JP6623548B2 - 膵管内乳頭粘液性腫瘍検出用マーカーとキット - Google Patents
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Description
詳しくは、本発明は、膵臓がんの大半を占める膵管腺がんの発症につながる、膵管内乳頭粘液性腫瘍の検出や診断を、リキッドバイオプシーにより行うための、上記マーカー、診断剤、およびマイクロアレイ等に関する。
膵臓がんは、初期症状がほとんどないため早期発見が困難であり、進行が早く予後も悪い難治性がんである。膵臓がんはステージが低いほど治癒の可能性は高くなるので、膵臓がんによる死亡率を低下させるために早期発見は非常に重要である。
膵臓がんの大半は、膵管腺がん(PDAC)という種類であり、膵管腺がんは「膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMN)」という腫瘍の悪性度が高まったものであると考えることが出来る。
(1)miR-30e-3pおよび/またはmiR-451aを含む、膵管内乳頭粘液性腫瘍検出用マーカー。
(2)miR-30e-3pおよび/またはmiR-451aに結合可能なプローブを含む、膵管内乳頭粘液性腫瘍診断剤。
(3)miR-30e-3pに結合可能なプローブおよび/またはmiR-451aに結合可能なプローブを含む、膵管内乳頭粘液性腫瘍診断剤。
(5)miR-30e-3pに結合可能なプローブおよび/またはmiR-451aに結合可能なプローブが搭載された、膵管内乳頭粘液性腫瘍検出用マイクロアレイ。
(6)単体に固定された、miR-30e-3pおよび/またはmiR-451aに結合可能なプローブ、miR-30e-3pに結合可能なプローブ、並びにmiR-451aに結合可能なプローブの少なくとも1種のプローブを含む、膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断用または検出用キット。
(8)被験動物におけるmiR-30e-3pおよび/またはmiR-451aの検出結果を指標とする、膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断方法。
(9)膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断におけるmiR-30e-3pおよび/またはmiR-451aの使用。
なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
本発明にかかる膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)検出用マーカーは、前述した通り、miR-30e-3pおよび/またはmiR-451aを含むものである。
ここで、miR-30e-3pおよびmiR-451aは、いずれも、IPMN患者に特異的な血清中のmiRNAである。「miR-30e-3p」は、miRBase(the microRNA database;http://www.mirbase.org/ )において、Accession number: MIMAT0000693、ID: hsa-miR-30e-3p として公開されており、具体的には、配列番号1で表わされる塩基配列(cuuucagucggauguuuacagc)からなる22塩基のRNAである。同様に、「miR-451a」は、miRBaseにおいて、Accession number: MIMAT0001631、ID: hsa-miR-451a として公開されており、具体的には、配列番号2で表わされる塩基配列(aaaccguuaccauuacugaguu)からなる22塩基のRNAである。
本発明のマーカーを用いて検出または診断する対象となるものは、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)であるが、前述の通り、IPMNは、膵臓がんの大半を占める膵管腺がんの発症につながるものである。よって、本発明におけるIPMNの検出・診断は、膵管腺がんの検出・診断や、ひいては膵臓がんの検出・診断に置き換えることもでき、さらには、膵管腺がんのリスクの検出・評価や、ひいては膵臓がんの検出・評価に置き換えることもできるが、特に限定はされない。
プローブとは、一般に、検体(被験試料)中の標的とする核酸(miRNAの他、mRNA若しくはcDNA又はcRNA、あるいはこれらのアンチセンス鎖(aRNA又はaDNA))をハイブリダイゼーションにより捕捉し、当該標的核酸を検出するために使用されるものをいう。当該プローブは、通常、核酸プローブであるが、プローブを構成する「核酸」としては、一般に、DNA、RNA、PNAなどを使用することができ、なかでもDNAが好ましい。
