以下、本発明に係る第1乃至第5実施形態の膜位置調整装置1,1A〜1D及びそれらの何れかを備える血液浄化システム2,2Cについて上述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する膜位置調整装置1,1A〜1D、及び血液浄化システム2,2Cは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
<第1実施形態>
血液を浄化する血液浄化方法では、図1に示す血液浄化システム2が用いられている。血液浄化システム2は、患者の血管を流れる血液を血液浄化システム2に取り入れて浄化し、浄化した血液を患者の血管に戻すようになっている。血液浄化システム2は、血液回路11と、血液ポンプ12と、血液浄化機13と、2つのドリップチャンバー14,15と、プライミング液供給装置16と、3つのバルブ17〜19と、膜位置調整装置1とを備えている。
血液回路11は、可撓性を有するチューブであり、チューブ内の流路を液体、主に血液又はプライミング液が流れるようになっている。また、血液回路11の両端部は、患者の動脈及び静脈の各々に繋げることができるようになっている。また、血液回路11には、血液ポンプ12が設けられており、血液ポンプ12によって血液回路11の流路の液体を上流側から下流側へと送るようになっている。即ち、血液ポンプ12によって動脈の血液を血液回路11の流路に脱血して静脈に返血することができるようになっている。また、血液回路11には、血液ポンプ12の下流側に血液浄化機13が設けられている。
血液浄化機13は、血液浄化器21と、透析液給排装置22とを有している。血液浄化器21は、血液回路11において血液ポンプ12の下流側に介在している。血液浄化器21内には、血液回路11の血液が流れ、更にこの血液に透析膜を介して隣接するように透析液が流れている。血液浄化器21では、透析膜を介して血液と透析液との間で物質交換や溶質除去が行われており、透析液給排装置22は、血液浄化器21に透析液を供給し、物質効果や溶質除去を行った後の排液を排出するようになっている。このように血液浄化機13は、透析液を用いて血液を浄化するようになっている。
また、血液回路11には、血液浄化器21の上流側及び下流側の各々に上流側ドリップチャンバー14及び下流側ドリップチャンバー15が介在しており、2つのドリップチャンバー14,15は、血液回路11を流れる血液を取込んで液体に含まれる空気等の気体を血液から除去するようになっている。更に詳細に説明すると、ドリップチャンバー14,15の各々は、血液回路11の他にエア抜きライン24,25に繋がっており、ドリップチャンバー14,15内の空気がエア抜きライン24,25から大気に放出されて除去されるようになっている。
また、血液回路11の血液ポンプ12の上流側には、プライミング液供給装置16が接続されている。プライミング液供給装置16は、例えばプライミング液が入れられた容器であり、プライミング液供給装置16のプライミング液は、血液ポンプ12が駆動されることでプライミングライン23を介して血液回路11に供給されるようになっている。プライミングライン23には、プライミング用開閉バルブ17が設けられている。
プライミング用開閉バルブ17は、プライミングライン開閉信号を入力できるようになっており、プライミングライン開閉信号の入力状態に応じてプライミングライン23を開閉するようになっている。プライミング用開閉バルブ17の他に、血液回路11には上流側及び下流側開閉バルブ18,19(開閉機構)が設けられている。上流側開閉バルブ18は、プライミングライン23と血液回路11との接続点より上流側に配置されており、下流側開閉バルブ19は、血液回路11において下流側ドリップチャンバー15より下流側に配置されている。上流側及び下流側開閉バルブ18,19の各々は、上流側及び下流側開閉信号を入力できるようになっており、各信号の入力状態に応じて血液回路11を開閉するようになっている。また、エア抜きライン24,25には、エア抜き用開閉バルブ26,27の各々が設けられており、このバルブによってエア抜きライン24,25を開閉することができるようになっている。このように血液回路11及びエア抜きライン24,25には、それらを開閉する5つのバルブ17〜19、26,27によって構成される開閉機構30が設けられている。
このように構成されている血液浄化システム2では、血液回路11を流れる血液の圧力を測定すべく3つの圧力測定用器具31を有している。3つの圧力測定用器具31は、血液回路11に介在しており、調整装置本体32と共に膜位置調整装置1を構成している。圧力測定用器具31は、血液回路11を流れる血液の圧力を測定するための器具であり、前記血液の圧力を気体の圧力、本実施形態では空気圧に変換するようになっている。3つの圧力測定用器具31は、図1に示すように血液回路11に介在している。より詳細に説明すると、3つの圧力測定用器具31の各々は、上流側開閉バルブ18と血液ポンプ12との間、血液ポンプ12と上流側ドリップチャンバー14との間、及び上流側ドリップチャンバー15と下流側開閉バルブ19との間に配置されている。なお、以下では、最も上流側に配置されている圧力測定用器具31を第1圧力測定用器具31u、最も下流側に配置されている圧力測定用器具31を第2圧力測定用器具31d、残余の圧力測定用器具31を第3圧力測定用器具31mと称する場合がある。これら3つの圧力測定用器具31u,31d,31mは、同じ構成を有しており、以下では、3つの圧力測定用器具31u,31d,31mの構成について、圧力測定用器具31と称して図2を参照しながら詳細に説明する。
図2に示すように、圧力測定用器具31は、ハウジング41と、隔膜42と、エアチューブ43と、雌型コネクタ部44とを有している。ハウジング41は、下側ハウジング部41a及び上側ハウジング部41bによって構成されている。下側ハウジング部41aは、所定方向(本実施形態では、圧力測定用器具31内において血液が流れる血流方向であり、図2の紙面左右方向)に長尺な大略半楕円体形状になっている。下側ハウジング部41a内には、所定方向に長尺で且つ下方に突出する大略半楕円体形状の内部空間が形成されている。また、下側ハウジング部41aは、所定方向両側の側面に流入孔41c及び流出孔41dを夫々有している。流入孔41c及び流出孔41dは、所定方向に延在しており、そこに血液回路11のチューブを挿入して接続することができるようになっている。また、流入孔41c及び流出孔41dは、下側ハウジング部41aの内部空間に繋がっており、血液回路11の血液は、流入孔41cから下側ハウジング部41aの内部空間に流入して流出孔41dから流出するようになっている。下側ハウジング部41aの内部空間は、上方に開口しており、下側ハウジング部41aの上端部には、その開口を塞ぐように上側ハウジング部41bが被せられている。
上側ハウジング部41bは、大略ドーム状に形成されており、上側ハウジング部41b内に所定方向に長尺で且つ上方に突出する大略半楕円体形状の内部空間が形成されるように薄肉になっている。また、上側ハウジング部41bの天井部分には、接続口41eが形成されており、接続口41eから上側ハウジング部41bの内部空間に気体である空気を供給できるようになっている。このような形状を有する上側ハウジング部41bは、下方に開口しており、その開口端部に周方向全周にわたって延びるフランジ41fが形成されている。上側ハウジング部41bは、フランジ41fを下側ハウジング部41aの上端部に載せるようにして下側ハウジング部41aに上下方向に重ね合わされており、重ね合わせて固定することによってハウジング41が構成されるようになっている。このように構成されているハウジング41内には、所定方向に長尺な大略楕円体形状の内部空間41gが形成され、内部空間41gには隔膜42が配置されている。
隔膜42は、可撓性を有する膜状部材であり、上側ハウジング部41bの内部空間と同様に大略半楕円体形状に形成されている。隔膜42の開口端には、周方向全周にわたってフランジ42aが形成されており、フランジ42aは、下側ハウジング部41aの上端部と上側ハウジング部41bのフランジ41fと間に配置されている。即ち、隔膜42は、2つのハウジング部41a,41bによって挟持されてハウジング41に固定されている。隔膜42は、初期状態において例えば上側ハウジング部41b側に突出して上側ハウジング部41bの内壁に沿って配置されている。なお、隔膜42は、後述するように初期状態において下側ハウジング部41a側に突出して下側ハウジング部41aの内壁に沿って配置されてもよい(図2の二点鎖線参照)。このようにして配置される隔膜42は、ハウジング41の内部空間41gを血液室45及び気体室46の2つの部屋に区画している。
血液室45は、隔膜42より下側ハウジング部41aの底側に位置する部屋であり、流入孔41c及び流出孔41dと繋がっている。それ故、血液室45には、血液回路11を流れる血液が流入孔41cから流入し、血液室45の血液が流出孔41dから流出するようになっている。他方、気体室46は、隔膜42より上側ハウジング部41bの天井側に位置する部屋である。なお、図2のように上側ハウジング部41b側に突出して上側ハウジング部41bの内壁に沿って隔膜42が配置されている場合、上側ハウジング部41bの内周面と隔膜42との間にある僅かな隙間が気体室46となっている。気体室46は、接続口41eに繋がっており、接続口41eから空気を供給できるようになっている。気体室46内の空気は、隔膜42を介して血液室45の血液によって押されたり、又は血液室45の血液を押したりするようになっている。そうすることで、可撓性を有する隔膜42は、血液室45の内圧及び気体室46の内圧に応じて位置を変えて、図3に示すように上側ハウジング部41bの内周面から離れるようになっている。
また、隔膜42の開口端付近は、残余の部分である本体部分42bより薄肉になっており、隔膜42の開口端付近には、折返し部42cが周方向全周にわたって形成されている。このような形状を有することで、隔膜42は、折返し部42cで折り返しやすくなっており、折り返すことによって本体部分42bを下側ハウジング部41aの方へと突出させることができるようになっている。また、突出させることによって、本体部分42bが下側ハウジング部41aの内周面に沿って配置される。なお、下側ハウジング部41aの底部には前記内周面より下側に凹んだ血液通路41hが形成されており、本体部分42bが下側ハウジング部41aの内周面に沿って配置されても血液室45における流入孔41cから流出孔41dに向かう流れ(又はその逆方向の流れ)が遮られないようになっている。このように隔膜42は、本体部分42bの位置を変えることができる、即ち隔膜42の位置を変えることができるようになっている。
このように隔膜42は、本体部分42bの位置を変えることができる、即ち隔膜42の位置を変えることができるようになっている。また、ハウジング41の接続口41eにエアチューブ43が挿入されている。エアチューブ43は、その中に空気が通る通路を有しており、その一端がハウジング41の接続口41eに挿入されている。エアチューブ43の他端部には、雌型コネクタ部44が設けられており、エアチューブ43は、雌型コネクタ部44を介して後述する調整装置本体32に接続されている。即ち、3つの圧力測定用器具31u,31d,31mの各々は、調整装置本体32からエアチューブ43を介して気体室46に空気が供給されるようになっている。
図1に示すように調整装置本体32は、3つの雄型コネクタ部33を有している。第1及び第2コネクタ部である雄型コネクタ部33は、互いに異なる色の部材で構成されている。また、3つの雄型コネクタ部33は、各々に対応付けられた各圧力測定用器具31u,31d,31mの雌型コネクタ部44を接続するようになっている。各雌型コネクタ部44は、対応付けられた雄型コネクタ部33と同じ色の部材で構成されており、各雌型コネクタ部44を何れの雄型コネクタ部33に接続すべきかが示唆されている。即ち、各雄型コネクタ部33自体(より詳細には、雄型コネクタ部33の筐体)が教示部としての役割を果たしている。このように構成される調整装置本体32は、気体室46の圧力を検出すると共に、圧力測定用器具31の隔膜42の位置を推定し且つ隔膜42の位置を調整するようになっている。以下では、調整装置本体32の構成について更に詳細に説明する。
