JP6624737B2 - 強磁場計測および磁場値測定用磁気力顕微鏡用探針、ならびに、強磁場発生試料の磁場観察方法および装置 - Google Patents

強磁場計測および磁場値測定用磁気力顕微鏡用探針、ならびに、強磁場発生試料の磁場観察方法および装置 Download PDF

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Description

本発明は、磁気力顕微鏡に用いるための探針に関する。また本発明は、強い直流磁場を発生する磁性体試料(例えば永久磁石等。)の表面磁場を観察する方法および装置に関する。
磁性体試料の磁気情報に対応した磁化パターン等を測定する装置として、磁気力顕微鏡(MFM)が知られている。磁気力顕微鏡は磁性探針を備えており、その磁性探針の先端を観察対象である磁性体試料に近づけ、磁性探針の磁気モーメントと磁性体試料の磁気モーメントとの間に働く磁気的相互作用を検出することにより、磁化パターン等の測定を行う。
磁気力顕微鏡の磁性探針としては、非磁性材料Siからなる探針素材上に、コバルト(Co)−クロム(Cr)基合金、ニッケル(Ni)−鉄(Fe)基合金、コバルト(Co)−白金(Pt)基合金、鉄(Fe)−白金(Pt)系規則合金や、鉄(Fe)基合金などの強磁性体の薄膜が形成されたものが一般的である(特許文献1〜3)。
本発明者らは、磁性体試料から生じる磁場を高い空間分解能で観察するために、交番磁気力顕微鏡(特許文献4、5)を開発した。これらの交番磁気力顕微鏡は、励振させているカンチレバーの先端に設けられた強磁性体探針の磁化の方向を外部からの交流磁場によって変化させ、探針磁化と磁性体試料の磁場との磁気的相互作用により生じる交番磁気力により探針振動に生じる周波数変調を検出することにより、試料表面近傍での直流磁場勾配または交流磁場勾配の観察を可能にし、高い空間分解能を実現している。
特許文献4には、直流磁場を発生する磁性体試料(例えば磁気ストレージデバイスに用いられる磁気記録媒体。)の表面近傍において高い空間分解能で磁気力を計測できる磁場観測装置として、磁性体試料より磁化反転し易い磁気モーメントを有する探針と;探針を励振させる励振機構と;探針に磁性体試料上を走査させる走査機構と、探針を周期的に磁化反転させることができ、かつ磁性体試料を磁化反転させない大きさの、カンチレバーの共振周波数と異なる非共振周波数の交流磁場を探針に印加する交流磁場発生機構と;交流磁場により周期的に磁化方向を変化させた探針の磁化と磁性体試料の磁化との間の磁気的相互作用によって探針に加えられる非共振周波数の交番力を原因として探針の見かけ上のバネ定数が変化することで発生する、探針の振動の周期的な周波数変調の程度を、周波数復調により計測することができる変調計測機構とを備え;変調計測機構は、探針の変位を検知するセンサーと、該センサーから得た周波数変調信号を復調するFM復調器とを備え、該FM復調器から得た周波数復調信号及び交流磁場発生機構の電圧信号から、磁性体試料から漏洩している直流磁場の磁場勾配を計測する、磁場観察装置が開示されている。
特許文献5には、励振したカンチレバーの先端の強磁性体よりなる探針により観察試料の表面上の走査領域を走査しつつ、カンチレバーの振動を検出し、その検出結果に基づいて操作領域の磁場分布画像を生成する磁場プロファイル測定装置であって;先端に探針が取り付けられたカンチレバーと;カンチレバーをその共振周波数ないし当該周波数に近い周波数で励振する励振器と;交流磁場を生成し探針の磁気極性を周期的に反転させることで、カンチレバーの励振振動を周波数変調または同時に振幅変調する交流磁場発生器と;探針の振動を検出する振動センサーと;振動センサーの検出信号から、探針と観察試料との間に生じる交流磁気力に対応する磁気信号を復調するとともに、復調した磁気信号を位相が90°異なる互いに直交した2つの信号成分に分離して検出するか、又は復調した磁気信号から探針の位置における磁場の振幅および位相を検出する、復調処理装置と;探針により操作領域を走査する走査機構と;交流磁場発生器の動作と同期する条件のもとに走査機構により操作領域を走査することで得られた、当該操作領域の各座標における上記互いに直交した2つの信号成分または上記磁場の振幅および位相を初期データとして記憶するデータ記憶装置と;データ記憶装置から初期データを呼び出し、当該初期データの位相を変更したデータを複数生成する変更データ生成器と;変更データ生成器により生成した操作領域の各座標におけるデータに基づく磁場分布画像を表示する画像表示装置と、を備える磁気プロファイル測定装置が開示されている。
特開2008−209276号公報 特開2004−20213号公報 特開平7−325139号公報 特許第4769918号公報 国際公開第2013/047537号パンフレット 国際公開第2014/157661号パンフレット
特許文献4及び5に記載のように交流磁場を印加して復調処理を行う磁場観測装置によれば、磁性体試料表面から発生する直流磁場を観察するにあたり、試料表面と探針との間に作用する強い引力である表面力の影響を排除し、空間分解能を高めることが可能である。その理由は、探針に作用する磁気力は交流磁場の変化に合わせて時間変化する一方で、探針に作用する表面力は交流磁場の影響を受けないからである。
特許文献4の磁場観察装置や特許文献5に記載の磁気プロファイル測定装置は、比較的弱い直流磁場(例えば磁気ストレージデバイスに用いられる磁気記録媒体の表面磁場。)を測定することを前提にした技術であり、これら従来の交番磁気力顕微鏡においては、強磁性体の中でも磁化反転の容易なソフト磁性材料を探針に用いることが一般的である。しかし、永久磁石のように強力な(例えば10kOe以上の)磁場を発生させる磁性体試料を、これら従来の磁気力顕微鏡用探針を用いた磁気力顕微鏡で観察しようとすると、次の(1)〜(3)のような問題が生じる。
(1)探針の磁性材料が大きな磁気モーメントを有するために、磁性体試料から発生する強力な直流磁場により探針が試料表面に吸着されてしまい、測定自体が困難になる。探針の磁性体膜を良好な品質で成膜できる薄さには限界があるため、探針の磁性体膜厚を調整することによってこの問題を回避することは困難である。
(2)試料からの強い表面磁場で探針磁化が飽和してしまい、探針に作用する磁気力が外部からの交流磁場により変動しなくなるので探針振動に周波数変調が生じず、そのため直流磁場勾配の計測が困難になる。
(3)信号強度が強すぎるために、A/D変換器の量子化誤差が無視できなくなり、大きな誤差(例えば約20〜30°にも及ぶ位相誤差。)を生じるようになる。この問題の一つの対策としては測定を大気中で行うことにより探針のQ値を下げることが考えられるが、これにより空間分解能が大幅に低下してしまう。もう一つの対策としては探針を試料からより離れた位置に配置することが考えられるが、そのような配置では空間分解能が大幅に低下してしまう。
本発明の第1の課題は、例えば永久磁石に代表されるような強い(例えば10kOe以上の)直流磁場を発生する磁性体試料についても、磁気力顕微鏡によって高い空間分解能で磁場勾配を観察することを可能にする、磁気力顕微鏡用探針を提供することである。
本発明の第2の課題は、例えば永久磁石に代表されるような、強い直流磁場を発生する磁性体試料の表面近傍において、高い空間分解能で磁場を観察することが可能な、磁場観察装置、および磁場観察方法を提供することである。
また、上記従来の交番磁気力顕微鏡では、観察試料の表面の磁場勾配を計測しており、磁場自体を測定することはできない。これに対し、本発明者らは、磁性体試料から生じる直流磁場の正負を含めた絶対値を測定できる磁場測定方法および磁場値測定装置を開発し、特許出願を行っている(特願2013−069762及びPCT/JP2014/59276。特許文献6として公開された。)。この装置は、外部磁場がゼロのときに磁化がゼロである性質をもつ磁性探針を観察試料から発生する直流磁場が加わっている状態で励振させ、当該探針の振動方向にゼロでない(大きな)変化率を有し且つ探針の機械振動周波数と異なる周波数の交流外部磁場を与えることにより、探針の励振振動を周波数変調させる。そして、探針先端に加わる観察試料からの直流磁場を、直流外部磁場を加えて打ち消すことで、探針振動の周波数変調を弱め、周波数変調の大きさがゼロ近傍の極小となったときの直流外部磁場を測定する。このときの直流外部磁場と逆の極性を有する直流磁場が、観察試料から発生する直流磁場である。尚、この測定方法および測定装置に用いる探針は、測定に用いられる範囲において磁場がゼロのときに磁化がゼロであるとともに、磁化の強さが磁場の大きさに比例する磁気特性を有することが好ましい。
本発明の第3の課題は、そのような強い直流磁場を発生する磁性体試料についても、磁性体試料から生じる直流磁場の正負を含めた絶対値を測定することを可能にする、磁気力顕微鏡用探針を提供することである。
本発明は、下記[1]〜[22]の形態を包含する。
[1]少なくとも1種の磁性材料を備え、
室温において、より具体的には少なくとも10〜30℃の温度域にわたって、磁場が印加されたときに磁化が飽和せず、
(a) 磁性材料が、1種以上の強磁性元素と1種以上の非磁性元素との固溶体である;
(b) 磁性材料が、1種以上の強磁性元素と1種以上の非磁性元素とを含む非晶質の磁性材料である;又は
(c) 磁性材料が、1種以上の強磁性体粒子と1種以上の非磁性材料とを含み、強磁性体粒子が非磁性材料中に分散されて支持されている構造を有する磁性材料である
ことを特徴とする、磁気力顕微鏡用探針。
本明細書において、磁性探針について「磁化が飽和しない(磁気飽和がない)」ことは、20kOeの外部磁場を印加したときに磁化が飽和しないことを基準として判断するものとする。
本明細書において、ある材料が「超常磁性体」または「超常磁性材料」であるとは、当該材料が超常磁性を示すことを意味する。ある材料が「超常磁性を示す」とは、当該材料に含まれる自発磁化を有する強磁性体(本発明において「強磁性体」はフェリ磁性体を包含する概念とする。)の粒子が、隣接する粒子との磁気的相互作用が弱い状態にあって且つ粒子サイズが小さいことにより、熱エネルギーの影響で個々の粒子の磁化の向きがランダムに変化し、磁場を印加しない状態で材料全体の磁化が平均してゼロとなることを意味する。
[2]磁場が印加されていない条件下では室温において、より具体的には少なくとも10〜30℃の温度域にわたって、残留磁化を有しないことを特徴とする、[1]に記載の磁気力顕微鏡用探針。
[3]上記磁性材料の初磁化率が、室温において、より具体的には少なくとも10〜30℃の温度域にわたって、3×10−8H/m以上である、[1]又は[2]に記載の磁気力顕微鏡用探針。
[4]上記(a)又は(b)の要件を満たし、上記強磁性元素が、Ni、Fe、及びCoからなる群から選ばれる1種以上の強磁性元素であり、上記非磁性元素が、Ti、V,Cr,Mn,Cu、Zn、Zr、Nb,Mo、Ta、W、B、Al、C、O、N、及びSiからなる群から選ばれる1種以上の非磁性元素であり、好ましくは非磁性元素としてCr、Mn、及びMoから選ばれる1種以上の元素を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
