以下に説明する構成例は、端末装置の位置を検索する位置検索システム、位置検索システムでの位置検索方法に関する。また、以下では、位置検索システムを構成する発信装置、および位置検出装置に関する説明がなされる。さらに、以下の説明は、発信装置を備える設備機器に関する説明を含む。
以下に説明する構成例は、無線信号を受信する移動体端末としての端末装置を備え、建築物において端末装置の位置を検出する位置検索システムに関する。また、以下では、この位置検索システムにおける位置検索方法が開示される。さらに、この位置検索システムを構成する発信装置および管理装置が開示される。加えて、建築物に設置され、発信装置を備える設備機器についても開示される。
建築物は、オフィスビルあるいは商業ビルなどのような住宅用途ではないビルディングを想定しているが、建築物は、住宅用途である集合住宅または戸建て住宅などであってもよい。また、建築物が、学校、スーパーマーケット、スポーツ施設、ホテル、美術館、博物館、病院、倉庫、工場などの施設を構成する建物であってもよい。さらには、建築物が、道路、橋梁などのように、一般的な建物に属さない(すなわち、屋根、柱、および壁がない)場合でも、以下に説明する技術を採用することが可能である。
位置検索システムでは、建築物に設置された発信装置から送信される無線信号を端末装置が受信し、端末装置が受信した無線信号から得られる情報に基づいて建築物における端末装置の位置を検出する。
以下では、「情報」は「データ」と類似した意味で用いる。ただし、「データ」はユーザが意味を認識しなくとも装置が認識できる形式で表現されるだけでよいが、「情報」はユーザが意味を認識する形式で表現されていることを条件とする。したがって、「情報」は、ユーザに認識可能な形式のデータ自体である場合と、ユーザに認識可能となるようにデータを加工して作成されている場合とがある。
以下に説明する位置検索システムにおいて、無線信号の伝送媒体は主として電波であるが、無線信号の伝送媒体は、光、超音波などから選択される場合もある。電波は、マイクロ波の周波数領域を想定しているが、ミリ波の周波数領域でもよい。光は、可視光、赤外光、紫外光のいずれでもよい。超音波は、媒質中を電波する非可聴の粗密波を意味しており、連続波、バースト波、孤立波のいずれでもよい。
無線信号は、以下の構成例で明らかにする情報を伝送する。また、発信装置が送信する無線信号は、単一の伝送媒体であるとは限らず、複数の伝送媒体が使用されてもよい。無線信号に複数の伝送媒体を用いる場合、複数の伝送媒体で同じ情報を伝送する構成と、複数の伝送媒体で異なる情報を伝送する構成とがある。さらに、無線信号の伝送媒体が1種類であっても、無線信号の変調方式、情報を伝送するフレームの構成、無線信号の送信手順などを、無線信号を送信する環境に適合するように選択することがある。
端末装置は、建築物のユーザが携行可能であって発信装置からの無線信号を受信することができるように構成されている。位置検索システムが提供するサービスを建築物のユーザが享受するための前提条件は、端末装置を携行していることである。すなわち、多くのユーザがサービスを享受するには、端末装置は広く普及していることが望ましい。そのため、端末装置は、通常は、スマートフォン、タブレット端末、ノート型のパーソナルコンピュータなどの汎用の移動体端末から選択される。ただし、端末装置は、専用装置であってもよい。
以下に説明する位置検索システムは、建築物が複数のフロアを備えるビルディングである場合を例にする。また、無線信号がマイクロ波の周波数領域に属する電波であって、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)に相当する仕様である場合を例として説明する。この種の無線信号はビーコンと呼ばれることがある。さらに、端末装置は、スマートフォンを想定する。
以下では、本発明の構成例について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する構成例は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。従って、以下の構成例で示される数値、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の構成例における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成要素については同じ符号を付している。
(構成例1)
以下、構成例1の位置検索システム10について、図1から図5を用いて説明する。
図1は、構成例1の位置検索システム10を示す全体構成図である。図1に示すように、この構成例の位置検索システム10は、1台の発信装置20が送信した無線信号を移動体端末である端末装置30が受信するように構成されている。1つの建築物60には1台の発信装置20のみが設置されていてもよいが、一般的には、1つの建築物60には複数台の発信装置20が設置される。図1に示す例では、建築物60における1つの部屋61の天井611に1台の発信装置20が設置されている。発信装置20は、部屋61の全域において端末装置30が無線信号を受信できるように構成される。すなわち、発信装置20は、無指向性アンテナを備える。
位置検索システム10は、発信装置20と端末装置30とのほかに、管理装置40と位置検出装置50とを備える。管理装置40は、建築物60に関する建築情報モデルのデータを記憶している。位置検出装置50は、端末装置30が受信した無線信号から得られる情報に基づいて、建築物60における端末装置30の位置を検出する。
位置検索システム10は、発信装置20を建築物60に設置する施工段階と、端末装置30が無線信号を受信することにより端末装置30の位置を検出する運用段階とでは、異なる動作を行う。ただし、この構成例では、位置検索システム10は施工段階において動作しない。言い換えると、位置検索システム10は、施工段階では動作せず、運用段階では動作するという異なる動作を行う。位置検出装置50は、端末装置30と通信可能なコンピュータサーバとして構成され、管理装置40は位置検出装置50と通信可能なコンピュータサーバとして構成される。
図2は構成例1の位置検索システム10を構成する発信装置20のブロック回路図である。発信装置20は、図2に示すように、無線信号を伝送するための高周波回路21と、発信装置20を特定するための識別情報を記憶する記憶部22と、発信装置20の動作を制御する制御部23とを備える。記憶部22は、書換可能な不揮発性メモリで構成されており、位置検索システム10の運用段階までに識別情報が書き込まれる。発信装置20は、識別情報を記憶部22が記憶する構成のほか、DIPスイッチ(DIP:Dual In-line Package)、ジャンパスイッチなどで識別情報を設定する構成であってもよい。また、発信装置20それぞれに識別情報を固定的に設定する場合は、発信装置20は、工場出荷までに識別情報が設定される構成であってもよい。この種の構成には、回路基板に形成した導電体のパターンで識別情報を表す構成がある。なお、識別情報は、建築物60の範囲で発信装置20にユニークに設定されていればよい。したがって、識別情報は、MACアドレス(Media Access Control address)、IPv6(Internet Protocol Version 6)のアドレスなどから選択される識別情報のほか、ユーザが独自に設定した識別情報であってもよい。
高周波回路21は、所定の時間間隔で間欠的に無線信号を送信するように構成される。所定の時間間隔は、たとえば100[ms]程度に設定されている。また、無線信号の伝送は、たとえば1[ms]程度の時間で行われる。したがって、発信装置20は低消費電力であって、ボタン電池のような小容量の電池を電源に用いる場合でも、数年間は無線信号を送信することが可能である。ただし、ここでは、商用電源に相当する屋内配線から発信装置20に電力が供給される構成を想定している。
端末装置30は、この構成例では、スマートフォンを用いている。端末装置30は、アプリケーションプログラム(いわゆる、「アプリ」)を実行することにより、発信装置20からの無線信号を受信する機能と、位置検出装置50との間で無線信号を伝送する機能とを実現する。すなわち、以下に説明する端末装置30の動作は、端末装置30においてアプリを実行することによって実現される。
端末装置30は、発信装置20からの無線信号を受信すると、発信装置20の識別情報を取得する。その後、端末装置30は、位置検出装置50に対して、端末装置30の位置検出を要求する無線信号を送信する。位置検出を要求する無線信号は、端末装置30が取得した発信装置20の識別情報を含む。ここに、端末装置30が位置検出装置50に送信する無線信号の周波数は、発信装置20が伝送する無線信号の周波数とは異なっていることが望ましい。また、発信装置20は、無線信号を間欠的に送信しているから、端末装置30は、発信装置20からの無線信号が休止している期間に位置検出装置50との間で無線信号を伝送してもよい。この場合、端末装置30は、発信装置20および位置検出装置50との間で伝送する無線信号それぞれに互いに同じ周波数を用いてもよい。