図1に示すように調整装置本体32は、3つの気体量調整機34と、3つの圧力センサ35と、制御器36とを有している。3つの気体量調整機34の各々は、別々の調整用ライン37を介して雄型コネクタ部33の各々に繋がっている。気体量調整機34は、調整用ライン37及びエアチューブ43を介して圧力測定用器具31の気体室46に繋がっており、気体室46の空気を吸引したり気体室46に空気を供給したりして気体室46の空気量を調整するようになっている。具体的に説明すると、各気体量調整機34は、調整用ポンプ38と、ポンプ駆動機構39とを有している。調整用ポンプ38は、例えばシリンダ型のポンプであり、シリンダ38aとピストン38bとを有している。なお、調整用ポンプ38は、シリンダ型のポンプに限定されず、供給する流量を調整可能なポンプであれば構成は限定されない。シリンダ38aは、調整用ライン37と繋がっており、シリンダ38aには、ピストン38bが進退可能に挿入されている。ピストン38bには、ポンプ駆動機構39が設けられている。ポンプ駆動機構39は、例えばボールねじ機構によって構成されており、そこに入力される進退信号に応じた距離分、ピストン38bを進退させるようになっている。
このように構成されている気体量調整機34は、進退信号に応じてピストン38bを進退させる。ピストン38bが前進すると、前進した距離に応じた気体量(本実施形態では、体積)の空気が調整用ライン37を介してシリンダ38aから気体室46に供給される。他方、ピストン38bが後退すると、後退した距離に応じた気体量(本実施形態では、体積)の空気が調整用ライン37を介して気体室46からシリンダ38aに吸引されるようになっている。また、各調整用ライン37は、その途中から検出ライン40が分岐しており、検出ライン40を介して圧力センサ35に接続されている。圧力センサ35は、調整用ライン37を介して気体室46の内圧に応じた圧力信号を出力するようになっており、圧力センサ35は、制御器36に圧力信号を出力するようになっている。
制御器36は、圧力センサ35からの圧力信号に基づいて各気体室46の内圧を検出する、つまり血液室45の血液の圧力(即ち、血液室45の内圧)を検出するようになっている。また、制御器36は、3つのポンプ駆動機構39に個別に電気的に接続され、5つのバルブ17〜19,26,27及び血液ポンプ12にも電気的に接続されている。制御器36は、このようにして電気的に接続されている各構成に対応する信号を出力し、各構成の動きを制御するようになっている。また、制御器36は、調整装置本体32が有する報知器50に接続されている。報知器50は、例えば赤色灯やLEDディスプレイ等によって構成され、施術者及び患者に所定の事態を報知するようになっている。本実施形態において報知器50は、制御器36からの指令に基づいて雌型コネクタ部44の接続不良やエアチューブ43のエア漏れがある旨のアラームを報知するようになっている。
このように構成されている血液浄化システム2では、血液回路11の一端部(即ち、上流側開閉バルブ18側の端部であって動脈側の末端部)が患者の動脈に繋がれ、血液回路11の他端部(即ち、下流側開閉バルブ19側の端部であって静脈側の末端部)を患者の静脈に繋がれている。この状態において、血液回路11の一端部から他端部に向かって血液が流れるように、制御器36が血液ポンプ12を駆動する。第1圧力測定用器具31uが血液ポンプ12より上流側に位置しているので、血液ポンプ12が駆動することによって第1圧力測定用器具31uの血液室45の血液が血液ポンプ12によって吸引され、前記血液室45が陰圧になる。他方、第2圧力測定用器具31d、第3圧力測定用器具31mでは、それらが血液ポンプ12より下流側に位置しているので、血液ポンプ12が駆動することによって各圧力測定用器具31d,31mの血液室45に血液が送り込まれ、前記血液室45が陽圧になる。つまり、第1圧力測定用器具31uでは、隔膜42が血液室45側に引っ張られてその位置を変え、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mでは、隔膜42が気体室46側に押し出されてその位置を変えるようになっている。このように隔膜42の位置が変わることで、気体室46の空気が膨張したり圧縮したりし、その結果、気体室46の空気の圧力が変わる。即ち、血液室45の内圧が隔膜42によって空気圧に変換され、膜位置調整装置1は、圧力センサ35を用いてこの空気圧を検出することで血液室45の内圧を測定するようになっている。
また、隔膜42は、血液室45の内圧を空気圧に変換するようになっているが、血液室45の陰圧の絶対値が大きくなればなるほど下側ハウジング部41a側に大きく引っ張られる。逆に、隔膜42は、血液室45の陽圧の絶対値が大きくなればなるほど上側ハウジング部41b側に大きく押し出される。それ故、第1圧力測定用器具31uに陰圧を検出させる場合、隔膜42は、初期状態で上側ハウジング部41b側に突出して上側ハウジング部41bの内壁に沿うように配置される、即ち、隔膜42の本体部分42bを上限位置(限界位置)に配置することが好ましい。このように配置することによって、広い範囲にわたって陰圧を測定することができる。それ故、第1圧力測定器具31uでは、この膜位置を隔膜42の正規位置とすることが好ましい。他方、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mに陽圧を検出させる場合、隔膜42は、初期状態で下側ハウジング部41a側に突出して下側ハウジング部41aの内壁に沿うように配置される、即ち、隔膜42の本体部分42bを下限位置(限界位置)に配置することが好ましい。このように配置されることによって、広い範囲にわたって陽圧を測定することができる。それ故、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mでは、この膜位置を隔膜42の正規位置とすることが好ましい。
このように、3つの圧力測定用器具31u,31d,31mは、配置される位置に応じて隔膜42の位置を調整して使用されるようになっているが、3つの圧力測定用器具31u,31d,31mは、同じ構成を有し且つ一般的に同じ方法で製造される。つまり、使用前における隔膜42は、下側ハウジング部41a又は上側ハウジング部41bの何れか一方側に突出している。それ故、使用する際、隔膜42の位置を推定し、隔膜42が正規位置にない場合、例えば図2のように隔膜42が上側ハウジング部41b側に突出させて製造された場合、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mにおける隔膜42の位置を調整する必要がある。
また、血液浄化システム2では、血液浄化療法を患者に施術する前に血液回路11内及び血液浄化機13内の洗浄及びそれらの中の空気を除去すべくプライミングが行われる。この際に、血液回路11を流れる血液が各圧力測定用器具31u,31d,31mの隔膜42の位置を変動させる場合がある。そこで、プライミング後に隔膜42の位置を推定し、隔膜42が正規位置にない場合に隔膜42を正規位置に調整する必要がある。
このように血液浄化システム2では、様々な要因により各圧力測定用器具31u,31d,31mの隔膜42の位置が正規位置にない場合がある。そこで、制御器36は、膜位置調整処理を実行し、気体量調整機34によって吸引又は供給された気体量(本実施形態では、体積)と気体室46の内圧との関係に基づいて隔膜42の位置を推定するようになっている。また、膜位置調整処理では、制御器36が推定される隔膜42の位置に応じて気体量調整機34を駆動して隔膜42を予め定められた位置に調整するようになっている。以下では、膜位置調整処理について図4を参照しながら説明する。
膜位置調整処理では、例えば血液回路11の両端を接続してループが形成され又は血液回路11の動脈側の末端を閉じてから、図示しない入力機器によってプライミング指令が入力されると開始され、ステップS1に移行する。プライミング工程であるステップS1では、プライミングが行われる。即ち、制御器36は、プライミング用開閉バルブ17に第1開閉信号を出力してプライミングライン23を開き且つ血液ポンプ12を駆動する。これにより、プライミング液供給装置16から血液回路11の動脈側部分を介して血液ポンプ12にプライミング液が吸引され、更に血液ポンプ12から血液回路11の静脈側部分に供給される。これにより、ループ内でプライミング液が循環する。3つのバルブ17〜19が開いている状態では、血液回路11がエア抜きライン24,25を介して大気に開放されているので、プライミング液が循環することで血液回路11及び血液浄化機13の空気が除去されて血液回路11及び血液浄化機13がプライミング液で満たされる。プライミングが行われると、ステップS2に移行する。
プライミング終了判断工程であるステップS2では、プライミングが終了したか否かを判定する。即ち、制御器36は、規定の液量を流し、図示しない気泡センサによって血液回路11内に残存する気泡の有無を判定する。気泡があると判定されると、ステップS1に戻ってプライミングを継続する。他方、気泡がないと判定されると、制御器36は、血液回路11及び血液浄化機13がプライミング液で十分に満たされるとして血液ポンプ12を止めてプライミングを終了する。プライミングが終了すると、ステップS3に移行する。
クランプ工程であるステップS3では、5つのバルブ17〜19,26,27によってプライミングライン23、血液回路11、及びエア抜きライン24,25を閉じる。即ち、制御器36は、プライミング用開閉バルブ17に第1開閉信号を入力してプライミングライン23を閉じ、また上流側及び下流側開閉バルブ18,19にも第2及び第3開閉信号を入力して血液回路11の両端付近を閉じる。更に、エア抜き用開閉バルブ26,27に第4開閉信号及び第5開閉信号を入力してエア抜きライン24,25を閉じる。これにより、大気に開放されていた血液回路11が密閉される。血液回路11が密閉されると、ステップS4に移行する。回数リセット工程であるステップS4では、圧力検出回数nをゼロにする。圧力検出回数nをゼロになると、ステップS5に移行する。
圧力検出工程であるステップS5では、圧力検出処理が実行される。圧力検出処理では、3つの圧力測定用器具31u,31d,31mの気体室46の体積の所定量分変化させ、変化後の圧力を検出する処理である。圧力検出処理では、陰圧を検出する第1圧力測定用器具31uと、陽圧を検出する第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mとで検出方法が異なっている。具体的には、第1圧力測定用器具31uでは、その気体室46から空気を吸引した後に圧力を検出し、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mでは、それらの気体室46に空気を供給した後に圧力を検出するようになっている。以下では、図5を参照しながら圧力検出処理を説明する。
圧力検出処理が実行されるとステップS21に移行する。エア吸引・供給工程であるステップS21では、気体量調整機34によって所定量分、即ち所定体積の空気を吸引又は供給する。即ち、ステップS21では、まず制御器36が、ポンプ駆動機構39を駆動して調整用ポンプ38から第1圧力測定用器具31uの気体室46から空気を吸引する。この際、制御器36は、ポンプ駆動機構39の動きを制御して所定距離分ピストン38bを後退させる。これにより、前記所定距離に応じた所定体積の空気が気体室46から調整用ポンプ38に吸引される。他方、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mでは、制御器36がポンプ駆動機構39を駆動して調整用ポンプ38によって気体室46に空気を供給する。この際、制御器36は、ポンプ駆動機構39の動きを制御して前記距離に応じた所定体積の空気を調整用ポンプ38から気体室46に供給する。3つの圧力測定用器具31u,31d,31mに関して、空気の供給及び吸引が終了すると、ステップS22に移行する。圧力検出工程であるステップS22では、圧力センサ35からの信号に基づいて3つの圧力測定用器具31u,31d,31mの気体室46の内圧を制御器36が検出する。気体室46の内圧を検出すると、検出した内圧(以下、「検出圧」ともいう)は、3つの圧力測定用器具31u,31d,31m毎に前記所定体積に対応付けて制御器36に記憶される。制御器36に記憶されると、圧力検出処理が終了してステップS6に移行する。