[5]上記(a)又は(b)の要件を満たし、上記磁性材料は常磁性または超常磁性を示す、[1]〜[4]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
[6]上記(c)の要件を満たし、上記磁性材料の全量に対して、強磁性体粒子の含有量が10〜45体積%、好ましくは15〜40体積%であり、非磁性材料の含有量が55〜90体積%、好ましくは60〜85体積%である、[1]〜[3]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
[7]上記(c)の要件を満たし、強磁性体粒子の画像解析法による球換算直径の平均値が30nm以下、好ましくは5〜10nmである、[1]〜[3]及び[6]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
ここで、強磁性体粒子の画像解析法による球換算直径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、2次電子検出により倍率10万〜20万倍で磁性材料の表面を観察したときに、強磁性体粒子がSEM画像中に占める面積と等しい面積を有する円の直径を意味するものとする。そしてその平均値とは、同一の磁性材料試料の100個以上の強磁性体粒子について、上記球換算直径の算術平均をとった値を意味するものとする。
[8]上記(c)の要件を満たし、強磁性体粒子が、Ni、Fe、及びCoからなる群から選ばれる1種以上の強磁性元素の粒子であり、非磁性材料が、Au、Ag、Cu、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化タンタル、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化ルテニウム、希土類元素の酸化物、及び炭素からなる群から選ばれる1種以上の非磁性材料である、[1]〜[3]、[6]及び[7]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
[9]上記(c)の要件を満たし、上記磁性材料が超常磁性を示す、[1]〜[3]及び[6]〜[8]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
[10]上記(c)の要件を満たし、磁化率が、25〜200℃の温度範囲において実質的に温度依存性を有しない、[1]〜[3]及び[6]〜[9]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
ここで、磁化率が「25〜200℃の温度範囲において実質的に温度依存性を有しない」ことは、25℃、50℃、100℃、150℃、200℃の計5つの温度条件のそれぞれにおいて、当該磁性材料の初磁化率を測定したときに、それら5つの測定値のばらつきが、当該5つの測定値の算術平均値に対して±10%以内であることを意味するものとする。
[11]上記(c)の要件を満たし、磁性材料の初磁化率が、室温の条件下において、具体的には少なくとも10〜30℃の温度域にわたって、2×10−7H/m以上、好ましくは1×10−6H/m以上である、[1]〜[3]及び[6]〜[10]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
[12]1種以上の非磁性体からなる芯部材と、芯部材の表面の少なくとも一部を被覆する上記磁性材料の被膜とを有する、[1]〜[11]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
[13]磁性体試料から漏洩する直流磁場を観察する磁場観察装置であって、磁気飽和がなく印加磁場方向に磁気モーメントが発生する磁性探針を一方の端部に有するカンチレバーと;カンチレバーを励振させる励振器と;磁性体試料を磁化反転させない大きさの交流磁場を探針に印加し、探針の磁化を周期的に変動させることにより、カンチレバーの励振振動を周波数変調させる、交流磁場発生器と;探針の振動を検出する振動センサーと;振動センサーの検出信号から、探針と観察試料との間に生じる磁気力の交流成分に対応する信号を復調する、復調器と;復調器から得た復調信号および交流磁場発生器の電圧信号から、直流磁場の情報を得る、復調信号処理装置と;探針に磁性体試料表面上の走査領域を走査させる走査機構と、を備え、上記磁性探針は、[1]〜[12]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針であることを特徴とする、強磁場発生試料の磁場観察装置。
ここで本明細書において、磁性探針に「磁気飽和がない」ことは、20kOeの外部磁場を印加したときに磁化が飽和しないことを基準として判断するものとする。
[14]復調器は、
(A)振動センサーの検出信号を周波数復調するか、又は、
(B)振動センサーの検出信号に含まれる側帯波スペクトルの強度を計測する、
[13]に記載の磁場観察装置。
[15]復調信号処理装置は、
(X)復調器から得た復調信号の振幅、及び、復調信号と交流磁場発生器の電流信号または電圧信号との位相差を計測するか;又は、
(Y)復調器から得た復調信号の、交流磁場発生器の電流信号に対する同相成分および直交成分を計測する、
[13]又は[14]に記載の磁場観察装置。
[16]交流磁場発生機構が、直流磁場の測定すべき成分の方向と同一方向に、交流磁場を印加する、[13]〜[15]のいずれかに記載の磁場観察装置。
[17]磁性体試料が永久磁石である、[13]〜[16]のいずれかに記載の磁場観察装置。
[18]走査機構により走査領域を走査することで得られた、走査領域の各座標における直流磁場の情報に基づく磁場分布画像を表示する画像表示装置をさらに有する、[13]〜[17]のいずれかに記載の磁場観察装置。
[19]磁性体試料から漏洩する直流磁場を観察する磁場観察方法であって、磁気飽和がなく印加磁場方向に磁気モーメントが発生する磁性探針を一方の端部に有するカンチレバーを励振させる工程と;磁性体試料を磁化反転させない大きさの交流磁場を探針に印加し、探針の磁化を周期的に変動させることにより、カンチレバーの励振振動を周波数変調させる工程と;探針の振動を検出し、その検出信号から、探針と観察試料との間に生じる磁気力の交流成分に対応する信号を復調する工程と;該復調された信号および交流磁場発生器の電圧信号から、直流磁場の情報を得る工程と;探針に磁性体試料表面上の走査領域を走査させる工程とを含み、磁性探針は、[1]〜[12]のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針であることを特徴とする、強磁場発生試料の磁場観察方法。
[20]交流磁場を、前記直流磁場の測定すべき成分の方向と同一方向に印加する、[19]に記載の磁場観察方法。
[21]磁性体試料が永久磁石である、[19]又は[20]に記載の磁場観察方法。
[20]走査機構により走査領域を走査することで得られた、走査領域の各座標における直流磁場の情報に基づく磁場分布画像を画像表示装置に表示する工程をさらに有する、[19]〜[21]のいずれかに記載の磁場観察方法。
本発明の磁気力顕微鏡用探針を磁気力顕微鏡に用いることにより、例えば永久磁石に代表されるような強い直流磁場を発生する磁性体試料についても、磁気力顕微鏡によって高い空間分解能で磁場を観察することが可能になる。
本発明の磁場観察装置および磁場観察方法によれば、例えば永久磁石に代表されるような、強い直流磁場を発生する磁性体試料の表面近傍において、高い空間分解能で磁場を観察することが可能である。また、磁性体試料表面の磁極の極性検出も可能である。
本発明の一の実施形態に係る磁気力顕微鏡用探針の構成を模式的に説明する図である。 図1のA−A矢視図である。 本発明の一の実施形態に係る磁気力顕微鏡用探針を製造する方法を説明するフローチャートである。 磁性被膜の成膜に用いるスパッタリング装置の構成を模式的に説明する図である。 本発明の一の実施形態に係る磁場観察装置の構成を模式的に説明する図である。 本発明の磁場観察装置による計測原理を説明するための図である。 実施例1において成膜されたFe−Mn系固溶体型常磁性薄膜の磁気特性評価の結果を示すグラフである。 実施例2において成膜されたFe−Mo−B系非晶質型常磁性薄膜の磁気特性評価の結果を示すグラフ群である。 実施例3において成膜されたCo−Ag系グラニュラー型超常磁性薄膜の初磁化率評価の結果を示すグラフである。 実施例3において成膜されたCo−Ag系グラニュラー型超常磁性薄膜のうち、Ag79Co21薄膜(成膜速度0.80nm/sec)の磁化曲線と、Ag85Co15薄膜(成膜速度0.20nm/sec)の磁化曲線とを比較する図である。 実施例3において成膜されたCo−Ag系グラニュラー型超常磁性薄膜のうち、Ag79Co21薄膜(成膜速度0.80nm/sec)の初磁化率の温度依存性と、Ag83Co17薄膜(成膜速度0.54nm/sec)の初磁化率の温度依存性とを比較するグラフ群である。 実施例4における、永久磁石の表面近傍での観察結果を示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。図では、符号を一部省略することがある。本明細書において、数値A及びBについて「A〜B」は、特に別途規定されない限り、「A以上B以下」を意味する。該表記において数値Aの単位を省略する場合には、数値Bに付された単位が数値Aの単位として適用されるものとする。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。
<1.磁気力顕微鏡用探針>
図1は、本発明の一の実施形態に係る磁気力顕微鏡用探針100(以下において「探針100」と略記することがある。)を模式的に説明する図であり、図2は、図1のA−A矢視図である。図1及び図2に示すように、磁気力顕微鏡用探針100は、非磁性体からなる三角錐形状の芯部材10と、該芯部材10の表面の少なくとも一部を被覆する磁性材料の被膜30(以下において「磁性被膜30」と略記することがある。)とを有する。磁気力顕微鏡用探針100は、三角錐形状の芯部材の底面がカンチレバー20の一方の端部に固定されていることにより、カンチレバー20の一方の端部に立設されている。なお図1に示すように、磁性材料の被膜30は、芯部材10の表面だけでなく、カンチレバー20の表面も被覆していてもよい。
探針100は、芯部材10の表面が磁性被膜30で被覆されていることにより、少なくとも1種の磁性材料を備えている。探針100は、室温において、より具体的には少なくとも10〜30℃の温度域にわたって、磁場が印加されたときに、磁化が飽和しないという特徴を有する。そのため、探針100を交番磁気力顕微鏡に用いることにより、永久磁石等の強磁場発生試料を観察する場合であっても、試料からの強い表面磁場による探針磁化の飽和が起きないので、交流磁場の印加により探針振動に周波数変調を生じさせることができる。したがって、交番磁気力顕微鏡による高い空間分解能での磁場観察が可能となる。
好ましくは、探針100は、消磁後か着磁後かに関わらず、磁場が印加されていない条件下では室温において、より具体的には少なくとも10〜30℃の温度域にわたって磁化を有しない。磁場が印加されていない条件下で残留磁化を有しない(よってヒステリシスも有しない)探針100によれば、交番磁気力顕微鏡を用いて直流磁場勾配を計測するにあたり、高精度の計測が可能になる。