位置検出装置50は、図1に示すように、端末装置30との間で無線信号を伝送する高周波回路51と、管理装置40と通信するための通信インターフェイス部52とを備える。位置検出装置50と管理装置40との間の通信路は、無線通信路と有線通信路とのどちらでもよい。すなわち、通信インターフェイス部52は、無線通信を行う構成と、有線通信を行う構成とのどちらでもよい。ここでは、通信インターフェイス部52が管理装置40との間で有線通信を行う構成を想定する。
位置検出装置50は、管理装置40が格納している情報を用いて端末装置30の位置を検出するために処理部53を備える。処理部53は、端末装置30が無線信号を受け取った発信装置20の位置を検出する第1処理部531と、ユーザに提示する情報を作成する第2処理部532とを備える。
管理装置40は、建築物60に関する建築情報モデルのデータを格納している。建築情報モデルは、コンピュータを用いて構築される仮想空間において建築物を表現するモデルである。ここでは、建築情報モデルとして、BIM(Building Information Modeling)を想定している。以下では、建築情報モデルのデータを、「BIMデータ」という。
BIMデータには、建築物60の形状および寸法を表すデータだけではなく、建築物60を構成する部材に関するデータ、建築物60に配置された設備機器に関するデータのように、建築物60に関連する多種類のデータが統合されている。すなわち、BIMデータは、建築物60を建てるためのデータだけではなく、建築物60に関連する様々なデータの総体を表している。また、BIMデータは、建築物60の内部あるいは外部の環境について、様々な条件に応じたシミュレーションを可能にするデータを含む場合もある。
この構成例の位置検索システム10が用いるBIMデータは、建築物60の形状を表す形状情報と、仮想空間における位置を表す位置情報と、位置情報が表す位置に対応した建築物60での場所を特定するための付加情報とを含んでいる。また、この構成例におけるBIMデータでは、建築物60において発信装置20が設置されている位置の位置情報と、発信装置20を特定するための識別情報とを結び付けられている。なお、建築物60に設置される設備機器が発信装置20を一体に備えている場合、発信装置20の位置情報は設備機器の位置情報で代用可能である。
形状情報は、たとえば、3次元CADシステム(CAD:Computer Aided Design)を用いて表現された情報であって、建築物60の形状および寸法を表すデータを用いて作成される。形状情報を用いると、モニタの画面に建築物60の全体あるいは部分を表す図形を表示することが可能である。形状情報は、建築物60の形状に応じて階層化されている。形状情報は、たとえば、建築物60の全体を正面図あるいは斜視図で表す情報、建築物60の複数のフロアそれぞれを平面図あるいは斜視図で表す情報、一つのフロアに含まれる部屋それぞれを平面図あるいは斜視図で表す情報により階層化した階層構造を採用している。この例の形状情報は、建築物60の全体、フロア、部屋の順で階層化した階層構造を有している。建築物60の全体の形状情報は建築物60の外観の形状を表し、フロアの形状情報は、建築物60の内部の形状を表す。したがって、1つのフロアしか持たない建築物60であってもフロアの階層は省略されない。
上述した形状情報は一例であり、形状情報の階層構造、形状情報の内容は、適宜に設計することが可能である。また、形状情報の内容については、BIMデータに基づいて、形状の簡略化、着色などを行ってもよい。形状の簡略化、着色などの処理は、条件を定めて自動化することが可能であるが、BIMデータに基づいて人が手作業で形状情報を作成することも可能である。形状情報の内容を端末装置30の画面31に表示した例を、図3、図4A、図4Bに示す。図3は位置検索システム10において形状情報で表される建築物60の全体の斜視図である。図4Aは位置検索システム10において形状情報で表されるフロア61の平面図である。図4Bは位置検索システム10において形状情報で表される部屋62を内側から見た斜視図である。形状情報は、たとえば、図3のように建築物60の全体の斜視図を表すデータ、図4Aのように1つのフロア61の平面図を表すデータ、図4Bのように部屋62を内側から見た斜視図を表すデータなどを含む。もちろん、図3から図4Bに示した形状情報の内容は一例である。
位置情報は、仮想空間において2次元の座標値または3次元の座標値で表される。ここでは、建築物60が複数のフロアを備えているから、一つのフロア内での情報(2次元の座標値)だけではなく、フロアを区別するための情報が必要である。そのため、位置情報は原則として3次元の座標値を用いるが、フロアが特定できている場合、一つのフロア内での位置情報については、2次元の座標値で表すことが可能である。また、建築物60が一つのフロアのみで構成されている場合には、位置情報は2次元の座標値で表すことが可能である。
付加情報は、建築物60において場所を特定する場所情報と、場所情報で表される場所を含む地図情報とを含む。付加情報は、BIMデータの階層構造に基づく階層構造を有している。BIMデータは、建築物60の全体を最上位の階層とし、建築物60の階層の下位がフロアの階層、フロアの階層の下位が部屋(廊下などを含む)の階層というように階層構造を有する。この例では、BIMデータは3階層であって部屋が最下位の階層であるが、部屋がさらに小さい区画に分割される場合は、BIMデータは4階層以上の階層構造を有する場合もある。
場所情報は、複数のフロアを有する建物については、フロアの名称と部屋の名称との組み合わせなどが用いられる。たとえば、フロアの名称はフロアの階数で表され、部屋の名称は部屋の用途などで表される。具体例には、場所情報は、「9階−給湯室」、「5階−事務室」などの形式で表される。場所情報は、部屋より下位の階層である区画を含んでいてもよい。この場合、場所情報は、たとえば、「5階−事務室−A区画」、「5階−事務室−B区画」などの形式で表される。言い換えると、場所情報は、建築物60を複数の場所に区分し、区分した場所に名称が与えられた情報である。場所情報は、位置情報に結び付けられる。すなわち、場所情報が表す名称と、位置情報が表す座標値の範囲とが結び付けられる。また、場所情報には、場所情報で特定される場所を代表する一つの座標値が対応付けられる。
地図情報は、場所情報で特定される場所を、建築物60の図形で表す情報である。すなわち、地図情報は、場所情報に形状情報を結び付けた情報である。地図情報は、形状情報のうちの最下位の階層の形状情報を場所情報で特定される場所に結び付けてあり、最下位の階層の形状情報に加えて、上位階層の形状情報を同じ場所情報に結び付けてある。単一の階層に複数の図形(たとえば、平面図と斜視図)が含まれている形状情報の場合、複数の図形がすべて同じ場所情報に結び付けられる。
いま、形状情報が、建築物−5階−事務室−A区画の4階層の階層構造で表され、かつ場所情報で特定される場所が「5階−事務室−A区画」である場合を想定する。この例における形状情報の最下位の階層は「5階−事務室−A区画」であるから、場所情報で特定される場所に「5階−事務室−A区画」が結び付けられる。形状情報において、「5階−事務室−A区画」を含む上位の階層は、「5階−事務室」、「5階」、「建築物」であるから、地図情報では、場所情報で特定される場所に、これらの階層の形状情報も結び付けられる。
上述したBIMデータが管理装置40に格納されていることにより、発信装置20の識別情報がわかれば発信装置20の位置情報が求められる。そして、管理装置40が求めた端末装置30の位置情報は、ユーザに提示するための情報に加工され、端末装置30のモニタの画面に表示される。
以下、位置検出装置50と管理装置40との動作について説明する。図5のように、端末装置30が発信装置20から識別情報を受け取ると(P11)、端末装置30は位置検出装置50に識別情報を引き渡す(P12)。位置検出装置50の第1処理部531は、端末装置30から発信装置20の識別情報を受け取ると、管理装置40に対して、発信装置20の識別情報を照合するように要求する(P13)。この構成例において、BIMデータでは、発信装置20の識別情報に発信装置20の位置情報が結び付けられており、管理装置40は、位置検出装置50から発信装置20の識別情報の照合が要求されると、当該識別情報に結び付けられた発信装置20の位置情報を抽出する(P14)。