検出回数カウント工程であるステップS6では、圧力検出回数nに1を加算する。圧力検出回数nに1を加算すると、ステップS7に移行する。規定回数判定工程であるステップS7では、圧力検出回数nが規定回数a以上であるかを制御器36が判定する。圧力検出回数nが規定回数a以下であると判定されるとステップS5に戻り、圧力検出回数nが規定回数aを超えるまで圧力検出が行われる。なお、圧力検出処理では、圧力の検出処理が行われるたびに吸引又は供給する体積を規定分だけ増やすようになっている。つまり、制御器36は、n=0の時にピストン38bを初期位置に移動させ、圧力検出回数nが増えるたびに予め定められた距離L分ピストン38bを移動させる。これにより、圧力検出回数nの時にはピストン38bが初期位置からn×L分移動し、それに応じた体積の空気が気体室46から吸引又は気体室46に供給されるようになっている。圧力検出処理が繰り返し行われ、圧力検出回数nが規定回数aを超えると、ステップS8に移行する。
相関関係判定工程であるステップS8では、各圧力測定用器具31u,31d,31mの体積変化量と圧力との関係が予め設定された規定関係と相関性を有しているか否かを判定する。というのも、吸引又は供給される空気が微量であり且つ血液回路11が密閉されているので、第1圧力測定用器具31uでは隔膜42の位置が殆ど変化することがない。それ故、空気を気体室46に吸引又は供給することで、気体室46、エアチューブ43、調整用ライン37及びシリンダ38aで構成される密閉系空間51の空気がボイルの法則に従って膨張する又は圧縮される。即ち、吸引又は供給前の初期状態における気体室46の体積を体積V1、初期状態におけるエアチューブ43、調整用ライン37及びシリンダ38aの体積の総和を初期体積V2、調整用ポンプ38の吸引又は供給した空気の体積を体積変化量V3、大気圧を大気圧P0、及び検出される圧力を検出圧Pxとすると、検出される検出圧Pxが以下の式(1)で示される。
式1
シリンダ38aの初期位置が予め定められている膜位置調整装置1では、体積V2が所定値である。それ故、調整用ポンプ38による体積変化と圧力との関係(即ち、体積変化量V3と検出圧Pxとの関係)は、初期状態の気体室46の体積V1、即ち隔膜42の初期位置に応じて異なる。図6及び7のグラフには、体積変化量V3と検出圧Pxとの関係を示す。図6及び7の縦軸は、検出圧Pxを示し、横軸は、体積変化量V3を示している。また、図6のグラフは、陰圧測定タイプの圧力測定用器具31に関して気体室46から空気を吸引したときの体積変化量V3と検出圧Pxとの関係を示し、図7のグラフは、陽圧測定タイプの圧力測定用器具31に関して気体室46に空気を供給したときの体積変化量V3と検出圧Pxとの関係を示している。
例えば、図6の実線a1及び◇点で示す体積変化量V3と検出圧Pxとの関係は、隔膜42が初期状態で上側ハウジング部41b側に突出させて上側ハウジング部41bの内壁に沿うように配置されて気体室46の体積が略0mlである場合(陰圧測定タイプの圧力測定用器具31において、隔膜42が正規位置に配置されている場合)における前記関係を示す。この図6の実線a1及び◇点で示すような関係は、例えば実験等によって算出される関係であり、第1圧力測定用器具31uにおける規定関係となる。なお、以下で説明する各関係も同様である。図6の実線a2及び△点で示す体積変化量V3と検出圧Pxとの関係は、隔膜42が初期状態で上側ハウジング部41bの内壁から若干離れて配置され、気体室46の体積が略αml(0<α)となっている場合のものである。図6の実線a3及び□点で示す体積変化量V3と検出圧Pxとの関係は、初期状態において隔膜42が実線a1の場合に比べて上側ハウジング部41bの内壁から若干離れて配置され、且つ実線a2の場合に比べて上側ハウジング部41bの内壁寄りに配置されている。つまり、初期状態の気体室46の体積が略β(0<β<α)mlとなっている場合における体積変化量V3と検出圧Pxとの関係である。
他方、図7の実線b1及び◇点で示す体積変化量V3と検出圧Pxとの関係は、隔膜42が初期状態で下側ハウジング部41a側に突出させて下側ハウジング部41aの内壁に沿うように配置されて気体室46の体積が最大である場合(陽圧測定タイプの圧力測定用器具31において、隔膜42が正規位置に配置されている場合)における前記関係を示す。この図7の実線b1及び◇点で示すような関係は、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mにおける規定関係となる。また、図7の実線b2及び△点で示す体積変化量V3と検出圧Pxとの関係は、隔膜42が初期状態で下側ハウジング部41aの内壁から若干離れて配置され、初期状態の気体室46が実線b1の場合より略γml減少した場合のものである。図7の実線b3及び□点で示す体積変化量V3と検出圧Pxとの関係は、初期状態において隔膜42が実線b1の場合に比べて下側ハウジング部41aの内壁から若干離れて配置され、且つ実線b2の場合に比べて下側ハウジング部41aの内壁寄りに配置されている。つまり、初期状態の気体室46が実線b1の場合より略ε(0<ε<γ)ml減少した場合のものである。
図6及び図7のグラフからわかるように、初期状態における気体室46の体積、即ち隔膜42の初期位置が異なると体積変化量V3と検出圧Pxとの関係が異なる。ステップS8では、このような隔膜42の初期位置に応じて変化する体積変化量V3と検出圧Pxとの関係を勘案して、体積変化量V3と検出圧Pxとの関係が規定関係と相関性を有しているか否かを判定して、隔膜42の位置を推定するようになっている。以下では、相関性の有無に関する制御器36の判定について詳細に説明する。
制御器36では、陰圧測定用として別々の体積変化量に対応付けられた複数の規定圧が記憶されている。規定圧は、図6に示すグラフのような規定関係上の圧力値であって、規定量分ずつ体積を変化させたときの圧力値である。即ち、図6の実線a1における◇点である。また、制御器36は、陽圧測定用として別々の体積変化量に対応付けられた複数の規定圧が記憶されている。規定圧は、図6に示すグラフのような規定関係上の圧力値であって、規定量分ずつ体積を変化させたときの圧力値である。即ち、図7の実線b1における◇点である。それ故、本実施形態では、制御器36には、6つの規定圧力が予め記憶されている。
ステップS8では、制御器36が圧力測定用器具31u,31d,31m毎に同じ体積変化量における規定圧及び検出圧を比較して、全ての体積変化量に対して規定圧及び検出圧が同一の値であるかを判定する。例えば、第1圧力測定用器具31uの場合、陰圧測定用の規定圧と検出圧とを比較し、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mの場合、陽圧測定用の規定圧と検出圧とを比較する。また、規定圧と検出圧とが同一であるか否かは、必ずしも完全同一であることを意味しているものではなく、規定圧を基準として予め定められた範囲内に検出圧が収まっている場合も同一であると判定するようにしてもよい。同一である場合、制御器36は、検出圧に基づく体積変化量V3と検出圧Pxとの関係が規定関係と相関性を有すると判定する。全ての圧力測定用器具31u,31d,31mに関して相関性があると判定されると、隔膜42が正規位置に配置されていると推定される。本実施形態において、第1圧力測定用器具31uの場合、上側ハウジング部41bの内壁に沿って隔膜42が配置され、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mの場合、下側ハウジング部41aの内壁に沿って隔膜42が配置されていると夫々推定される。そうすると、各圧力測定用器具31u,31d,31mの隔膜42が正規位置に配置されているので、ステップS8が終了し、膜位置調整処理も終了する。他方、圧力測定用器具31u,31d,31mの少なくとも1つに関して相関性がないと判定されると、相関性がない圧力測定用器具31の隔膜42が正規位置に配置されていないと推定する。例えば、第1圧力測定用器具31uの場合、その隔膜42が正規位置より下側ハウジング部41a側(即ち、血液室45側)に配置され、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mの場合、その隔膜42が正規位置より上側ハウジング部41b側(即ち、気体室46側)に配置されていると推定される。そうすると、相関性がない圧力測定用器具31の隔膜42を正規位置に調整すべくステップS9に移行する。
調整回数判定工程であるステップS9では、隔膜42の位置の調整回数iが規定回数bを越えていないか制御器36が判定する。調整回数iが規定回数bを越えていないと制御器36が判定すると、ステップS10に移行する。調整回数カウント工程であるステップS10では、調整回数iに1を加算する。調整回数iに1を加算すると、ステップS11に移行する。血液回路開放工程であるステップS11では、クランプ工程で閉じたプライミングライン23、血液回路11、及びエア抜きライン24,25を開いて血液回路11を大気に開放する。即ち、制御器36は、5つのバルブ17〜19,26,27に入力される開閉信号を止めてプライミングライン23、血液回路11、及びエア抜きライン24,25を開く。開かれると、ステップS12に移行する。
膜位置調整工程であるステップS12では、隔膜42の膜位置を調整すべき各圧力測定用器具31u,31d,31mの気体室46の空気量を調整する。例えば、第1圧力測定用器具31uに関して隔膜42の位置を調整する場合、制御器36は、調整用ポンプ38によって第1圧力測定用器具31uの気体室46から空気を吸引する。吸引すると、プライミングライン23が大気に開放されているので、隔膜42が上側ハウジング部41b側に吸い寄せられる。制御器36は、検出圧が大気圧以下になるとポンプ駆動機構39の駆動を停止する。これにより、第1圧力測定用器具31uの隔膜42が正規位置に調整される。第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mに関して隔膜42の位置を調整する場合、制御器36は、調整用ポンプ38によって第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mの気体室46に空気を供給する。供給すると、血液回路11が大気に開放されているので、隔膜42が下側ハウジング部41a側に押し付けられる。そして、制御器36は、検出圧が大気圧以上になるとポンプ駆動機構39の駆動を停止する。これにより、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mの隔膜42が正規位置に調整される。なお、ステップS13では、正規位置に配置されていないと推定された隔膜42の位置だけを調整するが、全ての圧力測定用器具31u,31d,31mに関して隔膜42の位置の調整を行ってもよい。ステップS12において隔膜42の位置が調整されると、ステップS3に戻る。
ステップS3では、再び5つのバルブ17〜19,26,27によってプライミングライン23、血液回路11、及びエア抜きライン24,25を閉じられる。そして、再びステップS4〜S7で圧力検出が行われ、ステップS8で相関性の有無が判定される。ステップS8で相関性がないと再び判定され、ステップS9で調整回数iが規定回数bを越えていないか判定される。ここで調整回数iが規定回数bを越えていると判定されると、ステップS13に移行する。アラーム工程であるステップS13では、報知器50によって接続不良又はエア漏れを報知する。即ち、制御器36は、検出圧に変化がなく隔膜42の位置の調整を繰り返し行っても検出圧が規定圧と同一にならずに吸引又は供給時に調整回数iが規定回数を超えると、接続不良又はエア漏れが生じている可能性があると判断する。そうすると、制御器36は、報知器50に指令を送って、雌型コネクタ部44の接続不良やエアチューブ43のエア漏れの可能性がある旨のアラームを報知する。報知すると、制御器36は、調整装置本体32の各構成の動きを止める。動きを止めると、膜位置調整処理が終了する。なお、膜位置調整処理が終了した後に接続不良を直したりエアチューブ43の漏れを解消したりする等して不具合を解消し、膜位置調整処理の再開を図示しない入力装置から入力することで、膜位置調整処理が再開される。
