内燃機関の停止始動制御装置として、自動停止による燃費の向上などの利点をより良く得るために、車両が完全に停車する前に内燃機関を自動停止する減速時アイドルストップを行うものが知られている。また、内燃機関を再始動させる際に、自動停止された内燃機関の回転が停止した状態で再始動を行うことに加えて、上記の減速時アイドルストップの後、及び車両の速度=0からのアイドルストップ後に、内燃機関の回転が停止する前の惰性回転中に再始動を行うものが知られている。
上記のように複数の再始動モードが用いられる場合、再始動モードに応じて、リングギヤとピニオンギヤの回転数の関係などが異なるため、両ギヤの摩耗度合も変化する。これに対し、上述した従来の装置では、再始動モードの種類にかかわらず、内燃機関の自動停止の開始時から再始動要求までの経過時間に基づいて、リングギヤの回転数を算出し、算出された回転数に基づいてリングギヤの摩耗量積算量を算出するにすぎない。このため、算出された摩耗量積算量はリングギヤの摩耗度合を精度良く表さず、その結果、この摩耗量積算量に基づいて内燃機関の再始動を禁止しても、リングギヤの摩耗を有効に防止することができず、摩耗に起因する始動不良などの不具合を招くおそれがある。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、自動停止した内燃機関を複数の再始動モードで再始動する場合において、リングギヤやピニオンギヤの摩耗による始動不良などの不具合を適切に防止することができる内燃機関の停止始動制御装置を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、車両Vに搭載された内燃機関3を自動的に停止させるとともに、自動的に停止された内燃機関3をピニオンギヤ9とピニオンギヤ9が噛み合わされる内燃機関3側のリングギヤ8を介して再始動させる始動装置(実施形態における(以下、本項において同じ)スタータ4)を備えた内燃機関の停止始動制御装置であって、始動装置は互いに異なる複数の再始動モード(COM始動モード、逆回転始動モード、通常始動モード)を有し、複数の再始動モードによる再始動の回数(再始動回数N_RS1〜N_RS3)をそれぞれ別個に計測する再始動回数計測手段(ECU2、図7のステップ2、4、6)と、計測された再始動回数に基づいて内燃機関3の自動停止を禁止する自動停止禁止手段(ECU2、図7のステップ8〜11)と、を備え、複数の再始動モードは、内燃機関3の自動停止後の惰性回転中に始動装置を駆動するCOM始動モードと、内燃機関3の惰性回転が終了する際の逆回転中に始動装置を駆動する逆回転始動モードと、を含み、自動停止禁止手段は、COM始動モードによる再始動回数N_RS1が所定の第1しきい値NREF1に達したとき、又は逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2が所定の第2しきい値NREF2に達したときに、内燃機関3の自動停止を禁止すること(図7のステップ8、9、11)を特徴とする。
この内燃機関の停止始動制御装置では、車両に搭載された内燃機関を自動的に停止させる、いわゆるアイドルストップが実行されるとともに、その後、始動装置のピニオンギヤとピニオンギヤが噛み合わされる内燃機関側のリングギヤを介して、内燃機関が自動的に再始動される。また、始動装置は複数の再始動モードを有し、各再始動モードによる再始動回数が別個に計測されるとともに、計測された再始動回数に基づいて内燃機関の自動停止が禁止される。
前述したように、複数の再始動モードが用いられる場合、異なる再始動モードの間では、噛合い時におけるリングギヤ及びピニオンギヤの回転状態とそれらの関係が異なり、それに応じて噛合い時の摩擦抵抗や噛合い時間などが異なるため、リングギヤ及びピニオンギヤの摩耗の進行度合が異なる。上記の構成によれば、再始動モードごとに再始動回数を計測するので、計測された各再始動回数には、その再始動モードによる摩耗の進行度合の相違や再始動の実行回数に応じたリングギヤなどの実際の摩耗度合が反映される。したがって、計測された再始動回数に基づいて内燃機関の自動停止を禁止することによって、再始動によるリングギヤなどの実際の摩耗度合に応じた適切なタイミングで、内燃機関の自動停止を禁止できる。その結果、さらなる自動停止の実行に伴うリングギヤ及びピニオンギヤの摩耗の進行を抑制でき、それらの摩耗に起因する内燃機関の始動不良などの不具合を適切に防止することができる。
また、この構成によれば、複数の再始動モードは、内燃機関の自動停止後の惰性回転中に始動装置を駆動するCOM始動モードと、内燃機関の惰性回転が終了する際の逆回転中に始動装置を駆動する逆回転始動モードを含む。これらのCOM始動モード及び逆回転始動モードでは、回転状態にあるリングギヤにピニオンギヤが噛み合わされるため、リングギヤなどの摩耗の進行度合が高い傾向にある。また、COM始動モードではリングギヤが正転しているのに対し、逆回転始動モードではリングギヤが逆回転しているため、両始動モードの間で摩耗の進行度合が異なる。