(芯部材10)
芯部材10は、非磁性体からなり、探針100の概形を定める部材であって、表面に磁性被膜30を保持する役割を果たす。芯部材10の一方の端部は、カンチレバー20の一方の端部に立設されており、芯部材10の他方の端部は、先端に向かうにしたがって尖るように成形されている。芯部材10を構成する非磁性体としては、探針100の形状を維持するために必要な強度を有する非磁性体を特に制限なく採用可能であり、例えばSi、Si−N、Si−O等を好ましく用いることができる。
なお図1、2に示している探針100において、芯部材10は三角錐形状を有しているが、芯部材10の形状は三角錐形状に限定されるものではない。磁気力顕微鏡による磁場観察に必要な空間分解能および必要な強度を確保できる限りにおいて、その形状は適宜選択することができる。ただし、磁場観察の空間分解能を高める観点からは、その形状はとがった先端部を有することが好ましく、カンチレバー20に固定される側の端部は、カンチレバー20との固定を容易にするためにある程度の大きさを有することが好ましい。このような事情を考慮すると、三角錐形状、四角錐形状、円錐形状等の錐形状を好ましく採用することができる。
(磁性被膜30)
磁性被膜30を構成する磁性材料は、常磁性体、及び超常磁性体からなる群から選ばれる1種以上の磁性材料とすることができる。これら強磁性体以外の磁性材料の磁気モーメントは強磁性体より遥かに小さいので、これらの磁性材料によって磁性被膜30を構成することにより、磁気力顕微鏡を用いて永久磁石等の強磁場発生試料の磁場を観察する場合であっても、磁性体試料からの磁場によって探針100に誘起される磁気モーメントと磁性体試料の磁気モーメントとの磁気的相互作用により探針100に作用する磁気力によって探針100が磁性体試料に磁気吸着される事態を防止することができる。磁性被膜30の膜厚は、磁気力顕微鏡における測定感度(磁性被膜30が厚いほど感度は向上する)と、空間分解能(磁性被膜30が厚いほど探針100の先端が鈍い形状になり空間分解能は低下する)とのトレードオフを考慮して、適宜決定することができる。なお磁性被膜30を構成する磁性材料の初磁化率は、室温において、より具体的には少なくとも10〜30℃の温度域にわたって、3×10−8H/m以上であることが好ましい。
常磁性体はキュリー温度付近で最も大きな磁化率を示す(ホプキンソン効果)。したがって、磁性被膜30を構成する磁性材料として好ましく使用可能な常磁性体としては、常磁性体のキュリー温度を調整することで磁化率を高めて磁気力顕微鏡の測定感度を高めることが可能である点で、1種以上の強磁性元素と1種以上の非磁性元素とを含んでなる磁性材料を好ましく用いることができる。具体的には、(a)1種以上の強磁性元素と1種以上の非磁性元素とが固溶体を形成したもの(以下において「固溶体型常磁性材料」ということがある。)、及び、(b)1種以上の強磁性元素と1種以上の非磁性元素とが非晶質構造を形成したもの(以下において「非晶質型常磁性材料」ということがある。)を好ましく採用できる。これらの多成分系の常磁性体においては、強磁性元素が、Ni、Fe、及びCoからなる群から選ばれる1種以上の強磁性元素であり、非磁性元素が、Ti、V,Cr,Mn,Cu、Zn、Zr、Nb,Mo、Ta、W、B、Al、C、O、N、及びSiからなる群から選ばれる1種以上の非磁性元素であることが好ましい。なお、少ない量の非磁性元素でキュリー温度を下げる観点からは、Cr、Mn、Moから選ばれる1種以上の元素を上記非磁性元素として含むことがより好ましい。
上記(a)固溶体型常磁性材料は、当該固溶体型常磁性材料の全量に対する強磁性元素の全含有量が50〜70原子%、非磁性元素の全含有量が30〜50原子%である組成を有することが好ましい。
上記(b)非晶質型常磁性材料は、当該非晶質型常磁性材料の全量に対する強磁性元素の全含有量が70〜90原子%、非磁性元素の全含有量が10〜30原子%である組成を有することが好ましい。
上記(a)固溶体型常磁性材料の具体例としては、Ni−Cr固溶体(例えばNi93Cr(25℃において初磁化率4.7×10−8H/m))、Fe−Cr固溶体(例えばFe59Cr41(25℃において初磁化率6.0×10−8H/m))、Fe−Mn固溶体(例えばFe67Mn33(25℃において初磁化率1.2×10−7H/m))等を好ましく挙げることができる。
上記(b)非晶質型常磁性材料の具体例としては、Fe−Mo−B非晶質材料(例えばFe86Mo7.56.5(25℃において初磁化率1.4×10−7H/m))等を好ましく挙げることができる。
これらの多成分系の常磁性体で磁性被膜30を作製するにあたっては、例えば、各成分を同時スパッタリングにより芯部材10の表面に堆積させる方法を好ましく採用できる。その際、芯部材10の表面に堆積される磁性被膜30の組成は、各成分のスパッタリングターゲットに印加する電力量やスパッタリングターゲットに貼り付ける薄膜素材シートの量によって調整することができる。
磁性被膜30に使用可能な磁性材料であって超常磁性を示すものとしては、(c)1種以上の強磁性体粒子と1種以上の非磁性材料とを含み、強磁性体粒子が非磁性材料中に分散されて支持されている構造を有する磁性材料(以下において「グラニュラー型超常磁性材料」ということがある。)を好ましく例示できる。グラニュラー型超常磁性材料においては、微細な強磁性体粒子が非磁性マトリックス中に分散して磁気的に孤立した状態で存在し、強磁性体粒子の磁気エネルギーが熱エネルギーに対してある閾値以下になることにより、強磁性体粒子の磁気モーメントが熱の影響によりランダムにその方向を変化させることによって超常磁性が発現する。
磁性被膜30にグラニュラー型超常磁性材料を用いる場合、磁性材料の全量に対して、強磁性体粒子の含有量が10〜45体積%、非磁性材料の含有量が55〜90体積%であることが好ましい。強磁性体粒子の含有量を上記範囲内とすることにより、強磁性体粒子どうしの接触を抑制できるので、強磁性体粒子の磁気的な孤立状態を実現することが容易になる。同様の観点から、強磁性体粒子の含有量が15〜40体積%、非磁性材料の含有量が60〜85体積%であることがより好ましい。
そして強磁性体粒子の磁気エネルギーを減少させ、熱エネルギーによる磁気モーメントのランダム化を容易にする観点から、グラニュラー型超常磁性材料における強磁性材料粒子の粒子サイズは、画像解析法による球換算直径の平均値として、好ましくは30nm以下であり、より好ましくは5〜10nmである。強磁性材料の粒子サイズには材料固有の臨界粒径があり、強磁性材料の粒子サイズがこの臨界粒径以上になると強磁性材料粒子は超常磁性状態から強磁性状態に変化し磁気ヒステリシスを示すようになるので、強磁性材料粒子のサイズは当該材料の臨界粒径以下とすることが好ましい。例えば強磁性材料として面心立方構造(fcc)のコバルト(Co)を用いる場合には、コバルト粒子の粒子サイズは30nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。ここで、強磁性体粒子の画像解析法による球換算直径とは、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、2次電子検出により倍率10万〜20万倍で磁性材料の表面を観察したときに、強磁性体粒子がSEM画像中に占める面積と等しい面積を有する円の直径を意味するものとする。そしてその平均値とは、同一の磁性材料試料の100個以上の強磁性体粒子について、上記球換算直径の算術平均をとった値を意味するものとする。
(c)グラニュラー型超常磁性材料の構成材料としては、強磁性金属と非磁性金属とからなる非固溶金属の組み合わせや、強磁性金属と非磁性非金属材料との組み合わせを例示できる。
グラニュラー型超常磁性材料において、強磁性体粒子としては、Ni、Fe、及びCoからなる群から選ばれる1種以上の強磁性元素の粒子を好ましく採用でき、非磁性材料としては、Au、Ag、Cu、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化タンタル、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化ルテニウム、希土類元素の酸化物、及び炭素からなる群から選ばれる1種以上の非磁性材料を好ましく採用できる。希土類元素の酸化物としては、例えば酸化ガドリニウム、酸化テルビウム等を好ましく採用できる。
非固溶金属の組み合わせによるグラニュラー型超常磁性材料としては、例えばCu、Ag、及びAuからなる群から選ばれる1種以上の非磁性金属のマトリクス中に強磁性金属であるCoの粒子が分散された材料を挙げることができる。
強磁性金属と非磁性非金属材料との組み合わせによる超常磁性材料としては、例えば、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化タンタル、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化ルテニウム、希土類元素の酸化物、及び炭素からなる群から選ばれる1種以上の非磁性非金属材料のマトリクス中に、Fe、Co、及びNiからなる群から選ばれる1種以上の強磁性金属の粒子が分散された材料を挙げることができる。希土類元素の酸化物としては、例えば酸化ガドリニウム、酸化テルビウム等を好ましく採用できる。
グラニュラー型超常磁性材料の被膜は、後述するように、例えば非磁性材料と強磁性材料とを通常よりも高い成膜速度(例えばAg−Coの場合には0.2〜1.0nm/sec等。)で同時スパッタリング(co-sputtering)することにより作製することができる。成膜速度を高めることにより材料が急冷されるので、分散される強磁性材料粒子のサイズを小さくすることができる。
グラニュラー型超常磁性材料によれば、常磁性体では得られない高い磁化率を実現することが可能である。例えば、グラニュラー型超常磁性材料の室温における初磁化率は好ましくは2×10−7H/m以上であり、1×10−6H/m以上とすることも可能である。したがって磁性被膜30にグラニュラー型超常磁性材料を用いる形態の探針100によれば、同じ膜厚でも磁気力顕微鏡の測定感度を高めることが可能になる。また同程度の測定感度をより薄い膜厚で得ることができるので、探針100の先端部をより先鋭化することができ、したがって磁気力顕微鏡による磁場測定の空間分解能を高めることが可能になる。
さらに、磁性被膜30にグラニュラー型超常磁性材料を用いる形態によれば、磁気特性の温度安定性を高めた探針100とすることが可能になる。例えば磁化率が常温25℃から200℃までの範囲で温度依存性を有しない探針100とすることも可能である。例えば永久磁石の磁区構造評価においては温度変化の測定が重要であるが、永久磁石材料の観察に通常用いられるハード磁性材料の保磁力等のハード磁気特性の温度依存性は大きいため、ハード磁性探針を用いて永久磁石の磁区構造の温度依存性を測定しようとしても、探針のハード磁気特性も変化してしまい、磁区構造の温度依存性を定量的に評価することは困難であった。磁性被膜30にグラニュラー型超常磁性材料を用いた探針100は、初磁化率等の磁気特性の温度安定性が高められているので、例えば永久磁石の磁区構造観察のように磁性体試料の温度依存性を評価する場合であっても、精度の高い評価結果を得ることが可能になる。