管理装置40は、発信装置20の位置情報を抽出すると、この位置情報を用いて付加情報を抽出する(P14)。付加情報には、場所情報と地図情報とが含まれている。すなわち、管理装置40は、発信装置20の位置情報から場所情報および地図情報を抽出する。地図情報は、建築物60について場所情報で特定される場所を地図として表示するための情報であり、形状情報から作成される。場所情報で特定される場所の地図情報は、場所情報で特定される場所に対応した最下位の階層の形状情報と、最下位の階層の形状情報を含むすべての上位階層の形状情報とで構成されている。管理装置40は、位置情報から地図情報を抽出する際には、場所情報で特定される場所に関連するすべての階層の形状情報を地図情報として抽出する。
上述のように、管理装置40は、位置検出装置50の第1処理部531からの要求に対して付加情報を抽出すると、抽出した付加情報を位置検出装置50に送る(P15)。さらに、位置検出装置50の第2処理部532は、管理装置40から付加情報を受け取ると、付加情報に含まれる地図情報に場所情報で特定される場所を示すマークM1、M2(図3、図4A参照)の情報を追加する(P16)。その後、第2処理部532は、マークM1、M2を追加した地図情報を端末装置30に送信する(P17)。
ここに、最下位の階層の形状情報は、場所情報で特定される場所に対応しており、場所情報よりも狭い空間領域を特定することはできない。そのため、最下位の階層の形状情報では、形状情報が示す範囲の代表位置にマークが追加される。なお、この場合の最下位の階層の形状情報は平面図を表すことを想定している。代表位置は、通常は中央位置が選択されるが、入口の位置などであってもよい。
最下位の階層ではない形状情報に対しては、場所情報で特定される場所の代表位置にマークM1、M2が追加される。図3に示す例では建築物60の全体を示す斜視図のうち無線信号を受信した端末装置30が存在するフロアにマークM1として斜線を付している。また、図4Aに示す例では無線信号を受信した端末装置30が存在するフロアの平面図内で端末装置30が存在する場所(部屋)にマークM2を付している。
端末装置30は、位置検出装置50から地図情報を受け取ると、モニタの画面に地図情報を表示する(P18)。ここに、管理装置40から抽出した地図情報には複数階層の形状情報が含まれているから、モニタの画面に表示する形状情報を選択する必要がある。複数階層の形状情報からモニタの画面に表示する形状情報を選択する処理は、位置検出装置50の第2処理部532、またはアプリを実行する端末装置30で行われる。また、端末装置30が発信装置20からの電波を受信したときにモニタの画面に最初に表示される形状情報は、第2処理部532またはアプリを実行する端末装置30が定める。たとえば、発信装置20からの無線信号を受信した端末装置30が最初にモニタの画面に表示する形状情報は、地図情報に含まれる複数階層の形状情報のうちの最下位の階層の形状情報となるように定められる。
端末装置30のモニタの画面に形状情報が表示された状態において、地図情報に含まれる複数階層の形状情報のうちの他の階層の形状情報をモニタの画面に表示させるには、端末装置30が備える操作部をユーザが操作する。言い換えると、地図情報が端末装置30のモニタの画面に表示された状態で操作部を操作することにより、モニタの画面に表示されている階層とは異なる階層の形状情報がモニタの画面に表示される。この構成例では、端末装置30がスマートフォンであるから操作部はタッチパネルなどである。端末装置30がパーソナルコンピュータであるときには操作部は、キーボードあるいはマウスなどである。なお、モニタの画面に表示している形状情報がどの階層であっても、操作部の操作によって、モニタの画面に表示している形状情報の拡大と縮小とが可能である。
ここに、地図情報に含まれる複数階層の形状情報は位置検出装置50の第2処理部532が保持し、端末装置30において操作部が操作されると、操作部に指定された階層の形状情報を、第2処理部532が端末装置30に送信するように構成される。したがって、端末装置30は、地図情報に含まれる複数階層の形状情報を記憶する必要がない。すなわち、端末装置30はモニタの画面に表示しない形状情報を記憶しないから、端末装置30の記憶容量が無駄に消費されることがない。
なお、地図情報に含まれる複数階層の形状情報を第2処理部532から端末装置30に送信する処理を行い、端末装置30で複数階層の形状情報を記憶する構成を採用することも可能である。この構成を採用すると、操作部の操作によってモニタの画面に表示される形状情報を変更する際に、端末装置30と位置検出装置50との間の通信を行う必要がないから、モニタの画面に表示される内容の切替に要する時間が短縮される可能性がある。
以上のように、建築物60において端末装置30が存在する位置を端末装置30のモニタの画面に表示するには、発信装置20からの無線信号を受信した端末装置30が位置検出装置50に発信装置20の識別情報を通知する。その後、位置検出装置50の第1処理部531は、管理装置40に対して発信装置20の識別情報をBIMデータと照合する要求を行い、管理装置40から端末装置30の位置情報に対応した付加情報を取得する。そして、位置検出装置50の第2処理部532は、端末装置30の場所情報および地図情報を受け取り、地図情報にマークM1、M2を追加し、マークM1、M2を追加した地図情報を端末装置30のモニタの画面に表示させる。また、地図情報に含まれる特定の階層の形状情報がモニタの画面に表示された状態で、端末装置30の操作部を操作することにより、他の階層の形状情報がモニタの画面に表示される。したがって、端末装置30を携行するユーザは、建築物60における端末装置30の位置によって、ユーザ自身の位置を認識することが可能になる。
上述した動作例は、端末装置30が発信装置20からの無線信号を受信した時点の付加情報を用い、形状情報を静止画像として端末装置30のモニタの画面に表示している。すなわち、端末装置30が発信装置20からの無線信号を受信した時点における端末装置30の位置がわかるようにモニタの画面に情報を表示している。一方、経路案内などに用いる場合は、端末装置30の位置が移動するのに伴って、端末装置30のモニタの画面に表示されている情報を更新する必要がある。したがって、位置検出装置50は、端末装置30の位置が変化すれば、端末装置30の位置に応じて、必要があれば形状情報の内容を更新できるように第1処理部531が管理装置40から情報を抽出する。端末装置30の位置について形状情報を変化させずにマークM1、M2の位置だけで対応する場合には、第2処理部532がマークM1、M2の位置を変更する。
たとえば、形状情報における最下位の階層のデータが部屋の内側から見た斜視図を表すとすれば、端末装置30の位置が変化すれば、最下位の階層の形状情報は必ず変化する。この場合は、第1処理部531が管理装置40から情報を抽出する。一方、形状情報においてフロアの平面図を表すデータについては、端末装置30の位置が変化しても、端末装置30が同じフロア内に存在していれば、形状情報を変更する必要がない。したがって、第2処理部532がマークM2の位置を変更する。なお、端末装置30がジャイロセンサなどを備えている場合、部屋の内側から見た斜視図を端末装置30の向きに応じて変化させてもよい。
なお、管理装置40と位置検出装置50とは、プログラムに従って動作するプロセッサを備える。すなわち、管理装置40と位置検出装置50とは、主要なハードウェア要素としてコンピュータを備える。この種のプロセッサは、メモリを別に必要とするMPU(Micro-Processing Unit)、単一のデバイスにメモリを備えるマイコン(Microcontroller)などから選択される。なお、管理装置40と位置検出装置50とはハードウェアを共用してもよい。すなわち、1つのプロセッサを管理装置40と位置検出装置50とに兼用してもよい。また、位置検出装置50と管理装置40とのそれぞれが、コンピュータサーバであってもよい。コンピュータサーバは、1台のコンピュータで構成されるほか、コンピュータネットワークを通して通信する複数台のコンピュータが連携して、ユーザからは1台のコンピュータのように振る舞う構成であってもよい。また、コンピュータサーバは、クラウドコンピューティングシステムとして構築されていてもよい。
プログラムは、メモリのうちのROM(Read Only Memory)に格納された状態で提供されるほか、コンピュータで読取可能な光ディスク、外部記憶装置、メモリカードなどの記録媒体で提供することも可能である。また、インターネットのような電気通信回線を通してプログラムが提供されてもよい。記憶媒体または電気通信回線を通して提供されるプログラムは、書換可能な不揮発性のメモリに格納される。
(構成例2)
構成例1では、発信装置20の識別情報を端末装置30が無線信号で受け取り、この識別情報に基づいて、建築物60において端末装置30が存在する場所に対応した地図情報を管理装置40から抽出している。
