JP6623451B2 - 管路ライニング材および管路ライニング材の製造方法 - Google Patents

管路ライニング材および管路ライニング材の製造方法 Download PDF

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Description

地中に埋設された管路の内周壁を裏打ちする用途に用いられ、ラジカル重合性モノマーによって架橋する硬化性樹脂を主成分としたコンパウンドを含浸し該硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材およびその管路ライニング材の製造方法に関する。
埋設されている下水道管等の管路には、老朽化や、地盤沈下あるいは地上圧力の変動等によって損傷しているものがある。損傷した既設管を補修する場合、非開削で行うことが補修費用の低減や交通障害を最小限に抑える点からも好ましい。
そこで、既設管の非開削補修工法として、既設管の内周壁に管路ライニング材を押し付けその内周壁を管路ライニング材によって裏打ちする技術が種々提案されている(例えば、特許文献1等参照)。また、新規に管路を埋設した場合であっても、その新設管の内周壁を管路ライニング材によって裏打ちすることがある。
管路ライニング材には、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等の硬化性樹脂を主成分としたコンパウンドが含浸されており、これらの硬化性樹脂には、ラジカル重合性モノマーの一つとしてスチレンモノマーが用いられている。このスチレンモノマーには、硬化性樹脂に緻密な3次元結合を形成する架橋剤としての役割がある他、硬化性樹脂の粘度を調整する粘度調整剤としての役割や、低コストな希釈剤としての役割がある。ところが、スチレンモノマーには臭気性という大きな問題がある。例えば、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合、管路内周壁に管路ライニング材を押し付けるとともに熱硬化性樹脂を加熱するため、管路内に温水を循環させることがある。この場合、管路ライニング材における、管路内周壁に接する面とは反対の内側の面からスチレンモノマーが透過すると、循環する温水にスチレンモノマーの臭いがついてしまい、その温水排出時にスチレンモノマーの臭気が一気にたちこめる。この臭気は、補修現場一帯にたちこめる他、管路に接続した取付管を経由して民家に到達し、住民に多大な迷惑をかけてしまう。また、管路内周壁に管路ライニング材を裏打ちした後の数日間は、残ったスチレンモノマーが補修した管路内に透過する恐れがあり、こうして透過したスチレンモノマーの臭気も、取付管を経由して民家に到達してしまう。
一方で、スチレンモノマーは他のモノマーと比較して、コスト、硬化性、希釈性、耐水性等のバランスが優れており、何よりも、管路ライニング材においては特に重要な長期の機械的特性に与える影響が大きいことが判明している。そのため、スチレンモノマーを使わざるを得ない状況が続いている。
特開平4−319135号公報
しかしながら、有機溶剤に関する法令の改正により、スチレンモノマーについて、作業記録の作成およびその30年間の保存並びに健康診断等の実施義務が課せられるようになり、スチレンモノマーはますます使いにくくなってきている。
本発明は上記事情に鑑み、長期の機械的特性に優れた新規な管路ライニング材と、その管路ライニング材の製造方法を提供することにある。
上記目的を解決する本発明の管路ライニング材は、
地中に埋設された管路の内周壁を裏打ちする用途に用いられ、ラジカル重合性モノマーによって架橋する硬化性樹脂を主成分としたコンパウンドを含浸し該硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材において、
前記管路の内周壁側に位置することになる外側ライニング部材と、
前記外側ライニング部材よりも内側に位置することになるものであって、該外側ライニング部材よりも厚みが薄い内側ライニング部材とを有し、
前記ラジカル重合性モノマーとしてジアリルフタレートを含有し
前記外側ライニング部材が、スチレンモノマーを含有しないものであり、
前記内側ライニング部材も、スチレンモノマーを含有しないものであり、
硬化した後では、50年後の予測曲げ弾性係数が4000MPa以上になることを特徴とする。
本願発明者が、研究を重ねた結果、ジアリルフタレートは、長期の機械的特性を向上させることができることを突き止め、本発明によれば、新規な管路ライニング材を提供することができる。
なお、ジアリルフタレートを含有することでスチレンモノマーは必要なくなるが、臭気を発しない程度にスチレンモノマーを含有していても、有機溶剤に関する法令の問題を除けば、何ら不都合はない。しかしながら、この法令を遵守するには、スチレンモノマーの含有量を0%にする必要がある。
また、本発明の管路ライニング材において、
前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であることを特徴としてもよい。
ジアリルフタレートは、熱硬化性樹脂の一種であるため、前記硬化性樹脂自身も熱硬化性樹脂である方が、両者の樹脂の相性がよく好ましい。
また、本発明の管路ライニング材において、
未硬化の状態の管路ライニング材全体を100重量%にした場合に、ジアリルフタレートを8.3重量%以上30.7重量%以下の範囲で含有し、
前記管路の内径に対して2.4%以上4.0%以下の厚さを有することを特徴とする態様であることが好ましい。
本願発明者が、さらに研究を重ねた結果、ジアリルフタレートの含有量と、管路ライニング材全体の厚さとの関係を突き止めた。すなわち、ジアリルフタレートを上記の範囲で含有することによって、管路ライニング材全体の厚さを、前記管路の内径に対して2.4%以上4.0%以下の厚さにすることができる。この厚さは、あくまで未硬化の状態の管路ライニング材全体の厚さであるが、2.4%未満であると、ジアリルフタレートを含有していても薄すぎて長期の機械的特性に問題が生じる。一方、4.0%を越えると、厚くなりすぎてしまい、補修管路の通水性能の低下が目立ってしまう。なお、硬化後の厚さは、主成分となる硬化性樹脂をはじめとした他の成分や、硬化条件によって左右されるが、硬化前の厚さから概ね1%〜2%程度薄くなる傾向が強い。ジアリルフタレートの含有量が30.7重量%を越えると、主成分である硬化性樹脂や粘度調整剤等のその他の添加剤の割合が低下しすぎてしまい、硬化に必要以上に時間がかかってしまうようになったり含浸のしやすさ等の性能に弊害が生じる。反対に、ジアリルフタレートの含有量が8.3重量%未満であると、長期の機械的特性を良好に維持することが困難になる。本願発明では、単なる機械的特性のみに注目しているのではない。すなわち、短期的な機械的特性に加えて、何十年といった長期の機械的特性にも注目し、その長期の機械的特性を満足するのに必要なジアリルフタレートの含有量を得たことに大きな意義がある。