(磁気力顕微鏡用探針100の製造)
磁気力顕微鏡用探針100を製造する方法について説明する。以下においては、磁性被膜30にグラニュラー型超常磁性材料を用いる形態の探針100を製造する形態を主に例示するが、本発明が当該形態に限定されることを意図するものではない。
図3は、探針100の製造方法S10(以下において単に「製造方法S10」と略記することがある。)を説明するフローチャートである。図3に示すように、製造方法S10は、カンチレバー20の一方の端部に固定された芯部材10を準備する工程S1(以下において単に「工程S1」と略記することがある。)と、芯部材10の露出表面に磁性被膜30を形成する工程S2(以下において単に「工程S2」と略記することがある。)とを上記順に有する。
(工程S1)
工程S1において、非磁性材料であるSiからなる芯部材10が準備される。芯部材10は、探針100に望まれる形状を有するように加工されている。芯部材10は、具体的には例えば、Si単結晶ウェハーに異方性エッチングを行うことにより製造することができる。芯部材10は、カンチレバー20の一方の端部に固定されている。芯部材10のカンチレバー20への固定は、公知の手法によって行うことができる。これ以後、芯部材10及びカンチレバー20は、後の工程において一体として扱われる。
なお、芯部材10を構成するSiとしては、導電性を確保するために不純物ドープされたSiを用いてもよい。
(工程S2)
工程S2は、同時スパッタリングにより芯部材10の露出表面に磁性被膜30を形成する工程である。図4は、工程S2において用いるスパッタリング装置200を説明する図である。スパッタリング装置200は、密閉されたチャンバ41(マグネトロンスパッタ装置用のチャンバ。以下において「チャンバ41」と略記することがある。)を有している。そしてチャンバ41内には、回転駆動軸43を介して回転可能に配設され、芯部材10を回転可能に保持する回転保持台42と、強磁性元素ターゲット44(例えばCoターゲット。以下において「ターゲット44」と略記することがある。)と、非磁性元素ターゲット45(例えばAgターゲット。以下において「ターゲット45」と略記することがある。)とが配設されている。チャンバ41内部には、芯部材10に対するスパッタリングが可能であるように、真空引きされた状態でアルゴンガスが供給される。各ターゲット44、45と芯部材10との間隔は70mm〜120mmまで変化させることができる。
強磁性元素ターゲット44は、スパッタリング用のDC電源に接続されている。非磁性元素45は、スパッタリング用の高周波(例えばRF)電源に接続されている。
非磁性元素ターゲット45用の高周波電源の周波数は、例えば13.56MHz等とすることができる。スパッタリングのための高速のアルゴンイオンが各ターゲット44、45に向かうように、各ターゲット44、45には大電力が印加されている。そして、各ターゲット44、45(直径は例えば75mm等とすることができる。)に対する印加電力を変更する(例えば50W〜250W等。)ことにより、スパッタリングにより形成される磁性被膜30の組成を調整できるようになっている。
カンチレバー20と一体化された芯部材10が、回転保持台42に保持される。回転保持台42は、成膜中は例えば10rpmの速度で回転される。また回転保持台42は、上下に移動させることができ、回転保持台42と非磁性元素ターゲット45との間の距離を、70mmから120mmまで変化させることが可能である。
次に、室温下でもって、同時スパッタリングにより磁性被膜30が形成される。すなわち、スパッタリングターゲットとして、強磁性元素ターゲット44と非磁性元素ターゲット45との両方を用いて、両元素を同時にスパッタリング成膜する。成膜される磁性被膜30中では、非磁性元素(例えばAg)が強磁性元素(例えばCo)に固溶することなく、強磁性元素(例えばCo)の磁性結晶粒子が非磁性元素(例えばAg)の非磁性粒界領域中に分散して孤立した状態で存在する(グラニュラー構造化)。非磁性物質を含む磁性被膜30の厚さは、例えば10〜100nm等とすることができる。例えば強磁性元素ターゲット44としてCoターゲット、非磁性元素ターゲット45としてAgターゲットを用い、成膜厚さが100nmである場合には、成膜の所要時間は約3〜5分である。工程S1及び工程S2を経ることにより、磁気力顕微鏡用探針100が製造される。
磁気力顕微鏡用探針100の製造方法に関する上記説明では、強磁性元素と非磁性元素とを同時スパッタリングすることにより磁性被膜30を形成する形態の製造プロセスを例示したが、本発明の磁気力顕微鏡用探針の製造方法は当該形態に限定されるものではない。
例えば、非磁性元素(例えばAg)のスパッタリング成膜と強磁性元素(例えばCo)のスパッタリング成膜とを交互に行うことにより、最終的に非磁性物質を含む磁性被膜30を形成することも可能である。ただし、強磁性元素(例えばCo)の磁性結晶粒子が非磁性元素(例えばAg)の非磁性粒界領域中に分散して孤立した状態で存在する状態を実現することが容易である点からは、上記のような同時スパッタリングにより磁性被膜を成膜する形態を好ましく採用できる。
<2.磁場観察装置>
図5は、本発明の一の実施形態に係る磁場観察装置1000を模式的に説明する図である。磁場観察装置1000は、磁性体試料1から漏洩する直流磁場を観察する装置である。
図5に示すように、磁場観察装置1000は、探針100、励振器200、交流磁場発生器300、振動センサー400、復調器430、復調信号処理装置440、探針100と磁性体試料1との相対的な位置関係を変更して探針100に磁性体試料1の観察面上を走査させる走査機構500、及び、画像表示装置600を備えている。以下に、これらの構成要素について説明する。
(磁性体試料1)
磁場観察装置1000の計測対象である磁性体試料1は、強い直流磁場を発生する試料である。磁性体試料1の具体例としては、永久磁石を挙げることができる。
(探針100)
探針100は、磁気飽和がなく印加磁場方向に磁気モーメントが発生する磁性探針であって、カンチレバー11の一方の端部に備えられている。探針100は、上記説明した本発明の磁気力顕微鏡用探針100である。探針100は、磁性体試料1上に配置されることによって、磁性体試料1から漏洩する直流磁場の影響を受ける。また、後に詳述するように、交流磁場発生器300から発生する交流磁場によって、探針100の磁化の大きさは周期的に交流磁場方向に変動させられる。このとき、探針100の磁化と磁性体試料1から漏洩する直流磁場との間の磁気的相互作用により探針100に作用する磁気力は交流成分を有する。すなわち、探針100に作用する磁気力の強度が周期的に変動する。そのためカンチレバー110の見かけ上のバネ定数が周期的に変動し、その結果カンチレバー110の励振振動(すなわち探針100の振動)が周波数変調される。探針100の振動の周期的な周波数変調の程度を、後に説明する復調器430および復調信号処理装置440によって計測する。
上記の通り、探針100は磁気飽和がなく印加磁場方向に磁気モーメントが発生する磁性探針である。磁気飽和がある強磁性体やフェリ磁性体の探針を用いた場合には、磁性体試料1から漏洩している強力な直流磁場により探針の磁化が飽和してしまい、交流磁場を印加しても探針の磁化を変動させることができないので、カンチレバーの励振振動に周波数変調を起こすことができない。
なお、磁気飽和がなく印加磁場方向に磁気モーメントが発生する磁性材料が探針100に含まれ、かつ、探針100が磁性体試料1に吸着されることによる測定不能の問題が起きない限りにおいて、探針は強磁性体(すなわち磁気飽和のある材料)を含んでいてもよい。強磁性体の磁化が磁性体試料1からの直流磁場によって飽和しても、磁気飽和のない磁性材料の磁化は交流磁場の印加によって変動させることができるから、探針全体としての磁化は交流磁場の印加によって変動させることができる。磁性体被膜に強磁性体を含む探針の場合には残留磁化がゼロではなくヒステリシスを有することになるが、永久磁石等の強力な直流磁場を観察する限り、探針全体としての磁化はヒステリシス領域を外れた可逆的な領域で変動することになる。したがって、探針100が磁性体試料1に吸着されて測定自体が不能にならない限りは、磁化飽和がなく印加磁場方向に磁気モーメントが発生する磁性材料に加えて強磁性体を含む探針も本発明において使用可能である。
ただし、測定精度の観点からは、探針100は磁気ヒステリシスを有しないことが好ましい。
探針100に用いる磁気飽和がなく印加磁場方向に磁気モーメントが発生する磁性材料としては、常磁性または超常磁性を示す材料を用いることが好ましく、超常磁性を示す材料(超常磁性材料)を用いることが特に好ましい。超常磁性材料は常磁性体と比較して高い磁化率を示すので、高感度での磁場検出に有利である。
探針100における磁性材料の被膜厚さは特に制限されるものではなく、磁場計測感度と空間分解能のトレードオフを考慮して適宜決定することができ、例えば10〜100nm等とすることができる。
探針100に使用可能な常磁性体としては、1種以上の強磁性元素と1種以上の非磁性元素とを含んでなる多成分系の常磁性材料を好ましく例示できる。常磁性体はキュリー温度付近で最も大きな磁化率を示す(ホプキンソン効果)ので、多成分系の常磁性材料によれば、組成を変更してキュリー温度を調整することで、測定温度における磁化率を高めて磁気力顕微鏡の測定感度を高めることが可能である。多成分系の常磁性材料としては具体的には、上記(a)固溶体型常磁性材料、及び、上記(b)非晶質型常磁性材料を好ましく採用できる。
探針100に使用可能な超常磁性材料としては、上記(c)グラニュラー型超常磁性材料(強磁性材料の十分に小さい粒子が非磁性マトリクス中に分散され、強磁性材料粒子が全体の10〜45体積%、好ましくは15〜40体積%を占める構造を有する材料)を例示できる。強磁性材料粒子が全体の10〜45体積%を占めることにより、パーコレーション(球近似モデルにおいて、2種類の球を混合したとき、同一種類の球どうしが接触しない状態)が起きるので、強磁性材料粒子同士の間での強い磁気的な相互作用(交換相互作用)を抑止することができる。強磁性材料粒子のサイズが小さくなると、熱エネルギーにより粒子の磁化の方向がランダム化し、無磁場下では個々の粒子の磁化が打ち消しあうので、平均として材料全体の磁化がゼロになり強磁性から超常磁性に転移する。無磁場下では磁化がゼロであるので、残留磁化および保磁力も同時にゼロになる。超常磁性材料に磁場を印加すると、磁場方向にのみ磁化が発生し、磁場と直交方向の磁化は個々の粒子間で打ち消しあうので、超常磁性材料は磁場の印加方向に垂直な磁化成分は有しない。
超常磁性材料は温度低下に伴い超常磁性から強磁性に転移し、その転移温度はブロッキング温度と呼ばれる。超常磁性材料を探針に用いる場合には、使用中の探針の温度は上記ブロッキング温度以上に保たれる。
(励振器200)
上記探針100はカンチレバー110の一方の端部(自由端)近傍に備えられており、該カンチレバー110の他方の端部(固定端)は固定されている。このようなカンチレバー110を励振器200によって励振させることにより、探針100を励振させることができる。