構成例2では、発信装置20からの無線信号の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を端末装置30が測定し、識別情報に加えて受信信号強度も位置検出装置50に引き渡すようにアプリを設計している。端末装置30は、無線信号の受信信号強度に3段階程度の評価値を与える。たとえば、端末装置30は、無線信号の受信信号強度を、「強」、「中」、「弱」の3段階に分類する。この例において、「強」、「中」、「弱」のそれぞれが評価値に相当する。
図6は構成例2の位置検索システム10を示す全体構成図である。端末装置30が1台の発信装置20から無線信号を受信した場合、端末装置30は、発信装置20の識別情報だけではなく、無線信号の受信信号強度の評価値を位置検出装置50に送信する。位置検出装置50は、構成例1と同様に、発信装置20の識別情報を用いて端末装置30に関する付加情報を管理装置40から受け取る。
ところで、図6に示すように、位置検出装置50は、受信信号強度の評価値を用いて端末装置30が存在する場所を特定するための第3処理部533を備える。第3処理部533は、管理装置40から受け取った付加情報に、受信信号強度の評価値を組み合わせることにより、端末装置30が存在する位置を、付加情報に含まれる場所情報で特定される場所の範囲よりも狭い範囲に絞り込む。すなわち、無線信号の受信信号強度が、おおむね発信装置20からの距離に対応しているとみなし、地図情報で特定される場所の範囲を発信装置20からの距離に応じて分割する。
具体的には、位置検出装置50の第3処理部533は、発信装置20の識別情報および受信信号強度の評価値を端末装置30から受け取り、第2処理部532が管理装置40から抽出した付加情報に含まれる地図情報を受け取る。さらに、第3処理部533は、受信信号強度の評価値に基づいて端末装置30が存在する空間領域を絞り込み、地図情報のうちの最下位の階層の形状情報に絞り込んだ空間領域を当て嵌める。すなわち、第3処理部533は、最下位の階層の形状情報に、絞り込んだ空間領域と他の空間領域とを区別する情報を付加する。形状情報に情報を付加した場合、端末装置30のモニタの画面に形状情報を表示したときに、絞り込んだ空間領域が他の空間領域とは異なる色で表される。もちろん、絞り込んだ空間領域と他の空間領域とは、色ではなくハッチングなどの模様によって区別してもよい。
第3処理部533が、端末装置30の存在する空間領域を絞り込み、絞り込んだ空間領域を他の空間領域と区別する情報を形状情報に付加すると、第3処理部533は、作成した情報を第2処理部532に返す。第2処理部532は、第3処理部533から情報を受け取ると、第3処理部533で絞り込まれた空間領域の代表位置にマークM1、M2(図3、図4A参照)を追加する。つまり、構成例1では、地図情報を構成する最下位の階層の形状情報より狭い範囲には端末装置30の位置を表すマークを付けることができなかったのに対して、構成例2では、最下位の階層の形状情報が表す空間領域よりも狭い空間領域にマークを付けることが可能である。
ところで、発信装置20が無線信号を送信する方向に指向性がないとすれば、無線信号の受信信号強度で分割された領域は、理想的には円形状または円環状である。そのため、円環状の領域であれば、地図情報で特定された場所の範囲であっても、互いに離れた位置が同じ領域に含まれる可能性がある。たとえば、発信装置20が部屋の天井611の中央に配置されているとすれば、部屋の周部が、場所にかかわらず同じ領域に含まれる可能性がある。
したがって、端末装置30の位置を特定するために受信信号強度の情報を用いる場合、発信装置20から無線信号を送信する方向に指向性を付与することが望ましい。また、無線信号を送信する方向を複数に分割し、分割した方向の識別を可能にする情報を無線信号に含めてもよい。なお、場所情報で特定される場所の範囲において、端となる位置に発信装置20を配置できる場合、この場所の範囲の端からの距離に応じた領域に分割することが可能である。
また、無線信号は建築物60で反射することが予想され、無線信号が反射すると、端末装置30の受信信号強度が発信装置20からの距離とは対応しない可能性が生じる。そこで、発信装置20との位置関係に応じた端末装置30での受信信号強度があらかじめ計測され、計測された情報が位置検出装置50に記憶されていてもよい。このような情報を位置検出装置50に登録されていれば、端末装置30が受けた無線信号の受信信号強度に基づいて、無線信号を送信した発信装置20との相対位置がわかるから、端末装置30の位置をより精度よく求めることが可能になる。他の構成は、構成例1と同様である。
構成例2では、発信装置20の識別情報だけではなく、端末装置30での無線信号の受信信号強度の情報を無線信号に含めているから、端末装置30の位置を定めるための情報量が構成例1よりも多くなる。その結果、場所情報で特定される場所の範囲よりも狭い範囲で、端末装置30の位置を求めることが可能になる。
上述した構成例は、端末装置30が1台の発信装置20からの無線信号を受信することが条件であるが、発信装置20の配置によっては、1台の端末装置30が複数台の発信装置20からの無線信号を受信する可能性がある。この場合、端末装置30は、無線信号を受信している複数台の発信装置20を識別情報によって区別し、複数台の発信装置20それぞれの受信信号強度を位置検出装置50に通知する。
ここにおいて、1台の端末装置30が複数台の発信装置20から無線信号を受信する可能性がある場合、つまり発信装置20が比較的近い距離に配置されている場合、複数台の発信装置20が送信した無線信号の干渉を防止することが必要である。そのため、比較的近い距離に配置されている複数台の発信装置20は、無線信号を送信するタイミングを異ならせてある。無線信号を送信するタイミングを異ならせるために、複数台の発信装置20が無線信号を間欠的に送信し、かつ無線信号を送信するタイミングを不規則に変化させる構成を採用している。この場合、複数台の発信装置20が無線信号を送信する期間が一時的に重複したとしても、端末装置30では複数台の発信装置20からの無線信号を個別に受信可能な期間が生じる。
複数台の発信装置20が異なるタイミングで無線信号を送信するために、複数台の発信装置20が以下のように構成されていてもよい。すなわち、複数台の発信装置20は、互いに異なる時間間隔で無線信号を送信するように構成されていてもよい。また、複数台の発信装置20は、無線信号を送信するタイミングを互いに調停するように構成されていてもよい。あるいは、複数台の発信装置20の動作を統括する装置が、発信装置20から無線信号を送信するタイミングを調節してもよい。無線信号が電波である場合、端末装置30が受信可能な周波数の範囲において、複数台の発信装置20がそれぞれ異なる周波数の無線信号を送信する構成であってもよい。言い換えると、発信装置20が周波数の異なる複数のチャネルから無線信号を送信するチャネルを選択し、端末装置30が無線信号のチャネルを識別すればよい。
上述のように複数台の発信装置20からの無線信号を受信する場合、端末装置30が存在する空間領域は、複数台の発信装置20がそれぞれ送信した無線信号を端末装置30で受信可能な空間領域のうち、空間領域が重なり合う空間領域である。そのため、端末装置30が1台の発信装置20からのみの無線信号を受信する場合よりも、端末装置30が存在する位置を絞り込むことが可能である。
構成例2では、端末装置30が無線信号の受信信号強度を評価しているから、複数台の発信装置20からの無線信号を端末装置30が受信する場合に、受信信号強度の情報を合わせて用いると、端末装置30の位置をさらに狭めることが可能である。たとえば、端末装置30が3台の発信装置20からの無線信号を受信し、3台の発信装置20からの無線信号それぞれの受信信号強度が「弱」、「中」、「弱」であったと仮定する。この例であれば、端末装置30が存在する空間領域は、3台の発信装置20からの無線信号を受信可能な空間領域のうち、1番目と3番目との発信装置20から比較的遠く、2番目の発信装置20には比較的近い空間領域であると言える。そして、この空間領域は、1番目と3番目との発信装置20からは同程度の距離であると言える。
すなわち、位置検出装置50の第3処理部533は、複数台の発信装置20それぞれの識別情報および受信信号強度を端末装置30から受け取ると、第2処理部532が管理装置40から抽出した情報を用いて、端末装置30が存在する空間領域を絞り込む。