上記目的を解決する本発明の管路ライニング材の製造方法は、
スチレンモノマーを含有しない代わりにジアリルフタレートを含有したラジカル重合性モノマーによって架橋する硬化性樹脂を主成分とした外側ライニング部材用コンパウンドと、スチレンモノマーを含まないラジカル重合性モノマーによって架橋する硬化性樹脂を主成分とした内側ライニング部材用コンパウンドを調製する調製工程と、
前記調製工程で調製された前記外側ライニング部材用コンパウンドを、外側ライニング部材の基材層である第1基材層に含浸し、該調製工程で調製された前記内側ライニング部材用コンパウンドを、内側ライニング部材の基材層である第2基材層に含浸する含浸工程と、
前記第2基材層が内側に位置する前記内側ライニング部材を該第2基材層が外側にくるようにめくり返しながら、該内側ライニング部材を、前記外側ライニング部材の内側に挿入し、該第2基材層と前記第1基材層を接触させる反転挿入工程とを有することを特徴とする。
なお、地中に埋設された管路の内周壁側に位置し、基材層を有し該管路の内周壁に外側が接することになる外側ライニング部材、および該外側ライニング部材よりも内側に位置する内側ライニング部材を有する管路ライニング材のうちの該基材層に含浸するコンパウンドにおいて、
このコンパウンド全体を100重量%にした場合に、15.2重量%以上36.2重量%以下のジアリルフタレートを含むラジカル重合性モノマーを含有するものであることを特徴とするコンパウンドであってもよい。
ジアリルフタレートの含有量が15.2重量%未満であると、長期の機械的特性を良好に維持することが困難になる。一方、36.2重量%を越えると、主成分である硬化性樹脂や粘度調整剤等のその他の添加剤の割合が低下しすぎてしまい、硬化に必要以上に時間がかかってしまうようになったり含浸のしやすさ等の性能に弊害が生じる。
本発明によれば、長期の機械的特性に優れた新規な管路ライニング材と、その管路ライニング材の製造方法を提供することができる。
本発明の管路ライニング材の一実施形態を示す斜視図である。 工場において図1に示す管路ライニング材を製造する工程を示すフローチャートである。 図1に示すステップS14におけるキャリブレーションホースの反転挿入の様子を示す断面図である。 施工現場において図1に示す管路ライニング材を用いて管路を補修する工程を示すフローチャートである。 図4に示すステップS23において管路内に管路ライニング材をセットした様子を示す断面図である。 図4に示すステップS23において管路ライニング材を拡径した様子を示す断面図である。 図4に示すステップS26において管口仕上げが行われた管路の様子を示す断面図である。 図7に示す管路ライニング材1のA―A’断面図である。
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の管路ライニング材の一実施形態を示す斜視図である。
図1に示す管路ライニング材1は、地中に埋設された下水道管の内周壁を裏打ちする際に用いられるスリーブ状のものであるが、図1には、スリーブ状の管路ライニング材1が扁平につぶされた様子が示されている。この管路ライニング材1は、ベースホース10とキャリブレーションホース20という2つのスリーブ状のライニング部材が一体になったものである。以下、管路ライニング材1の径方向外側を単に外側と称し、径方向内側を単に内側と称することにする。ベースホース10はキャリブレーションホース20の外側に位置するものであり、本発明にいう外側ライニング部材の一例に相当する。反対に、キャリブレーションホース20は、ベースホース10の内側に位置するものであり、本発明にいう内側ライニング部材の一例に相当する。キャリブレーションホース20は、ベースホース10よりも厚みが薄いものである。
ベースホース10は、基材層11と外側フィルム層12とを有する。図1に示す基材層11は、ポリエステルの不織布である。なお、この基材層11は、ポリエステルに限らず、ナイロン、アクリル、ビニロンなどの有機繊維質材料からなる不織布であってもよいし、その有機繊維質材料からなる織布であってもよいし、カーボン繊維やガラス繊維などの無機繊維質材料からなる不織布あるいは織布であってもよく、さらには、有機繊維質材料と無機繊維質材料を組み合わせたのものであってもよい。
図1に示す基材層11には、コンパウンドが含浸されている。このコンパウンドは、本発明のコンパウンドの一例に相当するものである。基材層11に含浸するコンパウンドはビニルエステル(エポキシアクリレート)樹脂を主成分とするものである。なお、ビニルエステル樹脂に代えて、不飽和ポリエステル樹脂や、ウレタンアクリレート樹脂等を用いてもよい。ビニルエステルは、ラジカル重合性モノマーによって架橋する熱硬化性樹脂の一種であり、コンパウンドには、スチレンモノマーを含まないラジカル重合性モノマーも含有されている。ラジカル重合性モノマーには、ジアリルフタレート(DAP)が含まれている。基材層11に含浸するコンパウンド全量に対して、ジアリルフタレートの含有率は、15.2重量%以上36.2重量%以下の範囲である。ジアリルフタレートが15.2重量%未満であると、何十年といった長期の機械的特性が悪化しすぎてしまう。一方、36.2重量%を越えると、主成分である硬化性樹脂や粘度調整剤等のその他の添加剤の割合が低下しすぎてしまい、硬化に必要以上に時間がかかってしまうようになったり含浸のしやすさ等の性能に弊害が生じる。また、コンパウンドには、架橋剤および粘度調整剤として、例えば、メタクリル酸エステルも含まれている。その他、コンパウンドには、充填剤(フィラー)や、硬化剤(過酸化物等)、各種の添加剤等も含有されている。
