用した簡便且つ迅速で標的配列に部位特異的なゲノム編集技術を提供することができる。
本出願は、日本で出願された特願2017−108556(出願日:2017年5月31日)を基礎としておりその内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (10)

  1. 配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1335位、1219位1322位1111位、1135位、1218位及び1337位に変異を有するアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAとの結合能を有するタンパク質であって、
    1335位の変異がアルギニンのバンへの置換であり;
    1219位の変異がグルタミン酸のフェニルアラニンへの置換であり;
    1322位の変異がアラニンのアルギニンへの置換であり;
    1111位の変異がロイシンのアルギニンへの置換であり;
    1135位の変異がアスパラギン酸のバリンへの置換であり;
    1218位の変異がグリシンのアルギニンへの置換であり;
    1337位の変異がスレオニンのアルギニンへの置換である、
    タンパク質。
  2. RNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する、請求項1に記載のタンパク質。
  3. さらに、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、ヌクレアーゼ活性を一部あるいは全部を欠失する変異を有する、請求項1に記載のタンパク質。
  4. ヌクレアーゼ活性を一部あるいは全部欠失する変異が、配列番号1で表されるアミノ酸配列における、(i)10位、762位、839位、983位及び986位からなる群より選択される少なくとも1つの位置又はそれに相当する位置、及び/又は(ii)840位及び863位からなる群より選択される位置又はそれに相当する位置における変異である、請求項に記載のタンパク質。
  5. 10位のアスパラギン酸がアラニン又はアスパラギンに置換し;又は
    840位のヒスチジンがアラニン、アスパラギン又はチロシンに置換している、請求項に記載のタンパク質。
  6. 転写制御因子タンパク質又はドメインを連結した、請求項のいずれか1項に記載のタンパク質。
  7. 転写制御因子が転写活性化因子である、請求項記載のタンパク質。
  8. 転写制御因子が転写サイレンサー又は転写抑制因子である、請求項記載のタンパク質。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする核酸。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載のタンパク質と、標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM(Proto-spacer Adjacent Motif)配列の1塩基上流から20塩基以上24塩基以下上流までの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むガイドRNAと、を備えるタンパク質−RNA複合体。
JP2019521316A 2017-05-31 2018-05-31 改変されたCas9タンパク質及びその用途 Active JP6628385B6 (ja)

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