ところで、端末装置30が複数台の発信装置20から無線信号を受信した場合、第2処理部532では複数台の発信装置20それぞれに対応した付加情報を抽出する可能性がある。この場合、第2処理部532が抽出する地図情報に含まれる最下位の階層の形状情報は、発信装置20ごとに異なる可能性がある。ただし、端末装置30が無線信号を受信している複数台の発信装置20の距離は比較的小さいから、地図情報に含まれる形状情報のうち最下位の階層の形状情報を除けば、他の形状情報は共通していることが予想される。
たとえば、1つの部屋に複数台の発信装置20が設置されており、この部屋を区分した区画が地図情報の最下位の階層であるとすると、第2処理部532が抽出する地図情報のうちの最下位の階層の形状情報は異なっている可能性がある。ただし、最下位の階層の形状情報に対して1つ上位階層の形状情報は部屋に対応する。したがって、第2処理部532が抽出した地図情報のうち下から2番目の階層である形状情報は一致している可能性が高い。この場合、第2処理部532は、複数台の発信装置20からの無線信号に基づいて求めた複数の地図情報から共通の形状情報を抽出し、共通の形状情報のうちで最下位の階層となる形状情報を第3処理部533に引き渡す。
第3処理部533が行う処理は、端末装置30が1台の発信装置20から無線信号を受信している場合と同様である。つまり、第2処理部532から引き渡された形状情報に対して、端末装置30が存在する空間領域の代表位置にマークを表示するための情報を追加する。この場合、端末装置30におけるモニタの画面に最初に表示する形状情報は、複数台の発信装置20の無線信号から共通して抽出された形状情報のうちの最下位の階層の形状情報とする。
以上説明したように、端末装置30が無線信号を受信すると、発信装置20の識別情報だけではなく、受信信号強度の評価値も用いて端末装置30の位置を特定するから、構成例1に比べて端末装置30の位置を精度よく求めることが可能である。とくに、複数台の発信装置20からの無線信号を端末装置30が受信した場合には、端末装置30が存在する範囲をより精度よく求めることが可能である。
(構成例3)
構成例1、構成例2は、発信装置20の位置情報と識別情報とが管理装置40にBIMデータとして登録されており、管理装置40が位置検出装置50からの要求に応じてBIMデータから付加情報を抽出する構成を採用している。そのため、端末装置30は、発信装置20からの無線信号を受信すると、端末装置30が存在する位置を求める要求を位置検出装置50に対して行っている。
図7は構成例3の位置検索システム10を示す全体構成図である。図8は構成例3の位置検索システム10を構成する発信装置20Aおよびその周辺の構成のブロック回路図である。
構成例3は、図7のように、発信装置20Aが管理装置40と通信する構成であって、位置検出装置50は備えていない。発信装置20Aは、図8のように、高周波回路21と記憶部22と制御部23とに加えて、管理装置40と通信するためのインターフェイス部24を備える。また、高周波回路21は、端末装置30との間で双方向に通信する。
記憶部22は、識別情報だけではなく、管理装置40からインターフェイス部24を通して受け取る付加情報を記憶する。インターフェイス部24は、管理装置40との間で有線通信路または無線通信路を通して通信し、管理装置40は発信装置20Aにあらかじめ設定されている識別情報をBIMデータと照合することにより、発信装置20Aに関する付加情報を抽出する。付加情報は、構成例1と同様に、発信装置20Aが設置されている部位の場所情報と地図情報とを含み、地図情報は複数階層の形状情報を含む。また、形状情報には、発信装置20Aの位置に応じたマークM1、M2(図3、図4A参照)の情報が含まれる。
付加情報は、発信装置20Aを設置した後、位置検索システム10の運用を開始するまでの期間に、記憶部22に書き込まれる。付加情報を管理装置40から読み出すタイミングは、発信装置20Aと管理装置40とのどちらから指示してもよい。たとえば、付加情報を読み出すタイミングを端末装置30から発信装置20Aに指示し、発信装置20Aが管理装置40から付加情報を読み出して記憶部22に記憶するように構成される。また、作業者が設置を確認した発信装置20Aに対して、識別情報を指定して管理装置40から発信装置20Aに付加情報を送信し、発信装置20Aの記憶部22に付加情報を記憶させるように構成してもよい。付加情報を記憶部22に記憶させる動作は制御部23が制御する。なお、発信装置20Aの場所が変更された場合、あるいは発信装置20Aが追加して設置された場合などには、発信装置20Aの記憶部22に付加情報を記憶させる。
記憶部22に付加情報が記憶された発信装置20Aの制御部23は、常時は無線信号を間欠的に送信するように高周波回路21を制御する。この無線信号には、発信装置20Aの識別情報だけではなく、付加情報のうちの場所情報と地図情報に含まれる最下位の階層の形状情報とが含まれる。この無線信号に含まれるデータ量は、識別情報のみを含む場合と比較すれば増加するが、実用的な時間間隔で無線信号を送信することが可能である。この構成では、地図情報における他の階層の形状情報を送信するように、端末装置30から発信装置20Aに要求することによって、モニタの画面に表示される形状情報を変更することが可能である。
上述した動作であっても、発信装置20Aが無線信号を実用的な時間間隔で送信することは可能であるが、付加情報を含まない無線信号を送信するよりも、付加情報を含む無線信号を送信するほうが、発信装置20Aでの消費電力は大きくなる。したがって、端末装置30が無線信号を受信していない期間に、付加情報を含む無線信号を送信すると、消費電力が増加する。
消費電力を低減させるために、発信装置20Aは、常時は、無線信号によって識別情報のみを送信する構成を採用してもよい。この構成では、端末装置30は、発信装置20Aからの無線信号を受信すると、無線信号に含まれる識別情報を用いて発信装置20Aに対して付加情報の送信を要求する。そして、端末装置30から付加情報の送信を要求された発信装置20Aは、記憶部22に記憶している付加情報を端末装置30に送信する。ここで、端末装置30からの要求に対して発信装置20Aから最初に送信する付加情報は、場所情報と最下位の階層の形状情報とである。すなわち、端末装置30が受け取る情報は、構成例1と同様に、場所情報と最下位の階層の形状情報とである。
以上のように、端末装置30が付加情報の要求および受取を行う相手が、構成例1では位置検出装置50であるのに対して、構成例3では発信装置20Aである点が異なる。構成例3の他の構成および動作は構成例1と同様である。構成例3の技術は、構成例2と同様に端末装置30が複数台の発信装置20Aからの無線信号を受信して、端末装置30の位置を絞り込む構成に適用することも可能である。この場合、端末装置30を動作させるアプリに、位置検出装置50の第3処理部533と同様の処理を付加すればよい。
(構成例4)
構成例3は、発信装置20Aが管理装置40と通信し、発信装置20Aの記憶部22が識別情報に加えて付加情報を記憶する構成である。また、識別情報は、建築物60の範囲で発信装置20Aにユニークに設定されており、MACアドレス、IPv6のアドレス、ユーザが独自に設定した識別情報などから選択される。MACアドレス、IPv6のアドレスなどは、発信装置20の工場出荷前に設定される。一方、ユーザが独自に設定する識別情報を採用する場合、発信装置20Aに個別に識別情報を設定する必要がある。発信装置20Aの工場出荷前に設定された識別情報を採用すると、発信装置20Aの位置情報と識別情報とを対応付ける作業が必要であり、独自の識別情報を採用すると識別情報の設定作業に手間がかかる。
図9は構成例4の位置検索システム10を示す全体構成図である。
構成例4では、図9に示すように、発信装置20、20Aの位置を計測する計測装置70を配置し、計測装置70が計測した位置情報を発信装置20、20Aに対応付ける技術を説明する。この構成例の技術は、構成例1、構成例2の発信装置20と、構成例3の発信装置20Aとのどちらにも適用可能である。発信装置20、20Aは、建築物60に設置した後に無線信号を送信可能であり、さらに、構成例3と同様に、端末装置30との間で通信可能である。また、構成例4では、端末装置30は、管理装置40との間で通信可能である。
端末装置30は、建築物60における位置を検出する運用段階の本来動作ではなく、準備段階では発信装置20、20Aの識別情報に位置情報を対応付ける準備動作を選択することが選択可能である。つまり、端末装置30は、使用前に発信装置20、20Aの位置情報と識別情報とを対応付けるための動作が可能である。端末装置30の動作は、端末装置30で動作させるアプリにより定められる。
ただし、本来動作を行う端末装置30と、準備動作を行う端末装置30とは、同じでも異なっていてもよい。すなわち、本来動作を行う端末装置30と準備動作を行う端末装置30とは兼用可能であるが、図9のように、準備動作を行う端末装置30が、専用の設定装置30Aとして、本来動作を行う端末装置30とは異なる構成を有していてもよい。言い換えると、本来動作を行う端末装置30は設定装置30Aと兼用する必要はなく、専用の設定装置30Aを設けておけば、本来動作を行う端末装置30の使用者と、設定装置30Aを操作する作業者とを区別することが可能になる。なお、この構成例では、端末装置30が準備動作と本来動作とに兼用されている場合について説明する。