外側フィルム層12は、基材層11を外側から覆うものであり、基材層11に含浸されたコンパウンドが外側へ滲出することを抑える機能を有する。すなわち、外側フィルム層12は、不透水性のものである。図1に示す外側フィルム層12は、ナイロン(NY)をポリエチレン(PE)で挟み込んだ積層構造(PE/NY/PE)のものである。なお、ポリエチレンに代えて、ポリプロピレン等の他のポリオレフィンを用いてもよく、さらには、積層構造ではなく単層構造のものであってもよい。
キャリブレーションホース20は、基材層21と伸長層22とを有する。図1に示すキャリブレーションホース20の基材層21も、ベースホース10の基材層11と同じく、ポリエステルの不織布である。なお、この基材層21も、ポリエステルに限らず、ナイロン、アクリル、ビニロンなどの有機繊維質材料からなる不織布であってもよいし、その有機繊維質材料からなる織布であってもよいし、カーボン繊維やガラス繊維などの無機繊維質材料からなる不織布あるいは織布であってもよく、さらには、有機繊維質材料と無機繊維質材料を組み合わせたのものであってもよい。
図1に示すキャリブレーションホース20の基材層21には、ノンスチレンタイプのコンパウンドが含浸されている。キャリブレーションホース20に用いるコンパウンドも、硬化性樹脂を主成分とするものであり、ここでの硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、および不飽和ポリエステルアクリレートから選ばれた熱硬化性樹脂を用いることができる。また、キャリブレーションホース20に用いるコンパウンドには、スチレンモノマーを含まないラジカル重合性モノマーも含まれている。なおここでも、コンパウンドには、架橋剤および粘度調整剤として、例えば、メタクリル酸エステルが含まれている。その他、このコンパウンドには、充填剤(フィラー)や、硬化剤、各種の添加剤等が含まれている。
伸長層22は、この管路ライニング材1の最内周面を形成するポリウレタンからなる伸長性に優れたものである。すなわち、ベースホース10の外側フィルム層12よりも、伸長性に勝るものである。
次に、図1に示す管路ライニング材1を製造する方法について説明する。
図2は、工場において図1に示す管路ライニング材を製造する工程を示すフローチャートである。
まず、裏打ちする管路に適合した適宜の材料が用意される(ステップS11)。ここで用意される材料には、コンパウンドを未含浸のベースホース10と、同じくコンパウンドを未含浸のキャリブレーションホース20が含まれる。これらのホース(10,20)は、裏打ちする管路の長さに応じた長さにカットされたスリーブ状のものであり、別々に用意される。ここで用意されるベースホース10は、外側フィルム層12が外側に位置し、その外側フィルム層12の内側に基材層11が位置する。一方、キャリブレーションホース20は、伸長層12が外側に位置し、その伸長層12の内側に基材層21が位置する。すなわち、図1に示すキャリブレーションホース20の状態とは表裏が逆の状態にある。また、ベースホース20に含浸するコンパウンドのもとになる、ベースホース用主剤、充填剤(フィラー)、硬化剤(過酸化物等)、および各種の添加剤も用意される。ここで用意されるベースホース用主剤は、熱硬化性樹脂であるビニルエステルを主成分(50重量%以上)とするものである。このベースホース用主剤には、スチレンモノマーを含まないラジカル重合性モノマーが含有されている。ラジカル重合性モノマーは、ジアリルフタレートを含むものである。ベースホース用主剤における、ジアリルフタレートの含有率は20重量%以上48重量%以下の範囲内である。
また、コンパウンドには、架橋剤および粘度調整剤としてメタクリル酸エステルも含まれている。さらに、ベースホース用主剤には、揺変性付与剤としてのシリカ、硬化促進剤としてのナフテン酸コバルト、および重合禁止剤等も含まれている。また、キャリブレーションホース20に含浸するコンパウンドのもとになる、キャリブレーションホース用主剤、充填剤(フィラー)、硬化剤、および各種の添加剤も用意される。キャリブレーションホース用主剤は熱硬化性樹脂を主成分とし、この主剤にはスチレンモノマーを含まないラジカル重合性モノマーが含有されている。キャリブレーションホース用のコンパウンドにも、架橋剤および粘度調整剤としてメタクリル酸エステルが含まれている。
次いで、樹脂混合が行われる(ステップS12)。ここでは、ベースホース用主剤、充填剤、硬化剤、および各種の添加剤が混合され、ベースホース用コンパウンドが調整される。また、キャリブレーションホース用主剤、充填剤、硬化剤、および各種の添加剤も混合され、キャリブレーションホース用のコンパウンドも調整される。
続いて、ステップS11で用意したベースホース10の基材層11に、ステップS12で調整したベースホース用コンパウンドを含浸するとともに、ステップS11で用意したキャリブレーションホース20の基材層21に、ステップS12で調整したキャリブレーションホース用コンパウンドを含浸する(ステップS13)。このステップS13では、ベースホース10の基材層11にはコンパウンドを飽和に含浸し、キャリブレーションホース20の基材層21にはコンパウンドを過飽和に含浸する。すなわち、コンパウンドの含浸率を、ベースホース10の基材層11よりもキャリブレーションホース20の基材層21の方を高くしておく。こうして、コンパウンドが含浸されたベースホース11と、コンパウンドが含浸された基材層21が内側に位置するキャリブレーションホース20とが別々に準備される。なお、ベースホース10の基材層11にはコンパウンドを過飽和に含浸し、キャリブレーションホース20の基材層21にはコンパウンドを飽和に含浸してもよい。
次に、コンパウンドが含浸されたベースホース11の内側にキャリブレーションホース20を反転挿入する(ステップS14)。
図3は、図1に示すステップS14におけるキャリブレーションホースの反転挿入の様子を示す断面図である。