本実施形態の膜位置調整装置1は、膜位置調整処理を実行し、隔膜42の位置を推定し、隔膜42が正規位置に配置されていない場合に隔膜42を正規位置へと調整することができる。3つの圧力測定用器具31u,31d,31mは、測定すべき血液の圧力の状態に応じて下側ハウジング部41a及び上側ハウジング部41bの何れか一方側に隔膜42を突出させて配置させて使用することが好ましい。このように隔膜42を配置した圧力測定用器具31であっても、隔膜42の位置を推定して推定した位置に基づいて隔膜42の位置を調整することができる。これにより、製造時において膜位置を調整する必要がなくなり、製造時における膜位置の調整を省くことができる。従って、人為的に行われる膜位置調整作業を省くことができ、人為的作業に伴う製造コストを低減することができる。他方、隔膜42が正規位置に配置されている場合、隔膜42の調整作業が行われることがないので、調整時間を短縮することができる。
また、膜位置調整装置1は、隔膜42の位置を推定し、その位置に応じて気体量調整機34を駆動して空気を吸引又は供給するので、空気が気体室46に過度に吸引又は供給されることを抑えることができる。これにより、隔膜42に過度の圧力が与えられて隔膜42の特性が変わってしまうことを防ぐことができ、隔膜42の位置調整後における計測結果が膜位置調整装置1毎にばらつくことを抑制することができる。
更に、膜位置調整装置1では、第1圧力測定用器具31uの隔膜42が正規位置より血液室45側に配置されていると、気体室46側に配置されるように隔膜42の位置が調整される。前述の通り、第1圧力測定用器具31uでは、血液ポンプ12によって血液室45の血液が吸引されるようになっており、第1圧力測定用器具31uの隔膜42は、血液の圧力を測定する際に血液室45側に引っ張られる。それ故、気体室46の空気を吸引して隔膜42の位置を気体室46側に調整することで、測定時における隔膜42の可動範囲を大きくとることができ、第1圧力測定用器具31uによって測定可能な陰圧の範囲を大きくとることができる。また、第1圧力測定用器具31uの隔膜42の位置を調整する際、制御器36は、検出圧が規定の圧力、例えば大気圧以上になると気体室46からの空気の吸引を止めるようになっている。そうすることで、隔膜42が気体室46側に最も突出する位置、即ち上側ハウジング部41bの内壁に沿うように配置させることができる。これにより、第1圧力測定用器具31uの測定可能な陰圧の範囲を大きくとることができ、且つ第1圧力測定用器具31uのハウジング41のサイズの小型化を図ることができる。
同様に、膜位置調整装置1では、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mの隔膜42が正規位置より気体室46側に配置されていると、血液室45側に配置されるように隔膜42の位置が調整される。前述の通り、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mでは、血液ポンプ12によって血液室45に血液が供給されるようになっており、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mの隔膜42は、血液の圧力を測定する際に気体室46側に押される。それ故、隔膜42の位置を血液室45側に調整することで、測定時における隔膜42の可動範囲を大きくとることができ、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mによって測定可能な陽圧の範囲を大きくとることができる。また、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mの隔膜42の位置を調整する際、制御器36は、検出圧が大気圧以上になると気体室46への空気の供給を止めるようになっている。そうすることで、隔膜42が血液室45側に最も突出する位置、即ち下側ハウジング部41aの内壁に沿うように配置させることができる。これにより、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mの測定可能な陰圧の範囲を大きくとることができ、且つ第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mのハウジング41のサイズの小型化を図ることができる。
また、膜位置調整装置1では、圧力測定用器具31が血液ポンプ12より上流側及び下流側の何れに配置されるかによって、圧力検出方法及び調整すべき隔膜42の位置が異なる。即ち、第1圧力測定用器具31uと第2及び第3圧力測定用器具31d,31mとで調整用ポンプ38によって実行すべき処理が異なっており(つまり、吸引処理を実行すべきか供給処理を実行すべきかが異なっている)、各圧力測定用器具31u,31d,31mは、対応する気体量調整機34に接続しなければならない。3つの圧力測定用器具31u,31d,31mの雌型コネクタ部44は、互いに異なる色の部材で構成されており、接続すべき雄型コネクタ部33と同様の色の部材で構成されている。それ故、雌型コネクタ部44を接続すべき雄型コネクタ部33に接続させることを促すことができ、各圧力測定用器具31u,31d,31mの隔膜42を正規位置に調整することができる。
また、膜位置調整装置1では、気体量調整機34が調整用ライン37及びエアチューブ43を介して気体室46の接続口41eに繋がっており、圧力センサ35が調整用ライン37の圧力に基づいて信号を出力するようになっている。それ故、圧力センサ35のための検出用ラインを別途下側ハウジング部41aに接続する必要がなく、検出用ラインが誤って別の口に接続されることを防ぐことができる。
更に、本実施形態の血液浄化システム2では、プライミングが行われた後に隔膜42の位置の検出及び調整が行われる。それ故、プライミング液を循環させる際に各圧力測定用器具31u,31d,31mの隔膜42の位置が変動しても、血液浄化を行う前に隔膜42の位置を正規位置に調整することができる。これにより、血液浄化時において血液回路11内を流れる血液の圧力を幅広い範囲で測定することができる。
<第2実施形態>
第2実施形態の膜位置調整装置1Aは、第1実施形態の膜位置調整装置1と構成が類似し、且つ血液浄化システム2に備わっている。以下では、第2実施形態の膜位置調整装置1Aの構成について第1実施形態の膜位置調整装置1と異なる点について主に説明し、同一の構成については同一の符号を付して図示及び説明を省略する。第3乃至第5実施形態についても同様である。
図8に示すように膜位置調整装置1Aは、ドリップチャンバー14A,15Aを有している。ドリップチャンバー14A,15Aは、血液回路11において血液浄化器21の上流側及び下流側の各々に介在している。ドリップチャンバー14A,15Aは、ドリップチャンバー14,15との同じ機能を有すると共に、圧力測定用器具31の役割も果たすようになっている。つまり、ドリップチャンバー14A,15Aは、血液回路11を流れる血液の圧力を測定するために用いられる器具である。また、ドリップチャンバー14A,15Aは、同様の構成を有している。以下では、ドリップチャンバー14Aの構成について、図9を参照しながら具体的に説明し、ドリップチャンバー15Aの構成については説明を省略する。
図9に示すようにドリップチャンバー14Aは、ハウジング61と、隔膜62と、エアチューブ43と、雌型コネクタ部44とを有している。ハウジング61は、下側ハウジング部61a及び上側ハウジング部61bによって構成されている。第1ハウジングである下側ハウジング部61aは、大略円筒状に形成されており、下側部分は、先端に向かって先細りになっている。下側ハウジング部61aの下側の開口は、流出孔61dを形成しており、流出孔61dには、血液回路11の下流側部分11aが挿入されている。また、下側ハウジング部61aの外周面には、流入孔61cが形成されており、流入孔61cには、血液回路11の上流側部分11bが挿入されている。また、下側ハウジング部61aの上側の開口端部には、上側の開口を塞ぐように上側ハウジング部61bが被せられている。
第2ハウジングである上側ハウジング部61bは、大略有天筒状に形成されており、上側ハウジング部61bの天井部分には、接続口61eが形成されている。接続口61eは、そこから上側ハウジング部61b内に気体である空気を供給できるようになっている。このような形状を有する上側ハウジング部61bは、その開口端部を下側ハウジング部61aの上側の開口端部に外装して下側ハウジング部61aに取付けられている。これにより、ハウジング61には、上下方向に長尺な円柱状の内部空間61gが形成されるようになっており、内部空間61gには隔膜62が配置されている。
隔膜62は、可撓性を有する膜状部材であり、大略半円球状に形成されている。隔膜62の開口端には、周方向全周にわたってフランジ62aが形成されており、フランジ62aが下側ハウジング部61aと上側ハウジング部61bと間に配置されている。より詳細に説明すると、上側ハウジング部61bの開口端部の孔径は、残余の部分の孔径より大きくなっており、上側ハウジング部61bの開口端部の内周面には、周方向全周にわたって段差面61fが形成されている。下側ハウジング部61aの開口端(第1ハウジングの突合せ面)は、段差面61f(第2ハウジングの突合せ面)に突合せるように配置されている。隔膜62のフランジ62aは、下側ハウジング部61aの開口端と段差面61fとの間に配置され、前記開口端と段差面61fとによって挟持されてハウジング61に固定されている。
このように固定されている隔膜62は、初期状態において上側ハウジング部41b側に突出している。なお、本実施形態では、ドリップチャンバー14A,15Aが血液ポンプ12より下流側に配置されているので、隔膜62が初期状態において上側ハウジング部41b側に突出しているが、ドリップチャンバー14A,15Aが血液ポンプ12より上流側に配置される場合、隔膜62は、下側ハウジング部41a側に突出させて配置される(図9の二点鎖線参照)。また、隔膜62は、ハウジング61の内部空間61gを血液室65及び気体室66の2つの部屋に区画している。
血液室65は、隔膜62より下側ハウジング部61aの底側に位置する部屋であり、流入孔61c及び流出孔61dと繋がっている。それ故、血液室65には、血液回路11を流れる血液が流入孔61cに流入し、血液室65の血液が流出孔61dから流出するようになっている。これにより、血液室65が血液で満たされるようになっている。なお、血液室65は、必ずしも血液で満たされている必要はなく、気泡や空気等が入っていてもよいが、血液で満たすことによって血栓が生じることを防ぐことができる。他方、気体室66は、隔膜62より上側ハウジング部61b側に位置する部屋であり、接続口61eから空気を供給できるようになっている。気体室66内の空気は、隔膜62を介して血液室65の血液から押されたり、又は血液室65の血液を押したりするようになっている。そうすることで、可撓性を有する隔膜62は、血液室65の内圧及び気体室66の内圧に応じて位置を変えるようになっている(例えば、図9の二点鎖線参照)。
また、下側ハウジング部61aの外周面には、エア抜き孔61hが形成されており、エア抜き孔61hは、エア抜きライン24(又はエア抜きライン25)を介して大気に開放されている。また、エア抜き孔61hは、血液室65に繋がっており、血液室65の血液に含まれる空気を大気に排出するようになっている。また、上側ハウジング部61bの接続口61eには、エアチューブ43が挿入されている。エアチューブ43は、雌型コネクタ部44を介して後述する調整装置本体32に接続されており、調整装置本体32からエアチューブ43を介して気体室66に空気が供給されるようになっている。
このように構成されているドリップチャンバー14A,15Aは、圧力測定用器具31と同様の役割を果たすようになっている。即ち、血液回路11を流れる血液の圧力(即ち、血液室65の内圧)を測定するために使用される。また、ドリップチャンバー14A,15Aは、圧力測定用器具31と同様に調整装置本体32によって隔膜62の位置を調整することができるようになっており、第1実施形態の膜位置調整処理と同様の手順で隔膜62の位置を推定して調整することができるようになっている。このように、ドリップチャンバー14A,15Aに圧力測定用器具31と同じ機能を持たせることができるので、第2圧力測定用器具31d及び第3圧力測定用器具31mを省くことができ、膜位置調整装置1Aの部品点数を低減することができる。
また、ドリップチャンバー14A,15Aは、気体量調整機34が調整用ライン37及びエアチューブ43を介して気体室66の接続口61eに繋がっており、圧力センサ35が調整用ライン37の圧力に基づいて信号を出力するようになっている。それ故、圧力センサ35のための検出用ラインを別途ドリップチャンバー14A,15Aに接続する必要がなく、検出用ラインが誤って別の口に接続されることを防ぐことができる。