計測装置70は、レーザスキャナと称する装置を例とするが、三次元の座標値を計測可能であれば、飛行時間法、位相シフト法、ステレオ画像法などの原理で三次元の座標値を計測する構成であってもよい。ここでは、部屋に設置した発信装置20、20Aの位置情報をレーザスキャナで求めるために、レーザスキャナが床上に設置され、ビーム状のレーザ光が部屋全体で走査されるようにレーザ光の放射方向を変化させる場合を例とする。
レーザ光を放射するヘッドは、水平方向において回転し、かつ回転中にレーザ光を上下方向に走査する。レーザスキャナは、レーザ光を放射してから反射光を受光するまでの時間に相当する情報を求めることにより、ヘッドから物体までの距離を計測する。したがって、レーザ光を照射した方向と物体までの距離とから、物体に関して、レーザスキャナに定めた座標系における三次元の座標値が求められる。
ここで、レーザスキャナに定めた座標系を、BIMデータで建築物60を表している仮想空間の座標系に合わせることによって、仮想空間での物体の位置が求められる。すなわち、発信装置20、20Aを建築物60に設置した後に、計測装置70によって発信装置20、20Aの位置を計測し、計測結果を管理装置40が記憶しているBIMデータと照合すれば、BIMデータに含まれる発信装置20、20Aの位置情報に対応付けることができる。
なお、計測装置70が出力する計測値は部屋に存在する様々な物体のデータを含んでいるから、計測装置70が出力する計測値から、発信装置20、20Aの計測値(座標値)を特定する必要がある。発信装置20、20Aの計測値(座標値)は、たとえば、計測装置70から出力される計測値に適宜の判断条件を適用することによって認識する。判断条件は、発信装置20、20Aの形状、部屋における発信装置20、20Aの配置などを用いる。発信装置20、20Aの計測値は、判断条件によって自動的に抽出するのではなく、計測装置70が計測した計測値からユーザが指定してもよい。
いま、識別情報が発信装置20、20Aの工場出荷前に発信装置20、20Aに設定されている場合を想定する。また、端末装置30は準備動作を行う状態である。端末装置30は、発信装置20、20Aから無線信号を受信すると識別情報を抽出する。また、端末装置30は、計測装置70が計測した発信装置20、20Aの位置情報を取得する。発信装置20、20Aの位置情報は、計測装置70の測定値をユーザが端末装置30に入力することが可能であるが、計測装置70の計測値を出力するインターフェイス部に端末装置30を接続することによって、発信装置20、20Aの位置情報を取得することが望ましい。
端末装置30は、発信装置20、20Aの識別情報を無線信号から取得し、発信装置20、20Aの位置情報を計測装置70の計測値から取得した後に、管理装置40と通信する。管理装置40は、端末装置30から発信装置20、20Aの位置情報および識別情報を受け取ると、発信装置20、20Aの位置情報と識別情報とを対応付けた情報をBIMデータに付加する。その後、管理装置40は、発信装置20、20Aの記憶部22に付加情報を記憶させる。以後の動作は、構成例3と同様である。したがって、端末装置30が本来動作のアプリで動作していれば、発信装置20、20Aは、無線信号を通して、場所情報および地図情報を端末装置30に提供することが可能になる。
上述した動作例では、発信装置20、20Aからの無線信号に含まれる識別情報と、計測装置70が求めた発信装置20、20Aの位置情報とを、端末装置30によって対応付けている。これに対して、発信装置20、20Aと通信するためのアダプタ装置を計測装置70に接続すれば、計測装置70が求めた発信装置20、20Aの位置情報を、無線信号によって発信装置20、20Aに通知することが可能である。この動作例では、端末装置30を準備動作で動作させる必要がないという利便性がある。また、発信装置20、20Aの位置情報を、計測装置70から端末装置30を介在させて管理装置40に送る代わりに、計測装置70が求めた発信装置20、20Aの位置情報を管理装置40に直接送る構成を採用してもよい。
計測装置70を用いて発信装置20、20Aの位置情報を取得する構成を採用すると、発信装置20、20Aの位置情報がBIMデータに含まれていない場合であっても、BIMデータに発信装置20、20Aの位置情報を付加することが可能である。すなわち、発信装置20、20Aが建築物60の施工後に設置されたとしても、発信装置20、20Aからの無線信号を用いて端末装置30の位置を地図情報に表すことが可能になる。
ところで、発信装置20、20Aを建築物60に設置した後に発信装置20、20Aの識別情報を設定する場合、建築物60に発信装置20、20Aを設置した直後では、端末装置30は無線信号を受信しても発信装置20、20Aの識別情報が得られない。そのため、準備動作のためのアプリで動作している端末装置30が、発信装置20、20Aの識別情報を設定するために用いられる。すなわち、端末装置30は、準備動作において発信装置20、20Aに無線信号を送信し、発信装置20、20Aに識別情報を設定するように動作する。
上述した動作例と同様に、計測装置70が計測した発信装置20、20Aの位置情報を、無線信号により発信装置20、20Aに通知する。このような動作により、端末装置30から発信装置20、20Aに、識別情報および位置情報を与えることが可能である。次に、発信装置20、20Aから管理装置40に位置情報を送信し、管理装置40が記憶しているBIMデータでの発信装置20、20Aの位置情報と、発信装置20、20Aから受け取った位置情報とを照合させる。
管理装置40は、両方の位置情報が誤差の範囲内で整合する場合、管理装置40に位置情報を送信した発信装置20、20Aを、BIMデータとして登録されている発信装置20、20Aとして認識し、この発信装置20、20Aに付加情報を送信する。なお、2つの位置情報が誤差の範囲内で整合するとは、座標値で表される2つの位置情報の距離が、あらかじめ定めた閾値より小さいことを意味する。
構成例4の他の構成および動作は、構成例3と同様である。また、構成例1あるいは構成例2において、発信装置20、20Aが端末装置30および管理装置40と通信可能であれば、構成例4の技術を適用可能である。
なお、位置検索システム10を構成する発信装置20、20Aと端末装置30との関係は、RFID(Radio Frequency Identifier)のリーダとタグとの関係のように、発信装置20、20Aが端末装置30から情報を読み取る構成であってもよい。この場合、端末装置30が発信装置20、20Aから受信した無線信号に基づいて得た情報を、発信装置20、20Aが端末装置30から読み取るように構成する必要がある。
構成例3、構成例4では、発信装置20が管理装置40と通信し、発信装置20が付加情報を記憶している。そのため、発信装置20に記憶させる付加情報は、管理装置40が選択する必要がある。すなわち、管理装置40は、構成例1、構成例2において説明した位置検出装置50の第2処理部532と同様の機能を有していることが望ましい。すなわち、管理装置40は、発信装置20が記憶する付加情報をBIMデータから抽出する機能を有する。ただし、この機能は、管理装置40ではなく、発信装置20が備えていてもよく、管理装置40とは別に専用の装置に持たせることも可能である。
ところで、上述した構成例は、いずれも端末装置30の位置を端末装置30のモニタの画面に表示するように構成されている。すなわち、端末装置30を携行するユーザが、自身の存在する場所をモニタの画面で確認することを想定している。これに対して、端末装置30を携行する人の位置を、他のユーザが監視するために上述した技術を用いることが可能である。
図10は位置検索システム10を監視に用いる構成例を示す全体構成図である。
たとえば、構成例1、構成例2の位置検出装置50が管理装置40から抽出した付加情報、あるいは構成例3、構成例4の発信装置20、20Aから端末装置30が受け取る付加情報を、図10のように、端末装置30とは別に設けた監視装置80に送信することが可能である。監視装置80は、ハードウェア構成として、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンのように、モニタを備えるコンピュータが採用される。監視装置80は、付加情報の内容をモニタに表示し、地図情報に含まれる形状情報の階層を選択することが可能である点では、端末装置30と共通した機能を有する。