上記の構成によれば、COM始動モードによる再始動回数と逆回転始動モードによる再始動回数をそれぞれ計測し、計測されたCOM始動モードによる再始動回数が所定の第1しきい値に達したとき、又は逆回転始動モードによる再始動回数が所定の第2しきい値に達したときに、リングギヤなどの摩耗が進行しているとして、内燃機関の自動停止を禁止する。このように、リングギヤなどの摩耗の進行度合が高いCOM始動モード及び逆回転始動モードを対象とするとともに、各再始動モードによる再始動回数と各再始動モード用のしきい値との比較結果に基づいて内燃機関の自動停止を禁止するので、各再始動モードによるリングギヤなどの摩耗の進行度合を反映させながら、内燃機関の自動停止を適切に禁止することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の停止始動制御装置において、複数の再始動モードは、内燃機関の回転停止中に始動装置を駆動する通常始動モードをさらに含み、自動停止禁止手段は、COM始動モード、逆回転始動モード及び通常始動モードによる再始動回数の和(総再始動回数N_RSSUM)が、所定の第3しきい値NREF3に達したときに、内燃機関3の自動停止を禁止すること(図7のステップ9、10)を特徴とする。
この構成によれば、再始動モードとして、内燃機関の回転停止中に始動装置を駆動する通常始動モードをさらに含み、COM始動モード、逆回転始動モード及び通常始動モードによる再始動回数の和が、所定の第3しきい値に達したときに、リングギヤなどの摩耗が進行しているとして、内燃機関の自動停止を禁止する。通常始動モードでは、回転停止状態のリングギヤにピニオンギヤが噛み合わされるため、リングギヤなどの摩耗の進行度合は、COM始動モード及び逆回転始動モードと比較して小さい。上記の構成によれば、3つの再始動モードによる再始動回数の合計に基づいて内燃機関の自動停止を禁止するので、COM始動モード及び逆回転始動モードの実施頻度が比較的低い場合などにおいても、3つの再始動モードによるリングギヤなどの摩耗の進行度合を反映させながら、内燃機関の自動停止を適切に禁止することができる。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の車両の停止始動制御装置において、第1〜第3しきい値NREF1〜NREF3は、第2しきい値NREF2、第1しきい値NREF1及び第3しきい値NREF3の順に小さな値に設定されていることを特徴とする。
このしきい値の設定は、再始動モードによるリングギヤなどの摩耗の進行度合の相違に応じたものである。すなわち、COM始動モードではリングギヤが正転状態にあるのに対し、逆回転始動モードではリングギヤが逆回転状態にあるため、リングギヤなどの摩耗の進行度合は、一般に逆回転始動モードの方が大きい。また、前述したように、通常始動モードでの摩耗の進行度合は、他の2つの再始動モードよりも小さい。
このような関係から、逆回転始動モードによる再始動回数と比較される第2しきい値、COM始動モードによる再始動回数と比較される第1しきい値、及び3つの再始動モードによる再始動回数の和と比較される第3しきい値を、第2しきい値<第1しきい値<第3しきい値の関係を満たすように設定する。これにより、これらのしきい値を再始動モードによるリングギヤなどの摩耗の進行度合の相違に応じて適切に設定でき、したがって、しきい値との比較結果に基づく内燃機関の自動停止の禁止をより適切に行うことができる。
また、前記目的を達成するために、請求項4に係る発明は、車両Vに搭載された内燃機関3を自動的に停止させるとともに、自動的に停止された内燃機関3をピニオンギヤ9とピニオンギヤ9が噛み合わされる内燃機関3側のリングギヤ8を介して再始動させる始動装置(スタータ4)を備えた内燃機関の停止始動制御装置であって、始動装置は互いに異なる複数の再始動モード(COM始動モード、逆回転始動モード、通常始動モード)を有し、複数の再始動モードによる再始動の回数(再始動回数N_RS1〜N_RS3)をそれぞれ計測する再始動回数計測手段(ECU2、図9のステップ2、4、6)と、計測された再始動回数に基づき、複数の再始動モードのうちの所定の再始動モード(COM始動モード、逆回転始動モード)による再始動を禁止する再始動禁止手段(ECU2、図9のステップ8〜10、31〜33)と、を備え、複数の再始動モードは、内燃機関3の自動停止後の惰性回転中に始動装置を駆動するCOM始動モードと、内燃機関3の惰性回転が終了する際の逆回転中に始動装置を駆動する逆回転始動モードと、内燃機関3の回転停止中に始動装置を駆動する通常始動モードと、を含み、再始動禁止手段は、COM始動モードによる再始動回数N_RS1が所定の第1しきい値NREF1に達したときに、COM始動モードによる再始動を禁止し、逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2が所定の第2しきい値NREF2に達したときに、逆回転始動モードによる再始動を禁止すること(図9のステップ8、9、31、32)を特徴とする。