その他、第2実施形態の膜位置調整装置1Aは、第1実施形態の膜位置調整装置1と同様の作用効果を奏する。
<第3実施形態>
図8に示すように膜位置調整装置1Bは、ドリップチャンバー14B,15Bを有しており、ドリップチャンバー14B,15Bは、ドリップチャンバー14A,15Aと類似する構成を有している。以下では、ドリップチャンバー14B,15Bの構成について、主に異なる構成についてだけ説明し、同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。また、ドリップチャンバー14B,15Bは、同様の構成を有しているので、ドリップチャンバー14Bの構成について図10を参照しながら具体的に説明し、ドリップチャンバー15Bの構成については説明を省略する。
図10に示すように、ハウジング61と、取付部材71と、隔膜62と、エアチューブ43と、雌型コネクタ部44とを有している。取付部材71は、隔膜62をハウジング61内に配置するための部材であり、ハウジング61の内部空間61gを第1空間である上側空間72と第2空間である下側空間73とに区画するようにハウジング61内に配置されている。更に詳細に説明すると、取付部材71は、一対のプレート74,75を有している。一対のプレート74,75は、同一形状で形成されており、平面視で円形状になっている。また、各プレート74,75には、平面視で同じ位置に隔膜取付孔74a,75a及びチューブ取付孔74b,75bが形成されており、一対のプレート74,75を上下方向に重ね合わせると隔膜取付孔74a,75a同士が重なり合い、且つチューブ取付孔74b,75b同士が重なり合うようになっている。
下側のプレート74には、大略半円球状の隔膜62が隔膜取付孔74aから下方に突出するように配置されており、隔膜62のフランジ62aが隔膜取付孔74a周りの内周縁に載置されている。また、上側のプレート75は、平面視で隔膜取付孔75aが隔膜取付孔74aに重なるようにして下側のプレート74に載せられており、隔膜取付孔75aの内周縁が隔膜取付孔74aの内周縁と共に隔膜62のフランジ62aを挟持するようになっている。このように挟持されている隔膜62は、フランジ62aを除く部分を上方に持ち上げられると、前記部分が上側のプレート75の隔膜取付孔75aから上方に突出するようになっている(図10の二点鎖線参照)。
また、上側のプレート75を下側のプレート74に載せることで、平面視でチューブ取付孔74bがチューブ取付孔75bに重なるようになっており、チューブ取付孔74b,75bには、エア抜きライン24が挿通されている。エア抜きライン24の先端側開口は、血液室65に臨んでおり、下側プレート74の下面と略面一となっている。また、エア抜きライン24の先端側部分は、プレート74に溶剤接着剤などによって固着されて一体化されており、チューブ取付孔74bから気体室66への空気の侵入が防がれている。なお、エア抜きライン24は、必ずしもプレート74に固着されている必要はない。例えば、チューブ取付孔74bを囲うようにOリング等のシール部材を設けて一対のプレート74,75で前記シール部材を挟んだり、エア抜きライン24の先端側部分にフランジ状の突起を設けて一対のプレート74,75によって挟んだりして気体室66と血液室65との連通を塞ぎつつ固定してもよい。
このように配置されているエア抜きライン24は、気体室66を通ってハウジング61外へと突き出ており、エア抜きライン24によって血液室65がハウジング61の外部空間に繋がれて大気に開放されている。これにより、血液室65内で捕捉されて下側のプレート74の下面まで上がってきた空気をエアチューブ43を介して大気に開放することができる。他方、圧力測定時等において、エア抜きライン24は、図示しないクランプ部材によって閉じられており、閉じることによって血液回路11を密閉できるようになっている。
その他、第3実施形態の膜位置調整装置1Bは、第2実施形態の膜位置調整装置1Aと同様の作用効果を奏する。
<第4実施形態>
第4実施形態の膜位置調整装置1Cを備える血液浄化システム2Cは、膜位置調整装置1Cと共に、血液回路11と、血液ポンプ12と、血液浄化機13と、2つのドリップチャンバー14,15と、プライミング液供給装置16と、3つのバルブ17〜19と、膜位置調整装置1Cとを備えている。血液ポンプ12は、例えばローラポンプであり、正回転及び逆回転可能なローラ12aを有している。血液ポンプ12は、ローラ12aの回転方向に応じた方向(即ち、正方向又は逆方向)に血液回路11内の液体を送るようになっている。
更に詳細に説明すると、血液ポンプ12は、その中に血液回路11の一部分を取付け、その一部分をローラ12aによってしごくようになっている。しごくことにより、血液回路11内であって血液ポンプ12より正方向上流側(又は逆方向上流側)にある液体が前記一部分に吸引されて正方向下流側(又は逆方向上流側)へと送り出される。このように、血液ポンプ12は、血液回路11内の液体を正方向上流側(又は逆方向上流側)から正方向下流側(又は逆方向上流側)へと送るようになっている。従って、血液回路11の両端部を患者の動脈及び静脈の各々に繋げてローラ12aが正回転するように血液ポンプ12を動かすことによって動脈の血液を血液回路11内に脱血して静脈に返血することができるようになっている。なお、以下において単に「上流側」及び「下流側」と称する場合、正方向上流側及び正方向下流側を示すものである。
このように構成されている血液浄化システム2Cは、血液回路11を流れる血液の圧力を測定すべく2つの圧力測定用器具31を有している。圧力測定用器具31は、血液浄化機13の上流側であって上流側開閉バルブ18と血液ポンプ12との間、及び血液浄化機13の下流側であって下流側ドリップチャンバー15と下流側開閉バルブ19との間に配置されている。血液浄化システム2Cの圧力測定用器具31では、気体室46が密閉されて空気で満たされており、気体室46内の空気が膨収縮することによって隔膜42の位置が変わるようになっている。即ち、隔膜42は、血液室45の血液及び気体室46の空気によって押されて位置を変えるようになっており、血液室45の内圧と気体室46の内圧とが平衡する位置に動くようになっている。これにより、可撓性を有する隔膜42は、血液室45の内圧及び気体室46の内圧に応じて位置を変え、例えば図3に示すように上側ハウジング部41bの内周面から離れるようになっている。
また、ハウジング41の接続口41eに検出ライン81が挿入されている。検出ライン81は、中空のチューブであり、その一端部がハウジング41の接続口41eに挿入されている。また、図11に示すように検出ライン81の他端部には、圧力センサ35が繋がっており、検出ライン81を介して圧力センサ35に気体室46と同圧の空気が導かれるようになっている。圧力センサ35は、導かれる空気の圧力を圧力信号に変換して、その圧力信号を出力するようになっている。即ち、圧力センサ35は、気体室46の内圧に応じた圧力信号を出力するようになっている。
また、検出ライン81には、大気開放ライン82が接続されている。大気開放ライン82は、一端部が検出ライン81に接続され、他端部が大気に開放されている。また、大気開放ライン82には、開放バルブ83が設けられている。開放バルブ83は、いわゆる電磁開閉バルブであり、大気開放用開閉信号を入力できるようになっている。開放バルブ83は、大気開放用開閉信号の入力状態に応じて大気開放ライン82を開閉するようになっている。
このように構成されている圧力測定用器具31は、前述の通り、血液回路11において血液浄化機13の上流側及び下流側に夫々1つずつ設けられている。以下では、上流側に配置されている圧力測定用器具31を上流側圧力測定用器具31uと称し、下流側に配置されている圧力測定用器具31を下流側圧力測定用器具31dと称する場合がある。また、圧力センサ35、検出ライン81、大気開放ライン82、及び開放バルブ83に関して、上流側圧力測定用器具31uに接続されているものも上流側圧力センサ35u、上流側検出ライン81u、上流側大気開放ライン82u、及び上流側開放バルブ83uと称し、下流側圧力測定用器具31dに接続されているものも下流側圧力センサ35d、下流側検出ライン81d、下流側大気開放ライン82d、及び下流側開放バルブ83dと称する場合がある。また、血液浄化システム2Cは、血液ポンプ12、及び各バルブ17〜19,26,27,83u,83dの動きを制御するべく制御器36Cを有している。
制御器36Cには、圧力センサ35が電気的に接続されており、圧力センサ35から出力される圧力信号が入力されるようになっており、圧力センサ35からの圧力信号に基づいて上流側及び下流側圧力測定用器具31u,31dの各々の各気体室46の内圧を検出する。即ち、制御器36Cは、圧力センサ35u,35dからの圧力信号に基づいて血液室45の血液の圧力(即ち、血液室45の内圧)を検出するようになっている。また、制御器36Cは、第1乃至第3実施形態の制御器36と同様に、5つのバルブ17〜19,26,27、血液ポンプ12、及び報知器50の各々にも電気的に接続され、それらの動きを制御するようになっている。
このように構成されている血液浄化システム2Cでは、血液回路11の両端部が患者の動脈及び静脈に繋がれ、動脈から静脈に血液が流れるように制御器36Cが血液ポンプローラ12aを駆動する。そのため、上流側圧力測定用器具31uは、第1実施形態の第1圧力測定用器具31uと同様に動き、下流側圧力測定用器具31dは、第1実施形態の第3圧力測定用器具31dと同様に動きをする。即ち、各圧力測定器具31u,31dの血液室45の内圧が隔膜42によって空気圧に変換され、この空気圧を圧力センサ35によって圧力信号に変換される。そして、制御器36Cが圧力信号から圧力を検出することによって、血液室45の内圧を検出できるようになっている。
また、隔膜42では、陰圧を検出する場合、第1実施形態の第1圧力測定用器具31uと同様に本体部分42bを上限位置に配置することが好ましく、陽圧を検出する場合、第1実施形態の第2圧力測定器具31dと同様に本体部分42bを下限位置に配置することが好ましい。前述の通り、圧力測定用器具31は、製造時において下側ハウジング部41a又は上側ハウジング部41bの何れか一方側に突出しているので、血液浄化システム2Cでは、プライミング後に配置位置に応じた正規位置へと各圧力測定用器具31u,31dの隔膜42の位置を調整するべく、制御器36Cが膜位置調整処理を実行する。以下では、膜位置調整処理について図12を参照しながら説明する。
膜位置調整処理では、例えば血液回路11の動脈側の末端部付近を開閉用バルブ18によって閉じ且つ血液回路11の他端部を図示しない回収ラインを介してタンクに接続する。その後、図示しない入力機器によってプライミング指令が制御器36Cに入力されると開始され、ステップS31に移行する。プライミング工程であるステップS31では、プライミングが行われる。即ち、制御器36Cは、プライミング用開閉バルブ17にプライミングライン開閉信号を出力してプライミングライン23を開き且つ血液ポンプ12を駆動する。これにより、プライミング液供給装置16から血液回路11の動脈側部分を介して血液ポンプ12にプライミング液が吸引され、更に血液ポンプ12から血液浄化機13を通って血液回路11の静脈側部分に供給される。これにより、プライミング液供給装置16から回収ラインを介してタンクにプライミング液が導かれる。これにより、血液回路11及び血液浄化機13の空気が回収ライン、及びエア抜きライン24,25から大気へと放出され、血液回路11及び血液浄化機13がプライミング液で満たされる。このようにしてプライミングが行われると、ステップS32に移行する。
プライミング終了判断工程であるステップS32では、プライミングが終了したか否かを判定する。即ち、制御器36Cは、規定の液量のプライミング液を流し、図示しない気泡センサによって血液回路11内に残存する気泡の有無を判定する。気泡があると判定されると、プライミングが終了していないとしてステップS31に戻ってプライミングを継続する。他方、気泡がないと判定されると、制御器36Cは、血液回路11及び血液浄化機13がプライミング液で十分に満たされるとして血液ポンプ12を止めてプライミングを終了する。プライミングが終了すると、ステップS33に移行する。