基材層21が内側に位置するキャリブレーションホース20をその基材層21が外側にくるようにめくり返しながら、キャリブレーションホース20をベースホース10の内側に挿入する。キャリブレーションホース20は、ベースホース10の一端側からベースホース11の内側に入れ込まれ、空気又は水の力によって反転挿入される。キャリブレーションホース20は、ベースホース10よりも厚みが薄いものであるため、反転挿入は容易に行われる。キャリブレーションホース20を反転挿入することで、ベースホース10の基材層11とキャリブレーションホース20の基材層21が接触し、図1に示す、ベースホース10とキャリブレーションホース20という2つのスリーブ状のライニング部材が一体になった管路ライニング材1が完成する。図1に示すように、管路ライニング材1の最外側面は外側フィルム層12によって構成されるとともにその最内側面は伸長層22によって構成され、外側フィルム層12と伸長層22の間に、熱硬化性樹脂を含浸した基材層11,21が配置される。ここで完成した管路ライニング材1には、その管路ライニング材1全体に対して、ジアリルフタレートが8.3重量%以上30.7重量%以下の範囲で含有されている。ジアリルフタレートが8.3重量%未満であると、更生管における、何十年といった長期の機械的特性が悪化しすぎてしまう。ここにいう更生管とは、硬化性樹脂が硬化した管路ライニング材のことであり、既設管を含まない(以下、同じ)。一方、ジアリルフタレートが30.7重量%を越えると、主成分である硬化性樹脂や粘度調整剤等のその他の添加剤の割合が低下しすぎてしまい、硬化に必要以上に時間がかかってしまうようになったり含浸のしやすさ等の性能に弊害が生じる。また、ここで完成した管路ライニング材全体の厚さ、すなわち、未硬化のベースホース用コンパウンドが基材層11に含浸されたベースホース10と、同じく未硬化のキャリブレーションホース用コンパウンドが基材層21に含浸されたキャリブレーションホース20が一体になったものの厚さは、例えば、補修管路の内径が250mmの補修管路用のものであれば、6mm〜7mm程度であり、内径が300mmの補修管路用のものであれば、8mm〜10mm程度である。このように、未硬化の状態の管路ライニング材全体の厚さは、補修管路の内径に応じて変わるが、ジアリルフタレートを8.3重量%以上30.7重量%以下の範囲で含有することによって、管路ライニング材全体の厚さを、補修管路の内径に対して2.4%以上4.0%以下の厚さにすることができる。2.4%未満であると、ジアリルフタレートを含有していても薄すぎて長期の機械的特性に問題が生じる恐れがある。一方、4.0%を越えると、厚くなりすぎてしまい、補修管路の通水性能の低下が目立ってしまう。すなわち、管路ライニング材全体の厚さが厚くなればなるほど、管径は狭くなっていき、単位時間当たりの通水流量が低下してしまう。このため、所望の長期の機械的特性を得られるのであれば、未硬化の状態の管路ライニング材全体の厚さは、薄い方が好ましく、厚さが4.0%もあれば、長期の機械的特性は十分である。加えて、未硬化の状態の管路ライニング材全体の厚さが厚くなると、硬化にも時間がかかるようになってしまうといった欠点もある。なお、硬化後の管路ライニングの厚さは、主成分となる硬化性樹脂をはじめとした他の成分や、硬化条件によって左右されるが、硬化前の厚さから概ね1%〜2%程度薄くなる傾向が強い。
最後に、図2に示すステップS15において、完成したスリーブ状の管路ライニング材1を偏平にし、つづら折りにして折り畳んだ状態で低温保管する。なお、完成したスリーブ状の管路ライニング材1を巻き取った状態で低温保管してもよい。低温保管されている管路ライニング材1は、折り畳んだ状態のまま保冷車によって施工現場に運搬される。
次に、施工現場における管路ライニング方法について説明する。
図4は、施工現場において図1に示す管路ライニング材を用いて管路を補修する工程を示すフローチャートである。
まず、施工現場では施工準備がなされ(ステップS21)、次いで、管路内の洗浄、および管路内を走行するテレビカメラを用いて管路内の調査が行われる(ステップS22)。この調査によって、管路における損傷箇所の確認等がなされる。
続いて、管路ライニング材1を管路内に引き込み、管路ライニング材1を管路内にセットする(ステップS23)。
図5は、図4に示すステップS23において管路内に管路ライニング材をセットした様子を示す断面図である。
図5に示す管路95は、下水を流すために地中に埋設されたコンクリート製のものであり、マンホール90,90を通じて地上からアクセスすることが可能である。この管路95の途中には、取付管96が接続されている。また、図5に示す管路95には、老朽化により管路95の全体に亘ってひび割れ951が生じており、管路95の全長(マンホール90とマンホール90の間)に亘って、管路95の内周面95aを管路ライニング材1によって裏打ちする。なお、図5では、管路95の全長を実際よりもかなり短く示している(以降に参照する図6および図7においても同じ)。
保冷車81で運搬されてきた管路ライニング材1は、保冷車81からロール82を介してウインチ83により管路95内に引き込まれ、管路95の全長にわたって管路ライニング材1が外側フィルム層12を最も外側にした状態でセットされる。管路ライニング材1は、折り畳まれているので、管路95内に簡単に引き込むことができる。
次に、図4に示すステップS23において、管路ライニング材1を拡径する。
図6は、図4に示すステップS23において管路ライニング材を拡径した様子を示す断面図である。
管路95内にセットされた管路ライニング材1の両端に、不図示の治具を取り付ける。また、保冷車81で運搬されてきた管路ライニング材1における、伸長層22よりも内側の空間S内には温水供給ホース86が予め工場内で引き込まれている。この温水供給ホース86は、管路ライニング材1の、引き込み口側とは反対側の端部まで延びている。さらに、管路ライニング材1の引き込み口側の一端には、上記空間S内につながる温水回収ホース87を接続する。図6に矢印で示すように、管路ライニング材1における上記空間S内には、ボイラー車85により加熱された約80℃の温水が温水供給用ホース86から供給されるとともに、その空間S内に供給された温水は、管路ライニング材1の引き込み口側から温水回収ホース87を通ってボイラー車85に回収される。管路ライニング材1は、温水供給用ホース86から供給される温水によって、その外側フィルム層12が管路95の内周壁95aに押し付けられるまで拡径するとともに加熱される。管路ライニング材1の拡径にあたり、伸長層22は、外側フィルム層12および基材層11,21を介して管路内周壁95aに沿って良好に伸び、管路ライニング材1における、伸長層22によって形成される内周面は、平滑な面になる。このようにして管路ライニング材1が径方向に膨張した状態でその管路ライニング材1を60分〜180分ほど加熱するため、図4に示すステップS24では温水を循環させる。温水回収ホース87からボイラー車85に回収された温水は、ボイラー車85で約80℃まで再加熱され、温水供給用ホース86から再び管路ライニング材1の空間S内に供給される。こうすることで、管路ライニング材1は、管路95の内周壁95aに押し付けられた状態で、基材層11,21に含浸されている熱硬化性樹脂が硬化し、管路95の内周壁95aが管路ライニング材1によって裏打ちされ、老朽化した管路95の内周壁95aの内側に管路ライニング材1による新たな自立管路が形成される。