この内燃機関の停止始動制御装置では、請求項1の停止始動制御装置と同様、車両に搭載された内燃機関を自動的に停止させるアイドルストップが実行されるとともに、始動装置のピニオンギヤとピニオンギヤが噛み合わされる内燃機関側のリングギヤを介して、内燃機関が自動的に再始動される。また、始動装置は複数の再始動モードを有し、各再始動モードによる再始動回数が別個に計測される。
また、本発明によれば、計測された再始動回数に基づき、複数の再始動モードのうちの所定の再始動モードによる再始動が禁止される。前述したように、再始動モードが異なると、リングギヤ及びピニオンギヤの摩耗の進行度合が異なるとともに、計測された各再始動回数には、その再始動モードによる摩耗の進行度合の相違や再始動の実行回数に応じたリングギヤなどの実際の摩耗度合が反映される。したがって、計測された各再始動回数に基づき、所定の再始動モードによる再始動を禁止することによって、その再始動モードによるリングギヤ及びピニオンギヤの摩耗の進行を抑制でき、摩耗に起因する内燃機関の始動不良などの不具合を適切に防止することができる。
また、前述したように、COM始動モード及び逆回転始動モードでは、回転状態のリングギヤにピニオンギヤが噛み合わされるため、リングギヤなどの摩耗の進行度合が高い傾向にあるとともに、COM始動モードではリングギヤが正転しているのに対し、逆回転始動モードではリングギヤが逆回転しているため、両始動モードの間で摩耗の進行度合が異なる。上記の構成によれば、COM始動モードによる再始動回数が所定の第1しきい値に達したときに、COM始動モードによる再始動を禁止し、逆回転始動モードによる再始動回数が所定の第2しきい値に達したときに、逆回転始動モードによる再始動を禁止する。このように、COM始動モード又は逆回転始動モードによる再始動回数が対応するしきい値に達したときに、それに該当する実施頻度が実際に高い再始動モードによる再始動を禁止するので、その再始動モードの実施によるリングギヤなどの摩耗の進行を効果的に抑制することができる。
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の内燃機関の停止始動制御装置において、複数の再始動モードは、内燃機関3の自動停止後の惰性回転中に始動装置を駆動するCOM始動モードと、内燃機関3の惰性回転が終了する際の逆回転中に始動装置を駆動する逆回転始動モードと、内燃機関3の回転停止中に始動装置を駆動する通常始動モードと、を含み、再始動禁止手段は、COM始動モードによる再始動回数N_RS1が所定の第1しきい値NREF1に達したとき、又は逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2が所定の第2しきい値NREF2に達したときに、COM始動モード及び逆回転始動モードによる再始動を禁止すること(図10のステップ8、9、33)を特徴とする。
この構成によれば、COM始動モードによる再始動回数が所定の第1しきい値に達したとき、又は逆回転始動モードによる再始動回数が所定の第2しきい値に達したときに、COM始動モード及び逆回転始動モードによる再始動が禁止される。これにより、COM始動モード又は逆回転始動モードによる再始動回数が対応するしきい値に達することで、リングギヤなどの摩耗が進行していると推定されるときに、該当する再始動モードだけでなく他方の再始動モードによる再始動を禁止するので、両再始動モードの実施によるリングギヤなどの摩耗の進行を抑制することができる
請求項6に係る発明は、請求項4又は5に記載の内燃機関の停止始動制御装置において、第2しきい値NREF2は第1しきい値NREF1よりも小さな値に設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、逆回転始動モードによる再始動回数と比較される第2しきい値、及びCOM始動モードによる再始動回数と比較される第1しきい値を、再始動モードによるリングギヤなどの摩耗の進行度合の相違に応じて、適切に設定することができ、これらのしきい値との比較結果に基づく再始動の禁止をより適切に行うことができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1に示す車両Vは、動力源としての内燃機関(以下「エンジン」という)3と、エンジン3を始動させるための始動装置(以下「スタータ」という)4と、これらの動作を制御するECU(電子制御ユニット)2を備えている。
エンジン3は、ECU2による制御により、所定の停止条件が成立したときに自動的に停止され、その後、所定の再始動条件が成立したときに自動的に再始動される、いわゆるアイドルストップ機能を有する。エンジン3には、燃料を噴射する燃料噴射弁6が気筒(図示せず)ごとに設けられ、クランクシャフト7と一体のフライホイールの外周には、リングギヤ8が形成されている。
スタータ4は、いわゆるピニオン押出し式のものであり、リングギヤ8に噛合い可能なピニオンギヤ9と、ピニオンギヤ9をリングギヤ8側に駆動するアクチュエータ10と、ピニオンギヤ9を回転駆動するモータ11を有する。アクチュエータ10は、電磁式のものであり、ソレノイド12と、ソレノイド12によって駆動されるプランジャ13を有する。