探針100を励振させることができる限りにおいて、励振器200の構成は特に限定されない。励振器200は、例えば、カンチレバー110の固定端近傍に取り付けられた励振用アクチュエータ(例えばピエゾ素子等。)と、該励振用アクチュエータに接続された交流電圧電源とによって構成することができる。励振器200がカンチレバー110を励振させる周波数は、励振が可能である限りにおいて特に制限されるものではないが、通常はカンチレバー110の共振周波数近傍の周波数が励振周波数として好ましく採用される。
(交流磁場発生器300)
交流磁場発生器300は、磁性体試料1を磁化反転させない大きさの交流磁場を探針100に印加する装置である。このような交流磁場発生機構300は、例えば、図5に示したように、磁性体試料1の直下に配置され、コイル320が巻回された磁心330と、コイル320に交流電流を供給する交流電流電源310とによって構成することができる。コイル320及び磁心330により交流電磁石が構成されており、交流電流電源310からコイル320に交流電流が供給されることにより、試料表面に垂直な方向の交流磁場が磁性体試料1及び探針100に印加される。
交流磁場発生器300から発生させる交流磁場は、空間変化が小さいことが好ましい。具体的には、探針100の先端の磁化の直流成分(すなわち磁性体試料1から漏洩する直流磁場による磁化)と、交流磁場発生器300から探針100に印加される交流磁場の空間変化勾配との積が、探針100の先端の磁化の交流成分(すなわち交流磁場発生器300から印加される交流磁場による磁化変動)と、磁性体試料1から探針100に印加される直流磁場の空間変化勾配との積より小さいことが好ましい。交流磁場の空間変化勾配を小さくするには、磁性体試料1と探針100との間の計測空間に、一様な大きさの交流磁場を印加することが考えられる。
また、交流磁場発生器300は、磁性体試料1から漏洩する直流磁場の測定する成分の方向と同一方向(例えば磁性体試料1の観察面に対して垂直な方向の直流磁場を測定する場合には、当該観察面に対して垂直な方向。)に、交流磁場を印加することが好ましい。その理由は、本発明の磁気力顕微鏡では、交流磁場の印加方向に発生する、探針の磁化の方向に平行な磁場成分(探針の磁化方向への射影成分)が検出されるからである。
なお、交流磁場発生器300から発生させる交流磁場の周波数は、探針100の振動の周波数変調が検出可能である限りにおいて特に制限されるものではなく、例えば10Hz〜1kHz等とすることができる。例えば励振器200がカンチレバー110をその共振周波数または共振周波数近傍の周波数で励振させる場合には、励振振動が周波数変調されることにより生じる側波帯の周波数が、共振曲線において必要な利得を得られる範囲内となるような周波数を適宜選択することができる。
また交流磁場発生器300により探針100に印加する交流磁場の強度は、探針100が磁性体試料1に吸着されない範囲であって、かつ所望の磁場計測感度が得られる範囲において、適宜調整することができる。
交流磁場発生機構300を構成する要素の設置位置は特に限定されない。例えば図5の磁場観察装置1000においては、磁心330とコイル320とによって構成される交流電磁石が、磁性体試料1の直下に配置されている。また探針100の周りの空間が狭い従来の汎用型のMFMに交流磁場発生機構300を組み込むためには、交流磁場を発生する交流電磁石等をMFMの試料設置台の下に設置することが考えられる。あるいは、探針100の周りの空間を広くして、磁性体試料1よりも探針100に近い位置から探針100に交流磁場を印加できるように、交流磁場発生機構300を設置することも可能である。
(振動センサー400、復調器430、復調信号処理装置440)
探針100の磁化と磁性体試料1からの直流磁場との間の磁気的相互作用により、探針100は強度が周期的に変動する磁気力を受ける。この強度が周期的に変動する磁気力が、カンチレバー110の見かけ上のバネ定数を周期的に変動させる。このようにしてカンチレバー110の見かけ上のバネ定数が周期的に変動することによって、探針100の振動の周波数が周期的に変動する。振動センサー400、復調器430、および復調信号処理装置440により、この周波数変調された探針100の振動から、探針100の位置における磁性体試料1からの直流磁場の情報を取り出すことができる。
(振動センサー400)
磁場観察装置1000において、振動センサー400は、カンチレバー110の自由端側の先端にレーザー光を照射する光源410と、カンチレバー110に反射された該レーザー光を検知する光学変位センサー420とを有している。光源410から照射されてカンチレバー110の自由端側の先端で反射したレーザー光を光学変位センサー420で検知することにより、探針100の変位を出力として取り出すことができる。後述する走査機構600によって、探針100で磁性体試料1の観察面を走査しながら検知した光学変位センサー420からの出力は、復調器430に入力される。
(復調器430)
振動センサー400の検出信号は、カンチレバー110の励振振動が、探針100と磁性体試料1との間に生じる磁気力の交流成分によって周波数変調された振動である。復調器430は、振動センサー400の検出信号から、探針100と磁性体試料1との間に生じる磁気力の交流成分に対応する信号を復調する。図5の磁場観察装置1000において、復調器430は、振動センサー400の検出信号を周波数復調するFM復調器である。復調器430としては、例えばPLL(Phase Locked Loop)回路等の、FM復調器として公知の回路を特に制限なく採用することができる。なお復調器430として、振動センサー400の検出信号に含まれる側帯波スペクトルの強度を計測する形態の復調器を採用することも可能であり、そのような形態の復調器は、例えばスペクトラムアナライザを用いて構成することができる。復調器430によって復調された信号は、復調信号処理装置440に入力される。
(復調信号処理装置440)
復調信号処理装置440は、復調器430から入力される復調信号および交流磁場発生器300の電圧信号から、直流磁場の情報を取り出す。図5の磁場観察装置1000において、復調信号処理装置440はロックインアンプにより構成されている。復調信号処理装置440は、復調器430から得た復調信号の振幅R、及び、復調信号と交流磁場発生器300の電流信号または電圧信号(参照信号)との位相差θを計測するか、又は、復調器430から得た復調信号の、交流磁場発生器300の電流信号(参照信号)に対する同相成分Xおよび直交成分Yを計測する。これにより、同相成分Xと直交成分Yから振幅および位相を精度よく計算でき、また、直交成分から位相遅れ等も評価することが可能になる。ここでロックインアンプの参照信号をRrefcos(ωt)(ここでRrefは正値にとる)で表し、ロックインアンプで計測する参照信号と同一の角周波数ωを有する復調信号を、Rcos(ωt+θ)(ここでRは正値にとる)で表すと、復調信号は後述するように探針100に作用する磁気力勾配の交流成分(∂F/∂z)cos(ωt+θ)に対応し、この磁気力勾配の振幅(∂F/∂z)は周期的に変化する探針磁化の振幅と磁性体試料1からの直流磁場勾配の積に比例するので、探針磁化を交流磁場印加により角周波数ωで正弦波状に変化させた場合には、直流磁場勾配の強度(正値)に対応する。また、復調信号の参照信号との位相差θは、磁気力勾配の参照信号との位相差に対応しており、後述するように磁性体試料1からの直流磁場の極性の検出に用いることができる。
一方、上記の振幅Rおよび位相θと、参照信号Rrefcos(ωt)との同相成分Xおよび直交成分Yは以下の式(1)及び(2)で関係づけられる。
Figure 0006624737
したがって、復調信号の参照信号に対する同相成分Xの振幅である、Rcos(θ)を計測する場合には、−θの位相調整を行い、θ=0にして信号強度を最大にすることが好ましい。特に、ロックインアンプを用いて交流磁場発生器300の電圧信号を参照信号として同相成分を計測する場合には、交流磁場発生器300は電気回路的にはインダクタンス成分と抵抗成分を含むので、交流磁場発生器300の電圧信号に対して交流磁場を発生させる電流信号の位相が遅れ、そのため位相調整が必要になる。一方、ロックインアンプで交流磁場発生器300の電流信号を参照信号として同相成分を計測する場合には、交流磁場は交流磁場発生器300の電流信号と同期して発生するのでθ=0となり、電流信号が最大となるタイミングで、交流磁場印加方向と平行な方向における試料からの直流磁場の勾配が最大値で検出される。
特許文献4の磁場観察装置や特許文献5に記載の磁気プロファイル測定装置においては、探針に強磁性体を用いている(ソフト磁性材料とは強磁性体のうち保磁力が低いものを指す。)。強磁性体よりなる探針においては、交流磁場を印加すると、外部磁場がゼロでも発生している自発磁化に起因する磁気モーメントが回転する。よって磁気モーメントが交流磁場の印加方向に対して完全に平行になるとき以外は、磁気モーメントは交流磁場方向に対して垂直な成分も有することになる。通常、交流磁場は試料表面に対して垂直に印加され、試料表面に垂直な方向の磁場が測定されるところ、磁気モーメントが交流磁場に対して完全に平行になるとき以外は、試料表面から発生する磁場の垂直成分と探針磁化との相互作用による磁気力だけでなく、試料表面から発生する磁場の面内成分と探針磁化との相互作用による磁気力も探針に作用し、検出信号に含まれてしまう。そのため垂直磁場成分と面内磁場成分とを分離して測定するためには、検出信号の処理にあたって、特許文献5に記載の磁気プロファイル測定装置におけるように複雑な位相調整処理が必要であった。
本発明の磁場観察装置1000においては、磁気飽和のある強磁性探針ではなく、磁気飽和のない(すなわち強磁性でない)磁性探針100を用いるので、探針100に交流磁場を印加することによる探針磁化は、交流磁場の印加方向にのみ生じ、交流磁場の印加方向に対して垂直な方向には生じない。これにより、探針100が磁性体試料1からの直流磁場から受ける磁気力の交流成分は、磁性体試料1からの直流磁場のうち交流磁場印加方向の成分のみに由来するものとなる。したがって本発明によれば、試料からの直流磁場の計測方向は探針に印加する交流磁場の方向を変えるだけで制御でき、信号処理工程を大幅に簡略化することが可能になる。
(走査機構500)
走査機構500は、探針100と磁性体試料1との位置を相対的に変化させることができる機構である。走査機構500により、探針100が磁性体試料1表面上の走査領域を走査する。走査機構としては、例えば、磁性体試料1が載置される試料設置台を駆動装置によって動かすことにより、試料設置台の位置を探針100に対して相対的に変化させることによって、探針100と磁性体試料1との位置を相対的に変化させることができる機構とすることができる。そのような機構としてはX−Yステージを例示できる。このほか、探針100を駆動装置によって動かすことにより、探針100と磁性体試料1の相対的な位置関係を変化させる態様の走査機構を採用することも可能である。また走査機構500として、従来の走査型プローブ顕微鏡などに用いられている公知の機構(例えば、ピエゾ素子など。)を用いることも可能である。
(画像表示装置600)