なお、ステップS23〜S24では、温水を用いその温水を循環させたが、温水に代えて蒸気を用いてもよい。蒸気を用いる場合には、管路ライニング材1の空間S内に一旦供給した蒸気を再利用せずにその場で排気する。
そして、図4に示すステップS25において温水を冷却して排出した後、ステップS26において両端の管口仕上げを行う。この管口仕上げでは、管路95の、マンホール90に開口した開口部分952で管路ライニング材1を切断し、その切断部分を養生する。
図7は、図4に示すステップS26において管口仕上げが行われた管路の様子を示す断面図である。
図7には、管路ライニング材1によって裏打ちした管路95につながる取付管96が示されている。この取付管96は、図5および図6では図示省略していた民家97から汚水桝98を介して管路95まで延びているものである。図4に示すステップS26の管口仕上げが終了すると、更生管における、取付管96の接続部分に対応する箇所hを穿孔し、取付管96と管路ライニング材1による新たな自立管路とをつなげる(ステップS27)。なお、取付管96と新たな自立管路との接続部分を、必要に応じて再度、裏打ちしてもよい。その後、管路ライニング材1の伸長層22によって形成された内周壁の状態をテレビカメラによって最終確認し(ステップS28)、施工現場の片付けを行って(ステップS29)、管路補修の全工程が終了する。
図8は、図7に示す管路ライニング材1のA―A’断面図である。
図8に示す管路ライニング材1は、ベースホース10の外側フィルム層12が管路95の内周壁95aに接しており、その外側フィルム層12の内側には、ベースホース10の基材層11が位置している。また、ベースホース10の基材層11にはキャリブレーションホース20の基材層21が接しており、この管路ライニング材1の内周面は、キャリブレーションホース20の伸長層22によって形成されている。この伸長層22は、管路95の内周壁表面を構成することなる。すなわち、管路ライニング材1の内周面1aは、管路ライニング材1による新たな自立管路の内周面になり、この内周面1aで確定された空間S’内を下水が流れることになる。
本実施形態の管路ライニング材1では、スチレンモノマーの含有量が0であるため、スチレンモノマーの臭気が外側に洩れ出すこともなく、また、管路ライニング材1の内周面1aからスチレンモノマーが透過する可能性も皆無である。
なお、管路ライニング材1はスリーブ状のものであったが、シート状のものであってもよい。
また、ベースホース10に含浸するコンパウンドとして、スチレンモノマーを超微量(例えば、コンパウンド全体を100重量%にした場合に、4.5重量%未満)含んだものを用いてもよい。この場合、外側フィルム層12は、不透水性かつ気体透過性が低い(気体遮断性が高い)ものを用いることが好ましい。ジアリルフタレートを含有することでスチレンモノマーは必要なくなるが、臭気を発しない程度にスチレンモノマーを含有していても、有機溶剤に関する法令の問題を除けば、何ら不都合はない。しかしながら、この法令を遵守するには、スチレンモノマーの含有量を0%にする必要がある。また、キャリブレーションホース20に含浸するコンパウンドとしても、スチレンモノマーを超微量含んだものを用いてもよい。
さらに、本実施形態では、コンパウンドに、架橋剤および粘度調整剤としてメタクリル酸エステルが含有されたものを用いているが、架橋剤や粘度調整剤はメタクリル酸エステルに限られない。
また、本実施形態における管路ライニング材1は、ベースホース10とキャリブレーションホース20という2つのスリーブ状のライニング部材が一体になったものであったが、管路ライニング材は、ベースホース10を省略してキャリブレーションホース20の厚さを厚くしたものであってもよい。またさらに、ベースホース10の外側フィルム層12や、キャリブレーションホース20の伸長層22は必ずしも必要なものではない。また、本実施形態では、図3に示すステップS14において工場内でキャリブレーションホース20を反転挿入するが、施工現場で反転挿入してもよい。さらにまた、本実施形態における管路ライニング材1は、既設管の管路補修に限らず、新設管の平滑な内周面形成等に用いることもできる。
[実施例]
以下、本発明の実施の形態についてより具体的に実施例を用いて詳述する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
ここでは、表1に示すような、実施例1〜11および比較例1及び2の管路ライニング材を作製した。いずれの例でも、ベースホースの基材層としては、ポリエステルフェルトとガラス繊維マットを組み合わせたものを用い、キャリブレーションホースの基材層としては、ポリエステルフェルトを用いた。また、いずれの例でも、ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤は、ビニルエステル樹脂を主成分としたものを用いた。さらに、いずれの例における管路ライニング材も、内径250mmの補修管路用のものであって、未硬化の状態の管路ライニング材全体の厚さは、6mmに統一した。