ソレノイド12は、第1リレー14を介してバッテリ5に接続され、第1リレー14はECU2に接続されており、その動作はECU2によって制御される。プランジャ13には、支点15を中心として揺動自在の連結部材16の一端部が係合し、連結部材16の他端部は、ピニオンギヤ9と一体の出力軸17に係合している。プランジャ13は、復帰ばね(図示せず)によって、リングギヤ8側(図1の右方向)に常時、付勢されている。
また、モータ11は、スイッチング機構30を介して、電源であるキャパシタ31に接続されている。スイッチング機構30は、電磁式のものであり、ソレノイド32と、ソレノイド32によって駆動されるプランジャ33と、プランジャ33のモータ11側の端部に設けられた電極板34を有する。
ソレノイド32は、第2リレー18を介してバッテリ5に接続され、第2リレー18はECU2に接続されており、その動作はECU2によって制御される。また、プランジャ33の電極板34とモータ11との間には、第1及び第2電極板35a、35bが、互いに間隔を隔てて対向するように設けられている。第1電極板35aはキャパシタ31に接続され、第2電極板35bはモータ11に接続されている。
キャパシタ31は比較的大きな容量のものであり、キャパシタ31とバッテリ5の間には、DC/DCコンバータなどから成る充放電コントローラ(BBC)19が設けられている。充放電コントローラ19は、ECU2からの制御信号に応じ、バッテリ5及びキャパシタ31の充放電や、車両Vの電気負荷(補機類)36及び第1及び第2リレー14、18への供給電圧などを制御する。なお、図1の符号37(ACG)は発電機である。
以上の構成により、ECU2による制御によって第1リレー14がオンされると、バッテリ5からの電力の供給によってソレノイド12が励磁状態になり、プランジャ13を吸引し、リングギヤ8と反対側(図1の矢印A方向)に移動させる。このプランジャ13の移動に伴い、連結部材16が支点15を中心として揺動し、出力軸17を介してピニオンギヤ9をリングギヤ8側(図1の矢印B方向)に移動させることによって、ピニオンギヤ9がリングギヤ8に噛み合わされる。以下、上記の一連の動作をまとめて「ピニオンギヤ9の作動」という。
また、ECU2による制御によって第2リレー18がオンされると、バッテリ5からの電力の供給によって、スイッチング機構30のソレノイド32が励磁状態になり、プランジャ33をモータ11側(図1の左方)に移動させる。この移動に伴い、プランジャ33の電極板34が第1及び第2電極板35a、35bに接触し、両者を電気的に接続する。これにより、キャパシタ31の電力が、第1及び第2電極板35a、35bを介してモータ11に供給されることで、モータ11が回転し、ピニオンギヤ9が回転駆動される。以下、この動作を「モータ11の作動」という。
エンジン3の再始動は、基本的に、燃料噴射弁6からの燃料の供給を再開しながら、上記のピニオンギヤ9及びモータ11の作動により、ピニオンギヤ9をリングギヤ8に噛み合った状態で回転させ、ピニオンギヤ9及びリングギヤ8を介してクランクシャフト7を回転させる(クランキングする)ことによって、行われる。
また、この構成では、ピニオンギヤ9の作動によるリングギヤ8との噛合わせと、モータ11の作動によるピニオンギヤ9の回転駆動を、ECU2によって互いに独立して制御することが可能である。後述するように、本実施形態では、モータ11の作動を先に行い、その後にピニオンギヤ9を作動させる「モータ先駆動」と、これとは逆に、ピニオンギヤ9の作動を先に行い、その後にモータ11を作動させる「モータ後駆動」が用いられる。
ECU2には、クランク角センサ21から、クランクシャフト7及びリングギヤ8の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを表す検出信号が、バッテリ電圧センサ22から、バッテリ5の電圧(バッテリ電圧)VBを表す検出信号が、モータ電圧センサ23から、モータ11の印加電圧(モータ電圧)VMを表す検出信号が、それぞれ入力される。
ECU2にはさらに、アクセル開度センサ24から、車両Vのアクセルペダル(図示せず)の開度APを表す検出信号が、ブレーキスイッチ25から、車両Vのブレーキペダル(図示せず)のオン(踏込み)又はオフ(非踏込み)の状態を表す検出信号が、イグニッションスイッチ26から、そのオン/オフ状態を表す検出信号が、それぞれ入力される。
ECU2は、CPU、RAM、ROM及び入力インターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、上述した各種のセンサ21〜24及びスイッチ25、26の検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに基づいて、エンジン3及び車両Vの運転状態を判別するとともに、エンジン3の自動停止及び再始動を制御する停止始動制御(アイドルストップ制御)を実行する。
なお、実施形態では、ECU2が、再始動回数計測手段、自動停止禁止手段及び再始動禁止手段に相当する。