本発明において、膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断や検出に用いるためのプローブ(又はプローブセット)としては、例えば、以下の(a)〜(d)の核酸若しくは(a)〜(d)それぞれの塩基配列の一部を含むものが挙げられる。
(b)前記(a)の核酸(すなわちRNA)の塩基配列中、ウラシル(U)をチミン(T)に置換した塩基配列からなる核酸(すなわちDNA)
(c)前記(a)または(b)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、miR-30e-3pおよび/またはmiR-451aを検出することができる核酸
(d)前記(a)または(b)の核酸と塩基配列の同一性(相同性)が80%以上である塩基配列からなり、かつ、miR-30e-3pおよび/またはmiR-451aを検出することができる核酸
また、「ストリンジェントな条件」とは、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件が挙げられる。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件が挙げられる。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件が挙げられる。なお、本発明においては、具体的には、「ストリンジェントな条件」は、例えば、0.24M TNT bufferや0.12M TNT buffer、1×SSC溶液(1×SSCは0.15M NaCl、15mM クエン酸ナトリウム)中において45〜65℃で洗浄する条件が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ストリンジェンシーは塩濃度(イオン強度)、温度等によって制御することができる。ストリンジェンシーがより高い条件、即ち塩濃度がより低く、温度がより高い条件では、洗浄により非特異的なハイブリダイゼーションによるバックグラウンドが除去され、特異的にハイブリダイズした核酸のみが残る。当業者であれば、温度や塩濃度を調整する。または、WO2006/083040号パンフレットに示されるような多段階の洗浄によって、ストリンジェントな条件を適宜選択することができる。
なお、ハイブリダイゼーションにおいて、市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコルにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズした核酸を検出することができる。
前記(a)〜(d)の核酸は、当該核酸の全長に限らず、その一部をプローブとして使用することもできる。
本明細書において記載したプローブ又はプローブセットに用いる各種核酸の入手方法は、特に限定はされず、公知の遺伝子工学的手法や公知の合成手法によって取得することが可能であり、例えば、市販のDNA合成機などを用いて得ることもできる。
本発明にかかる膵管内乳頭粘液性腫瘍診断剤は、前述の通り、miR-30e-3pおよび/またはmiR-451aに結合可能なプローブ、あるいは、miR-30e-3pに結合可能なプローブおよび/またはmiR-451aに結合可能なプローブを含むものである。すなわち、当該診断剤は、miR-30e-3pおよびmiR-451aの両方に結合可能なプローブを含むものであってもよいし、miR-30e-3pおよびmiR-451aのいずれか一方に結合可能なプローブを含むものであってもよいし、また、miR-30e-3pに結合可能なプローブとmiR-451aに結合可能なプローブの組合せを含むものであってもよく、特に限定はされない。より詳しくは、前記2.項で述べた各種プローブおよびプローブセットも、本発明の診断剤に用いることができる。
本発明の診断剤や各種キットにおいて、上記各種プローブは、安定性(保存性)及び使用容易性等を考慮して、粉末の状態又は溶液の状態(純水、バッファー、生理食塩水などに溶かした状態)で、冷蔵又は冷凍(-30℃〜-80℃)の条件下で保存することが好ましい。また、本発明の診断剤や各種キットは、上記各種プローブの他に、他の構成要素を含んでいてもよく、他の構成要素としては、例えば、発色基質等を挙げることができる。
核酸マイクロアレイとは、担体上に多数の核酸プローブを高密度にそれぞれ独立に固定化したものである。核酸マイクロアレイは、複数の核酸塩基配列に関する発現量や、特定の核酸塩基配列の配列自体を網羅的に解析するために利用されるシステムである。
本発明にかかる膵管内乳頭粘液性腫瘍検出用マイクロアレイ(膵管内乳頭粘液性腫瘍検出用の核酸マイクロアレイ)は、前記2.項や3.項で述べた本発明の各種プローブ(又はプローブセット)が搭載されたものである。本発明のマイクロアレイは、支持体上に、上記各種プローブが固定されたものであれば、特に限定はされない。
(工程ii)前記配列体を包埋し、ブロック体を製造する工程