クランプ工程であるステップS33では、3つのバルブ17,26,27によってプライミングライン23、及びエア抜きライン24,25が閉じられる。即ち、制御器36Cは、プライミング用開閉バルブ17にプライミングライン開閉信号を入力してプライミングライン23を閉じると共に、エア抜き用開閉バルブ26,27に開閉信号を夫々入力してエア抜きライン24,25を閉じる。更に、制御器36Cは、開放バルブ83u,83dの各々に大気解放用開閉信号を入力して、上流側及び下流側大気開放ライン82u,82dを閉じる。このようにして上流側及び下流側大気開放ライン82u,82dが閉じられると、ステップS34に移行する。
器具選択工程であるステップS34では、制御器36Cが隔膜42の位置を調整する器具を2つの圧力測定用器具31u,31dから選択する。制御器36Cは、例えば初期値が0であるパラメータmが0である場合に上流側圧力測定用器具31uを選択し、パラメータmに1を追加する。他方、パラメータmが1である場合、制御器36Cは、下流側圧力測定用器具31dを選択し、パラメータmに更に1を追加する。上流側圧力測定用器具31uが選択されると、ステップS36に移行し、下流側圧力測定用器具31dが選択されるとステップS35に移行する。
第2クランプ工程であるステップS35では、下流側開閉バルブ19によって血液回路11の他端部付近が閉じられる。詳細に説明すると、制御器36Cは、下流側開閉バルブ19に下流側開閉信号を入力して血液回路11の他端部付近を閉じる。この際、血液回路11の一端部には、図示しない回収用ラインを介してプライミング液用のタンクに接続される。このようにして血液回路11の他端部付近を閉じると、ステップS36に移行する。
圧力検出工程であるステップS36では、血液ポンプ12を駆動して血液回路11内のプライミング液を送り、2つの圧力測定用器具31u,31dのうち選択された気体室46の圧力の変化を検出する処理である。具体的に説明すると、制御器36Cは、血液回路11の他端部側から一端部側に向かってプライミング液が流れるように血液ポンプ12のローラ12aを逆回転させる。これにより、下流側圧力測定用器具31dの血液室45から血液ポンプ12へとプライミング液が吸引され、また上流側圧力測定用器具31uの血液室45にプライミング液が送り込まれる。
選択される器具が上流側圧力測定用器具31uの場合、血液回路11の一端部付近が閉じられているので、上流側圧力測定用器具31uの血液室45にプライミング液が送り込まれると、血液室45が膨張するように隔膜42の位置が変化する。これにより、気体室46の空気が圧縮される。他方、選択される器具が下流側圧力測定用器具31dの場合、血液回路11の他端部付近が閉じられているので、下流側圧力測定用器具31dの血液室45からプライミング液が吸引されると、血液室45が収縮するように隔膜42の位置が変化する。これにより、気体室46の空気が膨張する。なお、選択されていない圧力測定用器具31u,31dの血液室45は、回収用ラインを介してタンクに接続されているので、プライミング液が流入又は吸引しても体積が変わることがなく、隔膜42の位置が変化することがない。前述のように気体室46の空気を膨収縮させると、制御器36Cは、選択された圧力測定用器具31u,31dに接続される圧力センサ35からの圧力信号に基づいて気体室46の内圧を検出する。気体室46の内圧を検出すると、ステップS37に移行する。
圧力判定工程であるステップS37では、検出される内圧が略一定値に収束しているか否かを判定する。圧力測定用器具31では、隔膜42の本体部分42bが下側ハウジング部41aの内周面及び上側ハウジング部41bの内周面の形状に合せて形成されており、隔膜42の本体部分42bは、各内周面に沿うところまで動くことができる。即ち、本体部分42bは、本体部分42bが各ハウジング部41b,41aの内周面に張り付く上限位置及び下限位置まで動くことができ、本体部分42bが上限位置又は下限位置に達すると、それ以上の量のプライミング液を吸引又は送り込んでも気体室46の体積が変化しなくなる。
気体室46は、大気開放ライン82を閉じた際に検出ライン81及び大気開放ライン82内の通路と共に密閉系空間84を形成しており、気体室46の内圧は、図5及び6のグラフに示すように基本的に式(2)に示すボイルの法則に基づいて変化する。
数式2
ここでP0は、吸引又は供給前の初期状態における気体室46の圧力(即ち、大気圧)であり、Pxは、圧力センサ35によって検出される圧力である。また、Vは、密閉系空間84の体積であり、Vxは、血液ポンプ12によって吸引又は送り込まれるプライミング液の液量である。また、図13のグラフは、上流側圧力測定用器具31uにおけるプライミング液の供給流量Vxと検出圧Pxとの関係を示し、図14のグラフは、下流側圧力測定用器具31dにおけるプライミング液の吸引流量Vxと検出圧Pxとの関係を示す。
気体室46の内圧は、ボイルの法則に基づいて変化するので、気体室46の体積が変化しなくなると気体室46の内圧も変化しなくなり、血液ポンプ12によってプライミング液が吸引又は送り込まれても気体室46の内圧が略一定となる。即ち、センサ35u,35dで検出される内圧が略一定値に収束していることを判定することで、本体部分42bが上限位置又は下限位置に配置されていることを確認することができる。なお、収束しているか否かは、例えば圧力センサ35u,35dで検出される内圧が予め定められる範囲内に所定時間収まっていることによって判定される。検出される内圧が略一定値に収束していないと判定されると、ステップS36に戻り、検出される内圧が略一定値に収束するまで血液ポンプ12を駆動させて内圧を検出し続ける。そして、検出される内圧が共に略一定値に収束すると、ステップS38に移行する。
ポンプ停止工程であるステップS38では、血液ポンプ12を停止してプライミング液の送りを止める。即ち、制御器36Cは、血液ポンプ12のローラ12aの動きを止める。血液ポンプ12の動きを止めると、ステップS39に移行する。大気開放工程であるステップS39では、選択された圧力測定用器具31u,31dに繋がる大気開放ライン82u,82dを開放バルブ83u,83dによって開き、選択される圧力測定用器具31u,31dの気体室46の内圧を大気圧に戻す。気体室46の内圧を大気圧に戻すことで、隔膜42を正規位置に留めておくことができる。気体室46の内圧を大気圧に戻すと、ステップS40に移行する。なお、ステップS9では、気体室46の内圧を大気圧に戻す前に、内圧が変動し始めるまで制御器36Cによって血液ポンプ12のローラ12aを正回転させて血液室45の内圧を低下させておいてもよい。これにより、ステップS9において過剰に低下した血液室45の内圧を大気圧に近づけることができ、血液室45の内圧と気体室46の内圧との差を小さくすることができる。
血液回路開放工程であるステップS40では、血液回路11が大気に開放される。即ち、制御器36Cは、エア抜き用開閉バルブ26,27に開閉信号を出力し、エア抜きライン24,25を開く。これにより、血液回路11が大気に開放され、血液回路11内が大気圧に戻る。更に、制御器36Cは、パラメータmの数値に応じて上流側又は下流側開閉信号を開閉用バルブ18,19に出力し、血液回路11を開く。更に詳細に説明すると、パラメータmが1の場合、上流側開閉バルブ18に上流側開閉信号を出力して血液回路11の一端部付近を開く。他方、パラメータmが2の場合、下流側開閉バルブ19に下流側開閉信号を出力して血液回路11の他端部付近を開く。このようにして血液回路11の一端部又は他端部付近が開かれると、ステップS41に移行する。
調整終了判定工程であるステップS41では、隔膜調整処理を終了するか継続するかを判定する。更に詳細に説明すると、制御器36Cは、パラメータmの数値に応じて隔膜調整処理を終了するか継続するかを判定するようになっている。即ち、パラメータmが1である場合、下流側圧力測定用器具31dの隔膜42の位置調整が終了していないと制御器36Cが判定し、ステップS3に戻る。他方、パラメータmが2以上である場合、各圧力測定用器具31u,31dの隔膜42の位置調整が終了していると制御器36Cが判定し、膜位置調整処理が終了する。
本実施形態の膜位置調整装置1Cは、血液ポンプ12で血液回路11内のプライミング液を動かすことによって圧力測定用器具31u,31dの配置位置に応じた正規位置(即ち、上限位置又は下限位置)に各々の隔膜42を調整することができる。膜位置調整装置1Cでは、隔膜42の調整に非圧縮性の流体であるプライミング液が用いられている。それ故、圧力測定用器具31u,31dの形状の個体差や温度等に起因する膨張及び収縮が少ないプライミング液によって隔膜42の位置を調整することができる。これにより、圧力測定用器具31u,31dの形状の個体差や温度等の影響を受けることなく、血液室45に流入又は吸引する液体の量に応じた位置に隔膜42を移動させることができ、隔膜42の位置を調整する際の隔膜42の位置精度を向上させることができる。
また、膜位置調整装置1Cでは、圧力測定用器具31u,31dの血液室45に流入又は吸引させる際にプライミング液が膨張及び収縮することがないので、同量の空気を気体室46に流入又は吸引した場合に比べて隔膜42をより大きく移動させることができる。それ故、空気に比べて少ない量のプライミング液で隔膜42を正規位置まで移動させることができ、隔膜42の位置を正規位置に調整する際の調整時間を短縮することができる。
更に、膜位置調整装置1Cでは、血液ポンプ12で膜位置調整処理を実行できるので、新たな構成を追加することなく、隔膜42の位置を調整することができる。つまり、部品点数を増加させることなく、隔膜42の位置を調整することができる。また、製造時において膜位置を調整する必要がなくなり、製造時における膜位置の調整を省くことができる。従って、人為的に行われる膜位置調整作業を省くことができ、人為的作業に伴う製造コストを低減することができる。
更に、膜位置調整装置1Cでは、上流側圧力測定用器具31uの隔膜42が正規位置である上限位置に配置され、下流側圧力測定用器具31dの隔膜42が正規位置である下限に位置に配置される。これにより、測定時における隔膜42の可動範囲を大きくとることができ、上流側圧力測定用器具31uによって測定可能な陰圧の範囲を大きくとることができ、また下流側圧力測定用器具31dによって測定可能な陽圧の範囲を大きくとることができる。また、測定可能な範囲を大きくとることができるので、陰圧及び陽圧の両方を測定可能な圧力測定用器具に比べてハウジング41の内部空間41gを小さくすることができ、ハウジング41のサイズの小型化を図ることができる。
更に、本実施形態の血液浄化システム2Cでは、プライミングが行われた後に隔膜42の位置の検出及び調整が行われる。それ故、プライミング液を循環させる際に各圧力測定用器具31u,31dの隔膜42の位置が変動しても、血液浄化を行う前に隔膜42の位置を正規位置に調整することができる。これにより、血液浄化時において血液回路11内を流れる血液の圧力を幅広い範囲で測定することができる。
<第5実施形態>
第5実施形態の膜位置調整装置1Dは、第4実施形態の膜位置調整装置1Cと同一の構成を有し、また血液浄化システム2Cに備わっているが、第4実施形態の膜位置調整装置1Dと異なる方法で隔膜42の位置を調整するようになっている。更に詳細に説明すると、隔膜42の位置を推定して推定結果に基づいて隔膜42の位置を調整するようになっている。以下では、第5実施形態の膜位置調整装置1Dの制御器36が隔膜42を調整する方法、即ち膜位置調整処理について、図15を参照しながら具体的に説明する。なお、第5実施形態の膜位置調整装置1Dの構成について、第4実施形態の膜位置調整装置1Cと同一の符号を付して説明を省略する。
膜位置調整処理では、膜位置調整装置1Cの場合と同様に、例えば血液回路11の一端部を上流側開閉バルブ18によって閉じてから図示しない入力機器によってプライミング指令が制御器36に入力されると開始され、プライミング工程であるステップS31に移行し、プライミングが行われる。プライミングが行われると、プライミング終了判断工程であるステップS32に移行し、プライミングが終了したか否かを制御器36Cが判定する。気泡があると判定されると、プライミングが終了していないとしてステップS31に戻ってプライミングを継続する。他方、気泡がないと判定されると、プライミングが終了しているとしてステップS33に移行する。