以下、ECU2によって実行される停止始動制御について、詳細に説明する。まず、エンジン3の自動停止は、ブレーキペダルがオンされる(ブレーキスイッチ25:オン)などの所定の停止条件が成立したときに、例えば燃料噴射弁6からの燃料噴射を停止することによって、実行される。
また、この場合の自動停止モードは、停止条件が成立したときの車両Vの停車状態に応じて、車両Vの停車中にエンジン3を停止させる停車時アイドルストップと、車両Vが停車する前の減速中にエンジン3を停止させる減速時アイドルストップに分類される。
一方、エンジン3の再始動は、上記の自動停止の後、ブレーキペダルがオフされる(ブレーキスイッチ25:オフ)などの所定の再始動条件が成立したときに、燃料噴射弁6からの燃料の供給を再開しながら、スタータ4でエンジン3をクランキングすることなどによって、行われる。
また、この場合の再始動モードは、再始動条件が成立したときのエンジン3の回転状態に応じて、エンジン3の回転停止中に再始動を行う通常始動モードと、減速時アイドルストップの実行後におけるエンジン3の惰性回転中に再始動を行うCOM始動モードと、このエンジン3の惰性回転が終了する際の逆回転中に再始動を行う逆回転始動モードに分類される。上記のCOM始動モードはさらに、自己復帰モード、モータ先駆動モード及びモータ後駆動モードに細分される。以下、これらの再始動モードについて順に説明する。
[通常始動モード]
上述したように、通常始動モードは、エンジン3の回転停止中に再始動を行うものである。この通常始動モードでは、再始動条件が成立すると、まずピニオンギヤ9を作動させ、リングギヤ8側に押し出し、リングギヤ8に噛み合わせる。次いで、モータ11を作動させ、ピニオンギヤ9を回転駆動する。これにより、ピニオンギヤ9及びリングギヤ8を介して、クランクシャフト7がクランキングされ、再始動が行われる。このように、通常始動モードでは、リングギヤ8及びピニオンギヤ9が回転していない状態で、両者の噛合いが行われるので、それらの摩耗の進行度合は低い。
[自己復帰モード]
図2に示すように、自己復帰モードは、エンジン回転数NEが所定の自己復帰下限値N1(例えば800rpm)よりも高い回転領域にあるときに、選択される。図3に示すように、自己復帰モードでは、再始動条件が成立した(「BRKOFF」と表示)タイミング(t11)で、エンジン3への燃料の供給が再開されることによって、比較的高い回転状態にあるエンジン3が、自身の復帰力により、スタータ4によらずに再始動される。
[モータ先駆動モード]
図2に示すように、モータ先駆動モードは、エンジン回転数NEが上記の自己復帰下限値N1とより低い所定のモータ先駆動下限値N2(例えば500rpm)との間の回転領域にあるときに、選択される。図4に示すように、このモータ先駆動モードでは、再始動条件が成立したタイミング(t21)で、モータ11が先に作動し(「モータON」と表示)、その後、低下するエンジン回転数NEと上昇するピニオンギヤ回転数NPとの回転差が所定値以下になったタイミング(t22)で、ピニオンギヤ9が作動し(「ピニオンON」と表示)、リングギヤ8に噛み合わされる。このように、モータ先駆動モードでは、リングギヤ8とピニオンギヤ9の間に回転差がある状態で、両者の噛合いが行われるので、それらの摩耗の進行度合は比較的高い傾向にある。なお、上記のピニオンギヤ回転数NPは、ピニオンギヤ9の実際の回転数をリングギヤ8とのギヤ比(減速比)に応じてエンジン回転数に換算した値である。
[モータ後駆動モード]
図2に示すように、モータ後駆動モードは、エンジン回転数NEが上記のモータ先駆動下限値N2と値0よりも若干大きい所定の逆転みなし値N3(例えば100rpm)との間の回転領域にあるときに、選択される。図5に示すように、このモータ後駆動モードでは、再始動条件が成立した(t31)後、エンジン回転数NEが所定のNV許容値NNV(例えば500rpm)まで低下したタイミング(t32)で、ピニオンギヤ9が先に作動し、リングギヤ8に噛み合わされ、その後、この噛合いが完了したと推定される所定時間が経過したタイミング(t33)で、モータ11が作動する。上記のNV許容値NNVは、ピニオンギヤ9とリングギヤ8との噛合いの際に発生するNV(騒音・振動)が許容される回転領域の上限値として設定されている。このように、モータ後駆動モードにおいても、リングギヤ8とピニオンギヤ9の間に回転差がある状態で、両者の噛合いが行われるので、それらの摩耗の進行度合は比較的高い傾向にある。
[逆回転始動モード]
図2に示すように、逆回転始動モードは、エンジン回転数NEが上記の逆転みなし値N3以下の回転領域まで低下し、エンジン3の惰性回転が終了する際のピストンの押下げによりエンジン3の逆回転が発生すると予測されるときに、選択される。図6に示すように、この逆回転始動モードでは、再始動条件が成立した(t41)後、逆転したエンジン回転数NEが所定の逆転噛合い禁止値N4(例えば−100rpm)まで正転側に回復したタイミング(t42)で、ピニオンギヤ9が作動し、リングギヤ8に噛み合わされる。この逆転噛合い禁止値N4は、ピニオンギヤ9と逆回転状態のリングギヤ8との噛合いの際に発生するNVが許容される回転領域の上限値として設定されている。その後、エンジン回転数NEが値0まで復帰したタイミング(t43)で、モータ11が作動する。このように、逆回転始動モードでは、リングギヤ8とピニオンギヤ9の間に回転差が存在し、かつリングギヤ8が逆回転の状態で、両者の噛合いが行われるので、それらの摩耗の進行度合は最も高い傾向にある。