(工程iii)プローブを含むゲル前駆体重合性溶液を前記ブロック体の各中空繊維の中空部に導入して重合反応を行い、プローブを含むゲル状物を中空部に保持させる工程
(工程iv)中空繊維の長手方向と交差する方向で切断して、ブロック体を薄片化する工程
中空繊維は、その長手方向の長さが同一となるように3次元に配列される(工程i)。配列方法としては、例えば、粘着シート等のシート状物に複数本の中空繊維を所定の間隔をもって平行に配置し、シート状とした後、このシートを螺旋状に巻き取る方法(特開平11−108928号公報を参照)や、複数の孔が所定の間隔をもって設けられた多孔板2枚を孔部が一致するように重ね合わせ、それらの孔部に中空繊維を通過させ、その後2枚の多孔板の間隔を開いて仮固定し、2枚の多孔板間における中空繊維の周辺に硬化性樹脂原料を充満させて硬化させる方法(特開2001−133453号公報を参照)等が挙げられる。
包埋された配列体には、各中空繊維の中空部に、プローブを含むゲル前駆体重合性溶液(ゲル形成溶液)を充填し、中空部内で重合反応を行う(工程iii)。これにより、各中空繊維の中空部に、プローブが固定されたゲル状物を保持させることができる。
本発明においては、被験動物におけるmiR-30e-3pおよび/またはmiR-451aの検出結果を指標とする、膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断方法または当該腫瘍の検出方法が提供され得る。
また、本発明においては、生体から採取した試料中のmiR-30e-3pおよび/またはmiR-451aを検出し、その検出結果に基づいて膵管内乳頭粘液性腫瘍の有無を判断する、膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断を補助する方法も、提供され得る。
さらに、本発明は、膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断または検出におけるmiR-30e-3pおよび/またはmiR-451aの使用も提供され得る。
本発明の診断方法および検出方法では、miR-30e-3pおよびmiR-451aのうちの少なくとも一方のmiRNAの量を測定すればよい。すなわち、どちらか一方のmiRNAを測定して行ってもよいし、両方のmiRNAを測定して行ってもよい。
また、miRNAの検出においては、標的となる各miRNA(miR-30e-3p、miR-451a)の濃度をそれぞれ求めてもよいし、生体試料中に含まれる複数のmiRNAの発現プロファイル(発現パターン)と、健常人における当該miRNAの発現プロファイルとを全体として比較し、その類似性を評価することによって行ってもよい。
RNaseプロテクションアッセイ法は、放射性同位元素やDIGなどで標識したRNAプローブと標的miRNA(miR-30e-3p、miR-451a)をハイブリダイズさせた後、一本鎖に特異的なRNaseを用いて標的miRNAとハイブリダイズしなかったプローブの領域を消化した後、ハイブリダイゼーションによって保護されたプローブ部分を電気泳動などで検出する方法である。
リアルタイムPCR法は、PCR増幅産物を検出する方法である。SYBR Greenに代表される二本鎖核酸に特異的に挿入する蛍光標識を用いるインターカレート法と、TaqManプローブに代表される蛍光標識した配列特異的なプローブを用いる方法がある。リアルタイムPCR法を用いる場合も、試料中のmiRNAから逆転写酵素でcDNAを得て、これを鋳型とすることができる。
また、miRNAの検出や測定を行う前に、血清または血漿からエクソソーム画分の濃縮を行ってもよい。濃縮する方法は、超遠心法に限らず、膜で調製する方法、抗体で調製する方法、エクソソームを特異的に濃縮する試薬による方法により行うこともできる。さらに、エクソソーム画分からmiRNAの抽出を行ってもよい。これらの工程は、当業者が常法に従って行うことができる。
本明細書において「検出」は、診断に必要な情報を得るために、被検者から採取した試料を調べることを意味する。また、本発明において、「検出」は、膵管内乳頭粘液性腫瘍に罹患しているか否かを確認することにより、膵管腺がん、ひいては膵臓がんのリスクを調べること、症状が現れない段階で膵管腺がん、ひいては膵臓がんの発症の可能性をスクリーニングすることを含んでいる。
本明細書において「有意」であるとは、「統計学的に有意」であることであり、例えば、コントロール検体と比較した場合の発現量の変化を示す値が、平均値を中心として標準偏差の3倍以上の変化を示す方法があげられる。その他の統計学的処理の検定方法は、有意性の有無を判断可能な公知の検定方法を適宜使用すればよく、特に限定されない。例えば、スチューデントt検定法、多重比較検定法を用いることができる。
本発明は、上述した本発明の診断方法や検出方法、あるいは診断を補助する方法を行うためのキットも包含する。