(実施例1)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤に20.0重量%のジアリルフタレートが含まれたノンスチレンタイプのものを用いた。ここでの20.0重量%は、ベースホース主剤全体を100重量%にした場合の割合であって、表1では“ベースホース主剤DAP含有率”の欄に記されている。この実施例1では、ベースホースに含浸するコンパウンド(主剤の他、充填剤や、硬化剤、各種の添加剤等が含有されているもの)には、15.2重量%のジアリルフタレートが含まれていることになる。ここでの15.2重量%は、ベースホースに含浸するコンパウンドを100重量%にした場合の割合であって、表1では“ベースホースコンパウンドDAP含有率”の欄に記されている。また、そのコンパウンドを含浸したベースホースには、13.0重量%のジアリルフタレートが含まれていることになる。ここでの13.0重量%は、ベースホース全体を100重量%にした場合の割合であって、表1では“ベースホースDAP含有率”の欄に記されている。
なお、上述のごとく、コンパウンドの主剤には、ノンスチレンタイプのものを用いているため、“ベースホース主剤SM含有率”は0.0重量%になる。また、ベースホースに含浸するコンパウンド全体にもスチレンモノマーは含まれていないため、“ベースホースコンパウンドSM含有率”も0.0重量%になり、“ベースホースSM含有率”も0.0重量%になる。
一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、ジアリルフタレートは含まれておらず(0.0重量%であり)、架橋剤および粘度調整剤等の役割を果たす物質としてメタクリル酸エステルが所定量含まれたノンスチレンタイプのものを用いた。ここでの0.0重量%は、キャリブレーションホース主剤全体を100重量%にした場合の割合であって、表1では“キャリブレーションホース主剤DAP含有率”の欄に記されている。
この実施例1では、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、8.3重量%のジアリルフタレートが含まれている。ここでの8.3重量%は、未硬化の状態の管路ライニング材全体を100重量%にした場合の割合であって、表1では“管路ライニング材DAP含有率”の欄に記されている。また、この実施例1は、ノンスチレンタイプの例であり、“管路ライニング材SM含有率”も0.0重量%になる。
(実施例2)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤は、実施例1と同じものを用い、実施例1と同じベースホースを使用した。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤にも20.0重量%のジアリルフタレートが含まれたものを用いた。実施例2における、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、ジアリルフタレートが13.0重量%含まれている。
(実施例3)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には25.0重量%のジアリルフタレートが含まれたものを用いた。この実施例3では、ベースホースに含浸するコンパウンドには、19.0重量%のジアリルフタレートが含まれおり、そのコンパウンドを含浸したベースホースには、16.2重量%のジアリルフタレートが含まれていることになる。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、実施例1と同じく、ジアリルフタレートは含まれておらず、実施例1と同じキャリブレーションホースを使用した。実施例3では、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、11.0重量%のジアリルフタレートが含まれている。
(実施例4)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には30.0重量%のジアリルフタレートが含まれたものを用いた。この実施例4では、ベースホースに含浸するコンパウンドには、22.6重量%のジアリルフタレートが含まれおり、そのコンパウンドを含浸したベースホースには、18.6重量%のジアリルフタレートが含まれていることになる。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、実施例1と同じく、ジアリルフタレートは含まれておらず、実施例1と同じキャリブレーションホースを使用した。実施例4では、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、13.5重量%のジアリルフタレートが含まれている。
(実施例5)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、30.0重量%のジアリルフタレートの他に、5.5重量%のスチレンモノマーが含まれたものを用いた。この実施例5では、ベースホースに含浸するコンパウンドには、22.6重量%のジアリルフタレートと、4.2重量%のスチレンモノマーが含まれおり、そのコンパウンドを含浸したベースホースには、18.6重量%のジアリルフタレートと、3.4重量%のスチレンモノマーが含まれていることになる。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、実施例1と同じく、ジアリルフタレートは含まれておらず、実施例1と同じキャリブレーションホースを使用した。実施例5では、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、13.5重量%のジアリルフタレートと、2.4重量%のスチレンモノマーが含まれている。
(実施例6)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には45.0重量%のジアリルフタレートが含まれたものを用いた。この実施例6では、ベースホースに含浸するコンパウンドには、34.1重量%のジアリルフタレートが含まれおり、そのコンパウンドを含浸したベースホースには、29.1重量%のジアリルフタレートが含まれていることになる。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、実施例1と同じく、ジアリルフタレートは含まれておらず、実施例1と同じキャリブレーションホースを使用した。実施例6では、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、19.9重量%のジアリルフタレートが含まれている。