次に、図7を参照しながら、ECU2で実行される、本発明の第1実施形態によるアイドルストップ禁止処理について説明する。この禁止処理は、スタータ4を用いた再始動回数を上述した再始動モードごとに計測し、その結果に基づいてアイドルストップ(I/S)を禁止するものである。本処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
本処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、スタータ4を用いたCOM始動モードによる再始動、すなわち前述したモータ先駆動モード又はモータ後駆動モードによる再始動が行われたか否かを判別する。この答えがYESのときには、COM始動モードによる再始動回数N_RS1を計測するカウンタをインクリメントする(ステップ2)。
上記ステップ1の答えがNOのときには、前述した逆回転始動モードによる再始動が行われたか否かを判別する(ステップ3)。この答えがYESのときには、逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2を計測するカウンタをインクリメントする(ステップ4)。
上記ステップ3の答えがNOのときには、前述した通常始動モードによる再始動が行われたか否かを判別する(ステップ5)。この答えがYESのときには、通常始動モードによる再始動回数N_RS3を計測するカウンタをインクリメントする(ステップ6)。なお、上記3つのカウンタで計測される再始動回数N_RS1、N_RS2及びN_RS3はいずれも、スタータ4が新品状態である車両Vの出荷時やスタータ4の交換時に、値0にリセットされる。
上記ステップ5の答えがNOで、上記3つの再始動モードのいずれによる再始動も行われていないとき、又は上記ステップ2、4もしくは6が実行された後には、ステップ7に進み、計測された3つの再始動回数N_RS1〜N_RS3の和を、総再始動回数N_RSSUMとして算出する。
次に、ステップ2で計測したCOM始動モードによる再始動回数N_RS1が、所定の第1しきい値NREF1以上であるか否かを判別する(ステップ8)。この答えがYESで、N_RS1≧NREF1が成立したときには、COM始動モードによる再始動回数N_RS1が比較的多いことで、COM始動モードを要因とするリングギヤ8及びピニオンギヤ9の摩耗が進行していると判定して、アイドルストップを禁止し(ステップ11)、本処理を終了する。
上記ステップ8の答えがNOのときには、ステップ4で計測した逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2が、所定の第2しきい値NREF2以上であるか否かを判別する(ステップ9)。この第2しきい値NREF2は、上記のCOM始動モード用の第1しきい値NREF1よりも小さな値に設定されている(NREF2<NREF1)。このステップ9の答えがYESで、N_RS2≧NREF2が成立したときには、逆回転始動モードによる再始動回数N_RS1が比較的多いことで、逆回転始動モードを要因とするリングギヤ8などの摩耗が進行していると判定して、前記ステップ11に進み、アイドルストップを禁止し、本処理を終了する。
上記ステップ9の答えがNOのときには、ステップ7で算出した総再始動回数N_RSSUMが、所定の第3しきい値NREF3以上であるか否かを判別する(ステップ10)。この第3しきい値NREF2は、第1しきい値NREF1よりも大きな値に設定されている(NREF3>NREF1)。このステップ10の答えがYESで、N_RSSUM≧NREF3が成立したときには、3つの再始動モードによるリングギヤ8などの摩耗が進行していると判定して、前記ステップ11に進み、アイドルストップを禁止し、本処理を終了する。
一方、上記ステップ10の答えがNOのとき、すなわち、COM始動モードによる再始動回数N_RS1、逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2、及び総再始動回数N_RSSUMが、第1〜第3しきい値NREF1〜NREF3にそれぞれ達していないときには、リングギヤ8及びピニオンギヤ9の摩耗がそれほど進行していないと判定して、アイドルストップを許可し(ステップ12)、本処理を終了する。
以上のように、本実施形態によれば、リングギヤ8及びピニオンギヤ9の摩耗の進行度合が比較的高い傾向にある、COM始動モードによる再始動回数N_RS1及び逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2を、それぞれ別個に計測するとともに、計測された再始動回数N_RS1が第1しきい値NREF1に達したとき、又は再始動回数N_RS2が第2しきい値NREF2に達したときに、リングギヤ8などの摩耗が進行しているとして、アイドルストップを禁止する。これにより、アイドルストップとその後の再始動がそれらのモードにかかわらず禁止され、イグニッションスイッチ26のオン/オフ操作に応じたエンジン3の停止及び始動のみが許容されるので、リングギヤ8などの摩耗を有効に抑制でき、それらの摩耗によるエンジン3の始動不良などの不具合を適切に防止することができる。