本発明のキットの一態様としては、所定のmiRNA(miR-30e-3p、miR-451a)とハイブリダイズし得るDNA(プローブ)が固定された担体を含む。当該担体は、プローブDNAを固定できる担体であれば特に限定はされず、ガラス製、金属性、樹脂製等のマイクロタイタープレート、基板、ビーズ、ゲル、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン、PVDFメンブレン等が挙げられる。プローブDNAは、これらの担体に公知の方法で固定することが可能である。当該キットは、例えば、各種反応・検出用試薬、緩衝液、取扱説明書等をさらに備えていてもよい。
本発明のキットにおいて、DNAマイクロアレイ(核酸マイクロアレイ)を含む場合は、標的miRNAを直接標識する試薬を備えておいてもよい。標識試薬としては、蛍光物質、ビオチン、32Pなどの放射性同位元素、ジゴキシゲニンなど当業者に一般的な技術を用いることができる。このようなキットは、例えば、逆転写酵素、各種反応・検出試薬、緩衝液、取扱説明書等をさらに備えていてもよいが、特に限定はされない。
マイクロRNA解析には、ジェノパールMICH14を用いた。マイクロRNA検出用の搭載プローブは所定のURL(https://www.mrc.co.jp/genome/products/micro_rna.html)に記載されている。
検体は血清検体を用いた。膵臓癌(PC)、膵内分泌腫瘍(P-NET)、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、慢性膵炎(CP)、自己免疫性膵炎(AIP)の患者各5名からの血漿検体を等量プールした後、900μLを分けとり、exoRNeasy Serum/Plasma Midi Kit(キアゲン社)を用いてエキソソームの精製を行った。同様に、健常人サンプルとしては、正常ヒト血漿(コージンバイオ株式会社)を用いてエキソソームの精製を行った。
得られたマイクロRNA溶液16μLとNucleic Acid Labeling Kit, PlatinumBright647 Infrared(クレアテック社)キットのバッファー液2μL、標識試薬2μLを混合して20μLとした後、85℃ で 30 分間インキュベートした。その後キット付属のカラムを使用して精製し、蛍光標識したマイクロRNA溶液約20μLを得た。その後、得られた溶液1μLをAgilent RNA 6000 Pico Kit(アジレントテクノロジー株)を用いて電気泳動を行い、短鎖のRNAが抽出されていることを確認した。
標識したマイクロRNAを、最終濃度が0.24M TNT溶液、溶液量が200μLとなるように調製した。miRNAアレイ(ジェノパールMICH14)を用いてハイブリダイゼーションに供した。ハイブリダイゼーションは、50℃、遮光条件下で16時間行った。
洗浄は、0.24M TNT溶液、50℃で40分間洗浄後、0.24M TN溶液、50℃で10分間洗浄した。
検出は、冷却CCDカメラ方式の蛍光検出装置を用いて、ハイブリダイゼーション後のマイクロアレイの各プローブスポットを画像化及び数値化した。
解析には、検出されたコントロール検体とのシグナル強度との比率をもとに(下記表1参照;なお、便宜上、表1−1〜表1−4に分けて記載しているが、これらを合わせて表1とする。)、特異的に検出されたマイクロRNAを抽出した。表1は、コントロール検体と各膵臓疾患検体とのマイクロRNAの発現比(比率を底が2のLogで変換した値)を示すものである。
これらの閾値を超えて変化しているデータを表1から抽出したところ、以下の4つのデータが抽出された。
(2) IPMN plasma hsa-miR-451 -3.06
(3) PC plasma hsa-miR-301 3.96
(4) PC plasma hsa-miR-521 3.07
Claims (4)
- miR-30e-3pに結合可能なプローブを含む、膵管内乳頭粘液性腫瘍診断剤。
- miR-30e-3pに結合可能なプローブが搭載された、膵管内乳頭粘液性腫瘍検出用マイクロアレイ。
- 担体に固定された、miR-30e-3pに結合可能なプローブを含む、膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断用または検出用キット。
- miR-30e-3pに結合可能なプローブを用いて、被験動物由来の生体試料中のmiR-30e-3pを検出し、当該被験動物におけるmiR-30e-3pの検出量が健常者の検出量より有意に多い場合、当該被験動物が膵管内乳頭粘液性腫瘍を有している、または有している可能性が高いと判断する、膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断を補助する方法。
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