(実施例7)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には48.0重量%のジアリルフタレートが含まれたものを用いた。この実施例7では、ベースホースに含浸するコンパウンドには、36.2重量%のジアリルフタレートが含まれおり、そのコンパウンドを含浸したベースホースには、30.7重量%のジアリルフタレートが含まれていることになる。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、実施例1と同じく、ジアリルフタレートは含まれておらず、実施例1と同じキャリブレーションホースを使用した。実施例7では、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、21.2重量%のジアリルフタレートが含まれている。
(実施例8)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤は、実施例7と同じものを用い、実施例7と同じベースホースを使用した。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤にも48.0重量%のジアリルフタレートが含まれたものを用いた。実施例8における、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、ジアリルフタレートが30.7重量%含まれている。
(実施例9)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には15.0重量%のジアリルフタレートが含まれたものを用いた。この実施例9では、ベースホースに含浸するコンパウンドには、11.5重量%のジアリルフタレートが含まれおり、そのコンパウンドを含浸したベースホースには、9.3重量%のジアリルフタレートが含まれていることになる。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、実施例1と同じく、ジアリルフタレートは含まれておらず、実施例1と同じキャリブレーションホースを使用した。実施例9では、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、6.2重量%のジアリルフタレートが含まれている。
(実施例10)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には18.0重量%のジアリルフタレートが含まれたものを用いた。この実施例2では、ベースホースに含浸するコンパウンドには、13.7重量%のジアリルフタレートが含まれおり、そのコンパウンドを含浸したベースホースには、11.1重量%のジアリルフタレートが含まれていることになる。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、実施例1と同じく、ジアリルフタレートは含まれておらず、実施例1と同じキャリブレーションホースを使用した。実施例10では、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、7.4重量%のジアリルフタレートが含まれている。
(実施例11)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には49.0重量%のジアリルフタレートが含まれたものを用いた。この実施例11では、ベースホースに含浸するコンパウンドには、37.0重量%のジアリルフタレートが含まれおり、そのコンパウンドを含浸したベースホースには、31.6重量%のジアリルフタレートが含まれていることになる。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤にも49.0重量%のジアリルフタレートが含まれたものを用いた。実施例11における、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、ジアリルフタレートが31.6重量%含まれている。
(比較例1)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、ジアリルフタレートは含まれておらず、6.0重量%のスチレンモノマーが含まれている。この比較例1では、ベースホースに含浸するコンパウンドにも、ジアリルフタレートは含まれておらず、4.5重量%のスチレンモノマーが含まれている。そのコンパウンドを含浸したベースホースには、ジアリルフタレートは含まれておらず、3.5重量%のスチレンモノマーが含まれていることになる。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、実施例1と同じく、ジアリルフタレートもスチレンモノマーも含まれておらず、実施例1と同じキャリブレーションホースを使用した。比較例1では、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、ジアリルフタレートは含まれておらず、2.5重量%のスチレンモノマーが含まれており、比較例1における未硬化の状態の管路ライニング材は低スチレンタイプの一例に相当する。
(比較例2)
ベースホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、ジアリルフタレートは含まれておらず、13.0重量%のスチレンモノマーが含まれている。この比較例2でも、ベースホースに含浸するコンパウンドには、ジアリルフタレートは含まれておらず、10.0重量%のスチレンモノマーが含まれている。そのコンパウンドを含浸したベースホースには、ジアリルフタレートは含まれておらず、8.5重量%のスチレンモノマーが含まれていることになる。一方、キャリブレーションホースの基材層に含浸するコンパウンドの主剤には、実施例1と同じく、ジアリルフタレートもスチレンモノマーも含まれておらず、実施例1と同じキャリブレーションホースを使用した。比較例2でも、硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材には、ジアリルフタレートは含まれていないが、5.7重量%のスチレンモノマーは含まれており、比較例2における未硬化の状態の管路ライニング材も低スチレンタイプの一例に相当する。