画像表示装置600は、走査機構500により走査領域を走査することで得られた、走査領域の各座標における磁性体試料1からの直流磁場の情報に基づく磁場分布画像を表示する装置である。画像表示装置600としては、上記のようにして得られた復調信号処理装置440からの出力信号を座標に対応させて画像化できる構成を有する限りにおいて特に限定されるものではなく、例えば、従来の走査型プローブ顕微鏡に備えられるような、外部入力信号を画像化できる表示装置を用いることができる。
(計測原理)
本発明の磁場観察装置1000を用いて、強い直流磁場を発生させる磁性体材料1の表面近傍において高分解能で磁場を観察できる原理について、以下に説明する。
上述したように、磁性体を構成要素とする探針100の磁化と磁性体試料1の磁化との間の磁気的相互作用による磁気力の、カンチレバーの共振周波数と異なる周波数(非共振周波数)の交流成分に起因して、探針100の振動の周波数が周期的に変調する。その理論モデルを図6に示した。図6(a)は、一定周波数で加振している探針100に、探針100の共振周波数と異なる周波数(非共振周波数)の交流磁場を印加した様子を概略的に示している。図6(b)は、このような探針100の運動を先端におもりmが取り付けられたバネに例えたモデルを概略的に示している。
探針100の振動における、カンチレバーの共振周波数と異なる周波数(非共振周波数)の磁気力(非共振交番磁気力)の交流成分を変調源とする周波数変調現象は、図6に示すような、磁気力の交流成分によりバネ定数が周期的に変化する調和振動子の運動(下記(3)式)を考えることで導出される。
Figure 0006624737
(m:探針100の有効質量、t:時間、z:探針100の振幅(カンチレバーの振動方向を観察面に垂直方向にとりz方向とする)、γ:減衰係数、k:探針100に交流磁場を加える前のカンチレバー110の真性的なバネ定数、Δk:探針100に交流磁場を加えたことによるカンチレバー110の実効的なバネ定数の変化量、ω:加振角周波数、F:加振力の振幅、ω:探針100の共振角周波数)
ここでは、カンチレバー110をその共振周波数ωで励振させる場合を考える。
Δkcos(ωt)=keffは交番力による実効的なバネ定数の変化であり、Δkは前述した磁気力勾配の振幅(∂F/∂z)に対応している。(3)式の解は、Δk<<kの場合、下記(4)式のようになる。
Figure 0006624737
上記(4)式より、非共振交番磁気力の交流成分を発生源として、探針100の振動に周波数変調が発生することがわかる。ここで、探針100に常磁性材料または超常磁性材料を用い、磁性体試料1の磁化状態を乱さない範囲で角周波数ωの交流磁場を探針100に印加することにより、探針100の磁化を周期的に変動させることを考える。ここでは磁性体試料1の試料面に垂直な方向(z方向)の交流磁場H accos(ωt)を探針100に印加する場合を考える。なお、交流磁場H accos(ωt)は、交流磁場源に供給される交流電流Iaccos(ωt)により発生する。この場合、磁性体試料1から発生する直流磁場の計測方向は、交流磁場が印加されている方向、すなわち磁性体試料1の試料面に対する垂直方向(z方向)となる。磁性体試料1の観察面に垂直な方向の直流磁場H dcならびに観察面に平行な方向の直流磁場H dcを受けている探針100の磁化が、磁性体試料1の観察面に垂直な方向(z方向)の交流磁場H accos(ωt)により、下記(5)式のように変化すると、カンチレバー110の実効的なバネ定数の変化keffは下記(6)式で与えられる。
Figure 0006624737
(Mtip:探針100の磁化。M dc:探針100の磁化のうち、観察面に垂直な方向の直流磁場H dcにより発生する観察面に垂直な方向の直流磁化成分。M dc:探針100の磁化のうち、観察面に平行な方向の直流磁場H dcにより発生する観察面に平行な方向の直流磁化成分。M ac:探針100の磁化のうち、観察面に垂直な方向の交流磁場H acにより発生する観察面に垂直な方向の交流磁化の振幅。)
Figure 0006624737
ここでは、探針磁化は原理的に磁化方向と同方向の磁場を検出できることを用いて、式を展開している。
探針100に印加する交流磁場の空間変化を小さくして、探針100に印加する交流磁場の空間変化と探針100の磁化の直流成分の強度との積を小さくして下記(7)式が満たされるようにすることで、(6)式の角周波数ωで変化する第2項は下記(8)式のようになる。
Figure 0006624737
Figure 0006624737
したがって、これらの条件下で交流磁場印加により発生する探針100の振動の周波数変調信号を復調器430で周波数復調した後に、その復調信号を、復調信号処理装置(ロックインアンプ)440を用いて、交流磁場発生器300に備えられた交流電流電源310の出力を参照信号として、交流電流電源310の角周波数ωでロックイン検出することで、磁性体試料1からの垂直磁場H dcの磁場勾配(∂ dc/∂z)の計測が試料表面近傍で可能になることがわかる。
ここで、H dcの符号(上向き、下向きの極性)は、磁性体試料1の表面磁極の極性(N極、S極)を反映し、符号が反転した場合、実効的なバネ定数の変化keffの角周波数ωで変化する成分は下記(9)式のように変化し、位相が180°変化する。
Figure 0006624737
したがって、位相が180°異なる2つの計測場所を識別することにより、磁性体試料1から発生するH dcの方向(上向き、下向きの方向)を検出し、表面磁極の極性(N極、S極)を直接に識別することも可能になる。
上記(7)式では、左辺が必要な信号であり、右辺が不要な信号であるのでノイズに対応する。したがって、例えば信号ノイズ比を9:1にするには、下記(10)式を満たす必要がある。
Figure 0006624737
なお上記(10)式において、(∂ dc/∂z)は磁性体試料1の磁気的不均一性を反映するので、測定場所に対してナノメートルのスケールで変化するのに対して、(∂ ac/∂z)は交流電磁石のサイズを反映して、測定場所に対してミリメートルのスケールで変化するので、磁区構造の観察におけるノイズ(上記(7)式の右辺)の影響は通常は小さい。
なお、探針試料間距離が小さな範囲では、探針100の先端の磁極の寄与が大きくなるので、探針は単磁極探針として振る舞うことになる。この場合上記式(8)は下記式(11)のようになる。
Figure 0006624737
(qtip ac:探針100先端の磁極のうち、交流磁場により発生する交流磁極の振幅。)
<3.磁場観察方法>
本発明の磁場観察方法は、磁性体試料から漏洩する直流磁場を観察する磁場観察方法であって、(i)励振工程と;(ii)交流磁場印加工程と;(iii)復調工程と;(iv)復調信号処理工程と;(v)走査工程とを含む。好ましくは、(vi)磁場分布画像表示工程をさらに含む。
本発明の磁場観察方法は、例えば、上記説明した本発明の磁場観察装置1000を用いて行うことができる。以下図5を参照しつつ、各工程について説明する。
(i)励振工程は、磁気飽和のない磁性探針を一方の端部に有するカンチレバーを励振させる工程である。励振工程は、上記説明した励振器200によって行うことができる。
(ii)交流磁場印加工程は、磁性体試料を磁化反転させない大きさの交流磁場を探針に印加し、探針の磁化を周期的に変動させることにより、カンチレバーの励振振動を周波数変調させる工程である。交流磁場印加工程は、上記説明した交流磁場発生器300によって行うことができる。
(iii)復調工程は、探針の振動を検出し、その検出信号から、探針と観察試料との間に生じる磁気力の交流成分に対応する信号を復調する工程である。復調工程は、上記説明した振動センサー400及び復調器430によって行うことができる。
(iv)復調信号処理工程は、復調工程において復調された信号および交流磁場発生器の電圧信号から、直流磁場の情報を得る工程である。復調信号処理工程は、上記説明した復調信号処理装置440によって行うことができる。
(v)走査工程は、探針に磁性体試料表面上の走査領域を走査させる工程である。走査工程は、上記説明した走査機構500によって行うことができる。
(vi)磁場分布画像表示工程は、走査機構により走査領域を走査することで得られた、走査領域の各座標における直流磁場の情報に基づく磁場分布画像を画像表示装置に表示する工程である。磁場分布画像表示工程は、上記説明した画像表示装置600によって行うことができる。
本発明の磁場観察方法は、強い直流磁場を発生させる試料(例えば永久磁石。)の磁場観察に好ましく採用できる。また、(ii)交流磁場印加工程において交流磁場発生器30に発生させる交流磁場は、空間変化が小さいことが好ましい。具体的には、探針100の先端の磁化の直流成分(すなわち磁性体試料1から漏洩する直流磁場による磁化)と、交流磁場発生器300から探針100に印加される交流磁場の空間変化勾配との積が、探針100の先端の磁化の交流成分(すなわち交流磁場発生器300から印加される交流磁場による磁化変動)と、磁性体試料1から探針100に印加される直流磁場の空間変化勾配との積より小さいことが好ましい。
以下に、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
Fe−Mn系の固溶体型常磁性材料を磁性被膜として有する形態の本発明の磁気力顕微鏡用探針を製造した実施例である。
図4のスパッタリング装置において、強磁性元素ターゲット44としてFeターゲットを、非磁性元素ターゲット45としてMnターゲットを用いて、FeとMnを同時スパッタリングすることにより、カンチレバーの一方の端部に固定したSiからなる芯部材の表面にFe−Mn系固溶体型常磁性薄膜(Fe67Mn33、膜厚100nm)を成膜した。同一条件で熱酸化膜付Si基板上に成膜された常磁性薄膜の磁気特性評価の結果を図7に示す。なお薄膜の組成分析はエネルギー分散型X線分光法(EDX)により行った。磁気特性評価は、振動試料型磁力計VSM−5S型(東英工業株式会社製)を用いて、温度25℃、外部磁場−20kOe〜+20kOeの条件で行った。
図7に示すように、成膜されたFe−Mn系固溶体型常磁性薄膜は、外部磁場の強度が20kOeに至るまで磁化が飽和しなかった。また残留磁化や磁気ヒステリシスを有しなかった。その初磁化率は1.2×10−7H/mであった。
<実施例2>
Fe−Mo−B系の非晶質型常磁性材料を磁性被膜として有する形態の本発明の磁気力顕微鏡用探針を製造した実施例である。
図4のスパッタリング装置において、強磁性元素ターゲット44としてFeターゲットを、非磁性元素ターゲット45としてBシートを貼り付けたMoターゲットを用いて、Fe、Mo、及びBを同時スパッタリングすることにより、カンチレバーの一方の端部に固定したSiからなる芯部材の表面にFe−Mo−B系非晶質型常磁性薄膜(膜厚100nm)の成膜を試みた。同一条件で熱酸化膜付Si基板上に成膜された磁性薄膜について、実施例1と同様の条件で組成および磁気特性の評価を行った結果を図8(a)〜(i)に示す。
図8中、非磁性元素であるMoおよびBの含有量が過少であった(a)及び(b)の薄膜は、外部磁場の強度が20kOeに至る以前に磁化が飽和してしまった比較例である。他方、非磁性元素であるMo及びBの含有量が十分であった(c)〜(i)の薄膜は、外部磁場強度が20kOeに至るまで磁化が飽和せず、また(c)を除き、残留磁化や磁気ヒステリシスを有しなかった。特に、(d)Fe86Mo7.56.5の非晶質型常磁性薄膜は、初磁化率(1.4×10−7H/m)及び外部磁場に対する磁化応答の線型性が共に最も良好であった。このような磁化応答の線型性に優れる探針は、強い直流磁場(10kOe以上)を発生する磁性体試料の交番磁気力顕微鏡による磁区観察に、特に適している。