第1クランプ工程であるステップS33では、3つのバルブ17,26,27によってプライミングライン23、血液回路11、及びエア抜きライン24,25が閉じられる。更に、制御器36Cは、上流側開放バルブ83u,83dによって上流側及び下流側大気開放ライン82u,82dを閉じる。上流側及び下流側大気開放ライン82u,82dが閉じられると、ステップS34に移行する。器具選択工程であるステップS34は、制御器36Cによって隔膜42の位置を調整する器具がパラメータに応じて2つの圧力測定用器具31u,31dから選択され、パラメータmに1が追加される。パラメータmが0であって上流側圧力測定用器具31uが選択されると、ステップS46に移行し、パラメータmが1であって下流側圧力測定用器具31dが選択されると、ステップS35に移行する。
第2クランプ工程であるステップS35では、下流側開閉バルブ19に下流側開閉信号を入力して血液回路11の他端部付近を閉じる。この際、血液回路11の一端部には、図示しない回収用ラインを介してプライミング液用のタンクが接続される。血液回路11の他端部付近が閉じられると、ステップS56に移行する。回数リセット工程であるステップS56では、圧力検出回数nをゼロにする。圧力検出回数nをゼロになると、ステップS57に移行する。
圧力検出工程であるステップS57では、圧力検出処理が実行される。圧力検出処理では、選択される圧力測定用器具31u,31dの血液室45のプライミング液の量を変化させて変化後の圧力を検出する処理である。詳細に説明すると、制御器36Cは、血液回路11の一端部側から他端部側にプライミング液が流れるように血液ポンプ12のローラ12aを正回転させる。これにより、上流側圧力測定用器具31uの血液室45からプライミング液が吸引され、また下流側圧力測定用器具31dの血液室45にプライミング液が送り込まれる。更に、制御器36は、選択された圧力測定用器具31u,31dにおける気体室46の内圧を検出する。以下では、図16を参照しながら圧力検出処理について更に詳細に説明する。
圧力検出処理が実行されると、ステップS61が開始される。送出工程であるステップS61では、制御器36Cが血液ポンプ12を駆動して血液回路11内において予め定められる設定流量V0のプライミング液を送る。即ち、制御器36Cが予め設定される設定回転角θ分、血液ポンプ12のローラ12aを正回転させる。これにより、ローラ12aの設定回転角θに応じた流量である設定流量V0のプライミング液が血液ポンプ12の上流側から下流側に送出される。これにより、設定流量V0のプライミング液が上流側圧力測定用器具31uの血液室45から吸引され、また、設定流量V0のプライミング液が下流側圧力測定用器具31dの血液室45に供給される。
選択される器具が上流側圧力測定用器具31uの場合、血液回路11の一端部付近が閉じられ且つ上流側圧力測定用器具31uの血液室45のプライミング液が吸引されるので、気体室46の空気が膨張するように隔膜42の位置が変化する。他方、選択される器具が下流側圧力測定用器具31dの場合、血液回路11の他端部付近が閉じられ且つ下流側圧力測定用器具31dの血液室45にプライミング液が流入するので、気体室46の空気が圧縮されるように隔膜42の位置が変化する。なお、選択されていない器具の血液室45は、回収用ラインを介してタンクに接続されているので、プライミング液が流入又は吸引しても体積が変わることがなく、隔膜42の位置が変更することがない。選択された圧力測定用器具31u,31dの隔膜42の位置を変化させると、ステップS62に移行する。
圧力検出工程であるステップS62では、圧力センサ35からの信号に基づいて選択された圧力測定用器具31u,31dの気体室46の内圧Pxを制御器36Cが検出する。制御器36Cは、検出した内圧(以下、「検出圧」ともいう)Pxを、ステップS16においてnがリセットされた後に血液ポンプ12によって流されたプライミング液の流量Vx(=所定流量V0×(n+1))及び選択された圧力測定用器具31u,31dに対応付けて制御器36Cに記憶される。制御器36Cに記憶されると、圧力検出処理が終了してステップS48に移行する。
検出回数カウント工程であるステップS48では、圧力検出回数nに1を加算する。圧力検出回数nに1が加算されると、ステップS49に移行する。規定回数判定工程であるステップS49では、圧力検出回数nが規定回数a以上であるかを制御器36が判定する。なお、本実施形態において、規定回数aは、3回であるが、2回以下又は4回以上であってもよい。圧力検出回数nが規定回数a以下であると判定されるとステップS47に戻り、圧力検出回数nが規定回数aを超えるまで圧力検出が行われる。なお、圧力検出処理では、圧力の検出処理が行われる度に設定流量V0のプライミング液が供給されるようになっている。即ち、制御器36Cは、n=0の時にローラ12aを予め設定される設定回転角θ分正回転させ、圧力検出回数nが増えるたびに予め定められた設定回転角θ分ローラ12aを正回転させる。これにより、圧力検出回数nの時には、ローラ12aが回転角θ×n分逆回転し、それに応じた流量V0×n(=流量Vx)のプライミング液が各圧力測定用器具31u,31dの血液室45に対して吸引又は供給されている。圧力検出処理が繰り返し行われ、圧力検出回数nが規定回数aを超えると、ステップS50に移行する。
相関関係判定工程であるステップS50では、プライミング液の流量Vxと検出圧Pxとの関係が予め設定された規定関係と相関性を有しているか否かを判定する。各圧力測定用器具31u,31dでは、血液室45の液体の量、即ち血液室45の体積に応じて隔膜42の位置が変化し、隔膜42の位置が変化することによって気体室46の体積が変化する。気体室46は、検出ライン81、及び大気開放ライン82内の通路と共に密閉系空間84を形成しており、気体室46の空気がボイルの法則に従って膨張する又は圧縮される。即ち、初期状態(即ち、密閉系空間84の内圧が大気圧P0であるとき)の密閉系空間84の体積を体積Vとすると、検出される検出圧Pxが以下の式(3)で示される。なお、式(3)は、前述する式(2)と同じ数式である。
数式3
膜位置調整装置1Dでは、圧力検出処理がプライミング工程及びクランプ工程の後に行われており、圧力検出処理における初期状態の密閉系空間84の内圧は、大気圧P0となっている。他方、初期状態の密閉系空間84の体積V(更に詳細には、気体室46の体積)は、隔膜42の初期位置に応じて変化する。それ故、プライミング液の流量Vxと検出圧Pxとの関係は、初期状態の密閉系空間84の体積V、即ち隔膜42の初期位置に応じて変化する。
図17及び18のグラフには、プライミング液の流量(即ち、吸引又は供給流量)Vxと検出圧Pxとの関係を示す。詳細に説明すると、図17のグラフは、上流側圧力測定用器具31uの血液室45からプライミング液を吸引したときの吸引流量Vxと検出圧Pxとの関係を示し、図18のグラフは、下流側圧力測定用器具31dの血液室45にプライミング液を供給したときの供給流量Vxと検出圧Pxとの関係を示している。なお、図17及び18の縦軸は、検出圧Pxを示し、横軸は、吸引又は供給流量Vxを示している。
例えば、図17の実線a11及び◇点で示す吸引流量Vxと検出圧Pxとの関係は、隔膜42が初期状態で上側ハウジング部41b側に突出させて上側ハウジング部41bの内壁に沿うように配置されて気体室46の体積が略0mlである場合(陰圧測定タイプの圧力測定用器具31において、隔膜42が正規位置に配置されている場合)における前記関係を示す。この図17の実線a11及び◇点で示すような関係は、例えば実験等によって算出される関係であり、上流側圧力測定用器具31uにおける規定関係となる。なお、以下で説明する各関係も同様である。図17の実線a12及び△点で示す吸引流量Vxと検出圧Pxとの関係は、隔膜42が初期状態で上側ハウジング部41bの内壁から若干離れて配置され、気体室46の体積が略αml(0<α)となっている場合のものである。図17の実線a13及び□点で示す吸引流量Vxと検出圧Pxとの関係は、初期状態において隔膜42が実線a11の場合に比べて上側ハウジング部41bの内壁から若干離れて配置され、且つ実線a12の場合に比べて上側ハウジング部41bの内壁寄りに配置されている。つまり、初期状態の気体室46の体積が略β(0<β<α)mlにおける吸引流量Vxと検出圧Pxとの関係である。
他方、図18の実線b11及び◇点で示す供給流量Vxと検出圧Pxとの関係は、隔膜42が初期状態で下側ハウジング部41a側に突出させて下側ハウジング部41aの内壁に沿うように配置されて気体室46の体積が最大である場合(陽圧測定タイプの圧力測定用器具31において、隔膜42が正規位置に配置されている場合)における前記関係を示す。この図18の実線b11及び◇点で示すような関係は、下流側圧力測定用器具31dにおける規定関係となる。また、図18の実線b12及び△点で示す供給流量Vxと検出圧Pxとの関係は、隔膜42が初期状態で下側ハウジング部41aの内壁から若干離れて配置され、初期状態の気体室46が実線b11の場合より略γml減少した場合のものである。図18の実線b13及び□点で示す供給流量Vxと検出圧Pxとの関係は、初期状態において隔膜42が実線b11の場合に比べて下側ハウジング部41aの内壁から若干離れて配置され、且つ実線b12の場合に比べて下側ハウジング部41aの内壁寄りに配置されている。つまり、初期状態の気体室46が実線b11の場合より略ε(0<ε<γ)ml減少した場合のものである。
図17及び図18のグラフからわかるように、初期状態における気体室46の体積、即ち隔膜42の初期位置が異なると吸引又は供給流量Vxと検出圧Pxとの関係が異なる。ステップS20では、吸引又は供給流量Vxと検出圧Pxとの関係が規定関係と相関性を有しているか否かを判定して、隔膜42の位置を推定するようになっている。以下では、相関性の有無に関する制御器36の判定について詳細に説明する。
制御器36Cでは、陰圧測定用として別々の吸引流量に対応付けられた複数の規定圧が記憶されている。規定圧は、図17に示すグラフのような規定関係上の圧力値であって、規定量(例えば、設定流量V0)分ずつ体積を変化させたときの圧力値である。即ち、図17の実線a11における◇点である。また、制御器36Cは、陽圧測定用として別々の供給流量に対応付けられた複数の規定圧が記憶されている。規定圧は、図17に示すグラフのような規定関係上の圧力値であって、規定量(例えば、設定流量V0)分ずつ血液室45の体積を変化させたときの圧力値である。即ち、図18の実線b11における◇点である。それ故、本実施形態では、制御器36Cには、6つの規定圧力が予め記憶されている。
ステップS20では、制御器36Cが、選択された圧力測定用器具31u,31dに対応付けて記憶された検出圧Pxと、選択された器具のタイプ(即ち、陰圧測定用又は陽圧測定用)に対応付けて記憶される規定圧とを吸引又は供給流量Vx毎に比較して、全ての吸引又は供給流量Vxに対して検出圧Pxと規定圧とが同一の値であるかを判定する。例えば、上流側圧力測定用器具31uの場合、検出圧Pxと陰圧測定用の規定圧とを供給流量Vx毎に比較し、下流側圧力測定用器具31dの場合、検出圧Pxと陽圧測定用の規定圧とを吸引流量Vx毎に比較する。なお、規定圧と検出圧とが同一であるか否かは、必ずしも完全同一であることを意味しているものではなく、規定圧を基準として予め定められた範囲内に検出圧が収まっている場合も同一であると判定するようにしてもよい。同一である場合、制御器36Cは、吸引又は供給流量Vxと検出圧Pxとの関係が規定関係と相関性を有すると判定する。選択される圧力測定用器具31u,31dに関して相関性があると判定されると、隔膜42が正規位置に配置されていると推定される。即ち、選択される器具が上流側圧力測定用器具31uである場合、上側ハウジング部41bの内壁に沿って隔膜42が配置され、選択される器具が下流側圧力測定用器具31dである場合、下側ハウジング部41aの内壁に沿って隔膜42が配置されていると夫々推定される。選択される圧力測定用器具31u,31dの隔膜42が正規位置に配置されていると推定されると、ステップS38に移行する。