これら11の実施例および2つの比較例それぞれの管路ライニング材を作製後、6日間低温保存した後、各管路ライニング材を用いて、図4に示す管路補修工程を実施し、更生管について物性試験を行った。ここでの物性試験では、短期試験と長期試験を行った。短期試験は、JIS K−7171に基づき、変位荷重から曲げ強度と曲げ弾性係数を求めた。一方、長期試験は、JIS K−7116に基づいて行った。すなわち、一定荷重(静荷重)を1000時間加え、その結果から50年後の曲げ弾性係数を、JIS K−7020に規定されている最小自乗法によって予測した。結果を表2に示す。
表2も、横1列ごとに、各実施例および各比較例を示すものであり、左側に短期試験の結果を示し、右側に長期試験の結果を示す。
表2に示す短期試験の結果では、ジアリルフタレートの含有率が低くなると、曲げ強度や曲げ弾性係数の値も低下することがわかるが、その低下はわずかであり、実施例中もっとも値が低い実施例9の管路ライニング材でも、全く問題がない非常に良好な値である。一方、ジアリルフタレートを一切含まない比較例1及び2では、各実施例と比較して、曲げ強度の値も曲げ弾性係数の値も低下しているが、これらの数値でも実使用に十分耐え得る。
また、表2に示す長期試験の結果では、各実施例の予測曲げ弾性係数は4000MPa前後であり、ジアリルフタレートを一切含まずスチレンモノマーを、2.5重量%含む比較例1よりも大幅に優れ、5.7重量%含む比較例2よりも優れていることがわかる。
以上の結果から明らかなように、ジアリルフタレートを含有させると、短期の機械的特性も長期の機械的特性も向上し、スチレンモノマーと置き換えても問題ないことがわかる。
また、実施例1と、実施例9および実施例10とを比較すると、長期の機械的特性である予測曲げ弾性係数が、4000MPaを閾値にして分けることができ、実施例1から、未硬化の状態の管路ライニング材全体を100重量%にした場合に、ジアリルフタレートを8.3重量%以上含有することが好ましいことがわかる。
さらに、実施例6〜8および実施例11では、ジアリルフタレートの含有率がかなり高くなっており、主剤の主成分であるビニルエステル樹脂の割合や粘度調整剤等のその他の添加剤の割合が低下している。実施例6〜8および実施例11では、ベースホースの含浸が粘度が高すぎて行いにくかったり、硬化に時間がかかってしまうといった欠点が目立った。これら実施例6〜8および実施例11の中でも、特に実施例11では、上記欠点が顕著であり、未硬化の状態の管路ライニング材全体を100重量%にした場合に、ジアリルフタレートは最大でも48.0重量%であることが好ましい。
加えて、いずれの実施例でも比較例でも、未硬化の状態の管路ライニング材全体の厚さは、6mmであった。実施例1における管路ライニング材の全体の厚さを1mm薄くしたものでも、追加試験を実施した。その結果、厚さが1mm薄くなると、長期の機械的特性である予測曲げ弾性係数が、4000MPaを下回ってしまい、未硬化の状態の管路ライニング材全体の厚さは、6mm以上であることが好ましい。すなわち、内径250mmの補修管路に対して6mm以上ということは、その管路の内径に対して2.4%以上の厚さを有することが好ましいことになる。
なお、唯一、スチレンモノマーを超微量含んだ実施例5の場合であっても、スチレンモノマーの臭気を感じることはなかった。
また、実施例4の管路ライニング材を硬化させる際、図4に示すステップS24における温水循環による加熱を終了後、アフタキュアとして80℃で15時間再加熱を行った場合は、短期試験の曲げ強度は171.2MPaであり、短期試験の曲げ弾性係数は7554MPaであり、長期試験の予測曲げ弾性係数は4683MPaと向上した。
1 管路ライニング材
10 ベースホース
11 基材層
12 ガスバリア層
20 キャリブレーションホース
21 基材層
22 伸長層
95 管路
95a 内周壁

Claims (4)

  1. 地中に埋設された管路の内周壁を裏打ちする用途に用いられ、ラジカル重合性モノマーによって架橋する硬化性樹脂を主成分としたコンパウンドを含浸し該硬化性樹脂が未硬化の状態の管路ライニング材において、
    前記管路の内周壁側に位置することになる外側ライニング部材と、
    前記外側ライニング部材よりも内側に位置することになるものであって、該外側ライニング部材よりも厚みが薄い内側ライニング部材とを有し、
    前記ラジカル重合性モノマーとしてジアリルフタレートを含有し
    前記外側ライニング部材が、スチレンモノマーを含有しないものであり、
    前記内側ライニング部材も、スチレンモノマーを含有しないものであり、
    硬化した後では、50年後の予測曲げ弾性係数が4000MPa以上になることを特徴とする管路ライニング材。
  2. 前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の管路ライニング材。
  3. 未硬化の状態の管路ライニング材全体を100重量%にした場合に、ジアリルフタレートを8.3重量%以上30.7重量%以下の範囲で含有し、
    前記管路の内径に対して2.4%以上4.0%以下の厚さを有することを特徴とする請求項1又は2記載の管路ライニング材。
  4. スチレンモノマーを含有しない代わりにジアリルフタレートを含有したラジカル重合性モノマーによって架橋する硬化性樹脂を主成分とした外側ライニング部材用コンパウンドと、スチレンモノマーを含まないラジカル重合性モノマーによって架橋する硬化性樹脂を主成分とした内側ライニング部材用コンパウンドを調製する調製工程と、
    前記調製工程で調製された前記外側ライニング部材用コンパウンドを、外側ライニング部材の基材層である第1基材層に含浸し、該調製工程で調製された前記内側ライニング部材用コンパウンドを、内側ライニング部材の基材層である第2基材層に含浸する含浸工程と、
    前記第2基材層が内側に位置する前記内側ライニング部材を該第2基材層が外側にくるようにめくり返しながら、該内側ライニング部材を、前記外側ライニング部材の内側に挿入し、該第2基材層と前記第1基材層を接触させる反転挿入工程とを有することを特徴とする管路ライニング材の製造方法。
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