また、通常始動モードによる再始動回数N_RS3を計測し、COM始動モード及び逆回転始動モードと合わせた総再始動回数N_RSSUMが第3しきい値NREF3に達したときに、アイドルストップを禁止するので、COM始動モード及び逆回転始動モードの実施頻度が比較的低い場合などにおいても、3つの再始動モードによるリングギヤなどの摩耗度合を反映させながら、アイドルストップを適切に禁止することができる。
また、第1〜第3しきい値NREF1〜NREF3が、NREF2<NREF1<NREF3の関係を満たすように設定されているので、これらのしきい値NREF1〜NREF3との比較結果に基づくアイドルストップの禁止をより適切に行うことができる。
図8は、上述した第1実施形態の変形例によるアイドルストップ禁止処理を示す。この処理では、図7のステップ1〜6を同様に実行し、COM始動モード、逆回転始動モード及び通常始動モードによる再始動回数N_RS1〜N_RS3をそれぞれ計測する。
次に、3つの再始動回数N_RS1〜N_RS3を用い、次式(1)によって、リングギヤ8などの摩耗度合を表す摩耗度合パラメータD_ABRを算出する(ステップ21)。
D_ABR=N_RS1・K1+N_RS2・K2+N_RS3・K3
・・・(1)
ここで、K1、K2及びK3は、再始動モードに応じた摩耗の進行度合の相違を反映させるための所定の重み係数であり、このため、K2>K1>K3の関係を満たすように設定されている。
次に、算出した摩耗度合パラメータD_ABRが所定のしきい値DREF以上であるか否かを判別する(ステップ22)。そして、この答えがYESで、摩耗度合パラメータD_ABRがしきい値DREFに達したときには、リングギヤ8などの摩耗が進行していると判定して、アイドルストップを禁止し(ステップ11)、本処理を終了する。
一方、前記ステップ22の答えがNOで、摩耗度合パラメータD_ABRがしきい値DREFに達していないときには、リングギヤ8などの摩耗がそれほど進行していないと判定して、アイドルストップを許可し(ステップ12)、本処理を終了する。
以上のように、この変形例によれば、上述したようにして算出される1つの摩耗度合パラメータD_ABRとそのしきい値DREFとの比較結果に基づいて、再始動モードに応じたリングギヤ8などの摩耗度合の相違を反映させながら、アイドルストップを適切に禁止することができる。
次に、図9を参照しながら、本発明の第2実施形態による再始動禁止処理について説明する。この禁止処理は、計測された再始動モードごとの再始動回数に基づき、第1実施形態の場合のアイドルストップの禁止に代えて、所定の再始動モードによる再始動を禁止するものである。本処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
本処理では、図7のステップ1〜7を同様に実行し、COM始動モード、逆回転始動モード及び通常始動モードによる再始動回数N_RS1〜N_RS3を計測するとともに、それらの和を総再始動回数N_RSSUMとして算出する。
次に、COM始動モードによる再始動回数N_RS1が、前記第1しきい値NREF1以上であるか否かを判別する(ステップ8)。この答えがYESで、N_RS1≧NREF1が成立したときには、COM始動モードによる再始動回数N_RS1が比較的多く、COM始動モードを要因とするリングギヤ8などの摩耗が進行していると判定し、COM始動モードによる再始動を禁止する(ステップ31)。
このステップ31の後、又は上記ステップ8の答えがNOのときには、ステップ9に進み、逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2が、前記第2しきい値NREF1以上であるか否かを判別する。この答えがYESで、N_RS2≧NREF2が成立したときには、逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2が比較的多く、逆回転始動モードを要因とするリングギヤ8などの摩耗が進行していると判定し、逆回転始動モードによる再始動を禁止する(ステップ32)。
このステップ32の後、又は上記ステップ9の答えがNOのときには、ステップ10に進み、総再始動回数N_RSSUMが、前記第3しきい値NREF3以上であるか否かを判別する。この答えがYESで、N_RSSUM≧NREF3が成立したときには、3つの再始動モードによるリングギヤ8などの摩耗が進行していると判定して、COM始動モード及び逆回転始動モードによる再始動を禁止し(ステップ33)、本処理を終了する。