ただし、監視装置80は、モニタの画面に、複数台の端末装置30の位置を同時に表示することが可能である点で端末装置30とは異なる機能を有している。この構成により、建築物60に存在する端末装置30の台数(およその人数)、あるいは分布を知ることが可能であり、また端末装置30の位置を監視することによって、人の動きを監視することが可能になる。人の動きを監視すれば、建築物60からの避難誘導の際には、避難者を適切な誘導経路に導くための補助に用いることが可能である。また、競技場、劇場、映画館のように、多数の座席を備える施設において、座席への誘導を行うために用いることが可能である。なお、監視装置80は、端末装置30にアプリを搭載すれば、端末装置30と兼用することが可能である。
図11は位置検索システム10を構成する発信装置20、20Aを備える設備機器90の例を示す斜視図である。
上述した構成例では、単体で設けられる発信装置20、20Aを示したが、図11のように、建築物60に設置される設備機器90に発信装置20、20Aが組み込まれていてもよい。図11は建築物60の天井611に取り付けられる設備機器90として照明器具を示している。設備機器90は、照明器具、空調装置、火災感知器、椅子などのようなものでもよい。ここでの椅子は、競技場、映画館、劇場などの建築物60に設置される設備機器90を想定している。設備機器90は、建築物60に所定のサービスを提供する本体部91を備え、本体部91に発信装置20、20Aが一体に組み込まれる。なお、発信装置20、20Aは、上述した構成例における発信装置20、20Aと同様の構成であって同様に機能する。
照明器具として機能する本体部91に発信装置20、20Aが組み込まれた設備機器90であれば、照明器具の配置がBIMデータに記述されるから、発信装置20、20Aの位置情報がBIMデータに必然的に含まれる。したがって、BIMデータの作成時に、発信装置20、20Aの位置情報を記述することなく、照明器具などの設備機器90の配置を記述すれば、BIMデータとして発信装置20、20Aの位置情報も記述される。
上述した構成例において、管理装置40と位置検出装置50とは、1つの建築物60に対して1台ずつ設けられているが、複数の建築物60で共用するように設けられていてもよい。すなわち、管理装置40は複数の建築物60について建築情報モデルのデータを記憶する構成であってもよい。また、位置検出装置50は複数の建築物60において端末装置30の位置を検出できる構成であってもよい。さらに、管理装置40が複数の建築物60それぞれに対応するように設けられ、位置検出装置50が複数の建築物60に共用される構成であってもよい。あるいは、管理装置40が複数の建築物60に共用され、位置検出装置50が複数の建築物60それぞれに対応する構成であってもよい。
なお、端末装置30が管理装置40、位置検出装置50、監視装置80などと通信する場合に、発信装置20、20Aを経由する経路を用いることも可能である。たとえば、構成例1、構成例2における位置検出装置50と端末装置30との間の通信では、発信装置20を経由させることが可能である。また、図9に示した構成例における端末装置30Aと管理装置40との間の通信、あるいは図10に示した構成例における端末装置30と監視装置80との通信においても、発信装置20Aを経由させることが可能である。
上述した位置検索システム10は、管理装置40と発信装置20、20Aと端末装置30とを備える。管理装置40は、建築物60について建築情報モデルのデータ(BIMデータ)を記憶している。発信装置20、20Aは、建築物60に設置されており無線信号を送信する。端末装置30は、無線信号を受信する。位置検索システム10は、管理装置40から建築情報モデルのデータで表現される地図情報を含む付加情報を抽出し、端末装置30が無線信号を受信した位置を地図情報に表す。
この構成によれば、建築情報モデルのデータ(BIMデータ)で地図情報を含む付加情報が表現されているから、端末装置30の位置を表す地図情報を別途に作成する必要がない。すなわち、BIMデータがすでに作成されている建築物60であれば、地図情報を含む付加情報をBIMデータから容易に抽出あるいは作成することができるから、付加情報の作成に手間がかからない。
発信装置20、20Aは、建築物60の複数箇所にそれぞれ配置され、無線信号は、複数の発信装置20、20Aにそれぞれ定められた識別情報を含むことが望ましい。
この構成によれば、端末装置30が無線信号を受信したときに、複数の発信装置20、20Aのうちのいずれからの無線信号かを識別情報によって識別することが可能である。したがって、端末装置30が無線信号を受信した位置を発信装置20、20Aの位置に基づいて精度よく知ることが可能になる。
位置検索システム10は、無線信号に含まれる識別情報を端末装置30から受け取り、建築情報モデルのデータ(BIMデータ)に識別情報を照合する位置検出装置50をさらに備えることが望ましい。位置検出装置50は、端末装置30から受け取った識別情報に基づいて、管理装置40から付加情報を抽出する第1処理部531と、付加情報を端末装置30に送信する第2処理部532とを備える。第1処理部531は、端末装置30が無線信号を受信した位置が地図情報に含まれるように付加情報を管理装置40から抽出するように構成される。
この構成によれば、端末装置30と管理装置40との間で位置検出装置50が情報を仲介する。端末装置30が発信装置20、20Aからの無線信号を受信すると、端末装置30が位置検出装置50に発信装置20、20Aの識別情報を通知し、位置検出装置50の第1処理部531は発信装置20、20Aの識別情報を受け取ると、発信装置20、20Aの識別情報で管理装置40からBIMデータを抽出する。すなわち、位置検出装置50が端末装置30と管理装置40との仲介を行うことにより、発信装置20、20Aから端末装置30が無線信号を受信した位置を地図情報に含めることが可能になる。言い換えると、BIMデータを記憶している管理装置40と、端末装置30とのほかに、発信装置20、20Aおよび位置検出装置50を加えることによって、端末装置30の位置を地図情報に表すことが可能になる。
位置検出装置50は、端末装置30が無線信号を受信したときに、端末装置30が受信した無線信号の受信信号強度を用いて端末装置30が存在する空間領域を絞り込む第3処理部533を備えることが望ましい。この場合、第2処理部532は、第1処理部531が抽出した付加情報に第3処理部533が絞り込んだ空間領域の情報を付加して端末装置30に送信する。
この構成によれば、発信装置20からの無線信号を端末装置30が受信する空間領域の中で、受信信号強度による場所の絞り込みが可能であり、端末装置30が無線信号を受信している位置をより正確に求めることが可能である。
また、発信装置20Aは、制御部23と記憶部22と高周波回路21とを備えていてもよい。制御部23は、発信装置20Aの位置が地図情報に含まれるように、管理装置40から付加情報を抽出する。記憶部22は、付加情報を記憶する。高周波回路21は、端末装置30と双方向に通信する。制御部23は、常時は、識別情報を含み付加情報を含まない無線信号を送信し、端末装置30から付加情報の送信が要求されたときに、付加情報を含む無線信号を送信する。
この構成によれば、発信装置20Aが管理装置40から抽出した地図情報を記憶し、端末装置30から付加情報の送信が要求されると、端末装置30に地図情報を送信するから、発信装置20Aに地図情報を書き込んだ後には管理装置40が不要になる。すなわち、運用時には、発信装置20Aと端末装置30とがあればよく構成が簡単になる。また、一般に付加情報は識別情報よりもデータ量が多いから、付加情報を含む無線信号を発信装置20Aが常時送信していると、発信装置20Aの消費電力が増加するが、常時は付加情報を含まない無線信号を送信することにより、消費電力の増加が抑制される。
上述した位置検索システム10の構成に加え、発信装置20の位置を計測する計測装置70と、発信装置20、20Aから識別情報を取得する設定装置(端末装置30A)とを備えていてもよい。この場合、管理装置40は、計測装置70が計測した発信装置20、20Aの位置と、設定装置(端末装置30A)が取得した発信装置20、20Aの識別情報とを対応付けた情報を、建築情報モデルのデータに付加する機能を有する。
この構成によれば、発信装置20、20Aに関する情報がBIMデータに存在しない場合、たとえば、既存の建築物60に発信装置20、20Aを設置した場合であっても、発信装置20、20Aの位置情報と識別情報とをBIMデータに付加することが可能である。すなわち、発信装置20、20Aに関する情報がBIMデータに存在しない場合でも、発信装置20、20Aの位置情報と識別情報とをBIMデータに付加することにより、端末装置30の位置を検出することが可能になる。