<実施例3>
Ag−Co系のグラニュラー型超常磁性材料を磁性被膜として有する形態の本発明の磁気力顕微鏡用探針を製造した実施例である。
図4のスパッタリング装置において、強磁性元素ターゲット44としてCoターゲットを、非磁性元素ターゲット45としてAgターゲットを用いて、Co及びAgを同時スパッタリングすることにより、カンチレバーの一方の端部に固定したSiからなる芯部材の表面にAg−Co系グラニュラー型超常磁性薄膜(膜厚100nm)の成膜を試みた。Agターゲット45と回転保持台42との間の距離(80mm、100mm、又は120mm)、及び各ターゲットに印加する電力(Agターゲット45に対して100〜200W、Coターゲット44に対して50〜150W)を変化させることにより、CoとAgとの組成比(磁性材料全量基準でCo含有量6〜21体積%、残部Ag)、および成膜速度(0.1〜0.85nm/sec)を調整した。同一条件で熱酸化膜付Si基板上に成膜された磁性薄膜について、実施例1と同様の条件で組成および磁気特性の評価を行った結果を図9に示す。図9中、外部磁場20kOeに至るまで磁化が飽和せず、超常磁性を示すと判断された薄膜試料に対応する各データ点の下には、その試料が示した初磁化率の値を付記している。またデータ点が「ヒステリシスあり」の領域中にあるものは、その試料の磁化特性がヒステリシスを示したこと、すなわち試料中に強磁性相が含まれていたことを表す。
図9から判るように、一般的な傾向として、強磁性材料であるCo含有量が高いほど試料の初磁化率は高くなり、特にCo含有量が高い試料ほどその初磁化率は組成の変化に対して鋭敏に反応した。また強磁性元素であるCoの含有量が高くても、成膜速度を高めることにより、ヒステリシスのない超常磁性材料を成膜することができた。その結果、得られた初磁化率の最大値は4.0×10−6H/mであった。このような初磁化率の極めて高い探針は、磁性体試料から生じる直流磁場の正負を含めた絶対値の測定に、特に適している。
図10は、成膜速度0.80nm/secで成膜したAg79Co21薄膜(1)(初磁化率4.0×10−6H/m)の磁化曲線(図10(a)。その原点近傍を拡大したものが図10(b)である。)と、成膜速度0.20nm/secで成膜したAg85Co15薄膜(2)(初磁化率3.0×10−6H/m)の磁化曲線(図10(c)。その原点近傍を拡大したものが図10(d)である。)とを比較する図である。図10から判るように、0.20nm/secという低い成膜速度で成膜したAg85Co15薄膜がヒステリシス及び残留磁化を示した、すなわち強磁性相を有していた(図10(c)及び(d)参照。)のに対して、0.80nm/secという高い成膜速度で成膜したAg79Co21薄膜は、強磁性元素であるCoの含有量がより多いにも関わらず、強磁性相の性質をほとんど示さなかった(図10(a)及び(b)参照。)。なお成膜速度0.80nm/secで成膜したAg79Co21薄膜(1)におけるCo粒子の画像解析法による球換算直径の平均値は15nmであった。この値は、当該薄膜の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、2次電子検出により倍率10万〜20万倍で観察し、Co粒子がSEM画像中に占める面積と等しい面積を有する円の直径(球換算直径)を算出して、同一薄膜試料中の100個以上のCo粒子についての算術平均をとった値である。
図11は、図9及び図10に示したAg79Co21薄膜(1)(成膜速度0.80nm/sec)と同じ条件で再作製したAg−Co超常磁性薄膜の初磁化率の温度依存性と、図9に示したAg83Co17薄膜(3)(成膜速度0.54nm/sec)と同じ条件で再作製したAg−Co超常磁性薄膜の初磁化率の温度依存性とを比較する図である。図11(a)及び(c)は初磁化率の温度依存性を示すグラフであり、図11(b)及び(d)は外部磁場20kOeにおける磁化の温度依存性を示すグラフである。
図11(a)に示すように、Ag79Co21薄膜(1)(成膜速度0.80nm/sec)と同じ条件で再作製したAg−Co超常磁性薄膜は、25〜200℃の温度範囲(測定点は25℃、50℃、100℃、150℃、200℃の5点)においてわずかに温度依存性を示した。すなわち、25〜200℃の温度範囲において初磁化率は温度に対してわずかに負の相関を示し、25℃において最大値を、200℃において最小値を示した。これは当該薄膜が強磁性相をわずかに含んでいることを意味する。しかしながら、その変化幅(最大値と最小値との差)は上記5点の測定値の算術平均値に対して±10%以内であった。外部磁場20kOeにおける磁化(図11(b))についても同様であった。
また図11(c)に示すように、Ag83Co17薄膜(3)(成膜速度0.54nm/sec)と同じ条件で再作製したAg−Co超常磁性薄膜は25〜200℃の温度範囲(測定点は25℃、50℃、100℃、150℃、200℃の5点)において温度依存性を有しなかった。すなわち、初磁化率および外部磁場20kOeにおける磁化の、温度範囲25〜200℃における測定値には、一貫した傾向が観察されず、その変動幅も上記5点の測定値の算術平均値に対して±10%以内であった。外部磁場20kOeにおける磁化(図11(d))についても同様であった。
磁化率や磁化が温度依存性を有することは強磁性体の典型的な性質であり、従来の強磁性探針では避けられなかったことである。しかし本発明の超常磁性探針によれば、温度依存性をほとんど有しないか、または全く有しない探針とすることも可能である。このような磁気特性の温度依存性を実質的に有しない探針は、永久磁石の高温での磁区構造評価に、特に適している。
なお、図11において25℃における初磁化率の測定値が図9に記載の対応する測定値と異なっているのは、次のような理由によると考えられる。スパッタリング装置の制約により、AgとCoを同時スパッタリングするにあたってはCoターゲットを基板ホルダの正面から横にずれた位置に配置せざるを得なかった。そのため、スパッタリング開始時点での、回転する基板ホルダ上のホルダ周方向における基板の配置位置に依存して、スパッタリングの開始から終了までの間における基板とCoターゲットとの間の平均距離が若干ながら変動することが避けられなかった。したがってその他の成膜条件が同一であっても、作製されたAg−Co超常磁性薄膜の組成は上記薄膜(1)及び(3)の組成と完全には一致しなかった可能性がある。図9について上記した通り、上記薄膜(1)及び(3)は、初磁化率が組成に対して鋭敏に反応する領域にある。したがって図11(a)及び(c)に示した25℃における初磁化率の値の図9中の値からのずれは、スパッタリング開始時点での、回転する基板ホルダ上のホルダ周方向における基板の配置位置を完全には再現できなかったことに起因する薄膜組成の僅かなズレが反映されたものと考えられる。
また図11(a)及び(c)においては、200℃を超える温度域において初磁化率が顕著な増大を示しているが、これはグラニュラー型超常磁性薄膜の微細構造が高温で変化した結果であると考えられる。
<実施例4>
本発明の磁場観察装置(図5参照)を用いて、永久磁石薄膜試料(FePt−MgO系永久磁石膜、膜厚300nm、垂直方向の保磁力:8kOe)から漏洩する直流磁場を観察した。本発明の磁場観察装置は、市販のMFM(日立ハイテクサイエンス株式会社製走査型プローブ顕微鏡、AFM−5400L)をベースとし、交流磁場発生器として、ケイ素鉄鋼板を用いて作製した交流電磁石及び該交流電磁石に電力を供給する交流電圧電源を加え、さらに復調器としてFM復調器(ナノサーフ社製、easyPLL)を追加して構成した。なお、交流電磁石はMFMの試料設置台の下に設置し、試料の観察面に垂直に交流磁場が印加されるようにした。交流電磁石から探針に印加した交流磁場の振幅は2.2kOe、周波数は89Hzであった。また、探針には、上記説明した本発明の磁気力顕微鏡用探針100を用いた。芯部材10を構成する非磁性元素としてSiを用い、強磁性元素としてCoを、非磁性元素としてAgを用いたグラニュラー型超常磁性材料を磁性被膜30に用いた。磁性被膜30の膜厚は約100nmであった。磁性被膜30の初磁化率は2.2×10−6H/mであった。探針100は外部磁場20kOeに至るまで磁化飽和を示さず、また残留磁化や磁気ヒステリシスを有しなかった。磁性被膜30の成膜は、商業的に入手可能なスパッタリング装置においてCoターゲットとAgターゲットとを同時に用いて、カンチレバーの一方の端部に固定されたSi探針の表面にCo及びAgを同時スパッタリングすることにより行った。薄膜中のCo含有量は約18体積%、成膜速度は約0.56nm/secとした。観察時における探針と磁性体試料の観察面との距離は10nmであった。
交流電磁石からの交流磁場によって、永久磁石薄膜の磁気モーメントは変化させずに、超常磁性探針の磁化を周期的に変動させた。Tapping−Lift modeを用いて走査することにより永久磁石薄膜の観察面の表面形状像を取得した後、交流磁場を印加しながらLift modeを用いて走査し、周波数変調された探針振動の検出信号を、FM復調器を用いて周波数復調し、その復調信号をロックインアンプに入力し、交流電磁石に接続した交流電圧電源の電圧信号を参照信号として、復調信号の振幅および参照信号に対する位相差を測定することにより、永久磁石薄膜の直流磁場情報を得た。
図12に、永久磁石薄膜の表面近傍での観察結果を示した。図12(a)は走査した領域の表面形状像である。図12(b)は永久磁石薄膜の観察面に垂直な直流磁場(垂直磁場)の勾配の強度に対応する磁気力勾配信号の振幅を画像化したものであり、図12(c)はこの垂直磁場勾配に対応する磁気力勾配信号の位相を画像化したものである。図12(b)は明部が線状の暗部に取り囲まれた像であり、図12(c)は明部と暗部の2値画像であることがわかる。図12(d)は図12(b)の像のラインプロファイルを示しており、図12(e)は、図12(c)の像のラインプロファイルを示している。
ラインプロファイル(図12(d)、(e))を見ると、図12(d)では、図12(e)の位相のラインプロファイルで位相が180°反転する境界部分において、試料面に垂直な方向の直流磁場勾配の強度に対応する振幅信号がゼロになっていることがわかる。図12(e)では、この境界部分を境として明部は垂直磁場の方向が上向きの部分、暗部は垂直磁場の方向が下向きの部分に対応しており、明部では正の磁極(N極)が表面に存在し、暗部では負の磁極(S極)が表面に存在する。したがって、直流磁場の計測方向に平行な交流磁場を超常磁性探針に印加するだけで、交流磁場方向を計測方向とした直流磁場計測が実施でき、試料表面の磁極の極性の判別が、複雑な位相調整処理を行うことなく可能であることがわかる。なお、図12(c)および(e)で、位相が180°反転する境界部分では試料面に平行方向の直流磁場(面内磁場)の勾配が最大になっている。