一方、上記ステップ10の答えがNOのとき、すなわち、COM始動モードによる再始動回数N_RS1、逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2、及び総再始動回数N_RSSUMが、第1〜第3しきい値NREF1〜NREF3にそれぞれ達していないときには、リングギヤ8などの摩耗がそれほど進行していないと判定し、再始動を禁止することなく、そのまま本処理を終了する。
以上のように、本実施形態によれば、COM始動モードによる再始動回数N_RS1が第1しきい値NREF1に達したときに、COM始動モードを要因とするリングギヤ8などの摩耗が進行していると判定して、COM始動モードによる再始動を禁止する。また、逆回転始動モードによる再始動回数N_RS2が第2しきい値NREF2に達したときに、逆回転始動モードを要因とするリングギヤ8などの摩耗が進行していると判定して、逆回転始動モードによる再始動を禁止する。このように該当する再始動モードによる再始動を禁止するので、その再始動モードの実施によるリングギヤ8などの摩耗の進行を効果的に抑制でき、それらの摩耗によるエンジン3の始動不良などの不具合を適切に防止することができる。
また、通常始動モードによる再始動回数N_RS3を合わせた総再始動回数N_RSSUMが第3しきい値NREF3に達したときに、3つの再始動モードによるリングギヤ8などの摩耗が進行していると判定して、摩耗の進行度合が高いCOM始動モード及び逆回転始動モードによる再始動を禁止するので、両再始動モードの実施によるリングギヤ8などの摩耗の進行を抑制することができる。
さらに、第1〜第3しきい値NREF1〜NREF3が、NREF2<NREF1<NREF3の関係を満たすように設定されているので、再始動モードに応じた摩耗の進行度合の相違を反映させながら、COM始動モード及び逆回転始動モードによる再始動を適切に禁止することができる。
図10は、上述した第2実施形態の変形例による再始動禁止処理を示す。この処理では、図9のステップ1〜7を同様に実行し、COM始動モード、逆回転始動モード及び通常始動モードによる再始動回数N_RS1〜N_RS3を計測するとともに、総再始動回数N_RSSUMを算出する。
そして、再始動回数N_RS1が第1しきい値NREF1に達したとき、再始動回数N_RS2が第2しきい値NREF2に達したとき、又は総再始動回数N_RSSUMが第3しきい値NREF3に達したときに(ステップ8、9又は10:YES)、COM始動モード及び逆回転始動モードによる再始動をいずれも禁止し(ステップ33)、本処理を終了する。これにより、リングギヤ8などの摩耗の進行度合が高い傾向にある両始動モードを適切に禁止し、さらなる摩耗の進行を適切に抑制することができる。一方、上記ステップ8、9及び10の答えがいずれもNOのときには、COM始動モード及び逆回転始動モードによる再始動を許可し(ステップ34)、本処理を終了する。
図11は、第2実施形態の別の変形例による再始動禁止処理を示す。この処理では、図9のステップ1〜7を同様に実行し、COM始動モード、逆回転始動モード及び通常始動モードによる再始動回数N_RS1〜N_RS3を計測するとともに、総再始動回数N_RSSUMを算出する。次に、図8に示した変形例のステップ21及び22を同様に実行し、前記式(1)によって摩耗度合パラメータD_ABRを算出するとともに、摩耗度合パラメータD_ABRが所定のしきい値DREFに達したときに、COM始動モード及び逆回転始動モードによる再始動を禁止し(ステップ33)、それ以外のときには、両始動モードによる再始動を許可し(ステップ34)、本処理を終了する。
以上のように、この変形例によれば、1つの摩耗度合パラメータD_ABRとしきい値DREFとの比較結果に基づいて、COM始動モード及び逆回転始動モードによる再始動を適切に禁止することができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第1実施形態及びその変形例では、第1〜第3しきい値N_RS1〜N_RS3やしきい値DREFとの比較結果に基づき、リングギヤ8及びピニオンギヤ9の摩耗が進行していると判定されたときに、アイドルストップを、減速時アイドルストップ及び停車時アイドルストップにかかわらず禁止しているが、これに代えて、減速時アイドルストップのみを禁止するようにしてもよい。これにより、減速時アイドルストップに引き続く、リングギヤ8などの摩耗に厳しいCOM始動モードや逆回転始動モードによる再始動を回避しながら、停車時アイドルストップを実行することができる。
また、第1及び第2実施形態では、再始動モードのうちのモータ先駆動モードとモータ後駆動モードを、COM始動モードとして一括しているが、両駆動モードを分離し、再始動回数の計測、しきい値との比較や、その比較結果に基づくアイドルストップ及び再始動の禁止などを互いに別個に行ってもよい。それにより、これらの制御をきめ細かく適切に行うことができる。
また、第1〜第3しきい値NREF1〜NREF3を、第1実施形態と第2実施形態の間で互いに共通に用いるものとして説明したが、両実施形態の間で異なるように設定することもできる。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。