ポンプ停止工程であるステップS38では、制御器36Cが血液ポンプ12のローラ12aの動きを止め、プライミング液の送りを止める。プライミング液の送りが止められると、ステップS39に移行する。大気開放工程であるステップS39では、制御器36Cが大気開放ライン82u,82dを開放バルブ83u,83dによって開き、選択される圧力測定用器具31u,31dの気体室46の内圧を大気圧に戻す。各気体室46の内圧が大気圧に戻されると、ステップS40に移行する。血液回路開放工程であるステップS40では、制御器36Cがエア抜き用開閉バルブ26,27によってエア抜きライン24,25を開いて、血液回路11内の圧力を大気圧に戻す。更に、制御器36Cは、パラメータmの数値に応じて上流側又は下流側開閉信号を開閉用バルブ18,19に出力し、血液回路11を開く。血液回路11が開かれると、ステップS41に移行する。調整終了判定工程であるステップS41では、制御器36Cは、パラメータmの数値に応じて隔膜調整処理を終了するか継続するかを判定するようになっている。パラメータmが1である場合、下流側圧力測定用器具31dの隔膜42の位置を調整すべくステップS33に戻り、パラメータmが2以上である場合、膜位置調整処理が終了する。
また、ステップS20において、少なくとも1つの検出圧Pxが規定圧と同一でない場合、吸引又は供給流量Vxと検出圧Pxとの関係が規定関係と相関性を有していないと制御器36Cが判定し、選択される圧力測定用器具31u,31dの隔膜42が正規位置に配置されていないと推定する。例えば、上流側圧力測定用器具31uの場合、その隔膜42が正規位置より下側ハウジング部41a側(即ち、血液室45側)に配置され、下流側圧力測定用器具31dの場合、その隔膜42が正規位置より上側ハウジング部41b側(即ち、気体室46側)に配置されていると推定される。そうすると、選択された圧力測定用器具31u,31dの隔膜42を正規位置に調整すべくステップS51に移行する。
調整回数判定工程であるステップS51では、隔膜42の位置の調整回数iが規定回数bを越えていないか制御器36Cが判定する。なお、調整回数iは、圧力測定用器具31u,31dが選択されるたびにゼロにリセットされるようになっている。調整回数iが規定回数bを越えていないと制御器36Cが判定すると、ステップS52に移行する。調整回数カウント工程であるステップS52では、調整回数iに1を加算する。調整回数iに1を加算すると、ステップS53に移行する。
膜位置調整工程であるステップS53では、パラメータmの数値に応じて、選択される圧力測定用器具31u,31dの血液室45に対してプライミング液を吸引又は供給し、選択される圧力測定用器具31u,31dの隔膜42の位置を調整する。例えば、パラメータmが1である場合、制御器36Cが血液ポンプ12のローラ12aを逆回転させて上流側圧力測定用器具31uの血液室45にプライミング液を供給する。制御器36Cは、隔膜42を上側ハウジング部41b側に押し付けられて、上流側圧力測定用器具31uの検出圧Pxが略一定に収束するまで血液ポンプ12を駆動し続ける。そして、制御器36Cは、検出圧Pxが略一定に収束すると血液ポンプ12の動きを止める。これにより、上流側圧力測定用器具31uの隔膜42が上側ハウジング部41bの内周面に沿って配置される、即ち正規位置に調整される。また、パラメータmが2である場合、制御器36Cが血液ポンプ12のローラ12aを逆回転させて下流側圧力測定用器具31dの血液室45からプライミング液を吸引する。制御器36Cは、隔膜42を下側ハウジング部41a側に押し付けられて、下流側圧力測定用器具31dの検出圧Pxが略一定に収束するまで血液ポンプ12を駆動し続ける。そして、制御器36Cは、検出圧Pxが略一定に収束すると、血液ポンプ12の動きを止める。これにより、下流側圧力測定用器具31dの隔膜42が下側ハウジング部41aの内周面位沿って配置される、即ち正規位置に調整される。このように、選択される圧力測定用器具31u,31dの隔膜42が正規位置に調整されると、ステップS54に移行する。
大気開放工程であるステップS54では、ステップS39と同様に制御器36Cが大気開放ライン82u,82dを開放バルブ83u,83dによって開き、選択される圧力測定用器具31u,31dの気体室46の内圧を大気圧に戻す。各気体室46の内圧が大気圧に戻されると、ステップS54に移行する。血液回路開放工程であるステップS55では、ステップS10と同様に制御器36Cがエア抜き用開閉バルブ26,27によってエア抜きライン24,25を開いて、血液回路11内の圧力を大気圧に戻し、パラメータmの数値に応じて上流側又は下流側開閉信号を開閉用バルブ18,19に出力し、血液回路11を開く。血液回路11が開かれると、ステップS56に移行する。
第3クランプ工程であるステップS56では、制御器36Cが3つのバルブ17,26,27によってプライミングライン23、及びエア抜きライン24,25を閉じる。更に、制御器36Cは、パラメータmの数値応じて上流側又は下流側開閉信号を開閉用バルブ18,19に出力し、血液回路11の一端部付近又は他端部付近を閉じるようになっている。更に詳細に説明すると、パラメータmが1の場合、上流側開閉バルブ18に上流側開閉信号を出力して血液回路11の一端部付近を閉じる。他方、パラメータmが2の場合、下流側開閉バルブ19に下流側開閉信号を出力して血液回路11の他端部付近を閉じる。このようにして血液回路11の一端部又は他端部が閉じられるとステップS16に移行する。そして、再びステップS47〜S49で圧力検出が行われ、ステップS50で相関性の有無が判定される。ステップS50で相関性がないと再び判定され、ステップS51で調整回数iが規定回数bを越えていないか判定される。ここで調整回数iが規定回数bを越えていると判定されると、ステップS57に移行する。
アラーム工程であるステップS57では、報知器50によって接続不良又はエア漏れ等の不具合によって位置調整不能であることを報知する。即ち、制御器36Cは、検出圧に変化がなく隔膜42の位置の調整を繰り返し行っても検出圧が規定圧と同一にならずに吸引又は供給時に調整回数iが規定回数を超えると、接続不良又はエア漏れ等の不具合によって位置調整不能であると判断する。そうすると、制御器36Cは、報知器50に指令を送って、位置調整不能である旨のアラームを報知する。報知すると、制御器36Cは、血液ポンプ12等の各構成の動きを止める。動きを止めると、膜位置調整処理が終了する。なお、膜位置調整処理が終了した後に前述するような不具合を解消し、膜位置調整処理の再開を図示しない入力装置から入力することで、膜位置調整処理が再開される。
本実施形態の膜位置調整装置1Dでは、血液ポンプ12で血液回路11内の液体を動かすことによって、圧力測定用器具31u,31dの隔膜42の位置を推定し、推定結果に基づいて隔膜42を正規位置に調整することができる。膜位置調整装置1では、隔膜42の位置の調整に非圧縮性の流体であるプライミング液が用いられている。それ故、圧力測定用器具31u,31dの形状の個体差や温度等に起因する膨張及び収縮が少ないプライミング液によって隔膜42の位置が調整される。これにより、圧力測定用器具31u,31dの形状の個体差や温度等の影響を受けることなく、血液室45に流入又は吸引するプライミング液の量に応じた位置に隔膜42を移動させることができ、隔膜42の位置を調整する際の隔膜42の位置精度を向上させることができる。即ち、圧力測定用器具31u,31dの隔膜42の位置を推定し、推定結果に基づいた正規位置に高い位置精度で隔膜42の位置を調整させることができる。
また、膜位置調整装置1Dでは、圧力測定用器具31u,31dの血液室45に流入又は吸引させる際にプライミング液が膨張及び収縮することがないので、同量の気体を流入又は吸引した場合に比べて隔膜をより大きく移動させることができる。それ故、空気に比べて少ない量のプライミング液で隔膜42を正規位置まで移動させることができ、隔膜42の位置を正規位置に調整する際の調整時間を短縮することができる。
更に、膜位置調整装置1Dでは、血液ポンプ12で膜位置調整処理を実行することができるので、新たな構成を追加することなく、隔膜42の位置を調整することができる。つまり、部品点数を増加させることなく、隔膜42の位置を調整することができる。また、膜位置調整装置1Aで2つの圧力測定用器具31u,31dの隔膜42の位置を調整することができるので、配置位置に応じて膜位置を、製造時等、事前に調整する必要がなくなり、製造時における膜位置の調整を省くことができる。従って、人為的に行われる膜位置調整作業を省くことができ、人為的作業に伴う製造コストを低減することができる。他方、隔膜42が正規位置に配置されている場合、隔膜42の調整作業を省くことができ、調整時間を短縮することができる。
また、膜位置調整装置1は、隔膜42の位置を推定し、その位置に応じて血液室45に対してプライミング液を吸引及び供給するので、プライミング液が血液室45に過度に吸引又は供給されることを抑えることができる。これにより、隔膜42に過度の圧力が与えられて隔膜42の特性が変わってしまうことを防ぐことができ、隔膜42の位置調整後における計測結果が膜位置調整装置1毎にばらつくことを抑制することができる。
その他、第5実施形態の膜位置調整装置1Dは、第4実施形態の膜位置調整装置1Cと同様の作用効果を奏する。
<その他の実施形態>
第1乃至第3実施形態の膜位置調整装置1,1A,1Bでは、3つの圧力測定用器具31u,31d,31mが血液回路11に介在しているが、必ずしも3つである必要はなく、1つ又は2つであってもよく、4つ以上であってもよい。圧力測定用器具31の形状も上述するようなものに限定されない。第4及び第5実施形態の膜位置調整装置1C,1Dも同様であり、1つ又は3つ以上であってもよく、圧力測定用器具31の形状についても上述するようなものに限定されない。
また、第1乃至第5実施形態の膜位置調整装置1,1A〜1Dにおいて、圧力測定用器具31の隔膜42の限界位置は、本体部分42bが下側ハウジング部41a又は上側ハウジング部41bに沿うような位置であるが、必ずしもこのような位置に限定されない。例えば、隔膜42を下側ハウジング部41a又は上側ハウジング部41bの内周面より小さい形状に形成すると、本体部分42bがそれ以上に変形しない位置が限界位置となる。また、下側ハウジング部41a及び上側ハウジング部41b以外の別の部材で隔膜42の変形を止めるようにし、変形しない位置が隔膜42の限界位置となる。
また、第1乃至第3実施形態の膜位置調整装置1,1A,1Bでは、調整用ポンプ38によって吸引又は供給した空気の体積に基づいて隔膜42,62の位置を検出しているが、必ずしも空気の体積に限定されない。例えば、調整用ポンプ38から吸引又は供給される空気の流量を検出し、この検出される空気の流量に基づいて隔膜42,62の位置を検出してもよい。つまり、空気の体積及び流量等のような気体量に基づいて隔膜42,62の位置が検出されればよい。
また、血液浄化システム2,2Cにおいて、プライミングを行った後に膜位置調整装置1,1A,1B,1Dが隔膜42,62の位置の推定及び調整を行っているが、必ずしもプライミングの後である必要はない。具体的には、隔膜42,62の位置の推定及び調整がプライミングと同時に行われてもよく、プライミングの後の施術中に行われてもよい。第1乃至第3実施形態の膜位置調整装置1,1A,1Bにおいてプライミングの後の施術中に行う場合として、例えば施術時に雌型コネクタ部44が外れて隔膜42,62の位置が不適切な場合がある。この場合、雌型コネクタ部44を再度接続し直してから隔膜位置を調整すればよい。なお、プライミングと同時或いは直後に隔膜42,62の位置の推定及び調整を行う仕様であれば、製造時の隔膜42,62の位置調整を製造者が行う必要をなくすことができる。
また、第1乃至第3実施形態の膜位置調整装置1,1Aでは、検出ライン40を調整用ライン37から分岐させて形成されているが、調整用ライン37と別に検出ライン40を形成してもよい。この場合、圧力測定用器具31及びドリップチャンバー14A,15Aの上側ハウジング部41b,61bには、接続口41e,61eと異なる取付口が形成され、この取付口に検出ライン40を接続するように構成される。
第4及び第5実施形態の膜位置調整装置1C,1Dでは、血液ポンプ12としてローラポンプが採用されているが、必ずしもローラポンプに限定されず、送出する流量を調整可能なポンプであればよい。また、各圧力測定用器具31u,31dの形状も、必ずしも上述するような形状である必要はなく、隔膜42によって血液室45と気体室46とが区画されているものであればよい。更に、開閉機構も必ずしも開閉用バルブ18,19である必要はなく、制御器36Cによって動きを制御可能なクリップのようなものであってもよい。また、開閉用バルブ18,19と異なる開閉バルブを血液ポンプ12と上流側及び下流側圧力測定用器具31u,31dの各々との間に設け、位置の調整を行う際にこれらの開閉バルブを開閉用バルブ18,19の代わりに使用するようにしてもよい。