付加情報は、建築物60の全体の情報と、建築物60におけるフロアの情報と、フロアに含まれる区画の情報との階層構造を有することが望ましい。
この構成によれば、付加情報の階層構造を用いて地図情報を階層的に表すことが可能である。すなわち、端末装置30が無線信号を受信した位置を、建築物60の全体の中で表す状態と、フロア内で表す状態と、フロアに含まれる区画で表す状態との選択が可能になる。
端末装置30は、移動体端末であり、発信装置20、20Aから無線信号を受信した位置を含む地図情報をモニタに表示することが望ましい。
すなわち、スマートフォン、タブレット端末、可搬型のパーソナルコンピュータなどの移動体端末(端末装置30)において、建築物60における位置をモニタに表示することが可能であり、移動体端末(端末装置30)を持つユーザが建築物60における自身の位置を確認することが可能である。そのため、ユーザが現在の位置を知る目的、あるいはユーザが現在の位置から目的の位置までの経路を探索する目的などに用いることが可能である。
端末装置30は、移動体端末であり、位置検索システム10は、端末装置30とは別に設けられ、端末装置30が発信装置20、20Aから無線信号を受信した位置を含む地図情報をモニタに表示する監視装置(端末装置30A)をさらに備える構成を採用してもよい。
すなわち、移動体端末である端末装置30が無線信号を受信した位置を、端末装置30とは別に設けた監視装置である端末装置30Aのモニタに表示するから、端末装置30を持つ人の位置を監視することが可能になる。たとえば、建築物60において人の分布を監視することが可能であり、また建築物60において人の動きを監視することにより避難誘導に活用することが可能である。
この構成例における位置検索方法は、以下の2つのステップを含む。第1のステップは、建築物60について建築情報モデルのデータ(BIMデータ)を記憶している管理装置40から建築情報モデルのデータで表現される地図情報を含む付加情報を抽出するステップである。第2のステップは、建築物60に設置された発信装置20、20Aが送信した無線信号を受信した端末装置30の位置を地図情報に表すステップである。
この方法によれば、建築情報モデルのデータ(BIMデータ)で地図情報を含む付加情報が表現されているから、端末装置30の位置を表す地図情報を別途に作成する必要がない。すなわち、BIMデータがすでに作成されている建築物60であれば、地図情報を含む付加情報をBIMデータから容易に抽出あるいは作成することができるから、付加情報の作成に手間がかからない。また、端末装置30が無線信号を受信すると、管理装置40のBIMデータで表現される地図情報を含んだ付加情報を抽出した後に、地図情報に端末装置30の位置を表すから、管理装置40が付加情報を記憶していればよい。つまり、発信装置20、20Aおよび端末装置30は、付加情報を記憶している必要がなく、ハードウェア資源に対する要求が軽減される。
また、位置検索方法は、以下の3つのステップを含んでいてもよい。第1のステップは、無線信号を受信した端末装置30から発信装置20、20Aの識別情報を受け取ると、識別情報を建築情報モデルのデータ(BIMデータ)に照合して、管理装置40から付加情報を抽出するステップである。第2のステップは、端末装置30が無線信号を受信した位置が地図情報に含まれるように付加情報を管理装置40から抽出するステップである。第3のステップは、付加情報を端末装置30に送信するステップである。
この方法は、上述した位置検索方法に加えて、付加情報を端末装置30に送信するステップを含んでいるから、端末装置30において付加情報に含まれる地図情報を認識することが可能である。そのため、発信装置20、20Aからの無線信号を受信した端末装置30が、地図情報において端末装置30の位置を認識することができる。たとえば、発信装置20、20Aからの無線信号を受信した端末装置30が、自身の位置をモニタに表示することが可能である。
上述した発信装置20Aは、建築物60に配置され無線信号を送信する。この発信装置20Aは、制御部23と記憶部22と高周波回路21とを備える。制御部23は、建築物60について建築情報モデルのデータ(BIMデータ)を記憶している管理装置40から建築情報モデルのデータで表現される地図情報を含んだ付加情報を抽出する。記憶部22は、発信装置20Aの位置が地図情報に含まれるように管理装置40から抽出された付加情報を記憶する。高周波回路21は、端末装置と双方向に通信する。さらに、制御部23は、常時は、識別情報を含み付加情報を含まない無線信号を送信し、端末装置30から付加情報の送信が要求されたときに、付加情報を含む無線信号を送信する。
この構成によれば、発信装置20Aが管理装置40から抽出した地図情報を記憶し、端末装置30から付加情報の送信が要求されると、端末装置30に地図情報を送信するから、運用時には、発信装置20Aと端末装置30とがあればよく構成が簡単になる。また、常時は付加情報を含まない無線信号を送信することにより、運用時における発信装置20Aでの消費電力の増加が抑制される。
上述した位置検出装置50は、建築物60に配置された発信装置20からの無線信号を受信する端末装置30との間で通信し、かつ建築物60について建築情報モデルのデータ(BIMデータ)を記憶している管理装置40から情報を抽出する。そのため、位置検出装置50は、第1処理部531と第2処理部532とを備える。第1処理部531は、無線信号に含まれる発信装置20の識別情報を端末装置30から受け取ると、建築情報モデルのデータで表現される地図情報を含む付加情報を管理装置40から抽出する。第2処理部532は、付加情報を端末装置30に送信する。また、第1処理部531は、端末装置30が無線信号を受信した位置が地図情報に含まれるように付加情報を管理装置40から抽出する。
この構成によれば、位置検出装置50が端末装置30と管理装置40との間で情報を仲介することにより、発信装置20から端末装置30が無線信号を受信した位置を地図情報に含めることが可能になる。すなわち、BIMデータを記憶している管理装置40と、端末装置30とのほかに、発信装置20および位置検出装置50を加えることによって、端末装置30の位置を地図情報に表すことが可能になる。
上述した設備機器90は、建築物60に設置され建築物60に所定のサービスを提供する本体部91と、位置検索システム10の構成要素としての発信装置20、20Aであって本体部91に一体に設けられている発信装置20、20Aとを備える。
この設備機器90を建築物60に設置すると、設備機器90の位置が発信装置20、20Aの位置に相当するから、BIMデータに対して、設備機器90の位置に関する情報とは別に発信装置20、20Aの位置に関する情報を設定する必要がない。
なお、上述した実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんのことである。
例えば、位置検索方法に含まれるステップは、コンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本発明は、それらの方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本発明は、そのプログラムを記録したCD−ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
例えば、本発明が、プログラム(ソフトウェア)で実現される場合には、コンピュータのCPU、メモリおよび入出力回路等のハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、CPUがデータをメモリまたは入出力回路等から取得して演算したり、演算結果をメモリまたは入出力回路等に出力したりすることによって、各ステップが実行される。
また、上記構成例の位置検索システムに含まれる構成要素は、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。
また、集積回路はLSIに限られず、専用回路または汎用プロセッサで実現されてもよい。プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、または、LSI内部の回路セルの接続および設定が再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサが、利用されてもよい。
さらに、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、位置検索システムに含まれる構成要素の集積回路化が行われてもよい。
その他、上記構成例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各構成例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。