特許文献4の磁場観察装置や特許文献5に記載の磁気プロファイル測定装置においては、探針に強磁性体を用いている(ソフト磁性材料とは強磁性体のうち保磁力が低いものを指す。)。強磁性体においては、交流磁場を印加すると、外部磁場がゼロでも発生している自発磁化に起因する磁気モーメントが回転する。よって磁気モーメントが交流磁場に対して完全に平行になるとき以外は、磁気モーメントは交流磁場方向に対して垂直な成分も有することになる。通常、交流磁場は試料表面に対して垂直に印加され、試料表面に垂直な方向の磁場が測定されるところ、磁気モーメントが交流磁場に対して完全に平行になるとき以外は、試料表面から発生する磁場の垂直成分と探針磁化との相互作用による磁気力だけでなく、試料表面から発生する磁場の面内成分と探針磁化との相互作用による磁気力も探針に作用し、検出信号に含まれてしまう。そのため垂直磁場成分と面内磁場成分とを分離して測定するためには、検出信号の処理にあたって、特許文献5に記載の磁気プロファイル測定装置におけるように複雑な位相調整処理が必要であった。
探針として磁気飽和のある強磁性探針ではなく、磁気飽和のない(すなわち強磁性でない)本発明の磁気力顕微鏡用探針100を交番磁気力顕微鏡に用いた場合、探針100に交流磁場を印加することによる探針磁化は、交流磁場の印加方向にのみ生じ、交流磁場の印加方向に対して垂直な方向には生じない。これにより、探針100が磁性体試料1からの直流磁場から受ける磁気力の交流成分は、磁性体試料1からの直流磁場のうち交流磁場印加方向の成分のみに由来するものとなる。したがって本発明の磁気力顕微鏡用探針を交番磁気力顕微鏡に用いることにより、磁気力顕微鏡における信号処理を大幅に簡略化することが可能になる。
以上のように、本発明の磁気力顕微鏡用探針によれば、永久磁石等の強い直流磁場を発生する磁性体試料の表面近傍の磁場観察においても、探針が試料に吸着されることがなく、また高い空間分解能で磁場を観察することが可能であり、さらには、磁性体試料表面の磁極の極性検出も可能であることが示された。また、本発明の磁場観察装置および磁場観察方法によれば、永久磁石等の強い直流磁場を発生する磁性体試料の表面近傍において、高い空間分解能で磁場を観察することが可能であり、また、磁性体試料表面の磁極の極性検出も可能であることが示された。本発明の磁気力顕微鏡用探針は、例えば交番磁気力顕微鏡による永久磁石試料等の強磁場発生試料の磁区観察や、磁性体試料から生じる直流磁場の正負を含めた絶対値の測定等に好適に用いることができる。また、本発明の磁場観察装置および磁場観察方法は、例えば永久磁石試料の磁区観察等に好適に用いることができる。
1 磁性体試料
10 芯部材
20 カンチレバー
30 磁性被膜
41 チャンバ
42 回転保持台
43 回転駆動軸
44 強磁性元素ターゲット
45 非磁性元素ターゲット
100 探針
110 カンチレバー
200 励振器
300 交流磁場発生器
310 交流電流電源
320 コイル
400 振動センサー
410 光源
420 光学変位センサー
430 復調器(FM復調器)
440 復調信号処理装置(ロックインアンプ)
500 走査機構
600 画像表示装置
1000 磁場観察装置

Claims (22)

  1. 少なくとも1種の磁性材料を備え、
    少なくとも10〜30℃の温度域にわたって、20kOeの外部磁場が印加されたときに磁化が飽和せず、
    (a) 前記磁性材料が、1種以上の強磁性元素と1種以上の非磁性元素との固溶体である;
    (b) 前記磁性材料が、1種以上の強磁性元素と1種以上の非磁性元素とを含む非晶質の磁性材料である;又は
    (c) 前記磁性材料が、1種以上の強磁性体粒子と1種以上の非磁性材料とを含み、前記強磁性体粒子が前記非磁性材料中に分散されて支持されている構造を有する磁性材料である
    ことを特徴とする、磁気力顕微鏡用探針。
  2. 磁場が印加されていない条件下では少なくとも10〜30℃の温度域にわたって残留磁化を有しないことを特徴とする、請求項1に記載の磁気力顕微鏡用探針。
  3. 前記磁性材料の初磁化率が、少なくとも10〜30℃の温度域にわたって、3×10−8H/m以上である、請求項1又は2に記載の磁気力顕微鏡用探針。
  4. 前記(a)又は(b)の要件を満たし、
    前記強磁性元素が、Ni、Fe、及びCoからなる群から選ばれる1種以上の強磁性元素であり、
    前記非磁性元素が、Ti、V,Cr,Mn,Cu、Zn、Zr、Nb,Mo、Ta、W、B、Al、C、O、N、及びSiからなる群から選ばれる1種以上の非磁性元素である、
    請求項1〜3のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
  5. 前記(a)又は(b)の要件を満たし、
    前記磁性材料が常磁性または超常磁性を示す、請求項1〜4のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
  6. 前記(c)の要件を満たし、
    前記磁性材料の全量に対して、
    前記強磁性体粒子の含有量が10〜45体積%であり、
    前記非磁性材料の含有量が55〜90体積%である、
    請求項1〜3のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
  7. 前記(c)の要件を満たし、
    前記強磁性体粒子の画像解析法による球換算直径の平均値が30nm以下である、請求項1〜3及び6のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
  8. 前記(c)の要件を満たし、
    前記強磁性体粒子が、Ni、Fe、及びCoからなる群から選ばれる1種以上の強磁性元素の粒子であり、
    前記非磁性材料が、Au、Ag、Cu、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化タンタル、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化ルテニウム、希土類元素の酸化物、及び炭素からなる群から選ばれる1種以上の非磁性材料である、
    請求項1〜3、6及び7のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
  9. 前記(c)の要件を満たし、
    前記磁性材料が超常磁性を示す、請求項1〜3及び6〜8のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
  10. 前記(c)の要件を満たし、
    磁化率が、25〜200℃の温度範囲において実質的に温度依存性を有しない、請求項1〜3及び6〜9のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
  11. 前記(c)の要件を満たし、
    前記磁性材料の初磁化率が、少なくとも10〜30℃の温度域にわたって2×10−7H/m以上である、請求項1〜3及び6〜10のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
  12. 1種以上の非磁性体からなる芯部材と、
    前記芯部材の表面の少なくとも一部を被覆する前記磁性材料の被膜と
    を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針。
  13. 磁性体試料から漏洩する直流磁場を観察する磁場観察装置であって、
    20kOeの外部磁場が印加されたときに磁化が飽和しない磁性探針であって、印加磁場方向に磁気モーメントが発生する磁性探針を一方の端部に有するカンチレバーと、
    前記カンチレバーを励振させる励振器と、
    前記磁性体試料を磁化反転させない大きさの交流磁場を前記探針に印加し、前記探針の磁化を周期的に変動させることにより、前記カンチレバーの励振振動を周波数変調させる、交流磁場発生器と、
    前記探針の振動を検出する振動センサーと、
    前記振動センサーの検出信号から、前記探針と前記磁性体試料との間に生じる磁気力の交流成分に対応する信号を復調する、復調器と、
    前記復調器から得た復調信号および前記交流磁場発生器の電圧信号から、前記直流磁場の情報を得る、復調信号処理装置と、
    前記探針に前記磁性体試料表面上の走査領域を走査させる走査機構と
    を備え、
    前記磁性探針は、請求項1〜12のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針であることを特徴とする、強磁場発生試料の磁場観察装置。
  14. 前記復調器が、
    (A)前記振動センサーの検出信号を周波数復調するか、又は、
    (B)前記振動センサーの検出信号に含まれる側帯波スペクトルの強度を計測する、
    請求項13に記載の磁場観察装置。
  15. 前記復調信号処理装置が、
    (X)前記復調器から得た復調信号の振幅、及び、前記復調信号と前記交流磁場発生器の電流信号または電圧信号との位相差を計測するか、又は、
    (Y)前記復調器から得た復調信号の、前記交流磁場発生器の電流信号に対する同相成分および直交成分を計測する、
    請求項13又は14に記載の磁場観察装置。
  16. 前記交流磁場発生が、前記直流磁場の測定される成分の方向と同一方向に、前記交流磁場を印加する、請求項13〜15のいずれかに記載の磁場観察装置。
  17. 前記磁性体試料が永久磁石である、請求項13〜16のいずれかに記載の磁場観察装置。
  18. 前記走査機構により前記走査領域を走査することで得られた、前記走査領域の各座標における前記直流磁場の情報に基づく磁場分布画像を表示する画像表示装置をさらに有する、請求項13〜17のいずれかに記載の磁場観察装置。
  19. 磁性体試料から漏洩する直流磁場を観察する磁場観察方法であって、
    20kOeの外部磁場が印加されたときに磁化が飽和しない磁性探針であって、印加磁場方向に磁気モーメントが発生する磁性探針を一方の端部に有するカンチレバーを励振させる工程と、
    前記磁性体試料を磁化反転させない大きさの交流磁場を交流磁場発生器から前記探針に印加し、前記探針の磁化を周期的に変動させることにより、前記カンチレバーの励振振動を周波数変調させる工程と、
    前記探針の振動を検出し、該探針の振動の検出信号から、前記探針と前記磁性体試料との間に生じる磁気力の交流成分に対応する信号を復調する工程と、
    前記復調された信号および前記交流磁場発生器の電圧信号から、前記直流磁場の情報を得る工程と、
    前記探針に前記磁性体試料表面上の走査領域を走査させる工程と
    を含み、
    前記磁性探針は、請求項1〜12のいずれかに記載の磁気力顕微鏡用探針であることを特徴とする、強磁場発生試料の磁場観察方法。
  20. 前記交流磁場を、前記直流磁場の測定される成分の方向と同一方向に印加する、請求項19に記載の磁場観察方法。
  21. 前記磁性体試料が永久磁石である、請求項19又は20に記載の磁場観察方法。
  22. 前記探針に前記磁性体試料表面上の前記走査領域を走査させることで得られた、前記走査領域の各座標における前記直流磁場の情報に基づく磁場分布画像を画像表示装置に表示する工程をさらに有する、請求項19〜21のいずれかに記載の磁場観察方法。
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